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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D21H
管理番号 1372706
異議申立番号 異議2020-700476  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-13 
確定日 2021-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6631991号発明「光沢紙およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6631991号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第6631991号の請求項1及び5に係る特許を維持する。 特許第6631991号の請求項2?4、6?8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6631991号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年7月31日に出願され、令和元年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1年15日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 7月13日:特許異議申立人(藤井朋子)による請求項1?8に 係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 9月15日付け:取消理由通知書
令和2年11月19日:特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、当該
訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という)の提出
なお、本件訂正に対して期間を指定して特許異議申立人に意見書の提出の機会を与えたが、当該期間内に意見書の提出はなかった。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所を下線を付して示すと、以下のとおりである。

ア.訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「光沢紙」について「該光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であり、」という発明特定事項を付加する。

イ.訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において「該下塗り層が無機顔料を含み」と記載されているのを、「該下塗り層が無機顔料とラテックスを含み」に訂正し、さらに「該下塗り層中の該ラテックスの含有割合が5重量%?50重量%であり、」という発明特定事項を付加する。

ウ.訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「無機顔料」について「該無機顔料の吸油量が60g/100g以上であり、」という発明特定事項を付加する。

エ.訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「光沢紙」について「該光沢層が、疎水性樹脂と無機粒子を含み、該疎水性樹脂は乾燥状態において水との接触角が90度以上の樹脂であり、該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該疎水性樹脂の含有割合が50重量%?100重量%であり、該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該無機粒子の含有割合が20重量%?200重量%であり、」という発明特定事項を付加する。

オ.訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「基材層」について「該基材層の厚みが30μm?60μmであり、」という発明特定事項を付加する。

カ.訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「下塗り層」について「該下塗り層の厚みが1μm?30μmであり、」という発明特定事項を付加する。

キ.訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「光沢層」について「該光沢層の厚みが0.1μm?10μmであり、」という発明特定事項を付加する。

ク.訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において「総厚みが20μm?70μmである、」と記載されているのを、「総厚みが40μm?70μmである、」に訂正する。

ケ.訂正事項9
特許請求の範囲の請求項2?4、6?8を削除する。

コ.訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項5において「請求項4に記載の光沢紙」と記載されているのを「請求項1に記載の光沢紙」に訂正する。

2.一群の請求項
訂正前の請求項1?8は、訂正前の請求項2?8が、本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1?8〕に対して請求するものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「光沢層」を、「前記光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0022】及び【0060】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

イ.訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項1の「下塗り層」を、「ラテックスを含み、」「該下塗り層中の該ラテックスの含有割合が5重量%?50重量%であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
また、訂正事項2は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0036】、【0037】及び【0064】?【0071】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ.訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の請求項1の「下塗り層」に含まれる「無機顔料」を「該無機顔料の吸油量が60g/100g以上であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0032】及び【0059】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.訂正事項4について
上記訂正事項4は、訂正前の請求項1の「光沢層」を、「該光沢層が、疎水性樹脂と無機粒子を含み、該疎水性樹脂は乾燥状態において水との接触角が90度以上の樹脂であり、該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該疎水性樹脂の含有割合が50重量%?100重量%であり、該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該無機粒子の含有割合が20重量%?200重量%であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
また、訂正事項4は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0042】【0043】及び【0045】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

オ.訂正事項5について
上記訂正事項5は、訂正前の請求項1の「基材層」を、「該基材層の厚みが30μm?60μmであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
また、訂正事項5は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0028】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

カ.訂正事項6について
上記訂正事項6は、訂正前の請求項1の「下塗り層」を、「該下塗り層の厚みが1μm?30μmであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0039】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

キ.訂正事項7について
上記訂正事項7は、訂正前の請求項1の「光沢層」を、「該光沢層の厚みが0.1μm?10μmであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項7は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項7は、願書に添付した明細書の段落【0051】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

ク.訂正事項8について
上記訂正事項8は、訂正前の請求項1の「総厚みが20μm?70μmである、」を、「総厚みが40μm?70μmである、」と、数値範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項8は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項8は、願書に添付した明細書の段落【0021】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

ケ.訂正事項9について
上記訂正事項9は、訂正前の請求項2?4、6?8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項9は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項9は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

コ.訂正事項10について
上記訂正事項10は、上記訂正事項9により請求項2?4、6?8を削除したことに伴い、訂正前の請求項5が、「請求項1?3」を引用する「請求項4」をさらに引用するものであったものを、「請求項1」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項10は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項10は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
基材層と下塗り層と光沢層をこの順に含む光沢紙であって、
該光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であり、
該下塗り層が無機顔料とラテックスを含み、
該無機顔料の吸油量が60g/100g以上であり、
該下塗り層中の該ラテックスの含有割合が5重量%?50重量%であり、
該光沢層が、疎水性樹脂と無機粒子を含み、
該疎水性樹脂は乾燥状態において水との接触角が90度以上の樹脂であり、
該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該疎水性樹脂の含有割合が50重量%?100重量%であり、
該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該無機粒子の含有割合が20重量%?200重量%であり、
該基材層の厚みが30μm?60μmであり、
該下塗り層の厚みが1μm?30μmであり、
該光沢層の厚みが0.1μm?10μmであり、
総厚みが40μm?70μmである、
光沢紙。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記無機粒子の吸油量が80g/100g以上である、請求項1に記載の光沢紙。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)」

4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、当審が令和2年9月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、当該取消理由通知によって本件特許異議の申立ての理由は全て通知された。

(1)サポート要件について
本件の請求項1の「総厚みが20μm?70μmである」なる記載における、「20μm?」という特定は、本件明細書に記載された各層の厚みの総和から得られる厚みの最小値31.1μmと齟齬している。また、発明の詳細な説明において実施例として開示されている具体例は、一般的に薄いと称される程度の65μmの紙のみである。
請求項1には、数値を用いて総厚みを規定された光沢紙の発明が記載されているのに対し、「20μm?」の範囲の総厚みである光沢紙が当該範囲の全てにおいて本件発明の課題を解決することが本件明細書に記載されているとはいえない。
したがって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)明確性要件について
本件の請求項1において、「基材層」、「下塗り層」及び「光沢層」の積層順は特定されているものの、その余の構造関係(各層の物性や各層の厚みなどの関係)は規定されていない。複数の層から成る光沢紙において、各層の構造関係によって、総厚み、光沢度、耐ブロッキング性などが大きく異なるということが本願出願前の技術常識であるから、各層の積層順のみを特定している請求項1における上記各層の技術的意味(発明特定事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のこと)を理解することができない。
特に、「光沢度がより高」い光沢紙を提供するという本件発明の課題に関しては、本件明細書及び図面の記載を参酌しても、「光沢度がより高」いという特性を備えた光沢紙は、如何なる光沢度であるのかについて、その比較の基準が示されていないから、如何なる光沢紙を「光沢度がより高」いと解すべきかも不明である。
したがって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?8に係る発明は、その発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確であるから、本件請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)新規性進歩性について
本件特許の請求項1、3、4、6、7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項1、3、4、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1)甲第1号証:特開2011-153388号公報
2)甲第2号証:特開2012-77423号公報
3)甲第3号証:特開2005-256237号公報
4)引用文献4:「紙の基礎と印刷適性-構造・物性・加工・印刷品質評価- partI」2006年,【検索日】2020年8月31日、インターネット(URL:http://www.enomae.com/Paper%20Science%20seminar2/Enomae_Paper_Printability_2006_1.pdf)(当審が職権で探知した)
5)引用文献5:「紙の基礎と印刷適性-構造・物性・加工・印刷品質評価- partII」2006年,【検索日】2020年8月31日、インターネット(URL:http://www.enomae.com/Paper%20Science%20seminar2/Enomae_Paper_Printability_2006_2.pdf)(当審が職権で探知した)

5 当審の判断
(1)サポート要件について
上記訂正事項8によって、訂正前の請求項1の「総厚み」の下限値を「40μm」であると限定されたところ、訂正後の請求項1の「総厚みが40μm?70μmである」なる記載について検討する。
本件明細書の段落【0005】には「本発明の課題は、従来に比べて、厚みがより薄く、光沢度がより高く、耐ブロッキング性がより優れる、光沢紙を提供することにある。」と、発明が解決しようとする課題が記載されている。
当該課題に関連する発明の詳細な説明の記載をみると、総厚みについて、段落【0006】には「総厚みが90μm以下である。」及び段落【0021】には「本発明の光沢紙は、総厚みが90μm以下であり、好ましくは20μm?90μmであり、より好ましくは25μm?88μmであり、さらに好ましくは30μm?80μmであり、特に好ましくは35μm?75μmであり、最も好ましくは40μm?70μmである。本発明の光沢紙は、このように厚みが薄い。」と記載されている。
また、各層の厚みについては、段落【0028】には「基材層の厚みは、好ましくは30μm?110μmであり、・・・」、段落【0039】には「下塗り層の厚みは、好ましくは1μm?30μmであり、・・・」、さらに、段落【0051】には、「光沢層の厚みは、好ましくは0.1μm?10μmであり、・・・」と記載されているから、各層の好ましい数値範囲の最小値を単に足し合わせると、総厚みの好ましい最小値は31.1μm(=30μm+1μm+0.1μm)となる。
そうすると、訂正後の請求項1の「総厚みが40μm?」という特定は、本件明細書に記載された総厚みに係る記載、及び、各層の厚みの総和から得られる厚みの最小値31.1μmと整合している。
次に、段落【0064】?【0071】及び表1に開示される〔実施例1〕?〔実施例8〕では、いずれも総厚みは65μmであるところ、当該総厚みが65μmの実施例のみから、さらに薄い厚みである40μm近傍の総厚みのものについてまで、上記課題を解決できると当業者が認識し得るかについてさらに検討する。
特許者が、令和2年11月19日に提出した意見書に添付した乙第2号証(「薄葉紙(薄紙)とは」、吉田印刷所)の平成26年8月12日の時点での記載(非営利団体インターネットアーカイブのウェイバックマシンにて確認:【検索日】令和3年1月20日)は以下のとおりである(https://web.archive.org/web/20140811204405/https://www.ddc.co.jp/super-light-print/about-thin-paper.html)。







乙第2号証の「薄葉紙(うすようし)とは、紙の重さが非常に軽い薄い紙の総称です。」、「薄葉紙には様々な種類があります。」、「グラシン(薄口)の紙の厚さは0.024mmですが・・・」という記載や上記図示(縦軸「紙の厚さ」、横軸「印刷可能サイズ」)を踏まえると、厚さが24μm程度のグラシン紙や24μm以上の種々の厚みの「薄葉紙」が存在することは本願出願前の技術常識である。そして、かかる技術常識を踏まえれば、総厚みが65μmである実施例に接した当業者であれば、一般的に知られている総厚みが65μm未満である紙においても同様の層構造とすることで、上記本件発明の課題を解決することが本件明細書に記載されていると認識し得るものといえる。
そうすると、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえ、また、本件特許発明1を引用する本件特許発明5も同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、本件特許発明1、5は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(2)明確性要件について
上記訂正事項2?8により、訂正後の本件発明1において、「基材層」、「下塗り層」及び「光沢層」の積層順に加えて、その余の構造関係、すなわち、各層の物性や各層の厚みなどの関係が特定されたから、複数の層から成る光沢紙において、前記各層の技術的意味を理解することができる。
また、上記訂正事項1により、光沢紙の光沢度の比較の基準が明らかとなっている。
そうすると、本件特許発明1は明確であり、また、本件特許発明1を引用する本件特許発明5も同様の理由により明確であるといえる。
したがって、本件特許発明1,5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

(3)新規性進歩性について
上記甲第1号証?甲第3号証は、本件特許異議の申立人が特許異議申立書に添付したものである。そして、甲第1号証等を以下「甲1」等と略記し、さらに、甲1等に記載された発明を、以下それぞれ「甲1発明」等という。
また、摘記箇所等に下線を付すことがある。

1)引用文献等に記載された事項、引用発明
ア.甲1に記載された事項、甲1発明
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
原紙上に顔料及び接着剤を含有する下塗り塗工層と上塗り塗工層を設けた塗工紙において、原紙が炭酸カルシウムを5質量%以上含有し、下塗り塗工層が、顔料として、重質炭酸カルシウムを顔料100質量部当たり75質量部以上含有し、
上塗り塗工層が顔料としてカオリンを顔料100質量部当たり75質量部以上含有し、密度が1.0?1.3g/cm^(3)、坪量が65g/m^(2)以下であることを特徴とする塗工紙。
【請求項2】
下塗り塗工層の塗工量が片面当たり2?8g/m^(2)、上塗り塗工層の塗工量が片面当たり3?10g/m^(2)であることを特徴とする請求項1に記載の塗工紙。」

(イ)「【0019】
本発明では、前述した原紙上に、顔料及び接着剤を含有する下塗り塗工層と上塗り塗工層を順次設ける。本発明では、あらかじめ原紙に下塗り塗工層を形成し、上塗り塗工層の原紙層への浸透を抑制、かつ均一化し、上塗り塗工層の平滑性を高め、塗工層を均一化することが重要である。
本発明の塗工紙の下塗りの塗工層には、重質炭酸カルシウムを配合することが必要であり、その配合量は顔料100質量部当たり75質量部以上であり、好ましくは90?100質量部である。
重質炭酸カルシウムの粒子径は、粒度分布として2μmアンダーが80質量%以上であることが好ましい。粒子径がこれより大きいと、平滑性が悪くなり、良好な印刷適性を確保することが困難であるし、特に、フィルムトランスファー塗工においては、アプリケーターロール出口側ニップ部でのミスト発生等の塗工欠陥が発生することがある。
また、重質炭酸カルシウムの配合量が顔料100質量部に当たり75質量部未満である場合、白色度が低くなる傾向がある。
【0020】
また上塗り塗工層には、顔料100質量部当たりカオリンを75質量部以上配合する。
カオリンが75質量部より少ないと、印刷光沢度が低くなる。
そして、全カオリン100質量部のうち、デラミネーテッドカオリンを10質量部以上配合するのが好ましい。使用するデラミネーテッドカオリンは、アスペクト比が30?70のものが好ましい。このようにすることで印刷光沢度が高く、印刷むらのない塗工紙とすることができる。その他のカオリンの粒子径は、粒度分布として2μmアンダーが90質量%以上の微粒カオリンを使用するのが好ましい。
粒子径がこれより大きいカオリンを用いた場合には、印刷光沢度が不十分となる。
このようにすることで、印刷光沢度が高く、印刷むらのない塗工紙を得ることができる。
【0021】
本発明においては、下塗りの塗工層に重質炭酸カルシウムを配合することにより、白色度が向上し、上塗りの塗工層に粒子径の小さい微粒カオリンと、デラミネーテッドカオリンを配合することにより、白紙光沢度が30?50%、ベック平滑度400?800秒の塗工紙を平滑化処理を施さないか、弱い平滑化処理で得ることができるため、密度が低く、手肉感のある塗工紙を得ることができる。
また、上記顔料以外に塗工紙用に従来から用いられている、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料等を必要に応じて1種類以上混合して使用することができる。
【0022】
本発明の下塗り塗工層または上塗り塗工層に使用する接着剤は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用される。」

(ウ)「【0026】
塗料を原紙に塗工する方法としては、2ロールサイズプレスや、ゲートロールコーター、およびブレードメタリングサイズプレスコーター、およびロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー、JFサイザー等のフィルムトランスファー型ロールコーターや、フラデッドニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーターや、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターにより塗工することができる。本発明においては、下塗り塗工で低塗工量にする場合、フィルムトランスファー方式のコーターを用いることにより、均一に塗工することができ、表面性や品質に優れる。塗工量は、下塗り塗工層が片面当たり2?8g/m^(2)が好ましく、より好ましくは4?8g/m^(2)であり、上塗り塗工層が片面当たり3?10g/m^(2)が好ましく、より好ましくは4?8g/m^(2)である。下塗りの塗工量が少ないと、下塗り塗工後の透気抵抗度を1000秒以上にするのが難しくなる。下塗り塗工量が多いと下塗り塗工後の透気抵抗度を3000秒以下にするのが難しくなる。上塗りの塗工量が少ないと白紙光沢度、印刷光沢度が劣り、上塗り塗工量が多いと軽量化が難しくなる。このようにして坪量65g/m^(2)以下の塗工紙を得る。」

(エ)「【0035】
(実施例1)
(原紙)
広葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度240ml)を70質量%、針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度550ml)を30質量%の割合で混合したパルプ原料100質量部に対し、歩留まり向上剤(製品名 DR8500 ハイモ株式会社製)を0.060質量部、硫酸バンド0.9質量部、炭酸カルシウム(製品名 TP-121-6S 奥多摩工業株式会社製)を紙の灰分として5質量%含むように添加し、オントップフォーマー型抄紙機で原紙を抄紙した。
(下塗り塗工)
次に、ロッドメタリングサイズプレスを用いて、顔料と接着剤を含む下塗り塗工用塗料を下記のように両面に塗工した。
以下、顔料以外の薬品の質量部は、顔料100質量部に対する質量部で表す。
(下塗り塗工用塗料)
重質炭酸カルシウム(製品名 ハイドロカーブ90HS 備北粉化工業株式会社製、粒度分布:2μmアンダー90質量%)100質量部
SBRラテックス(製品名 スマーテックスPA8008 日本エイアンドエル株式会社製)2質量部
尿素燐酸エステル化澱粉(製品名 スターコート16 日本食品化工株式会社製)8質量部
分散剤(製品名 アロンT50 東亞合成株式会社製)0.2質量部
蛍光染料(製品名 カヤホールSTCL 日本化薬株式会社製)1.5質量部
塗工量 片面当たり5g/m^(2)
(上塗り塗工)
次に、ショートドゥエルタイプのブレードコーターを用いて、顔料と接着剤を含む上塗り塗工用塗料を下記のように両面に塗工した。
(上塗り塗工用塗料)
微粒カオリン(製品名 カオファイン 白石カルシウム株式会社製、粒度分布:2μmアンダー95質量%以上)70質量部
デラミネーテッドカオリン(製品名 コンツアー1500 株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製、アスペクト比59)30質量部
SBRラテックス(スマーテックスPA8008)14質量部
尿素燐酸エステル化澱粉(スターコート16)2質量部
分散剤(アロンT50)0.2質量部
蛍光染料(カヤホールSTCL)1.5質量部
塗工量 片面当たり8g/m^(2)
塗工後に乾燥し、ソフトカレンダー2ニップ処理(ニップ圧60kN/m 温度180℃、ニップ圧60kN/m 温度150℃)を行い、坪量59.5g/m^(2)の塗工紙を得た。」

(オ)「【0048】
実施例1?6、比較例1?7の各製造条件と得られた塗工紙の評価結果を表1?3に示す。なお、顔料の部数は各塗工層の顔料トータルを100質量部としたときの部数で表し、接着剤の部数は各塗工層の顔料100質量部に対する部数で表す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【0051】
【表3】



(カ)「【0052】
塗工紙の評価方法は以下のとおりとした。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙-坪量測定方法
(密度)JISP8118:1998紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法
(透気抵抗度)JISP8117:1998紙及び板紙-透気度試験方法-ガーレー試験機法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照射法
(白紙光沢度)JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法
(平滑度)JISP8119:1998紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法
(印刷光沢度評価)RI印刷試験機を用いて、オフセット印刷用インキ(商品名 Web World MP 藍 DIC株式会社製)を1.2g使用して32.5Hzの印刷速度で印刷し、130℃に設定した乾燥機で30秒間乾燥し、JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法により、光沢度を測定した。次の評価基準により、4段階で評価した。
◎72以上 ○70以上72未満 △68以上70未満 ×68未満
(印刷むら)上記RI印刷試験機で作製した塗工紙の印刷面を、目視評価により次の4段階で相対評価した。
◎優れる ○良い △やや悪い ×悪い」

(キ)上記(オ)の表3には、実施例1、2の塗工紙が、坪量が59.5g/m^(2)であり、密度が1.17g/cm^(3)であることが記載され、また、上記(カ)も踏まえると、実施例1の塗工紙は、JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で41.2%の光沢度、実施例2は39.7%の光沢度を有することが分かる。

(ク)上記(ア)?(ク)の記載及び(キ)の認定事項を踏まえ、特に実施例1に着目すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。

「原紙と下塗り塗工層と上塗り塗工層をこの順に含む塗工紙であって、
JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で41.2%の光沢度を有し、
該下塗り塗工層が重質炭酸カルシウム100質量部とSBRラテックス2質量部を含み、
上塗り塗工層にSBRラテックス14質量部を含み、
上塗り塗工層に微粒カオリン70質量部、デラミネーテッドカオリン30質量部を含み、
下塗り塗工層の塗工量が5g/m^(2)であり、
上塗り塗工層の塗工量が8g/m^(2)であり、
坪量が59.5g/m^(2)、密度が1.17g/cm^(3)である、
塗工紙。」

イ.甲2に記載された事項、甲2発明
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
原紙上に顔料及び接着剤を含有する下塗り塗工層と上塗り塗工層を設けた塗工紙において、下塗り塗工層が、顔料として、重質炭酸カルシウムを顔料100質量部当たり75質量部以上含有し、上塗り塗工層が顔料としてカオリンを顔料100質量部当たり25?75質量部含有し、密度が1.0?1.3g/cm^(3)、坪量が65g/m^(2)以下であることを特徴とする塗工紙。
【請求項2】
下塗り塗工層の塗工量が片面当たり2?8g/m^(2)、上塗り塗工層の塗工量が片面当たり3?10g/m^(2)であることを特徴とする請求項1に記載の塗工紙。」

(イ)「【0019】
本発明では、前述した原紙上に、顔料及び接着剤を含有する下塗り塗工層と上塗り塗工層を順次設ける。本発明では、あらかじめ原紙に下塗り塗工層を形成し、上塗り塗工層の原紙層への浸透を抑制、かつ均一化し、上塗り塗工層の平滑性を高め、塗工層を均一化することが重要である。
本発明の塗工紙の下塗りの塗工層には、重質炭酸カルシウムを配合することが必要であり、その配合量は顔料100質量部当たり75質量部以上であり、好ましくは90?100質量部である。
重質炭酸カルシウムの粒子径は、粒度分布として2μmアンダーが80質量%以上であることが好ましい。粒子径がこれより大きいと、平滑性が悪くなり、良好な印刷適性を確保することが困難であるし、特に、フィルムトランスファー塗工においては、アプリケーターロール出口側ニップ部でのミスト発生等の塗工欠陥が発生することがある。
また、重質炭酸カルシウムの配合量が顔料100質量部に当たり75質量部未満である場合、白色度が低くなる傾向がある。
【0020】
また上塗り塗工層には、顔料100質量部当たりカオリンを25?75質量部配合する。上塗り塗工層のカオリン以外の顔料としては、重質炭酸カルシウムを使用するのが白色度を高くできるので望ましい。カオリンが25質量部より少ないと、印刷光沢度が低くなる。75質量部より多いと、白色度が低くなるという問題がある。
そして、全カオリン100質量部のうち、デラミネーテッドカオリンを10質量部以上50質量部以下配合するのが好ましい。10質量部より少ないと印刷光沢を高くするのが難しく、デラミネーテッドカオリンが50質量部を超えると塗料の流動性が悪くなり、均一な塗工が難しくなる。
使用するデラミネーテッドカオリンは、アスペクト比が30?70のものが好ましい。このようにすることで印刷光沢度が高く、印刷むらのない塗工紙とすることができる。その他のカオリンの粒子径は、粒度分布として2μmアンダーが90質量%以上の微粒カオリンを使用するのが好ましい。
粒子径がこれより大きいカオリンを用いた場合には、印刷光沢度が不十分となる。
このようにすることで、印刷光沢度が高く、印刷むらのない塗工紙を得ることができる。
【0021】
本発明においては、下塗りの塗工層に重質炭酸カルシウムを配合することにより、白色度が向上し、上塗りの塗工層に粒子径の小さい微粒カオリンと、デラミネーテッドカオリンを配合することにより、白紙光沢度が25?50%、ベック平滑度200?800秒の塗工紙を平滑化処理を施さないか、弱い平滑化処理で得ることができるため、密度が低く、手肉感のある塗工紙を得ることができる。
また、上記顔料以外に塗工紙用に従来から用いられている、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料等を必要に応じて1種類以上混合して使用することができる。
【0022】
本発明の下塗り塗工層または上塗り塗工層に使用する接着剤は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用される。」

(ウ)「【0026】
塗料を原紙に塗工する方法としては、2ロールサイズプレスや、ゲートロールコーター、およびブレードメタリングサイズプレスコーター、およびロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー、JFサイザー等のフィルムトランスファー型ロールコーターや、フラデッドニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーターや、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターにより塗工することができる。本発明においては、下塗り塗工で低塗工量にする場合、フィルムトランスファー方式のコーターを用いることにより、均一に塗工することができる。また、上塗り塗工でブレードコーターを用いることにより、表面性や品質に優れる塗工紙を得ることができる。塗工量は、下塗り塗工層が片面当たり2?8g/m^(2)が好ましく、より好ましくは4?8g/m^(2)であり、上塗り塗工層が片面当たり3?10g/m^(2)が好ましく、より好ましくは4?8g/m^(2)である。下塗りの塗工量が少ないと、下塗り塗工後の透気抵抗度を1000秒以上にするのが難しくなる。下塗り塗工量が多いと下塗り塗工後の透気抵抗度を3000秒以下にするのが難しくなる。上塗りの塗工量が少ないと白紙光沢度、印刷光沢度が劣り、上塗り塗工量が多いと軽量化が難しくなる。このようにして坪量65g/m^(2)以下の塗工紙を得る。」

(エ)「【0035】
(実施例1)
(原紙)
広葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度240ml)を70質量%、針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度550ml)を30質量%の割合で混合したパルプ原料100質量部に対し、歩留まり向上剤(製品名 DR8500 ハイモ株式会社製)を0.060質量部、硫酸バンド0.9質量部(有姿)、炭酸カルシウム(製品名 TP-121-6S 奥多摩工業株式会社製)を原紙の灰分として5質量%含むように添加し、オントップフォーマー型抄紙機で原紙を抄紙した。
(下塗り塗工)
次に、ロッドメタリングサイズプレスを用いて、顔料と接着剤を含む下塗り塗工用塗料を下記のように両面に塗工した。
以下、顔料以外の薬品の質量部は、顔料100質量部に対する質量部で表す。
(下塗り塗工用塗料)
重質炭酸カルシウム(製品名 ハイドロカーブ90HS 備北粉化工業株式会社製、粒度分布:2μmアンダー90質量%)100質量部
SBRラテックス(製品名 スマーテックスPA8008 日本エイアンドエル株式会社製)2質量部
尿素燐酸エステル化澱粉(製品名 スターコート16 日本食品化工株式会社製)8質量部
分散剤(製品名 アロンT50 東亞合成株式会社製)0.2質量部
蛍光染料(製品名 カヤホールSTCL 日本化薬株式会社製)1.5質量部
塗工量 片面当たり5g/m^(2)
(上塗り塗工)
次に、ショートドゥエルタイプのブレードコーターを用いて、顔料と接着剤を含む上塗り塗工用塗料を下記のように両面に塗工した。
(上塗り塗工用塗料)
重質炭酸カルシウム(ハイドロカーブ90HS)50質量部
微粒カオリン(製品名 カオファイン 白石カルシウム株式会社製、粒度分布:2μmアンダー95質量%以上)30質量部
デラミネーテッドカオリン(製品名 コンツアー1500 株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製、アスペクト比59)20質量部
SBRラテックス(スマーテックスPA8008)10質量部
尿素燐酸エステル化澱粉(スターコート16)3質量部
分散剤(アロンT50)0.2質量部
蛍光染料(カヤホールSTCL)1.5質量部
塗工量 片面当たり8g/m2
塗工後に乾燥し、ソフトカレンダー2ニップ処理(ニップ圧60kN/m 温度180℃、ニップ圧60kN/m 温度150℃)を行い、坪量59.5g/m^(2)の塗工紙を得た。」

(オ)「【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【0051】
【表3】


【0052】
塗工紙の評価方法は以下のとおりとした。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙-坪量測定方法
(密度)JISP8118:1998紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法
(透気抵抗度)JISP8117:1998紙及び板紙-透気度試験方法-ガーレー試験機法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照射法
(白紙光沢度)JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法
(平滑度)JISP8119:1998紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法
(印刷光沢度評価)RI印刷試験機を用いて、オフセット印刷用インキ(商品名 Web World MP 藍 DIC株式会社製)を1.2g使用して32.5Hzの印刷速度で印刷し、130℃に設定した乾燥機で30秒間乾燥し、JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法により、光沢度を測定した。次の評価基準により、4段階で評価した。
◎65%以上 ○62%以上65%未満 △59%以上62%未満 ×59%未満
(印刷むら)上記RI印刷試験機で作製した塗工紙の印刷面を、目視評価により次の4段階で相対評価した。
◎優れる ○良い △やや悪い ×悪い」

(カ)上記(オ)の表3には、実施例1の塗工紙が、坪量が59.5g/m^(2)であり、密度が1.17g/cm^(3)であることが記載され、また、上記(カ)も踏まえると、実施例1の塗工紙は、JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で35.2%の光沢度を有することが分かる。

(キ)上記(ア)?(オ)の記載及び(カ)の認定事項を踏まえ、特に実施例1に着目すると、以下の甲2発明が記載されていると認められる。

「原紙と下塗り塗工層と上塗り塗工層をこの順に含む所定の光沢度を備える塗工紙であって、
JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で35.2%の光沢度を有し、
該下塗り塗工層が重質炭酸カルシウム100質量部とSBRラテックス2質量部を含み、
上塗り塗工層にSBRラテックス10質量部を含み、
上塗り塗工層に重質炭酸カルシウム50質量部、微粒カオリン30質量部、デラミネーテッドカオリン20質量部を含み、
下塗り塗工層の塗工量が5g/m^(2)であり、
上塗り塗工層の塗工量が8g/m^(2)であり、
坪量が59.5g/m^(2)、密度が1.17g/cm^(3)である、
塗工紙。」

ウ.甲3に記載された事項
甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
基紙の両面に顔料とバインダーを主成分とする塗工液を塗工して塗工層を設けた坪量40?55g/m^(2)の印刷用塗工紙において、JIS K 3832「精密ろ過膜エレメントおよびモジュールのバブルポイント試験方法」に準じて測定したバブルポイント値から求めた最大細孔径が1?10μm、表面張力45mN/mの液体との接触時間0.1秒における接触角が55?70度の基紙に、塗工層が片面あたり5.5?10g/m^(2)形成されてなることを特徴とするオフセット印刷用塗工紙。
・・・
【請求項3】
塗工層が、顔料100質量部あたりバインダー10?30質量部、バインダーの疎水性樹脂成分が顔料100質量部あたり10質量部以上、バインダーの疎水性樹脂成分と親水性樹脂成分の混合比が45:55?72:28であることを特徴とする請求項1または2に記載のオフセット印刷用塗工紙。」

(イ)「【0038】
塗工液組成については前述のように一般的な構成の広い範囲のものが使用可能である。塗工液に用いられる顔料は、通常のオフセット印刷用塗工紙に用いられる吸油量20?50ml/100gのものが主に使用される。吸油量50ml/100gを越え、特に100ml/100g前後の顔料、例えば、塗工タイプのインクジェット用紙の塗工層に用いられるような、高い吸油度を有するある種の炭酸カルシウムやシリカ、アルミナのような顔料が全体の30%を越えるとグロスタイプのオフセット印刷用途に適した印刷品質は得にくくなる。使用可能な顔料の種類としては、種々のグレードの塗工用カオリン、軽質および重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタンなどである。カオリンおよび炭酸カルシウムの組み合わせは、オフセット印刷適性の高い顔料として最も一般的に用いられ、生産効率等を踏まえると特に好ましい。なお、オフセット印刷におけるインクセット性と印刷光沢を向上させる目的で、吸油量50ml/100g以上の顔料、例えば、デラミネートカオリン、プラスチックピグメントなどを顔料全体の15%以内で使用するのは、通常の印刷用塗工紙の製造において一般的に行われており、本発明にとっても好ましい構成の1つである。
【0039】
塗工層に用いるバインダーとしては、スチレン-ブタジエン系、スチレン-アクリル系、アクリル系、酢酸ビニル-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系などの各種ラテックスや、ポリビニルアルコールなどの合成バインダー、エステル化澱粉、酸化澱粉など各種澱粉やカゼイン、ゼラチンなどの天然系バインダー、CMCなどのセルロース誘導体の1種以上を適宜選択して使用することができる。
これらバインダーは顔料100質量部あたり10?30質量部、より好ましくは15?25質量部の範囲で使用される。本発明においては疎水性樹脂成分を顔料100質量部あたり10質量部以上配合することが好ましい。疎水性樹脂成分の配合量が10質量部未満では、オフセット印刷において表面強度の不足によるパイリングが発生し易くなり好ましくない。但し、バインダー中の疎水性樹脂成分の比率が72質量%を越えると、水性インクの吸収が遅くなり印刷汚れが生じやすくなり、できればこれを避ける方が好ましい。従って、スチレン-ブタジエン系ラテックスのような疎水性樹脂成分とリン酸エステル化澱粉のような親水性樹脂成分を45:55?72:28の比率で混合して用いるとより好ましい。」

(ウ)上記(イ)から、塗工液に用いられる顔料の吸油量に関して、50ml/100gを越え、特に100ml/100g前後の顔料(炭酸カルシウムなど)が全体の30%未満含むようになすこと、インクセット性と印刷光沢を向上させる目的で、吸油量50ml/100g以上の顔料(デラミネートカオリンなど)を顔料全体の15%以内で使用することが、通常の印刷用塗工紙の製造において一般的に行われていることが分かる(以下「吸油量の技術常識」とい。)。

エ.引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(ア)「2 紙の物性
紙の性質を理解する上で最も基本的な概念となるのは、坪量である。これは1m^(2)当たりの紙の質量(g)であり、単位はg/m^(2)である。・・・また、坪量を厚さで除したものが蜜度である。セルロース固有の密度は約1.5g/m^(3)であるが、紙は空隙率が大きい材料であるので、通常0.5?1.0g/m^(3)である。」(第10ページ第1?10行)

オ.引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。

(ア)「3-2 塗工
紙の塗工とは、通常図41に示す工程で処理される顔料塗工を指す。鉱物性の顔料(最近ではポリスチレンなどの有機物からなるものもある)に顔料粒子を接着するバインダーを加えた塗工カラーを原紙に塗布する処理工程である。現在では印刷用紙の半分以上は塗工紙である。新聞用紙への微塗工も一般的になりつつある。顔料塗工の第1の目的は印刷品質の向上であり、非塗工紙に比べ、平滑性、インキ受理性、光沢、白色度、不透明度が格段に向上する。以下順を追って顔料塗工の材料、工程、塗工層構造の形成過程、分析法などについて詳しく見ていくことにする。
3-2-1 塗工材料と組成
塗工カラーを構成する主成分は顔料とバインダーである
3-2-1-1 顔料
カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンが主な鉱物性顔料である。

(a)カオリンクレー
クレーは主にカオリンからなる粘土鉱物で幾つかの種類があり、また不純物をたくさん含んでいるのが普通である。したがってカオリン以外のクレー(例えばセリサイトクレー)も存在する。現在塗工用に用いられるクレーといえばカオリンのことである。カオリンという呼び名はその中のカオリナイトという物質に由来し、純粋なものは式(16)に示すような組成式及び図42の模式図に示すような規則正しい構造を持つ。
・・・
(b)炭酸カルシウム
紙の中性化(溶液型ロジンサイズを定着させる硫酸アルミニウムは弱酸性を示すため、繊維の主成分であるセルロースを加水分解し紙を劣化させるが、AKDやASAなどの中性サイズ剤を使用するとこれが防げる)に伴い、塗工用顔料及び填料として1960年代に急速に普及した。それ以前はほとんどが酸性紙であり、酸性下で溶解する炭酸カルシウムは使用できなかった。製造工程により、重質炭酸カルシウム(天然の石灰石を粉砕して製造したの、GCC)と軽質炭酸カルシウム(一部溶解させて沈降させたもの、PCC)に分類できる。特にPCCは特性を制御しやすいので、粒径、粒度分布、表面積、粒子形状を用途に合わせて設計できる。このような特性は塗工紙の印刷適性に大きな影響を与える要素である。PCCは製造コストが高くなるが、微細なGCCと比較し、塗工層の白色度、透気度、ポロシティ(有孔度)などに優れている他、特に白紙(未印刷の塗工紙の)光沢が高くなる。」

(イ)「



2)対比・判断(甲1発明を主引用発明とした場合)
ア.本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「原紙」は本件特許発明1の「基材層」に相当し、同様に、「下塗り塗工層」は「下塗り層」に、「上塗り塗工層」は「光沢層」に、下塗り塗工層に含まれる「重質炭酸カルシウム」は「無機顔料」に、下塗り塗工層に含まれる「SBRラテックス」は「ラテックス」に、上塗り塗工層に含まれる「SBRラテックス」は「疎水性樹脂」に、上塗り塗工層に含まれる「微粒カオリン」と「デラミネーテッドカオリン」は「無機粒子」に、「塗工紙」は「光沢紙」に、それぞれ相当する。
また、引用文献4の記載事項のとおり、通常、紙の密度が0.5?1.0g/cm^(3)程度であることと甲1発明の塗工紙の密度が1.17g/cm^(3)であることを踏まえると、甲1発明において下塗り塗工層又は上塗り塗工層の密度は1?2.5g/cm^(3)程度の範囲にあると推察される。このことは、引用文献5の記載事項のとおり、各塗工層に含まれる顔料(重質炭酸カルシウムやカオリン)の素材自体の密度が、2.6g/cm^(3)程度であることとも整合している。
この各塗工層の密度と下塗り塗工層5g/m^(2)であることから算出される下塗り塗工層の厚さは2?5μm程度であり、本件特許発明1の「下塗り層の厚みが1μm?30μmであ」ることに相当する。また同様に、上塗り塗工層の塗工量が8g/m^(2)であることから算出される上塗り塗工層の厚さは3.2?4μm程度であり、本件特許発明1の「光沢層の厚みが0.1μm?10μmであ」ることに相当する。
また、甲1発明が「坪量が59.5g/m^(2)」で「密度が1.17g/cm^(3)」であることから算出される総厚み(=坪量/密度)は50.85μm程度であり、本件特許発明1の「総厚みが40μm?70μmである」ことに相当する。
また、甲1発明の「JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で41.2%の光沢度を有」することは、「光沢層面の光沢度が、所定の光沢度である」という限りにおいて、本件特許発明1の「前記光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であ」ることと一致する。
これらを踏まえると、両発明は以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
「基材層と下塗り層と光沢層をこの順に含む光沢紙であって、
前記光沢層面の光沢度が、所定の光沢度であり、
該下塗り層が無機顔料とラテックスを含み、
前記光沢層が、疎水性樹脂と無機粒子を含み、
該基材層の厚みが30μm?60μmであり、
該下塗り層の厚みが1μm?30μmであり、
該光沢層の厚みが0.1μm?10μmであり、
総厚みが40μm?70μmである、
光沢紙。」

(相違点1)
光沢度について、本件特許発明1では、光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であるのに対して、甲1発明では、JISP8142:2005紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法で41.2%である点。

(相違点2)
無機顔料の吸油量について、本件特許発明1では、60g/100g以上であるのに対して、甲1発明では、不明である点。

(相違点3)
下塗り層のラテックスの含有割合について、本件特許発明1では、5重量%?50重量%であるのに対して、甲1発明では、2質量部である点。

(相違点4)
光沢層の疎水性樹脂と無機粒子について、本件特許発明1では、疎水性樹脂は乾燥状態において水との接触角が90度以上の樹脂であり、光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該疎水性樹脂の含有割合が50重量%?100重量%であり、光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該無機粒子の含有割合が20重量%?200重量%であるのに対して、甲1発明では、疎水性樹脂(SBRラテックス)14質量部、無機粒子(微粒カオリンとデラミネーテッドカオリン)100質量部を含み、疎水性樹脂の物性は明記されていない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1に係る本件特許発明1は、本件明細書の段落【0060】に記載されているとおり、「JIS Z8741の光学条件に基づいて」「光沢度を測定した」ものと解されるところ、この点でも甲1発明と相違しているが、例えば、特開2011-196814号公報(段落【0006】)に記載されるように「鏡面光沢を測定する方法として、JIS Z8741鏡面光沢度-測定方法」と「JIS P8142紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法」があり、「これらは、試料表面に対し、規定された入射角で平行光を入射し、正反射方向の反射光量を受光器で検出し、検出した反射光量を標準面(可視波長全域にわたって屈折率が1.567のガラス表面)に於いて同様の条件で検出された反射光量によって規準化したものを鏡面光沢度とする測定方法である」点で共通していることが本件出願前に周知の技術的事項である。
そして、正反射方向(鏡面反射)の反射率は、非金属面の場合は、入射角が60度から90度に近づくにつれて増大することが技術常識であるから、本件特許発明1における、角度60度で75%である光沢層面の光沢度は、角度75度の条件で計測すれば、75%よりも大きい値となること、かかる値は、甲1発明の光沢度41.2%に比べて相当程度大きい値であることは、当業者が通常認識できる事項である。
さらに、甲1の段落【0021】において「本発明においては、・・・上塗りの塗工層に粒子径の小さい微粒カオリンと、デラミネーテッドカオリンを配合することにより、白紙光沢度が30?50%・・・塗工紙を得ることができる。」とあるように、光沢度の上限を50%程度とするものであるから、甲1発明に基いて75%を超える光沢度とすることの記載もなく、示唆する記載もないから、甲1発明において、そうすることの積極的に動機付ける要因も見いだすことはできない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、本件特許発明1は、相違点1の光沢度を備えつつ、各層の構造関係を特定することで、より高い光沢度としつつ、厚みがより薄く、耐ブロッキング性がより優れる光沢紙を提供するという、本件特許明細書に記載された格別な作用効果を奏するものである。
そうすると、本件特許発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、当業者が甲1発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

イ.本件特許発明5について
本件特許発明5は、本願特許発明1の発明特定事項をすべて含み、本件特許発明1をさらに限定するものであるから、本件特許発明5と甲1発明とは、少なくとも上記相違点と同じ点で相違することになるから、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が甲1発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3)対比・判断(甲2発明を主引用発明とした場合)
上記1)イ.のとおり、甲2発明は、甲1発明と同様の発明であるから、上記2)と同様の理由により、本件特許発明1、5は、当業者が甲2発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

4)まとめ
上記のとおり、本件特許発明1、5は甲1発明又は甲2発明ではなく、また、甲1発明又は甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明発明1、5は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができず、また、他に本件発明1、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許発明2?4、6?8は、本件訂正請求による訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許発明2?4、6?8についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。よって、本件特許発明2?4、6?8についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と下塗り層と光沢層をこの順に含む光沢紙であって、
該光沢層面の光沢度が、角度60度で75%以上であり、角度20度で30%以上であり、
該下塗り層が無機顔料とラテックスを含み、
該無機顔料の吸油量が60g/100g以上であり、
該下塗り層中の該ラテックスの含有割合が5重量%?50重量%であり、
該光沢層が、疎水性樹脂と無機粒子を含み、
該疎水性樹脂は乾燥状態において水との接触角が90度以上の樹脂であり、
該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該疎水性樹脂の含有割合が50重量%?100重量%であり、
該光沢層に含まれる樹脂成分全体に対する該無機粒子の含有割合が20重量%?200重量%であり、
該基材層の厚みが30μm?60μmであり、
該下塗り層の厚みが1μm?30μmであり、
該光沢層の厚みが0.1μm?10μmであり、
総厚みが40μm?70μmである、
光沢紙。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記無機粒子の吸油量が80g/100g以上である、請求項1に記載の光沢紙。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-17 
出願番号 特願2015-151528(P2015-151528)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (D21H)
P 1 651・ 121- YAA (D21H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 森藤 淳志
横溝 顕範
登録日 2019-12-20 
登録番号 特許第6631991号(P6631991)
権利者 大阪シーリング印刷株式会社
発明の名称 光沢紙およびその製造方法  
代理人 籾井 孝文  
代理人 籾井 孝文  
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