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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1372716
異議申立番号 異議2020-700186  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-17 
確定日 2021-03-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6578453号発明「コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質、これを製造する方法、および前記正極活物質を含む正極および二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6378453号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1?4、9?18〕、〔5?8〕について訂正することを認める。 特許第6578453号の請求項1?4、9?18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件の特許第6578453号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?18に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年) 1月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年 1月31日(KR)大韓民国、2017年 1月31日(KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和 1年 8月30日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、令和 2年 3月17日付けで、特許異議申立人である秋山重夫(以下、「申立人」という。)により、請求項1?4、9?18に係る本件特許に対して特許異議の申立てがされ、同年 6月30日付けで当審から取消理由が通知され、同年10月12日付けで特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、これに対して、同年11月27日付けで申立人より意見書の提出があったものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
上記訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;」
と記載されているのを、
「(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;」
に訂正する。
また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?4、9?18も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式1の組成を有する、請求項1に記載の正極活物質:」
と記載されているのを、
「 コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式1の組成を有する、正極活物質:」
に訂正する。
また、請求項5を直接または間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式2の組成を有する、請求項1に記載の正極活物質:」
と記載されているのを、
「 コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式2の組成を有する、正極活物質:」
に訂正する。
また、請求項6を直接または間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項15に
「(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;」
と記載されているのを、
「(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項17に、
「請求項1?10のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1?4、9または10のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
また、請求項17を引用する請求項18も同様に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「(a)」において、コアとシェルが「それぞれ互いに独立して」含む「3種類のドーパント」を、「前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
本願の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0026】には、「具体的には、+2価の酸化数の金属は、ドーピングされた金属がCo^(3+)より先に酸化されて、Co^(4+)への酸化を防止することで、構造的なストレスの発生を防止して構造的安定性を向上させることができ、+3価の酸化数の金属は、Co^(4+)に酸化されたコバルトの代わりに構造を維持させる役割と共に表面安定性も向上させ、+4価の酸化数の金属は、高温および高電圧下、表面構造の変化を抑制し、リチウムイオンの移動を相対的に容易にして二次電池の出力特性の低下を防止する。このようなドーパントの組み合わせにより、本発明によるリチウムコバルトドーピング酸化物は4.5V超過の作動範囲でも構造的安定性を維持することができる。」と記載され、【0083】?【0092】には、「(a)」の「条件(1)」の「t」を満たす実施例1?5として、コア、シェル共に+2価の酸化数の金属であるMg、+3価の酸化数の金属であるAl、+4価の酸化数の金属であるTiを含む構成が記載されているから、訂正事項1は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて
訂正事項1は、平均酸化数を決定する「3種類のドーパント」について、3種類それぞれの酸化数を具体的に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。

エ 独立特許要件について
請求項1?4、9?18は、特許異議の申立てがされている請求項であるため、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項5を独立項形式に書き換える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて
訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。

エ 独立特許要件について
請求項5、7、8は、特許異議の申立てがされていない請求項であるが、訂正事項2は、上記アに示したとおり、特許法第120条の5第1項ただし書第1号または2号を目的とするものではないから、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項6を独立項形式に書き換える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて
訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。

エ 独立特許要件について
請求項6?8は、特許異議の申立てがされていない請求項であるが、訂正事項3は、上記アに示したとおり、特許法第120条の5第1項ただし書第1号または2号を目的とするものではないから、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項15の「(a)」において、コアとシェルが含む「3種類のドーパント」を、「前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項4で追加している事項は、訂正事項1で追加している事項と同様であるから、上記(1)イと同様の理由により、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて
訂正事項4で追加している事項は、訂正事項1で追加している事項と同様であるから、上記(1)ウと同様の理由により、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。

エ 独立特許要件について
請求項15は、特許異議の申立てがされている請求項であるため、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、請求項17が引用する請求項について、「請求項1?10のいずれか」から「請求項1?4、9または10のいずれか」と変更するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項5は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減であるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて
訂正事項5は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。

エ 独立特許要件について
請求項17、18は、特許異議の申立てがされている請求項であるため、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?18について、訂正前の請求項2?18はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1?18は一群の請求項である。
よって、本件訂正前の請求項1?18に対応する訂正後の請求項1?18は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、訂正後の請求項1?18について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4 別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、上記訂正請求書において、本件訂正請求について、訂正後の請求項5及び6と、訂正後の請求項5又は6の記載を引用する訂正後の請求項7及び8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
そして、上記2(2)、(3)、(5)で示したように、訂正後の請求項5?8についての訂正、及び訂正前に請求項5?8を引用する構成を含んでいた請求項17、18についての訂正、すなわち訂正事項2、3、5は、引用関係を解消する訂正を含み、訂正が認められるから、訂正後の請求項5?8を上記一群の請求項とは別の訂正単位として認める。

5 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1?4、9?18〕、〔5?8〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記第2で検討したとおり,令和 2年10月12日付け訂正請求書による本件訂正は適法なものである。そして、本件訂正後の請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1?18」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。下線は訂正箇所を示す。

「【請求項1】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足する正極活物質:
(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
【請求項2】
前記(a)において、t(比率)は、0.8≦t<0.95の条件を満足する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記(b)において、r(モル比)は2≦r≦2.5を、r’(モル比)は0.5≦r’≦1.5の条件を満足する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物は、満充電時の正極電位がLi電位基準で4.5V超過の範囲で、相変化なく結晶構造が維持される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式1の組成を有する、正極活物質:
LiaCo1-x-y-zM1xM2yM3zO_(2) (1)
上記式中、
M1、M2、およびM3は、互いに独立してTi、Mg、Al、Zr、Ba、Ca、Ta、Nb、Mo、Ni、Zn、Si、V、およびMnからなる群より選択される1種の元素であり;
0.95≦a≦1.05;
0<x≦0.04、0<y≦0.04、0<z≦0.04である。
【請求項6】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式2の組成を有する、正極活物質:
LibCo1-s-t-wM1’sM2’tM3’wO_(2) (2)
上記式中、
M1’、M2’、およびM3’は、互いに独立してTi、Mg、Al、Zr、Ba、Ca、Ta、Nb、Mo、Ni、Zn、Si、V、およびMnからなる群より選択される1種の元素であり;
0.95≦b≦1.05;
0<s≦0.04、0<t≦0.04、0<w≦0.04である。
【請求項7】
前記M1およびM1’は、+2価の酸化数の金属であり、前記M2およびM2’は、+3価の酸化数の金属であり、前記M3およびM3’は、+4価の酸化数の金属である、請求項5または6に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記M1およびM1’は、それぞれ独立してMg、Ca、Ni、およびBaからなる群より選択される1種の元素であり;
前記M2およびM2’は、それぞれ独立してTi、Al、Ta、およびNbからなる群より選択される1種の元素であり;
前記M3およびM3’は、それぞれ独立してTi、Ta、Nb、Mn、およびMoからなる群より選択され、M2およびM2’と異なる元素である、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記シェルの厚さは、50?2000nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記シェルの表面には、50nm?100nmの厚さのAl_(2)O_(3)がコーティングされている、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法であって、
(i)3種類のドーパントを含むドーピングコバルト前駆体を共沈によって製造する過程;および
(ii)前記ドーピングコバルト前駆体とリチウム前駆体とを混合し、1次焼成してコア粒子を製造する過程;および
(iii)前記コア粒子、コバルト前駆体、リチウム前駆体、および3種類のドーパント前駆体を混合し、2次焼成してコア粒子表面にシェルを形成することによって、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する過程;を含む製造方法。
【請求項12】
前記過程(i)において、ドーパント元素を含む塩とコバルト塩を水に溶解させた後、溶液を塩基性雰囲気に切り替えて、共沈によってドーピングコバルト前駆体としてドーピングコバルト酸化物を製造する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法であって、
(i)コバルト前駆体、リチウム前駆体、および3種類のドーパント前駆体を混合し、1次焼成してコア粒子を製造する過程;および
(ii)前記コア粒子、コバルト前駆体、リチウム前駆体、および前記過程(i)とは独立して3種類のドーパント前駆体を混合し、2次焼成してコア粒子表面にシェルを形成することによって、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する過程;を含む製造方法。
【請求項14】
前記3種類のドーパント前駆体のドーパントは、互いに異なる酸化数を有する、請求項11または13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記(a)または(b)を満足する、請求項11または13に記載の製造方法:
(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦r(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
【請求項16】
前記1次焼成は、850℃?1100℃の温度で8時間?12時間行われ、前記2次焼成は、700℃?1100℃の温度で5時間?12時間行われる、請求項11または13に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1?4、9または10のいずれか1項に記載の正極活物質、導電剤、およびバインダーを含む正極合剤が集電体に塗布されている正極。
【請求項18】
請求項17に記載の正極を含むことを特徴とする二次電池。」

第4 特許異議申立の理由及び取消理由の概要
1 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1?8号証を提出し、以下の理由により、請求項1?4、9?18に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。
そして、当審は、このうち、申立理由1について根拠条文を変更して採用し、申立理由2について一部採用し、取消理由として通知した。なお、取消理由通知の「第3 申立理由の概要」の(3)において、申立理由3を「取消理由として一部採用」と記載しているが、取消理由通知の「第4 取消理由」において理由を記載していないことからも明らかなように、申立理由3については、「取消理由として不採用」である。

(1)申立理由1(実施可能要件)
本件発明1?4、9?18については、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、その特許は取り消されるべきものである(根拠条文を特許法第36条第6項第2号に変更して明確性の取消理由として採用。)。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1?4、9?18については、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、その特許は取り消されるべきものである(取消理由として一部採用)。

(3)申立理由3(明確性要件)
本件発明1?4、9?18については、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、その特許は取り消されるべきものである(取消理由として不採用)。

(4)申立理由4(進歩性)
本件発明1?4、9?18は、甲第7号証に記載された発明及び甲第5号証、甲第8号証に記載された事項に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである(取消理由として不採用)。

2 証拠方法
甲第1号証:特開2004-002141号公報
甲第2号証:特開2008-120679号公報
甲第3号証:特開2010-135187号公報
甲第4号証:特開2016-105366号公報
甲第5号証:特開2016-110889号公報
甲第6号証:マグローヒル科学技術用語大辞典 改訂第3版、表紙、1287?1288頁、1575頁、株式会社日刊工業新聞社、2001年5月31日発行
甲第7号証:特表2014-523383号公報
甲第8号証:特表2018-524776号公報

第5 当審の判断
当審は、本件訂正による訂正後の請求項1?4、9?18は、特許権者が提出した令和 2年10月12日付け意見書を踏まえて検討した結果、以下のとおり、いずれも当審が通知した取消理由を解消しており、上記第4の申立理由1?4のいずれにも該当しないものと判断する。その理由は次のとおりである。

1 取消理由通知に記載した取消理由について
1-1 取消理由1(サポート要件)(申立理由2を一部採用)について
(1)取消理由1の概要
ア 本件特許明細書の記載から、本件特許の解決すべき課題(以下、単に「課題」という。)は、高温および高電圧環境でも寿命特性が高く安定性が強化されたコア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質、及びその製造方法を提供することであると認められる。

イ また、本件特許明細書の記載から、上記課題は、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物において、コア及びシェルにドーピングするドーパントとして酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、これらドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件を満たすものとすることによって解決できるといえる。

ウ 他方、「(a)」の条件のみを満足する場合の訂正前の請求項1に係る発明は、「3種類のドーパント」がどのような種類のドーパントが3種類あるのか不明であるから、上記課題を解決することができるものであるとはいえない。

エ また、「請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」である訂正前の請求項11、13、及び訂正前の請求項1、11、13のいずれかを直接又は間接的に引用する請求項2?4、9、10、12、14?18についても上記課題を解決することができるものであるとはいえない。

オ したがって、訂正前の請求項1?4、9?18に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないので、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)特許権者の主張の概要
特許権者は、令和 2年10月12日付け意見書において、同日付け訂正請求書において、請求項1、15の記載を「(a)」の条件において、「前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、」と訂正したので、本件発明1、15は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているものではなく、本件発明1及び訂正後の請求項1を引用する本件発明2?4、9?18は、発明の詳細な説明に記載されたものであると主張している。

(3)申立人の主張の概要
申立人は、令和2年11月27日付け意見書において、本件発明は、特定の組成の正極活物質と特定のドーピング酸化物の組合せという関係があってこそ高い電圧特性を示すという課題を達成できるものであり、明細書全体を精査しても、正極活物質の組成は請求項5に特定する「Li_(a)Co_(1-x-y-z)M1_(x)M2_(y)M3_(z)O_(2) (1)」以外の開示はないと主張している。
また、上記意見は、特許請求の範囲の訂正に付随して生じたものであるので、実質的に新たな異議理由を含むものではないと主張している。

(4)当審の判断
ア 特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件適合性については、「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。」(知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)第10042号)との判示事項に基づいて以下検討する。

イ 本件特許明細書等には、以下の記載がある(なお、下線は当審が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。

「【0002】
本発明は、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質およびこれを製造する方法に関する。」
「【0005】
・・・しかし、LiCoO_(2)は、充放電電流量が約150mAh/g程度と低く、4.3V以上の電圧では結晶構造が不安定で寿命特性が急激に低下する問題があり、電解液との反応による発火の危険性を抱えている。
【0006】
これを解決するために、従来は、前記LiCoO_(2)にAl、Ti、Mg、Zrのような金属をドーピングするか、LiCoO_(2)の表面にAl、Ti、Mg、Zrのような金属をコーティングする技術が使用されたりしていた。しかし、これらの先行技術はいずれも、ドーピング元素を50ppm?8000ppm以内でドーピングする方法だけを開示していて、4.5V超過の高電圧では依然として構造的安定性を維持できない問題があり、前記金属からなるコーティング層の場合、充放電時、Liイオンの移動を妨げたり、LiCoO_(2)の容量を減少させて、むしろ二次電池の性能を低下させ、高温および高電圧での安定性および寿命特性に依然として問題があった。
【0007】
・・・高温および高電圧環境でも寿命特性が高く安定性が強化されたリチウムコバルト酸化物ベースの正極活物質の開発の必要性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題点とかつて要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0009】
本出願の発明者らは、深い研究と多様な実験を繰り返した末に、後で説明するように、コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物にそれぞれ独立してドーピングされた3種類のドーパントを含み、前記ドーパントが特定条件を満足する場合、4.5V超過の作動電圧範囲でも結晶構造の構造的安定性が向上して結晶構造が維持されることから、高い高電圧特性を示すことを見出して、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明による二次電池用正極活物質は、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足することを特徴とする。
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
【0011】
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
【0012】
一般に、正極活物質として4.35V、4.4V、4.45Vの電池駆動のためのリチウムコバルト酸化物を高電圧で使用する場合、リチウムコバルト酸化物は、Al、Ti、Zr、Mg、P、Ca、F、Coなどのドーピングまたはコーティングにより高電圧環境で構造的な耐久性および表面安定性を実現していた。具体的には、リチウムコバルト酸化物は、本質的な特性として、Li_(x)CoO_(2)でx<50の状況においてCo^(3+)がCo^(4+)に酸化されながら、小さいCo^(4+)のイオン半径により構造的なストレスが増加し、充電し続けることによってx=20付近まで減少すると、コインハーフセル電圧基準4.53Vの領域でO3構造からH1-3構造への構造変化が発生する。このような構造変化は、充放電時に不可逆的に発生し、4.55V以上で効率、放電率特性、および寿命特性の劣位が目立って確認される。もちろん、既存の4.2Vから4.45Vのセルの開発では、O3構造から大きな変化なく充放電が行われたが(もちろん、mono-clinic相への変化があるが、これは可逆的で寿命には影響がない)、4.5V以上の電池駆動のためには、前記H1-3への構造変化を防止しなければならない問題が発生する。
【0013】
そこで、本出願の発明者らは、深い研究を繰り返した末に、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物として、コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物がそれぞれ互いに異なる酸化数を有する3種類のドーパントを有しかつ、これらの平均酸化数を調節してコアとシェルにドーピングされたドーパントの平均酸化数比が前記範囲を有するようにして条件(1)を満足するか、ドーパントの含有量比を調節して条件(2)および(3)を満足する場合には、高温、高電圧下表面構造の変化を抑制して正極活物質粒子の構造的安定性を向上させることによって、寿命特性が顕著に向上することを突き止めた。」
「【0026】
具体的には、+2価の酸化数の金属は、ドーピングされた金属がCo^(3+)より先に酸化されて、Co^(4+)への酸化を防止することで、構造的なストレスの発生を防止して構造的安定性を向上させることができ、+3価の酸化数の金属は、Co^(4+)に酸化されたコバルトの代わりに構造を維持させる役割と共に表面安定性も向上させ、+4価の酸化数の金属は、高温および高電圧下、表面構造の変化を抑制し、リチウムイオンの移動を相対的に容易にして二次電池の出力特性の低下を防止する。このようなドーパントの組み合わせにより、本発明によるリチウムコバルトドーピング酸化物は4.5V超過の作動範囲でも構造的安定性を維持することができる。」
「【0083】
<実施例1>
前記製造例1で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、Mg 0.6mol、Al_(2)O_(3) 1mol、TiO_(2) 1mol、Co_(3)O_(4)、およびLi_(2)CO_(3)を乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Mg、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co_(0.944)Mg_(0.006)Al_(0.04)Ti_(0.01)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.94)Mg_(0.04)Al_(0.01)Ti_(0.01)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0084】
<実施例2>
前記実施例1で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物に・・・アルミニウム500ppmのコーティング層を形成した。・・・
【0085】
<実施例3>
前記製造例5で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、MgO 3mol、Al_(2)O_(3) 0.5mol、TiO_(2) 0.5mol、Co_(3)O_(4)、およびLi_(2)CO_(3)乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Mg、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co_(0.977)Mg_(0.008)Al_(0.01)Ti_(0.005)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.96)Mg_(0.03)Al_(0.005)Ti_(0.005)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0086】
<実施例4>
前記実施例3で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物に・・・アルミニウム500ppmのコーティング層を形成した。・・・
【0087】
<実施例5>
前記製造例1で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、Mg 0.4mol、Al_(2)O_(3) 1mol、TiO_(2) 2mol、Co_(3)O_(4)、およびLi_(2)CO_(3)を乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Mg、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co_(0.944)Mg_(0.004)Al_(0.01)Ti_(0.02)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.94)Mg_(0.04)Al_(0.01)Ti_(0.01)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0088】
<比較例1>
前記製造例2で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、MgO 0.076g、Al_(2)O_(3) 0.267g、TiO_(2) 0.43g、Co_(3)O_(4) 50g、およびLi_(2)CO_(3) 20.475gを乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Mg、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co_(0.957)Mg_(0.013)Al_(0.02)Ti_(0.01)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.944)Mg_(0.006)Al_(0.04)Ti_(0.01)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0089】
<比較例2>
前記製造例4で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、MgO 0.07g、Al_(2)O_(3) 0.53g、TiO_(2) 1.73g、Co_(3)O_(4) 50g、およびLi_(2)CO_(3) 20.475gを乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co0._(908)Mg_(0.012)Al_(0.04)Ti_(0.04)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.964)Mg_(0.03)Al_(0.004)Ti_(0.002)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0090】
<比較例3>
前記製造例6で製造されたリチウムコバルトドーピング酸化物200gと、MgO 0.48g、Al_(2)O_(3) 0.13g、TiO_(2) 0.216g、Co_(3)O_(4) 50g、およびLi_(2)CO_(3) 20.475gを乾式混合した後、炉にて、950℃で10時間焼成して、Mg、Al、Tiがドーピングされたリチウムコバルトドーピング酸化物Li_(1.02)Co_(0.97)Mg_(0.02)Al_(0.005)Ti_(0.005)O_(2)がLi_(1.02)Co_(0.98)Mg_(0.005)Al_(0.01)Ti_(0.005)O_(2)のコアに形成されたコア-シェル構造の正極活物質を製造した。
【0091】
下記表1は、前記実施例1?5、および比較例1?3のドーピング元素の平均酸化数(小数点第1位まで)とその比を示したものである。
【0092】
【表1】

【0093】
下記表2および3は、前記実施例1?5および比較例1?3のドーピング元素の含有量と含有量比を示したものである。
【0094】
【表2】

【0095】【表3】

【0096】
<実験例1>
前記実施例1および3、および比較例1?3で製造された酸化物粒子を正極活物質として用い、バインダーとしてPVdF、および導電剤として天然黒鉛を用いた。正極活物質:バインダー:導電剤を重量比で96:2:2となるようにNMPによく混合した後、20μmの厚さのAl箔に塗布した後、130℃で乾燥して正極を製造した。負極としてはリチウム箔を用い、EC:DMC:DEC=1:2:1の溶媒に1MのLiPF_(6)が入っている電解液を用いてハーフコインセルを製造した。
【0097】
前記製造されたハーフコインセルを、25℃、0.5Cで上限電圧をそれぞれ4.55Vとして充電し、再び1.0Cで下限電圧3Vまで放電することを1回のサイクルとして、50回サイクルの容量維持率を測定し、その結果を下記図1に示した。
【0098】
図1を参照すれば、本願発明による実施例の正極活物質を用いた電池の容量維持率は90%以上の容量維持率を示すのに対し、いずれの条件も満足しない比較例の正極活物質を用いた電池の容量維持率は約85%以下と寿命特性が良くなく、本願発明の条件を満足する実施例が高電圧高温寿命特性がさらに高いことが分かり、これはサイクルが進むほどその差がさらに加速化されることを予想することができる。」
「【図1】


【図2】



ウ 上記イの本件特許明細書【0002】、【0007】の記載から、本件特許の解決すべき課題は、高温および高電圧環境でも寿命特性が高く安定性が強化されたコア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質、及びその製造方法を提供することであると認められる。

エ また、同【0010】?【0013】、【0026】では、コア及びシェルにドーピングするドーパントについて、酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、これらドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件(a)または(b)を満たすものとすることにより、上記課題を解決できるとされている。

オ そして、同【0083】?【0098】、【図1】、【図2】から、コア及びシェルにドーピングするドーパントについて、酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、ドーパントの平均酸化数比が(1)を満足した実施例1?5(【表1】)、または、ドーパントの含有量比が(2)及び(3)を満足した実施例3?5(【表2】、【表3】)であれば、ドーパントの平均酸化数比及びドーパントの含有量比が(1)?(3)を満足しない比較例1?3に対して高電圧高温寿命特性が高くなっており、上記ウの課題を解決していることが理解できる。

カ また、本件特許明細書には、コア及びシェルにドーピングするドーパントについて、酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、ドーパントの平均酸化数比が(1)を満足したもの、または、ドーパントの含有量比が(2)及び(3)を満足したもの以外に、上記ウの課題を解決する手段については記載されていない。

キ そうすると、「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」、当該「正極活物質」を含む「正極」、当該「正極」を含む「二次電池」、及び「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」の「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」の発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲であるためには、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物において、コア及びシェルにドーピングするドーパントとして酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、これらドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件である(a)または(b)を満たす構成とすることが必要であると認められる。

ク そして、本件発明1は、「(b)」の条件に加えて「(a)」の条件においても、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物において、コア及びシェルにドーピングするドーパントとして酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含むことが特定されているから、上記課題を解決することができるものであり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。

ケ また、上記(3)の申立人の主張について検討すると、特許異議申立書では、請求項5で特定する具体的なコアの組成に特定していないことを理由とした申立理由はなく、申立人の意見の内容は、実質的に新たな理由を提示しているものであり、訂正の請求の内容に付随して生じる理由とも認められないので、申立人の主張は採用できない。

コ よって、本件発明1?4、9?18は、取消理由1について、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。


1-2 取消理由2(明確性)(申立理由1を根拠条文を変更して一部採用)について
(1)取消理由2の概要
ア 本件発明1の「コアに存在するドーパントの平均酸化数(OC)」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数(OS)」について、本件特許明細書を参照しても、実施例1?5および比較例1?3のそれぞれの値が【0092】の表1に示されるものの、平均酸化数の具体的な求め方が記載されておらず、上記表1の値をどのように特定したのか不明である。

イ そして、リチウム複合酸化物の平均酸化数を求めるにあたっては、種々の分析方法があるところ、どのような分析方法を採用したとしても、その平均酸化数が一義的に決定されるという技術常識が存在していたとはいえない。

ウ なお、上記表1に示された値は、リチウムコバルトドーピング酸化物の組成式から導出した値と一致するが、本件明細書【0028】によれば、例えば、Tiのように価数が可変の金属があるため、上記組成式から「平均酸化数」が一義的に決定できるとは認められない。

エ そうすると、上記「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」を一義的に決定できないから、それらを特定の範囲に規定する本件発明1は、明確とはいえない。

オ また、「請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」である訂正前の請求項11、13、及び訂正前の請求項1、11、13のいずれかを直接又は間接的に引用する請求項2?4、9、10、12、14?18についても、明確とはいえない。

カ したがって、訂正前の請求項1?4、9?18に係る発明は明確とはいえないので、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)特許権者の主張の概要
特許権者は、令和 2年10月12日付け意見書において、訂正後の請求項1に記載された「コアに存在するドーパントの平均酸化数(OC)」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数(OS)」並びに「これらの比率t=OC/OS」は、正極活物質を構成するコア/シェルそれぞれの組成式を例えばICP分析法等の一般的な方法によって決定し、使用される原料に基づいた各ドーパントの酸化数、及び組成式から分かる各ドーパントのモル比から計算することにより、一義的に算出される値であり、具体的には、「OC(又はOS)=(“使用された原料に基づく各ドーパントの酸化数×各ドーパントのモル比”の合計)/(全ドーパントのモル比の合計)」の式により一義的に算出できると主張している。

(3)申立人の主張の概要
申立人は、令和2年11月27日付け意見書において、特許権者の主張は、「特許異議申立人が言及した甲第1?甲第5号証に記載の分析方法」に加え、更に他の算出方法が存在することを主張したにすぎないと主張している。

(4)当審の判断
ア 本件特許明細書の【0092】の表1に示された「OC」(コアに存在するドーパントの平均酸化数)、「OS」(シェルに存在するドーパントの平均酸化数)、及び「t」(OC/OS)の値は、特許権者が主張するように、使用される原料に基づいた各ドーパントの酸化数、及びリチウムコバルトドーピング酸化物の組成式から分かる各ドーパントのモル比から導出した値と一致する。

イ そうすると、本件特許明細書においては、「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」を、使用される原料に基づいた各ドーパントの酸化数、及びリチウムコバルトドーピング酸化物の組成式から分かる各ドーパントのモル比から導出することで一義的に決定していることが理解できる。

ウ よって、請求項1に「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」の導出方法が明確に記載されていなくても、本件特許明細書の記載を考慮することで、使用される原料に基づいた各ドーパントの酸化数、及びリチウムコバルトドーピング酸化物の組成式から分かる各ドーパントのモル比を用いて導出することで「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」を一義的に決定できることが理解できるから、本件発明1に記載された「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」は明確である。

エ ここで、上記(3)の申立人の主張について検討すると、「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」を計算する方法として、他に甲第1?甲第5号証に記載の分析方法が存在するとしても、上記ア?ウで示したように、本件特許明細書の記載を考慮することで「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」は一義的に決定できるし、特許権者の主張する方法を差し置いて甲第1?甲第5号証に記載の分析方法のいずれかを採用すべき特段の理由も存在しないから、本件発明1の「コアに存在するドーパントの平均酸化数」及び「シェルに存在するドーパントの平均酸化数」は明確であり、申立人の主張は採用できない。

オ よって、本件発明1?4、9?18は、取消理由2について、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものである。

2 取消理由として採用しなかった異議申立理由の判断
取消理由として全部または一部を採用しなかった上記「第4」の申立理由2?4について判断する。

2-1 申立理由2(サポート要件)(取消理由として一部採用)について
(1)申立人の主張の概要
本件特許請求項1では、リチウムとコバルトとドーピング酸化物を構成成分として特定しているが、特許請求の範囲の文言解釈上は上記3成分以外のものを排除するものではなく、かつ上記3成分の成分割合も特定されていない。換言すれば、本件特許請求項1には、上記3成分以外の金属を含むものも包含されており、リチウムやコバルトの成分割合がどのような割合のものも包含されており、かつ、ドーピング酸化物の成分割合がリチウムやコバルトよりも多いものも含まれている。
しかるに、本件特許明細書に記載の製造例1?8、実施例1?5では、コア、シェルのどちらも、リチウムとコバルトのモル比はいずれも約1であり、かつリチウム及びコバルトに対するドーピング酸化物は概ね0.1未満である。
このことは、本件特許明細書で開示した技術より広い内容を本件特許請求項は包含していることを意味する。
また、請求項1を引用する請求項2?4、9、10、17、請求項17を引用する請求項18、請求項1記載の正極活物質を構成要件とする製造方法を特定した請求項11、13、請求項11を引用する請求項12、請求項11または請求項13を引用する請求項14?16についても同様の異議申立理由がある。

(2)当審の判断
ア 特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件適合性については、上記1の1-1(4)アで示したように判断すべきものであると解される。

イ また、本件特許明細書等の記載から、上記1の1-1(4)キで述べたように、「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」、当該「正極活物質」を含む「正極」、当該「正極」を含む「二次電池」、及び「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」の「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」の発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲であるためには、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物において、コア及びシェルにドーピングするドーパントとして酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、これらドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件である(a)または(b)を満たす構成とすることが必要であると認められる。

ウ そして、「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」の発明である本件発明1?4、9、10、当該「正極活物質」を含む「正極」の発明である本件発明17、当該「正極」を含む「二次電池」の発明である本件発明18、及び「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」の「コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」の発明である本件発明11?16は、上記イの構成を含むから、本件発明1?4、9?18は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲に含まれると認められる。

エ ここで、上記(1)の申立人の主張について検討する。

オ 上記1の1-1(4)イの本件特許明細書の【0005】、【0006】、【0012】、【0013】、【0026】を参照すると、本件発明の「リチウムコバルトドーピング酸化物」は、LiCoO_(2)としての構造を安定にするために金属をドーピングしたものであるから、リチウム、コバルト、ドーピング物質以外の金属は含まないし、ドーピングする金属の成分割合がリチウムやコバルトよりも多いものは含まないことは明らかである。

カ また、本件特許明細書を参照した当業者であれば、上記イで示したように、コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物において、コア及びシェルにドーピングするドーパントを酸化数が+2価、+3価及び+4価の3種類の金属を含み、これらドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件である(a)または(b)を満たす構成とすることで上記課題を解決できることを理解し得ると認められる。

キ そして、申立人は、本件特許明細書に記載の製造例1?8、実施例1?5では、コア、シェルのどちらも、リチウムとコバルトのモル比はいずれも約1であり、かつリチウム及びコバルトに対するドーピング酸化物は概ね0.1未満であるということを主張するのみであって、リチウムとコバルトのモル比や、リチウム及びコバルトに対するドーピング酸化物のモル比を限定しないと上記課題を解決できないとする具体的な理由(理論的根拠や具体例)を示していない。

ク よって、申立人の主張は採用できない。

ケ したがって、本件発明1?4、9?18は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。

2-2 申立理由3(明確性)(取消理由として不採用)
(1)申立人の主張の概要
本件特許請求項1では、「ドーパント」という用語が用いられているが、甲第6号証では、「ドーパント」は「ドーピングエージェント」として解説されており(1287頁右欄)、ドーピングエージェントとは、「半導体物質中に加える不純物元素」と解説され(1288頁左欄)、不純物とは、「純物質中の望ましくない異物」との解説がされている(1575頁左欄)。
しかしながら、本件特許発明では、ドーパントは意図して添加しているので「望ましくない異物」と解することもできない。よって、本件特許において、「ドーパント」の意味は不明瞭である。
また、請求項1を引用する請求項2?4、9、10、17、請求項17を引用する請求項18、請求項1記載の正極活物質を構成要件とする製造方法を特定した請求項11、13、請求項11を引用する請求項12、請求項11または請求項13を引用する請求項14?16についても同様の異議申立理由がある。

(2)当審の判断
ア 上記1の1-1(4)イの本件特許明細書【0005】、【0006】、【0009】を参照すると、本件発明における「ドーパント」は、LiCoO_(2)としての構造を安定にするために意図して添加している金属であることは明らかである。

イ 申立人の主張について検討すると、甲第6号証の記載は、半導体の技術分野を前提とした説明であって、当該説明をリチウム二次電池用正極の技術分野に適用することが適切であるとはいえないし、上記アで示したように本件発明における「ドーパント」の意味は明瞭であって、本件発明における「ドーパント」について、意図して添加しているものを含まないと解釈する理由はない。

ウ よって、申立人の主張は採用できない。

エ したがって、本件発明1?4、9?18は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものである。

2-3 申立理由4(進歩性)(取消理由として不採用)
(1)申立人の主張の概要
ア 本件特許請求項1は、リチウムとコバルトを含むリチウム二次電池用正極活物質であって、これは甲第7号証の発明および甲第8号証の発明と同一である。

イ コアーシェル構造は甲第8号証で開示された公知技術である。

ウ ドーピング元素を正極活物質に含ませる点は、甲第8号証で開示された公知技術である。

エ 本件特許請求項1の発明は構成要件(a)において、コアに存在するドーパントの平均酸化数とシェルに存在するドーパントの平均酸化数の比率tが0.7以上0.95未満としているが、この比率は、1対1の比にかなり近いことを意味している。
そして、甲第7号証にはコアとシェルとを分離してドーピングする記載はないから、ドーパントの平均酸化数はコアとシェルの間で明確な区別はつき難く、1対1に近いものとなさざるをえない。
したがって、本件特許請求項1の発明が特定する平均酸化数tの比率(0.7以上0.95未満)を満足していた蓋然性が高く、構成要件(a)は新規な限定とはいえない。

オ 甲第8号証の請求項1におけるAグループとMグループの金属には、2価のMg、3価のAl、3価または4価のTiが含まれている。したがって、2価、3価および4価の金属を用いることは公知である。
そして、モル比を適切に設定することは、甲第8号証の【0072】、【0085】、【0088】に記載されるように慣用の技術手段である。
しかも、甲第5号証の【0032】には、「本実施形態におけるリチウムニッケル複合酸化物は、含有される遷移金属の平均価数が2.9以上である。」また「リチウムニッケル複合酸化物に含有される遷移金属の平均価数の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、3以下である。」と記載されている。このような平均価数の好適値が開示されている以上、実験的追試によって価数とそれに基づくモル比rの最適値を見出すのは通常行われる工夫を越えるものではなく、想到困難性は存在しない。

カ 本件特許請求項1の発明のほとんどは甲第7号証、甲第8号証および甲第5号証に記載されたものに等しいか、それらの記載から容易に想到できるものであるので、進歩性を欠如している。

キ 請求項2?4、9、10、17、18は、請求項1を引用する請求項であるため、請求項1と同様に、異議申立理由がある。

ク 甲第7号証の【0028】の「沈殿」は本件特許発明でいう「共沈」を意味している。なお、甲第7号証の記載にかかわらず共沈技術は粉体の作製方法として周知慣用の技術である。

ケ 甲第8号証に記載するように、金属酸化物粉体を製造するに当たって、複数種の前駆体を混合して焼成すること、シェル形成のために前駆体を混合して焼成することは周知慣用の技術である。

コ 本件特許請求項11、13の発明は甲第7号証および甲第8号証の記載の周知技術を適用したものにすぎないので、進歩性を欠如している。

サ 請求項12は請求項11を引用する請求項であり、請求項14?16は、請求項11または13を引用する請求項であるため、異議申立理由がある。

(2)当審の判断
甲第8号証の公表日は、平成30年8月30日であり、本件特許の国際出願日である平成30年1月26日の後であるから、甲第8号証は、進歩性を否定するための証拠としては採用できない。
一方、甲第8号証の国際公開(国際公開第2017/002057号)の国際公開日は平成29年1月5日であり、本件特許の優先日である平成29年1月31日の前であるから、以下では、甲第8号証については、甲第8号証の国際公開と読み替えて検討する。

A 甲第7号証
A-1 甲7号証の記載
甲第7号証には以下の記載がある。

「【0007】
本発明はリチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料、およびその調製およびLiイオン電池におけるそれらの使用に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料を調製する方法に、酸化コバルト(Co_(3)O_(4))粒子およびその調製方法に、および水酸化コバルト(Co(OH)_(2))粒子およびその調製方法に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は新規のタイプのリチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料に関する。この材料は、本質的に八面体形状の粒子を含むCo(OH)_(2)粒子、または本質的に八面体形状の粒子を含むCo(OH)_(2)から得られるCo_(3)O_(4)粒子、または本質的に八面体形状の粒子を含むCo_(3)O_(4)粒子およびリチウム塩が加熱されるプロセスによって得られるLiCoO_(2)粒子を含む。好ましくは、LiCoO_(2)粒子は本質的に八面体形状の粒子を含み、より好ましくは、基本的に、本質的に八面体形状の粒子からなる。この材料は特にカソード材料としてLiイオン電池において使用することができる。」
「【0023】
LiCoO_(2)粒子の電気化学的性質は、コインセル試験で測定された。コインセル試験の条件は以下の通りであった。コインセル:CR2016;アノード:リチウム;カソード:活性材料95%、アセチレンブラック2%、PVdF3%;コーティング厚み100μm、20μmAlホイル;圧力6t/cm^(2)でのプレス、カソードサイズ1cm^(2);電解質:1MのLiPF_(6)(EC/DMC=1/2);セパレータ:ガラスフィルタ;充電:0.2mA/cm^(2)(約0.15C)、4.30V(vs.Li/Li^(+))まで;第1回目の放電:0.2mA/cm^(2)、3.00V(vs.Li/Li^(+))まで;第2回目の放電:2.0mA/cm^(2)、3.00V(vs.Li/Li^(+))まで;第3回目の放電:4.0mA/cm^(2)、3.00V(vs.Li/Li^(+))まで;第4回目の放電:8.0mA/cm^(2)、3.00V(vs.Li/Li^(+))まで;第5回目から第60回目の放電:4.0mA/cm^(2)、3.00V(vs.Li/Li^(+))まで。速度容量は8.0mA/cm^(2)/0.2mA/cm^(2)と決定される。典型的には、初期の充電容量は154mAh/g超、特に155mAh/g超であり、速度容量は85%超、特に95%超であり、サイクル性(5-30)は、70%超、特に90%超であった。」
「【0028】
Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、B、Al、およびFの群から選択される1つ以上のドーパントをLiCoO_(2)粒子中に添加することができる。ドーパントは、沈殿段階、焼成段階、リチオ化段階、およびリチオ化の後の分離段階を含む1つ以上の段階において添加することができる。ドーパントの濃度は、好ましくはCoに対して0.05-5mol-%の範囲である。一般的にドーパントはLIB中のカソード材料の性能に関して重要である。ドーパントは、例えば熱および高電圧に対する安定性を改良するために、並びにカソード材料の容量低下を最小化するために、添加される。通常カソード材料の、例えばタップ密度などの物理的性質は、ドーパントが添加されるとき、低下する。本発明の一実施形態において、ドープされたLiCoO_(2)粒子のタップ密度は非ドープ粒子のものと比較して最大5%低下する。」
「【0030】
実施例1.本質的に八面体形状の粒子を含むCo(OH)_(2)粒子の調製
Co(OH)_(2)粒子は塩化コバルト溶液(80g/l)、水酸化アンモニウム溶液(220g/l)および水酸化ナトリウム溶液(220g/l)を供給することによって150リットルの反応器中で沈殿された。水酸化ナトリウム溶液および水酸化アンモニウム溶液の供給速度は、溶液から全てのコバルトイオンが沈殿するように、10.0-12.5のレベルのpHを保つように制御された。水酸化ナトリウムと水酸化アンモニウムとの間の供給速度の比は2-4の範囲であった。温度は40℃で一定に保たれた。反応器中での攪拌は制御された(80rpm)。沈殿した粒子はオーバーフローにより連続して集められた。沈殿した粒子は濾過され、熱イオン交換水で洗浄され、空気中110℃で乾燥された。」
「【0036】
実施例4.実施例1のCo(OH)_(2)粒子からの、本質的に八面体形状の粒子を含むLiCoO_(2)粒子の調製
実施例1に示される方法により調製されたCo(OH)_(2)粒子は、Li/Coモル比1.00でLi_(2)CO_(3)粒子と十分に混合された。得られた混合物はさらに、空気中1000℃で5時間焼成された。この焼成プロセスは、リチオ化プロセスと呼ばれる。この実施例は、本質的に八面体形状の粒子を含むCo(OH)_(2)粒子のモルフォロジーおよび物理的性質が、リチオ化プロセスによって形成されるLiCoO_(2)粒子のモルフォロジーおよび物理的性質に強く影響し得ることを示す。」
「【0039】
コインセル試験が前述したように実施された。コインセル試験は、高い初期充電容量(155.0mAh/g)、良好な速度容量(96.5%)、および良好なサイクル性(90.1%、5-30;74.6%、5-60)を示した。これらの結果は、本質的に八面体形状の粒子を含むLiCoO2粒子がLIBのカソード材料として良好な電気化学的品質を有することを示す。」
「【0049】
実施例8.実施例1のCo(OH)_(2)粒子からの本質的に八面体形状の粒子を含むドープされたLiCoO_(2)粒子の調製
ドープされたLiCoO_(2)粒子は実施例4に示される方法によって調製されたが、0.2mol-%のドーパント(Mg、Al、Ti、Zr、B、Al+Ti、Mg+Al、Al+Zr、F、Ca、Sr)が、Li_(2)CO_(3)との混合の前に、Co(OH)_(2)粒子と十分混合された。ドーパントは、LiFとしてのF、および水酸化物としてのCaおよびSrを除いて、酸化物として添加された。この実施例は、本質的に八面体形状の粒子を含むLiCoO_(2)粒子のモルフォロジーおよび物理的性質が、たとえドーパントが添加されたとしても、本質的に変わらないことを示す。」

A-2 甲第7号証に記載された発明
ア 上記A-1の記載から、甲第7号証について以下のことがいえる。

(ア)【0007】、【0013】から、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料を含むLiイオン電池用カソード材料が記載されている。

(イ)【0028】から、Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、B、Al、およびFの群から選択される1つ以上のドーパントをリチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料中に添加することができる。

(ウ)【0023】から、活性材料95%、アセチレンブラック2%、PVdF3%を含むカソードが記載されている。また、活性材料がリチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料であることは明らかである。

(エ)甲第7号証のLiイオン電池は二次電池である。

(オ)【0030】、【0036】、【0049】から、「ドーパント(Mg、Al、Ti、Zr、B、Al+Ti、Mg+Al、Al+Zr、F、Ca、Sr)」と、「Co(OH)_(2)粒子」を、「Li_(2)CO_(3)」との混合の前に十分に混合し、「Li_(2)CO_(3)」との混合により得られた混合物は、空気中1000℃で5時間焼成された。

イ 上記(ア)?(オ)から、甲第7号証には、以下の引用発明1?4が記載されているといえる。

<引用発明1>
リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料を含むLiイオン電池用カソード材料であって、
Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、B、Al、およびFの群から選択される1つ以上のドーパントを含むカソード材料。

<引用発明2>
引用発明1のカソード材料、アセチレンブラック、PVdFを含むカソード。

<引用発明3>
引用発明2に記載のカソードを含む二次電池。

<引用発明4>
引用発明1のカソード材料を製造する方法であって、
(i)ドーパント(Mg、Al、Ti、Zr、B、Al+Ti、Mg+Al、Al+Zr、F、Ca、Sr)と、Co(OH)_(2)粒子を混合して混合物を製造する過程;および
(ii)前記の混合物とLi_(2)CO_(3)と混合し、焼成する過程;を含む製造方法。

B 甲第8号証の国際公開
B-1 甲第8号証の国際公開の記載
甲第8号証の国際公開には以下の記載がある。

「The present invention relates to a lithium cobalt-based oxide having a layered structure, for use as a cathode material in a rechargeable lithium-ion battery. The oxide has a core-shell configuration and is provided with doping elements, oxides and a dedicated coating layer.」(第1頁第3?5行)
(甲第8号証の翻訳:本発明は、再充電可能リチウムイオン電池のカソード材料として用いられる、層状構造を有するリチウムコバルト系酸化物に関する。酸化物は、コア-シェル構造を有し、ドーピング元素、酸化物及び専用コーティング層を備える。)
「Example 2 :
This example will demonstrate that materials comprising LiCo0_(2)-based particles bearing an electron insulating surface and comprising ion-conducting crystalline Li_(3)PO_(4) have a superior electrochemical behavior compared to electron insulating-only materials.

Sample preparation : Ti and Mg doped LiCo0_(2)-base materials are prepared at mass- production scale using a mixture of Li_(2)Co_(3), Co_(3)O_(4), Tio_(2), MgO in a Li/Co/Ti/Mg molar ratio of 1.060/0.9967/0.0008/0.0025. The product is placed in a ceramic tray and sintered at a temperature of 990℃ for 10h in air. The product is then crushed and classified which resulted in a median particle size in volume D50 of about 18μm. The as-prepared sample is referred to as Core_3. Figure 6a shows the SEM image of Core_3.」
Next, 1.85 mol% Li_(3)PO_(4) is applied on the surface of Core_3 as follows: first, lithium hydroxide monohydrate and phosphoric acid (H_(3)PO_(4) produced by Wako Chem. Ltd.) is added to deionized water to provide a 10 wt% LiH_(2)PO_(4) aqueous solution. 2 kilos of a mixture of Core_3 powder and Co_(3)O_(4) (with D50?3.5μm) materials in a molar ratio of Co(Core_3)/Co(Co_(3)O_(4))=0.8696/0.1304 are placed in a tumbling fluidized coating apparatus (MP-01 mini from Powrex Corp.). The aqueous solution of LiH_(2)PO_(4) is sprayed and dried on the surface of the powderous materials mixture under 90℃ hot air. The powderous materials mixture is fluidized by a rotating blade (300 rpm) and air flow of 0.4 Nm^(3)/min. The as prepared solution is fed to a spray nozzle with a constant rate of 5 g/min. and sprayed with an atomized air of 60 L/min. Because the powderous materials mixture is fluidized by hot air during spraying, the aqueous solvent of the spraying solution vaporizes immediately. The as-prepared sample is referred to as Core_4. SEM images of Core_4 samples are shown on Figure 6b, and show that Core_3 particles are homogeneously covered by a homogeneous film of "LiPO_(3) or "LiH_(2)PO_(4)".
Next, sample 2a is prepared as follows. Powder of Core_4 materials is mixed with MgO, TiO_(2) and Al_(2)O_(3) in order to achieve an overall Co/Ti/Mg/AI molar composition of 0.9919/0.0035/0.0028/0.0018. Next, 95.48 wt% of the above described mixture and 4.52 wt% of Li_(2)CO_(3) are further blended together. The as-prepared blend is put in a ceramic crucible and fired at 980℃ for 10h in air. The sintered product is then crushed and classified, resulting in sample 2a. Figure 6c shows the SEM image of sample 2a. ICP data of sample 2a are listed on Table 2.

Sample 2b is prepared as follows: Core_3 powder and Co_(3)O_(4) (with D50?3.5μm) materials are mixed in a molar ratio of Co(Core_3)/Co(Co_(3)O_(4))=0.8696/0.1304 (equivalent to a weight ratio of 0.8905/0.1095 when a cobalt weight content of 60.21% and 73.42% are considered for Core_3 and Co_(3)O_(4), respectively). MgO, TiO_(2) and Al_(2)O_(3) are further added in order to achieve an overall Co/Ti/Mg/AI molar composition of 0.9919/0.0035/0.0028/0.0018. The composition in Mg, Ti and Al dopants is identical to sample 2a. Next, 96.94 wt% of the above described mixture and 3.06 wt% of Li_(2)CO_(3) are further blended together. The as- prepared blend is put in a ceramic crucible and fired at 980℃ for 10h in air. The sintered product is then crushed and classified, resulting in sample 2b. ICP data of sample 2b are listed on Table 2; the Li:(Co+3P) and Li:(Co+3P+Al+Mg+Ti) molar ratios are very close to sample 2a, allowing a reliable comparison of their physical and electrochemical properties.」(第22頁第26行?第23頁第31行)
(甲第8号証の翻訳:
実施例2:
この実施例は、電子絶縁表面を有するLiCoO_(2)系粒子を含み、及びイオン伝導性の結晶性Li_(3)PO_(4)を含む材料は、電子絶縁のみの材料と比較して優れた電気化学的挙動を有することを示すであろう。

サンプル調製:Li/Co/Ti/Mgのモル比が1.060/0.9967/0.0008/0.0025であるLi_(2)CO_(3)、Co_(3)O_(4)、TiO_(2)及びMgOの混合物を用いて、Ti及びMgをドープしたLiCoO_(2)系材料を量産規模で調製する。生成物をセラミックトレイに入れ、990℃の温度で空気中で10時間焼結する。次いで、生成物を粉砕し、分級して、約18μmの体積D50のメジアン粒径を得た。調製したサンプルをコア_3と呼ぶ。図6aは、コア_3のSEM画像を示す。
次に、1.85mol%のLi_(3)PO_(4)をコア_3の表面に次のように適用する。まず、水酸化リチウム一水和物とリン酸(和光純薬工業製H_(3)PO_(4))を脱イオン水に添加して10重量%のLiH_(2)PO_(4)水溶液を得る。Co(コア_3)/Co(Co_(3)O_(4))=0.8696/0.1304のモル比のCo_3粉末とCo3O4(D50-3.5μm)の混合物2kgをタンブリング流動コーティング装置(Powrex Corp.製MP-01 mini)中に配置する。LiH_(2)PO_(4)の水溶液を、90℃の高温空気下で粉末材料混合物の表面上に噴霧し、乾燥させる。粉状混合物を回転ブレード(300rpm)及び0.4Nm^(3)/分の空気流によって流動化する。調製した溶液を、5g/分の一定レートでスプレーノズルに供給し、60L/分の噴霧空気を噴霧した。粉状材料混合物は噴霧の間に高温空気によって流動化されるので、噴霧溶液の水性溶媒は直ちに蒸発する。調製したサンプルをコア_4と呼ぶ。コア_4サンプルのSEM画像を図6bに示し、コア_3粒子が「LiPO_(3)」又は「LiH_(2)PO_(4)」の均一なフィルムによって均一に覆われていることを示す。
次に、サンプル2aを以下のように調製する。コア_4材料の粉末をMgO、TiO_(2)及びAl_(2)O_(3)と混合して、0.9919/0.0035/0.0028/0.0018の全体Co/Ti/Mg/Alモル組成を達成する。次に、95.48wt%の上記混合物と4.52wt%のLi_(2)CO_(3)を更に共にブレンドする。調製したブレンドをセラミックるつぼに入れ、980℃で空気中で10時間焼成する。次いで、焼結生成物を粉砕し、分級して、サンプル2aを得る。図6cは、サンプル2aのSEM画像を示す。サンプル2aのICPデータを表2に示す。

サンプル2bを次のように調製する。コア_3粉体とCo_(3)O_(4)(D50?3.5μm)材料をCo(コア_3)/Co(Co_(3)O_(4))=0.8696/0.1304のモル比(コア_3とCo_(3)O_(4)に対してそれぞれ60.21%と73.42%のコバルト重量含量を考慮する場合、0.8905/0.1095の重量比に相当する)で混合する。MgO、TiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を更に添加して、0.9919/0.0035/0.0028/0.0018の全体のCo/Ti/Mg/Alモル組成を達成する。Mg、Ti及びAlドーパントの組成は、サンプル2aと同じである。次に、96.94重量%の上記混合物と3.06重量%のLi_(2)CO_(3)を更に共にブレンドする。調製したブレンドをセラミックるつぼに入れ、980℃で空気中で10時間焼成する。次いで、焼結生成物を粉砕し、分級して、サンプル2bを得る。サンプル2bのICPデータを表2に示す。Li:(Co+3P)及びLi:(Co+3P+Al+Mg+Ti)のモル比はサンプル2aに非常に近いため、物理的特性と電気化学的特性の信頼性の高い比較が可能である。)



「CLAIMS
1. A layered lithium metal oxide powder for a cathode material used in a rechargeable battery, with the general formula (1-x)[Li_(a-b)A_(b)]_(3a)[Co_(1-c)M_(c)]_(3b)[0_(2-d-e)N'_(e)]_(6c). xLi_(3)PQ_(4), with 0.0001≦x≦0.05, 0.90≦a≦1.10, O (甲第8号証の翻訳:
請求項
1.一般式(1-x)[Li_(a)-_(b)A_(b)]_(3a)[Co_(1-c)Mc]_(3b)[O_(2-d-e)N’_(e)]_(6c).xLi_(3)PO_(4)[式中、0.0001≦x≦0.05、0.90≦a≦1.10、0<b+c≦0.1、-0.1≦d≦0.1及びe≦0.05である]で表される、再充電可能電池に用いられるカソード材料用の層状リチウム金属酸化物粉末であって、Li対(Co+A+M+3P)のモル比が0.970?1.005であり、A及びMは、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つを含む1つ以上の元素であり、N’は、F、S、N及びPからなる群のいずれか1つ以上のドーパントであり、前記粉末は、コア及び表面層を含み、前記コアは元素Li、Co及び酸素を含む層状結晶構造を有して、0と0.05未満の間のP対Coのモル比を有し、前記表面層は元素Li、Co及び酸素の混合物からなり、前記混合物は、Mg、Ti及びAlからなる群から選択される1つ以上の元素を含む酸化物からなる電子絶縁性粒子を更に含み、前記酸化物はLiとCoの一方又は両方を更に含むことができ、前記混合物は、前記コアに密に付着した個別の粒子の形態の複数のイオン伝導性Li_(3)PO_(4)粒子を更に含む、リチウム金属酸化物粉末。)

B-2 甲第8号証の国際公開に記載された発明
ア 上記B-1の記載から、甲第8号証の国際公開について以下のことがいえる。

(ア)第1頁第3?5行から、再充電可能リチウムイオン電池のカソード材料として用いられるリチウムコバルト系酸化物として、コア-シェル構造を有し、ドーピング元素、酸化物及び専用コーティング層を備えた構成が記載されている。

(イ)第22頁第26?36行から、実施例2において、まず、Li/Co/Ti/Mgを所定のモル比となるようにLi_(2)CO_(3)、Co_(3)O_(4)、TiO_(2)及びMgOの混合物を焼結して粉砕することで、Ti及びMgをドープしたLiCoO_(2)系材料を調整したコア_3を得ている。

(ウ)第23頁第21?31行から、サンプル2bは、前記コア_3粒子をCo_(3)O_(4)と混合し、更にMgO、TiO_(2)及びAl_(2)O_(3)と混合し、更にLi_(2)CO_(3)をブレンドし、その後焼成して得たものである。

(エ)上記(ア)?(ウ)から、実施例2のサンプル2bは、Ti及びMgをドーピング元素として含むコアと、Mg、Al、Tiをドーピング元素として含むシェルとを有するリチウムコバルト系酸化物であるといえる。

(オ)上記(ア)及び請求項1の記載から、請求項1のA及びMは、リチウムコバルト系酸化物のドーピング元素であり、前記ドーピング元素としてMg、Ti及びAlが挙げられている。

イ 上記(ア)?(オ)から、甲第8号証の国際公開には、実施例2のサンプル2bとして、以下の引用発明5、6が記載されているといえる。

<引用発明5>
コアーシェル構造のドーピング元素を備えたリチウムコバルト系酸化物であって、
前記コアのリチウムコバルト系酸化物は、Ti及びMgをドーピング元素として含み、前記シェルのリチウムコバルト系酸化物は、Mg、Al、Tiをドーピング元素として含むリチウムコバルト系酸化物。

<引用発明6>
引用発明5に記載のリチウムコバルト系酸化物を製造する方法であって、
(i)Co_(3)O_(4)、Li_(2)CO_(3)、およびTiO_(2)とMgOを混合し、焼結してコア_3を得る過程;および
(ii)前記コア_3、Co_(3)O_(4)、Li_(2)CO_(3)、およびMgOとTiO_(2)とAl_(2)O_(3)とを混合し、焼結してコア_3表面にシェルを形成することによって、コアーシェル構造のリチウムコバルト系酸化物を製造する過程;を含む製造方法。

C 甲第5号証
C-1 甲第5号証の記載
甲第5号証には以下の記載がある。

「【0032】
さらに、本実施形態におけるリチウムニッケル複合酸化物は、含有される遷移金属の平均価数が2.9以上である。後述する実施例で実証されるように、含有される遷移金属の平均価数が当該値以上である場合、リチウムイオン二次電池10のサイクル特性が向上する。一方、含有される遷移金属の平均価数が2.9未満である場合、サイクル特性が低下するため好ましくない。また、リチウムニッケル複合酸化物に含有される遷移金属の平均価数の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、3以下である。」

C-2 甲第5号証に記載された事項

上記C-1の記載から、甲第5号証には、リチウムニッケル複合酸化物に含有される遷移金属の平均価数の下限をサイクル特性を向上するために設定する技術が記載されていると認められる。

D 本件発明1と引用発明1との対比
ア Liイオン電池において、リチウムコバルト酸化物が正極活物質として使用されることは技術常識から明らかである。

イ そうすると、引用発明1の「リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料を含むLiイオン電池用カソード材料」は、本件発明1の「リチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質」に相当する。

ウ また、引用発明1の「Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、B、Al、およびFの群から選択される1つ以上のドーパントを含む」は、本件発明1の「前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足する」に対して、「前記リチウムコバルトドーピング酸化物は、」「ドーパントを含」む点において一致する。

エ そうすると、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。

<一致点>
リチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記リチウムコバルトドーピング酸化物は、ドーパントを含む正極活物質。

<相違点>
本件発明1は、
「リチウムコバルトドーピング酸化物」が「コア-シェル構造」であり、
「コアのリチウムコバルトドーピング酸化物」と「シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物」が「それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み」、
「(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である」
のに対し、
引用発明1は、
「コア-シェル構造」を有しておらず、
「ドーパント」が3種類である特定もなく、
「(a)」の平均酸化数比の条件(1)または「(b)」の含有量比の条件(2)、(3)を満たすとの特定もない
点(以下「相違点1」という。)。

E 相違点1についての検討
ア 甲第7号証には、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料をコア-シェル構造とすることは記載されておらず、引用発明1には、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料をコアーシェル構造とする動機付けはないから、引用発明1においてリチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料をコア-シェル構造とすることは、甲第7号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ また、甲第7号証には、ドーパントを3種類使用することは記載されておらず、引用発明1には、上記アで示したように、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料をコアーシェル構造とする動機付けがないことに加え、ドーパントを3種類使用する動機付けもないから、引用発明1において「コアのリチウムコバルトドーピング酸化物」と「シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物」が「それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含」む構成とすることも、甲第7号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ そして、上記ア、イで示したように、引用発明1には、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料をコアーシェル構造とする動機付けがないことに加え、ドーパントを3種類使用する動機付けもないから、引用発明1において、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料において、コア及びシェルにドーピングするドーパントを酸化数が+2価、+3価および+4価の3種類の金属とし、これらドーパントの平均酸化数または含有量比が特定の条件である(a)または(b)を満たす構成とすることも、甲第7号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

エ ここで、甲第8号証の国際公開には、コアーシェル構造についての記載はあるものの、コアが3種類のドーパントを含む構成や平均酸化数については記載されておらず、また、コアーシェル構造でない引用発明1に甲第8号証の国際公開のコアーシェル構造を適用する動機付けもない。なお、仮に適用したとしても、コアが3種類のドーパントを含まないから、コアが3種類のドーパントを含むことを前提としている「(a)」の「条件(1)」及び「(b)」の「条件(2)」を満たす構成とはならないから、上記相違点1は甲第8号証の国際公開の記載に基いて当業者が容易に相当し得たことではない。

オ また、甲第5号証には、リチウムニッケル複合酸化物についての記載はあるが、リチウムコバルト酸化物(LiCoO_(2))材料についての記載はないため、上記C-2に記載した平均価数の下限をサイクル特性を向上するために設定する技術を引用発明1に適用する動機付けはなく、また、仮に適用したとしても、本件発明が特定している「平均酸化数」の条件である「(a)」の「条件(1)」を満たす構成とはならないから、上記相違点1は甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

カ そして、上記「(a)」または「(b)」を満足することで、高温および高電圧環境でも寿命特性が高く安定性が強化されるという本件発明1の効果を奏することは、甲第7号証、甲第8号証の国際公開及び甲第5号証の記載から当業者が予測し得るものではない。

キ ここで、申立人の主張を検討すると、0.7以上0.95未満には1は含まれておらず、条件(1)における0.7以上0.95未満が1に近いとはいえないし、甲第7号証には、ドーパントとして+2価の酸化数の金属、+3価の酸化数の金属、および+4価の酸化数の金属の3種類を使用することは記載されていないから、甲第7号証に記載された発明が、「(a)」の平均酸化数の「条件(1)」を満足していた蓋然性が高いという主張は採用できない。

ク したがって、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

F 本件発明2?4、9、10と引用発明1との対比・検討
ア 請求項1を引用する「正極活物質」の発明である本件発明2?4、9、10についても、引用発明1と対比した場合において上記相違点1は存在し、上記Eでの検討と同様に、上記相違点1は甲第7号証、甲第8号証の国際公開、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ また、申立人は、請求項2?4、9、10は、請求項1を引用する請求項であるため、請求項1と同様に、異議申立理由がある旨主張するが、通常、独立項に進歩性がないからといって、当該独立項を引用する請求項も進歩性がないことにはならないから当該主張は採用できない。

ウ したがって、本件発明2?4、9、10は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

G 本件発明17と引用発明2との対比・検討
ア 本件発明17は、請求項1に記載の「正極活物質」を含む「正極」の発明であるから、本件発明17と引用発明2とを対比した場合においても上記相違点1は存在し、上記Eでの検討と同様に、上記相違点1は甲第7号証、甲第8号証の国際公開、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ したがって、本件発明17は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

H 本件発明18と引用発明3との対比・検討
ア 本件発明18は、請求項1に記載の「正極活物質」を含む「正極」を含む「二次電池」の発明であるから、本件発明18と引用発明3とを対比した場合においても上記相違点1は存在し、上記Eでの検討と同様に、上記相違点1は甲第7号証、甲第8号証の国際公開、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ したがって、本件発明18は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

I 本件発明11、13と引用発明4との対比・検討
ア 本件発明11、13は、「請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」の発明であるから、本件発明11または13と引用発明4とを対比した場合においても上記相違点1は存在し、上記Eでの検討と同様に、上記相違点1は甲第7号証、甲第8号証の国際公開、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ したがって、本件発明11、13は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

J 本件発明12、14?16と引用発明4との対比・検討
ア 請求項11を引用する発明である本件発明12、請求項11または13を引用する発明である本件発明14?16についても、引用発明4と対比した場合において上記相違点1は存在し、上記Eでの検討と同様に、上記相違点1は甲第7号証、甲第8号証の国際公開、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ また、申立人は、請求項12は請求項11を引用する請求項であり、請求項14?16は、請求項11または13を引用する請求項であるため、請求項11または13と同様に、異議申立理由がある旨主張するが、通常、独立項に進歩性がないからといって、当該独立項を引用する請求項も進歩性がないことにはならないから当該主張は採用できない。

ウ したがって、本件発明12、14?16は、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証の国際公開に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

K 本件発明1と引用発明5との対比
ア 上記B-2のア(ア)から、引用発明5は、リチウムイオン電池のカソード材料として使用されることは明らかである。

イ また、リチウムイオン電池において、リチウムコバルト系酸化物が正極活物質として使用されることは技術常識から明らかである。

ウ そうすると、引用発明5の「リチウムコバルト系酸化物」は、リチウム二次電池用正極活物質として使用されるものであると認められる。

エ また、引用発明5の「ドーピング元素を備えたリチウムコバルト系酸化物」は、本件発明1の「リチウムコバルトドーピング酸化物」に相当し、引用発明5の「前記コアのリチウムコバルト系酸化物は、Ti及びMgをドーピング元素として含み、前記シェルのリチウムコバルト系酸化物は、Mg、Al、Tiをドーピング元素として含む」は、本件発明1の「前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足する」に対して、「前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は」、2種類のドーパントを含み、「シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、」コアのリチウムコバルトドーピング酸化物と「独立して3種類のドーパントを含」む点において一致する。

オ 引用発明5の、「コアのリチウムコバルト系酸化物」が含む「Ti及びMg」は、本件発明1の「コアのドーパント」の「+2価の酸化数の金属(M1)」、「および+4価の酸化数の金属(M3)」に相当する。

カ 引用発明5の、「シェルのリチウムコバルト系酸化物」が含む「Mg、Al、Ti」は、本件発明1の「シェルのドーパント」の「+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)」に相当する。

キ そうすると、本件発明1と引用発明5とは、以下の一致点、相違点を有する。

<一致点>
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は、2種類のドーパントを含み、シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、コアのリチウムコバルトドーピング酸化物と独立して3種類のドーパントを含むリチウム二次電池用正極活物質。
前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)である。

<相違点>
本件発明5は、
「コアのリチウムコバルトドーピング酸化物」が「3種類のドーパントを含み」、
「(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり」、「前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;「前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である」
のに対し、
引用発明5は、
「コア」の「ドーパント」として「+3価の酸化数の金属(M2)」を含んでおらず、
「(a)」の平均酸化数比の条件(1)または「(b)」の含有量比の条件(2)、(3)を満たすとの特定もない
点(以下「相違点2」という。)。

L 相違点2についての検討
ア 甲第8号証の国際公開には、コアのドーパントについて、+2価の酸化数の金属、+3価の酸化数の金属、および+4価の酸化数の金属の3種類を使用することは記載されておらず、引用発明5には、コアのドーピング元素を3種類使用する動機付けはないから、引用発明5において「コアのリチウムコバルトドーピング酸化物」として、更に「+3価の酸化数の金属(M2)」を含ませることは、甲第8号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ そして、上記アで示したように、引用発明5には、コアのドーピング元素を3種類使用する動機付けはないから、引用発明5において、コアにドーピングするドーパントとして酸化数を+2価、+3価、および+4価の3種類の金属とし、これらドーパントとシェルのドーパントの平均酸化数比または含有量比が特定の条件である(a)または(b)を満たす構成とすることも、甲第8号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ また、甲第5号証には、リチウムニッケル複合酸化物についての記載はあるが、リチウムコバルト系酸化物についての記載はないため、上記C-2に記載した平均価数の下限をサイクル特性を向上するために設定する技術を引用発明5に適用する動機付けはなく、また、仮に適用したとしても、本件発明が特定している「平均酸化数」の条件である「(a)」の「条件(1)」を満たす構成とはならないから、上記相違点2は甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

エ さらに、甲第7号証には、コアーシェル構造が開示されていないから、上記相違点2は甲第7号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

オ そして、上記「(a)」または「(b)」を満足することで、高温および高電圧環境でも寿命特性が高く安定性が強化されるという本件発明1の効果を奏することは、甲第8号証の国際公開、甲第7号証、及び甲第5号証の記載から当業者が予測し得るものではない。

カ ここで、上記(1)の申立人の主張を検討すると、申立人は、甲第8号証の国際公開には、請求項1におけるAグループとMグループの金属には、2価のMg、3価のAl、3価または4価のTiが含まれているから、2価、3価および4価の金属を用いることは公知であると主張しているが、AグループとMグループの金属は、「Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つを含む1つ以上の元素」であって、コアのドーピング元素として「Mg、Ti及びAl」の全てを含む構成を選択する技術を開示しているわけではない。

キ また、申立人は、甲第8号証の国際公開の第22頁第31?33行、第23頁第24?25行の記載(甲第8号証の【0085】、【0088】に対応する記載)等を参照し、モル比を適切に設定することは慣用の技術手段と主張しているが、3種類のドーパントを使用する際に所望の特性に応じてモル比を適切に設定することが慣用の技術手段であるとしても、上記「(a)」の「条件(1)」または「(b)」の「条件(2)」、「条件(3)」を満足するようにモル比を設定することが慣用の技術手段であるとはいえない。

ク よって申立人の主張は採用できない。

ケ したがって、本件発明1は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

M 本件発明2?4、9、10と引用発明5との対比・検討
ア 請求項1を引用する「正極活物質」の発明である本件発明2?4、9、10についても、引用発明5と対比した場合において上記相違点2は存在し、上記Lでの検討と同様に、上記相違点2は甲第8号証、甲第7号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ また、申立人は、請求項2?4、9、10は、請求項1を引用する請求項であるため、請求項1と同様に、異議申立理由がある旨主張するが、通常、独立項に進歩性がないからといって、当該独立項を引用する請求項も進歩性がないことにはならないから当該主張は採用できない。

ウ したがって、本件発明2?4、9、10は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

N 本件発明17と引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極との対比・検討
ア 上記Kのア?ウを考慮すると、甲第8号証の国際公開には、引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極の発明も実質的に開示されていると認められる。

イ そして、本件発明17は、請求項1に記載の「正極活物質」を含む「正極」の発明であるから、本件発明17と引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極の発明とを対比した場合においても上記相違点2は存在し、上記Lでの検討と同様に、上記相違点2は甲第8号証の国際公開、甲7号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ したがって、本件発明17は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

O 本件発明18と引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極を含む二次電池との対比・検討
ア 上記Kのア?ウを考慮すると、甲第8号証の国際公開には、引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極を含む二次電池の発明も実質的に開示されていると認められる。

イ 本件発明18は、請求項1に記載の「正極活物質」を含む「正極」を含む「二次電池」の発明であるから、本件発明18と引用発明5のリチウムコバルト系酸化物を含んだ正極を含む二次電池とを対比した場合においても上記相違点2は存在し、上記Lでの検討と同様に、上記相違点2は甲第8号証の国際公開、甲7号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ したがって、本件発明18は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

P 本件発明11、13と引用発明6との対比・検討
ア 本件発明11、13は、「請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法」の発明であるから、本件発明11または13と引用発明6とを対比した場合においても上記相違点2は存在し、上記Lでの検討と同様に、上記相違点2は甲第8号証の国際公開、甲7号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ したがって、本件発明11、13は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

Q 本件発明12、14?16と引用発明6との対比・検討
ア 請求項11を引用する発明である本件発明12、請求項11または13を引用する発明である本件発明14?16についても、引用発明6と対比した場合において上記相違点2は存在し、上記Lでの検討と同様に、上記相違点2は甲第8号証の国際公開、甲7号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。

イ また、申立人は、請求項12は請求項11を引用する請求項であり、請求項14?16は、請求項11または13を引用する請求項であるため、請求項11または13と同様に、異議申立理由がある旨主張するが、通常、独立項に進歩性がないからといって、当該独立項を引用する請求項も進歩性がないことにはならないから当該主張は採用できない。

ウ したがって、本件発明12、14?16は、甲第8号証の国際公開に記載された発明、甲7号証に記載された発明、及び甲5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は適法であるから、これを認める。
そして、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4、9?18に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1?4、9?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足する正極活物質:
(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
【請求項2】
前記(a)において、t(比率)は、0.8≦t<0.95の条件を満足する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記(b)において、r(モル比)は2≦r≦2.5を、r’(モル比)は0.5≦r’≦1.5の条件を満足する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物は、満充電時の正極電位がLi電位基準で4.5V超過の範囲で、相変化なく結晶構造が維持される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式1の組成を有する、正極活物質:
Li_(a)Co_(1-x-y-z)M1_(x)M2_(y)M3_(z)O_(2) (1)
上記式中、
M1、M2、およびM3は、互いに独立してTi、Mg、Al、Zr、Ba、Ca、Ta、Nb、Mo、Ni、Zn、Si、V、およびMnからなる群より選択される1種の元素であり;
0.95≦a≦1.05;
0<x≦0.04、0<y≦0.04、0<z≦0.04である。
【請求項6】
コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記コアのリチウムコバルトドーピング酸化物とシェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、それぞれ互いに独立して3種類のドーパントを含み、下記(a)または(b)を満足し、
(a)前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦t(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
前記シェルのリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記化学式2の組成を有する、正極活物質:
Li_(b)Co_(1-s-t-w)M1’_(s)M2’_(t)M3’_(w)O_(2) (2)
上記式中、
M1’、M2’、およびM3’は、互いに独立してTi、Mg、Al、Zr、Ba、Ca、Ta、Nb、Mo、Ni、Zn、Si、V、およびMnからなる群より選択される1種の元素であり;
0.95≦b≦1.05;
0<s≦0.04、0<t≦0.04、0<w≦0.04である。
【請求項7】
前記M1およびM1’は、+2価の酸化数の金属であり、前記M2およびM2’は、+3価の酸化数の金属であり、前記M3およびM3’は、+4価の酸化数の金属である、請求項5または6に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記M1およびM1’は、それぞれ独立してMg、Ca、Ni、およびBaからなる群より選択される1種の元素であり;
前記M2およびM2’は、それぞれ独立してTi、Al、Ta、およびNbからなる群より選択される1種の元素であり;
前記M3およびM3’は、それぞれ独立してTi、Ta、Nb、Mn、およびMoからなる群より選択され、M2およびM2’と異なる元素である、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記シェルの厚さは、50?2000nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記シェルの表面には、50nm?100nmの厚さのAl_(2)O_(3)がコーティングされている、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法であって、
(i)3種類のドーパントを含むドーピングコバルト前駆体を共沈によって製造する過程;および
(ii)前記ドーピングコバルト前駆体とリチウム前駆体とを混合し、1次焼成してコア粒子を製造する過程;および
(iii)前記コア粒子、コバルト前駆体、リチウム前駆体、および3種類のドーパント前駆体を混合し、2次焼成してコア粒子表面にシェルを形成することによって、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する過程;を含む製造方法。
【請求項12】
前記過程(i)において、ドーパント元素を含む塩とコバルト塩を水に溶解させた後、溶液を塩基性雰囲気に切り替えて、共沈によってドーピングコバルト前駆体としてドーピングコバルト酸化物を製造する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の二次電池用正極活物質のコア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する方法であって、
(i)コバルト前駆体、リチウム前駆体、および3種類のドーパント前駆体を混合し、1次焼成してコア粒子を製造する過程;および
(ii)前記コア粒子、コバルト前駆体、リチウム前駆体、および前記過程(i)とは独立して3種類のドーパント前駆体を混合し、2次焼成してコア粒子表面にシェルを形成することによって、コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物を製造する過程;を含む製造方法。
【請求項14】
前記3種類のドーパント前駆体のドーパントは、互いに異なる酸化数を有する、請求項11または13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コア-シェル構造のリチウムコバルトドーピング酸化物は、下記(a)または(b)を満足する、請求項11または13に記載の製造方法:
(a)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記コアに存在するドーパントの平均酸化数と、シェルに存在するドーパントの平均酸化数との比率が下記条件(1)を満足するか;
0.7≦r(比率)=OC/OS<0.95 (1)
ここで、前記OCは、コアに存在するドーパントの平均酸化数であり、OSは、シェルに存在するドーパントの平均酸化数である。
(b)前記コアのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1)、+3価の酸化数の金属(M2)、および+4価の酸化数の金属(M3)であり、前記M1、M2、およびM3の含有量は、モル比を基準として下記条件(2)を満足し;前記シェルのドーパントは、+2価の酸化数の金属(M1’)、+3価の酸化数の金属(M2’)、および+4価の酸化数の金属(M3’)であり、前記M1’、M2’、およびM3’の含有量は、モル比を基準として下記条件(3)を満足する。
2≦r(モル比)=CM1/(CM2+CM3)≦3 (2)
0.5≦r’(モル比)=CM1’/(CM2’+CM3’)<2 (3)
ここで、前記CM1はM1の含有量、CM2はM2の含有量、CM3はM3の含有量、CM1’はM1’の含有量、CM2’はM2’の含有量、CM3’はM3の’含有量である。
【請求項16】
前記1次焼成は、850℃?1100℃の温度で8時間?12時間行われ、前記2次焼成は、700℃?1100℃の温度で5時間?12時間行われる、請求項11または13に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1?4、9または10のいずれか1項に記載の正極活物質、導電剤、およびバインダーを含む正極合剤が集電体に塗布されている正極。
【請求項18】
請求項17に記載の正極を含むことを特徴とする二次電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-15 
出願番号 特願2018-548046(P2018-548046)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (H01M)
P 1 652・ 536- YAA (H01M)
P 1 652・ 121- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 式部 玲  
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 増山 慎也
池渕 立
登録日 2019-08-30 
登録番号 特許第6578453号(P6578453)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 コア-シェル構造のリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池用正極活物質、これを製造する方法、および前記正極活物質を含む正極および二次電池  
復代理人 毛利 聖  
代理人 実広 信哉  
代理人 実広 信哉  
復代理人 赤井 吉郎  
復代理人 毛利 聖  
代理人 渡部 崇  
復代理人 赤井 吉郎  
代理人 渡部 崇  
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