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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12N
審判 一部申し立て 特29条の2  C12N
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12N
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C12N
審判 一部申し立て 2項進歩性  C12N
管理番号 1372760
異議申立番号 異議2020-700867  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-13 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6692856号発明「RNA依存性標的DNA修飾およびRNA依存性転写調節のための方法および組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6692856号の請求項1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続きの経緯
特許第6692856号の請求項1?111に係る特許についての出願は、平成25年3月15日(パリ条約による優先権主張 2012年5月25日 米国(US)、2012年10月19日 米国(US)、2013年1月28日 米国(US)、2013年2月15日 米国(US))を国際出願日とする特許出願である特願2015-514015号の一部を、平成30年5月21日に新たな特許出願としたものであって、令和2年4月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月13日に特許公報が発行された。
そして、その請求項1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95に係る特許に対し、令和2年11月13日に特許異議申立人小林裕之(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。


第2 本件発明
特許第6692856号の請求項1?111の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?111に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
標的DNAを修飾する方法であって、
細胞内で該標的DNAを複合体と接触させることを含み、
該複合体は、
(a)Cas9ポリペプチド並びに
(b)DNA標的化RNAであって、
(i)該標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント;および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する、2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む、該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNA
を含む複合体であり、
該細胞は、植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物であり、
該細胞は、インビボのヒト細胞ではなく、ヒト生殖細胞ではなく、およびヒト胚細胞ではなく、
該修飾は標的DNAの切断である、
前記標的DNAを修飾する方法。
【請求項2】
前記細胞が動物細胞であり、該動物細胞が哺乳類細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対を形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして15?18塩基対を形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ハイブリダイズして前記タンパク質結合セグメントのdsRNAを形成するヌクレオチド間の相補性が70%よりも大きい、請求項1?4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的DNAが染色体DNAである、請求項1?5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記DNA標的化RNAが、修飾ヌクレオチド塩基、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間連結、修飾された糖部分、Locked核酸およびペプチド核酸の1つまたはそれ以上を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記DNA標的化RNAが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、非リン酸ジエステル、ヘテロ原子、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミダート、アミノアルキルホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートの1つまたはそれ以上を含む非天然ヌクレオシド間連結を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DNA標的化RNAが、
(i)ホスホロチオエート、逆の極性を有する連結および脱塩基性ヌクレオシド連結から選択される、非天然ヌクレオシド間連結、
(ii)Locked核酸(LNA)、並びに
(iii)2’‐O‐メトキシメチル、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される修飾された糖部分、
の1つまたはそれ以上を含む、
請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNA標的化RNAが、
2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される、修飾された糖部分の1つまたはそれ以上を含む、
請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記DNA標的化RNAが、
5-メチルシトシン、5-ヒロドキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンの6-メチル誘導体、グアニンの6-メチル誘導体、アデニンの2-プロピル誘導体、グアニンの2-プロピル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、偽ウラシル(pseudouracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、5-ハロウラシル、5-ブロモウラシル、5-トリフルオロメチルウラシル、5-ハロシトシン、5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、5-置換ウラシル、5-置換シトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、置換フェノキサジンシチジン、カルバゾールシチジン、ピリドインドールシチジン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、N-2、N-6もしくはO-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンから選択される、核酸塩基の1つまたはそれ以上を含む、
請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記DNA標的化RNAが、
ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、リン脂質、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、色素、クマリン、取り込みを増強する部分、分解への耐性を増強する部分および/または配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する部分、並びに、取り込み、分布、代謝または排出を向上させる部分、から選択される部分に結合されている、
請求項1?11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、1つまたはそれ以上の部分又は結合体に化学的に連結されている、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、介在ヌクレオチドによって共有結合されていない、請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記接触が、
(a)前記Cas9ポリペプチド又は前記Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(b)前記DNA標的化RNAまたは前記DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチド
を前記細胞に導入することを含む、請求項1?14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチド:の1つまたはそれ以上が、組み換え発現ベクターである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組み換え発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純疱疹ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組み換え発現ベクターが、プラスミドベクター、コスミドベクター、ミニサークルベクター、ファージベクターおよびウイルスベクターからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
さらに、ドナーポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む、請求項15?19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの前記細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項1?20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記Cas9ポリペプチドのカルボキシル末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの前記細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項1?20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記Cas9ポリペプチドが、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインに1つまたはそれ以上の変異を含む、請求項1?22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記Cas9ポリペプチドが、対応する野生型Cas9タンパク質に比して、低いヌクレアーゼ活性を有する、請求項1?23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記標的DNAが、非相同末端結合(NHEJ)修復機構により編集される、請求項1?24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記標的DNAが、相同組換え修復(HDR)機構により編集される、請求項1?24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記標的DNAが、ドナーポリヌクレオチドの配列を、該標的DNA分子の切断された鎖に挿入することにより編集される、請求項1?24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
組成物であって、
(a)Cas9ポリペプチド、または該Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチドを含み、
該DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、DNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAである、
前記組成物であって、
真核生物細胞内で、該標的DNAを、前記Cas9ポリペプチドと前記DNA標的化RNAを含む複合体と接触させることにより、前記Cas9ポリペプチドを標的DNAへと導くための組成物。
【請求項29】
組成物であって、
(a)Cas9ポリペプチド、または該Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチドを含み、
該DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の18?25ヌクレオチド長の標的配列に対して、100%の相補性を有するヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAである、
前記組成物。
【請求項30】
組成物であって、
(a)Cas9ポリペプチド、または該Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチドを含み、
該DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、DNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAであり、
以下の(A)?(D)
(A)前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成すること:
(B)前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、該Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進すること:
(C)前記Cas9ポリペプチドのカルボキシル末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進すること:
(D)前記Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチド:の1つまたはそれ以上が、ウイルス発現ベクターであること:
の少なくとも一つの特徴を有する、前記組成物。
【請求項31】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成する、請求項28?30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記ハイブリダイズして前記タンパク質結合セグメントのdsRNAを形成するヌクレオチド間の相補性が70%よりも大きい、請求項28?31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記標的DNAが染色体DNAである、請求項28?32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、該Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項28?33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記Cas9ポリペプチドのカルボキシル末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項28?33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記Cas9ポリペプチドと前記DNA標的化RNAは、インビボのヒト細胞、ではない真核生物細胞中に存在する、請求項28?35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記DNA標的化RNAが、修飾ヌクレオチド塩基、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間連結、修飾された糖部分、Locked核酸およびペプチド核酸の1つまたはそれ以上を含む、請求項28?36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記DNA標的化RNAが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、非リン酸ジエステル、ヘテロ原子、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミダート、アミノアルキルホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートの1つまたはそれ以上を含む非天然ヌクレオシド間連結を含む、請求項28?36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記DNA標的化RNAが、
(i)ホスホロチオエート、逆の極性を有する連結および脱塩基性ヌクレオシド連結から選択される、非天然ヌクレオシド間連結、
(ii)Locked核酸(LNA)、並びに
(iii)2’‐O‐メトキシメチル、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される修飾された糖部分、
の1つまたはそれ以上を含む、
請求項28?36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記DNA標的化RNAが、
2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される、修飾された糖部分の1つまたはそれ以上を含む、
請求項28?36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記DNA標的化RNAが、
5-メチルシトシン、5-ヒロドキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンの6-メチル誘導体、グアニンの6-メチル誘導体、アデニンの2-プロピル誘導体、グアニンの2-プロピル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、偽ウラシル(pseudouracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、5-ハロウラシル、5-ブロモウラシル、5-トリフルオロメチルウラシル、5-ハロシトシン、5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、5-置換ウラシル、5-置換シトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、置換フェノキサジンシチジン、カルバゾールシチジン、ピリドインドールシチジン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、N-2、N-6もしくはO-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンから選択される、核酸塩基の1つまたはそれ以上を含む、
請求項28?36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
該DNA標的化RNAが、
ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、リン脂質、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、色素、クマリン、取り込みを増強する部分、分解への耐性を増強する部分および/または配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する部分、並びに、取り込み、分布、代謝または排出を向上させる部分、から選択される部分に結合されている、
請求項28?41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、1つまたはそれ以上の部分又は結合体に化学的に連結されている、請求項28?41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、介在ヌクレオチドによって共有結合されていない、請求項28?42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチド:の1つまたはそれ以上が、組み換え発現ベクターである、請求項28?44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記組み換え発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純疱疹ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記組み換え発現ベクターが、プラスミドベクター、コスミドベクター、ミニサークルベクター、ファージベクターおよびウイルスベクターからなる群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
前記Cas9ポリペプチドが、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインに1つまたはそれ以上の変異を含む、請求項28?48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記Cas9ポリペプチドが、対応する野生型Cas9タンパク質に比して、低いヌクレアーゼ活性を有する、請求項28?49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドを含有する組成物であって、
該DNA標的化RNAが
(a)標的DNA内の標的配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、DNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(b)Cas9タンパク質と相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含むタンパク質結合セグメント
を含み、
真核生物細胞内で、該標的DNAを、前記Cas9ポリペプチドと前記DNA標的化RNAを含む複合体と接触させることにより、前記Cas9ポリペプチドを標的DNAへと導くための組成物。
【請求項52】
DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドであって、
該DNA標的化RNAが
(a)標的DNA内の18?25ヌクレオチド長の標的配列に対して、100%の相補性を有するヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(b)Cas9タンパク質と相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含むタンパク質結合セグメント
を含む、前記DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項53】
DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドであって、
該DNA標的化RNAが
(a)標的DNA内の標的配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、DNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(b)Cas9タンパク質と相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含むタンパク質結合セグメント
を含み、
以下の(A)および(B)
(A)前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成すること:
(B)前記DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドが、ウイルス発現ベクターであること:
の少なくとも一つの特徴を有する、前記DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項54】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成する、請求項51に記載の組成物、または、請求項52または53に記載のDNA標的化RNAもしくは該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項55】
前記ハイブリダイズして前記タンパク質結合セグメントのdsRNAを形成するヌクレオチド間の相補性が70%よりも大きい、請求項51または54に記載の組成物、または、請求項52?54のいずれか一項に記載のDNA標的化RNAもしくは該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項56】
前記標的DNAが染色体DNAである、請求項51、54?55のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?55のいずれか一項に記載のDNA標的化RNAもしくは該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項57】
前記DNA標的化RNAが、修飾ヌクレオチド塩基、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間連結、修飾された糖部分、Locked核酸およびペプチド核酸の1つまたはそれ以上を含む、請求項51、54?56のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?56のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項58】
前記DNA標的化RNAが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、非リン酸ジエステル、ヘテロ原子、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミダート、アミノアルキルホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートの1つまたはそれ以上を含む非天然ヌクレオシド間連結を含む、請求項51、54?56のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?56のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項59】
前記DNA標的化RNAが、
(i)ホスホロチオエート、逆の極性を有する連結および脱塩基性ヌクレオシド連結から選択される、非天然ヌクレオシド間連結、
(ii)Locked核酸(LNA)、並びに
(iii)2’‐O‐メトキシメチル、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される修飾された糖部分、
の1つまたはそれ以上を含む、
請求項51、54?56のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?56のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項60】
前記DNA標的化RNAが、
2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される、修飾された糖部分の1つまたはそれ以上を含む、
請求項51、54?56のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?56のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項61】
前記DNA標的化RNAが、
5-メチルシトシン、5-ヒロドキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンの6-メチル誘導体、グアニンの6-メチル誘導体、アデニンの2-プロピル誘導体、グアニンの2-プロピル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、偽ウラシル(pseudouracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、5-ハロウラシル、5-ブロモウラシル、5-トリフルオロメチルウラシル、5-ハロシトシン、5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、5-置換ウラシル、5-置換シトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、置換フェノキサジンシチジン、カルバゾールシチジン、ピリドインドールシチジン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、N-2、N-6もしくはO-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンから選択される、核酸塩基の1つまたはそれ以上を含む、
請求項51、54?56のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?56のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項62】
前記DNA標的化RNAが、
ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、リン脂質、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、色素、クマリン、取り込みを増強する部分、分解への耐性を増強する部分および/または配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する部分、並びに、取り込み、分布、代謝または排出を向上させる部分、から選択される部分に結合されている、
請求項51、54?61のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?61のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項63】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、1つまたはそれ以上の部分又は結合体に化学的に連結されている、請求項51、54?61のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項52?61のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA。
【請求項64】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、介在ヌクレオチドによって共有結合されていない、請求項51、54?62のいずれか一項に記載の組成物、請求項52?62のいずれか1項に記載のDNA標的化RNA、または請求項52?56のいずれか一項に記載の、前記DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド。
【請求項65】
1つまたはそれ以上の核酸であって、
(a)DNA標的化RNAをコードする、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を含み、該DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の標的配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント、および
(ii)Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAであり、
前記1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列は、真核生物細胞において機能的な1つまたはそれ以上のプロモーターに作動可能に連結しており、並びに、
(b)Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、真核生物細胞において機能的なプロモーターに作動可能に連結している、ヌクレオチド配列、
を含んでもよい、
前記1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項66】
前記核酸は1つまたはそれ以上の組み換え発現ベクターである、請求項65に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項67】
前記1つまたはそれ以上の組み換え発現ベクターが、1つまたはそれ以上のウイルスベクターである、請求項66に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項68】
前記1つまたはそれ以上のウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純疱疹ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項67に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項69】
前記1つまたはそれ以上の組み換え発現ベクターが、プラスミドベクター、コスミドベクター、ミニサークルベクター、ファージベクターおよびウイルスベクターからなる群から選択される、請求項66に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項70】
前記Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に共有結合的に連結された、タンパク質形質導入ドメインをコードし、ここで、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの前記真核生物細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項65?69のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項71】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成する、請求項65?70のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項72】
前記ハイブリダイズして前記タンパク質結合セグメントのdsRNAを形成するヌクレオチド間の相補性が70%よりも大きい、請求項65?71のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項73】
前記標的DNAが染色体DNAである、請求項65?72のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項74】
前記Cas9ポリペプチドが、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインに1つまたはそれ以上の変異を含む、請求項65?73のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項75】
前記Cas9ポリペプチドが、対応する野生型Cas9タンパク質に比して、低いヌクレアーゼ活性を有する、請求項65?74のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸。
【請求項76】
キットであって、
(a)Cas9ポリペプチドまたは該Cas9ポリペプチドをコードする核酸、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上の核酸を含み、
前記DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、該dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAであり、
(a)および(b)は単一のまたは別々の容器中に存在する、
前記キットであって、
真核生物細胞内で、該標的DNAを、前記Cas9ポリペプチドと前記DNA標的化RNAを含む複合体と接触させることにより、前記Cas9ポリペプチドを標的DNAへと導くためのキット。
【請求項77】
キットであって、
(a)Cas9ポリペプチドまたは該Cas9ポリペプチドをコードする核酸、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上の核酸を含み、
前記DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の18?25ヌクレオチド長の標的配列に対して、100%の相補性を有するヌクレオチドを含むDNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、該dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAであり、
(a)および(b)は単一のまたは別々の容器中に存在する、
前記キット。
【請求項78】
キットであって、
(a)Cas9ポリペプチドまたは該Cas9ポリペプチドをコードする核酸、並びに
(b)DNA標的化RNA、または該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上の核酸を含み、
前記DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメントであって、該標的DNAが植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNA標的化セグメント、および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、該dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNAであり、
(a)および(b)は単一のまたは別々の容器中に存在する、
前記キットであり、
以下の(A)および(B)
(A)前記Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチド:の1つまたはそれ以上が、ウイルス発現ベクターであること:
(B)前記Cas9ポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端に、タンパク質形質導入ドメインが共有結合的に連結されており、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進すること:
の少なくとも一つの特徴を有する、前記キット。
【請求項79】
前記標的DNAが染色体DNAである、請求項76?78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
前記Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む前記核酸、および前記DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む前記1つまたはそれ以上の核酸:の1つまたはそれ以上が、組み換え発現ベクターである、請求項76?79のいずれか一項に記載のキット。
【請求項81】
前記組み換え発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純疱疹ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
前記組み換え発現ベクターが、プラスミドベクター、コスミドベクター、ミニサークルベクター、ファージベクターおよびウイルスベクターからなる群から選択される、請求項80に記載のキット。
【請求項84】
タンパク質形質導入ドメインが、前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に共有結合的に連結されており、ここで、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの細胞の基質から小器官内への移行を促進する、請求項76?83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項85】
前記DNA標的化RNAが、修飾ヌクレオチド塩基、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間連結、修飾された糖部分、Locked核酸およびペプチド核酸の1つまたはそれ以上を含む、請求項76?84のいずれか一項に記載のキット。
【請求項86】
前記DNA標的化RNAが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、非リン酸ジエステル、ヘテロ原子、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミダート、アミノアルキルホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートの1つまたはそれ以上を含む非天然ヌクレオシド間連結を含む、請求項76?84のいずれか一項に記載のキット。
【請求項87】
前記DNA標的化RNAが、
(i)ホスホロチオエート、逆の極性を有する連結および脱塩基性ヌクレオシド連結から選択される、非天然ヌクレオシド間連結、
(ii)Locked核酸(LNA)、並びに
(iii)2’‐O‐メトキシメチル、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される修飾された糖部分、
の1つまたはそれ以上を含む、
請求項76?84のいずれか一項に記載のキット。
【請求項88】
前記DNA標的化RNAが、
2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される、修飾された糖部分の1つまたはそれ以上を含む、
請求項76?84のいずれか一項に記載のキット。
【請求項89】
前記DNA標的化RNAが、
5-メチルシトシン、5-ヒロドキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンの6-メチル誘導体、グアニンの6-メチル誘導体、アデニンの2-プロピル誘導体、グアニンの2-プロピル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、偽ウラシル(pseudouracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、5-ハロウラシル、5-ブロモウラシル、5-トリフルオロメチルウラシル、5-ハロシトシン、5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、5-置換ウラシル、5-置換シトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、置換フェノキサジンシチジン、カルバゾールシチジン、ピリドインドールシチジン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、N-2、N-6もしくはO-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンから選択される、核酸塩基の1つまたはそれ以上を含む、
請求項76?84のいずれか一項に記載のキット。
【請求項90】
前記DNA標的化RNAが、
ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、リン脂質、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、色素、クマリン、取り込みを増強する部分、分解への耐性を増強する部分および/または配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する部分、並びに、取り込み、分布、代謝または排出を向上させる部分、から選択される部分に結合されている、
請求項76?89のいずれか一項に記載のキット。
【請求項91】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、1つまたはそれ以上の部分又は結合体に化学的に連結されている、請求項76?89のいずれか1項に記載のキット。
【請求項92】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、介在ヌクレオチドによって共有結合されていない、請求項76?90のいずれか1項に記載のキット。
【請求項93】
前記Cas9ポリペプチドが、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインに1つまたはそれ以上の変異を含む、請求項76?92のいずれか一項に記載のキット。
【請求項94】
前記Cas9ポリペプチドが、対応する野生型Cas9タンパク質に比して、低いヌクレアーゼ活性を有する、請求項76?93のいずれか一項に記載のキット。
【請求項95】
患者の治療的な処置方法において用いるための、請求項28?64のいずれか一項に記載の組成物、請求項52?64のいずれか一項に記載のDNA標的化RNA、請求項52?56、64のいずれか一項に記載の、前記DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチド、請求項65?75のいずれか一項に記載の1つまたはそれ以上の核酸、または請求項76?94のいずれか一項に記載のキット。
【請求項96】
遺伝子改変された真核生物細胞であって、
1つまたはそれ以上の
(a)DNA標的化RNAおよび/または該DNA標的化RNAをコードする核酸であって、該DNA標的化RNAは、
(i)標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント、および
(ii)Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、該dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む前記タンパク質結合セグメント
を含む単一分子DNA標的化RNA、並びに、
(b)前記Cas9ポリペプチドおよび/またはCas9ポリペプチドをコードする核酸
を含む前記遺伝子改変された真核生物細胞であって、
インビボのヒト細胞ではなく、ヒト生殖細胞ではなく、およびヒト胚細胞ではない、前記遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項97】
前記2つの相補的な一続きのヌクレオチドは、ハイブリダイズして8?15塩基対または15?18塩基対を形成する、請求項96に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項98】
該ハイブリダイズして該タンパク質結合セグメントのdsRNAを形成するヌクレオチド間の相補性が70%よりも大きい、請求項96または97に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項99】
前記標的DNAが前記真核生物細胞の染色体DNAである、請求項96?98のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項100】
タンパク質形質導入ドメインが、前記Cas9ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に共有結合的に連結されており、ここで、前記タンパク質形質導入ドメインは、前記Cas9ポリペプチドの細胞基質から細胞小器官内への移行を促進する、請求項96?99のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項101】
前記DNA標的化RNAが、修飾ヌクレオチド塩基、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間連結、修飾された糖部分、Locked核酸およびペプチド核酸の1つまたはそれ以上を含む、請求項96?100のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項102】
前記DNA標的化RNAが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、非リン酸ジエステル、ヘテロ原子、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミダート、アミノアルキルホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートの1つまたはそれ以上を含む非天然ヌクレオシド間連結を含む、請求項96?100のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項103】
前記DNA標的化RNAが、
(i)ホスホロチオエート、逆の極性を有する連結および脱塩基性ヌクレオシド連結から選択される、非天然ヌクレオシド間連結、
(ii)Locked核酸(LNA)、並びに
(iii)2’‐O‐メトキシメチル、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される修飾された糖部分、
の1つまたはそれ以上を含む、
請求項96?100のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項104】
前記DNA標的化RNAが、
2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’‐O‐メチルおよび2’‐フルオロから選択される、修飾された糖部分の1つまたはそれ以上を含む、
請求項96?100のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項105】
前記DNA標的化RNAが、
5-メチルシトシン、5-ヒロドキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンの6-メチル誘導体、グアニンの6-メチル誘導体、アデニンの2-プロピル誘導体、グアニンの2-プロピル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、偽ウラシル(pseudouracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、5-ハロウラシル、5-ブロモウラシル、5-トリフルオロメチルウラシル、5-ハロシトシン、5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、5-置換ウラシル、5-置換シトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、置換フェノキサジンシチジン、カルバゾールシチジン、ピリドインドールシチジン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、N-2、N-6もしくはO-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンから選択される、核酸塩基の1つまたはそれ以上を含む、
請求項96?100のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項106】
前記DNA標的化RNAが、
ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、リン脂質、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、色素、クマリン、取り込みを増強する部分、分解への耐性を増強する部分および/または配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する部分、並びに、取り込み、分布、代謝または排出を向上させる部分、から選択される部分に結合されている、
請求項96?105のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項107】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、1つまたはそれ以上の部分又は結合体に化学的に連結されている、請求項96?105のいずれか1項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項108】
前記DNA標的化RNAが2つのRNA分子を含み、そのそれぞれが、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的な一続きのヌクレオチドの一方を含み、該2つのRNA分子は、介在ヌクレオチドによって共有結合されていない、請求項96?106のいずれか1項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項109】
前記Cas9ポリペプチドが、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインに1つ以上の変異を含む、請求項96?108のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項110】
前記Cas9ポリペプチドが、対応する野生型Cas9タンパク質に比して、低いヌクレアーゼ活性を有する、請求項96?109のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。
【請求項111】
前記遺伝子改変された真核生物細胞が、インビボのヒト細胞ではない、請求項96?110のいずれか一項に記載の遺伝子改変された真核生物細胞。」

なお、「第3 特許異議申立理由の概要」以降では、「特許第6692856号の請求項1?111に係る特許」を「本件特許」ということとする。
また、請求項1に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」、請求項95に記載された事項により特定される発明を「本件発明95」などと、請求項nに記載された事項により特定される発明を、その請求項の番号を用いて「本件発明n」といい、さらに、請求項1?111に記載された事項により特定される発明全体を「本件発明」という。


第3 異議申立理由の概要
1 異議申立理由1(甲1又は甲2に基づく新規性進歩性欠如)
(1)本件発明の優先日について
本件特許は、2012年5月25日、2012年10月19日、2013年1月28日及び2013年2月15日を優先日とする優先権を主張するものである(以下、各優先権を、優先日の早い順に「本件優先1」、「本件優先2」などといい、各優先日を「本件優先1の優先日」、「本件優先2の優先日」などといい、各優先権書類を「本件優先1の明細書」、「本件優先2の明細書」などという。)。
しかし、本件優先1の明細書及び本件優先2の明細書には、本件特許明細書に記載の実施例2に相当する部分(Cas9ポリペプチド及びDNA標的化RNAを用いた標的DNA修飾が真核細胞で作用することを実験的に示した部分)が記載されていないから、当該部分については、本件優先1及び本件優先2の主張の利益を享受することができない。
したがって、本件発明の新規性及び進歩性の判断の基準日は、早くとも本件優先3の優先日である2013年1月28日である。

(2)甲1に基づく新規性進歩性欠如
本件発明1、2、5、6、14?16、19?22、25?29、32?36、44、45、48、51、52、55、56、64?66、69、72及び73は、本件優先3の優先日(2013年1月28日)より前に頒布又は公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本件発明1、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64、66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95は、甲1に記載された発明に基づいて、本件優先3の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)甲2に基づく新規性進歩性欠如
本件発明1、2、6、15、16、19?22、25?29、33?36、45、48、51、52、55、56、65、66、69及び73は、本件優先3の優先日(2013年1月28日)より前に頒布又は公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本件発明1、6?12、15、16、19?22、25?29、33?42、45、48、51、52、56?61、66、69、73、76?80、83?89及び95は、甲2に記載された発明に基づいて、本件優先3の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。

2 異議申立理由2(甲3に基づく進歩性欠如)
本件発明1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95は、本件優先1の優先日(2012年 5月25日)より前に頒布又は公衆に利用可能となった甲3に記載された発明、並びに甲4、5及び7?13に記載された事項に基づいて、本件優先1の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。

3 異議申立理由3(甲6出願に基づく拡大先願)
本件発明1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた甲6出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が甲6出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が甲6出願の出願人と同一でもないので、同法29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法184条の13参照)。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。

4 異議申立理由4(サポート要件違反、実施可能要件違反)
本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、真核細胞におけるゲノム編集が裏付けを伴って記載されているとはいえず、本件発明1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、これらの発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。また、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が、これらの発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、同法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、これらの発明に係る特許は、同法113条4号の規定により取り消されるべきものである。


第4 証拠
申立人が提出した甲1?甲19は次のとおりである。
甲1:Congら, 2013, Science, 339(6121):819-823
& Supplementary Materials
甲2:Maliら, 2013, Science, 339(6121):823-826
& Supplementary Materials
甲3:Sapranauskasら, 2011, Nucleic Acids Res.,
39(21):9275-9282 & Supplementary Data
甲4:Deltchevaら, 2011, Nature, 471(7340):602-607
& Supplementary Information
甲5:iGEM 2011南北アメリカ大会でアリゾナ州立大学(ASU)により
発表されたポスター及びそのスケジュール
甲6:特表2015-510778号公報
甲7:国際公開第2011/072246号公報
甲8:Inoueら, 1987, Nucleic Acids Res., 15(15):6131-6148
甲9:Ruckmanら, 1998, J Biol Chem, 273(32):20556-20567
甲10:Matsukuraら, 1989, Proc Natl Acad Sci USA,
86(11):4244-4248
甲11:Steinら, 1988, Nucleic Acids Res 16(8): 3209-3221
甲12:Matsukuraら, 1987, Proc Natl Acad Sci USA,
84(21): 7706-7710
甲13:Inoue, 2016, Drug Delivery System, 31-1; 10-23
甲14:Jinekら, 2013, eLIFE, 2:e00471
甲15:Jinekら, 2012, Science, 337(6096):816-821
甲16:Catalyst Magazine, 2014, 9(1):18-20
甲17:米国仮特許出願第61/613,373号明細書
甲18:Doudnaら, 2014, Science, 28;346(6213):1258096
甲19:Nishimasuら, 2014, Cell, 156(5):935-949

また、申立人が提出したものではないが、異議申立理由の判断に必要と認められるため、当審で参照する文献A?文献Cは次のとおりである。
文献A:米国仮特許出願第61/652,086号明細書
(本件優先1の明細書)
文献B:米国仮特許出願第61/613,373号明細書
(甲6優先1の明細書)
文献C:米国仮特許出願第61/625,420号明細書
(甲6優先2の明細書)


第5 当審の判断
1 異議申立理由1(甲1又は甲2に基づく新規性進歩性欠如)について
(1)本件発明の優先日について
ア 申立人の主張
申立人は、異議申立理由1の前提として、本件優先1の明細書及び本件優先2の明細書には、本件特許明細書に記載の実施例2に相当する部分(Cas9ポリペプチド及びDNA標的化RNAを用いた標的DNA修飾が真核細胞で作用することを実験的に示した部分)が記載されていないから、当該部分については、本件優先1及び本件優先2の主張の利益を享受することができず、本件発明の新規性及び進歩性の判断の基準日は、早くとも本件優先3の優先日である2013年1月28日である旨主張するので、以下で検討する。

イ 本件優先1の明細書の記載事項
本件優先1の明細書には、次の事項が記載されている(なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。)。
(A-1)「[請求項54] 標的DNAの部位特異的修飾の方法であって、前記標的DNAを、
(i)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNA、又はそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに
(ii)部位特異的酵素活性を示す部位特異的修飾ポリペプチド、又はそれをコードするポリヌクレオチド
を含む複合体と接触させることを含む、上記方法。

[請求項56] 前記標的DNAがインビトロにおける染色体の一部である、請求項54に記載の方法。
[請求項57] 前記標的DNAがインビボにおける染色体の一部である、請求項54に記載の方法。
[請求項58] 前記標的DNAが細胞内の染色体の一部である、請求項54に記載の方法。

[請求項61] 前記細胞が、単細胞真核生物である、請求項58に記載の方法。

[請求項65] 前記細胞が、植物細胞である、請求項58に記載の方法。
[請求項66] 前記細胞が、動物細胞である、請求項58に記載の方法。
[請求項67] 前記細胞が、脊椎動物細胞である、請求項66に記載の方法。
[請求項68] 前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項67に記載の方法。
[請求項69] 前記細胞が、ヒト細胞である、請求項68に記載の方法。」

(A-2)「[0004] 図1A及び1Bは、二つの例示的な主題のDNA標的化RNAの略図を提供し、それぞれ、部位特異的修飾ポリペプチド及び標的DNAに関連する。DNA標的化RNAは、一本鎖の「DNA標的化セグメント」及び「タンパク質結合セグメント」を含み、また、二本鎖RNA伸長部分を含む。(A)DNA標的化RNAは、2つの別々のRNA分子(「二重分子」又は「二分子」DNA標的化RNAという。)を含み得る。二重分子DNA標的化RNAは「ターゲッターRNA」及び「活性化RNA」を含む。(B)DNA標的化RNAは、単一のRNA分子(「単一分子」DNA標的化RNAという。)を含み得る。単一分子DNA標的化RNAは「リンカーヌクレオチド」を含む。」

(A-3)「[0007] 図4は、Cas9/Csn1部位特異的修飾ポリペプチド及びDNA標的化RNAを使用して導入された二本鎖DNA切断による標的DNA編集を図示する。」

(A-4)「DNA標的化RNA
[0073] 本開示は、標的DNA内の特定の標的配列に対し、結合したポリペプチド(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド)の活性を向ける、DNA標的化RNAを提供する。主題のDNA標的化RNAは、第一セグメント(本明細書では「DNA標的化セグメント」又は「DNA標的化配列」とも称される。)及び第二セグメント(本明細書では「タンパク質結合セグメント」又は「タンパク質結合配列」とも称される。)を含む。
DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント
[0074] 主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む。言い換えれば、主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的に標的DNAと相互作用する。従って、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変動してもよく、DNA標的化RNAおよび標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のいかなる所望の配列にもハイブリダイズするように、(例えば、遺伝子操作によって)修飾することができる。

DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメント
[0076] 主題のDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する。主題のDNA標的化RNAは、結合したポリペプチドを上記のDNA標的化セグメントを介して標的DNA内の特定のヌクレオチド配列に導く。主題のDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2本のヌクレオチド鎖を含む。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RNA二本鎖(dsRNA)を形成する(図1Aおよび図1Bを参照)。

[0083] 例示的な二分子DNA標的化RNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」又は「標的化RNA」又は「crRNA」又は「crRNAリピート」)分子及び対応するtracrRNA様(「トランス活性化CRISPR RNA」又は「活性化RNA」又は「tracrRNA」)分子を含む(図1A参照)。crRNA様分子(標的化RNA)は、DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)及びDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖の半分を形成するヌクレオチド鎖(「二本鎖形成セグメント」)の両方を含む。対応するtracrRNA様分子(活性化RNA)は、DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖のもう半分を形成するヌクレオチド鎖(二本鎖形成セグメント)を含む(図1A参照)。…したがって、crRNA様分子及びtracrRNA様分子は(対応する対として)ハイブリダイズしてDNA標的化RNAを形成する(図1A参照)。所与のcrRNA分子又はtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が存在する種類に特有である。様々なcrRNA及びtracrRNAが図6?9の対応する相補的対合に示されている。主題の二重分子DNA標的化RNAは、いかなる対応するcrRNA及びtracrRNA対を含んでいてもよい。

【0087】 例示的な単一分子DNA標的化RNAは、ハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成する2つの相補的なヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、単一分子DNA標的化RNAの2つの相補的なヌクレオチド鎖の一方(又はその配列をコードするDNA)は、図6、8及び9に示される活性化RNA(tracrRNA)分子のうちの1つに対して、一連の少なくとも25個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも約60%同一である。例えば、単一分子DNA標的化RNAの2本の相補的なヌクレオチド鎖の一方(又はその配列をコードするDNA)は、図6、8及び9に示されるtracrRNA配列のうちの1つに対して、一連の少なくとも25個の連続ヌクレオチドにわたって、少なくとも約65%同一、…少なくとも約99%同一又は100%同一である。」

(A-5)「部位特異的修飾ポリペプチド
[0089] 主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的修飾ポリペプチドは複合体を形成する。DNA標的化RNAは、(上記で言及したように)標的DNAの配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むことにより複合体に標的特異性を与える。複合体の部位特異的修飾ポリペプチドは部位特異的活性を与える。言い換えれば、部位特異的修飾ポリペプチドは、それがDNA標的化RNAの少なくともタンパク質結合セグメントと結合することにより、DNA配列(例えば、染色体配列または染色体外配列、例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列等)に誘導される(上記)。

例示的な部位特異的修飾ポリペプチド
[0096] いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図2に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7?166若しくは731?1003に対して、又は図12に示されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。」

(A-6)「実施例1:
[00248] ストレプトコッカス ピオゲネスのCas9/Csn1エンドヌクレアーゼの配列に基づいた組換えDNA標的化ポリペプチドは、大腸菌で異種発現され、この分野の標準操作法によるアフィニティー、イオン交換及びゲルろ過クロマトグラフィー工程の組み合わせによって精製された。…標的化RNAは、標準的なプロトコールに従って、化学合成(二重分子DNA標的化RNAのターゲッター及び活性化セグメントRNA)又はT7RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写()によって得られた。標的DNAは、個々の一本鎖の化学合成によって得られた。…
[00249] DNA切断は、上記DNA標的化ポリペプチド(最終濃度500 nM)を、DNA標的化RNA(濃度500 nM)及び標的DNA(10 nM)と一緒に、…切断バッファー中で総量10μlでインキュベートすることにより行われた。二重分子DNA標的化RNAによって誘導される反応では、ターゲッターRNAと活性化RNAを等モル量で混合し、95℃で1分間加熱し、室温まで徐冷してアニーリングさせてから、DNA標的化ポリペプチドに添加した。 DNA標的化RNA /ポリペプチド複合体は、切断バッファー中で室温で15分間インキュベートすることにより構築された。続いて、構築された複合体を標的DNAに添加し、37°Cで1時間インキュベートした。20μlのホルムアミドクエンチバッファー…の添加により反応を止め、続いて12%ポリアクリルアミド、7M尿素変性ゲルで分離した。切断物は、標準的な手順に従ってホスホイメージングによって視覚化された。
[00250] 結果を図3及び5に示す。
[00251] 図3A?Cは、DNA標的化RNAにより方向付けられた、部位特異的修飾ポリペプチド(ストレプトコッカス ピオゲネスのCas9/Csn1タンパク質によって例示される)による標的DNA切断を示す。(A)放射性標識された標的DNAは、Cas9/Csn1及び(図示された)様々なDNA標的化RNA種の存在下でインキュベートされた。切断産物は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離され、ホスホイメージングによって視覚化された。(B)部位特異的修飾ポリペプチドCas9/Csn1と組み合わせて使用されたDNA標的化RNAの概略図。テストされた単一分子DNA標的化RNAの1つ(RNAキメラA)は効率的なターゲットDNA切断をサポートしたが、他の単一分子DNA標的化RNA(RNAキメラB)はそうではなかった。(C)DNA標的化RNAの配列とDNAの標的の概略図。
[00252]図5A及び5Bは、標的DNAの切断を示している。図5A.様々な異なる種に由来する部位特異的修飾ポリペプチドCas9/Csn1(配列は図12に示される。)とDNA標的化RNAとを用いた標的DNA切断。この実験は、様々な部位特異的修飾ポリペプチドCas9/Csn1が、同じDNA標的化RNAを利用できることを示す。B.図5Aで用いたDNA標的化RNAの概略図。

(A-7)「



(A-8)「



(A-9)「



(A-10)「



(A-11)「



ウ 当審の判断
摘記事項(A-1)からみて、本件優先1の明細書には、DNA標的化RNAと部位特異的修飾ポリペプチドとを用いて、標的DNAの部位特異的修飾を行うこと、当該標的DNAの部位特異的修飾を、単細胞真核生物、植物細胞、動物細胞、ヒト細胞などの細胞内の染色体に対して行うことが記載されている。
そして、摘記事項(A-2)、(A-4)及び(A-7)からみて、本件優先1の明細書には、DNA標的化RNAが、標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖のDNA標的化セグメント、部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する一本鎖のタンパク質結合セグメント、及び二本鎖RNA伸長部分を含むことが記載されている。また、上記摘記事項からみて、本件優先1の明細書には、二重分子及び単一分子のDNA標的化RNAが記載されており、二重分子DNA標的化RNAはcrRNA様分子及び対応するtracrRNA様分子を含み、両者がハイブリダイズしてDNA標的化RNAを形成し、単一分子DNA標的化RNAは2つの相補的なヌクレオチド鎖を含み、その一方はtracrRNA分子のうちの1つに対して、一連の少なくとも25個の連続ヌクレオチドにわたって約60?100%同一であり、当該2つの相補的なヌクレオチド鎖はハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成することが記載されている。さらに、摘記事項(A-4)及び(A-7)からみて、本件優先1の明細書には、DNA標的化セグメントがcrRNA様分子を含み、タンパク質結合セグメントが対応するtracrRNA様分子を含むものであることが記載されていると認める。
また、摘記事項(A-5)及び(A-7)からみて、本件優先1の明細書には、部位特異的修飾ポリペプチドが、DNA標的化RNAと複合体を形成すること、並びにDNA標的化RNAが標的特異性を、及び部位特異的修飾ポリペプチドが部位特異的活性を当該複合体に与えることが記載されている。そして、上記摘記事項(A-5)及び(A-8)からみて、本件優先1の明細書には、部位特異的修飾ポリペプチが、図2に示されるストレプトコッカス ピオゲネスのCas9/Csn1などに基づくものであることが記載されている。
さらに、摘記事項(A-6)、(A-9)及び(A-11)からみて、本件優先1の明細書には、部位特異的修飾ポリペプチドとしてストレプトコッカス ピオゲネスのCas9/Csn1タンパク質を用いて、二重分子DNA標的化RNA又は単一分子DNA標的化RNAと組み合わせて、実際に標的DNAを切断したことが記載されているといえる。
加えて、摘記事項(A-3)及び(A-10)からみて、本件優先1の明細書には、標的DNAの切断後に、非相同性末端結合(NHEJ)及び相同組み換え修復(HDR)を利用して標的DNAを編集することが記載されている。
以上からみて、本件優先1の明細書には、crRNA様分子を含むDNA標的化セグメント及び対応するtracrRNA様分子を含むタンパク質結合セグメントを含む、二重分子又は単一分子のDNA標的化RNAと、部位特異的修飾ポリペプチドであるストレプトコッカス ピオゲネスのCas9/Csn1タンパク質すなわちCas9タンパク質との複合体を用いて、実際に標的DNAを切断したことが記載されているとともに、そのような複合体を用いて、植物細胞、動物細胞、単細胞真核生物の染色体DNAを切断し、それに続くNHEJやHDRを利用して、当該染色体DNAを修飾することが明記されているといえる。
ここで、本件優先1の明細書には、Cas9タンパク質とDNA標的化RNAとの複合体が真核細胞で作用することを実際に示した本件特許の明細書の実施例2に相当する記載はなく、当該実施例2で用いられたCas9タンパク質に核局在シグナル(NLS)を融合させることも記載されていない。また、本件優先1の明細書には、当該複合体が標的DNAを切断するときに、標的部位の位置決定に必須の構成であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についての記載もない。
しかし、分子量が40kDa以上のタンパク質の核内移行にNLSが必要であることは本件優先1の優先日前の技術常識であり(DAVIS, L. I., Annu. Rev. Biochem., 1995, Vol.64, pp. 865-869の866頁21?23行)、ある程度大きな分子量を有するタンパク質等を真核細胞の核内に輸送するためにNLSを融合させることも本件優先1の優先日前の周知技術である。また、Cas9タンパク質を用いる系によるDNA切断にPAMが必要であることも本件優先1の優先日前の技術常識であり、本件優先1の明細書の実施例で実際に用いられているストレプトコッカス ピオゲネスの系を含む、Cas9タンパク質を用いる種々の系のPAMの配列も、本件優先1の優先日前に知られていた(甲3の9276頁左欄3?29行、9279頁左欄3?29行、図3、及びMOJICA, F. J. et al., Microbiology, 2009, Vol.155, pp.733-740の735頁左欄25?55行、736頁左欄7行?右欄4行、図1、S2、表S3)。
そうすると、植物細胞、動物細胞、単細胞真核生物などの真核細胞内でCas9タンパク質とDNA標的化RNAとの複合体を用いて標的DNAを修飾することに係る本件発明は、本件優先1の明細書に文言上記載されていただけではなく、その記載及び本件優先1の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が実施をすることができたといえ、本件優先1の明細書に記載した事項の範囲内のものであるといえる。

エ 申立人の主張について
申立人は、本件優先1及び2の明細書のいずれにも、CRISPR/Cas9系がヒト細胞で作用することを実験的に示した本件実施例2に相当する部分は記載されておらず、インビトロ(無細胞系)での部位特異的な標的DNAの切断しか実証されていないところ、インビトロとインビボの環境の違いや、原核細胞と真核細胞の核膜の有無等や、単一分子のDNA標的化RNAと二重分子のDNA標的化RNAの構造の違いや、甲14、甲16などで示された本件特許の発明者であるダウドナ氏の言葉を列挙した上で、本件発明の新規性及び進歩性の判断の基準日は、早くとも本件優先3の優先日である2013年1月28日である旨主張する。
しかし、申立人が列挙する上記事項は、本件優先1の明細書に記載されたCas9タンパク質及びDNA標的化RNAを真核細胞に適用する際に考慮すべき事項や、本件特許の発明者の主観に係る事項を示すに留まるものであって、本件優先1の優先日当時、本件優先1の明細書に記載されたCas9タンパク質及びDNA標的化RNAを真核細胞に適用することが技術的に不可能であったことを示すものでも、当該適用の際に当業者の過度の負担を実際に伴うものであったことを示すものでもない。そして、前記ウで検討したとおり、本件発明は、本件優先1の明細書に記載した事項の範囲内のものであるというべきであるから、申立人の上記主張は採用できない。

オ 小括
以上からみて、本件発明は、本件優先1の明細書に記載した事項の範囲内のものであり、本件優先1の優先権主張の利益を享受できるから、本件発明についての新規性進歩性等の判断基準日は、本件優先1の優先日である2012年5月25日となる。

(2)甲1及び甲2に基づく新規性進歩性欠如について
前記(1)で検討したとおり、本件発明は、本件優先1の優先権主張の利益を享受できるから、本件発明についての新規性進歩性等判断基準日は、本件優先1の優先日である。
これに対して、甲1及び甲2は、本件優先1の優先日である2012年5月25日よりも後の2013年1月3日に頒布又は公衆に利用可能となったものであるから、本件発明が新規性及び進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
したがって、特許異議申立理由1は理由がない。

2 特許異議申立理由2(甲3に基づく進歩性欠如)について
(1)甲3の記載事項
本件優先1の優先日よりも前に頒布又は公衆に利用可能となった甲3は「ストレプトコッカス サーモフィルスのCRISPR/Cas系は大腸菌に免疫力を提供する」と題する学術論文であって、以下の事項が記載されている(なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。また、下線は当審により付与した。)。

(3-1)「CRISPR/CAS適応免疫システムは、ファージや、古細菌及び細菌のプラスミドに対する抵抗力を提供する。CRISPR遺伝子座は、侵入してきた遺伝子要素由来の短いDNA配列を統合し、その後、適合する核酸にさらされた際に、低分子RNAを介した干渉を行う。…ここでは、S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系が大腸菌に移植され、プラスミドによる形質転換やファージの感染に対して異種防御を行うことができることを示す。その結果、干渉は配列特異的であり、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の近傍またはPAM内の変異により、プラスミドがCRISPRでコード化された免疫から逃れることができることを示す。また、cas9がCRISPRによる干渉に必要な唯一のcas遺伝子であることを立証する。…これらの結果から、活性を有するCRISPR/Cas系は、遠縁の属間で移植され得、侵入した核酸に対して異種の干渉を与えることができることがわかった。これを利用して、ファージの攻撃に対してより頑強な株や、プラスミドにコードされた望ましくない遺伝要素を取り込み拡散する可能性が低い安全な微生物を開発することができる。」(要旨)

(3-2)「本研究では、機能的なCRISPR/Cas系を異種の細菌属にクローニングし、異種発現させたことを初めて報告する。S.サーモフィルスのCRISPR3系が、大腸菌でのプラスミドによる形質転換を防ぐことを実証した。また、プロトスペーサー配列とPAM配列の両方が免疫に必要であるが、PAMから離れた場所にある変異は許容されることを示した。さらに、プラスミドDNAの干渉にはCas9だけで十分であることを実験的に証明し、McrA/HNH-及びRuvC/RNaseH-のヌクレアーゼドメインの重要性を変異解析によって示した。」(緒言の最終段落)

(3-3)「


図2 S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系は、大腸菌でのプラスミドによる形質転換に対する免疫力を提供する。A)CRISPR3/Cas系のクローニングと、干渉アッセイ用プラスミドの構築を模式的に示したもの。ストレプトコッカス サーモフィルスのCRISPR3/Cas系を大腸菌プラスミドpACYC184にクローニングした。pUC18プラスミドにプロトスペーサーとPAMを挿入して干渉アッセイ用プラスミドを得た。B)プラスミド形質転換干渉アッセイの模式図。S.サーモフィルスCRISPR3/Cas系を有する又は有さない、プラスミドpCRISPR3又はpACYC184のいずれかを有する大腸菌RR1受容株を、プロトスペーサー及びPAMを有するプラスミドpSP1及びpSP2、又はpUC18で形質転換した。C)大腸菌細胞でのS.サーモフィルスCRISPR3/Cas系によるプラスミド形質転換の妨害。形質転換効率は、プラスミドDNAのナノグラムあたりのcfuとして表した(平均±SD)。」(図2及びその脚注)

(3-4)「異種の大腸菌宿主におけるCRISPR3系の機能的活性を調べるために、プラスミドDNA形質転換アッセイを用いた(「材料と方法」の項を参照)。大腸菌のpACYC184と互換性のあるpUC18を用いて、CRISPR3アレイのスペーサーSP1及びSP2と同一のプロトスペーサー配列を含むpSP1及びpSP2(図2)を、プロトスペーサー配列の下流に対応するPAM 5′-TGGTG-3′とともに調製し(補足表S1)、pCRISPR3又はpACYC184のいずれかを保有するレシピエント大腸菌細胞におけるプラスミドの形質転換効率を試験した(図2B)。通常、LB培地(OD600=0.4)での大腸菌培養液1mlあたり1ngのプラスミドDNAを形質転換に用いた。pACYC184プラスミドを保有するレシピエント株をpSP1、pSP2又はpUC18を用いて形質転換した場合、形質転換体の数は10^(3)コロニー形成単位(cfu)を超えた(図2C)。しかし、pCRISPR3プラスミドを保有するレシピエント株を同じセットのプラスミドで形質転換したところ、pSP1及びpSP2プラスミドではコロニーは得られなかったが(図2C)、プロトスペーサーを欠くコントロールプラスミド(pUC18)では10^(3)cfuが得られた。これは、pCRISPR3プラスミドのスペーサーSP1及びSP2に対するCRISPRにコードされた特異的免疫の存在と一致する。興味深いことに、pUC18には、CRISPR3系のPAMに対応する5′-GGTG-3′配列が95個追加されているが、対応するプロトスペーサー配列はない。このことは、CRISPRにコードされた免疫が生じるために、プロトスペーサーと隣接するPAMの両方が必要であることと一致している。要するに、これらの結果は、異種のプラスミドpCRISPR3が、対応するプロトスペーサー及びPAMの両方を保有しているpSP1およびpSP2プラスミドの形質転換に干渉し、対照のpUC18プラスミドには干渉しないことを示す。」(9278頁「The CRISPR3/Cas system prevents plasmid transformation in E.coli」欄の28?35行)

(3-5)「グラム陽性菌であるS.サーモフィルス種のCRISPR3/Cas系をプラスミドにクローニングして、グラム陰性菌である大腸菌の宿主に移すことができることを、ここで初めて実験的に証明した。さらに、この異種システムは、一致するプロトスペーサー配列やPAMを持つプラスミドやファージが入ってきても耐性を発揮することを示している。この発見は、CRISPR/Cas系が、プロモーターやその他の制御シグナルが適合しない離れた種間の障壁を克服する移動可能な遺伝子カセットとして機能する可能性を示している。系統的に離れた宿主に機能的なCRISPR/Cas系を移すことに成功したことは、実用化、特に、細菌に、ウイルスやプラスミドに対するワクチンを接種するために、種間で活性型CRISPR/Cas系を移すことの実用化に向けた新たな可能性を開くものである。CRISPRでコード化された免疫が抗生物質耐性遺伝子を標的にできることを示す最近の結果(12)を考慮すると、抗生物質耐性遺伝子の取り込みと拡散に対する特定の種または株の免疫を強化するために、活性型CRISPR/Cas系を移すことに大きな関心が寄せられている。」(9281頁「Vaccination’ of E. coli against plasmids and phages by the heterologous CRISPR3/Cas system」最終段落)

(2)甲3発明
摘記事項(3-3)及び(3-4)からみて、甲3には、S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系をプラスミドpACYC184にクローニングしてプラスミドpCRISPR3を得たこと、CRISPR3アレイのスペーサー1及びスペーサー2と同一のプロトスペーサー1及び2のいずれかとPAMとをプラスミドpUC18に挿入して2種類の干渉アッセイ用プラスミドpSP1及びpSP2を得たこと、CRISPR3/Cas系を有するpCRISPR3又は当該系を有さないpACYC184のいずれかを有する大腸菌を、pSP1、pSP2又はpUC18で形質転換したことが記載されているとともに、pCRISPR3を有する大腸菌では、pSP1又はpSP2での形質転換が干渉された一方、pUC18での形質転換は干渉されなかったこと、pACYC184を有する大腸菌では、pSP1、pSP2及びpUC18いずれのプラスミドでの形質転換も干渉されなかったことが記載されている。
以上からみて、甲3には、S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系がクローニングされたプラスミドpCRISPR3が導入された大腸菌では、プロトスペーサーとPAMとが挿入されたプラスミドによる形質転換が干渉される、すなわち形質転換に対する免疫力が提供されることが具体的に記載されているといえるから、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系がクローニングされたプラスミドpCRISPR3を大腸菌に導入することにより、大腸菌に、プロトスペーサー及びPAMを有するプラスミドによる形質転換に対する免疫力を提供する方法。」

(3)本件発明1について
ア 甲3発明との対比
(ア)そのタイトル、摘記事項(3-2)及び(3-5)からみて、甲3は、CRISPR3/Cas系を、その由来となった細菌とは異種の細菌において、ファージやプラスミドに対するワクチンとして用いて、当該異種の細菌に、ファージの攻撃や望まないプラスミドによる形質転換に対する免疫力を提供することを主題とする文献であるといえる。
そして、そこから認定される甲3発明は、上述のとおり、細菌にとって異物というべきファージやプラスミドに対する免疫力を提供することに関する発明である。一方、本件発明1は、植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物という真核細胞内で標的DNAを修飾することに関する発明である。そして、発明の目的が、甲3発明はファージやプラスミドに対する免疫力の提供であるところ、本件発明1は細胞内標的DNAの修飾であり、また、発明の適用対象も、甲3発明は細菌(原核細胞)であるところ、本件発明1は真核細胞であるから、甲3発明は本件発明1と技術分野が関連しているとはいえず、甲3発明が本件発明1の技術分野における当業者が検討対象とする範囲内のものとはいえない。
したがって、甲3発明は、そもそも本件発明1と対比すべき、特許法29条1項3号の発明であるとはいえず、甲3発明を、本件発明1の進歩性を欠如することの根拠とすることはできないというべきである。
よって、本件発明1は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえないというべきである。

(イ)前記(ア)で検討したとおり、甲3発明を、本件発明1の進歩性を欠如することの根拠とすることはできないものの、仮に、本件発明1と甲3発明とを対比した場合は、以下のとおりである。
本件優先1の優先日当時の技術常識からみて、甲3発明の「S.サーモフィルスのCRISPR3/Cas系がクローニングされたプラスミドpCRISPR3」には、本件発明1でいう「Cas9ポリペプチド」をコードするDNAが含まれるとともに、「DNA標的化RNA」すなわち「標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント」及び「Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメント」を含むRNAをコードするDNAが含まれているといえ、また、当該タンパク質結合セグメントは、「ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する、2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含」んでいるといえる。そして、本件優先1の優先日当時の技術常識からみて、「Cas9ポリペプチド」と「DNA標的化RNA」とが複合体を形成することは明らかである。
また、本件優先1の優先日当時の技術常識からみて、甲3発明において、「プロトスペーサー及びPAMを有するプラスミドによる形質転換に対する免疫力」は、CRISPR3/Cas系により当該プロトスペーサーが切断されることにより発揮されるといえるから、甲3発明の「プロトスペーサー及びPAMを有するプラスミド」における「プロトスペーサー」が、本件発明1において、Cas9ポリペプチドとDNA標的化RNAとが形成する複合体が切断する「標的DNA」に一応相当するものであるといえる。
以上からみて、本件発明1と甲3発明とは、
「細胞内で標的DNAを複合体と接触させることを含み、
該複合体は、
(a)Cas9ポリペプチド並びに
(b)DNA標的化RNAであって、
(i)該標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント;および
(ii)前記Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する、2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む、該タンパク質結合セグメント
を含むDNA標的化RNA
を含む複合体であり、
該標的DNAは切断される、方法」
である点で一応一致し、次の相違点1及び2で相違する。
(相違点1)標的DNAを切断することにより、本件発明1は「標的DNAを修飾」するものであるのに対し、甲3発明は「大腸菌」に「免疫力を提供する」ものである点。
(相違点2)細胞が、本件発明1は「植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物であり、該細胞は、インビボのヒト細胞ではなく、ヒト生殖細胞ではなく、およびヒト胚細胞ではな」いと特定されているのに対し、甲3発明は「大腸菌」である点。

イ 判断
まず、相違点2について検討する。前記ア(ア)で検討したとおり、甲3は、CRISPR3/Cas系を、その由来となった細菌とは異種の細菌に導入することにより、ファージやプラスミドに対するワクチンとして用いて、当該異種の細菌に、ファージの攻撃や望まないプラスミドによる形質転換に対する免疫力を提供することができたことを報告する文献であって、CRISPR3/Cas系を導入する先は細菌にとどまり、それ以外の細胞におけるワクチンとして用いることは記載されてはおらず、そのようなことを示唆する記載もないから、甲3の記載からは、甲3発明を細菌以外の細胞に適用する動機付けを見出すことはできず、ましてや、原核生物である細菌とは大きく異なる真核細胞を選択する動機付けを見出すことはできない。
ここで、申立人が提出した甲4には、ストレプトコッカス ピオゲネスのCRISPR/Cas系におけるtracrRNAの役割を同定したことが記載されてはいるものの、CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することは記載も示唆もされていない。また、申立人が提出した甲5には、CRISPR/Cas系を遺伝子工学技術に利用することが例示されてはいるものの、CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを、甲3?5の記載から見出すことはできない。したがって、相違点2を容易想到とはいえないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲3?5の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、要するに、ゲノム編集を哺乳類細胞、特にヒト細胞で行う方法の開発の重要性は本件優先1の優先日において周知であり(例えば、甲7)、かかる開発に対して強い動機付けがあったといえるところ、甲3に開示されたpCRISPR3プラスミドにおいて、プロモーターを真核細胞での発現に適したものに置き換えたものを真核細胞に導入することで、大腸菌で実証されたのと同様にプラスミド干渉が生じることは、当然に期待されるものであったから、本件発明1は、甲3発明並びに甲4、5及び7の記載から、本件優先1の優先日前に当業者が容易に想到し得るものであると主張する。
しかし、上述のとおり、そもそも甲3は細菌の免疫を異種の細菌に移入することができたことを報告する文献であってゲノム編集とは関係がないのだから、たとえゲノム編集を哺乳類細胞で行う方法の開発の重要性が周知であったとしても、甲3に開示されたCRISPR/Cas系を真核細胞に適用する動機付けを見出すことはできない。念のため甲7を検討してみても、甲7はTALENを真核細胞に適用することが記載されているものであり、CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することは記載も示唆もされておらず、甲7の記載から、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを見出すことはできない。そして、申立人の提出したその余の証拠をみても、本件優先1の優先日前に、CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することを記載あるいは示唆するものは見出せない。また、前記アで検討したとおり、甲3?甲5の記載からは、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを見出すことはできないというべきである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(4)本件発明2、5?12、14?16、19?22及び25?27について
本件発明2、5?12、14?16、19?22及び25?27は、前記第2で示すとおりである。
そして、前記(3)ア(ア)で検討したことと同様の理由により、甲3発明は、これらの発明とは、その技術分野も、発明が解決しようとしている課題も大きく相違しているといえるから、甲3発明は、これらの発明と対比し得る発明とはいえず、甲3発明を、これらの発明の進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
また、本件発明1の発明特定事項を全て含み、本件発明1の発明特定事項をさらに限定するものであるから、前記(3)ア(イ)以降で検討したことと同様の理由により、本件発明2、5?12、14?16、19?22及び25?27は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(5)本件発明28、29、32?42、44、45及び48について
本件発明28、29、32?42、44、45及び48は、前記第2で示すとおりである。
そして、前記(3)ア(ア)で検討したことと同様の理由により、甲3発明は、これらの発明とは、その技術分野も、発明が解決しようとしている課題も大きく相違しているといえるから、甲3発明は、これらの発明と対比し得る発明とはいえず、甲3発明を、これらの発明の進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
また、仮に、これらの発明と甲3発明とを対比した場合は、以下のとおりである。
本件発明28及び29は組成物に係る発明であるところ、これらの発明は、要するに、(a)Cas9ポリペプチド、または該Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに(b)(i)DNA標的化セグメント、及び(ii)タンパク質結合セグメントを含むDNA標的化RNA、又は該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチドを含む組成物であって、DNA標的化セグメントが、植物細胞、動物細胞又は単細胞真核生物内に存在するDNAを標的とする点で本件発明1と共通している。すなわち、本件発明28及び29は、いわゆるCRISPR/Cas系を真核細胞に適用することに関する発明であるといえる。
ここで、前記(3)ア(イ)以降で検討したとおり、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを、甲3?5及び7の記載から見出すことはできないのであるから、同様の理由により、本件発明28及び29は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件発明32?42、44、45及び48は、本件発明28又は29の発明特定事項を全て含み、本件発明28又は29の発明特定事項をさらに限定するものであるから、同様の理由により、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(6)本件発明51、52、55?61及び64について
本件発明51、52、55?61及び64は、前記第2で示すとおりである。
そして、前記(3)ア(ア)で検討したことと同様の理由により、甲3発明は、これらの発明とは、その技術分野も、発明が解決しようとしている課題も大きく相違しているといえるから、甲3発明は、これらの発明と対比し得る発明とはいえず、甲3発明を、これらの発明の進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
また、仮に、これらの発明と甲3発明とを対比した場合は、以下のとおりである。
本件発明51は、DNA標的化RNA、又は該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドを含有する組成物に係るものであり、本件発明52は、DNA標的化RNA、又は該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドに係るものであるところ、これらの発明は、要するに、(a)DNA標的化セグメント及び(b)タンパク質結合セグメントを含むDNA標的化RNA、又は該DNA標的化RNAをコードするDNAポリヌクレオチドを含み、DNA標的化セグメントが、植物細胞、動物細胞または単細胞真核生物内に存在するDNAを標的とする点で本件発明1と共通している。すなわち、本件発明51及び52も、いわゆるCRISPR/Cas系を真核細胞に適用することに関する発明であるといえる。
ここで、前記(3)ア(イ)以降で検討したとおり、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを、甲3?5及び7の記載から見出すことはできないのであるから、同様の理由により、本件発明51及び52は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件発明55?61及び64は、本件発明51又は52の発明特定事項を全て含み、本件発明51又は52の発明特定事項をさらに限定するものであるから、同様の理由により、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(7)本件発明65、66、72及び73について
本件発明65、66、72及び73は、前記第2で示すとおりである。
そして、前記(3)ア(ア)で検討したことと同様の理由により、甲3発明は、これらの発明とは、その技術分野も、発明が解決しようとしている課題も大きく相違しているといえるから、甲3発明は、これらの発明と対比し得る発明とはいえず、甲3発明を、これらの発明の進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
また、仮に、これらの発明と甲3発明とを対比した場合は、以下のとおりである。
本件発明65は、(i)DNA標的化セグメント及び(ii)タンパク質結合セグメントを含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含み、当該ヌクレオチド配列が、真核生物細胞において機能的なプロモーターに作動可能に連結している、核酸に係るものであるところ、この発明は、要するに、DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を、真核生物細胞において機能的なプロモーターにより転写することを意図したものであるから、本件発明65も、いわゆるCRISPR/Cas系を真核細胞に適用することに関する発明であるといえる。
ここで、前記(3)ア(イ)以降で検討したとおり、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを、甲3?5及び7の記載から見出すことはできないのであるから、同様の理由により、本件発明65は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件発明66、72及び73は、本件発明65の発明特定事項を全て含み、本件発明65の発明特定事項をさらに限定するものであるから、同様の理由により、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(8)本件発明76?80、83?89、92及び95について
本件発明76?80、83?89、92及び95前記第2で示すとおりである。
そして、前記(3)ア(ア)で検討したことと同様の理由により、甲3発明は、これらの発明とは、その技術分野も、発明が解決しようとしている課題も大きく相違しているといえるから、甲3発明は、これらの発明と対比し得る発明とはいえず、甲3発明を、これらの発明の進歩性を欠如することの根拠とすることはできない。
また、仮に、これらの発明と甲3発明とを対比した場合は、以下のとおりである。
本件発明76?78はキットに係る発明であるところ、これらの発明は、要するに、(a)Cas9ポリペプチド、または該Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに(b)(i)DNA標的化セグメント、及び(ii)タンパク質結合セグメントを含むDNA標的化RNA、又は該DNA標的化RNAをコードする1つまたはそれ以上のDNAポリヌクレオチドを含む組成物であって、DNA標的化セグメントが、植物細胞、動物細胞又は単細胞真核生物内に存在するDNAを標的とする点で本件発明1と共通している。すなわち、本件発明76?78は、いわゆるCRISPR/Cas系を真核細胞に適用することに関する発明であるといえる。
ここで、前記(3)ア(イ)以降で検討したとおり、甲3発明を真核細胞に適用する動機付けを、甲3?5及び7の記載から見出すことはできないのであるから、同様の理由により、本件発明76?78は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件発明79、80、83?89、92及び95はは、本件発明76?78おいずれかの発明特定事項を全て含み、本件発明76?78の発明特定事項をさらに限定するものであるから、同様の理由により、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(9)まとめ
前記(3)?(8)で検討したとおりであるから、甲3発明を、本件発明1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95の進歩性を欠如することの根拠とすることはできず、これらの発明は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえず、また、仮に甲3発明と対比したとしても、これらの発明は、甲3発明及び甲3?5及び7の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、特許異議申立理由2は理由がない。

3 特許異議申立理由3(甲6出願に基づく拡大先願)について
(1)前提
2013年3月20日に出願された甲6出願は、2012年3月20日及び2012年4月17を優先日とする優先権主張を伴うものであるから(以下、各優先権を、優先日の早い順に「甲6優先1」及び「甲6優先2」といい、各優先日を「甲6優先1の優先日」及び「甲6優先2の優先日」といい、各優先権書類を「甲6優先1の明細書」、「甲6優先2の明細書」という。)、甲6出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明であって、甲6優先1の明細書(文献B)又は甲6優先2の明細書(文献C)に共通して記載された発明であれば、当該発明は甲6優先1又は2の優先権主張の利益を享受することができることになる。

(2)甲6発明の優先日について
ア 申立人の主張
申立人は、要するに、甲6出願の当初明細書等には、本件発明と同様の、
A)標的DNAを修飾する方法であって、
B)該細胞内で該標的DNAを複合体と接触させることを含み、
C)該複合体は、
C-1)(a)Cas9ポリペプチド並びに
C-2)(b)DNA標的化RNA
を含む複合体であり、
D、E)該細胞は、哺乳動物細胞であり、該細胞はインビボのヒト細胞でなく、
F)該修飾は標的DNAの切断である、
前記標的DNAを修飾する方法
に係る発明(以下「甲6発明」という。)が記載されており、かつ、甲6発明は、甲6優先1の明細書に記載されているか、記載されているに等しいものであるから、甲6発明は、甲6優先1の優先権主張の利益を享受することができると主張するので、以下で検討する。

イ 甲6優先1の明細書の記載事項
甲6優先1の明細書(甲17及び文献B)には、次の事項が記載されている(なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。)。
(B-1)「[請求項1] 標的DNA分子を部位特異的に修飾するための方法であって、
適した条件下で、
標的DNA分子と
RNA配列並びに少なくとも1つのRuvC活性部位モチーフ及びHNH活性部位モチーフを含むRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼと
を接触させて、
その結果、RNA配列と標的DNA分子の相補的結合によって決定される領域において修飾された標的DNA分子を得る工程を含む、方法。
[請求項2] a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドと、
b)CRISPR遺伝子座を有する微生物中に存在する少なくとも22ヌクレオチドのリピートを含む3′領域と、CRISPR遺伝子座中のリピートのすぐ下流の少なくとも20ヌクレオチドのスペーサー配列を含む5′領域とを含む3′及び5′領域を含むポリリボヌクレオチドとを含む、タンパク質-RNA複合体。(当審注:請求項2中に記載の「SEQ#1Cas9_CRISPR3_S.thermophilus_DGCC7710」のアミノ酸配列の摘記は省略。)

[請求項14] 請求項2に記載の前記ポリペプチド及びポリヌクレオチド複合体を組み立てるのに必要な、請求項2に記載の前記複合体中の前記ポリペプチド、tracrRNA及びcrRNAをインビボで得るための方法であって、
ここで、tracrRNAは、S.サーモフィルスDGCC7710 CRISPR3系ステムに由来するリピート領域及び下流の領域と少なくとも80%の相補性を示す配列を含むポリヌクレオチドであり、及びCRISPR RNAは、スペーサー及び両端に位置するリピート配列からなるポリヌクレオチドであり、
請求項2に記載の前記ポリペプチド及びポリリボヌクレオチド、並びにtracrRNAが、遺伝子改変された微生物の少なくとも1つのプラスミド中にコードされており、
前記プラスミドは、遺伝子改変された微生物の宿主プロモーター又は本来の宿主のプロモーターを含んでいる、
前記方法。

[請求項19] ヌクレオチド配列を切断するための方法であって:
DNA切断に適した条件下で、請求項2の複合体を標的DNAとインキュベートする工程であって、
標的DNAは
複合体のポリリボヌクレオチドのスペーサー配列に少なくとも80%相補的なプロトスペーサー配列、及び
プロトスペーサー配列の下流のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列であるNGGNGを含み、
ポリペプチドは、PAM配列の4nt上流に位置する切断部位で両方の標的DNA鎖を切断して、平滑末端を作製する、ヌクレオチド配列を切断するための方法。

[請求項31] Cas9-crRNA複合体をインビボで組み立てる方法。
[請求項32] Cas9-crRNA複合体をインビトロで組み立てる方法。
[請求項33] インビボ又はインビトロで組み立てられたCas9-crRNA複合体による二本鎖DNA及び一本鎖DNAの部位特異的切断の方法。」

(B-2)「ストレプトコッカス ピオゲネスのタイプIIA CRISPR/Cas系では、トランスエンコードされた低分子RNA(tracrRNA)と細菌のRNaselllがcrRNAの生成に関与していることが示されている(Deltcheva et al, 2011)」(5頁最終段落2?4行)

(B-3)「触媒能力を有するCas9-crRNA複合体のインビトロでの組み立てでは、(His)6タグ付きCas9タンパク質を、CRISPR RNA及びtracrRNA転写産物と、1:0.5:1のモル比で混合し、10 mM Tris-HCI(37℃、pH7.5)、100mM NaClを含むバッファーで、37℃で30分間プレインキュベートし、次いで、RNAse III(Ambion)、MgCl2、DTTを添加し、さらに30分間インキュベートした。」(30頁20?23行)

ウ 当審の判断
摘記事項(B-1)及び(B-2)からみて、甲6優先1の明細書には、CRISPR遺伝子座に由来するリピート配列を3′領域に含み、スペーサー配列を5′領域に含むRNAと、ストレプトコッカス ピオゲネスなどのCas9タンパク質との複合体を用いて、標的DNAを部位特異的に修飾することが記載されている。また、摘記事項(B-1)からみて、甲6優先1の明細書には、DNAの部位特異的切断に用いるCas9-crRNA複合体を、インビボ又はインビトロで組み立てることが記載されている。さらに、摘記事項(B-3)からみて、甲6優先1の明細書には、Cas9-crRNA複合体を、(His)6タグ付きCas9タンパク質を、CRISPR RNA及びtracrRNA転写産物と混合、インキュベート等することによりインビトロで組み立てたことが記載されている。
以上からみて、甲6優先1の明細書には、Cas9-crRNA複合体をインビボ及びインビトロで組み立てることが記載されているとともに、実際に当該Cas9-crRNA複合体をインビトロで組み立てたことが記載されているといえる。しかし、甲6優先1の明細書には、当該Cas9-crRNA複合体を、哺乳動物細胞などの真核細胞内の標的DNAと接触させることや、当該標的DNAを切断することについては記載されておらず、そのようなことを示唆する記載もない。甲6優先2の明細書である文献Cをみても同様である。
したがって、哺乳動物細胞内で標的DNAをCas9-crRNA複合体と接触させることにより、標的DNAを切断して修飾する方法に係る甲6発明は、甲6優先1及び2の明細書に記載した事項の範囲内のものであるとはいえず、甲6発明は、甲6優先1及び2の優先権主張の利益を享受することはできない。

エ 申立人の主張について
申立人は、要するに、甲6優先1の明細書(甲17)にも、インビボ又はインビトロで組み立てられたCas9-crRNA複合体による標的DNAの部位特異的切断の方法などが記載されているとともに、原核細胞内でCas9、crRNA及びtracrRNAを組み立てることで、部位特異的な標的DNA分子の修飾が可能となることが、原核生物を用いたデータとともに裏付けを伴って記載されていること、及び、インビボとして用いられる細胞には原核細胞だけでなく真核細胞もあり、真核細胞の核内に輸送するためにNLSを融合することも甲6優先1の優先日当時の周知技術であることから、甲6発明は、甲6優先1の明細書に記載されているか、記載されているに等しいものであって、甲6優先1の優先権主張の利益を享受することができると主張する。
しかし、前記ウで検討したとおり、甲6優先1の明細書には、Cas9-crRNA複合体を、哺乳動物細胞などの真核細胞内の標的DNAと接触させることや、当該標的DNAを切断することについては記載されておらず、そのようなことを示唆する記載もないから、甲6発明は、甲6優先1の優先権主張の利益を享受することはできないというべきであり、申立人の上記主張は採用できない。

(3)甲6出願に基づく拡大先願について
前記(2)で検討したとおり、甲6発明は、甲6優先1及び2の優先権主張の利益を享受することはできず、甲6発明についての拡大先願の地位は、甲6出願の出願日である2013年3月20日となるところ、本件特許の出願日は、それより前の2013年3月15日であるから、甲6発明は、本件発明を拡大先願に基づいて拒絶することの根拠とすることはできない。
したがって、特許異議申立理由3は理由がない。

4 特許異議申立理由4(サポート要件違反、実施可能要件違反)について
(1)申立人の主張
申立人は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、真核細胞におけるゲノム編集が裏付けを伴って記載されているとはいえないから、本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反し、また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件に違反すると主張しているので、検討する。

(2)判断
本件発明1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95が、前記2(3)?(8)で検討したとおり、いずれもCRISPR/Cas系を真核細胞に適用することに関する発明であることと、本件特許の明細書【0008】の記載とを併せ考慮すれば、本件発明の解決しようとする課題は、真核細胞内の標的DNAを部位特異的に修飾するための方法、並びにそれに用いる部位特異的修飾ポリペプチド及びDNA標的化RNAを提供することであり、本件発明は、CRISPR/Cas系を真核細胞内の標的DNAの修飾に利用することを見出して、その課題を解決したものであるといえる。
ここで、本件発明は、前記第2に示されるとおり、全ての発明において、CRISPR/Cas系を構成する部位特異的修飾ポリペプチドについては「Cas9ポリペプチド」に特定されており、また、「DNA標的化RNA」については、「標的DNA内の配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化セグメント」及び「Cas9ポリペプチドと相互作用するタンパク質結合セグメントであって、該タンパク質結合セグメントは、ハイブリダイズして二本鎖RNA(dsRNA)を形成する、2つの相補的な一続きのヌクレオチドを含み、前記dsRNAは、tracrRNAおよびCRISPR RNA(crRNA)の相補的ヌクレオチドを含む、該タンパク質結合セグメント」を含むものであることが特定されている。
そして、Cas9ポリペプチドについては、種々のものが、本件特許の明細書【0200】?【0202】、図3、図5などに相当程度詳細に記載されており、その精製方法も【0452】、【0453】などに具体的に記載されており、DNA標的化RNAについても、二重分子の場合と単一分子の場合とについて、本件特許の明細書の【0074】?【0082】、【0113】?【0128】、図1、図9、図19-2,図28-2、図29-2などに相当程度詳細に記載されている。また、本件特許の明細書の実施例1には、部位特異的修飾ポリペプチドであるS.ピオゲネスのCas9ポリペプチドを、上記特定のとおりの構造を有する二重分子DNA標的化RNA又は単一分子DNA標的化RNAと組み合わせて、実際に標的DNAを切断したことが記載されている(特に図14)。
以上からみて、本件特許の明細書には、Cas9ポリペプチドと、上記特定のとおりの構造を有する単一分子及び二重分子のDNA標的化RNAとを組み合わせて、真核細胞内の標的DNAを部位特異的に修飾するための方法、並びにそれに用いる部位特異的修飾ポリペプチド及びDNA標的化RNAが具体的かつ詳細に記載されているといえるから、当業者であれば、本件特許の明細書の記載から本件発明が上記課題を解決できることを認識できるといえる。さらにいえば、本件特許の明細書の実施例2には、S.ピオゲネスのCas9ポリペプチドと、単一分子DNA標的化RNAとを組み合わせて、真核細胞において実際に標的DNAを切断したことが記載されているところ、これは、本件特許の明細書の記載にしたがって行った結果、実際に真核細胞内の標的DNAを部位特異的に修飾できることを示したものということになる。
したがって、本件発明は本件特許の明細書に記載した範囲内のものといえるから、本件発明はサポート要件に適合していることになる。また、本件特許の明細書は、本件発明に関する事項にについて具体的かつ詳細に記載されており、本件発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるから、本件特許の明細書は実施可能要件に適合していることになる。

(3)申立人の主張について
申立人は、要するに、以下のア?カの点で特許請求の範囲の記載が広範すぎることから、本件特許はサポート要件及び実施可能要件に違反する旨主張する。
ア CRISPR/Cas系によるDNA切断にはPAM配列が必須であるところ、本件発明において、標的DNA内の配列におけるPAM配列の存在が特定されていない。
イ 本件発明の標的DNAとしてはミトコンドリア内や葉緑体内の配列も包含されるが、本件特許の明細書には、これらの細胞小器官においても同様にゲノム編集が行えることが何ら裏付けを伴って記載されておらず、また、本件発明において、標的DNAが染色体DNAであることが特定されていない。
ウ 真核細胞の染色体ゲノムDNAの切断には核移行シグナル(NLS)が必須であるところ、本件発明において、Cas9ポリペプチドにNLSが結合されていることが特定されていない。
エ 本件発明において、Cas9ポリペプチドが限定されていないから、本件特許の明細書の【0009】からみて、本件発明におけるCas9ポリペプチドには、ヌクレアーゼ活性やtracrRNAとの結合能を欠失したものも包含されている。
オ 部位特異的な標的DNAの切断において、Cas9ポリペプチド及びDNA標的化RNAの由来が同一あるいは近縁種であることが必要であるが、本件発明には、かかる組み合わせが特定されていない。
カ 甲19からみて、sgRNAのステムループ1が機能的なCas9-sgRNA複合体の形成に不可欠であるにもかかわらず、本件発明の「タンパク質結合セグメント」の特にdsRNAを形成する領域部分に関する構造的な特定がなされていない。
そこで、申立人の上記主張ア?カについて検討する。
まず、前記(2)で検討したとおり、本件発明の課題は、真核細胞内の標的DNAを部位特異的に修飾するための方法、並びにそれに用いる部位特異的修飾ポリペプチド及びDNA標的化RNAを提供することであり、本件発明は、CRISPR/Cas系を真核細胞内の標的DNAの修飾に利用することを見出して、その課題を解決したものである。
ここで、主張ア及びウについて検討すると、前記1(1)ウで検討したとおり、Cas9ポリペプチドを用いる系によるDNA切断にPAMが必要であることは本件特許の出願日前の技術常識であり、また、ある程度大きな分子量を有するタンパク質を真核細胞の核内に輸送するためにNLSを融合させることも本件特許の出願日前の周知技術であり、さらにいえば、本件特許の明細書の【0200】、【0201】などには種々のPAMが例示されており、本件特許の明細書の【0209】にはNLSを用いることが記載されているから、本件発明の課題を解決するために、本件発明において、PAM配列を考慮することやNLSを用いることは当業者にとって明らかなことである。したがって、本件発明において、PAM配列の存在や、NLSの結合についての特定がないことは、本件のサポート要件及び実施可能要件の判断を左右するものではない。よって、申立人の主張ア及びウは採用できない。
次に、主張イについて検討する。上記したとおり、本件発明は、CRISPR/Cas系を真核細胞内の標的DNAの修飾に利用することを見出して、その課題を解決したものである。そして、前記(2)で検討したとおり、本件特許の明細書には、真核細胞内の標的DNAに、CRISPR/Cas系を作用させるための手段が開示されているのだから、本件はサポート要件及び実施可能要件に適合しているというべきである。申立人は、ミトコンドリア内や葉緑体内のDNAを問題視するが、本件発明において標的DNAがミトコンドリア内や葉緑体内のものであることが特定されているわけではないから、本件のサポート要件及び実施可能要件の判断を左右するものではない。さらにいえば、ミトコンドリア内や葉緑体内のDNAを標的とすることに関し、本件特許の明細書の【0209】にはミトコンドリア局在化シグナルや葉緑体局在化シグナルを用いることが記載されており、また、CRISPR/Cas系は原核細胞に由来するところ、ミトコンドリア内や葉緑体内のDNAは原核細胞内のDNAと同様の存在形態のものであるから、当業者であれば、ミトコンドリア内や葉緑体内のDNAにもCRISPR/Cas系は作用し得ると認識すると認められ、サポート要件及び実施可能要件に適合するといえる。よって、申立人の主張イは採用できない。
次に、主張エについて検討する。申立人がいう本件特許の明細書の【0009】は、「部位特異的修飾ポリペプチド」について説明するものであるところ、本件発明は、当該「部位特異的修飾ポリペプチド」が「Cas9ポリペプチド」に特定されているのであるから、申立人の主張エは失当である。また、本件特許の出願日前から種々の細菌に由来する様々なCas9が当業者に周知であり、本件特許の明細書にもそれらが記載されているから、上記した本件発明の課題を解決する手段として、それらの中から必要に応じて本件発明における「Cas9ポリペプチド」を採用することは当業者にとって明らかである。したがって、本件発明において、Cas9ポリペプチドが限定されていないことは、本件のサポート要件及び実施可能要件の判断を左右するものではない。よって、申立人の主張エは採用できない。
次に、主張オについて検討する。上記したように、本件特許の出願日前から種々の細菌に由来する様々なCas9が当業者に周知であり、それと組み合わせるDNA標的化RNAは同一又は近縁のものを採用することも当業者に周知であったから、本件発明の課題を解決する手段として、本件発明におけるDNA標的化RNAとして、用いる「Cas9ポリペプチド」の由来に応じたものを採用することは当業者にとって明らかである。したがって、本件発明において、Cas9ポリペプチドとDNA標的化RNAとの由来が同一又は近縁種であることが特定されていないことは、本件のサポート要件及び実施可能要件の判断を左右するものではない。よって、申立人の主張オは採用できない。
最後に、主張カについて検討する。前記(2)で検討したとおり、本件特許の明細書には、Cas9ポリペプチドと、単一分子及び二重分子のDNA標的化RNAとを組み合わせて、真核細胞内の標的DNAを部位特異的に修飾するための方法や、それに用いるDNA標的化RNAについて、具体的かつ詳細に記載されているといえる。そして、本件発明において、本件発明の課題を解決する手段として、DNA標的化RNAのdsRNA構造として、Cas9ポリペプチドと複合体を形成し、標的DNAを修飾することが可能なものを採用することは当業者にとって明らかである。したがって、本件発明の「タンパク質結合セグメント」の特にdsRNAを形成する領域部分に関する構造的な特定がなされていないことは、本件のサポート要件及び実施可能要件の判断を左右するものではない。また、実施可能要件の判断についても同様である。さらにいえば、申立人が主張の根拠とする甲19は本件特許の出願日より後に頒布又は公衆に利用可能となったものであるところ、サポート要件は、特許請求の範囲の範囲と明細書の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、明細書に記載された発明であり、明細書の記載、その示唆又は出願時の技術常識により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて、出願時の技術水準により判断されるべきものであって、甲19のような出願後の研究結果により左右されるものではない。また、実施可能要件についても、当業者が、明細書に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識に基づいて、発明をどのように実施するかを理解できるか否かについて、出願時の技術水準により判断されるべきものであって、出願後の研究結果により左右されるものではない。以上からみて、申立人の主張カは採用できない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明はサポート要件に適合しており、また、本件発明について、本件特許の明細書は実施可能要件に適合しているから、特許異議申立理由4は理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、5?12、14?16、19?22、25?29、32?42、44、45、48、51、52、55?61、64?66、69、72、73、76?80、83?89、92及び95に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2021-03-30 
出願番号 特願2018-97369(P2018-97369)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (C12N)
P 1 652・ 16- Y (C12N)
P 1 652・ 536- Y (C12N)
P 1 652・ 121- Y (C12N)
P 1 652・ 113- Y (C12N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西 賢二  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 小暮 道明
田村 聖子
登録日 2020-04-17 
登録番号 特許第6692856号(P6692856)
権利者 ユニバーシティ オブ ヴィエナ チヤーペンテイエ,エマニユエル ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
発明の名称 RNA依存性標的DNA修飾およびRNA依存性転写調節のための方法および組成物  
代理人 小野 誠  
代理人 坪倉 道明  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 坪倉 道明  
代理人 坪倉 道明  
代理人 安藤 健司  
代理人 城山 康文  
代理人 早田 尚貴  
代理人 安藤 健司  
代理人 城山 康文  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 城山 康文  
代理人 早田 尚貴  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 小野 誠  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 早田 尚貴  
代理人 小野 誠  
代理人 安藤 健司  
代理人 岩瀬 吉和  
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