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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B01F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B01F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B01F
管理番号 1372973
審判番号 無効2017-800116  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-21 
確定日 2021-02-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第6116658号「気体溶解装置及び気体溶解方法」の特許無効審判事件についてされた平成31年 1月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成31年(行ケ)第10025号、令和 2年 2月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第6116658号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等
特許第6116658号(以下「本件特許」という。)は、株式会社光未来(以下、「被請求人」という。)が保有するものであり、その請求項1?4に係る発明についての出願は、2015年(平成27年)5月26日(優先権主張 平成26年5月27日)を国際出願日とする特願2015-529952号の一部を平成27年12月25日に新たな特許出願(特願2015-255409号)としたものであって、平成29年3月31日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、株式会社ハイジェンテックソリューション(以下、「請求人」という。)から、平成29年8月21日に、本件特許の請求項1?4に係る発明の特許について、本件無効審判の請求がされた。
標記審決取消しの判決に至るまでのその後の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。
平成29年11月 6日 答弁書(被請求人)
平成30年 1月15日付け 審理事項通知
同年 2月19日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 2月20日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月26日付け 審理事項通知(2回目)
同年 3月12日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 3月19日 口頭審理
同年 5月21日付け 審決の予告
同年 7月19日 訂正請求書(被請求人)
同年 9月14日 弁駁書(請求人)
同年10月 1日付け 補正許否の決定
同年11月 7日 答弁書(被請求人)
平成31年 1月21日付け 審決(以下、「1次審決」という。)
同年 1月31日 1次審決謄本送達
同年 2月28日 審決取消訴訟の提起(被請求人)
令和 2年 2月19日 審決取消しの判決

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求人の請求の趣旨は、「特許第6116658号の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明についての特許をいずれも無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。

(2)請求人の請求の理由(無効理由及び証拠方法)は、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び弁駁書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。
なお、ここでの整理に当たって、以下の点に配慮した。
ア 平成30年1月15日付け審理事項通知において当審が認定した無効理由1(後記ア)、無効理由2(後記イの下線部以外の部分)、無効理由3(後記ウ)、及び、無効理由4(後記エ)に対して、同年2月19日提出の口頭審理陳述要領書において、請求人は特段の意見を主張していない。
イ 無効理由5については、平成30年2月19日提出の口頭審理陳述要領書において、審判請求書の「7.請求の理由」の(1)(1-5)、(3)(3-2)、(4)(4-6)及び(5)(5-4)における根拠条文「特許法第36条第6項第2号」は、「特許法第36条第6項第1号」と訂正されている。
ウ 請求人は、平成30年7月19日付けの訂正の請求に対処するため、同年9月14日提出の弁駁書において、実質的に当初の請求の理由の要旨を変更する補正(追加の主張:後記イ及びオの下線部参照)を行っているが、この補正は、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、同年10月1日付けで許可されている。

(無効理由)
ア 無効理由1(甲第1号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)
分割要件に違反することを前提として、本件特許の請求項1?4に係る発明は、原出願の公開公報にあたる甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証(従たる証拠)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである。

イ 無効理由2(甲第3号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)
本件特許の請求項1?4に係る発明は、甲第3号証(主たる証拠)に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第11号証、甲第16号証及び甲第17号証(従たる証拠)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである。

ウ 無効理由3(甲第12号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)
本件特許の請求項1?4に係る発明は、甲第12号証(主たる証拠)に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第6号証、甲第9号証?甲第11号証及び甲第13号証?甲第17号証(従たる証拠)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである。

エ 無効理由4(サポート要件違反の無効理由)
本件特許の請求項1?4に係る発明は、「水槽一体型」の気体溶解装置を含んでいるが、発明の詳細な説明には、「水槽一体型」の気体溶解装置は記載も示唆もされていないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものである。

オ 無効理由5(サポート要件違反の無効理由)
本件特許の請求項1?4に係る発明は、溶存槽に貯留された水素水を水槽中に導く降圧移送手段としての管状路を含んでいるが、「降圧移送手段としての管状路」について、発明の詳細な説明の段落【0017】、【0031】には、降圧移送手段が層流を形成することで、水素水から水素を離脱させず、過飽和の状態が安定に維持されることが記載されていることから、層流を形成する事項を含んでいない本件特許の請求項1?4に係る発明は、層流を形成しない降圧移送手段も含まれるといえる。
また、訂正後の請求項1?4に係る発明は、降圧移送手段として管状路を構成する細管について長さが0.8mより大きく1.4mより小さいものを包含しているが、発明の詳細な説明には、細管の長さが0.8mより大きく1.4mより小さい範囲のときに過飽和の状態が維持されるかどうかが何ら記載されていない。よって、長さが0.8mより大きく1.4mより小さい場合に発明の課題を解決するための手段が反映されているとは到底言えず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものとなっている。
したがって、本件特許の請求項1?4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものである。

(証拠方法)
甲第1号証:国際公開第2015/182606号
甲第2号証:特開2012-86193号公報
甲第3号証:特開2012-236133号公報
甲第4号証:特開2002-363782号公報
甲第5号証:特開2006-307290号公報
甲第6号証:特開2007-239041号公報
甲第7号証:登録実用新案第3161567号公報
甲第8号証:特開2001-204787号公報
甲第9号証:特開2013-107060号公報
甲第10号証:特開2011-20005号公報
甲第11号証:特開2009-112979号公報
甲第12号証:韓国登録特許第10-0815092号公報
甲第13号証:特開2013-128882号公報
甲第14号証:特開2013-99735号公報
甲第15号証:特開2013-94757号公報
甲第16号証:特開2008-188574号公報
甲第17号証:韓国公開特許第10-2008-0100518号公報
甲第18号証:特願2015-529952号の出願経過書類の一式
甲第19号証:「広辞苑 第五版」、1998年11月11日発行、(株
)岩波書店、表紙、裏表紙、奥付、2485ページ(「ポ
ンプ」に関する部分)
甲第20号証:「マグローヒル科学技術用語大辞典 改訂第3版」、20
00年3月15日発行、(株)日刊工業新聞社、表紙、奥
付、1697ページ(「ベンチュリ管」に関する部分)
甲第21号証:「広辞苑 第六版」、2008年1月11日発行、(株)
岩波書店、表紙、裏表紙、奥付、1843ページ(「貯留
」に関する部分)
甲第22号証:「広辞苑 第六版」、2008年1月11日発行、(株)
岩波書店、表紙、裏表紙、奥付、1759ページ(「たま
る(溜まる)」に関する部分)
甲第23号証:特開2014-83510号公報
なお、甲第1号証?甲第19号証は審判請求書とともに、甲第20号証?甲第23号証は口頭審理陳述要領書とともに、それぞれ提出されたものである。

2 被請求人の主張
被請求人の反論の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」というものであり、証拠方法として、以下の乙第1号証が提出されている。

(証拠方法)
乙第1号証:特開2013-237021号公報

第3 訂正請求について
1 訂正請求の内容
被請求人は、特許第6116658号の特許請求の範囲を、平成30年7月19日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めており、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所)。

(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1に「前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く降圧移送手段としての管状路と、を含み、」と記載されているのを、「前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く、1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段としての管状路と、を含み、」に訂正する。
また、当該請求項1を引用する請求項2?4も同様に訂正する。

なお、訂正前の請求項2?4は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1?4は一群の請求項を構成するものであるから、上記訂正事項に係る特許請求の範囲についての訂正(本件訂正)は、特許法第134条の2第3項の規定に従い、この一群の請求項〔1?4〕を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件の判断
(1)訂正の目的の適否について
前記訂正事項は、請求項1に記載された「降圧移送手段としての管状路」を、「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる」ものとして具体的に特定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0035】には、「また、本発明の気体溶解装置1は、降圧移送手段5である細管5aの内径Xが、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.0mmより大きく3.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。」と記載されている。
そして、同段落【0053】?【0065】には、【図3】に示されたウォーターサーバー100を含む装置に対応する実施例1?13として、降圧移送手段5の細管5aの長さを、1.4m?4mとしたものが実際に記載されている。また、同段落【0066】及び【0067】には、比較例1及び比較例2として、同細管5aの長さを0.4m及び0.8mとしたものが記載されていることにも照らすと、「0.8m以下の長さのものを除く」という技術的事項は、同明細書に記載した事項に対して、新たな技術的事項を導入するものともいえない。
したがって、前記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められるから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
前記(1)に示したように、前記訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

3 訂正請求についての結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正の請求は適法にされたものと認められるから、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。

第4 特許請求の範囲の記載
前記「第3」のとおり、本件訂正の請求は適法にされたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などといい、総じて「本件特許発明」という。)。

「【請求項1】
水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって、
水槽と、
固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と、
前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と、
前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽と、
前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く、1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段としての管状路と、を含み、
前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記溶存槽、前記管状路、前記水槽へと送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとともに、前記加圧型気体溶解手段から前記溶存槽へと送水される水の一部を前記水素発生手段に導き電気分解に供することを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
前記溶存槽は前記加圧型気体溶解手段からの水素水を加圧貯留することを特徴とする請求項1記載の気体溶解装置。
【請求項3】
前記溶存槽は少なくともその一部にフィルターを与えられていることを特徴とする請求項2記載の気体溶解装置。
【請求項4】
前記加圧型気体溶解手段はダイヤフラムポンプを含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の気体溶解装置。」

第5 各無効理由についての当審の判断
事案に鑑み、無効理由4(サポート要件違反の無効理由)、無効理由5(サポート要件違反の無効理由)、無効理由1(甲第1号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)、無効理由2(甲第3号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)、無効理由3(甲第12号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)の順に検討する。

1 無効理由4及び5(サポート要件違反の無効理由)について
(1)本件特許の明細書等の記載事項について
本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)及び図面(以下、「本件図面」という。)には、次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、気体溶解装置及び気体溶解方法に関し、特に、気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持し提供できる気体溶解装置及び気体溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水やお茶といった飲料に二酸化炭素や水素等の気体を充填した清涼飲料水などが販売されている。このように、液体に充填させた気体を摂取することにより、気体のままでは、なかなか人間の体内に取り込めなかったものを、容易に体内に取り込むことができ、個々の気体が有する有用な効果を発揮しやすくしている。
【0003】
例えば、水やお茶といった飲料に水素ガスを充填した清涼飲料水などが販売されている。これは、液体に充填させた水素ガスを摂取することにより、人間の体内に存在する活性酸素を還元させることを目的としている。
【0004】
一方、活性酸素は、クエン酸サイクルでATP(アデノシン三リン酸)を作り出す時に重要な役割を果たすなど、生命維持に必須であるとともに、体内へ侵入してきた異物を排除する役割も担っていることが判ってきている。また、生体内の反応などで用いられなかった活性酸素は、通常、細胞内に存在する酵素によって分解される。しかしながら、すべての活性酸素が酵素によって分解されるわけではなく、余剰の活性酸素が分解されずに存在することになる。その結果、余剰の活性酸素により細胞が損傷され、癌や生活習慣病等の疾病、および老化などを招来する原因となり、余剰の活性酸素を排除することが健康維持のために求められている。
【0005】
そこで、近年、かかる余剰の活性酸素を排除する物質として水素が用いられている。水素は、その分子量がきわめて小さいために身体内に吸収されやすく、さらに水素が活性酸素と反応すると水に変化するもので、安全性が高いなどの理由を有するからである。また、数多い活性酸素の中でも特にヒドロキシラジカルのみを選んで還元し、身体に有用な活性酸素に影響を与えないからである。
【0006】
このように、特段の害も無く、病気予防や健康増進につながると考えられる水素の病理学的な有効性については、非特許文献1?10など多くの学術誌等で報告されており、枚挙にいとまがない。
【0007】
上記のとおり、水素ガスの摂取は、病気予防や健康増進といった有用な効果を奏する。また、他の気体の摂取は、それぞれに特有の病気予防や健康増進といった有用な効果を奏する。そのため、水素等の気体を液体に溶解することを目的として、種々の手段が公開されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、密閉容器(A)中で飲料水と水素ガス若しくは水素ガスを含む混合気体を加圧状態で接触させて該飲料水に水素を溶解させて水素水を生水する方法に於いて、容器(A)内の水素水が利用のために排出されて、容器(A)の内圧が低下した時点で排出を停止し、その後新規な飲料水を密閉状態の容器(A)に充填することで容器(A)の内圧を上昇させ、再度容器(A)内に充填された飲料水に水素を溶解させる水素水の生水方法が、開示されている。また、特許文献2には、飲料に供する水素水であって、水素ガスを飽和状態に溶解した溶解水を、オリフィスの小孔を通過して圧力を解放することにより溶解していた水素ガスを微細な気泡として発生させ、この微細な気泡を網部材に導いて通過させることにより微細化させて、粒径が1μm?50μm程度の微細気泡にし、この粒径が1μm?50μm程度の水素ガスのマイクロバブルを含有していることを特徴とする水素水が、開示されている。さらに、特許文献3には、空気中の水分を結露させて凝縮した結露水を生成する結露装置と、この結露水に対して水素発生反応を生じさせることによって、活性水素を溶存した水素水を生成する水素水化処理装置と、この水素水から不純物を除去して、水素水とするフィルタユニットと、この水素水を貯留して、飲料水として供給する飲料水サーバとから構成したことを特徴とする水素水製造装置が、開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、(イ)管体と、(ロ)管体の一方の端部に形成され、原料水を高圧で供給する原料水供給系と、(ハ)管体に水密結合され、原料水供給系から供給された原料水に対して、ほぼ直角に水素を供給する水素供給系と、(ニ)管体内において前記水素供給系の下流に管体の長手方向に形成され、原料水供給系から管体に供給された原料水と、水素供給系から管体に供給された水素の混合流体を拡散させるための拡散室と、(ホ)拡散室に充填され、所定の孔径を有し、供給された水素を微細気泡として通過させるための多孔質要素と、(ヘ)管体の他方の端部に形成され、製造された加水素水を排出する排出口と、を備えている水素を微細気泡として大量に含んだ加水素水の製造装置が、開示されている。さらに、特許文献5には、水供給部と、水素供給部と、前記各供給部から水と水素の供給を受けて水素混入水を吐出する気液混合ポンプと、気液混合ポンプから吐出される水素混入水が攪拌される攪拌部と、攪拌部からの水素混入水が所定の滞流をなして溶存水素以外の水素を放出させる放気安定槽とを含んで構成されることを特徴とする水素水の連続製造装置が、開示されている。さらにまた、特許文献6には、貯留した水に水素を溶解させるための容器と、水素化マグネシウムの加水分解により水素を発生させる水素発生部と、該水素発生部で発生した水素を前記容器に供給する水素供給管と、前記容器に貯留された水に加圧された水素が溶解してなる水素水を外部へ供給する水素水供給管とを備える水素水製造装置が、開示されている。
【0010】
また、特許文献7には、加圧液体と加圧気体とを接触させることにより、気体を液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と、液体流路において該加圧型気体溶解機構の後に設置された降圧機構とで構成される気体溶解装置であって、降圧機構が、複数のキャピラリーの内側に加圧液体を流すことにより、液体を降圧させるべく構成されたものであることを特徴とする気体溶解装置が、開示されている。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1?6記載の技術は、水素水を得ることはできるものの、気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、この過飽和の状態を安定に維持できるものではなく、提供される水素水の濃度が低く、十分な水素水の効果が得られるものではなかった。さらに、装置が大掛かりであるため十分なスペース等が必要となり、ウォーターサーバー等へ容易に取付けることができないという問題点があった。
【0014】
また、特許文献7記載の技術は、降圧機構が複数のキャピラリーを有しているため、降圧機構のスペースを広く取る必要があり、ウォーターサーバー等に容易に取付けることができないという問題点があった。さらに、複数のキャピラリーを有しているため製造や故障時の修理が煩雑になり、ウォーターサーバー等に取付けて使用するには、実用化の面で問題があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持しこれを提供でき、さらにウォーターサーバー等へ容易に取付けることができる気体溶解装置を提供することにある。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、降圧移送手段を設け、さらに液体にかかる圧力を調整することで、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の気体溶解装置は、水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって、生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽と、前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路において前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し層流を形成させる降圧移送手段と、を含むことを特徴とする。かかる発明によれば、生成した水素水から水素を離脱させることなくこの外部に提供することができるのである。
【0018】
上記発明において、前記降圧移送手段は前記管状路の前記取出口近傍に管径をより大若しくはより小とするテーパーを与えた圧力調整部を含むことを特徴としてもよい。
【0019】
上記発明において、前記溶存槽には、ダイヤフラムポンプにより水と水素バブルとを同時に加圧送水する加圧型気体溶解手段が接続されていることを特徴としてもよい。
【0020】
上記発明において、前記管状路の内径及び長さをそれぞれX、Lとし、前記加圧型気体溶解手段に加えられている圧力をYとしたときに、前記管状路内の水素水に層流を形成させるようX、Y及びLの値が選択されていることを特徴としてもよい。
【0021】
上記発明において、前記溶存槽に加圧貯留された水素水を再度、前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。
【0022】
上記発明において、前記溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き、前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。
【0023】
また、本発明の気体溶解方法は、水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解方法であって、生成した水素水を導いて加圧貯留する溶存槽と、前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路と、を少なくとも含む気体溶解装置において、前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し前記管状路内に層流を形成させることを特徴とする。
【0024】
上記発明において、前記気体溶解装置は前記溶存槽に接続され且つダイヤフラムポンプにより水と水素バブルとを同時に加圧送水する加圧型気体溶解手段を更に含み、
前記溶存槽に加圧貯留された水素水を再度、前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。
【0025】
上記発明において、前記溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き、前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。
【0026】
上記発明において、前記溶存槽には少なくとも200nm以下の平均径の水素バブルを含む水素水を加圧貯留させることを特徴としてもよい。」
エ 「【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の気体溶解装置について具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明の気体溶解装置の一例を示す断面図である。図中、1は気体溶解装置、2は気体発生手段、3は加圧型気体溶解手段、4は溶存槽、5は降圧移送手段である。気体溶解装置1は、気体を発生させる気体発生手段2と、この気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解手段3と、気体を溶解している液体を溶存及び貯留する溶存槽4と、この液体が細管5aを流れることで降圧する降圧移送手段5と、を有している。
【0030】
ここで、降圧移送手段5は、溶存槽4及び取出口10を接続する管状路5aにおいて、取出口10からの水素水の吐出動作による管状路5a内の圧力変動を防止しこの中に層流を形成させる。例えば、降圧移送手段5の管状路5aは、内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径の小さいことが好ましく、管状路5aの取出口近傍に管径を絞った若しくは拡げたテーパーを与えた圧力調整部を含むものであってもよい。
【0031】
また、本発明の気体溶解装置1において、細管5aの内径をXmmとし、加圧型気体溶解手段3により加えられる圧力をYMPaとしたときに、細管5a内に層流を形成させるようなものであって、X/Yの値が、1.00?12.00であることを特徴とするものであり、さらに、X/Yの値が、3.30?10.0であることが好ましく、4.00?6.67であることがより好ましい。気体を過飽和で溶存させている液体が、かかる条件で細管5a中を層流状態で流れて降圧移送されることで、気体を過飽和の状態で液体に溶解させ、さらに過飽和の状態を安定に維持し移送することができる。ここで、「過飽和」とは、気体の液体への溶解度は温度により異なるが、ある温度A(℃)における気体の液体への溶解量が、その温度A(℃)における溶解度より多く存在している状態を示す。
【0032】
さらに、図1では、気体発生手段2は、水素発生手段21を有し、さらにまたイオン交換手段22を有している。また、水素発生手段21が、電気分解により水素を発生させるもので、例えば、固体高分子膜(PEM)方式として知られる公知の装置であっても良い。なお、イオン交換手段22はイオン交換樹脂等を用いてイオン交換を行うものであり、気体発生手段2はイオン交換手段22を有していることが好ましいが、必須のものではない。
【0033】
図1では、今回、液体として水を使用している。図2を併せて参照すると、液体吸入口7から水を吸入し(S1)、加圧型気体溶解手段3の吸入口8を経由してポンプ3aで吸入し後述する水素発生手段21からの水素を配管内にて合流させ混合し(S2’)、加圧溶解(S2)後、この吐出口9から水を吐出する。吐出された水の一部を分離し(S2’’)、イオン交換手段22でイオン交換し(S3)水素発生手段用取入口23を経由して水素発生手段21に送られる。水素発生手段21では、イオン交換された水を用いて電気分解(S4)により水素を発生させ水素供給管24を通して加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られる。また、電気分解により発生した酸素は、酸素排出口25を通して気体溶解装置1の外へと排出される。
【0034】
電気分解により発生した水素は加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られ、そのポンプ3aにより加圧されることで、液体吸入口7から吸入した水に加圧溶解される。水素を加圧溶解した水は、加圧型気体溶解手段3の吐出口9から吐出され、溶存槽4に過飽和の状態で溶存される(S5)。溶存槽4に溶存された液体は、降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れることで降圧され(S6)、水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7)。
【0035】
また、本発明の気体溶解装置1は、降圧移送手段5である細管5aの内径Xが、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.0mmより大きく3.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、特開平8-89771号公報記載の技術のように、降圧するために10本以上の細管を設置する必要が無く、細管5aを1本有することで降圧することができるとともに、管内に層流を形成し得る。また、ウォーターサーバー等に容易に取付けることができ、さらに、製造や故障時の修理が容易になり、ウォーターサーバー等への取付けがより容易になる。なお、本発明において、細管の内径Xとは、単管の場合の内径だけではなく、例えば、二重管中の細管の内径X等も含むものであり、形状は問わない。
【0036】
さらに、本発明において、20℃における加圧型気体溶解手段3の圧力Yとしては、0.10?1.0MPaであることが好ましく、0.15?0.65MPaであることがより好ましく、0.20?0.55MPaであることがさらにより好ましく、0.23?0.50MPaであることが最も好ましい。圧力をかかる範囲とすることで、気体を液体中に容易に溶解できる。また、加圧型気体溶解手段3は、吐出口9の方向を上向きに設置することが好ましい。これにより、ポンプ圧送効率が上がり気体の溶解効率を高めることができる。
【0037】
さらにまた、本発明の気体溶解装置1は、加圧型気体溶解手段3で加圧して気体を溶解した液体を、排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送り、循環した後に、降圧移送手段5に送ることが好ましい。これにより、より気体の溶解濃度を高めることができる。また、循環回数としては、特に限定されないが、1?10回以内で最高溶存濃度に達することであることが好ましく、1?5回で最高溶存濃度に達することとがより好ましい。
【0040】
また、本発明の気体溶解装置1は、加圧型気体溶解手段3としては気体と液体とを同時に加圧して気体を液体に溶解できるものであり、特に限定されないが、ダイヤフラムポンプ3aを含むことが好ましい。ダイヤフラムポンプ3aを用いることで、より小スペースに加圧型気体溶解手段3を設けることができる。
【0041】
さらに、本発明の気体溶解装置1は、流量に対して1/3の容量の溶存槽4となるように、溶存槽4を1個または2個以上複数有することが好ましく、特に2個以上有することが好ましい。2個以上とすることで、より効率よく短時間で気体を高濃度に溶解できる。図1では、多孔質体などからなるマイクロフィルターを内部に含む溶存タンク41と活性炭フィルターを内部に含む溶存タンク42を有しており、これにより過飽和の状態をより安定に維持することができる。
【0042】
また、本発明において、溶存槽4としては、気体を溶解した状態で加圧下で溶存できれば、特に形状等は限定されず、マイクロフィルターや活性炭(カーボン)フィルターは他のフィルターであってもよい。さらに、溶存槽4は、溶存タンク41の上側から気体を溶解した液体を取り込み、下側から降圧移送手段5へと送られることが好ましい。これにより、溶存タンク41中の上部に気体が溜まることで液体と気体を分離出来、気体が溶存した液体のみが降圧移送手段5へと送ることができるため、気体のみを降圧移送手段5へと送られることを防止でき、気体の溶解を安定した状態で生成・維持できる。」
オ 「【0043】
図3は、本発明の気体溶解装置の使用の一例を示す図である。図中、100はウォーターサーバーである。ウォーターサーバー100に気体溶解装置1’を取付けることで、ウォーターサーバー100中の水を用いて、水素ガスを発生させ、さらにそれを用いて過飽和の水素水を供給することできる。また、過飽和の水素水をウォーターサーバー100中に保存できるとともに、循環できるので、常に過飽和の水素水を供給することができる。
【0044】
詳細には、図4を併せて参照すると、ウォーターサーバー100から水、気体発生手段2から水素を同時に加圧型気体溶解手段3のダイヤフラムポンプ3aに導かれ、これで加圧しながらバブリングし水素水を得る。かかる水素水はダイヤフラムポンプ3aでの加圧状態を維持しながら、多孔質体などからなるマイクロフィルター(溶存タンク)41、活性炭フィルター(溶存タンク)42を通じて、降圧移送手段5の細管5aを経て再び、ウォーターサーバー100に導かれる。また、ダイヤフラムポンプ3aを出た水素水の一部は、イオン交換手段22を介して水素発生手段21に送られ電気分解されて水素を発生させる。かかる水素は気体溶解装置3のダイヤフラムポンプ3aに送られる。
【0045】
かかる装置で、約30分間稼動させたところ、500nm以下のナノバブルが光学的に観察され、引き続き3日間稼動させたところ、200nm程度のナノバブルが光学的に観察された。
【0046】
上記では、気体として水素を用いた例を示したが、他の気体を過飽和の状態で溶解することも可能である。例えば、気体発生手段2として炭酸ガスボンベ、窒素ガスボンベ、酸素ガスボンベ等を用いれば、種々の気体を過飽和で溶解することができる。これにより、水素、二酸化炭素、窒素および酸素からなる群より選ばれる一種以上の気体を液体に過飽和で溶解することができる。
【0047】
ただし、気体としては水素が最も好ましい。水素は分子量が小さく、しかも液体中の内容物と内容物の間、例えば水と水との分子の間に入って、より過飽和の状態を維持しやすいと考えられる。また、水素の液体中の濃度が7℃で2.0ppmより大きいことが好ましく、2.0?8.0ppmであることが好ましい。2.0ppmより大きいことで過飽和状態を維持できる。
【0048】
さらに、本発明において、液体の温度を30?95℃で水素を溶解することができ、液体中の濃度が42℃で2ppmより大きいことが好ましく、3?4ppmであることが好ましい。2ppmより大きいことで、水素水をシャワーや入浴等にも使用できる。また、お湯の温度80℃時の水素溶存濃度が1.0ppm以上であることが好ましい。
【0049】
また、本発明において、気体として水素が用いられる場合、上記図1および図3の水素発生手段21に示すように、電気分解により発生した水素であることが好ましい。例えば、固体高分子膜(PEM)方式でなくとも、25%KOHを含む水溶液をアルカリ式電解槽にいれ、これを電気分解することで水素を発生させ、かかる水素を気体として使用することができる。これにより、従来の水素ボンベによる充填では約15MPa必要であるのに対し、約1MPa以下の圧力で使用することができ、より安全に使用できる。また、オンサイトで水素発生手段21から発生した水素を気体として使用することで、ボンベから供給する場合と比較してコストを格段に安くすることができる。
【0051】
また、本発明において、降圧移送手段5である細管は、本発明の効果を妨げない範囲において、通常の液体や気体を流す際に使用できる部材を使用することができ、例えば、ポリプロピレン製の細管を使用できる。また、細管の外部にアルミを蒸着するなど、気体の漏れが無い構造とすることが好ましい。」
カ 「【0052】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.41MPa、水素発生量を21cm^(3)/min、水の流量を730cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で6.5ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0054】
(実施例2)
図1に示す気体溶解装置1を水道に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.25MPa、水素発生量を21cm^(3)/min、水の流量を730cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、11℃で2.6ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0055】
(実施例3)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.30MPa、水素発生量を21cm^(3)/min、水の流量を730cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で5.9ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0056】
(実施例4)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.5mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.35MPa、水素発生量を25cm^(3)/min、水の流量を590cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で3.0ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0057】
(実施例5)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.38MPa、水素発生量を25cm^(3)/min、水の流量を560cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で3.8ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0058】
(実施例6)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.40MPa、水素発生量を25cm^(3)/min、水の流量を540cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で4.2ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0059】
(実施例7)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.45MPa、水素発生量を20cm^(3)/min、水の流量を560cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で4.5ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0060】
(実施例8)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.50MPa、水素発生量を15cm^(3)/min、水の流量を570cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で4.2ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0061】
(実施例9)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ2.0mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.60MPa、水素発生量を15cm^(3)/min、水の流量を460cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で3.4ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0062】
(実施例10)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ1.4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.20MPa、水素発生量を30cm^(3)/min、水の流量を550cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で2.7ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0063】
(実施例11)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ3mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.50MPa、水素発生量を20cm^(3)/min、水の流量を550cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で2.4ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0064】
(実施例12)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径3mmで長さ4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.35MPa、水素発生量を20cm^(3)/min、水の流量を650cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で3.5ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0065】
(実施例13)
図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径3mmで長さ2.5mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.25MPa、水素発生量を20cm^(3)/min、水の流量を700cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で3.0ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持していた。
【0066】
(比較例1)
図1に示す気体溶解装置1を図2に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径2mmで長さ0.4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.05MPa、水素発生量を21cm^(3)/min、水の流量を960cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で1.6ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持できなかった。
【0067】
(比較例2)
図1に示す気体溶解装置1を図2に示すように市販のウォーターサーバーに接続して、4回循環して、水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは、内径3mmで長さ0.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.08MPa、水素発生量を21cm^(3)/min、水の流量を900cm^(3)/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は、7℃で1.8ppmの水素水となり、過飽和の状態を維持できなかった。
【0068】
実施例1?実施例13はいずれも過飽和状態の水素水を得ることができ、しかも持続的に維持できた。一方、比較例1および2では、過飽和状態の水素水を得ることができなかった。」
キ 「【産業上の利用可能性】
【0069】
水道やウォーターサーバーだけでなく、お茶やジュース等の飲料、あるいは浴槽などにも取付けることができる。気体を過飽和の状態で液体に溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持することが求められる種々の液体に利用することができる。」
ク 「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



(2)無効理由4について
ア 請求人が主張する無効理由4は、要するに、本件特許発明1?4は、水槽を内部に有し、当該水槽中の水を加圧型気体溶解手段、溶存槽、管状路、水槽へと送水して循環させる、「水槽一体型」の気体溶解装置であるが、そのような循環経路を有する装置は、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されていないことを論拠とするものであるから、循環経路に水槽を有する形態に着目しながら、本件明細書の記載を子細にみると、前記(1)の本件明細書の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1に関し、次のような開示があることが認められる。
(ア)「本発明」の気体溶解装置は、水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって、生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽と、前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路において前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し層流を形成させる降圧移送手段とを含み、前記溶存槽には、ダイヤフラムポンプにより水と水素バブルとを同時に加圧送水する加圧型気体溶解手段が接続され、溶存槽に加圧貯留された水素水を再度、加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴とすること(【0017】、【0019】【0021】、【0024】)。
(イ)上記発明において、溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き、前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよいこと(【0022】、【0025】)。
(ウ)図3に、「本発明」の気体溶解装置の使用の一例として、ウォーターサーバー100中の水を用いて、水素ガスを発生させ、さらにそれを用いて過飽和の水素水を供給することでき、また、過飽和の水素水をウォーターサーバー100中に保存できるとともに、循環できるので、常に過飽和の水素水を供給することができ、図4を併せて参照すると、ウォーターサーバー100から水、気体発生手段2から水素を同時に加圧型気体溶解手段3のダイヤフラムポンプ3aに導かれ、これで加圧しながらバブリングし水素水を得て、かかる水素水はダイヤフラムポンプ3aでの加圧状態を維持しながら、多孔質体などからなるマイクロフィルター(溶存タンク)41、活性炭フィルター(溶存タンク)42を通じて、降圧移送手段5の細管5aを経て再び、ウォーターサーバー100に導かれ、また、ダイヤフラムポンプ3aを出た水素水の一部は、イオン交換手段22を介して水素発生手段21に送られ電気分解されて水素を発生させ、かかる水素は気体溶解装置3のダイヤフラムポンプ3aに送られること(【0043】、【0044】)。また、気体溶解装置の使用の一例として、加圧型気体溶解手段3、活性炭フィルター(溶存タンク)41及びマイクロフィルター(溶存タンク)42を含み、前記加圧型気体溶解手段3、前記活性炭フィルター(溶存タンク)41、前記マイクロフィルター(溶存タンク)42が順に接続され、さらに、前記マイクロフィルター(溶存タンク)42と水素水吐出口10とが細管5aにより接続されている気体溶解装置1’に対して、前記水素吐出口10と前記加圧型気体溶解手段3との間を、外部のウォーターサーバー100を介して接続したこと(【図3】)。

イ 前記ア(イ)及び(ウ)によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、気体溶存装置の溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で、水素水を送出し加圧送水して循環させる経路として、溶存槽と加圧型気体溶解手段との間に、ウォーターサーバーを用いる場合と、水槽を用いる場合とが記載されているといえる。
そして、前者の場合について、発明の詳細な説明には、前記ア(ウ)のとおり、気体溶解装置1’のマイクロフィルター(溶存タンク)42と加圧型気体溶解手段3との間を、マイクロフィルター(溶存タンク)42から、降圧移送手段5である細管5a、水素水吐出口10、外部のウォーターサーバー100を介して、加圧型気体溶解手段3に接続する経路が具体的に記載されている。
一方、発明の詳細な説明には、後者の場合の気体溶解装置の具体的な構造は開示されていない。しかしながら、前記ア(イ)の「上記発明において、溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き、前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい」における「上記発明」が、前記ア(ア)の「本発明」の気体溶解装置を示していることは明らかであるから、発明の詳細な説明には、「水槽」に係る構成を「気体溶解装置」に取り込むことが記載されているといえるし、その具体的な構造(経路)についても、前者の場合、すなわち、溶存槽と加圧型気体溶解手段との間にウォーターサーバーを用いる場合と同様に、溶存槽から、降圧移送手段である細管及び水槽を介して、加圧型気体溶解手段に接続される経路となっていると理解するのが合理的である。

ウ 小括
以上によれば、水槽を内部に有し、当該水槽中の水を加圧型気体溶解手段、溶存槽、管状路、水槽へと送水して循環させる、「水槽一体型」の気体溶解装置は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができるから、請求人の指摘の点は当を得たものとはいえない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものと認められるから、無効理由4に理由はない。

(3)無効理由5について
ア 本件特許発明1?4の課題について
(ア)前記(1)の本件明細書の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1に関し、次のような開示があることが認められる。
a 従来の水素水製造装置等の技術は、水素水を得ることはできるもの、気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、この過飽和の状態を安定に維持できるものではなく、提供される水素水の濃度が低いため、十分な水素水の効果が得られるものではないという問題点があった(【0008】?【0010】、【0013】)。
b 「本発明」は、前記aの従来技術の問題点を解決し、「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持」する「気体溶解装置」を提供することを目的とするものであり(【0015】)、「本発明者ら」は、「降圧移送手段を設け、さらに液体にかかる圧力を調整すること」で、前記目的を達成し得ることを見出し、「本発明」を完成するに至った(【0016】)。
そして、「本発明」の気体溶解装置は、「水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって、生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽と、前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路において前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し層流を形成させる降圧移送手段と、を含む」ことを特徴とし、「生成した水素水から水素を離脱させることなく外部に提供する」ことができる(【0017】)。

(イ)前記(ア)によれば、本件明細書には、本件特許発明1の課題は、「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持」する「気体溶解装置」を提供することにあり、その課題を解決する手段として、「降圧移送手段を設け、さらに液体にかかる圧力を調整する」構成を採用したことが開示されているものと認められる。
また、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用して発明特定事項に含む本件特許発明2?4の課題についても、これと同様である。

イ サポート要件の適合性について
(ア)前記(1)の本件明細書の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、(i)「本発明」の気体溶解装置1は、気体を発生させる気体発生手段2と、この気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解手段3と、気体を溶解している液体を溶存及び貯留する溶存槽4と、この液体が細管5aを流れることで降圧する降圧移送手段5とを備えること(【0029】、【図1】)、「本発明の気体溶解方法は、水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解方法であって、生成した水素水を導いて加圧貯留する溶存槽と、前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路と、を少なくとも含む気体溶解装置において、前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し前記管状路内に層流を形成させることを特徴とする」こと(【0023】)、(ii)「加圧型気体溶解手段」に関し、「電気分解により発生した水素」は「加圧型気体溶解手段」により「加圧されることで、液体吸入口7から吸入した水に加圧溶解」され、「水素を加圧溶解した水」は、「加圧型気体溶解手段」の吐出口9から吐出され、溶存槽4に「過飽和の状態」で溶存されること(【0034】)、「20℃における加圧型気体溶解手段3の圧力Yとしては、0.10?1.0MPaであることが好ましく、0.15?0.65MPaであることがより好ましく、0.20?0.55MPaであることがさらにより好ましく、0.23?0.50MPaであることが最も好ましい。圧力をかかる範囲とすることで、気体を液体中に容易に溶解できる」こと(【0036】)、(iii)「降圧移送手段」に関し、「降圧移送手段5は、溶存槽4及び取出口10を接続する管状路5aにおいて、取出口10からの水素水の吐出動作による管状路5a内の圧力変動を防止しこの中に層流を形成させる。例えば、降圧移送手段5の管状路5aは、内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径の小さいことが好まし」いこと(【0030】)、「溶存槽4に溶存された液体は、降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れることで降圧され(S6)、水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7))」こと(【0034】)、「降圧移送手段5である細管5aの内径Xが、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.0mmより大きく3.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、特開平8-89771号公報記載の技術のように、降圧するために10本以上の細管を設置する必要が無く、細管5aを1本有することで降圧することができるとともに、管内に層流を形成し得る」こと(【0035】)、(iv)「細管」の内径X及び長さL、「加圧型気体溶解手段」の圧力Yと「層流」との関係に関し、「細管5aの内径をXmmとし、加圧型気体溶解手段3により加えられる圧力をYMPaとしたときに、細管5a内に層流を形成させるようなものであって、X/Yの値が、1.00?12.00であることを特徴とするものであり、さらに、X/Yの値が、3.30?10.0であることが好ましく、4.00?6.67であることがより好ましい。気体を過飽和で溶存させている液体が、かかる条件で細管5a中を層流状態で流れて降圧移送されることで、気体を過飽和の状態で液体に溶解させ、さらに過飽和の状態を安定に維持し移送することができる」こと(【0031】)、「上記発明において、前記管状路の内径及び長さをそれぞれX、Lとし、前記加圧型気体溶解手段に加えられている圧力をYとしたときに、前記管状路内の水素水に層流を形成させるようX、Y及びLの値が選択されていることを特徴としてもよい」こと(【0020】)の記載がある。
上記記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、「本発明」の気体溶解装置は、「加圧型気体溶解手段」により水素を「過飽和の状態」で液体に溶解させて水素水を生成し、この水素水が「降圧移送手段」である管状路内で層流状態を維持して流れることで降圧され、「過飽和の状態」を維持して水素水吐出口10に移送する構成を採用し、これにより「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持」するという「本発明」の課題を解決できることの開示があるものと認められる。
ここに「過飽和」とは、「気体の液体への溶解度は温度により異なるが、ある温度A(℃)における気体の液体への溶解量が、その温度A(℃)における溶解度より多く存在している状態を示す。」こと(本件明細書の【0031】)、「層流」とは、一般に、速度の方向がそろった規則的な流れであって、流速が十分遅いときに実現するものであることをいう。また、細管の内径X及び長さL、加圧型気体溶解手段の圧力Yという変数に関し、L及びYの2つの変数の値が同じであれば、細管の内径Xの値が大きいほど、細管内を流れる液体の流速が遅くなり得ること、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値が大きければ、気体を液体に多く溶解させることができるが、細管内を流れる液体の流速は速くなり得ること、細管の長さLの値が大きければ、細管内壁の抵抗により細管内を流れる液体の流速が遅くなり得ることは、技術常識であるものと認められる。

(イ)前記(ア)のとおり、本件明細書には、「上記発明において、前記管状路の内径及び長さをそれぞれX、Lとし、前記加圧型気体溶解手段に加えられている圧力をYとしたときに、前記管状路内の水素水に層流を形成させるようX、Y及びLの値が選択されていることを特徴としてもよい」(【0020】)との記載があるが、水素水に層流を形成させるようにするにはX、Y及びLの値をどのように選択されるのかについての明示的な記載はない。
そこで、本件明細書記載の実施例1?13及び比較例1及び2に基づいて、以下において検討する。
a まず、実施例1?3(【0053】?【0055】)を比較すると、3つの実施例で細管の内径Xの値は2mm、長さLの値は1.6m及び水素水の流量の値は730cm^(3)/minと同じであるところ、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値は、実施例1は0.41MPa、実施例2は0.25MPa、実施例3は0.30MPaである。加圧型気体溶解手段の圧力Yの値が最も大きい実施例1の水素濃度は6.5ppmと最も大きく、圧力Yの値が最も小さい実施例2の水素濃度の値は2.6ppmと最も小さく、両実施例の差は3.9ppmである。
このような実施例1?3の比較の結果は、前記(ア)の技術常識に照らすと、細管の内径X及び長さLと水素水の流量の各値が同じであれば、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値が大きいほど、水素が水に多く溶け込むため、生成時における水素濃度の値が大きくなる結果、測定時における水素濃度の値も大きくなっているものと理解できる。
b 次に、実施例5(【0057】)と実施例7(【0059】)を比較すると、両実施例で細管の内径Xの値は2mm及び水素水の流量の値は560cm^(3)/minと同じであるが、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値は、実施例5が0.38MPa、実施例7が0.45MPaで、実施例7は実施例5の約1.18倍であり、また、細管の長さLの値は、実施例5が1.6m、実施例7が1.8で、実施例7は実施例5の約1.13倍である。水素濃度の値は、実施例5が3.8ppm、実施例7が4.5ppmであり、両実施例の水素濃度の差は0.7ppmであり、実施例1と実施例2との水素濃度の差3.9ppmと比べると、その差はわずかである。このような実施例5と実施例7の比較の結果は、細管の内径X及び水素水の流量の各値が同じである場合において、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値と細管の長さLの値をそれぞれおおむね同じ割合で増加させたときは、増加の前後で、水素濃度はおおむね同じであり、水素濃度が高まらないことを示している。
また、実施例10(【0062】)と実施例11(【0063】)を比較すると、両実施例で細管の内径Xの値は2mm、水素水の流量の値は550cm^(3)/minと同じであるが、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値は、実施例10が0.20MPa、実施例11が0.50MPaで、実施例11が実施例10の2.5倍であり、細管の長さLの値は、実施例10が1.4m、実施例11が3mで、実施例11は実施例10の約2.14倍である。水素濃度の値は、実施例10が2.7ppm、実施例11が2.4ppmであり、実施例10が実施例11よりも0.3ppm高いが、実施例1と実施例2との水素濃度の差3.9ppmと比べると、その差はわずかである。このような実施例10と実施例11の比較の結果は、実施例5と実施例7の比較の結果と同様に、細管の内径X及び水素水の流量の各値が同じである場合において、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値と細管の長さLの値をそれぞれおおむね同じ割合で増加させたときは、増加の前後で、水素濃度はおおむね同じであり、水素濃度が高まらないことを示している。
これらの実施例の比較の結果及び前記aの実施例1?3の比較の結果と前記(ア)の技術常識から、細管の内径X及び水素水の流量の各値が同じである場合に、水素濃度の値を高めるには、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値の増加割合が細管の長さLの値の増加割合よりも大きくなるように各値を選択すればよいことを理解できる。
c 他方、比較例1及び2については、比較例1は、細管の内径Xの値が2mm、細管の長さLの値が0.4m、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値が0.05MPa、水素水の流量の値が960cm^(3)/min、水素濃度の値が1.6ppm、比較例2は、細管の内径Xの値が3mm、細管の長さLの値が0.8m、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値が0.08MPa、水素水の流量の値が900cm^(3)/min、水素濃度の値が1.8ppmであって、いずれも過飽和の状態を維持できなかったものであるところ(【0066】、【0067】)、比較例1及び2は、圧力Yの値が0.05又は0.08MPaであって、実施例1?13における圧力Yの値(0.20?0.60MPa)と比べて相当小さかったため、そもそも、加圧型気体溶解手段によって水素水生成時に過飽和の状態の水素水を得ることができなかったことによる可能性もあるものと理解できる。

(ウ)前記(ア)及び(イ)を総合すると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、本件特許発明1の気体溶解装置は、水に水素を溶解させて水素水を生成し、取出口から吐出させる装置であって、気体を発生させる気体発生手段と、この気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解手段と、気体を溶解している液体を導いて溶存及び貯留する溶存槽と、この液体が細管からなる管状路を流れることで降圧する降圧移送手段とを備え、降圧移送手段により取出口からの水素水の吐出動作による管状路内の圧力変動を防止し、管状路内に層流を形成させることに特徴がある装置であり、一方、必ずしも厳密な数値的な制御を行うことに特徴があるものではないと理解し、例えば、細管の内径(X)が1.0mmより大きく3.0mm以下で、かつ、細管の長さ(L)の値が0.8mより大きく1.4mより小さい数値範囲のときであっても、「細管の内径X及び水素水の流量の各値が同じである場合に水素濃度の値を高めるには、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値を大きくすればよく、この場合に加圧型気体溶解手段の圧力Y及び細管の長さLの値をいずれも大きくして、水素濃度の値を高めるには、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値の増加割合が細管の長さLの値の増加割合よりも大きくなるように各値を選択すればよいこと」(前記(イ))を勘案し、細管からなる管状路内の水素水に層流を形成させるようX、Y及びLの値を選択することにより、「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持」するという本件特許発明1の課題を解決できると認識できるものと認められる。
また、前記(ア)のとおり、本件明細書には、「降圧移送手段5である細管5aの内径Xが、・・・1.0mmより大きく3.0mm以下であることがより好ましく、・・・かかる範囲とすることで・・・管内に層流を形成し得る」(【0035】)との記載があることから、細管の内径について規定する本件特許発明1においても、管内に相応の層流が形成されるものと理解するのが相当である。

ウ 小括
以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が本件特許発明1の発明特定事項の全体にわたり、本件特許発明1の課題を解決できると認識できるものと認められ、請求人が指摘する記載不備は見当たらない。
また、本件特許発明2?4についても同様である。
したがって、本件特許発明1?4に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものと認められるから、無効理由5に理由はない。

2 無効理由1(甲第1号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)について
請求人が主張する無効理由1は、分割不適法を前提とするものであり、具体的には、前記1(2)の無効理由4において検討した「水槽一体型」の気体溶解装置が、原出願の出願当初の明細書又は原出願の分割直前の明細書に記載されていないことを前提とするものである。
しかしながら、原出願の当初の明細書、原出願の分割直前の明細書、及び、本件明細書は、記載内容に異なるところはないから、前記1(2)のとおり、前記「水槽一体型」の気体溶解装置は、本件明細書に記載されていると認められる以上、同装置は、原出願の出願当初の明細書又は原出願の分割直前の明細書にも記載されているということができる。
したがって、無効理由1は、その前提を欠くものであるから、理由がない。

3 無効理由2(甲第3号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)について
(1)甲第3号証、甲第16号証及び甲第17号証の記載事項、並びに、甲第3号証に記載された発明(甲3発明)について
ア 甲第3号証の記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水に水素を含有させた水素水を供給するための水素水供給装置に関するものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の水素水供給装置では、電気分解器の陰極側の水道水を水素水として貯留タンクに貯留しているために、水道水に混入される水素の量が非常に少なく、水素水としての機能を良好に発揮することができないおそれがあった。」
(ウ)「【0018】
図1に示すように、水素水供給装置1は、水道水を供給するための水道水供給源2に水道水供給管3をフィルター4を介して接続し、水道水供給管3の端部にフローメーター5を接続するとともに2つに分岐して第1及び第2の分岐管6、7を接続し、第1の分岐管6に貯留タンク8をフロートバルブ9を介して接続する一方、第2の分岐管7に電気分解器10をイオン交換器11を介して接続している。ここで、イオン交換器11は、内蔵したイオン交換膜の作用で水道水に含有されるイオンを吸着除去するものである。
【0019】
また、水素水供給装置1は、貯留タンク8の底部に循環流路12を接続し、循環流路12の中途部に電気分解器10をチェックバルブ13を介して接続した水素混入部14を形成するとともに、循環流路12の水素混入部14よりも下流側に循環ポンプ15と細泡器16と加圧器17とを順に介設している。ここで、細泡器16は、内蔵したメッシュ状の多孔質板の作用で水道水に含有される水素の気泡をさらに細かいサイズの気泡に砕くものであり、加圧器17は、内蔵したベンチュリ管の作用で水道水の内圧を増加させるものである。
【0020】
また、水素水供給装置1は、貯留タンク8の底部に水素水供給管18を水栓19を介して接続している。
【0021】
さらに、水素水供給装置1は、フローメーター5と電気分解器10と循環
ポンプ15にコントローラー20を接続している。
【0022】
水素水供給装置1は、以上に説明したように構成しており、上記水素水供
給装置1では、水道水供給源2から供給される水道水の一部が、第1の分岐
管6から貯留タンク8に流れて、貯留タンク8に貯留され、一方、残りの水
道水が、第2の分岐管7から電気分解器10に流れて、電気分解器10で電
気分解される。
【0023】
また、上記水素水供給装置1では、貯留タンク8に貯留された水道水が、循環ポンプ15によって循環流路12を循環され、その途中において、電気分解器10で水道水を電気分解することで生成した水素だけを水素混入部14から循環流路12を循環する水道水に混入され、水素水となって貯留タンク8に貯留される。
【0024】
そして、上記水素水供給装置1では、貯留タンク8に貯留した水素水が水素水供給管18から供給される。なお、水素水は、加熱や冷却して供給する
ようにしてもよい。
【0025】
また、上記水素水供給装置1では、水素水供給管18から水素水が供給されると、それに伴ってフロートバルブ9が開弁状態となり、水道水供給管3から新たに水道水が貯留タンク8に補充されるとともに、電気分解器10にも水道水が供給される。
【0026】
水素水供給装置1は、水道水が貯留タンク8や電気分解器10に供給されたことをフローメーター5で検出し、電気分解器10及び循環ポンプ15を所定時間駆動する。これにより、電気分解器10で水道水が電気分解され、生成した水素だけが水素混入部14から循環流路12を循環する水道水(水素水)に再び混入される。なお、電気分解器10で生成した酸素は排気している。」
(エ)「【図1】



イ 甲3発明について
(ア)甲第3号証には、前記アの記載事項から、以下の事項が認められる。
・段落【0023】の記載事項から、水素水供給装置1は、貯留タンク8に貯留された水道水に水素を混入させて水素水を生成しているといえる。 また、段落【0023】の「水素水となって貯留タンク8に貯留される。」との記載から、水素水供給装置1を稼働させれば、貯留タンク8に貯留されているのは水素水といえる。
・段落【0019】、【0023】の記載事項及び【図1】の図示内容から、貯留タンク8に貯留された水素水は、貯留タンク8の底部から、図1において反時計回りに、水素混入部14、循環ポンプ15、細泡器16、加圧器17をとおって貯留タンク8に戻るものであり、循環流路12を構成しているといえる。
・段落【0019】、【0023】及び【0026】の記載事項から、電気分解器10で生成した水素だけをチェックバルブ13を介して水素混入部14において、循環流路12をとおる水素水に混入しているといえる。すなわち、液体である水素水は循環流路を循環し、循環する水素水に水素混入部14においてチェックバルブ13をとおして供給されるのは気体の水素だけである。
・段落【0023】の記載事項である循環ポンプ15は、水素水が循環ポンプ15によって送水されるのであるから、水素水は循環ポンプ15によって加圧して送水されるものと解される。
・段落【0019】、【0023】の記載事項及び【図1】の図示内容から、細泡器16で水素水に含有される水素の気泡をさらに細かいサイズの気泡に砕くのであるから、細泡器16に流入する際には、すでに水素の気泡ができているといえ、循環流路12に電気分解器10からの水素が混入する水素混入部14の下流側では水素バブルが生成されているといえる。
・段落【0019】の記載事項及び【図1】の図示内容から、細泡器16から加圧器17を経て貯留タンク8へ管状路で接続されていることが看取できる。

(イ)前記ア(イ)に記載された課題に関する記載及び前記ア(ウ)、(エ)に記載された図1に関する記載、並びに前記(ア)の認定事項を整理すると、甲第3号証、特にその図1には、
「水素水供給装置1であって、混入される水素の量が非常に少ないという課題を解決するために、
前記装置1は、貯留タンク8に貯留された水素水を水素混入部14、循環ポンプ15、細泡器16、加圧器17を経て貯留タンク8に戻る循環流路12を形成することで、循環する水(水素水)に水素が再び混入されることで、水素水に多量の水素を効率よく混入させることができるものであり、
前記水素混入部14は、水道水供給管3から導入された水道水をイオン除去した水を電気分解器10で電気分解して生成した気体の水素だけを、貯留タンク8から送られた水素水にチェックバルブ13を介して混入するものであり、
前記循環ポンプ15は、前記貯留タンク8の底部に接続された循環流路12の水素混入部の下流に配置され、循環流路12中の水を循環させる加圧送水機能を有し、
前記細泡器16は、前記循環ポンプ15から送られる、水素の気泡を含有した水が導かれ、内蔵するメッシュ状多孔質板にて水素水に含有される水素の気泡のサイズをさらに細かいサイズにするものであり、
前記加圧器17は、ベンチュリ管を内蔵し、内部で水素水を加圧させることでより多量の水素の混入ができるものであり、前記貯留タンク8に循環流路12で接続され、
前記貯留タンク8は、フロートバルブ9を介して水道水供給管3の分岐管6が接続され、底部で別途水素水供給管18が接続され、該水素水供給管18の端部は蛇口の水栓19が設けられている
水素水供給装置1。」
との発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 甲第16号証の記載事項
(ア)「【0033】
またこの流入側の流路15に気体注入部2が接続してある。気体注入部2は気体を流路15に供給して注入するためのものであり、例えば気体として空気を供給する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路15に接続して気体注入部2を形成するようにしてある。あるいは気体として酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路15に接続して気体注入部2を形成するようにしてある。流路15への気体注入部2の接続位置は、加圧溶解部3より上流側の位置であればよく、図1のように加圧部1より上流側の流路15に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路15に接続するようにしてもいずれでもよい。」
(イ)「【0039】
ここで、加圧溶解部3内で生成されるのと同じ濃度の気体溶解液について、加圧溶解部3内で加圧されている圧力と同じ圧力から大気圧まで減圧する際に、気泡が発生しない減圧度を、予め計算や測定で求めておき、減圧部4をこの予め求めた減圧度で、気体溶解液が流入側する側から流出側に向かって、気体溶解液の圧力を段階的に、あるいは連続的に、徐々に大気圧まで減圧できるように設定してある。従って、加圧溶解部3内で加圧された気体溶解液を、減圧部4において気泡が発生しない減圧度で徐々に大気圧まで減圧した後に、流路6の先端から吐出することによって、気体溶解液に気泡が発生することなく気体溶解液を吐出することができるものであり、加圧溶解部3で飽和量以上に気体が溶解された気体溶解液を、安定した高濃度の状態のまま取り出して利用することが可能になるものである。」
(ウ)「【0044】
図4は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を流路断面積が異なる複数の管体20a,20b,20cを備えて形成し、この流路断面積の異なる複数の管体20a,20b,20cで減圧部4が形成されるようにしてある。
【0045】
図4(a)の実施の形態では、流路断面積が異なる、つまり内径の異なる複数の管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてあり、気体溶解液の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。また図4(b)の実施の形態では、内径の異なる複数の管体20a,20b,20cをレジューサ21を介して接続して連ねるようにしてあり、気体溶解液の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。さらに図4(c)の実施の形態では、気体溶解液の流れの上流側から下流側へと連続的に径が小さくなる管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてある。
【0046】
この図4のものにあって、各管体20a,20b,20cの内径はφd1>φd2>φd3であるので、各管体20a,20b,20c内の気体溶解液の流速はV1<V2<V3となり、各管体20a,20b,20c内の気体溶解液の圧力はP1>P2>P3となる。従って、加圧溶解部3から送り出される気体溶解液の圧力P1を気泡が発生しない減圧度で、図4(a)(b)のものでは段階的に減圧して、また図4(c)のものでは連続的に減圧して、P3の大気圧まで徐々に下げることができるものである。
【0047】
図5は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を通して気体溶解液を排出する際に、流路6内を気体溶解液が流れる際の圧力損失によって、気体溶解液に気泡が発生しない減圧速度で気体溶解液の圧力を徐々に連続的に低下させ、気体溶解液の圧力を大気圧にまで低下させるようにしてある。従って図5の実施の形態では、加圧溶解部3内での圧力がP1の気体溶解液を、流路6内を通過させる際にP2?Pn-1へと、気体溶解液に気泡が発生しない減圧速度で徐々に連続的に圧力を低下させ(P1>P2>Pn-1)、流路6の終端では気体溶解液の圧力Pnが大気圧にまで低下するように、流路6の流路断面積と管路長Lを設定するようにしてあり、このような流路断面積と管路長さLを有する流路6によって減圧部4が形成されるものである。
【0048】
この管路長さLは、次の式から設定することができる。すなわち、
流体の関係式P=λ・(L/d)・(v^(2)/2g)
[Pは加圧溶解部3内の圧力、λは管摩擦係数、dは内径、vは流速、gは加速度]
から、L=(P・d・2g)/(λ・v^(2))を導くことができ、この式から計算して流路6の管路長さLを求めることができるものである。このように、流路6の管路長さLを所定長さに形成するだけで減圧部4を形成することができるものであり、気体溶解装置の構造をより簡単なものに形成することができるものである。」
(エ)「【図1】


(オ)「【図4】

【図5】



エ 甲第17号証の記載事項
甲第17号証は韓国語の文献であるため、ここでは請求人が添付した日本語訳を用いて摘記した。
(ア)段落<36>には、「螺線型ホース(170)は酸素溶存部(130)を通過した酸素水の水圧を徐々に低くすることで溶存酸素量を安定化しようとする」と記載されている。
(イ)図面3には、
「図面3

」と図示されている。

(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲3発明との対比
(ア)本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。
・甲3発明の「貯留タンク8」は、「水素水」の「貯留」を果たすものであるから、本件特許発明1の「水槽」に相当する。
・甲3発明の「水」を「電気分解」して「気体の水素」を「生成」する「電気分解器10」は、本件特許発明1の「電気分解により水素を発生させる水素発生手段」に相当する。
・甲3発明の「水を電気分解器10で電気分解して生成した気体の水素だけを、貯留タンク8から送られた水素水にチェックバルブ13を介して混入する」とした「水素混入部14」、及び、「水素混入部の下流に配置され、循環流路12中の水を循環させる送水機能を有」する「循環ポンプ15」は、前者については、貯留タンク8から送られた水と気体の水素とを混入させるとともに、混入後溶けきれない水素が水の中で泡(バブル)となるのは自明であること、後者については、ポンプは流体を送るものであり、ポンプの入口に対して出口の方の圧力が高くなるのは当然のことであるから、循環流路12中で水と水素が混入された直後の状態の水を加圧送水する手段といえることをそれぞれ考慮すると、両者をまとめたものが、本件特許発明1の「前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段」に相当する。
・甲3発明の「細泡器16」は、水(水素水)の流れからして、本件特許発明1の「溶存槽」の位置に配置されており、循環流路で循環ポンプ15の直後に介設される部材であるから、本件特許発明1の「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて」なる手段に相当する。
・甲3発明の「ベンチュリ管を内蔵」する「加圧器17」及び「加圧器17」と「貯留タンク8」とを繋ぐ「循環流路12」の一部は、「循環流路12」が管であることは技術的に明らかであるし、ベンチュリ管及びそれに続く管は、「管状路」といえるものであるから、循環の経路上の位置づけとして、本件特許発明1の「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて」なる手段の「水素水を前記水槽中に導く」とされた「管状路」に相当する。
・甲3発明の「貯留タンク8」、「水素混入部14、循環ポンプ15、細泡器16、加圧器17を経て貯留タンク8に戻る循環流路12を形成することで、循環する水素水に水素が再び混入されること」及び「循環ポンプ15」が有する「送水機能」により「循環流路12中の水を循環させる」ことは、本件特許発明1の「水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記溶存槽、前記管状路、前記水槽へと送水して循環させ」ることに対して、「水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いてなる手段、前記管状路、前記水槽へと送水して循環させ」るという概念で一致する。
・甲3発明においても「水素混入部14」で「水」に「水素」が「混入」され、その結果、水素水の生成が図られていることから見て、甲3発明でも一定の水素の溶解がなされているといえるから、甲3発明の「水素水供給装置」は、本件特許発明1の「水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置」に相当する。

(イ)以上の点に照らすと、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のように認定することができる。すなわち、本件特許発明1と甲3発明とは、
「水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって、
水槽と、
電気分解により水素を発生させる水素発生手段と、
前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と、
前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いてなる手段と、
前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いてなる手段の水素水を前記水槽中に導く管状路と、を含み、
前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いてなる手段、前記管状路、前記水槽へと送水して循環させる、
気体溶解装置。」
の点で一致し、以下の相違点1?5の点で相違している。
<相違点1>
本件特許発明1では、水素発生手段が、固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解であるのに対し、甲3発明では、水素発生手段の具体的構成が示されていない点。
<相違点2>
本件特許発明1では、加圧型気体溶解手段から水素水を導いてなる手段が、「貯留する溶存槽」であるのに対し、甲3発明では、「細泡器16」である点。
<相違点3>
本件特許発明1では、管状路が「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段」であるのに対し、甲3発明では、「ベンチュリ管及びそれに続く管」である点。
<相違点4>
本件特許発明1では、水素バブルをナノバブルとすることが特定事項に含まれているのに対し、甲3発明では、ナノバブルについて特段の定めがない点。
<相違点5>
本件特許発明1では、加圧型気体溶解手段から溶存槽へと送水される水の一部を水素発生手段に導き電気分解に供するのに対し、甲3発明では、水道の水を電気分解器に導き電気分解に供している点。

イ 相違点の検討
事案に鑑み、はじめに本件訂正に関係する前記相違点3について検討をする。
甲第16号証には、前記(1)ウ(ア)?(オ)によれば、「加圧溶解部3」に接続した「流路6」からなる「減圧部4」が記載され、また、甲第17号証には、前記(1)エ(ア)及び(イ)によれば、「酸素溶存部(130)」に接続した「螺旋型ホース(170)」により、酸素水の水圧を徐々に低くすることが記載されていることからして、甲第16号証及び甲第17号証には、細管による降圧移送手段に関する技術的事項が開示されているといえる。
しかしながら、甲3発明の「ベンチュリ管」は、その構造上、くびれ部(絞り部)の下流に降圧する部分を有するものであることは技術的には明らかであるところ、甲第3号証に接した当業者が、甲3発明の加圧器17に内蔵されている「ベンチュリ管」を、あえて別の構造である、甲第16号証及び甲第17号証に記載の上記技術的事項に置換しようとする動機付けを見いだすことはできない。むしろ、甲第16号証及び甲第17号証に記載の細管に置換してしまうと、ベンチュリ管特有の構造は失われ、当該加圧器における降圧部分(絞り部下流)は存在しなくなるから、当該加圧器自体を本件特許発明1の「降圧移送手段」に相当するものとして認めることはできない。加えて、本件特許発明1は、管状路の内径及び長さをさらに規定したものであるところ、このような規定を甲第16号証及び甲第17号証の記載事項から導出することはなおのこと困難であるといわざるを得ない。
したがって、甲3発明に甲第16号証又は甲第17号証に記載された技術的事項を適用することは、当業者といえども容易に想到することはないというべきである。
また、甲第4号証?甲第11号証には、細管による降圧移送手段について記載も示唆もされていない。
結局、これら甲第4号証?甲第11号証、甲第16号証及び甲第17号証の証拠を参酌しても、甲3発明において、前記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、相違点1、2、4及び5について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第11号証、甲第16号証及び甲第17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、弁駁書5、6ページにおいて、甲第16号証の記載や技術常識を踏まえると、甲3発明の「ベンチュリ管及びそれに続く管路」の内径や長さを本件特許の請求項1に記載の値とすることは、当業者の通常の創作能力による最適化又は好適化で実現できるため、甲3発明の「ベンチュリ管及びそれに続く管路」を「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)」とすることは、当業者が容易に想到し得る旨を主張している。
しかしながら、前記イのとおり、甲3発明のベンチュリ管を置換すること自体に阻害要因が存するし、本件特許発明1の「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段としての管状路」は、ベンチュリ管のようにくびれ部を有する管路でなく、両者の基本構造は大きく相違するため、単純に甲3発明の「ベンチュリ管及びそれに続く管路」の内径や長さの最適化や好適化のみによって当該管状路が得られるとは言い難いから、請求人の上記主張は採用できない。

(3)本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1の発明特定事項をさらに減縮したものであるから、前記(2)と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第11号証、甲第16号証及び甲第17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

(4)小括
以上の検討のとおりであるから、無効理由2は理由がない。

4 無効理由3(甲第12号証に係る発明を主発明とした進歩性欠如に関する無効理由)について
(1)甲第12号証の記載事項及び甲第12号証に記載された発明(甲12発明)について
ア 甲第12号証の記載事項
甲第12号証は韓国語の文献であるため、ここでは請求人が添付した日本語訳を用いて摘記した。
(ア)段落<10>には、「本発明は浄水システムによって形成される浄水に酸素を溶存させる酸素浄水装置に関するもので、」と記載されている。
(イ)段落<14>には、「図1のように酸素浄水装置(100)はフィルター部(110)によって濾過される浄水を貯蔵する貯水槽(120)と、上記のフィルター部(110)によって濾過される浄水を電気分解する酸素発生器(130)及び上記の貯水槽(120)の浄水と酸素発生器(130)の酸素を混合する溶解槽(140)と構成される。」と記載されている。
(ウ)段落<15>には、「そして、溶解槽(140)は図2のようにケース(141)に内蔵され入り口(142a)のある蓋(142)と出口(143a)のある胴体(143)が結合された本体部(144)と;上記の本体部(144)内に形成されて上記の入り口(142a)から供給される浄水と酸素が混合される混合室(145)及び;上記のケース(141)の排出管路に定着されて溶存酸素を安定化させる安定化管(148)と構成される。」と記載されている。
(エ)段落<16>には、「従って図1のように上記の貯水槽(120)によって供給される浄水と上記の酸素発生器(130)によって生成される酸素が上記の溶解槽(140)の本体部(144)に圧送された後、上記の混合室(145)で混合された状態で上記の安定化管(148)を経由しながら安定化して貯蔵場所に供給される。」と記載されている。
(オ)段落<17>には、「その際、図1の未説明符号“150”は酸素浄水装置の制御器で、“160”は浄水と酸素の供給圧力を調節する水圧ポンプで、“146”は排出管路だ。」と記載されている。
(カ)段落<24>には、「フィルター部(110)らによって濾過される浄水を貯蔵する貯水槽(120)と、上記のフィルター部(110)によって濾過される浄水を電気分解する酸素発生器(130)及び、上記の貯水槽(120)の浄水と上記の酸素発生器(130)の酸素を混合する溶解槽(140)に成って、上記の貯水槽(120)の浄水と上記の酸素発生器(130)の酸素が上記の溶解槽(140)の本体部(144)に流入された後混合室(145)を経由して排出管路(146)に排出される酸素浄水装置として、上記の本体部(144)の上部側に上記の貯水槽(120)の浄水と上記の酸素発生器(130)の酸素を噴霧して接触面積を増大する噴霧部(10)が形成され、上記の混合室(145)に上記の浄水と酸素の接触時間及び滞留時間を増大するフィルター部(30)が内蔵され、上記の本体部(144)の出口(143a)と上記の排出管路(146)の間に上記のフィルター部(30)を通過する浄水中の溶存酸素を安定化する安定化部(20)が繋がっているのを特徴的構成とする。」と記載されている。
(キ)段落<25>には、「本実施例による酸素浄水装置(100)のフィルター部(110)と貯水槽(120)と酸素発生器(130)と溶解槽(140))と制御器(150)と水圧ポンプ(160)は従来の技術と機能上同一なので詳しい説明は省略する。」と記載されている。
(ク)段落<26>には、「溶解槽(140)に噴霧部(10)と安定化部(20)とフィルター部(30)をもっと具備して酸素の溶存効率を向上させたことに特徴がある。」と記載されている。
(ケ)段落<27>には、「溶解槽(140)は貯水槽(120)の浄水と酸素発生器(130)の酸素を混合して酸素を溶存させるもので、上記の本体部(144)の上部側に形成した噴霧部(10)と上記の本体部(144)に内蔵されたフィルター部(30)及び上記の本体部(144)の周りに装着された安定化部(20)と構成される。」と記載されている。
(コ)段落<32>には、「また、フィルター部(30)は本体部(144)内に装着されて浄水と酸素を混合するもので、上記の混合室(145)の床面に設置されて貫通孔らが形成された床部材(31)と、この床部材(31)の貫通孔に装着されて浄水と酸素の異物を抜いて接触面積に増大する多数個の中空糸(32)に成っている。」と記載されている。
(サ)段落<33>には、「その際、フィルター部(30)に配置された中空糸(32)は隙間の間隔が0.01?0.5マイクロメーター程度に過ぎない微細管で、浄水と酸素中に含まれた微細不純物が抜けるだけではなく浄水と酸素を微粒化して接触時間及び滞留時間を増大する機能を行う素材だ。」と記載されている。
(シ)段落<35>には、「また、安定化部(20)は上記の本体部(144)の出口(143a)と排出管路(146)を繋ぐものでフィルター部(30)の排出孔を通過する浄水と酸素の接触時間を増やす機能を行う。」
と記載されている。
(ス)段落<36>には、「安定化部(20)は図4aのように本体部(144)の周りに沿ってねじ式に巻いて形成することもでき、図4bのように本体部(144)の周りに上下方向に沿って多段階に配置することも出来る。」と記載されている。
(セ)段落<42>には、「フィルター部(110)によって異物が抜いた浄管水中の一部分の浄水がイオン交換樹脂フィルターを経由して酸素発生器(130)に供給された後電気分解などを工程を通じて一定量の酸素を発生させる。」と記載されている。
(ソ)段落<43>には、「貯水槽(120)の浄水と酸素発生器(130)の酸素が水圧ポンプ(160)のセッティング圧力によって溶解槽(140)の流入管路(147)に流入された後、本体部(144)の入り口に形成された噴霧部(10)を通じて分散される。」と記載されている。
(タ)段落<45>には、「溶解槽(140)に流入された浄水と酸素をフィルター部(30)の中空糸(32)を通過する過程で微粒子に分解する状態なので、浄水と酸素の接触面積が増大して溶存効率が極大化するものだ。」と記載されている。
(チ)段落<46>には、「溶解槽(140)のフィルター部(30)を経由しながら形成された混合物(浄水+酸素)が安定化部(20)を経て酸素の溶存状態がそのまま維持された状態で排出管路(146)を経由して貯蔵場所に供給される。」と記載されている。
(ツ)段落<47>には、「酸素浄水装置の混合室にフィルター部を内蔵して浄水と酸素の送水圧力を上昇させることで安定化部の長さが相対的に短くなって制作費用の節減は勿論占める面積が小さくなるだけではなく酸素浄水装置の設置空間が最小化して空間活用上有利な効果がある。」と記載されている。
(テ)図面1及び図面3には、
「図面1

」及び
「図面3

」と図示されており、図面1から、酸素発生器(130)によって水素(H_(2))が生成されることが、図面3から、安定化部(20)がねじ式に巻かれた管状であることが、図面1及び図面3から、貯水槽(120)中の水が、水圧ポンプ(160)、溶解槽(140)、安定化部(20)、貯水槽(120)へと送水され循環していることが、それぞれ見て取れる。

イ 甲第12号証に記載された発明
甲第12号証の前記記載事項及び図示内容から、甲第12号証には、図1に記載された酸素浄水装置(100)として、
「浄水に酸素を溶存させる酸素浄水装置(100)であって、
貯水槽(120)と、
電気分解により酸素及び水素を発生させる酸素発生器(130)と、
前記酸素発生器(130)からの酸素を貯水槽(120)からの浄水に与えて加圧送水する水圧ポンプ(160)と、
前記水圧ポンプ(160)から酸素水を導いて貯留する溶解槽(140)と、
前記溶解槽(140)に貯留された酸素水を前記貯水槽(120)に導く、ねじ式に巻かれた管状の安定化部(20)と、を含み、
貯水槽(120)中の浄水を前記水圧ポンプ(160)、前記溶解槽(140)、前記安定化部(20)、貯蔵場所へと送水して酸素を微粒化するとともに、
前記貯蔵場所へと送水される浄水の一部を前記酸素発生器(130)に導き電気分解に供する酸素浄水装置(100)。」
との発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲12発明との対比
甲12発明と本件特許発明1とは、酸素と水素の上位概念である「気体」を溶解させるという点では一致している。
そうすると、甲12発明の「浄水に酸素を溶存させる酸素浄水装置(100)」は、本件特許発明1の「水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置」に対して、上位概念の「水と気体の混合物を生成する気体溶解装置」という点で一致するし、甲12発明の「酸素発生器(130)」は、本件特許発明1の「水素発生手段」に対して、上位概念の「気体を発生させる手段」という点で一致する。
また、甲12発明の「水圧ポンプ(160)」は、酸素(気体)を浄水に与えて加圧送水するためのものであるから、本件特許発明1の「加圧型気体溶解装置」に相当する。
さらに、甲12発明の「貯水槽(120)」、「溶解槽(140)」、「ねじ式に巻かれた管状の安定化部(20)」は、それぞれ、本件特許発明1の「水槽」、「溶存槽」、「管状路」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲12発明とは、
「水と気体の混合物を生成する気体溶解装置であって、
水槽と、
電気分解により気体を発生させる手段と、
前記発生手段からの気体を前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と、
前記加圧型気体溶解手段から混合物を導いて貯留する溶存槽と、
前記溶存槽に貯留された混合物を前記水槽中に導く管状路と、を含み、
前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記溶存槽、前記管状路、へと送水させる気体溶解装置。」
の点で一致し、以下の相違点6?相違点11の点で相違するものと認められる。
<相違点6>
本件特許発明1では、気体溶解装置において、水と混合するのは水素であるのに対して、甲12発明では、酸素浄水装置(100)において、浄水と混合するのは酸素である点。
<相違点7>
本件特許発明1では、水素を発生させる電気分解は、固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解で行われるのに対して、甲12発明では、電気分解ではあるが、具体的にどのような電気分解であるのか不明である点。
<相違点8>
本件特許発明1では、溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く管状路は、「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段」であるのに対して、甲12発明では、溶解槽(140)に貯留された酸素水を貯蔵場所に導く管状の安定化部(20)の内径や長さが特定されていない点。
<相違点9>
本件特許発明1では、水槽中の水を加圧型気体溶解手段、溶存槽、管状路、水槽へと送水して循環させているのに対して、甲12発明は、貯水槽(120)の水を水圧ポンプ(160)、溶解槽(140)、管状の安定化部(20)を経て貯蔵場所に導いており、循環させているかどうか不明である点。
<相違点10>
本件特許発明1では、水槽中の水を加圧型気体溶解手段、溶存槽、管状路、水槽へと送水して循環させることで水素バブルをナノバブルとしているのに対して、甲12発明では、酸素をナノバブルとしているかどうか不明である点。
<相違点11>
本件特許発明1では、加圧型気体溶解手段から溶存槽へと送水される水の一部を水素発生手段に導き電気分解に供しているのに対して、甲12発明では、貯水槽(120)へと送水される浄水の一部を酸素発生器(130)に導き電気分解に供している点。

イ 相違点の検討
事案に鑑み、まず前記相違点6について検討をする。
甲第12号証では、酸素発生器(130)において酸素が選択され、水素が捨てられている(甲第12号証の図面1における「H_(2)」)ことから、甲第12号証に開示される酸素浄水装置(100)は、浄水に酸素を溶解させることに特化したものというべきである。
したがって、甲第12号証に接した当業者は、甲12発明において、酸素を溶存するという本来の目的を替えてまで、捨てられている水素を浄水に溶解させる構成とすることはしないと解されるから、本件特許発明1の相違点6に係る発明特定事項が当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
また、酸素を浄水に溶解させる構成において、捨てられている水素を浄水に溶解させるという技術思想は、甲第4号証?甲第6号証、甲第9号証?甲第11号証及び甲第13号証?甲第17号証のいずれの証拠にも記載されていないことから、甲12発明とこれらの証拠に記載された事項を組み合わせたとしても、上記発明特定事項には至らない。
したがって、前記相違点7?11について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第12号証に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第6号証、甲第9号証?甲第11号証及び甲第13号証?甲第17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書55ページにおいて、「このような主引用発明と技術的特徴が共通する甲第16号証に記載の気体溶解装置において、水に効率高く溶解できる気体として酸素の他、水素が例示されているのであれば、上述のように、水素水の需要が高まっている近年の状況も鑑みて、主引用発明において、酸素発生器(130)において電気分解により発生する水素を、酸素の替わりに、循環する貯水槽(120))の浄水に与えて溶存させることで、水素水を生成するよう試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、当業者にとって格別困難なものではない。」と主張している。
しかしながら、水素を溶解する装置が知られているからといって、当業者が、酸素を溶存させる酸素浄水装置である甲12発明において、酸素を溶存するという本来の目的を替えてまで、「水素を、酸素の替わりに、循環する貯水槽(120)の浄水に与え」るようになすとは考えにくく、また、そのような変更は、結果として甲12発明の成立自体を否定することとなると解するのが相当である。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(3)本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1の発明特定事項をさらに減縮したものであるから、前記(2)と同様の理由により、甲第12号証に記載された発明、並びに、甲第4号証?甲第6号証、甲第9号証?甲第11号証及び甲第13号証?甲第17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

(4)小括
以上の検討のとおりであるから、無効理由3には理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許は、無効理由1?5によって無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって、
水槽と、
固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と、
前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と、
前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽と、
前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く、1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し、0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段としての管状路と、を含み、
前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段、前記溶存槽、前記管状路、前記水槽へと送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとともに、前記加圧型気体溶解手段から前記溶存槽へと送水される水の一部を前記水素発生手段に導き電気分解に供することを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
前記溶存槽は前記加圧型気体溶解手段からの水素水を加圧貯留することを特徴とする請求項1記載の気体溶解装置。
【請求項3】
前記溶存槽は少なくともその一部にフィルターを与えられていることを特徴とする請求項2記載の気体溶解装置。
【請求項4】
前記加圧型気体溶解手段はダイヤフラムポンプを含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の気体溶解装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-09-15 
結審通知日 2020-09-17 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2015-255409(P2015-255409)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (B01F)
P 1 113・ 851- YAA (B01F)
P 1 113・ 121- YAA (B01F)
P 1 113・ 537- YAA (B01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 宮澤 尚之
村岡 一磨
登録日 2017-03-31 
登録番号 特許第6116658号(P6116658)
発明の名称 気体溶解装置及び気体溶解方法  
代理人 溝田 宗司  
代理人 関 裕治朗  
代理人 溝田 宗司  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 関 裕治朗  
代理人 特許業務法人むつきパートナーズ  
代理人 特許業務法人むつきパートナーズ  
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