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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A61B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61B
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61B
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61B
管理番号 1372974
審判番号 訂正2020-390061  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-07-29 
確定日 2021-02-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4994835号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4994835号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4994835号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は、次のとおりである。
2004年(平成16年)3月22日:国際出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月27日、米国)
平成24年 5月18日:特許権の設定登録
令和 2年 7月29日:本件訂正審判請求
令和 2年 9月15日付け:審尋
令和 2年10月19日:回答書

第2 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第4994835号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項1?17について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正審判請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」とあるのを、「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」に訂正する(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2乃至17も同様に訂正する)。

第4 当審の判断
1 訂正の目的
訂正事項1は、「第1の組の孔の軸線」について「該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように」という態様に限定するとともに「第2の組の孔の軸線」について「該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように」という態様に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の願書に添付した明細書には、段落【0007】に「本発明によれば、ペグねじ孔は第1の組と第2の組とに分けて配置されている。・・・さらに好ましくは、第2の組のペグ孔は、それらペグ孔に配置されたペグがプレートの本体部に対して概略垂直な方向に向けられ且つ第1の組のペグの間に延びるように、プレートに対して角度をなしている。第1の組のペグ孔内のペグは、軟骨下骨片の背側面に対する支持を提供する一方、第2の組のペグ孔内のペグは関節骨表面の裏側の軟骨下骨の手掌側面に対する支持を与える。」と記載され、段落【0016】に「ペグ140がペグ孔134を通して骨片にドリル穿孔された孔に挿入され、ペグの頭部が掌側プレートに螺合させられる。同様に、ペグ142が、ペグ孔138並びに関節表面の後ろにドリル穿孔された孔に挿入され、プレートに固定され、そこでの支持を提供する。第1の組のペグ140は、軟骨下骨の中央側面及び/又は背側面を支持する突起を形成し、このような支持は特に遠位橈骨の背側の不安定な骨折部において所望される。第2の組のペグ142は、骨表面の関節表面の後ろで掌側面における支持を提供する突起を形成する。第1の組のペグ及び第2の組のペグは、好ましくは横方向に重なっており、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供する。好ましくは、各組132,136に少なくとも三つのペグが設けられ、好ましい程度の軟骨下支持を与える。」と記載されているから、ペグ孔134に挿入され掌側プレートに固定されるペグ140は軟骨下骨の中央側面及び/又は背側面を支持する突起を形成し、また、ペグ孔138に挿入され掌側プレートに固定されるペグ140は骨表面の関節表面の後ろで掌側面を支持する突起を形成することにより、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供することが記載されている。
したがって、願書に添付した明細書には、第1の組の孔の軸線は、第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように延びることと第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように延びること、すなわち、「第1の組の孔の軸線」とについて「該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように」という態様と「第2の組の孔の軸線」について「該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように」という態様が記載されていると認められる。
よって、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記1で述べたとおり、訂正事項1は、「第1の組の孔の軸線」及び「第2の組の孔の軸線」について構成要件を限定するものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。

4 一群の請求項について
訂正前の請求項1?17について、請求項2?17はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?17は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。

5 訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることについて
(1)訂正後の発明
訂正後の請求項1?17に係る発明は次のとおりのものである。(以後、訂正後の請求項1?17に係る発明を、それぞれ「訂正発明1」?「訂正発明17」という。)
【請求項1】
手掌手首骨折の固定のための固定プレートにおいて、
細長い近位本体部、および該本体部の一端に位置する遠位頭部を有する、ほぼ剛性のプレート、
を備え、
前記頭部は、前記本体部に対して上方向に角度をなし、
前記頭部は、内部において一定の角度の突起を個々に保持すべく構成される、縦方向にずらして配置された第1の組の孔および第2の組の孔を画定し、各孔は、前記プレートから延びる軸線を画定し、
前記第1の組の孔は、第1の線にほぼ沿って配列され、
前記第2の組の孔は、第2の線にほぼ沿って配列され、
前記第2の線は、前記第1の線に対して前記頭部上で縦方向にずらされ、
前記第2の組の孔は、前記第1の組の孔と比較すると、前記プレートの縦軸に対して遠位側にずらして配置され、
前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の遠位側に突出し、前記プレートが遠位橈骨に連結されると、前記第1の組の孔の前記軸線が前記第2の組の孔の前記軸線間を通って、前記遠位橈骨内に延びるように構成され、
前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている、固定プレート。
【請求項2】
請求項1に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の線、および前記第2の線は、同一直線上になく、
前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の一定の角度の軸線の間で延び、かつ該軸線に対して非平行である、固定プレート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定プレートにおいて、
前記頭部は、前記第1の線の遠位側にある遠位バットレス部分を含み、
前記第2の組の孔は、前記バットレス部分に設けられている、固定プレート。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記バットレス部分は、遠位側で先細りになる、固定プレート。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔は、ねじ切りされている、固定プレート。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記プレートは、細長い本体部、および前記本体部の一端に設けられた骨幹端の頭部を含み、
前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔は、前記頭部に設けられる、固定プレート。
【請求項7】
請求項6に記載の固定プレートにおいて、
前記頭部は、前記本体部に対して角度をなしている、固定プレート。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記プレートは、前記手掌手首骨折の固定に適したサイズの、ほぼT字状のプレートである、固定プレート。
【請求項9】
請求項1に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の組の孔のうちの少なくとも二つが、互いに対して斜めに延びている一定の角度の軸線を画定する、固定プレート。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記第2の組の孔の前記軸線は、互いに対して平行な一定の角度の軸線を画定する、固定プレート。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の前記固定プレートを含む、システムにおいて、
前記プレートの前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔それぞれに結合可能で、一つ以上の骨片を支持すべく構成される、第1の組の突起、および第2の組の突起、
をさらに備える、
システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記突起は、非ねじ切りのシャフトを有する、システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起のうちの少なくとも二つが、互いに対して斜めに延びている、システム。
【請求項14】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記第2の組の突起は、互いに対して平行である、システム。
【請求項15】
請求項11?14のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起は、前記第2の組の突起の遠位側に突出する、システム。
【請求項16】
請求項1?10のいずれか1項に記載の前記プレートを含むシステムにおいて、
前記プレート内の前記第1の組の孔に対して一定の角度の関係で結合され、線形に配列された、第1の組の少なくとも三つの細長い突起であって、前記プレートが前記遠位橈骨の手掌側に配置されるとき、前記第1の組の突起が、前記手掌側から前記遠位橈骨内に入るように方向付けられる、第1の組の線形に配列された少なくとも三つの細長い突起と、
前記プレート内の前記第2の組の孔に対して一定の角度の関係で結合され、ほぼ線形に配列された、第2の組の少なくとも二つの細長い突起と、
をさらに備え、
前記第2の組の突起は、前記第1の組の突起の遠位側の位置から延び、かつ、前記プレートが前記遠位橈骨の前記手掌側に配置されるとき、前記第2の組の突起も、前記手掌側から前記遠位橈骨内に入るように方向付けられ、
前記第1の組の突起を通る軸線は、前記第2の組の突起を通る軸線の遠位側に突出する、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起、および前記第2の組の突起は、横方向に重なっている、システム。

(2)請求人の主張
本件特許に関し、請求人は、東京地方裁判所において3件の特許権侵害差止等請求事件(以下、これらの事件をまとめて「侵害事件」という。)を提起しているところ、これらの事件において被告が主張する無効の抗弁はいずれも理由がなく、訂正後の請求項1?17に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができることができるものであると主張している。
侵害事件における無効の抗弁の内容と証拠は次のとおりである(令和2年10月19日の回答書(以下、単に「回答書」という。))。

(2-1)令和元年(ワ)第14314号事件(以下、「314号事件」という。)
(a)新規事項を追加する補正(特許法第17条の2第3項、同法第123条第1項第1号)
(b)明確性違反(特許法第36条第6項第2号、同法第123条第1項第4号)
(c)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号、同法第123条第1項第4号)
(d)実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号、同法第123条第1項第4号)
(e)進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第123条第1項第2号)
(甲第1号証を主引用例とするもの)

(2-2)令和元年(ワ)第14319号事件(以下、「319号事件」という。)
(f)進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第123条第1項第2号)
(甲第1号証を主引用例とするもの)
(g)進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第123条第1項第2号)
(甲第5号証を主引用例とするもの)
(h)原文新規事項(特許法第123条第5項)
(i)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号、同法第123条第1項第4号)

(2-3)令和元年(ワ)第14320号事件(以下、「320号事件」という。)
(j)新規牲欠如((特許法第29条第1項第3号、同法第123条第1項第2号)
(甲第13号証を引用例とするもの)
(k)進歩性欠如((特許法第29条第2項、同法第123条第1項第2号)
(甲第13又は14号証を主引用例とするもの)

甲第1号証:特表2000-512186号公報
甲第2号証:特開2002-345836号公報
甲第3号証:特表2003-509107号公報
甲第4号証:特公平7-30769号公報
甲第5号証:国際公開第01/56452号
甲第6号証:特表2003-529414号公報
甲第7号証:米国意匠特許第443060号明細書
甲第8号証:日本手の外科学会雑誌、第19巻、第2号、第6?9頁
甲第9号証:International Orthopaedics、vol.27 p.1-6
甲第10号証:国際公開第97/08999号
甲第11号証:仏国特許出願公開第2405062号明細書
甲第12号証:Less Invasive Stabilization System
甲第13号証:日本手の外科学会雑誌、第19巻、第1号、vol.19
甲第14号証:米国特許出願公開第2001/0011172号明細書
甲第15号証:日本ストライカー社のカタログ
甲第16号証:インプラント・テクノロジー社のカタログ
甲第17号証:インプラント・テクノロジー社のカタログ

(3)判断
(3-1)新規事項を追加する補正及び原文新規事項について(上記(a)及び(h)に関する事項)
314号事件において、平成24年3月15日付けの手続補正書により請求項1に追加された「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」(以下、「構成要件1K」という。)は、出願当初明細書(国内書面に添付された明細書翻訳文)に記載はなく、且つ出願当初明細書から自明な事項でもないことから、その補正は新規事項を追加するものである、と主張されている(回答書3?4頁)。
また、319号事件において、「本件特許に係る国際出願の明細書、請求の範囲又は図面は、第1の組のペグが軟骨下骨(片)の中央/背側のアスペクトを支持すること、第2の組のペグが軟骨下骨の手掌側のアスペクトを支持すること、を開示しているにすぎず、ペグ(又は孔の軸線)が軟骨下骨の特定の位置における接線方向に延びるような技術的事項は開示されていないから、ペグが延びる方向と、軟骨下骨の各位置の接線方向との関係について明確な記載のない国際出願日における明細書等からは、「第1の組の孔の軸線は、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び」「第2の組の孔の軸線は、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びる」という技術的事項を理解することができない。したがって、請求項1は国際出願日における明細書等に記載されていない新たな技術的事項を含んでいるものであるから、当該明細書等に記載した事項の範囲内にはない。」と主張されている(回答書83?84頁)。
前者の主張は、本件特許請求の範囲の請求項1における構成要件1Kは、本件特許に係る国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文(特表2006-521160号。以下、「明細書翻訳文」ともいう。)に記載した事項の範囲内のものではない、というものであり、また、後者の主張は、同構成要件1Kは、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書(以下、「原文明細書」ともいう。)に記載した事項の範囲内のものではない、というものであるから、以下では一緒に検討する。

原文明細書(国際公開第2004/087005号)には次のとおり記載されている。
(i)「More preferably, the second set of peg holes are angled relative to the plate such that pegs positioned within the holes are oriented substantially perpendicular to the body of the plate and extend between the pegs of the first set.」(3頁6?9行目)
(当審訳:さらに好ましくは、第2の組のペグ孔は、それらペグ孔に配置されたペグがプレートの本体部に対して概略垂直な方向に向けられ且つ第1の組のペグの間に延びるように、プレートに対して角度をなしている。)
(ii)「Pegs in the first set of peg holes provide support for the dorsal aspect of the subchondral bone fragments, while pegs in the second set of peg holes provide support for the volar aspect of the subchondral bone, behind the articular bone surface.」(3頁9?11行目)
(当審訳:第1の組のペグ孔内のペグは、軟骨下骨片の背側面に対する支持を提供する一方、第2の組のペグ孔内のペグは関節骨表面の裏側の軟骨下骨の手掌側面に対する支持を与える。)

(iii)「The sets 132,136 of pegs preferably laterally overlap to provide tangential cradling of the subchondral bone.」(6頁10?11行目)
(当審訳:第1の組のペグ及び第2の組のペグは、好ましくは横方向に重なっており、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供する。)

また、翻訳文の【0007】には、上記(i)及び (ii)の当審訳と同じ記載が、また、同【0016】には、上記(iii)の当審訳と同じ記載がある。

そうすると、原文明細書及び明細書翻訳文には、(i)第2の組のペグ孔は、それらペグ孔に配置されたペグがプレートの本体部に対して概略垂直な方向に向けられ且つ第1の組のペグの間に延びるように、プレートに対して角度をなしていることと、(ii)第1の組のペグ孔内のペグは、軟骨下骨片の背側面に対する支持を提供する一方、第2の組のペグ孔内のペグは関節骨表面の裏側の軟骨下骨の手掌側面に対する支持を与えることと、(iii)第1の組のペグ及び第2の組のペグは、好ましくは横方向に重なっており、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供することが記載されており、そして、技術常識に照らしてこれらを総合してみれば、「第1の組の孔の軸線は、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び」「第2の組の孔の軸線は、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びる」という技術的事項が記載されていると認められる。
したがって、訂正後の本件特許請求の範囲の請求項1における「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、」「背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、」「手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」は、本件特許に係る国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであり、また、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書に記載した事項の範囲内のものである。
よって、平成24年3月15日付け手続補正書でした補正は、特許法第184条の12第2項で読み替える同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしており、また、本件特許に係る出願は、特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号に該当しない。

(3-2)明確性違反について(上記(b)に関する事項)
314号事件において、請求項1は、「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、」「背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、」「手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」(構成要件1K)との記載を含むが、どのようにすれば、「第1の組の孔の軸線が、相対的に背側面側の軟骨下骨の接線方向に延びる」ものとなるか明確ではなく、同様に、どのようにすれば、「第2の組の孔の軸線が、相対的に手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びる」ものとなるか明確ではない、と主張されているので(回答書9頁)、明確性について判断する。

構成要件1Kに係る発明特定事項は、その記載自体が明確であり、第1の組の孔の軸線と第2の組の孔の軸線との相対的な位置関係も明確である。
また、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には、段落【0007】に「本発明によれば、ペグねじ孔は第1の組と第2の組とに分けて配置されている。・・・さらに好ましくは、第2の組のペグ孔は、それらペグ孔に配置されたペグがプレートの本体部に対して概略垂直な方向に向けられ且つ第1の組のペグの間に延びるように、プレートに対して角度をなしている。第1の組のペグ孔内のペグは、軟骨下骨片の背側面に対する支持を提供する一方、第2の組のペグ孔内のペグは関節骨表面の裏側の軟骨下骨の手掌側面に対する支持を与える。」と記載され、段落【0016】に「ペグ140がペグ孔134を通して骨片にドリル穿孔された孔に挿入され、ペグの頭部が掌側プレートに螺合させられる。同様に、ペグ142が、ペグ孔138並びに関節表面の後ろにドリル穿孔された孔に挿入され、プレートに固定され、そこでの支持を提供する。第1の組のペグ140は、軟骨下骨の中央側面及び/又は背側面を支持する突起を形成し、このような支持は特に遠位橈骨の背側の不安定な骨折部において所望される。第2の組のペグ142は、骨表面の関節表面の後ろで掌側面における支持を提供する突起を形成する。第1の組のペグ及び第2の組のペグは、好ましくは横方向に重なっており、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供する。好ましくは、各組132,136に少なくとも三つのペグが設けられ、好ましい程度の軟骨下支持を与える。」と記載されており、ペグ孔134に挿入され掌側プレートに固定される第1の組のペグ140は軟骨下骨の中央側面及び/又は背側面を支持する突起を形成し、また、ペグ孔138に挿入され掌側プレートに固定される第2の組のペグ142は骨表面の関節表面の後ろで掌側面を支持する突起を形成することにより、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供すること、すなわち、プレートが遠位橈骨に連結される場合に、第1の組の孔の軸線は、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、第2の組の孔の軸線は、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されていることが記載されているといえ、当該記載から、第1の組の孔の軸線と第2の組の孔の軸線との相対的な位置関係は明確であるから、本件特許明細書の記載に基づき「構成要件1K」の意味を理解することができるものである。
したがって、訂正後の特許請求の範囲の記載は特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たしている。

(3-3)サポート要件違反について(上記(c)及び(i)に関する事項)
314号事件において、構成要件1Kが「第1の組の孔の軸線」及び「第2の組の孔の軸線」の延在方向を規定したものであると考えると、その範囲は請求項1に係る発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている、と主張されている(回答書10?11頁)。
また、319号事件において、構成要件1Kに関し、孔の軸線が軟骨下骨の接線方向に延びているだけで、関節表面及び軟骨下表面の支持を達成することができるという理由と、背側面側の軟骨下骨、手掌側面側の軟骨下骨との位置関係により複数の骨片を所望通りに整列及び安定化させることを達成できる理由を本件特許明細書は示していないから、請求項1に係る発明により発明の課題を解決することができることを認識できない、と主張されているので(回答書86?87頁)、サポート要件について判断する。

本件特許明細書には、「【0004】・・・しかしながら、現在利用可能なプレートシステムは、所望の位置合わせ配置及び安定化状態を提供することはできない。特に、遠位橈骨骨折の場合、軟骨下骨と現在のプレートでは接していない関節表面との両方の位置を合わせ且つ安定化させる必要がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、改良型の遠位橈骨骨折のための手掌固定システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、骨折部の複数の骨片を所望通りに整列及び安定化させて適正な治癒を可能とさせる手掌固定システムを提供することにある。・・・」と記載されているから、「骨折部の複数の骨片を所望通りに整列及び安定化させて適正な治癒を可能とさせる手掌固定システムを提供すること」が課題の1つとして記載されている。
また、上記(3-2)で摘記した【0007】及び【0016】によれば、本件特許明細書には、ペグ孔134に挿入され掌側プレートに固定されるペグ140は軟骨下骨の中央側面及び/又は背側面を支持する突起を形成し、また、ペグ孔138に挿入され掌側プレートに固定されるペグ140は骨表面の関節表面の後ろで掌側面を支持する突起を形成することにより、軟骨下骨の接線方向支持(tangential cradling)を提供すること、すなわち、プレートが遠位橈骨に連結される場合に、第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されることが記載されている。
そして、本件特許明細書の【0016】には、上記(3-2)で摘記した記載に続けて、「それによって、骨折固定システムは、概略接線方向に適正な向きで骨片を支持する骨組を形成する。」と記載されている。
そうすると、訂正発明1は、「前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」との事項を有することによって、「骨折部の複数の骨片を所望通りに整列及び安定化させて適正な治癒を可能とさせる手掌固定システムを提供する」との課題を解決できると認識できるといえる。
また、訂正発明2?17は、訂正発明1の発明特定事項を全て有しているから、訂正発明1と同様に、上記課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(3-4)実施可能要件違反について(上記(d)に関する事項)
314号事件において、構成要件1Kについて、本件特許明細書の段落【0016】の記載では、「相対的」をどのように設定すれば、課題「遠位撓骨の軟骨下骨およびその遠位側の関節表面の位置を安定化させる」を解決できるのかが不明である、本件特許において、上記課題を満足する固定プレートを製造するためには、当業者が「相対的」について、本件特許明細書及び出願時の技術常識に基づいたとしても、過度の試行錯誤を行わなければならない、と主張されているので(回答書11?12頁)、実施可能要件について判断する。

上記(3-2)で述べたように、本件特許明細書の記載から、構成要件1Kにおける第1の組の孔の軸線と第2の組の孔の軸線との相対的な位置関係は明確であるから、本件特許明細書には、構成要件1Kを含む訂正発明1?17について、その物を生産でき、かつ、使用できるように記載されているといえる。
なお、訂正発明1?17が、上記課題を解決できることは、上記(3-3)で述べたとおりである。
したがって、本件特許に係る出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(3-5)新規牲欠如及び進歩性欠如について
(3-5-1)甲各号証に記載された事項
あ 甲第1号証
(あ)「発明の背景
本発明は骨プレートに関する。特に、本発明は、近位上腕骨の骨折を固定するための骨プレートおよび遠位橈骨の骨折を固定するための骨プレートに関する。」(5頁3?5行)
(い)「図2-9に示された本発明の骨プレート30は、近位上腕骨のすべての骨折の整復と内部固定のために適合しており、特に、近位上腕骨4の3および4部分の骨折の整復と内部固定のために適合している。
図2において、近位上腕骨中の骨折を内部固定するための本発明の骨プレートは、概ね、30で示されている。骨プレート30には、細長い幹部分32と頭部34が含まれている。」(10頁1?7行)
(う)「図2に示されている通り、幹部分32の穴48および52、頭部分34の穴62A、62Bと64A、64Bは骨プレート30を貫通して延伸しており、骨ねじを受け、骨プレート30上の骨ねじの突出を最少にするための皿穴であることが望ましい。頭部分34の穴62A、62Bと64A、64Bは、海綿状骨ねじ(図示されていない)を受けて支持するために適合されており、一方、穴48と52は、皮質状骨ねじ(図示されていない)を受けて支持するために適合されている。
図3と4は、骨プレート30の断面図である。図3に示されている通り、細長い幹部分32の頭部34と近位端46は、過半数の細長い幹部分32の平面に対して約170度の概ね鈍角を形成しており、上部遷移表面65Aの曲率半径は4.0であり、内面65Bの長手方向曲率半径は3.25である。その結果、頭部34は細長い幹部分32に対して持ち上げられ、その結果、近位上腕骨4の大粗面18の形状との一致が改善される(図6-8に図示)。」(11頁24行?12頁8行)
(え)「使用に際して、骨プレート30は、幹15と上腕頭部16を有する上腕骨4の近位端72に装着される。図6は、様々な骨折部位(例えば、骨折線20と22)上に本発明の骨プレート30が固着されている上腕骨4を示す。図7は、海綿状骨ねじ69と皮質状骨ねじ68とによって上腕骨2の近位端72に取りつけられ、装着された図6の骨プレート30の断面図である(線7--7に沿って取った)。図8は、海綿状骨ねじ69によって上腕骨2に取りつけられ、装着された図6の骨プレート30の断面図である(線8--8に沿って取った)。」(13頁3?9行)
(お)「骨プレートは薄型で、解剖学的形状をしているので、橈骨上への遠位配置と、支持プレート(buttress plate)としての使用が可能である。」(18頁2?3行)
(か)「手掌遠位橈骨の骨折を固定するための本発明の骨プレートが、図16に、番号140で示されている。その手掌プレートは、前方脱臼を伴う遠位橈骨のすべての不安定な骨折において示されている。古典的な指標としては、小さな手掌断片を有する逆バルトン骨折である。背面プレートに関しては、手掌プレートが、関節面の陥凹部分を牽引によって整復させることができない、激しく粉砕された遠位橈骨骨折において示されている。そのような骨折を整復させるために、しばしば背面プレートと手掌プレートの両方を使用する必要がある。
骨プレート140は、一般に、頭部144に結合された細長い幹部分142を含んでいる。」(19頁12?20行)
(き)「図17は、頭部144が細長い幹部分142の平面に対して約160度の角度で延伸することが望ましいことを示している。その結果として、頭部144は細長い幹部分142に対して持ち上げられ、そのことによって、手掌側上における遠位橈骨の最も遠い部分の形状との適合性が改善される。」(20頁3?6行)
(く)「頭部144は、骨ねじを受けるための複数の円形穴172を形成している。
頭部1494の円形穴172は、一般に、三角形の外形を形成する方向を向いている。円形穴172の最も遠いグループは、わずかに凹面である柱中に整合したそのような穴3個から成っている。次に遠いグループは、2個の円形穴172を含んでいる。頭部144中の円形穴172のグループは、細長い幹部分142の遠位端154の近くに置かれた単一の穴である。グループとしてとらえてみると、頭部144の円形穴172は、三角形の一般的外形を形成している。
頭部144の円形穴172および細長い幹部分142の円形穴158と細長い穴160は骨プレート140を通して延伸しており、骨ねじを受け入れ、骨プレート140上方への骨ねじの突出を最少にするため、皿頭であることが望ましい。頭部144は骨ねじを受けるための複数の位置を提供しているので、それらの骨ねじによって多数の小さな骨折を固定させることができ、遠位橈骨の最も遠い端においてより多くの固定ねじを使用することができる。
図18に最もよく示されている通り、頭部144は、遠位橈骨の表面と接するための輪郭を有する表面174を有することが望ましい。」(20頁17行?21頁4行)
(け)「骨プレート140はチタン合金(Ti-6Al-4V)で形成することが望ましい。このチタン合金は、疲労においてAISI Type 316Lステンレス鋼から作られた骨プレートよりも約90パーセント強く、「商業的に純粋である」チタン(グレード4)より約50パーセント強い。従って、この材料から骨プレート140を形成すると、骨プレート140の耐疲労性は優れたものになる。」(21頁27行?22頁2行)
(こ)「図23は、遠位橈骨の手掌側に埋め込まれ装着された、本発明の内部固定骨プレート140を示している。図23は、手首200、および、遠位端204、茎状突起206と破砕した断片208を含む遠位橈骨202を示している。骨プレート90(図16参照)は、整復の後、骨プレート90を破砕した断片208に固定するために必要な、穴122と108の中に置かれた、当業の熟練者には周知であるねじによって、橈骨202に固定されている。」(23頁10?15行)

(さ)図7及び8の記載から、2本の海綿状骨ねじ69が非平行に配置されていることが看取される。

(し)図16の記載から、(i)次に遠いグループに係る2個の円形穴172と、最も遠いグループに係る3個の円形穴172は、それぞれ直線にほぼ沿って配列されていること(以下、前者の円形穴172に係る直線を「第1の線」、後者の円形穴172に係る直線を「第2の線」という。)、(ii)第2の線は、第1の線に対して頭部144上でプレートの長手方向(以下,この方向を「縦方向」という。)にずらされていること、(iii)最も遠いグループの円形穴172は、次に遠いグループの円形穴172と比較すると、プレートの縦軸に対して遠位側にずらして配置されていること、が看取される。

以上から、上記(あ)及び(お)?(こ)の記載事項と上記(し)の図示内容とを総合して、甲第1号証には次の発明が記載されている(以下、「甲第1号証発明」という。)。
「手掌遠位撓骨の骨折を固定するための骨プレート140であって、
近位側の細長い幹部分142、および幹部分の一端に位置する遠位側の頭部144を有し、チタン合金で形成されたプレート、
を備え、
頭部144は、細長い幹部分142の平面に対して約160度の角度で延伸し、
頭部144は、縦方向にずらして配置された最も遠いグループの円形穴172および次に遠いグループの円形穴172を画定し、
次に遠いグループの円形穴172は第1の線にほぼ沿って配列され、
最も遠いグループの円形穴172は第2の線にほぼ沿って配列され、
第2の線は第1の線に対して頭部144上で縦方向にずらされて、
最も遠いグループの円形穴172は、次に遠いグループの円形穴172と比較すると、プレートの縦軸に対して遠位側にずらして配置されている、
骨プレート140。」

また、上記(あ)?(え)の記載事項と上記(さ)の図示内容とを総合して、甲第1号証には次の技術事項が記載されていると認められる(以下、「甲第1号証に記載された技術事項」という。)。
「近位上腕骨4の骨折を固定するための骨プレート30の頭部分34に、海綿状骨ねじを受けて支持する皿穴である穴62A,62B,64A,64Bが設けられるとともに、近位上腕骨に固定された骨プレート30において、2本の海綿状骨ねじ69がお互いに平行でない状態で配置されること。」

い 甲第2?4、10?12号証
甲第2号証には、【0017】?【0020】及び【図13】の記載からみて、長骨の骨折修復システムに関し、長骨の端部部位において、多軸方向に回転が可能な複数の結合部品を縦方向に発散状に延出するように配置することが記載されている。
また、甲第3号証には、【0001】、【0027】及び【図22】の記載からみて、近位脛骨プラトーの骨折に対し、骨板80を、延出角度を異ならせたロックねじ20又は非ロックねじ10を用いて固定することが記載されている。
また、甲第4号証には、7欄2?6行、同欄13?15行及び第2図の記載からみて、大腿骨骨端の骨折に対し、プレート60を、軸が互いに関して斜め方向に向くように方向を定めた係止ねじを用いて固定することが記載されている。
また、甲10号証には、6頁1?4行及びFig.1の記載からみて、大腿骨遠位端の骨折のに対し、固定具28を、延出角度を異ならせたキー付きラグねじ32、圧縮ねじ34及び補助ラグねじ38を用いて固定することが記載されている。
また、甲第11号証には、4頁15?20行及びFig-32の記載からみて、大腿骨遠位端の骨折に対し、骨接合プレートをお互いに交差した複数のネジを用いて固定することが記載されている。
また、甲第12号証には、3頁の図面及び7頁の右から2番目の図面からみて、脛骨近位端の骨折に対し、骨プレートをお互いに交差した複数のネジを用いて固定することが記載されている。
したがって、甲第2?4、10?12号証には、大腿骨遠位端の骨折や近位脛骨プラトーの骨折に対し、骨接合プレートをお互いに交差した複数のネジを用いて固定することが記載されている(以下、「甲第2?4、10?12号証に記載された技術事項」という。)。

う 甲第5、6及び14号証
甲第6号証は、甲第5号証の公表公報であり、また、甲第14号証は、甲第5号証に係る国際出願の優先権の主張の基礎とされた出願に係るものである。そして、甲第5号証には、次のとおり記載されている(訳文は甲第6号証の記載を参照して合議体が作成した。)。
(あ)「It is another object of the invention to provide a volar fixation system which desirably aligns and stabilizes multiple bone fragments in a distal radial fracture to permit proper healing. 」(2頁4?5行)
(当審訳:本発明の別の目的は、適正な治癒を提供するために、遠位の撓骨の骨折部における多数の骨破片を望ましく整列して固定する、掌側の固定装置を提供することである。)
(い)「Turning now to Figs. 2 through 4, a first embodiment of a volar fixation system 100 for aligning and stabilizing multiple bone fragments in a Colles' fracture generally includes a substantially rigid T-shaped plate 102 intended to be positioned against the volar side of the radial bone, a plurality of preferably self- tapping bone screws 104 for securing the plate 102 along a non-fractured portion of the radial bone, and a plurality of bone pegs 108 which extend from the plate 102 and into bone fragments of a Colles' fracture. 」(5頁2?7行)
(当審訳:図2から図4に沿って説明すると、コリース骨折における多様な骨破片を整列させ安定させる掌側の固定装置100の第一実施例は、撓骨の掌側に接して置かれることを意図した十分に硬いT字形の板102と、この板102を撓骨の非骨折部に沿って固定するための複数の好ましい骨タッピンねじ104と、板102からコリース骨折の骨破片の中に延びている複数の骨ペグ108とを含んでいる。)
(う)「Referring to Figs. 2, 5 and 6, more particularly, the T-shaped plate 102 defines a head portion 116, an elongate body portion 118 angled relative to the head portion, a first side 120 which is intended to contact the bone, and a second side 122 opposite the first side. The first side 120 at the head portion is preferably planar, as is the first side at the body portion. As the head portion and body portion are angled relative to each other, the first side preferably defines two planar portions. 」(5頁8?13行)
(当審訳:図2、5及び6に沿ってより具体的に説明する。T字形の板102は、ヘッド部116と、ヘッド部に対して角度をつけて曲げられた細長い本体部118と、骨に接触することが意図された第一面120と、第一面の反対側の第二面122とを形成している。ヘッド部の第一面120は、本体部の第一面のように、平面であることが好ましい。ヘッド部と本体部は互いに角度が付いて曲げられているので、第一面は二つの平面部を好ましく形成する。)
(え)「In addition, according to a second preferred aspect of the first embodiment of the invention, the peg holes define axes A_(1), A_(2), A_(3), A_(4) which are oblique (not parallel) relative to each other, and more preferably are angled in two dimensions (medial/lateral and proximal/distal) relative to each other; i.e., the pegs once inserted into the peg holes are also angled in two dimensions relative to each other. 」(6頁8?12行)
(当審訳:加えて、本発明の第一実施例の第二の好適な態様にしたがえば、ペグ穴は、互いに傾いた(非平行の)軸A_(1)、A_(2)、A_(3)、A_(4)を形成しており、そしてより好ましくは相互に二方向(内側/外側の方向と、近位/遠位の方向)で角度が付けられていることで、すなわち、ペグ穴に一旦挿入されたペグも、相互に二方向で角度が付けられることである。)
(お)「Referring back to Fig. 3, the pegs 108, preferably approximately 0.872 inch in length, each have a threaded head 138 adapted to threadably engage the threads about the peg holes 130, 132, 134, 136, and have a relatively smooth non-threaded cylindrical shaft 140. The shafts 140 are preferably approximately 0.0675 inch in diameter and 0.765 inch in length. Such dimensions permit the pegs to adequately support the bone fragments such that the bone is able to heal correctly. The pegs 108 are also preferably made from titanium alloy, and may be coated in a ceramic, e.g., titanium nitride, to provide a bone interface which will not adversely affect bone healing. 」(6頁24?31行)
(当審訳:図3に戻ってこれを参照すると、ペグ108は、全長約22.15mm(約0.872in)であることが好ましく、各々が、ペグ穴130、132、134、136のねじ山にねじ結合できるようになったねじ山付き頭部138を持っていて、また比較的滑らかなねじ山なしの円柱状のシャフト(シャフト部)140を持っている。シャフト140は、約1.71mm(約0.0675in)の直径と約19.43mm(約0.765in)の長さであることが好ましい。このような寸法は、骨が正しく治癒できるようにペグが骨破片を適切に支えることを可能にする。また、ペグ108は、チタン合金から作られることが好ましく、そして骨の治癒に悪影響を与えないような骨との境界面を提供するために、例えば窒化チタンのようなセラミックでコーティングされてもよい。)
(か)「Referring to Figs. 2 through 9, in use, the volar plate 102 is positioned with its first side 120 against the volar side of the radius. 」(7頁11?12行)
(当審訳:図2から9を参照して説明する。使用時、掌側の板102は第一面120を撓骨の掌側に接して置かれる。)
(き)「The pegs 108, extending through the oblique-axis peg holes 130, 132, 134, 136, are positioned immediately below the subcondylar bone of the radius and support the bone fragments for proper healing. The volar fixation system thereby secures the bone fragments in their proper orientation. 」(7頁21?24行)
(当審訳:ペグ108は、傾斜したペグ穴130、132、134、136をとおって延び、撓骨のサブコンデュラボーン(subcondylar bone)の真下に位置して、適正な治癒のために骨破片を支える。その結果掌側の固定装置は骨破片を適切な位置でしっかり固定する。)
(く)「The plate 210 preferably tapers in thickness from the body portion 218 to the head portion 216. A preferred taper provides a proximal body portion 218 thickness of approximately .098 inch and head portion 216 thickness of approximately .078 inch. The taper
decreases the thickness of the head portion 216 relative to the body such that the weight of the volar plate is reduced and an improved tendon clearance is provided. The distal edge of the head portion 216 has an increased taper (preferably approximately 60° relative to a line normal to the head) to a distal edge 221. The edge 221 is broken (i.e., made blunt) to prevent irritation or disturbance to the surrounding anatomy. 」(7頁32行?8頁5行)
(当審訳:板210は、本体部218からヘッド部216までの厚さに対してテ-パが好ましく付けられている。好ましいテーパは、近位の本体部218の厚さ約2.49mm(約0.098in)と、ヘッド部216の厚さ約1.98mm(約0.078in)とを提供する。テーパは、掌側の板の重量を軽減するように、また改善された腱隙間を提供するように、ヘッド部216の厚さを本体部に比較して減少させる。ヘッド部216の遠位端は、遠位端221への増大するテーパ(好ましくはヘッド部の法線に対して約60°)を持つ。遠位端221は、周囲の組織に対する痛みあるいは障害を防ぐために、丸みが付けられる。)
(け)「1. A volar fixation plate, comprising:
a substantially rigid plate including a distal head portion and a proximal body portion angled relative to said head portion,
said head portion defining a plurality of threaded peg holes adapted to individually receive fixation pegs therein, said peg holes defining a plurality of axes at least two of which are oblique relative to each other, and
said body portion including at least one screw hole. 」(12頁2?8行)
(当審訳:1.遠位のヘッド部と、前記ヘッド部に対して曲げられた近位の本体部とを含む十分に硬い板であって、
前記ヘッド部が、固定用のペグを中で個々に支えるようになっている、ねじ山付きの複数のペグ穴を形成しており、前記ペグ穴が、少なくとも二本が互いに傾いている複数の軸を形成していて、
前記本体部が、少なくとも一個のねじ用穴を含んだ、十分に硬い板を具備する掌側の固定板。)

(こ)Fig.2の記載から、4つのペグ穴130,132,134,136は、直線にほぼ沿って配列されていることが看取される。

また、甲第6号証及び甲14号証には、上記(あ)?(こ)について大略同様の記載が認められる。

以上から、上記(あ)?(か)、(く)及び(け)の記載事項と上記(こ)の図示内容とを併せてみて、甲第5号証には次の発明が記載されている(以下、「甲第5号証発明」という。)。
「撓骨の手首部分の掌側に対して置かれる、骨破片を安定化させるための掌側の固定装置100において、
細長い本体部118、および該本体部の一端に位置するヘッド部116を有する、硬いチタン合金製のT字形の板102、を備え、
ヘッド部116は、前記本体部118に対して橈骨から離れる方向(以下、この方向を「上方向」という。)に角度をなし、
ヘッド部116は、ペグ108とねじ結合できる、ねじ山付きの4つのペグ穴130,132,134,136を画定し、
各ペグ穴は、互いに互いに傾いた軸A1,A2,A3,A4を形成し、
ペグ穴は、第1の線にほぼ沿って配列される、
掌側の固定装置100。」

また、上記(き)及び(こ)の記載から、甲第5、6及び14号証には、次の技術事項が記載されていると認められる。(以下、「甲第5、6及び14号証に記載された技術事項」という。)。
「ペグ穴をとおって延びるペグ108を橈骨のサブコンデュラボーン(subcondylar bone)の真下に位置すること。」

え 甲第7号証
1頁右欄7?8行及びFIG.1の記載からみて、複数の孔が配置された骨プレートが記載されている(以下、「甲第7号証に記載された技術事項」という。)。

お 甲第8及び9号証
甲第8号証には、6頁左欄1?4行、同頁右欄3?8行及び7頁左欄4?8行の記載からみて、橈骨遠位端骨折において軟骨下骨部分を固定と支えの両方に用いること、及び、骨折遠位部の軟骨下骨直下にバットレスピンを2本刺入することが記載されている。
また、甲第9号証には、3頁右欄21?28行及び4頁左欄31?33行の記載からみて、橈骨遠位端骨折において、遠位固定ねじは、関節表面に可能な限り近くなるよう配置されることが記載されている。
したがって、甲第8及び9号証には、橈骨遠位端骨折に対し、バットレスピン又は遠位固定ねじを関節表面の近い部分に配置することが記載されている(以下、「甲第8及び9号証に記載された技術事項」という。)。

か 甲第13及び15号証
甲第13号証は、「日本手の外科学会雑誌」であって、2頁目に「Titanium Distal Radius Plating System」、「マトリックス橈骨用プレートシステム」、「●1.6mm厚プロファイル・スクリュー&プレート」、「●遠位側にある複数の穴」、「●アナトミカルデザイン+マルチブルなタイプとサイズ」、「●2.7mmコーディカルスクリュー」、「●クロスヘッド型スクリュー」と記載され、また、手掌部分の骨格、3枚の穴の形成された板状部材、及びスクリューねじのイラストが記載されている。
また、甲第15号証は、日本ストライカー社のカタログであって、1頁目に「マトリックス橈骨用プレートシステム」と記載されている。そして、2頁目に「ロープロファイル」、「専用スクリュー」、「プレートホールの数」と記載され、穴の形成された複数の板状部材のイラスト、スクリューねじのイラスト、「X線写真(左手掌側)」及び「X線写真(右手掌側)」の記載を伴う2枚の写真が挙げられているから、大略甲第13号証と同様の技術事項が記載されている。
したがって、甲第13及び15号証には、穴の形成された板状部材とスクリューねじを有する橈骨用プレートシステムが記載されている(以下、「甲第13及び15号証に記載された技術事項」という。)。

き 甲第16及び17号証
甲第16及び17号証は、いずれもインプラント・テクノロジー社のカタログであって、橈骨遠位端骨折に用いられる穴ロッキングプレートについて記載されている(以下、「甲第16及び17号証に記載された技術事項」という。)。
なお、甲第16及び17号証は、侵害事件における無効の抗弁の証拠とはされていない(回答書90頁)。

(3-5-2)訂正発明1について
あ 甲第1号証を主引用例とする主張について(上記(e)及び(f)に関する事項)
訂正発明1と甲第1号証発明とを対比すると、その機能又は構造からみて、甲第1号証発明の「近位側の細長い幹部分142」は訂正発明1の「細長い近位本体部」に、以下同様に、「遠位側の頭部144」は「遠位頭部」に、「最も遠いグループの円形穴172」は「第1の組の孔」に、「次に遠いグループの円形穴172」は「第2の組の孔」に、「骨プレート140」は「固定プレート」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点1)
訂正発明1は「頭部は、内部において一定の角度の突起を個々に保持すべく構成される」「第1の組の孔および第2の組の孔を画定し、各孔は、前記プレートから延びる軸線を画定し、」「前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の遠位側に突出し、前記プレートが遠位橈骨に連結されると、前記第1の組の孔の前記軸線が前記第2の組の孔の前記軸線間を通って、前記遠位橈骨内に延びるように構成され、前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」のに対し、甲第1号証発明は、当該構成を有するかどうか不明な点。

相違点1について検討する。
最初に、甲第1号証に記載された技術事項をみると、頭部分34に設けられた穴62A,62B,64A,64Bは、皿穴であってその内部において一定の角度の海綿状骨ねじ69を保持すべく構成されるものではないし、また、骨プレート30は近位上腕骨4に固定されるものであって、遠位橈骨に連結されものでもない。
したがって、甲第1号証に記載された技術事項に、訂正発明1の相違点1についての記載若しくは示唆があるといえない。
次に、甲第2?4、10?12号証に記載された技術事項をみると、いずれの技術事項も、少なくとも訂正発明1の「前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の遠位側に突出し、前記プレートが遠位橈骨に連結されると、前記第1の組の孔の前記軸線が前記第2の組の孔の前記軸線間を通って、前記遠位橈骨内に延びるように構成され、前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」(以下、「軸線に係る発明特定事項」という。)ものではないから、甲第2?4、10?12号証に訂正発明1の相違点1についての記載若しくは示唆があるといえない。
また、それ以外の甲号証に訂正発明1の相違点1についての記載若しくは示唆があるともいえない。
よって、甲第1?17号証のいずれにも訂正発明1の相違点1についての記載若しくは示唆があるといえない。
以上のとおりであるから、訂正発明1は、甲第1号証発明と、甲第1?17号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

い 甲第5号証を主引用例とする主張について(上記(g)に関する事項)
訂正発明1と甲第5号証発明とを対比すると、その機能又は構造からみて、甲第5号証発明の「細長い本体部118」は訂正発明1の「細長い近位本体部」に、以下同様に、「ヘッド部116」は「遠位頭部」に、「掌側の固定装置100」は「固定プレート」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点2)
訂正発明1は「頭部は、内部において一定の角度の突起を個々に保持すべく構成される、縦方向にずらして配置された第1の組の孔および第2の組の孔を画定し、各孔は、前記プレートから延びる軸線を画定し、前記第1の組の孔は、第1の線にほぼ沿って配列され、前記第2の組の孔は、第2の線にほぼ沿って配列され、前記第2の線は、前記第1の線に対して前記頭部上で縦方向にずらされ、前記第2の組の孔は、前記第1の組の孔と比較すると、前記プレートの縦軸に対して遠位側にずらして配置され、前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の遠位側に突出し、前記プレートが遠位橈骨に連結されると、前記第1の組の孔の前記軸線が前記第2の組の孔の前記軸線間を通って、前記遠位橈骨内に延びるように構成され、前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている」のに対し、甲第5号証発明は当該構成を有していない点。

相違点2について検討する。
最初に、甲第5、6及び14号証に記載された技術事項についてみると、「ペグ穴」は、訂正発明1の「第1の組の孔」若しくは「第2の組の孔」に対応するものであるとしてみても、「縦方向にずらして配置された第1の組の孔および第2の組の孔」ではなく、一方、訂正発明1に係る相違点2は第1の組の孔および第2の組の孔を前提とした発明特定事項といえるから、甲第5、6及び14号証に記載された技術事項には、訂正発明1の相違点2についての記載若しくは示唆があるといえない。
また、訂正発明1に係る相違点2は軸線に係る発明特定事項を含むものであるところ、甲第1号証に記載された技術事項、甲第8及び9に記載された技術事項は、いずれも、上記「あ」欄に記載したとおり軸線に係る発明特定事項ではないから、甲第1、8及び9号証に訂正発明1の相違点2についての記載若しくは示唆があるともいえない。
さらに、それ以外の甲号証に訂正発明1の相違点2についての記載若しくは示唆があるともいえない。
よって、甲第1?17号証のいずれにも訂正発明1の相違点2についての記載若しくは示唆があるといえない。
以上のとおりであるから、訂正発明1は、甲第5号証発明と、甲第1?17号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

う 甲第13又は14号証を主引用例とする主張について(上記(j)及び(k)に関する事項)
甲第13号証には、穴の形成された板状部材とスクリューねじを有する橈骨用プレートシステムが記載されている(上記「(3-5-1)か」欄を参照。)と認められるものの、少なくとも軸線に係る発明特定事項については記載も示唆もない。
また、甲第14号証の記載は、実質的に甲第5号証の記載に含まれるもの(上記「(3-5-1)う」欄参照。)であるところ、甲第5号証に軸線に係る発明特定事項についての記載も示唆もない(上記「(3-5-2)い」欄参照。)から、甲第14号証に軸線に係る発明特定事項についての記載も示唆もあるとすることはできない。
さらに、それ以外の甲号証にも軸線に係る発明特定事項について記載も示唆もない。
したがって、訂正発明1は、詳細を検討するまでもなく、甲第13号証に記載された発明ではなく、また、甲第13号証又は甲第14号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

え 小括
以上のとおりであるから、訂正発明1は、甲第13号証に記載された発明でなく、また、甲第1、5、13又は14号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-5-3)訂正発明2?17について
訂正発明2?17は、訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、訂正発明1と同様に、甲第13号証に記載された発明でなく、また、甲第1、5、13又は14号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-5-4)小括
したがって、訂正発明1?17は、甲第13号証に記載された発明でなく、また、甲第1、5、13又は14号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-6)まとめ
よって、請求人の主張するとおり、侵害事件における無効の抗弁の理由により、訂正発明1?17は、特許出願の際独立して特許を受けることができないとされるものではない。
また、他に、訂正発明1?17について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

6 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第126条第5?7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手掌手首骨折の固定のための固定プレートにおいて、
細長い近位本体部、および該本体部の一端に位置する遠位頭部を有する、ほぼ剛性のプレート、
を備え、
前記頭部は、前記本体部に対して上方向に角度をなし、
前記頭部は、内部において一定の角度の突起を個々に保持すべく構成される、縦方向にずらして配置された第1の組の孔および第2の組の孔を画定し、各孔は、前記プレートから延びる軸線を画定し、
前記第1の組の孔は、第1の線にほぼ沿って配列され、
前記第2の組の孔は、第2の線にほぼ沿って配列され、
前記第2の線は、前記第1の線に対して前記頭部上で縦方向にずらされ、
前記第2の組の孔は、前記第1の組の孔と比較すると、前記プレートの縦軸に対して遠位側にずらして配置され、
前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の遠位側に突出し、前記プレートが遠位橈骨に連結されると、前記第1の組の孔の前記軸線が前記第2の組の孔の前記軸線間を通って、前記遠位橈骨内に延びるように構成され、
前記プレートが遠位橈骨に連結される場合に、前記第1の組の孔の軸線は、該第1の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、背側面側の軟骨下骨の接線方向に延び、前記第2の組の孔の軸線は、該第2の組の孔に保持された突起が軟骨下骨を支持するように、手掌側面側の軟骨下骨の接線方向に延びるように構成されている、固定プレート。
【請求項2】
請求項1に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の線、および前記第2の線は、同一直線上になく、
前記第1の組の孔の前記軸線は、前記第2の組の孔の一定の角度の軸線の間で延び、かつ該軸線に対して非平行である、固定プレート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定プレートにおいて、
前記頭部は、前記第1の線の遠位側にある遠位バットレス部分を含み、
前記第2の組の孔は、前記バットレス部分に設けられている、固定プレート。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記バットレス部分は、遠位側で先細りになる、固定プレート。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔は、ねじ切りされている、固定プレート。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記プレートは、細長い本体部、および前記本体部の一端に設けられた骨幹端の頭部を含み、
前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔は、前記頭部に設けられる、固定プレート。
【請求項7】
請求項6に記載の固定プレートにおいて、
前記頭部は、前記本体部に対して角度をなしている、固定プレート。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記プレートは、前記手掌手首骨折の固定に適したサイズの、ほぼT字状のプレートである、固定プレート。
【請求項9】
請求項1に記載の固定プレートにおいて、
前記第1の組の孔のうちの少なくとも二つが、互いに対して斜めに延びている一定の角度の軸線を画定する、固定プレート。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載の固定プレートにおいて、
前記第2の組の孔の前記軸線は、互いに対して平行な一定の角度の軸線を画定する、固定プレート。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の前記固定プレートを含む、システムにおいて、
前記プレートの前記第1の組の孔、および前記第2の組の孔それぞれに結合可能で、一つ以上の骨片を支持すべく構成される、第1の組の突起、および第2の組の突起、
をさらに備える、
システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記突起は、非ねじ切りのシャフトを有する、システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起のうちの少なくとも二つが、互いに対して斜めに延びている、システム。
【請求項14】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記第2の組の突起は、互いに対して平行である、システム。
【請求項15】
請求項11?14のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起は、前記第2の組の突起の遠位側に突出する、システム。
【請求項16】
請求項1?10のいずれか1項に記載の前記プレートを含むシステムにおいて、
前記プレート内の前記第1の組の孔に対して一定の角度の関係で結合され、線形に配列された、第1の組の少なくとも三つの細長い突起であって、前記プレートが前記遠位橈骨の手掌側に配置されるとき、前記第1の組の突起が、前記手掌側から前記遠位橈骨内に入るように方向付けられる、第1の組の線形に配列された少なくとも三つの細長い突起と、
前記プレート内の前記第2の組の孔に対して一定の角度の関係で結合され、ほぼ線形に配列された、第2の組の少なくとも二つの細長い突起と、
をさらに備え、
前記第2の組の突起は、前記第1の組の突起の遠位側の位置から延び、かつ、前記プレートが前記遠位橈骨の前記手掌側に配置されるとき、前記第2の組の突起も、前記手掌側から前記遠位橈骨内に入るように方向付けられ、
前記第1の組の突起を通る軸線は、前記第2の組の突起を通る軸線の遠位側に突出する、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、
前記第1の組の突起、および前記第2の組の突起は、横方向に重なっている、システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-01-25 
結審通知日 2021-01-27 
審決日 2021-02-15 
出願番号 特願2006-507458(P2006-507458)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (A61B)
P 1 41・ 855- Y (A61B)
P 1 41・ 854- Y (A61B)
P 1 41・ 851- Y (A61B)
P 1 41・ 841- Y (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川端 修井上 哲男  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 関谷 一夫
高木 彰
登録日 2012-05-18 
登録番号 特許第4994835号(P4994835)
発明の名称 軟骨下関節表面支持体を備えた骨折固定システム  
代理人 石神 恒太郎  
代理人 山口 健司  
代理人 佐藤 信吾  
代理人 利根 勇基  
代理人 三橋 真二  
代理人 三橋 真二  
代理人 佐藤 信吾  
代理人 伊藤 公一  
代理人 石神 恒太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 利根 勇基  
代理人 伊藤 公一  
代理人 山口 健司  
代理人 青木 篤  
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