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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01B
審判 全部無効 1項2号公然実施  A01B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A01B
管理番号 1372975
審判番号 無効2017-800153  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-20 
確定日 2021-02-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5996033号発明「ロータリ作業機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5996033号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5996033号(以下「本件特許」という。平成27年4月8日出願(原出願日:平成23年5月24日)、平成28年9月2日登録、請求項の数は5である。)の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明の特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年12月20日 審判請求・検証申出書提出
平成30年 3月 9日 答弁書提出
平成30年 4月 3日 審理事項通知(起案日)
平成30年 5月10日 請求人より口頭審理陳述要領書、
検証物指示説明書提出
平成30年 5月25日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年 6月 8日 第1回口頭審理・証拠調べ(検証)
平成30年 8月22日 審理事項通知(起案日)
平成30年 9月26日 請求人より口頭審理陳述要領書(2)提出
平成30年10月10日 被請求人より口頭審理陳述要領書(2)提出
平成30年10月24日 第2回口頭審理
平成31年 2月 7日 審決の予告(起案日)
平成31年 4月16日 被請求人より上申書及び訂正請求書提出
令和 1年 5月31日 審判事件弁駁書提出
令和 1年 6月27日 補正許否の決定(起案日)
令和 1年 7月31日 答弁書及び訂正請求書提出
令和 1年10月25日 審判事件弁駁書(2)提出
令和 1年11月28日 補正許否の決定(起案日)
令和 1年11月28日 審理終結通知(起案日)

なお、令和1年7月31日付け訂正請求により、平成31年4月16日付け訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

請求人が提出した平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書、平成30年9月26日付け口頭審理陳述要領書(2)、令和1年5月31日付け審判事件弁駁書及び令和1年10月25日付け審判事件弁駁書(2)は、以下、それぞれ陳述要領書(1)、陳述要領書(2)、弁駁書(1)及び弁駁書(2)といい、同じく、被請求人が提出した平成30年5月25日付け口頭審理陳述要領書、及び平成30年10月10日付け口頭審理陳述要領書(2)は、陳述要領書(1)及び陳述要領書(2)という。

2 上記1の令和1年6月27日付け補正許否の決定及び令和1年11月28日付け補正許否の決定は、それぞれ以下のとおりのものである。

(1)令和1年6月27日付け補正許否の決定
「上記特許無効審判事件について、審判請求人が令和1年5月31日付けで提出した審判事件弁駁書(審判請求書の補正書)による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、下記のとおり決定します。



「1)上記審判事件弁駁書(審判請求書の補正書)の第27頁第1行から第32頁下から第4行に記載された事項による請求の理由の補正(特許法第36条第6項第2号に係る無効理由6の補正)は、審判請求書に記載されていた無効理由6について、「エプロンサイドプレートは、上下を逆にして接続する」構成に係る明確性要件違反の主張を追加するものであるが、該主張は、審判請求時の請求書に記載されていない。
また、上記構成は、訂正によって新たに加えられたものではないから、上記請求の理由の補正は、特許法第134条の2第1項の規定による訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものではない。
そして、当該補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことに合理的な理由も見当たらない。
よって、当該請求の理由の補正は、特許法第131条の2第2項に該当せず、許可しない。

2)上記審判事件弁駁書の第7頁第1行から第26頁末行に記載された事項、及び新たな書証(甲第18号証ないし甲第20号証)の提出による請求の理由の補正は、特許法第29条第2項に係る無効理由4及び無効理由5の副引用例を新たに加えることにより、請求の理由の要旨を変更するものであるが、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであり、かつ、特許法第134条の2第1項の規定による訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものであるから、特許法第131条の2第2項第1号に該当し、許可する。

なお、この決定に伴い、上記審判事件弁駁書の第32頁下から2行に記載される「本件訂正発明1ないし5」は、「本件訂正発明1、4、5」と読み替える。」

(2)令和1年11月28日付け補正許否の決定
「上記特許無効審判事件について、審判請求人が令和1年10月25日付けで提出した審判事件弁駁書(2)(審判請求書の補正書)による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、下記のとおり決定します。



上記審判事件弁駁書(2)に記載された事項、及び新たな書証(甲第21号証ないし甲第25号証)の提出による請求の理由の補正は、特許法第29条第2項に係る無効理由4及び無効理由5の副引用例を新たに加えることにより、請求の理由の要旨を変更するものであるが、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであり、かつ、特許法第134条の2第1項の規定による訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものであるから、特許法第131条の2第2項第1号に該当し、許可する。」


第2 訂正請求
本件無効審判事件の被請求人より令和1年7月31日に提出された訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするもの(以下「本件訂正」という。)である。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「エプロン部材」とあるのを、それぞれ「エプロン本体部」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「エプロン部材」とあるのを、「エプロン本体部」に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項3及び5も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「エプロン部材」とあるのを、「エプロン本体部」に訂正する。請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「エプロン部材」とあるのを、「エプロン本体部」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に、「前記エプロン部材の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、を有し、」とあるのを、「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳し、」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に、「前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能なロータリ作業機。」とあるのを、「前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能なロータリ作業機。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2において、「請求項1に記載のロータリ作業機。」として請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項1及び訂正前の請求項2についてそれぞれ上記訂正事項1?3にかかる訂正をした上で、独立形式に改め、「作業ロータと、前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であり、前記エプロンサイドプレートは、上下を逆にして接続することによって、前記エプロン本体部との接続状態を前記第1の状態から第2の状態へ変化させるロータリ作業機。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に、「前記エプロン部材」とあるのを、「前記エプロン本体部及び前記整地部材」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1?4
ア 訂正の目的
訂正事項1?4は、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の発明特定事項である「エプロン部材」について、エプロン部材を構成するもののうちのエプロン本体部に限定するものである。
したがって、訂正事項1?4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件特許の明細書の段落【0025】には、「整地部材4とエプロン本体部3とを合わせてエプロン部材1という。」と記載されていることからみて、訂正事項1?4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項1?4は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の「ロータリ作業機」について、「カバー材」、「整地部材」及び「チェーンケース」の具体的な構成を加えるものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件特許の明細書には、
カバー材について、
「【0033】
図4のように、作業ロータ5の爪7の回転範囲を覆い、ロータリ作業機10を土砂から保護するシールドカバー本体部2が配置される。
このシールドカバー本体部2がその周方向に配列する複数枚のカバー材21を備えている。
このカバー材21は、耕耘方向から、第1カバー材21a、第2カバー材21b、第3カバー材21c、第4カバー材21d、第5カバー材21eの順に配置されている。
・・・
第4カバー材21dは第4接合手段221dによって、第5カバー材21eは第5接合手段221eによって、エプロン本体部3に接合されている。
第4接合手段221dは、第5カバー材21eも接合している。
・・・。」(下線は審決で付した。以下同様。)、
「【0035】
第5カバー材21eは、第4カバー材21dを接合する前側方向位置の第4接合手段221dと、後側方向位置の第5接合手段221eによって両持ちでエプロン部材1に接合されている。
【0036】
カバー材21は、ゴム等の弾性力が高い(高弾性を有する)材質から形成し、容易に振動及び変形可能に形成されている。
このように、カバー材21が容易に振動及び変形することから、付着した土砂を容易にふるい落とすことが可能となる。」、
「【0056】
図5のように、第5カバー材21eは、第4接合手段221d及び第5接合手段221eによって両持ち状態で接合されていることから、他のカバー材21よりも比較的長く形成されている第5カバー材21eが所定の位置からずれることが防止される。
・・・。」と記載され、
整地部材について、
「【0042】
整地部材4は、その大部分がエプロン本体部3の作業ロータ5側に配置されているが、後側端部位置で、エプロン本体部3の作業ロータ5側からエプロン本体部3の作業ロータ5とは反対側に回り込んで形成されている。
整地部材4は、第2接合部103によってエプロン本体部3に接合されている。」と記載され、
カバー部材と整地部材の配置について、
「【0055】
第5カバー材21eは、第5接合手段221eよりも後側方向に延びる、第5自由端部121eを有している。
この第5自由端部121eは、第2接合部103を作業ロータ5側から覆う位置まで延びている。
換言すると、この第5自由端部121eは、作業ロータ5からは第2接合部103を目視できない位置にまで伸びており、第2接合部103と作業ロータ5との間の位置に、第5カバー材21eの後側端部である第5自由端部121eが位置する。
この第5自由端部121eがあることによって、比較的土砂が付着しやすい位置に存在し、かつ、比較的土砂の付着しやすい形状を有する第2接合部103を第5カバー材21eによって覆い、土砂の付着を防ぐことができる。
・・・。」と記載され、
チェーンケースについて、
「【0021】
伝動フレーム14の先端部にはチェーンケース16が垂下する形で固定される。
支持フレーム15の先端にはチェーンケース16に対向するサポートアーム17が固定される。
このチェーンケース16とサポートアーム17との間に作業ロータ5のロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設される。伝動シャフトとロータリ軸6間にはチェーンが張架され、チェーンを通じて伝動シャフトの動力がロータリ軸6に伝達される。
サポートアーム17の後側方向位置には、右側サイドシールド18Rが配置されている。」、
【0026】
シールドカバー本体部2の左側側面には、伝動フレーム14、チェーンケース16にボルト等で一体化された左側サイドシールド18Lが配置されている。
この左側サイドシールド18Lは、チェーンケース16の後方側に形成されている。
・・・。」、
【0068】
耕耘地面Gを深い位置まで耕耘を行いたい場合、又は、耕耘地面Gが柔らかく深く耕耘してしまう場合には、チェーンケース16の下側部分16aが耕耘地面Gよりも地面下部に位置することになる。そのため、耕耘地面Gにはチェーンケース16の下側部分16aによって溝が形成される。
・・・。」と記載されている。
また、図4及び図5には、カバー材と整地部材の詳細な構成が記載されている。
これらの記載からみて、訂正事項5は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項5は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「開口部」について、「耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す」構成を有するものに限定するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件特許の明細書の段落【0070】に、「耕耘された土砂がその開口部Kから外側方へ流れ出し、チェーンケース16跡の溝に供給されるため、この溝を埋め戻すことができる。」と記載されていることからみて、訂正事項6は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項6は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項2は、請求項1の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項1及び請求項2についてそれぞれ上記訂正事項1、2、5及び6に係る訂正をしたうえで、請求項1を引用しないものとして、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項7は、上記アのとおりの訂正の目的とするものであるところ、上記(1)イ、(2)イ、(3)イからみて、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張または変更について
訂正事項8は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。


(5)訂正事項8
ア 訂正の目的
訂正事項8は、本件訂正前の請求項4に係る発明の発明特定事項である「エプロン部材」について、エプロン部材を構成するエプロン本体部及び整地部材に限定するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件特許の明細書の段落【0025】には、「整地部材4とエプロン本体部3とを合わせてエプロン部材1という。」と記載されていることからみて、訂正事項8は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項8は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)請求人の主張について
本件訂正請求について、請求人は、以下アのとおり主張している。
ア <理由1>
本件明細書には、チェーンケースがサイドシールドよりもさらにシールドカバー本体部の「右の外側」に位置する構成の開示はなく、「左の外側」に位置する構成のみが開示されているに過ぎない。それゆえ、訂正事項5中の「チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」するという訂正は、新規事項の追加に該当する。
<理由2>
本件訂正前の発明は、エプロンサイドプレートの接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで開口部を形成可能な構成とすることにより、「チェーンケースによって形成された溝を埋めることが可能なロータリー作業機を提供すること」(本件明細書の【0009】)を目的としたものであるが、訂正事項5は、その目的と全く関係のない「カバー材」及び「整地部材」に関する構成を追加しようとするものである。
それゆえ、訂正事項5は、本件明細書の【0009】の目的とは全く異なる別の技術課題(目的)を解決するための構成を付加する訂正であって、実質上特許請求の範囲を変更するものである。

イ 上記アの主張について検討する。
本件明細書及び図面には、チェーンケースを右側に配置したものは開示されていないが、チェーンケースは左側に限られず、右側に配置することも通常行われていることに過ぎず、そして、チェーンケースを左右のどちら側に配置したとしても、本件発明の機能や作用効果に全く違いは存在しないから、チェーンケースの配置の選択肢として右側を加えたことが、新規事項の追加にあたるとはいえない。
また、本件訂正によって、「カバー材」及び「整地部材」に関する構成を追加したことで解決すべき課題が新たに加わったとしても、「チェーンケースによって形成された溝を埋めることが可能なロータリー作業機を提供すること」を課題とする構成は削除されていないことから、本件発明の解決すべき課題が変更されたとはいえず、よって、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものではない。
以上のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(7)本件訂正のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号または第4号に掲げる事項を目的とするものであって、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 本件発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、
前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、
前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能なロータリ作業機。
【請求項2】
作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であり、
前記エプロンサイドプレートは、上下を逆にして接続することによって、前記エプロン本体部との接続状態を前記第1の状態から第2の状態へ変化させるロータリ作業機。
【請求項3】
前記エプロンサイドプレートには、第1の接続部及び第2の接続部が形成され、
前記エプロン本体部の左右側側面には、第1の被接続部及び第2の被接続部が形成され、
前記第1の状態においては、前記第1の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、
前記第2の状態においては、前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第1の被接続部とが接続される請求項2に記載のロータリ作業機。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記エプロン本体部及び前記整地部材が整地可能な状態において、前記シールドカバー本体部に接続されたサイドシールドと前記エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を少なくとも含むように形成される請求項1に記載のロータリ作業機。
【請求項5】
前記エプロンサイドプレートの後側方向に位置する部分は、前記第1の状態においても前記第2の状態においても、前記エプロン本体部よりも突出する部分を有しない請求項1?4いずれか1項に記載のロータリ作業機。」


第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人が主張する無効理由について
(1)請求人は、本件訂正前の本件発明に対して、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、検証申出書、陳述要領書(1)及び陳述要領書(2)を提出するとともに、証拠方法として検甲第1号証説明書、甲第1号証ないし甲第17号証を提出し、以下の無効理由を主張している。
〔無効理由1〕
本件発明1ないし5は、検甲第1号証に示される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明と同一であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものである。
仮に、同一でないとしても、本件発明1ないし5は、検甲第1号証に示される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由2〕
本件発明1ないし5は、甲第10号証に記載された発明、甲第11号証に記載された技術事項、及び周知技術又は先行技術(甲第3号証、甲第12号証、甲第13号証、検甲第1号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由3〕
本件発明1ないし5は、甲第3号証に記載された発明及び甲第11号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由4〕
本件発明1、4及び5は、甲第14号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
仮に、同一でないとしても、本件発明1、4及び5は、甲第14号証に記載された発明及び検甲第1号証に示された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明2及び3は、甲第14号証に記載された発明、甲第11号証に記載された技術事項及び検甲第1号証に示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由5〕
本件発明1、4及び5は、甲第15号証に記載された発明及び検甲第1号証に示された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明2及び3は、甲第15号証に記載された発明、甲第11号証に記載された技術事項及び検甲第1号証に示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由6〕
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(2)その後、被請求人から平成31年4月16日付け訂正請求及び令和1年7月31日付け訂正請求がされたのに対して、弁駁書(1)及び弁駁書(2)を提出するとともに、証拠方法として甲第18号証ないし甲第25号証を提出し、本件訂正後の本件発明に対して、依然、上記無効理由4及び無効理由5により、本件発明1、4、5についての特許は無効である旨、主張している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:農機新聞、平成12年10月17日、15頁
甲第2号証:「ハイパーロータージュニア」のカタログ、
小橋工業株式会社、2000年10月作成
甲第3号証:「コバシローター(ハイパーロータージュニア)」
のカタログ、小橋工業株式会社、2001年9月作成
甲第4号証:2001/2002農業機械・施設便覧、日本農業機械化
協会、平成13年7月、51頁?55頁
甲第5号証:見積書
甲第6号証:稟議書
甲第7号証:製造番号「43171127」、機種名「コバシローター」
、型式名「KJL180S」の保証書
甲第8号証:特願2015-79549号の平成28年2月23日付け
拒絶理由通知書
甲第9号証:異議2017-700266号の異議の決定
甲第10号証:特開2010-75130号公報
甲第11号証:実願昭55-170080号(実開昭57-91404
号)のマイクロフィルム
甲第12号証:特開平8-116703号公報
甲第13号証:特開2010-63367号公報
甲第14号証:「ニプロロータリーCBX/CX-10SERIES」
の取扱説明書、松山株式会社、2007年4月作成
甲第15号証:「ニプロロータリー 10SERIES」のカタログ、
松山株式会社、2004年11月作成
甲第16号証:農機新聞、平成16年8月31日、16頁
甲第17号証:特許第5746913号公報
甲第18号証:特開平9-271203号公報
甲第19号証:特開平9-51701号公報
甲第20号証:特開2007-124959号公報
甲第21号証:特開平7-203701号公報
甲第22号証:特開2005-130715号公報
甲第23号証:特開平9-47107号公報
甲第24号証:実願昭52-83943号(実開昭54-10813号)のマイクロフィルム
甲第25号証:実願昭61-5586号(実開昭62-116609号)のマイクロフィルム
検甲第1号証説明書:「KJL180型のコバシローター」(製造番号
43171127)

3 本件訂正前の請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 検甲第1号証の公然実施について
検甲第1号証である「KJL180型のコバシローター」(製造番号43171127)は、その製造番号や甲第5号証ないし甲第7号証からも明らかなとおり、遅くとも、本件特許の原出願日よりも前の平成14年から平成15年の間の時期に、松山株式会社(請求人)に公然と販売されたものである。
(審判請求書10頁7?11行)

イ 検甲1発明
検甲第1号証には、次の発明(以下「検甲1発明」という。)が示されている。
なお、検甲第1号証の構造に関しては何ら改良をしていない。(但し、エプロンサイドプレートをエプロン部材に取り付けるためのボルトは、錆びて使えなくなったため、新しいものに交換した。)。
<検甲1発明>
1A:作業ロータと、
1B:前記作業口-タの上方を覆うシールドカバー本体部と、
1C:前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
1D:前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロ-タの後側を覆うエプロン部材と、
1E:前記エプロン部材の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、を有し、
1F:前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、
1G:かつ、前記エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能な
1H:ロータリ作業機。
(審判請求書12頁12行?13頁末行)

ウ 本件発明と先行技術発明との対比・判断
(ア)本件発明1と検甲1発明とは、構成1A?1Hのすべてで一致しており、構成において何ら相違するところはない。
したがって、本件発明1は、検甲第1号証に示された発明と同一である。
仮に同一でないとしても、本件発明1は、検甲第1号証に示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書15頁16?17行、16頁1?5行)

(イ)本件発明2ないし5の構成2A、構成3A?3D、構成4A、構成5Aは、検甲第1号証に示されている。
したがって、本件発明2ないし5は、検甲第1号証に示された発明と同一である。
仮に同一でないとしても、本件発明2ないし5は、検甲第1号証に示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書16頁11?16行、16頁末行?17頁6行、17頁12?18行、17頁下から2行?18頁5行)

(ウ)検甲1発明は、検甲第1号証の購入当時の構造を示すものであり、本件発明1の構成1Gを有するため、本件発明1と同一である。
仮に、ボルト形状の関係で検甲1発明が構成1Gを有しなかったとしても、ボルト頭部とサイドシールドとの間に十分な間隙を確保するために、それに適した形状のボルトを選択することは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
(陳述要領書(1)22頁5?13行)

(エ)仮に、検甲1発明が構成1Gを有しないとしても、この構成1Gは、甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載されている。よって、当該構成1Gは、本件特許の原出願前における従来の周知技術(少なくとも先行技術)に過ぎない。
(陳述要領書(2)3頁下から5?末行)

(オ)本件明細書【0023】の記載を考慮すれば、「第1の状態」と「第2の状態」との違いは開口部の有無であり、本件発明1においてエプロンサイドプレートの左右の入れ替えは必須の構成要件ではない。
したがって、本件発明1の「接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させること」の意味(技術範囲)は、その文言からも明らかなとおり、エプロンサイドプレートの左右を入れ替えることに限られず、甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載されている上下の位置を入れ替えるものも含まれる。
(陳述要領書(2)5頁下から4行?6頁8行)

エ 型式について
(ア)検甲第1号証の型式「KJL180S」は、被請求人が甲第5号証の「KJL180T-0SDX」や甲第6号証の「KJL180T-0S・DX」の型式を略したものである、と理解している。
(陳述要領書(1)3頁13?15行)

(イ)甲第3号証(カタログ)には、「型式記号の見方」の説明があり、標準耕幅を示す3桁の数字(例えば「180」)の隣には、4つの「T」、「RT」、「ST」及び「SRT」のうちのいずれかが付されることが記載されている。
しかしながら、検証物の銘板及び保証書(甲7)には「KJL180S」とあり、上記甲第3号証の「型式記号の見方」をみても、「S」のみを付すタイプについての説明はない。
したがって、検証物の購入者である請求人としては、見積書(甲5)通りに注文した「T:前車/フランジタイプ」が納品されたため、「KJL180S」は検証物の製造者である被請求人が誤って型式を略したものであると理解せざるを得ない。
(陳述要領書(2)6頁下から6行?7頁4行)

オ ボルトとボルト穴の形状について
(ア)新しく交換した「ボルト」は、ボルト頭部が円形の平板状をなす「六角穴付皿ボルト」である。
このことから、交換後の「ボルト」が、検甲第1号証の入手当時の交換前の「ボルト」、すなわち乙第2号証の「ボルト7」及び「6カクアナツキサラボルト11」とはその形状に関してのみ相違があることは認める。
(陳述要領書(1)4頁2?7行)

(イ)ボルトが嵌められている穴(とその周辺)の形状は、「第1の穴」には逆截頭円錐面が形成されているが、「第2の穴」にはそのような逆截頭円錐面は形成されていない。
「第1の穴」に形成された逆截頭円錐面は、エプロンサイドプレートの厚さが薄いことから、「6カクアナツキサラボルト11」のボルト頭部の全体に対応する形状とはなっていない。
このため、乙第1号証の写真7からも明かなとおり、「6カクアナツキサラボルト11」のボルト頭部のうちその半分以上が「第1の穴」から突出しており、その写真7に示す間隙(隙間)は比較的狭いものとなっている。
(陳述要領書(1)6頁2?7頁6行)

(ウ)入手した交換前の「ボルト」(乙第2号証の「ボルト7」及び「6カクアナツキサラボルト11」)を使用して、左側エプロンサイドプレートを上下反転させてエプロン部材の左側側面に接続した場合でも、左側屈曲部と左側サイドシールドとの間には「間隙」が存在するため、実績は不明だが、検甲第1号証の製品構造上、そのような接続状態でも作業が可能である。
(陳述要領書(1)8頁1?6行)

カ 検甲第1号証説明書における説明
エプロンサイドプレートは、エプロン部材との接続状態を第1の状態(【写真7】に示す状態)から第2の状態(【写真8】に示す状態)へ変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能である。
エプロンサイドプレートは、上下を逆にしかつ左右を入れ替えて接続することによって、エプロン部材との接続状態を第1の状態(【写真7】に示す状態)から第2の状態(【写真8】に示す状態)へ変化させるものである。
【写真6】に示すように、エプロンサイドプレートには、第1の接続部及び第2の接続部が形成され、かつ、エプロン部材の左右側側面には、第1の被接続部及び第2の被接続部が形成されている。
そして、第1の状態(【写真7】に示す状態)においては、第1の接続部と第1の被接続部とが接続され、第2の接続部と第2の被接続部とが接続され、第2の状態(【写真8】に示す状態)においては、第1の接続部と第2の被接続部とが接続され、第2の接続部と第1の被接続部とが接続される。
(陳述要領書(1)11頁1行?12頁末行)

(2)無効理由2
ア 証拠の説明
(ア)甲第10号証について
a 段落【0020】、【0022】、【0046】の記載からみて、甲第10号証には、次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されている。
<甲10発明>
1A:耕耘爪41及び耕耘軸42からなるロータリと、
1B:前記口-タリの上方を覆うロータリカバー46と、
1C:前記口-タリカバー46の左右側側面に配設されたサブサイドカバー152と、
1D:前記ロータリカバー46に対して上下回動可能に連結されて前記ロータリの後側を覆うリヤカバー50と、
1E:前記リヤカバー50の左右側側面に接続された右サイド用防土板151R及び左サイド用防土板151L(以下、単に「防土板151R,151L」という。)と、を有し、
1F’:前記防土板151R,151Lは、前記サブサイドカバー152側の端部を含む部分が前記リヤカバー50側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、
1G’:かつ、左右付替えによって前記リヤカバー50との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能な
1H:ロータリ耕耘装置A。
(審判請求書19頁6行?20頁末行)

b 甲第10号証に開示された「リヤカバー50側方向に折れ曲がった屈曲部」(2箇所で直角に曲がることで取付側の平板部よりもリヤカバー50側に位置する部分)は、甲第10号証の図12の図示内容からみて、段差153のみではなく、サブサイドカバー152側の端部を含む部分であることは明らかである。
よって、甲第10号証には請求人主張の構成1F’が開示されている。
(陳述要領書(2)10頁3?9行)

c 本件特許の請求項1において、「第1の状態」及び「第2の状態」は、それらいずれの状態であっても「エプロンサイドプレートがエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有する状態」であることの限定はない。つまり、本件発明1は、「第1の状態」及び「第2の状態」の両方の状態で、屈曲部がエプロン部材側方向(内側)に折れ曲がっていることを必須の構成要件とするものではない。それゆえ、甲第10号証の【図11】(ハ)の状態を「第1の状態」と認定し、甲第10号証の【図11】(ロ)の状態を「第2の状態」と認定することに何ら誤りはない。
したがって、甲第10号証には、請求人主張の構成1G’が開示されている。
(陳述要領書(2)11頁1?9行)

(イ)甲第11号証について
明細書4頁7行?6頁14行の記載からみて、甲第11号証には、
「耕耘部(16)から外側方へ飛散する土泥を遮蔽すべく配置されたサイドカバー(22)において、サイドカバー(22)は第1カバー(23)と第2カバー(24)とから成り、第1カバー(23)の後縁部と第2カバー(24)の前縁部には夫々対向可能な多数のボルト孔(23a)(24a)が形成されており、対向するボルト孔(23a)(24a)を変えてボルト(26)を挿入して締結することによって、第2カバー(24)の上下位置を調節し、また、第2カバー(24)を上下反転して表裏を逆にして、側面隙間(A)からはみ出ようとする飛散土を略完全に遮蔽し、又は意図的に飛散土を遮蔽しない、サイドカバー(22)」(以下「甲11技術事項」という。)が記載されている。
(審判請求書22頁2行?23頁下から2行)

(ウ)甲第12号証について
甲第12号証の図1を参照すると、ロータリ作業機において、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部に三角形状の屈曲部が形成されていることがみてとれる。
図面に記載された線は、「折り曲げ線」としか考えられず、それ以外に何を意味するものであるか不明である。
(審判請求書25頁2?4行、13?14行)

(エ)甲第13号証について
甲第13号証の図1を参照すると、ロータリ作業機において、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部に屈曲部が形成されていることがみてとれる。
図1に記載された線が「折り曲げ線」であることは、当業者にとって明らかである。
(審判請求書26頁2?4行、7?8行)

(オ)甲第3号証について
甲第3号証の5頁目下部の「自動ロックを採用」の写真を参照すると、ロータリ作業機において、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部が形成されていることがみてとれる。
(審判請求書27頁2?5行)

(カ)検甲第1号証について
検甲第1号証では、ロータリ作業機において、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部が形成されている。
(審判請求書28頁2?4行)

イ 本件発明1と先行技術発明との対比
本件発明1と甲10発明とを対比すると、次の点で相違する。
[相違点1](開口部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能であるのに対して、甲10発明は、そのような開口部が形成可能であることの特定がない点。
[相違点2](屈曲部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有しているのに対して、甲10発明は、サイドシールド側の端部が屈曲部であることの特定がない点。
(審判請求書30頁1?9行)

ウ 相違点に係る判断
(ア)相違点1について
「ロータリ耕転装置のサイドカバー構造」に関する甲第11号証に記載された甲11技術事項の「第2カバー(24)」は、本件発明1の「エプロンサイドプレート」や甲10発明の「防土板151R,151L」と同様、エプロン部材の側方位置で耕耘土の側方への飛び出しを防止するという共通の作用及び機能を有するものであるから、「エプロンサイドプレート」(防土板)に相当する。
また、甲10発明及び甲11技術事項は、いずれも同じロータリ作業機の技術分野に属するものである。
さらに、甲第10号証には、エプロンサイドプレートとエプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることが開示されている。
また、甲第11号証には、第2カバー(24)の上下位置調整や上下反転で伝動ケース(3)によって形成された溝を埋めることが可能な点が記載されており、甲11技術事項と本件発明1とは、課題が共通している。
上記のことから、甲11技術事項を甲10発明に適用することには動機付けがあり、他方、その適用を妨げる阻害要因はない。
したがって、甲10発明において、甲11技術事項を適用することで、当該甲11技術事項の「第2カバー(24)」の如く、エプロンサイドプレートとエプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることでエプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能な構成として、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判請求書30頁12行?31頁11行)

(イ)相違点2について
a 甲第3号証、甲第12号証、甲第13号証及び検甲第1号証によれば、エプロンサイドプレートの変形防止等のために、ロータリ作業機において、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を形成することは、本件特許の原出願前における従来の周知技術である。
そして、甲10発明に上記周知技術を適用することには、同じロータリ作業機の技術分野に属することから動機付けがあり、その一方、その適用を妨げる阻害要因はない。
しかも、甲第10号証(【0046】)には、エプロンサイドプレート(防土板151R,151L)の変形防止によりエプロンサイドプレートとサイドシールド(サブサイドカバー152)とが干渉せず、エプロン部材(リヤカバー50)がスムーズに上下回動して整地性能を発揮することができるように、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部を含む部分を屈曲部としてエプロン部材側方向(内側)に折り曲げることが記載されている。
そうすると、このような甲第10号証の記載は、「屈曲部」に関する上記周知技術を甲10発明に適用することについての示唆であるといえる。
したがって、甲10発明において、上記周知技術の適用により折り曲げの位置を変えて、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を形成することで、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判請求書31頁15行?32頁15行)

b 仮に、「屈曲部」に係る相違点2の構成が周知技術でなかったとしても、エプロンサイドプレートがサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有することは、少なくとも甲第3号証や検甲第1号証には明らかに開示されている。
なおそもそも、甲第10号証には、「防土板151R,151Lは、サブサイドカバー152側の端部を含む部分がリヤカバー50側方向に折れ曲がった屈曲部を有する」ことが記載されているところ、屈曲部の折り曲げの位置をどこにするかは、防土板やサブサイドカバーの形状・強度、或いは折り曲げの作業性等に応じて、当業者が適宜決め得る設計的事項に過ぎない。
(審判請求書33頁6?9行、下から7?3行)

(3)無効理由3
ア 証拠の説明
本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第3号証の第5頁目下部の「自動ロックを採用」の写真等からみて、この甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
<甲3発明>
1A:作業口-タと、
1B:前記作業口-タの上方を覆うシールドカバー本体部と、
1C:前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
1D:前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロ-タの後側を覆うエプロン部材と、
1E:前記エプロン部材の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、を有し、
1F:前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有する
1H:ロータリ作業機。
(審判請求書37頁4?末行)

イ 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、両者は、次の点のみで相違し、それ以外は一致している。
[相違点A](開口部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能であるのに対して、甲3発明は、そのような構成になっているか不明である点。
(審判請求書38頁下から7?末行)

ウ 相違点に係る判断
「ロータリ耕耘装置のサイドカバー構造」に関する甲第11号証に記載された甲11技術事項を甲3発明に適用することには、同じロータリ作業機の技術分野に属することから動機付けがあり、その一方で、その適用を妨げる阻害要因はない。
したがって、甲3発明において、甲11技術事項を適用することにより、エプロンサイドプレートとエプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることでエプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能な構成として、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判請求書39頁3?11行)

(4)無効理由4
ア 証拠の説明
甲第14号証には、第9頁の写真、第21頁の図面、第25頁の図面等からみて、次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されている。
<甲14発明>
1A:耕うん爪を有する作業口-タと、
1B:前記作業ロータの上方を覆う耕うん部カバーと、
1C:前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
1D:前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記作業口-タの後側を覆う均平板と、
1E:前記均平板の左右側側面に接続された補助側板と、を有し、
1F:前記補助側板は、前記側板側の端部が均平板側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、
1G:かつ、前記均平板との接続状態を水田用の状態(下の取付位置への接続状態)から畑用の状態(上の取付位置への接続状態)へ変化させることで、前記補助側板の下側方向位置に開口部を形成可能な
1H:ロータリ作業機。
(審判請求書42頁15?末行)

イ 本件発明と甲14発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲14発明とは、構成1A?1Hのすべてで一致し、かつ、奏する作用効果も同じである。
よって、本件発明1は、甲14発明と同一である。
仮に、同一でないとしても、本件発明1は、甲第14号証に記載された発明に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明及び検甲第1号証に示された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
補助側板の強度確保等のために、甲第14号証記載の発明において、補助側板の側板側の端部を均平板側方向に折り曲げて屈曲部を形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
また、検甲第1号証は「屈曲部」の構成を有しており、しかも土圧に耐え得るように部品の強度確保を図ることはロータリ作業機における自明な課題である。
(審判請求書45頁下から4行?46頁12行)

(イ)本件発明2について
構成2Aは、甲第11号証に記載されている。
(審判請求書46頁18行)

(ウ)本件発明3について
a 構成3A?3Dは、甲第11号証に記載されている。
(審判請求書47頁6?7行)

b 被請求人は、「本件発明3の構成3A?3Dは、『エプロンサイドプレート』の左右を入れ替え、かつ、上下を反転して表裏を逆にして取付けることで、『第1の状態』から『第2の状態』へ変化させることを規定するものである。」と主張するが、本件発明3においてエプロンサイドプレートの左右を入れ替えることは必須の構成要件ではなく、被請求人の当該主張は特許請求の範囲の記載に基づかない誤った主張である。
(陳述要領書(2)25頁下から5行?26頁1行)

(エ)本件発明4について
構成4Aは、甲第14号証に記載されている。
(審判請求書47頁17?18行)

(オ)本件発明5について
構成5Aは、甲第14号証(21頁の図面)に記載されている。
(審判請求書48頁6?7行)

(5)無効理由5
ア 証拠の説明
甲第15号証には、これに掲載された写真や、可変式補助側板の図等からみて、次の発明(以下、「甲15発明」という。)が記載されている。
<甲15発明>
1A:耕うん爪を有する作業ロータと、
1B:前記作業口-タの上方を覆う耕うん部カバーと、
1C:前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
1D:前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記作業口-タの後側を覆う均平板と、
1E:前記均平板の左右側側面に接続された補助側板と、を有し、
1F’:前記補助側板は、屈曲部を有さず、平板状に形成され、
1G:かつ、前記均平板との接続状態を水田用の状態(下の取付位置への接続状態)から畑用の状態(上の取付位置への接続状態)へ変化させることで、前記補助側板の下側方向位置に開口部を形成可能な
1H:ロータリ作業機。
(審判請求書49頁5?末行)

イ 本件発明と先行技術発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲15発明とを対比すると、両者は、次の点のみで相違し、それ以外は一致している。
[相違点a](屈曲部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有しているのに対して、甲15発明は、そのような屈曲部を有していない点。
(審判請求書50頁4?9行)

b 相違点に係る判断
検甲第1号証においては、左右の各エプロンサイドプレートが、サイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有していることは、明らかである。
また、土圧に耐え得るように部品の強度確保を図ることはロータリ作業機における自明な課題である。
したがって、甲15発明において、検甲第1号証に係る技術事項を適用して、エプロンサイドプレート(補助側板)のサイドシールド側の端部にエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を形成することで、相違点aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、補助側板の強度確保等のために、甲第15号証記載の発明において、補助側板の側板側の端部を均平板側方向に折り曲げて屈曲部を形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
(審判請求書50頁12?末行、51頁12?14行)

(イ)本件発明2について
構成2Aは、甲第11号証に記載されている。
(審判請求書51頁下から2行)

(ウ)本件発明3について
構成3A?3Dは、甲第11号証に記載されている。
(審判請求書52頁12?13行)

(エ)本件発明4について
構成4Aは、甲第15号証に記載されている。
(審判請求書52頁下から3?2行)

(オ)本件発明5について
構成5Aは、甲第15号証に記載されている。
(審判請求書53頁8?9行)

(6)無効理由6
ア 本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。
すなわち、本件特許の明細書の【発明の効果】の欄には、「【0015】本発明によると、チェーンケースによって形成された溝を埋めることが可能なロ-タリ作業機を提供することが可能となる。」と記載されている。
しかしながら、上記記載中の「チェーンケース」という文言(構成要素)は、本件特許の特許請求の範囲には存在せず、それに対応する構成も見当たらない。
それゆえ、当該特許請求の範囲に記載された構成と、当該構成に基づく作用効果との関係が不明であって、本件発明1ないし本件発明5はいずれも不明確である。
(審判請求書54頁2?11行)

イ 本件特許の明細書の【発明の効果】の欄に「【0015】本発明によると、チェーンケースによって形成された溝を埋めることが可能なロータリ作業機を提供することが可能となる。」と記載されているとともに、同明細書の【0009】にも「本発明の目的は、チェーンケースによって形成された溝を埋めることが可能なロータリ作業機を提供することにある。」と記載されている。
他方、「チェーンケース」という構成は特許請求の範囲に何ら記載されておらず、また、被請求人は、特許請求の範囲に記載された構成のうち、どの構成が「チェーンケース」に対応するものであるかについて、何ら説明をしていない。
さらに、同明細書の【0026】をみると、「シールドカバー本体部2の左側側面には、伝動フレーム14、チェーンケース16にボルト等で一体化された左側サイドシールド18Lが配置されている。」と記載されているが、「シールドカバー本体部2」と「チェーンケース16」との関係が不明である。
それゆえ、本件特許の特許請求の範囲に記載された構成と、当該構成に基づく作用効果や本件発明の目的との関係が不明であって、本件発明1ないし本件発明5はいずれも不明確である。
(陳述要領書(2)29頁5?20行)

4 本件訂正請求により訂正された本件発明1ないし5に対する具体的な主張
(1)追加構成Aについて
ア 甲第14号証の第21頁の図は、作業姿勢を説明するためのシールであって、作業深さを正確に示すものではないが、当該図をみると、チェーンケースの下側部分が耕耘地面(未耕地の圃場表面)よりも上方に位置するようにみえる。
しかしながら、第21頁に作業方法として記載された一般的な耕法である「隣接耕」を行う場合において、未耕耘部分の発生を防止するために、前回の既耕地と今回の既耕地とが一部重なるように耕耘作業が行われる。
耕耘作業で盛り上がる耕耘土の高さである盛上り度合は「5cm?7cm」であることが一般的であり、甲第22号証の図1でも「5cm(250mm-200mm)」となっている。さらに、甲第23号証の【0002】には、「リヤカバーが検知する耕耘跡の地表面は、その盛上り度合が通常、耕耘深さの約6割すなわち、耕耘深さが100m/mであれば、盛上り度合は約60m/m程度といわれており、これも圃場の土質、土塊の大きさ、雑草の有無等によって異なるものである。」との記載がある。
ここで、第22頁記載の「作業深さの調整」によりゲージ輪アームを少し上げて作業深さを深くし、例えば耕深15cmに変更(耕深15cm、盛上り度合5cm)すると、チェーンケースの下側部分は耕耘地面よりも下方に位置するため、当該耕耘地面にはチェーンケース跡の溝が一旦形成されるが、当該チェーンケース跡の溝は、補助側板の下方の開口部から外側方に流れ出る耕耘土(耕耘された土砂)によって埋め戻される。
(弁駁書(2)10頁4行?14頁5行)

イ 本件訂正により新たに追加された「前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは、前記サイドシールドよりも左の外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースを有し、前記エプロンサイドプレートは、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態に変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能」であるという構成(追加構成A)は、甲第14号証の記載及び当業者の技術常識等を考慮すると、甲第14号証に記載されていることは明らかである。よって、甲14発明は、追加構成Aを有する。
また、そもそも、甲14発明において、耕耘深さを深くして追加構成Aの如く構成することは当業者にとって単なる設計事項に過ぎない。つまり、甲14発明において、単に耕耘深さを深くするだけで追加構成Aとなる。
(弁駁書(2)22頁13?末行、23頁15?17行、25頁下から3?末行)

ウ 追加構成Aが甲第14号証に記載されていないと仮定した場合であって、追加構成Aに係るチェーンケースは、例えば甲第11号証、甲第24号証及び甲第25号証等に記載されているように本件特許の原出願前における周知技術又は公知技術であり、また追加構成A中の「(耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給してチェーンケース跡の溝を埋め戻す)開口部」も、同様に本件特許の原出願前の周知技術又は公知技術である。
(弁駁書(2)25頁8?14行)

(2)追加構成Bについて
「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」するという構成(追加構成B)は、前回の平成31年4月16日付け訂正請求書による訂正で追加された構成と同じで有り、前回の弁駁書(1)で述べたように、例えば甲第18号証ないし甲第20号証に記載されているように、本件特許の原出願前における公知技術又は周知技術に過ぎない。
(弁駁書(2)23頁2?8行、19?21行)


第4 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(答弁書、陳述要領書(1)及び陳述要領書(2)参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:事実確認報告書
乙第2号証:「コバシローター」の部品表、小橋工業株式会社、12頁
乙第3号証:「コバシローター」の取扱説明書、小橋工業株式会社、
1?53頁
乙第4号証:「コバシツーウェイローター」の取扱説明書、
小橋工業株式会社、1?54頁
乙第5号証:JISハンドブック 4-2 ねじII、財団法人
日本規格協会、2005年6月28日、402?405頁
乙第6号証:「六角穴付皿ボルト(皿キャップ)」の製品頁、
宇都宮螺子株式会社
乙第7号証:「極低頭六角穴付ボルト」の製品頁、
株式会社ミスミグループ本社
乙第8号証:「皿もみ」の頁、Weblio辞書 大車林
乙第9号証:改訂連絡票(改訂No.2004-446)、
小橋工業株式会社
乙第10号証:部品表、小橋工業株式会社
乙第11号証:東京地方裁判所平成27年(ワ)第1025号判決
乙第12号証:特願2015-79549号の平成28年4月26日
付け意見書
乙第13号証:実願昭54-72408号(実開昭55-172003
号)のマイクロフィルム
乙第14号証:「コバシローター(M ML MLD-7シリーズ
KHシリーズ)」のカタログ、小橋工業株式会社
乙第15号証:「コバシローター」の部品表、小橋工業株式会社、
12?16頁

3 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 検甲第1号証の構造は、「KJL180型のコバシローター」の出荷当時の構造と異なること
検甲第1号証説明書8?11頁の【写真7】?【写真10】、【写真12】?【写真13】を見ると、検甲第1号証の左右のエプロンサイドプレートを、エプロン部材に取り付けるためのボルトは、左右の各エプロンサイドプレートに、それぞれ2個使用され、このボルトが、請求人において交換された新しいボルトであると思われる。
交換後のボルトの形状を見ると、ボルトの頭部は、平坦な形状であり、上面視において円盤形状であり、かつ、円の中心付近に六角形の凹部(角穴)が形成されているように見える。
そこで、被請求人は、検甲第1号証と同じ型式の製品である型式「KJL180」のコバシローターの出荷当時(新品)の構造を確認した(乙第1号証)ところ、エプロンサイドプレートの上側(進行方向前側)には、六角穴付皿ボルトが使用され、エプロンサイドプレートの下側(進行方向後側)には、六角柱形状の厚みのあるボルト頭部を有する通常のボルト(六角ボルト)が使用されている。
KJL180のコバシローターのパーツリスト(乙第2号証)には、上側の締結穴に「6カクアナツキサラボルト(11)」を使用し、下側の締結穴に「ボルト(7)」を使用し、これらのボルトを「ナット(12)」と「Sワッシヤ(4)」によって締結することにより、エプロンの左右側面に取付けることが記載されている
したがって、検甲第1号証説明書に記載された検甲第1号証の構造は、左右各エプロンサイドプレートをエプロン部材に取り付けるためのボルトの形状が、出荷当時の製品に用いられていたボルトの形状と異なるため、請求人が平成14年に検甲第1号証にかかる製品を購入した当時の構造を示すものではない。
以上により、検甲第1号証説明書に示されている「KJL180型のコバシローター」は、請求人が平成14年に購入した当時の構造を示すものではないから、検甲第1号証は本件特許発明の公然実施品ではない。
(答弁書7頁下から5行?12頁下から3行)

イ 検甲第1号証に係る検証物について
(ア)検甲第1号証の型式「KJL180S」は、甲第5号証の「KJL180T-0SDX」や甲第6号証の「KJL180T-OS・DX」の型式を略したものではない。
被請求人製品において、「KJL180S」とは、型式のハイフン(「-」)以前に「S」を含む型式をいい、「KJL180」とは、型式のハイフン(「-」)以前に「S」を含まない型式をいい、両者は異なる型式を示すものである。したがって、甲第5号証の「KJL180T-OSDX」や甲第6号証の「KJL180T-OS・DX」は、いずれも型式のハイフン(「-」)以前に「S」を含まない型式であるため、型式「KJL180」であって、型式「KJL180S」ではない。
(陳述要領書(1)5頁末行?6頁13行)

(イ)被請求人が調査したところ、機番「43171127」の製品は、2002(平成14)年10月頃に、被請求人の東京営業所(当時)を介して第三者である納入先に販売された製品であることが確認された。
しかし、被請求人が東京営業所を介して機番「43171127」の製品を納入した納入先の第三者は、請求人ではない。また、機番「43171127」の製品が、その後、当該納入先から請求人に販売されたか否かについては知らない。
(陳述要領書(2)3頁下から5行?4頁2行)

(ウ)「検証申出書」に記載されている、請求人が交換を行った後の「六角穴付ボルト」(極低頭ボルト)を備える検甲第1号証と同じ構造の製品は、本件特許の出願前に販売されていなかった。
しかし、エプロンサイドプレートを固定するためのボルトとして、請求人要領書(1)4頁[写真C]に写っている、部品コードが「9010156」である「ボルト4T」と、請求人要領書(1)4頁[写真D]に写っている、部品コードが「9050322」である「六角穴付皿ボルト」とを備える製品は、本件特許の出願前に販売されていた。
(陳述要領書(2)4頁6?13行)

ウ 「KJL180型のコバシローター」は、構造上、エプロンサイドプレートを「第2の状態」に変化させることのできる製品ではないこと(第2の状態○1(審決注:丸囲み数字は、「○数字」と表記する。以下同様。))
(ア)第1の穴及び第2の穴の構造について
乙第1号証によれば、「KJL180型のコバシローター」の出荷当時において、左右のエプロンサイドプレートに形成された、ボルトを挿入するための2箇所の穴の構造は、以下のとおりである。
写真5から分かるとおり、写真10、写真11における「第1の穴」は、エプロンサイドプレートの上側(進行方向前側)に位置する締結穴である。この「第1の穴」には、エプロンサイドプレートの屈曲部の屈曲方向に対して反対側の面に、板厚方向において表面に近くなるほど穴の直径が大きくなる、逆円錐形状の座ぐり(ザグリ)加工が施されている。
当該ザグリ加工に対応した形状のボルト頭部を有する六角穴付皿ボルトの頭部が、第1の穴(エプロンシールドの板厚内部)に入り込むことにより、ボルト頭部が突出する高さを低くすることができ、その結果、ボルト頭部とサイドシールドとの間に、間隙を確保することができる構造が実現されている。
これに対して、写真11右側、写真13左側に示すように、「第2の穴」には、エプロンサイドプレートの板厚方向において穴の直径に変化がなく、座ぐり(ザグリ)加工は施されていない。
エプロンサイドプレートの下側に位置する「第2の穴」に対応するボルト締結位置は、常にサイドシールドの外側に位置しており、サイドシールドと重畳することはないから、「第2の穴」に頭部が突出する通常の六角ボルトを締結しても、ボルト頭部がサイドシールドに接触するおそれはない。
(答弁書14頁下から3行?15頁6行、15頁下から3行?16頁2行、17頁4?14行)

(イ)エプロンサイドプレートの交換について
出荷当時の「KJL180型のコバシローター」を用いて、左右のエプロンサイドプレートについて上下を逆にしかつ左右を入れ替えることによって、「第2の状態」を再現しようとすれば、エプロンサイドプレートに形成された屈曲部がエプロン部材側(内側)に屈曲するように取り付ける必要があるため、必然的に、ザグリ加工の施されていない第2の穴がエプロンサイドプレートの上側になり、ザグリ加工の施されている第1の穴がエプロンサイドプレートの下側になる。
上側に位置する「第2の穴」には、「第2の穴」に対応する形状を有する通常の六角ボルトを締結する(第2の状態○1)のが製品構造上自然である。
この場合、エプロンサイドプレートの上側に位置する「第2の穴」に締結されたボルト頭部は、その全体が突出することになる(乙第1号証 写真18、写真19)。
サイドシールドとエプロンサイドプレートとの間の空間は狭いので、ボルトの頭部がサイドシールドに接触してこすれるなどして部材相互が干渉するという不都合が生じるから、出荷当時の「KJL180型のコバシローター」は、「第2の状態○1」に変化させることのできる製品ではない。
(答弁書17頁15行?18頁末行、19頁9?13行、20頁5?9行)

エ 「KJL180型のコバシローター」は、出荷当時のボルトと締結穴との組み合わせを入れ替えても、エプロンサイドプレートを「第2の状態」に変化させることのできる製品ではないこと(第2の状態○2)
乙第1号証では、「第2の状態」を再現する際に、エプロンサイドプレートの上側に位置する「第2の穴」に、六角穴付皿ボルトを締結する方法についても確認した(第2の状態○2 写真21、写真22)。
この場合、「第2の穴」には、ザグリ加工が施されていないため、逆円錐形状の六角穴付皿ボルトのボルト頭部のほとんどが、エプロンサイドプレートの表面からサイドシールド側に突出してしまう(写真22)。その結果、六角穴付皿ボルトのボルト頭部とサイドシールドとの間の間隙はごくわずかであり、ボルトの頭部とサイドシールドとが接触し易い状態になるといえる。
以上により、「KJL180型のコバシローター」は、エプロンサイドプレートを「第2の状態○2」に変化させることのできる製品ではない。
(答弁書20頁14?18行、21頁1?6行、22頁11?12行、23頁下から5?末行)

オ 「KJL180型のコバシローター」のカタログや取扱説明書には、エプロンサイドプレートのエプロンに対する接続状態を変更することができる製品であることが記載されていないこと
請求人が提出した「KJL180型のコバシローター」のカタログや新聞記事である甲第1号証?甲第3号証には、「KJL180型のコバシローター」が、請求人が主張する「第2の状態」に変更可能な製品であることはどこにも記載されていない。
また、KJL180型のコバシローターの取扱説明書(乙第3号証)にも、左右のエプロンサイドプレートのエプロンに対する接続状態を組み替えることができる旨の説明は記載されていない。
したがって、「KJL180型のコバシローター」は、左右のエプロンサイドプレートの上下を逆にしかつ左右を入れ替えるという接続状態の変更を行うことができる製品ではない。
(答弁書24頁4?10行、25頁10?13行)

カ 本件発明と検甲1発明との対比について
(ア)上記アのとおり、検甲1発明は、請求人が平成14年に検甲第1号証を購入した当時の構造を示すものではないから、本件特許発明の公然実施品ではない。また、出荷当時の「KJL180型のコバシローター」は、少なくとも、本件発明1の構成1Gを有していないため、本件発明1と同一でない。
(答弁書26頁9?13行)

(イ)検甲第1号証説明書の写真7における、エプロン部材のシールドカバー本体部に対する連結角度は、圃場において実際に整地作業を行う際に、シールドカバー本体部に対して上下に回動するエプロン部材の、シールドカバー本体部に対する連結角度の範囲内であることは認める。
仮に、検甲第1号証説明書の写真7の状態が「エプロン部材が整地可能な状態」であると判断された場合には、検甲第1号証に係る検証物は、構成4Aを備えていることを認める。
(陳述要領書(1)4頁17行?5頁3行)

(ウ)検甲第1号証説明書の写真7により、検甲第1号証に係る検証物が、「第1の状態において」、「前記エプロンサイドプレートの後側方向に位置する部分は、」「前記エプロン部材よりも突出する部分を有しない」という構成を有することは認める。
しかし、検甲第1号証に係る検証物は「第2の状態」へ変化させることができないものである。
(陳述要領書(1)5頁8?13行)

キ 甲第14号証及び甲第15号証について
甲第14号証及び甲第15号証に開示された構成は、エプロンサイドプレートの上下を入れ替えたり左右を入れ替えたりすることなく、上方(又は斜め上方)にスライド移動させることにより、エプロンサイドプレートの下方に開口部を形成するものである。
他方、請求人は検甲第1号証を公然実施品であると主張しているところ、公然実施品の構成は製品として最適化されているため、当該構成を変更するための動機付けが認められる場合は稀である。
仮に、検甲第1号証のエプロンサイドプレートを上方にスライド移動させることにより、エプロンサイドプレートの下方に開口部を形成可能な第2の状態変化させることができるように変更しようとすれば、上方にスライド移動した位置で、エプロンサイドプレートを、他の部材と干渉しない状態で、エプロン部材に締結することができるように、接続先であるエプロン部材の構造をはじめ、部材相互の関係を考慮して様々な変更を検討する必要がある。
よって、甲第14号証及び甲第15号証に開示された構成を考慮しても、検甲第1号証に基づいて構成1Gに想到することは容易ではない。
(陳述要領書(2)14頁2?8行、17?23行、15頁6?8行)

(2)無効理由2
ア 請求人の主張する構成1F’について
本件特許発明1の構成1Fにおける「屈曲部」は、文言上、エプロンサイドプレートの「サイドシールド側の端部」が「エプロン部材側方向に折れ曲がった」部分であることが特定されている。
これに対し、甲第10号証の図12に記載された「左サイド用防土板151L」及び「右サイド用防土板151R」は、その「基部側」が「リヤカバー50側方向に折れ曲がった」部分である「段差153」を有しているに過ぎず、サブサイドカバー152側の端部は平板形状であって、リヤカバー50側に折れ曲がっていない。
よって、甲第10号証には、請求人の主張する構成1F’は開示されていない。
(答弁書32頁下から3行?33頁3行、33頁下から4?末行、34頁6?7行)

イ 請求人の主張する構成1G’について
甲第10号証において、「前記防土板151R、151L」が「前記リヤカバー50側方向に折れ曲がった屈曲部を有」する状態は、甲第10号証の【図11】(ハ)の状態だけであり、左右付替えを行った甲第10号証の【図11】(ロ)の状態は、防土板151R、151Lの屈曲部の屈曲方向が逆方向になっている。
したがって、甲10発明は、「かつ、左右付替えによって前記リヤカバー50との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能な」という構成1Gを有しない。
(答弁書35頁下から8?末行)

ウ 本件発明1と甲10発明との対比・判断
(ア)相違点
本件発明1と甲10発明との相違点は以下のとおりである。
[相違点1](開口部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能であるのに対して、甲10発明は、そのような開口部が形成可能であることの特定がない点。
[相違点2](屈曲部に係る相違点)
エプロンサイドプレートに関して、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有しているのに対して、甲10発明は、サイドシールド側の端部が屈曲部であることの特定がない点。
[相違点3](サイドシールドに係る相違点)
本件発明1は「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと」という構成を有するのに対し、甲10発明は「サイドシールド」と「シールドカバー本体部」を有しているところ、「サイドシールド」が「シールドカバー本体部」の左右側側面に配設されているか否か不明である点。
[相違点4](第2の状態への変化に係る相違点)
本件発明1は「前記エプロンサイドプレートは、エプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能な」構成を有するのに対し、甲10発明では、第1の状態において、エプロンサイドプレートがエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有するに過ぎず、「エプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有する前記エプロンサイドプレート」の、前記エプロン部材に対する接続状態を、第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能な」構成を有しない点。
(答弁書37頁14行?38頁12行)

エ 相違点1について
(ア)甲11技術事項について
甲11技術事項の「第2カバー(24)」は、本件発明1の「エプロンサイドプレートに相当する構成ではない。
第1図、第2図等から明らかなとおり、「第2カバー(24)」は、「第1カバー(23)」に取り付けられているのであって、「後部カバー(18)」に取り付けられている部材ではない。
(答弁書38頁下から3行?39頁2行)

(イ)甲10発明と甲11技術事項には課題の共通性がないこと
甲10発明では、上下回動自在のリヤカバー50(本件特許発明1のエプロン部材)に防土板を設けているため、防土板がサブサイドカバー152(本件特許発明1のサイドシールド)と干渉するという課題が生じている。
これに対し、甲11技術では、サイドカバーは後部カバー18(本件特許発明1のエプロン部材)に設けられていないため、上下回動する部材が他の部材と干渉するという課題は生じない。
また、甲10発明の課題は耕耘土壌の溢出を防止することであって、飛散土遮蔽状態を調整するという甲11技術事項の課題は全く認識されていない。
したがって、甲10発明と甲11技術事項には課題の共通性がなく、甲10発明に甲11技術事項を適用する動機付けがない。
(答弁書40頁18行?41頁1行)

(ウ)甲10発明に甲11技術事項を適用することには阻害要因があること
甲10発明は、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの左右付替えを行うことにより、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lをサブサイドカバー152の内側又は外側に配置させることができるという作用効果を奏する発明であるところ、甲11技術事項を適用して、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの上下を反転して表裏を逆にして取付けてしまうと、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lをサブサイドカバー152の外側に配置させることができなくなるため、甲10発明の作用効果が阻害される。
したがって、甲10発明に甲11技術事項を適用することには阻害要因がある。
(答弁書41頁13?下から3行)

オ 相違点2について
(ア)周知技術について
a 甲第3号証
甲第3号証の写真を見ても、請求人が「屈曲部」と主張する部分が、どのような構成を有しているのか判別することはできない。
(答弁書42頁下から2行?43頁1行)

b 甲第12号証、甲第13号証
請求人が「エプロンサイドプレート」と主張する部材は、符号が付されておらず、かつ、明細書中でも何ら言及されていない部材である。したがって、甲第12号証、甲第13号証には、当該部材が「エプロンサイドプレート」であることは記載されていない。
また、「折り曲げ線」と主張する線についても、何ら説明が記載されていないから、甲第12号証、甲第13号証には、当該線が折り曲げ線であることは記載されていない。
(答弁書43頁下から7?末行、45頁1?7行)

c 検甲第1号証
検甲第1号証は、請求人が平成14年に購入した当時の構成を示すものではないため、本件特許発明の公然実施品に該当しない。
(答弁書46頁9?10行)

d 甲第3号証、甲第12号証、甲第13号証及び検甲第1号証を考慮しても、エプロンサイドプレートの変形防止のために、ロータリ作業機において、エプロンサイドシールド側の端部にエプロン部材側に折れ曲がった屈曲部を形成することは、本件特許の原出願前における従来の周知技術であるということはできない。
(答弁書48頁3?7行)

(イ)甲第10号証に検甲第1号証に係る屈曲部の構成を組み合わせることには阻害要因があること
甲10発明の右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの屈曲部(甲第10号証では「段差153」)の位置を、検甲第1号証に示す屈曲部の位置に変更すると、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lはサブサイドカバー152に干渉してしまうため、甲10発明の目的に反する。
また、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの左右付替えを行ったとしても、サブサイドカバー152の内側又は外側に配置させるという状態の変化が実現できなくなるため、甲10発明の作用効果が阻害される。
したがって、検甲第1号証と同じ形状のエプロンサイドプレートを有するロータリ作業機が公知であったとしても、甲10発明の右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの屈曲部の位置を、検甲第1号証のエプロンサイドプレートの屈曲部の位置に変更することには阻害要因がある。
(答弁書48頁12?13行、49頁7行?50頁1行)

(3)無効理由3
甲第3号証からは、請求人の主張する甲3発明を認定することはできないから、請求人の主張は理由がない。
(答弁書56頁9?10行)

(4)無効理由4
ア 甲第14号証について
甲第14号証の第25頁の図面には、「補助側板」に、請求人が「折り曲げ線」と主張する線が記載されているものの、甲第14号証には当該図面に記載された線についての説明は記載されていないから、当該線が「折り曲げ線」であることは記載されていない。
仮に当該線が「折り曲げ線」であるとしても、甲第14号証の第25頁の図面からは、補助側板の「折り曲げ線」が、均平板側方に折れ曲がっているのかその反対側に折れ曲がっているのかは不明である。
甲第14号証に、「均平板側方向に折れ曲がった屈曲部」が開示されていると認定することはできない。
(答弁書57頁5?末行)

イ 本件発明1と甲14発明との対比
補助側板の強度確保等のために、甲14発明において、補助側板の端部を均平板側方向に折り曲げて屈曲部を形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項ではない。
本件発明1では、エプロンサイドプレートの強度確保のみならず、エプロンサイドプレートとサイドシールドとの接触を防止して、エプロン部材のスムーズな上下回動による整地性能を発揮するとの課題を解決するための具体的な手段として、構成1Fを採用しているのであるから、構成1Fにかかる課題を解決する手段によって奏する作用効果は、当業者にとって当然に予測し得るものではなく、格別なものである。
(答弁書58頁下から7?5行、59頁下から4行?60頁4行)

ウ 本件発明2と甲14発明との対比・判断
甲第14号証には、水田用として使用する状態から畑用として使用する状態に変更するために、補助側板を図面上方向にスライドさせる方法が記載されている。
そうであるにもかかわらず、わざわざ甲第14号証の補助側板の上下を逆にして接続する必要性はなく、しかも、上下を逆にして接続した場合に、水田用と畑用に切り替えるという同じ機能を奏するか否かも不明である。
したがって、甲14発明に、甲第11号証に記載された技術事項を適用して、補助側板の状態変化の方法を、補助側板の上下を逆にする方法に変更する動機付けがない。
また、甲第11号証に記載されている第2カバー(24)は、本件発明1の「エプロンサイドプレート」に相当する部材ではなく、「サイドシールド」の一部に相当する部材であるから、甲第11号証には、請求人の主張する構成2Aは開示されていない。
したがって、本件発明2は、甲14発明、検甲第1号証に示された技術事項及び甲第11号証に記載された技術事項に基づき当業者が容易に想到し得た発明ではない。
(答弁書61頁2行?62頁2行)

エ 本件発明3と甲14発明との対比・判断
本件発明3の構成3A?3Dは、「エプロンサイドプレート」の左右を入れ替え、かつ、上下を反転して表裏を逆にして取付けることで、「第1の状態」から「第2の状態」へ変化させることを規定するものである。
甲第14号証には、補助側板を図面上方向にスライドさせる方法により、水田用として使用する状態から畑用として使用する状態に変更する構成が記載されている。
したがって、わざわざ甲第14号証の補助側板の左右を入れ替え、かつ、上下を反転して表裏を逆にして接続する必要性はなく、しかも、左右を入れ替え、かつ、上下を逆にして接続した場合に、水田用と畑用に切り替えるという甲14発明と同じ機能を奏するか否かも不明である。
よって、甲14発明に、甲第11号証に記載された技術事項を適用して、補助側板の状態変化の方法を、補助側板の左右を入れ替え、かつ、上下を逆にする方法に変更する動機付けがない。
(答弁書62頁13?末行)

オ 本件発明4と甲14発明との対比・判断
甲第14号証には「前記補助側板は、前記側板側の端部が均平板側方向に折れ曲がった屈曲部を有」する構成は記載されていない。
また、仮にこの点が記載されているとしても、甲第14号証には、均平板(本件発明におけるエプロン部材)が整地可能な状態における、補助側板(本件発明におけるエプロンサイドプレート)と側板(本件発明におけるサイドシールド)との重畳状態が開示されていないから、甲第14号証の補助側板の屈曲部が重畳状態になる部分を含むか否か不明である。
(答弁書63頁下から6行?64頁2行)

カ 本件発明5と甲14発明との対比・判断
甲第14号証第25頁の図に記載されている補助側板は、請求人が主張する【第2の状態】において、補助側板の後側方向に位置する部分が、均平板よりも突出する部分を有していることが明らかである。
したがって、甲第14号証には、構成5Aに相当する構成は開示されていない。
(答弁書65頁5?9行)

(5)無効理由5
無効理由4について上述したとおり、甲第14号証にも、本件発明1の構成要件1Fは記載されていないという点で、甲14発明と甲15発明は同じである。
したがって、本件発明1から本件発明5については、無効理由4について上述した被請求人の反論が無効理由5に対しても妥当する。
(答弁書66頁9?14行)

(6)無効理由6
特許法第36条第6項2号にいう「特許を受けようとする発明が明確であること」という要件は、特許請求の範囲における構成の記載からその構成を一義的に知ることができれば特定の問題としては必要にして十分であると解されている(知財高裁平成22年3月24日判決、平成21年(行ケ)第10281号)。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1から請求項5の記載は、いずれもその記載からその構成を一義的に知ることができるものであるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。
請求人は、特許請求の範囲に「チェーンケース」という構成が記載されていないことを問題にしているが、特許請求の範囲に「チェーンケース」という構成が記載されていないことによって、特許請求の範囲に記載された構成が不明になるものではない。
(答弁書67頁14?末行)


第5 当審の判断
1 各証拠について
(1)検甲第1号証に係る検証物
平成30年6月8日の証拠調べ(検証)において、検証調書のとおり、検証物(ロータリ作業機)を、左側及び右側エプロンサイドプレートの配置、及びボルトとナットの組み合わせにより、【特定1-1】、【特定1-2】、【特定2-1】、【特定2-2】とし検証を行った。

ア 販売当初の検証物に係る発明
(ア)甲第2号証、甲第3号証、乙第2号証及び乙第3号証からみて、検甲第1号証に係るロータリ作業機が、本件特許の原出願前である当初販売された当時の状態と認められる、左側及び右側エプロンサイドプレートの配置、及び六角穴付皿ボルト及び六角ボルトを用いた状態の【特定1-1】は、以下のとおりであって(写真は省略。)、該【特定1-1】の状態は、本件特許の原出願前に公然実施されたものと認められる。
「【特定1-1】
1 ロータ軸に設けたフランジに耕耘爪を取り付けた作業ロータ[写
真011、053]と、この作業ロータの上方を覆うシールドカバ
ー本体部[写真002、003、005]と、このシールドカバー
本体部の左側側面に配設されたチェーンケースと左側サイドシール
ド[写真004、010]と、同じく右側側面に配設されたサポー
トアームと右側サイドシールド[写真006、007]と、
シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて作業ロー
タの後側を覆うエプロン部材[写真001?003]と、
このエプロン部材の左右側側面にそれぞれ接続された左側エプロン
サイドプレート[写真010、016]及び右側エプロンサイドプ
レート[写真009、018]と、を有し、
エプロン幅184cm、機械幅196cm[写真025?028]
であること。

2 左側エプロンサイドプレートは、左側サイドシールド側の端部が、
その端部に沿ってエプロン部材側方向に折れ曲がった左側屈曲部[
写真012、014]を有し、かつ、右側エプロンサイドプレート
は、右側サイドシールド側の端部が、その端部に沿ってエプロン部
材側方向に折れ曲がった右側屈曲部[写真013、015]を有す
ること。

3 左側エプロンサイドプレート[写真014]には、上端後側に左側
第1のボルト孔が、中段後側に左側第2のボルト孔[写真029、
030]が形成され、かつ、右側エプロンサイドプレート[写真0
15]には、上端後側に右側第1のボルト孔が、中段後側に右側第
2のボルト孔[写真029、030]が形成され、左側及び右側第
1のボルト孔の外面側の周囲には、逆円錐面[写真049、050
]が形成され、左側及び右側第2のボルト孔の外面側の周囲には、
逆円錐面が形成されていないこと。
左側エプロンサイドプレートの左側第1のボルト孔の直径は11.
13mm[写真045]、外面側の左側第1のボルト孔まわりの塗
装が剥がれた円周の直径は14mm[写真049]、左側第2のボ
ルト孔の直径は10.99mm[写真046]であって、右側エプ
ロンサイドプレートの右側第1のボルト孔の直径は10.97mm
[写真047]、外面側の右側第1のボルト孔まわりの塗装が剥が
れた円周の直径は13mm[写真050]、右側第2のボルト孔の
直径は10.98mm[写真048]である。

4 エプロン部材の左右側端部には、該端部に沿って左フランジ及び右
フランジが立ち上がって形成され、左フランジの上部に左側第1の
ボルト孔が形成され、下部に左側第2のボルト孔が形成され、右フ
ランジの上部に右側第1のボルト孔が形成され、下部に右側第2の
ボルト孔が形成されている[写真052、054]こと。

5-1 左側エプロンサイドプレートをエプロン部材の左フランジの外側
に重ねて、左側エプロンサイドプレートの左側第1のボルト孔と
左フランジの左側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルト
と六角ナットで、左側エプロンサイドプレートの左側第2のボル
ト孔と左フランジの左側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルト
と六角ナットで、締結され[写真014]、
右側エプロンサイドプレートをエプロン部材の右フランジの外側
に重ねて、右側エプロンサイドプレートの右側第1のボルト孔と
右フランジの右側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルト
と六角ナットで、右側エプロンサイドプレートの右側第2のボル
ト孔と右フランジの右側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルト
と六角ナットで、締結されている[写真015]こと。

5-2 六角穴付皿ボルトは、呼び径9.81mm[写真038]、呼び
長さ19.02mm[写真037]、頭部径19.67mm[写
真039]、頭部高さ6.26mm[写真041]、穴の二面幅
6.20mm[写真040]、六角ボルトは、呼び径9.83m
m[写真034]、呼び長さ19.93mm[写真033]、頭
部二面幅16.91mm[写真035]、頭部高さ7.30mm
[写真036]、六角ナットは、孔の径8.49mm[写真04
4]、二面幅16.45mm[写真042]、高さ7.79mm
[写真043]である[写真031、032]。

6 シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度[写
真017、019]では、左側サイドシールドの下縁と左側エプロ
ンサイドプレートの下縁とが、略同じ高さとなり[写真016]、
右側サイドシールドの下縁と右側エプロンサイドプレートの下縁と
が、略同じ高さとなる[写真018]こと。

7 左側エプロンサイドプレートと左側サイドシールドとの隙間[写真
056]は8.77mm[写真022]、右側エプロンサイドプレ
ートと右側サイドシールドとの隙間[写真055]は6.49mm
[写真024]、左側エプロンサイドプレートの左側第1のボルト
孔を貫通する六角穴付皿ボルトが、左側エプロンサイドプレートの
外側面より突出する高さは、3.48mm[写真020、021]
、右側エプロンサイドプレートの右側第1のボルト孔を貫通する六
角穴付皿ボルトが、右側エプロンサイドプレートの外側面より突出
する高さは、3.87mm[写真023]であること。

8 シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度[写
真017、019]では、左側屈曲部は、左側サイドシールドと左
側エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を含むように形
成され[写真014、016]、かつ、右側屈曲部は、右側サイド
シールドと右側エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を
含むように形成されている[写真015、018]こと。

9 側面視において、左側エプロンサイドプレートの後側方向に位置す
る部分は、エプロン部材よりも突出部分を有さず[写真014、0
52]、かつ、右側エプロンサイドプレートの後側方向に位置する
部分は、エプロン部材よりも突出する部分を有しないこと[写真0
15、054]。

10 サポートアームの略中央に銘板が取り付けられ、この銘板には「コ
バシローター」、「型式 KJL180S」、「製造番号4317
1127」、「小橋工業株式会社」と記載されている[写真051
]こと。

11 サポートアームの上部に円形のシールが貼着され、このシールには
、「Niplo」、「試作機」、「型式 コバシKJL180」、
「試作番号K2500-05」と記載されている[写真008]こ
と。」

(イ)上記【特定1-1】によれば、検甲第1号証に係る検証物は、本件特許の原出願前に公然実施された次の発明(以下「検甲1発明」という。)を備えるものと認められる。
なお、(a)?(h)の分説は、審決において付した。
「(a)ロータ軸に設けたフランジに耕耘爪を取り付けた作業ロータと、
(b)この作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
(c)このシールドカバー本体部の左側側面に配設されたチェーンケースと左側サイドシールドと、同じく右側側面に配設されたサポートアームと右側サイドシールドと、
(d)シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて作業ロータの後側を覆うエプロン部材と、
(e)このエプロン部材の左右側側面にそれぞれ接続された左側エプロンサイドプレート及び右側エプロンサイドプレートと、を有し、
(f)左側エプロンサイドプレートは、左側サイドシールド側の端部が、その端部に沿ってエプロン部材側方向に折れ曲がった左側屈曲部を有し、かつ、右側エプロンサイドプレートは、右側サイドシールド側の端部が、その端部に沿ってエプロン部材側方向に折れ曲がった右側屈曲部を有し、
(g1) 左側エプロンサイドプレートには、上端後側に左側第1のボルト孔が、中段後側に左側第2のボルト孔が形成され、かつ、右側エプロンサイドプレートには、上端後側に右側第1のボルト孔が、中段後側に右側第2のボルト孔が形成され、左側及び右側第1のボルト孔の外面側の周囲には、逆円錐面が形成され、左側及び右側第2のボルト孔の外面側の周囲には、逆円錐面が形成されておらず、
(g2) エプロン部材の左右側端部には、該端部に沿って左フランジ及び右フランジが立ち上がって形成され、左フランジの上部に左側第1のボルト孔が形成され、下部に左側第2のボルト孔が形成され、右フランジの上部に右側第1のボルト孔が形成され、下部に右側第2のボルト孔が形成されており、
(g3)左側エプロンサイドプレートをエプロン部材の左フランジの外側に重ねて、左側エプロンサイドプレートの左側第1のボルト孔と左フランジの左側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルトと六角ナットで、左側エプロンサイドプレートの左側第2のボルト孔と左フランジの左側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルトと六角ナットで、締結され、右側エプロンサイドプレートをエプロン部材の右フランジの外側に重ねて、右側エプロンサイドプレートの右側第1のボルト孔と右フランジの右側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルトと六角ナットで、右側エプロンサイドプレートの右側第2のボルト孔と右フランジの右側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルトと六角ナットで、締結されており、
(g4) シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度では、左側サイドシールの下縁と左側エプロンサイドプレートの下縁とが、略同じ高さとなり、右側サイドシールドの下縁と右側エプロンサイドプレートの下縁とが、略同じ高さとなる、
(h)ロータリ作業機。」

イ 検証物の別態様
(ア)上記【特定1-1】に対して、右側エプロンサイドプレートと左側エプロンサイドプレートを入れ替えて取り付けることができた態様である【特定1-2】は、以下のとおりである(写真は省略。)。
「【特定1-2】(【特定1-1】から、左側及び右側エプロンサイドプレ
ートの配置を換えたもの。1?4、5-2、9?11は 【特定1-1】と同じ。)
5-1 右側エプロンサイドプレートをエプロン部材の左フランジの外側
に重ねて、右側エプロンサイドプレートの右側第2のボルト孔と
左フランジの左側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルト
と六角ナットで、右側エプロンサイドプレートの右側第1のボル
ト孔と左フランジの左側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルト
と六角ナットで、締結され[写真057]、
左側エプロンサイドプレートをエプロン部材の右フランジの外側
に重ねて、左側エプロンサイドプレートの左側第2のボルト孔と
右フランジの右側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルト
と六角ナットで、左側エプロンサイドプレートの左側第1のボル
ト孔と右フランジの右側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルト
と六角ナットで、締結されている[写真059]こと。

6 シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度[写
真058、060]では、右側エプロンサイドプレートの下縁は左
側サイドシールドの下縁よりも約65mm上方に位置し[写真06
8、069]、左側エプロンサイドプレートの下縁は右側サイドシ
ールドの下縁よりも約65mm上方に位置している[写真067、
070]こと。

7 右側エプロンサイドプレートと左側サイドシールドとの隙間[写真
065]は7.84mm[写真064]、左側エプロンサイドプレ
ートと右側サイドシールドとの隙間[写真066]は5.51mm
[写真062]、右側エプロンサイドプレートの右側第2のボルト
孔を貫通する六角穴付皿ボルトが、右側エプロンサイドプレートの
外側面より突出する高さは、4.47mm[写真063]、左側エ
プロンサイドプレートの左側第2のボルト孔を貫通する六角穴付皿
ボルトが、左側エプロンサイドプレートの外側面より突出する高さ
は、4.95mm[写真061]であること。

8 シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度[写
真058、060]では、右側屈曲部は、左側サイドシールドと右
側エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を含むように形
成され[写真057]、かつ、左側屈曲部は、右側サイドシールド
と左側エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を含むよう
に形成されていること[写真059]。」

(イ)上記【特定1-2】によれば、検甲第1号証に係る検証物は、検甲1発明に対して、次の態様(以下「検甲1別態様」という。下記記載を除いて「検甲1発明」と同じ。)となるものである。
「(a)
・・・
(g3’)右側エプロンサイドプレートをエプロン部材の左フランジの外側に重ねて、右側エプロンサイドプレートの右側第2のボルト孔と左フランジの左側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルトと六角ナットで、右側エプロンサイドプレートの右側第1のボルト孔と左フランジの左側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルトと六角ナットで、締結され、左側エプロンサイドプレートをエプロン部材の右フランジの外側に重ねて、左側エプロンサイドプレートの左側第2のボルト孔と右フランジの右側第1のボルト孔とを貫通する六角穴付皿ボルトと六角ナットで、左側エプロンサイドプレートの左側第1のボルト孔と右フランジの右側第2のボルト孔とを貫通する六角ボルトと六角ナットで、締結されており、(g4’)シールドカバー本体部に対するエプロン部材の特定の回動角度では、右側サイドシールドの下縁は左側エプロンサイドプレートの下縁よりも上方に位置し、左側サイドシールドの下縁は右側エプロンサイドプレートの下縁よりも上方に位置している
(h)・・・。」

(2)甲第3号証
ア 「○5 サイドスキ
サイドスキがロータリーの外側
へ出ているため、あぜ際残耕処
理・排水溝・あぜシート埋込
み溝の3つの作業が耕うんと同
時行えます。」(4枚目左側1段目)

イ 「○8 反転板付きディスク
型式:KSD-41P
ロータリーの耕うん作業と同時にディスクであぜ際の土を
切り・・・」(4枚目3段目)

ウ 「■加圧調節は片手でワンタッチ
新型のワンタッチホルダー
を採用。リヤカバーの加圧
調節は片手でワンタッチ。」(5枚目左側2段目)

エ 「■浅耕(5cm)対応
リヤーカバーを長くしたことにより、
きれいに整地が行えます。」(5枚目右側2段目)

オ 「■耕うん軸の取外しが簡単
耕うん軸は両端フランジ方式。
・・・」(5枚目左側最下段)

カ 「■自動ロックを採用
リヤカバーのはね上げ自動ロックを採用。
土落とし、保守点検が容易に行えます。」(5枚目右側最下段)

キ 1枚目の写真は以下のとおり。


ク 2枚目の中段の写真及び下段の表は以下のとおり。


ケ 5枚目右側最下段の写真は以下のとおり。


コ 上記アないしカの記載を勘案して、上記キの写真を参照すると、
「複数の耕うん爪と耕うん軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕うん軸の後側を覆うリヤカバーと、を有しているロータリ作業機。」が看取できる。

サ 上記クの写真を参照すると、
「左の側板の外側であって、かつ、耕うん部カバーの左の外側に、が位置していること。」が看取でき、通常のロータリ作業機の構成を踏まえると、当該「ケース」は「チェーンケース」であると理解できる。

シ 上記ケの写真を参照すると、
「均平板の左右側側面に補助側板が接続され、
前記補助側板は、側板側の端部が均平板側方向に折れ曲がった屈曲部を有していること。」が看取できる。

ス 2枚目の表の「KJL」の「仕様区分」において、「仕様」欄が「前車」かつ「耕うん爪タイプ」欄が「フランジタイプ」のものは、「区分記号」欄が「T]となっている。

セ 上記アないしスからみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。
「複数の耕うん爪と耕うん軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕うん軸の後側を覆うリヤカバーと、
前記リヤカバーの左右側側面に接続された補助側板と、
前記左の側板の外側であって、かつ、前記耕うん部カバーの左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記補助側板は、側板側の端部がリヤカバー側方向に折れ曲がった屈曲部を有しているロータリ作業機。」

(3)甲第10号証
ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
トラクタTの後部に、三点リンク機構Cを介して耕耘装置A、及びこの耕耘装置Aによって耕耘された土壌面の左右両側部を培土して所定幅の畝を形成する畝立装置Bを装着する。
【0010】
三点リンク機構Cは、トップリンク11と左右のロアリンク12,12とからなり、油圧昇降装置Dの左右のリフトアーム13,13とこのリフトアーム13,13の回動に伴い左右ロアリンク12,12を介して作業機としてのロータリ耕耘装置A,畝立装置Bを昇降連動する構成としている。符号14はトップリンクブラケットであり、符号10,10はリフトアーム13,13とロアリンク12,12を夫々連結するリフトロッドである。」

イ 「【0019】
次いで、ロータリ耕耘装置A、畝立装置B等の作業機について説明する。三点リンク機構C後端部に接続するヒッチフレーム30を介して、耕耘爪41をアップカット方向に回転して耕耘できるロータリ耕耘装置Aを装着する。そして、この耕耘装置Aの後部に畝立装置Bを装備し、該耕耘装置Aによって耕耘された土壌面の左右両側縁部を培土して所定幅の畝を形成する構成となっている。
【0020】
また前記耕耘装置Aは、耕耘爪41を有した耕耘軸42と耕耘フレーム43の左右両側端に、伝動ケース44及びサイドプレート45を備え、この伝動ケース44内の伝動機構を経て前記耕耘軸42を駆動する構成となっている。またこの耕耘爪41の耕耘幅上方を覆うロータリカバー46が、前記耕耘フレーム43の下側に取付けられる。
【0021】
尚、図中符号47はトラクタTのPTO軸で、前記耕耘フレーム43の中央部に設けられる入力軸48との間を自在継手軸で連結して、耕耘軸42を伝動回転する構成となっている。また符号49は掘削ディスクで、耕耘爪41による耕耘幅の外側前部に設けられ、耕耘土壌面の左右両側縁部に切り込んで、ロータリカバー46の内側へ引き込まれる草木類を切断する構成となっている。
【0022】
また前記ロータリカバー46の後側には上下回動自在のリヤカバー50が設けられ、耕耘土壌の後方飛散を防止すると共に耕耘土壌面を均平する構成となっている。
また前記耕耘フレーム43の後側には、アーム51を後方へ延設して、作業フレーム52を取り付ける。前記アーム51は、連結ピン53の周りに上下回動自在で、耕耘フレーム43上のリンクアーム53aの回動によって上下回動操作可能に構成し、また前記耕耘フレーム43に対して伸縮杆54によって上下調節可能に構成している。」

ウ 「【0046】
図11,図12は、ロータリ耕耘装置Aのリヤカバー50の両端から耕耘土壌が溢出することを防止するため防土板を設けるがその改良に関する。従来、平板状の防土板151としていたが(図11(イ))、リヤカバー50とサブサイドカバー152との隙間が確保されないため、サブサイドカバー152と干渉し易く、破損の恐れがあった。そこで改良構成は、基部側に段差153を設けてなり、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの2種類を対象形状に形成し、左右付替えすることによりサブサイドカバー152の外側又は内側に配置させて作業を行なうことができ、外側に出した状態でリヤカバー50側面に装着するとサブサイドカバー152の保護が図れる(図11(ロ))。またサブサイドカバー152の内側に配置するとこのサブサイドカバー152に干渉することなく従来同様に土壌の溢出を防止する(図11(ハ))。154はリヤカバー50の側方に延長して設ける延長板で、リヤカバー50の上側に折畳み収納できる構成である。
【0047】
図13は、ロータリ耕耘装置Aの耕耘爪軸端部の構成に関する。耕耘爪軸155の端部に駆動軸(図示せず)とフランジ接合するフランジ156を設け、このフランジ156の外周異径部に草切りカッタ157をボルトにより着脱自在に設ける。この草切りカッタ157の周部には回り止めプレート158を溶接固定している。159はカッタ刃である。このように構成すると、フランジ部から前記図外駆動軸に巻き付こうとする草藁はカッタ刃159の作用を受けて寸断され巻付きを防止できる。また廻り止めプレート158は草切りカッタ157のボルト装着部中心の回動を阻止して良好な草巻付き防止機能を維持できる。160は草巻付き防止ロッドで、該ロッド160端部のボルト部を草切りカッタ157の取付けボルトに兼用するものである。【図面の簡単な説明】
【0048】
・・・
【図11】ロータリ耕耘装置の一部を示す斜視図(イ)(ロ)(ハ)」

エ 【図11】は以下のとおり。


オ 【図12】は以下のとおり。


カ 【図11】は、「ロータリ耕耘装置の一部を示す斜視図(イ)(ロ)(ハ)」(上記ウ参照。)であるところ、図11で示される左側のサブサイドカバー152と防土板151R,151Lが、右側にも同様に接続されていることは明らかである。
よって、【図11】を参照すると、後側にリアカバー50が設けられたロータリーカバー46の左右側側面にサブサイドカバー152が配設されていること、伝動ケース44は、左側のサブサイドカバー152の外側であって、かつ、ロータリーカバー46の左の外側に位置すること、及びリヤカバー50の左右側面に防土板151R,151Lが接続されていることが、看取できる。
同じく、伝動ケース4は、同ケース内に「伝動機構」を有する(上記イ参照。)ところ、通常の耕耘装置の構成を踏まえると、チェーンを覆うチェーンケースであることは明らかである。

キ 上記アないしカからみて、甲第10号証には、次の発明(以下「甲10発明」が記載されているものと認める。
「耕耘爪41を有した耕耘軸42と耕耘フレーム43の左右両側端に、伝動ケース44及びサイドプレート45を備え、この伝動ケース44内の伝動機構を経て前記耕耘軸42を駆動する構成となっており、
この耕耘爪41の耕耘幅上方を覆うロータリカバー46が、前記耕耘フレーム43の下側に取付けられ、ロータリカバー46の後側に上下回動自在のリヤカバー50が設けられる、耕耘装置Aであって、
伝動ケース44は、チェーンを覆うチェーンケースであって、左側のサブサイドカバー152の外側であって、かつ、ロータリーカバー46の左の外側に位置し、
ロータリーカバー46の左右側側面にサブサイドカバー152が配設され、
リヤカバー50の左右側面に、リヤカバー50の両端から耕耘土壌が溢出することを防止するための右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lが接続されており、
両防土板151R、151Lは、基部側に段差153を設けてなり、2種類を対象形状に形成し、左右付替えすることによりサブサイドカバー152の外側又は内側に配置させて作業を行なうことができ、外側に出した状態でリヤカバー50側面に装着するとサブサイドカバー152の保護が図れ、またサブサイドカバー152の内側に配置するとこのサブサイドカバー152に干渉することなく従来同様に土壌の溢出を防止する、耕耘装置A。」

(4)甲第11号証
ア 「3.考案の詳細な説明
本考案は、飛散土遮蔽状態を調整し得るロータリ耕耘装置のサイドカバー構造に関する。
通常、ロータリ耕耘装置においては、耕耘部の両側から外側方へ飛散する土を遮蔽するためにサイドカバーが取付けられている。
ところがこのサイドカバーは、最多使用耕深で最良の飛散土遮蔽をすべくその形状及び上下位が決定しているため、耕深を浅く又は深くした時には間隙が生じて土がはみ出すことがある。また逆に、意図的に土をはみ出させることがあるが、その時のはみ出し土量の調整が困難であつたりしている。
本考案は、このような従来の問題点に鑑み、上部と下部の面積の異なるサイドカバーを機枠に対して上下位置調整及び上下反転自在に取付けることによつて、飛散土遮蔽状態を調整し得るように構成したロータリ耕耘装置のサイドカバー構造を提供することを目的とする。
この目的を達成するための本考案の特徴は、上下方向中心線を境にして上部と下部とが異面積のサイドカバーを機枠の両側部に取付けたロータリ耕耘装置のサイドカバー構造において、前記各サイドカバーは機枠に設けられた取付部に対して上下位置調整自在に且つ上下反転自在に取付けられている点にある。
以下、本考案の実施例を図面に基いて説明する。
第1図は本考案を適用したロータリ耕耘装置の全体を示しており、ロータリ耕耘装置(1)はギヤケース(2)の両側にサポートアームを設け、各サポートアームの外端に伝動ケース(3)とサイドフレームを取付け、伝動ケース(3)とサイドフレームとで爪(4)を多数設けた耕耘爪軸(5)を回転自在に支持し、入力軸(6)から入る動力で爪軸(5)を駆動するように構成されている。
前記ギヤケース(2)、サポートアーム、伝動ケース(3)及びサイドフレーム等で機枠(7)が形成されており、サポートアーム及びサイドフレームは図示されていない。」(明細書1頁12行?3頁10行)

イ 「(15)は爪(4)及び爪軸(5)等で形成される耕耘部(16)を覆つている耕耘カバーで、上部カバー(17)と後部カバー(18)とを有しており、上部カバー(17)は機枠(7)に対して固着され、後部カバー(18)は上部カバー(17)の後縁に上下揺動自在に枢支されている。
後部カバー(18)の後下部は接地可能な均平部(19)となつており、後部カバー(18)と取付枠(12)との間には均平部(19)を下方へ弾下する弾下機構(20)が設けられている。
前記後部カバー(18)の両側部には耕耘部(16)から外側方へ飛散する土泥を遮蔽すべくサイドカバー(22)が配置されている。
第1図及び第2図に基いて、本考案の第1実施例を詳述する。
サイドカバー(22)は第1カバー(23)と第2カバー(24)とから成り、第1カバー(23)は伝動ケース(3)及びサイドフレームの後方で、それらに設けられたブラケツト(25)にボルト固定されており、また、上部カバー(17)の側壁(17a)にも固定されることもある。
前記第1カバー(23)は伝動ケース(3)と後部カバー(18)とで形成される側面間隙(A)の半分以上を遮蔽しており、第2カバー(24)は側面間隙(A)の残部を遮蔽する。
第1図に示す後部カバー(18)は略最多使用耕深にセツトされており、第2カバー(24)は前記側面間隙(A)の残部より大きい面積を有し、遮蔽能力に十分な余裕を備えている。
第1カバー(23)の後縁部と第2カバー(24)の前縁部には夫々対向可能な多数のボルト孔(23a)(24a)が形成されており、対向するボルト孔(23a)(24a)にボルト(26)を挿入して締結することによつて、第2カバー(24)は第1カバー(23)に固着される。この場合、第1カバー(23)は機枠(7)に設けられた第2カバー(24)取付け用取付部となつており、対向するボルト孔(23a)(24a)を変えることによつて、第1図仮想線で示す如く、第2カバー(24)の上下位置を調整することができる。
第2カバー(24)はその上下方向の中心線(B)を境として分けた場合、上部(C)と下部(d)と形状が異なり、上部(C)は下部(D)より小面積となつている。勿論、上部(C)と下部(D)とは1枚板で形成されているので、それらの周縁は単純な1本の曲線である。
この第2カバー(24)は上下を反転して表裏を逆にしても、そのボルト孔(24a)は第1カバー(23)のボルト孔(23a)と対向可能であり、上下反転して第1カバー(23)に取付けることにより、第2図に示すように、大面積の下部(D)を小面積の上部(C)より上方となり、飛散土遮蔽状態が変更できる。
前記第2カバー(24)においては、ロータリ耕耘装置(1)の耕深が浅いときは、第1カバー(23)に対して低位置に取付け、耕深が深いときには、第1カバー(23)に対して高位置又は上下反転して取付けたりして、側面間隙(A)からはみ出ようとする飛散土を略完全に遮蔽することができる。また、第2カバー(24)は上下位置調整及び上下反転自在であるので、例えば伝動ケース(3)跡をなくすためにその後方に土を供給する等、意図的に飛散土を遮蔽しないことも可能であり、またはみ出る飛散土量を調整することも可能であり、そのように伝動ケース(3)跡を消すことによつて、均平状態も良好となる」(明細書3頁15行?6頁14行)

ウ 「以上、詳述した本考案によれば、上部と下部とが異面積のサイドカバーを機枠に設けられた取付部に対して上下位置調整自在に且つ上下反転自在に取付けているので、耕耘部から側方へ飛散してくる土を略完全に遮蔽してはみ出しを阻止したり、意図的にはみ出させてその土量を調整したりすることができ、ロータリ耕耘後の均平状態を良好にすることができる。」(明細書9頁8?15行)

エ 第1図は以下のとおり。


オ 第2図は以下のとおり。


カ 上記アないしオからみて、甲第11号証には、次の技術事項(以下「甲11技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「ギヤケース(2)、サポートアーム、伝動ケース(3)及びサイドフレーム等で形成された機枠(7)に対して固着された上部カバー(17)と、上部カバー(17)の後縁に上下揺動自在に枢支されている後部カバー(18)とを有し、爪(4)及び回転自在な耕耘爪軸(5)等で形成される耕耘部(16)を覆つている耕耘カバー(15)であって、
後部カバー(8)の両側部には、耕耘部(16)から外側方へ飛散する土泥を遮蔽すべくサイドカバー(22)が配置され、
サイドカバー(22)は、第1カバー(23)と第2カバー(24)とから成り、
第1カバー(23)は伝動ケース(3)及びサイドフレームの後方で、それらに設けられたブラケツト(25)にボルト固定され、
第2カバー(24)は、下部(D)と、下部より小面積の上部(C)とからなり、
第1カバー(23)は伝動ケース(3)と後部カバー(18)とで形成される側面間隙(A)の半分以上を遮蔽しており、第2カバー(24)は側面間隙(A)に残部を遮蔽しており、
第1カバー(23)の後縁部と第2カバー(24)の前縁部には夫々対向可能な多数のボルト孔(23a)(24a)が形成されており、対向するボルト孔(23a)(24a)にボルト(26)を挿入して締結することによつて、第2カバー(24)は第1カバー(23)に固着され、対向するボルト孔(23a)(24a)を変えてボルト(26)を挿入して締結することによつて、第2カバー(24)の上下位置を調整し、また、第2カバーを上下反転して表裏を逆に第1カバー(23)に取り付けることにより、大面積の下部(D)は小面積の上部(C)より上方となり、飛散土遮蔽状態が変更でき、
側面隙間(A)からはみ出ようとする飛散土を略完全に遮蔽し、また、意図的に飛散土を遮蔽しないことが可能な、耕耘カバー(15)。」

(5)甲第12号証
ア 「【0007】・・・作業ロータ9の上方には、作業機本体10に支持されたシールドカバー11により覆われており、このシールドカバー11の後端部に、エプロン12の上端部が軸13を介して回動自在に枢着されている。・・・」

イ 【図1】は以下のとおり。


(6)甲第13号証
ア 「【0020】
伝動フレーム14と支持フレーム15との下方には、作業ロータ5の爪7の回転範囲を覆い、作業機本体10を土砂から保護するシールドカバー本体2(メインカバーとも言う)が配置される。・・・
【0021】
シールドカバー本体2の、作業機本体10の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆うエプロン3(リアカバーとも言う)が伝動フレーム14の軸と平行な軸部2bの回りに回転自在に連結される。・・・」

ア 【図2】は以下のとおり。


(7)甲第14号証
ア 「トラクタの準備
・・・
●作業機の上がり量、下がり量が不足する場合は、
リフトロッドの取付穴位置を上下の穴に移して調
整してください。上にすると上がり量が増え、下
にすると下がり量が増えます。
・・・
装着姿勢
・・・
●ロータリの装着は、平らで固い場所を選び、いつで
も危険をさけられる姿勢でおこなってください。
守らないと死亡事故や傷害事故につながります。
カプラで装着できるように、ロータリの姿勢を調
整します。」(11頁右欄?12頁左欄)

イ 「(4)補助側板
補助側板は位置を変更すると、より一層きれいな
仕上がりになります。(出荷時には、水田用位置に
組付けてあります。)
○1 畑地用・上の取付位置
○2 水田用・下の取付位置
25ページ□5補助側板の調整を参照してください。」(21頁左欄)
(審決注:四角囲み数字は、「□数字」と表記する。以下同。)

ウ 「(1)トラクタ旋回用の枕地として、ロータリ耕うんの
約3行程分を残し、側方にも枕地と同じ幅を残し、
ほ場の長辺をまっすぐ耕うんします。
(2)○1から○6の順に側方の未耕地が枕地と同じ幅にな
るまで、往復耕をおこないます。
(3)○7から○10の枕地と側方の未耕地を回り耕うんします。
(4)○11から○14であぜ際を回り耕うんします。ブラケッ
ト側をあぜ際に合わせる方が(左回り)、残耕が少
なくてすみます。
(5)○15から○18で間に残ったところを回り、耕うんして
終了です。」(21頁右欄)

エ 「□2作業深さの調整
ゲージ輪止めピンを引き出し、ゲージ輪アームを上
下して調整します。ホルダーには上下2ケ所の止め
ピン穴があります。図のようにU字枠を反転させる
と、15mm間隔で調整ができます。
左右のゲージ輪は同一穴にセットします。
トラクタ油圧は、ポジションコントロールレバーを使
い、最下げの位置で使います。ポジションコントロー
ルレバーは途中で止めないでください。
□3均平板の調整
均平板の上下、および押えばねの調整は、砕土性能、
土の反転性能、表面の仕上がりに大きく影響します。
連結ロットの上のスプリングエンドをスライドさせ調
整してください。
(1)一般耕うん
スプリングエンドを上げて押えばねをフリーにし、
均平板の重量だけで表面を押えます。
(2)畑地の砕土
スプリングエンドを下げて押えばねをきかせ、ば
ねの力で表面を押えます。
CBX10はRピンを差し変えてください。
(3)石の多いほ場や粘湿田
石の多いほ場や粘湿田では、押えばねをフリーに
し、ローターピンを下から2?4番目の穴に挿し
て均平板を表面から浮かせ、均平板の損傷や土溜
りを少なくして使用します。
(4)均平板のはね上げ
均平板は2段階に上げることができます。
○1メンテナンス作業時
(CBX10にはこの装備は付いていません。)
ロータリの爪交換などのメンテナンス作業時に、均平
板をはね上げて自動的にロックすることができます。
・・・
3)均平板を持ち上げると、ストッパーピンで自動的
にロックします。
4)均平板をおろす時は、2ヶ所のストッパーピンの
レバーの上のボタンを押し、レバーを(前側)解除
の位置にセットします。均平板を少し持ち上げる
と、ストッパーピンのピンが自動的に抜けてから、
均平板をゆっくりおろしてください。
・・・
○2ハイリフト時
・・・
メンテナンス時よりもっと上げたい、均平板を上げた
状態で作業を行いたい時に使用します。
・・・」(22頁左欄?23頁右欄)

オ 「□5 補助側板の調整
補助側板は、出荷状態では畑用
の位置になっています。
水田用として使用する場合は、水田用
の位置に組替えてください。」(25頁)


カ 9頁の図は、以下のとおり。


キ 21頁左上の図は以下のとおり。


ク 23頁右下の図は以下のとおり。


ケ 25頁の「補助側板の調整」の図は以下のとおり。


コ 上記アの記載(特に、「ロータリ」及び「作業機」。)を勘案して、上記カの図(特に、写真中の部材の名称。)を参照すると、
「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板(右)(左)と、
前記耕うん部カバーに連結されて前記複数の耕うん爪と耕耘軸の後側を覆う均平板と、
側板(左)より外側であって、かつ、耕うん部カバーの左の外側に位置するチェーンケース、を有しているロータリ作業機。」が看取できる。

サ 上記エの記載を勘案して、上記クの図を参照すると、
「耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結される均平板。」が看取できる。

シ 上記イ及びオの記載を勘案して、上記ケの図を参照すると、
「均平板の左右側側面に補助側板が接続され、
前記補助側板には、後方上側、後方下側、中程上側、中程下側に計4つの接続部が形成されており(各接続部を、それぞれ第1?第4の接続部と呼ぶこととする。)、
前記均平板の左右側側面には、上下方向に4つの被接続部が形成されており(各被接続部を、それぞれ上から順番に第1?第4の被接続部と呼ぶ。)、
前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用・下の取付位置と、
前記第3の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第4の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑地用・上の取付位置とがあり、
前記畑地用・上の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用・下の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置しており、
補助側板の後側方向に位置する部分は、前記水田用・下の取付位置では、均平板よりも突出する部分を有しておらず、前記畑地用・上の取付位置では、均平板よりも突出する部分を有していること。」が看取できる。

ス 上記アないしシからみて、甲第14号証には、次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されているものと認める。
「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板(右)(左)と、
前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕耘軸の後側を覆う均平板と、
前記均平板の左右側側面に接続された補助側板と、
前記側板(左)より外側であって、かつ、前記耕うん部カバーの左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記補助側板には、4つの接続部が形成され、各接続部は、後方上側、後方下側、中程上側、中程下側のものを、それぞれ第1?第4の接続部とし、
前記均平板の左右側側面には、上下方向に4つの被接続部が形成されており、各被接続部は、それぞれ上から順番に第1?第4の被接続部とし、
前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用・下の取付位置と、
前記第3の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第4の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑地用・上の取付位置とがあり、
前記畑地用・上の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用・下の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置しており、
補助側板の後側方向に位置する部分は、前記水田用・下の取付位置では、均平板よりも突出する部分を有しておらず、前記畑地用・上の取付位置では、均平板よりも突出する部分を有しているロータリ作業機」

(8)甲第15号証
ア 「-基本性能UP-
ステンレスカバー
耕うん部カバー、側板内側にステンレスカバーを付けました。土の付着が少なく、馬力のロス、爪の摩耗が軽減されます。また、均平板下部にもステンレスを装備し、より均平性が向上しました。
(SX/SXR/SXM/SXL/AXSシリーズ)

新型爪、新配列
新形状の爪と、新配列により砕土性、埋没性が向上しました。静かで安定した作業がおこなえます。
耕うん爪は耐久性の高いフランジタイプと、軽負荷耕うんで湿田でも土つまりが少ないホルダータイプ(H)から選択できます。」(2枚目上段中央)

イ 「-使いやすさUP-
・・・
ワンタッチハイリフト機構
均平板の最上げ時のロック⇔解除がワンタッチでおこなえます。
(CX/SX/SXR/SXM/SXL/AXC/AXSシリーズ)
・・・
ワラ巻付き防止ピン
耕うん軸両端へのワラ・草巻付き防止(全シリーズ)

ワイド延長均平板 可変式補助側板
従来より大型の延長均平板を採用。また補助側板は水田・畑と作業状態により位置が変えられ、より一層隣接部均平性が向上しました。(全シリーズ)」(2枚目中段?下段)

ウ 1枚目の写真は以下のとおり。


エ 2枚目下段中央の図は以下のとおり。


オ 上記アないしイの記載を勘案して、上記ウの写真を参照すると、
「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕耘軸の後側を覆う均平板と、
前記左側の側板の外側であって、かつ、耕うん部カバーの左の外側に位置するチェーンケースと、を有するロータリ作業機。」が看取できる。

カ 上記イの記載を勘案して、上記エの写真を参照すると、
「均平板の左右側側面に補助側板が接続され、
前記補助側板には、後方上側、後方下側に計2つの接続部が形成されており(各接続部を、それぞれ第1の接続部、第2の接続部と呼ぶこととする。)、
前記均平板の左右側側面には、上下方向に4つの被接続部が形成されており(各被接続部を、それぞれ上から順番に第1?第4の被接続部と呼ぶ。)、
前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用の取付位置と、
前記第1の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑用の取付位置とがあり、
前記畑用の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置しており、
補助側板の後側方向に位置する部分は、前記水田用及び前記畑用の両取付位置において、均平板よりも突出する部分を有しないこと。」が看取できる。


キ 上記アないしカからみて、甲第15号証には、次の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されているものと認める。
「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバーと、
前記耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板と、
前記耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕耘軸の後側を覆う均平板と、
前記均平板の左右側側面に接続された補助側板と、
前記左側の側板の外側であって、かつ、前記耕うん部カバーの左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記補助側板には、2つの接続部が形成され、各接続部は、後方上側、後方下側のものを、それぞれ第1?第2の接続部とし、
前記均平板の左右側側面には、上下方向に4つの被接続部が形成されており、各被接続部は、上から順番に第1?第4の被接続部とし、
前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用の取付位置と、
前記第1の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑用の取付位置とがあり、
前記畑用の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置しており、
補助側板の後側方向に位置する部分は、前記水田用及び前記畑用の両取付位置において、均平板よりも突出する部分を有しないロータリ作業機」

(9)甲第18号証
ア 「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一つの実施の形態を添付の図面を参照して具体的に説明する。図1に示す如く、トラクタ(走行機体)1の後部に三点リンクヒッチ機構Aを介してロータリ式の耕耘装置Bを連結し、このロータリ式の耕耘装置Bのロータリ2の上方にメインカバー3を固定している。そしてこのメインカバー3の後端位置に、ブラケット30に支持された横フレーム31を介してリヤカバー5の前端部を、取付部6で上下回動自在に枢着し、前記ブラケット30及び横フレーム31をメインカバー3の上側に設けたスライド部材32を介して適宜な移動機構により前後移動させてリヤカバー5を前後に移動させるようにしている。
【0008】・・・
【0009】・・・次に図2?図4を参照してリヤカバー5の構造を説明する。
【0010】このリヤカバー5は、前端部に前記取付軸60を嵌挿可能なパイプ状の枢支部50を端部に有する中空状の取付枠体51と、この取付枠51の幅方向後部から突設させたU字断面の複数の取付杆52の後端下面に取付ネジ56を介して中空状のソリ体55を取付けている。そしてこれら部材の内側にあって上記取付枠51,取付杆52に取付ネジ56で取付けられてソリ体55に跨がってゴム板等の可撓性を有する保護板7を設けており、耕耘装置Bの後部において取付杆52に形成された支持部52aを吊りロッド35で後方に向けて下り傾斜に吊り下げて回動可能に支持されている(図2)。
【0011】尚、上記ソリ体55は、プラスチック材によるブロー成形によって、外周を閉鎖した中空部5cを有する軽量な中空体に形成されており、図1に示すように耕耘装置Bを下降させて接地させた作業姿勢において、耕耘土を滑らかに押し均す在来のリヤカバーと略同形状なソリ面5aを側面視で彎曲状に形成している。そして中空部5cを介して形成される上面を、耕耘装置Bが上昇された上昇姿勢となる際に、後傾状となって上面に載積した泥土を滑落させることができる平坦な流土面5bとなるように形成している。
【0012】上記したように、本発明に係るリヤカバー5は、取付枠51の後方に中空のソリ体55を、下面に保護板7を取付けて軽量化構造に構成しており、図1に示す作業姿勢において保護板7で形成される内側面がロータリ2に近接した状態で、ソリ体55のソリ面5aが、耕土面に適正圧で接して、耕耘土の押し均し作用を良好に行う。更に、このソリ面5aの上方に、後方に傾くように形成された流土面5bは、この上に載積される泥土を多く溜めることなく、リヤカバー5の振動と相俟って後方に流下させることができる。

イ 【図3】は以下のとおり。


(10)甲第19号証
ア 「【0008】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明すると、図1(A)(B)において、本発明に係る耕耘カバー1は、ロータリ耕耘部2を覆い耕土の飛散を防止するとともに砕土を行うものである。耕耘カバー1は、図2に示している機枠3にブラケット4を介して装着されている主カバー5とこの主カバー5の後端にヒンジ金物6を介して屈折自在として枢支されている後部カバー7とからなり、後部カバー7には均平板8を備え、図示省略している弾下装置によって対地に付勢されている。」
【0009】主カバー5および後部カバー7はいずれも格子形のカバー骨格体9に、面状の弾性カバー10を装着したものであり、カバー骨格体9は中空材11より構成されている。・・・
【0010】・・・
【0011】このとき、ボルト17の頭は押え金具16より突出することがなく完全に没入しており、装着部位14が格子部12であることから、弾性カバー10の支持(取付け)は全体からみると散点状となり、格子空間12Aにおいて弾性カバー10は十分に弾性変形可能で振幅を繰り返すことで泥土等の剥離を確実にするのである。
【0012】弾性カバー10は主カバー5と後部カバー7に亘る一枚物とされており、ヒンジ金物6では屈曲を容易とするため図2で示すようにたるみ10Aをもっている。但し、弾性カバー10は主カバー5と後部カバー7に個別に張設したものであっても構わない。
【0013】また、弾性カバー10はゴム板、軟質樹脂板等により製作されている。図3は装着部位14の他の好ましい実施態様であり、格子部12にボルト19を突出し、弾性カバー10には別のボルト20を突出し、両ボルト19,20を相対させて両ボルト19,20にわたって螺合するナット21を設け、上・下のロックナット22,23で固定したものであり、これによればスキマ18を介してナット21、ロックナット22,23を操作できることから、弾性カバー10の交換等が有利となる。」

イ 【図2】は以下のとおり。


(11)甲第20号証
ア 「【0010】
ロータリカバー3は、図1?図12に示すように、ギヤケース4及び左右サポートアーム5の下方側に配置されていてロータリ耕耘部2の上方を覆うカバー体11(これを上部カバー体という)と、この上部カバー体11の後端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に取り付けられていてロータリ耕耘部2の後方を覆うカバー体12(これを後部カバー体という)と、ロータリ耕耘部2の左右の側方を覆う左右一対のカバー体13(これを側部カバー体という)とを備えてなる。
上部カバー体11及び後部カバー体12は、枠体14,15と、この枠体14,15の上面側に設けられた上板16,17と、枠体14,15の下面側に設けられた弾性カバー18,19とから主構成され、左右の各側部カバー体13は、機枠1のサイドフレーム6,7と、該サイドフレーム6,7の後方に配置されたリヤサイドカバー板20とから主構成されている。」

イ 「【0022】
上部カバー体11及び後部カバー体12の弾性カバー18,19は、ゴム板等の弾性板材によって形成され、本実施の形態では、上部カバー体11の弾性カバー18と後部カバー体12の弾性カバー19とは一枚の弾性板材によって一体形成されており、この一枚の弾性板材によって形成された弾性カバー18,19は、上部カバー体11及び後部カバー体12の左右側板14A,15A間にわたる幅で且つ上部カバー体11の前側の連結枠材14Bの前端側から後部カバー体12の後側の連結枠材15Cの前端側に至る長さに形成されていて、上部カバー体11及び後部カバー体12の枠体14,15の開口を塞ぐように配置されている。
【0023】
また、弾性カバー18,19は、枠体14,15の各取付部材27の下壁27c下面及び上板16,17の取付部35の底壁35a下面に重合され該取付部材27及び取付部35にボルト43・ナット44及び座金45によって取付固定されている。
具体的には、取付部材27に対する取付部分にあっては、座金45は、中央部が弾性カバー18,19に形成された挿通孔46を介して取付部材27の下壁27c下面に接当し且つ外周部が弾性カバー18,19の下面に接当し、ボルト43は座金45の中央部及び取付部材27の下壁27cを貫通して、取付部材27の下壁27cの上面に固着されたナット44に螺合している。」

ウ 「【0028】
また、このブラケット55の左右の側壁部56の前部側は上方に向けて延出されており、この延出部分63とサポートアーム5に固着されたブラケット64とにわたって、耕耘時において土からの反力による後部カバー体12の浮き上がりを弾性的に抑える図示省略の弾下装置が設けられる。
また、前記弾下装置は、図1に示す上方に持ち上げた位置(又はこれよりも高い位置)に後部カバー体12を保持することができる。
耕耘時にあっては、後部カバー体12の後側連結枠材15Cの下面後部側(整地面34)が接地すると共に、前記弾下装置によって後部カバー体12が抑えられ、耕耘爪9によって耕起されて後方及び上方に放てきされた土は弾性カバー18,19に衝当して砕土される。」

エ 【図9】は以下のとおり。


(12)甲第21号証
ア 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】耕耘爪軸の左右長さは、一般に移動農機の車幅に比べて長くして、移動農機を枕地にて旋回して、既耕耘条の隣の条を耕耘する時には、隣接する既耕耘条の隣接側の一部を、現在耕耘する条の側部と重なって耕耘するようにして、未耕耘部分ができないようにしている。しかし、この部分では或る程度の重なり部分ができるので耕耘が二回行われることになる。従って、この部分は過多に耕耘されることとなって圃場に硬軟差ができてしまうという不具合が生じる。」

イ 【図4】は以下のとおり。


(13)甲第22号証
ア 「【0011】
図1ないし図3において、符号1はロータリ耕耘装置である。このロータリ耕耘装置1は、本体フレーム2にトップマスト3及び図示省略したロアリンク連結ピンを備え、図示しないトラクタの3点リンクヒッチ機構に連結されたオートヒッチカプラ4を、前記トップマスト3及びロアリンク連結ピンに対し自動的に着脱するようにしている。本体フレーム2に支持された図示しないギヤボックスから前方に突出する入力軸5には、ユニバーサルジョイント及び伝動軸を介して回転動力が伝達される。本体フレーム2には、中央部から左右水平方向に延びる伝動フレーム6が一体的に連結されており、該伝動フレーム6の左右両側端部にチェン伝動ケース7と支持フレーム(図示せず)の両上端部が連結され、このチェン伝動ケース7と支持フレームの下部位置間に、サイドドライブ形式のロータリ耕耘部8が形成されている。
【0012】
前記チェン伝動ケース7には、その下端部に接地保護カバー9,また、下部外側面に側面保護カバー10が設けられ、チェン伝動ケース7の下端部が接地した際に土壌によるチェン伝動ケース7自体の摩耗を防止し、保護するようにしている。前記ロータリ耕耘部8の上方はシールドカバー11により覆われており、該シールドカバー11の後端部にヒンジ11aを介してエプロン12の前端部が上下回動自在に枢支されている。該エプロン12の後端部左右両側には、図7にも示すように、回動支持部材13を介して延長エプロン14を作業位置と収納位置とに折り畳み(起倒)可能に設けている。該延長エプロン14の側端部に、後述するサイドシールド17から流れ出てチェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を埋め戻した余剰の土壌が、延長エプロン14の外側に流れ出さないようにした土壌流れ出し防止用プレート15を設けている。前記エプロン12の上面と本体フレーム2との間にはコンプレッションロッド16が介装され、エプロン12及び延長エプロン14を、コンプレッションロッド16の設定圧で弾圧している。
【0013】
前記チェン伝動ケース7の後端部外周縁には、本発明に係るサイドシールド17が上下移動調節可能に装着されている。このサイドシールド17は、図2,図4?図7に詳細に示すように、チェン伝動ケース7の後端部外周縁に取付けられた支持部材18に、スペーサ19を介して側板20を、機体の進行方向に対して内側に傾斜させた状態に支持している。従って、サイドシールド17は、前方及び後方が開放され、支持部材18と側板20の間にスペーサ19を介して袋状の空間が形成されている。また、側板20及びスペーサ19は、支持部材18に対して上下移動調節可能に取付けられている。この側板20及びスペーサ19の支持部材18に対する上下移動調節は、図1におけるロータリ耕耘装置1のロータリ耕耘部8による耕深が畑地において200mmの場合、エプロン12の接地高さは250mmであり、このエプロン12の接地高さに応じて側板20及びスペーサ19の支持高さが設定される。ロータリ耕耘装置1のロータリ耕耘部8による耕深が図8のように300mmの場合、エプロン12の接地高さは350mmとなり、このエプロン12の接地高さに応じて側板20及びスペーサ19の支持高さが調節される。
【0014】
そして、サイドシールド17は、機体の進行と共に前方の土壌が支持部材18と側板20の間の袋状部に流れ込み、この流れ込んだ土壌により、チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を埋め戻して平坦にする。また、サイドシールド17の側板20は機体進行方向に対して内側に傾斜しているので、サイドシールド17内に流入した土壌は、側板20に抱きかかえられるようにして袋状部内に貯留されて土壌の収容量が多くなり、チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を十分に埋め戻すことができる。
【0015】
チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝は、サイドシールド17の袋状部に流れ込んだ土壌により埋め戻されるが、その埋め戻し用の土壌の量は、チェン伝動ケース7によって形成された溝を埋め戻すのに十分な量が必要であり、このため。溝を埋め戻した後に余剰の土壌が生じることがあるが、この余剰の土壌は、延長エプロン14の側端部に設けられたプレート15により均平されて延長エプロン14の外側に流れ出すことがない。また、サイドシールド17は、ロータリ作業機1の耕深に合わせて上下調節することができるので、サイドシールド17に流れ込む土壌の量が適切に調節することが可能になり、チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を適切に埋め戻すことができる。なお、ロータリ耕耘装置1には、図示しないが、ロータリ耕耘部8の耕深を予め設定するためのゲージホイールが設けられている。
【0016】
このように構成されたロータリ耕耘装置1においては、トラクタの後部に装着されて、例えば畑地に導入されて耕耘・整地作業を行う。入力軸5に入力された動力は、ギヤボックス、伝動フレーム6を介してチェン伝動ケース7に伝達され、ロータリ耕耘部8を駆動して所定方向に回転させて耕耘作業を行い、耕耘された土壌は、コンプレッションロッド16により弾圧されたエプロン12及び延長エプロン14により均平される。ロータリ耕耘部8の耕深は、予めゲージホイールにより、例えば、図1、図8に示すように設定される。このロータリ耕耘部8の耕深の設定に基いて、予めサイドシールド17を上下調節しておく。
【0017】
ロータリ耕耘部8による耕深は、図1及び図8で明らかなように、チェン伝動ケース7の下端部が耕耘土壌中に入り込む深さであり、耕耘土壌に連続した溝が形成されることになる。一方、耕耘された土壌は、チェン伝動ケース7の後方のサイドシールド17に対して機体の進行と共に支持部材18と側板20の間に形成された袋状部に流れ込み、この流れ込んだ土壌は、サイドシールド17から後方に排出されて、チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を埋め戻していく。溝を埋め戻した土壌は、他の耕耘された土壌と共にエプロン12及び延長エプロン14により均平される。溝を埋め戻した土壌に余りが生じた場合でも、延長エプロン14の側端部に設けられたプレート15により均平されて、延長エプロン14の外側に流れ出すことがない。従って、次工程の作業、例えば播種作業を良好に行うことができ、また、チェン伝動ケースによって形成された溝に、播種機の車輪が落ちて機体を傾斜させ、作業の障害となるようなことがない。」

イ 【図1】は以下のとおり。


ウ 【図7】は以下のとおり。


(14)甲第23号証
ア 「【0002】
【従来の技術】一般に、トラクタの後部にロータリ耕耘部を昇降自在に連結した耕耘作業機においては、ロータリ耕耘部に設けた上下動自在のリヤカバーが、耕耘跡の地表面の高さを検知し、この検知結果に連繋する油圧装置がロータリ耕耘部を昇降させて耕深を制御するようにしている。ところが、リヤカバーが検知する耕耘跡の地表面は、その盛上り度合が通常、耕耘深さの約6割すなわち、耕耘深さが100m/mであれば、盛上り度合は約60m/m程度といわれており、これも圃場の土質、土塊の大きさ、雑草の有無等によって異るものである。このため、リヤカバーが耕耘跡の地表面を正確に検知できたとしても、耕深の変化を正確に検知することはできないので、耕深制御の精度にはある程度の限界があった。また、エンジンの回転数の低下度合により、耕耘作業時の負荷を検知して、耕深制御を行うようにしたものでは、圃場の土質や硬軟度合によりエンジンにかかる負荷も変化するので、上記のものと同様、正確に耕深の変化を検知することはできないという問題があった。」

(15)甲第24号証
ア 「伝動ケース(8)の後部と後部カバー(11)の伝動ケース側の一側部との間の上記側部カバー(12)下方には耕耘爪(3)により耕起された土が自由に食み出るよう食出し口(16)を開放状に形成してある。」(明細書3頁3?7行)

イ 「例えば、図示のような場合には、耕耘爪(3)により耕耘された跡は、後部カバー(11)の均平部(13)により均平整地されるのであるが、耕深が深いために伝動ケース(8)の下部は圃場面に侵入し、従来では凹溝(B)の跡形を残して行く。しかし、本実施例では伝動ケース(8)の後部とこれに対向する後部カバー(11)一側部との間には、食出し口(16)を形成しており、この食出し口(16)により耕耘爪(3)にて耕耘された土が食み出て行つて伝動ケース(8)跡の凹溝(B)を埋め尽くし、埋めた跡の盛土は延長カバー(17)により均平されて行き、従つて伝動ケース(8)の跡形は完全に消されるのである。」(明細書4頁2?14行)

ウ 第1図は以下のとおり。


(16)甲第25号証
ア 「即ち、この耕耘具で動力ケース(4)が既耕地側と未耕地側と交互に接しながら作業をしていく隣接耕を行なう時、既耕地側に動力ケース(4)が位置しさらに耕耘爪(1)・(1)…が深く耕耘する場合には、動力ケース(4)の下端が既耕地表面に喰い込んで溝跡をつけるが、動力ケース(4)前方に取付けた土感知体(5)が動力ケース(4)前方の泥土を感知して動力ケース(4)後方のサイドカバー(3)を動力ケース(4)の略外側端面まで突出移動するので、耕耘爪(1)・(1)で耕起した泥土がこの動力ケース(4)後方に飛散して溝跡を消す。又、耕耘爪(1)・(1)…が浅く耕耘する場合及び未耕地上を動力ケース(4)が移動する場合は、動力ケース(4)の下端が既耕地表面に喰い込まないので、サイドカバー(3)を動力ケース(4)の外側端面へ移動する等の無用の動きを行なわず、動きによる馬力ロスを防ぎ、又、動力ケース(4)後方へ泥土を飛散させないので、既耕地と未耕地の境界がはっきりし、次のターン後の隣接耕時に残耕を生じることがない。このように、この考案は、未耕地・既耕地及び耕耘深さの多少により動力ケース(4)後方のサイドカバー(3)を内外移動して飛散泥土の動力ケース(4)後方への飛散を自動制御するものである。」(明細書3頁12行?4頁14行)

イ 「第3図で示すものは、土感知体(5)が土を感知しない時を表わすものであって、動力ケース(4)が未耕地上方を通過する場合又は耕耘爪(1)・(1)の掘削深さが浅い場合であり、動力ケース(4)下端が現在の既耕地(A)上に接当しない時を示す。
この時は、サイドカバー(3)は動力ケース(4)の内側端延長線上に位置し、耕耘泥土が動力ケース(4)後方に飛散するのを防止している。
第4図は、動力ケース(4)が前回の既耕地(B)上に位置して、且つ、耕耘深さが深くて動力ケース(4)下端が前回の既耕地(B)上に接当する場合を示し、この場合、トラクターの前進により土感知体(5)に前回の既耕地(B)側の泥土が接当し、土感知体(5)を矢印(イ)方向に押圧する。この土感知体(5)の移動により連動具(6)を介してサイドカバー(3)を矢印(ロ)方向の動力ケース(4)外側端延長線上に移動し、動力ケース(4)が開口する溝跡(B)を飛散泥土により覆土してしまう。」(明細書7頁9行?8頁6行)

ウ 第1図は以下のとおり。


エ 第3図は以下のとおり。


オ 第4図は以下のとおり。



2 無効理由1について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と検甲1発明を対比する。
(ア)検甲1発明の「ロータ軸に設けたフランジに耕耘爪を取り付けた作業ロータ」、「作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「シールドカバー本体部の左側側面に配設された」「左側サイドシールドと、同じく右側側面に配設された」「右側サイドシールド」、「シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて作業ロータの後側を覆うエプロン部材」、「エプロン部材の左右側側面にそれぞれ接続された左側エプロンサイドプレート及び右側エプロンサイドプレート」は、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールド」、「前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後ろ側を覆うエプロン本体部」、「前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレート」に相当する。

(イ)検甲1発明の「左側エプロンサイドプレートは、左側サイドシールド側の端部が、その端部に沿ってエプロン部材側方向に折れ曲がった左側屈曲部を有し、かつ、右側エプロンサイドプレートは、右側サイドシールド側の端部が、その端部に沿ってエプロン部材側方向に折れ曲がった右側屈曲部を有」することは、本件発明1の「前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有」することに相当する。

(ウ)検甲1発明の「チェーンケース」が「シールドカバー本体部の左側側面に配設された」ことと、本件発明1の「チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」することとは、チェーンケースは前記シールドカバー本体部の左の外側に位置することで共通する。
また、「チェーンケース」は、「作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆う」ことは、当業者にとって自明な事項である。

(エ)したがって、本件発明1と検甲1発明とは、
「作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記シールドカバー本体部の左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン部材側方向に折れ曲がった屈曲部を有するロータリ作業機」で一致するものの、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本件発明1は、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳しているのに対し、検甲1発明は、そのような特定がない点。
〔相違点2〕チェーンケースについて、本件発明1は、サイドシールドの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されているのに対し、検甲1発明は、そのような特定がない点。
〔相違点3〕本件発明1が、エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であるのに対し、検甲1発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点3から検討する。
(ア)請求人は、検甲1発明について、エプロンサイドプレートは、上下を逆にしかつ左右を入れ替えて接続することによって、エプロン部材との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させ、該変化させることで、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能である旨(上記「第4の3(1)カ」参照。)、検甲1発明は、本件発明1の構成1Gを有する旨(上記「第4の3(1)ウ(ウ)」参照)、主張している。

(イ)証拠調べ(検証)において、検甲第1号証に係る検証物は、検甲1発明に対して、右側エプロンサイドプレートと左側エプロンサイドプレートを入れ替え、各サイドシールドに対して上下逆に取り付けることができた(「検甲1別態様」)ものではある。

(ウ)しかしながら、検甲1発明は、エプロンサイドプレートに形成されたボルト孔について、上端後側に形成された第1のボルト孔の外面側の周囲には、逆円錐面が形成され、中段後側に形成された第2のボルト孔の外面側の周囲には、逆円錐面が形成されておらず(構成(g1))、そして、該ボルト孔に締結するボルトについて、逆円錐面が形成された第1のボルト孔には、六角穴付皿ボルトが、逆円錐面が形成されていない第2のボルト孔には、六角ボルトが、六角ナットとで締結されている(構成(g3))ものであり、第1のボルト孔と第2のボルト孔の形状が相違し、さらに両ボルト孔にはそれぞれ相違する形状のボルトが用いられていることからみて、第1のボルト孔と第2のボルト孔の位置が上下逆になる状態に、つまり検甲1発明を、検甲1別態様のような、右側エプロンサイドプレート及び左側エプロンサイドプレートを入れ替え、各サイドシールドに対して上下逆にとりつけるような態様に変更することは、想定されていないというべきである。

(エ)さらに、検甲第1号証に係る検証物と型式が同型であるコバシローター(型式「KJL180」)の部品表(乙第2号証)及び取扱説明書(乙第3号証)をみても、検甲1発明のとおりに各エプロンサイドプレートの各ボルト孔と各ボルトとを組み合わせるものであって、各エプロンサイドプレートのその他の取付や配置は記載も示唆もされていない。
また、検甲1別態様の使用状態について、本件特許の出願前に実施されていたとの主張はなく、証拠も提出されていない。
よって、検甲1発明は、本件発明1の構成1Gを備えてない。

(オ)また、請求人は、検甲1発明が構成1Gを有しないとしても、この構成1Gは、甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載されているとおりの周知技術又は公知技術である旨(上記「第4の3(1)ウ(エ)」参照。)、主張している。

(カ)しかしながら、検甲第1号証に係る検証物は、上記(ウ)及び(エ)で説示したように、検甲1発明のとおりの各エプロンサイドプレートの各ボルト孔と各ボルトを組み合わせるものであって、各エプロンサイドプレートのその他の取付や配置とするものではない上に、該検証物は、製品として最適化されたものであるから、検甲1発明には構成1Gを備えるものに替える動機付けはなく、よって、仮に上記(オ)のとおり、構成1Gが周知技術または公知技術であったとしても、検甲1発明に該周知技術または公知技術を適用して、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(キ)以上のとおりであるから、仮に、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成が、請求人が主張するように、本件特許の原出願前に、公知技術または周知技術であったとしても、本件発明1は、検甲1発明と同一ではなく、また検甲1発明及び請求人が主張する周知技術又は公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、証拠調べ(検証)における【特定2-1】及び【特定2-2】について、そのエプロンサイドプレートを締結している「六角穴付ボルト」は、購入時のものではなく、何時入手したかも不明である(上記「第4の3(1)イ」参照。)。さらに、上記(ウ)及び(エ)のとおり、検甲第1号証に係る検証物は、右側エプロンサイドプレート及び左側エプロンサイドプレートを入れ替え、各サイドシールドに対して上下逆にとりつけるような態様に変更することは、想定されていないから、上記【特定2-1】及び【特定2-2】、すなわち、右側エプロンサイドプレート及び左側エプロンサイドプレートを入れ替え、各サイドシールドに対して「六角穴付きボルト」を用いて上下逆にとりつけることは、本件特許の原出願前に公然実施されたものとは認めることができない。

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1から「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、」「前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」する構成を省いたものである。
してみると、上記(1)ア(ア)?(ウ)に記載した相当関係を勘案して、本件発明2と検甲1発明とを対比すると、上記(1)ア(エ)に記載した相違点2及び相違点3で相違している.
そして、上記相違点3についてみると、上記(1)イで説示したとおり、相違点3に係る本件発明2の構成は、検甲1発明は備えておらず、また、検甲1発明及び請求人の主張する公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
したがって、本件発明2は、検甲1発明と同一ではなく、また、検甲1発明及び請求人が主張する周知技術又は公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定するものであるから、上記(1)又は(2)で説示した理由と同じ理由により、検甲1発明と同一ではなく、また検甲1発明及び請求人が主張する周知技術又は公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 無効理由2について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲10発明を対比する。
(ア)甲10発明の「耕耘爪41を有した耕耘軸42」、「耕耘爪41の耕耘幅上方を覆うロータリーカバー46」、「ロータリーカバー46の左右側側面に」「配設され」た「サブサイドカバー152」、「ロータリーカバー46の後側に上下回動自在」に「設けられる」「リアカバー50」、「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」は、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールド」、「前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後ろ側を覆うエプロン本体部」、「前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレート」に相当する。

(イ)甲10発明の「耕耘爪41を有した耕耘軸42と耕耘フレーム43の左右両側端に、伝動ケース44及びサイドプレート45を備え、この伝動ケース44内の伝動機構を経て前記耕耘軸42を駆動する構成となって」いる「耕耘装置A」は、本件発明1の「ロータリ作業機」に相当する。

(ウ)甲10発明において、「伝動ケース44内の伝動機構を経て、前記耕耘軸44を駆動する構成となっており、」そして、「伝動ケース44は、チェーンを覆うチェーンケースであ」るから、甲10発明の「伝動ケース44」は、本件発明1の「作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケース」に相当する。
また、甲10発明の「伝動ケース44は、」「左側のサブサイドカバー152よりも外側であって、かつ、ロータリカバー46の左の外側に位置」することと、本件発明1の「前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」することとは、「前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置」することで共通する。

(エ)甲10発明において、「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」は、「左右付替えすることにより、サブサイドカバー152の外側又は内側に配置させて作業を行うことができ」ることから、「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」を「サブサイドカバー152の外側又は内側に配置させ」た状態は、それぞれ第1の状態または第2の状態といえ、「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」を「左右付替え」することが、第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能といえる。
よって、甲10発明は、本件発明1の「前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させること」を備えている。

(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、本件発明1と甲10発明とは、
「作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることが可能な、ロータリ作業機。」で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点A〕本件発明1は、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳するのに対し、甲10発明は、そのような特定がない点。
〔相違点B〕エプロンサイドプレートについて、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有するのに対し、甲10発明は、段差部153は、基部側に設けられるものであって、サブサイドカバー152側に折れ曲がった屈曲部でもない点。
〔相違点C〕チェーンケースについて、本件発明1は、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたのに対し、甲10発明は、そのような特定がない点。
〔相違点D〕エプロンサイドプレートとエプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることによって、本件発明1は、エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であるのに対し、甲10発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
事案鑑み、相違点B、Dから検討する。
(ア)相違点B
a 相違点Bについて、請求人は、「甲第3号証、甲第12号証、甲第13号証及び検甲第1号証によれば、エプロンサイドプレートの変形防止等のために、エプロンサイドプレートのサイドシールド側の端部にエプロン部材側に折れ曲がった屈曲部を形成することは、本件特許の原出願前における従来の周知技術である。・・・甲第10号証には、・・・エプロンサイドプレートのサイドシールド側を含む部分を屈曲部としてエプロン部材側方向(内側)に折り曲げることが記載されている。・・・甲10発明において、上記周知技術の適用により折り曲げの位置を変えて、・・・相違点2(審決注:相違点Bに相当。)に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。」(上記「第4の3(2)ウ(イ)a」参照。)、「屈曲部の折り曲げの位置をどこにするかは、防土板やサブサイドカバーの形状・強度、或いは折り曲げの作業性等に応じて、当業者が適宜決め得る設計的事項に過ぎない。」(上記同b参照。)、と主張する。
(なお、甲第12号証及び甲第13号証には、上記屈曲部は記載されていないから、両証拠は請求人が主張する周知技術の根拠となる証拠とはならない。)

b しかしながら、甲10発明の「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」において、「段差153」は、両防土板151R、151Lの基部側に設けられており、そして、該「段差153」よりもサブサイドカバー152側の部分は、該「段差153」によって基部側よりも内側もしくは外側に位置しているものの、内側もしくは外側のどちらの方向に向かって折れ曲がっているのか明確ではないから、請求人が主張するように、該「段差153」及び該「段差153」のサブサイドカバー152側が、本件発明1のエプロン部材側に折れ曲がった屈曲部ということはできない。
よって、甲10発明の「段差153」の位置に、上記周知技術と主張する屈曲部の位置(サイドシールド側の端部)を適用する動機付けはない。

c また、「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」は、その基部側に段差153が設けられ、左右付替えすることにより、サブサイドカバー152の外側又は内側に配置させるものであるから、仮に、請求人が主張するとおりの周知技術があり、上記周知技術を甲10発明に適用することにより、甲10発明の段差部153の位置をサブサイドカバー側、つまり先端側に位置を変えようとしても、段差153よりも基部側の長さが長くなって、サブサイドカバーに接触し、外側又は内側に配置することはできなくなるから、当該周知技術を甲10発明の「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」に適用することは、阻害要因があるといえる。
なお、屈曲部の折り曲げの位置を変えることが設計的事項であるとの主張についても、同様である。

d 以上のことからみて、甲10発明に請求人が主張する周知技術(甲第3号証及び検甲第1号証)を適用することにより、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(イ)相違点D
a 相違点Dについて、請求人は、「甲第11号証には、第2カバー(24)の上下位置調整や上下反転で伝動ケース(3)によって形成された溝を埋めることが可能な点が記載されており、・・・甲10発明において、甲11技術事項を適用することで、当該甲11技術事項の「第2カバー(24)の如く、・・・相違点1(審決注:相違点Dに相当。)に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。」(上記「第4の3(2)ウ(ア)」参照。)、と主張する。

b しかしながら、甲10発明の「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」は、左右付替えすることにより、サブサイドカバー152の外側又は内側に配置させるものであって、両防土板151R、151Rの下側方向位置に開口部を形成しようとするものではないから、甲第11号証に記載の「第2カバー(24)」の上下位置調整や上下反転させる接続状態を、甲10発明に適用する動機付けはない。

c また、甲第11号証に記載の第2カバー(24)は、第1カバー(23)とでサイドカバー(22)を構成し、その第1カバ-(23)は、伝動ケース(3)及びサイドフレームの後方で、それらに設けられたブラケット(25)にボルト固定され、第2カバー(24)は第1カバー(23)に固着されるものであるから、該第2カバー(24)は、上部カバー(17)の後縁に上下揺動自在に枢支されている後部カバー(18)に接続されるものではない。
そうすると、甲第11号証に記載の「第2カバー(24)」の接続状態を、甲10発明の「右サイド用防土板151R」及び「左サイド用防土板151L」に適用するには、接続場所を替えた上で、さらに接続のための構造を検討する必要があるから、当業者が容易になし得たこととはいえない。

d 以上のことからみて、甲10発明に甲第11号証に記載された技術事項を適用することにより、相違点Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、仮に、相違点A及び相違点Cに係る本件発明1の構成が、請求人が主張するように、本願出願前に公知技術または周知技術であったとしても、本件発明1は、甲10発明、甲第11号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第3号証及び検甲第1号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1から「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、」「前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」する構成を省いたものである。
してみると、上記(1)ア(ア)?(エ)に記載した相当関係を勘案して、本件発明2と甲10発明とを対比すると、上記(1)ア(オ)に記載した相違点Bないし相違点Dで相違している.
そして、上記相違点B及び相違点Dについてみると、上記(1)ウで説示したとおり、上記相違点B及び相違点Dに係る本件発明2の構成は、甲10発明、甲第11号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第3号証及び検甲第1号証)に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明2は、甲10発明、甲第11号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第3号証及び検甲第1号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3ないし5
本件発明3ないし5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであって、上記(1)又は(2)で説示した理由と同じ理由により、甲10発明、甲第11号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第3号証及び検甲第1号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 無効理由3について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
(ア)甲3発明の「複数の耕うん爪と耕うん軸」、「複数の耕うん爪と耕うん軸の上方を覆う耕うん部カバー」、「耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板」、「耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪と耕うん軸の後側を覆うリヤカバー」、「リヤカバーの左右側側面に接続された補助側板」は、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールド」、「前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部」、「前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレート」に相当する。

(イ)また、甲3発明の「補助側板は、側板側の端部がリヤカバー側方向に折れ曲がった屈曲部を有する」ことは、本件発明1の「前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有」することに相当する。

(ウ)甲3発明の「チェーンケース」が、「前記左側の側板の外側であって、かつ、耕うん部カバーの左の外側に位置」することと、本件発明1の「チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」することとは、チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置することで共通する。
また、「チェーンケース」は、「作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆う」ことは、当業者にとって自明な事項である。

(エ)よって、本件発明1と甲3発明とは、
「作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有する、ロータリ作業機。」で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点ア〕本件発明1は、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳するのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
〔相違点イ〕チェーンケースについて、本件発明1は、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されているのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
〔相違点ウ〕本件発明1は、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であるのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点ウから検討する。
a 相違点ウについて、請求人は、「甲3発明において、甲11技術事項を適用することにより、・・・相違点A(審決注:相違点ウに相当。)に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。」(上記「第4の3(3)イ(ウ)」参照。)、と主張する。

b まず、甲3発明のエプロンサイドプレートの作用・機能についてみると、甲第3号証には直接の記載はないが、少なくとも、エプロンサイドプレートが、作業ロータの後側を覆うエプロン部材の左右側側面に接続されていることからみて、作業ロータの斜め後方の土の飛散を防止することは、当業者にとって自明である。

c 甲3発明のエプロンサイドプレートの作用・機能が、上記bのとおり、作業ロータの斜め後方の土の飛散を防止する程度のものであって、エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成しようとするものではないから、甲第11号証に記載の「第2カバー(24)」の上下位置調整や上下反転させる接続状態を、甲3発明に適用する動機付けはない。

d また、甲第11号証に記載の第2カバー(24)は、第1カバー(23)とでサイドカバー(22)を構成し、その第1カバ-(23)は、伝動ケース(3)及びサイドフレームの後方で、それらに設けられたブラケット(25)にボルト固定され、第2カバー(24)は第1カバー(23)に固着されるものであるから、該第2カバー(24)は、上部カバー(17)の後縁に上下揺動自在に枢支されている後部カバー(18)に接続されるものではない。
よって、甲第11号証に記載の「第2カバー(24)」の接続状態を、甲3発明の「エプロンサイドカバー」に適用するには、接続場所を替えた上で、さらに接続のための構造を検討する必要があるから、当業者が容易になし得たこととはいえない。

e 以上のことからみて、甲3発明に甲第11号証に記載された技術事項を適用することにより、相違点ウに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、仮に、相違点ア及び相違点イに係る本件発明1の構成が、請求人が主張するように本件特許の出願前に公知技術または周知技術であったとしても、本件発明1は、甲3発明、甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1から「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、」「前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」する構成を省いたものである。
してみると、上記(1)ア(ア)?(ウ)に記載した相当関係を勘案して、本件発明2と甲10発明とを対比すると、上記(1)ア(エ)に記載した相違点イ及び相違点ウで相違している.
そして、上記相違点ウについてみると、上記(1)ウで説示したとおり、相違点ウに係る本件発明2の構成は、甲3発明、甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明2は、甲3発明、甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3ないし5
本件発明3ないし5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであって、上記(1)又は(2)で説示した理由と同じ理由により、甲3発明、甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 無効理由4について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲14発明を対比する。
(ア)甲14発明の「複数の耕うん爪と耕耘軸」、「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバー」、「耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板(右)(左)」、「耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪を耕耘軸の後側を覆う均平板」、「均平板の左右側側面に接続された補助側板」は、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールド」、「前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部」、「前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレート」に相当する。

(イ)甲14発明の「チェーンケース」は、「前記側板(左)より外側であって、かつ、前記耕うん部カバーの左の外側に位置する」ことと、本件発明1の「チェーンケースは前記サイドプレートよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」することとは、チェーンケースは前記サイドプレートよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置することで共通する。
また、「チェーンケース」は、「耕耘爪の耕耘軸に動力を伝達するチェーンを覆う」ことは、当業者にとって自明な事項である。

(ウ)甲14発明において、「畑地用・上の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用・下の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置している」ことからみて、「水田用・下の取付位置での補助側板」の下方と比較すると、「畑地用・上の取付位置での補助側板」の下方には、より広い空間が形成されることとなり、つまり、開口部が形成されるものといえる。
そして、上記開口部が形成されることから、甲14発明の「水田用・下の取付位置」及び「畑地用・上の取付位置」は、それぞれ本件発明1の「第1の状態」及び「第2の状態」に相当する。
そうすると、甲14発明の「前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用・下の取付位置と、前記第3の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第4の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑地用・上の取付位置とがあり、前記畑地用・上の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用・下の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置して」いることは、本件発明1の「前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に」「開口部を形成可能な」ことに相当する。

(エ)したがって、本件発明1と甲14発明とは、
「作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置するチェーンケース、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態に変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能なロータリ作業機。」で一致し(以下「一致点」という。)、以下の点で相違している。

〔相違点a〕本件発明1は、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳するのに対し、甲14発明は、そのような特定がない点。
〔相違点b〕チェーンケースについて、本件発明1は、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されているのに対し、甲14発明は、そのような特定がない点。
〔相違点c〕エプロンサイドプレートについて、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有するのに対し、甲14発明は、そのような特定がない点。
〔相違点d〕開口部について、本件発明1は、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻すためのものであるのに対し、甲14発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点dから検討する。
(ア)請求人は、甲第14号証には、甲14発明の追加構成Aが記載されていると主張しており、その根拠として、21頁の図を挙げている。
しかしながら、該図はあくまで、ロータリ作業機の概念を表現したものに過ぎず、該図に記載されているチェーンケース、均平板、補助側板等について、ロータリ作業機で深耕した場合のチェーンケース、均平板、補助側板等の詳細な位置関係を表すものではない。そして、甲14発明の深耕時において、そのような図に、耕耘深さ、盛上り度合、畑地用の補助側板を記入したとおりのものとなるかも不明である。
したがって、甲第14号証には、請求人が主張するような事項が記載されているとは認められないから、甲14発明の追加構成Aが記載されているとはいえない。

(イ)請求人は、追加構成Aが甲第14号証に記載されていないと仮定した場合であっても、追加構成Aは、例えば本件特許の原出願前に公知または周知技術である旨、主張している。
しかしながら、甲第14号証は取扱説明書であることからすると、甲第14号証の記載に基づいて認定した甲14発明において、「補助側板」は、「畑地用・上の取付位置」と「水田用・下の取付位置」に取り付けるように製品として最適化されたものであるから、畑地用及び水田用以外の取付位置を新たに設定するには、補助側板の形状や、均平板に対する取付位置、そして、深耕時のチェーンケース、均平板に対する配置等を新たに検討する必要があることから、単に追加構成Aが周知または公知の技術であったとしても、深耕時において、補助側板を、その下方に開口部が形成されるような取付位置に設けることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)また、請求人が主張する公知または周知技術についても検討する。
甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証には、本件発明1でいうところの「耕耘された土砂を外側方に流し出しチェーンケース跡の溝を埋め戻す」ための手段が記載されており、該埋め戻すことが、ロータリ耕耘機の周知の課題であることまでは理解できる。
そこで、該課題に基づいて、各甲号証に記載された手段を甲14発明に適用可能かどうかについて検討する。
甲第11号証には、上記1(4)カに記載したとおりの甲11技術事項が記載されている。
甲第22号証には、チェン伝動ケース7の後端部外周縁に取り付けられた支持部材18に、スペーサ19を介して側板20を、機体の進行方向に対して内側に傾斜させた状態で支持し、支持部材18と側板20の間にスペーサを介して前方及び後方が開放された袋状の空間が形成されたものであって、機体の進行と共に袋状部に流れ込んだ土壌が、チェン伝動ケース7によって土壌面に形成された溝を埋め戻して平坦にする、サイドシールド17が記載されている。
甲第24号証には、伝動ケース(8)の後部と後部カバー(11)の伝動ケース側の一側部との間の側部カバー(12)下方に、耕耘爪(3)により耕起された土が自由に食み出るような、開放状に形成された、食出し口(16)が記載されている。
甲第25号証には、動力ケース(4)の後方に設けられ、動力ケース(4)の略外側端面まで突出移動して、耕耘爪(1)で耕起した泥土が動力ケース(4)後方に飛散して溝跡を消す、サイドカバー(4)が記載されている。
甲14発明の「補助側板」は、均平板に形成された4つの接続部と、補助側板に形成された4つの被接続部とを組み合わせて、「補助側板」を「畑地用・上の取付位置」と「水田用・下の取付位置」に取り付けるものであるから、取付位置が変更されるものではない甲第22号証に記載のサイドシールド17及び甲第24号証に記載の食出し口(12)や、下方に開口部を形成するものではなく、かつ動動力ケース(4)の略外側端面まで突出移動する甲第25号証に記載のサイドカバー(4)は、それらの構造上、当業者が甲14発明に適用しようとするものではない。
また、甲11技術事項において、第2カバー(24)は、第1カバー(23)とでサイドカバー(22)を構成し、その第1カバ-(23)は、伝動ケース(3)及びサイドフレームの後方で、それらに設けられたブラケット(25)にボルト固定され、第2カバー(24)は第1カバー(23)に固着されており、上部カバー(17)の後縁に上下揺動自在に枢支されている後部カバー(18)に接続されるものではないから、後部カバー(18)に接続されていない第1カバー(23)の構成を、甲14発明の補助側板に適用することは、当業者が容易に気付くことではない。
さらに、甲11技術事項の後部カバー(18)に設けられるものではない第1カバー(23)の取付態様を、上下回動可能な均平板に取り付けられた甲14発明の補助側板に適用したとしても、深耕時において、補助側板の下方に開口部が形成されるようになるものともいえない。

(エ)したがって、甲14発明に、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術を適用することによって、上記相違点dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、仮に、相違点a?相違点cに係る本件発明1の構成が、請求人が主張するように、本件特許の出願前に公知技術または周知技術であったとしても、本件発明1は、甲第14号証に記載された発明ではなく、また、甲14発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1から「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、」「前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」する構成を省いたものである。
してみると、上記(1)ア(ア)?(ウ)に記載した相当関係を勘案して、本件発明2と甲14発明とを対比すると、上記(1)ア(エ)に記載した相違点b、c、dで相違している.
そして、上記相違点dについてみると、上記(1)イ及びウで説示したとおり、甲14発明に、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術を適用することによって、上記相違点dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明2は、甲14発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3ないし5
本件発明3ないし5は、本件発明1または本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであって、上記(1)及び(2)で説示した理由と同じ理由により、本件発明4及び5は、甲第14号証に記載された発明ではなく、また、本件発明3ないし5は、甲14発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

6 無効理由5
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲15発明を対比する。
(ア)甲15発明の「複数の耕うん爪と耕耘軸」、「複数の耕うん爪と耕耘軸の上方を覆う耕うん部カバー」、「耕うん部カバーの左右側側面に配設された側板」、「耕うん部カバーに対して上下回動可能に連結されて前記複数の耕うん爪を耕耘軸の後側を覆う均平板」、「均平板の左右側側面に接続された補助側板」は、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部」、「前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールド」、「前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部」、「前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレート」に相当する。

(イ)甲15発明の「チェーンケース」が「前記左側の側板の外側であって、かつ、前記耕うん部カバーの左の外側に位置する」することと、本件発明1の「前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置」することとは、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置することで共通する。

(ウ)甲15発明において、「畑用の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置して」いることからみて、「水田用の取付位置での補助側板」の下方と比較すると、「畑用の取付位置での補助側板」の下方には、より広い空間が形成されることとなり、つまり、開口部が形成されるものといえる。
そして、上記開口部が形成されることから、甲15発明の「水田用の取付位置」及び「畑用の取付位置」は、それぞれ本件発明1の「第1の状態」及び「第2の状態」に相当する。
そうすると、甲15発明の「前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第4の被接続部とが接続された水田用の取付位置と、前記第1の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第3の被接続部とが接続された畑用の取付位置とがあり、前記畑用の取付位置での補助側板の下端は、前記水田用の取付位置での補助側板の下端よりも、上方に位置して」いることは、本件発明1の「前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に」「開口部を形成可能な」ことに相当する。

(エ)したがって、本件発明1と甲15発明とは、
「作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左の外側に位置するチェーンケースと、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態に変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に開口部を形成可能なロータリ作業機。」で一致し(以下「一致点」という。)、以下の点で相違している。

〔相違点α〕本件発明1は、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、を有し、前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳するのに対し、甲15発明は、そのような特定がない点。
〔相違点β〕チェーンケースについて、本件発明1は、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には、前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されているのに対し、甲15発明は、そのような特定がない点。
〔相違点γ〕エプロンサイドプレートについて、本件発明1は、サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有するのに対し、甲15発明は、そのような特定がない点。
〔相違点δ〕開口部について、本件発明1は、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻すためのものであるのに対し、甲15発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点δから検討する。
相違点δは、上記5(1)ア(エ)に記載した相違点dと実質的に同じであるところ、相違点dについての判断は、上記5(1)イに記載した理由のとおりであるから、相違点δの判断についても、同様の理由により甲15発明に、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術を適用することによって、上記相違点dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明1は、甲15発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1から「前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、前記エプロン部材本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、」「前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳」する構成を省いたものである。
してみると、上記(1)ア(ア)?(ウ)に記載した相当関係を勘案すると、本件発明2と甲15発明とを対比すると、上記(1)ア(エ)に記載した相違点β、γ、δで相違している.
そして、上記相違点δについてみると、上記(1)イで説示したとおり、甲15発明に、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の技術を適用することによって、上記相違点δに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明2は、甲15発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない

(3)本件発明3ないし5
本件発明3ないし5は、本件発明1または本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであって、上記(1)及び(2)で説示した理由と同じ理由により、甲15発明及び検甲第1号証で示される技術事項、甲第11号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証に記載の公知技術または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない

7 無効理由6
無効理由6(36条6項2号)について、請求人は、本件特許の明細書の【発明の効果】の欄に「・・・チェーンケースによって形成された溝を埋めること・・・」と記載されているが、特許請求の範囲には、「チェーンケース」という構成要素が存在しないため、特許請求の範囲に記載された構成と、当該構成に基づく作用効果との関係が不明であって、本件発明1ないし本件発明5は不明確である旨(上記「第4の3(6)」参照。)、主張している。
しかしながら、本件訂正により、「チェーンケース」の構成が加えた上で、「前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成され」、「耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す」ものとなったので、請求人が主張する無効理由は存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項1ないし5は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。


第6 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項第2号に該当するものではなく、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもなく、さらに、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしているから、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件発明1ないし5に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に両持ち状態で接合された、弾性力を有するカバー材と、
前記エプロン本体部の前記作業ロータ側に配置された整地部材と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、
前記カバー材と前記整地部材とは、前記作業ロータ側からこの順で前記エプロン本体部に接合され、前記カバー材の後側は前記整地部材の前側と重畳し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能なロータリ作業機。
【請求項2】
作業ロータと、
前記作業ロータの上方を覆うシールドカバー本体部と、
前記シールドカバー本体部の左右側側面に配設されたサイドシールドと、
前記シールドカバー本体部に対して上下回動可能に連結されて前記作業ロータの後側を覆うエプロン本体部と、
前記エプロン本体部の左右側側面に接続されたエプロンサイドプレートと、
前記作業ロータのロータリー軸に動力を伝達するチェーンを覆うチェーンケースであって、前記チェーンケースは前記サイドシールドよりもさらに前記シールドカバー本体部の左右いずれかの外側に位置し、前記チェーンケースの下側部分が耕耘地面よりも下部に位置するように前記耕耘地面を深い位置まで耕耘する場合には前記チェーンケースによって前記耕耘地面にチェーンケース跡の溝が形成されるように固定されたチェーンケースと、を有し、
前記エプロンサイドプレートは、前記サイドシールド側の端部がエプロン本体部側方向に折れ曲がった屈曲部を有し、かつ、前記エプロン本体部との接続状態を第1の状態から第2の状態へ変化させることで、前記エプロンサイドプレートの下側方向位置に、耕耘された土砂を外側方に流し出し前記チェーンケース跡の溝に供給して前記チェーンケース跡の溝を埋め戻す開口部を形成可能であり、
前記エプロンサイドプレートは、上下を逆にして接続することによって、前記エプロン本体部との接続状態を前記第1の状態から第2の状態へ変化させるロータリ作業機。
【請求項3】
前記エプロンサイドプレートには、第1の接続部及び第2の接続部が形成され、
前記エプロン本体部の左右側側面には、第1の被接続部及び第2の被接続部が形成され、
前記第1の状態においては、前記第1の接続部と前記第1の被接続部とが接続され、前記第2の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、
前記第2の状態においては、前記第1の接続部と前記第2の被接続部とが接続され、
前記第2の接続部と前記第1の被接続部とが接続される請求項2に記載のロータリ作業機。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記エプロン本体部及び前記整地部材が整地可能な状態において、前記シールドカバー本体部に接続されたサイドシールドと前記エプロンサイドプレートとが重畳状態になる部分を少なくとも含むように形成される請求項1に記載のロータリ作業機。
【請求項5】
前記エプロンサイドプレートの後側方向に位置する部分は、前記第1の状態においても前記第2の状態においても、前記エプロン本体部よりも突出する部分を有しない請求項1?4いずれか1項に記載のロータリ作業機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-79549(P2015-79549)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (A01B)
P 1 113・ 113- YAA (A01B)
P 1 113・ 121- YAA (A01B)
P 1 113・ 112- YAA (A01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
小林 俊久
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5996033号(P5996033)
発明の名称 ロータリ作業機  
代理人 樺澤 聡  
代理人 福永 健司  
代理人 福永 健司  
代理人 北島 志保  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 北島 志保  
代理人 山田 哲也  
代理人 林 佳輔  
復代理人 阿部 実祐季  
代理人 樺澤 襄  
復代理人 阿部 実祐季  
代理人 林 佳輔  
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