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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J
管理番号 1373044
審判番号 不服2019-15222  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-13 
確定日 2021-04-08 
事件の表示 特願2015- 30324「熱膨張性耐火性シート及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月22日出願公開,特開2016-151001〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年 2月19日の出願であって,平成30年 8月16日付けの拒絶理由(特許法29条1項3号及び2項)の通知に対し,平成30年 9月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,さらに平成31年 2月20日付けの拒絶理由(同法36条6項1号及び4項1号)の通知に対し,平成31年 3月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた後,令和 1年 8月13日付けで平成31年 2月20日付け拒絶理由(同法36条6項1号及び4項1号)により拒絶査定がなされ,これに対して令和 1年11月13日に審判の請求がなされたものである。
その後,令和 2年10月 2日付けで当審から拒絶理由(最後)(特許法29条2項)の通知がなされ,令和 2年11月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。

第2 令和 2年11月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 2年11月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容について
本件補正は,本件補正前の,平成31年 3月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される,「熱膨張性耐火シートを備えた建具であって,前記熱膨張性耐火シートは,繊維シートにバインダー及び熱膨張性黒鉛を含有する耐火性樹脂組成物を含浸させた樹脂シートを備え,前記バインダーがポリ塩化ビニル系樹脂を含むことを特徴とする建具。」を,次のとおりにする補正を含むものである(下線部は,補正箇所である。)。
「熱膨張性耐火シートを備えたドア又は窓であって,前記熱膨張性耐火シートは,繊維シートにバインダー及び熱膨張性黒鉛を含有する耐火性樹脂組成物を含浸させた樹脂シートを備え,前記バインダーがポリ塩化ビニル系樹脂を含むことを特徴とするドア又は窓。」

2 本件補正の適否
本件補正は,令和 2年10月 2日付け当審からの拒絶理由通知(最後)を受けたものであって,本件補正の特許請求の範囲についてする補正は,特許法17条の2第5項の各号を目的とするものに限られる。
そして,本件補正に係る請求項1の補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「建具」をより具体的な下位の概念である「ドア又は窓」とするものであり,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第3項6号において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の本件補正発明は,上記1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献2の記載事項
令和 2年10月 2日付け拒絶理由通知で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2003-293482号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある(下線は当審で付加)。
「【請求項1】木質の構造体本体の表面側周囲に,熱膨張性の耐火被覆材を被覆すると共に,耐火被覆材の突き合わせ部分である目地部に保護処理を施したことを特徴とする耐火被覆構造。」
「【請求項3】前記耐火被覆材が,熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂100重量部,熱膨張性層状無機物20?350重量部及び無機充填材50?400重量部を含有し,前記熱膨張性無機物及び無機充填材の合計量が200?600重量部である樹脂組成物より形成され,加熱によって膨張し耐火断熱層を形成することを特徴とする請求項1,又は2記載の耐火被覆構造。」
「【請求項5】前記耐火被覆材が,不燃性繊維材料からなるネット又はマットに含浸され,及び又は耐火被覆材の片面又は両面に基材層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項記載の耐火被覆構造。」
「【0032】前記木質柱材3は,30cm×30cm角の木材からなり,
前記耐火被覆材2は,厚さが,約3mmまたは約1.5mmで柔軟性と可撓性を備えた熱膨張性のものになっている。」
「【0036】これらの熱膨張性耐火材は,加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうるものであり,50kW/平方メートルの加熱条件下で30分加熱した後の堆積膨張率が3?100倍であるものならば,特に限定されないが,次のような熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂に無機充填材及び熱膨張性無機化合物である層状無機物を配合した樹脂組成物からなるものが好ましい。
【0037】熱可塑性樹脂としては,例えば,ポリプロピレン系樹脂,ポリエチレン系樹脂,ポリ(1-)ブテン系樹脂,ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂,ポリスチレン系樹脂,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリフェニレンエーテル系樹脂,アクリル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂,フェノール系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリブテン,ポリイソブチレン,天然ゴム,イソプレンゴム,ブタジエンゴム,1.2-ポリブタジエンゴム,スチレン-ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブチルゴム,塩素化ブチルゴム,エチレン-プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレン,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,多加硫ゴム,シリコンゴム,フッ素ゴム,ウレタンゴム等が挙げられる。」
「【0039】前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の中でも,ハロゲン化されたものは,それ自体難燃性が高く,熱による脱ハロゲン化反応により,架橋が起こり,加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。」
「【0060】加熱時に膨張する熱膨張性無機化合物である層状無機物としては,特に限定はないが,例えば,バーミキュライト,カオリン,マイカ,熱膨張性黒鉛が好ましい。」
「【0098】本発明で用いる不燃性繊維状材料からなるネット又はシートとしては,無機繊維若しくは金属繊維状材料からなるものが好ましく,例えば,ガラス繊維の織布(ガラスクロス,コンティニュアスストランドマット等)若しくは不織布(チョップドストランドマット等),セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)若しくは不織布(セラミックマット等),炭素繊維の織布若しくは不織布,ラス又は金網から形成されるネット又はシートが好適に用いられる。」
「【0135】また,不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは,膨張断熱層の形状保持性の向上に寄与し,膨張断熱層の厚みが増大した場合でも膨張断熱層の脱落が防止される。」
「【0140】上記熱膨張性耐火材に不燃性繊維材料からなるネット又はマットが含浸,及び/又は熱膨張性耐火材の片面または両面に基材層4が積層することにより,膨張後の残渣保持力を更に向上させ断熱性,耐火性能の効果が更に向上する。
【0141】上記基材層4には,通常単体では溶融してしまう温度であっても,熱膨張性耐火材に含浸または積層することにより,溶融せずに残渣の中または表面でその形状を保持する特性のものがあり,膨張後の残渣保持力を更に向上させることができ,断熱性能,耐火性能を更に向上させる効果がある。
【0142】そして,膨張した耐火断熱層が,熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂を含有しているので,昇温によって炭化層が形成されると共に,架橋構造を取るため熱膨張後の形状保持性が良好である。」
「【0164】更に,前記柱材11において,耐火被覆材2の中に含浸されているガラスクロスがタッカーによって実験後も固定されており,突き合わせ部分の残渣の開き,脱落はほとんど無く,接着剤及びタッカーによって柱材の全面において約50mm以上の残渣が保持されていた。」




イ 引用発明
引用文献2には,上記アの記載事項,特に請求項1,3及び5から,下記の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「熱膨張性の耐火被覆材が表面側周囲に設けられた木質の構造体であって,
前記耐火被覆材は,熱可塑性樹脂及び熱膨張性層状無機物を含有する樹脂組成物より形成され,不燃性繊維材料からなるネット又はマットに含浸され,加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する,
熱膨張性の耐火被覆材が設けられた木質の構造体。」

ウ 引用文献3に記載された事項
令和 2年10月 2日付け拒絶理由通知で周知慣用の技術を示す文献として引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特許第4278564号公報(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
長手方向に沿う複数の空洞を有する合成樹脂製枠部材によって形成される開口枠体と,該開口枠体の開口部を閉塞する耐火性を有する板材と,を有する防火性樹脂サッシであって,前記空洞の内の選択された空洞内に,その長手方向に沿って熱膨張性耐火材が,該空洞内に空間を有するように挿入されていると共に,前記空洞に木質部材が挿入され,
前記熱膨張性耐火材は,前記防火性樹脂サッシが加熱されたとき,体積膨張して連続して耐火断熱層を形成するように,前記板材の面に沿う方向と直角な方向から見て,隙間無く配置されていることを特徴とする防火性樹脂サッシ。」
「【0117】
以上,本発明の一実施形態について詳述したが,本発明は,前記の実施形態に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で,種々の設計変更を行うことができるものである。例えば,樹脂サッシを構成する縦横の枠材,及び縦横の框材は,空洞は一部が開口しているものでもよく,この開口部を耐火シート等の熱膨張性耐火材や木質部材で塞ぐようにしてもよい。
【0118】
また,防火性樹脂サッシの例として引き違いのガラス戸の障子の例を示したが,これに限られるものでなく,上下移動式のガラス戸,はめ殺しのガラス戸や金属製のドア,回転式の開閉戸とはめ殺し戸,スライド式扉等,適宜のものに適用できるものである。
【0119】
さらに,防火性樹脂サッシに支持される耐火性板材として,鉄製網入りガラスからなる窓ガラスの例を示したが,金属製の板材を平坦な鏡板として使用してもよい。すなわち,防火性樹脂サッシを構成する障子部分は,外周を囲む枠状の框体と,該框体の内側の耐火性板材とを備えており,耐火性板材として金属製の鏡板を用いることもできる。」







エ 引用文献6に記載された事項
令和 2年10月 2日付け拒絶理由通知で周知慣用の技術を示す文献として引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2002-146942号公報(以下「引用文献6」という。)には,図面とともに,次の記載がある(下線は当審で付加)。
「【請求項1】 加熱によって膨張して耐火断熱層を形成し,50kW/m
^(2)の加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張倍率が3?30倍である,0.1?4mm厚の熱膨張性耐火材の少なくとも片面に木質板を設けた積層体からなることを特徴とする防・耐火パネル。」
「【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の防・耐火パネルからなる防火戸。」
「【0012】(1)熱膨張性耐火材本発明で用いる熱膨張性耐火材は,加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうるものであり,50kW/m^(2)の加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張率が3?30倍であるものであれば,特に限定されないが,次のような熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質又はエポキシ樹脂に無機充填剤及び熱膨張性無機化合物である層状無機物を配合した樹脂組成物からなるものが好ましい。
【0013】熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質としては,例えば,ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリ(1-)ブテン樹脂,ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂,ポリスチレン系樹脂,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリフェニレンエーテル系樹脂,アクリル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂,フェノール系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリブテン,ポリクロロプレン,ポリブタジエン,ポリイソブチレン,ブチルゴム,ニトリルゴム,ポリイソプレンゴム,スチレン-ブタジエンゴム,ゴム,塩素化ブチルゴム,エチレン-プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレン,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,多加硫ゴム,シリコーンゴム,フッ素ゴム,ウレタンゴム等が挙げられる。」







(3)対比・判断
ア 本件補正発明について
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「熱可塑性樹脂」は,本件補正発明の「バインダー」に相当し,引用発明の「熱可塑性樹脂及び熱膨脹性層状無機物を含有する樹脂組成物」は,本件補正発明の「耐火性樹脂組成物」に相当する。
引用発明の「不燃性繊維材料からなるネット又はマット」は,本件補正発明の「繊維シート」に相当する。
引用発明の「熱膨脹性の耐火被覆材」は「樹脂組成物」を「不燃性繊維材料からなるネット又はマットに含浸され」てなるものであり,「耐火被覆材」の性状はたとえば引用文献2の【0032】において,厚さが,約3mmまたは約1.5mmで柔軟性と可撓性を備えたものとして記載されているように,もっぱらシート状のものと認められることから,引用発明の「熱膨脹性の耐火被覆材」は,本件補正発明の「熱膨張性耐火シート」に相当する。
したがって,本件補正発明と引用発明は以下の点で一致する。

「熱膨張性耐火シートを備えたものであって,前記熱膨張性耐火シートは,繊維シートにバインダー及び熱膨張性無機物を含有する耐火性樹脂組成物を含浸させた樹脂シートを備えている,もの」

一方,本件補正発明と引用発明は以下の相違点で相違する。
・相違点1
本件補正発明は「ドア又は窓」であるのに対し,引用発明は「木質の構造体」である点。
・相違点2
熱膨張性を有する物質について,本件補正発明は「熱膨張性黒鉛」と特定するのに対し,引用発明はこのように特定しない点。
・相違点3
バインダーについて,本件補正発明は「ポリ塩化ビニル系樹脂」と特定するのに対し,引用発明はこのように特定しない点。

上記相違点について検討する。
相違点1について
木質の部材に対して熱膨張性耐火材を設けたドア(いわゆる防火戸)や窓は例えば引用文献3や6に記載の如く周知慣用である。そして,引用発明は建材の技術分野において,木質の部材に熱膨張性耐火材を設けるものであるから,上記周知慣用の技術に基づいて,引用発明をドアや窓に転用することは当業者が容易に想到し得たことであり,これによって当業者が予測し得ない格別の効果が奏されるものではない。
相違点2について
引用文献2の【0060】には,熱膨張性層状無機物の好ましい例として,熱膨張性黒鉛が記載されているから,引用発明の熱膨張性層状無機物として,熱膨張性黒鉛を選択することは当業者が適宜になし得ることであり,これによって当業者が予測し得ない格別の効果が奏されるものではない。
相違点3について
引用文献2の【0037】には,熱可塑性樹脂の例としてポリ塩化ビニル系樹脂が記載されており,【0039】には,熱可塑性樹脂の中でもハロゲン化されたものが好ましいことも記載されている。また,熱膨脹性耐火材用のバインダー樹脂として,ポリ塩化ビニル系樹脂は周知である(引用文献6の【0012】及び【0013】)。
そうすると,引用発明の熱可塑性樹脂として,周知慣用のハロゲン化熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニル系樹脂を選択することは当業者が適宜になし得たことであり,これによって当業者が予測し得ない格別の効果が奏されるものではない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2の記載事項及び周知慣用の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求人の意見書における主張について
請求人は,令和2年11月17日提出の意見書において,おおむね下記の点を主張している。
ア 本件補正発明においては,例えば図2ではドア10の本体部分12の内部に外からは視認できないように熱膨脹性耐火シートが設置されており,ドア又は窓の耐火性を高めている。
イ 引用文献2では,耐火被覆材が木質柱材3の外部表面の周囲全周を覆い,木質柱材3へ火が近づくのを防ぐ役割を果たすものであるから,引用文献2の技術をドアや窓に転用し,ドアや窓の外部表面の周囲全周に熱膨脹性シートを施した場合,ドアや窓として開閉できず機能できなくなる。
ウ 引用文献2と引用文献3,及び引用文献2と引用文献6は技術分野が異なるものであり,適用箇所も役割も異なっているため,これらを組み合わせることは妥当ではない。
上記主張アないしウについて検討する。
上記アについて
特許請求の範囲の記載によって特定される本件補正発明は,「熱膨脹性耐火シートを備えたドア又は窓」であるが,本体部分の内部に外からは視認できないように耐火被覆材を設置することを特定するものではなく,イの主張は本件補正発明の発明特定事項に根拠を置くものではない。
よって,請求人の上記アの主張は採用しない。
上記イについて
引用文献2の請求項1で特定される事項は「木質の構造体本体の表面側周囲に,熱膨脹性の耐火被覆材を被覆する」ことであって,「外部表面の周囲全周を覆」うことのみを特定しないことは明らかである。そして,木質柱材へ火が近づくのを防ぐ観点で,火災の発生が想定される方向と木質部材との間に熱膨脹性の耐火被覆材が存在すれば耐火構造としての役割を果せることからも,引用文献2から当業者が理解する技術事項が「周囲全周」に耐火被覆材を設けることに限定されているものとは言えない。また,引用文献2の【0135】,【0140】,【0141】,【0164】等に記載されるように,不燃性繊維材料を用いることにより,膨脹断熱層の形状保持性や残渣保持力を向上させる効果が発揮されれば良いものであるため「周囲全周」を被覆することが必要となるものでもない。
したがって,引用文献2の記載から引用発明2をドアや窓に転用できない旨の,請求人の上記イの主張は採用しない。
上記ウについて
上記イについて検討したとおり,引用発明2の技術分野及び役割は,熱膨脹性の耐火被覆材に関するものと言えるから,その技術分野及び役割は引用文献3及び6と異なるものではなく,また,その適用箇所についても,木質の部材の周囲全周に限るものではない。
そして,形状保持性や残渣保持力を向上させる引用発明の耐火構造について,耐火性が求められるドアや窓の適切な箇所に,ドアや窓の機能を保持しつつ引用発明を採用することは当業者が容易に想到し得えたことであると言え,その上で,引用文献3に記載される具体的な耐火構造(例えば図2の木質部材(16,16A)と耐火シート(15,15A))や引用文献6に記載される具体的な耐火構造(例えば図1,3の木質板(2)と熱膨脹性耐火材(1))において,耐火構造を備える木質の部材である引用発明を採用することは当業者が容易に想到し得たことであって,これらの組み合わせに困難性があるものでもない。
よって,請求人の上記ウの主張は採用しない。

以上のことから,請求人の主張は採用しない。

(5) 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和 2年11月17日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成31年 3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記第2[理由]1の補正前のものとして記載されるとおりのものである。

2 当審からの拒絶の理由
令和 2年10月 2日付けで当審が通知した拒絶理由通知の理由1は,次の理由を含むものである。
本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献2に記載された発明,引用文献2の記載事項及び周知慣用の技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2:特開2003-293482号公報
引用文献3:特許第4278564号公報(周知慣用の技術を示す文献)
引用文献6:特開2002-146942号公報(周知慣用の技術を示す文献)

3 引用文献
令和 2年10月 2日付け当審からの拒絶理由で引用された引用文献2の記載事項,及び周知慣用の技術を示す文献として引用された引用文献3及び引用文献6の記載事項は,上記第2の[理由]2(2)ア,ウ及びエに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「ドア又は窓」をより上位概念の「建具」を特定事項とするものであり,本願発明は本件補正発明を包含する。
そうすると,本願発明の発明特定事項に包含される本件補正発明が,上記第2の[理由]2(3)に記載したとおり,引用文献2に記載された発明,引用文献2の記載事項及び周知慣用の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用文献2に記載された発明,引用文献2の記載事項及び周知慣用の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-29 
結審通知日 2021-02-02 
審決日 2021-02-19 
出願番号 特願2015-30324(P2015-30324)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (C08J)
P 1 8・ 121- WZ (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 大畑 通隆
神田 和輝
発明の名称 熱膨張性耐火性シート及びその製造方法  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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