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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1373055
審判番号 不服2020-7866  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-08 
確定日 2021-04-08 
事件の表示 特願2018-508061「フレキシブル偏光膜、その製造方法および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開、WO2017/170527〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2018-508061号は、2017年(平成29年)3月28日(先の出願に基づく優先権主張 2016年(平成28年)3月29日))を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成30年 6月27日提出:手続補正書
令和 元年 7月26日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月26日提出:意見書
令和 元年 9月26日提出:手続補正書
令和 2年 2月25日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 6月 8日提出:審判請求書
令和 2年 6月 8日提出:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月8日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和元年9月26日付けにした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなる厚み10μm以下のポリビニルアルコール系偏光子を有し、かつ、前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に、前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有することを特徴とするフレキシブル偏光膜。
【請求項2】
前記補強膜の厚みが15μm以下であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル偏光膜。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなる厚み10μm以下のポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に、前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有し、かつ、前記補強膜の厚みは7μm以下であることを特徴とするフレキシブル偏光膜。」

(3) 本件補正について
請求項1についてした本件補正は、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「補強膜の厚み」を、「15μm以下」から「7μm以下」に限定する補正である。
また、本件補正前の請求項2に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の[0001]及び[0006]?[0007]。)。
そうしてみると、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件(引用文献2を主引用例とした場合)についての判断
(1) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2014-10311号公報(以下、「引用文献2」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、当初付されていた下線を省略し、引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を付した。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子の少なくとも片面に、保護膜として活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状又はシート状硬化物が直接形成された偏光板であって、前記硬化物の23℃における光弾性係数(以下、単に「光弾性係数」という)が15×10^(-12)Pa^(-1)以下である偏光板。
【請求項2】
前記組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む請求項1記載の偏光板。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状又はシート状硬化物を保護膜として有する偏光板に関し、これら技術分野に属する。
尚、下記においては、便宜上、特に断りがない場合は、フィルム状又はシート状を「フィルム状」と表し、アクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリレートと表す。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーションシステムなどのモバイル機器にタッチパネル一体型液晶表示装置が多く適用されるようになっており、それに伴って、液晶表示装置を構成する偏光板には、薄型軽量化および高耐久性が求められるようになっている。又、モバイル用途の液晶表示装置では、湿熱下でも使用可能であることが要望され、これに使用される偏光板についても、高い耐湿熱性が要求されている。これに対して、偏光子保護フィルムや液晶を光学補償する位相差フィルム等の光学フィルムとしてトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という)フィルムを貼合した偏光板は、高湿環境、特に高温高湿環境に長期間晒されると、偏光性能が低下したり、偏光子が収縮したりするという問題があった。したがって、偏光子に積層される保護層には、薄型軽量化とともに、硬度を高くして、機械的強度および偏光子の収縮を抑制する能力(収縮抑制力)を向上させることが求められている。
【0003】
従来のTACフィルムよりなる保護膜を偏光子に接着する方法では、作業時の取扱い性や耐久性の観点から、保護膜を40μm未満とすることが困難であり、薄型軽量化に限界があった。
【0004】
又、保護膜として、ウレタン(メタ)アクリレートを含む活性エネルギー線硬化型組成物の硬化フィルムが検討されているが、これを偏光子に接着する方法では、保護膜を40μm以下とするとフィルムが裂けやすくなり、ロール・ツー・ロール方式で加工する際に安定搬送できず、薄型軽量化に限界があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、偏光子の少なくとも片面に直接保護膜を形成する技術が開示されている。
・・・略・・・
【0009】
しかしながら、特許文献1?3のいずれも、光弾性係数に関する記載はなく、示唆もされていない。液晶セル側に用いる偏光子保護膜が外力による複屈折変化を生じやすい材料からなる場合、複屈折の分布が生じ、コントラストが不均一となるという問題がある。外力による複屈折変化の生じやすさは、光弾性係数の絶対値によって表されるが、偏光子保護膜として特許文献1?3記載の材料を用いた場合、その光弾性係数の絶対値が大きく、偏光子収縮に伴う応力複屈折の発生により、光漏れ・白抜けが起こる。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、接着剤等を使用することなく製造することができ、偏光子保護膜の厚さを40μm未満とすることが可能で、硬化物の光弾性係数が低い偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、偏光子保護膜として、特定の光弾性係数を有する活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状硬化物を、直接偏光子に形成した偏光板が有効であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物によれば、接着剤等を使用することなく簡便な製造方法により、40μm未満の薄膜かつ光弾性係数の低い保護膜が偏光子に直接形成された偏光板を提供することができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子(以下、単に「偏光子」という)の少なくとも片面に、保護膜として活性エネルギー線硬化型組成物(以下、単に「組成物」ということもある)のフィルム状硬化物(以下、単に「硬化物」という)が直接形成された偏光板であって、前記硬化物の23℃における光弾性係数(以下、単に「光弾性係数」という)が15×10^(-12)Pa^(-1)以下である偏光板に関するものである。
以下、本発明の詳細について説明する。尚、本明細書では、組成物に活性エネルギー線照射して得られる架橋物及び硬化物を、まとめて「硬化物」と表す。
【0016】
1.偏光子
本発明の偏光板で使用する偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されるものを使用する。
当該偏光子としては、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するものであれば種々の材料が使用できる。
例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性の染料を吸着・配向させた染料系偏光フィルム、二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光子等が挙げられる。これら、ヨウ素系偏光フィルム、染料系偏光フィルム及び塗布型偏光子は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収する機能を有するもので、吸収型偏光子と呼ばれている。
これらの偏光子の中でも、視認性に優れている吸収型偏光子を用いるのが好ましい。吸収型偏光子の厚さは、5?40μmが好ましい。
【0017】
2.活性エネルギー線硬化型組成物
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に、保護膜として活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状硬化物が直接形成されたものである。
そして、当該組成物としては、硬化物の光弾性係数が15×10^(-12)Pa^(-1)以下となるものを使用する。組成物の硬化物の光弾性係数が15×10^(-12)Pa^(-1)より大きいものは、光漏れ・白抜けが起こりやすい液晶ディスプレイとなってしまう。
組成物の硬化物の光弾性係数としては、-10×10^(-12)?10×10^(-12)Pa^(-1)が好ましく、より好ましくは-5×10^(-12)?5×10^(-12)Pa^(-1)である。
【0018】
本発明において光弾性係数とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さいことを意味する。
具体的には、光弾性係数(C)は、σを伸張応力、△nを応力付加時の複屈折としたとき、下式で定義される値である。
C[Pa^(-1)]=△n/σ
ここで、△nは、n_(1)を伸張方向と平行な方向の屈折率、n_(2)を伸張方向と垂直な方向の屈折率としたとき、下式で定義される。
△n=n_(1)-n_(2)
尚、本発明における光弾性係数は、温度23℃で測定した値を意味する。
【0019】
組成物としては、得られる組成物の硬化物が前記光弾性係数を満たし、偏光板保護膜を形成し得るものであれば種々の組成物を使用することができる。
それらの中でも、得られる硬化物が機械的物性に優れる点で、ウレタン(メタ)アクリレート(A)〔以下、「(A)成分」という〕を含む組成物が好ましい。
以下、(A)成分を含む組成物について説明する。
【0020】
2-1.(A)成分
(A)成分としては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物等が挙げられる。
(A)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
(A)成分としては、芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートが、低光弾性係数となるため好ましい。芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートは、原料のポリオール及び有機ポリイソシアネートとして、芳香族基を有しない化合物を使用することにより製造することができる。
・・・略・・・
(A)成分は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
以下、(A)成分の原料化合物である、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、並びに(A)成分の製造方法について説明する。
【0021】
2-1-1.ポリオール
ポリオールとしては、ジオールを用いることが好ましく、各種ジオールを用いることができる。
さらに、ポリオールとしては、水酸基価基準の数平均分子量(以下、「P-Mn」という)がP-Mnが500未満のポリオール、及びP-Mnが500以上のポリオールを挙げることができる。
尚、本発明においてポリオールのP-Mn(数平均分子量)とは、下式に従って求めた値をいう。
【0022】
【数1】

【0023】
P-Mnが500未満のポリオールとしては、炭素数2?12の脂肪族ジオール及び炭素数2?12の脂環族ジオールを挙げることができる。
【0024】
炭素数2?12の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール及び2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
【0025】
炭素数2?12の脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール-A、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカンジメタノール(通称;トリシクロデカンジメタノール)、1,4-デカヒドロナフタレンジオール、1,5-デカヒドロナフタレンジオール、1,6-デカヒドロナフタレンジオール、2,6-デカヒドロナフタレンジオール、2,7-デカヒドロナフタレンジオール、デカヒドロナフタレンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、デカリンジメタノール、アダマンタンジオール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(通称;スピログリコール)、イソソルビド、イソマンニド、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称;水添ビスフェノールA)、4,4′-ジヒドロキシジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールF)、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-1,1-ジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールZ)及び4,4-ビシクロヘキサノール等の脂環族ジオール等が挙げられる。
【0026】
これら化合物の中でも、P-Mnが60以上400以下のポリオールが好ましい。
当該化合物の具体例としては、1,4-ブタンジオール等の炭素数2?6の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカンジメタノール及び3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の複数の環を有する脂環族ジオールが好ましく、硬化物の強度に優れる点で、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(通称;スピログリコール)が特に好ましい。
・・・略・・・
【0034】
これらのポリオールは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(A)成分として脆性・柔軟性が要求される場合には、前記ポリオールとしては、炭素数2?12の脂肪族ジオール又は炭素数2?12の脂環族ジオールを用いることがより好ましい。
(A)成分として、機械物性が要求される場合、より具体的には破断強度及び引張弾性率に優れるものが要求される場合には、ポリオールとしてP-Mnが500以上のポリオールとP-Mnが500未満のポリオールを組合せて使用することが好ましい。
【0035】
より具体的には、P-Mnが500以上のポリオールとして、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオールが挙げられ、P-Mnが500未満のポリオールとして、炭素数2?12の脂肪族ジオール及び炭素数2?12の脂環族ジオールが挙げられ、これらを組合わせて使用する。
【0036】
これらのポリオールは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0037】
2-1-2.有機ポリイソシアネート
有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましく、無黄変型有機ジイソシアネートがより好ましい。
無黄変型有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という)、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート及びω,ω′-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
これらの有機ポリイソシアネートは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0039】
前記した化合物の中でも、硬化物の機械強度と光学特性に優れるという点で、IPDIが好ましい。
【0040】
2-1-3.ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記した化合物の中でも、組成物の硬化性と硬化物の柔軟性に優れるという点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
・・・略・・・
【0045】
2-1-5.好ましい(A)成分
本発明において、(A)成分としては、前記したものの中でも、P-Mnが500未満のジオール(以下、これらをまとめて「ジオールb」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
当該(A)成分は、組成物の硬化物が脆性・柔軟性により優れたものとなる。
ジオールbとしては、前記した炭素数2?12の脂肪族ジオール及び炭素数2?12脂環族ジオールが挙げられる。
この場合のジオールbとしては、P-Mnが60以上400以下のポリオールが好ましい。
当該化合物の具体例としては、1,4-ブタンジオール等の炭素数2?6の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカンジメタノール及び3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の複数の環を有する脂環族ジオールが好ましく、硬化物の強度に優れる点で、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(通称;スピログリコール)が特に好ましい。
【0046】
当該(A)成分としては、前記と同様に、ジオールbと無黄変型有機ジイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物(化合物A-I)、ジオールb、無黄変型有機ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させた化合物(化合物A-II)等が挙げられ、分子量を制御しやすいという理由で化合物A-Iが好ましい。
・・・略・・・
【0050】
特に好ましくは、上記における水酸基含有(メタ)アクリレートとして、水酸基含有(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物を用いて製造されたもの、即ち、ジオールb、無黄変型有機ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の反応物であるウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
当該(A)成分は、組成物の硬化物が脆性・柔軟性に特に優れたものとなる。
【0051】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物が好ましくい。さらに、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートに対するカプロラクトンの反応割合として、0.1モルより大きく、2.0モルより小さいものが好ましい。
当該(A)成分の製造方法も、前記と同様に実施すれば良く、好ましい製造方法も前記と同様である。
【0052】
2-2.その他の成分
本発明で使用する組成物は、前記(A)成分を含むものが好ましいが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
以下、その他成分について説明する。
具体的には、光弾性係数が5×10^(-12)Pa^(-1)以下の値を有するポリマー〔以下、「(B)成分」という〕、A)成分以外のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有するエチレン性不飽和化合物〔以下、「(C)成分」という〕、(A)成分及び(C)成分以外のエチレン性不飽和化合物〔以下、「(D)成分」という〕、光重合開始剤〔以下、「(E)成分」という〕、有機溶剤〔以下、「(F)成分」という〕、可塑剤、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤等を挙げることができる。
以下、これらの成分について説明する。
【0053】
2-2-1.(B)成分
(B)成分は、光弾性係数が5×10^(-12)Pa^(-1)以下の値を有するポリマーである。
(A)成分の硬化物は、通常10×10^(-12)?30×10^(-12)Pa^(-1)の範囲の正の光弾性係数を有するため、光弾性係数が5×10^(-12)Pa^(-1)以下である(B)成分と配合することにより、硬化物の光弾性係数を10×10^(-12)Pa^(-1)以下とすることができる。
・・・略・・・
【0064】
本発明における(B)成分としては、エチレン性不飽和基を有するポリマー〔以下、「(UB)成分」という)を用いることができ、(A)成分との相溶性及び硬化物の脆性が向上し、(B)成分含有量を多くできるため光弾性係数をさらに低減できるという点で好ましい。
・・・略・・・
【0082】
○(B)成分の割合
(B)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(B)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として(A)成分30?99重量%及び(B)成分1?70重量%が好ましく、より好ましくは(A)成分40?90重量%及び(B)成分10?60重量%である。
(A)成分の割合が30重量%以上とすることで、得られる硬化物の機械物性に優れるものとすることができ、他方99重量%以下とすることで、光弾性係数をさらに低減することができる。
【0083】
2-2-2.(C)成分
(C)成分は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有するエチレン性不飽和化合物である。
(C)成分において、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0084】
(C)成分としては、エチレン性不飽和基を有し、ホモポリマーのTgが0℃以上である化合物であれば種々の化合物が使用でき、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という)、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリレート」という)、(メタ)アクリルアミド系化合物、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、アリル化合物及びビニル化合物類が挙げられる。
・・・略・・・
【0090】
(A)成分及び(C)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(A)成分及び(C)成分の合計量を基準として(A)成分30?90重量%及び(C)成分70?10重量%が好ましく、より好ましくは(A)成分50?80重量%及び(C)成分50?20重量%である。
【0091】
2-2-3.(D)成分
(D)成分は、(A)成分及び(C)成分以外のエチレン性不飽和化合物である。
(D)成分は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で必要に応じて配合する成分である。
【0092】
(D)成分の具体例としては、(A)成分及び(C)成分以外の(メタ)アクリレート〔以下、「その他(メタ)アクリレート」という〕やN-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0093】
その他(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕や2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
・・・略・・・
【0097】
(D)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、得られる硬化物の柔軟性を低下させない量であれば良いが、(A)成分の合計100重量部に対して、前記(B)成分及び(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、1?100重量%が好ましく、より好ましくは1?80重量%である。
【0098】
2-2-4.(E)成分
(E)成分は、光重合開始剤である。
・・・略・・・
【0101】
(E)成分の配合割合としては、(A)成分の合計100重量部に対して、前記(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100重量部に対して、0.01?10重量%が好ましく、より好ましくは0.1?5重量%である。
(E)成分の配合割合を0.01重量%以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量%以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0102】
2-2-5.(F)成分
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、(F)成分の有機溶剤を含むものが好ましい。
・・・略・・・
【0106】
(F)成分の割合としては、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に10?90重量%が好ましく、より好ましくは40?80重量%である。
【0107】
2-2-6.可塑剤
硬化物に柔軟性を付与し、脆さを改善する目的で、可塑剤を添加することができる。可塑剤の具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸ジアルキルエステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、リン酸トリクレシル等のリン酸エステル、ポリプロピレングリコール等の液状ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、3-メチルペンタンジオールアジペート等の液状ポリエステルポリオール等が挙げられる。
これら可塑剤の配合割合としては、適宜設定すれば良いが、(A)成分の合計100重量部に対して、前記(B)成分及び(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、5?30重量%が好ましく、より好ましくは5?20重量%である。
可塑剤の配合割合を5重量%以上にすることにより、柔軟性が発現し、30重量%以下にすることにより、強靭性が保たれる。
・・・略・・・
【0110】
3.偏光板
本発明は、偏光子の少なくとも片面に、保護膜として前記した活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状硬化物が直接形成された偏光板である。
偏光子の少なくとも片面に組成物の硬化物が直接形成することにより、接着剤等を介した接合と比較して混入異物を低減でき、偏光板の厚さを薄くできるという効果を奏する。
【0111】
偏光板の構成としては、偏光子の少なくとも片面に組成物の硬化物が形成されたものであれば種々の形態のものが採用できる。
【0112】
偏光板の例としては、偏光子の片面に組成物の硬化物の1層を形成した下記構成の偏光板等が挙げられる。
硬化物/偏光子
又、これ以外にも、偏光子の両面に組成物の硬化物の2層を形成した下記構成の偏光板等が挙げられる。
硬化物/偏光子/硬化物
・・・略・・・
【0116】
4.偏光板の製造方法
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
尚、以下においては、図1?図2に基づき一部説明する。
【0117】
偏光板の製造方法としては、偏光子保護膜形成の目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
具体的には、偏光子に組成物を直接塗工し活性エネルギー線を照射して硬化させる方法・・・略・・・等が挙げられる。
・・・略・・・
【0121】
図1は、偏光子/硬化物から構成される偏光板の好ましい製造方法の一例を示す。
図1において、(1)は偏光子を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図1:F1)は、組成物を偏光子〔図1:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図1:F2)は、組成物を偏光子〔図1:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図1:1-1)。
偏光子に組成物層(2)が形成されてなるシートに対して活性エネルギー線を照射することで、偏光子/硬化物から構成される偏光板が得られる。活性エネルギー線の照射は、通常、組成物層側から照射するが、偏光子側からも照射できる。
【0122】
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等を乾燥した後の膜厚が5?100μmとなるよう塗工するのが好ましく、より好ましくは10?40μmである。
【0123】
組成物が有機溶剤等を含む場合は、塗布後に加熱・乾燥させ、有機溶剤等を蒸発させる。
・・・略・・・
【0127】
4-2.偏光板の用途
本発明の偏光板は、種々の光学用途に使用できるものである。より具体的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル一体型液晶表示装置及びタッチパネル一体型有機EL表示装置等に使用される偏光板が挙げられる。
【0128】
偏光板の使用に際しては、本発明を構成する保護膜層を介して偏光機能以外の光学機能を示す光学層を設けた光学部材とすることもできる。
光学部材の形成を目的に偏光板に積層する光学層には、例えば、位相差板、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置等の形成に用いられるものがある。
・・・略・・・
【0135】
偏光子の両面に保護膜を有する場合、本発明の保護膜を両面に有するものが最も好ましい。」

ウ 「【実施例】
【0136】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
【0137】
○製造例1〔(A)成分の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、室温でイソシアネートとしてIPDI:151.4g、触媒としてジブチルスズジラウレート:0.07gを仕込み、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
アルコール溶液としてアルコール溶液として1,4-ブタンジオール(水酸基価:1247mgKOH/g、P-Mn:90):28.2g、ポリカプロラクトントリオール(水酸基価:544mgKOH/g、P-Mn:309)〔ダイセル(株)製プラクセル303、数平均分子量300〕:18.3g、ポリカーボネートジオール(水酸基価:108mgKOH/g、P-Mn:1040)〔旭化成ケミカルズ(株)製デュラノールT-5651〕:20.4g及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」という):65.0gの混合溶液を内温が75℃以下となるように滴下した後、内温80℃で2時間反応させた。
その後、ヒドロキシル基含有アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、「HEA」という):61.6g、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」という):0.28g、MEK:5.0g及びジブチルスズジラウレート:0.07gの混合溶液を内温が75℃以下となるように滴下した後3時間反応させ、赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT-IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認し、ウレタンアクリレート(以下、「UA-1」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
UA-1のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwという)を、GPC(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:Waters製HSPgel HR MB-L)により測定した結果、2,400でであった。
【0138】
○製造例2〔(A)成分の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:99.6g及びMEK:50.0gの混合溶液、アルコールとしてスピログリコール(水酸基価:369mgKOH/g、P-Mn:304)〔三菱ガス化学(株)製SPG〕:74.4g及びMEK(粉体であるSPGを添加後に反応容器に付着した洗浄に使用):25.5g、ヒドロキシル基含有アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物〔(株)ダイセル製FA1DDM〕:95.6g及びMEK:5.0gの混合溶液とした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA-2」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
得られたUA-2のMwは、2,300であった。
【0139】
○製造例3〔(A)成分及び(C)成分混合物の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:116.3g及びIBXA〔イソボルニルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートIB-XA〕:177.3g、アルコールとしてSPG:100.3g及びIBXA:32.5g、ヒドロキシル含有アクリレートとしてHEA:45.9g及びIBXA:5.0gの混合溶液とした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA-3」という)を含むIBXA溶液(UA濃度55%)を得た。
得られたUA-3のMwは、2,300であった。
【0140】
○製造例4〔(A)成分及び(C)成分混合物の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:103.8g及びDCPA〔ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP-A〕:50.0g、アルコールとしてSPG:93.4g及びデュラノールT-5651:35.4g、ヒドロキシル基含有アクリレートとしてHEA:29.9g及びDCPA:15.6gの混合溶液とした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA-4」という)を含むDCPA溶液(UA濃度80%)を得た。
得られたUA-4のMwは、5,000であった。
・・・略・・・
【0142】
○製造例6〔(B)成分の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という):7.0g、N-アクリロイルモルホリン(以下、「ACMO」という):3.0g、MEK:78.0gを仕込み、室温で均一に溶解させた。
フラスコの内容物を撹拌しながら、窒素雰囲気下で内温を80℃まで昇温し、内温が一定になった後、MMA:63.0gを4時間、ACMO:27.0gを3時間かけて供給し、他方でV-65〔和光純薬工業(株)製2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル〕:9.0gとMEK:22.5gからなる重合開始剤溶液を5時間かけて、それぞれ連続的に供給した。
連続供給終了後、内温を80℃に保って熟成を4時間行った結果、負の光弾性係数を有するポリマー(以下、「LP-1」という)を含む溶液(固形分52%)を得た。
得られたLP-1のMwは6,600、Mnは2,000であった。
【0143】
○製造例7〔偏光子の製造〕
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴で膨潤させた後、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸及び2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに55℃の4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで一軸延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、70℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子(以下、偏光子Pという)を得た。
得られた偏光子Pについて、偏光プリズム付き分光光度計((株)島津製作所製UV-2200)を用いて偏光度及び単体透過率を測定したところ、それぞれ99.99%及び43.1%であった。
【0144】
(1)製造例C1?C6、比較製造例C1、C2(組成物の製造)
後記表1に示す成分を表1に示す割合でステンレス製容器に投入し、加温しながらマグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、組成物を得た。
【0145】
【表1】

【0146】
表1における略号は、下記を意味する。
・LP-2:片末端メタクリロイル基ポリメチルメタクリレート系マクロモノマー、東亞合成(株)製AA-6〔固形分100%、Mn6,000〕
・Dc1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR-1173
【0147】
(2)製造例C1?C6、比較製造例C1、C2(光弾性係数の測定)
幅300mm×長さ300mmの東レ(株)製フィルム「ルミラー50-T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm、以下「ルミラー」という)に、製造例C1?C6及び比較製造例C1?C2で得られた紫外線硬化型組成物を、60℃で10分乾燥した後の膜厚が表2記載となるようアプリケーターで塗布した(製造例C5及びC6は乾燥工程なし)。
その後、組成物層に、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ20cm、365nmの照射強度260mW/cm2(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値))によりコンベア速度を調整して、積算光量380mJ/cm^(2)の紫外線照射を行い、光学フィルムを得た。
硬化後、ルミラーから剥離し、光弾性係数の測定に用いた。その結果を表2に示す。
【0148】
〔光弾性係数〕
上記で得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、自動複屈折計(KOBRA-WR、王子計測機器(株)製)を用いて、室温で0N?10Nの範囲で5点張力σを変えたときの面内位相差値をそれぞれ測定し、下記式に従って作製した近似直線の傾きから光弾性係数を求めた。結果を表2に示す。
△n=C・σ[式中、△nは応力複屈折、σは張力、Cは光弾性係数を表す。]
【0149】
(3)実施例1?7及び比較例1?2(偏光板の製造)
偏光子保護膜として製造例C1?C7及び比較製造例C1?C2で得られた組成物を用い、偏光子Pの片面に、60℃で10分乾燥した後の膜厚が表2記載となるようアプリケーターで塗布した(実施例6及び7は乾燥工程なし)。その後、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ15cm、365nmの照射強度370mW/cm^(2)(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値)によりコンベア速度を調整して、積算光量220mJ/cm^(2)の紫外線照射を行った。
更に、偏光子Pのもう一方の面に同様にして偏光子保護膜を形成し、偏光板(幅100mm×長さ100mm)を得た。
尚、偏光子のいずれの面に対してもコロナ処理を行なった。
【0150】
〔偏光度及び単体透過率の測定〕
実施例及び比較例で得られた偏光板について、偏光プリズム付き分光光度計((株)島津製作所製UV-2200)を用いて偏光度及び単体透過率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0151】
〔偏光板の耐湿熱性:外観〕
実施例及び比較例で得られた偏光板を、60℃90%RHの恒温恒湿槽に120時間放置した後のサンプルの外観を以下の基準で目視評価した。それらの結果を表3に示す。
○:変形は見られない。
×:変形が見られた。
【0152】
〔偏光板の耐湿熱性:ヨウ素脱色〕
実施例及び比較例で得られた偏光板を、60℃90%RHの恒温恒湿槽に120時間放置した後のサンプルのヨウ素脱色の有無を以下の基準で目視評価した。それらの結果を表2に示す。
○:ヨウ素脱色は見られない。
×:ヨウ素脱色が見られた。
【0153】
【表2】

【0154】
実施例1?7は、製造例C1?C6で得られた光学フィルムを用いた偏光板であり、偏光子Pの両面にTACフィルム(厚さ:40μm)を接着した従来の偏光板(厚さ:110μm)よりも薄膜で、偏光子Pの性能が維持されており、耐湿熱性が良好であった。
これに対して、比較例1及び2は、比較製造例C1及びC2で得られた光学フィルムを用いた偏光板であるが、耐湿熱性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の偏光板は、種々の光学用途に使用でき、具体的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル一体型液晶表示装置及びタッチパネル一体型有機EL表示装置等に使用される偏光板に使用することができる。」

エ 「【図1】



(2) 引用発明2
ア 引用発明2A
引用文献2の【0153】に記載された「実施例1」の「偏光板」は、【0137】、【0149】及び【0153】【表2】の記載からみて、「偏光子保護膜として」「ウレタンアクリレート」「を含む」「メチルエチルケトン」「溶液(固形分80%)」「を用い、偏光子Pの片面に、60℃で10分乾燥した後の膜厚が」「20μm」「となるよう」「塗布し」、「60℃で10分乾燥し」、「その後」、「積算光量220mJ/cm^(2)の紫外線照射を行」い、「更に、偏光子Pのもう一方の面に同様にして偏光子保護膜を形成し」て「得た」、「厚さ70μm」のものである。ここで、【0153】【表2】の記載からみて、上記「偏光子保護膜」は、「光弾性係数」が「13.5×10^(-12)Pa^(-1)」であり、また、上記「偏光子P」は、【0143】の記載からみて、「厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴で膨潤させた後、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色し」、「次いで、3重量%のホウ酸及び2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに55℃の4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで一軸延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬し」、「その後、70℃のオーブンで1分間乾燥を行い」「得た」、「厚さ30μmの」「偏光子P」である。
そうしてみると、引用文献2には、次の「偏光板」の発明が記載されている(以下、「引用発明2A」という。)。
「 偏光子保護膜としてウレタンアクリレートを含むメチルエチルケトン溶液(固形分80%)を用い、偏光子Pの片面に、60℃で10分乾燥した後の膜厚が20μmとなるよう塗布し、60℃で10分乾燥し、その後、積算光量220mJ/cm^(2)の紫外線照射を行い、さらに、偏光子Pのもう一方の面に同様にして偏光子保護膜を形成して得た、厚さ70μmの偏光板であって、
偏光子保護膜は,光弾性係数が13.5×10^(-12)Pa^(-1)であり、
偏光子Pは、厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴で膨潤させた後、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色し、次いで、3重量%のホウ酸及び2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに55℃の4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで一軸延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬し、その後、70℃のオーブンで1分間乾燥を行い得た、厚さ30μmのものである、
偏光板。」

イ 引用発明2B
引用文献2には、請求項1を引用して記載された請求項2に係る発明として、次の発明も記載されている(以下、「引用発明2B」という。)。
「 ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子の少なくとも片面に、保護膜として活性エネルギー線硬化型組成物のフィルム状又はシート状硬化物が直接形成された偏光板であって、硬化物の23℃における光弾性係数が15×10^(-12)Pa^(-1)以下であり、
活性エネルギー線硬化型組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む、
偏光板。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明2Aを対比すると、以下のとおりとなる。
ア ポリビニルアルコール系偏光子
引用発明2Aの「偏光子P」は、「厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴で膨潤させた後、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色し、次いで、3重量%のホウ酸及び2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに55℃の4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで一軸延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬し、その後、70℃のオーブンで1分間乾燥を行い得た」ものである。
上記の製造工程からみて、引用発明2Aの「偏光子P」は、本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」に相当し、引用発明2Aの「偏光子P」と本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」とは、「ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなる」点で共通する。

イ 引用発明2Aの「偏光板」は、「偏光子保護膜としてウレタンアクリレートを含むメチルエチルケトン溶液(固形分80%)を用い、偏光子Pの片面に、60℃で10分乾燥した後の膜厚が20μmとなるよう塗布し、60℃で10分乾燥し、その後、積算光量220mJ/cm^(2)の紫外線照射を行い、さらに、偏光子Pのもう一方の面に同様にして偏光子保護膜を形成して得た、厚さ70μmの」ものである。
上記の製造工程及び上記アからみて、引用発明2Aの「偏光子保護膜」は、本件補正後発明の「前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した」とされる、「補強膜」に相当する。また、上記の製造工程からみて、引用発明2Aの「偏光板」と本件補正後発明の「フレキシブル偏光膜」とは、「ポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に、前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有し」ている「偏光部材」である点で共通する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明2Aは、次の構成で一致する。
「ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなるポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に、前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有している、偏光部材。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明2Aは、以下の点で相違する。
(相違点1)
「ポリビニルアルコール系偏光子」が、本件補正後発明は、「厚み10μm以下の」ものであるのに対して、引用発明2Aは、「厚さ30μmのものである」点。

(相違点2)
本件補正後発明は、「前記補強膜の厚みは7μm以下である」「フレキシブル偏光膜」であるのに対して、引用発明2Aは、「偏光子保護膜」の「膜厚が20μm」であり、また、その余は不明である点。

(5) 判断
事案に鑑み、相違点1と相違点2をまとめて検討する。
ア 折り畳み可能なディスプレイは、先の出願前の当業者が強い関心を寄せていたものであり、例えば、「Display Innovation 2014」では、物理的には半径1mmでも折り曲げ動作は可能とされる、3つに折り畳める有機ELディスプレイが発表されている(馬本隆綱,「3つに折り畳める有機ELディスプレイ、半導体エネルギー研究所が展示」,[online],2014年10月30日,EE Times Japan,[2020年12月19日検索],インターネット<URL:https://eetimes.jp/ee/articles/1410/30/news077.html>)。
ここで、引用文献2の【0155】には、「本発明の偏光板は、種々の光学用途に使用でき、具体的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル一体型液晶表示装置及びタッチパネル一体型有機EL表示装置等に使用される偏光板に使用することができる。」と記載されている。また、【0050】には、「特に好ましくは、上記における水酸基含有(メタ)アクリレートとして、水酸基含有(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物を用いて製造されたもの、即ち、ジオールb、無黄変型有機ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の反応物であるウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。」及び「当該(A)成分は、組成物の硬化物が脆性・柔軟性に特に優れたものとなる。」と記載されている(ウレタンアクリレートの材料について、引用文献2には種々の知見が開示されている。)。さらに、【0110】には、「偏光子の少なくとも片面に組成物の硬化物」を「直接形成することにより、接着剤等を介した接合と比較して混入異物を低減でき、偏光板の厚さを薄くできるという効果を奏する。」と記載されるとともに、【0016】及び【0122】には、それぞれ「吸収型偏光子の厚さは、5?40μmが好ましい。」及び「本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等を乾燥した後の膜厚が5?100μmとなるよう塗工するのが好ましく、より好ましくは10?40μmである。」と記載されている。

イ そうしてみると、引用発明2Aの「偏光板」を折り畳み可能なディスプレイに適したものとすることを考えた当業者が、引用発明2Aの「ウレタンアクリレート」の材料を必要に応じて見直すとともに、折り畳み易さを考慮して、引用発明2Aの「偏光子P」及び(両面の)「偏光子保護膜」の厚さを、上記【0016】及び【0122】に記載された下限値(5μm)程度まで薄くして可撓性を確保することは、容易に発明をすることができたものといえる。また、このように薄い偏光子保護膜は、「硬化物の光弾性係数が低い偏光板を提供する」(【0011】)ことを発明が解決しようとする課題とする引用発明2Aにおいて、応力複屈折により生じる光漏れ・白抜けなどを抑制できる点においても好ましいといえる。
そして、このようにしてなるもの(当合議体注:引用発明2Aは、「さらに、偏光子Pのもう一方の面に同様にして偏光子保護膜を形成して得た」ものであるから、上記設計変更を施してなる引用発明2Aは、厚み5μmの偏光子Pの両面に厚み5μmの偏光子保護膜を形成した構成となる。)は、「フレキシブル偏光膜」であるといえる。

(6) 発明の効果について
ア 本件補正後発明の効果として、本件明細書の[0025]?[0027]には、「本発明のフレキシブル偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光子を用いるものであり、汎用性を満足することができる。また、ポリビニルアルコール系偏光子は、厚み10μm以下であり、薄型化されている点でも好適である。」、「本発明のフレキシブル偏光膜は、単体では脆く、裂け易いポリビニルアルコール系偏光子を用いているにも拘わらず、高度な柔軟性を有しており、捻りを加えて形状に変形を行った場合にもフィルム全体に割れが発生したり、折れた痕(折れ跡)が残ったり、前記偏光子に光抜けを生じることがない。また、本発明のフレキシブル偏光膜は、伸縮、折り曲げ等の種々の変形に対する柔軟性を有することができる。このように、本発明のフレキシブル偏光膜は当該偏光膜自身がフレキシブル性を有しており、通常のポリビニルアルコール系偏光子が単体では引張破断応力が顕著に小さくなり実質的に取り扱いが不可能であるのに対して、薄くてハンドリング性が良い。」、「本発明のフレキシブル偏光膜は、柔軟性を生かして、他部材と併用したり、または貼り合せて用いたりする場合にもフレキシブル性を有しており、前記偏光子のクラックを抑制可能であり、各種用途に利用することができる。そのため、フレキシブル偏光膜単体での用途拡大やプロセス中における許容度の拡大等により使用用途が大幅に広がる。そのため、本発明のフレキシブル偏光膜は、偏光子の代替として、例えば、従来の偏光子では脆さ、裂け易さゆえに適用できなかった設計に対応することができ、偏光フィルム(偏光子に透明保護フィルムを設けたもの)の代替として、例えば、従来の偏光フィルムが有する剛性から適用できなかった種々の変形形状に対応することができ、用途展開の拡大を図ることができる。」との記載がある。

イ しかしながら、「高度な柔軟性を有し」、「捻りを加えて形状に変形を行った場合にもフィルム全体に割れが発生したり、折れた痕(折れ跡)が残ったり、前記偏光子に光抜けを生じることがない」との効果は、上記設計変更を施してなる引用発明2Aも奏するといえる。あるいは、これらの効果は、引用発明2Aを折り畳み可能なディスプレイに適したものとすることを考えた当業者が期待する効果である。
また、汎用性、薄型化、ハンドリング性、用途展開の拡大などの効果についても、当業者にとって自明なこと、あるいは、当業者が予測、期待する効果であって、格別のものではない。

(7) 審判請求書について
ア 請求人は、審判請求書の「〔本願が特許されるべき理由〕」「ハ 理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について」、「<引用文献2>」において、「≪相違点1(2):偏光子の厚み≫」に関し、「i)引用文献2の段落[0016]には『偏光子の厚さは、5?40μmであること』に関する記載はあります。」、「しかし、引用文献2の段落[0143]の実施例(製造例7)では、厚み30μmの偏光子が用いられた例が開示されているのみです。また、引用文献2には、厚み10μm以下の偏光子を用いることで、本願発明の課題に係る『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を満足することを示唆する開示はありません。」、「また、引用文献2の実施例の記載は、本願の比較例1-3において、厚みが10μmを超える偏光子の両面に、補強膜を設けた場合に該当しており、本願発明の特徴である『フレキシブル偏光膜』の『高度な柔軟性』に係る『捻回試験』等を満足していないことが開示されています。」、「ii)以上のように、引用文献2の開示からは、上記相違点1(2)に係る『厚み10μm以下の偏光子』を用いることで、本願発明の課題である『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を想到することはできないものと思料します。」、「≪相違点2(2):補強膜の厚み≫」に関し、「i)引用文献2の段落[0122]には『保護膜の厚さは5?100μmであること』に関する記載はあります。」、「しかし、引用文献2の実施例に記載の保護膜の厚さは、本願発明の『補強膜の厚み7μm以下』の2倍以上の厚み(20μm、35μm)を有するものであります。また、引用文献2には、厚み7μm以下の保護層を用いることで、本願発明の課題に係る『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を満足することを示唆する開示はありません。」、「ii)以上のように、引用文献2の開示からは、上記相違点2(2)に係る、偏光子に『補強膜の厚み7μm以下』を適用することで、本願発明の課題である『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を想到することはできないものと思料します。」、「≪相違点3(2):フレキシブル偏光膜≫」に関し、「i)拒絶査定では、上記相違点3(2)について、引用文献2に記載の偏光子や保護膜を薄くすることには十分な動機付けがあり、その結果として請求項1に記載のフレキシブル偏光膜を満たすものとなると認められる、との指摘がされています。」、「しかし、引用文献2には、偏光子の厚み、保護膜(補強膜)の厚みに関して、広範囲な開示をしているのみであり、引用文献2には、上記相違点1(2)に係る本願発明の『偏光子の厚み10μm以下』、上記相違点2(2)に係る本願発明の『補強膜の厚みを7μm以下』を選択して組わせることを示唆する開示はなく、これらを組わせることに関する動機付けもないものと思料します。」、「また、拒絶査定では、引用文献2の段落[0002]等では、偏光板に薄型化が求められることの記載があることを指摘していますが、引用文献2の段落[0002]等の記載は単に偏光板の薄型化を記載しているのみであり、本願発明の課題である『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を示唆する開示ではありません。また、引用文献2の段落[0002]等に、偏光板の薄型化があるからといって、引用文献2において、上記相違点1(2)に係る本願発明の『偏光子の厚み10μm以下』、上記相違点2(2)に係る本願発明の『補強膜の厚みを7μm以下』を選択して組み合わせて、上記相違点3(2)に係る本願発明の課題である『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を想到することもできないものと思料します。」、「ii)前述のように、本願発明のフレキシブル偏光膜は、本願発明の課題は、本願の段落[0007]に記載のように、『本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子を用いているにも拘わらず、高度な柔軟性を有するフレキシブル偏光膜およびその製造方法を提供することを目的とする。』、ことにあります。そして、本願発明のフレキシブル偏光膜は、本願の段落[0025]乃至[0027]に記載の効果を奏するものであります。」、「即ち、本願の段落[0036]に『本発明のフレキシブル偏光膜1は、前記フレキシブル偏光膜における柔軟性を有するものであり、ポリビニルアルコール系偏光子aの片面または両面に透明保護フィルム等を有し、前記柔軟性を満足することができない通常の偏光フィルムとは明らかに区別されるものである。』と記載のように、従来の透明保護フィルムを有する偏光フィルムでは到底考えられない『高度な柔軟性』を有するものであります。」、「また、上記のように、本願発明の課題である『高度な柔軟性』は、引用文献7、8に記載のような薄型の偏光子に係る単なる柔軟性から周知とは言えないものであります。」、「iii)まして、引用文献2の実施例は、本願発明の比較例に対応していることが示しますように、本願発明では、引用文献2の開示からは予測することができない、上記相違点1(3)に係る『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を満足するという効果を奏していいます。このように、本願発明は、引用文献2からは予測できない効果を有することからも、引用文献2から本願発明は、如何に当業者であっても、容易に想到することはできないものと思料します。」と主張する。

イ しかしながら、引用発明2Aの「偏光板」を、折り畳み可能なディスプレイに適したものとすることを考えた当業者が、引用文献2の【0016】、【0122】、【0050】等の記載に基づき、引用発明2Aの「ウレタンアクリレート」の材料を必要に応じて見直すとともに、折り畳み易さを考慮して、「偏光子P」及び「偏光子保護膜」の厚さを下限値(5μm)まで薄くし、可撓性を確保することが容易に発明をすることができたものであること、また、このような設計変更を施してなるものが、「フレキシブル偏光膜」であるといえることは、上記(5)において既に述べたとおりである。
高度な柔軟性についても、本件補正後発明の効果として前記(6)で述べたとおりである。
してみると、審判請求書の請求人の主張を採用することはできない。

(8) 引用発明2Bについて
引用発明2Aに替えて、引用発明2Bに基づいて検討しても、同様である。
ア 相違点
「ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子」に関する技術常識を踏まえた上で、本件補正後発明と引用発明2Bを対比すると、両者の実質的な相違点は、以下のとおりである。
(相違点1)
「ポリビニルアルコール系偏光子」が、本件補正後発明は、「厚み10μm以下の」ものであるのに対して、引用発明2Bは、厚みが特定されたものではない点。

(相違点2)
本件補正後発明は、「前記補強膜の厚みは7μm以下である」「フレキシブル偏光膜」であるのに対して、引用発明2Aは、これらの要件を満たすか不明である点。

イ 判断
折り畳み可能なディスプレイは、先の出願前の当業者が強い関心を寄せていたことは、前記(5)アで述べたとおりであり、また、引用文献2には、前記(5)アで述べたとおりの記載もある。
そうしてみると、引用発明2Aの「偏光板」を折り畳み可能なディスプレイに適したものとして具体化する当業者が、引用発明2Bの「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」の材料を柔軟性に特に優れたものとするとともに、折り畳み易さを考慮して、引用発明2Bの「偏光子」及び「保護膜」の厚さを、引用文献2の【0016】及び【0122】に記載された下限値(5μm)程度まで薄くして可撓性を確保することは、容易に発明をすることができたものといえる。また、このようにしてなるものは、「フレキシブル偏光膜」であるといえる。
発明の効果及び審判請求書に関しては、前記(6)及び(7)で述べたとおりである。

(9) 小括
本件補正後発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 独立特許要件(引用文献3を主引用例とした場合)についての判断
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2014-206725公報(以下、「引用文献3」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を付した。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の第1偏光板保護層と、偏光子と、を有し、前記偏光子の厚さが10μm以下であり、前記第1偏光板保護層の40℃、相対湿度90%での透湿度が12g/m^(2)/day以上である偏光板。
【請求項2】
前記偏光子の、前記第1偏光板保護層とは反対側に、少なくとも1層の第2偏光板保護層をさらに有する請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第2偏光板保護層の厚さが25μm以下である、請求項2に記載の偏光板。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の用途拡大につれ、液晶表示装置に対して大サイズかつ高品位な質感が求められてきている。大型化した液晶表示装置の重量を軽くするため、各種の部材の厚みの薄膜化が進んでいる。中でも、液晶セルに使用されるガラス基板の厚みは従来の0.7mmであったものが、最近では厚みが0.3mmのものが検討され始めている。中小型用途でも、軽量化とバッテリー用のスペース確保のため、薄型化が急激に進んでいる。
【0003】
液晶表示装置の偏光板は、一般にヨウ素や染料を吸着配向させたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子と、その偏光子の表裏両側に透明な保護フィルムを貼り合わせた構成となっているが、偏光板は温度や湿度の変化に敏感であり、周囲の環境変化で伸縮しやすい。偏光板が伸縮して液晶セルが反る結果、液晶表示装置に表示ムラ(液晶セル四隅に生じる光漏れ)が発生する。近年のガラス基板の薄膜化に伴い、液晶セルの反りに起因した表示ムラが顕在化してきている。
【0004】
そのため、特許文献1では、偏光子よりも視認側に、透湿度が100g/m^(2)/day以下の透明な低透湿層を有する光学部材を配置することで、高温高湿環境から室温に戻した際の液晶パネルの反りを改善する方法が開示されている。
・・・略・・・
【0006】
また、近年のグローバル化に伴い、大型・中小型用途に問わず、液晶表示装置は広く世界で使用されており、赤道直下の環境での使用を考慮して高い温度での耐久性が求められる。さらに、中小型用途の液晶表示装置では、携帯電話やタブレットをはじめとして、屋外環境下での使用頻度の上昇により、特に車載用途などでは100℃近い極めて高い温度での耐久性が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が液晶表示装置に設けられる偏光板を薄膜化するため、低透湿層を有する偏光板の偏光子を薄膜化したところ、偏光板全体の薄膜化に伴う新たな問題として、高温環境下における偏光子の耐久性が悪化することがわかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、偏光子の膜厚が薄い(例えば、10μm以下)であっても、高温環境下における耐久性に優れた偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決することを目的として鋭意研究したところ、偏光子を膜厚10μm以下まで薄膜化した偏光板において、偏光子の保護フィルムの透湿度を特定の範囲に制御することで、上記課題を解決できるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0010】
前記課題は、下記手段<1>により、好ましくは<2>?<15>により解決された。
<1> 少なくとも1層の第1偏光板保護層と、偏光子と、を有し、偏光子の厚さが10μm以下であり、第1偏光板保護層の40℃、相対湿度90%での透湿度が12g/m^(2)/day以上である偏光板。
<2> 偏光子の、第1偏光板保護層とは反対側に、少なくとも1層の第2偏光板保護層をさらに有する<1>に記載の偏光板。
<3> 第2偏光板保護層の厚さが25μm以下である、<2>に記載の偏光板。
・・・略・・・
<8> 偏光板の厚さが95μm以下である、<1>?<7>のいずれかに記載の偏光板。
<9> 第1偏光板保護層の厚さが60μm以下である、<1>?<8>のいずれかに記載の偏光板。
・・・略・・・
<12> 液晶セルと、<1>?<11>のいずれかに記載の偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置。
<13> 第1偏光板保護層が、偏光子に対して、液晶セルと反対側に配置された<12>に記載の液晶表示装置。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、偏光子の膜厚が10μm以下であっても、高温環境下における耐久性に優れた偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「?」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
・・・略・・・
【0014】
<偏光板>
本発明の偏光板は、少なくとも1枚の第1偏光板保護層と、偏光子とを有し、偏光子の厚みが10μm以下であり、第1偏光板保護層の40℃、相対湿度90%での透湿度が12g/m^(2)/day以上である。
このような構成により、偏光子の膜厚が10μm以下であっても、高温環境下における耐久性に優れた偏光板が得られる。特に、本発明の偏光板は、第1偏光板保護層を液晶セルとの貼合面とは反対側の面に配置すると、その効果がより効果的に発揮される。この原理について本発明者らは以下のように推察している。
偏光板において液晶セルが遠い方に配置された偏光板保護層の透湿度が低いほど、偏光板からの水分抜けが遅くなる結果、液晶表示装置の視認側偏光板と光源側偏光板で発生する伸縮量の差が小さくなり、液晶パネルで発生する反りも小さくなると考えられる。そのため、偏光子の厚みが30μm程度の偏光板では、偏光板保護層の透湿度は低い方が好ましい。しかしながら、偏光子を10μm以下まで薄くした偏光板では、偏光板保護層の透湿度が低すぎると、高温環境下における偏光子の耐久性が顕著に悪化することがわかった。これは、外部からの水分の浸入は殆どないものの、高温環境下においては偏光子や偏光板保護層そのものに含まれていた水分が偏光板内で滞るためと考えられる。偏光子を10μm以下まで薄くした偏光板では、偏光板保護層の40℃90%RHでの透湿度を12g/m^(2)/day以上とすることで、高温環境下における耐久性を改善することができると考えられる。
【0015】
また、本発明の偏光板は、偏光子の、第1偏光板保護層とは反対側に、少なくとも1層の第2偏光板保護層をさらに有していてもよい。
【0016】
本発明の偏光板の全体の厚さに制限はないが、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、厚さは95μm以下が好ましく、80μm以下であることがより好ましく、10?60μmであることがさらに好ましく、10?40μmであることが特に好ましい。
【0017】
〔偏光子〕
本発明に用いられる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。
本発明では、好ましくは、通常用いられている直線偏光子を利用することができる。直線偏光子は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光子、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光子が好ましい。直線偏光子におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、ヨウ素もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
【0018】
本発明に用いられる偏光子の厚さは、10μm以下であり、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、1?8μmであることが好ましく、2?5μmであることがより好ましい。
【0019】
〔第1偏光板保護層および第2偏光板保護層〕
本発明に用いられる第1偏光板保護層の40℃、相対湿度90%での透湿度は12g/m^(2)/day以上である。12?3500g/m^(2)・dayであることが好ましく、12?1200g/m^(2)・dayであることがより好ましく、12?250g/m^(2)・dayであることがさらに好ましく、12?140g/m^(2)・dayであることが特に好ましく、12?100g/m^(2)・dayであることが一層好ましく、12?85g/m^(2)・dayであることがより一層好ましい。
【0020】
本明細書中における透湿度の値は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気中、面積1m^(2)の試料を24時間に通過する水蒸気の重量(g)に換算した値である。
【0021】
本発明に用いられる第1偏光板保護層の厚さは、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、60μm以下が好ましく、41μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
下限については特に限定はないが、硬度、脆性等の観点から通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。
【0022】
本発明に用いられる第2偏光板保護層の厚さは、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、25μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10μm以下である。下限については特に限定はないが、硬度、脆性等の観点から通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。
・・・略・・・
【0033】
{第1偏光板保護層および第2偏光板保護層を構成する材料}
本発明に用いられる第1偏光板保護層および第2偏光板保護層を構成する材料について特に制限はない。第1偏光板保護層および第2偏光板保護層を構成する材料は、それぞれ独立に、ポリマーからなる層やフィルム(以後、まとめて「フィルム」と称する場合もある)であってもよく、例えば、セルロースアシレート系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、またはポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマー層やフィルムを作製してもよい。
・・・略・・・
【0035】
〈セルロースアシレート系ポリマー層〉
本明細書では、「セルロースアシレート系ポリマー層」とは、セルロースアシレートを主成分(全成分の50質量%以上)として含有する層およびフィルムをいう。当該フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子を、アシル基に置換したものである。セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。
・・・略・・・
【0146】
〈ポリエステル系ポリマー層〉
本発明に用いられるポリエステル系ポリマー層の形成に用いられるポリエステルは特に制限されるものではなく、ポリエステルとして公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を挙げることができる。中でも、コストや機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。なお、第1偏光板保護層または第2偏光板保護層がポリエチレンテレフタレートからなる場合には、ポリエステル系ポリマー層の屈折率が1.62以上1.68以下であることが好ましい。
・・・略・・・
【0149】
〈アクリル系ポリマー層〉
本発明に用いられるアクリル系ポリマー層としては、(メタ)アクリル酸系樹脂を主成分とする組成物から形成されてなる層を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸系樹脂の繰り返し構造単位は、特に限定されない。(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位を有することが好ましい。
【0150】
なお、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念である。また、(メタ)アクリル系樹脂には、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体も含まれる。
【0151】
(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として、更に、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸及び下記一般式(201)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
【0152】
一般式(201)
CH_(2)=C(X)R^(201)
【0153】
(式中、R^(201)は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1?20のアルキル基、アリール基、-CN基、-CO-R^(202)基、又は-O-CO-R^(203)基を表し、R^(202)及びR^(203)は水素原子又は炭素数1?20の有機残基を表す。)
【0154】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。 (メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10?100質量%、より好ましくは10?100質量%、更に好ましくは40?100質量%、特に好ましくは50?100質量%である。
【0155】
水酸基含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0?30質量%、より好ましくは0?20質量%、更に好ましくは0?15質量%、特に好ましくは0?10質量%である。
【0156】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-置換アクリル酸、α-置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0?30質量%、より好ましくは0?20質量%、更に好ましくは0?15質量%、特に好ましくは0?10質量%である。
【0157】
一般式(201)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。
一般式(201)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0?30質量%、より好ましくは0?20質量%、更に好ましくは0?15質量%、特に好ましくは0?10質量%である。
・・・略・・・
【0176】
本発明に用いられるアクリル系ポリマー層としては、従来知られている光学フィルムを用いることもできる。
・・・略・・・
【0177】
《アクリル系ポリマー層の製造方法》
本発明に用いられるアクリル系ポリマー層の製造方法としては特に制限は無く、公知の方法で製造することができる。
・・・略・・・
【0178】
アクリル系ポリマー層としては、薄膜化の観点からは、塗布などにより形成された薄層などを用いてもよく、該薄層は自己支持性を必ずしも有さなくても良い。例えば、アクリル系ポリマー層は、仮支持体上にアクリル系ポリマー層を形成したあと、偏光子に直接または接着剤層などを介してアクリル系ポリマー層を仮支持体ごと貼り合わせ、仮支持体を剥離して、転写して形成したものであってもよい。
・・・略・・・
【0225】
<機能層>
本発明の偏光板は、第1偏光板保護層の少なくとも一方の上、好ましくは表面上に、機能層を有することが好ましい。機能層としては3D映像表示用のパターン位相差層、λ/4層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、光学異方性層などがあげられる。
・・・略・・・
【0252】
<偏光板の製造方法>
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。
・・・略・・・
【0253】
偏光子としては、従来公知の方法で製造したものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールあるいはエチレン単位の含有量1?4モル%、重合度2000?4000、けん化度99.0?99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したもの・・・略・・・を用いる。
【0254】
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことにより10μm以下の偏光子フィルムを得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第5048120号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も本発明の偏光板に好ましく利用することができる。
・・・略・・・
【0257】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を有する。第1偏光板保護層の配置方法の一例は、ハードコート層を有さない状態で偏光板の第1偏光板保護層が、偏光子の外側に配置(すなわち偏光板の偏光子よりも液晶セルから遠くなるように配置)した偏光板である。・・・略・・・また、本発明の液晶表示装置では、偏光板の第2偏光板保護層が第1偏光板保護層よりも液晶セルに近くなるように、偏光板が配置されることが好ましい。
・・・略・・・
【0260】
液晶表示装置の液晶セルの厚さを、1100μm以下(好ましくは1000μm以下)とした場合、本発明の偏光板の第1偏光板保護層の40℃相対湿度90%での透湿度を12?250g/m2/dayとすると、液晶表示装置の反りをより効果的に抑制し、表示ムラをより効果的に抑制できる。
・・・略・・・
上記態様において、特に、偏光子の膜厚を5μm以下とすると表示ムラの抑制がより効果的に発揮される。」

ウ 「【実施例】
【0261】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
・・・略・・・
【0333】
<ハードコート層付きフィルム1?4、8?13の作製>
〔ハードコート層の作製〕
ハードコート層形成用の塗布液として、下記ハードコート用硬化性組成物ハードコート1を調製した。
【0334】
【表1】

【化39】

・・・略・・・
【0336】
<偏光板1?の作製>
<比較例1>
〔偏光板1の作製〕
[偏光子の作製]
延伸した膜厚30μm、10μm、5μmの各ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させることで、膜厚30μm、10μm、5μmの偏光子を作製した。
・・・略・・・
【0343】
・・・略・・・
<実施例18>
ハードコート層付きフィルム4の表面にコロナ処理を施した。次いで、ハードコート層付きフィルム4と、膜厚5μmの偏光子とを、前記貼合法Aの方法を用いて、偏光子の吸収軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼りあわせて片面保護膜付き偏光板を作製した。
〔塗工層18の作製〕
塗工層18形成用の塗布液として、下記化合物をメチルエチルケトンに溶解して固形分濃度が35.6%になるように調製した。なお、下記重合開始剤1は、上述したハードコート1に用いた重合開始剤1と同一である。
----------------------------------
塗工層18形成用塗布液の組成
----------------------------------
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:A-DPH(新中村化学工業(株)製) 48.5質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート:PET30[日本化薬(株)製]
48.5質量部
重合開始剤1 3.0質量部
密着向上剤:下記化合物B 2.0質量部
----------------------------------
【化40】
(化合物B)

【0344】
上記塗布液を、片面保護膜付き偏光板の偏光子側の面に、塗布し、その後、70℃で60秒乾燥し、窒素0.1%以下の条件でUVを150mJ/cm^(2)にて照射し、硬化させ、厚み4μmを有する塗工層18を形成した。膜厚の調整は、スロットダイを用い、ダイコート法において塗布量を調整することにより行った。この様にして、偏光板26を作製した。
・・・略・・・
【0354】
<実施例20>
膜厚5μmの偏光子の両面に、偏光板26と同様の方法で塗工層18を塗工することで、偏光板28を作製した(後述する表2において、「塗布」と示す)。
【0355】
<実施例23>
フィルム5の表面にコロナ処理を施した。次いで、フィルム5と、膜厚10μmの偏光子とを、前記貼合法Aの方法を用いて、偏光子の吸収軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼りあわせて片面保護膜付き偏光板を作製した。
(塗工層20の作製)
塗工層20-A形成用の塗布液として、メチルエチルケトンと酢酸メチルを同重量ずつ混合した溶媒に下記化合物を溶解して固形分濃度が55%になるように調製した。なお、下記重合開始剤1は、上述したハードコート1に用いた重合開始剤1と同一である。
----------------------------------
塗工層20-A形成用塗布液の組成
----------------------------------
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート:A-DCP(新中村化学工業(株)製) 77質量部
パインクリスタル KR-120(荒川化学工業(株)製) 20質量部
重合開始剤1 3.0質量部
密着向上剤:化合物A 2.5質量部
----------------------------------
【0356】
続いて、塗工層20-B形成用の塗布液として、APEL8008:テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体(三井化学社製)をシクロヘキサンに溶解して固形分濃度が10%になるように調製した。
【0357】
塗工層20-A形成用の塗布液を、片面保護膜付き偏光板の偏光子側の面に塗布し、その後、40℃で30秒乾燥した。このようにして、厚み1μmの塗工層20-A上を形成した。続いて、塗工層20-A上に、塗工層20-B形成用の塗布液を塗工し、60℃120秒乾燥した後、窒素0.1%以下の条件でUVを1.5kW、300mJにて照射し、硬化させ、塗工層20-Aと塗工層20-Bの合計厚みが13μmの塗工層20を形成した。膜厚の調整は、スロットダイを用い、ダイコート法において塗布量を調整することにより行った。この様にして、偏光板31を作製した。
【0358】
<実施例24>
偏光板31の作製において、膜厚10μmの偏光膜の代わりに、膜厚5μmの偏光膜を用いた以外は、偏光板31と同様の方法で、偏光板32を作製した。
【0359】
<実施例25>
偏光板31の作製において、片面にフィルム5を有する片面保護膜付き偏光板の代わりに、膜厚10μmの偏光子を用いた以外は、偏光板31と同様の方法で、偏光板33を作製した。
【0360】
<実施例26>
偏光板32の作製において、片面にフィルム5を有する片面保護膜付き偏光板の代わりに、膜厚5μmの偏光子を用いた以外は、偏光板32と同様の方法で、偏光板34を作製した。
【0361】
<評価>
〔透湿度(40℃、90%相対湿度での透湿度)の評価〕
第1偏光板保護層の透湿度の測定法は、「高分子の物性 II」(高分子実験講座 4 共立出版)の285頁?294頁:蒸気透過量の測定 (質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用した。
試料70mmφを40℃、相対湿度90%でそれぞれ24時間調湿し、JIS Z-0208の方法に従い透湿カップを用いて、透湿度=調湿後質量-調湿前質量で単位面積あたりの水分量(g/m^(2))を算出した。なお、本測定では、吸湿剤の入れていないブランクのカップで上記条件における質量変化を測定し、透湿度値の補正を行なった。下記表2に結果を記載した。
【0362】
〔偏光板耐熱性の評価〕
上記で作製した各実施例、比較例および参考例の偏光板について、波長550nmにおける偏光子の直交透過率CTを、UV3150(島津製作所社製)を用いて測定した。10回測定の平均値を測定値として使用した。
偏光板耐熱性試験は次のように行った。まず、25℃、相対湿度60%の環境にて、240時間調湿した偏光板を用意した。次いで、ハードコート層付きフィルムが外側になるように偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製し、2つのサンプルの吸収軸が直交するように貼り合せた状態で透過率を測定した。この透過率を耐熱性試験前の偏光板の直交透過率とした。
その後、100℃、DRY環境下(調湿をしていない状態であり、本実施例、比較例および参考例では相対湿度0%?15%)で100時間保存した後について同様の手法で、耐熱性試験後の直交透過率を測定した。経時前後の直交透過率の変化を求め、偏光子耐熱性を下記の基準で評価した。なお、下記表2にその結果を記載した。
ここで、直交透過率の変化量とは下記式で算出されるものである。
直交透過率の変化量(%)={(耐熱性試験後の直交透過率(%)-耐熱性試験前の直交透過率(%)
A:直交透過率の変化量が0.06%未満
B:直交透過率の変化量が0.06%以上、0.08%未満
C:直交透過率の変化量が0.08%以上
【0363】
〔表示ムラの評価〕
(1)液晶表示装置への実装
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶表示装置、Δnd=320nm)の液晶セルから両面の偏光板を剥がし、液晶セルAとして利用した。液晶セルAに使用されていたガラスの厚みは約500μmであり、液晶セルの厚みは約1000μmであった。
また、Apple社製iPad(IPSモードの液晶表示装置、Δnd=350nm)の液晶セルから両面の偏光板を剥し、液晶セルBとして利用した。液晶セルBに使用されていたガラスの厚みは約300μmであり、液晶セルの厚みは約600μmであった。
また、日立社製W32-H9000(IPSモードの液晶表示装置、Δnd=320nm)の液晶セルから両面の偏光板を剥し、液晶セルCとして利用した。液晶セルCに使用されていたガラスの厚みは約700μmであり、液晶セルの厚みは約1400μmであった。
前記3種類の液晶セルA?Cを用い、下表のように、前記作製した偏光板を粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。ここで、下記表の実施例14&実施例19以外では、同じ偏光板を液晶セルの表裏に2枚貼り合せたものを評価に使用した。下記表の実施例14では、視認側偏光板には偏光板18を、光源側偏光板には偏光板19を、液晶セルの表裏に貼り合わせたものを評価に使用した。下記表の実施例19では、視認側偏光板には偏光板27を、光源側偏光板には偏光板26を、液晶セルの表裏に貼り合わせたものを評価に使用した。
【0364】
(2)表示ムラの評価
50℃、相対湿度85%の環境で72時間保持した後に、25℃、相対湿度60%の環境で2時間放置した後で液晶表示装置のバックライトを点灯し、点灯から10時間後にパネルの四隅の光漏れを評価し、表示ムラの評価とした。
表示ムラにおける光漏れ評価は、輝度計測用カメラ「ProMetric」(Radiant Imaging社製)で画面正面から黒表示画面を撮影し、全画面の平均輝度と、4角の光漏れが大きい箇所の輝度差をもとにして、以下の基準で評価した。下記表2にその結果を記載した。
A:パネル4角の光漏れが視認されない(パネルの光漏れがサーモ投入前と同程度)。
B:パネル4角のうち、1角でわずかな光漏れが視認されるが許容できる。
C:パネル4角のうち、2?4角で光漏れが視認され、許容できない。
D:パネル4角の少なくとも1角で、明瞭な光漏れが視認され、許容できない。
E:パネル4角の光漏れが強く視認され、許容できない。
【0365】
【表2】

【0366】
上記表から明らかなとおり、本発明の偏光板は、耐熱性に優れていることが分かった(実施例1?26)。特に、保護層の透湿度が12?250g/m^(2)/dayの際に、高温高湿度環境に置いた後、室温に戻した際の液晶パネルの反りがより効果的に改善された。さらに、保護層の透湿度が12?85g/m^(2)/dayの際に、高温高湿度環境に置いた後、室温に戻した際の液晶パネルの反りが顕著に効果的に改善された。特に、偏光子の厚さが5μm以下の場合、その傾向が顕著であった。
これに対し、保護層の透湿度が12g/m^(2)/day未満の場合、偏光板の耐熱性が劣ることが分かった(比較例1?4)。
一方、偏光子の膜厚が30μmの場合、透湿度を12g/m^(2)/day未満としても、透湿度を12g/m^(2)/day以上としても、耐熱性に差異は認められなかった。」

(2) 引用発明3
ア 引用発明3A
(ア) 引用文献3の【0354】に記載された「実施例20」の「偏光板28」は、【0343】、【0344】の記載からみて、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」(「48.5質量部」)、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」(「48.5質量部」)、「重合開始剤1」(「3.0質量部」)、「密着向上剤」(「2.0質量部」)からなる「化合物をメチルエチルケトンに溶解して固形分濃度が35.6%になるように調製した」「塗工層18形成用」「塗布液を」、「膜厚5μmの偏光子の両面に」、「塗布し、その後」、「乾燥し」、「UVを」「照射し、硬化させ」、「塗工層18を形成して」「作製した」ものである。
ここで、引用文献3の【0336】の記載によれば、「膜厚5μmの偏光子」は、「延伸した膜厚」「5μmの」「ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させることで」「作製した」ものである。

(イ) 引用文献3の【0365】【表2】の記載によれば、「実施例20」の「偏光板28」の「第1偏光板保護層」を構成する「塗工層18」の「膜厚」は「8μm」であり、「第2偏光板保護層」を構成する「塗工層18」の「膜厚」は「4μm」であり、「第1偏光板保護層」の「透湿度」は、「403g/m^(2)/day」である。

(ウ) そうすると、引用文献3には、「実施例20」として、次の「偏光板28」の発明が記載されている(以下、「引用発明3A」という。)。

「 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(48.5質量部)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(48.5質量部)、重合開始剤1(3.0質量部)、密着向上剤(2.0質量部)からなる化合物をメチルエチルケトンに溶解して固形分濃度が35.6%になるように調製した塗工層18形成用塗布液を、膜厚5μmの偏光子の両面に、塗布し、その後、乾燥し、UVを照射し、硬化させ、塗工層18を形成して、作製した、偏光板28であって、
膜厚5μmの偏光子は、延伸した膜厚5μmのポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させることで作製したものであり、
偏光板28の第1偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚は8μmであり、第2偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚は5μmであり、
第1偏光板保護層の透湿度は、403g/m^(2)/dayである、
偏光板28。」

イ 引用発明3B
引用文献3には、請求項3に係る発明として、次の発明も記載されている(以下、「引用発明3B」という。)。
「 少なくとも1層の第1偏光板保護層と、偏光子と、前記偏光子の、前記第1偏光板保護層とは反対側に、少なくとも1層の第2偏光板保護層と、を有し、前記偏光子の厚さが10μm以下であり、前記第1偏光板保護層の40℃、相対湿度90%での透湿度が12g/m^(2)/day以上であり、前記第2偏光板保護層の厚さが25μm以下である、偏光板。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明3Aを対比すると、以下のとおりとなる。
ア ポリビニルアルコール系偏光子
引用発明3Aの「偏光子」は、「延伸した膜厚5μmのポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させることで作製したものであ」る。
上記の「偏光子」の製造工程からみて、引用発明3Aの「偏光子」は、本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」に相当し、引用発明3Aの「偏光子」と本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」とは、「ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなる」点及び「厚み10μm以下の」点で共通する。

イ 引用発明3Aの「偏光板28」は、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(48.5質量部)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(48.5質量部)、重合開始剤1(3.0質量部)、密着向上剤(2.0質量部)からなる化合物をメチルエチルケトンに溶解して固形分濃度が35.6%になるように調製した塗工層18形成用塗布液を、膜厚5μmの偏光子の両面に、塗布し、その後、乾燥し、UVを照射し、硬化させ、塗工層18を形成して、作製した」ものである。また、引用発明3Aの「第1偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚は8μmであり」、「第2偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚は4μmであ」る。
上記の「偏光板28」の製造工程及び上記アからみて、引用発明3Aの「第1偏光板保護層を構成する塗工層18」及び「第2偏光板保護層を構成する塗工層18」は、本件補正後発明の、「前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した」とされる、「補強膜」に相当する。
また、上記の「偏光板28」の製造工程からみて、引用発明3Aの「偏光板」と本件補正後発明の「フレキシブル偏光膜」とは、「ポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に」、「補強膜を有し」ている「偏光部材」である点で共通する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明3Aは、次の構成で一致する。
「ポリビニルアルコール系樹脂が一方向に配向し、かつ前記ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素又は二色性色素が吸着配向してなる厚み10μm以下のポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも片面に、前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有している、偏光部材。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明3Aは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件補正後発明は、「前記補強膜の厚みは7μm以下である」「フレキシブル偏光膜」であるのに対して、引用発明3Aは、「第1偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚は8μmであり」、また、その余は不明である点。

(5) 判断
ア 引用文献3の【0178】によれば、引用発明3Aの「第1偏光板保護層」及び「第2偏光板保護層」は、「薄膜化の観点から」「塗布などにより形成された」ものであると理解できる。
ここで、引用文献3の【0021】には、「第1偏光板保護層」について、「本発明に用いられる第1偏光板保護層の厚さは、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、60μm以下が好ましく、41μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。」、「下限については特に限定はないが、硬度、脆性等の観点から通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。」との記載がある。

イ そうすると、引用発明3Aにおいて、「第1偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚」を、「薄型化できる」とともに、「硬度、脆性」の観点から好ましいとされる(下限の)1μm、あるいは5μmとすることは、引用文献3の【0021】の上記アの記載が示唆する範囲内のことである。また、引用発明3Aの第1偏光板保護層の透湿度(「膜厚8μm」で「403g/m^(2)/day」)からみて、このような設計変更を行ったとしても、第1偏光板保護層の透湿度は、引用文献3でいう発明の課題を解決する手段である、「透湿度が12g/m^(2)/day以上である」(【0010】)、あるいは、好ましいとされる「12?3500g/m^(2)・dayである」(【0019】)との条件を満たす。
そして、このような設計変更を施してなるもの(「膜厚5μmの偏光子」の両面に、膜厚1μm、あるいは5μmの第1偏光板保護層及び膜厚4μmの第2偏光板保護層を形成した構成)は、「フレキシブル偏光膜」であるといえる。

(6) 発明の効果について
本件補正後発明の効果は、2(6)において既に述べたとおりであるところ、「高度な柔軟性を有し」、「捻りを加えて形状に変形を行った場合にもフィルム全体に割れが発生したり、折れた痕(折れ跡)が残ったり、前記偏光子に光抜けを生じることがない」との効果は、上記設計変更を施してなる引用発明3Aも奏するといえる。
あるいは、折り畳み可能なディスプレイは、先の出願前の当業者が強い関心を寄せていたものであるところ、上記設計変更を施してなる引用発明3A(偏光板)の高い柔軟性は、当業者が期待することである。
また、汎用性、ハンドリング性、用途展開の拡大などの効果についても、当業者にとって自明なこと、あるいは、当業者が予測、期待する効果であって、格別のものではない。

(7) 審判請求書について
ア 請求人は、審判請求書の「〔本願が特許されるべき理由〕」「ハ 理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)」「<引用文献3>」において、「≪相違点1(3):補強膜の厚み≫」に関し、「i)・・・略・・・引用文献3では、基本的に、第1偏光板保護層/接着剤層/偏光子/接着剤層/第2偏光板保護層、の構成の偏光板が開示されています。・・・略・・・即ち、引用文献3において、前記塗布層の厚みに関しては、実施例18等においてのみ記載されており、引用文献3の発明の詳細な説明には塗布層の厚みに関する一般的な開示はありません。」、「ii)本願発明では段落[0044]に記載のように、補強膜の厚さは、薄層化および柔軟性の観点から7μm以下に調整しています。また、両面に補強膜を設ける場合にも、補強膜の厚さは、いずれも、7μm以下に調整しています。」、「一方、引用文献3に記載の偏光板(実施例18)では、偏光子の両面に偏光板保護層として形成された塗布層は、それぞれ、4μm、8μmであり、片面の塗布層の厚み8μmは、上記相違低1(3)に係る『補強膜の厚みは7μm以下』を満足していません。また、引用文献3には、偏光板保護層として形成される塗布層に関して、一般的な厚みに関する記載はなく、偏光子の両面に形成される塗布層の厚みを、いずれも、7μm以下に調整することを示唆する開示もありません。」、「iii)従って、如何に当業者であっても、引用文献3に記載の偏光板(実施例18)において、偏光子の両面に形成される塗布層の厚みを、いずれも、7μm以下に調整することを容易に想到することはできないものと思料します。」、「≪相違点2(3):フレキシブル偏光膜≫」に関し、i)本願発明の課題は、本願の段落[0007]に記載のように、『本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子を用いているにも拘わらず、高度な柔軟性を有するフレキシブル偏光膜およびその製造方法を提供することを目的とする。』、ことにあります。そして、本願発明のフレキシブル偏光膜は、本願の段落[0025]乃至[0027]に記載の効果を奏するものであります。「即ち、本願の段落[0036]に『本発明のフレキシブル偏光膜1は、前記フレキシブル偏光膜における柔軟性を有するものであり、ポリビニルアルコール系偏光子aの片面または両面に透明保護フィルム等を有し、前記柔軟性を満足することができない通常の偏光フィルムとは明らかに区別されるものである。』と記載のように、従来の透明保護フィルムを有する偏光フィルムでは到底考えられない、本発明のフレキシブル偏光膜は『高度な柔軟性』を有するものであります。」、「ii)以上のように、引用文献3には、本願発明の課題である「高度な柔軟性」に関する開示はありません。」、「また、上記のように、本願発明の課題である『高度な柔軟性』は、引用文献7、8に記載のような薄型の偏光子に係る単なる柔軟性から周知とは言えないものであります。」、「本願発明は、上記相違点2(3)に係る『高度な柔軟性』の『フレキシブル偏光膜』を満足する発明であり、如何に当業者であっても、引用文献3から、上記相違点2(3)に係る『フレキシブル偏光膜』を想到することはできないものと思料します。」、「まして、引用文献3には、本願発明の課題である『高度な柔軟性』についてはその示唆もなく、さらには、上記のように、引用文献3に記載の偏光板(実施例18)は上記相違点1(3)(補強膜の厚み)を満足していないことからも、如何に当業者であっても、上記相違点2(3)に係る『フレキシブル偏光膜』を満足することを容易に想到することはできないものと思料します。」と主張する。

イ しかしながら、引用発明3Aの「第1偏光板保護層を構成する塗工層18の膜厚」を、「薄型化できる」とともに、「硬度、脆性」の観点から好ましいとされる(下限の)1μm、あるいは5μmとすることは、引用文献3が示唆する範囲内のことであること、また、このような設計変更を施してなるものは、「フレキシブル偏光膜」であるといえることは、前記(5)で述べたとおりである。
また、上記設計変更を施してなる引用発明3A(偏光板)の高い柔軟性は、当業者が期待することであることも、前記(6)で述べたとおりである。
そうすると、請求人の審判請求書の主張を採用することはできない。

(8) 引用発明3Bについて
引用発明3Aに替えて、引用発明3Bに基づいて検討しても、同様である。
ア 相違点
「厚さが10μm以下」の「偏光子」に関する技術常識を踏まえた上で、本件補正後発明と引用発明3Bを対比すると、両者の実質的な相違点は、以下のとおりである。
(相違点1)
本件補正後発明は、「前記ポリビニルアルコール系偏光子に密着した補強膜を有し、かつ、前記補強膜の厚みは7μm以下である」「フレキシブル偏光膜」であるのに対して、引用発明3Bは、これらの点が明らかでない点。

イ 判断
(ア) 引用発明3Bの「第1偏光板保護層」及び「第2偏光板保護層」の厚みに関し、引用文献3の【0021】及び【0022】には、それぞれ、「本発明に用いられる第1偏光板保護層の厚さは、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、60μm以下が好ましく、41μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。下限については特に限定はないが、硬度、脆性等の観点から通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。」、及び、「本発明に用いられる第2偏光板保護層の厚さは、液晶表示装置を薄型化できるという理由から、25μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10μm以下である。下限については特に限定はないが、硬度、脆性等の観点から通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。」との記載がある。
また、引用発明3Bの「第1偏光板保護層」及び「第2偏光板保護層」の材料に関し、引用文献3の【0033】には、「本発明に用いられる第1偏光板保護層および第2偏光板保護層を構成する材料について特に制限はない。」、【0178】には、「アクリル系ポリマー層としては、薄膜化の観点からは、塗布などにより形成された薄層などを用いてもよく、該薄層は自己支持性を必ずしも有さなくても良い。」との記載がある。

(イ) そうすると、薄型化及び硬度、脆性の観点から、「第1偏光板保護層」及び「第2偏光板保護層」の材料(例えば、アクリル系ポリマー)を選択し、塗布により形成されたものとすること、また、厚み1μm、あるいは5μmとして、引用発明3Bを具体化することは、引用文献3が示唆する範囲のことである。
また、このような設計変更を施してなるもの(「厚さが10μm以下」の「偏光子」の両面に、膜厚1μm、あるいは5μmの偏光板保護層を形成した構成))は、「フレキシブル偏光膜」であるといえる。あるいは、折り畳み可能なディスプレイに関心を寄せる当業者であれば、引用発明3Bの「第1偏光板保護層」及び「第2偏光板保護層」の材料の選択にあたり、脆性あるいは柔軟性に優れる材料を選択することができる。
発明の効果及び審判請求書に関しては、前記(6)及び(7)で述べたとおりである。

(9) 小括
本件補正後発明は、引用文献3に記載された発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、理由2(進歩性)本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献2:特開2014-10311号公報
引用文献3:特開2014-206725号公報

3 引用文献及び引用発明
(1) 引用文献2
引用文献2の記載、引用発明2A及び引用発明2Bは、前記「第2」[理由]2(1)、(2)ア及び(2)イに記載したとおりである。

(2) 引用文献3
引用文献3の記載、引用発明3A及び引用発明3Bは、前記「第2」[理由]3(1)、(2)ア及び(2)イに記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、同1(3)で述べた限定事項を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べたとおり、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。あるいは、本件補正後発明は、前記「第2」[理由]3(3)?(9)で述べたとおり、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べた理由と同様な理由により、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。あるいは、本願発明は、前記「第2」[理由]3(3)?(9)で述べた理由と同様な理由により、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-28 
結審通知日 2021-01-29 
審決日 2021-02-18 
出願番号 特願2018-508061(P2018-508061)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 奈津子後藤 慎平  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 福村 拓
河原 正
発明の名称 フレキシブル偏光膜、その製造方法および画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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