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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1373095
審判番号 不服2020-4802  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-08 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2017-211637「偏光板および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018- 18106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2017-211637号(以下、「本件出願」という。)は、2015年(平成27年)6月24日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月30日及び同年9月26日 韓国)とする特許出願の一部を、平成29年11月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年11月 2日提出:手続補正書
平成30年 8月30日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月22日提出:意見書
令和 元年 4月10日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月17日提出:意見書
令和 元年 7月17日提出:手続補正書
令和 元年12月20日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 4月 8日提出:審判請求書
(当合議体注:優先権主張については、以下「第2」1で述べるとおりである。)

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和元年7月17日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである。
「 ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子、および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板であって、
前記ポリビニルアルコール系偏光子は少なくとも1つの偏光解消領域を有し、
前記偏光解消領域は400nm?800nm波長帯域で90%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、
前記偏光解消領域のサッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下であり、
前記偏光解消領域の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である、偏光板。」

4 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、本件出願の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、本件出願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2014-164085号公報
(本件出願の優先権主張について)
本願発明の「前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下であ」るとの事項については、優先権主張の基礎となる最先の先の出願(優先権主張番号 10-2014-0080490)の明細書等には記載されていない。したがって、本願発明について、最先の先の出願に基づく優先権主張の効果は認められない。

第2 合議体の判断
1 本件出願の優先権の主張について
本願発明の「前記偏光解消領域のサッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下であり」との発明特定事項、及び本件出願の明細書に記載された、本願発明に対応する実施例1及び図1?4については、優先権主張の基礎としている2014年6月30日にした出願(優先権主張番号 10-2014-0080490)の明細書等には記載されていない。
したがって、本願発明について、上記出願に基づく優先権主張の効果については、認められない。

2 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2014-164085号公報)は、2014年9月26日(以下、「本願優先日」という。)前に頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター(PC)等の画像表示装置には、通常、カメラが搭載されている。このような画像表示装置のカメラ性能の向上を目的として、種々の検討がなされている・・・略・・・。しかし、スマートフォン、タッチパネル式の情報処理装置の急速な普及により、カメラ性能のさらなる向上が望まれている。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、カメラ性能に優れた画像表示装置を実現し得る偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、画像表示装置に搭載される偏光子に着目し、偏光子に脱色部を形成し、当該脱色部の特性を最適化することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の偏光子は、二色性物質を含む樹脂フィルムから構成され、部分的に脱色された脱色部を有する。脱色部の波長350nmにおける吸光度は2.5以下である。
1つの実施形態においては、上記脱色部は、100pm?1000nmの波長の光を含むレーザー光を照射して形成される。
1つの実施形態においては、上記脱色部は、搭載される画像表示装置のカメラホール部に対応する。
1つの実施形態においては、上記二色性物質はヨウ素である。
1つの実施形態においては、上記偏光子は厚みが30μm以下である。
本発明の別の局面によれば、偏光子の製造方法が提供される。この偏光子の製造方法は、二色性物質を含む樹脂フィルムにレーザー光を照射して脱色部を形成する工程を有する。
1つの実施形態においては、上記レーザー光は、100pm?1000nmの波長の光を含む。
1つの実施形態においては、上記レーザーは固体レーザーである。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二色性物質を含む樹脂フィルムに脱色部を形成し、当該脱色部の紫外域における吸光度を所望の範囲に制御することにより、カメラホール部の透過性を確保するのみならず、撮影時の明るさおよび色味を最適化し、かつ、像の歪みを防止して、得られる画像表示装置のカメラ性能の向上に寄与することができる。このように、映像やモニタ等の受信型電子デバイス(例えば、撮影光学系を有するカメラ装置)だけでなく、本発明によれば、LEDライトや赤外線センサー等の発信型電子デバイスおよび肉眼に対しての透過性および光の直進性を確保する画像表示装置を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1つの実施形態による偏光子の平面図である。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.偏光子
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光子の平面図である。偏光子1は、樹脂フィルムから構成され、部分的に脱色された脱色部2を有する。このような構成によれば、樹脂フィルムに、機械的に・・・略・・・穴を形成する場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題を回避することができる。
【0011】
脱色部2の波長350nmにおける吸光度は2.5以下であり、好ましくは2.3以下であり、より好ましくは2.1以下である。吸光度の下限は、例えば1.2である。脱色部がこのような吸光度を有することにより、脱色部に所望の透明性を付与するのみならず、画像表示装置のカメラホール部として脱色部を用いる場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。このような吸光度は、脱色部において樹脂フィルムを構成する樹脂(例えば、ポリビニルアルコール系樹脂)とヨウ素との錯体が適切な割合で崩壊し、さらに、ヨウ素錯体も適切な割合で崩壊することにより実現され得ると推定される。
【0012】
上記樹脂フィルムは、二色性物質を含む。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。ヨウ素は、後述する所定のレーザー照射により、樹脂フィルムを構成する樹脂(例えば、ポリビニルアルコール系樹脂)との錯体が適切な割合で崩壊し、その結果、カメラホールとして使用するに適切な特性を有する脱色部を形成することができる。
【0013】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)が用いられる。上記のとおり、PVA系樹脂とヨウ素との錯体は、所定のレーザー照射により適切な割合で崩壊し、その結果、カメラホールとして使用するに適切な特性を有する脱色部を形成することができる。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
・・・略・・・
【0015】
偏光子(脱色部を除く)は、好ましくは、波長380nm?780nmの範囲で吸収二色性を示す。偏光子(脱色部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは40%以上、より好ましくは41%以上、さらに好ましくは42%以上、特に好ましくは43%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子(脱色部を除く)の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0016】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、代表的には1μm?80μm程度であり、好ましくは30μm以下である。厚みが薄いほど、脱色部が良好に形成され得る。
・・・略・・・
【0017】
図示例では、小円形の脱色部2が樹脂フィルムの上端部中央部に形成されているが、脱色部の配置、形状、サイズ等は、適宜、設計され得る。好ましくは、搭載される画像表示装置のカメラホール部の位置、形状、サイズ等に応じて設計される。
・・・略・・・
【0018】
上記脱色部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは46%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、脱色部としての所望の透明性を確保することができる。その結果、画像表示装置のカメラホール部として脱色部を使用した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0019】
上記脱色部は、複屈折R_(PVA)が好ましくは0.035以下であり、より好ましくは0.032以下であり、さらに好ましくは0.030以下である。脱色部の複屈折R_(PVA)の下限は、例えば0.010である。脱色部の複屈折R_(PVA)がこのような範囲であれば、脱色部に所望の透明性を付与するのみならず、画像表示装置のカメラホール部として脱色部を用いる場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。この効果は、上記の紫外域における吸光度による効果と相乗的に発揮され得る。このような複屈折は、上記のとおり、脱色部においてPVA系樹脂とヨウ素との錯体が適切な割合で崩壊することにより実現され得ると推定される。なお、複屈折R_(PVA)は式:R_(PVA)=nx-nyで求められる。ここで、nxはフィルム面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率である。
【0020】
本発明の偏光子は、任意の適切な形態で使用され得る。代表的には、偏光子は、少なくともその片側に保護フィルムを積層させて(偏光フィルムとして)使用される。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。
【0021】
保護フィルムの偏光子を積層させない面には、表面処理層として、ハードコート層や反射防止処理・・・略・・・を目的とした処理が施されていてもよい。・・・略・・・ハードコート処理は、偏光フィルム表面の傷付き防止などを目的に施されるものである。ハードコート層は、例えば、アクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を表面に付加する方式などにて形成することができる。ハードコート層としては、鉛筆硬度が2H以上であることが好ましい。反射防止処理は、偏光フィルム表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた、例えば、特開2005-248173号公報に開示されるような光の干渉作用による反射光の打ち消し効果を利用して反射を防止する薄層タイプや、・・・略・・・により達成することができる。
・・・略・・・
【0022】
保護フィルムの厚みは、好ましくは20μm?100μmである。保護フィルムは、代表的には、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤で形成される。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。
【0023】
B.偏光子の製造方法
上記偏光子は、好ましくは、二色性物質を含む樹脂フィルムに脱色処理を施して上記脱色部を形成することにより製造される。
【0024】
上記二色性物質を含む樹脂フィルムは、好ましくは、上記樹脂フィルムに染色等の処理を施すことにより製造される。なお、樹脂フィルムは、樹脂基材上に形成された樹脂層(PVA系樹脂層)であってもよい。このような形態によれば、厚みの薄い(例えば、10μm以下)偏光子を得ることができる。
【0025】
B-1.染色
上記染色は、好ましくは、樹脂フィルムにヨウ素を吸着させることにより行う。
・・・略・・・
【0026】
上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。
・・・略・・・
【0028】
B-2.その他の処理
樹脂フィルムは、染色以外に、偏光子とするための処理が、適宜施され得る。偏光子とするための処理としては、例えば、延伸処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が挙げられる。
・・・略・・・
【0029】
上記延伸処理の延伸方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、自由端延伸でもよいし、固定端延伸でもよい。
【0030】
延伸方向は、適宜、設定され得る。1つの実施形態においては、長尺状の樹脂フィルムの長手方向に延伸する。
・・・略・・・
【0032】
延伸倍率は、代表的には3倍?7倍である。
・・・略・・・
【0033】
上述のように、樹脂フィルムが、樹脂基材上に形成された樹脂層(PVA系樹脂層)である場合、乾式延伸と湿式延伸とを組み合わせることが好ましい。より具体的には、樹脂基材と樹脂層(樹脂フィルム)との積層体を乾式延伸し、さらに、ホウ酸水溶液中で湿式延伸することが好ましい。
・・・略・・・
【0035】
B-3.脱色
上記脱色部は、好ましくは、上記二色性物質を含む樹脂フィルムにレーザー光を照射することにより形成される。レーザー光照射によれば、所望の位置に所望の形状を有する脱色部を良好に形成し得る。より詳細には、近年、デザイン上の要請から画像表示装置の画像非表示部をできるだけ小さくすることが強く求められているところ、脱色部をカメラホールとして使用する場合には、必然的に偏光子の最端部(例えば、最上端中央部)に脱色部を形成しなければならない。この場合、カメラホールとして脱色部の代わりに機械的に穴を形成しようとすると、偏光フィルムの端部を切り欠いてしまう場合がある。結果として、機械的強度の観点からも商品価値の観点からも偏光フィルムとして使用不可能となってしまう場合がある。レーザー光照射によれば、そのような不具合を防止することができる。また、上述のように、樹脂フィルムに保護フィルムが積層された状態であっても、脱色部を形成し得る。さらに、量産性にも優れ得る。
【0036】
上記レーザー光は、好ましくは、少なくとも1500nm以下の波長の光を含む。このような波長を含むレーザー光によれば、脱色部を形成し得る。レーザー光は、より好ましくは100pm?1000nmの波長の光を含み、さらに好ましくは400nm?900nmの波長の光を含み、特に好ましくは420nm?680nmの波長の光を含む。1つの実施形態においては、レーザー光は、上記のような範囲にピーク波長を有する。このような波長を含むレーザー光によれば、面均一性を達成しながら、脱色部を形成することができる。具体的には、偏光子周辺光学部材(例えば、上記保護フィルム)にダメージ(例えば、熱変形)を与えることなく、脱色部を形成することができる。より詳細には、上記のような波長を有するレーザー光であれば、偏光子とその周辺光学部材との吸光度の差が大きくなる。したがって、周辺光学部材が光を大量に吸収することなく偏光子が大量の光を吸収し、周辺光学部材へのダメージを防止することができる。また、樹脂フィルム自体にダメージを与えることなく、良好に脱色部を形成することができる。その結果、得られる画像表示装置(画像表示パネル)の平面性を確保し、良好なモジュール設計を達成することができる。さらに、上記波長を含むレーザー光によれば、上記脱色部の透過率を良好に達成し得る。加えて、このような波長を含むレーザー光によれば、PVA系樹脂とヨウ素との錯体およびヨウ素錯体のいずれをも適切な割合で崩壊させることができるので、結果として、カメラホールとして使用するに適切な特性を有する脱色部を形成することができる。
【0037】
上記レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、YLFレーザー、YVO_(4)レーザー、チタンサファイアレーザー等の固体レーザー、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザーを含むガスレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、色素レーザーが挙げられる。好ましくは、固体レーザーが用いられる。
【0038】
上記レーザーとしては、好ましくは、短パルスレーザー(1ナノ秒以下のパルス幅を有する光を照射するレーザー、例えば、ピコ秒レーザーまたはフェムト秒レーザー等)が用いられる。樹脂フィルムへの熱ダメージを抑制する目的では、500ピコ秒以下(例えば、10ピコ秒?50ピコ秒)のパルス幅が特に好ましい。熱ダメージを抑制することにより、樹脂フィルムを構成する樹脂(例えば、PVA系樹脂)の溶融を良好に抑制することができる。したがって、ムラがなく、非常に優れた均一性を有する脱色部が得られ、結果として、カメラの像の歪みが防止され得る。1つの実施形態においては、波長および/またはパルス幅の異なるレーザー光の照射を組み合わせてもよい。照射するレーザー光の種類および照射順序は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、ピコ秒レーザーを照射した後、ナノ秒レーザーを照射することにより、ピコ秒レーザーを単独で照射する場合に比べて色相および透明性のいずれもが改善され得る。この場合、ナノ秒レーザーは、ピコ秒レーザーよりも短波長(例えば、400nm?460nm)であることが好ましい。
【0039】
レーザー光の照射条件は、任意の適切な条件に設定され得る。例えば、固体レーザー(YVO_(4)レーザー)を用いる場合、パルスエネルギーは、好ましくは10μJ?150μJ、より好ましくは25μJ?71μJである。スキャン速度は、好ましくは10mm/秒?10000mm/秒であり、より好ましくは100mm/秒?1000mm/秒である。繰返し周波数は、設定したスキャン速度およびパルスエネルギーに応じて、最適な脱色状態を実現し得るよう適切に設定され得る。繰返し周波数は、例えば100Hz?12480Hzである。スキャンピッチは、好ましくは10μm?50μmである。レーザー光の照射位置におけるビーム形状は、目的や脱色部の所望の形状に応じて適切に設定され得る。当該ビーム形状は、例えば、円形であってもよく、ライン状であってもよい。ビーム形状を所定の形状とする手段としては、任意の適切な手段が採用され得る。例えば、所定の開口部を有するマスクを介してレーザー照射してもよく、回折光学素子等を用いてビーム整形してもよい。例えばビーム形状が円形である場合には、焦点径(スポット径)は、好ましくは50μm?60μmである。上記のような条件によれば、偏光フィルム周辺部材や樹脂フィルム自体にダメージを与えることなく、良好に脱色部を形成することができる。また、上記複屈折R_(PVA)を良好に達成し得る。さらに、パルスレーザーの投入エネルギーは、好ましくは20000μJ/mm^(2)?100000μJ/mm^(2)であり、より好ましくは25000μJ/mm^(2)?75000μJ/mm^(2)である。投入エネルギーが大きすぎると、偏光子の貼り合わせに使用される接着剤または粘着剤が焦げる場合がある。投入エネルギーが小さすぎると、脱色部の色相が黄色くなってしまい、透明性が不十分となる場合がある。なお、投入エネルギーE(μJ/mm^(2))は下記の式から求められる。
E=(e×M)/(V×p)
e:パルスエネルギー(J)
M:繰り返し周波数(Hz)
V:スキャン速度(mm/秒)
p:スキャンピッチ(mm)
【0040】
レーザー光の照射形態(走査様式)は、目的に応じて適切に設定され得る。レーザー光は、例えば、直線状に走査されてもよく、S字状に走査されてもよく、渦巻き状に走査されてもよく、これらを組み合わせてもよい。1つの実施形態においては、レーザー光の照射は、走査方向を交差させて行われ得る。このようにしてレーザー照射を行うことにより、脱色部のムラを低減し、均一性を高めることができる。
【0041】
好ましくは、上記レーザー光は、上記樹脂フィルム(偏光子)の吸収軸と略同軸の偏光を含む。このようなレーザー光によれば、偏光子とその周辺光学部材との吸光度の差をより増大し得、より良好に脱色部を形成することができる。
【0042】
上記照射に際し、例えば、ガルバノミラーを駆動させてレーザーを走査・位置決めしてもよい。また、脱色部の面均一性を得ること等を目的として、ガウシアン分布を主として持つレーザー光強度を均一化するホモジナイザー(DOE:Diffractive Optical Element)を用いてもよい。このような構成を採用することにより、より均一性に優れた脱色部を形成することができる。
【0043】
なお、X線を照射することによっても、面均一性を達成しながら上記脱色部が良好に形成され得る。これ以外にも、例えば、波長100pm?1500nmの光を発する光源(例えば、Xeランプ)、バーコード印字用の加熱板等の加熱手段等によっても脱色部は形成され得る。
【0044】
C.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記偏光子を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。具体的には、液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの片側もしくは両側に配置された上記偏光子とを含む液晶パネルを備える。有機ELデバイスは、視認側に上記偏光子が配置された有機ELパネルを備える。偏光子は、その脱色部が搭載される画像表示装置のカメラホール部に対応するように配置される。
【0045】
D.画像表示装置の製造方法
1つの実施形態においては、上記画像表示装置は、上記二色性物質を含む樹脂フィルムが表面側となるように積層された画像表示パネル(例えば、液晶パネル、有機ELパネル)に、レーザー光を照射して(表面側から)上記脱色部を形成することにより製造される。このような方法によれば、脱色部の位置決めを容易にすることができる。」

ウ 「【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、透過率の測定方法は以下の通りである。
[透過率(Ts)]
顕微分光システム(株式会社ラムダビジョン、LVmicro)を用いて測定した。なお、Tsは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
[吸光度]
島津製作所社製、UV3150を用いて測定した。
【0047】
[実施例1]
固体レーザー(波長:532nm)を用いて、パルス幅15ピコ秒、パルスエネルギー20μJ、スキャン速度100mm/sec、繰返し周波数6240Hz、スキャンピッチ20μm、投入エネルギー62400μJ/mm^(2)、スポット径55μmの照射条件にて、総厚166μmの糊付き偏光フィルム(粘着剤層(厚み20μm)/第2の保護フィルム(厚み77μm)/偏光子(厚み22μm)/第1の保護フィルム(厚み47μm))に、視認側(第1の保護フィルム側)から、レーザー光を照射した。こうして、偏光フィルム(偏光子)に、脱色部を形成した。なお、第1の保護フィルムはTACフィルムに反射防止処理が施されたものであり、第2の保護フィルムは偏光子側から順に負の二軸性フィルム(厚み35μm)/粘着剤層(厚み12μm)/正の二軸性フィルム(厚み30μm)を含む積層構造を有する。
【0048】
レーザー光を照射したエリアのみを脱色することができた。未照射部分の波長350nmにおける吸光度は3.08であり、照射部分の波長350nmにおける吸光度は2.17であった。また、未照射部分の透過率は44.0%であり、照射部分の透過率は66.2%であった。
また、照射エリアの表面形状をWYKO(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)で確認したところ、目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れていた。さらに、偏光フィルムの内部を目視で観察したところ、クラックのような破断は確認されなかった。
・・・略・・・
【0051】
[実施例3]
実施例1と同様の偏光フィルムに実施例1と同様の条件でレーザー光を照射した後、固体レーザー(波長:447nm)を用いて、パルス幅11ナノ秒、パルスエネルギー30μJ、スキャン速度100mm/sec、繰返し周波数6000Hz、スキャンピッチ20μm、投入エネルギー90000μJ/mm^(2)、スポット径20μmの照射条件にて、レーザー光を追加照射した。こうして、偏光フィルム(偏光子)に、脱色部を形成した。
【0052】
レーザー光を照射したエリアのみを脱色することができた。未照射部分の波長350nmにおける吸光度は3.11であり、照射部分の波長350nmにおける吸光度は1.51であった。また、未照射部分の透過率は43.7%であり、照射部分の透過率は89.1%であった。
また、照射エリアの表面形状をWYKO(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)で確認したところ、目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れていた。さらに、偏光フィルムの内部を目視で観察したところ、クラックのような破断は確認されなかった。
・・・略・・・
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の偏光子は、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
1 偏光子
2 脱色部」

エ 「【図1】



(2) 引用発明
ア 引用文献1の【0051】及び【0052】には、実施例3の「偏光フィルム」が記載されている。当該記載によれば、実施例3の「偏光フィルム」は、「実施例1と同様の偏光フィルムに実施例1と同様の条件でレーザー光を照射した後」、【0051】に記載された「照射条件にて、レーザー光を追加照射し」て、「偏光子」に「脱色部を形成した」「偏光フィルム」である。
そして、実施例3において「実施例1と同様の偏光フィルム」及び「実施例1と同様の条件でレーザー光を照射した」とされる、実施例1の「偏光フィルム」及び実施例1の「レーザー光」の「照射」「条件」については、引用文献1の【0047】に記載されている。

イ 引用文献1の【0046】には、実施例3の「偏光フィルム」における「透過率」、「吸光度」の測定方法がそれぞれ記載されている。

ウ 上記(1)ア?エと上記ア、イより、引用文献1には、実施例3の「偏光フィルム」の発明として、次の発明が記載されていると認められる。

「総厚166μmの糊付き偏光フィルム(粘着剤層(厚み20μm)/第2の保護フィルム(厚み77μm)/偏光子(厚み22μm)/第1の保護フィルム(厚み47μm))、ここで、第1の保護フィルムはTACフィルムに反射防止処理が施されたものであり、第2の保護フィルムは偏光子側から順に負の二軸性フィルム(厚み35μm)/粘着剤層(厚み12μm)/正の二軸性フィルム(厚み30μm)を含む積層構造を有する、に、
視認側(第1の保護フィルム側)から、
固体レーザー(波長:532nm)を用いて、パルス幅15ピコ秒、パルスエネルギー20μJ、スキャン速度100mm/sec、繰返し周波数6240Hz、スキャンピッチ20μm、投入エネルギー62400μJ/mm^(2)、スポット径55μmの照射条件にて、レーザー光を照射した後、
固体レーザー(波長:447nm)を用いて、パルス幅11ナノ秒、パルスエネルギー30μJ、スキャン速度100mm/sec、繰返し周波数6000Hz、スキャンピッチ20μm、投入エネルギー90000μJ/mm^(2)、スポット径20μmの照射条件にて、レーザー光を追加照射して、偏光子に脱色部を形成した偏光フィルムであって、
レーザー光を照射したエリアのみを脱色することができ、未照射部分の波長350nmにおける吸光度は3.11であり、照射部分の波長350nmにおける吸光度は1.51であり、未照射部分の透過率は43.7%であり、照射部分の透過率は89.1%であり、
照射エリアの表面形状をWYKO(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)で確認したところ、目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れる、
偏光子に脱色部を形成した偏光フィルム。
ここで、吸光度及び透過率は、以下の測定方法による。
[透過率(Ts)]
顕微分光システム(株式会社ラムダビジョン、LVmicro)を用いて測定した。透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
[吸光度]
島津製作所社製、UV3150を用いて測定した。」

3 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると以下のとおりとなる。
ア ポリビニルアルコール系偏光子
引用発明の「偏光フィルム」は、「固体レーザー(波長:532nm)を用いて」「レーザー光を照射した後」、「固体レーザー(波長:447nm)を用いて」「レーザー光を追加照射して、偏光子に脱色部を形成した」ものである。
上記の構成からみて、引用発明の「偏光子」が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素による染色処理を施して形成されたものであることは、明らかである(当合議体注:脱色の機序に関する、引用文献1の【0011】、【0013】、【0019】、【0025】、【0036】等の記載からも確認できることである。)。
そうしてみると、引用発明の「偏光子」は、本願発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」に相当する。また、引用発明の「偏光子」は、本願発明の「ポリビニル系アルコール系偏子」の、「ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着された」との事項を具備するといえる。

イ 保護フィルム、偏光板
引用発明の「偏光子に脱色部を形成した偏光フィルム」は、「粘着剤層(厚み20μm)/第2の保護フィルム(厚み77μm)/偏光子(厚み22μm)/第1の保護フィルム(厚み47μm)」からなる。
上記の構成からみて、引用発明の「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」は、いずれも、「前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた」とされる、本願発明の「保護フィルム」に相当する。また、引用発明の「偏光子に脱色部を形成した偏光フィルム」は、本願発明の「偏光板」に相当するとともに、「ポリビニルアルコール系偏光子、および」「保護フィルムを含む」との要件を具備する。

オ 偏光解消領域
引用発明の「偏光子に脱色部を形成した偏光フィルム」は、「レーザー光を照射したエリアのみを脱色することができ」たものであり、「未照射部分の透過率は43.7%であり、照射部分の透過率は89.1%であ」る。
上記の構成からみて、引用発明の「脱色部」は、本願発明の「偏光解消領域」に相当する。また、引用発明の「偏光子」は、本願発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」の、「少なくとも1つの偏光解消領域を有し」との要件を具備している。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子、および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板であって、
前記ポリビニルアルコール系偏光子は少なくとも1つの偏光解消領域を有する、
偏光板。」

イ 相違点
本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
「前記偏光解消領域」が、本願発明は、「400nm?800nm波長帯域で90%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し」ているのに対して、引用発明は、「顕微分光システム(株式会社ラムダビジョン、LVmicro)を用いて測定した。透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。」とされる「照射部分の透過率は89.1%であり」、その余は不明である点。

(相違点2)
「前記偏光解消領域」が、本願発明は、「サッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下であ」るのに対して、引用発明は、そのようなものであるかどうか不明な点。
また、「前記偏光解消領域」が、本願発明は、「算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である」のに対して、引用発明は、そのようなものであるかどうか不明な点。

(3) 判断
相違点について判断する。
ア 相違点1について
「偏光子」の「脱色部」の「透過率」に関して、引用文献1の【0018】には、「特に好ましくは90%以上である」と記載されている。
ここで、引用文献1の【0036】には、「レーザー光は」、「特に好ましくは420nm?680nmの波長の光を含む」こと、「このような波長を含むレーザー光によれば、PVA系樹脂とヨウ素との錯体およびヨウ素錯体のいずれをも適切な割合で崩壊させることができるので、結果として、カメラホールとして使用するに適切な特性を有する脱色部を形成することができる。」と、脱色の原理が記載されている。また、【0037】?【0042】には、レーザーの種類、パルス幅、波長、パルスエネルギー、繰り返し周波数、ビーム形状、投入エネルギー、走査様式、偏光方向等の条件が、「ピコ秒レーザーを照射した後、ナノ秒レーザーを照射することにより、ピコ秒レーザーを単独で照射する場合に比べて色相および透明性のいずれもが改善され得る。」(【0038】)といった知見とともに開示され、当業者ならばこれら事項を活用することができる。加えて、例えば、【0016】に「偏光子の厚みは…好ましくは30μm以下である。厚みが薄いほど、脱色部が良好に形成され得る。」と記載されているとおり、当業者ならば、偏光膜の製造条件を変えることもできる(例えば、引用発明の「偏光子(厚み22μm)」を、厚みが20μmとなるように延伸倍率を高め、ただし、染色(吸光度)は同程度とすると、ランベルト・ベールの法則に基づいて計算される透過率は90%を超える。)。
また、「偏光子」の「脱色部」の「偏光度」(【0015】)は、その定義から、「脱色部」の「透過率」が高いと、反対に低いものとなる。
本願発明の「単体透過度」と引用発明の「透過率」は、測定方法の詳細において相違すると考えられるが、上記引用文献1の記載を考慮すると、当業者が、引用発明の「偏光子」の「脱色部」の「透過率」及び「偏光度」を、相違点1に係る本願発明の構成を具備したものとすることは、「カメラの撮影性能に対する悪影響を防止する」ために「脱色部としての所望の透明性を確保する」(【0018】)ことを試みた当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用発明の「偏光子」の「脱色部」(照射エリア)は、「表面形状をWYKO(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)で確認したところ、目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れる」と評価されたものである。そして、「算術平均粗さ(Ra)」の定義に鑑みると、引用発明の「偏光子」の「脱色部」は、「算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である」という要件を満たすものと考えられる。
ただし、引用発明の「偏光子に脱色部を形成した偏光フィルム」は、「視認側(第1の保護フィルム側)から」「レーザー光を照射した」ものであるから、「目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れる」としても、「脱色部」全体としてみれば、熱によりある程度、湾曲したものと理解される。したがって、「偏光板を平面に置いた時、保護フィルム面において脱色領域と脱色が行われていない領域の高さ差を意味する」(【0144】)とされる「サッギング(sagging)深さ」については0.1μmを超えると考えるのが自然である一方、合計124μmの厚さとなる「保護フィルム」で支持されたものが、10μmまで湾曲するとは考えがたく、この程度まで湾曲したものを当業者が製造するとも考えがたい(「像の歪みを防止」(【0007】)できなくなる。)。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明も具備する構成であるか、少なくとも、当業者が容易に得ることができた構成である。

ウ 本願発明の効果について
(ア) 本願発明(「偏光板」)の効果として、本件出願の明細書の【0016】?【0018】には、「偏光解消領域の最大サッギング深さを最小化し、偏光解消領域にカメラモジュールを取り付ける場合に鮮明な画質を実現することができる」、「偏光解消領域での屈曲発生現象が小さいので偏光板の外観を害する現象を最小化することができる」、「偏光解消領域の歪み現象を最小化して優れた性能を発揮することができる」と記載されている。
また、本件出願の明細書の【0148】には、「前記偏光解消領域の単体透過度が高く偏光度が低いほど、視認性が向上し、前記領域に位置するカメラレンズの性能および画質をより向上させることができる」と記載され、【0153】には、「偏光解消領域の粗さが前記範囲を満たす場合、ヘイズが十分に低く、鮮明な視認性を有することができる」と記載されている。

(イ) しかしながら、引用発明は、レーザー光の照射により脱色を行うものであり、また、その積層構造からみて、剛性が高く、偏光子の変形を防ぐ(面均一性に優れる)ものであるから、最大サッギング深さを最小にできる。
また、鮮明な画像の実現、偏光解消領域での屈曲発生現象が小さい、偏光板の外観を害する現象を最小化する、偏光解消領域の歪み現象を最小化する、との効果も、「目立った段差や凹凸はなく面均一性に優れ」、「カメラホール部の透過性を確保するのみならず、撮影時の明るさおよび色味を最適化し、かつ、像の歪みを防止して、得られる画像表示装置のカメラ性能の向上に寄与することができる」引用発明が有する効果である。
さらに、視認性の向上、鮮明な視認性についても、引用発明が有する効果であるか、あるいは、上記相違点1に係る透過率・偏光度について設計変更を行った引用発明が奏する効果として当業者が予測可能なものである。

エ 審判請求書の主張について
(ア) 請求人は、審判請求書の「(3)本願発明と引用発明との対比」において、「これに対して、引用文献1には、本願発明1の『前記偏光解消領域のサッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下であり』との特徴について開示されていないところ、拒絶査定においては、当該特徴について「引用文献1のものも、各層の厚み、面均一性からみて本願偏光解消領域のサッギング(sagging)深さについて満たす蓋然性が高いか、下限については当業者が適宜決め得る設計的事項にすぎず」と認定されています。」、「しかしながら、この認定には承服致しかねます。」、「上記のとおり、本願請求項1に係る発明における0.1μm以上10μm以下の深さに抑制されたサッギングとは、本願明細書の段落[0029]に「本発明者らは、保護フィルム上に離型フィルムを備える場合、偏光子の脱色時に偏光子の収縮力によるサッギング現象を大幅に改善できるということを見出した。具体的に、本発明者らは、保護フィルムの一面に離型フィルムを積層した後に脱色工程を行うことによって、偏光子の膨潤により発生するMD収縮によるサッギング(sagging)現象を最小化できることを見出した。」、段落[0030]に「脱色溶液を接触させる前に保護フィルムを積層させることによってシワの発生を抑制できるが、延伸された偏光子の膨潤によって脱色工程の進行時に偏光子が収縮する力によって保護フィルムと偏光子が保護フィルム側に垂れるサッギング(sagging)が発生する。図1を参照して説明すれば、脱色溶液が偏光子と接触時、延伸された偏光子は収縮をし、それにより、保護フィルムがその収縮に耐えようとする力が発生し、その結果、偏光子と保護フィルムが保護フィルム方向にふっくらとした形態で垂れるサッギング(sagging)が発生する。そこで、本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法のように、脱色剤を接触させる前に保護フィルムの前記偏光子の対向する面の反対面に離型フィルムを積層させ、偏光子の収縮に耐える力を増加させることによってサッギングの発生を抑制することができる。」と記載されているとおりの技術的思想に基づくものです。」、「これに対して、引用文献1に記載の発明では、脱色溶液を用いるのではなくて、レーザー光照射を用いるものでありますので、そもそもサッギングの問題は全く認識されておらず、上記サッギングの問題を解消しようという本願発明の技術的思想に基づく「前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下である」との特徴に当業者が想到することはあり得ません。」、「以上のように、拒絶査定における「引用文献1(請求項1)のものは、脱色部の形成にレーザー光が限定されない」という拒絶査定における認定は、結局のところ、引用文献1に記載の発明においては、サッギングの問題が全く認識されていないということに他ならず、引用文献1に記載の発明において、本願発明1の「前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは0.1μm以上10μm以下である」という特徴が満たされることはあり得ません。」、「以上のように、本願発明1及びこれを引用する本願請求項2から7に係る発明は、引用文献1に全く記載されていない技術的思想に基づく特徴を有するものであって、斯かる特徴に基づいて顕著な効果を奏するものになっておりますので、十分に進歩性を有するものと思料します。」旨主張している。

(イ) しかしながら、脱色溶液を用いないとしても(本願発明でいう「サッギング(sagging)」が発生する原因は異なるとしても)、引用発明の「脱色部」にある程度の湾曲が生じることは、前記イで述べたとおりである。また、「0.1μm以上10μm以下」とされる数値範囲についても、前記イで述べたとおりである。そして、本願発明の効果についても、上記ウで述べたとおり、顕著なものとは認められない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論とおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-10 
結審通知日 2020-11-16 
審決日 2020-11-27 
出願番号 特願2017-211637(P2017-211637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
福村 拓
発明の名称 偏光板および画像表示装置  
代理人 渡部 崇  
代理人 実広 信哉  
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