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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1373118
審判番号 不服2020-4787  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-08 
確定日 2021-05-10 
事件の表示 特願2017-520435「無線通信システムにおける放送データ支援方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060491、平成29年10月19日国内公表、特表2017-531403、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)10月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年10月15日 大韓民国(KR))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 元年 6月13日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 9月24日 意見書,手続補正書の提出
令和 元年11月29日付け 拒絶査定
令和 2年 4月 8日 拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
令和 2年 6月18日 上申書の提出
令和 2年 9月15日 上申書の提出
令和 2年10月29日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年 2月 2日 意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1-2,5-7,10-11,14-16に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用例1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1-18に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用例1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明2,3に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2009-182944号公報
2.Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent, Enhancement of cell reselection for MBMS service continuity[online], 3GPP TSG-RAN WG2#73bis R2-112230, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_73bis/Docs/R2-112230.zip>,
2011年4月15日
3.3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA): User Equipment (UE) procedures in idle mode (Release 9), 3GPP TS 36.304 V9.11.0 (2012-06), インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.304/36304-9b0.zip>, 2012年7月3日,21,22ページ

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次の通りである。

1.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


2.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


●理由1(サポート要件)について
・請求項1-4
請求項1には,「前記セルリセレクション実行の段階は,前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第1ヒステリシス情報と前記オフセット情報に基づいてサービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,前記第2ヒステリシス情報に基づいて前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し」と記載されている。
一方,発明の詳細な説明の【0107】,【0108】には,「【0107】MBMSデータを受信していない場合,端末は,S840段階に進行して前記SIBから確認されたパラメータ,例えば,ヒステリシス情報に基づいてセルリセレクション手続きを実行することができる。【0108】一方,MBMSデータを受信している場合,端末は,S850段階に進行してオフセット情報を確認することができる。前記オフセット情報は端末に予め設定されている特定の値である場合がある。または,本発明の一実施形態によると,基地局が別途のシグナリングまたは物理チャンネルを通じて前記端末に伝達することもできる。」と記載されており,MBMSデータを受信している場合,オフセット情報を確認しており,請求項1の記載と矛盾している。
よって,請求項1に記載の「MBMSデータを受信中でない第1タイプの端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認」することは発明の詳細な説明に記載されておらず,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。
また,請求項1の「MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合・・・前記オフセット情報に基づいてサービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行」する点についても,図8及び発明の詳細な説明の図8に関する記載と矛盾しており,発明の詳細な説明に記載されておらず,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項3も同様な不備がある。
請求項1,3,及び請求項1,3を引用する請求項2,4は,発明の詳細な説明に記載したものでない。(サポート要件)

●理由2(明確性)について
・請求項1-4
請求項1に,「第2ヒステリシス情報は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,前記第1ヒステリシス情報に比べて相対的により大きい値を有する」とあるが,情報とは必ずしも値を示す日本語ではないことから,ヒステリシス情報と値の関係が不明であり,当該文章は日本語として不明確である。
請求項3も同様な不備がある。
請求項1,3及び請求項1,3を引用する請求項2,4は,不明確である。

第4 本願発明について
本願請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は,令和3年2月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
無線通信システムにおける端末のセルリセレクション実行方法において,
基地局から第1ヒステリシス情報及び第2ヒステリシス情報を含むシステム情報ブロックを受信する段階と,
前記システム情報ブロックの受信時に,MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)データを受信中であるかどうかを判断する段階と,
前記システム情報ブロックと前記判断結果に基づいてセルリセレクションを実行する段階と,を含み,
前記セルリセレクション実行の段階は,
前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,前記第1ヒステリシス情報に基づいて,サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記第2ヒステリシス情報による値は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,前記第1ヒステリシス情報による値に比べて相対的により大きい値を有することを特徴とする端末のセルリセレクション実行方法。
【請求項2】
前記システム情報ブロックはSIB(System Information Block)3を含むことを特徴とする請求項1に記載の端末のセルリセレクション実行方法。
【請求項3】
無線通信システムにおけるセルリセレクションを実行する端末において,
基地局と信号を送受信する送受信部と,
基地局から第1ヒステリシス情報及び第2ヒステリシス情報を含むシステム情報ブロックを受信し,
前記システム情報ブロックの受信時に,MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)データを受信中であるかどうかを判断し,
前記システム情報ブロックと前記判断結果に基づいてセルリセレクションを実行するように制御する制御部と,を含み,
前記セルリセレクション実行の段階は,
前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,前記第1ヒステリシス情報に基づいて,サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記第2ヒステリシス情報による値は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,前記第1ヒステリシス情報による値に比べて相対的により大きい値を有することを特徴とする端末。
【請求項4】
前記システム情報ブロックはSIB(System Information Block)3を含むことを特徴とする請求項3に記載の端末。」

第5 引用発明について
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-182944号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「【0032】
実施の形態1.
図10は,本発明に係る移動体通信システムの全体的な構成を示すブロック図である。
図10において,移動端末101は基地局102と制御データ(C-plane),ユーザデータ(U-plane)の送受信を行う。基地局102は,ユニキャストの送受信のみ扱うユニキャストセル102-1,ユニキャストとMBMSサービス(MTCHとMCCH)の送受信を扱う混合セル102-2,MBMSサービスの送受信のみを扱うMBMS専用セル101-3に分類される。ユニキャストの送受信を扱うユニキャストセル102-1とMBMS/ユニキャスト混合セル(混合セル,ミクスドセル)102-2は,MME103とインタフェースS1_MMEにより接続される。更にユニキャストの送受信を扱うユニキャストセル102-1と混合セル102-2は,ユニキャストのユーザデータの送受信のためにS-GW104とインタフェースS1_Uにより接続される。MME103はインタフェースS11によりPDNGW(Packet Data Network Gateway)902と接続される。MCE801は,マルチセル(MC)送信を行うため,MBSFNエリア中の全ての基地局102に対して無線リソースの割り当てを行う。例えば1つあるいは複数のMBMS/ユニキャスト混合セル102-2にて構成されるMBSFNエリア#1と1つあるいは複数のMBMS専用セル101-3にて構成されるMBSFNエリア#2 が存在した場合を考える。MBMS/ユニキャスト混合セル102-2はMBSFNエリア#1中の全ての基地局のための無線リソースを割り当てるMCE801-1とインタフェースM2で接続される。またMBMS専用セル102-3はMBSFNエリア#2中の全ての基地局のための無線リソースを割り当てるMCE801-2とインタフェースM2で接続される。」(第10ページ第45行-第11ページ第15行)

(2)「【0164】
実施の形態6.
実施の形態6で用いる移動体通信システムのシーケンス図を図40に示す。図40において,図38と同一のステップは同一または相当する処理を示すので,説明は省略する。ステップST4001にて,サービングセルは,自セルのシステム情報を傘下の移動端末へ通知する。通知されるシステム情報の具体例としては,メジャメント周期,間欠受信周期,トラッキングエリア情報(TA情報)などがある。メジャメント周期とはネットワーク側が傘下の移動端末に通知する周期であって,この周期にしたがって移動端末は電界強度などの測定を行う。自セルのシステム情報には,サービングセルと周辺セルの測定時に用いる測定報告用パラメータ(measurement reporting parameters)を含むものとする。測定報告用パラメータの具体例としては,非特許文献3に示されている「閾値(threshold)」「オフセット値(offset)」などが考えられる。本実施の形態6では,新たに,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信していない移動端末用(以降,単にMBMSサービス未受信中の移動端末と称する)と,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信している移動端末用(以降,単にMBMSサービス受信中の移動端末と称する)とに上記測定報告用パラメータを分離することを考える。更に,MBMSサービス未受信の移動端末とMBMSサービス受信中の移動端末用にオフセット値を分離することを考える。更に,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とすることを考える。

【0165】
サービングセルから移動端末に対して,自セル情報を通知する際,自セル情報は,ロジカルチャネルである報知制御チャネル(BCCH)にマッピングされ,さらに,トランスポートチャネルである報知チャネル(BCH),物理チャネルである物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされる。また,自セル情報は,ロジカルチャネルである報知制御チャネル(BCCH)にマッピングされ,さらに,トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL-SCH),物理チャネルである物理下り共有チャネル(PDSCH)にマッピングされてもよい。MBMSサービス受信中の移動端末用の「測定報告用パラメータ」は,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信している移動端末が,ハンドオーバを行う場合に発生し得るMBMS受信中断という問題を解決するために,新設されたパラメータである。よって,MBMSサービスを受信している移動端末に有効なパラメータである。よって,他のシステム情報とは分離して,MBMSサービスを受信する移動端末が受信する,MBMSサービスの制御情報に付加しても問題ない。これにより,BCCHの情報量増加を防ぐことが可能となり,移動体通信システム全体の制御遅延を防止するという効果を得ることが出来る。サービングセルから移動端末に対して,MBMSサービスの制御情報を通知する際,MBMSサービスの制御情報は,ロジカルチャネルである報知制御チャネル(BCCH)にマッピングされ,さらに,トランスポートチャネルである報知チャネル(BCH),物理チャネルである物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされる。また,MBMSサービスの制御情報は,ロジカルチャネルである報知制御チャネル(BCCH)にマッピングされ,さらに,トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL-SCH),物理チャネルである物理下り共有チャネル(PDSCH)にマッピングされてもよい。また,MBMSサービスの制御情報は,ロジカルチャネルであるマルチキャスト制御チャネル(MCCH)にマッピングされ,さらにトランスポートチャネルであるマルチキャストチャネル(MCH),物理チャネルである物理マルチキャストチャネル(PMCH)にマッピングされてもよい。ステップST4002にて,移動端末は,サービングセルから自セルのシステム情報を受信する。

【0166】
ステップST4003にて,移動端末は,MBMS受信中であるか否かを判断する。具体的には,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信しているか否かを判断する。受信中であれば,ステップST4004へ移行する。受信中でなければステップST4005へ移行する。ステップST4004にて,移動端末は,測定報告用パラメータにMBMS受信中の移動端末用の測定報告用パラメータをセットする。具体的には,オフセット値にMBMS受信中の移動端末用のオフセット値をセットする。ステップST4005にて,移動端末は,測定報告用パラメータにMBMS未受信中の移動端末用の測定報告用パラメータをセットする。更に具体的には,オフセット値にMBMS未受信中の移動端末用のオフセット値をセットする。

【0167】
本実施の形態6により,MBMSサービスを受信中とMBMSサービスを未受信の移動端末のハンドオーバ処理が起こる周辺セル(新しいサービングセル)の測定結果を変更することが可能となる。更には,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値をMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とすることにより,MBMSサービス受信中の移動端末がハンドオーバ処理を行う周辺セルの測定結果をMBMSサービス未受信中より高くすることが可能となる。これにより,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信している移動端末が,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信していない移動端末と比較して,地理的に同じ場所に位置した場合,ハンドオーバを起こりにくくすることが可能となる。これにより,同じ基地局からユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信することが可能な地理的範囲を広くすることが出来る。これにより,ユニキャスト/ミクスド周波数レイヤにおいて,ユニキャスト/MBMS混合セルからマルチセル送信されているMBMSサービスを受信している移動端末が,ハンドオーバによりMBMSサービス受信の中断の発生を減らすという効果を得ることが出来る。実施の形態5では,隣接セル情報に,新たに隣接セルのMBMSサービスのサービス内容を付加することにより,第二の課題を解決した。しかし,隣接セル毎のMBMSサービスのサービス内容の情報量は多くなることが考えられる。本実施の形態6では,隣接セルのMBMSサービスのサービス内容を付加することなく,第二の課題を解決した。よって,実施の形態5と比較してサービングセルから移動端末へ通知される情報量を少なくしつつ,第二の課題を解決可能となる。よって,実施の形態5と比較して無線リソースの有効活用という効果を得ることが出来る。」(第57ページ第21行-第59ページ第2行)

(3)図40




上記記載及び当業者における技術常識からみて,
a.上記(1)の【0032】の「移動体通信システム」との記載によれば,引用例1の前提としているシステムは,移動体通信システムであるといえる。また,上記(2)の【0167】の「本実施の形態6により,MBMSサービスを受信中とMBMSサービスを未受信の移動端末のハンドオーバ処理が起こる周辺セル(新しいサービングセル)の測定結果を変更することが可能となる。」の記載によれば,本実施の形態6はハンドオーバ処理のためのシーケンスであるから,引用例1の本実施の形態6は,移動体通信システムにおけるハンドオーバ実行方法といえる。そして,上記(3)の図40から移動端末UEの動作が読み取れることから,引用例1の本実施の形態6である図40には,「移動体通信システムにおける移動端末のハンドオーバ実行方法」が記載されているといえる。

b.上記(2)の【0164】の「サービングセルは,自セルのシステム情報を傘下の移動端末へ通知する。」との記載によれば,サービングセルは,基地局のエリアであるから,引用例1には,移動端末が基地局からシステム情報を受信することが記載されている。また,上記(2)の【0164】の「自セルのシステム情報には,サービングセルと周辺セルの測定時に用いる測定報告用パラメータ(measurement reporting parameters)を含むものとする。測定報告用パラメータの具体例としては,非特許文献3に示されている「閾値(threshold)」「オフセット値(offset)」などが考えられる。」との記載によれば,システム情報として,オフセット値が含まれ,さらに,上記(2)の【0164】の「MBMSサービス未受信の移動端末とMBMSサービス受信中の移動端末用にオフセット値を分離することを考える。・・・MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とすることを考える。」との記載によれば,オフセット値として,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値とMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値があり,どちらもシステム情報に含まれるといえる。してみれば,引用例1には,移動端末が,「基地局からMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値とMBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を含むシステム情報を受信する」ことが記載されている。

c.上記(2)の【0165】の「ステップST4002にて,移動端末は,サービングセルから自セルのシステム情報を受信する。」との記載によれば,以下のステップ4003は移動端末が,システム情報の受信時の動作といえる。そして,上記(2)の【0166】の「ステップST4003にて,移動端末は,MBMS受信中であるか否かを判断する。」との記載によれば,引用例1には,移動端末が,「前記システム情報の受信時にMBMSデータを受信中であるかどうかを判断する」ことが記載されている。

d.上記(2)の【0166】の「ステップST4003にて,移動端末は, MBMS受信中であるか否かを判断する。・・・受信中であれば,ステップST4004へ移行する。受信中でなければステップST4005へ移行する。ステップST4004にて,移動端末は,測定報告用パラメータにMBMS受信中の移動端末用の測定報告用パラメータをセットする。具体的には,オフセット値にMBMS受信中の移動端末用のオフセット値をセットする。ステップST4005にて,移動端末は,測定報告用パラメータにMBMS未受信中の移動端末用の測定報告用パラメータをセットする。更に具体的には,オフセット値にMBMS未受信中の移動端末用のオフセット値をセットする。」との記載,及び,上記a.で説示したように,引用例1の本実施の形態6である図40は,ハンドオーバ処理に関するものであり,上記b.で説示したように,オフセット値はシステム情報から得られることから,引用例1には,「システム情報とMBMS受信中であるかどうかの判断結果に基づいて,ハンドオーバ処理を実行し,移動端末がMBMSデータ受信中ではない場合,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行し,移動端末がMBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行する」ことが記載されている。

e.上記(2)の【0167】の「MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値をMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とすることにより,MBMSサービス受信中の移動端末がハンドオーバ処理を行う周辺セルの測定結果をMBMSサービス未受信中より高くすることが可能となる。」との記載によれば,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値は,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とすることが記載されており,また,上記(2)の【0167】の「MBMSサービスを受信している移動端末が,・・・MBMSサービスを受信していない移動端末と比較して,・・・ハンドオーバを起こりにくくすることが可能となる。」との記載によれば,引用例1には,MBMSサービスを受信中の移動端末用のオフセット値は,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とし,ハンドオーバを起こりにくくすることが記載されている。

以上を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「移動体通信システムにおける移動端末のハンドオーバ実行方法において,
基地局からMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値とMBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を含むシステム情報を受信し,
前記システム情報の受信時にMBMSデータを受信中であるかどうかを判断し,
前記システム情報と前記判断結果に基づいてハンドオーバ処理を実行し,
移動端末がMBMSデータを受信中ではない場合,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行し,
移動端末がMBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行し,
MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値は,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とし,ハンドオーバを起こりにくくする移動端末のハンドオーバ実行方法。」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用されたAlcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent, Enhancement of cell reselection for MBMS service continuity[online], 3GPP TSG-RAN WG2#73bis R2-112230, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_73bis/Docs/R2-112230.zip>,
2011年4月15日(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「The detailed cell reselection algorithm base on the original “R” criteria can be an implementation issue. It can consider UE current MBMS reception status and the relationship of neighbouring cell MBSFN area information. For example it can define a threshold and if neighbouring cell R value exceeds this threshold then the MBSFN area factor become the first important rule to cell reselection for those MBMS reception UE.
“R” criteria defines the cell-ranking criterion R_(s) for serving cell and R_(n) for neighbouring cells which are R_(s )= Q_(meas,s )+ Q_(Hyst) and R_(n )= _(meas,n-)Q_(offset). The related parameters are pre-configured in the system information SIB3, SIB4 and SIB5 [3]. The UE shall perform ranking of all cells that fulfilled the cell selection criterion S, deriving Q_(meas,n )and Q_(meas,s )and calculating the R values using averaged RSRP results. Then according to the R values UE reselect the new cell if the new cell is better ranked than the serving cell during a time interval.」(第2ページ第37行-第47行)

(当審訳:
元の「R」基準に基づく詳細なセル再選択アルゴリズムは,実装の問題になる可能性があります。 UEの現在のMBMS受信ステータスと,隣接セルのMBSFNエリア情報の関係を考慮することができます。たとえば,しきい値を定義できます。隣接セルのR値がこのしきい値を超えると,MBSFNエリア係数が,これらのMBMS受信UEのセル再選択の最初の重要なルールになります。
「R」基準は,R_(s) = Q_(meas,s) + Q_(Hyst)およびR_(n) = Q_(meas,n)- Q_(offset)である,サービングセルのセルランキング基準Rsおよび隣接セルのセルランキング基準Rnを定義します。関連するパラメータは,システム情報SIB3,SIB4,SIB5で事前設定されています[3]。 UEは,セル選択基準Sを満たすすべてのセルのランク付けを実行し,Q_(meas,n)およびQ_(meas,s)を導出し,平均化されたRSRP結果を使用してR値を計算します。次に,R値に従って,時間間隔中に新しいセルがサービングセルよりもランクが高い場合,UEは新しいセルを再選択します。)

したがって,上記引用例2には,「サービングセルのセルランキング基準Rsおよび隣接セルのセルランキング基準Rnは,R_(s) = Q_(meas,s) + Q_(Hyst)およびRn = Q_(meas,n) -Q_(offset)で示される。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA): User Equipment (UE) procedures in idle mode (Release 9), 3GPP TS 36.304 V9.11.0 (2012-06), インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.304/36304-9b0.zip>, 2012年7月3日,21,22ページ(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「The cell-ranking Rs for serving cell and Rn for neighbouring cells is defined by
R_(s) = Q_(meas,s) + Q_(Hyst)
R_(n) = Q_(meas,n)- Q_(offset)
」(5.2.4.6)

(当審訳:
サービングセルR_(S )と隣接セルRnのセルランキング基準は,R_(s) = Q_(meas,s) + Q_(Hyst) R_(n) = Q_(meas,n) - Q_(offset)で定義される。)

したがって,上記引用例3には,「サービングセルRsと隣接セルRnのセルランキング基準は,R_(s) = Q_(meas,s) + Q_(Hyst) R_(n) = Q_(meas,n) - Q_(offset)で定義される。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
a.引用発明の「移動体通信システム」は,移動体と基地局が無線で接続されているものであるから,本願発明1の「無線通信システム」に相当する。
b.引用発明の「移動端末」は,端末の一つであるから,本願発明1の「端末」に相当する。
c.引用発明の「ハンドオーバ実行方法」と本願発明1の「セルリセレクション実行方法」は,引用発明が移動端末がセル接続を行われている状態でのセル切替であり,本願発明1のセルリセレクションは,端末がアイドル状態のセル切替であるから,引用発明と本願発明1は,無線通信システムにおける端末のセル切替実行方法の点で,共通する。
d.システム情報は,システム情報ブロックからなることは技術常識であり,引用発明の「MBMSサービス未受信のオフセット値」と本願発明1の「第1ヒステリシス情報」は,共にMBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報といえる。また,引用発明の「MBMSサービス受信のオフセット値」と本願発明1の「第2ヒステリシス情報とオフセット情報」は,共にMBMS受信中のセル切替に関する第2の情報といえるから,引用発明の「基地局からMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値及びMBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を含むシステム情報を受信し」と本願発明1の「基地局から第1ヒステリシス情報及び第2ヒステリシス情報を含むシステム情報ブロックを受信する段階」は,「基地局から,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報及びMBMSサービス受信中のセル切替に関する第2の情報を含むシステム情報ブロックを受信する段階」である点で,共通する。
e.前記d.で説示したとおり,システム情報は,システム情報ブロックからなることから,引用発明の「前記システム情報の受信時にMBMSデータを受信中であるかどうかを判断し」と本願発明1の「前記システム情報ブロックの受信時に,MBMSデータを受信中であるかどうかを判断する段階」は,「前記システム情報ブロックの受信時に,MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)データを受信中であるかどうかを判断する段階」である点で一致する。
f.ハンドオーバは,セルと接続状態におけるセル切替であり,セルリセレクションは,端末がアイドル状態である場合のセル切替であり,共に,セル切替に関するものである。してみれば,引用発明の「前記システム情報と前記判断結果に基づいてハンドオーバを実行する」と本願発明1の「システム情報ブロックと前記判断結果に基づいてセルリセレクションを実行する段階」は,共に,「システム情報ブロックと前記判断結果に基づいて,セル切替を実行する段階」で共通する。
g.前記d.で説示したとおり,引用発明の「MBMSサービス未受信の移動端末用オフセット値」と本願発明1の「第1ヒステリシス情報」は共に,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報であるから,引用発明の「移動端末がMBMSデータを受信中ではない場合,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行し」と本願発明1の「端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中でない第1タイプ端末の場合,第1ヒステリシス情報に基づいて,サービングセルのランキングスコアを測定してセルリセレクションを実行し」は,「端末がMBMSデータを受信中ではない端末の場合,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報に基づいて,前記セル切替を実行」する点で,共通する。
h.前記d.で説示したとおり,引用発明の「MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値」と本願発明1の「第2ヒステリシス情報とオフセット情報」は,共に,MBMS受信中のセル切替に関する第2の情報であり,前記c.で説示したとおり,ハンドオーバとセルリセレクションは,共にセル切替に関するものであるから,引用発明の「移動端末がMBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバ処理を実行」することと,本願発明1の「端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行」することは,「端末がMBMSデータを受信中である端末の場合,MBMS受信中のセル切替に関する第2の情報に基づいて,セル切替を実行」する点で,共通する。
i.引用発明では,ハンドオーバを起こりにくくしているが,これは,ハンドオーバによる頻繁に切り替わりが行われるピンポン現象の防止を行っているといえるから,引用発明の「MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値は,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とし,ハンドオーバを起こりにくくする」ことと本願発明1の「前記第2ヒステリシス情報による値は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,第1ヒステリシス情報による値に比べて相対的により大きい値を有する」こととは,「MBMS受信中のセル切替に関する第2の情報による値は,ピンポン現象を防止するために,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報による値に比べて相対的により大きい値を有する」の点で,共通する。

以上のことから,本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「無線通信システムにおける端末のセル切替の実行方法において,
基地局からMBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報及びMBMSサービス受信中のセル切替に関する第2の情報を含むシステム情報ブロックを受信する段階と,
前記システム情報ブロックの受信時に,MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)データを受信中であるかどうかを判断する段階と,
前記システム情報ブロックと前記判断結果に基づいて,セル切替を実行する段階と,を含み,
前記セル切替実行の段階は,
前記端末が前記MBMSデータを受信中ではない端末の場合,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報に基づいて,前記セル切替を実行し,
前記端末が前記MBMSデータを受信中である端末の場合,MBMS受信中のセル切替に関する第2の情報に基づいて,前記セル切替を実行し,
前記MBMSサービス受信中のセル切替に関する第2の情報による値は,ピンポン現象を防止するために,MBMSサービス未受信のセル切替に関する第1の情報による値に比べて相対的により大きい値を有する端末のセル切替実行方法。」

(相違点)
本願発明1では,「セルリセレクション実行方法において,
基地局から第1ヒステリシス情報及び第2ヒステリシス情報を含むシステム情報ブロックを受信する段階と,
前記セルリセレクション実行の段階は,
前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,前記第1ヒステリシス情報に基づいて,サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し,
前記第2ヒステリシス情報による値は,前記サービングセルのランキングスコアを高くして,前記第1ヒステリシス情報による値に比べて相対的により大きい値を有する」のに対して,
引用発明では,「ハンドオーバ実行方法において,
基地局からMBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値とMBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値を含むシステム情報を受信し,
移動端末がMBMSデータを受信中ではない場合,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値に基づいてハンドオーバを実行し,
移動端末がMBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバを実行し,
MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値は,MBMSサービス未受信の移動端末用のオフセット値より大きい値とする」点。

(2)相違点についての判断
上記相違点があるので,本願発明1は,引用発明であるということはできないので,特許法第29条第1項第3号新規性の拒絶理由はあたらない。

また,本願発明1では、上記相違点に関する発明特定事項の一部である「前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行」するのに対して,引用発明では,「移動端末がMBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット値に基づいて,ハンドオーバを実行」する点について検討する。
まず,引用発明では,「MBMSデータを受信中である場合,MBMSサービス受信中の移動端末用のオフセット情報に基づいて,ハンドオーバを実行する」とあるように,ハンドオーバに関するもので,本願発明1では,端末がアイドル状態でのセルリセレクションに関するものであるから,対象が異なる。また,MBMSデータを受信中である場合に,引用発明では,オフセット情報という1つの情報に基づいて判断しているが,本願発明1では,第2ヒステリシス情報とオフセット情報に基づいて,セルリセレクションとあるように,2つの情報に基づいてセルリセレクションを行っている。そして,引用発明は,1つの情報に基づいてハンドオーバを実行しているが,2つの情報に基づくことは,記載も示唆もされていないので,引用発明において,1つの情報に基づく,ハンドオーバを,2つの情報に基づくセルリセレクションを行うように変更する動機付けがない。
さらに,引用例2や引用例3の技術的事項が公知であっても,引用発明において,2つの情報に基づいて,セルリセレクションを行うようにする動機付けは見いだすことができない。

したがって,本願発明1は,引用発明ではなく,当業者であっても引用発明及び,引用例2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も,本願発明1の「前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行」することと同一の発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2,3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和3年2月2日にされた手続補正により,補正後の請求項1ないし4に係る発明は,「前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行」という発明特定事項を備えるものとなったが,当該発明特定事項は原査定で引用された引用例1ないし3には記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1ないし4は,引用発明ではなく,また,当業者であっても,原査定における引用例1ないし3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
令和3年2月2日にされた手続補正により,請求項1及び3の
「前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第1ヒステリシス情報と前記オフセット情報に基づいてサービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し」,「前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,前記第2ヒステリシス情報に基づいて前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し」
は,
「前記端末がアイドル(idle)状態で前記MBMSデータを受信中ではない第1タイプ端末の場合,前記第1ヒステリシス情報に基づいて,サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し」,「前記端末がアイドル状態で前記MBMSデータを受信中である第2タイプ端末の場合,予め設定されたオフセット情報を確認し,前記第2ヒステリシス情報と前記オフセット情報とに基づいて,前記サービングセルのランキングスコアを測定して前記セルリセレクションを実行し」
と補正されたので,発明の詳細な説明【0107】,【0108】,図8及び発明の詳細な説明の図8に関する記載との矛盾は解消した。

2.特許法第36条第6項第2号(明確性)について
令和3年2月2日にされた手続補正により,請求項1及び3の「前記第2ヒステリシス情報は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,前記第1ヒステリシス情報に比べて相対的により大きい値を有する」は「前記第2ヒステリシス情報による値は,前記サービングセルのランキングスコアを高くしてピンポン現象を防止するために,前記第1ヒステリシス情報による値に比べて相対的により大きい値を有する」と補正されたので,ヒステリシス情報と値の関係が明確となった。

3.まとめ
したがって,令和3年2月2日にされた手続補正により,当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-15 
出願番号 特願2017-520435(P2017-520435)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三枝 保裕  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 望月 章俊
永田 義仁
発明の名称 無線通信システムにおける放送データ支援方法及び装置  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  
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