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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B61L |
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管理番号 | 1373447 |
審判番号 | 不服2020-13628 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-29 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2014-195972「プログラムおよび情報提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 64793、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月26日の出願であって、令和2年7月3日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和2年9月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明(以下「本願発明1?4」という。)は、令和2年9月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 電子機器を、 路線図と、出発地から目的地までの経路であって、列車から列車への乗換を含む経路を示す経路情報に含まれる列車と、をディスプレイに表示させる表示制御手段であって、前記経路情報における乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを前記路線図上に表示させる表示制御手段 として機能させるプログラム。 【請求項2】 前記表示制御手段は、前記乗換先列車を他の列車と異なる態様で表示させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項3】 前記表示制御手段は、列車の所属会社、種別または混雑具合に応じた態様で前記乗換先列車を表示させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項4】 各列車の位置を示す運行情報を送信する運行情報送信装置と、 前記運行情報を受信する端末装置と、を備える情報提供システムであって、 前記端末装置は、 出発地から目的地までの経路であって、列車から列車への乗換を含む経路を示す経路情報を取得する経路情報取得手段と、 路線図と、前記経路情報に含まれる列車と、をディスプレイに表示させる表示制御手段とを有し、 前記表示制御手段は、前記運行情報に基づいて、前記経路情報における乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを前記路線図上に表示させることを特徴とする情報提供システム。」 2 拒絶査定の拒絶理由について 拒絶査定の拒絶理由は、概略以下のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-189438号公報 2.特開2004-234370号公報 3.特開2010-49115号公報 4.特開2001-331603号公報 5.特開2010-72691号公報 3 当審の判断 (1)引用文献1 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【0001】 本発明は、センターに設置された経路情報配信装置と車載端末装置とで構成される経路案内システムおよびその車載端末装置として用いられる車載ナビゲーション装置に関する。」 (イ)「【0023】 以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。 図1は、経路案内システムの全体構成を機能ブロックにより示している。この経路案内システム1は、車両(自動車)と公共交通機関(時刻表に従って定期運行している鉄道、バス、航空機、船など)を組み合わせた移動経路を案内するマルチモーダル経路案内システムである。徒歩による移動経路も案内することができる。 【0024】 経路案内システム1は、車両に搭載されたナビゲーション装置2(車載端末装置に相当)、センターに設置された経路情報配信装置3、およびユーザが利用可能な携帯電話装置、携帯型情報端末装置、パソコンなどの情報端末装置4から構成されている。このうち情報端末装置4は、目的地への移動途中で車両から離れるユーザによって携帯され案内経路を表示するものであるが、必要に応じて備えればよい。」 (ウ)「【0027】 位置検出部8は、例えばGPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機、ヨーレートを検出するためのジャイロセンサ、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサなどを含んで構成されており、車両の現在位置情報を算出する。車速検出部9は、車速センサから入力した車速パルスに基づいて車速を検出する。」 (エ)「【0034】 経路案内部7は、経路探索部6により探索された経路が案内経路として設定されると、その案内経路に従った案内処理を実行する。すなわち、経路案内部7は、表示装置の画面に車両の位置周辺の地図を表示し、その表示に重ね合わせて車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)を表示し、さらに進むべき案内経路を表示する。これとともに、後述する音声出力装置により音声案内を出力する。また、公共交通機関への乗り換え地点では、乗降場所の案内、乗降場所までの徒歩移動経路、公共交通機関の発車時刻などの情報も表示および音声出力可能となっている」 (オ)「【0046】 演算処理部16は、予測リンク移動時間の算出、交通情報データや運行状況データをはじめとする各種データの処理など上述した各機能を制御する。 情報端末装置4は、演算処理部24、経路案内部25、位置検出部26、通信部27、地図データベース28、入力部29、出力部30などを備えている。位置検出部26は、GPS受信機を備え、現在位置情報を算出する。地図データベース28には、経路案内、地図描画などの各処理に必要な道路地図データが記憶されている。通信部27は、インターネット等の外部ネットワーク接続用の通信インタフェースと、ナビゲーション装置2との間で近距離無線通信を行うための通信インタフェースを備えている。入力部29は、キーボードなどの操作スイッチ群を備えている。出力部30は、カラー液晶ディスプレイからなる表示装置とスピーカからなる音声出力装置を備えている。 【0047】 経路案内部25は、ナビゲーション装置2または経路情報配信装置3から移動経路データを取得し、表示装置の画面に現在位置周辺の地図を表示し、その表示に重ね合わせて現在地マーク(ポインタ)と進むべき案内経路を表示する。また、公共交通機関の乗降場所の案内、公共交通機関の発車時刻などの情報も表示可能となっている。演算処理部24はこれらの各機能を制御する。なお、情報端末装置4から経路情報配信装置3に対し直接目的地データを送信し、経路情報配信装置3から経路探索結果を受信することもできる。 【0048】 次に、本実施形態の動作について図2ないし図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、ナビゲーション装置2において探索する経路をローカルルート、センターの経路情報配信装置3において探索する経路をセンタールートと称する場合がある。 【0049】 図2は、ナビゲーション装置2の制御部5が実行する経路案内処理のフローチャートを示している。ユーザは、ナビゲーション装置2の入力部14を操作して目的地と許容待ち時間とを入力することができる。また、情報端末装置4の入力部29を操作して目的地と許容待ち時間とを入力すれば、その情報は近距離無線通信により情報端末装置4からナビゲーション装置2に送られる。ナビゲーション装置2の制御部5は、これら目的地と許容待ち時間とを入力する(ステップS1)。ここで、許容待ち時間とは、車両から公共交通機関への乗り換え時または公共交通機関相互の乗り換え時における待ち時間であって、ユーザが許容できるとして指定する最大待ち時間である。 【0050】 制御部5は、位置検出部8から車両の現在地を取得し、現在地、目的地、車速などの車両情報および許容待ち時間をセンターに設置された経路情報配信装置3に送信する(ステップS2)。これとともに、ナビゲーション装置2の経路探索部6に対し、ユーザにより指定された条件に従った経路探索を指示する(ステップS3)。本実施形態では、現在地から目的地まで車両および/または公共交通機関を利用して移動する経路であって、乗り換え地点での公共交通機関の待ち時間が最短且つ許容待ち時間以下の経路(ローカルルート)を探索する。」 (カ)「【0061】 経路探索処理が終了すると、経路案内部7は、選択された移動経路を案内経路に設定して現在地から乗り換え地点までの案内処理を開始する(ステップS44)。 制御部5は、経路探索処理および経路案内処理と並列して図1に示すステップS4以下の処理を実行する。センターからセンタールートの探索結果を受信したか否かを判断し(ステップS4)、受信していない(NO)と判断すると、ナビゲーション装置2においてローカルルートの経路探索が完了しているか否かを判断する(ステップS12)。経路探索が完了していなければ(NO)ステップS4に戻り、完了していれば(YES)ローカルルートでの経路案内を実行する(ステップS13)。 【0062】 続いて乗り換え地点(公共交通機関への乗り換えがなければ目的地、ステップS11、S17も同様)に到着したか否かを判断し(ステップS14)、到着していれば案内処理を終了し、到着していなければステップS4に移行する。なお、ナビゲーション装置2と経路情報配信装置3との間の通信時間および経路情報配信装置3での探索要求に対する処理待ち時間があるため、センタールートよりもローカルルートを先に取得できる場合が多いと考えられる。」 (キ)「【図1】 」 (ク)「【図6】 」 (ケ)「経路案内システム」は、上記(ウ)?(キ)に係る事項を実行するためのプログラムを備えていることは明らかである。 (2)引用発明 上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「車両に搭載されたナビゲーション装置2、センターに設置された経路情報配信装置3、およびユーザが利用可能な携帯電話装置、携帯型情報端末装置、パソコンなどの情報端末装置4から構成される経路案内システム1の液晶ディスプレイからなる表示装置を備える出力部30を有する情報端末装置4に、ナビゲーション装置2または経路情報配信装置3から移動経路データを取得し、前記表示装置の画面に現在位置周辺の地図を表示し、その表示に重ね合わせて現在地マーク(ポインタ)と進むべき案内経路を表示するプログラム。」 (3)本願発明と引用発明の対比・判断 ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「情報端末装置4」は、その機能及び構造から、本願発明1の「電子機器」に相当する。 (イ)引用発明の「ナビゲーション装置2または経路情報配信装置3から移動経路データを取得し、表示装置の画面に現在位置周辺の地図を表示」する手段と、本願発明1の「路線図と、出発地から目的地までの経路であって、列車から列車への乗換を含む経路を示す経路情報に含まれる列車と、をディスプレイに表示させる表示制御手段」とは、「図と、出発地から目的地までの経路であって、乗り物から列車への乗換を含む経路を示す経路情報に含まれる乗り物と、をディスプレイに表示させる表示制御手段」の限りで一致する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 <一致点> 「電子機器を、 図と、出発地から目的地までの経路であって、乗り物から列車への乗換を含む経路を示す経路情報に含まれる乗り物と、をディスプレイに表示させる表示制御手段 として機能させるプログラム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 表示制御手段について、本願発明1では、図が「路線図」であって、「列車から列車への乗換を含む経路を示す経路情報に含まれる列車」をディスプレイに表示させるものであって、「前記経路情報における乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを前記路線図上に表示させる」のに対して、引用発明では、図が「地図」であって、移動経路データに含まれる、車両の現在地マーク(ポインタ)を表示する点。 イ 当審の判断 上記相違点について検討する。 本願発明1は、「乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを前記路線図上に表示させる」ことで、「電子機器のユーザは、当該ユーザが乗車している乗換前列車と、乗換先列車との間の位置関係(位置関係A)だけでなく、乗換前列車と、乗換先列車の後続列車との間の位置関係(位置関係B)、および、乗換先列車と後続列車との間の位置関係(位置関係C)をそれぞれ容易に把握することができるようになります。たとえば、位置関係Aを把握することにより、ユーザは、乗換前列車から乗換先列車への乗換に要する待ち時間を予測したり、乗換を急がなければならない等の判断を直感的かつ容易に行うことが可能になります。また、位置関係Bを把握することにより、乗換先列車には間に合いそうにないが、後続列車に十分に間に合うから、無理に急ぐ必要はない等の判断を直感的かつ容易に行うことができます。さらに、位置関係Cを把握することにより、ユーザは、乗換先列車と後続列車の両方が予定よりも遅れている場合、路線自体が遅延しており、乗換先列車よりも前の列車に乗れるかもしれないとの認識を有することも可能にな」(審判請求書3.(4))るものであるところ、引用文献1には、乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを表示することについて、記載も示唆もされていない。 また、引用文献2(【0056】、【図14】)には、乗車している電車から車に合流する際に、乗車している車両の現在位置と乗り換え先の車の位置を地図上に表示することが記載されているが、乗換先列車の現在位置と、前記乗換先列車の後続列車の現在位置と、ユーザが乗車している乗換前列車の現在位置とを表示することについて、記載も示唆もない。また、引用文献3?5にも、当該事項について記載も示唆もない。 そうすると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得たとする理由はない。 (4)むすび したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本願発明2及び3に係る発明について 本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定を加える発明であるから、上記(3)で検討したのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本願発明4に係る発明について 本願発明4は、実質的に本願発明1のプログラムに係る発明特定事項を全て有する情報提供システムに係る発明であるから、上記(3)で検討したのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第3 まとめ 以上のとおり、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また他に拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-20 |
出願番号 | 特願2014-195972(P2014-195972) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B61L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 康 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 充 佐々木 正章 |
発明の名称 | プログラムおよび情報提供システム |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 吉田 昌司 |