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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D
管理番号 1373756
審判番号 不服2020-147  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-07 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2015- 32673「レゾルバの異常検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開、特開2016-156625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月23日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 6月 4日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月10日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
令和 元年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 2日付け:補正却下の決定
令和 元年10月 2日付け:拒絶査定
(令和 元年10月 8日 :査定の謄本の送達)
令和 2年 1月 7日 :審判請求書の提出
令和 2年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、令和3年1月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

「【請求項1】
互いに絶縁された第1の2次巻線(20A)と第2の2次巻線(20B)とで異なる相を構成するレゾルバの異常を検出するレゾルバの異常検出装置であって、
前記第1の2次巻線をプルアップする第1プルアップ抵抗(R1A)、前記第1の2次巻線をプルダウンする第1プルダウン抵抗(R2A)、及び前記第1プルアップ抵抗に接続された第1直流電源(E1A)、を含む第1抵抗部(30A)と、
前記第2の2次巻線をプルアップする第2プルアップ抵抗(R1B)、前記第2の2次巻線をプルダウンする第2プルダウン抵抗(R2B)、及び前記第2プルアップ抵抗に接続された第2直流電源(E1B)、を含む第2抵抗部(30B)と、
前記第1の2次巻線の両端が接続された第1差動入力部(40A)と、
前記第2の2次巻線の両端が接続された第2差動入力部(40B)と、
を備え、
前記第1差動入力部及び前記第2差動入力部の出力、並びに、前記第1抵抗部と前記第1差動入力部との間の直流電圧である第1電圧及び前記第2抵抗部と前記第2差動入力部との間の直流電圧である第2電圧に基づいて、前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常を検出し、
前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常には、断線、天絡、地絡、及び相間短絡が含まれ、
前記レゾルバの正常時において、
前記第1電圧と前記第2電圧とは異なる値であり、
前記第1電圧は、前記第1の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第1の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されており、
前記第2電圧は、前記第2の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第2の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されており、
天絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも高い値に設定されており、
地絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも低い値に設定されており、
前記第1電圧に対する第1相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第1電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定されており、前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第1電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定されており、
前記第2電圧に対する第2相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第2電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定されており、前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第2電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定されており、
前記第1差動入力部及び前記第2差動入力部の出力により断線を検出し、
前記天絡閾値、前記地絡閾値、第1相間短絡閾値、及び第2相間短絡閾値を用いて、前記第1電圧及び前記第2電圧により天絡、地絡、及び相間短絡を検出することを特徴とするレゾルバの異常検出装置。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が令和2年11月30日付けで通知した拒絶の理由のうち理由2は、この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用文献1:特開2013-113641号公報
引用文献2:特開2000-131096号公報
引用文献3:特開2012-108092号公報

第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【0002】
従来、回転機の回転子とともに回転する1次側コイルと、一対の2次側コイルとを備えるレゾルバの信号検出装置が知られている。詳しくは、この装置では、まず、1次側コイルに交流電圧信号を入力する。そして、1次側コイルで発生する磁束によって誘起される一対の2次側コイルのそれぞれの両端の電圧信号を検出し、検出された一対の電圧信号に基づき回転子の回転角(電気角)を検出する。
【0003】
ここで、レゾルバが備える1次側コイル及び一対の2次側コイルのそれぞれは通常、互いに絶縁されている。しかしながら、これらコイル同士の短絡が生じると、回転子の回転角の検出精度が低下するおそれがある。」

「【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる短絡検出装置を1相励磁2相出力型レゾルバの信号検出装置が搭載される電気自動車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0023】
図示されるように、1次側コイル10は、車載主機としてのモータジェネレータ12のロータ12aと一体的に回転する。1次側コイル10の一端は、端子R1を介して励磁回路14に接続され、他端は、端子R2を介して接地されている。
【0024】
1次側コイル10には、励磁回路14からの交流電圧信号(励磁信号Sc)が入力される。励磁信号Scによって1次側コイル10に生じた磁束は、一対の2次側コイル16,18を鎖交する。この際、1次側コイル10と一対の2次側コイル16,18との相対的な配置関係は、ロータ12aの回転角θに応じて周期的に変化する。これにより、2次側コイル16,18の鎖交磁束数は、周期的に変化する。本実施形態では、一対の2次側コイル16,18と1次側コイル10との幾何学的な配置が相違する設定とされ、これにより、2次側コイル16,18のそれぞれに生じる電圧の位相が互いに「π/2」だけずれるようになっている。これにより、2次側コイル16,18のそれぞれの出力電圧は、励磁信号Scを、変調波cosθ,sinθのそれぞれによって変調した被変調波となる。詳しくは、励磁信号Scを「sinωt」とすると、被変調波は、それぞれ「cosθ×sinωt」と「sinθ×sinωt」となる。
【0025】
ちなみに、本実施形態では、以降、これら一対の被変調波をレゾルバ信号と称すこととする。また、2次側コイル16を「2次側COSコイル」と称し、2次側コイル18を「2次側SINコイル」と称すこととする。
【0026】
2次側COSコイル16の両端は、端子C1,C2を介して差動増幅回路20に接続されている。差動増幅回路20は、2次側COSコイル16の出力電圧を所定に変換する機能を有する。
【0027】
一方、2次側SINコイル18の両端は、端子S1,S2を介して差動増幅回路22に接続されている。差動増幅回路22は、2次側SINコイル18の出力電圧を所定に変換する機能を有する。
【0028】
これら差動増幅回路20,22によって電圧変換された出力電圧のそれぞれは、R/D変換部24(レゾルバデジタルコンバータ)に入力される。R/D変換部24は、アナログ信号としての上記レゾルバ信号をデジタル信号に変換してロータ12aの回転角θ(電気角)を算出する機能を有している。
【0029】
R/D変換部24にて算出されるデジタル信号としての電気角は、マイクロコンピュータ(マイコン26)に取り込まれる。詳しくは、マイコン26は、所定のサンプリング周期でR/D変換部24から出力されるデジタル信号を取得する。なお、上記所定のサンプリング周期は、入力回路28から出力されるパルスによって定められる。詳しくは、入力回路28は、励磁回路14から出力される励磁信号Scが基準電位(車両のボディの電位等、信号検出装置の接地電位:以下、GND電位)と交わるタイミング(ゼロクロスタイミング)でパルスを出力する機能を有する。
【0030】
次に、本実施形態にかかる短絡判別処理について説明する。この処理は、マイコン26によって例えば所定周期で繰り返し実行され、1次側コイル10と2次側COSコイル16との短絡、1次側コイル10と2次側SINコイル18との短絡、及び2次側COSコイル16と2次側SINコイル18との短絡のうちいずれが生じているかを判別する処理である。この処理を行うために、本実施形態では、GND電位に対する直流電位が1次側コイル10、2次側COSコイル16及び2次側SINコイル18のそれぞれで互いに相違するように、これらコイルにバイアスを印加する構成を採用している。これらコイルを直流電位の高い方から順に並べると、2次側COSコイル16、2次側SINコイル18、1次側コイル10となる。以下、こうした構成を実現するための2次側の構成について詳述する。
【0031】
2次側COSコイル16には、抵抗体30,32の直列接続体が並列接続され、これら抵抗体の接続点には、定電圧電源34によって電圧が印加されている。また、2次側COSコイル16には、抵抗体36,38の直列接続体が並列接続されている。なお、抵抗体30,32同士の抵抗値は同一であり、抵抗体36,38同士の抵抗値も同一である。また、ノイズ除去用に、2次側COSコイル16にはコンデンサ40,42の直列接続体が並列接続され、それらの接続点は接地されている。
【0032】
ここで、本実施形態では、抵抗体30の抵抗値、定電圧電源34の電圧(Vc1=5V)、差動増幅回路20が備える抵抗体(非反転入力端子に接続される一対の抵抗体)の抵抗値、及び差動増幅回路20が備える抵抗体に接続される定電圧電源44の電圧(Vc2=2.5V)の設定により、2次側COSコイル16に短絡が生じていない場合において、抵抗体36,38の直列接続体の接続点のGND電位に対する直流電位(2次側COSコイル16のバイアス)が「4.4V」とされている。ちなみに、定電圧電源34,44の電圧とは、GND電位を基準とした電位差の値である。
【0033】
一方、2次側SINコイル18には、抵抗体46,48の直列接続体が並列接続され、これら抵抗体の接続点には、定電圧電源50によって電圧が印加されている。また、2次側SINコイル18には、抵抗体52,54の直列接続体が並列接続されている。なお、抵抗体46,48同士の抵抗値は同一であり、抵抗体52,54同士の抵抗値も同一である。また、ノイズ除去用に、2次側SINコイル18にはコンデンサ56,58の直列接続体が並列接続され、それらの接続点は接地されている。
【0034】
ここで、本実施形態では、定電圧電源50の電圧(Vs1=2.5V)と、差動増幅回路22が備える抵抗体(非反転入力端子に接続される一対の抵抗体)に接続される定電圧電源60の電圧(Vs2=2.5V)との設定により、2次側SINコイル18の短絡が生じていない場合において、抵抗体52,54の直列接続体の接続点のGND電位に対する直流電位(2次側SINコイル18のバイアス)が、抵抗体36,38の直列接続体の接続点の直流電位「4.4V」よりも低くてかつ、1次側コイル10の直流電位よりも高い値「2.5V」とされている。ちなみに、定電圧電源50,60の電圧とは、GND電位を基準とした電位差の値である。
【0035】
上記抵抗体36,38の直列接続体の接続点には、RC回路62が接続されている。RC回路62は、入力電圧の低周波成分をコンデンサの両端の電圧として出力するローパスフィルタである。RC回路62の出力信号は、2次側COSコイル16の直流電位に応じた電圧信号である。RC回路62の出力信号Aは、上記マイコン26の図示しないADポートを介してマイコン26のA/D変換部26a(ADコンバータ)に取り込まれる。
【0036】
一方、上記抵抗体52,54の直列接続体の接続点には、RC回路64が接続されている。RC回路64は、入力電圧の低周波成分をコンデンサの両端の電圧として出力するローパスフィルタである。RC回路64の出力信号は、2次側SINコイル18の直流電位に応じた電圧信号である。
【0037】
RC回路64の出力信号は、コンパレータ66の非反転入力端子に入力される。コンパレータ66の反転入力端子には、電源68によって閾値電圧Vthが印加されている。ここで、閾値電圧Vthは、2次側SINコイル18の短絡が生じていない場合のRC回路64の出力電圧「2.5V」よりも低くてかつ、1次側コイル10及び2次側SINコイル18同士の短絡が生じる場合のRC回路64の出力電圧「0V」よりも高い値「2.1V」に設定されている。上記コンパレータ66の出力信号Bは、マイコン26に取り込まれる。
【0038】
ちなみに、上記差動増幅回路20,22及びコンパレータ66の正極側の電源端子及び負極側の電源端子のそれぞれには、図示しない車載補機バッテリの電圧VB(例えば13V)及び図示しない定電圧電源の負の電圧「-5V」のそれぞれが印加される。」

「【0091】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
本実施形態では、短絡判別処理として、2次側COSコイル16及び2次側SINコイル18のうちいずれかと接地との短絡(地絡)や、これらコイル16,18のうちいずれかと車載バッテリの正極側との短絡(天絡)が生じているか否かを判断する処理を更に行う。この処理を行うべく、本実施形態では、GND電位に対する直流電位が1次側コイル10、2次側COSコイル16及び2次側SINコイル18のそれぞれで0とならないように、また、これらコイル10,16,18のGND電位に対する直流電位がバッテリの正極側の電位とならないように、これらコイル10,16,18のそれぞれにバイアスを印加する構成を採用する。
【0093】
詳しくは、図10に示すように、1次側コイル10の一端は、端子R2を介して定電圧電源94に接続されている。なお、本実施形態では、定電圧電源94の電圧Vrを「1.5V」としている。ここで、定電圧電源94の電圧とは、GND電位を基準とした電位差の値である。
【0094】
また、抵抗体36,38の直列接続体の接続点のGND電位に対する直流電位及び抵抗体52,54の直列接続体の接続点のGND電位に対する直流電位を以下のように設定する。まず、抵抗体36,38の直列接続体の接続点の直流電位について説明すると、抵抗体30の抵抗値、定電圧電源34の電圧、差動増幅回路20が備える抵抗体の抵抗値、及び定電圧電源44の電圧の設定により、上記接続点のGND電位に対する直流電位を「4.5V」とする。次に、抵抗体52,54の直列接続体の接続点の直流電位について説明すると、定電圧電源50の電圧(Vs1=5V)と、差動増幅回路22が備える抵抗体の抵抗値と、定電圧電源60の電圧との設定により、上記接続点のGND電位に対する直流電位を「3V」とする。
【0095】
抵抗体52,54の直列接続体の接続点の出力電圧は、RC回路64を介してマイコン26のA/D変換部26aに出力信号Bとして取り込まれる。
【0096】
続いて、図11を用いて、地絡や天絡の発生に伴う出力信号A,Bの変化について説明する。なお、図11には、コイル同士の短絡が生じる場合の出力信号A,Bの変化も併せて示している。ただし、コイル同士の短絡が生じる場合のこれら出力信号A,Bの変化は、上記第1の実施形態で図2を用いて説明したものに準ずる。このため、本実施形態では、コイル同士の短絡の発生に伴う出力信号A,Bの変化についての説明を省略する。
【0097】
まず、地絡が生じる場合について説明する。
【0098】
2次側COSコイル16の地絡が生じる場合、抵抗体36,38の直列接続体の接続点の直流電位がGND電位「0V」とされることから、マイコン26には、出力信号Aとして「0V」に対応するAD変換値が入力される。一方、2次側SINコイル18の地絡が生じる場合、2次側COSコイル16の地絡と同様に、抵抗体52,54の直列接続体の接続点の直流電位がGND電位「0V」とされることから、マイコン26には、出力信号Bとして「0V」に対応するAD変換値が入力される。
【0099】
ちなみに、1次側コイル10の地絡として端子R1の地絡が生じる場合、励磁回路14によって1次側コイル10を励磁できなくなる。
【0100】
続いて、天絡が生じる場合について説明する。
【0101】
2次側COSコイル16の天絡が生じる場合、抵抗体36,38の直列接続体の接続点の直流電位がバッテリの正極側電位VB(13V)とされる。このため、マイコン26には、出力信号Aとして、A/D変換部26aに入力可能な電圧の最大値「5V」に対応するAD変換値が入力される。一方、2次側SINコイル18の天絡が生じる場合、2次側COSコイル16の天絡と同様に、抵抗体52,54の直列接続体の接続点の直流電位がバッテリの正極側電位VBとされる。このため、マイコン26には、出力信号Bとして、A/D変換部26aに入力可能な電圧の最大値「5V」に対応するAD変換値が入力される。
【0102】
次に、本実施形態にかかる短絡判別処理による短絡、地絡及び天絡の種類の判別手法について説明する。
【0103】
まず、短絡の種類の判別手法について説明する。
【0104】
マイコン26は、出力信号Aが「4.5V」であってかつ、出力信号Bが「3V」であると判断される場合、短絡が生じていない旨判断する。
【0105】
一方、出力信号A,Bの双方が「3.75V」であると判断される場合、2次側COSコイル16及び2次側SINコイル18同士の短絡が生じている旨判断する。また、出力信号Aが「1.5V」であってかつ、出力信号Bが「3V」であると判断される場合、1次側コイル10及び2次側COSコイル16同士の短絡が生じている旨判断する。さらに、出力信号Aが「4.5V」であってかつ、出力信号Bが「1.5V」であると判断される場合、1次側コイル10及び2次側SINコイル18同士の短絡が生じている旨判断する。
【0106】
続いて、地絡の種類の判別手法について説明する。
【0107】
マイコン26は、出力信号Aが「0V」であってかつ、出力信号Bが「3V」であると判断される場合、2次側COSコイル16の地絡が生じている旨判断する。一方、出力信号Aが「4.5V」であってかつ、出力信号Bが「0V」であると判断される場合、2次側SINコイル18の地絡が生じている旨判断する。
【0108】
なお、1次側コイル10の地絡として端子R2の地絡が生じる場合、定電圧電源94から接地へと短絡電流が流れてこの電源等の信頼性が低下する事態を回避すべく、短絡判別処理の完了後、定電圧電源92による給電を停止させる処理を行うことが望ましい。
【0109】
続いて、天絡の種類の判別手法について説明する。
【0110】
マイコン26は、出力信号Aが「5V」であってかつ、出力信号Bが「3V」であると判断される場合、2次側COSコイル16の天絡が生じている旨判断し、出力信号Aが「4.5V」であってかつ、出力信号Bが「5V」であると判断される場合、2次側SINコイル18の天絡が生じている旨判断する。
【0111】
なお、1次側コイル10の天絡が生じる場合、励磁回路14に過大な電流が流れ、励磁回路14の信頼性が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、後述する判別手法によって1次側コイル10の天絡が生じると判断される場合、励磁回路14と外部との給電を遮断する処理が行われる。これにより、励磁回路14による1次側コイル10の励磁が停止される。」

「【図10】



「【図11】



(2)引用文献1の【0091】の記載によると、第5の実施形態に関する説明のうち、第1の実施形態と重複する部分は省略されている。そこで、前記(1)の記載から、第1の実施形態に関する説明を参酌しつつ、第5の実施形態に関する説明をまとめると、引用文献1には、第5の実施形態として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「1相励磁2相出力型レゾルバの信号検出装置に適用される短絡検出装置であって(【0021】)、
前記レゾルバは互いに絶縁された一対の2次側コイルを有しており(【0002】、【0003】)、
前記一対の2次側コイルは、それぞれ2次側COSコイル16及び2次側SINコイル18と称され(【0024】、【0025】)、
前記2次側COSコイル16の両端は差動増幅回路20に接続され(【0026】)、
前記2次側SINコイル18の両端は差動増幅回路22に接続され(【0027】)、
前記2次側COSコイル16には、抵抗体30、32の直列接続体が並列接続され、これら抵抗体の接続点には、定電圧電源34によって電圧が印加され、また、前記2次側COSコイル16には、抵抗体36、38の直列接続体が並列接続され(【0031】)、
前記2次側SINコイル18には、抵抗体46、48の直列接続体が並列接続され、これら抵抗体の接続点には、定電圧電源50によって電圧が印加され、また、前記2次側SINコイル18には、抵抗体52、54の直列接続体が並列接続され(【0033】)、
前記抵抗体36、38は、前記抵抗体30、32と前記差動増幅回路20の間にあり(【図10】)、前記抵抗体36、38の直列接続体の接続点の直流電位は、RC回路62を介して出力信号Aとしてマイコン26に取り込まれ、4.5Vに設定されており(【0035】、【0094】)、
前記抵抗体52、54は、前記抵抗体46、48と前記差動増幅回路22の間にあり(【図10】)、前記抵抗体52、54の直列接続体の接続点の直流電位は、RC回路64を介して出力信号Bとしてマイコン26に取り込まれ、3Vに設定されており(【0036】、【0094】、【0095】)、
前記マイコン26は、前記出力信号Aが4.5Vであって、かつ、前記出力信号Bが3Vであると判断される場合、短絡が生じていない旨判断し(【0104】、【図11】の「モード:正常」)、
前記マイコン26は、前記出力信号A、Bの双方が3.75Vであると判断される場合、前記2次側COSコイル16及び前記2次側SINコイル18同士の短絡が生じている旨判断し(【0105】、【図11】の「モード:短絡(2次COS-2次SIN)」)、
前記マイコン26は、前記出力信号Aが0Vであって、かつ、前記出力信号Bが3Vであると判断される場合、前記2次側COSコイル16の地絡が生じている旨判断し、前記出力信号Aが4.5Vであって、かつ、前記出力信号Bが0Vであると判断される場合、前記2次側SINコイル18の地絡が生じている旨判断し(【0107】、【図11】の「モード:地絡(2次COS)」及び「モード:地絡(2次SIN)」)、
前記マイコン26は、前記出力信号Aが5Vであって、かつ、前記出力信号Bが3Vであると判断される場合、前記2次側COSコイル16の天絡が生じている旨判断し、前記出力信号Aが4.5Vであって、かつ、前記出力信号Bが5Vであると判断される場合、前記2次側SINコイル18の天絡が生じている旨判断する(【0110】、【図11】の「モード:天絡(2次COS)→VB」及び「モード:天絡(2次SIN)→VB」)、
短絡検出装置。」

2 周知技術
(1)引用文献2
引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レゾルバ断線検出方法に関し、特に、出力巻線に直流バイアス電流を印加することにより、断線時に回転角度信号よりも高い電圧値を検出することによって断線の検出を行うための新規な改良に関する。」

「【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明によるレゾルバ断線検出方法の好適な実施の形態について説明する。図1において符号1で示されるものは励磁巻線2と出力巻線3とからなるレゾルバであり、この出力巻線3は二相出力であるため1対構成であるが、ここでは省略し、sin又はcos用の出力巻線3のみとして説明する。なお、信号の入出力用の回転トランスは省略している。
【0007】前記出力巻線3の両端に接続された入力ライン4、5には、バッファ回路6、7が設けられ、この各バッファ回路6、7は1対の第1、第2抵抗R1、R3を介してオプアンプ(演算増幅器)8に接続され、このオプアンプ8の正相端子8aには第3抵抗R2を介してコモン端子COMが接続され、逆相端子8bの出力端子8cとの間には第4抵抗R4が接続されている。前述のオプアンプ8及び各抵抗R1?R4によって周知の差動アンプ10が構成され、この出力端子8cからは回転角度信号sinθ・f(t)又はcosθ・f(t)が出力されるように構成されている。
【0008】前記入力ライン4、5には、同一抵抗値の第5、第6抵抗R_(BU)、R_(BL)が接続され、直流電源11からの直流バイアス電流IBが第5抵抗R_(BU)から出力巻線3を経て第6抵抗R_(BL)に流れるように印加されている。なお、この直流バイアス電流IBは、前記回転角度信号sinθ・f(t)又はcosθ・f(t)の電圧レベルには悪影響を与えない程度に設定されている。
【0009】次に動作について説明する。まず、出力巻線3が断線せずに正常な場合には、出力巻線3に誘起された回転角度信号sinθ・f(t)又はcosθ・f(t)は、差動アンプ10を経て出力端子8cから出力されるが、この出力巻線3に断線が発生した場合には、直流バイアス電流IBが出力巻線3及び第6抵抗R_(BL)に流れなくなると同時に直流電源11が第1バッファ回路6及び第2バッファ回路7を介して差動アンプ10に印加されて回転角度信号sinθ・f(t)又はcosθ・f(t)の代わりに断線検出信号20が出力され、この断線検出信号20は回転角度信号sinθ・f(t)又はcosθ・f(t)の電圧値よりも大(例えば、5V)であり、この断線検出信号20の電圧レベルを例えば周知のウィンドコンパレータ等によって監視することにより断線の有無を検出することができる。なお、出力巻線3は、2相の場合、S1-S3とS2-S4に接続することができる。又は、S1-S3とS2-S4に同じ検出回路を設けることもできる。」

「【図1】



(2)引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【0067】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる振幅変調装置の異常診断装置をレゾルバの異常診断装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0068】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0069】
図示されるモータジェネレータ10は、車載主機であり、駆動輪に機械的に連結されている。インバータIVは、モータジェネレータ10と図示しないバッテリとの間の電力の授受を仲介する。モータジェネレータ10の回転子10aには、レゾルバ20の1次側コイル22が機械的に連結されている。1次側コイル22は、正弦波状の励磁信号Scによって励磁される。励磁信号Scによって1次側コイル22に生じた磁束は、一対の2次側コイル24,26を鎖交する。この際、1次側コイル22と一対の2次側コイル24,26との相対的な配置関係は、回転子10aの電気角(回転角度θ)に応じて周期的に変化する。これにより、2次側コイル24,26を鎖交する磁束数は、周期的に変化する。特に、一対の2次側コイル24,26と1次側コイル22との幾何学的な配置が相違する設定とされ、これにより、2次側コイル24,26のそれぞれに生じる電圧の位相が互いに「π/2」だけずれるようになっている。これにより、2次側コイル24,26のそれぞれの出力電圧は、励磁信号Scを、変調波sinθ、cosθのそれぞれによって変調した被変調波となる。すなわち、励磁信号Scを「sinωt」とすると、被変調波は、それぞれ「sinθsinωt」と「cosθsinωt」となる。
【0070】
2次側コイル24の出力電圧は、差動増幅回路30によって電圧変換され、A相被変調波Saとされ、2次側コイル26の出力電圧は、差動増幅回路32によって電圧変換され、B相被変調波Sbとされる。これらA相被変調波SaとB相被変調波Sbとのそれぞれは、アナログデジタル変換器(A/D変換器34、36)のそれぞれによってデジタルデータに変換される。このデジタルデータが、サンプリング信号SA,SBである。
【0071】
上記差動増幅回路30は、オペアンプのプラス側入力端子が抵抗体を介してプルダウンされて且つ、マイナス側の入力端子が抵抗体を介してプルアップされている。これは、図中破線の×印にて示す箇所等に断線が生じた場合、A相被変調波Saを固定値とするための設定である。特に本実施形態では、この固定値を、正常時におけるA相被変調波Saの取りうる値の下限値VL以下に設定する。なお、A/D変換器34の変換可能入力範囲の境界は、上限値VHと下限値VLとに一致するように設定されている。このため、固定値を下限値VLよりも小さく設定したとしても、A/D変換器34の出力するサンプリング信号SAは、下限値VLに一致する。
【0072】
上記差動増幅回路32は、オペアンプのプラス側入力端子が抵抗体を介してプルアップされて且つ、マイナス側の入力端子が抵抗体を介してプルダウンされている。これは、図中破線の×印にて示す箇所等に断線が生じた場合、B相被変調波Sbを固定値とするための設定である。特に本実施形態では、この固定値を、正常時におけるB相被変調波Sbの取りうる値の下限値VL以上に設定する。なお、A/D変換器36の変換可能入力範囲の境界は、上限値VHと下限値VLとに一致するように設定されている。このため、固定値を上限値VHよりも大きく設定したとしても、A/D変換器36の出力するサンプリング信号SBは、上限値VHに一致する。」

「【0077】
この一連の処理では、まずステップS10において、複数のサンプリング信号SA[n]、SA[n-1]、…を取得する。続くステップS12においては、サンプリング信号SAの変動量が所定以下であるか否かを判断する。この処理は、レゾルバ20に異常があるか否かを判断するためのものである。すなわち、正常であれば、サンプリング信号SAは、少なくとも励磁信号Scの変動に同期した変化をする一方、2次側コイル24の断線等の異常があればサンプリング信号SAは、下限値VLに固定される。このため、変動量が小さい場合には異常があると判断することができる。」

「【0081】
なお、サンプリング信号SBについても同様の処理によって異常の有無の診断を行なう。ちなみに、サンプリング信号SAに基づく診断のみで異常がある旨診断される場合には、2次側コイル24の断線と判断し、サンプリング信号SBに基づく診断のみで異常がある旨診断される場合には、2次側コイル26の断線と判断することが望ましい。この場合、サンプリング信号SAに基づく診断とサンプリング信号SBに基づく診断との双方で異常があると判断される場合には、1次側コイル22の断線と判断してもよい。」

「【図1】



(3)引用文献2及び3に記載された、次の技術は周知技術である。

<周知技術>
「2相出力レゾルバの一対の2次巻線のそれぞれに、プルアップ抵抗、プルダウン抵抗及び前記プルアップ抵抗に接続された直流電源により直流電圧を与えておき、前記一対の2次巻線のそれぞれの両端が接続された一対の差動増幅器の出力に基づいて、前記一対の2次巻線の断線を検出する技術。」

第5 対比、一致点及び相違点の認定
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「2次側COSコイル16」及び「2次側SINコイル18」は、それぞれ本願発明の「第1の2次巻線(20A)」及び「第2の2次巻線(20B)」に相当し、引用発明の「1相励磁2相出力型レゾルバ」は、「互いに絶縁され」た「2次側COSコイル16」及び「2次側SINコイル18」を有するものであって、COSとSINは「異なる相」であるから、本願発明の「互いに絶縁された第1の2次巻線(20A)と第2の2次巻線(20B)とで異なる相を構成するレゾルバ」に相当する。
また、引用発明は、「1相励磁2相出力型レゾルバの信号検出装置に適用される短絡検出装置」であり、「短絡」は「レゾルバの異常」の一つであるから、本願発明と引用発明は「レゾルバの異常を検出するレゾルバの異常検出装置」である点において共通する。

(2)引用発明の「差動増幅回路20」は、「2次側COSコイル16の両端」に接続されたものであるから、本願発明の「第1の2次巻線の両端が接続された第1差動入力部(40A)」に相当する。
また、引用発明の「差動増幅回路22」は、「2次側SINコイル18の両端」に接続されたものであるから、本願発明の「第2の2次巻線の両端が接続された第2差動入力部(40B)」に相当する。

(3)引用発明の「出力信号A」は、「抵抗体30、32」と「差動増幅回路20」の間にある「抵抗体36、38の直列接続体の接続点の直流電位」であるところ、引用発明の「抵抗体30、32」と本願発明の「第1抵抗部」は、第1の2次巻線に設けられた抵抗部である限りにおいて共通する。
よって、本願発明の「第1電圧」と引用発明の「出力信号A」は、第1の2次巻線に設けられた抵抗部と差動入力部の間の直流電圧である点において共通する。

(4)引用発明の「出力信号B」は、「抵抗体46、48」と「差動増幅回路22」の間にある「抵抗体52、54の直列接続体の接続点の直流電位」であるところ、引用発明の「抵抗体46、48」と本願発明の「第2抵抗部」は、第2の2次巻線に設けられた抵抗部である限りにおいて共通する。
よって、本願発明の「第2電圧」と引用発明の「出力信号B」は、第2の2次巻線に設けられた抵抗部と差動入力部の間の直流電圧である点において共通する。

(5)引用発明は、「前記出力信号Aが4.5Vであって、かつ、前記出力信号Bが3Vであると判断される場合、短絡が生じていない旨判断」するものであるところ、4.5Vと3Vは「異なる値」であり、かつ、短絡が生じていない状態は「正常時」にほかならない。
そして、引用発明は、前記2次側COSコイル16の天絡が生じているときに前記出力信号Aが5Vとなるものであるところ、正常時の出力信号Aの値である4.5Vは、5Vと0V(グランド電圧)の間の値である。
さらに、引用発明は、前記2次側SINコイル18の天絡が生じているときに前記出力信号Bが5Vとなるものであるところ、正常時の出力信号Bの値である3Vは、5Vと0V(グランド電圧)の間の値である。
よって、引用発明において、「出力信号A」及び「出力信号B」が、それぞれ、4.5V及び3Vに設定されていることと、本願発明において、「前記レゾルバの正常時において、前記第1電圧と前記第2電圧とは異なる値であり、前記第1電圧は、前記第1の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第1の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されており、前記第2電圧は、前記第2の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第2の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されて」いることは、電圧値の設定手法において共通する。

(6)引用発明は、「出力信号A」及び「出力信号B」の値に基づいて、「前記2次側COSコイル16及び前記2次側SINコイル18同士の短絡」、「前記2次側COSコイル16の地絡」、「前記2次側SINコイル18の地絡」、「前記2次側COSコイル16の天絡」及び「前記2次側SINコイル18の天絡」という異常状態を区別して検出するものであるところ、「前記2次側COSコイル16及び前記2次側SINコイル18同士の短絡」は、本願発明の「相間短絡」に相当する。
よって、本願発明と引用発明は、「第1電圧」及び「第2電圧」に基づいて「前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常を検出」する点で共通し、「前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常」に「天絡、地絡、及び相間短絡が含まれ」る点で共通する。

2 一致点及び相違点
前記1の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(1)一致点
「互いに絶縁された第1の2次巻線(20A)と第2の2次巻線(20B)とで異なる相を構成するレゾルバの異常を検出するレゾルバの異常検出装置であって、
前記第1の2次巻線に設けられた抵抗部と、
前記第2の2次巻線に設けられた抵抗部と、
前記第1の2次巻線の両端が接続された第1差動入力部(40A)と、
前記第2の2次巻線の両端が接続された第2差動入力部(40B)と、
を備え、
前記第1の2次巻線に設けられた抵抗部と前記第1差動入力部との間の直流電圧である第1電圧及び前記第2の2次巻線に設けられた抵抗部と前記第2差動入力部との間の直流電圧である第2電圧に基づいて、前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常を検出し、
前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常には、天絡、地絡、及び相間短絡が含まれ、
前記レゾルバの正常時において、
前記第1電圧と前記第2電圧とは異なる値であり、
前記第1電圧は、前記第1の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第1の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されており、
前記第2電圧は、前記第2の2次巻線に天絡が発生した場合に前記第2の2次巻線に印加される直流電圧と、グランドとの間の値に設定されている、
レゾルバの異常検出装置。」

(2)相違点
ア 相違点1
(ア)本願発明は、
a 「検出」される「前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常」として「断線」を含み、
「前記第1の2次巻線をプルアップする第1プルアップ抵抗(R1A)、前記第1の2次巻線をプルダウンする第1プルダウン抵抗(R2A)、及び前記第1プルアップ抵抗に接続された第1直流電源(E1A)、を含む第1抵抗部(30A)と、前記第2の2次巻線をプルアップする第2プルアップ抵抗(R1B)、前記第2の2次巻線をプルダウンする第2プルダウン抵抗(R2B)、及び前記第2プルアップ抵抗に接続された第2直流電源(E1B)、を含む第2抵抗部(30B)」を備え、「前記第1差動入力部及び前記第2差動入力部の出力により断線を検出」するものであり、
b 「前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常」である「天絡、地絡及び相間短絡を検出する」ための電圧である「第1電圧」及び「第2電圧」について、
「第1電圧」が「前記第1抵抗部と前記第1差動入力部との間の直流電圧」であり、「第2電圧」が「前記第2抵抗部と前記第2差動入力部との間の直流電圧」であって、「前記第1抵抗部」及び「前記第2抵抗部」はそれぞれ「プルアップ抵抗」、「プルダウン抵抗」及びプルアップ抵抗に接続された「直流電源」を含むのに対して、
(イ)引用発明は、
a 2次側COSコイル16に抵抗体30、32及び定電圧電源34を備え、2次側SINコイル18に抵抗体46、48及び定電圧電源50を備えているものの、断線を検出するものではなく、
b 「前記第1の2次巻線及び前記第2の2次巻線の異常」である「天絡、地絡及び相間短絡を検出する」ための電圧である「第1電圧」及び「第2電圧」について、
引用発明は、前記出力信号A(「第1電圧」)はプルアップ抵抗、プルダウン抵抗及びプルアップ抵抗に接続された直流電源を含まない抵抗体30、32と差動増幅回路20の間の直流電圧であり、前記出力信号B(「第2電圧」)はプルアップ抵抗、プルダウン抵抗及びプルアップ抵抗に接続された直流電源を含まない抵抗体46、48と差動増幅回路22の間の直流電圧である点。

イ 相違点2
本願発明は、「天絡、地絡及び相間短絡を検出する」ための「閾値」をそれぞれ設定しており、「天絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも高い値に設定されており、地絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも低い値に設定されており、前記第1電圧に対する第1相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第1電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定されており、前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第1電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定されており、前記第2電圧に対する第2相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第2電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定されており、前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第2電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定されて」いるのに対して、引用発明は、出力信号A及び出力信号Bにより天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出するものであるものの、天絡、地絡及び相間短絡を検出するための閾値は設定されていない点。

第6 判断
1 相違点について
(1)相違点1について
ア 断線を検出する周知技術の適用について
「2相出力レゾルバの一対の2次巻線のそれぞれに、プルアップ抵抗、プルダウン抵抗及び前記プルアップ抵抗に接続された直流電源により直流電圧を与えておき、前記一対の2次巻線のそれぞれの両端が接続された一対の差動増幅器の出力に基づいて、前記一対の2次巻線の断線を検出する技術」は周知技術である(前記第4の2(3))。
引用発明は、レゾルバの天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出するものであるところ、検出できる異常の種類を増やして適切な対処を可能とすることを目的として、前記周知技術を適用する動機を当業者は有していたというべきである。
そして、引用発明に周知技術を適用する場合、類似する回路同士を置換するのが最も自然であるから、引用発明における抵抗体30、32及び定電圧電源34からなる回路に換えて、第1プルアップ抵抗、第1プルダウン抵抗及び前記第1プルアップ抵抗に接続された第1直流電源により直流電圧を与える回路を設けて第1抵抗部とし、抵抗体46、48及び定電圧電源50からなる回路に換えて、第2プルアップ抵抗、第2プルダウン抵抗及び前記第2プルアップ抵抗に接続された第2直流電源により直流電圧を与える回路を設けて第2抵抗部とし、差動増幅回路20及び差動増幅回路22の出力により断線を検出するように構成することは、当業者にとっては、極めて自明の設計変更にすぎない。

イ 引用発明に周知技術を適用して置換した後の回路について
前記アで検討したとおり、引用発明に周知技術を適用して、引用発明における抵抗体30、32及び定電圧電源34からなる回路に換えて、第1プルアップ抵抗、第1プルダウン抵抗及び前記第1プルアップ抵抗に接続された第1直流電源により直流電圧を与える回路を設けて第1抵抗部とし、抵抗体46、48及び定電圧電源50からなる回路に換えて、第2プルアップ抵抗、第2プルダウン抵抗及び前記第2プルアップ抵抗に接続された第2直流電源により直流電圧を与える回路を設けて第2抵抗部とすることは、当業者にとっては、極めて自明の設計変更にすぎないものであるところ、このように置換して得られた回路においては、出力信号Aは第1プルアップ抵抗、第1プルダウン抵抗及び前記第1プルアップ抵抗に接続された第1直流電源を含む第1抵抗部と差動増幅回路20の間の直流電圧となり、出力信号Bは第2プルアップ抵抗、第2プルダウン抵抗及び前記第2プルアップ抵抗に接続された第2直流電源を含む第2抵抗部と差動増幅回路22の間の直流電圧となる。
したがって、相違点1のうち(イ)bの点は、引用発明に対して周知技術を適用することに伴う当然の結果にすぎない。

ウ 相違点1についての検討のまとめ
以上のとおりであるから、引用発明に対して周知技術を適用し、引用発明が相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
ア 閾値を設けることの動機付け
引用発明に周知技術を適用して回路を置換した後においても、置換する前と同じように、出力信号A及び出力信号Bの値に基づいて天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出する必要があるから、正常時における出力信号A及び出力信号Bの値が、それぞれグランド電位と所定電位の間の異なる2つの電位、例えば、0Vと5Vの間の異なる2つの電位である4.5V及び3Vとなるように設定すべきであることは当然である。
一方、引用文献1の【0021】?【0090】及び【図1】?【図9】には、第1?4の実施形態として、出力信号A及び出力信号Bをコンパレータ66等で閾値と比較して短絡を区別して検出することが記載されているから、第5の実施形態である引用発明においても、出力信号A及び出力信号Bを閾値と比較して天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、この閾値は、正常時の出力信号A及び出力信号Bの値と、それぞれの短絡が生じたときの出力信号A及び出力信号Bの値の間に設定するのが当然であるから、以下のイ?オに示すとおり、天絡閾値、地絡閾値、第1相間短絡閾値及び第2相間短絡閾値を本願発明のごとく設定することは、設計変更に伴う当然の配慮事項にすぎない。

イ 天絡閾値について
引用発明は、正常時において出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが3Vであるところ、2次側COSコイル16に天絡が生じると出力信号Aが5Vで出力信号Bが3V、2次側SINコイル18に天絡が生じると出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが5Vとなる。そして、2次側COSコイル16の天絡と2次側SINコイル18の天絡を区別せずに、まとめて「天絡」として検出する場合、出力信号Aに対する閾値と出力信号Bに対する閾値は共通の値とするのが合理的であるから、天絡を検出するための共通の閾値は、4.5V及び3Vよりも高い値に設定する必要があることは明らかである。
よって、「天絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも高い値に設定」すべきであることは当然である。

ウ 地絡閾値について
引用発明は、正常時において出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが3Vであるところ、2次側COSコイル16に地絡が生じると出力信号Aが0Vで出力信号Bが3V、2次側SINコイル18に地絡が生じると出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが0Vとなる。そして、2次側COSコイル16の地絡と2次側SINコイル18の地絡を区別せずに、まとめて「地絡」として検出する場合、出力信号Aに対する閾値と出力信号Bに対する閾値は共通の値とするのが合理的であるから、地絡を検出するための共通の閾値は、4.5V及び3Vよりも低い値に設定する必要があることは明らかである。
よって、「地絡閾値は、前記第1電圧及び前記第2電圧よりも低い値に設定」すべきであることは当然である。

エ 第1電圧に対する第1相間短絡閾値について
引用発明は、正常時において出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが3Vであるところ、相間短絡が生じると出力信号A、Bの双方が3.75Vとなるから、相間短絡を検出するための出力信号Aに対する閾値は、4.5Vと3.75Vの間に設定する必要があることは明らかである。このように設定された閾値は、正常時の出力信号Aの値である4.5Vよりも低く、3Vよりも低く設定された前記地絡閾値よりも高い。
よって、「前記第1電圧に対する第1相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第1電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定」すべきであることは当然である。また、同じ理由により、「前記第1電圧に対する第1相間短絡閾値は、・・・前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第1電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定」すべきであることは当然である。

オ 第2電圧に対する第2相間短絡閾値について
引用発明は、正常時において出力信号Aが4.5Vで出力信号Bが3Vであるところ、相間短絡が生じると出力信号A、Bの双方が3.75Vとなるから、相間短絡を検出するための出力信号Bに対する閾値は、3Vと3.75Vの間に設定する必要があることは明らかである。このように設定された閾値は、正常時の出力信号Bの値である3Vよりも高く、4.5Vよりも高く設定された前記天絡閾値よりも低い。
よって、「前記第2電圧に対する第2相間短絡閾値は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも高いときには、前記第2電圧よりも高い値で且つ前記天絡閾値よりも低い値に設定」すべきであることは当然である。また、同じ理由により、「前記第2電圧に対する第2相間短絡閾値は、・・・前記第1電圧が前記第2電圧よりも低いときには、前記第2電圧よりも低い値で且つ前記地絡閾値よりも高い値に設定」すべきであることは当然である。

カ 相違点2についての検討のまとめ
以上のとおりであるから、引用発明に対して周知技術を適用した上で、天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出する閾値を適宜設定することで、引用発明が相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)小括
以上検討のとおり、引用発明に対して周知技術を適用し、技術の具体的適用に伴う設計変更を施すことで、引用発明が相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測されるものを超える格別顕著なものであるとは認めることができない。

3 審判請求人の主張について
審判請求人は令和3年1月22日付け意見書において、「しかし、レゾルバの異常を検出する場合に、断線、天絡、地絡及び相間短絡をそれぞれ区別して検出する発想は、そもそも新引用文献1?3のいずれにも記載されていません。本願発明1では、上記発想を実現するために、相違点2に示すように、第1,第2電圧と各閾値との具体的関係、詳しくは各閾値間相互の関係を特定しています。引用文献1?3には上記発想を開示するものがないため、第1,第2電圧と各閾値との具体的関係を特定する動機付けがなく、『引用発明において閾値を適宜設定することで、引用発明が相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。』との審判長殿の認定は具体的な根拠に基づくものではなく、妥当ではありません。すなわち、上記発想がなければ、『引用発明において閾値を適宜設定する』思想に想達することがなく、第1,第2電圧と各閾値との具体的関係を特定することに想到することもありません。」と主張している。
しかしながら、前記1(1)アで示したとおり、レゾルバの天絡、地絡及び相間短絡を区別して検出する引用発明に対して、断線を検出する周知技術を適用する動機を当業者は有していたというべきであり、前記1(2)で示したとおり、天絡閾値、地絡閾値、第1相間短絡閾値及び第2相間短絡閾値を本願発明のごとく設定することは、設計変更に伴う当然の配慮事項にすぎない。
よって、審判請求人の主張は採用することができない。

4 判断のまとめ
上記1?3で示したとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-02-25 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-18 
出願番号 特願2015-32673(P2015-32673)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01D)
P 1 8・ 537- WZ (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 久  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
岸 智史
発明の名称 レゾルバの異常検出装置  
代理人 松田 洋  
代理人 北 裕介  
代理人 日野 京子  
代理人 山田 強  

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