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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1373786
異議申立番号 異議2021-700106  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-29 
確定日 2021-04-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6732239号発明「パワーモジュール基板およびその生産方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6732239号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6732239号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成28年12月22日に出願され、令和2年7月10日にその特許権が設定登録され、令和2年7月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年1月29日に特許異議申立人青木眞理(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6732239号の請求項1ないし2に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合されてなるパワーモジュール基板の生産方法であって、
前記金属回路板に自己粘着型耐エッチングフィルムを貼付するマスキングステップと、
前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施すことによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップと、
前記自己粘着型耐エッチングフィルムが除去された領域をスプレイエッチング処理によってエッチングするエッチングステップと、
を少なくとも含むパワーモジュール基板の生産方法。
【請求項2】
前記パターニングステップにおいて、レーザによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムとともに前記金属回路板の一部を除去することを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール基板の生産方法。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記甲第1ないし3号証を提出して、以下の申立理由1ないし3により、請求項1ないし2に係る本件特許を取り消すべきである旨主張している。
1 申立理由1(明確性)
(1)請求項1について
請求項1のパターニングステップの構成は、「前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップ」を含むこと、つまり、レーザによる除去の深さ又は面位置を特定している。また、請求項1は請求項2の技術的範囲を含むから、請求項1のパターニングステップの構成のレーザによる除去の深さ又は面位置は、少なくとも、(a)上面から見た全体面のうちの一部の面位置(回路パターンに対応する領域以外)における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分の深さと、(b)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の一部厚み分の深さと、(c)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の厚み分の深さと、を含む。
しかしながら、本件特許明細書段落0027の記載によれば、レーザの焦点を設定することは困難であり、請求項1のパターニングステップの構成は、上記除去の深さ(a),(b)をどのように実現するのか不明であり、その結果、本件発明1は明確でない。
また、請求項1のパターニングステップの構成は、除去の深さを限定するものであるか不明であり、上記除去の深さ(a),(b)のみならず、金属回路板の厚み分を全部除去する上記除去の面位置(c)をも含み得るものであるのか不明であり、その結果、本件発明1は明確でない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

(2)請求項2について
請求項2のパターニングステップの構成は、「レーザによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムとともに前記金属回路板の一部を除去する」こと、つまり、レーザによる除去の深さ又は面位置を、少なくとも、(b)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の一部厚み分の深さとすること、(c)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の厚み分の深さとすること、を特定している。
しかしながら、本件特許明細書段落0027の記載によれば、レーザの焦点を設定することは困難であり、請求項2のパターニングステップの構成は、上記除去の深さ(b)をどのように実現するのか不明であり、その結果、本件発明2は明確でない。
また、請求項2のパターニングステップの構成は、除去の深さを限定するものであるか不明であるため、上記除去の深さ(b)のみならず、金属回路板の厚み分を全部除去する上記除去の面位置(c)をも含み得るものであるのか不明であり、その結果、本件発明2は明確でない。
したがって、本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

2 申立理由2(サポート要件)
(1)請求項1について
請求項1のパターニングステップの構成は、「前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップ」を含むこと、つまり、レーザによる除去の深さ又は面位置を特定している。また、請求項1は請求項2の技術的範囲を含むから、請求項1のパターニングステップの構成のレーザによる除去の深さ又は面位置は、少なくとも、(a)上面から見た全体面のうちの一部の面位置(回路パターンに対応する領域以外)における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分の深さと、(b)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の一部厚み分の深さと、(c)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の厚み分の深さと、を含む。
しかしながら、本件特許明細書段落0027の記載によれば、レーザの焦点を設定することは困難であるので、レーザの焦点を板厚の中央、板厚の4分の3程度削るような位置としている。
請求項1のパターニングステップの構成は、レーザの焦点を板厚の中央、板厚の4分の3程度削るような位置の場合以外も含み得るものであり、出願時の技術常識を鑑みても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、請求項1のパターニングステップの構成のような範囲についてまで拡張ないし一般化することはできない。
また、請求項1のパターニングステップの構成は、除去の深さを限定するものであるのか不明であるため、上記除去の深さ(b)のみならず、金属回路板の厚み分を全部除去する上記除去の面位置(c)をも含み得るものであり、出願時の技術常識を鑑みても、除去の深さを規定する本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、請求項1のパターニングステップの構成の範囲についてまで拡張ないし一般化することはできない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

(2)請求項2について
請求項2のパターニングステップの構成は、「レーザによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムとともに前記金属回路板の一部を除去する」こと、つまり、レーザによる除去の深さ又は面位置を、少なくとも、(b)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の一部厚み分の深さとすること、(c)当該一部の面位置における自己粘着型耐エッチングフィルムの厚み分に加え、金属回路板の厚み分の深さとすること、を特定している。
しかしながら、本件特許明細書段落0027の記載によれば、レーザの焦点を設定することは困難であるので、レーザの焦点を板厚の中央、板厚の4分の3程度削るような位置としている。
請求項2のパターニングステップの構成は、レーザの焦点を板厚の中央、板厚の4分の3程度削るような位置の場合以外も含み得るものであり、出願時の技術常識を鑑みても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、請求項2のパターニングステップの構成のような範囲についてまで拡張ないし一般化することはできない。
また、請求項2のパターニングステップの構成は、除去の深さを限定するものであるのか不明であるため、上記除去の深さ(b)のみならず、金属回路板の厚み分を全部除去する上記除去の面位置(c)をも含み得るものであり、出願時の技術常識を鑑みても、除去の深さを規定する本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、請求項2のパターニングステップの構成のような範囲についてまで拡張ないし一般化することはできない。
したがって、本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

3 申立理由3(進歩性)
本件発明1ないし2は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるあるから、本件発明1ないし2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開2013-182989号公報
甲第2号証:特開平10-154866号公報
甲第3号証:特開2004-356502号公報

第4 甲号証の記載
1 甲第1号証
甲第1号証には、「金属-セラミックス接合回路基板の製造方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。

「【請求項1】
セラミックス基板と金属板とを接合した後に金属板上の所定の領域にレジストを形成してエッチングすることにより金属板を所定の形状の金属回路板に形成する金属-セラミックス接合回路基板の製造方法において、レジストの外周から所定の間隔だけ内側に離間した所でレジストの外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジストを除去した後、エッチングによって金属回路板を形成する際に、金属回路板の周縁部を薄くして金属回路板の外周に段部を形成することを特徴とする、金属-セラミックス接合回路基板の製造方法。」

「【0001】
本発明は、金属-セラミックス接合回路基板の製造方法に関し、特に、セラミックス基板に接合した金属回路板(電子部品搭載用金属板)の周縁部に段構造またはフィレットが形成された金属-セラミックス接合回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電力を制御するためにパワーモジュールが使用されており、このパワーモジュール用の絶縁基板として、セラミックス基板の表面に金属回路板を接合した金属-セラミックス接合回路基板が使用されている。」

「【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、セラミックス基板と金属板とを接合した後に金属板上の所定の領域にレジストを形成してエッチングすることにより金属板を所定の形状の金属回路板に形成する金属-セラミックス接合回路基板の製造方法において、レジストの外周から所定の間隔だけ内側に離間した所でレジストの外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジストを除去した後、エッチングによって金属回路板を形成する際に、金属回路板の周縁部を薄くして金属回路板の外周に段部を形成することによって、段部やフィレットの幅や厚さを自由に変更することができ且つ繰り返しヒートサイクルに対してより高い信頼性の金属-セラミックス接合回路基板を精度よく且つ効率的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

「【0017】
以下、添付図面を参照して本発明による金属-セラミックス接合回路基板の製造方法の実施の形態を説明する。
【0018】
まず、図1Aおよび図1Bに示すように、セラミックス基板10上に直接または(図4において参照符号18で示す)活性金属含有ろう材を介して金属板12を配置して加熱接合する。この加熱接合した金属板12上の所定の領域(例えば回路形成領域)に紫外線硬化型レジストなどのレジスト14をスクリーン印刷などにより形成する。なお、レジスト14は、スクリーン印刷の他、ドライフィルム、ディップ、スピンコータ、ロールコータなどにより形成してもよい。
【0019】
次に、図2Aおよび図2Bに示すように、レジスト14の外周から内側に所定の間隔だけ離間した所でレジスト14の外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジスト14を除去して、所定の幅のレジスト除去部16を形成する。なお、レジスト除去部16は、レーザー光を連続的に照射して、レジスト14の外周に沿って連続的に帯状に延びるように形成しているが、このような帯状のレジスト除去部16に代えて、レーザー光を断続的に照射して、図5または図6に示すように、レジスト114または214の外周に沿って互いに離間して配置された多数のドット状の略円形のレジスト除去部116または略矩形のレジスト除去部216を形成してもよい。
【0020】
次に、エッチングにより金属板12(または金属板12および活性金属含有ろう材18)の不要部分を除去した後、レジスト14を除去すると、図3または図4に示すように、金属板12の外周部に所定の幅(段幅L)の所定の厚さ(段厚T)の段部(または段部およびフィレット)が形成される。その後、金属板12(または金属板12および活性金属含有ろう材18)上に無電解ニッケルメッキを施してもよい。」

「【0025】
また、本発明による金属-セラミックス接合回路基板の特に効果が大きい用途は、電子回路用の金属-セラミックス接合基板であり、この接合基板を使用してパワーモジュールを作成すると、接合基板の信頼性の向上により、パワーモジュールの信頼性も向上し、高信頼性を有するパワーモジュールを提供することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明による金属-セラミックス接合回路基板の製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
76mm×59mm×0.6mmの窒化アルミニウムからなるセラミックス基板の一方の面に、活性金属としてTiを含有するAg-Cu系ろう材を介して、76mm×59mm×0.3mmの無酸素銅からなる金属板を接合した。
【0028】
次に、金属板上の回路形成領域に回路形成用レジストをスクリーン印刷した後、レジストの外周から内側に200μm離間した所でレジストの外周の全体に沿って帯状に延びる部分と、その部分から内側に170μm離間した所でレジストの外周の全体に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、それらの部分のレジストを除去して、幅100μmの2本のレジスト除去部を形成した。なお、レーザー光の照射によるレジストの除去は、スポット径60μm、出力30WのYAGレーザー照射装置(キーエンス社製のYAGレーザー)により、出力80%、スキャン速度2000mm/秒で、上記の帯状に延びる部分と略平行に照射することによって行った。
【0029】
次に、回路形成用レジストを印刷した基板を塩化銅と過酸化水素水の混合液からなるエッチング液によりエッチングし、外周部に幅700μm、厚さ70μmの段部を有する金属回路板を形成した。」



上記摘記事項の記載より、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されているといえる。
・段落【0017】、【0018】の記載によれば、金属-セラミックス接合回路基板の製造方法では、セラミックス基板10上に活性金属含有ろう材を介して金属板12を配置して加熱接合し、この加熱接合した金属板12上の回路形成領域に紫外線硬化型レジストなどのレジスト14をドライフィルムにより形成する。
・段落【0019】の記載によれば、レジスト14の外周から内側に所定の間隔だけ離間した所でレジスト14の外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジスト14を除去して、所定の幅のレジスト除去部16を形成する。
・段落【0020】の記載によれば、エッチングにより金属板12および活性金属含有ろう材18の不要部分を除去した後、レジスト14を除去することにより、金属板12の外周部に所定の幅(段幅L)の所定の厚さ(段厚T)の段部を形成する。
・段落【0025】の記載によれば、金属-セラミックス接合回路基板はパワーモジュールの作成に使用される。

上記技術的事項より、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「セラミックス基板10上に活性金属含有ろう材を介して金属板12を配置して加熱接合し、この加熱接合した金属板12上の回路形成領域に紫外線硬化型レジストなどのレジスト14をドライフィルムにより形成し、
レジスト14の外周から内側に所定の間隔だけ離間した所でレジスト14の外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジスト14を除去して、所定の幅のレジスト除去部16を形成し、
エッチングにより金属板12および活性金属含有ろう材18の不要部分を除去した後、レジスト14を除去することにより、金属板12の外周部に所定の幅(段幅L)の所定の厚さ(段厚T)の段部を形成する、
パワーモジュールの作成に使用される金属-セラミックス接合回路基板の製造方法。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、「セラミックス回路基板の製造方法」に関して、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。

「【請求項1】 活性金属を含むロウ材を用いてセラミックス基板に金属板を接合する工程、接合した金属板の不要部分をエッチングにより除去して所定の回路パターンを形成する工程、および非回路部の不要ロウ材を除去する工程、を含むセラミックス回路基板の製造方法において、不要ロウ材の除去工程が、フッ化アンモニウムと過酸化水素とを含む水溶液を用いて20?40℃で処理する第1処理と、アルカリと過酸化水素とを含む水溶液を用いて20?40℃で処理する第2処理、とからなることを特徴とする、セラミックス回路基板の製造方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大電力用の半導体デバイスであるパワー半導体モジュール(以下、パワーモジュールという)等に使用されるセラミックス回路基板の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、活性金属を含むロウ材を用いてセラミックス基板に金属板を接合した後、エッチングにより回路パターンを形成する回路基板の製造方法において、不要ロウ材の除去処理に特徴のある方法に関する。」

「【0003】パワーモジュール用のセラミックス基板の回路形成は、予めパンチングやエッチングで回路形成された金属板 (例、銅板) をセラミックス基板に接合する方法か、セラミックス基板に金属板 (例、銅板) を接合した後、樹脂質のレジストを所望の回路パターン状に印刷し、レジストで被覆されていない不要部分(非回路部)の金属板をエッチングにより除去する方法により一般に行われる。後者の方法を、以下ではエッチング法という。」

「【0010】本発明の目的は、活性金属を含むロウ材を用いてセラミックス基板と金属板とを接合した後、エッチング法により回路パターンを形成する回路基板の製造方法において、回路パターンの寸法精度を維持するため、回路部の金属板の溶解が少ない組成および温度で不要ロウ材を実質的に完全に除去できる方法を提供することである。」

「【0018】本発明の方法では、セラミックス基板と金属板との接合は活性金属ロウ付け法により、活性金属を含むロウ材を用いて行う。このロウ材の活性金属としては、セラミックス基板と反応してロウ材の濡れ性が確保されれば特に制限されないが、好ましいのはTi、Zr、Hf、およびこれらを主成分とする合金、および加熱により分解してこれらの活性金属を生ずる金属化合物 (これらは活性金属の前駆体であるが、本発明では活性金属に含める) である。加熱すると水素を放出して金属に変換される活性金属の前駆体としては、水素化チタン (TiH_(2)) および水素化ジルコニウム (ZrH_(2)) がある。」

「【0022】こうしてセラミックス基板に接合した金属板の不要部分をエッチングして、金属板に所定の回路パターンを形成する。このエッチングによる回路パターンの形成は、従来と同様にレジストを所定の回路パターンに印刷することにより実施すればよい。
【0023】レジストとしては、熱硬化型または紫外線硬化型の樹脂を主成分とするものが使用でき、レジストの印刷は通常はスクリーン印刷により行う。但し、金属板がハーフエッチ板である場合には、ロール塗布で回路部分だけにレジストを塗布することができる。レジストを加熱または紫外線照射により硬化させた後、レジストで被覆されていない不要部分の金属板をエッチングにより除去する。エッチング液としては金属板を溶解できる液であればよいが、金属板が銅板または銅合金板である場合には、前述したように、塩化第2鉄または塩化第2銅を主成分とする水溶液が使用される。
【0024】その後、回路パターンの金属板上に残ったレジストと、金属板が除去された非回路部のセラミックス基板上に露出した不要ロウ材とを除去すると、セラミックス回路基板が得られる。」

「【0033】
【実施例】本発明を実施例により具体的に説明する。実施例中、部および%は、特に指定のない限り、重量部および重量%である。
【0034】Ag粉末72部およびCu粉末28部に、活性金属のチタンを加熱により生成する水素化チタン粉末をチタンとして5部、または活性金属のジルコニウム粉末を5部、添加し、適量のテルピネオールおよびアクリル樹脂溶液でペースト状にして、ロウ材を調製した。
【0035】このペースト状のロウ材を、37mm×55mm×厚み0.8 mmの窒化アルミニウム基板の両面の全面に、スクリーン印刷機を用いて塗布した。塗布されたロウ材を大気中140 ℃に5分間加熱して乾燥させた後、両面に37mm×55mm×厚み0.30mmの銅板を接触配置し、高純度窒素ガス気流中500 ℃に加熱して脱脂 (有機分の除去) してから、1×10^(-5) Torr の高真空中850 ℃で10分間の加熱を行って、銅板を窒化アルミニウム基板の両面に接合させた。
【0036】得られた接合体の銅板上に、紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷機により回路パターンに印刷した後、UV硬化炉で 600?800 mJ/cm^(2)の紫外線を照射してレジストを硬化させる作業を片面づつ行って、両面にレジストパターンを形成した。
【0037】その後、スプレー式エッチング機を使用し、塩化第2鉄を含有する市販のエッチング液を基板の銅板表面に45℃で約8分間噴霧することによりエッチングを行い、レジストで被覆されていない不要部分 (非回路部) の銅板を除去し、水洗した。
【0038】次いで、エッチングした基板を40℃の2%NaOH水溶液中に約3分間浸漬して、エッチングレジストを剥離し、水洗した後、回路パターン間に残っている不要ロウ材を、表1に示す各種条件で浸漬処理した。不要ロウ材除去の各処理後には水洗を行った。ロウ材の除去処理が終了した後、基板上の水分をアルコールで置換してから、80℃で熱風乾燥した。なお、一部の比較例では、銅の溶解が著しかったため、不要ロウ材を除去した後にエッチングレジストを剥離した。」

上記摘記事項の記載より、甲第2号証には、次の技術的事項が記載されているといえる。
・段落【0001】、【0035】の記載によれば、パワーモジュールに使用されるセラミックス回路基板の製造方法では、窒化アルミニウム基板にロウ材を塗布した後、銅板を接触配置し加熱を行って窒化アルミニウム基板に接合させる。
・段落【0036】の記載によれば、得られた接合体の銅板上に、紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷機により回路パターンに印刷した後、紫外線を照射してレジストを硬化させレジストパターンを形成する。
・段落【0037】の記載によれば、その後、スプレー式エッチング機を使用し、エッチングを行い、レジストで被覆されていない不要部分 (非回路部) の銅板を除去する。
・段落【0038】の記載によれば、次いで、エッチングした基板のエッチングレジストを剥離し、不要ロウ材除去を行う。

上記技術的事項より、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「窒化アルミニウム基板にロウ材を塗布した後、銅板を接触配置し加熱を行って窒化アルミニウム基板に接合させ、
得られた接合体の銅板上に、紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷機により回路パターンに印刷した後、紫外線を照射してレジストを硬化させレジストパターンを形成し、
その後、スプレー式エッチング機を使用し、エッチングを行い、レジストで被覆されていない不要部分 (非回路部) の銅板を除去し、
次いで、エッチングした基板のエッチングレジストを剥離し、不要ロウ材除去を行う、
パワーモジュールに使用されるセラミックス回路基板の製造方法。」

3 甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属-セラミックス回路基板およびその製造方法に関し、特に、セラミックス基板上にアルミニウム回路またはアルミニウム合金回路などの金属回路が形成された金属-セラミックス回路基板およびその製造方法に関する。」

「【0022】
【実施例】
以下、本発明による金属-セラミックス回路基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
4Nのアルミニウムを使用し、溶湯接合法によって、77mm×88mm×0.635mmの大きさのAlN基板の一方の面に厚さ0.4mmのアルミニウム板を接合するとともに、他方の面に厚さ0.15mmのアルミニウム板を接合した。この接合体の両面に、金属回路の形状に近似した形状のアルカリ剥離型エッチングレジストをスクリーン印刷法によって形成した。
【0024】
次に、塩化第二鉄のボーメ濃度が47°Be’になるように塩化第二鉄と水を混合して且つ酸を添加しないで調製した混合液からなるエッチング液を使用して、液温40℃、スプレー圧1.0kgf/cm^(2)とし、接合体とエッチングスプレーノズルとの平均距離が110mmとなるようにして、アルミニウム板をエッチングした。なお、エッチング液中の遊離酸の濃度は、1g/L以下であった。次に、室温で3%NaOH溶液に3分以内浸漬してエッチングレジストを除去した。」

上記摘記事項の記載より、甲第3号証には、次の技術事項(以下、「甲3記載の技術」という。)が記載されているといえる。
「AlN基板にアルミニウム板を接合し、この接合体に金属回路の形状に近似した形状のアルカリ剥離型エッチングレジストをスクリーン印刷法によって形成し、
次に、エッチング液を使用して、液温40℃、スプレー圧1.0kgf/cm^(2)とし、接合体とエッチングスプレーノズルとの平均距離が110mmとなるようにして、アルミニウム板をエッチングすること」

第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性)について
(1)請求項1について
本件の請求項1には、「前記金属回路板に自己粘着型耐エッチングフィルムを貼付するマスキングステップ」、「前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施すことによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップ」と記載されている。
ここで、上記記載は、「パターニングステップ」がパターニング処理により、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外を除去するステップであることを特定し、パターニング処理自体の方法(例えばレーザを用いるか否か)や除去の面位置に対応する金属回路板が除去されるか否かは特定しないものである。したがって、本件の請求項1の記載は、申立理由1における除去の深さ(a)、(b)、(c)を含むか否かにかかわらず、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外を除去するステップとして明確である。
また、本件特許明細書の段落【0027】には、「理想的には、図5(B)に示すように、レーザパターニング装置において上側回路銅板12および下側回路銅板18とロウ材14との界面ぎりぎりまで削ることである。ただし、この場合レーザの焦点を設定することが難しくなることがあり、かつ、レーザがセラミックス基板16まで到達してセラミックス基板を汚損してしまうリスクが考えられる。このため、実際には、図5(C)に示すように板厚の中央、好ましくは板厚の4分の3程度削ることが可能な位置にレーザの焦点を設定すると良い。」と記載されている。
そもそも上述したように、請求項1は「レーザ」によってパターニング処理することまで特定しているわけではないが、明細書の上記記載は、回路銅板(当審注:「回路銅板」は請求項1の「金属回路板」に相当。)とロウ材との界面ぎりぎりまで削るようにレーザの焦点を高精度に設定することが難しくなることがあるため、(回路銅板の)板厚の中央、好ましくは板厚の4分の3程度削る位置にレーザの焦点を設定すると良い旨を記載しているにすぎず、特定の除去の深さが得られるようにレーザの焦点を設定することが実現できないことを表しているものとは認められない。当該記載はむしろ、レーザの焦点を調整することにより、パターニング処理における除去の深さを調整することが可能であることを表しており、当該記載に触れた当業者は、レーザの焦点を調整することにより、申立理由1における除去の深さ(a)、(b)、(c)のいずれをも含む任意の除去の深さでパターニングを実現し得ると理解するものと認められる。
したがって、本件特許明細書の段落【0027】の記載より、本件発明1が明確でないとはいえない。
よって、請求項1に対する申立理由1には理由がない。

(2)請求項2について
本件の請求項2には、「前記パターニングステップにおいて、レーザによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムとともに前記金属回路板の一部を除去する」と記載されている。
ここで、本件特許明細書段落【0026】に「例えば、図5(A)に示すように、レーザ加工によって上側回路基板12および下側回路基板18の一部を削る」と記載され、図5(A)に上側回路基板12の一部厚み分の深さが除去されることが示されていることを考慮すると、請求項2の「金属回路基板の一部を除去する」とは、「金属回路基板の一部厚み分の深さを除去する」ことを意味するものと認められる。
したがって、請求項2の当該記載は、パターニングステップが、レーザによって、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外が除去され、当該除去の面位置に対応する金属回路板の一部厚み分の深さも除去されることを表しており、レーザによる除去の深さが申立理由1における除去の深さ(b)であるものとして、明確である。
そして、上記「(1)請求項1について」で述べたように、本件特許明細書の段落【0027】の記載が、特定の除去の深さが得られるようにレーザの焦点を設定することが実現できないことを表しているとは認められないから、本件特許明細書の段落【0027】の記載により、本件発明2が明確でないとはいえない。
したがって、請求項2に対する申立理由1には理由がない。

(3)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)請求項1について
上記「1 申立理由1」の「(1)請求項1について」で述べたように、本件の請求項1のパターニングステップに関する記載は、「パターニングステップ」がパターニング処理により、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外を除去するステップであることを特定し、パターニング処理自体の方法(例えばレーザを用いるか否か)や除去の面位置に対応する金属回路板が除去されるか否かは特定しないものである。したがって、本件の請求項1は、申立理由2における除去の深さ(a)、(b)、(c)を含むか否かにかかわらず、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外を除去することを特定するものである。
これに対して、本件特許明細書の段落【0026】の「この実施形態において特徴的なことは、図3(B)および図4(B)に示すレーザパターニングにおいて、マスキングフィルム20を除去する通常の処理に加えて、さらに上側回路銅板12および下側回路銅板18をレーザパターニング装置によって削ることである。」なる記載を考慮すれば、段落【0027】の「板厚の中央、好ましくは板厚の4分の3程度削ることが可能な位置にレーザの焦点を設定すると良い。」なる記載は、自己粘着型耐エッチングフィルム及び金属回路板の板厚の中央好ましくは板厚の4分の3程度を削ることを表していることは明らかであり、段落【0027】の記載も、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外が除去されることを表している。
してみると、本件の請求項1の記載および本件特許明細書の記載はいずれも、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外が除去されることを表しており、本件の請求項1の記載が、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えたものであるとはいえない。
また、本件の請求項1の記載は、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外が除去されること、すなわち、除去の深さが少なくともエッチングフィルムの厚みであることを特定するものである。そして、除去の深さが少なくともエッチングフィルムの厚みであることは、上記本件特許明細書段落【0026】等に記載された技術事項であるから、本件の請求項1の記載が、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えたものであるとはいえない。
したがって、請求項1に対する申立理由2には理由がない。

(2)請求項2について
上記「1 申立理由1」の「(2)請求項2について」で述べたように、本件の請求項2の記載は、パターニングステップが、レーザによって、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外が除去され、当該除去の面位置に対応する金属回路板の一部厚み分の深さも除去されることを表しており、除去の深さが申立理由2における除去の深さ(b)であると特定するものである。
本件特許明細書の段落【0027】には、「板厚の中央、好ましくは板厚の4分の3程度削ることが可能な位置にレーザの焦点を設定すると良い。」と記載されているが、当該記載は、回路銅板(金属回路板)の除去の深さを板厚の中央好ましくは板厚の4分の3程度に限定するものではない。
また、同段落【0026】に「この実施形態において特徴的なことは、図3(B)および図4(B)に示すレーザパターニングにおいて、マスキングフィルム20を除去する通常の処理に加えて、さらに上側回路銅板12および下側回路銅板18をレーザパターニング装置によって削ることである。例えば、図5(A)に示すように、レーザ加工によって上側回路銅板12および下側回路銅板18の一部を削ることによって、エッチング処理によって削る必要量が少なくなるため、サイドエッチングの影響を低減することが可能になる。」とあり、本件発明2の作用効果は、除去の深さの程度にかかわらず回路銅板(金属回路板)の一部を削ることによって得られるものであることが記載されている。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、自己粘着型耐エッチングフィルムの回路パターンに対応する領域以外を除去し、当該除去の面位置に対応する金属回路板の一部厚み分の深さも除去すること(除去の深さを申立理由2における除去の深さ(b)とすること)が記載されているといえ、本件の請求項2の記載が、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えたものであるとはいえない。
したがって、請求項2に対する申立理由2には理由がない。

(3)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえない。

3 申立理由3(進歩性)について
(1)甲第1号証を主たる引用例とした進歩性について
ア 請求項1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「セラミックス基板10」は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。そして、甲1発明の「金属板12」は板上に「回路形成領域」を有するから、本件発明1の「金属回路基板」に相当する。
してみると、甲1発明の「セラミックス基板10上に活性金属含有ろう材を介して金属板12を配置して加熱接合」することは、本件発明1の「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合」されることに相当する。
また、甲1発明の「セラミックス基板10」と「金属板12」を加熱接合して製造される「金属-セラミックス接合回路基板」は、「パワーモジュールの作成に使用される」ものであるから、本件発明1の「パワーモジュール基板」に相当する。
したがって、甲1発明の「パワーモジュールの作成に使用される金属-セラミックス接合回路基板の製造方法」は、本件発明1の「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合されてなるパワーモジュール基板の生産方法」に相当する。

b 甲1発明の「ドライフィルム」により形成される「レジスト14」は、「耐エッチングフィルム」であるから、甲1発明の「金属板12上の回路形成領域に紫外線硬化型レジストなどのレジスト14をドライフィルムにより形成」することと本件発明1とは、「前記金属回路板に耐エッチングフィルムを」配置する「マスキングステップ」を含むものである点で共通する。
ただし、「ドライフィルム」は「自己粘着型」耐エッチングフィルムとはいえないから、マスキングステップにおいて、本件発明1は「自己粘着型」耐エッチングフィルムを「貼付」するのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。

c 甲1発明の「レジスト14の外周から内側に所定の間隔だけ離間した所でレジスト14の外周に沿って帯状に延びる部分に、レーザー光を照射することにより、その照射部分のレジスト14を除去して、所定の幅のレジスト除去部16を形成」する構成は、「回路形成領域」に形成された「レジスト14」に対して行われるものであるから、回路パターンに対応する領域以外を除去するものではない。
したがって、本件発明1は「前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施すことによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップ」を有するのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。

d 甲1発明の「エッチングにより金属板12および活性金属含有ろう材18の不要部分を除去」することは、「レジスト14」が形成された領域以外の「金属板12および活性金属含有ろう材18」を除去することであるから、本件発明1とは、「前記耐エッチングフィルムが除去された領域を」「エッチングするエッチングステップ」を含むものである点で共通する。
ただし、エッチングステップにおいて、本件発明1は「前記自己粘着型」耐エッチングフィルムが除去された領域を「スプレイエッチング処理によって」エッチングするのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。

以上を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合されてなるパワーモジュール基板の生産方法であって、
前記金属回路板に耐エッチングフィルムを配置するマスキングステップと、
前記耐エッチングフィルムが除去された領域をエッチングするエッチングステップと、
を少なくとも含むパワーモジュール基板の生産方法。」

〈相違点1〉
マスキングステップにおいて、本件発明1は「自己粘着型」耐エッチングフィルムを「貼付」するのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。

〈相違点2〉
本件発明1は「前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施すことによって、前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去するパターニングステップ」を有するのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。

〈相違点3〉
エッチングステップにおいて、本件発明1は「前記自己粘着型」耐エッチングフィルムが除去された領域を「スプレイエッチング処理によって」エッチングするのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。

(イ)相違点についての判断
〈相違点1〉について検討する。
甲第3号証には、「AlN基板にアルミニウム板を接合し、この接合体に金属回路の形状に近似した形状のアルカリ剥離型エッチングレジストをスクリーン印刷法によって形成し、次に、エッチング液を使用して、液温40℃、スプレー圧1.0kgf/cm^(2)とし、接合体とエッチングスプレーノズルとの平均距離が110mmとなるようにして、アルミニウム板をエッチングすること」(甲3記載の技術)が記載されているものの、回路パターンをエッチングにより形成するためのレジストに「自己粘着型」のフィルムを用いることは、甲第1号証および甲第3号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本願出願日前周知技術であったものとも認められない。
そして、本件明細書の段落【0022】、【0042】に記載されるように、本件発明1は、「剥離した後に糊残りが全く無いという特徴」すなわち「粘着及び剥離が可逆的に可能である着脱自在という特徴」を有する「自己粘着型」耐エッチングフィルムを用いることにより、「粘着剤が残らない自己粘着型のフィルムであるために、ピーリング処理によって確実にマスキングフィルム」「の剥離が可能」となり、「粘着剤が残らない自己粘着型のフィルムは作業性の向上に寄与する」との効果を奏するものである。
したがって、甲1発明において、レジストとして「自己粘着型」のフィルムを用いて本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)小活
以上のことより、相違点2ないし相違点3について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 請求項2について
本件発明2は、本件発明1にさらに限定した構成を追加したものである。
よって、上記アに示した理由と同じ理由により、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲第2号証を主たる引用例とした進歩性について
ア 請求項1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「窒化アルミニウム基板」は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。そして、甲2発明の「銅板」は「不要部分(非回路部)」が除去されるから、本件発明1の「金属回路基板」に相当する。
してみると、甲2発明の「窒化アルミニウム基板にロウ材を塗布した後、銅板を接触配置し加熱を行って窒化アルミニウム基板に接合」することは、本件発明1の「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合」されることに相当する。
また、甲2発明の「窒化アルミニウム基板」と「銅板」を接合して製造される「セラミックス回路基板」は、「パワーモジュールに使用される」ものであるから、本件発明1の「パワーモジュール基板」に相当する。
したがって、甲2発明の「パワーモジュールに使用されるセラミックス回路基板の製造方法」は、本件発明1の「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合されてなるパワーモジュール基板の生産方法」に相当する。

b 甲2発明の「レジスト」は、「耐エッチング」部材であるから、甲2発明の「銅板上に、紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷機により回路パターンに印刷した後、紫外線を照射してレジストを硬化させレジストパターンを形成」することと本件発明1とは、「前記金属回路板に」「耐エッチング」部材を配置する「マスキングステップ」を含むものである点で共通する。
ただし、印刷される「紫外線効果型エッチングレジスト」は「自己粘着型」耐エッチングフィルムとはいえないから、マスキングステップにおいて、本件発明1は「自己粘着型」耐エッチング「フィルム」を「貼付」するのに対して、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。

c 甲2発明の「紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷機により回路パターンに印刷した後、紫外線を照射してレジストを硬化させレジストパターンを形成」することと本件発明1とは、「前記耐エッチング」部材「に対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施す」「パターニングステップ」を含むものである点で共通する。
ただし、パターニングステップにおいて、本件発明1は「前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、」「前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去する」のに対して、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。

d 甲2発明の「スプレー式エッチング機を使用し、エッチングを行い、レジストで被覆されていない不要部分 (非回路部) の銅板を除去」することと本件発明1とは、「前記耐エッチング」部材が「除去された領域をスプレイエッチング処理によってエッチングするエッチングステップ」を含むものである点で共通する。
ただし、エッチングステップにおいてエッチングする領域が、本件発明1は「前記自己粘着型」耐エッチング「フィルム」が除去された領域であるのに対して、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。

以上を総合すると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
「セラミックス基板にロウ材を介して金属回路板が接合されてなるパワーモジュール基板の生産方法であって、
前記金属回路板に耐エッチング部材を配置するマスキングステップと、
前記耐エッチング部材に対して、所望形状の回路パターンに対応するパターニング処理を施すパターニングステップと、
前記耐エッチング部材が除去された領域をスプレイエッチング処理によってエッチングするエッチングステップと、
を少なくとも含むパワーモジュール基板の生産方法。」

〈相違点4〉
マスキングステップにおいて、本件発明1は「自己粘着型」耐エッチング「フィルム」を「貼付」するのに対して、甲2発明はその旨特定されていない点。

〈相違点5〉
パターニングステップにおいて、本件発明1は「前記自己粘着型耐エッチングフィルムに対して、」「前記自己粘着型耐エッチングフィルムにおける回路パターンに対応する領域以外を除去する」のに対して、甲2発明はその旨特定されていない点。

〈相違点6〉
エッチングステップにおいてエッチングする領域が、本件発明1は「前記自己粘着型」耐エッチング「フィルム」が除去された領域であるのに対して、甲2発明はその旨特定されていない点。

(イ)相違点についての判断
〈相違点4〉について検討する。
甲第3号証には、「AlN基板にアルミニウム板を接合し、この接合体に金属回路の形状に近似した形状のアルカリ剥離型エッチングレジストをスクリーン印刷法によって形成し、次に、エッチング液を使用して、液温40℃、スプレー圧1.0kgf/cm^(2)とし、接合体とエッチングスプレーノズルとの平均距離が110mmとなるようにして、アルミニウム板をエッチングすること」(甲3記載の技術)が記載されているものの、回路パターンをエッチングにより形成するためのレジストに「自己粘着型のフィルム」を用いることは、甲第2号証および甲第3号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本願出願日前周知技術であったものとも認められない。
そして、本件明細書の段落【0022】、【0042】に記載されるように、本件発明1は、「剥離した後に糊残りが全く無いという特徴」すなわち「粘着及び剥離が可逆的に可能である着脱自在という特徴」を有する「自己粘着型」耐エッチング「フィルム」を用いることにより、「粘着剤が残らない自己粘着型のフィルムであるために、ピーリング処理によって確実にマスキングフィルム」「の剥離が可能」となり、「粘着剤が残らない自己粘着型のフィルムは作業性の向上に寄与する」との効果を奏するものである。
したがって、甲2発明において、レジストとして「自己粘着型のフィルム」を用いて本件発明1の相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)小活
以上のことより、相違点5ないし相違点6について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 請求項2について
本件発明2は、本件発明1にさらに限定した構成を追加したものである。
よって、上記アに示した理由と同じ理由により、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし2は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものでない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論とのとおり決定する。
 
異議決定日 2021-04-16 
出願番号 特願2016-248685(P2016-248685)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 537- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 弘亘  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山田 正文
須原 宏光
登録日 2020-07-10 
登録番号 特許第6732239号(P6732239)
権利者 株式会社NSC
発明の名称 パワーモジュール基板およびその生産方法  
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