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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B09B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B09B
管理番号 1373811
異議申立番号 異議2021-700229  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-02 
確定日 2021-05-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6749707号発明「パルプ回収装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6749707号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6749707号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成31年2月26日の出願であって、令和2年8月14日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年3月2日に特許異議申立人 池田 貴博(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
使用済み衛生用品(6)を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内からパルプ(24)を回収するパルプ回収装置(23)であって、
筐体(25)と、
前記筐体(25)内に回転状態で配置され、一側から導入された前記排水から水分とパルプ(24)とに分離するとともに他側に向けて前記パルプ(24)が移動し他側から水分と分離されたパルプ(24)が回収されるドラムスクリーン(26)と、
前記ドラムスクリーン(26)を回動駆動する駆動機構(27)と、
前記ドラムスクリーン(26)内で排水から水分と分離されるパルプ(24)にすすぎ液(28)を噴射するすすぎ液噴射部(29)と、
前記筐体(25)内で前記ドラムスクリーン(26)の下部側に設けられて前記パルプと分離された水分と前記すすぎ液(28)を受ける受水槽(30)と、を備え、
前記ドラムスクリーン(26)は、円筒状で外周に複数のスリット(41)が形成され回転自在とされた筒状本体(42)と、この筒状本体(42)の軸方向の一側に設けられ前記排水が導入される導入口側端面(43)と、前記筒状本体(42)の軸方向の他側に設けられ前記パルプ(24)が回収される回収口側端面(44)と、からなり、
前記筒状本体(42)は、前記導入口側端面(43)より前記回収口側端面(44)が下方に位置するように、水平に対して傾斜して配置されていることを特徴とするパルプ回収装置(23)。
【請求項2】
前記筐体(25)は、前記ドラムスクリーン(26)の一側に対向する前板部(31)と、前記ドラムスクリーン(26)の他側に対向する後板部(32)と、前記ドラムスクリーン(26)の上部を覆う上板部(33)と、前記ドラムスクリーン(26)の両側部を覆い互いに対向する一対の側板部(34)とで形成され、
前記前板部(31)には前記排水を前記ドラムスクリーン(26)の一側に導入する排水導入口(39)が設けられ、前記後板部(32)には水分と分離されたパルプ(24)が前記ドラムスクリーン(26)の他側から回収されるパルプ回収口(40)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパルプ回収装置(23)。
【請求項3】
前記駆動機構(27)は、前記ドラムスクリーン(26)の軸方向に沿って該ドラムスクリーン(26)の下部側で前記筐体(25)の前板部(31)と後板部(32)間に平行に配置されるとともに、両端部が前記前板部(31)と前記後板部(32)にそれぞれ回転可能に支持された一対の駆動シャフト(50、50)と、
これらの前記一対の駆動シャフト(50、50)の前記前板部(31)側と前記後板部(32)側にそれぞれ固定されて前記ドラムスクリーン(26)の外周に当接し該ドラムスクリーン(26)を支持するローラ(51、51)と、
前記前板部(31)の外側に配置され前記前板部(31)に固定されて前記一対の駆動シャフト(50、50)のうち一方の駆動シャフト(50)に回転駆動力を伝達するモータ(52)と、
前記一方の駆動シャフト(50)に伝達された前記モータ(52)の回転駆動力を前記一対の駆動シャフト(50、50)のうち他方の駆動シャフト(50)に伝達する駆動伝達部(53)と、で形成され、
前記駆動伝達部(53)は、前記一対の駆動シャフト(50、50)の前記前板部(31)を貫通した先端部にそれぞれ固定されたスプロケット(54、54)と、
前記スプロケット(54、54)に巻き掛けられて、前記一方の駆動シャフト(50)に伝達された前記モータ(52)の回転駆動力を前記スプロケット(54、54)を介して他方の駆動シャフト(50)に伝達するローラチェーン(56)と、で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパルプ回収装置(23)。
【請求項4】
前記すすぎ液噴射部(29)は、前記筒状本体(42)の軸方向に沿って前記筒状本体(42)の上部に配置され、筒状本体(42)の軸方向に沿って形成されたすすぎ液供給管(57)と、該すすぎ液供給管(57)に設けられて前記筒状本体(42)内の前記パルプ(24)に向けてすすぎ液(28)を噴射し前記パルプ(24)をすすぎ洗浄する噴射ノズル(58)とからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のパルプ回収装置(23)。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年3月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・請求項1の記載では、すすぎ液噴射部(29)の位置が特定されていない。そのため、請求項1に記載の発明は、すすぎ液噴射部(29)の位置がドラムスクリーン(26)の外側及び内側の両方の場合を含むことになる。しかし、発明の詳細な説明では、すすぎ液噴射部(29)の位置がドラムスクリーン(26)の外側の場合のみ記載されており、内側の場合が記載されていない。ドラムスクリーン(26)の内側にすすぎ液噴射部を設置するためには、ドラムスクリーン(26)の回転を阻害しないようにしながら、その内側の所定の位置にすすぎ液供給管を固定しなければならず、かつ、ドラムスクリーン(26)の内側に固定されたすすぎ液供給管にその外側からすすぎ液を供給できるようにする必要があるので、技術的には容易であるとはいえない。したがって、出願時の技術常識を考慮しても、請求項1に記載の発明の範囲を、内側の場合まで拡張できるとは言えない。

3 申立理油3(明確性要件)
本件特許の請求項1に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・請求項1の記載では、すすぎ液噴射部(29)がどこからすすぎ液をドラムスクリーン(26)内側のパルプ(24)に噴射するか明確ではなく、さらに、すすぎ液をドラムスクリーン(26)の外側から噴射するにしても、外側からどのように噴射すればすすぎ液がドラムスクリーン内側のパルプに到達させられるか明確ではない。

4 証拠方法
甲第1号証:特開2018-167152号公報
甲第2号証:特開2014-31597号公報
甲第3号証:特開平6-178902号公報
甲第4号証:特開2013-11036号公報
甲第5号証:中国登録実用新案第200960428号公報
甲第6号証:特開2000-93703号公報
甲第7号証:特開2002-126416号公報
甲第8号証:特開2010-5614号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「使用済み衛生用品の処理装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の使用済み紙おむつの処理装置では、紙おむつを水溶物と不溶物とに分離解体したり、尿等の汚物(汚水)を吸収した高分子ポリマーとパルプ、プラスチックを分離解体したりしており、尿等の汚物を吸収した高分子ポリマーについては、分離解体されていない。このため、分離解体した高分子ポリマーを一般廃棄物として廃棄し焼却処分を行うと焼却後に有害な物質が生成されたり、高分子ポリマーに吸収されている汚物から感染物質が排出されるおそれがある。
【0007】
また、上記使用済み紙おむつの処理装置では、パルプ、高分子ポリマー、プラスチックに分離解体する場合、プラスチックをドラム内に残したまま、汚物と高分子ポリマーとパルプを処理液中に散在させて、この処理液を濾過することによりパルプと高分子ポリマーを残して、汚物を含んだ処理液を下水処理施設側へ排出している。このため、汚物を含んだ消毒後の処理液中には、多くのパルプが残存している可能性があり、また、ドラム内に残ったプラスチックにもパルプが付着している可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、使用済紙おむつ等の使用済み衛生用品を、衛生用品を構成する複数種の素材に分離するとともに高分子ポリマーに吸収されている汚物も高分子ポリマーから分離し、複数種の素材ごとに選別することができる使用済み衛生用品の処理装置の提供を目的とする。」

・「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る使用済み衛生用品の処理装置(以下、「処理装置」という)の実施の形態について説明する。本発明に係る処理装置は、使用済み衛生用品を、衛生用品を構成する複数種の素材と、使用済み衛生用品に吸収されている汚物とを分離し、分離した素材を回収する。
【0018】
本実施の形態において処理される衛生用品としての紙おむつは、表面材、漏れ防止の立体ギャザー、吸水材、防水材、その他によって構成されている。表面材は、ポリエステルやポリプロピレンの不織布などが使用されている。漏れ防止の立体ギャザーは不織布と伸縮性素材が使用されている。吸水材は、吸水紙、綿状パルプ、高分子吸収材などの組み合わせで構成されている。防水材は、紙おむつの外側を覆う防水シートで合成繊維等からなる不織布が使用されている。その他に、紙おむつを止める粘着テープ、止着材等が使用されている。本実施の形態において、素材とは、紙おむつの高分子吸収体、表面材、立体ギャザー等に用いられているプラスチック、吸水紙等に用いられているパルプ、粘着テープやゴム等のその他を意味する。
【0019】
また、本実施の形態における処理装置に用いられる分解水は、分解剤としての石灰と、消毒剤としての次亜塩素酸と、水とを混合したものであり、処理する使用済み紙おむつの種類、処理する使用済み紙おむつの量によって、石灰、次亜塩素、水の配合量が設定されている。また、必要に応じて、洗浄剤や漂白剤等を加えても良い。なお、分解水として石灰と水とを混合したものを用い、消毒剤としての次亜塩素酸は、石灰と水とを混合した分解水とは別に処理装置に供給しても良い。本実施の形態では、分解剤としての石灰と、水と、消毒剤としての次亜塩素酸とを混合したものを分解水としている。以下、本実施の形態の処理装置について説明する。本実施の形態では、衛生用品として使用済紙おむつを処理する例について説明する。
【0020】
[処理装置の全体構成と実施例の特徴]図1に示すように、本実施の形態の処理装置1は、使用済み紙おむつ2と、この紙おむつ2を分解する分解水(図2参照)3とが投入され、投入された分解水3と使用済み紙おむつ2を混ぜ合わせて使用済み紙おむつ2を複数種の素材に分離するとともに使用済み紙おむつ2に吸収されている汚物(汚水)を分離し、複数種の素材を脱水する分離機4と、分離機4内の分解水3とともに汚物含む排水を外部へ排出する排出部5と、分離機4によって分離された素材が投入され乾燥させることで使用済み紙おむつ2を構成する少なくともパルプとプラスチックを選別可能な選別機6とを備えている。」

・「【0035】
[排出部]
排出部5は、図2、図3に示すように、外胴分離槽8内の分解水が排出される排水受け槽34と、排水を濾過して一旦貯留する排水ピット35と、排水受け槽34と排水ピット35とを連通し排水を排水ピット35に流す排水管36とで構成されている。排水受け槽34は、外胴分離槽8の下部側に配置され、筐体7に固定されている。排水受け槽34からは回収管37が突出している。この回収管37は、外胴分離槽8内まで延設されている。回収管37は、排水受け槽34と外胴分離槽8内とを連通している。
【0036】
そして、回収管37は、外胴分離槽8内の排水、すなわち、供給された分解水によって使用済み紙おむつ2から分解され、高分子ポリマーに含まれていた汚物(尿等の汚水)、付着していた汚物、パルプが混在した分解水を排水受け槽34内に排出する。排水受け槽34に排水されたパルプを含む分解水は、排水管36を通って排水ピット35に貯留される。排水ピット35に貯留された分解水中には、パルプが大量に含まれており、パルプ回収装置38によってパルプが分解水と分離されて回収される。
【0037】
パルプ回収装置38は、図5に示すように、一次ピット39と、一次ロータリスクリーン40aと、一次スクリュウ脱水機42aと、排水パルプ洗浄槽41と、二次ロータリスクリーン40bと、二次スクリュウ脱水機42bとで構成されている。一次ピット39には、内胴分離槽9内から排出されたパルプと汚物(汚水)が溶け込んだ分解水が、排水ピット35からポンプ43によって送られる。排水ピット35、一次ピット39を通すことにより、分解水中に混在している大きな部材が分離される。排水ピット35、一次ピット39を通って混在している大きな部材が分離された分解水は、ポンプ44によって一次ロータリスクリーン40aに送られる。
【0038】
一次ロータリスクリーン40aは、図6に示すように、ロータリーシャフト46と、このロータリーシャフト46を回転駆動させるモータ47と、ロータリーシャフト46の書いてにより回転するスクリーンドラム48とが筐体45内に設けられて概略構成されている。二次ロータリスクリーン40bは一次ロータリスクリーン40aと同構成なので説明は省略する。
【0039】
スクリーンドラム48内には、一次ピット39から、パルプと汚物(汚水)が溶け込んでいる分解水が供給口49より投入される。この一次ロータリスクリーン40aによって、分解水中の固形物(パルプ)が分解水の水分と分離され、分解水から分離された水分は筐体45の下部に集められて回収される。分解水から分離されたパルプは、一次スクリュウ脱水機42aに送られる。一次スクリュウ脱水機42aに送られたパルプは、脱水された後に排水パルプ洗浄槽41に送られる。排水パルプ洗浄槽41内でパルプは洗浄液(水)と混ぜ合わされて洗浄され、ポンプ51によって二次ロータリスクリーン40bに送られる。二次ロータリスクリーン40bに送られた洗浄後のパルプは、固形物(パルプ)と洗浄液(水)とに分離される。洗浄液(水)と分離された固形物(パルプ)は二次スクリュウ脱水機42bに送られ、固形物(パルプ)と分離された洗浄液(水)は一次ロータリスクリーン40aにより回収される分解水と同様に回収される。二次スクリュウ脱水機42bに送られた水分を含んだ固形物(水)は、脱水されて、回収槽50に回収される。」

・「【図5】

【図6】



イ 甲1の図6から看取される事項
甲1の図6から、次の事項が看取される。

・スクリーンドラム48には、スクリーンドラム48(両端部を除く固液分離を行う本体部分)の軸方向の一端に供給口49を有する供給側の端面すなわち供給側端面及び他端にパルプの排出口を有する排出側の端面すなわち排出側端面が、それぞれ存在すること。

・スクリーンドラム48(本体部分)は、供給口49よりパルプの排出口が下方に位置するように、水平に対してある角度(ここで、角度を「θ」とする。)だけ傾斜して配置されていること。

・筐体45には、図6の右方の位置に右側面部(供給口49が位置する面)が、図6の左方の位置に左側面部(パルプの排出口が位置する面)が、図6の上方の位置に上面部(スクリーンドラム48の上側の面)並びに図6の手前及び奥の位置に前側面部及び後側面部(スクリーンドラム48の手前側及び奥側の面)が、それぞれ存在すること。

そして、これらを図6に反映すると、以下の図aのようになる。



ウ 甲1発明
上記ア及びイを整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「使用済み紙おむつ2を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内からパルプを回収するパルプ回収装置38であって、
筐体45と、
筐体45内に回転状態で配置され、一側から導入された排水から水分とパルプとに分離するとともに他側に向けてパルプが移動し他側から水分と分離されたパルプが回収されるスクリーンドラム48と、
スクリーンドラム48を回動駆動するモータ47と、
筐体45内でスクリーンドラム48の下部側に設けられてパルプと分離された水分を受ける筐体45の下部と、を備え、
スクリーンドラム48は、円筒状で回転自在とされたスクリーンドラム48の本体部分と、このスクリーンドラム48の本体部分の軸方向のー側に設けられ排水が導入される供給口49を有する供給側端面と、スクリーンドラム48の本体部分の軸方向の他側に設けられパルプが回収されるパルプの排出口を有する排出側端面と、からなり、
スクリーンドラム48の本体部分は、供給口49を有する供給側端面よりパルプの排出口を有する排出側端面が下方に位置するように、水平に対して角度θだけ傾斜して配置されているパルプ回収装置38。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「使用済み紙おむつ2」は本件特許発明1における「使用済み衛生用品(6)」に相当し、以下同様に、「パルプ」は「パルプ(24)」に、「パルプ回収装置38」は「パルプ回収装置(23)」に、「筐体45」は「筺体(25)」に、「スクリーンドラム48」は「ドラムスクリーン(26)」に、「モータ47」は「駆動機構(27)」に、「筺体45の下部」は「受水槽(30)」に、「スクリーンドラム48の本体部分」は「筒状本体(42)」に、「供給口49を有する供給側端面」は「導入口側端面(43)」に、「パルプの排出口を有する排出側端面」は「回収口側端面(44)」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「スクリーンドラム48の本体部分は、供給口49を有する供給側端面よりパルプの排出口を有する排出側端面が下方に位置するように、水平に対して角度θだけ傾斜して配置されている」は本件特許発明1における「前記筒状本体(42)は、前記導入口側端面(43)より前記回収口側端面(44)が下方に位置するように、水平に対して傾斜して配置されている」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「使用済み衛生用品(6)を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内からパルプ(24)を回収するパルプ回収装置(23)であって、
筐体(25)と、
前記筐体(25)内に回転状態で配置され、一側から導入された前記排水から水分とパルプ(24)とに分離するとともに他側に向けて前記パルプ(24)が移動し他側から水分と分離されたパルプ(24)が回収されるドラムスクリーン(26)と、
前記ドラムスクリーン(26)を回動駆動する駆動機構(27)と、
前記筐体(25)内で前記ドラムスクリーン(26)の下部側に設けられて前記パルプと分離された水分を受ける受水槽(30)と、を備え、
前記ドラムスクリーン(26)は、円筒状で回転自在とされた筒状本体(42)と、この筒状本体(42)の軸方向の一側に設けられ前記排水が導入される導入口側端面(43)と、前記筒状本体(42)の軸方向の他側に設けられ前記パルプ(24)が回収される回収口側端面(44)と、からなり、
前記筒状本体(42)は、前記導入口側端面(43)より前記回収口側端面(44)が下方に位置するように、水平に対して傾斜して配置されているパルプ回収装置(23)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては「前記ドラムスクリーン(26)内で排水から水分と分離されるパルプ(24)にすすぎ液(28)を噴射するすすぎ液噴射部(29)と、
前記筐体(25)内で前記ドラムスクリーン(26)の下部側に設けられて前記パルプと分離された水分と前記すすぎ液(28)を受ける受水槽(30)と、を備え」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。

<相違点2>
本件特許発明1においては「円筒状で外周に複数のスリット(41)が形成され回転自在とされた筒状本体(22)」と特定されているのに対し、甲1発明においては「円筒状で回転自在とされたスクリーンドラム48の本体部分」と特定されている点。

イ 判断
まず、相違点1から検討する。
甲1の【0039】によると、甲1発明は、その下流に設けられた「排水パルプ洗浄槽41」において、「パルプ」の洗浄が行われるものである。
そして、甲1には、甲1発明において、「パルプ」の洗浄を、下流に設けられた「排水パルプ洗浄槽41」で行うことに代えて又は下流に設けられた「排水パルプ洗浄槽41」で行うことに加えて、「スクリーンドラム48」内で「パルプ」に「すすぎ液」を噴射して行うことの動機付けとなる記載はないし、他の証拠にも、そうすることの動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「使用済み衛生用品を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内から、排水内に含まれるパルプを簡単な設備によって回収することができて、パルプを回収するためのコストの低減を図ることができる。」(本件特許明細書の【0016】)という甲1発明及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)申立理由1についてのむすび
したがって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は、おおむね次のとおりである。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品を複数種の素材に分解し、パルプが溶解した状態の排水内からパルプを回収するパルプ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や老人ホーム等では、衛生用品である使い捨てのおむつとして紙製のおむつ(紙おむつ)が使用されている。この紙おむつは、パルプ等からなる吸収体と、吸収体が吸収した水分を保持する高分子吸収体(高分子ポリマー)と、これらを包む防水材(プラスチック)などの素材から構成されている。また、尿漏れパッド等もパルプ等からなる吸収体と、吸収体が吸収した水分を保持する高分子吸収体(高分子ポリマー)と、これらを包む防水材(プラスチック)などの素材から構成されている。これらの使用した後の使用済みの紙おむつや尿漏れパッド等の衛生用品は、現状では一般廃棄物として処理(処分)されている。
【0003】
これらの使用済み紙おむつや尿漏れパッド等の衛生用品をそのまま一般廃棄物として、例えば焼却処分すると有害物質が生成されたり、埋め立て処分すると感染物質等により土壌が悪化する可能性がある。
【0004】
このため、衛生的、環境的な観点から、衛生用品として使用済み紙おむつを素材ごとに分解して処理する使用済み紙おむつの処理装置が、特許文献1、2、3において提案されている。同文献1、2、3にて提案されている使用済み紙おむつの処理装置では、回転するドラム内で、使用済み紙おむつを処理液と混合させることで、パルプ、高分子ポリマー、プラスチックの素材に分解している。
【0005】
上記使用済み紙おむつの処理装置では、パルプ、高分子ポリマー、プラスチックに分離・解体する場合、プラスチックをドラム内に残したまま、汚物と高分子ポリマーとパルプを処理液中に散在させて、この処理液を濾過することによりパルプと高分子ポリマーを残して、汚物を含んだ処理液を下水処理施設側へ排出している。しかし、汚物を含んだ消毒後の処理液中には、多くのパルプが残存している。
【0006】
使用済み紙おむつを分離・解体した後の処理液中に残存している多くのパルプを回収するパルプ回収装置が特許文献4に提案されている。このパルプ回収装置は、裁断または破砕した使用済み紙おむつを反応槽、溶解分離機を用いてビニールとそれ以外の原液(パルプ溶解液)に分離する。次にパルプ溶解液中からポリマー除去装置を用いてポリマーを除去し、ポリマーを除去したパルプ溶解液中から異物除去装置によって異物を除去する。異物が除去されたパルプ溶解液をパルプ洗浄槽を用いて洗浄し、洗浄されたパルプ溶解液を成型乾燥機により脱水して成型乾燥してパルプを回収している。
【先行技術文献】
・・・(略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記パルプ回収装置では、使用済み紙おむつに含まれるビニールと分離されたパルプ溶解液からパルプを回収するために、ポリマー除去装置、異物除去装置、パルプ洗浄槽、成型乾燥機を用いてそれぞれ処理する必要がある。このため、使用済み紙おむつからパルプを回収するための設備が大掛かりとなり、パルプを回収するのに手間がかかる。
【0009】
また、パルプを回収するための設備が大掛かりとなるため、パルプを回収するためのコストも高くなる。
【0010】
そこで、本発明は、使用済み衛生用品を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内から、排水内に含まれるパルプを簡単な設備によって回収することができて、パルプを回収するためのコストの低減を図ることができるパルプ回収装置の提供を目的とする。」

・「【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回動駆動するドラムスクリーン内で排水中のパルプが水分と分離されつつ、一側から他側に向けて移動するため、使用済み衛生用品を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内から、排水内に含まれるパルプを簡単な設備によって回収することができて、パルプを回収するためのコストの低減を図ることができる。」

・「【0020】
その他に、紙おむつを止める粘着テープ、止着材等が使用されている。本実施の形態において、素材とは、紙おむつの高分子吸収体、表面材、立体ギャザー等に用いられているプラスチック、吸水紙等に用いられているパルプ、粘着テープやゴム等のその他を意味する。
【0021】
また、本実施の形態において、分離機内で水とともに使用済み紙おむつを分解する分解水は、分解剤としての石灰と、消毒剤としての次亜塩素酸と、水とを混合したものであり、処理する使用済み紙おむつの種類、処理する使用済み紙おむつの量によって、石灰、次亜塩素酸、水の配合量が設定されている。また、必要に応じて、洗浄剤や漂白剤等を加えても良い。
【0022】
なお、分解水として石灰と水とを混合したものを用い、消毒剤としての次亜塩素酸は、石灰と水とを混合した分解水とは別に処理装置に供給しても良い。本実施の形態では、分解剤としての石灰と、水と、消毒剤としての次亜塩素酸とを混合したものを分解水としている。」

・「【0030】
分解水7に溶けることのない固形物(分解水に溶けなかったパルプ、プラスチック)は内胴分離槽4内に残り、分解水に溶けたパルプや汚物(汚水)は、排出部19に排出される。排出部19は、外胴分離槽3内の分解水が排出される排水受け槽20と、排水を濾過して一旦貯留する排水ピット21と、排水ピット21内から排水をパルプ回収装置23に送るポンプ22とで形成されている。排水ピット21からパルプ回収装置23に送られる排水内には、パルプが溶解して含まれており、パルプ回収装置23によって排水内のパルプが回収される。」

・「【0031】
図1、図3、図4,図5に示すように、本実施の形態のパルプ回収装置23は、使用済み紙おむつ6を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内からパルプ24を回収する。パルプ回収装置23は、筐体25と、筐体25内に回転状態で配置され、一側から導入された排水を水分とパルプ24とに分離するとともに他側に向けてパルプ24が移動し他側から水分と分離されたパルプ24が回収されるドラムスクリーン26と、ドラムスクリーン26を回動駆動する駆動機構27と、ドラムスクリーン26内で排水中の水分と分離されるパルプ24にすすぎ液28を噴射するすすぎ液噴射部29と、筐体25内でドラムスクリーン26の下部側に設けられて排水から分離された水分とすすぎ液28を受ける受水槽30と、を備えている。
【0032】
筐体25は、前板部31と、後板部32と、上板部33と、一対の側板部34、34とで形成されている。前板部31は、ドラムスクリーン26の一側35に対向している。後板部32は、ドラムスクリーン26の他側36に対向している。上板部33は、ドラムスクリーン26の上部を覆っている。一対の側板部34、34は、ドラムスクリーン26の両側部を覆うように対向配置されている。また、前板部31と後板部32は、他側36すなわちパルプ24が回収される側に、設置面37に対して傾斜している。
【0033】
さらに、前板部31と後板部32の下部側には、設置面37に固定される固定部38、38が設けられている。また、前板部31には排水をドラムスクリーン26の一側35に導入する排水導入口39が設けられている。また、後板部32には水分と分離されたパルプ24がドラムスクリーン26の他側36から回収されるパルプ回収口40が設けられている。
【0034】
ドラムスクリーン26は、筒状本体42と、導入口側端面43と、回収口側端面44とで形成されている。筒状本体42は、円筒状で外周に複数のスリット41が形成され、回転自在とされている。導入口側端面43は、筒状本体42の軸方向の一側に設けられ、排水が筒状本体42内に導入される。回収口側端面44は、筒状本体42の軸方向の他側に設けられ、パルプ24が回収される。また、筒状本体42は、導入口側端面43より回収口側端面44が下方に位置するように傾斜して設けられている。
【0035】
筒状本体42は、図6に示すように、リング状の複数個のウエッジワイヤ45を、複数本のサポートロッド46で多段に固定して筒状に形成されている。ウエッジワイヤ45間には、それぞれスリット41が形成されている。また、筒状本体42には、軸方向の両端側に回転用リング47、47がそれぞれ設けられている。これらの回転用リング47、47には、駆動機構27のローラ51が挿入される溝48が周方向の全域に設けられている。
【0036】
筒状本体42の一側には、排水導入管49が設けられている。この排水導入管49は、筒状本体42の導入口側端面43を貫通して、筒状本体42内に突出している。筒状本体42内に突出している排水導入管49は、筒状本体42の傾斜と同角度に、すなわち、先端側が下方に位置するように傾斜している。また、排水導入管49の先端側は、下向きに開口している。そして、筒状本体42内に、排水ピット21から送られた排水が、排水導入管49によって導入される。排水が排水導入管49により導入された筒状本体42は、駆動機構27によって回転しており、排水が水分とパルプに分離される。すなわち、筒状本体42のスリット41から水分が排出され、筒状本体42には、スリット41を通り抜けることができなかったパルプ24が残る。
【0037】
駆動機構27は、一対の駆動シャフト50、50と、ローラ51、51と、モータ52と、駆動伝達部53とで形成されている。一対の駆動シャフト50、50は、ドラムスクリーン26の軸方向に沿ってドラムスクリーン26の下部側で前板部31と後板部32間に平行に配置されている。また、一対の駆動シャフト50、50は、両端部が前板部31と後板部32にそれぞれ回転可能に支持されている。ローラ51、51は、一対の駆動シャフト50、50の前板部31側と後板部32側にそれぞれ固定されて筒状本体42の外周に当接し、ドラムスクリーン26を支持している。モータ52は、前板部31の外側に配置され前板部31に固定され、一方の駆動シャフト50を回転駆動する。駆動伝達部53は、一方の駆動シャフト50に伝達されたモータ52の回転駆動力を他方の駆動シャフト50に伝達する。なお、モータ52は、ギヤボックスがモータ本体と一体に設けられており、モータ本体の駆動軸に対してギヤボックスからの出力軸は直交している。
【0038】
駆動伝達部53は、一対の駆動シャフト50、50の前板部31を貫通した先端部にそれぞれ固定されたスプロケット54、54と、スプロケット54、54間に巻き掛けられて、一方の駆動シャフト50に伝達されたモータ52の回転駆動力をスプロケット54、54を介して他方の駆動シャフト50に伝達するローラチェーン56と、で形成されている。
【0039】
そして、駆動機構27の回転駆動力によって回転しているドラムスクリーン26内に、排水導入管49から排水が導入されると筒状本体42のスリット41から水分が排出され、筒状本体42内に固形物としてパルプ(スリット41を通り抜けることがなかったパルプ)24が残る。この場合、ドラムスクリーン26は、回収口側端面44側に傾斜しているので、筒状本体42内に残ったパルプ24は、次第にパルプ回収口40側へ移動する。パルプ回収口40側へ移動するパルプ24には、すすぎ液噴射部29によって上部からすすぎ液28が噴射される。
【0040】
すすぎ液噴射部29は、すすぎ液供給管57と、すすぎ液供給管57に設けられた複数個の噴射ノズル58とからなる。すすぎ液供給管57は、図4及び図5に示すように、筒状本体42の上部の両側部に、筒状本体42の軸方向に沿ってそれぞれ配置されている。これらのすすぎ液供給管57に、所定の間隔を空けて複数個の噴射ノズル58が設けられている。これらの噴射ノズル58は、筒状本体42内のパルプ24に向けてすすぎ液28を扇状に拡散して噴射する。噴射ノズル58から噴射されるすすぎ液28は、水に限らず、消毒水としても良い。
【0041】
そして、ドラムスクリーン26内で水分と分離されつつパルプ回収口40側へ移動するパルプ24には、すすぎ液噴射部29の噴射ノズル58からすすぎ液28が噴射され、すすぎ洗いが行われる。この場合、すすぎ液28はパルプ24をすすぎ洗いした後に、スリット41から受水槽30内に分解水とともに排出される。
【0042】
受水槽30は、ドラムスクリーン26の下部に配置されている。この受水槽30はドラムスクリーン26の下部に開口する幅広の上部側受け口59と、設置面37側に設けられた貯留槽60と、貯留槽60の底部の後板部32側に設けられた排水口61とで形成されている。この受水槽30も、ドラムスクリーン26と同角度(略5度)に傾斜しており、排水から分離された分解水とすすぎ液噴射部29から噴射されたすすぎ液28とが、後板部32側、すなわちパルプ回収口40側の排水口61側に貯まるようになっている。
【0043】
次に、使用済み紙おむつ6からパルプを回収する回収手順について説明する。パルプ回収装置23に導入される排水は、分離機1によって使用済み紙おむつ6を分解することで生成される。分離機1によって使用済み紙おむつ6を分解するには、内胴分離槽4内に使用済み紙おむつ6を投入し、内胴分離槽4を所定の回転数で回転させ、この状態で供給ポンプ16により分解水を分解水供給口15から内胴分離槽4内に供給する。これとともに、洗剤を内胴分離槽4内に供給する。
【0044】
内胴分離槽4を回転させながら分解水を内胴分離槽4内に供給すると、分解水が使用済み紙おむつ6に染みこんでいく。これにより使用済み紙おむつ6がパルプ、プラスチック、その他に分離される。これとともに、分解水中の水と石灰により高分子ポリマーが分解され、高分子ポリマーに吸収されている尿等の汚物(汚水)が水分となって内胴分離槽4内に出てくる。
【0045】
したがって、使用済み紙おむつ6は、分解水中に溶け込んだパルプ、尿等の汚物(水分)、プラスチック、その他に分離される。パルプや汚物(汚水)を含んだ分解水は排出部19の排水ピット21に排出され、一旦貯留される。分解水に溶け込まなかったパルプ、プラスチック、その他の素材は、内胴分離槽4内に固形物として残る。なお、分解水に溶け込まなかったパルプ、プラスチック、その他の素材は内胴分離槽4内から取り出されて、パルプとプラスチックに選別されてそれぞれ回収され、再利用される。
【0046】
そして、分離機1から排水ピット21に排出されたパルプを含む分解水(以下「排水」という)がパルプ回収装置23にポンプ22によって送られる。パルプ回収装置23は、モータ52の回転駆動力でドラムスクリーン26が所定の回転速度で回転している。この状態のパルプ回収装置23に、排水導入管49から排水がドラムスクリーン26内に導入される。排水がドラムスクリーン26に導入されると、ドラムスクリーン26の回転によって、水分がスリット41から受水槽30に落下し、ドラムスクリーン26内に水分と分離されたパルプ24が残る。
【0047】
ドラムスクリーン26内に残ったパルプ24は、ドラムスクリーン26が傾斜した状態で回転しているので、自重によりパルプ回収口40側へ移動する。パルプ回収口40側へ移動したパルプ24には、噴射ノズル58からすすぎ液28が吹き付けられる。パルプ24吹き付けられたすすぎ液28は、パルプをすすいで洗浄した後に受水槽30に落下する。すすぎ液28によってすすぎ洗いされながらパルプ24は、パルプ回収口40側へさらに移動し、最終的にパルプ回収口40から取り出され、回収される。この場合、回収されるパルプ24は、排水から連続して水分と分離され、すすぎ洗いされ、脱水された状態で回転するドラムスクリーン26によって簀巻き状となって回収される。
【0048】
受水槽30内に集められた分解水、すすぎ液28は、ある程度の量が貯留されたら、排水口61から外部へ排出する。この場合、排水口61から排出される分解水、すすぎ液28は水処理を行った後に下水に放出される。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態のパルプ回収装置23では、排水内に含まれるパルプを、ドラムスクリーン26によって回収することができるので、簡単な設備によってパルプ24を回収することができる。これにより、パルプ24を回収するためのコストの低減を図ることができる。
【0050】
また、本実施の形態のパルプ回収装置23では、ドラムスクリーン26を傾斜させることにより、ドラムスクリーン26内で水分と分離されたパルプ24が自重によってパルプ回収口40側へ移動するので、水分と分離したパルプをパルプ回収口40側へ移動させるための手段が不要となり、その分簡単な設備となる。
【0051】
また、本実施の形態のパルプ回収装置23では、排水を水分とパルプ24に分離するとともに、水分と分離したパルプ24をすすぎ液噴射部29によってすすぎ液を噴射してすすぎ洗いするので、洗浄後のきれいな(上質の)パルプ24を得ることができる。
【0052】
また、本実施の形態のパルプ回収装置23では、ドラムスクリーン26の上部に、2列のすすぎ液供給管57が配置され、これらのすすぎ液供給管57に直列的に複数の噴射ノズル58が配置されている。これにより、噴射ノズル58から出た水は扇状に拡散し、筒状本体42のスリット41から筒状本体42内に入ったすすぎ液がパルプ24に降りかかり、すすぎ効果を得ることができる。なお、すすぎ液は清水に限らず、消毒水でもよい。」

・「







(4)判断
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0010】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「使用済み衛生用品を複数種の素材に分解水により分解した状態の排水内から、排水内に含まれるパルプを簡単な設備によって回収することができて、パルプを回収するためのコストの低減を図ることができるパルプ回収装置の提供」である。
そして、上記(3)のとおり、発明の詳細な説明において、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載されている。
また、発明の詳細な説明の【0049】に「本実施の形態のパルプ回収装置23では、排水内に含まれるパルプを、ドラムスクリーン26によって回収することができるので、簡単な設備によってパルプ24を回収することができる。」及び【0050】に「本実施の形態のパルプ回収装置23では、ドラムスクリーン26を傾斜させることにより、ドラムスクリーン26内で水分と分離されたパルプ24が自重によってパルプ回収口40側へ移動するので、水分と分離したパルプをパルプ回収口40側へ移動させるための手段が不要となり、その分簡単な設備となる」と、「ドラムスクリーン26」が水平に対して傾斜して配置されていることで、パルプ回収口40側へ移動させるための手段が不要となり、簡単な設備で「パルプ24」を回収できる旨記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明の記載により、水平に対して傾斜して配置された「ドラムスクリーン26」を有する「パルプ回収装置23」は発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
そして、本件特許発明1における「ドラムスクリーン(26)」は、「水平に対して傾斜して配置されている」「筒状本体(42)」と「この筒状本体(42)の軸方向の一側に設けられ前記排水が導入される導入口側端面(43)と、前記筒状本体(42)の軸方向の他側に設けられ前記パルプ(24)が回収される回収口側端面(44)」とからなるものであるから、本件特許発明1は上記の構成を有するといえる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

なお、上記第3 2における特許異議申立人の主張について検討する。
まず、「すすぎ液噴射部(29)」の位置が「ドラムスクリーン(26)」の内側の場合でも、発明の課題は解決できることは当業者に明らかである。
また、「すすぎ液噴射部(29)」の位置を「ドラムスクリーン(26)」の内側にすることが技術的に容易であるといえるかどうかは、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するかどうかとは関係がない。
したがって、上記主張は採用できない。

(5)申立理由2についてのむすび
したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由3(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1の記載は、上記第2の【請求項1】のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、また、上記2(3)のとおり、発明の詳細な説明に本件特許の請求項1に記載された各発明特定事項について、具体的に記載されているから、本件特許発明1がどのようなものか当業者は理解することができる。
したがって、本件特許発明1に関して、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載は明確性要件を充足する。

なお、上記第3 3における特許異議申立人の主張について検討する。
まず、請求項1の記載から、「すすぎ液噴射部(29)」をどこに設けようとも、「すすぎ液噴射部(29)」から「すすぎ液」を「ドラムスクリーン(26)」内側の「パルプ(24)」に噴射することは当業者に明らかである。
また、「すすぎ液噴射部(29)」を「ドラムスクリーン(26)」の外側に設けた場合には、「ドラムスクリーン(26)」の「外周」に形成された「スリット(41)」から、「すすぎ液噴射部(29)」が「すすぎ液」を「ドラムスクリーン(26)内側のパルプ(24)」に噴射するものであると当業者は理解する(なお、このように理解することは、本件特許明細書の【0052】の「噴射ノズル58から出た水は扇状に拡散し、筒状本体42のスリット41から筒状本体42内に入ったすすぎ液がパルプ24に降りかかり、すすぎ効果を得ることができる。」という記載に沿うものでもある。)し、そうすれば、「すすぎ液がドラムスクリーン内側のパルプに到達」することも当業者に明らかである。
したがって、上記主張は採用できない。

(3)申立理由3についてのむすび
したがって、申立理由3によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-05-07 
出願番号 特願2019-32639(P2019-32639)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B09B)
P 1 651・ 121- Y (B09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岩本 昌大
加藤 友也
登録日 2020-08-14 
登録番号 特許第6749707号(P6749707)
権利者 株式会社サムズ
発明の名称 パルプ回収装置  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 特許業務法人日誠国際特許事務所  
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