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審決分類 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C23C
審判 全部無効 1項1号公知  C23C
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C23C
審判 全部無効 発明同一  C23C
審判 全部無効 判示事項別分類コード:857  C23C
審判 全部無効 2項進歩性  C23C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C23C
管理番号 1374109
審判番号 無効2014-800157  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-12 
確定日 2021-03-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4975647号「非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」の特許無効審判事件についてされた平成29年 3月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10096号、平成30年 5月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第4975647号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4975647号(以下、「本件特許」という。)は、平成18年12月26日(優先権主張 平成18年1月13日、日本国)を国際出願日とする特許出願の請求項1?6に係る発明について平成24年4月20日に設定登録されたものであり、その後、請求人田中貴金属工業株式会社から無効審判が請求されたものである。本件審判請求以後の手続の経緯は次のとおりである。

平成26年 9月12日付け 本件審判請求
同年12月15日付け 答弁書(被請求人)
平成27年 3月31日付け 審理事項通知書
同年 5月11日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 5月11日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 5月25日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
同年 5月25日付け 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 6月 3日付け 審理事項通知書
同年 6月 8日付け 口頭審理陳述要領書(3)(請求人)
同年 6月 8日付け 口頭審理陳述要領書(3)(被請求人)
同年 6月 8日 口頭審理
同年 6月22日付け 上申書(請求人)
同年 6月22日付け 上申書(被請求人)
平成28年 6月 8日付け 上申書(被請求人)
同年 7月21日付け 審決の予告
同年 9月26日付け 訂正請求書、意見書(被請求人)
平成29年 2月28日付け 審理終結通知書
同年 3月 7日付け 上申書(請求人)
同年 3月29日付け 無効2014-800157号の審決
(本件審判の請求は成り立たない。)
(第一次審決)
同年 5月 1日 知財高裁出訴
平成30年 5月15日 平成29年(行ケ)第10096号判決言渡
(審決取消)
同年10月10日付け 訂正請求申立書(被請求人)
同年10月23日付け 審理再開通知書
同年11月 1日付け 訂正請求書、答弁書(被請求人)
同年12月12日付け 手続補正書(方式)(訂正請求書)(被請求人)
平成31年 1月22日付け 証拠説明書(被請求人)
同年 2月12日付け 上申書(請求人)
同年 2月18日付け 弁駁書(請求人)
同年 3月20日付け 審尋
同年 4月18日付け 回答書(被請求人)
同年 4月25日付け 回答書(請求人)
令和 元年 8月 8日付け 手続補正書(方式)(訂正請求書)(被請求人)


第2 訂正請求について

1.訂正の内容
令和元年8月8日付け手続補正書及び平成30年12月12日付け手続補正書により補正された、平成30年11月1日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1?3からなるものである(以下、下線は当審が付した。)。
なお、本件訂正により、平成28年9月26日付け訂正請求書による訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「焼結体スパッタリングターゲットであって、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子とからなり、」の記載を、
「焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、」の記載を、「Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、」と訂正し、さらに、
「請求項1記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」の記載を、
「焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2において、
「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子とからなり、」の記載を、
「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、」と訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1?6〕に対して請求されたものである。

2.訂正の目的
(1)訂正事項1
まず、「前記非磁性材は6mol%以上含有され、」との事項を直列的に付加した点については、訂正前の請求項1で焼結体スパッタリングターゲットに含有される非磁性材の量について何ら特定されていなかったところ、訂正後の請求項1では、前記量について特定するものである。したがって、上記の点は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としていると認められる。
次に、訂正前の「該仮想円」を訂正後は「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円」とした点については、前記された仮想円の繰り返しの記載となるべき「仮想円」の意味するところを明確にしようとしたものである。したがって、上記の点は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的としていると認められる。
さらに、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、」との事項を直列的に付加した点については、訂正前の請求項1で非磁性材の全粒子について、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さい」(以下、「形状1」ということがある。)か、又は「該仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子」(以下、「形状2」ということがある。)であることが特定されており、「形状1」のみ、「形状2」のみ、「形状1」及び「形状2」のみの場合であったのに対し、訂正後の請求項1では非磁性材の全粒子について、前記の「形状1」又は「形状2」であることの特定に加えて、上記の事項に係る粒子、すなわち、「該仮想円」を明確化して特定された「形状2」の粒子を含むものに限定するものであるから、「形状2」のみ、「形状1」及び「形状2」のみの場合となり、「形状1」のみの場合が削除されたものとなった。したがって、上記の点は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としていると認められる。

(2)訂正事項2
まず、訂正前の「請求項1記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」の記載を、「焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」とし、「Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、」との事項を付加した点については、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを引用関係を解消して独立形式とすることに伴う訂正である。したがって、上記の点は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的としていると認められる。
次に、「前記非磁性材は6mol%以上含有され、」との事項を直列的に付加した点については、訂正事項1と同様であり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としていると認められる。

(3)訂正事項3
まず、訂正前の「仮想円」を訂正後は「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円」とした点については、訂正事項1と同様であり、前記された仮想円の繰り返しの記載となるべき「仮想円」の意味するところを明確にしようとしたものであって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的としていると認められる。
次に、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、」との事項を直列的に付加した点についても、訂正事項1と同様であり、訂正後は、非磁性材の全粒子について、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さい」(以下、「形状1’」ということがある。)か、又は「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子」(以下、「形状2’」ということがある。)であることの特定に加えて、上記の事項に係る粒子、すなわち、「形状2’」の粒子を含むものに限定し、「形状2’」のみ、「形状1’」及び「形状2’」のみの場合となり、「形状1’」のみの場合が削除されたものとなった。したがって、上記の点は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としていると認められる。

(4)まとめ
以上のとおり、訂正事項1?3に係る本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定された事項を目的とするものである。

3.新規事項の追加の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には以下のア?ウの記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットに関し、特にスパッタリングによって膜を形成する際に、安定した直流(DC)スパッタリングが可能で最適な成膜速度が得られ、スパッタ時のアーキングが少なく、これに起因して発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減でき、且つ高密度で品質のばらつきが少なく量産性を向上させることのできる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録の分野では、磁性体薄膜中に非磁性材料を共存させることにより磁気特性を向上する技術が開発されている。その例として、磁性材薄膜中に非磁性材料の微粒子を存在させることにより、透磁率などの軟磁気特性を向上させるものや、磁性体薄膜材料中の金属微粒子間の磁気的相互作用を非磁性材料により遮断、または弱めることにより保磁力など磁気記録媒体としての各種特性を向上させるものなどがある。
このような薄膜材料は通常スパッタリングにより作製されるが、絶縁性若しくは高抵抗である非磁性材料と低抵抗である金属からなる強磁性材料とを同時にスパッタリングする必要がある。
【0003】
スパッタリング法とは、正の電極となる基板と負の電極となるターゲットを対向させ、不活性ガス雰囲気下で、該基板とターゲット間に高電圧または高周波を印加して電場を発生させるものである。
この時、不活性ガスが電離し、電子と陽イオンからなるプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩き出されるが、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
一般的なスパッタリング法としては、RF(高周波)スパッタリング法とDC(直流)スパッタリング法があるが、上記のように抵抗の大きく異なる材料を同時にスパッタリングするためには、絶縁体がスパッタリングできるRFスパッタリング法が使用される場合が多い。
【0004】
ところが、このRF(高周波)スパッタリング装置は、装置自体が高価であるばかりでなく、スパッタリング効率が悪く、電力消費量が大きく、制御が複雑であり、成膜速度も遅いという多くの欠点がある。また、成膜速度を上げるため、高電力を加えた場合、基板温度が上昇し、基板及び成膜材料の変質を起こすなどの問題がある。
もう一方のDCスパッタリング法は、RFスパッタリング法と比べて、消費電力が少なく、高速成膜が可能であり、装置価格も低いため、量産性に優れるという特徴をもつ。また、プラズマが基板に与える影響が少ないため一般的には高品質の膜が作製できるとされる。
したがって、非磁性材と強磁性材を同時にスパッタリングするためのスパッタリングターゲットにおいても、極力DCスパッタリングが可能となるような工夫がなされる。DCスパッタリング法を用いる場合、ターゲット自体が導電性を備えていることが必要となる。
【0005】
ターゲットが導電性を備えていたとしても、酸化物、珪化物等の非導電性材料が多量に含まれるターゲットは、ターゲットのバルク抵抗値が高くなるため、DCスパッタリングによる成膜が難しくなる。
そのため、酸化物等の非磁性材料を細かく球状に分散させた組織をもつスパッタリングターゲットの工夫がなされている。しかし、このような工夫がなされても、パーティクルが大量に発生するという問題があった。」

イ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スパッタリングによって膜を形成する際に、DCスパッタによる高速成膜が可能であり、さらにスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減させ、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができ、かつ結晶粒が微細であり高密度の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット、特に磁気記録層としての使用に最適であるスパッタリングターゲットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、非磁性材粒子分散の形態を調整し、導電性を保有させてDCスパッタを可能とし、かつ密度を高め、さらにスパッタ時に発生するパーティクルやノジュールを大幅に低減できるとの知見を得た。」
【0009】
このような知見に基づき、本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、強磁性材の中に非磁性材の粒子が分散した材料の研磨面で観察される組織中の非磁性材全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えていることを特徴とするものである。
すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点に中心を持つ半径2μmの仮想円が、界面との間に接点又は交点を一箇所も持たずに、非磁性材料粒子に内包されるような粗大化した粒子は、本願発明には含まれない。
上記条件を満たせば、非磁性材料粒子の形状、および大きさに特に制限はない。たとえば、長さが2μm以上ある紐状や細かく枝分かれしたような形態であっても、上記条件を満たせば、目的の効果を得る事ができる。
球状の場合は、直径が4.0μm以下となる。このような微細粒子は、パーティクルの発生には殆んど影響しない。
【0010】
強磁性材の中に分散した非磁性材の粒子は、必ずしも球状である必要はない。球状よりもむしろ紐上又はヒトデ状若しくは網目状が望ましいとすら言える。研磨面で観察される大型の球状物は脱粒を起こし易く、かつ脱粒した場合にパーティクル発生量はその影響を強く受けるからである。
表面の研磨で観察される紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織は、当然ながらターゲットの厚み方向にも存在している。このように、ターゲットの厚み方向に結合した紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織は、脱粒を起こすことが少なくなる。また、強磁性材料と酸化物等の非磁性材料との接触面積の増加は、脱粒防止に効果がある。したがって、紐上又は網目状の幅が小さく、かつ分散していることが望ましいと言える。
本願発明の、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有するという規定は、このような紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織を包含するものである。
【0011】
本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、さらに非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有するのが望ましい。これは、より微細な組織を狙うものである。
さらに、本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、材料の研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下で、かつ直径10μm以上の部分が1000個/mm^(2)以下であることが望ましい。これは、強磁性材のみの部分がターゲット表面に露出して偏析しないことが望ましいことを意味する。すなわち非磁性材粒子の均一性確保のためである。
【0012】
本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、強磁性材がCo若しはFe又は双方を主成分とする材料に、特に有効である。また、本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、非磁性材が酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料である場合に、特に有効であるが、非磁性材料は、強磁性材料の成分と共存した状態で、不活性雰囲気若しくは真空中で強熱しても還元または分解しないものが望ましい。これは、ターゲット製造時に還元または分解することにより、強磁性材の組成に影響を及ぼすものであってはならないからである。
本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、相対密度で97%以上、さらには相対密度で98%以上とすることができる。次の式で導き出される計算密度に対し、相対密度で97%以上、又は相対密度で98%以上とする。ターゲット密度は、合金組成に依存するので、真密度を計算することは困難である。したがって、次式1(数1)の計算密度を基準とすることにより、細かい組成の変更に対応することが可能となる。
【0013】
【数1】

【発明の効果】
【0014】
このように、調整したターゲットは、DCスパッタリングが可能となり、そしてDCスパッタリングはRFスパッタリングに比べ、成膜速度が速く、スパッタリング効率が良いという点で著しく優れている。また、DCスパッタリング装置は価格が安く、制御が容易であり、電力の消費量も少なくて済むという利点がある。
したがって、本発明のスパッタリングターゲットを使用することにより、品質の優れた材料を得ることができ、特に磁性材料を低コストで安定して製造できるという著しい効果がある。さらに、本発明のスパッタリングターゲットの密度向上は、非磁性材と強磁性材との密着性を高めることにより、非磁性材の脱粒を抑制することができ、また、空孔を減少させ結晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができるので、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができるという著しい効果を有する。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットの製造に際しては、強磁性材として、例えばCo若しくはFe又は双方を主成分とする材料の1?5μmの微粉と、非磁性材として酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料を使用する。これらの1?5μmの微粉を20?100時間程度、ボールミル等で混合した後、HP(ホットプレス)法を用いて1000?1250°Cの温度で焼結する。
強磁性材の中に非磁性材の粒子が分散した焼結体の研磨面で観察される組織中の非磁性材全粒子の形状及び寸法は、上記原料粉の形状、混合時間、焼結温度によって調節することができるが、この条件は、強磁性材料と非磁性材料の組合せによっても大きくことなるが、上記条件の範囲により、任意に選択できる。
この製造条件の選択は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えるようにすることである。換言すれば、粒子の形状と寸法をこの条件に適合する条件にすることである。この条件に適合する粒子は、微細な球状の粒子か又は細い紐状あるいはヒトデ状若しくは網目状の粒子である場合が多いと言える。
【0017】
磁性材料としては、アトマイズ粉を使用することもできる。また、磁性材料の個々の原料粉を使用するだけでなく、合金粉を使用しても良い。また、粉砕・混合は、ボールミルだけでなく、メカニカルアロイングを使用しても良い。さらに、焼結は、ホットプレスに限らず、プラズマ放電焼結法、熱間静水圧焼結法を使用することもできる。
いずれにしても、強磁性材の中に非磁性材の粒子が分散した材料において、材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子が、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法にすることが条件であり、これを満足すれば、任意に選択することができる。
【0018】
材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子が、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する具体例を示すと次の通りである。
例えば、球状の非磁性材の粒子であれば、図1の模式図の通りであり、図1の左は粒子の中に半径1μmの仮想円が包含される場合で、粗大化した粒子であり、本願発明には該当しない。図1の右が半径2μmの仮想円よりも粒子の半径が2.0μm以下である小さいサイズの粒子の場合であり、本願発明に含まれる。
このような微細粒子は、ターゲットのパーティクルの発生に特に問題となることはなく、また高密度のターゲットを得ることが可能である。
紐状の非磁性材の粒子であれば、図2の模式図の通りである。非磁性材料粒子の断面上任意の点から半径2μm以内の仮想円に入っていればその長さや曲がり方に制限は無い。細い紐状の粒子の場合には、本願発明の目的に添うものであり、特に問題とならないからである。
【0019】
次に、網目状の粒子の模式図を、図3に示す。原則として前記細紐状の粒子と同様である。この場合は、網目の結節部が、粗大化して半径2μmの仮想円を超える場合があるが、この場合は本願発明の範囲外である。
表面の研磨で観察される紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織は、当然ながらターゲットの厚み方向にも存在しているが、このようにターゲットの厚み方向に結合したヒトデ状若しくは網目状組織は、脱粒を起こすことが極めて少なくなるので、より好ましいと言える。また、ヒトデ状若しくは網目状の粒子とマトリックスとなる強磁性材料との接触面積の増加は、脱粒防止により効果があると言える。したがって、紐上又はヒトデ状若しくは網目状の幅が小さく、かつ分散していることが望ましいと言える。
【0020】
その他の形状として、ひょうたん型の粒子形状も考えられる。その模式図を図4に示す。この場合もくびれた部分については特に問題とならないが、膨らんだ部分の半径が2.0μm以下とする必要がある。その意味では、球状の粒子と同様のことが言える。
さらに、本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、材料の研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域においては、その領域の直径が10μm?40μmの範囲にあり且つその個数が1000個/mm^(2)以下であることがより望ましい。これは、強磁性材のみがターゲット表面に偏析せず、すなわち非磁性材粒子が均一に分散していることが、成膜の条件としても望ましいためである。
以上より、本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、相対密度で97%以上、さらには相対密度で98%以上とすることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0022】
(実施例1)
焼結原料粉末として、粒径がそれぞれ5μm未満のCo微粉、Cr微粉、Pt微粉の磁性材料を使用し、これに対して、平均粒径1μmのSiO_(2)粉を用いた。これを94(74Co-10Cr-16Pt)-6 SiO_(2)(mol%)となるように秤量し、これらを湿式ボールミルで100時間混合した。次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、ホットプレス法により、1200°Cで1時間焼結し、94(74Co-10Cr-16Pt)-6 SiO_(2)からなる強磁性体材料のターゲットを得た。
このターゲットの相対密度は98%であり、高密度のターゲットが得られた。この結果を表1に示す。また、このターゲットの研磨面のSEM画像を図5に示す。図5に示すように、細紐状の微細なSiO_(2)粒子が分散していた。
この場合の、非磁性材であるSiO_(2)粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下ろした場合の、界面までの距離は1μm以下の範囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えるという本願発明の条件を満たしていた。
【0023】
Co-Cr-Ptからなる強磁性材の中に非磁性材であるSiO_(2)の粒子が分散した材料において、研磨面で観察されるSiO_(2)の粒子が存在しない領域、すなわち強磁性材のみの領域の直径10μm以上の部分は32個/mm^(2)であった。この結果を表1に示す。この個数は、非常に少ない量であり、偏析が少なく、均一性に優れたターゲットが得られていることが確認できた。
次に、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚500Åで成膜した。パーティクルの発生状況を同様に表1に示す。表1から明らかなように、パーティクルの発生は非常に少なかった。
【0024】
【表1】

【0025】
(実施例2)
焼結原料粉末として、粒径がそれぞれ5μm未満のCo微粉、Cr微粉、Pt微粉の磁性材料を使用し、これに対して、平均粒径1μmのTa_(2)O_(5)粉を用いた。これを97(74Co-10Cr-16Pt)-3Ta_(2)O_(5)(mol%)となるように秤量し、これらをボールミルで60時間混合した。次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、ホットプレス法により、1200°Cで1時間焼結し、97(74Co-10Cr-16Pt)-3Ta_(2)O_(5)(mol%)からなる強磁性体材料のターゲットを得た。
このターゲットの相対密度は98%であり、高密度のターゲットが得られた。この結果を表1に示す。また、このターゲットの研磨面のSEM画像を図6に示す。図6に示すように、擬似球状の微細なTa_(2)O_(5)粒子が分散していた。
この場合の、非磁性材であるTa_(2)O_(5)粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下ろした場合の、界面までの長さは、2μm以下の範囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えるという本願発明の条件を満たしていた。
【0026】
Co-Cr-Ptからなる強磁性材の中に非磁性材であるTa_(2)O_(5)の粒子が分散した材料において、研磨面で観察されるTa_(2)O_(5)の粒子が存在しない領域、すなわち強磁性材のみの領域の直径10μm以上の部分は19個/mm^(2)であった。この結果を表1に示す。この個数は、非常に少ない量であり、偏析が少なく、均一性に優れたターゲットが得られていることが確認できた。
次に、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚500Åで成膜した。パーティクルの発生状況を同様に表1に示す。表1から明らかなように、パーティクルの発生は非常に少なかった。
【0027】
(実施例3)
焼結原料粉末として、粒径がそれぞれ5μm未満のCo微粉、Cr微粉、Pt微粉の磁性材料を使用し、これに対して、平均粒径1μmの市販のCr_(2)O_(3)粉を用いた。これを94(74Co-10Cr-16Pt)-8 Cr_(2)O_(3)(mol%)となるように秤量し、これらをボールミルで100時間混合した。次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、ホットプレス法により、1200°Cで1時間焼結し、94(74Co-10Cr-16Pt)-8 Cr_(2)O_(3)(mol%)からなる強磁性体材料のターゲットを得た。
このターゲットの相対密度は98%であり、高密度のターゲットが得られた。この結果を表1に示す。また、このターゲットの研磨面のSEM画像を図7に示す。図7に示すように、紐状の微細なCr_(2)O_(3)粒子が分散していた。
この場合の、非磁性材であるCr_(2)O_(3)粒子の任意の点から界面に向けて垂線を下ろした場合の、界面まで長さは、2μm以下の範囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えるという本願発明の条件を満たしていた。
【0028】
Co-Cr-Ptからなる強磁性材の中に非磁性材であるCr_(2)O_(3)の粒子が分散した材料において、研磨面で観察されるCr_(2)O_(3)の粒子が存在しない領域、すなわち強磁性材のみの領域の直径10μm以上の部分は20個/mm^(2)であった。この結果を表1に示す。この個数は、非常に少ない量であり、偏析が少なく、均一性に優れたターゲットが得られていることが確認できた。
次に、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚500Åで成膜した。パーティクルの発生状況を同様に表1に示す。表1から明らかなように、パーティクルの発生は非常に少なかった。
【0029】
(比較例1)
焼結原料粉末として、粒径がそれぞれ5μm未満のCo微粉、Cr微粉、Pt微粉の磁性材料を使用し、これに対して、平均粒径1μmのSiO_(2)粉を用いた。これを94(74Co-10Cr-16Pt)-6SiO_(2)(mol%)となるように秤量し、これらをボールミルで10時間混合した。次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、ホットプレス法により、1200°Cで1時間焼結し、94(74Co-10Cr-16Pt)-6SiO_(2)からなる強磁性体材料のターゲットを得た。
このターゲットの相対密度は97%であり、比較的密度の高いターゲットが得られた。この結果を表1に示す。また、このターゲットの研磨面のSEM画像を図8に示す。図8に示すように、平均粒径(直径)が5?8μm程度の擬似球状の粗大なSiO_(2)粒子が分散していた。
この場合の、強磁性体材料と非磁性材であるSiO_(2)粒子内部の任意の点から半径1μmの仮想円を描いた場合に、該仮想円は粒子内部に包含され、界面との間に接点又は交点が存在しないものが多数存在していた。
【0030】
Co-Cr-Ptからなる強磁性材の中に非磁性材であるSiO_(2)の粒子が分散した材料において、研磨面で観察されるSiO_(2)の粒子が存在しない領域、すなわち強磁性材のみの領域の直径10μm以上の部分は300個/mm^(2)であった。この結果を表1に示す。この個数は、実施例に比べ非常に多い量であり、偏析が大きく、均一性に劣るターゲットが得られた。
次に、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとした。しかし、このターゲットは異常放電が多く、パーティクル数は300個程度であった。
【0031】
(比較例2)
金属原料粉末として、74Co-10Cr-16Ptのアトマイズ粉(合金粉)と平均粒径1μmのSiO_(2)粉を用いた。これを94(74Co-10Cr-16Pt)-6SiO_(2)(mol%)となるように秤量し、これらをボールミルで100時間混合した。次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、ホットプレス法により、1200°Cで1時間焼結し、94(74Co-10Cr-16Pt)-6SiO_(2)からなる強磁性体材料のターゲットを得た。
このターゲットの相対密度は96%であり、比較的密度の低いターゲットが得られた。この結果を表1に示す。また、このターゲットの研磨面のSEM画像を図9に示す。図9に示すように、非常に大きな強磁性材粒子の粒界にSiO_(2)が分散した層が存在していた。
この場合の、強磁性体材料と非磁性材であるSiO_(2)粒子内の任意の点から界面方向に引いた垂線の長さは15?30μmの範囲内にあった。
この場合、非磁性材料粒子内の任意の点から半径2μmの仮想円を描いた場合に、該仮想円と界面との間に接点又は交点が存在せず、殆んどが粒子内部に包含されていた。これは、本願発明の条件を満たしていなかった。
【0032】
Co-Cr-Ptからなる強磁性材の中に非磁性材であるSiO_(2)の粒子が分散した材料において、研磨面で観察されるSiO_(2)の粒子が存在しない領域、すなわち強磁性材のみの領域の直径10μm以上の部分は3000個/mm^(2)以上であった。この結果を表1に示す。この個数は、実施例に比べ極めてに多い量であり、偏析が大きく、均一性に劣るターゲットが得られた。
次に、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとした。このターゲットは異常放電が多く、パーティクル数は測定上限である3000個を大きく超えるものであった。」

(1)「非磁性材は6mol%以上含有」の点について
上記ア【0005】、イ【0007】等から、本件特許に係る発明は、酸化物、珪化物等の非導電性材料又は非磁性材料が多量に含まれる強磁性材ターゲットにおける、パーティクル(発塵)やノジュールを低減させることを課題としていると認められる。
そして、本件明細書等には、実施例1(上記ウ【0022】等)に「94(74Co-10Cr-16Pt)-6SiO_(2)からなる強磁性体材料のターゲット」(当該ターゲットにおける「非磁性材であるSiO_(2)粒子」の含有量は6mol%(=6/(94+6))と算出される。)が記載され、また、実施例3(上記ウ【0027】等)に「94(74Co-10Cr-16Pt)-8 Cr_(2)O_(3)(mol%)からなる強磁性体材料のターゲット」(当該ターゲットにおける「非磁性材であるCr_(2)O_(3)粒子」の含有量は7.84mol%(=8/(94+8))と算出される。)が記載されている。
以上のことから、本件明細書等には、ターゲットが非磁性材を6mol%以上含有することが実質上記載されていると認められる。
なお、本件明細書には、実施例2(上記ウ【0025】等)として「97(74Co-10Cr-16Pt)-3Ta_(2)O_(5))(mol%)」というターゲットの記載があり、当該ターゲットにおける非磁性材の含有量は6mol%より少ない「3mol%」であるが、この実施例2は訂正後の本件特許に係る発明の範囲外となるものであることは明らかであって、上記認定と矛盾するものではない。
したがって、訂正事項1及び2に係る「前記非磁性材は6mol%以上含有され、」という事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められ、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)非磁性材の全粒子は、「形状1」か、又は「形状2」の粒子であって、「形状2」を含む点、及び、「形状1’」か、又は「形状2’」の粒子であって、「形状2’」を含む点について
前記2.(1)又は(3)に記載したように、上記の点は、非磁性材の全粒子が、「形状2」のみ、「形状1」及び「形状2」のみであること、又は「形状2’」のみ、「形状1’」及び「形状2’」のみであることを意味するところ、訂正前の非磁性材の全粒子は、「形状1」のみ、「形状2」のみ、「形状1」及び「形状2」のみであり、又は、「形状1’」のみ、「形状2’」のみ、「形状1’」及び「形状2’」のみであり、訂正事項1の全粒子の形状に関する訂正、又は訂正事項3の全粒子の形状に関する訂正は、それぞれ、「形状1」のみの場合、又は「形状1’」のみの場合を削除するものであるから、上記訂正事項は、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、上記(1)のとおり、本件特許に係る発明は、非磁性材料が多量に含まれる強磁性材ターゲットにおける、パーティクル低減等を課題とするものであるが、上記イ【0010】には、研磨面で観察される大型の球状物は脱粒を起こし易く、かつ脱粒した場合にパーティクル発生量はその影響を強く受けるところ、ターゲットの厚み方向に結合した紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織は、脱粒を起こすことが少なく、強磁性材料と酸化物等の非磁性材料との接触面積の増加は、脱粒防止に効果がある旨記載されている。そうすると、本件明細書等には、非磁性材料の粒子が、紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織に対応する「形状2」又は「形状2’」の粒子を含むのが望ましいことが実質上記載されているといえる。
したがって、訂正事項1に係る非磁性材の全粒子は、「形状1」か、又は「形状2」の粒子であって、「形状2」を含む点、又は、訂正事項3に係る非磁性材の全粒子は、「形状1’」か、又は「形状2’」の粒子であって、「形状2’」を含む点は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められ、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)その他
訂正事項1及び3の「仮想円」の意味するところを明確にしようとした点、訂正事項2の引用関係の解消に係る点については、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは自明である。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?3は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

4.特許請求の範囲の拡張・変更について
(1)特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正について
訂正事項1?3に含まれる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正は、何れもが発明特定事項を直列的に付加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

なお、請求人は、訂正事項1、3に関し、請求項1について、訂正前は全粒子が「形状1のみからなる」又は「形状2のみからなる」との発明特定事項であったところを、訂正後は全粒子が「形状2」を必ず含めばよく、「形状1」及びその他の粗大な粒子を含み得ることを発明特定事項とするから、訂正事項1は特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものであり、請求項2についての訂正事項3も同様である旨主張している(平成31年4月25日付け回答書9頁7行?10頁5行)。
しかしながら、訂正前の請求項1は「全粒子は、・・・よりも小さい(形状1)か、又は・・・寸法の粒子(形状2)とからなり」と特定されていて、「形状1」のみ、「形状2」のみ、「形状1」及び「形状2」のみの場合の何れかであるから、請求人の解釈は訂正前の請求項1の記載に基づくものではなく誤解があるといえるし、また、訂正後の請求項1は「全粒子は、・・・よりも小さい(形状1)か、又は・・・寸法の粒子(形状2)であって」と特定されていて、引き続いて発明特定事項の直列的な付加がなされたため末尾表現は訂正前後で異なるものの、全粒子が形状1又は形状2の何れかであることには変わりがないから、訂正後もその他の粗大な粒子を含み得ることはなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものであるとはいえない。請求項2についての訂正事項3も同様である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(2)その他の点の訂正について
訂正事項1及び3の「仮想円」の意味するところを明確にしようとした点、訂正事項2の引用関係の解消に係る点については、明らかに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)まとめ
よって、訂正事項1?3は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

5.訂正請求についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、結論のとおり訂正を認める。


第3 本件訂正発明
上記第2のとおり訂正が認められるので、本件特許に係る発明は、本件訂正後の請求項1?6に記載された以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下であることを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径が10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下であることを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子は、紐状またはヒトデ状の粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項4】
非磁性材料が、真空中もしくは不活性雰囲気中で金属Co若しくは金属Cr又はその混合物若しくは合金とともに強熱しても還元若しくは分解しない金属酸化物からなる請求項1?3のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項5】
金属酸化物が、Cr、Ta、V、Si、Ce、Ti、Zr、Al、Mg、Nbから選択した1種以上の酸化物である請求項4に記載の非磁性粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項6】
DCスパッタリング用ターゲットであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。」
(以下、それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明6」という。

なお、請求人は、訂正後の請求項1について、「非磁性材の全粒子は、(形状1)か、又は(形状2)の粒子であって、(形状2)の粒子を含み」は、(形状1)と(形状2)を択一的接続詞「又は」でつなげているため、非磁性材の全粒子の態様が(形状1)の場合を含み得ること、また、全粒子が(形状1)の粒子の場合、後段の「(形状2)の粒子を含み」との文言と一致せず、発明が不明確であること、訂正後の請求項2も同様であることを主張する(平成31年2月18日付け弁駁書4頁1行?5頁下から4行)。
しかしながら、非磁性材の全粒子が(形状1)の粒子と仮定した場合に、後段の「(形状2)の粒子を含み」との文言と一致しないことからすれば、訂正後の請求項1の発明特定事項において、(形状1)と(形状2)を択一的接続詞「又は」でつなげていても、非磁性材の全粒子の態様が(形状1)である場合については含み得ないのが明らかであるから、上記のとおりの訂正後の請求項1に係る発明が不明確とはいえず、訂正後の請求項2に係る発明についても同様に不明確であるとはいえないから、この主張は採用できない。


第4 当事者の請求及び主張
1.請求人の請求及び主張
(1)請求人は、審判請求書において、「特許第4975647号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。

(2)証拠
(以下において、証拠は略記して、例えば「甲第1号証」を「甲1」のように表記する。)
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲1:特願平8-268023号の願書に最初に添付した明細書及び図面
甲2:特開平10-88333号公報
甲3:甲1の実施例1の実験成績報告書
甲4:特開2004-339586号公報
甲5:特開2001-236643号公報
甲6:特開2006-176810号公報
甲7:特開2005-276363号公報
甲8:特開2005-353140号公報
甲9:特開2003-99917号公報
甲10:特開2006-307345号公報
甲11:本件特許の審査段階で提出された平成23年5月16日付の早期審査に関する事情説明書
甲12:平成25年(ワ)第3360号事件(平成27年9月29日判決言渡)において東京地方裁判所民事第46部D係に被請求人が平成25年12月2日付で提出した原告準備書面(4)
甲13:平成25年(ワ)第3360号事件(平成27年9月29日判決言渡)において東京地方裁判所民事第46部D係に被請求人が平成26年3月7日付で提出した原告準備書面(5)
甲14:平成25年(ワ)第3360号事件(平成27年9月29日判決言渡)において東京地方裁判所民事第46部D係に請求人が平成25年10月11日付で提出(同7日作成)した陳述書(2)
甲15:「メカニカルアロイングによる分散強化型合金」逢坂達吉・森田幹郎 金属Metals & technology VOL.52, No.10, OCTOBER, 1982 p22-26
甲16:「粉末冶金の科学」三浦秀士監修 内田老鶴圃 2011年11月25日 p88-89
甲17:「焼結材料工学」石田恒雄著 森北出版株式会社 2011年8月18日 p97-99,121,142-145

なお、甲1?甲11は、審判請求書とともに、甲12?甲14は、平成27年5月25日付け口頭審理陳述要領書(2)とともに、甲15?甲17は、平成31年2月18日付け弁駁書とともに、提出された。
甲1?甲14の成立について、当事者間に争いはない(第1回口頭審理調書 陳述の要領 被請求人3)。
また、参考資料として、平成31年2月12日付け上申書とともに、知財高裁平成29年(行ケ)第10096号審決取消請求事件において提出されていた、甲22?甲64が当審の求めに応じて提出されている(各証拠の表示は省略)。

(3)請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
なお、無効理由3、4は取り下げられた。(第1回口頭審理調書 陳述の要領 請求人2)

[無効理由1]
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、甲1によって公知となった発明であるか(特許法第29条第1項第1号に該当)、又は甲2に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号に該当)。
したがって、本件発明1?6の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

[無効理由2]
本件発明1?6は、甲1によって公知となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
したがって、本件発明1?6の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

[無効理由5]
本件発明1?6は、甲6に開示されている発明と同一である(特許法第29条の2)。
したがって、本件発明1?6の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

[無効理由6]
本件発明1?6について、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)違反である。
したがって、本件発明1?6の特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。

2.被請求人の請求
(1)被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めた。

(2)証拠
被請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
乙1:知的財産高等裁判所平成27年(ネ)第10125号特許権侵害差止請求控訴事件判決(平成28年4月13日判決言渡)に対する上告受理申立書
乙2?乙13:(各証拠の表示は省略)

なお、乙1は、平成28年6月8日付け上申書とともに提出されたものである。
また、乙2?乙13は、当審の求めに応じて平成31年1月22日付け証拠説明書とともに提出されたものであり、知財高裁平成29年(行ケ)第10096号審決取消請求事件において提出されていた乙1?乙12にそれぞれが対応している。


第5 当審の判断
1.本件訂正発明について
本件訂正発明1?6は、上記第3のとおりであるが、それぞれ以下の構成要件(以下、それぞれ「構成要件1A」などという。)に分説できる。

「【請求項1】
1A Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、
1F 前記非磁性材は6mol%以上含有され、
1B 前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、
1G 非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、
1C 研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、
1D 直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である
1E ことを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。

【請求項2】
2A Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、
2F 前記非磁性材は6mol%以上含有され、
2B 前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、
2G 非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、
2C 研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、
2D 直径が10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である
2E ことを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。

【請求項3】
3A 前記仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子は、紐状またはヒトデ状の粒子である
3B ことを特徴とする請求項1又は2記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。

【請求項4】
4A 非磁性材料が、真空中もしくは不活性雰囲気中で金属Co若しくは金属Cr又はその混合物若しくは合金とともに強熱しても還元若しくは分解しない金属酸化物からなる
4B 請求項1?3のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。

【請求項5】
5A 金属酸化物が、Cr、Ta、V、Si、Ce、Ti、Zr、Al、Mg、Nbから選択した1種以上の酸化物である
5B 請求項4に記載の非磁性粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。

【請求項6】
6A DCスパッタリング用ターゲットである
6B ことを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。」


2.証拠の記載事項
(1)甲1(特願平8-268023号の願書に最初に添付した明細書及び図面)
甲1に係る特願平8-268023号は、平成8年9月18日に出願された特許出願であり、本件特許の優先日前の平成10年4月7日に出願公開され(特開平10-88333号公報、甲2)、同日以降、甲1の内容は、何人も特許庁において閲覧することができる状態にあったと認められ、それにより公然知られたものとなったといえる。

甲1には、以下のア?クの記載がある。

ア「 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ハードディスク用の高密度面内磁気記録媒体をスパッタリングを用いて製造するのに適したスパッタリングターゲットに関し、特に詳しくは酸化物分散型Co系合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法に関する。」

イ「 【0004】
これらのCo系合金磁性膜の高保磁力化は、理論的には、磁性膜を構成する結晶粒子を更に微細化すること、およびその結晶粒界に非磁性相を分散させること、により達成できる。また、これらのCo系合金磁性膜のノイズは結晶粒子間に働く交換相互作用の影響により生じるため、Co系合金磁性膜の結晶粒界に非磁性相を分散させることは各々の結晶粒子間に働く交換相互作用を弱める作用があり、ノイズ低減につながると考えられる。
したがって、Co系合金磁性膜をスパッタリングにより作製する際に、その結晶粒界に非磁性相を均質に分散することができればよい。そのための非磁性相としては酸化物、窒化物や炭化物などが考えられる。
・・・・・・
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保磁力に優れ、媒体ノイズの少ないCo系合金磁性膜をスパッタリング法によって形成するために、結晶組織が合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相であるスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記改善された磁性膜を得るための操作、取扱い易く、スパッタリング特性に優れたスパッタリングターゲットを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Co系合金磁性膜の結晶粒界に非磁性相を均質に分散させれば、保磁力の向上とノイズの低減が改善されたCo系合金磁性膜が得られることから、そのような磁性膜を得るためには、使用されるスパッタリングターゲットの結晶組織が合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相であればよいことに着目した。
そして、本発明者らは、セラミックス相として酸化物が均質に分散したCo系合金磁性膜を製造する方法について種々の実験、研究開発を行った。
・・・・・・
【0012】
・・・本発明者らは結局、下記の事項を見い出すに至った。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
<1>(審決注:「<1>」は「丸囲いの数字の1」を表す。以下、同様。)アトマイズ法やメルトスピン法などの急冷凝固法を用いることによりCo系合金粉末が作製できる。また得られたCo系合金粉末は、酸化が著しく少なく、またこの粉末と酸化物とを混合した後、モールドに入れてホットプレスすると酸化物が分散したCo系合金ターゲットが製造できる。
【0013】
<2>急冷凝固法で作製したCo系合金粉末と酸化物とをメカニカルアロイングすると、酸化物がCo系合金粉末中に均質に分散した組織を有する複合合金粉末が得られ、この粉末をモールドに入れてホットプレスすると非常に均質な酸化物分散型Co系合金ターゲットが製造できる。
<3>酸化物の代わりに、窒化物や炭化物を用いても同様に、窒化物や炭化物がCo系合金粉末中に均質に分散した窒化物分散型Co系合金ターゲットや炭化物分散型Co系合金ターゲットが製造できる。」

ウ「 【0015】
【実施例】
・・・・・・
実施例1
Co_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金1.5kgを・・・アトマイズすることにより粉末とした。アトマイズはCo-Cr-Ta合金を、底にノズルをもつアルミナるつぼ中に入れアルゴン雰囲気中で・・・約1600℃の温度で溶湯した後、その溶湯をノズルより落下して溶湯流とし、その溶湯流にアルゴンガスを・・・噴射することにより行なった。・・・得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。
・・・この酸化物が分散したCo-Cr-Ta合金粉末を直径4インチのカーボン型中に入れ、真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0016】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られなかった。ホットプレスにより作製したターゲットはアルキメデス法で測定したところ約98%の高い相対密度をもつ。
図1にホットプレスにより作製したターゲットの断面組織写真を示す。これによれば、微細な黒い点(SiO_(2))が均質に分布しているのが観察され、また、空孔やひびなどは観察されない。以上の結果より、このターゲットの組織はSiO_(2)がCo-Cr-Ta合金中に分散した微細混合相からなっていることがわかった。」

エ「 【0017】
実施例2
実施例1で使用したと同様のCo_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金アトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した後、直径4インチのカーボン型中に入れ、真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0018】
このようにして作製したターゲットには、大きなひびや割れなどは見られなかった。ホットプレスにより作製したターゲットはその相対密度をアルキメデス法で測定したところ約96%の高い相対密度である。
図2にホットプレスにより作製したターゲットの断面組織写真を示す。この断面組織写真は大きな白い球状の組織(Co-Cr-Ta合金)のまわりを黒い部分(SiO_(2))が取り囲んで分布しているのが観察され、また空孔やひびなどは観察されない。
以上の結果より、Co-Cr-Ta合金粉末と酸化物を混合した後ホットプレスすることにより作製したターゲットの組織は、酸化物(SiO_(2))がCo-Cr-Ta合金粉末の粒界に分散した組織からなっていた。
【0019】
実施例3
実施例1で使用したと同様のCo_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金アトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。得られた粉末を電子顕微鏡により組織観察したところ、酸化物が分散したCo-Cr-Ta合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo-Cr-Ta合金粉末を室温でプレスすることにより成形体を作製し、それを水素雰囲気中1300℃で1時間焼結することによりターゲットを作製した。
【0020】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約95%であった。また、ターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、ホットプレスの代りに、冷間で成形した後、高温で焼結することによっても酸化物分散型Co系合金ターゲットを製造するできることがわかった。
【0021】
実施例4
Co_(82)Cr_(11)Ta_(4)Pt_(3)合金1.8kgをガスアトマイズ装置により実施例1と同様の方法で粉末とした。アトマイズには60kg/cm^(2)の圧力のアルゴンガスを用いた。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に窒化物として3重量%のSi_(3)N_(4)の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。
得られた粉末の電子顕微鏡による組織観察を行ったところ、窒化物が分散したCo-Cr-Ta-Pt合金粉末になっていることがわかった。この窒化物が分散したCo-Cr-Ta-Pt合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000?1100℃で300?500kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0022】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約98%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した酸化物(SiO_(2))が分散した微細混合相とほぼ同様であった。このことにより、本製造プロセスで酸化物だけではなく窒化物も分散することができ、窒化物分散型Co系合金ターゲットを製造できることがわかった。
【0023】
実施例5
Co_(77)Ni_(7)Cr_(4)Pt_(12)合金1.8kgをガスアトマイズ装置により実施例1と同様の方法で粉末とした。アトマイズには60kg/cm^(2)の圧力のアルゴンガスを用いた。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のZrO_(2)の粉末を混合した後、高エネルギーボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比10:1とし、アルゴン雰囲気中で10時間行った。
得られた粉末の電子顕微鏡による組織観察を行ったところ、酸化物が分散したCo-Ni-Cr-Pt合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo-Ni-Cr-Pt合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000?1100℃で300?500kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0024】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約98%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、ボールミル条件が多少異なっても酸化物の分散した合金粉末ができれば、微細な酸化物がCo-Ni-Cr-Pt合金中に分散したターゲットが製造できることがわかった。
【0025】
実施例6
Co_(62)Ni_(20)Cr_(13)Ta_(5)合金1.5kgを日新技研製メルトスピナー装置により急冷薄帯とした。メルトスピンは、母合金を底に直径0.5-1.0mm程度の小さな穴(オリフィス)をもつ石英るつぼ中に入れアルゴン雰囲気中で高周波溶解により約1600℃の温度で溶湯した後、その溶湯をオリフィスよりアルゴンガスの圧力(0.3kg/cm^(2))で、高速(50m/s)で回転している銅ロール上に噴射することにより作製した。メルトスピンにより得られた試料は、幅約2mm程度、厚さ約20μmm、長さ数mの急冷薄帯であった。得られた急冷薄帯を乳鉢で約200μm程度に粗粉砕した粉末に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を混合した後、高エネルギー型のボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を10:1とし、アルゴン雰囲気中で10時間行なった。
得られた粉末を組織観察したところ、酸化物が分散したCo-Ni-Cr-Ta合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo-Ni-Cr-Ta合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000?1100℃で300?500kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0026】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約97%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、アトマイズ合金粉末のかわりにメルトスピンで作製した急冷薄帯を原料粉末として使用しても微細な酸化物がCo-Ni-Cr-Pt合金中に分散したターゲットを製造できることがわかった。
【0027】
実施例7
Co_(82)Cr_(11)Ta_(4)Pt_(3)合金1.8kgを、実施例1と同様の方法により、60kg/cm^(2)の圧力のアルゴンガスを用いたガスアトマイズ装置により粉末とした。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)を直径4インチのカーボン型に入れ、真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲット(T_(1))を作製した。また、上記得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末を直径4インチのカーボン型に入れ、真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲット(T_(2))を作製した。さらに、上記得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に3重量%のSiO_(2)の粉末を添加し、ボールミルでメカニカルアロイングし、次いで真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施し、ターゲット(T_(3))を作製した。
【0028】
これらのターゲットについてBHトレーサで透磁率を測定した。その結果を、表1に示す。また、比較のため真空溶解で作ったCo_(82)Cr_(11)Ta_(4)Pt_(3)合金の透磁率を、表1に併記する。
・・・・・・
【0030】
表1の結果から分るように、真空溶解で作製したCo-Cr-Ta-Pt合金は高い透磁率の値を示すが、アトマイズ粉末をホットプレスすることにより作製したCo-Cr-Ta-Pt合金の透磁率は低い。これらの透磁率の相違を調べるため、その断面組織観察を行なった。その結果を、図3に示す。
【0031】
図3から分るように、このように真空溶解で作製したCo-Cr-Ta-Pt合金の組織は典型的な鋳造組織である比較的粗く大きなデンドライト組織(図3(a))であるのに対し、アトマイズした合金粉末をホットプレスすることにより作製したCo-Cr-Ta-Pt合金はアトマイズ(急冷凝固法)を用いているため非常に微細で均質な組織(図3(b))になっている。
【0032】
また、アトマイズで作製した粉末に酸化物を混合した後、ホットプレスすることにより作製した酸化物分散型Co-Cr-Ta-Pt合金ターゲットや、アトマイズで作製した粉末に酸化物をメカニカルアロイングで分散させた後、ホットプレスすることにより作製したCo-Cr-Ta-Pt合金ターゲットの透磁率は、酸化物を混合しないでアトマイズ粉末のみをホットプレスすることにより作製したターゲットの透磁率よりさらに低い。これは、合金相のCo-Cr-Ta-Pt合金中にセラミックス相である酸化物が均質に分散し、磁気的な介在物として働き、磁束の流れを邪魔しているためであると思われる。
【0033】
実施例8
実施例1で使用したと同様のアトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件としては、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行なった。
【0034】
次に、メカニカルアロイングの効果を調べるため、アトマイズで作製した合金粉末とメカニカルアロイングを施した粉末の断面写真を、図4(a)および図4(c)にそれぞれ示す。また、比較のため、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末の断面写真(図4(b))も示す。
【0035】
図4の断面写真から、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末(図4(b))は、元のアトマイズで作製した合金粉末(図4(a))と同様に球状であることがわかる。すなわち、アトマイズ粉末と酸化物を混合しても、アトマイズ粉末自体には変化が見られない。一方、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO_(2)の粉末を混合した後、ボールミル処理した粉末(図4(c))は、もはや元の球状の粉末ではなく機械的に変形した粉末となっている。これは該粉末がメカニカルアロイングにより機械的に粉砕・圧延・混合された結果である。
【0036】
これらの断面写真は粉末の形状の変化を示すため比較的低い倍率で撮影したが、高倍率で撮影した写真ではメカニカルアロイングで作製した粉末にのみ、酸化物が粉末内に分散している様子が観察された。このことにより、添加した酸化物もこのメカニカルアロイングにより同時に粉砕・圧延・混合され、その結果酸化物が合金中に分散した粉末となっている。
【0037】
また、ターゲットの相対密度が同一の場合、このメカニカルアロイングで作製した酸化物分散型Co_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金粉末は、元のアトマイズ粉末よりも少し低温でまたは少し低い圧力でホットプレスできること、および同一温度、圧力であればより相対密度の高いものが得られるという長所があることがわかった。これは、メカニカルアロイングにより粉末中に蓄積された機械的なエネルギーの効果によるものであると思われる。」

オ「 【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物分散型Co系合金ターゲットとスパッタリングで形成される磁性薄膜との組成差、いわゆる組成ズレが少ない。またこの磁性薄膜は組成を均一で保磁力が高く、かつ媒体ノイズも少ない。
本発明により得られるターゲットは、Co系合金粉末を母相とした合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相からなり、また一枚の板状体に微細な酸化物が均質に分散した複合ターゲットであるため、従来のオンチップ型に比較して生産性に優れ、透磁率が低く、密度が高いので異常放電がなく、また取扱いも容易である。」

カ「【図面の簡単な説明】
【図1】
アトマイズにより作製したCo_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金粉末(150μm以下)とSiO_(2)にメカニカルアロイングを施して酸化物分散型Co_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金粉末を作製した後、真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施すことにより得られた本発明のターゲットの断面組織写真である。」

キ 図1は、以下のものである。
「【図1】




ク 図2ないし4は、以下のものである。
「【図2】



【図3】



【図4】




ケ 上記の甲1の図1(上記キ)によれば、少なくとも以下の(ア)及び(イ)の点が明らかに見てとれる。
(ア)均質に分布している「微細な黒い点(SiO_(2))」(上記ウ【0016】)は、粒子状であり、いずれも半径2μmの仮想円より小さいこと
(イ)SiO_(2)粒子が存在しない領域の最大径が10μm以下であって、直径10μm以上40μm以下のSiO_(2)粒子が存在しない領域の個数が0個/mm^(2)であること

コ 上記の甲1の【0015】(上記ウ)において、実施例1のターゲットは、Co_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金のアトマイズ粉末に3重量%のSiO_(2)の粉末を混合し、メカニカルアロイング及びホットプレスを施して作製されているから、作成されたターゲット中のSiO_(2)粒子の含有量は3重量%であると認められる。

サ 以上によれば、甲1には、実施例1として、次の構成要件a?fよりなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「a SiO_(2)粒子がCo_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金中に分散した組織を有する酸化物分散型Co系合金スパッタリングターゲットであって、SiO_(2)が分散したCo-Cr-Ta合金粉末を真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施して作成されたものであり、
f SiO_(2)粒子の含有量は3重量%であり、
b 前記ターゲットの断面組織写真によって観察される組織のSiO_(2)の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さく、
c SiO_(2)粒子が存在しない領域の最大径が10μm以下であり、
d 直径10μm以上40μm以下のSiO_(2)粒子が存在しない領域の個数が0個/mm^(2)である
e 酸化物分散型Co系合金スパッタリングターゲット。」

シ 被請求人の主張について
ここで、被請求人は、甲1は酸化物の体積比率と面積比率がかい離する点で記載内容に信ぴょう性がない旨(平成26年12月15日付け答弁書6?15頁)、この体積比率と面積比率についての判断と、甲1の図1の「微細な黒い点」のみで酸化物(SiO_(2))を認定することとは相互に矛盾する旨主張する(平成28年9月26日付け意見書5?8頁)。
しかし、甲1の記載事項の認定については平成29年(行ケ)第10096号判決(以下、単に「判決」という。)において判示されるとおりであり、これに反する被請求人の主張は採用できない。

(2)甲6(特開2006-176810号公報)
甲6は、本件特許の優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願である特願2004-369451号の公開特許公報である。
甲6には、以下のア、イの記載がある。

ア 「【0016】
実施例1
先に用意したCo粉末、Cr粉末、Pt粉末およびSiO_(2)粉末を、Cr粉末:7.2原子%、Pt粉末:18原子%、SiO_(2)粉末:10原子%、残部:Co粉末となるように秤量し、このうちPt粉末およびSiO_(2)粉末のみを配合し、大気中、ジルコニアボールによる乾式ボールミルで8時間乾式混合することによりPt-SiO_(2)混合粉末を作製した。その後、このPt-SiO_(2)混合粉末に残部となるCo粉末およびCr粉末を添加したのちAr雰囲気中、ジルコニアボールによる乾式ボールミルで8時間乾式混合することにより混合粉末を作製し、この混合粉末を直径:165mmのカーボンモールドに充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:20MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることによりホットプレス体を作製した。このホットプレス体を機械加工することにより直径:152.4mm、厚さ:2mmの寸法を有するターゲットを作製することにより本発明法1を実施した。
・・・・・・
【0020】
【表1】
・・・・・・
【0021】
表1に示される結果から、本発明法1?2を実施することにより得られたターゲットは、従来法1を実施することにより得られたターゲットに比べて、スパッタリング時に発生するパーティクルの数が格段に少ないことが分かる。
【0022】
さらに、スパッタによる成膜後、バッキングプレートからターゲットを剥がし、そこから組織観察用のサンプルを切り出し、樹脂に埋めこみ、研磨したのち500倍の光学顕微鏡で断面組織を観察し、その組織写真を撮影し、前記実施例1?2および従来例1で作製したターゲットの組織写真を図1?3に示した。
図1?3から明らかなように、実施例1?2の本発明法1?2を実施することにより得られたターゲットは金属粒(白色部)が微細であり、さらのSiO_(2)相(黒色部)が微細に均一分散しているに対し、従来例1の従来法1を実施することにより得られたターゲットは金属粒(白色部)が粗大であり、さらのSiO_(2)相(黒色部)が粗大な金属粒の周囲を囲むように集合して偏析していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の方法により作製したスパッタリングターゲットの光学顕微鏡による組織写真である。」

イ 図1は、以下のものである。
「【図1】




ウ 上記の甲6の図1によれば、少なくとも以下の(ア)の点が見てとれる。
(ア)「SiO_(2)相(黒色部)」(上記ア【0022】)は、粒子状であること。

エ 上記アによれば、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

「Co粉末、Cr粉末、Pt粉末およびSiO_(2)粉末を、Cr粉末:7.2原子%、Pt粉末:18原子%、SiO_(2)粉末:10原子%、残部:Co粉末となるように秤量し、混合粉末を作製し、この混合粉末を温度:1200℃、圧力:20MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることによりホットプレス体を作製し、このホットプレス体を機械加工することにより作製したスパッタリングターゲットであって、研磨したのち観察した断面組織の組織写真においてSiO_(2)粒子が微細に均一分散している、スパッタリングターゲット。」


3.無効理由1について
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「Co_(82)Cr_(13)Ta_(5)合金」は、本件訂正発明1における「Co」「を主成分とする材料の強磁性材」に相当する。
甲1発明における「SiO_(2)粒子」は、本件訂正発明1における「酸化物」の「材料からなる非磁性材の粒子」に相当する。
甲1発明の酸化物分散型Co系合金スパッタリングターゲットは、「SiO_(2)が分散したCo-Cr-Ta合金粉末を真空中1100℃で300kg/cm^(2)でホットプレスを施して作成されたもの」であるから、「焼結体からなる」ことは明らかである。
一般に、焼結体からなる材料の断面組織は、当該材料の研磨面について観察されるものであるから、甲1発明における「ターゲットの断面組織写真」は、ターゲットの研磨面を観察した写真であると認められる。
本件訂正発明1における構成要件1B「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、」という事項は、「研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子」は「形状1」又は「形状2」の何れかであることを意味するものであり、甲1発明における「b 前記ターゲットの断面組織写真によって観察される組織のSiO_(2)の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さく」という事項は、本件訂正発明1における構成要件1Bの「研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子」は「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さい」ことになって「形状1」であることに相当する。
してみると、甲1発明における構成要件a?eは、それぞれ、本件訂正発明1における構成要件1A?1Eに相当する。
以上のことから、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致する。
「1A Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、
1B 前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、
1C 研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、
1D 直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である
1E ことを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。」

一方、両者は以下の相違点1、2で相違する。
[相違点1]
非磁性材の含有量が、本件訂正発明1においては「6mol%以上」であるのに対し、甲1発明においては、SiO_(2)粒子(非磁性材)の含有量は「3重量%」である点。
[相違点2]
本件訂正発明1においては、材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含」む、すなわち、「形状2」の粒子を含むのに対し、甲1発明においては、「形状2」の粒子を含むのか否かが一見して明らかでない点。

イ 事案に鑑み、上記相違点2について先に検討する。
本件訂正発明1において含まれる「形状2」の粒子は、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子」であり、換言すると、粒子内のどの点を半径2μmの円の中心に設定しても粒子の一部がその円からはみ出るかあるいは接する大きさ・形状ということになるから、粒子は少なくとも2μm以上の長い部分を含むものであるのは明らかであり、仮に、紐状粒子である場合には、その中間付近を仮想円の中心とした場合を想定すると、粒子は少なくとも4μm以上の長い部分を含むものであるといえる。
これに対し、甲1発明に含まれる粒子は、上記2.(1)ケのとおり、甲1の図1から、均質に分布しているSiO_(2)粒子であると認定できる微細な粒子状の黒い点は何れも半径2μmの仮想円より小さいものであり、すなわち、粒子内の任意のどの2点を結んでも2μm未満で直径2μmの円内に必ず収まるものとなるから、何れの粒子も2μmより長い部分を含まないのは明らかである。
請求人は、甲1発明の図1は、ほぼ球状の「形状1」の微細な黒い点ばかりでなく、紐状もしくは偏平形状の「形状2」をも示している旨、甲1発明を追試した甲3の図6及び図7において「形状2」の存在が確認できる旨主張する(平成31年2月18日付け弁駁書6頁3行?9頁4行)。
しかし、請求人の主張する甲1及び甲3の図(写真)に示される粒子に球状でないものが含まれていることは認められるものの、例えば、図7に示されている偏平の粒子は直径2μmの円の内部にあるから「形状1」の粒子である。
また、判決において、甲1発明の図1の全ての粒子は「形状1」であると判示されているので、これに反する請求人の主張は採用できない。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点であり、本件訂正発明1は甲1発明と同一であるとはいえない。

ウ 甲1のその他の記載をみても、甲1において本件訂正発明1と同一の発明が記載されていると認めることはできない。

エ また、甲2は、甲1の公開公報であって甲1と実質的に同様の内容を開示するものであるから、甲1と同様に、甲2において本件訂正発明1と同一の発明が記載されていると認めることはできない。

オ 以上のことから、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1によって公知となった発明であるとも、甲2に記載された発明であるともいうことはできない。

(2)本件訂正発明2について
上記(1)で検討したと同様に、本件訂正発明2における構成要件2B「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、」という事項は、「研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子」は「形状1’」又は「形状2’」の何れかであることを意味するものである。

ア 本件訂正発明2と甲1発明を対比する。
本件訂正発明2と甲1発明は、以下の点で一致する。
「2A Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、
2C 研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、
2D 直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である
2E ことを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。」

一方、両者は以下の相違点1’、2’で相違する。

[相違点1’]
非磁性材の含有量が、本件訂正発明2においては「6mol%以上」であるのに対し、甲1発明においては、SiO_(2)粒子(非磁性材)の含有量は「3重量%」である点。
[相違点2’]
本件訂正発明2においては、「研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子」は「形状1’」又は「形状2’」の何れかであって、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含」む、すなわち、「形状2’」の粒子を含むのに対し、甲1発明においては、「ターゲットの断面組織写真によって観察される組織のSiO_(2)の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さ」いものの、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さい」といえるかは不明であり、「形状2’」の粒子を含むのか否かが一見して明らかでない点。

イ 事案に鑑み、上記相違点2’のうちの「形状2’」の粒子を含むか否かの点について先に検討する。
本件訂正発明2において含まれる「形状2’」の粒子は、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子」であり、言い換えれば、粒子内のどの点を半径1μmの円の中心に設定しても粒子の一部がその円からはみ出るかあるいは接する大きさ・形状ということになるから、粒子は少なくとも1μm以上の長い部分を含むものであるのは明らかであり、仮に、紐状粒子である場合には、その中間付近を仮想円の中心とした場合を想定すると、粒子は少なくとも2μm以上の長い部分を含むものであるといえる。
これに対し、甲1発明に含まれる粒子は、本件訂正発明1について上記(1)で検討したとおり、何れの粒子も2μmより長い部分を含まないのは明らかであるから、同様に「形状2’」の粒子を含むものであるとはいえない。
したがって、上記相違点2’は実質的な相違点であり、本件訂正発明2は甲1発明と同一であるとはいえない。

ウ 甲1のその他の記載をみても、甲1において本件訂正発明2と同一の発明が記載されていると認めることはできない。

エ また、甲2は、甲1の公開公報であって甲1と実質的に同様の内容を開示するものであるから、甲1と同様に、甲2において本件訂正発明2と同一の発明が記載されていると認めることはできない。

オ 以上のことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1によって公知となった発明であるとも、甲2に記載された発明であるともいうことはできない。

(3)本件訂正発明3?6について
本件訂正発明3?6は、本件訂正発明1又は2を引用するものであり、本件訂正発明1又は2の構成要件をすべて備えている。
したがって、上記(1)、(2)のとおり、本件訂正発明1及び2は、何れもが甲1によって公知となった発明であるとも、甲2に記載された発明であるともいうことはできないから、本件訂正発明3?6についても、甲1によって公知となった発明であるとも、甲2に記載された発明であるともいうことはできない。

(4)小括
上記のとおりであるから、本件訂正発明1?6について、無効理由1は理由がない。


4.無効理由2について
(1)本件訂正発明1、2について
上記3.のとおり、甲1に「形状2」がないことは判決の判示のとおりであり、「形状2’」が存在することを示す証拠もなく、本件訂正発明1と甲1発明との上記相違点2及び本件訂正発明2と甲1発明との上記相違点2’は実質的な相違点である。
また、甲1には、甲1発明の粒子の形状を、「形状2」、「形状2’」とする動機付けもない。
よって、本件訂正発明1及び2は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

請求人は、分散粒子の形状は、メカニカルアロイングの条件によって変わり得るものであって、甲1発明に接した当業者であれば、「形状1」ばかりでなく「形状2」が存在することを当然に理解するから、相違点2の解消は容易なことである旨主張する(同弁駁書9頁6行?11頁14行)。
しかし、甲1に「形状2」がないことは判決の判示のとおりであるし、また、メカニカルアロイングの条件によってほぼ球状の粒子の形状が変化することは周知であったとしても、甲1発明の粒子の形状を、「形状2」とする動機付けがないのであるから、メカニカルアロイングの条件を変更して、甲1発明の粒子の形状を、「形状2」とすることが、当業者にとり容易であるとはいえない。
相違点2’についても同様のことがいえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

(2)本件訂正発明3?6について
本件訂正発明3?6は、何れも本件訂正発明1又は2を引用するものであり、本件訂正発明1又は2の構成要件をすべて備えている。
上記(1)のとおり、本件訂正発明1及び2は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正発明3?6についても、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)小括
上記のとおりであるから、本件訂正発明1?6について、無効理由2は理由がない。


5.無効理由5について
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明における「Co粉末、Cr粉末、Pt粉末およびSiO_(2)粉末を、Cr粉末:7.2原子%、Pt粉末:18原子%、SiO_(2)粉末:10原子%、残部:Co粉末となるように秤量し、混合粉末を作製し、この混合粉末を温度:1200℃、圧力:20MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることにより」作製された「ホットプレス体」は、本件訂正発明1における「Co」「を主成分とする材料の強磁性材」に相当する。
甲6発明における「SiO_(2)粒子」は、本件訂正発明1における「酸化物」の「材料からなる非磁性材の粒子」に相当する。
甲6発明のスパッタリングターゲットは、「Co粉末、Cr粉末、Pt粉末およびSiO_(2)粉末を、Cr粉末:7.2原子%、Pt粉末:18原子%、SiO_(2)粉末:10原子%、残部:Co粉末となるように秤量し、混合粉末を作製し、この混合粉末を温度:1200℃、圧力:20MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることにより」作製した「ホットプレス体」を機械加工したものであるから、「焼結体からなる」ことは明らかである。
甲6発明において、混合粉末中のSiO_(2)粉末の含有量は10原子%であるから、スパッタリングターゲット中に分散しているSiO_(2)粒子の量は「6mol%以上」であることは明らかである。
してみると、本件訂正発明1と甲6発明とは、
「Coを主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が6mol%以上分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3]
研磨面で観察される組織の非磁性材の粒子の形状及び寸法並びに分布の状態について、
本件訂正発明1においては、
「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である」
のに対し、甲6発明においては、SiO_(2)粒子がそのような形状及び寸法並びに分布の状態であるのか不明な点。

イ 上記相違点3について検討する。
本件訂正発明1の構成要件1B「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、」は、換言すると、「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」ということである。
これに対し、甲6の図1において、図中に示されたスケールに基づいてSiO_(2)相(黒色部)の粒子の寸法を見積もると、図中右下に、半径2μmの仮想円を内包するか否か明らかとはいえない程度の大きさを有する粒子が複数認められる。したがって、同図に示されたスパッタリングターゲットにおいて、SiO_(2)相(黒色部)の粒子について、「全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」と認定することはできない。
なお、甲6の図2及び図3(甲6発明の従来技術)においては、図1よりもさらに大きなSiO_(2)相(黒色部)の粒子が認められるから、これら図2及び図3によっても、甲6に記載されたスパッタリングターゲットにおいて、SiO_(2)相(黒色部)の粒子について、「全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」と認定することはできない。
上記のとおり、甲6に記載されたスパッタリングターゲットにおいて、SiO_(2)相(黒色部)の粒子について、「全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」と認定することはできない。すなわち、甲6発明は、「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、」との要件を満たしていると認めることはできない。
したがって、上記の相違点3は実質的な相違点であり、本件訂正発明1は甲6発明と同一であるとはいえない。

ウ 請求人は、上記相違点3について、以下の主張をしている。
(ア)「図1の40μmのスケールに基づいて算出すると、黒色部であるSiO_(2)相の全粒子は、半径2μmのすべての仮想円よりも小さいか、又は半径2μmの仮想円と少なくとも2点以上の接点又は交点を有する紐状又はヒトデ状である(甲6図1)」(審判請求書73頁2?5行)
(イ)「無効理由5の主引例である甲6についても、請求人は、甲1図1に関して上述した(1)の方法と同様にして、目測及び定規を用いて、審判請求書記載の各開示事項を認定した。」(平成27年6月8日付け口頭審理陳述要領書(3)16頁12?13行)
(ウ)「訂正請求項1の記載は、・・・「形状1」又は「形状2」ではないその他の粗大な粒子を含むことを排除していない」(平成31年4月25日付け回答書10頁10?13行)
(エ)「甲6号証図1の黒点(非磁性材)を「形状1」と「形状2」とに色分けして、「形状1」及び「形状2」が含まれていることを確認する。甲6号証の図1の黒点のうち「形状1」であるものを縮尺バー40.0μmに従って直径4μmの青色の円で囲み、黒点のうち「形状2」であるものを縮尺バー40.0μmに従って直径4μmの赤色の円で区別した。・・・すべての黒点は青色の円又は赤色の円に該当していることが確認できる。・・・訂正請求項1に係る発明は、甲6発明と同一である。」(平成31年4月25日付け回答書15頁下から10行?16頁3行)

これらの主張について検討するに、まず、本件訂正発明1においては、上記イのとおり、「全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」ものであり、前提として、粗大粒子を含まないものであることは訂正前後において変わりがないものである(上記第2の4.(1))。次に、甲1の図1においては、「均質に分布している「微細な黒い点(SiO_(2))」(上記2.(1)ウ【0016】)は、粒子状であり、図中に示されたスケール10.0μmとの比較で、いずれも半径2μmの仮想円より小さいこと」が明らかに見てとれる(上記2.(1)ケ)のに対し、甲6の図1においては、図中に示されたスケールが40.0μmであり、さらに、二値化処理における対象画像の鮮明度や明度の影響を考慮すれば、図中右下に複数存在する比較的粗大な粒子については、直径4μmの仮想円を内包するか否かを判別するには明らかとはいえない程度の大きさであるといわざるを得ない。よって、SiO_(2)相(黒色部)の粒子について、「全粒子は、半径2μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」と認定することはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(2)本件訂正発明2について
ア 本件訂正発明2と甲6発明を対比する。
上記(1)で検討したと同様であり、本件訂正発明2と甲6発明とは、
「Coを主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が6mol%以上分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3’]
研磨面で観察される組織の非磁性材の粒子の形状及び寸法並びに分布の状態について、
本件訂正発明2においては、
「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径が10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下である」
のに対し、甲6発明においては、SiO_(2)粒子がそのような形状及び寸法並びに分布の状態であるのか不明な点。

イ 上記相違点3’について検討する。
本件訂正発明2の構成要件2B「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、」は、換言すると、「前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、半径1μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」ということである。
これに対し、上記(1)イでも検討した甲6の図1?3に示された大きなSiO_(2)相(黒色部)の粒子は、明らかに「半径1μmの仮想円を内包する大きさの粒子」であるといえる。
したがって、上記の相違点3’は実質的な相違点であり、本件訂正発明2は甲6発明と同一であるとはいえない。

ウ 請求人は、上記相違点3’について、以下の主張をしている。
(ウ’)「訂正請求項1の記載は、・・・「形状1」又は「形状2」ではないその他の粗大な粒子を含むことを排除していない・・・訂正請求項2に係る発明についても同様」(平成31年4月25日付け回答書10頁10?20行)
(エ’)「甲6号証の図1に「形状1’」に該当する粒子を縮尺バー40.0μmに従い直径2μmの青い円で囲み、「形状2’」に該当する粒子を直径2μm(1μm)の赤い円で示した。・・・ほぼすべての粒子が「形状1’」又は「形状2’」の粒子になる。・・・訂正請求項2に係る発明は、甲6発明と同一である。」(平成31年4月25日付け回答書19頁下から3行?20頁下から3行)

これらの主張について検討するに、まず、本件訂正発明2においては、上記イのとおり、「全粒子は、半径1μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」ものであり、前提として、粗大粒子を含まないものであることは訂正前後において変わりがないものである(上記第2の4.(1))。次に、甲6の図1においては、上記(エ’)のとおりとして、ほぼすべての粒子が「形状1’」又は「形状2’」の粒子であったとしても、そうではない一部の粗大粒子を含むことになるので、SiO_(2)相(黒色部)の粒子について、「全粒子は、半径1μmの仮想円を内包する大きさの粒子ではない」と認定することはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(3)本件訂正発明3?6について
本件訂正発明3?6は、本件訂正発明1又は2を引用するものであり、本件訂正発明1又は2の構成要件をすべて備えている。
そして、上記(1)、(2)のとおり、本件訂正発明1及び2の何れもが甲6発明と実質的に同一であるとはいえないから、本件訂正発明3?6についても、甲6発明と実質的に同一であるとはいえない。

(4)小括
上記のとおりであるから、本件訂正発明1?6について、無効理由5は理由がない。


6.無効理由6について
(1)当審の判断
ア 特許法第36条第6項第1号は、請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない旨を規定している。これは、発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載することになれば、公開されていない発明について権利が発生することになるからである。同号の要件(サポート要件)は、これを防止するためのものである。
特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かの判断は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとの実質的な対応関係を検討して行うべきである。この実質的な対応関係についての検討は、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるか否かを調べることによりなされるべきである。そして、請求項に係る発明が、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えていると判断された場合は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが、実質的に対応しているとはいえず、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないことになる。
上記を踏まえ、以下、検討する。

イ 本件明細書の記載事項
本件明細書は、訂正されておらず、上記第2の3.において摘記した記載がある。

ウ 本件訂正発明の課題について
上記第2の3.イの特に【0007】によれば、本件訂正発明の課題は、
「スパッタリングによって膜を形成する際に、DCスパッタによる高速成膜が可能であり、さらにスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減させ、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができ、かつ結晶粒が微細であり高密度の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット、特に磁気記録層としての使用に最適であるスパッタリングターゲットを得ること」
であり、さらに、特に【0010】によれば、
「研磨面で観察される大型の球状物は脱粒を起こし易く、かつ脱粒した場合にパーティクル発生量はその影響を強く受ける」
ということにあると認められる。

エ 本件訂正発明の課題を解決する手段について
そして、上記の課題を解決するための手段は、非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、「非磁性材粒子分散の形態を調整」(【0008】)し、「紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織を包含」(【0010】)することであり、具体的には、非磁性材粒子について、「6mol%以上含有」(実施例1、3)し「強磁性材の中に非磁性材の粒子が分散した材料の研磨面で観察される組織中の非磁性材全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか」(形状1)、「又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法」(形状2)を備え(【0009】)、あるいは、「非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか」(形状1’)、「又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する」(形状2’)(【0010】)という分散の形態に調整し、「形状2」又は「形状2’」の粒子を含んで「強磁性材料と酸化物等の非磁性材料との接触面積の増加」により「脱粒防止に効果」(【0010】)を得ることにあることが理解される。
上記手段を採用することによって、発明の課題が解決できることは、「非磁性材粒子分散の形態を調整し、導電性を保有させてDCスパッタを可能とし、かつ密度を高め、さらにスパッタ時に発生するパーティクルやノジュールを大幅に低減できるとの知見を得た。」(【0008】)、「本発明のスパッタリングターゲットの密度向上は、非磁性材と強磁性材との密着性を高めることにより、非磁性材の脱粒を抑制することができ、また、空孔を減少させ結晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができるので、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができる」(【0014】)という、上記「分散の形態」と作用効果の関係についての記載並びに実施例1?3及び比較例1、2の記載(【0022】?【0032】)によって、裏付けられているといえる。

オ 本件訂正発明1の構成要件1F、1B、1G及び本件訂正発明2の構成要件2F、2B、2Gは、実質的に上記の事項を特定するものであり、本件訂正発明1及び2は、何れも課題を解決するための手段を備えているといえる。
よって、本件訂正発明1、2は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではない。
本件訂正発明3?6についても同様である。

(2)請求人の主張について
ア 請求人は、無効理由6に関して、以下の点を主張する。(審判請求書78頁5行?81頁末行、平成27年5月25日付け口頭審理陳述要領書(2)10頁24行?16頁13行、平成31年4月25日付け回答書10頁7?22行)
(ア)本件請求項1?6の発明特定事項は、ターゲットの成分組成の特定が、実施例1?3に記載の特定成分組成のものに比して不足している。
(イ)本件請求項1?6の構成要件1Bについて、研磨面全体を観察した結果か、研磨面の一部を観察した結果か不明であり、仮に一部を観察した結果を意味する場合には、所期の効果を奏するか不明である。
(ウ)本件請求項1?6の構成要件1C及び1Dについて、「領域の最大径」の評価方法及び「直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数」の計算方法の説明が本件明細書にない。
(エ)本件請求項6の構成要件E「DCスパッタリング用ターゲットである」について、強磁性材と非磁性材の割合が特定されていない。
(オ)本件訂正請求項1、2に係る発明は、「形状1(形状1’)」又は「形状2(形状2’)」ではないその他の粗大な粒子を含むことを排除していないから、本件明細書の比較例1及び2の態様をも包含することになり、発明の目的であるスパッタ時に発生するパーティクルの低減が達成されない態様までを包含する。

イ 請求人の上記主張について検討する。
(ア)本件訂正発明において、課題を解決するための手段は、上記(1)エ、オのとおりであり、非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、強磁性材中の非磁性材粒子の分散の形態を
「1F 前記非磁性材は6mol%以上含有され、
1B 前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、
1G 非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含」むように調整することであり、あるいは、
「2F 前記非磁性材は6mol%以上含有され、
2B 前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、
2G 非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含」むように調整することであり、そのように調整することによって、密度が高められ、非磁性材と強磁性材との密着性を高め、非磁性材の脱粒を抑制することができ、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができ、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させることができるという作用効果が奏されることが理解される。
そして、このような作用効果が、特定の組成のターゲットについてのみ奏されるものではないことは、本件明細書の【0012】に「本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、強磁性材がCo若しはFe又は双方を主成分とする材料に、特に有効である。また、本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットは、非磁性材が酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料である場合に、特に有効であるが、非磁性材料は、強磁性材料の成分と共存した状態で、不活性雰囲気若しくは真空中で強熱しても還元または分解しないものが望ましい。これは、ターゲット製造時に還元または分解することにより、強磁性材の組成に影響を及ぼすものであってはならないからである。」と記載されていること等からも理解でき、本件明細書の実施例1、3に開示された特定の組成のターゲットについてのみ奏されるものであると認めるべき理由はない。
よって、請求人の主張(ア)は採用できない。

(イ)構成要件1B、2Bは、何れも非磁性材の「全粒子」について特定するものであり、冒頭の「前記材料の研磨面」との記載における「前記材料」は、それぞれ構成要件1A、2Aの「・・・強磁性材の中に・・・非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって」との記載を受けたものであって、ここでの研磨面はターゲット材料の研磨面全体を意味するといえるから、これらが研磨面全体を観察した結果について特定したものであることは明らかである。
よって、請求人の主張(イ)は採用できない。

(ウ)構成要件1C、2Cにおいて、「最大径」との記載から、「円」を想定すべきであることは明らかである。そして、「非磁性材の粒子が存在しない領域」は、例えば本件図面の図1におけるように不定形であるところ、そのような領域について「最大径」の「円」とは、当該領域に内接する円のうち直径が最大の内接円を指すと解すべきことは明らかである。そして、当該領域に「直径10μm以上40μm以下」の内接円が描けた場合、残った領域においてさらに「直径10μm以上40μm以下」の内接円を順次描けるかどうか確認していくことが可能であり、本件訂正発明1?6における「直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数」とは、そのように順次描くことができた「直径10μm以上40μm以下」の内接円の個数を指すと解すべきことは明らかである(被請求人の平成27年6月22日付け上申書)。
よって、請求人の主張(ウ)は採用できない。

(エ)本件訂正発明1?6において、非磁性材の含有量について、下限値が「6mol%以上含有され」(構成要件1F、2F)と特定されているが、前記含有量の上限値は特定されていない。
ここで、DCスパッタリング用ターゲットはターゲット自体が導電性を備えていることが必要であることや、ターゲット中の酸化物、珪化物等の非導電性材料の量がターゲットのバルク抵抗値に影響を与えることは、いずれも技術常識であると認められるから(本件明細書【0004】?【0005】にも同旨の記載がある。)、非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、DCスパッタリング用ターゲットとできる非磁性材の含有量の上限値は、強磁性材及び非磁性材それぞれの導電性(抵抗値)に依存するものであって、一義的に特定されるものでないことは明らかである。
したがって、非磁性材の含有量について上限値が特定されていないからといって、本件訂正発明1?6が発明の詳細な説明に記載されものではないとすることはできない。
よって、請求人の主張(エ)は採用できない。

(オ)本件訂正発明1は「全粒子は、・・・よりも小さい(形状1)か、又は・・・寸法の粒子(形状2)であって」と特定されていて、全粒子が形状1又は形状2の何れかであることになるから、形状1又は形状2以外の他の粗大な粒子を含み得ることはなく、また、本件訂正発明2についても、同様に、形状1’又は形状2’以外の他の粗大な粒子を含み得ることはない。
よって、請求人の主張(オ)は採用できない。

ウ 以上のとおり、無効理由6について、請求人の主張はいずれも採用できない。

(3)小括
上記のとおりであるから、本件訂正発明1?6について、無効理由6は理由がない。


第6 まとめ
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、本件訂正発明1?6に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径2μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下であることを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Co若しくはFe又は双方を主成分とする材料の強磁性材の中に酸化物、窒化物、炭化物、珪化物から選択した1成分以上の材料からなる非磁性材の粒子が分散した材料からなる焼結体スパッタリングターゲットであって、前記非磁性材は6mol%以上含有され、前記材料の研磨面で観察される組織の非磁性材の全粒子は、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子であって、非磁性材料粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子を含み、研磨面で観察される非磁性材の粒子が存在しない領域の最大径が40μm以下であり、直径が10μm以上40μm以下の非磁性材の粒子が存在しない領域の個数が1000個/mm^(2)以下であることを特徴とする焼結体からなる非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記仮想円と、強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法の粒子は、紐状またはヒトデ状の粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項4】
非磁性材料が、真空中もしくは不活性雰囲気中で金属Co若しくは金属Cr又はその混合物若しくは合金とともに強熱しても還元若しくは分解しない金属酸化物からなる請求項1?3のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項5】
金属酸化物が、Cr、Ta、V、Si、Ce、Ti、Zr、Al、Mg、Nbから選択した1種以上の酸化物である請求項4に記載の非磁性粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項6】
DCスパッタリング用ターゲットであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-07-17 
結審通知日 2019-07-22 
審決日 2019-08-29 
出願番号 特願2007-553871(P2007-553871)
審決分類 P 1 113・ 111- YAA (C23C)
P 1 113・ 161- YAA (C23C)
P 1 113・ 851- YAA (C23C)
P 1 113・ 857- YAA (C23C)
P 1 113・ 113- YAA (C23C)
P 1 113・ 853- YAA (C23C)
P 1 113・ 537- YAA (C23C)
P 1 113・ 121- YAA (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近野 光知  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 菊地 則義
金 公彦
登録日 2012-04-20 
登録番号 特許第4975647号(P4975647)
発明の名称 非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット  
代理人 望月 尚子  
代理人 望月 尚子  
代理人 松山 美奈子  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 大平 茂  
代理人 鈴木 修  
代理人 磯田 直也  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 大西 千尋  
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