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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1374110
審判番号 無効2018-800134  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-11-29 
確定日 2021-03-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第6302430号発明「ボール配列用マスクの製造方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第6302430号の特許請求の範囲を,平成31年3月5日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6302430号の請求項1に記載された発明についての審判の請求は成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6302430号についての手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

特許出願(特願2015-115779号)
平成30年 3月 9日 登録日
平成30年11月29日付け 無効審判請求
平成31年 3月 5日付け 被請求人:審判事件答弁書
平成31年 3月 5日付け 被請求人:訂正請求書
平成31年 3月19日付け 請求人:審尋
平成31年 4月 4日付け 請求人:審尋回答書
平成31年 4月22日付け 請求人:審判事件弁駁書
令和 元年 5月21日付け 請求人:審尋
令和 元年 6月 7日付け 請求人:審尋回答書(2)
令和 元年 7月 1日付け 審理事項通知書
令和 元年 8月 8日付け 請求人 :口頭審理陳述要領書
令和 元年 8月 8日付け 被請求人:口頭審理陳述要領書
令和 元年 8月22日 第1回口頭審理
令和 元年 9月 6日付け 被請求人:上申書
令和 元年 9月 6日付け 請求人 :上申書

第2 訂正の請求について
1 訂正請求の内容
本件審判の手続において,被請求人より平成31年3月5日付けで提出された訂正請求書で,特許権者(被請求人)が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。
(1)請求項1に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「開口部以外に部分的に突出された突起とを備え,前記突起」と記載されているのを,「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起とを備え,前記分離独立した複数の突起」に訂正する。
さらに,「SUS母材上に前記突起形成用の」,及び「前記突起が所定の高さとなるように」と記載されているのを,それぞれ「SUS母材上に前記分離独立した複数の突起形成用の」,及び「前記分離独立した複数の突起が所定の高さとなるように」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は,「突起」の形成箇所について「開口部以外に部分的に突出された」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項1は,「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起とを備え,前記分離独立した複数の突起」との記載により,訂正後の請求項1に係る発明における突起の形成箇所と形成状態をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように,訂正事項1は,「開口部以外に部分的に突出された突起」という発明特定事項を概念的により下位の「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものでないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下,同じ。)
「【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るボール配列用マスクにおいては,メッキにより形成され,振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたマスク本体と,メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となるマスク本体裏面の開口部以外に部分的に突出された突起とを備え,突起の先端部は,その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されており,布拭き取り時の引っ掛かりを防止するものである。
【0007】
また,突起の形状は,円柱状,多角形状,連続した突条,間欠的な突条のいずれか一つである。」

「【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1.
この発明の実施例1におけるボール配列用マスクの製造方法を図1により説明する。
<途中省略>
そして,複数の開口部形成用のレジスト層4aを除去すると,円柱状の突起3a間に導電性ボールが挿通する複数の開口部5aが形成された二次メッキ層5となる(図1(h)参照)。」

「【0016】
実施例2.
上記実施例1では,SUS母材1上に,中空円柱状の突起形成用のレジスト層2を部分的に形成することにより,円柱状の突起3aを形成しているが,円柱状の代わりに,例えば細長矩形枠状の突起形成用のレジスト層を連続的に形成することにより,連続した突条を形成しても良いし,細長矩形枠状の突起形成用のレジスト層を間欠的に形成することにより,突条を間欠的に形成しても良い。これにより,完成したボール配列用マスクの突条の先端部は,その周縁エッジ部が,角張った形状ではなく,丸味を持ったR形状となる。」

そして,上記記載から,願書に添付した明細書に,「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起」という構造が明示されているものと認められる。

なお,請求人は,審判事件弁駁書において,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内ではなく,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合していない旨を主張したが,この主張は,令和元年8月22日の第1回口頭審理において取り下げられた。

したがって,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 むすび
本件訂正の訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項1について訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2より,本件訂正を認めることから,本件特許6302430号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
メッキにより形成され,振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたマスク本体と,メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起とを備え,前記分離独立した複数の突起の先端部は,その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されており,布拭き取り時の引っ掛かりを防止するボール配列用マスクの製造方法であって,
SUS母材上に前記分離独立した複数の突起形成用のレジスト層を形成する工程と,
前記分離独立した複数の突起が所定の高さとなるようにSUS母材上にメッキすることにより,一次メッキ層を形成する工程と,
一次メッキ層の形成が終わったら,前記突起形成用のレジスト層を除去する工程と,
前記突起以外の一次メッキ層を取り除き,SUS母材上に一次メッキ層による突起を残す工程と,
前記SUS母材上の前記突起間に複数の開口部形成用のレジスト層を形成する工程と,
前記マスク本体が指定の厚さとなるようにSUS母材上及び前記突起上にメッキすることにより,二次メッキ層を形成する工程と,
二次メッキ層の形成が終わったら,前記複数の開口部形成用のレジスト層を除去する工程と,
前記SUS母材から一次メッキ層及び二次メッキ層からなる突起とマスク本体のメッキ層を剥離する工程と,
を備えたことを特徴とするボール配列用マスクの製造方法。」

第4 請求人の主張
1 これに対して,請求人は,「特許第6302430号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」との請求の趣旨で,証拠方法として,審判請求書に添付して,以下の甲第1号証ないし甲第4号証を,審判事件弁駁書に添付して,以下の甲第5号証ないし甲第7号証を,審尋回答書(2)に添付して,以下の甲第8号証を,上申書に添付して,以下の甲第9号証ないし甲第12号証を提出している。

・甲第1号証:特開2010-247500号公報
・甲第2号証:特開2006-324618号公報
・甲第3号証:特開2013-229577号公報
・甲第4号証:特開2014-107282号公報
・甲第5号証:特開2001-267731号公報
・甲第6号証:特開2006-287215号公報
・甲第7号証:特開2009-182068号公報
・甲第8号証:特許第5046719号公報
・甲第9号証:特許技術用語委員会,“「特許技術用語集-第3版-」,日刊工業新聞社,2012年3月23日,p.148-149
・甲第10号証:“rim”,[online],Weblio英和辞典・和英辞典,[令和元年8月29日検索],インターネット
・甲第11号証:田中哲矢,“スクリーン印刷法による微細回路形成技術”,日本印刷学会誌,2010年,第47巻,第6号,p.8-13
・甲第12号証:特許第3770496号公報

2 そして,請求人が,審判請求書,審尋回答書,審判事件弁駁書,審尋回答書(2),口頭審理陳述要領書,第1回口頭審理,および,上申書において主張したことを整理すると,無効理由について,概ね次のように主張しているものと認められる。

(1)無効理由(特許法第29条第2項)の概要
本件発明は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された事項に基づいて,その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

第5 被請求人の主張
被請求人は,審判事件答弁書によれば,「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は,請求人の負担とする,との審決を求める。」との答弁の趣旨で,請求人の主張する無効理由が,訂正後の請求項1に係る発明について成り立たないと主張している。

第6 無効理由について
1 甲号証について
(1)甲第1号証の記載事項
ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
パターン開口部周辺に凹部が形成されたマスクにおいて,マスクの凹部およびパターン開口部を1種類の電着層で形成したことで,凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成されることにより凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させたことを特徴とするマスク。
【請求項2】
電鋳母型を用意し,次いで前記電鋳母型上に1次パターンレジスト膜を形成し,次いで前記電鋳母型上の前記1次パターンレジスト膜が形成された領域を除いて1次電着層を形成し,次いで前記電鋳母型上の前記1次パターンレジスト膜と前記電鋳母型上の前記1次電着層で形成された捨て電着層を除去し,次いで前記1次電着層が形成された電鋳母型上に2次パターンレジスト膜を形成し,次いで前記1次電着層が形成された電鋳母型上の前記2次パターンレジスト膜が形成された領域を除いて2次電着層を形成し,次いで前記2次パターンレジスト膜を除去し,次いで前記電鋳母型から前記1次電着層と前記2次電着層を一体に剥離して作製したことを特徴とする,凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させたマスクの製造方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は,スクリーン印刷用マスクや導電性ボール搭載用マスクといった各種マスクに用いられるマスクおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,スクリーン印刷用マスクにおいては印刷時のペーストの塗布量の調整等を目的として,基板といった被印刷物と対向する面の反対面であるスキージ面側の開口パターン周辺部に凹部が形成されたマスクが使用されている。また,導電性ボール搭載用マスクにおいては,基板の導電性ボール搭載部の電極の上に形成されているフラックス等がマスクに付着するのを防止するための目的として,基板面側の開口パターン周辺部に凹部が形成されたマスクが使用されている。
<途中省略>
しかしながら,2次電着層12の厚みを含めたマスク15の厚みに関しては,2次電着層12の凹部14形成時に凹部14の縁部のめっきの厚みが厚くなって突出部13が発生するため,エッチング法よりも厚みのばらつきが大きい,すなわち厚みの安定性がないという問題があった。
電気めっき法では,めっきの析出速度は電流密度によって決まり,電流密度が大きいほど析出速度が増す。よって,絶縁物であるレジスト膜で覆われた部分の周辺部では,導電性の面の面積が小さくなってしまうために電流が集中して電流密度が高くなる。すなわち,レジスト膜で覆われている部分の周辺部はめっき膜が厚くなるため,開口パターンと比べると面積が大きいレジスト膜を形成する凹部パターンの周辺部分は,めっきの厚みが厚くなってしまう。
マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,スクリーン印刷用マスクにおいては印刷ペーストの塗布量のばらつきが発生し易くなり,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題が発生する。よって,マスクとしては凹部の底部の厚みの安定性と,マスクの厚みの安定性が要求されている。
そこで,上記の問題を解決する手段として,スクリーン印刷版の従来技術としては,メッシュ部が形成されている第1の金属膜と,該第1の金属膜上にある印刷パターンに相当する形状の印刷孔を有する第2の金属膜とが一体化しているスクリーン印刷版において,前記第1の金属膜の膜厚が30μm以下であり,前記第2の金属膜の膜厚を均一化するためのダミー孔が前記第2の金属膜上の前記印刷孔が配置されている領域の周囲に設けられていることを特徴とするスクリーン印刷版(例えば,特許文献1参照),またボール搭載型の印刷版の従来技術としては,印刷部開口を有する第1のマスク層と,印刷パターンに対応した印刷パターン開口を有する第2のマスク層とが積層されたマスクであり,上記第1のマスク層は,上記印刷パターン開口の略全面に重ねて形成された印刷部開口を有する印刷部と,印刷部開口を有さない非印刷部とを有し,上記第2のマスク層は,上記印刷パターン開口に加えて上記第1のマスク層の上記非印刷部と重なる部分にダミーの開口を有することを特徴とするマスク(例えば,特許文献2参照)が存在している。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は,特許文献1,特許文献2共に印刷板の厚み精度を上げる技術であるが,共に印刷板を成形する中途段階で開口部パターンの周囲にダミーパターンを形成して,板厚のバラツキを減少させ,メッキ後の印刷版の板厚精度を上げる手法を採用しているが,本来必要のない部分にもダミーパターンを形成しなければならないため,ダミーパターンがないマスクと比較すると第1の金属のみの部分が多くなってしまう。
すると,例えば第1の金属膜の厚みが非常に薄いマスクの場合は金属膜厚の薄い部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題があった。
また,上記先行技術をペースト塗布量を調整するスクリーン印刷用マスクとして使用する場合,凹部をスキージ面側に形成するため,多数のダミーパターンもスキージ面に形成することになる。そのようなマスクを使用して実際にペーストを印刷すると,ペーストがダミーパターンの凹部に入り込んでしまい,ペーストの使用量が増えたり,マスクの洗浄が煩雑になるという問題があった。
さらに,プリント基板といった被印刷物に半田ペーストを印刷するためのスクリーン印刷用マスクの一部の開口部のペーストの塗布量を調整するために凹部を形成する場合において,ペーストの突出量を調整したい開口パターン近部に塗布量を調整しない開口パターンがある場合は,ダミーパターン自体を形成することができないという問題があった。
そこで,本発明は上記問題点を解決しつつ,ダミーパターンを形成することなしに,安定した厚みが得られるマスクを提供することを目的とするものである。」

「【発明の効果】
【0007】
本発明に係るマスク及びマスクの製造方法は,上記説明のような構成を有するので,以下に記載する効果を奏する。
(1)電鋳法で作製するため,凹部の底部の厚み制御がし易い。
(2)製造工程に捨て電着層を採用し,さらに2次電着層で開口パターンおよび凹部を形成しているので,マスク全体の厚みのばらつきが抑えられる。
(3)ダミーパターンを形成する必要がないので,ダミーパターンDATA作成作業を削減できる。
(4)マスクにダミーパターンがないので,ダミーパターンが形成してあるマスクと比較すると,マスクとしての耐久性が向上する。
(5)マスクにダミーパターンがないので,ダミーパターンが形成してあるマスクと比較すると,ペーストの使用量が少なくて済み,さらにマスクの洗浄もし易くなる。」

「【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の特徴であるマスクの製造方法の一実施例を示す概略製造工程説明図である。
【図2】従来のマスクの製造方法を示す製造工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
パターン開口部周辺に凹部が形成されたマスクにおいて,マスクの凹部およびパターン開口部を1種類の電着層で形成し,凹部の縁部を下方に向かった略円弧状に形成して凹部の縁部の突出を抑えたことで,厚みを安定させたマスクである。
【実施例】
【0010】
以下,図面を用いて本発明の一実施例に関して説明する。
図1に基づいて本発明のマスクの製造方法の一実施例について説明する。
先ず,図1(a)に示すように,導電性の電鋳母型1を用意する。
使用する導電性の電鋳母型1としてはSUS301やSUS304といったステンレス材が好適であるが,鉄,銅,ニッケル合金,アルミニウムといった金属材料も用いることもできる。さらに,ガラス板や樹脂フィルム等に例えばニッケル,クロム,ITO(Indium Tin Oxide)膜といった導電性被膜を付与したものを電鋳母型として用いることもできる。
また,必要に応じて導電性の電鋳母型に表面処理を行っても構わない。
ここでいう表面処理とは後に施すレジストの密着性を向上や,電鋳被膜の外観を向上させる等の目的で行うものであり,上述の目的を達成するのであればどのような処理を施しても構わないが,例えばバフ研磨といった物理的処理や,塩酸処理といった化学的な処理や,それらを複合した処理を行う。また,アルカリ電解脱脂等の脱脂処理を加えてもよい。
【0011】
図1(b)に示すように,電鋳母型1に感光性の1次レジスト膜2を形成する。
感光性の1次レジスト膜2を形成する方法としては,ドライフィルムレジストといったフィルム状の感光性レジストを既存のラミネータを使用してラミネートするといった方法や,液状の感光性レジストをロールコータやスピンコータ,バーコータやカーテンコータ,ディップコータといった既存の液状レジスト塗布装置を使用して電鋳母型1上に成膜するといった方法があるが,何れの方法を使用しても構わない。感光性レジストには大別してネガタイプとポジタイプが存在するが,どちらのタイプの感光性レジストを使用しても構わない。
ただし,感光性レジストの厚みに関しては,後の工程で行う1次電着層の厚みよりも厚くするのが好ましい。
ここでは,ネガタイプのドライフィルムレジストを既存のラミネータ装置を使用してステンレス材の電鋳母型1にラミネートする。
【0012】
図1(c)に示すように,1次レジスト膜2に1次パターン3を露光する。1次パターン3は本発明のマスクにおける凹部4を形成するためのパターンである。この1次パターン3は後の工程にて形成する1次電着層6の厚みを安定させるため,捨て電着層7を形成するようなパターンとする。ここで捨て電着層7を形成するパターンとは,例えばある大きさで凹部形状を形成する場合,その仕上がりに合わせてレジスト膜を形成するのではなく,例えば凹部4の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成するといったものである。輪郭形状のみをレジスト膜で形成するため,レジスト膜で囲まれた内側部分には電着層,いわゆる捨て電着層7が形成されるが,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるという効果がある。
露光方法に関しては,ガラスやフィルムといった素材の1次パターン3が形成されたフォトマスクを1次レジスト膜2に密着させた後に超高圧水銀灯やメタルハライドランプといった紫外線を発生する光源を使用して1次レジスト膜2に紫外線を照射しても良いし,半導体レーザや超高圧水銀灯を光源に持つ直接描画装置を使用して,前記フォトマスクを使用せずに1次レジスト膜2に1次パターン3を直接描画しても構わない。
なお,密着露光用のフォトマスクや描画パターンはレジストのタイプに合わせてネガパターンかポジパターンかを選択して使用する。
ここでは,大日本スクリーン製造社製直接描画装置LI-8500を使用して,1次パターン3を直接1次レジスト膜2に描画する。
【0013】
図1(d)に示すように,1次パターン3を描画した1次レジスト膜2を現像,乾燥し,1次パターンレジスト膜5を形成した。
ここではネガタイプのレジストを使用しているため,前記直接描画装置で描画した部分のレジストが残り,1次パターンレジスト膜5を形成している。
【0014】
図1(e)に示すように,1次パターンレジスト膜5を形成した電鋳母型1を例えばスルファミン酸ニッケルめっき浴の電鋳層に移し,例えばニッケルあるいはニッケルを主成分とする合金などの電鋳を行って,電鋳母型1の1次パターンレジスト膜5で覆われていない表面に1次電着層6を形成する。1次電着層6の表面状態は光沢面でも半光沢面でも無光沢面でも構わない。また,表面硬度といった表面状態以外のめっき特性に関しても特に制限はないものとする。1次パターンレジスト膜5は捨て電着層7を形成しているため,厚みばらつきが抑えられた1次電着層6を形成することができる。なお,本製造方法では1次電着層6の厚みはすなわち図1(l)に示す凹部14の深さとなるため,凹部14の深さに合わせて1次電着層6の厚みを調整する。
【0015】
図1(f)(g)に示すように,1次パターンレジスト膜5および捨て電着層7を剥離する。工程図においては1次パターンレジスト膜5を剥離した後に,捨て電着層7を剥離しているが,先に捨て電着層7を剥離してから1次パターンレジスト層5を剥離しても構わないものとする。1次パターンレジスト膜5は既存のレジスト剥離処理等で剥離すればよく,捨て電着層7は,例えば手や治具を使用して電鋳母型1から剥離すればよいものである。
【0016】
次いで,図1(h)に示すように,1次電着層6が形成された電鋳母型1上に感光性の2次レジスト膜を成膜する。このときに使用するレジストは1次レジスト膜2の形成に使用するレジスト同様にどのようなレジスト及び形成方法を用いても構わないが,2次レジスト膜8は1次電着層6が形成された電鋳母型1の電鋳母型表面,すなわち1次パターンレジスト膜5および捨て電着層7を剥離した部分に形成することを目的とする。つまり,電鋳母型露出部4に2次レジスト膜8を形成しなければならないため,例えば,後の工程にて2次レジスト膜8に形成するパターンが電鋳母型露出部4の縁部付近にある場合においては,電鋳母型露出部4の縁部にまで2次レジスト膜8を形成できるように,液状レジストを使用したり,ドライフィルムレジストを使用する場合は真空ラミネータといった装置を使用したり2次レジスト膜8を形成するのが好ましい。
なお,2次レジスト膜8の厚みに関しては,後の工程で凹部14を形成する電着層の厚みよりも厚いレジストを使用するのが好ましい。
ここでは,ネガタイプのドライフィルムレジストを既存のラミネータ装置を使用して1次電着層6が形成された電鋳母型1上にラミネートする。
【0017】
次いで,図1(i)に示すように,2次レジスト膜8に開口部となる2次パターン10を露光する。このとき,2次パターン10の位置がズレないように,例えば1次電着層6が形成された電鋳母型1上にある図示しない位置合わせマーク等を使用して,1次電着層6が形成された電鋳母型1と2次パターン10の位置合わせを行ってから露光するのが好ましい。露光方法に関しては1次パターン3形成時に使用する露光方法同様にどのような方法を用いても構わないが,2次パターン10は電鋳母型露出部4に形成してある2次レジスト膜8に露光しなければならないため,1次電着層6が厚い場合はガラスやフィルムといった素材のフォトマスクを電鋳母型露出部4に形成してある2次レジスト膜8に密着させて露光するのは困難である。よって,2次パターン10の露光には半導体レーザや超高圧水銀灯を光源に持つ直接描画装置を使用し,2次パターン10を直接2次レジスト膜8に描画するのが好ましい。
ここでは,大日本スクリーン製造社製直接描画装置LI-8500にて,前記直接描画装置に付属しているアライメントマーク認識装置を用いて,1次電着層6が形成された電鋳母型1上にある図示しないアライメントマークを使用して位置合わせを行ってから,2次パターン10を2次レジスト膜8に直接描画する。
【0018】
次いで,図1(j)に示すように,2次パターン10を描画した2次レジスト膜8を現像,乾燥し,2次パターンレジスト膜11を形成した。
ここではネガタイプのフォトレジストを使用しているため,前記直接描画装置で描画した部分のレジストが残り,2次パターンレジスト膜11を形成している。
【0019】
次いで,図1(k)に示すように,2次パターンレジスト膜11を形成した1次電着層6が形成された電鋳母型1を例えばスルファミン酸ニッケルめっき浴の電鋳槽に移し,ニッケルあるいはニッケルを主成分とする合金等の電鋳を行って,1次電着層6が形成された電鋳母型1における2次パターンレジスト膜11で覆われていない部分に2次電着層12を形成する。得られる2次電着層12の表面状態は光沢面でも半光沢面でも無光沢面でも構わない。また,表面硬度といった表面状態以外のめっき特性に関しても特に制限はないものとする。さらに,1次電着層6と2次電着層12は異なるめっき特性,すなわち,表面状態,表面硬度,電鋳めっきの種類等が異なっていても構わない。なお,必要に応じて1次電着層6への2次電着層12の密着性を向上させる目的として,1次電着層6が形成された電鋳母型1に塩酸処理といった化学的な表面処理を行ってもよい。2次電着層12の厚みは凹部14の厚みとなるため,凹部14の厚さに合わせて2次電着層12の厚みを調整する。
【0020】
次いで,図1(l)乃至(m)に示すように,2次パターンレジスト膜11を既存のレジスト剥離処理等で剥離した後,一体化した1次電着層6と2次電着層12を電鋳母型1から引き剥がすことでマスク15が得られる。なお,工程図においては2次パターンレジスト膜11を剥離した後に一体化した1次電着層6と2次電着層12を電鋳母型1から引き剥がしているが,先に一体化した1次電着層6と2次電着層12を電鋳母型1から引き剥がしてから2次パターンレジスト層11を剥離してマスク15としても構わない。
【0021】
以上の工程により,本製造方法では凹部14およびパターン開口部9を2次電着層12で形成するため,凹部14の縁部が突出しないので,厚みが安定したマスク15を得ることができる。」





イ 上記記載から,甲第1号証には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)甲第1号証に記載された技術は,導電性ボール搭載用マスクに用いられるマスクの製造方法に関するものであること。(【0001】)

(イ)導電性ボール搭載用マスクにおいては,基板の導電性ボール搭載部の電極の上に形成されているフラックス等がマスクに付着するのを防止することを目的として,基板面側の開口パターン周辺部に凹部が形成されたマスクが使用されていること。(【0002】)

(ウ)マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題が発生するので,マスクとしては凹部の底部の厚みの安定性と,マスクの厚みの安定性が要求されていること。(【0002】)

(エ)ボール搭載型の印刷版の従来技術としては,印刷部開口を有する第1のマスク層と,印刷パターンに対応した印刷パターン開口を有する第2のマスク層とが積層されたマスクであり,上記第1のマスク層は,上記印刷パターン開口の略全面に重ねて形成された印刷部開口を有する印刷部と,印刷部開口を有さない非印刷部とを有し,上記第2のマスク層は,上記印刷パターン開口に加えて上記第1のマスク層の上記非印刷部と重なる部分にダミーの開口を有することを特徴とするマスクが存在していること。(【0002】)

(オ)前記従来技術は,印刷板の厚み精度を上げる技術であるが,本来必要のない部分にもダミーパターンを形成しなければならないため,ダミーパターンがないマスクと比較すると第1の金属のみの部分が多くなり,第1の金属膜の厚みが非常に薄いマスクの場合は金属膜厚の薄い部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題があったこと。(【0004】)

(カ)電気めっき法では,めっきの析出速度は電流密度によって決まり,電流密度が大きいほど析出速度が増すので,絶縁物であるレジスト膜で覆われた部分の周辺部では,導電性の面の面積が小さくなってしまうために電流が集中して電流密度が高くなり,その結果,レジスト膜で覆われている部分の周辺部はめっき膜が厚くなるため,開口パターンと比べると面積が大きいレジスト膜を形成する凹部パターンの周辺部分は,めっきの厚みが厚くなってしまうが,マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題が発生するので,甲第1号証に記載された発明では,マスクにダミーパターンを設けることなく,凹部の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成し,レジスト膜で囲まれた内側部分に捨て電着層を形成することで,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるとともに,ダミーパターンを形成したマスクと比較して,マスクとしての耐久性を向上させたこと。(【0002】,【0007】,【0012】)

(キ)上記アの記載を参酌すれば,甲第1号証の図1(m)から,甲第1号証に記載された発明である「マスクの製造方法」により作製されたマスクの以下の構造を見て取ることができる。
「電鋳母型1から引き剥がされた平坦な一方の面と,
前記一方の面を基準面として,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する領域と,
1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する前記領域に隣接する領域であって,前記一方の面を基準面として,その厚さを,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さから,2次電着層12の厚さにまで減少させる,下方に向かって略円弧状に形成された凹部の縁部である領域と,
凹部の縁部である前記領域に隣接する,2個のパターン開口部9を含む領域であって,前記一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを有する領域と
を備えたマスク15の構造。」

ウ 上記アないしイから,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1発明>
パターン開口部周辺に凹部が形成されたマスクにおいて,マスクの凹部およびパターン開口部を1種類の電着層で形成したことで,凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成されることにより凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させた導電性ボール搭載用マスクの製造方法であって,
前記マスクは,
電鋳母型1から引き剥がされた平坦な一方の面と,
前記一方の面を基準面として,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する凹部ではない領域と,
1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する前記凹部ではない領域に隣接する領域であって,前記一方の面を基準面として,その厚さを,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さから,2次電着層12の厚さにまで減少させる,下方に向かって略円弧状に形成された凹部の縁部である領域と,
前記凹部の縁部である領域に隣接する,2個のパターン開口部9を含む領域であって,前記一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを有するパターン開口部周辺の領域と
を備えており,
前記凹部は,基板の導電性ボール搭載部の電極の上に形成されているフラックス等が前記マスクに付着するのを防止することを目的として,基板面側の開口パターン周辺部に形成されるものであり,
(a)SUS301やSUS304といったステンレス材が好適である導電性の電鋳母型1を用意する工程と,
(b)前記電鋳母型1に感光性の1次レジスト膜2を形成する工程と,
(c)1次レジスト膜2に1次パターン3を露光する工程であって,前記1次パターン3は,前記マスクにおける凹部4を形成するためのパターンであり,この1次パターン3は後の工程にて形成する1次電着層6の厚みを安定させるため,捨て電着層7を形成するようなパターンとするものであり,ここで捨て電着層7を形成するパターンとは,ある大きさで凹部形状を形成する場合,その仕上がりに合わせてレジスト膜を形成するのではなく,凹部4の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成するといったものであり,輪郭形状のみをレジスト膜で形成するため,レジスト膜で囲まれた内側部分には電着層,いわゆる捨て電着層7が形成され,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるという効果がある工程と,
(d)1次パターン3を描画した1次レジスト膜2を現像,乾燥し,1次パターンレジスト膜5を形成する工程と,
(e)1次パターンレジスト膜5を形成した電鋳母型1の1次パターンレジスト膜5で覆われていない表面に厚みばらつきが抑えられた1次電着層6を形成する工程と,
(f)ないし(g)1次パターンレジスト膜5および捨て電着層7を剥離する工程であって,前記1次パターンレジスト膜5は既存のレジスト剥離処理等で剥離すればよく,前記捨て電着層7は,手や治具を使用して電鋳母型1から剥離すればよいものである工程と,
(h)1次電着層6が形成された電鋳母型1上に感光性の2次レジスト膜8を成膜する工程であって,前記2次レジスト膜8は1次電着層6が形成された電鋳母型1の電鋳母型表面,すなわち1次パターンレジスト膜5および捨て電着層7を剥離した部分に形成する工程と,
(i)2次レジスト膜8に開口部となる2次パターン10を露光する工程と,
(j)2次パターン10を描画した2次レジスト膜8を現像,乾燥し,2次パターンレジスト膜11を形成する工程と,
(k)2次パターンレジスト膜11を形成した1次電着層6が形成された電鋳母型1における2次パターンレジスト膜11で覆われていない部分に2次電着層12を形成する工程と,
(l)ないし(m)2次パターンレジスト膜11を既存のレジスト剥離処理等で剥離した後,一体化した1次電着層6と2次電着層12を電鋳母型1から引き剥がすことでマスク15を得る工程と,
を備えた,凹部14の縁部が突出しないので,厚みが安定したマスク15を得ることができる方法。」

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
所定の配列パターンに対応した開口部11aを有し,前記開口部11aに導電性ボール13を振り込むことで所定の位置に前記導電性ボール13を搭載する配列用マスクであって,前記配列用マスクの被搭載体14と対面する側には突起部11cが一体的に形成されていることを特徴とする配列用マスク。」

「【0030】
前記配列用マスク11は,図1に示すように,マスク部111と枠部112からなり,マスク部111には図2および図3に示すように,導電性ボール13が挿通可能で電極部14aの配列パターンに応じ形成された開口部11a,非開口部11bおよび支柱のような突起部11cが形成されている。以下,前記配列用マスク11の製造方法について図4および図5に基づいて説明する。
【0031】
まず,図4(a)に示すごとく,母型20を用意する。母型20は導電性を有するものであれば何でも良く,本実施形態ではSUSを用いた。
【0032】
次いで,母型20の表面にフォトレジスト層を形成し,周知の方法で露光,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図4(b)に示すごとく,レジスト体21aを有する一次パターンレジスト21を母型20上に形成した。前記フォトレジスト層は,ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを,所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして形成した。
【0033】
次いで,上記母型20を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図4(c)に示すごとく,先のレジスト体21aの高さと同じ程度に,母型20のレジスト体21aで覆われていない表面に電着金属を電鋳して,一次電着層22を形成した。本実施形態では,Cu電鋳により一次電着層22を形成した。
【0034】
次いで,図4(d)に示すごとく,レジスト体21aを溶解除去した。
【0035】
次いで,図4(e)に示すごとく,一次電着層22の表面上に,フォトレジスト層23を形成した。このフォトレジスト層23は,ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを,所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして形成した。
【0036】
次いで,周知の方法で露光,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図5(a)に示すごとく,レジスト体24aを有する二次パターンレジスト24を一次電着層22上に形成した。
【0037】
次いで,図5(b)に示すごとく,母型20上の一次電着層22が形成されていない表面および一次電着層22上のレジスト体24aで覆われていない表面に電着金属を電鋳して,二次電着層25を形成した。本実施形態では,Ni-Co合金電鋳により二次電着層25を形成した。なお,二次電着層25を形成する工程において,レジストパターン24の厚みを越えて電着させるいわゆるオーバーハングさせても良い。これにより,導電性ボール13を開口部11aに振り込みやすくなるとともに,一旦搭載された導電性ボール13が抜けにくくさせることができる。また,二次電着層25を形成した後に二次電着層25表面に対し,ベルト研摩などといった機械的研摩および/または電解研磨するのが好ましい。
【0038】
次いで,図5(c)に示すごとく,レジスト体24aを溶解除去した。
【0039】
次いで,図5(d)に示すごとく,母型20から電着金属層22および25を剥離した。
【0040】
最後に,一次電着層を除去,本実施形態ではエッチングすることによって,図2および図3に示すような配列用マスク11を得ることができる(図5(e))。」

「【0089】
(その他の実施形態)
前記実施形態において,突起部11cの形状は図示例に限らず,例えば星状,三角状,無端枠状などとどのような形状であっても良い。また,突起部11cの形成位置は,図示例のように開口部11a・11aの中間に形成するのが好ましいが,必ずしも中間になくてもよく,要は開口部11aとかぶらない位置であれさえすればどこでも良い。さらに,突起部11cは規則正しく形成する必要はなく,例えば,一個飛ばしやまだらに形成しても良く,要は配列用マスク11がたわまないように突起部11cが形成してあれば良い。」





(3)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
磁力が作用されることでワーク(3)上に固定され,所定の配列パターンに対応した通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで,前記ワーク(3)上の所定位置に前記半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって,
前記通孔(12)からなるパターン領域を有し,パターン領域の外周にピッチ調整部(50)が設けられていることを特徴とする配列用マスク。」

「【0012】
図1に示すように,マスク1は,ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金,銅やその他の金属を素材として形成されたマスク本体10から成り,このマスク本体10にはこれを囲むように枠体11を装着できる。マスク本体10の盤面中央部には,各半導体チップ5に対応して,半田ボール2を投入するための多数独立の通孔12からなるパターン領域が多数形成されている。通孔12は,図2に示すように,ワーク3上における各半導体チップ5の電極6の配列位置に対応した配列パターンとなっている。半田ボール2は,50μm以下の半径寸法を有するものであり,これに合わせて各通孔12は,当該ボール2の半径寸法よりも僅かに大きな内径寸法を有する平面視で円形状に形成されている。
【0013】
マスク本体10には,補強用の枠体11を装着することができる。この枠体11は,アルミ,42アロイ,インバー材,SUS430等の材質からなる平板体であり,その盤面中央に,マスク本体10に対応する一つの四角形状の開口を備えており,一枚のマスク本体10を一枚の枠体11で保持している。枠体11は,マスク本体10よりも肉厚の成形品であり,マスク本体10の外周縁と不離一体的に接合される。この枠体11の厚み寸法は,例えば,0.05?1.0mm程度とし,ここでは,0.5mmに設定した。また,マスク本体10の厚みは,10μm以上が好ましく,ここでは,200μmに設定した。
【0014】
マスク本体10(マスク1)の下面側,すなわちワーク3との対向面側には,下方向に突出状の突起部15を設けることができる。詳しくは,図2及び図4(a)に示すように,パターン領域の外周(パターン領域間)にこのパターン領域を囲むように桟状の突起部15aを設けることができる。また,図3に示すように,パターン領域内の通孔12が形成されていない位置に突起部15bを設けることができる。係る突起部15を設けていれば,配列作業時において,ワーク3の上面に当接してマスク本体10とワーク3との対向間隙を確保できる。各々の突起部15,特に突起部15bにおいては,図2および図3に示すように,通孔12間であって,マスク本体10の下面から先窄まるように形成されていることが好ましく,円錐台状を呈している。また,突起部15の高さとマスク本体10の厚みとの比が2対1以上とするのが好ましく,上記マスク本体10の厚さが10?300μmの範囲内において,これを満足することがより好ましい。また,突起部15の先端の径L1と付け根の径L2との比が1対3以上であることが好ましい。さらに言えば,突起部15の先端の径と付け根の径と通孔12間の幅との比が1対3対3以上であることが好ましい。また,この突起部15は,アスペクト比(突起部15の高さと先端径との比)が大きいものが好ましく,アスペクト比3としている。なお,図2,図3,図4(a)に示すように,隣り合うパターン領域間にはパターン領域を囲むようにして突起部15aを設けて,マスク1をワーク3に載置した時に当接するようにしているが,図4(b)に示すように,隣り合うパターン領域間全体が突起部15aとした形態であっても良いし,図4(c)に示すように,突起部15aを設けない形態であっても良い。また,図4において,符号15で図示しているのは,突起部15の下端面であり,突起部15の付け根は図示していない。」

「【0020】
次に,係る構成の配列用マスク1の製造方法を図5及び図6に示す。まず,例えば,導電性を有するステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は,ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを,所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで,図5(a)に示すごとく,フォトレジスト層31の上に,突起部15に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)32を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図5(b)に示すように,先窄まり状の突起部15に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。この時,紫外線が透過しにくいフォトレジストを用いたり,露光量を弱めたりして,レジスト体34aにテーパが付いたものが好ましい。
【0021】
続いて,上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図5(c)に示すごとく,先のレジスト体34aの高さの範囲内で,母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して,一次電鋳層35を形成した。ここでは,母型30の略全面にわたって,一次電鋳層35を形成した(第一の電鋳工程)。次に,図5(d)に示すごとく,一次パターンレジスト34を除去する。ここで,一次電鋳層35の表面に研磨処理を施しておくと良い。
【0022】
次いで,図6(a)に示すごとく,一次電鋳層35および母型30の表面の全体に,フォトレジスト層36を形成したうえで,当該フォトレジスト層36の表面に,前記通孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)37を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図6(b)に示すように,マスク本体10に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を一次電鋳層35の表面に形成した。
【0023】
続いて,所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図6(c)に示すごとく,先のレジスト体38aの高さの範囲内で,母型30及びのレジスト体38aで覆われていない一次電鋳層35の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して,二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。次に,二次パターンレジスト38を溶解除去したうえで,母型30及び一次電鋳層35から二次電鋳層39を剥離することにより,図6(d)および図2に示すようなマスク1を得た。そして,マスク1に枠体11を装着すれば,図1に示すような配列用マスク1が得られる。」

「【0025】
以上のようなマスク1の製造方法によれば,電鋳法により高精度に配列用マスクを作製することができるので,半田ボール2を位置精度良くワーク3上に搭載させることができる。突起部15を有するマスク1を一回の電鋳作業(第二の電鋳工程)により不離一体に形成するようにすれば,突起部15を後付けする形態に比べて,該突起部15の破損などの不都合が生じるおそれが少なく,信頼性に優れたマスク1を高精度に得ることができる点でも優れている。また,突起部15をマスク本体10の下面に近づくにつれて大きくなるよう先窄まり状に形成すれば,突起部15の特に付け根(根元)に応力が集中することが回避されるため,突起部15の強度をしっかりと補強できつつ,突起部15をフラックス17が塗布された電極6から離間した状態で電極6間に当接できるので,電極6に塗布されたフラックス17がマスク本体10に付着することによる半田ボール2の搭載不良を防止することができる。この時,突起部15の先端の径と付け根の径との比を1対3以上とすること,突起部15のアスペクト比を3以上とすることでより効果的となる。
【0026】
また,レジストパターンを調整することによって所望のアスペクト比を有する突起部15が容易に得られる。なお,係る構成のマスク1において,通孔12及び突起部15の形状はストレート状としてもテーパ状としても良い。かかる形状は,フォトレジスト層31・36の感光度や露光条件を変更することによって得られる。
【0027】
また,図7に示すように,突起部15はマスクの下面に近づくにつれて寸法が大きくなる末拡がり形状であって,突起部15の側面(特に付け根部分)を円弧状としても良い。これにより,突起部15の特に根元に応力が集中することにより生じる破損の防止,フラックス17の通孔12への回り込み防止が可能となる。」

「【0040】
また,突起部15の下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角・ひし形・六角形などといった多角形でも良い。さらに,これら形状を構成する角や突起部15の下端面と側面との境界部分は,R状とするのが好ましい。これにより,例えば,マスク1の突起部15形成面を洗浄する際に,洗浄をスムーズに行うことができるとともに,洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段及び突起部15の破損のおそれを可及的に防止することができる。」

(4)甲第4号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
所定の配列パターンに対応した開口(12)を備え,前記開口(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで,ワーク(3)上の所定位置に前記半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって,
前記開口(12)は,多角形状であることを特徴とする配列用マスク。」

「【0014】
マスク本体10(マスク1)の下面側,すなわち,ワーク3との対向面側には,下方向に突出状の突起部15を設けることができる。詳しくは,図2及び図4(a)に示すように,パターン領域の外周(パターン領域間)にこのパターン領域を囲むように桟状の突起部15aを設けることができ,また,パターン領域内の開口12が形成されていない位置に突起部15bを設けることができる。この突起部15については,図3に示すように,突起部15aのみを設ける形態であっても良いし,図4(c)に示すように,突起部15bのみを設ける形態であっても良い。このように,係る突起部15を設けていれば,配列作業時において,ワーク3の上面に当接してマスク本体10とワーク3との対向間隙を確保できる。各々の突起部15,特に突起部15bにおいては,図2および図3に示すように,開口12間であって,マスク本体10の下面から先窄まるように形成されていることが好ましく,円錐台状を呈している。もちろん,四角錐台状であっても良い。また,突起部15の高さとマスク本体10の厚みとの比が2対1以上とするのが好ましく,上記マスク本体10の厚さが10?300μmの範囲内において,これを満足することがより好ましい。また,突起部15の先端寸法L1と付け根寸法L2との比が1対3以上であることが好ましい。さらに言えば,突起部15の先端寸法L1と付け根寸法L2と開口12間の幅との比が1対3対3以上であることが好ましい。また,この突起部15は,アスペクト比(突起部15の高さと先端寸法との比)が大きいものが好ましく,アスペクト比3としている。なお,図2,図3,図4(a)に示すように,隣り合うパターン領域間にはパターン領域を囲むようにして突起部15aを設けて,マスク1をワーク3に載置した時に当接するようにしているが,図4(b)に示すように,隣り合うパターン領域間全体が突起部15aとした形態であっても良いし,図4(c)に示すように,突起部15aを設けない形態であっても良い。また,突起部15を設けずにマスク本体10のみの形態であっても良い。また,図4において,符号15で図示しているのは,突起部15の下端面であり,突起部15の付け根は図示していない。」

「【0020】
次に,係る構成の配列用マスク1の製造方法を図5及び図6に示す。まず,例えば,導電性を有するステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は,ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを,所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで,図5(a)に示すごとく,フォトレジスト層31の上に,突起部15に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)32を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図5(b)に示すように,先窄まり状の突起部15に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。この時,紫外線が透過しにくいフォトレジストを用いたり,露光量を弱めたりして,レジスト体34aにテーパが付いたものが好ましい。
【0021】
続いて,上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図5(c)に示すごとく,先のレジスト体34aの高さの範囲内で,母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して,一次電鋳層35を形成した。ここでは,母型30の略全面にわたって,一次電鋳層35を形成した(第一の電鋳工程)。次に,図5(d)に示すごとく,一次パターンレジスト34を除去する。ここで,一次電鋳層35の表面に研磨処理を施しておくと良い。
【0022】
次いで,図6(a)に示すごとく,一次電鋳層35および母型30の表面の全体に,フォトレジスト層36を形成したうえで,当該フォトレジスト層36の表面に,前記開口12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)37を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図6(b)に示すように,マスク本体10に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を一次電鋳層35の表面に形成した。
【0023】
続いて,所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図6(c)に示すごとく,先のレジスト体38aの高さの範囲内で,母型30及びのレジスト体38aで覆われていない一次電鋳層35の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して,二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。次に,二次パターンレジスト38を溶解除去したうえで,母型30及び一次電鋳層35から二次電鋳層39を剥離することにより,図6(d)および図3に示すようなマスク1を得た。そして,マスク1に枠体11を装着すれば,図1に示すような配列用マスク1が得られる。」

「【0030】
また,突起部15の下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角形状・ひし形状・六角形状などといった多角形状でも良い。さらに,これら形状を構成する角や突起部15の下端面と側面との境界部分は,アール状とするのが好ましい。これにより,例えば,マスク1の突起部15形成面を洗浄する際に,洗浄をスムーズに行うことができるとともに,洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段及び突起部15の破損のおそれを可及的に防止することができる。」

(5)甲第5号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【0024】次に,本発明に係る粘着膜3を形成した接続パッド2上へのはんだボールの供給方法の第1の実施例について図4を用いて説明する。図4には,整列マスク5を用いたはんだボール4の整列を詳細に示す。予め,ウェハ1にはNi膜22,および粘着膜3が形成されており,これに位置合わせを行って,整列マスク5が配置される。整列マスク5には,はんだボール4が落下しない強度を有する非開口部5a,はんだボール4が通過しうる開口径を有する開口部5b,非開口部5aが直接粘着膜3に接触しないように支える突起形状5cを有している。
【0025】図4から分かるように,突起形状5cの幅が狭く近接する粘着膜3から十分離れているため,整列マスク5の位置合わせ中の摺動においても,整列マスク5が粘着マスク3に接触せず,粘着膜3が整列マスク5に転写付着されるおそれが無い。当然ながら,突起形状5cの高さは,Ni膜22,粘着膜3の厚さ,および予想される非開口部5aの撓み量の合計より十分高く形成されている。
【0026】非開口部5aの厚さは,整列マスク5の全体の強度を保つ程度で,かつ突起形状5cの高さとの合計値が,はんだボール4の直径と同程度,好ましくははんだボール4の直径の0.9倍程度に調整されている。この非開口部5aの厚さと突起形状5cの高さの和が,はんだボール4の直径より極端に大きい場合は,複数のはんだボール4が開口部5b内部に滞留し,はんだボール4の余剰が生じることになる。また,この値がはんだボール4の直径より極端に小さい場合,未整列のはんだボール4cが整列粘着済みのはんだボール4bを押し付けるため,粘着膜3の粘着力が十分でない場合,はんだボール4bが剥離し,供給漏れを生じるおそれがある。前記のこの非開口部5aの厚さと突起形状5cの高さの和は,はんだボール4の直径と同一でも実現可能であるが,開口部5bの直径ははんだボール4の直径より大きくならざるを得ないため,未整列のはんだボール4cが開口部5bと整列済みのはんだボール4bの隙間に落ち込む量が大きいので,この値は,はんだボール径の0.9倍前後が整列性が良い。」

(6)甲第6号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
所定のパターンで導電性ボールを被配列体に配列するため,前記パターンに対応し前記導電性ボールが挿通可能な複数の開口部が形成された平板状のマスクであって,前記マスクの一面の非開口部から突起した柱状の突起部とを有し,前記突起部は,前記マスクの一面を前記被配列体の一面に位置合わせしたときに前記被配列体に当接可能に設けられている導電性ボールの配列用マスク。」

「【0020】
[マスク]
マスク13は,図4及び図8(a),(b)に示す様に,ウエハー3の電極31の配列パターンに対応し形成され半田ボール2が挿通可能な貫通孔状の開口部131と,非開口部132と,非開口部132の底面に突起して配設された円柱状(柱状)の突起部133とで構成されている。なお,マスク13は,後述する磁石部12で吸引可能なようにNiやFeなど軟磁性材で構成されている。
【0021】
突起部133は,例えば図8に示すように,ウエハー3の電極31に対応し,平面視において一定のピッチで配置された複数の開口部131に包含された非開口部132に突起して設けられている。突起部133は,開口部132が形成された金属板をフォトリソプロセスに通し,非開口部132の所定な部分をエッチング加工で除去することにより形成することができる。また,突起部133は,開口部131が形成された薄い金属箔に電気鋳造(メッキ)で肉盛することで形成することができる。なお,突起部133の断面寸法は,非開口部132の面積や形によって適宜選定すればよく,また,突起部133の配列ピッチや個数は,非開口部132の撓みに対する剛性を考慮して選定すればよく,例えば,マスク13自体の剛性が比較的高い場合には,図8(b)における突起部133を間引いても良い。
【0022】
本態様のようにウエハー3に粘着膜4が形成されている場合には,突起部133の高さは該粘着膜4の高さより高くすることが望ましい。したがって,マスク13をウエハー3に重なる状態で位置決めしたとき,開口部131は粘着膜4に接触しない。なお,開口部131に半田ボール2が充填されたとき,その位置がずれないようにするためには,図2に示す様に,突起部133の高さの上限を半田ボール2の半径と同程度とすればよい。
【0023】
上記の形態のマスク13は,ウエハー3における半導体チップ32の面積が大きく,かつ電極31が非常に密に配設された場合においても有効である。それは,例えば半導体チップ32の大きさが15mm角程度で,80μm程度の直径を有する電極31の配設間隔が150μm程度で,チップ当りの電極31の個数が1万個程度のΦ300mmのウエハー3であって,その全ての電極31に80μmの直径を有する半田ボール2を搭載する場合である。図9に示すような従来の形態,即ち開口部131の周囲に凸部139を設ける形態においては,例えばΦ100μmの開口部131を有するマスクを使用する場合,隣接する開口部131とのスペースは50μm以下となるため,精度的な面でマスク13の製作が極めて困難である。このような場合においても,図8(a)に示すように,隣接した複数の開口部131で包含される非開口部132の中心(図心)Pに,40μm程度の突起部133を配設することは比較的容易である。」

「【0026】
次に,上記マスク13の別の態様について説明する。この態様のマスクが対象とするウエハー3aは,図6に示すように,上記ウエハー3とは異なった配列パターンの電極31aを有し,電極31aが各半導体チップ32aのチップ外縁部に密に配設されている。
【0027】
この電極31aに半田ボール2を配列するマスク13aは,図7及び図11(a)に示すように,同一の半導体チップ32aの電極31に取り囲まれた中心領域134aには角柱状の突起部133aを,ウエハー3の外周に相当する領域には広範囲の突起部133Cを,隣接する半導体チップ32aの間には桟状の突起部133bを,全ての高さを合わせて形成したものになっている。」

(7)甲第7号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項1】
所定の配列パターンに対応した通孔(12)を有し,この通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで,ワーク(3)上の所定位置に半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって,
マスク本体(10)下面に突起部(15)を備えており,突起部(15)の径はマスク本体(10)下面に向かうにつれて大きくなっていることを特徴とする配列用マスク。」

「【請求項7】
通孔(12)に半田ボール(2)を振り込むことで,ワーク(3)上の所定位置に半田ボール(2)を搭載する配列用マスクの製造方法であって,
母型(30)の表面に,突起部(15)に対応するレジスト体(34a)を有する一次パターンレジスト(34)を形成する工程と,
レジスト体(34a)を用いて,母型(30)上に電着金属を電鋳して,一次電鋳層(35)を形成する第一の電鋳工程と,
一次電鋳層(35)上に,通孔(12)に対応するレジスト体(38a)を有する二次パターンレジスト(38)を形成する工程と,
レジスト体(38a)を用いて,母型(30)及び一次電鋳層(35)上に電着金属を電鋳して,突起部(15)を一体に有するマスクとなる二次電鋳層(39)を形成する第二の電鋳工程と,
二次パターンレジスト(38)を除去するとともに,母型(30),一次電鋳層(35)から二次電鋳層(39)を剥離する工程とを含むことを特徴とする配列用マスクの製造方法。」

「【0012】
図2に示すように,マスク本体10(マスク1)の下面側,すなわちワーク3に対する対向面側には,ワーク3との対向間隙を確保する突起部15が,下方向に突出状に設けられている。突起部15は,配列作業時においてワーク3の上面に当接してマスク本体10とワーク3との対向間隙を確保する。図2および図3に示すように,各々の突起部15は,通孔12間であって,マスク本体10の下面から先窄まるように形成されており,本実施形態では円錐台状を呈している。この突起部15の付け根はマスク本体10の下面の通孔12付近に位置していることが好ましく,本実施形態では,通孔12の内面とマスク本体10の下面との交点に位置している。本マスク1においては,突起部15の高さとマスク本体10の厚みとの比が2対1以上とするのが好ましい。これは,上記マスク本体10の厚さが10?300μmの範囲内においてこれを満足するようにするのが好ましい。また,突起部15の先端の径L1と付け根の径L2との比が1対3以上であることが好ましい。さらに言えば,突起部15の先端の径と付け根の径と通孔12間の幅との比が1対3対3以上であることが好ましい。また,この突起部15は,アスペクト比(突起部15の高さと先端径との比)が大きいものが好ましく,本実施形態では,アスペクト比3としている。ここで,図3においては,隣り合うパターン領域間には突起部15と同じ高さの凸部を設けて,マスク1をワーク3に載置した時に当接するようにしているが,図4に示すように,隣り合うパターン領域間を凹ませた形態(凸部を設けない形態)であっても良い。これによれば,マスク1をワーク3に対して追随性良く載置することが可能である。なお,図3及び図4において,符号15で図示しているのは突起部15の下端面であり,突起部15の付け根は図示していない。」

「【0026】
図8および図9に,本発明の第2実施形態に係る半田ボールの配列用マスクの製造方法を示す。まず,図8(a)に示すごとく,導電性を有する例えばステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は,ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを,所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで,フォトレジスト層31の上に,通孔12に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム32(ガラスマスク)を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図8(b)に示すように,通孔12に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。
【0027】
続いて,上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,先のレジスト体34aの高さの範囲内で,母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケル等の電着金属を電鋳して,マスク1に対応する一次電鋳層35を母型30の略全面にわたって,一次電鋳層35を形成し,一次電鋳層35の表面に研磨処理を施したのち,図8(c)に示すように,レジスト体34aを溶解除去した。ここまでの工程は,第1実施形態とほぼ同じである。
【0028】
次いで,図8(d)に示すように,母型30及び一次電鋳層35の表面にニッケルや銅などといった導電層40をめっきによって形成する。この時,一次電着層35の角部上における導電層40は,円弧状に形成される。かくして,側面が円弧状の突起部に対応するパターンが得られる。なお,円弧状部分の曲率は,導電層40の厚みを調整することによって所望のアールが得られる。また,導電層40を形成する工程は,一次電鋳層35上に後述する二次レジストパターン38を形成した後に行っても良い。なおここで,導電層40を形成することによって,この導電層40が剥離層として機能するので,第1実施形態のように母型30上に二次電鋳層35を直接形成するのに比べ,母型30から二次電鋳層35の剥離が容易となる。マスク1は,二次電鋳層35と導電層40とが一体的に積層してなるものでも良いが,導電層40は除去する方が好ましいので,二次電鋳層35の剥離をさらに容易にするため,母型30上にストライクめっきといった密着処理を施すことにより,導電層40が母型30に固着されるため,二次電鋳層35の剥離がより容易となる。
【0029】
次に,図9(a)に示すように,導電層40の表面上に,フォトレジスト層36を形成したうえで,当該フォトレジスト層36の表面に,前記通孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム37を密着させたのち,紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い,現像,乾燥の各処理を行って,未露光部分を溶解除去することにより,図9(b)に示すように,レジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を導電層40の表面に形成した。次いで,所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ,図9(c)に示すように,先のレジスト体38aの高さの範囲内で,レジスト体38aで覆われていない導電層40の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して,二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。最後に,二次パターンレジスト38を除去するとともに,母型30,一次電鋳層35,及び導電層40から二次電鋳層39を剥離することにより,図9(d)および図7に示すようなマスク1が得られる。
【0030】
このように,本実施形態のマスクは,母型30及び一次電鋳層35上に導電層40を形成することで通孔内面12aとマスク本体下面10aとの交点を付け根15bとし,先端にいくにつれて窄まっていく先窄まり形状であって,側面が円弧状の突起部15を容易に形成することができる。備えている。これにより,突起部15の特に根元に応力が集中することにより生じる破損を防止できる。これに加えて,マスク1をワーク3に載置した際に,仮に突起部15にフラックス17が付着したとしても,突起部15の側面が円弧となっていることにより,フラックス17の通孔12への回り込みを防止できるので,通孔12にフラックス17が付着することによる半田ボール2の搭載不良を招くおそれをなくすことができる。なお,突起部15の付け根15bの位置については,図7(a)に示すような,マスク本体下面10aと通孔内面12aとの交点に位置しているものに限らず,図7(b)に示すように,マスク本体下面10a上の通孔12から十分距離をとった(離間された)位置であっても,図7(c)に示すように,マスク本体下面10a上の通孔12から微小な間隙をとった位置であっても良い。また,突起部15の側面は,凸状円弧でも凹状円弧でもどちらでも良く,凸状円弧とすれば,強度の良いものに,凹状円弧とすれば,突起部15側面のどの位置においても,フラックス17が付着された電極6に近づく部分がない,つまり,フラックス17が付着された電極6から一定距離を保った状態となって良い。また,図7(a)の突起部15の拡大図に示すように,突起部15の側面や付け根15bだけでなく,先端15aにも所望のアールを設けてあっても良い。これは,導電層40の厚みを調整することで実現でき,これにより,突起部15のワーク3への接触面積をより小さくすることができ,突起部15にフラックス17が付着するおそれが可及的に減少する。このように,突起部15の先端15a及び/又は付け根15bにアールを設けることで,上記効果が得られる。ここで,特に突起部15の付け根15bにおいて,直線に限りなく近い程に曲率が小さい円弧で形成されているものももちろん含まれる。この突起部15は,ストレート状と先窄まり状とを組み合わせた形状であっても良い。」

(8)甲第8号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【請求項4】
ワーク(3)上に複数個搭載された半導体チップ(5)の電極(6)の配列パターンに対応した多数独立の通孔(12)と,前記各半導体チップ(5)に対応し,前記通孔(12)からなるパターン領域(13)と,マスクの下面から突設された突起(15)とを備え,前記パターン領域(13)がマスクの盤面中央部に複数形成され,前記各パターン領域(13)間にはスペース(14)が設けられており,前記突起(15)が前記各パターン領域(13)内のみに形成されてあって,前記通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで,前記ワーク(3)上の前記電極(6)に前記半田ボール(2)を搭載する配列用マスクの製造方法であって,
母型(30)の表面に,突起(15)に対応するレジスト体(38a)を有する一次パターンレジスト(38)を形成する工程と,
レジスト体(38a)を用いて,母型(30)上に電着金属を電鋳して,一次電鋳層(39)を形成する第一の電鋳工程と,
一次パターンレジスト(38)を除去する工程と,
一次電鋳層(39)上に,通孔(12)に対応するレジスト体(44a)を有する二次パターンレジスト(44)を形成する工程と,
レジスト体(44a)を用いて,母型(30)及び一次電鋳層(39)上に電着金属を電鋳して,突起(15)を一体に有するマスクとなる二次電鋳層(45)を形成する第二の電鋳工程と,
二次パターンレジスト(44)を除去するとともに,母型(30),一次電鋳層(39)から二次電鋳層(45)を剥離する工程とを含むことを特徴とする配列用マスクの製造方法。」

「【発明の効果】
【0018】
本発明の配列用マスクにおいては,マスク1とワーク3との対向間隙を形成する突起15aを形成されており,前記突起15の形成密度はパターン領域13内においてパターン領域13外より大きくしてある。これによれば,突起15を形成したことによるマスクの補強効果(強度の向上効果)が期待できる。また,突起15によってワーク3との対向間隙を確実に確保できるとともに,突起15が形成されていない部分によってマスク1に可撓性・柔軟性を付与することができる。したがって,パターン領域13においてはワーク3に対してしっかりと載置できるとともに,パターン領域13外によってマスク1をワーク3にならうように対応させることができるので,通孔12内への半田ボール2の投入作業を効率的に漏れなく進めることができる。加えて,マスク1の特に通孔12周縁及び壁面へのフラックス17の付着に起因する半田ボール2の搭載不良の問題を確実に防ぐことができる。マスクの撓み過ぎによる通孔12からの半田ボール2の抜け出し防止効果も期待できる。
【0019】
さらに,前記突起15をパターン領域13内のみに形成するようにすれば当該作用効果はより顕著となる。」

「【0039】
以上のようなマスク1の製造方法によれば,電鋳法により高精度に配列用マスクを作製することができるので,半田ボール2を位置精度良くワーク3上に搭載させることができる。突起15を有するマスク1を一回の電鋳作業(第二の電鋳工程)により不離一体的に形成することができるので,突起15を後付けする形態に比べて,該突起15の破損などの不都合が生じるおそれが少なく,信頼性に優れたマスク1を高精度に得ることができる点でも優れている。」

(9)甲第9号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には,次の記載がある。
「突条〔とつじょう〕projected(protruded)rim 凸条。突出した筋道。
(例)ドアがレールの突条を案内にして進む。
薄い金属板に突条を設けて剛性を増大する。」(第149ページ第22ないし24行)

(10)甲第10号証の記載事項
甲第10号証には,次の記載がある。
「rimとは
意味・読み方・使い方
主な意味(特に円形のものの)縁(ふち),へり,(車輪のタイヤを取り付ける)枠,リム
・・・
研究社 新英和中辞典での「rim」の意味
・・・
名詞 可算名詞
1(特に円形のものの)縁(ふち),へり〔of〕・・・the rim of a cup カップの縁.
2(車輪のタイヤを取り付ける)枠,リム
・・・
Eゲイト英和辞典での「rim」の意味
・・・
名詞
1(丸い物の)縁(ふち),へり;(眼鏡の)縁
・a rim of a plate
2(車輪の)外輪,リム
・・・」

(11)甲第11号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には,図面とともに,次の記載がある。
「回路形成印刷は図1に示すようにこのメッシュスクリーンとスキージを使って被印刷物とスクリーンの間にギャップを設けて印刷を行うギャップ印刷法が知られており,現在も主流の印刷工法である。」(第8ページ右欄第7ないし11行)

(12)甲第12号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には,図面とともに,次の記載がある。
「【0018】
導電性ボールは径小化に伴い粉体のような振舞いを示すようになる。そのため,慣性力(重力)の支配が相対的に小さくなる。例えば,通常,電子部品などの生産は大気中で行われるため,整列部材として使用されるマスクには,静電気を帯びたり水分が付着したりする部分が生じる。導電性ボールが径大で質量が大きい場合には,慣性力(重力)が支配的である。導電性ボールをスキージでマスク上を移動する場合或いは導電性ボールを位置決め開口部に装入した場合に,移動する導電性ボールは十分な慣性力(重力)を有している。したがって,上記のようにマスクに部分的に生じた静電気または水分により吸着されることが少ない。」

2 無効理由(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明と甲1発明との対比
本件発明と,甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明は,「導電性ボール搭載用マスクの製造方法」に係る発明であるから,甲1発明の「2個のパターン開口部9」は,本件発明の「振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部」に相当する。

イ 甲1発明のマスクは,「電鋳母型1から引き剥がされた平坦な一方の面と,前記一方の面を基準面として,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する凹部ではない領域と,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する前記凹部ではない領域に隣接する領域であって,前記一方の面を基準面として,その厚さを,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さから,2次電着層12の厚さにまで減少させる,下方に向かって略円弧状に形成された凹部の縁部である領域と,前記凹部の縁部である領域に隣接する,2個のパターン開口部9を含む領域であって,前記一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを有するパターン開口部周辺の領域とを備え」る形状を有するものである。
そして,当該マスクは,1次電着層6と2次電着層12とによって形成される。
そうすると,前記マスクのうち,前記「一方の面」を基準面として,2次電着層12の厚さまでの部分は,本件発明の「メッキにより形成」された「マスク本体」に相当するといえる。

ウ 甲1発明の凹部が,「基板の導電性ボール搭載部の電極の上に形成されているフラックス等が前記マスクに付着するのを防止することを目的として,基板面側の開口パターン周辺部に形成されるものであ」ることから,甲1発明の凹部は,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となるマスク本体裏面に存在することは明らかである。
そうすると,甲1発明のマスクのうち,上記イの「マスク本体」を除く部分,すなわち,甲1発明のマスクの凹部ではない領域及び凹部の縁部である領域とを併せた領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分と,本件発明の「メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起」とは,メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となるマスク本体裏面の開口部以外に部分的に設けられた部分である限りにおいて一致する。

エ 甲1発明の「凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成される」と,本件発明の「前記分離独立した複数の突起の先端部は,その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されており,布拭き取り時の引っ掛かりを防止する」とは,エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されているという点で一致する。

オ 甲1発明の「SUS301やSUS304といったステンレス材が用いられる」「導電性の電鋳母型1」は,本件発明の「SUS母材」に相当する。

カ 甲1発明の「1次電着層6」及び「2次電着層12」は,それぞれ,本件発明の「一次メッキ層」及び「二次メッキ層」に相当する。

キ 甲1発明の「パターンレジスト膜」は,本件発明の「レジスト層」に相当する。

ク したがって,甲1発明の「導電性ボール搭載用マスクの製造方法」は,以下の相違点を除いて,本件発明の「ボール配列用マスク製造方法」と一致する。

ケ すなわち,本件発明と,甲1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。

<一致点>
「メッキにより形成され,振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたマスク本体と,メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分とを備え,前記部分のエッジ部が丸味を持ったR形状に形成されたボール配列用マスクの製造方法であって,
SUS母材上に前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分形成用のレジスト層を形成する工程と,
前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分が所定の高さとなるようにSUS母材上にメッキすることにより,一次メッキ層を形成する工程と,
一次メッキ層の形成が終わったら,前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分形成用のレジスト層を除去する工程と,
前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分形成用の部分以外の一次メッキ層を取り除き,SUS母材上に一次メッキ層による部分を残す工程と,
前記SUS母材上の前記一次メッキ層による部分間に複数の開口部形成用のレジスト層を形成する工程と,
前記マスク本体が指定の厚さとなるようにSUS母材上及び前記一次メッキ層による部分上にメッキすることにより,二次メッキ層を形成する工程と,
二次メッキ層の形成が終わったら,前記複数の開口部形成用のレジスト層を除去する工程と,
前記SUS母材から一次メッキ層及び二次メッキ層からなるマスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に設けられた部分とマスク本体のメッキ層を剥離する工程と,
を備えたボール配列用マスクの製造方法。」

<相違点>
マスク本体裏面の開口部以外に部分的に設けられた部分が,
本件発明では,「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起」であって,当該「分離独立した複数の突起の先端部」の「周縁エッジ部」は,「丸味を持ったR形状に形成されて」「布拭き取り時の引っ掛かりを防止する」ものであるのに対して,
甲1発明では,マスクの凹部ではない領域及び凹部の縁部である領域における「一方の面」を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分であって,凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成されることにより凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させたものである点。

(2)相違点についての判断
ア 「突起」について
(ア)本件発明は,「メッキにより形成され,導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起とを備え,前記分離独立した複数の突起の先端部は,その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されており,布拭き取り時の引っ掛かりを防止する」ことを発明特定事項としており,本件発明の「突起」は,先端部の周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されて布拭き取り時の引っ掛かりを防止するものであるところ,そもそも,先端部の周縁エッジ部が直角に形成されていても布拭き取り時の引っ掛かりが生じないような構造物は,本件発明の「突起」には該当しないといえる。
このような理解は,本件特許明細書の記載にも整合する。
したがって,本件発明の「突起」を上記のように理解して,以下検討を進める。

(イ)甲1発明の凹部は,基板の導電性ボール搭載部の電極の上に形成されているフラックス等が前記マスクに付着するのを防止することを目的として,基板面側の開口パターン周辺部に形成されるものであって,電鋳母型1に,凹部の仕上がりに合わせた大きさの輪郭形状のみを1次パターンレジスト膜5で形成し,1次電着層6を形成し,1次パターンレジスト膜5および1次パターンレジスト膜5で囲まれた内側部分に形成された捨て電着層7を剥離し,2次パターンレジスト膜11を形成し,2次パターンレジスト膜11で覆われていない電鋳母型1に2次電着層12を形成することで得るものである。
そうすると,甲1発明の凹部の輪郭の形状は,1次パターンレジスト膜5および1次パターンレジスト膜5で囲まれた内側部分に形成された捨て電着層7を囲む形状,すなわち,平面視において,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状として理解することが,技術常識に照らして自然かつ合理的である。

(ウ)一方,布拭き取り時の引っ掛かりは,マスクに付着したフラックス等を,マスクの表面に布を滑らせて拭き取る際に,布を構成する糸や繊維が,マスクを構成する構造物の一部と係合することによって生じるものである。
この点,甲第3号証(上記1(3))には,以下の記載がある。
「【0040】
また,突起部15の下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角・ひし形・六角形などといった多角形でも良い。さらに,これら形状を構成する角や突起部15の下端面と側面との境界部分は,R状とするのが好ましい。これにより,例えば,マスク1の突起部15形成面を洗浄する際に,洗浄をスムーズに行うことができるとともに,洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段及び突起部15の破損のおそれを可及的に防止することができる。」
また,甲第4号証(上記1(4))には,以下の記載がある。
「【0030】
また,突起部15の下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角形状・ひし形状・六角形状などといった多角形状でも良い。さらに,これら形状を構成する角や突起部15の下端面と側面との境界部分は,アール状とするのが好ましい。これにより,例えば,マスク1の突起部15形成面を洗浄する際に,洗浄をスムーズに行うことができるとともに,洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段及び突起部15の破損のおそれを可及的に防止することができる。」
そうすると,これらの記載から,マスクを構成する突起物等の構造物の端面と側面との境界部分がR状でない場合,すなわち,構造物の端面と側面との境界部分直角である場合において,マスクの表面に布を滑らせて拭き取る際に,布を構成する糸や繊維が,マスクを構成する構造物の一部と係合して,布拭き取り時の引っ掛かりが生じるのは,当該構造物の端面の形状が,円・楕円,あるいは,四角形状・ひし形状・六角形状などといった多角形状である場合,すなわち,当該構造体が,平面視において,輪郭の内側が突出する凸の形状である場合に限られるものと理解される。

(エ)これに対し,甲1発明の,凹部の輪郭の形状は,上記(イ)のとおり,輪郭の内側が窪んでいる凹の形状であって,上記(ウ)のような輪郭の内側が突出する凸の形状には該当しないことから,上記(ウ)の理解に照らして,甲1発明において,凹部の輪郭を構成する側面と凹部ではない領域の下面との境界部分が直角であっても,布拭き取り時には,引っ掛かりは生じないといえる。
すなわち,甲1発明の凹部ではない領域及び凹部の縁部である領域とを併せた領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分は,本件発明の「突起」には相当しない。
したがって,上記相違点は実質的なものである。

イ そこで,甲1発明において,上記相違点について,本件発明の構成を採用することを当業者が容易に想到することができたかについて検討する。
(ア)「主張B」について
<請求人が第1回口頭審理において説明し,上申書に添付して提出した図>




<被請求人が第1回口頭審理において説明し,上申書に添付して提出した図>




a 最初に,甲第1号証の図1(m)において,「1次電着層と2次電着層の合計の厚さを有する部分(左)」,「1次電着層と2次電着層の合計の厚さを有する部分(右)」の形状・構造を,2次電着層の厚さのみからなる部分と,1次電着層と2次電着層の合計の厚さを有する「突起」とを備える部分とを含むものとなるように変更して,本件発明の構成を得ることは,「1次電着層と2次電着層の合計の厚さを有する部分」に,甲第1号証の図1(m)の「凹部」を形成する工程を用いて凹部を形成するだけであるから容易であるとする請求人の主張(以下,当該主張を「主張B」という。)について検討する。

b 甲第1号証には,上記1(1)イ(エ)ないし(カ)のとおり,従来技術は,印刷板の厚み精度を上げる技術であるが,本来必要のない部分にもダミーパターンを形成しなければならないため,ダミーパターンがないマスクと比較すると第1の金属のみの部分が多くなり,第1の金属膜の厚みが非常に薄いマスクの場合は金属膜厚の薄い部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題があったこと,及び,
電気めっき法では,めっきの析出速度は電流密度によって決まり,電流密度が大きいほど析出速度が増すので,絶縁物であるレジスト膜で覆われた部分の周辺部では,導電性の面の面積が小さくなってしまうために電流が集中して電流密度が高くなり,その結果,レジスト膜で覆われている部分の周辺部はめっき膜が厚くなるため,開口パターンと比べると面積が大きいレジスト膜を形成する凹部パターンの周辺部分は,めっきの厚みが厚くなってしまうが,マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題が発生することが記載されると共に,
甲第1号証に記載された発明では,マスクにダミーパターンを設けることなく,凹部の仕上がりに合わせた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成し,レジスト膜で囲まれた内側部分に捨て電着層を形成することで,
凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるとともに,
ダミーパターンを形成したマスクと比較して,マスクとしての耐久性を向上させたことが記載されている。
そして,上記アで検討したとおり,甲1発明において,凹部とは,平面視において,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状を特定するものである。

c これに対し,甲第2号証(上記1(2))には,「支柱のような突起部11c」が形成されている「配列用マスク11」が記載されている。また,甲第3号証(上記1(3))には,「下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角・ひし形・六角形などといった多角形でも良い」「突出状の突起部15」が設けられた「配列用マスク」が記載されている。さらに,甲第4号証(上記1(4))には,「下端面の形状は,円に限らず,楕円でも良いし,四角形状・ひし形状・六角形状などといった多角形状でも良い」「突出状の突起部15」が設けられた「マスク本体10(マスク1)」が記載されている。加えて,甲第5ないし8号証(上記1(5)?(8))には,それぞれ,「突起形状5c」,「底面に突起して配設された円柱状(柱状)の突起部133」,「円錐台状を呈している」「突出状に設けら」れた「突起部15」,「突起15」が記載されている。そして,これらの突起部等は,いずれも,平面視において,輪郭の内側が突出する凸の形状である。

d そうすると,甲第2ないし8号証に記載の突起部等と,甲1発明の凹部とは,平面視において,輪郭の内側が突出した凸の形状であるか,輪郭の内側が窪んでいる凹の形状であるかという点で真逆のものであり,凹部輪郭のレジスト膜に囲まれた捨て電着層を用いた凹部形成方法である甲1発明を,突起部等の形成方法に転用することの動機付けはない。

e 加えて,甲1発明の課題に照らしても,甲1発明を,突起部等の形成方法に転用することの動機付けはない。すなわち,上記bのとおり,甲1発明は,電気めっき法では,めっきの析出速度は電流密度によって決まり,電流密度が大きいほど析出速度が増すので,絶縁物であるレジスト膜で覆われた部分の周辺部では,導電性の面の面積が小さくなってしまうために電流が集中して電流密度が高くなり,その結果,レジスト膜で覆われている部分の周辺部はめっき膜が厚くなるため,開口パターンと比べると面積が大きいレジスト膜を形成する凹部パターンの周辺部分は,めっきの厚みが厚くなってしまうが,マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題を解決することを課題とした発明である。
ここで,「レジスト膜で覆われている部分の周辺部はめっき膜が厚くなる」との説明における「厚く」は,レジスト膜で覆われた部分の周辺部から十分に離れた位置におけるめっき膜の厚さを基準とした比較であって,レジスト膜で覆われた部分の周辺部から十分に離れることで,レジスト膜で覆われた部分の影響による電流の集中がなくなり,その結果,レジスト膜で覆われた部分の周辺部と,レジスト膜で覆われた部分の周辺部から十分に離れた位置とで,厚みのばらつきが大きくなるものと理解される。
そうすると,甲第2号証の「支柱のような突起部11c」のような突起部においては,突起部の周縁部と,当該突起部の端面の中央部との間に十分な距離が存在しないことから,突起部の周縁部と,当該突起部の端面の中央部との間に厚みの大きなばらつきが生じることはなく,したがって,突起部形成に際して,甲1発明を転用して,突起部輪郭のレジスト膜の外側に捨て電着層を形成する突起部形成方法とする動機付けはない。
また,仮に,突起部の周縁部と,当該突起部の端面の中央部との間に厚みのばらつきが生じたとしても,突起部の周縁部における電流密度は,周縁部において概ね一様であることから,そのような電流分布によって析出された突起部の端面は,中央部が僅かに窪んだ形状となるにすぎず,他の突起部も同様の形状となることを鑑みれば,このような形状の突起部を複数有するマスクにおいて,導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題が生じることは考えられない。したがって,突起部形成に際して,甲1発明を転用して,突起部輪郭のレジスト膜の外側に捨て電着層を形成する突起部形成方法とする動機付けはない。

f 上記d及びeのとおりであるから,甲1発明において,凹部ではない領域および凹部の縁部である領域とを併せた領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分を,上記相違点に係る構成である「互いに分離独立した複数の突起」とすることの動機付けはない。

g さらに,上記被請求人の主張Bに係る上記図面からも理解できるとおり,請求人の主張による突起形成は,厚みを有して強度ないし耐久性を保つよう形成されるマスクを,ダミーパターンを採用して構成されるマスクと同様に,2次電着層12のみの厚さからなる薄い箇所の面積を増やすものであり,マスクとしての耐久性が低下することは明らかであるから,その採用には阻害要因があるといわざるを得ない。
よって,主張Bによっては,本件発明は,当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(イ)「主張A」について
<請求人が第1回口頭審理において説明し,上申書に添付して提出した図>




<被請求人が第1回口頭審理において説明し,上申書に添付して提出した図>




a 続いて,甲1発明において,1次パターンレジスト膜5を形成する際に,1次パターンレジスト膜5の内側に突起形成用の追加のパターンを追加し,その追加のパターンに囲まれた1次電着層を残しておくだけで,容易に「凹部中央部」に突起を形成することができるから,本件発明の構成を得ることは容易であるとする主張(以下,当該主張を「主張A」という。)について検討する。

b 甲1発明は,「パターン開口部周辺に凹部が形成されたマスクにおいて,マスクの凹部およびパターン開口部を1種類の電着層で形成したことで,凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成されることにより凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させた導電性ボール搭載用マスクの製造方法」に係る発明であって,上記ア(イ)で検討したように,甲1発明の凹部の輪郭の形状は,1次パターンレジスト膜5および1次パターンレジスト膜5で囲まれた内側部分に形成された捨て電着層7を囲む形状,すなわち,平面視において,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状として理解されるものである。

c そして,甲1発明は,「(c)1次レジスト膜2に1次パターン3を露光する工程であって,前記1次パターン3は,前記マスクにおける凹部4を形成するためのパターンであり,この1次パターン3は後の工程にて形成する1次電着層6の厚みを安定させるため,捨て電着層7を形成するようなパターンとするものであり,ここで捨て電着層7を形成するパターンとは,ある大きさで凹部形状を形成する場合,その仕上がりに合わせてレジスト膜を形成するのではなく,凹部4の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成するといったものであり,輪郭形状のみをレジスト膜で形成するため,レジスト膜で囲まれた内側部分には電着層,いわゆる捨て電着層7が形成され,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるという効果がある工程」,及び「(f)ないし(g)1次パターンレジスト膜5および捨て電着層7を剥離する工程であって,前記1次パターンレジスト膜5は既存のレジスト剥離処理等で剥離すればよく,前記捨て電着層7は,手や治具を使用して電鋳母型1から剥離すればよいものである工程」を含むものであるところ,甲第1号証には,レジスト膜で囲まれた内側部分に捨て電着層を形成し,手や治具を使用して電鋳母型から剥離して,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状を形成する方法が記載されているだけであって,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状の形成と同時に,凹の中央部に突起を形成することは記載も示唆もされていない。
むしろ,凹の形状の形成と同時に,凹の中央部に突起を形成するためには,円あるいは矩形等の輪郭形状に形成されたレジスト膜の内側と,凹の中央部に形成する突起の輪郭形状に形成されたレジスト膜の外側との間に形成した捨て電着層を剥離する際に,円あるいは矩形等の輪郭形状に形成されたレジスト膜の内側という限られた空間において,甲1発明の複数の開口の間に突起を設けるための当該突起の微細な幅に対応した寸法を備えた1次電着層に損傷を与えることなく当該捨て電着層を剥離することが必要となるところ,捨て電着層の形状が,単純な円形等から,内部に少なくとも1つの穴を有する複雑な形状となり,手や治具を使用して電鋳母型から剥離することが困難となることは明らかである。したがって,このような方法によって凹部に突起を形成することには阻害要因があるといわざるを得ない。
よって,主張Aによっては,本件発明は,当業者が容易に想到し得るとはいえない。

d しかも,主張Aに係る,甲1発明において,1次パターンレジスト膜5を形成する際に,1次パターンレジスト膜5の内側に突起形成用の追加のパターンを追加し,その追加のパターンに囲まれた1次電着層を残しておくことで,凹部中央部に突起を形成するものとした発明は,以下で検討するように,その工程上,必然的に本件発明の「前記突起以外の一次メッキ層を取り除き,SUS母材上に一次メッキ層による突起を残す工程」という要件を満たさないものとなることから,主張Aによって,本件発明を当業者が容易に想到し得るという主張は,その前提において失当である。

e すなわち,甲1発明において,「2個のパターン開口部9を含む領域であって,前記一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを有するパターン開口部周辺の領域」に,甲第2ないし8号証に記載の突起部等を新たに追加して形成する発明は,
甲1発明の「(c)1次レジスト膜2に1次パターン3を露光する工程であって,前記1次パターン3は,前記マスクにおける凹部4を形成するためのパターンであり,この1次パターン3は後の工程にて形成する1次電着層6の厚みを安定させるため,捨て電着層7を形成するようなパターンとするものであり,ここで捨て電着層7を形成するパターンとは,ある大きさで凹部形状を形成する場合,その仕上がりに合わせてレジスト膜を形成するのではなく,凹部4の仕上がりに合わせた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成するといったものであり,輪郭形状のみをレジスト膜で形成するため,レジスト膜で囲まれた内側部分には電着層,いわゆる捨て電着層7が形成され,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるという効果がある工程」を,「突起部形成用の追加の1次パターン3’」をも合わせて形成するものに変更し,これに合わせて,
「(d)1次パターン3を描画した1次レジスト膜2を現像,乾燥し,1次パターンレジスト膜5を形成する工程」を,「(d)1次パターン3及び突起部形成用の追加の1次パターン3’を描画した1次レジスト膜2を現像,乾燥し,1次パターンレジスト膜5及び突起部形成用の追加の1次パターンレジスト膜5’を形成する工程」となし,さらに,
「(f)ないし(g)」の工程を,「(f)ないし(g)1次パターンレジスト膜5,突起部形成用の追加の1次パターンレジスト膜5’および捨て電着層7を剥離する工程であって,前記1次パターンレジスト膜5及び突起部形成用の追加の1次パターンレジスト膜5’は既存のレジスト剥離処理等で剥離すればよく,前記捨て電着層7は,手や治具を使用して電鋳母型1から剥離すればよいものである工程」に変更したものとなる。

f そうすると,甲1発明のマスクの構造に付加して,2個のパターン開口部9を含む領域であって,前記一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを有するパターン開口部周辺の領域に,「突起部」を新たに形成する場合には,「(f)ないし(g)」の工程において,1次パターンレジスト膜5,突起形成用の追加の1次パターンレジスト膜5’および捨て電着層7が剥離されて,電鋳母型1上には,突起部形成用の追加の1次パターン3’によって形成された1次電着層6’と,マスクにおける凹部4を形成するためのパターンである1次パターン3によって形成された1次電着層6の両方が残ることとなる。

g しかしながら,本件発明は,「前記突起以外の一次メッキ層を取り除き,SUS母材上に一次メッキ層による突起を残す工程」を発明特定事項とするものである。
そして,上記ア(エ)で検討したように,甲1発明の凹部ではない領域及び凹部の縁部である領域とを合わせた領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分は,本件発明の「突起」には相当しないのであるから,前記「(f)ないし(g)」の工程における,マスクにおける凹部4を形成するためのパターンである1次パターン3によって形成された1次電着層6は,本件発明の「一次メッキ層による突起」ということはできない。
そうすると,上記fに記載した,「(f)ないし(g)」の工程における,電鋳母型1上には,突起部形成用の追加の1次パターン3’によって形成された1次電着層6’と,マスクにおける凹部4を形成するためのパターンである1次パターン3によって形成された1次電着層6の両方が残るという態様は,本件発明の「前記突起以外の一次メッキ層を取り除き,SUS母材上に一次メッキ層による突起を残す工程」という発明特定事項の要件を満たさないものといえる。
すなわち,甲1発明において,1次パターンレジスト膜5を形成する際に,1次パターンレジスト膜5の内側に突起形成用の追加のパターンを追加し,その追加のパターンに囲まれた1次電着層を残しておくことで,凹部中央部に突起を形成するものとした発明は,もはや,本件発明ということはできない。

h すなわち,主張Aによっては,本件発明は,当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は,審判事件弁駁書において,「甲第1号証には,図1として断面図は記載されているが,平面図は記載されていない。そのため,請求人は,図1の凹部14の両側の凸部が環状に連続した凸部であるか,別々の複数の凸部であるかは不明であると客観的な認定をしている。一方,被請求人は,上記主張において,甲第1号証に記載のマスクが備える『略円弧状』の『凹部の縁部』は,凹部のへこみを取り囲むように形成される,と倭小化して認定している。」と主張する。
しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,甲1発明の凹部の輪郭の形状は,1次パターンレジスト膜5および1次パターンレジスト膜5で囲まれた内側部分に形成された捨て電着層7を囲む形状,すなわち,平面視において,円あるいは矩形等の内側が窪んでいる凹の形状であると理解されるから,請求人の前記主張は採用することができない。

b 請求人は,上申書において,「3(審決注:○に3。以下同様。)『共に印刷板を成形する中途段階で開口部パターンの周囲にダミーパターンを形成して, 板厚のバラツキを減少させ,メッキ後の印刷版の板厚精度を上げる手法を採用しているが,本来必要のない部分にもダミーパターンを形成しなければならないため,ダミーパターンがないマスクと比較すると第1の金属のみの部分が多くなってしまう。すると,例えば第1の金属膜の厚みが非常に薄いマスクの場合は金属膜厚の薄い部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題』があった(3頁40行目?45行目)。・・・すなわち,特許文献1や特許文献2のようなダミーパターンを形成するマスクの製造方法を採用すれば,問題1および2(審決注:「2次電着層12の厚みを含めたマスク15の厚みに関しては,2次電着層12の凹部14形成時に凹部14の縁部のめっきの厚みが厚くなって突出部13が発生するため,エッチング法よりも厚みのばらつきが大きい,すなわち厚みの安定性がないという問題」および「マスク全体の厚みのばらつきが大きいと,スクリーン印刷用マスクにおいては印刷ペーストの塗布量のばらつきが発生し易くなり,導電性ボール搭載用マスクにおいては導電性ボールの搭載不良が発生し易くなるといった問題」)は解決できるが,新たな問題3?5(審決注:「共に印刷板を成形する中途段階で開口部パターンの周囲にダミーパターンを形成して,板厚のバラツキを減少させ,メッキ後の印刷版の板厚精度を上げる手法を採用しているが,本来必要のない部分にもダミーパターンを形成しなければならないため,ダミーパターンがないマスクと比較すると第1の金属のみの部分が多くなってしまう。すると,例えば第1の金属膜の厚みが非常に薄いマスクの場合は金属膜厚の薄い部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題」,「そのようなマスクを使用して実際にペーストを印刷すると,ペーストがダミーパターンの凹部に入り込んでしまい,ペーストの使用量が増えたり,マスクの洗浄が煩雑になるという問題」および「プリント基板といった被印刷物に半田ペーストを印刷するためのスクリーン印刷用マスクの一部の開口部のペーストの塗布量を調整するために凹部を形成する場合において,ペーストの突出量を調整したい開口パターン近部に塗布量を調整しない開口パターンがある場合は,ダミーパターン自体を形成することができないという問題」)が発生することになる。そこで,甲1発明では,新たな問題3ないし5が発生するダミーパターンを形成するマスクの製造方法を採用することなく,図1および請求項に記載された製造方法により製造されるマスクによって,上記問題1および2を解決したのである。被請求人は,上記問題3が甲1発明の課題の一つであるとして,甲1発明に甲2号証記載の突起を適用することには,阻害要因がある旨主張するが,前提を誤っており失当である。上述したように,問題3はダミーパターンを形成するマスクの製造方法を採用しなかったことの理由として挙げられているのであって,甲1発明の課題ではないからである。」と主張する。
しかしながら,「特許文献1や特許文献2のようなダミーパターンを形成するマスクの製造方法」の採用を避けるのであれば,同様に前記の問題3,すなわち,「金属膜厚の薄い部分が増えてしまい」という問題についても解決することは明らかであるから,問題3を甲1発明の課題と理解することに疑義はないものと認められる。
したがって,請求人の前記主張は採用することはできない。

c 請求人は,上申書において,「(2)-2 甲1発明に,甲2号証に記載の突起を適用してもマスクの金属膜厚の大部分が薄くなることはない・・・このようにマスク本体の厚さの決定に際して導電性ボールの直径に依存する制約はあるが,甲1発明に,甲2号証に記載の突起を適用する際の制約とは異なるものであり,甲1発明に,甲2号証に記載の突起を適用したからといってマスク本体の厚さが薄くなることはなく(上記のとおり,甲1発明において,マスク本体の厚みに関する課題は専らダミーパターンの有無に依存する。),被請求人が主張するような阻害要因は存在しない。」と主張する。
しかしながら,甲1発明の,マスクの凹部ではない領域および凹部の縁部である領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分であって,平面視で,パターン開口部周辺にのみ凹部を有する形状を有する構造部材を,「開口部以外に部分的に突出され,互いに分離独立した複数の突起」に変更すると,2次電着層12の厚さ,すなわち,本件発明の「マスク本体」の厚さに相当する厚さ自体には変更がないとしても,当該マスクには,変更前に比べて,1次電着層6と2次電着層12の合計の厚さを有する領域が減少し,2次電着層12の厚さのみを有する領域が増えることから,「マスク」全体としては,変更前のマスクと比較すると,2次電着層のみの部分が増えてしまい,マスクとしての耐久性が低下するという問題が生じるといえる。
したがって,請求人の前記主張は採用することはできない。

d 請求人は,上申書において,「他方,ボール搭載用マスクの場合は,単にブラシ等(線状部材)を用いて半田ボールを開口部へ重力により挿入するにすぎないため(甲12号証:特許第3770496号公報),マスクにはごく小さなストレスしか掛からない。甲12号証の段落【0018】に記載があるとおり,半田ボールは自身の重力により,開口部へ落ちていくため,ボール搭載用マスクの場合は,印刷用マスクの場合と異なりスキージ等を用いてマスク本体にストレスをかける必要がない。したがって,ボール搭載用マスクにおいては,マスク本体の厚さが薄いことによる寿命低下は問題視されない。すなわち,ボール搭載用マスクとしての甲1発明に副引例を適用し,本件訂正発明に至るという請求人側の主張においては,マスク自体の厚さは重視されず,阻害要因とはならない。」と主張する。
しかしながら,マスクには,「ブラシ等(線状部材)を用いて半田ボールを開口部へ重力により挿入する」段階だけではなく,一体化した1次電着層6と2次電着層12を電鋳母型1から引き剥がすことでマスク15を得る段階,引き剥がしたマスクを搬送等のために取り扱う段階,布拭き取りの段階等の種々の段階においてストレスが掛かることが明らかであり,これらの段階のいずれかにおいて,マスクの強度が十分でない場合に,マスクの破損につながり,寿命が短くなることは明らかであるから,請求人の,「ブラシ等(線状部材)を用いて半田ボールを開口部へ重力により挿入する」段階のみに着目した前記主張は前提が適切でなく採用することはできない。

e 請求人は,上申書において,「しかしながら,甲1発明は,マスクの凹部およびパターン開口部を1種類の電着層で形成したことで,凹部の縁部が下方に向かって略円弧状に形成されることにより凹部の縁部の突出を抑え,厚みを安定させたことを特徴とするものである。したがって,明細書においては,この特徴的構成について開示すれば実施可能要件を具備することになり,マスクの立体的構成に言及する必要はないものである。図面も図1で示される模式的に表現された部分断面図で十分であり,凹部の平面視形状を特定する必要はないものである。マスクの平面視は多種多様であり,凹部および凸部の平面視形状を特定することは,発明の適用範囲を不当に限定することに繋がる。このことを具体例により説明する。甲1発明は,甲6号証に記載された図7および図11で示されるマスクにも適用可能なものである。被請求人は,凹部について,平面視ではパターン開口部9を取り囲む輪郭を有すると固執するが,マスクの平面視は多種多様であって,輪郭を観念することすら困難な場合もある。甲6号証の図7および図11で示された斜線部は凹部であるが,これらの図面で示される凹部において,輪郭を特定することは困難であるし,甲1発明を適用するに際して輪郭を特定する必要性もない。甲1発明は,もともと平面視形状を特定する必要のないものであって,図面として部分断面図があれば発明を把握でき,実施可能であることから,平面図は記載されていないのである。」と主張する。
しかしながら,上記1(1)イ(カ)のとおり,甲第1号証に記載された発明は,マスクにダミーパターンを設けることなく,凹部の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成し,レジスト膜で囲まれた内側部分に捨て電着層を形成することで,凹部形状全体をレジスト膜で形成する場合と比較して,電気めっき時の電流密度の粗密さによる電着層の厚みのばらつきを抑えるとともに,ダミーパターンを形成したマスクと比較して,マスクとしての耐久性を向上させたものであるから,甲1発明の,解決すべき課題に対応した,前記電着層の厚みのばらつきを抑える作用機序に照らして,凹部の仕上がりに合せた大きさの輪郭形状のみをレジスト膜で形成し,レジスト膜で囲まれた内側部分に捨て電着層を形成する構成,すなわち,甲1発明の凹部の輪郭の形状が,輪郭の内側が窪んでいる凹の形状であるとする構成は,甲1発明の本質的な特徴といえる。
したがって,「甲1発明は,もともと平面視形状を特定する必要のないもの」とする請求人の前記主張は採用することはできない。

f 請求人は,上申書において,「被請求人は,口頭審理説明用資料「3.主張(A)について(1/2)」において,左側のパターン開口部9と右側のパターン開口部9との中間に位置する凹部中央部の裏面側の部分に突起部を新たに形成した部分断面図を示している。しかし,この部分断面図で示された突起部は,凹部中央部の裏面側の部分に単に追加工程により付加したにすぎず,特許法が想定する当業者によるものと評価することはできない。当業者は,常に製造コストを抑制すべく強く意識するものであり,コスト増加要因となる追加工程を安易に選択しない。当業者であれば,コスト増加要因のない請求人が説明した主張(A)の方法を容易に想到できるものである。」と主張する。
しかしながら,主張Aにより本願発明は容易に発明をすることができたものではないから,コストを検討するまでもなく請求人の主張は採用できるものではない。

g 請求人は,上申書において,「被請求人は,「3.主張(A)について(2/2)」において,主張(A)に基づき得られるマスクの立体的な構造であるとして斜視図を示している。部分断面図でしか特定されていない甲1発明について,恰もマスク全体の立体的な構造であるかのような斜視図は,あまりにも飛躍している。」と主張する。
しかしながら,甲1発明の凹部の輪郭の形状が,平面視において,円あるいは矩形等の輪郭の内側が窪んでいる凹の形状として理解されることは,上記ア(イ)のとおりであるから,請求人の前記主張は採用することができない。

(エ)してみると,甲1発明から,本件発明が容易に発明をすることができたとはいえないから,本件発明は,特許法第29条第2項の規定に反しているとの理由は成り立たない。

3 小括
以上検討したように,本件発明は,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって,無効理由に理由はない。

4 むすび
以上のとおり,請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては,本件発明についての特許を無効にすることができない。

第7 むすび
以上のとおり,請求人が主張する理由及び証拠方法によっては,本件訂正により訂正された請求項1に係る発明についての特許を無効にすることはできない。
また,他にこの発明についての特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキにより形成され、振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたマスク本体と、メッキにより形成され、導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出され、互いに分離独立した複数の突起とを備え、前記分離独立した複数の突起の先端部は、その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されており、布拭き取り時の引っ掛かりを防止するボール配列用マスクの製造方法であって、
SUS母材上に前記分離独立した複数の突起形成用のレジスト層を形成する工程と、
前記分離独立した複数の突起が所定の高さとなるようにSUS母材上にメッキすることにより、一次メッキ層を形成する工程と、
一次メッキ層の形成が終わったら、前記突起形成用のレジスト層を除去する工程と、
前記突起以外の一次メッキ層を取り除き、SUS母材上に一次メッキ層による突起を残す工程と、
前記SUS母材上の前記突起間に複数の開口部形成用のレジスト層を形成する工程と、
前記マスク本体が指定の厚さとなるようにSUS母材上及び前記突起上にメッキすることにより、二次メッキ層を形成する工程と、
二次メッキ層の形成が終わったら、前記複数の開口部形成用のレジスト層を除去する工程と、
前記SUS母材から一次メッキ層及び二次メッキ層からなる突起とマスク本体のメッキ層を剥離する工程と、
を備えたことを特徴とするボール配列用マスクの製造方法。
【請求項2】
メッキにより形成され、振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたマスク本体と、メッキにより形成され、導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出された突起とを備え、前記突起は、一次メッキ層により形成された内部突起と、この内部突起の表面に二次メッキ層により形成され、基板の電極と対向する側となる外部突起とからなり、前記マスク本体は、二次メッキ層により前記外部突起と一体的に形成されており、前記外部突起は、その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されるボール配列用マスクの製造方法であって、
SUS母材上に前記突起形成用のレジスト層を形成する工程と、
前記突起が所定の高さとなるようにSUS母材上にメッキすることにより、一次メッキ層による内部突起を形成する工程と、
一次メッキ層の形成が終わったら、前記突起形成用のレジスト層を除去する工程と、
前記内部突起以外の一次メッキ層を取り除き、SUS母材上に一次メッキ層による内部突起を残す工程と、
前記SUS母材上の前記内部突起間に複数の開口部形成用のレジスト層を形成する工程と、
前記マスク本体が指定の厚さとなるようにSUS母材上及び前記内部突起上にメッキすることにより、二次メッキ層による外部突起及びマスク本体を形成する工程と、
二次メッキ層の形成が終わったら、前記複数の開口部形成用のレジスト層を除去する工程と、
前記SUS母材から一次メッキ層からなる内部突起及び二次メッキ層からなる外部突起とマスク本体のメッキ層を剥離する工程と、
を備えたことを特徴とするボール配列用マスクの製造方法。
【請求項3】
メッキにより形成され、振り込まれた導電性ボールが挿通する複数の開口部が形成されたボール搭載領域及びボール搭載領域間に形成された非搭載領域を有するマスク本体と、メッキにより形成され、導電性ボールが振り込まれる側ではなく基板の電極と対向する側となる前記マスク本体裏面の前記開口部以外に部分的に突出された突起とを備え、前記突起は、一次メッキ層により形成された内部突起と、この内部突起の表面に二次メッキ層により形成され、基板の電極と対向する側となる外部突起とからなり、前記非搭載領域は、一次メッキ層により形成された内部非搭載領域と、この内部非搭載領域の表面に二次メッキ層により形成され、基板の電極と対向する側となる外部非搭載領域とからなり、前記マスク本体は、二次メッキ層により前記外部突起及び外部非搭載領域と一体的に形成されており、前記外部突起は、その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成され、前記外部非搭載領域は、その周縁エッジ部が丸味を持ったR形状に形成されるボール配列用マスクの製造方法であって、
SUS母材上に前記突起形成用のレジスト層及び前記非搭載領域を形成するレジスト層を形成する工程と、
前記突起及び非搭載領域が所定の高さとなるようにSUS母材上にメッキすることにより、一次メッキ層による内部突起及び内部非搭載領域を形成する工程と、
一次メッキ層の形成が終わったら、前記突起形成用のレジスト層及び非搭載領域を形成するレジスト層を除去する工程と、
前記内部突起及び内部非搭載領域以外の一次メッキ層を取り除き、SUS母材上に一次メッキ層による内部突起及び内部非搭載領域を残す工程と、
前記SUS母材上の前記内部突起と内部非搭載領域との間及び内部非搭載領域間に複数の開口部形成用のレジスト層を形成する工程と、
前記マスク本体が指定の厚さとなるようにSUS母材上、前記内部突起上及び内部非搭載領域上にメッキすることにより、二次メッキ層による外部突起と外部非搭載領域及びマスク本体を形成する工程と、
二次メッキ層の形成が終わったら、前記複数の開口部形成用のレジスト層を除去する工程と、
前記SUS母材から一次メッキ層からなる内部突起と内部非搭載領域及び二次メッキ層からなる外部突起と外部非搭載領域とマスク本体のメッキ層を剥離する工程と、
を備えたことを特徴とするボール配列用マスクの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-01-29 
結審通知日 2020-02-03 
審決日 2020-02-26 
出願番号 特願2015-115779(P2015-115779)
審決分類 P 1 123・ 121- YAA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 西出 隆二
加藤 浩一
登録日 2018-03-09 
登録番号 特許第6302430号(P6302430)
発明の名称 ボール配列用マスクの製造方法  
代理人 神田 秀斗  
代理人 平田 慎二  
代理人 高田 守  
代理人 大川 直  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高橋 英樹  
代理人 清水 栄松  
代理人 大西 秀和  
代理人 藤沼 光太  
代理人 大西 秀和  
代理人 牛木 護  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高橋 知之  
代理人 中村 聡  
代理人 大川 直  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高田 守  

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