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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1374144
審判番号 不服2020-12293  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-02 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2016-544940「相変化冷却装置および相変化冷却方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月 3日国際公開、WO2016/031186、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月19日(優先権主張 平成26年8月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成29年 2月20日 :手続補正書の提出
令和 1年 9月17日付け:拒絶理由通知書
令和 1年11月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月29日付け:拒絶査定
令和 2年 9月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 1ないし3、9
・引用文献等 1又は2

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1ないし3、9
・引用文献等 1、2

・請求項 4
・引用文献等 1ないし3

・請求項 5、6
・引用文献等 1ないし4

・請求項 1ないし3
・引用文献等 4、1、2

・請求項 4ないし6
・引用文献等 4、1ないし3

引用文献等一覧
1.実願昭56-1738号(実開昭57-117653号)のマイクロフィルム
2.特開昭59-217346号公報
3.特開平5-196260号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2011/122332号

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって請求項1に「前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「蒸気合流手段」と「冷媒液貯留部」との位置関係を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、追加された事項は、願書に最初に添付した明細書の【0027】に「副蒸気管1110と副液管1230はそれぞれ、蒸気合流部1120および冷媒液貯留部1220において主蒸気管1130と主液管1210に接続している。そして、主蒸気管1130と主液管1210は一個の凝縮部1020と接続している」との記載、及び、図1からすれば、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
さらに、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本願発明1ないし9は、独立特許要件を満たすものである。
よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和2年9月2日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段と、
前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造、とを有し、
前記冷媒蒸気輸送構造は、
前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、
前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、
前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管、とを備え、
前記冷媒液輸送構造は、主液管と、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、
前記主液管は、前記凝縮手段と接続し、
前記冷媒液貯留部は、前記主液管と接続し、前記冷媒液をため、
前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続し、
前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している
相変化冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載した相変化冷却装置において、
前記蒸気合流手段は、前記複数の受熱手段よりも上方に位置している相変化冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した相変化冷却装置において、
前記蒸気合流手段は、
上面と下面と側面とを少なくとも含む複数の平面を有する立体形状からなる容器部と、
前記上面および前記側面の少なくとも一方に位置し、前記主蒸気管と接続する主蒸気管接続手段と、
前記側面および前記下面の少なくとも一方に位置し、前記複数の副蒸気管とそれぞれ接続する複数の副蒸気管接続手段、とを有する
相変化冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載した相変化冷却装置において、
前記主蒸気管接続手段および前記副蒸気管接続手段は、接続突起部をそれぞれ備える
相変化冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載した相変化冷却装置において、
前記蒸気合流手段は、前記接続突起部の径が互いに異なる二個の前記副蒸気管接続手段を少なくとも含む
相変化冷却装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載した相変化冷却装置において、
前記接続突起部は一端にフランジ部を備え、
前記主蒸気管接続手段は、前記容器部の上面に前記フランジ部が締結手段によって固定された前記接続突起部を備え、
前記副蒸気管接続手段は、前記容器部の側面に前記フランジ部が締結手段によって固定された前記接続突起部を備える
相変化冷却装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載した相変化冷却装置において、
前記蒸気合流手段は、配管部を有し、
前記配管部は、側面において前記複数の副蒸気管と接続し、
前記配管部の径は、前記副蒸気管の径よりも大きい
相変化冷却装置。
【請求項8】
請求項7に記載した相変化冷却装置において、
前記副蒸気管から前記配管部に流入する前記冷媒蒸気の流動方向と前記配管部を流動する前記冷媒蒸気の流動方向が、同一平面上でなす角度は鋭角である
相変化冷却装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載した相変化冷却装置において、
前記蒸気合流手段は、前記冷媒液輸送構造と接続する分岐配管をさらに有する
相変化冷却装置。」

第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審が付加した。)

ア 「3.考案の詳細な説明
本考案はフロンなどの凝縮性冷却媒体の沸騰による熱伝達を利用した半導体スタックに関するものである。
第1図は従来装置の説明図である。
第1図において1a?1fは半導体素子、2a?2lは冷却片、3a?3gは絶縁スペーサでありこれらは絶縁座4を介して締付機構5により圧接されている。
冷却片2a?2lは冷却媒体流通管路6を介して液溜部7と接続されており、液溜部7の上方には凝縮部8が設けられている。凝縮性冷却媒体9は液溜部7に満たされており流通管路6は絶縁管10および可撓管11を部分的に有している。12は半導体素子の接続用に設けた端子である。
この装置において冷却片2a?2lの内面で発生した気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通って凝縮部8に達し図示しない2次冷却媒体により凝縮し、凝縮液15は液溜部7に戻り再び沸騰熱伝導に供することになる。」(1頁9行ないし2頁8行)

イ 第1図



(2)引用文献1の上記記載及び図面によれば、次のことがいえる。
ア 上記「(1)」「ア」によれば、引用文献1には、凝縮性冷却媒体の沸騰による熱伝達を利用した半導体スタックが記載されている。

イ 上記「(1)」「ア」によれば、半導体スタックは、締付機構5により圧接された半導体素子1a?1f及び冷却片2a?2lを有することが記載されている。
また、上記「(1)」「イ」の第1図によれば、冷却片2a?2lに凝縮性冷却媒体9が収容されていることが見て取れる。
よって、半導体スタックは、締付機構5により圧接された半導体素子1a?1f及び凝縮性冷却媒体9を収容する冷却片2a?2lを有するといえる。

ウ 上記「(1)」「ア」によれば、半導体スタックは、冷却片2a?2lがそれぞれ複数の冷却媒体流通管路6を介して接続される、凝縮性冷却媒体9が満たされた液溜部7と、液溜部7の上方に設けられた凝縮部8とを有することが記載されている。

エ 上記「(1)」「イ」の第1図によれば、気相13が液溜部7と凝縮部8とを接続する通路により送られることが見て取れるから、半導体スタックは、液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路を有するといえる。

オ 上記「(1)」「イ」の第1図によれば、凝縮液15は凝縮部8と液溜部7とを接続する通路により液溜部7に戻されることが見て取れるから、半導体スタックは、凝縮部8と液溜部7とを接続し、凝縮液15を液溜部7へ戻す通路を有するといえる。

カ 上記「(1)」「ア」によれば、半導体スタックでは、冷却片2a?2lの内面で発生した気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通って凝縮部8に達し凝縮され、凝縮液15は液溜部7に戻り再び沸騰熱伝導に供する。

(3)上記「(2)」によれば、引用文献1には「半導体スタック」として次の発明(以下、「引用発明1」)が記載されていると認められる。

「凝縮性冷却媒体の沸騰による熱伝達を利用した半導体スタックにおいて、
締付機構5により圧接された半導体素子1a?1f及び凝縮性冷却媒体9を収容する冷却片2a?2lと、
冷却片2a?2lがそれぞれ複数の冷却媒体流通管路6を介して接続される、凝縮性冷却媒体9が満たされた液溜部7と、
液溜部7の上方に設けられた凝縮部8と、
液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路と、
凝縮部8と液溜部7とを接続し、凝縮液15を液溜部7へ戻す通路とを有し、
冷却片2a?2lの内面で発生した気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通って凝縮部8に達し凝縮され、凝縮液15は液溜部7に戻り再び沸騰熱伝導に供する、
半導体スタック。」

2.引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審が付加した。)

ア「3.発明の詳細な説明
この発明は、通電時に発生する半導体素子の発生熱を冷却媒体に伝達させることにより、冷却媒体を沸騰させて半導体素子の発生熱を処理する沸騰冷却装置に関する。
従来、この種の沸騰冷却装置として第1図に示すものがあった。図において、1a?1cは半導体素子、2は前記半導体素子1a?1cの発生熱を処理する冷却ブロック、3は前記半導体素子1a?1cと冷却ブロック2を絶縁する絶縁ディスク、4は前記半導体素子1a?1cと冷却ブロック2、絶縁ディスク3をスタック構成するためのクランパ、5は前記スタックの圧接ボルト、6は冷却媒体7を収納する液溜部、7は前記半導体素子1a?1cの発生熱を熱交換する冷却媒体、8は冷却媒体により発生した沸騰蒸気、9は前記沸騰蒸気が通る気相パイプ、10は沸騰蒸気8を相変化させる凝縮器、11は空気など第二次冷却媒体、12は前記の第二次冷却媒体11により再び相変化した凝縮液、13は前記冷却媒体7が通る液相パイプである。
次に従来装置の冷却動作を説明する。半導体素子1a?1cに通電することにより発生した熱は、その陽極および陰極面に配置されている冷却ブロック2を介して冷却媒体7中に放熱される。冷却媒体7はその熱により液相から気相へと相変化し、沸騰蒸気8が発生する。この沸騰蒸気8は気相パイプ9を通り凝縮器10に至り、ここで空気などの第二次冷却媒体11との間で熱交換され凝縮液12となる。この凝縮液12は液相パイプ13を通って液溜部6に戻り、再び沸騰冷却媒体7となる。」(1頁左下欄15行ー2頁左上欄6行)

イ 第1図




(2)引用文献2の上記記載及び図面によれば、次のことがいえる。
ア 上記「(1)」「ア」によれば、引用文献2には、半導体素子の発生熱を冷却媒体に伝達させることにより、冷却媒体を沸騰させて半導体素子の発生熱を処理する沸騰冷却装置が記載されている。

イ 上記「(1)」「ア」によれば、沸騰冷却装置は、半導体素子1a?1cの発生熱を処理する冷却ブロック2を有することが記載されている。
また、上記「(1)」「イ」の第1図によれば、複数の冷却ブロック2に冷却媒体7が収容されていることが見て取れる。
よって、沸騰冷却装置は、冷却媒体7が収容され、半導体素子1a?1cの発生熱を処理する複数の冷却ブロック2を有するといえる。

ウ 上記「(1)」「ア」によれば、沸騰冷却装置は、冷却媒体7を収納する液溜部6と、沸騰蒸気8を相変化させる凝縮器10とを有することが記載されている。

エ 上記「(1)」「ア」によれば、沸騰冷却装置は、沸騰蒸気が通る気相パイプ9と、冷却媒体7が通る液相パイプ13とを有することが記載されている。
また、上記「(1)」「イ」の第1図によれば、「気相パイプ9」が、「液溜部6」と「凝縮器10」とを接続していることが、「液相パイプ13」が、「凝縮器10」と「液溜部6」とを接続していることが、それぞれ見て取れる。
よって、沸騰冷却装置は、液溜部6と凝縮器10とを接続し、沸騰蒸気が通る気相パイプ9と、凝縮器10と液溜部6とを接続し、冷却媒体7が通る液相パイプ13とを有するといえる。

オ 上記「(1)」「イ」の第1図によれば、複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路が見て取れるから、沸騰冷却装置は、複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路を有しているといえる。

カ 上記「(1)」「ア」によれば、沸騰冷却装置では、半導体素子1a?1cに発生した熱は、複数の冷却ブロック2を介して冷却媒体7中に放熱され、冷却媒体7はその熱により液相から気相へと相変化して、沸騰蒸気8が発生し、沸騰蒸気8は気相パイプ9を通り凝縮器10に至り熱交換され凝縮液12となり、凝縮液12は液相パイプ13を通って液溜部6に戻り、再び沸騰冷却媒体7となる。

(3)上記「(2)」によれば、引用文献2には「沸騰冷却装置」として次の発明(以下、「引用発明2」)が記載されていると認められる。

「半導体素子の発生熱を冷却媒体に伝達させることにより、冷却媒体を沸騰させて半導体素子の発生熱を処理する沸騰冷却装置において、
冷却媒体7が収容され、半導体素子1a?1cの発生熱を処理する複数の冷却ブロック2と、
冷却媒体7を収納する液溜部6と、
沸騰蒸気8を相変化させる凝縮器10と、
液溜部6と凝縮器10とを接続し、沸騰蒸気が通る気相パイプ9と、
凝縮器10と液溜部6とを接続し、冷却媒体7が通る液相パイプ13と、
複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路とを有し、
半導体素子1a?1cに発生した熱は、複数の冷却ブロック2を介して冷却媒体7中に放熱され、冷却媒体7はその熱により液相から気相へと相変化して、沸騰蒸気8が発生し、沸騰蒸気8は気相パイプ9を通り凝縮器10に至り熱交換され凝縮液12となり、凝縮液12は液相パイプ13を通って液溜部6に戻り、再び沸騰冷却媒体7となる、
沸騰冷却装置。」

3.引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審が付加した。)

ア 「[0021] 図1は、2つの受熱部11と1つの放熱部12を有する本発明の第1の実施形態に係る相変化冷却器10を示す。
図4及び図5に示すように、受熱部11の下部には、熱伝導性グリースや放熱シートなどを介して、基板Kの上に設けられた電子部品Dが設置されている。熱的な接続を維持するために、受熱部11はネジNで基板Kの上に固定されている。このとき、固定構造にばね性を持たせることで、受熱部11と電子部品Dとの間に接地圧力が発生することが好ましい。図4には、後述する第2実施形態における、受熱部11を互いに接続するバイパス管が示されている。
この接地圧力は、部品の規格を超えないように、100kPaから1MPa程度の圧力とすることが好適である。
(省略)
[0024] 受熱部11の内部では、電子部品Dからの熱により冷媒Rが相変化し、蒸気が生成される。この蒸気は、図1に示す受熱部11の上部の蒸気管13を通り、ラジエータである放熱部12の上部に向かう。放熱部12の上部には、もう1つの受熱部11と接続する蒸気管13も接続されている。放熱部12の中央部には、コルゲートタイプの放熱フィン121が形成されている。放熱フィン121間を通過する空気により、熱が放散される。空気の流れは、図3に示す軸流ファン122により放熱フィン121間に均等に冷却風として供給される。軸流ファン122の直径は約120mmで、放熱部12の断面サイズとほぼ同じである。
[0025] 放熱部12の上部には、複数の蒸気管13が接続されている。複数の蒸気管13を介して複数の受熱部11からの蒸気がそれぞれ放熱部12に運ばれる。複数の蒸気管13は、放熱部12の上部であって冷却風が排出される側の面に、均等な間隔で接続されることが望ましい。例えば、図1に示すように、複数の蒸気管13を、放熱部12の長辺側の側面に均等にならべてもよい。図に詳細は示さないが、放熱部12の短辺側の左右両側面に2本の蒸気管13をそれぞれ接続させもよい。密度が比較的低い蒸気が流れる蒸気管13は、その直径を大きくして、蒸気通過時の圧力損失が最小限になるようにすることが望ましい。
[0026] 図1に示すように、放熱部12の下部には複数本の液体管14の一端が接続されている。また、各液体管14の他端が各受熱部11にそれぞれ接続されている。この液体管14の管径は、蒸気管13の管径に比べて小さい。冷却器全体が定常状態にあるとき、質量ベースの流量はどこも同じであるが、体積ベースの流量は大きく異なる。これは、液体と気体では密度が大きく変化するためである。受熱部11へと接続される液体管14の径が小さいことは、蒸気の混入を防ぐ意味でも効果がある。その結果、逆流を防ぐ、もしくは逆流が生じてもその影響を最低限に抑えることができる系を、逆止弁なしに実現することができる。
(省略)
[0028] 放熱部12は、図12Aに示すように、主として放熱部ヘッダー123、凝縮液滞留部124、冷媒流路125、および放熱フィン121によって構成されている。放熱部12の基本構造は自動車などに用いられているラジエータに似ている。ただし、本発明の実施形態においては、放熱の外に冷媒蒸気の凝縮が行なわれるので、冷媒Rの凝縮に効率のよい放熱ができるようすることが肝要である。蒸気流入口126は、図12BのF-Fに沿った断面図に示すように、放熱部ヘッダー123に直角に接続することが良好である。この結果、放熱部ヘッダー123に流入する蒸気は、放熱部ヘッダー123の背面側の壁に衝突し、放熱部ヘッダー123に充満するように蒸気を拡散させることができる。これにより、放熱部ヘッダー123の内部の圧力を一定にすることができる。従って、冷媒流路125の流量を均一化することができる。
[0029] 冷媒流路125は、放熱の観点からはなるべく細いほうが良好であるが、凝縮した冷媒Rの流れの観点からすると、ある程度の太さが必要となる。本発明の実施形態においては、凝縮は重力に依存した液相の排除能力に頼っている。理想的には、凝縮した冷媒Rが流路内壁に薄膜の液相を形成し、重力により凝縮液滞留部124側に排出される。まれに、凝縮した液相に蒸気が気泡となってトラップされることがあり、このような場合には、液相の排出に抵抗となる。このような事態を避けるためには、なるべく流路幅を最低限とする。有機冷媒を用いた場合には、流路内面の幅を0.3mm以上、放熱性の観点から同じく流路内面の幅を1.0mm以下に設定することが好ましい。
(省略)
[0032] 次に、本発明の実施形態による相変化冷却器10の作用効果について説明する。受熱部11の内部で冷媒Rが沸騰すると、発生した蒸気は液相に比べて比重が小さいため、重力方向上部に位置する蒸気流出口112aへと向かう。蒸気管13は緩やかに角度を変えることで、放熱部12へ向けて低抵抗に蒸気を運ぶ。放熱部12の上部であって冷却風が排出される側の面に蒸気管13が接続されていることは、放熱部12の性能確保にとって良好な条件である。放熱部12に導入された蒸気はその内部を上から下へと流れ、液に戻る。液に戻った冷媒Rは放熱部12の下部に滞留し、液体管14を図5に示す矢印方向に進行して受熱部11へと戻っていく。
[0033] 蒸気として蒸気流入口126より放熱部12に到達した冷媒Rは、冷媒流路125を通過しながら凝縮する。放熱フィン121間を流れる冷却風により、凝縮熱が冷媒Rから冷媒流路125壁、放熱フィン121へと熱が伝わり、放熱される。凝縮した冷媒Rは、相対的に重力方向下部にある凝縮液滞留部124へと流れていく。凝縮液滞留部124に滞留する液量は、放熱部12の上部からの蒸気の流入の妨げにならないように決定される。凝縮液滞留部124の凝縮した冷媒Rは、重力により受熱部11にそれぞれ供給される。
(省略)
[0035] しかも、本実施形態では、放熱部12の内部は仕切りがない一体構造となっているので、一方の受熱部11が熱を受ける電子部品Dの発熱量が少ないときには、他方の受熱部11が熱を受ける電子部品Dの冷却のために放熱部12全体を使うことができる。これにより、熱抵抗が低減するという効果が得られる。」

イ 図1




ウ 図5




エ 図12




(2)引用文献4の上記記載及び図面によれば、次のことがいえる。
ア 「(1)」「ア」の段落[0021]、[0028]、図1、図12Aによれば、引用文献4には、2つの受熱部11と、放熱部ヘッダー123、凝縮液滞留部124、冷媒流路125、および放熱フィン121によって構成される放熱部12とを有する相変化冷却器10が記載されている。

イ 「(1)」「ア」の段落[0021]によれば、受熱部11の下部には、電子部品Dが設置されており、同段落[0035]の「一方の受熱部11が熱を受ける電子部品D」、「他方の受熱部11が熱を受ける電子部品D」との記載によれば、2つの受熱部11のそれぞれの下部に電子部品Dが設置されているといえる。
そして、段落[0024]によれば、受熱部11の内部では、電子部品Dからの熱により冷媒Rが相変化し、蒸気が生成される。
してみれば、引用文献4には、2つの電子部品Dからの熱によりそれぞれ冷媒Rが相変化し、蒸気が生成される2つの受熱部11が記載されているといえる。

ウ 「(1)」「ア」の段落[0025]によれば、放熱部12の上部に、複数の蒸気管13が接続される。
そして、「(1)」「イ」の図1によれば、放熱部12の上部に、2つの受熱部11とそれぞれ接続する2本の蒸気管13が接続されていることが、同図12によれば、2つの蒸気流入口126が接続された放熱部ヘッダー123が、放熱部12の上部に相当することが、それぞれ見て取れる。
よって、相変化冷却器10において、2つの受熱部11とそれぞれ接続する2本の蒸気管13は、放熱部ヘッダー123に接続されているといえる。
さらに、「(1)」「ア」の段落[0025]によれば、複数の蒸気管13を介して複数の受熱部11からの蒸気がそれぞれ放熱部12に運ばれ、同段落[0033]によれば、蒸気となった冷媒Rが蒸気流入口126より放熱部12に達し、同段落[0028]によれば、蒸気流入口126が接続された放熱部ヘッダー123に蒸気が流入するのであるから、2本の蒸気管13は、2つの受熱部11からの蒸気を放熱部12の放熱部ヘッダー123に運ぶといえる。
してみれば、引用文献4には、2つの受熱部11と放熱部ヘッダー123とをそれぞれ接続し、2つの受熱部11からの蒸気を放熱部ヘッダー123に運ぶ2本の蒸気管13が記載されているといえる。

エ 「(1)」「ア」の段落[0032]によれば、放熱部12に導入された蒸気はその内部を上から下へと流れ、液に戻り、同段落[0033]によれば、蒸気として到達した冷媒Rは、冷媒流路125を通過しながら凝縮し、凝縮熱が冷媒Rから冷媒流路125、放熱フィン121へと熱が伝わり、放熱される。
してみれば、引用文献4には、蒸気として到達した冷媒Rから熱を放熱して凝縮し、冷媒Rを液に戻す冷媒流路125及び放熱フィン121が記載されているといえる。

オ 「(1)」「ア」の段落[0032]によれば、液に戻った冷媒Rは放熱部12の下部に滞留し、同段落[0033]によれば、凝縮した冷媒Rは、相対的に重力方向下部にある凝縮液滞留部124へと流れ、凝縮液滞留部124に滞留する。
してみれば、引用文献4には、液に戻った冷媒Rが滞留する凝縮液滞留部124が記載されているといえる。

カ 「(1)」「ア」の段落[0026]によれば、放熱部12の下部には複数本の液体管14の一端が接続され、他端が各受熱部11にそれぞれ接続されている。
そして、「(1)」「イ」の図1によれば、放熱部12の下部には2本の液体管14の一端が接続され、各液体管14の他端が各受熱部11にそれぞれ接続されることが見て取れ、同図12によれば、凝縮液滞留部124が、放熱部12の下部に相当することが見て取れる。
よって、相変化冷却器10において、2本の液体管14の一端が、放熱部12の下部の凝縮液滞留部124に接続され、他端が各受熱部11にそれぞれ接続されるといえる。
さらに、「(1)」「ア」の段落[0032]によれば、液に戻った冷媒Rは放熱部12の下部に滞留し、液体管14を進行して受熱部11へと戻っていき、[0033]によれば、凝縮液滞留部124の凝縮した冷媒Rは、重力により受熱部11にそれぞれ供給されることから、2本の液体管14は、液に戻った冷媒Rを受熱部11へ戻すといえる。
してみれば、引用文献4には、凝縮液滞留部124に一端が接続され、他端が各受熱部11にそれぞれ接続され、液に戻った冷媒Rを受熱部11へと戻す2本の液体管14が記載されているといえる。

ク 「(1)」「ア」の段落[0028]によれば、放熱部12は、放熱部ヘッダー123、凝縮液滞留部124、冷媒流路125、および放熱フィン121によって構成され、同段落[0035]によれば、放熱部12の内部は仕切りがない一体構造となっている。
そして、「(1)」「イ」の図12によれば、放熱部12は、上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて一体的に構成されていることが見て取れる。
してみれば、放熱部12は、上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて構成され、その内部は仕切りがない一体構造であるといえる。

(3)上記「(2)」によれば、引用文献4には「相変化冷却器」として次の発明(以下、「引用発明4」)が記載されていると認められる。

「2つの電子部品Dからの熱によりそれぞれ冷媒Rが相変化し、蒸気が生成される2つの受熱部11と、
2つの受熱部11と放熱部ヘッダー123とをそれぞれ接続し、2つの受熱部11からの蒸気を放熱部ヘッダー123に運ぶ2本の蒸気管13と、
蒸気として到達した冷媒Rから熱を放熱して凝縮し、冷媒Rを液に戻す冷媒流路125及び放熱フィン121と、
液に戻った冷媒Rが滞留する凝縮液滞留部124と、
凝縮液滞留部124に一端が接続され、他端が各受熱部11にそれぞれ接続され、液に戻った冷媒Rを受熱部11へと戻す2本の液体管14と、を有し、
放熱部12は、上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて構成され、その内部は仕切りがない一体構造である、
相変化冷却器10。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1との対比
(ア)引用発明1において、「冷却片2a?2l」は、「凝縮性冷却媒体9」を収容するものである。
そして、引用発明1は「凝縮性冷却媒体の沸騰による熱伝達を利用」するものであり、「半導体素子1a?1f」に圧接された「冷却片2a?2l」は、その内面で「気相13」を発生させるから、「冷却片2a?2l」に収容される「凝縮性冷却媒体9」は「半導体素子1a?1f」から熱を受けているといえ、引用発明1の「半導体素子1a?1f」、「凝縮性冷却媒体9」、「冷却片2a?2l」は、本願発明1の「複数の発熱源」、「冷媒」、「複数の受熱手段」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明1の「半導体1a?1f」から熱を受ける「凝縮性冷却媒体9を収納する冷却片2a?2l」は、本願発明1の「複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段」に相当する。

(イ)引用発明1の「冷却片2a?2lの内面で発生した気相13」は、「冷却片2a?2l」に収容される「凝縮性冷却媒体9」の蒸気であることは明らかであって、本願発明1の「前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気」に相当する。
さらに、引用発明1の「凝縮液15」は、「凝縮部8」において「気相13」を「凝縮」し「液溜部7に戻り再び沸騰熱伝導に供する」ものであるから、「凝縮性冷却媒体9」と同じものであり、本願発明1の「冷媒液」に相当する。
よって、引用発明1の「凝縮部8」は、本願発明1の「前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段」に相当する。

(ウ)引用発明1において、「冷却片2a?2lがそれぞれ複数の冷却媒体流通管路6」を介して「液溜部7」に接続され、「冷却片2a?2lの内面で発生した気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通って凝縮部8に達」するから、「複数の冷却媒体流通管路6」は、「冷却片2a?2l」と「液溜部7」を接続し、「気相13」を通すものといえる。
そして、引用発明1は「液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路」を有する。
してみると、引用発明1の「冷却媒体流通管路6」、「液溜部7」、及び、「液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路」は、「冷却片2a?2l」と「凝縮部8」とを接続し「気相13」を送るための構造といえるから、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造」に相当する。

(エ)引用発明1は、「凝縮部8と液溜部7とを接続し、凝縮液15を液溜部7へ戻す通路」を有する。
そして、引用発明1において、「冷却片2a?2lがそれぞれ複数の冷却媒体流通管路6」を介して「凝縮性冷却媒体9が満たされた液溜部7」に接続され、「凝縮部8」によって凝縮された「凝縮液15は液溜部7に戻り再び沸騰熱伝導に供する」から、「複数の冷却媒体流通管路6」は、「冷却片2a?2l」と「液溜部7」を接続し、「凝縮性冷却媒体9」である「「凝縮液15」を「冷却片2a?2l」に送る管といえる。
してみると、引用発明1の「凝縮部8と液溜部7とを接続し、凝縮液15を液溜部7へ戻す通路」、「液溜部7」及び「複数の冷却媒体流通管路6」は、「冷却片2a?2l」と「凝縮部8」とを接続し「凝縮液15」を送るための構造といえるから、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造」に相当する。

(オ)引用発明1において、「冷却片2a?2l」は「それぞれ複数の冷却媒体流通管路6」に接続されており、「冷却片2a?2lの内面で発生した気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通」るから、引用発明1の「複数の冷却媒体流通管路6」は、本願発明1の「前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管」に相当する。
そして、引用発明1では、「複数の冷却媒体流通管路6」はそれぞれ「液溜部7」に接続され、「気相13は上部へ上昇し冷却媒体流通管路6を通って凝縮部8に達」するから、引用発明1の「液溜部7」は、「気相13」が合流されるものといえ、本願発明1の「前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段」に相当する。
さらに、引用発明1の「液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路」は、本願発明1の「前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管」に相当する。
よって、引用発明1の「気相13」を送るための構造は、本願発明1の「前記冷媒蒸気輸送構造は、前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管、とを備え」る構成を有している。

(カ)引用発明1の「液溜部7」は、「凝縮性冷却媒体9」が満たされるとともに、「凝縮性冷却媒体9」と同じものである「凝縮液15」が戻されるから、本願発明1の「冷媒液をため」る「冷媒液貯留部」に相当する。
そして、引用発明1の「凝縮部8と液溜部7とを接続し、凝縮液15を液溜部7へ戻す通路」は、本願発明1の「凝縮手段」と「冷媒液貯留部」が接続される「主液管」に相当する。
さらに、引用発明1では、「冷却片2a?2lがそれぞれ複数の冷却媒体流通管路6」を介して「液溜部7」に接続されるから、「複数の冷却媒体流通管路6」は、本願発明1の「冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続」する「複数の副液管」に相当する。
したがって、引用発明1の「凝縮液15」を送るための構造は、本願発明1の「前記冷媒液輸送構造は、主液管と、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、前記主液管は、前記凝縮手段と接続し、前記冷媒液貯留部は、前記主液管と接続し、前記冷媒液をため、前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続」する構成を有している。

(キ)上記(オ)で述べたように、引用発明1の「液溜部7」は、本願発明1の「蒸気合流手段」に相当する。
しかし、「蒸気合流手段」に関し、本願発明1は「冷媒液貯留部とは別に位置している」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

(ク)引用発明1は、「凝縮性冷却媒体の沸騰による熱伝達を利用」するものであり、「冷却片2a?2l」の内面で「気相13」が発生し、凝縮された「凝縮液15」は再び沸騰熱伝導に供されるのであるから、引用発明1の「半導体スタック」は、相変化を利用した冷却を行うものであるといえ、本願発明1の「相変化冷却装置」に相当する。

イ 一致点および相違点
上記(ア)ないし(ク)によれば、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「 複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段と、
前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造、とを有し、
前記冷媒蒸気輸送構造は、
前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、
前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、
前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管、とを備え、
前記冷媒液輸送構造は、主液管と、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、
前記主液管は、前記凝縮手段と接続し、
前記冷媒液貯留部は、前記主液管と接続し、前記冷媒液をため、
前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続した、
相変化冷却装置。」

(相違点1)
「蒸気合流手段」に関し、本願発明1は「冷媒液貯留部とは別に位置している」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。

ウ 相違点1についての判断
(ア)本願発明1と引用発明1とは、上記「イ」で説示した相違点1で相違するから、本願発明1は引用発明1と同一であるとはいえない。

(イ)上記「ア」「(オ)」及び「(カ)」で述べたように、引用発明1の「液溜部7」は、「気相13」が合流され「凝縮性冷却媒体9」が満たされるものであるから、引用発明1は「気相13」を合流させる構成と「凝縮性冷却媒体9」を満たす構成とを別に位置したものではない。そして、引用文献1には、「気相13」を合流させる構成と、「凝縮性冷却媒体9」を満たす構成とを別の位置とすることは記載も示唆もされておらず、また、「気相13」を合流させる構成と、「凝縮性冷却媒体9」を満たす構成とを別の位置とすることは、当該技術分野において周知技術である根拠も見当たらない。
そして、引用発明1の「気相13」を合流させる機能と「凝縮性冷却媒体9」を満たす機能とを兼用する「液溜部6」において、あえて2つの機能を分離し、「気相13」を合流させる構成と、「凝縮性冷却媒体9」を満たす構成とを別に設ける動機も見当たらない。
よって、相違点1に係る事項は、引用発明1に基づいて容易になし得たものとはいえない。

エ まとめ
以上から、本願発明1は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明2との対比
(ア)引用発明2の「半導体素子1a?1c」は、熱を発生するから、本願発明1の「複数の発熱源」に相当する。
引用発明2は「半導体素子の発生熱を冷却媒体に伝達させ」るものであるから、引用発明2の「冷却媒体7」は、本願発明1の「冷媒」に相当する。
そして、引用発明2の「半導体素子1a?1cの発生熱」が伝達される「「冷却媒体7」を収容する「複数の冷却ブロック」は、本願発明1の「複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段」に相当する。

(イ)引用発明2では、「半導体素子1a?1cに発生した熱は、複数の冷却ブロック2を介して冷却媒体7中に放熱され、冷却媒体7はその熱により液相から気相へと相変化して、沸騰蒸気8が発生」するから、引用発明2の「沸騰蒸気8」は、「複数の冷却ブロック2」で「冷却冷媒7」が気化されたものといえ、本願発明1の「受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気」に相当する。
そして、引用発明2において、「沸騰蒸気8」は「凝縮器10に至り熱交換され凝縮液12とな」るから、引用発明2の「凝縮液12」は、本願発明1の「冷媒液」に相当する。
さらに、引用発明2の「凝縮器10」は「沸騰蒸気8を相変化させる」ものであり、「凝縮器10」により「沸騰蒸気8」が「熱交換され凝縮液12とな」るから、引用発明2の「凝縮器10」は、本願発明1の「前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段」に相当する。

(ウ)引用発明2は、「液溜部6と凝縮器10とを接続し、沸騰蒸気が通る気相パイプ9」を有する。
そして、引用発明2では、「半導体素子1a?1cに発生した熱は、複数の冷却ブロック2を介して冷却媒体7中に放熱され、冷却媒体7はその熱により液相から気相へと相変化して、沸騰蒸気8が発生し、沸騰蒸気8は気相パイプ9を通り凝縮器10に至」ることから、引用発明2の「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」が、「沸騰蒸気8」を「複数の冷却ブロック2」から「液溜部6」に送ることは明らかである。
してみると、引用発明2の「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」、「液溜部6」及び「液溜部6と凝縮器10とを接続し、沸騰蒸気が通る気相パイプ9」は、「複数の冷却ブロック2」と「凝縮器10」とを接続し、「沸騰蒸気8」を送るための構造といえるから、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造」に相当する。

(エ)引用発明2は、「凝縮器10と液溜部6とを接続し、冷却媒体7が通る液相パイプ13」を有する。
そして、引用発明2の「複数の冷却ブロック2」には「冷却媒体7」が収容され、「凝縮液12は液相パイプ13を通って液溜部6に戻り、再び沸騰冷却媒体7となる」ことから、「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」が、「冷却媒体7」である「凝縮液12」を、「液溜部6」から「複数の冷却ブロック2」に送ることは明らかである。
してみると、引用発明2の「凝縮器10と液溜部6とを接続し、冷却媒体7が通る液相パイプ13」、「液溜部6」及び「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」は、「凝縮器10」と「複数の冷却ブロック2」とを接続し「凝縮液12」である「冷却媒体7」を送るための構造といえるから、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造」に相当する。

(オ)上記(ウ)で述べたように、引用発明2の「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」は、「沸騰蒸気8」を「複数の冷却ブロック2」から「液溜部6」へ送るものであるから、本願発明1の「複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管」に相当する。
そして、引用発明2において、「液溜部6」に「複数の通路」が接続されるのであるから、「液溜部6」では「沸騰蒸気8」が合流するといえ、引用発明2の「液溜部6」は、本願発明1の「複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段」に相当する。
さらに、引用発明2の「気相パイプ9」は「液溜部6」と「凝縮器10」とを接続するから、引用発明2の「気相パイプ9」は、本願発明1の「前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管」に相当する。
したがって、引用発明2の「沸騰蒸気8」を送るための構造は、本願発明1の「前記冷媒蒸気輸送構造は、前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管、とを備え」る構成を有している。

(カ)引用発明2において、「凝縮液12は液相パイプ13を通って液溜部6に戻り、再び沸騰冷却媒体7とな」り、「液溜部6」は「冷却媒体7を収納する」から、引用発明2の「液溜部6」は、本願発明1の「冷媒液をため」る「冷媒液貯留部」に相当する。
そして、引用発明2の「液相パイプ13」は、「凝縮器10」と「液溜部6」とを接続するから、本願発明1の「凝縮手段」と「冷媒液貯留部」に接続される「主液管」に相当する。
さらに、上記(エ)で述べたように、引用発明2の「複数の冷却ブロック2と液溜部6とを接続する複数の通路」は、「冷却媒体7」である「凝縮液12」を、「液溜部6」から「複数の冷却ブロック2」に送るものであるから、本願発明1の「冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続」する「複数の副液管」に相当する。
よって、引用発明2の「凝縮液12」である「冷却媒体7」を送るための構造は、本願発明1の「前記冷媒液輸送構造は、主液管と、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、前記主液管は、前記凝縮手段と接続し、前記冷媒液貯留部は、前記主液管と接続し、前記冷媒液をため、前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続」する構成を有している。

(キ)上記(オ)で述べたように、引用発明2の「液溜部6」は、本願発明1の「蒸気合流手段」に相当する。
しかし、「蒸気合流手段」に関し、本願発明1は「冷媒液貯留部とは別に位置している」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する

(ク)引用発明2の「沸騰冷却装置」は、「冷却媒体7」を「液相から気相へと相変化」させるものであるから、本願発明1の「相変化冷却装置」に相当する。

イ 一致点および相違点
上記(ア)ないし(ク)によれば、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「 複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段と、
前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造、とを有し、
前記冷媒蒸気輸送構造は、
前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、
前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、
前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管、とを備え、
前記冷媒液輸送構造は、主液管と、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、
前記主液管は、前記凝縮手段と接続し、
前記冷媒液貯留部は、前記主液管と接続し、前記冷媒液をため、
前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続した、
相変化冷却装置。」

(相違点2)
「蒸気合流手段」に関し、本願発明1は「冷媒液貯留部とは別に位置している」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。

ウ 相違点2についての判断
(ア)本願発明1と引用発明2とは、上記「イ」で説示した相違点2で相違するから、本願発明1は引用発明2と同一であるとはいえない。

(イ)上記「ア」「(オ)」及び「(カ)」で述べたように、引用発明2の「液溜部6」は、「沸騰蒸気8」が合流され「冷却媒体7」を収納するものであるから、引用発明2は、「沸騰蒸気8」を合流させる構成と「冷却媒体7」を収納する構成とを別に位置したものではない。そして、引用文献2には、「沸騰蒸気8」を合流させる構成と、「冷却媒体7」を満たす構成とを別の位置とすることは記載も示唆もされておらず、また、「沸騰蒸気8」を合流させる構成と、「冷却媒体7」を満たす構成とを別の位置とすることは、当該技術分野において周知技術である根拠も見当たらない。
そして、引用発明2の「沸騰蒸気8」を合流させる機能と「冷却媒体7」を収納する機能とを兼用する「液溜部6」において、あえて2つの機能を分離し、「沸騰蒸気8」を合流させる構成と、「冷却媒体7」を収納する構成とを別に設ける動機も見当たらない。
よって、相違点2に係る事項は、引用発明2に基づいて容易になし得たものとはいえない。

エ まとめ
以上から、本願発明1は、引用文献2に記載された発明ではなく、また、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)引用発明4との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明4との対比
(ア)引用発明4では、「冷媒R」が「2つの電子部品Dからの熱により」それぞれ「相変化」するから、「冷媒R」は、「2つの電子部品D」から熱を受けているといえ、本願発明1の「複数の発熱源から受熱する冷媒」に相当する。
そして、引用発明4の「2つの受熱部11」において「冷媒Rが相変化し、蒸気が生成される」から、「2つの受熱部11」は「冷媒R」を収容しており、本願発明1の「複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段」に相当する。

(イ)引用発明4の「蒸気」は、「受熱部11」により「冷媒R」が「相変化」されて生成されるものであるから、本願発明1の「前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気」に相当する。
そして、引用発明4では、「冷媒流路125及び放熱フィン121」が「蒸気として到達した冷媒Rから熱を放熱して凝縮し、冷媒Rを液に戻」すから、「冷媒流路125及び放熱フィン121」は、蒸気として到達した冷媒Rを凝縮液化して冷媒Rの液を生成しているといえ、本願発明1の「前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段」に相当する。

(ウ)引用発明4の「2本の蒸気管13」は、「2つの受熱部11と放熱部ヘッダー123とをそれぞれ接続し、2つの受熱部11からの蒸気を放熱部ヘッダー123に運ぶ」ものである。
そして、引用発明4の「放熱部12」は、「上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて構成され、その内部は仕切りがない一体構造」である。
してみると、引用発明4の「2本の蒸気管13」及び「放熱部ヘッダー123」は、「2つの受熱部11」と「冷媒流路125及び放熱フィン121」との間を接続し、「冷媒流路125及び放熱フィン121」に「蒸気」を送るための構造といえ、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造」に相当する。

(エ)引用発明4の「2本の液体管14」は、「凝縮液滞留部124に一端が接続され、他端が各受熱部11にそれぞれ接続され、液に戻った冷媒Rを受熱部11へと戻す」ものである。
そして、引用発明の「放熱部12」は、「上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて構成され、その内部は仕切りがない一体構造」である。
してみると、引用発明4の「凝縮液滞留部124」及び「2本の液体管14」は、「冷媒流路125及び放熱フィン121」と「受熱部11」との間を接続し、「液に戻った冷媒R」を送るための構造といえ、本願発明1の「前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造」に相当する。

(オ)引用発明4の「2本の蒸気管13」は、「2つの受熱部11」とそれぞれ接続されているから、本願発明1の「複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管」に相当する。
そして、引用発明4において、「2つの受熱部11からの蒸気」は「2本の蒸気管13」により「放熱部ヘッダー123」に運ばれるから、「2本の蒸気管13」に接続される「放熱部ヘッダー123」は、「複数の受熱部11からの蒸気」が合流されるものといえ、本願発明1の「複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段」に相当する。
よって、引用発明4の「蒸気」を送るための構造は、前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段とを備える」構成と共通する。
ただし、「冷媒蒸気輸送構造」に関し、本願発明1は、「前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管」を備えているのに対し、引用発明4はその旨特定されていない点で相違する。

(カ)引用発明4の「凝縮液滞留部124」は、「液に戻った冷媒R」を「滞留する」から、本願発明1の「前記冷媒液をため」る「冷媒液貯留部」に相当する。
そして、引用発明4の「2本の液体管14」は、「一端」が「凝縮液滞留部124」に接続され、「他端が各受熱部11にそれぞれ接続され」るから、本願発明1の「前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とそれぞれ接続」する「「複数の副液管」に相当する。
よって、引用発明4の「液に戻った冷媒R」を送るための構造は、本願発明4の「前記冷媒液輸送構造は、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、前記冷媒液貯留部は、前記冷媒液をため、前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続」する構成と共通する。
ただし、「冷媒液輸送構造」に関し、本願発明1は、「主液管」を備え、該「主液管」は、「凝縮手段」と「冷媒液貯留部」に接続しているのに対し、引用発明4はその旨特定されていない点で相違する。

(キ)引用発明4の「放熱部ヘッダー123」と「凝縮液滞留部124」が別に設けられていることは、本願発明1の「蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している」ことに相当する。

(ク)引用発明4の「相変化冷却器10」は、本願発明1の「相変化冷却装置」に相当する。

イ 一致点及び相違点
上記(ア)ないし(ク)によれば、本願発明1と引用発明4とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「 複数の発熱源から受熱する冷媒をそれぞれ収容する複数の受熱手段と、
前記受熱手段で気化した前記冷媒の冷媒蒸気を凝縮液化して冷媒液を生成する凝縮手段と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒蒸気を輸送する冷媒蒸気輸送構造と、
前記受熱手段と前記凝縮手段を接続し、前記冷媒液を輸送する冷媒液輸送構造、とを有し、
前記冷媒蒸気輸送構造は、
前記複数の受熱手段とそれぞれ接続する複数の副蒸気管と、
前記複数の副蒸気管と接続し、前記冷媒蒸気が合流する蒸気合流手段と、とを備え、
前記冷媒液輸送構造は、冷媒液貯留部と、複数の副液管とを備え、
前記冷媒液貯留部は、前記冷媒液をため、
前記複数の副液管は、前記冷媒液貯留部と前記複数の受熱手段とをそれぞれ接続し、
前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している
相変化冷却装置。」

(相違点3)
「冷媒蒸気輸送構造」に関し、本願発明1は、「前記蒸気合流手段と前記凝縮手段とを接続する主蒸気管」を備えているのに対し、引用発明4はその旨特定されていない点。
(相違点4)
「冷媒液輸送構造」に関し、本願発明1は、「主液管」を備え、該「主液管」は、「凝縮手段」と「冷媒液貯留部」に接続しているのに対し、引用発明4はその旨特定されていない点。

ウ 相違点3についての判断
(ア)引用発明4において、「放熱部12」は、「上から放熱部ヘッダー123、放熱フィン121が形成された冷媒流路125、凝縮液滞留部124の順に接続されて構成され、その内部は仕切りがない一体構造」である。
そして、引用文献4には、「放熱部ヘッダー123」と「冷媒流路125」とを個々の部品として配置し、それらの間をパイプ等で接続することは記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献1に「液溜部7と凝縮部8とを接続し、気相13を凝縮部8へ送る通路を設けること。」(以下、「引用文献1の技術事項」という。「第5」「1.」「(2)」「エ」を参照)が記載され、引用文献2に「液溜部6と凝縮部10とを接続し、沸騰蒸気が通る気相パイプ9を設けること。」(以下、「引用文献2の技術事項」という。「第5」「2.」「(2)」「エ」を参照)が記載されているとしても、引用発明4に、引用文献1の技術事項及び引用文献2の技術事項をを採用する動機はないといえる。

(イ)さらに、引用文献4には、「上述のように、特許文献1から6に開示された冷却装置にはいくつかの問題がある。第1の問題点は、冷却器の小型化の問題である。電子機器内部は高密度に電子部品が実装され、この傾向は近年特に顕著である。限られた装置内容積に対して、放熱器の占める割合は大きい。伝熱効率の高い沸騰・凝縮方式の冷却器であれば、受熱部・放熱部の小型化が可能である。但し、受熱・放熱一体型の冷却器では、放熱フィンが部品近傍に大きな容積を必要とする。」([0009]を参照)と記載され、冷却装置の小型化を問題提起しており、引用文献4に接した当業者が、一体的な構造である放熱部12を構成する放熱部ヘッダー123と冷媒流路125とを個々の部品として分離し配置することを容易に想到しうるとはいえず、むしろ、引用文献1の技術事項又は引用文献2の技術事項を採用する阻害要因がある。

(エ)よって、上記相違点3に係る構成は、引用発明4、及び、引用文献1の技術事項又は引用文献2の技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

エ まとめ
以上から、上記相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明4、及び、引用文献1の技術事項又は引用文献2の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
請求項2ないし9は、請求項1に従属する請求項であり、本願発明2ないし9は、相違点1ないし相違点4に係る発明特定事項を備えるものである。
ここで、原査定の拒絶の理由で周知技術として引用された特開平5-196260号公報(段落【0009】、【0025】を参照。以下、「引用文献3」という。)には、「室外ユニットと室内ユニットとが一対の冷媒配管によって接続されるスプリットタイプの空気調和機において、接続用管部8a´が、室外ユニット1のケース1aに、管継手9のフランジ部とともにボルト15によって締着した絶縁部材16を介して、電気的に絶縁した状態で支持されること。」(以下、「引用文献3の技術事項」という。)が記載され、引用文献4(段落[0025]を参照)には、「密度が比較的低い蒸気が流れる蒸気管13は、その直径を大きくして、蒸気通過時の圧力損失が最小限になるようにすること。」(以下、「引用文献4の技術事項」という。)が記載されているものの、各技術事項は相違点1ないし相違点4に係る構成に相当するとはいえない。
したがって、引用発明1、引用発明2、又は、引用発明4に、引用文献3の技術事項及び引用文献4の技術事項を採用しても、相違点1ないし相違点4に係る構成には至らない。
よって、本願発明2ないし9は、本願発明1と同じ理由により、引用文献1又は2に記載された発明ではなく、また、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

第7 原査定について
1 特許法第29条第1項3号について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし3、9は、相違点1および相違点2に係る「前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している」との事項を有するものとなっており、上記「第6」「1」「(1)」及び同「(2)」で示したように、引用発明1及び引用発明2と同一であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 特許法第29条第2項について
ア 審判請求時の補正により、本願発明1ないし6、9は、引用発明1との相違点1である「前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している」との発明特定事項を有するものとなっており、「第6」「1」(1)」、「第6」「2」で示したように、当業者であっても、引用発明1、引用文献3の技術事項及び引用文献4の技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

イ 審判請求時の補正により、本願発明1ないし6、9は、引用発明2との相違点2である「前記蒸気合流手段は、前記冷媒液貯留部とは別に位置している」との発明特定事項を有するものとなっており、「第6」「1」「(2)」、「第6」「2」で示したように、当業者であっても、引用発明2、引用文献3の技術事項及び引用文献4の技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本願発明1ないし6は、引用発明4との相違点3及び相違点4である「主蒸気管」及び「主液管」の発明特定事項を有するものとなっており、「第6」「1」「(3)」、「第6」「2」で示したように、当業者であっても、引用発明4、引用文献1の技術事項及び引用文献3の技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえず、また、引用発明4、引用文献2の技術事項及び引用文献3の技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

エ したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-11 
出願番号 特願2016-544940(P2016-544940)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 畑中 博幸
須原 宏光
発明の名称 相変化冷却装置および相変化冷却方法  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  
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