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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1374178
審判番号 不服2020-5342  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-20 
確定日 2021-05-13 
事件の表示 特願2018-504410「撮像装置、画像処理装置、画像処理プログラム、データ構造、及び撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日国際公開、WO2017/154705〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月1日(優先権主張 平成28年3月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年11月 6日付け:拒絶理由通知
令和 2年 1月 8日 :意見書の提出、手続補正
同年 2月18日付け:拒絶査定
同年 4月20日 :拒絶査定不服審判請求、手続補正
令和 同年 6月 9日付け:前置報告

第2 令和2年4月20日付の手続補正について
1 本件補正の内容
令和2年4月20日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和2年1月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし23に補正するものであり、本件補正は、補正前の請求項18を補正後の請求項18とする補正事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前の請求項18)
【請求項18】
撮像画像における画素値の並び順及び前記撮像画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた設定情報と、
前記第1の並び順を保持して配列されたデータ構造体と、を含み、
対象物データ生成部に、対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像と、前記所定の視点から前記対象物上の点までの距離の測定結果とを用いて、前記撮像画像の前記画素値、及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした単位データを、前記第1の並び順を保持して配列し、対象物データを生成させ、
点群データ生成部に、前記設定情報をもとに前記対象物データを読み込んで前記対象物上の点の位置情報を算出し、前記位置情報を含む点データを前記第1の並び順で配列して点群データを生成させる、データ構造。

(補正後の請求項18)
【請求項18】
撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された撮像画像のデータ構造であって、
前記撮像画像における画素値の並び順、及び前記撮像画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた設定情報と、
前記第1の並び順を保持して前記画素値が配列されたデータ構造体と、を含み、
前記データ構造体は、前記画像処理部により、対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像と、前記所定の視点から前記対象物上の点までの距離の測定結果とを用いて、前記撮像画像の前記画素値、及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした単位データが、前記第1の並び順を保持して配列されることにより生成され、
前記設定情報は、前記画像処理部により、前記データ構造体が読み込まれ、前記対象物上の点の位置情報が算出され、前記位置情報を含む点データが前記第1の並び順で配列されて点群データが生成されるときに用いられる、データ構造。

2 補正の適合性
(1)補正の目的について
請求項18に係る補正は、
(i)「撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された撮像画像のデータ構造」であるという事項を特定することで、補正後のデータ構造が、「撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された撮像画像のデータ構造」であることを明確化する補正、
(ii)補正前の「前記第1の並び順を保持して配列されたデータ構造体」を、補正後のデータ構造が、「前記撮像画像における画素値」に関して、「前記第1の並び順を保持して前記画素値が配列されたデータ構造体」とすることで、「撮像画像における画素値」が配列されたデータ構造体であることを明確化する補正、
(iii)「単位データ」が「第1の並び順を保持して配列」されることにより生成されるデータを、補正前の「対象物データ」から補正後の「データ構造体」とし、該「データ構造体」を生成する主体を「対象物データ生成部」から「画像処理部」とすることで、データ構造体を生成する処理の内容及び生成する処理を行う主体を明確化する補正、
(iv)「点群データを生成させる」処理について、「設定情報をもとに前記対象物データを読み込んで前記対象物上の点の位置情報を算出し、前記位置情報を含む点データを前記第1の並び順で配列」を行う主体を「点群データ生成部」から「画像処理部」とし、読み込まれるデータを補正前の「対象物データ」から(iii)にあわせて「データ構造体」とすることで、点群データを生成する処理に用いられるデータと処理の内容、及び点群データを生成する処理を行う主体を明確化する補正、
である。
(v) 当該補正は、(i)?(iv)のとおりであり、これらを総合すると、請求項18にデータ構造や処理の主体に明りょうでない記載が存在することで、結果として発明該当性がないとされた事項について、明りょうでない記載の釈明を行うことで拒絶理由を解消することを目的とするものであり、特許法第17条の2第5項第4号に該当する。

(2)補正の範囲及び単一性について
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、明細書等という)には、以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。)
「【0016】
図1(B)は、撮像装置1の構成の一例を示すブロック図である。撮像装置1は、例えば、検出部2と、画像処理部3(画像処理装置)と、情報算出部4と、記憶部5と、通信部6(送信部)と、制御部7と、本体部8とを備える。・・・
【0017】
図2は、検出部2の一例を示す図である。・・・検出部2は、撮像部11および測距部12を含む。・・・
【0018】
撮像部11は、結像光学系13および撮像素子(検出素子、受光素子)14を備える。・・・
【0019】
撮像素子14は、例えば、複数の画素が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサ、あるいはCCDイメージセンサである。撮像素子14は、例えば本体部8に収容される。撮像素子14は、結像光学系13が形成した像を撮像する。撮像素子14の撮像結果(検出結果)は、例えば、各画素の色ごとの画素値(例、階調値)の情報(例、RGBデータ)を含む。撮像素子14は、例えば、撮像結果をフルカラー画像のデータ形式で出力する。
・・・
【0023】
図3(B)に示すように、画像データDaは、設定情報Da1および画素データ構造体Da2を含む。・・・
【0024】
画素データ構造体Da2は、複数の画素の各色の画素値を格納する。画素データ構造体Da2は、例えば、画素ごとの画素データにおいてB、G、Rの画素値が予め定められた順に連続的に配列され、画素データが画素の並ぶ順に繰り返し配列される構造である。」
「【0034】
図1の説明に戻り、画像処理部3(画像処理装置)は、対象物データ生成部21および点群データ生成部22を備える。対象物データ生成部21は、撮像部11による撮像画像および測距部12の測定結果を用いて、対象物データDc(後に図5(A)で説明する)を生成する。点群データ生成部22は、対象物データDcに基づいて対象物OB上の点の位置情報(例、座標)を算出する。また、点群データ生成部22は、対象物OB上の点の位置情報を少なくとも含む点データFを配列して、点群データDe(後に図5(B)、図5(C)で説明する)を生成する。」
・・・
【0036】
図5(A)は、本実施形態に係る対象物データDcの一例を示す概念図である。対象物データDcは、例えば、RBG-D画像の画像データである。対象物データDcは、設定情報Dc1および単位データ構造体Dc2を含む。」

上記の明細書等の記載によれば、請求項18に係る上記補正事項は、特に上記明細書の摘記した記載に基づくものであるから、請求項18に係る補正は、本願出願時の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
また、請求項18に係る補正は、上記のとおり、不明りょうな記載の釈明を目的とする補正であるから、本件補正前の請求項18に記載された発明と、本件補正後の請求項18に記載された発明は、発明の単一性の要件を満たすものといえ、請求項18に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

第3 原査定の理由
令和2年 2月18日付け拒絶査定の理由の概要は以下の通りである。

(発明該当性)この出願の請求項18に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。



本願の補正後の請求項18に係る発明は、「設定情報」及び「データ構造体」を含む「データ」を定義したものにすぎず、人為的な取決めに止まるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、発明に該当しない。
よって、補正後の請求項18に係るデータ構造は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

第4 本願発明
本願の請求項18に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年4月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項18に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(B2)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成B2と称する。また、下線は令和2年4月20日の手続補正により補正された箇所を示す。

(本願発明)
【請求項18】
A 撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された撮像画像のデータ構造であって、
A1 前記撮像画像における画素値の並び順、及び前記撮像画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた設定情報と、
A2 前記第1の並び順を保持して前記画素値が配列されたデータ構造体と、を含み、
B1 前記データ構造体は、前記画像処理部により、対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像と、前記所定の視点から前記対象物上の点までの距離の測定結果とを用いて、前記撮像画像の前記画素値、及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした単位データが、前記第1の並び順を保持して配列されることにより生成され、
B2 前記設定情報は、前記画像処理部により、前記データ構造体が読み込まれ、前記対象物上の点の位置情報が算出され、前記位置情報を含む点データが前記第1の並び順で配列されて点群データが生成されるときに用いられる、
A データ構造。

第5 判断
1.本願発明の「データ構造」の発明特定事項について
(1)「撮像画像のデータ構造」の構成
本願発明の「撮像画像のデータ構造」は、「撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された」「撮像画像のデータ構造」(構成A)である。
そして、当該「データ構造」は、「前記撮像画像における画素値の並び順、及び前記撮影画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた設定情報」(構成A1)と、「前記第1の並び順を保持して前記画素値が配列されたデータ構造体」(構成A2)とを含む。
また、本願発明の構成A2の「データ構造体」は、構成B1を踏まえると、「対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像」の「画素値」、「及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした」「単位データが」、「前記第1の並び順を保持して配列され」たものである。

(2)「撮像画像のデータ構造」に関連する情報処理
一方、本願発明の「データ構造体」は、「前記画像処理部により」「生成される」ものであり、「対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像と、前記所定の視点から前記対象物上の点までの距離の測定結果とを用いて」、「前記撮像画像の前記画素値、及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした単位データが」、「前記第1の並び順を保持して配列されることにより生成される」(構成B1)ものである。
そうすると、本願発明の「データ構造体」において、構成B1に関連する情報処理は、「撮像画像の前記画素値」と、「前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした」「単位データ」を「第1の並び順を保持して配列」することにより「データ構造体」を「生成」する情報処理である。

また、本願発明の「設定情報」は「前記画像処理部により」「用いられる」ものであり、「前記データ構造体が読み込まれ」、「前記対象物上の点の位置情報が算出され、前記位置情報を含む点データが前記第1の並び順で配列されて点群データが生成される」「ときに用いられる」(構成B2)ものである。
そうすると、本願発明の「設定情報」において、構成B2に関連する情報処理は、「データ構造体」を「読み込」み、「算出され」た「対象物上の点の位置情報」について、当該「位置情報を含む点データ」を「第1の並び順で」「配列」して「点群データ」を「生成」する情報処理である。

2.発明該当性についての判断
(1)「撮像画像のデータ構造」について
ア.構成Aの「撮像画像のデータ構造」について検討する。
構成Aは、「撮像画像のデータ構造」が「撮像部及び画像処理部を備える撮像装置に用いられ、前記撮像部により撮像された」ことを特定しているといえる。
さらに、当該「撮影画像のデータ構造」は、「設定情報」と「データ構造体」を含むといえる。

イ.そこで、構成A1の「設定情報」、及び構成A2の「データ構造体」について検討する。
構成A1の「設定情報」は、「前記撮像画像における画素値の並び順、及び前記撮像画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた」情報であることを特定しているといえる。
また、構成A2の「データ構造体」は、構成B1を踏まえると、「前記画素値」及び「前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離」を組にした「単位データ」が「前記第1の並び順を保持して配列される」情報であるといえる。

ウ.上記ア、イを総合すると、請求項18の「撮像画像のデータ構造」は、「撮像画像における画素値の並び順」及び「撮像画像における第1の読み出し順を含む第1の並び順」を定めた「設定情報」と、「画素値」及び「距離」を組にした「単位データ」が「第1の並び順を保持して」「配列された」「データ構造体」を含むことから、「画素値」及び「距離」を組にした「単位データ」が、「設定情報」に定められた並び順を保持して配列されたデータの並びからなるといえ、データの並びを規定する「データ構造」を有するものということができる。

(2)「プログラムに準ずるデータ構造」について
(2-1) 本願発明の「撮像画像のデータ構造」に関連する情報処理は、上記1(2)のとおりである。すなわち、
構成B1の情報処理は、「撮像画像の前記画素値」と、「前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした」「単位データ」を、「第1の並び順を保持して配列する」ことにより「データ構造体」を生成するというものである。
また、構成B2の情報処理は、「設定情報」を用いて、「単位データ」が配列された「データ構造体」を「読み込」み、「算出され」た「対象物上の点の位置情報」について、当該「位置情報を含む点データ」を「第1の並び順で」「配列」して「点群データ」を「生成」する情報処理である。

(2-2) そうすると、本願発明において、構成A1の「設定情報」、構成B1を踏まえた構成A2の「単位データ」が配列された「データ構造体」が有するデータ要素間の関係により定められる情報処理とは、
(i)画素値と距離を組にした単位データを第1の並び順を保持して配列することで、データ構造体を生成すること、
(ii)設定情報を用いて、(i)の単位データを配列したデータ構造体を読み込んで、算出された対象物の位置情報を含む点データを第1の並び順で配列して点群データを生成すること、
である。
すなわち、本願発明における「設定情報」と、「単位データ」が配列された「データ構造体」からなる「データ構造」が有するデータ要素間の関係により定められる情報処理は、
・上記(i)の所定のデータ要素を組にした単位データを配列して、
・上記(ii)の算出された対象物の位置情報を含む点データを配列して、点群データを生成する、
というものである。

(2-3) よって、本願発明の「撮像画像のデータ構造」は、
・所定のデータ要素を組にした単位データを配列した結果のデータであるデータ構造体、
および
・当該配列したデータに異なるデータを含めて配列することで、別のデータ(点群データ)を生成する時に用いられるデータである設定情報、
の組からなるデータ群、を定めたものにすぎない。
そして、このようなデータ構造は、コンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有していない、すなわち、何ら電子計算機による処理を規定するものではない。
したがって、本願発明の「撮像画像のデータ構造」は、特許法第2条第4項に規定された「プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう)その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの」ということはできない。

(2-4) そして、本願発明の「撮像画像のデータ構造」に関連する情報処理については、上記1(2)のとおりであって、「画像処理部」により「第1の並び順を保持して配列されることにより生成され」た情報であるという、「データ構造体」を生成するときの処理が特定されたものにすぎないものであり、「画像処理部」に用いられる「点群データが生成されるときに用いられる」ときに供される情報にすぎず、「対象物上の点の位置情報が算出され」、「位置情報を含む点データが」「第1の並び順で配列されて点群データが生成される」いう用途を記載したに過ぎない。

(2-5) 以上のことから、本願発明は、全体としてみて、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定するものではなく、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものであって、特許法第2条柱書きにおける「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。

3.審判請求書の主張について
請求人は、令和2年4月20日の審判請求書の「4 本願発明が特許されるべき理由」において、
「4 本願発明が特許されるべき理由
請求項18に係るデータ構造は、請求項に記載された、撮像画像が、前記撮像画像における画素値の並び順、及び前記撮像画像における画素の読み出し順を含む第1の並び順を定めた設定情報と、前記第1の並び順を保持して前記画素値が配列されたデータ構造体と、を含むという当該データ構造のデータ要素間の関係により定まる、「前記データ構造体は、前記画像処理部により、対象物を所定の視点から撮像した前記撮像画像と、前記所定の視点から前記対象物上の点までの距離の測定結果とを用いて、前記撮像画像の前記画素値、及び前記画素値に対応する前記対象物上の点から前記所定の視点までの距離を組にした単位データが、前記第1の並び順を保持して配列されることにより生成され」、「前記設定情報は、前記画像処理部により、前記データ構造体が読み込まれ、前記対象物上の点の位置情報が算出され、前記位置情報を含む点データが前記第1の並び順で配列されて点群データが生成されるときに用いられる」というコンピュータによる情報処理を可能とするデータ構造であるといえます。
よって、当該データ構造は、プログラムに準ずるデータ構造です。
そして、請求項18の記載から、データ構造体の生成、及び点群データの生成という使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって実現されていると判断できます。
そのため、当該データ構造は、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって使用目的に応じたコンピュータの動作方法を構築するものです。
したがって、プログラムに準ずるデータ構造が規定する情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているから、請求項18に係るデータ構造は、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、「発明」に該当します。」
と主張している。

しかしながら、上記2.の(2)(2-3)において判断したとおり、本願の請求項18において、
本願発明の「データ構造」は、所定のデータ要素を組にした単位データを配列した結果のデータである「データ構造体」、および当該配列したデータに異なるデータを含めて別のデータを配列する時に用いられるデータである「設定情報」、の組からなるデータ群、を定めたものにすぎない。
そして、このようなデータ構造が、コンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有していない、すなわち、何ら電子計算機による処理を規定するものではなく、特許法第2条第4項に規定された「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」ということはできない。
また、本願発明の「データ構造」に関連する情報処理については、上記2.の(2)(2-4)のとおりであって、「データ構造体」を生成するときの処理が特定されたもの、および「点群データが生成されるときに用いられる」ときに供される情報にすぎず、「対象物上の点の位置情報が算出され」、「位置情報を含む点データが」「第1の並び順で配列されて点群データが生成される」いう用途を記載したに過ぎない。
以上のことから、本願発明は、全体としてみて、上記2.の(2-5)のとおり、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定するものではなく、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものであって、特許法第2条柱書きにおける「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。
したがって、請求人の審判請求書による上記主張は、採用することができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明の「撮像画像のデータ構造」は、「情報の単なる提示」を行うものであるから、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、本願はその他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-19 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2018-504410(P2018-504410)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 久博  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
千葉 輝久
発明の名称 撮像装置、画像処理装置、画像処理プログラム、データ構造、及び撮像システム  
代理人 西 和哉  

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