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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1374182
審判番号 不服2020-7553  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-03 
確定日 2021-05-13 
事件の表示 特願2017-196628「電流検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開、特開2019- 70578〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月10日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和元年 7月 5日付け :拒絶理由通知書
令和元年 9月17日 :手続補正書、意見書の提出
令和2年 2月26日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:令和2年3月3日)
令和2年 6月 3日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和2年 8月31日付け :前置報告書
令和2年10月 8日 :上申書の提出


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正である。本件補正前(令和元年9月17日の手続補正後をいう。以下同じ。)及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正前
「【請求項1】
互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触しつつ他の一部分同士が非接触となることで、一部にエアギャップを有した環状の磁気回路を被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成する一対の磁性体コア部材と、
前記エアギャップ内に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路と、
前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段と
を備えた電流検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出器において、
前記一対の磁性体コア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記板状の部位を重ね合わせ方向に挟み込む外力を加えることで互いに圧着させることを特徴とする電流検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電流検出器において、
前記一対の磁性体コア部材を組み合わせ状態で内側に収容し、外側に前記二次巻線を保持するボビン部材をさらに備え、
前記圧着手段は、
前記ボビン部材と一体に成形されることで、前記一対の磁性体コア部材の収容に伴い圧着させる力を発生させることを特徴とする電流検出器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電流検出器において、
前記一対の磁性体コア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記板状の部位が互いに分離した状態で重ね合わせ方向に凸形状をなし、重ね合わせ状態に保持されることで相互に圧着する力を発生する湾曲部として形成されていることを特徴とする電流検出器。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触しつつ他の一部分同士が非接触となることで、一部にエアギャップを有した環状の磁気回路を被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成する一対の磁性体コア部材と、
前記エアギャップ内に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路と、
前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定の同一箇所で挟み込み、互いに圧着させる対向した力を発生させる金属製クリップからなる圧着手段と
を備えた電流検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出器において、
前記一対の磁性体コア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記板状の部位を重ね合わせ方向に挟み込む外力を加えることで互いに圧着させることを特徴とする電流検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電流検出器において、
前記一対の磁性体コア部材を組み合わせ状態で内側に収容し、外側に前記二次巻線を保持するボビン部材をさらに備え、
前記圧着手段は、
前記ボビン部材と一体に成形されることで、前記一対の磁性体コア部材の収容に伴い圧着させる力を発生させることを特徴とする電流検出器。
【請求項4】
互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触しつつ他の一部分同士が非接触となることで、一部にエアギャップを有した環状の磁気回路を被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成する一対の磁性体コア部材と、
前記エアギャップ内に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路と、
前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定の同一箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段とを備え、
前記一対の磁性体コア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記一対の磁性体コア部材それぞれの前記板状の部位が互いに分離した状態で重ね合わせ方向に対称な凸形状をなし、重ね合わせ状態に保持されることで相互に圧着する力を発生する湾曲部として形成されていることを特徴とする電流検出器。」


2 本件補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した事項である「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段」を、「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定の同一箇所で挟み込み、互いに圧着させる対向した力を発生させる金属製クリップからなる圧着手段」として限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
次に示す刊行物の公知日はいずれも本願の出願より前である。
1.特開2014-70914号公報
3.特開平1-220105号公報(周知技術を示す文献;前置報告書で新たに引用された文献)
4.特開平8-83405号公報(周知技術を示す文献;前置報告書で新たに引用された文献)

(3)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1(特開2014-70914号公報)
(ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0001】
本発明は、導体を流れる電流を非接触で検出するための、磁気平衡式の電流センサに関する。」

「【0027】
本実施形態の電流センサ1は、磁気平衡式の電流センサであり、所定の間隔に設定されたギャップ2を磁路上に有する正面視ほぼC字状の磁性体コア3と、磁性体コア3の図示の上辺部分に装着された絶縁性を有するボビン4と、ボビン4の外周面に巻き付けられたコイル5と、磁束を電気信号として検出する磁気センサ6とを備えている。
磁性体コア3は、第1分割コア3Aと第2分割コア3Bの2つに分割構成されており、これらの分割コア3A,3Bは、正面視ほぼコの字状に形成されている。
【0028】
第1分割コア3Aは、方向Xに長い接合アーム8Aと、接合アーム8Aの左端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Aと、縦辺部9Aの下端から方向Xの右方に延びる下辺部10Aとを一体に有し、下辺部10Aは接合アーム8Aのほぼ半分程度の長さである。
第2分割コア3Bは、方向Xに長い接合アーム8Bと、接合アーム8Bの右端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Bと、縦辺部9Bの下端から方向Xの左方に延びる下辺部10Bとを一体に有し、下辺部10Bは接合アーム8Bのほぼ半分程度の長さである。
【0029】
なお、第2分割コア3Bにおける縦辺部9Bの上端部には、第1分割コア3Aの接合アーム8Aの先端面が突き当たる、ほぼ長方形状の突出部11が形成されている。
各分割コア3A,3Bにおいて、接合アーム8A,8Bの厚さ方向Yの寸法は、分割コア3A,3Bの他の部分の厚さ寸法に比べて小さい。また、接合アーム8A,8Bの接合面12は、接合アーム8A,8Bの長手方向Xに延び、かつ、法線方向nが接合アーム8A,8Bの厚さ方向Yに向く平面よりなる。
【0030】
従って、接合面12同士を互いに接合させて各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8Bを厚さ方向Yに重ね合わせると、図2(a)に示すように、下辺部10A,10Bの端面間でギャップ2が形成された、ほぼC字状の磁性体コア3が構成される。
また、図2(b)に示すように、第1分割コア3Aの接合アーム8Aを左側の開口からボビン4に挿入し、第2分割コア3Bの接合アーム8Bを右側の開口からボビン4に挿入すると、各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8B が、ボビン4の内部において厚さ方向Yに重ね合わさった状態となる。」

「【0034】
磁気センサ6は、例えばホール素子、磁気インピーダンス素子又はフラックスゲート等よりなる。
図示していないが、磁気センサ6の出力は増幅回路(図示せず)によって増幅され、増幅回路が出力する増幅信号は、コイル5の一端にフィードバックされている。これにより、磁気センサ6からの出力を増幅したキャンセル電流が、コイル5に通電されるようになっている。
【0035】
すなわち、本実施形態の電流センサ1では、磁性体コア3に挿通された導電部材に被測定電流が流れると、電流に応じた磁界によって磁気センサ6に出力電圧が発生し、その電圧信号が増幅回路によって電流に変換され、コイル5にフィードバックされる。
この際、コイル5に生じるキャンセル磁界と被測定電流により生じる磁界が打ち消し合い、ギャップ2内の磁界が常にゼロになるように、コイル5に流れるキャンセル電流を電圧に変換することにより、被測定電流の測定が行われる。」

「【0038】
図1に示すように、板ばね部材15は、中空部13に挿通された2つの接合アーム8A,8Bのうちの一方(図例では上側の接合アーム8A)の背面に当接し弾性変形し、一方の接合アーム8Aを常に他方の接合アーム8B側に押圧する。
このため、板ばね部材15は、ボビン4に挿入された一方の接合アーム8Aの接合面12を、他方の開口からボビン4に挿入された他方の接合アーム8Bの接合面12に圧接させる「押圧部材」として機能している。」

「【0054】
〔第4実施形態〕
図5(a)は、第4実施形態に係る電流センサ1の正面図であり、図5(b)は、その電流センサ1の平面図である。図5(a)では、ボビン4は断面図で示されている。
第4実施形態の電流センサ1が第2実施形態(図3)の電流センサ1と異なる点は、ボビン4の中空部13に上下1対設けられる押圧部材が、板ばね部材15ではなく、ボビン4とは別体のクリップ部材20よりなる点にある。
【0055】
すなわち、図5(a)に示すように、上側のクリップ部材20は、その基端部をボビン4の左側開口縁に形成された凹部に嵌合させて取り付けられており、上側の接合アーム8Aの背面を上方から押圧している。
また、下側のクリップ部材20は、その基端部をボビン4の右側開口縁に形成された凹部に嵌合させて取り付けられており、下側の接合アーム8Bの背面を下方から押圧している。」

「【図2】



「【図5】



図6(a)の記載から、磁気センサ6がギャップ2内に配置されていることが読み取れる。

(イ)引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「方向Xに長い接合アーム8Aと、接合アーム8Aの左端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Aと、縦辺部9Aの下端から方向Xの右方に延びる下辺部10Aとを一体に有する第1分割コア3A、及び、方向Xに長い接合アーム8Bと、接合アーム8Bの右端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Bと、縦辺部9Bの下端から方向Xの左方に延びる下辺部10Bとを一体に有する第2分割コア3Bが(【0028】)、接合面12同士を互いに接合させて各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8Bを厚さ方向Yに重ね合わせることにより構成される、下辺部10A,10Bの端面間でギャップ2が形成された、ほぼC字状の磁性体コア3(【0030】、図2(a)(b))と、
前記ギャップ2内に配置された磁気センサ6であるフラックスゲートと、(【0034】、図6(a))
各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8Bが、その内部において厚さ方向Yに重ね合わさった状態となるボビン4の外周面に巻き付けられたコイル5と、(【0027】、【0030】)
一方の接合アーム8Aの接合面12を、他方の接合アーム8Bの接合面12に圧接させる「押圧部材」として機能する(【0038】)、ボビン4とは別体のクリップ部材20(【0054】)であって、上側のクリップ部材20は上側の接合アーム8Aの背面を上方から押圧し、下側のクリップ部材20は下側の接合アーム8Bの背面を下方から押圧するクリップ部材20(【0055】、図5(a))と
を有する電流センサ(【0001】)であって、
磁性体コア3に挿通された導電部材に被測定電流が流れると、電流に応じた磁界によって磁気センサ6に出力電圧が発生し、その電圧信号が増幅回路によって電流に変換され、コイル5にフィードバックされ、コイル5に生じるキャンセル磁界と被測定電流により生じる磁界が打ち消し合い、ギャップ2内の磁界が常にゼロになるように、コイル5に流れるキャンセル電流を電圧に変換することにより、被測定電流の測定が行われる(【0035】)
電流センサ。」

イ 引用文献3及び引用文献4
引用文献3(特開平1-220105号公報)には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
(第2ページ右上欄8行目?同12行目)
「 この発明に係る磁気ヘッドのコア装置は,コアの第1?第3脚の側面に当接するバックバーを,それぞれ第1?第3脚に対面する第1?第3押圧片を有するホルダにより押圧するようにしたものである。」

(第2ページ右上欄下から2行目?同左下欄7行目)
「 第1図及び第2図はこの発明の一実施例を示す図で,第1図は斜視図、第2図は組立説明用分解斜視図であり,従来装置と同様の部分は同一符号により示す。
図中,(4a),(4B)は第1?第3脚(1a)?(1c)の両側面に当接するバックバー,(8)は形状記憶合金板,リン青銅版,ステンレス鋼板等で形成されバックバー(4A),(4B)を第1?第3脚(1a)?(1c)に押圧するホルダで・・・」

(第2ページ右下欄下から7行目?同下から1行目)
「 以上説明したとおりこの発明では,コアの第1?第3脚の側面に当接するバックバーを,それぞれ第1?第3脚に対面する第1?第3押圧片を有するホルダにより押圧するようにしたので,コアの脚部とバックバーの密着度は上がり,磁気ヘッドの動特性を改善して,良品率を向上させることができる効果がある。」

「第1図



「第2図



引用文献4(特開平8-83405号公報)には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【0023】図1乃至図6は本発明の第1実施例を示しており、これらの図において、1は非磁性セラミック等で分割形成されているスライダであり、2は該スライダ1に固定されているフェライトコア等のフロントコア、3A,3Bはフロントコア2の脚部に装着する一対のコイル、4はフェライトコア等のバックコア、そして5は前記フロントコア2にバックコア4を接合するためのバックコアクリップである。」

「【0027】前記バックコアクリップ5は、非磁性かつ導電性を有する弾性材質(例えば、Be-Cu合金、ステンレス鋼、その他の銅合金)を折り曲げ加工して形成されており、図4に示すように、フロントコア2及びバックコア4にそれぞれ圧接するように相互に対向し、内向きに凸となった湾曲面35を有するコア押さえ部36と、両方のコア押さえ部36を連絡する背面部37とを
有する断面略コ字状ばね部材である。また、図5のように前記背面部37の中間部には円形状窓部38が形成されている。
【0028】フロントコア2へのバックコア4の接合は、バックコア4をボビン20A,20B上面に載置し、フロントコア2とバックコア4の上面が面一になるようにフロントコア2の上端部側面にバックコア4の側面を接面し、フロントコア2の非磁性層18とバックコア4の非磁性層32の位置を合わせた状態で、上方から一対のコア押さえ部36で両コア2,4を挟み込む如くバックコアクリップ5を嵌める。フロントコア2及びバックコア4の外側の側面に接するコア押さえ部36はその湾曲面35の弾性力によりフロントコア2及びバックコア4を圧接、挟持し、両者は密接された状態で保持される。この取り付け作業は、図5に示すように、背面部37に形成された円形状窓部38からフロントコア2とバックコア4との対接部分の中間部が露出しているので、両コア2,4の非磁性層18,32の接合部を顕微鏡等を通して観察しながら取り付け位置を正しく調整して行うことができる。」

「【図1】



「【図4】



前記(ア)(イ)の記載から、以下の技術事項は周知であるといえる。

「磁性体コアを形成する対の部材を押圧して密着保持する金属製クリップ」


(4)対比

本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 本件補正発明の「方向Xに長い接合アーム8Aと、接合アーム8Aの左端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Aと、縦辺部9Aの下端から方向Xの右方に延びる下辺部10Aとを一体に有する第1分割コア3A」及び「方向Xに長い接合アーム8Bと、接合アーム8Bの右端から方向Yの下方に延びる縦辺部9Bと、縦辺部9Bの下端から方向Xの左方に延びる下辺部10Bとを一体に有する第2分割コア3B」は、それぞれの「接合面12同士を互いに接合させて各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8Bを厚さ方向Yに重ね合わせることにより」「下辺部10A,10Bの端面間でギャップ2が形成された、ほぼC字状の磁性体コア3」を構成するものであり、またこの「磁性体コア3に挿通された導電部材に被測定電流が流れる」ようにされるものである。
したがって、引用発明の上記「第1分割コア3A」及び「第2分割コア3B」は、本件補正発明の「互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触しつつ他の一部分同士が非接触となることで、一部にエアギャップを有した環状の磁気回路を被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成する一対の磁性体コア部材」に相当する。

イ 引用発明の「前記ギャップ2内に配置された磁気センサ6であるフラックスゲート」は、本件補正発明の「前記エアギャップ内に配置されたプローブコイル」に相当する。

ウ 引用発明における「各分割コア3A,3Bの接合アーム8A,8B が、その内部において厚さ方向Yに重ね合わさった状態となるボビン4の外周面に巻き付けられたコイル5」は、「コイル5に生じるキャンセル磁界と被測定電流により生じる磁界が打ち消し合い、ギャップ2内の磁界が常にゼロになるように、」「キャンセル電流」が流されるものであるから、本件補正発明における「被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線」に相当する。

エ 引用発明において「一方の接合アーム8Aの接合面12を、他方の接合アーム8Bの接合面12に圧接させる「押圧部材」として機能する、ボビン4とは別体のクリップ部材20であって、上側のクリップ部材20は上側の接合アーム8Aの背面を上方から押圧し、下側のクリップ部材20は下側の接合アーム8Bの背面を下方から押圧するクリップ部材20」の「上側のクリップ部材20」及び「下側のクリップ部材20」は、それぞれ所定の箇所において「接合アーム8Aの接合面12を、」「他方の接合アーム8Bの接合面12に圧接させる」ものである。
したがって、引用発明の「上側のクリップ部材20」及び「下側のクリップ部材20」と、本件補正発明の「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定の同一箇所で挟み込み、互いに圧着させる対向した力を発生させる金属製クリップからなる圧着手段」とは、「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段」である点で共通する。

オ 引用発明の「電流センサ」は、本件補正発明における「電流検出器」に相当する。

(5)一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触しつつ他の一部分同士が非接触となることで、一部にエアギャップを有した環状の磁気回路を被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成する一対の磁性体コア部材と、
前記エアギャップ内に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段と
を備えた電流検出器。」

イ 相違点
(ア)相違点1
本件補正発明は「前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路」を備えるとされているのに対し、引用発明においてそのような検出回路の構成は明示されていない点。

相違点2
本件補正発明において、「圧着手段」は磁性体コア部材を「同一箇所で挟み込」む「金属製クリップからなる」とされているのに対し、引用発明の「クリップ部材」は「同一箇所で挟み込」むものではなく、また「金属製」であるかどうかも不明である点。

(6)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明は、
「磁性体コア3に挿通された導電部材に被測定電流が流れると、電流に応じた磁界によって磁気センサ6に出力電圧が発生し、その電圧信号が増幅回路によって電流に変換され、コイル5にフィードバックされ、コイル5に生じるキャンセル磁界と被測定電流により生じる磁界が打ち消し合い、ギャップ2内の磁界が常にゼロになるように、コイル5に流れるキャンセル電流を電圧に変換することにより、被測定電流の測定が行われる電流センサ」
であるから、「ギャップ2内の磁界が常にゼロになるように、コイル5に流れるキャンセル電流」に基づいて、被測定電流に応じた信号を出力するための回路構成を備えていることは明らかといえる。そして、該回路構成は本件補正発明の「前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路」に相当する。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
前記(3)(ウ)に示したように、「磁性体コアを形成する対の部材を押圧して密着保持する金属製クリップ」は周知であり、これは引用発明において磁性体コアの「一方の接合アーム8Aの接合面12を、他方の接合アーム8Bの接合面12に圧接させる「押圧部材」として機能する」ものである「クリップ部材20」と技術分野及び機能を共通とするものであるといえる。
したがって、引用発明の「クリップ部材20」に換えて、上記周知の金属製クリップを採用することは、当業者にとっては、容易に想到し得る設計変更にすぎない。そして、その結果、第1分割コアと第2分割コアを「同一箇所で挟み込む」ようになるから、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果には、引用発明と周知の技術事項から予測されるものを超える格別顕著なものは認められない。

(7)独立特許要件についての判断のまとめ
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、前記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1から請求項4に係る発明(以下、請求項の番号にしたがって「本件発明1」などという。)は、前記第2の1(1)の請求項1から請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由2、3の概要
理由2
本件発明1?3は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3
本件発明1?3は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
本件発明4は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

1.特開2014-70914号公報
2.特開2013-64608号公報

3 引用文献に記載された発明等
上記引用文献1には、前記第2の3(3)ア(イ)において記載したとおりの引用発明が記載されている。

4 対比・判断
(1) 引用発明との相違点
本件発明1は、本件補正発明における「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定箇所にて互いに圧着させる対向した力を発生させる圧着手段」を、「前記一対の磁性体コア部材を接触する一部分同士の所定の同一箇所で挟み込み、互いに圧着させる対向した力を発生させる金属製クリップからなる圧着手段」とする限定を省いたものである。
したがって、本件発明1と引用発明の相違点は、前記第2の3(5)イ(ア)の相違点1のみである。

(2)判断
ア 相違点1について
前記第2の3(6)アに示した理由と同様の理由により、相違点1は実質的な相違点ではない。


第4 むすび
以上のとおり、本件発明1は、特許法29条1項3号に該当すること、又は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-05 
結審通知日 2021-03-09 
審決日 2021-03-25 
出願番号 特願2017-196628(P2017-196628)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 浩史  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
中塚 直樹
発明の名称 電流検出器  
代理人 山崎 崇裕  
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