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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1374183
審判番号 不服2020-7805  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-05 
確定日 2021-05-13 
事件の表示 特願2017-204100号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開、特開2019- 76260号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月21日の出願であって、令和1年7月25日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、令和2年3月3日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年6月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和1年10月4日付けの手続補正において、

「【請求項1】
大当たり抽選を含む各抽選を実行し、抽選結果に基づいて遊技の進行を制御すると共に、遊技の進行に関わる遊技コマンド、及び遊技の進行と無関係な特殊コマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と、
画像を表示すると共に音を出力する演出手段と、
前記主制御手段、または、前記複数種類のコマンドを生成し得る外部制御手段におけるコマンドを受信し、受信したコマンドに基づいて前記演出手段の制御内容を決定し、この決定に従って前記演出手段を制御する演出制御手段と、
前記主制御手段の設定に関わる操作を行う操作手段と
を備える遊技機であって、
前記主制御手段及び前記演出制御手段の各々は、電源投入を契機とした独立した動作が可能であり、
前記主制御手段は、前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合、前記抽選に関わる設定に関する設定モードに移行し、
前記演出制御手段は、前記主制御手段が前記設定モードになっている間、所定の画像を前記演出手段に表示させる手段を備え、
前記演出制御手段は、前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合、前記所定の画像の少なくとも一部に前記特殊コマンドに対応する画像を重ねて表示させることを特徴とする遊技機。」

とあったものを、

「【請求項1】
A 大当たり抽選を含む各抽選を実行し、抽選結果に基づいて遊技の進行を制御すると共に、遊技の進行に関わる遊技コマンド、及び遊技の進行と無関係な特殊コマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と、
B 画像を表示すると共に音を出力する演出手段と、
C 前記主制御手段、または、前記複数種類のコマンドを生成し得る外部制御手段におけるコマンドを受信し、受信したコマンドに基づいて前記演出手段の制御内容を決定し、この決定に従って前記演出手段を制御する演出制御手段と、
D 前記主制御手段の設定に関わる操作を行う操作手段と
E を備える遊技機であって、
F 前記主制御手段及び前記演出制御手段の各々は、電源投入を契機とした独立した動作が可能であり、
G 前記主制御手段は、前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合、前記抽選に関わる設定に関する設定モードに移行し、設定変更コマンドを送信し、
H 前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっているが、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし、
I 前記演出制御手段は、前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ前記主制御手段が前記設定モードになっている間、所定の画像を前記演出手段に表示させる手段を備え、
J 前記演出制御手段は、前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合、前記所定の画像の少なくとも一部に前記特殊コマンドに対応する画像を重ねて表示させることを特徴とする遊技機。」

と補正するものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?Jは、分説するため当審で付した。)。

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合」の「前記主制御手段」の処理について、「設定変更コマンドを送信し」との限定を付加するとともに、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「設定モード」について、「前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっているが、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし」との限定を付加し、加えて補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「所定の画像を前記演出手段に表示させる手段」について、「前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ」との限定を付加するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(2)新規事項
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0181】、【0257】、【0342】?【0343】等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に公開された特開2015-195863号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。

ア 「【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
<遊技機の構造>
図1?図3を用いて、第1実施形態における遊技機1の構造について具体的に説明する。図1は、遊技機1の正面図の一例を示す図である。遊技者は、遊技媒体(例えばメダルや遊技球)を用いて遊技機1で遊技する。本実施形態においては、遊技媒体としてメダルが使用される遊技機1(パチスロ機)を例示する。」

イ 「【0055】
図2に示すように、キャビネット2の内部には、設定表示部36および設定変更ボタン37とが形成される。設定表示部36は、遊技機1に設定される設定値を表示する。設定値とは、遊技機1の出玉率に関する数値であり、各遊技において設定値に応じた確率で各種の抽選が実行される。例えば、設定値は「1」から「6」までが設けられ、設定値「6」が設定されている場合が最も出玉率が高くなる。本実施形態においては、設定変更用の鍵穴(図示略)に設定変更キー(図示略)を挿入して回転した場合に、設定表示部36は、設定値に対応する数値を表示する。
【0056】
設定変更ボタン37は、設定表示部36の数値を変更させる場合に操作される。例えば、設定表示部36に数値「1」が表示されている状態において、設定変更ボタン37が操作されると、設定表示部36に数値「2」が表示される。以降、設定変更ボタン37が操作される毎に、設定表示部36は、数値を1づつ加算して表示する。ただし、設定表示部36に数値「6」が表示されている状態において、設定変更ボタン37が操作された場合、設定表示部36には数値「1」が表示される。設定表示部36に設定値が表示される期間において、例えば、スタートレバー24が操作されると、当該操作の時点で設定表示部36に表示されている数値が設定値として設定される。」

ウ 「【0062】
<メイン制御基板>
メイン制御基板は、図6に示すように、メインCPU301とメインROM302とメインRAM303と乱数発生器304とI/F(インターフェース)回路305とを含んで構成される。なお、メインCPU301とメインROM302とメインRAM303とを、別体の電子機器として具備してもよいし、各要素が一体的に構成されたワンチップ型のマイクロコンピュータとして具備してもよい。
・・・・・
【0064】
メインCPU301は、メインROM302に記憶されている制御プログラムを読み込み、遊技の進行に合わせて所定の処理を行うことにより、サブ制御基板400と各リール12とホッパー520とメイン表示器MLとを含む各種の機器を制御する。
・・・・・
【0068】
I/F回路305は、メイン表示器ML、ホッパー520および各リール12を駆動させる各種の信号をメイン制御基板300の外部に出力する。また、I/F回路305は、サブ制御基板400に各種のコマンドを出力する。なお、不正なコマンドがメイン制御基板に入力されることを防止するため、サブ制御基板400からのコマンドは、メイン制御基板300で受信されない。」

エ 「【0086】
<サブ制御基板>
サブ制御基板400は、液晶表示装置30、スピーカ(31、32)および各ランプ(例えば演出用ランプ28)を制御する。図6に示すように、サブ制御基板400は、演出制御基板410と画像制御基板420とサウンド基板430とを含む複数の基板で構成される。また、サブ制御基板400には、演出ボタンスイッチ26SWと方向指定スイッチ27SWとを含む各種のセンサと、サイドランプ5と演出用ランプ28と停止操作順序表示ランプ29とレバー演出用ランプ42とを含む各種のランプが電気的に接続されている。
【0087】
演出制御基板410は、図6に示すように、I/F回路411とサブCPU412とサブROM413とサブRAM414とを含んで構成される。演出制御基板410(サブCPU412)は、サイドランプ5と演出用ランプ28と停止操作順序表示ランプ29とレバー演出用ランプ42とを含む各種のランプとサウンド基板430とを制御する。また、演出制御基板410は、画像制御基板420に対して、液晶表示装置30に画像を表示させるコマンドを与える。
・・・・・
【0089】
サブRAM414は、各種のデータを揮発的(一時的に)に格納するワーク領域として機能する。I/F回路411は、メイン制御基板300(I/F回路305)からのコマンドを受信する。I/F回路411で受信されたコマンドは、サブCPU412に供給される。I/F回路411が受信するコマンドは、例えば、有効ラインに停止した当選役の種別を示す表示当選役コマンドを含む。」

オ 「【0176】
<メインCPUが実行する各処理>
メインCPU301は、上述した各種のデータを参照して各種の処理を実行する。図31は、メインCPU301の起動処理のフローチャートである。メインCPU301は、リセット回路(図示略)からのリセット信号が入力された場合に起動処理を実行する。リセット回路は、メイン制御基板300に供給される電源電圧が所定の閾値を超えた場合に、リセット信号を出力する。例えば、電源スイッチ511SWがON状態になることでメイン制御基板300への電源電圧の供給が開始された場合に、起動処理が実行される。
・・・・・
【0178】
メインCPU301は、設定スイッチがON状態であるか否かを判定する(S2)。設定スイッチは、遊技機1の内部に設けられた鍵穴に設定キー(図示略)を挿入し回転した場合にON状態になる。メインCPU301は、設定スイッチがON状態であると判断した場合(S2:YES)、メインRAM303のコマンド格納領域に設定変更開始コマンドを設定し(S3)、図32に示す設定変更処理に移行する。」

カ 「【0185】
図32は、設定変更処理のフローチャートである。設定変更処理を開始すると、メインCPU301は、前面扉3が開放されているか否かを判定する(S11)。例えば、前面扉3が閉じている場合にOFF信号を出力し、前面扉3が開放されている場合にON信号を出力するドアセンサを設け、ドアセンサからの信号に応じて前面扉3が開放されているか否かをメインCPU301が判定する構成が採用され得る。上述した通り、設定スイッチ(設定キーの鍵穴)は、遊技機1の内部に設けられているため、設定変更処理は、前面扉3が開放されている期間に実行されるのが通常である。したがって、前面扉3が閉じた状態で設定変更処理が実行された場合は、不正行為により設定スイッチおよび電源スイッチSWのON信号が入力された場合が想定される。以上の事情を考慮して、前面扉3が開放されていないと判断した場合(S11:NO)、メインCPU301は、設定スイッチ異常フラグをON状態に設定し(S12)、設定スイッチエラー処理に移行する。設定スイッチエラー処理においては、遊技の進行が禁止される。また、設定スイッチエラー処理において、メインCPU301は、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドをサブ制御基板400に送信し、例えば、液晶表示装置30が警告画面を表示する構成としてもよい。設定スイッチ異常フラグは、起動処理が再度開始され、設定値変更処理が正常に実行された場合にクリアされる。
・・・・・
【0188】
ステップS16において、メインCPU301は、スタートレバー24が操作されたか否かを判定する。具体的には、メインCPU301は、スタートスイッチ24SWのON信号が入力されているか否かを判定する。図32から理解される通り、メインCPU301は、スタートレバー24が操作されたと判断するまで、ステップS13からステップS15までの処理を繰り返す(S16:NO)。以上の説明から理解される通り、設定変更ボタン37が操作されて表示設定値格納領域の数値がステップS15で加算される毎に、ステップS13で設定表示部36に表示される数値が加算される。
【0189】
一方で、スタートレバー24が操作されたと判断した場合(S16:YES)、メインCPU301は、設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定する(S17)。具体的には、メインCPU301は、表示設定値格納領域に格納されている数値を、メインRAM303の設定値格納領域に格納する。また、メインCPU301は、決定した設定値をサブ制御基板400に送信する。サブCPU412は、メインCPU301から受信した設定値をサブRAM414に記憶する。
【0190】
メインCPU301は、設定値を決定した場合、設定値変更処理を終了して遊技処理を実行する。メインCPU301は、設定変更処理の開始を示す設定変更開始コマンドをサブ制御基板400に送信し、設定変更処理の実行期間である旨をサブ制御基板400に報知させる。また、サブ制御基板400のサブCPU412は、決定された設定値を示す設定値コマンドを受信した場合に、設定変更処理の実行期間の報知を終了する。」

キ 「【0197】
メインCPU301は、乱数値R1および乱数値R2をメインRAM303に格納した後に、内部抽選処理(S106)を実行する。内部抽選処理においては、乱数発生器304が生成した乱数値R1と当選エリア抽選テーブル(図9から図13)とに基づいて、当選エリアを決定する。
・・・・・
【0234】
図41は、内部抽選処理のフローチャートである。メインCPU301は、内部抽選処理を開始すると、RT遊技状態に応じて当選エリア抽選テーブル(図9?図13)を設定する(S106-1)。・・・
・・・・・
【0239】
演算結果が負数であると判断した場合または全ての当選エリアが指定された場合、メインCPU301は、データ格納処理(S106-9)を実行する。具体的には、メインCPU301は、現在の当選エリアオフセット値をメインRAM303の当選エリア格納領域に格納する。例えば、減算結果が負数になった当選エリアオフセット値が「12」の場合は、数値「12」が当選エリア格納領域に格納される。また、メインCPU301は、データ格納処理において、当選エリアを示す当選エリアコマンドをメインRAM303のコマンド格納領域に格納する。また、データ格納処理において、メインCPU301は、RT遊技状態格納領域に格納されるRTフラグを示すRT種別コマンドをコマンド格納領域に格納する。データ格納処理を終了すると、メインCPU301は、内部抽選処理を終了する。」

ク 「【0300】
<サブCPUが実行する各処理>
図52は、サブCPU412のサブ起動処理のフローチャートである。サブCPU412は、リセット回路(図示略)からのリセット信号が入力された場合にサブ起動処理を実行する。リセット回路は、サブ制御基板400に供給される電源電圧が所定の閾値を超えた場合に、リセット信号を出力する。すなわち、例えば、電源スイッチSWが操作されてサブ制御基板400への電源電圧の供給が開始された場合に、サブ起動処理が実行される。」

ケ 「【0315】
図58は、演出内容決定処理のフローチャートである。サブCPU412は、演出内容決定処理を開始すると、メイン制御基板300から受信したコマンドが設定変更開始コマンドまたは設定値コマンドであるか否かを判定する(S401-1)。メイン制御基板300から受信したコマンドが設定変更開始コマンドまたは設定値コマンドであると判断した場合(S401-1:YES)、サブCPU412は、設定変更開始/終了処理(S401-2)に処理を移行する。
【0316】
設定変更開始コマンドを受信した場合、サブCPU412は、設定変更開始/終了処理を実行する。具体的には、サブCPU412は、設定変更開始/終了処理において、設定変更処理が実行中である旨を報知をする。例えば、サブCPU412は、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させ、各スピーカーから当該メッセージの音声を出力させる。また、設定値コマンドを受信したと判断した場合(すなわち、設定変更処理が終了した場合)、サブCPU412は、設定値コマンドが示す設定値をサブRAM414に格納して設定変更処理の報知を終了する。設定変更開始/終了処理を実行した後に、サブCPU412は、演出内容決定処理を終了する。
・・・・・
【0326】
受信したコマンドが払出開始コマンドまたは払出終了コマンドではないと判断した場合(S401-17:NO)、サブCPU412は、エラーコマンド(不正入賞コマンドなど)を受信したか否かを判断する(S401-19)。エラーコマンドを受信していないと判断した場合(S401-19:NO)、サブCPU412は、演出内容決定処理を終了する。一方で、エラーコマンドを受信したと判断した場合(S401-19:YES)、サブCPU412は、エラー報知処理(S401-20)を実行する。エラー報知処理において、サブCPU412は、例えば、受信したエラーコマンドが示すエラーの種別を液晶表示装置30に表示させる。エラー報知処理を実行した後に、サブCPU412は、演出内容決定処理を終了する。」

コ 「【0405】
(9)また、本発明は、上述したパチスロ機のみならず、パチンコ機、その他の遊技機、ゲーム機一般に適用することができる。」

サ 上記記載事項ウによれば、引用文献1の【0064】には、「メインCPU301は、・・・遊技の進行に合わせて所定の処理を行うことにより、・・・」と記載されている。また、上記記載事項キによれば、引用文献1の【0197】には、「メインCPU301は、・・・内部抽選処理(S106)を実行する。内部抽選処理においては、・・・当選エリアを決定する。」と記載され、同【0239】には、「内部抽選処理」の説明として、「メインCPU301は、データ格納処理において、当選エリアを示す当選エリアコマンドをメインRAM303のコマンド格納領域に格納する。」と記載されているから、引用文献1には、「当選エリアを決定する内部抽選処理を実行し、当選エリアを示す当選エリアコマンドをメインRAM303のコマンド格納領域に格納し、遊技の進行に合わせて所定の処理を行うメインCPU301」が記載されているといえる。
そして、上記記載事項コによれば、引用文献1の【0405】には、「本発明は、上述したパチスロ機のみならず、パチンコ機、その他の遊技機、ゲーム機一般に適用することができる。」と記載されているところ、大当たり抽選処理を含む複数の抽選処理が実行され、大当たり抽選結果等に基づいて遊技の進行が行われることは、パチンコ遊技機における自明の構成である。
そうすると、引用文献1には、「パチンコ機」の構成として、「大当たり抽選処理を含む複数の抽選処理を実行し、大当たり抽選結果を示すコマンドをメインRAM303のコマンド格納領域に格納し、大当たり抽選結果等に基づいて遊技の進行に合わせて所定の処理を行うメインCPU301」(認定事項サ)が記載されていると認められる。

シ 上記記載事項カによれば、引用文献1の【0189】には、「スタートレバー24が操作されたと判断した場合(S16:YES)、メインCPU301は、設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定する(S17)。・・・また、メインCPU301は、決定した設定値をサブ制御基板400に送信する。」と記載されている。
そして、上記記載事項コによれば、引用文献1の【0405】には、「本発明は、上述したパチスロ機のみならず、パチンコ機、その他の遊技機、ゲーム機一般に適用することができる。」と記載されているところ、パチンコ機は「スタートレバー24」を有しないが、パチンコ機においても「設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定する」ために、何らかの操作手段による操作が必要であることは明らかである。
また、上記記載事項イによれば、引用文献1の【0055】には、「各遊技において設定値に応じた確率で各種の抽選が実行される。」と記載されている。そして、各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行されることは、設定値を有するパチンコ遊技機における自明の構成である。
そうすると、引用文献1には、「パチンコ機」の構成として、「所定の操作手段が操作されたと判断した場合、メインCPU301は、設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定し、決定した設定値をサブ制御基板400に送信し、各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行される」こと(認定事項シ)が記載されていると認められる。

上記ア?コの記載事項及び認定事項サ?シを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?jは、本願補正発明の構成A?Jに対応させて付した。また、丸括弧内に引用文献1における引用箇所を示した。)。
なお、引用文献1の【0405】には、「本発明は、上述したパチスロ機のみならず、パチンコ機、その他の遊技機、ゲーム機一般に適用することができる。」と記載されているところ、パチスロ機とパチンコ機とが、メイン制御手段、サブ制御手段及び演出手段(液晶表示装置等)の基本的な関係に関する構成と、設定変更に関する構成として、共通の構成を有し得ることは当業者にとって明らかであるから、メイン制御手段、サブ制御手段及び演出手段の基本的な関係に関する構成と、設定変更に関する構成において、第1実施形態に記載されたパチスロ機と同様の構成を有するパチンコ機として、引用発明を認定した。

「a 大当たり抽選処理を含む複数の抽選処理を実行し、大当たり抽選結果を示すコマンドをメインRAM303のコマンド格納領域に格納し、大当たり抽選結果等に基づいて遊技の進行に合わせて所定の処理を行うメインCPU301と(認定事項サ)、サブ制御基板400に各種のコマンドを出力するI/F(インターフェース)回路305とを含んで構成されるメイン制御基板300と(【0062】、【0068】)、
bc メイン制御基板300のI/F回路305からのコマンドを受信するI/F回路411とサブCPU412とを含んで構成される演出制御基板410と、画像制御基板420とサウンド基板430とを含む複数の基板で構成され、液晶表示装置30、スピーカ(31、32)および各ランプを制御するサブ制御基板400と(【0086】、【0087】、【0089】、)、
d 設定変更キーを挿入して回転させる設定変更用の鍵穴と(【0055】)、設定表示部36の数値を変更させる場合に操作される設定変更ボタン37と(【0056】)、
e を備えるパチンコ機であって(【0405】)、
f メイン制御基板300への電源電圧の供給が開始された場合に、メインCPU301は起動処理を実行し(【0176】)、サブ制御基板400への電源電圧の供給が開始された場合に、サブCPU412はサブ起動処理を実行し(【0300】)、
g 起動処理において、メインCPU301は、遊技機の内部に設けられた鍵穴に設定キーを挿入し回転した場合にON状態になる設定スイッチがON状態であると判断した場合、メインRAM303のコマンド格納領域に設定変更開始コマンドを設定し、設定変更処理に移行し(【0176】、【0178】)、
h 設定変更処理において、設定変更ボタン37が操作されて表示設定値格納領域の数値が加算される毎に、設定表示部36に表示される数値が加算され(【0185】、【0188】)、所定の操作手段が操作されたと判断した場合、メインCPU301は、設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定し、決定した設定値をサブ制御基板400に送信し、各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行され(認定事項シ)、
i 設定変更開始コマンドを受信した場合、サブCPU412は、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させ、設定値コマンドを受信したと判断した場合(すなわち、設定変更処理が終了した場合)、サブCPU412は、設定変更処理の報知を終了し(【0316】)、
j 設定変更処理を開始すると、メインCPU301は、前面扉3が開放されているか否かを判定し、前面扉3が開放されていないと判断した場合、メインCPU301は、設定スイッチエラー処理に移行し、設定スイッチエラー処理において、メインCPU301は、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドをサブ制御基板400に送信し、液晶表示装置30が警告画面を表示する構成とし(【0185】)、エラーコマンドを受信したと判断した場合、サブCPU412は、エラー報知処理を実行する(【0326】)、パチンコ機(【0405】)。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Jについて、それぞれ(a)?(j)の見出しを付けて行った。)。

(a)引用発明の「大当たり抽選処理を含む複数の抽選処理を実行」することは、本願補正発明の「大当たり抽選を含む各抽選を実行」することに相当する。
そして、引用発明の「大当たり抽選結果等に基づいて遊技の進行に合わせて所定の処理を行う」ことは、本願補正発明の「抽選結果に基づいて遊技の進行を制御する」ことに相当する。
また、引用発明の「大当たり抽選結果を示すコマンド」は、遊技の進行に関わるものであることが当業者には明らかであるから、本願補正発明の「遊技の進行に関わる遊技コマンド」に相当する。
さらに、引用発明の「メインCPU301」は、「設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドをサブ制御基板400に送信」するものであるところ(構成j)、当該「エラーコマンド」は、本願補正発明の「遊技の進行と無関係な特殊コマンド」に相当する。
そして、引用発明の「メインCPU301と」「I/F(インターフェース)回路305とを含んで構成され」る「メイン制御基板300」は、「大当たり抽選結果を示すコマンド」及び「エラーコマンド」を送信するものといえるから、これらのコマンドを生成し得るものであることは明らかである。
してみると、引用発明の「メイン制御基板300」は、本願補正発明の「主制御手段」に相当するから、引用発明の構成a及び構成jは、本願補正発明の構成Aに相当する。

(b)引用発明の「液晶表示装置30、スピーカ(31、32)および各ランプ」は、本願補正発明の「画像を表示すると共に音を出力する演出手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bcは、本願補正発明の構成Bに相当する構成を有する。

(c)上記(a)で検討したとおり、引用発明の「メイン制御基板300」は、本願補正発明の「主制御手段」に相当するから、引用発明の「メイン制御基板300のI/F回路305からのコマンドを受信する」ことは、本願補正発明の「前記主制御手段」「におけるコマンドを受信」することに相当する。
また、引用発明の「液晶表示装置30、スピーカ(31、32)および各ランプを制御する」ことは、本願補正発明の「前記演出手段を制御する」ことに相当する。
そして、遊技機の技術分野において、サブ制御基板がメイン制御基板から受信したコマンドに基づいて各演出手段の具体的な制御内容を決定することは技術常識である。
してみると、引用発明の「サブ制御基板400」は、本願補正発明の「演出制御手段」に相当するから、引用発明の構成bcは、本願補正発明の構成Cに相当する構成を有する。

(d)引用発明は、「各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行され」るものであり(構成h)、「大当たり抽選処理を含む複数の抽選処理を実行」するのは、「メイン制御基板300」(本願補正発明の「主制御手段」に相当する。)であるから(構成a)、引用発明の「設定変更キーを挿入して回転させる設定変更用の鍵穴」は、本願補正発明の「前記主制御手段の設定に関わる操作を行う操作手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成dは、本願補正発明の構成Dに相当する。

(e)引用発明の「パチンコ機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当するから、引用発明の構成eは、本願補正発明の構成Eに相当する。

(f)引用発明の「メイン制御基板300への電源電圧の供給が開始され」ること、及び、「サブ制御基板400への電源電圧の供給が開始され」ることは、本願補正発明の「電源投入」に相当する。
また、引用発明は、「メイン制御基板300への電源電圧の供給が開始された場合に、メインCPU301は起動処理を実行し」、「サブ制御基板400への電源電圧の供給が開始された場合に、サブCPU412はサブ起動処理を実行」するものであるから、「メインCPU301」と「サブCPU412」は、電源電圧の供給が開始された場合に、それぞれ「起動処理」と「サブ起動処理」という「独立した動作」を行うものといえる。
そして、引用発明の「メインCPU301」は、「メイン制御基板300」に含まれるものであり(構成a)、同「サブCPU412」は、「サブ制御基板400」に含まれるものであるところ(構成bc)、上記(a)及び(c)で検討したとおり、引用発明の「メイン制御基板300」、「サブ制御基板400」は、それぞれ本願補正発明の「主制御手段」、「演出制御手段」に相当するものである。
してみると、引用発明の構成fは、本願補正発明の構成Fに相当する。

(g)上記(f)で検討したとおり、引用発明の「メイン制御基板300への電源電圧の供給が開始され」ることは、本願補正発明の「電源投入」に相当するところ、引用発明は、「メイン制御基板300への電源電圧の供給が開始された場合に、メインCPU301は起動処理を実行」するものである(構成f)。
また、上記(d)で検討したとおり、引用発明の「設定変更キーを挿入して回転させる設定変更用の鍵穴」は、本願補正発明の「操作手段」に相当するから、引用発明の「鍵穴に設定キーを挿入し回転した」状態は、本願補正発明の「前記操作手段」の「所定の状態」に相当する。
そうすると、引用発明の「起動処理において」「遊技機の内部に設けられた鍵穴に設定キーを挿入し回転した場合にON状態になる設定スイッチがON状態であると判断した場合」は、本願補正発明の「前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合」に相当する。
また、引用発明の「設定変更処理」は、「設定値」を「決定」するものであり、「各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行され」るから(構成h)、引用発明の「設定変更処理」を実行中のモードは、本願補正発明の「前記抽選に関わる設定に関する設定モード」に相当する。
そして、引用発明の「メインCPU301」は、「メイン制御基板300」に含まれるものであり(構成a)、上記(a)で検討したとおり、引用発明の「メイン制御基板300」は、本願発明の「主制御手段」に相当するから、引用発明の「メインCPU301は」「設定変更処理に移行」することは、本願発明の「前記主制御手段は」「設定モードに移行」することに相当する。
さらに、引用発明の「メインCPU301は」「メインRAM303のコマンド格納領域に設定変更開始コマンドを設定」することは、メインRAM303のコマンド格納領域にコマンドを設定すれば、その直後に当該コマンドが「サブ制御基板400」に送信されることは技術常識であるから、本願補正発明の「前記主制御手段は」「設定変更コマンドを送信」することに相当する。
してみると、引用発明の構成gは、本願補正発明の構成Gに相当する。

(h)上記(g)で検討したとおり、引用発明の「設定変更処理」を実行中のモードは、本願補正発明の「設定モード」に相当するから、引用発明の「設定変更処理において」という前提は、本願補正発明の「前記設定モードにおいて」という前提に相当する。
また、引用発明は、「設定変更処理において、設定変更ボタン37が操作されて表示設定値格納領域の数値が加算される毎に、設定表示部36に表示される数値が加算され」、「所定の操作手段が操作されたと判断した場合、メインCPU301は、設定表示部36に表示されている数値を設定値として決定」するから、設定変更処理において「設定値」を変更できるものである。
そして、引用発明は、「各図柄変動遊技において設定値に応じた確率で大当たり抽選が実行され」るものであるから、引用発明の「設定値」は、本願補正発明の「前記大当たり抽選の当選確率の設定」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明の構成Hと、「前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっている」点で共通する。

(i)引用発明の「設定変更開始コマンド」の「受信」、「「設定変更中です」というメッセージ」の「表示」は、それぞれ本願補正発明の「前記設定変更コマンドの受信」、「所定の画像の表示」に相当するから、引用発明の「設定変更開始コマンドを受信した場合」「液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させ」ることは、本願補正発明の「前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ」ることに相当する。
また、引用発明は、「設定変更開始コマンドを受信した場合、サブCPU412は、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させ、設定値コマンドを受信したと判断した場合(すなわち、設定変更処理が終了した場合)、サブCPU412は、設定変更処理の報知を終了」するものであるから、引用発明の「サブCPU412」は、メインCPU301による設定変更処理の実行中は、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させる設定変更処理の報知を実行するものといえる。
そうすると、引用発明の「サブCPU412」は、本願補正発明の「前記主制御手段が前記設定モードになっている間、所定の画像を前記演出手段に表示させる手段」としての機能を有している。
また、引用発明の「サブCPU412」は、「サブ制御基板400」に含まれるものであり(構成bc)、上記(c)で検討したとおり、引用発明の「サブ制御基板400」は、本願補正発明の「演出制御手段」に相当するものである。
してみると、引用発明の構成iは、本願補正発明の構成Iに相当する。

(j)上記(a)で検討したとおり、引用発明の「設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンド」は、本願補正発明の「前記特殊コマンド」に相当する。
また、引用発明は、「起動処理において、メインCPU301は、」「設定スイッチがON状態であると判断した場合、メインRAM303のコマンド格納領域に設定変更開始コマンドを設定し、設定変更処理に移行」するものであり(構成g)、「設定変更処理を開始すると、メインCPU301は、前面扉3が開放されているか否かを判定し、前面扉3が開放されていないと判断した場合、メインCPU301は、設定スイッチエラー処理に移行し、設定スイッチエラー処理において、メインCPU301は、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドをサブ制御基板400に送信」するものであるから、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドが送信されるのは、メインRAM303のコマンド格納領域に設定変更開始コマンドが設定された後、すなわち、設定変更開始コマンドが送信された後であるといえる。
そして、引用発明は、「設定変更開始コマンドを受信した場合、サブCPU412は、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージを表示させ」るものであるから(構成i)、サブCPU412が設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドを受信する場合に、すでに、液晶表示装置30に「設定変更中です」というメッセージが表示されていることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合」があることに相当する構成を有している。
また、引用発明は、「設定スイッチエラー処理において、メインCPU301は、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドをサブ制御基板400に送信し、液晶表示装置30が警告画面を表示する構成と」するものであるところ、引用発明の「警告画面」は、「設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンド」に対応するものといえるから、本願補正発明の「前記特殊コマンドに対応する画像」に相当する。
そして、引用発明の「サブCPU412」は、「エラーコマンドを受信したと判断した場合」「エラー報知処理を実行する」ものであるから、「警告画面を表示する」処理を実行するのがサブCPU412(を含むサブ制御基板400)であることは明らかである。
さらに、引用発明の「パチンコ機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成jは、本願補正発明の構成Jと、「前記演出制御手段は、前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合、前記特殊コマンドに対応する画像を表示させる遊技機」である点で共通する。

上記(a)?(j)により、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「A 大当たり抽選を含む各抽選を実行し、抽選結果に基づいて遊技の進行を制御すると共に、遊技の進行に関わる遊技コマンド、及び遊技の進行と無関係な特殊コマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と、
B 画像を表示すると共に音を出力する演出手段と、
C 前記主制御手段、または、前記複数種類のコマンドを生成し得る外部制御手段におけるコマンドを受信し、受信したコマンドに基づいて前記演出手段の制御内容を決定し、この決定に従って前記演出手段を制御する演出制御手段と、
D 前記主制御手段の設定に関わる操作を行う操作手段と
E を備える遊技機であって、
F 前記主制御手段及び前記演出制御手段の各々は、電源投入を契機とした独立した動作が可能であり、
G 前記主制御手段は、前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合、前記抽選に関わる設定に関する設定モードに移行し、設定変更コマンドを送信し、
H’ 前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっており、
I 前記演出制御手段は、前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ前記主制御手段が前記設定モードになっている間、所定の画像を前記演出手段に表示させる手段を備え、
J’ 前記演出制御手段は、前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合、前記特殊コマンドに対応する画像を表示させる遊技機。」

である点で一致し、構成H、Jに関する以下の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明では、「特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし」ている(構成H)のに対して、引用発明では、そもそも、変動パターン決定テーブルを有するのか明らかでない点。

(相違点2)
「前記所定の画像の表示中に受信したコマンドが前記特殊コマンドである場合、」「前記特殊コマンドに対応する画像を」「表示させる」構成について、本願補正発明では、「前記所定の画像の少なくとも一部に前記特殊コマンドに対応する画像を重ねて表示させる」(構成J)のに対して、引用発明では、設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンドがサブ制御基板400に送信された場合に、液晶表示装置30に警告画面が表示される際、「設定変更中です」というメッセージがどのように表示されるか明らかでない点。

(3)判断
ア 相違点1の判断について
相違点1について検討すると、パチンコ遊技機の技術分野において、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルを設け、これを設定値に応じて異なるものとしても、設定値によらずに共通なものとしてもよいことは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である(例えば、特開2011-206588号公報の【0170】には、「設定値毎に変動パターンテーブルを異ならせることなく、設定値に関わらず同一の変動パターンテーブルを用いるようにしてもよいし、複数の設定値のうち複数の設定値にて同一の変動パターンテーブルを用いるようにしてもよい。」と記載され、特開2003-205160号公報の【0122】には、「大当たり抽選確率の設定に応じて、リーチ発生の判定確率、変動パターンの選択率、演出パターンの選択率のうちの1つ又は2つのみを異ならせるようにしてもよい。」と記載され、同【図7】には、変動パターンの選択率が規定されたテーブルが記載されている。)。
引用発明と周知技術1とは、設定値を変更可能なパチンコ遊技機に関するという点で共通するものであるから、特別図柄の変動パターンを多様化して興趣を向上させるなどの観点から、引用発明に対して周知技術1を適用して、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルを設けるとともに、これを設定値によらずに共通なものとして、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2の判断について
相違点2について検討すると、遊技機の技術分野において、画像表示装置にて異常報知をする際に、既存の画像を消去せずに、既存の画像の少なくとも一部に異常報知の画像を重ねて表示することは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である(例えば、特開2009-273708号公報の【0498】には、「磁気異常報知指定コマンド受信フラグがセットされている場合には、・・・演出表示装置9において、そのときに表示されている画面に対して、磁気異常報知画面を重畳表示する指令をVDP109に出力する」と記載され、特開2017-51305号公報の【0390】には、「画像制御基板150は、画像表示装置31の表示画像としてメニュー画像を表示させているとき・・・に演出制御基板120が受信したコマンドが計数スイッチ断線エラーコマンドである場合、画像表示装置31におけるメニュー画像の表示を維持し、画面中央のメニュー画像に計数スイッチ断線エラーコマンドと対応するメッセージ画像を重ねて表示させる。」と記載されている。)。
そして、引用発明と周知技術2とは、画像表示装置にて異常報知を行う遊技機に関するという点で共通するものであるから、引用発明において、「設定スイッチの異常を報知させるエラーコマンド」に対応する「警告画面」を表示させる際、当該「警告画面」を表示する前に表示されている「設定変更中です」というメッセージ(所定の画像)に対して、周知技術2を適用して、その少なくとも一部と重ねて当該「警告画面」(特殊コマンドに対応する画像)を表示するようにして、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

ウ 本願補正発明の作用効果について
本願補正発明の作用効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「しかしながら、これらの引用文献には、補正後の請求項1に係る発明の特徴における、「前記主制御手段は、前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合、…設定変更コマンドを送信し、前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっているが、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし、前記演出制御手段は、前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ前記主制御手段が前記設定モードになっている間、所定の画像を前記演出手段に表示させる手段を備え」ることに相当する発明については記載されていない。よって、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献3-6に記載された技術に基づいて想到することは困難である。」(4頁28行?5頁8行)と主張している。
しかしながら、請求の主張する構成、とりわけ、「特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし」という構成は、上記アにて説示したとおり、引用発明に対して周知技術1を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年10月4日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1、3?6の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2015-195863号公報
3.特開2009-273708号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2017-51305号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-151874号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2009-172090号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(1)引用文献1に記載された事項」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「前記操作手段を所定の状態にして電源投入された場合」の「前記主制御手段」の処理に関して、「設定変更コマンドを送信し」との限定を省くとともに、構成要件である「設定モード」に関して、「前記設定モードにおいて、前記大当たり抽選の当選確率の設定を変更できるようになっているが、特別図柄の変動時に参照する変動パターン決定テーブルは共通とし」との限定を省き、加えて構成要件である「所定の画像を前記演出手段に表示させる手段」に関して、「前記設定変更コマンドの受信に応じて、所定の画像の表示を開始させ」との限定を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2[理由]3(2)」に記載した相違点2において相違し、その余の点で一致している。そして、相違点2は、上記「第2[理由]3(3)イ」にて説示したとおり、引用発明に対して周知技術2を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-16 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-23 
出願番号 特願2017-204100(P2017-204100)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 直行  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 小島 寛史
▲高▼木 尚哉
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所  

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