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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1374188
審判番号 不服2020-10172  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-20 
確定日 2021-05-13 
事件の表示 特願2018-117078「偏光フィルム、粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月26日出願公開、特開2019-219528〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2018-117078号は、平成30年6月20日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年 8月28日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月 1日提出:意見書
令和 元年11月 1日提出:手続補正書
令和 2年 4月14日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 7月20日提出:審判請求書
令和 2年 7月20日提出:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月20日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和元年11月1日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムが設けられている偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムは、その外縁の長辺Lが60?400mm及び短辺Wが30?300mmであり、
前記偏光フィルムは、欠け部を1つ以上有しており、
前記欠け部は、前記偏光フィルムの外縁に設けられており、
前記欠け部の形は、直線、又は直線と曲線の組合せにより構成されており、
前記欠け部の形を構成する2つの前記直線のなす角度θ_(1)は90°以上180°未満(ただし、90°を除く)であり、
前記欠け部は、前記角度θ_(1)である角を1つ以上有し、
前記欠け部が長辺L上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は下記式(1)を満足し、
前記欠け部が短辺W上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は下記式(2)を満足し、
前記欠け部が前記外縁の隅にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は0.2mm以上である、ことを特徴とする偏光フィルム。
R_(1)<(L_(1)-1)/2 (1)
L_(1):長辺L上における欠け部の長さ(mm)
R_(1)<(W_(1)-1)/2 (2)
W_(1):短辺W上における欠け部の長さ(mm)」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムが設けられている偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムは、その外縁の長辺Lが60?400mm及び短辺Wが30?300mmであり、
前記偏光フィルムは、欠け部を1つ以上有しており、
前記欠け部は、前記偏光フィルムの外縁に設けられており、
前記欠け部の形は、直線、又は直線と曲線の組合せにより構成されており、
前記欠け部の形を構成する2つの前記直線のなす角度θ_(1)は120°以上180°未満であり、
前記欠け部は、前記角度θ_(1)である角を1つ以上有し、
前記欠け部が長辺L上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は下記式(1)を満足し、
前記欠け部が短辺W上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は下記式(2)を満足し、
前記欠け部が前記外縁の隅にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は0.2mm以上である、ことを特徴とする偏光フィルム。
R_(1)<(L_(1)-1)/2 (1)
L_(1):長辺L上における欠け部の長さ(mm)
R_(1)<(W1-1)/2 (2)
W_(1):短辺W上における欠け部の長さ(mm)」

(3) 本件補正について
請求項1についてした本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「欠け部の形を構成する2つの前記直線のなす角度θ_(1)」について、「90°以上180°未満(ただし、90°を除く)である」とあったものを、「120°以上180°未満である」として下限値をより高い値とし、その角度範囲を限定する補正である。
また、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0007】?【0010】。)。
そうしてみると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1) 引用例2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2018-92119号公報(以下、「引用例2」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載したものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を付した。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶テレビ、有機ELテレビ又はスマートフォン等の画像表示装置を構成する光学部品の一つである。偏光板は、フィルム状の偏光子と、偏光子に重なる光学フィルム(例えば、保護フィルム)と、を備える。画像表示装置の設計上の理由から、偏光子の端部に切欠き部(cut‐out portion)が形成されることがある。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光子は温度変化に伴って膨張又は収縮する。本発明者らによる研究の結果、温度変化に伴う偏光子の収縮に起因して、切欠き部においてクラック(crack)が形成されることが判明した。特に熱衝撃(急激な温度変化)により、クラックが形成され易い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、偏光子の切欠き部において、温度変化に起因するクラックを抑制することができる偏光板、当該偏光板を含む画像表示装置、及び偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る偏光板は、フィルム状の偏光子を備え、凹状の切欠き部が、偏光子の端部に形成されており、基準線Lが、切欠き部の両端に位置する一対の角部を結ぶ直線と定義されるとき、基準線Lが偏光子の吸収軸線Aと直交せず、Wcは、基準線Lに平行な方向における切欠き部の幅であり、Wは、基準線Lに平行な方向における偏光子全体の幅であり、Wc/Wが0.05以上1.0未満である。換言すると、基準線Lが偏光子の吸収軸線Aとなす角度θは、0°以上90°未満である。
【0007】
本発明の一側面においては、偏光子が、第一端部と、第一端部の反対側に位置する第二端部と、を有してよく、切欠き部が、第一端部に形成されていてよく、切欠き部が、第一端部から第二端部へ向かって延びていてよく、切欠き部が延びる方向Eが、偏光子の吸収軸線Aと平行でなくてよい。換言すると、切欠き部が延びる方向Eが偏光子の吸収軸線Aとなす角度αは、0°よりも大きく90°以下であってよい。
・・・略・・・
【0010】
本発明の他の側面に係る偏光板は、フィルム状の偏光子を備え、偏光子が、第一端部と、第一端部の反対側に位置する第二端部と、を有し、凹状の切欠き部が、第一端部に形成されており、切欠き部が、第一端部から第二端部へ向かって延びており、切欠き部が延びる方向Eが、前記偏光子の吸収軸線Aと平行でなく、Wcは、第一端部に平行な方向における切欠き部の幅であり、Wは、第一端部に平行な方向における偏光子全体の幅であり、Wc/Wが0.05以上1.0未満である。換言すると、本発明の他の一側面に係る偏光板では、切欠き部が延びる方向Eが偏光子の吸収軸線Aとなす角度αは、0°よりも大きく90°以下である。
・・・略・・・
【0012】
本発明の上記側面のいずれかにおいては、偏光子の両表面に保護フィルム又は保護層が密着していてよい。
【0013】
本発明の上記側面のいずれかにおいては、偏光子の両表面のうち、一方の表面のみに保護フィルム又は保護層が密着していてもよい。本発明の上記側面のいずれかにおいては、切欠き部の深部が面取りされてよい。
【0014】
本発明の上記側面のいずれかに係る画像表示装置は、上記偏光板を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、偏光子の切欠き部において、温度変化に起因するクラックを抑制することができる偏光板、当該偏光板を含む画像表示装置、及び偏光板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係る偏光板の模式的斜視図である。
【図2】図2中の(a)は、図1に示された偏光板が備える偏光子の上面図であり、図2中の(b)は、図2中の(a)に示された偏光子の変形例である。
【図3】図1に示された偏光板が備える偏光子の上面図であり、図2中の(a)の拡大図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る画像表示装置(液晶表示装置)の断面の模式図である。
・・・略・・・
【図7】図7中の(a)は、本発明の他の実施形態に係る偏光板が備える偏光子の上面図であり、図7中の(b)は、本発明の他の実施形態に係る偏光板が備える偏光子の上面図であり、図7中の(c)は、本発明の他の実施形態に係る偏光板が備える偏光子の上面図である。
・・・略・・・
【図11】本発明の比較例に係る偏光板の模式的斜視図である。
【図12】図11に示された偏光板が備える偏光子の上面図である。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
・・・略・・・
【0018】
(第一実施形態)
図1、図2の(a)、図2の(b)及び図3に基づき、第一実施形態を説明する。第一実施形態に係る偏光板1Aは、フィルム状の偏光子7と、偏光子7に重なる複数の光学フィルム(3,5,9,13)と、を備える。偏光子7及び複数の光学フィルム(3,5,9,13)のいずれも、四角形である。「光学フィルム」とは、偏光板を構成するフィルム状の部材(偏光子自体を除く。)を意味する。光学フィルムは、層、又は光学層と言い換えてよい。光学フィルムは、例えば、保護フィルム及び離型フィルムを含意する。第一実施形態では、複数の光学フィルム(3,5,9,13)とは、第一保護フィルム5、第二保護フィルム9、第三保護フィルム3、及び離型フィルム13(セパレータ)である。つまり、偏光板1Aは、偏光子7、第一保護フィルム5、第二保護フィルム9、第三保護フィルム3、及び離型フィルム13を備える。偏光板1Aは、第二保護フィルム9と離型フィルム13との間に位置する粘着層11も備える。偏光子7の一方の表面には第一保護フィルム5が重なっており、偏光子7の他方の表面には第二保護フィルム9が重なっている。つまり、偏光子7の両表面に保護フィルム(保護層)が密着している。第三保護フィルム3は、第一保護フィルム5に重なっている。つまり、第一保護フィルム5は、偏光子7と第三保護フィルム3との間に位置する。離型フィルム13は、粘着層11を介して、第二保護フィルム9に重なっている。換言すると、第二保護フィルム9は、偏光子7と粘着層11との間に位置する。
【0019】
偏光子7の端部(第一端部7e)には、凹状の切欠き部7C(concave cut‐out portion)が形成されている。この切欠き部7Cは、偏光子7、光学フィルム(3,5,9,13)及び粘着層11の積層方向(Z軸方向)において、偏光子7及び光学フィルム(3,5,9,13)及び粘着層11の全てを貫通している。つまり、偏光板1Aの端面には、偏光板1Aを構成する偏光子7、光学フィルム(3,5,9,13)及び粘着層11の全てに共通する凹状の切欠き部が形成されている。積層方向(Z軸方向)から見た偏光子7の切欠き部7Cの形状は、積層方向から見た偏光板1Aの切欠き部の形状と同じ又は相似であってよい。積層方向から見た偏光板1Aの切欠き部の形状を、積層方向から見た偏光子7の切欠き部7Cの形状とみなしてよい。以下では、偏光子7の切欠き部7Cのみならず、切欠き部7Cを包含する偏光板1Aの切欠き部も、「切欠き部7C」と表記する場合がある。切欠き部7Cは、例えば、長方形である。
【0020】
基準線Lは、切欠き部7Cの両端に位置する一対の角部7C1及び7C2を結ぶ直線と定義される。基準線Lは、上記の積層方向(Z軸方向)に垂直な方向において一対の角部7C1及び7C2を結ぶ直線と言い換えてよい。この基準線Lは、偏光子7の吸収軸線Aと直交しない。換言すると、切欠き部7Cの基準線Lが偏光子7の吸収軸線Aとなす角度θは、0°以上90°未満である。吸収軸線Aとは、例えば、偏光子7におけるポリビニルアルコール(PVA)分子の配向方向に略平行な直線と言い換えてよい。吸収軸線Aとは、例えば、偏光子7においてポリビニルアルコールに吸着する色素分子(例えばポリヨウ素又は有機染料)の配向方向に略平行な直線と言い換えてもよい。一つのPVA分子を構成する多数の炭素原子は、吸収軸線Aに沿った共有結合(C‐C結合)によって互いに結合している、といえる。一方、吸収軸線Aに略垂直な方向では、PVA分子同士が、架橋剤(例えばホウ酸)を介した架橋結合によって結合している。換言すれば、吸収軸線Aに略垂直な方向では、各PVA分子が有するヒドロキシ基が、PVA分子間に位置するホウ酸と水素結合又は酸素・ホウ素間結合(O‐B結合)を形成することによって、PVA分子同士が架橋されている。吸収軸線Aに沿って形成されているC‐C結合は、吸収軸線Aに略垂直な方向に沿って形成されている架橋結合よりも強固である。したがって、吸収軸線Aに略平行な方向における偏光子7の機械的強度は、吸収軸線Aに略垂直な方向における偏光子7の機械的強度よりも高い。換言すると、吸収軸線Aに略平行な方向における偏光子7の熱収縮は、吸収軸線Aに略垂直な方向における偏光子7の熱収縮に比べて、クラックを引き起こし難い。
【0021】
図11及び図12に示される従来の偏光板1Cのように、基準線Lが吸収軸線Aと直交する場合(角度θが90°である場合)、基準線Lに平行な方向では、PVA分子内のC‐C結合に比べて弱い架橋結合が形成されている。したがって、基準線Lが吸収軸線Aと直交する場合、切欠き部7Cの深部(奥部)が、基準線Lに略平行な方向において収縮すると、切欠き部7Cの深部においてクラック7crが形成され易い。
【0022】
一方、第一実施形態では、基準線Lは、偏光子7の吸収軸線Aと直交しない。換言すると、基準線Lが吸収軸線Aとなす角度θは、0°以上90°未満である。したがって、PVA分子間の架橋結合に比べて強固なPVA分子内のC‐C結合が、基準線Lに平行な方向における偏光子7の機械的強度を高める。その結果、切欠き部7Cの深部が、基準線Lに略平行な方向において収縮したとしても、切欠き部7Cの深部においてクラック7crが形成され難い。特に、基準線Lが吸収軸線Aと平行である場合(角度θが0°である場合)、偏光子7を構成する殆どのPVA分子内のC‐C結合が、吸収軸線Aに沿って形成されている。したがって、基準線Lが吸収軸線Aと平行である場合、基準線Lに平行な方向における偏光子7の機械的強度が顕著に高く、切欠き部7Cにおけるクラック7crの形成が顕著に抑制される。
【0023】
基準線Lが吸収軸線Aとなす角度θが小さいほど、切欠き部7Cにおいてクラック7crが形成され難い。角度θは、0°以上75°以下、又は0°以上60°以下であってよい。
【0024】
偏光子7は、切欠き部7Cが形成された第一端部7eと、第一端部7eの反対側に位置する第二端部17eと、を有する。第一実施形態では、第一端部7e及び第二端部17eのいずれも直線状であり、第一端部7eは第二端部17eと平行である。切欠き部7Cは、第一端部7eから第二端部17eへ向かって延びている。切欠き部7Cが延びる方向Eは、偏光子7の吸収軸線Aと平行でない。換言すると、切欠き部7Cが延びる方向Eが吸収軸線Aとなす角度αは、0°よりも大きく90°以下である。第一実施形態では、角度αは90°である。第一実施形態では、切欠き部7Cが延びる方向Eは、切欠き部7Cの長手方向に等しい。つまり、切欠き部7Cの長手方向は、切欠き部7Cが延びる方向Eに沿っている。
【0025】
切欠き部7Cが延びる方向Eが、偏光子7の吸収軸線Aと平行でないため、PVA分子間の架橋結合に比べて強固なPVA分子内のC‐C結合が、方向Eに垂直な方向における偏光子7の機械的強度を高める。その結果、切欠き部7Cの深部が、方向Eに略垂直な方向において収縮したとしても、切欠き部7Cの深部においてクラック7crが形成され難い。方向Eが吸収軸線Aとなす角度αが大きいほど、切欠き部7Cにおいてクラック7crが形成され難い。特に、方向Eが吸収軸線Aと垂直である場合(角度αが90°である場合)、偏光子7を構成する殆どのPVA分子内のC‐C結合が、方向Eに対して垂直に形成されている。したがって、方向Eが吸収軸線Aと垂直である場合、方向Eに垂直な方向における偏光子7の機械的強度が顕著に高く、切欠き部7Cにおけるクラック7crの形成が顕著に抑制される。
【0026】
基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wcは、例えば、2mm以上600mm未満、又は5mm以上30mm以下であってよい。幅Wcは、偏光子7の端部(第一端部7e)に平行な方向における切欠き部7Cの幅と言い換えてよい。基準線Lに平行な方向における偏光子7全体の幅Wは、例えば、30mm以上600mm以下であってよい。偏光子7全体の幅Wは、基準線Lに平行な方向における偏光板1A全体の幅と言い換えてよい。幅Wは、第一端部7eに平行な方向における偏光子7全体の幅と言い換えてもよい。切欠き部7Cの幅Wcは、例えば、偏光子7全体の幅W未満であればよい。切欠き部7Cの幅Wcが5mm以上30mm以下である場合、偏光子7全体の幅W(偏光板1A全体の幅)は、20mmより大きく160mm以下、好ましくは25mmより大きく130mm以下、より好ましくは30mmより大きく100mm以下、さらに好ましくは30mmより大きく70mm以下であってよい(但し、Wc<W)。切欠き部7Cの幅Wcと偏光子7全体の幅Wとの比Wc/Wは、0.05以上1.0未満である。比Wc/Wは、0.08以上1.0未満、0.10以上1.0未満、又は0.13以上1.0未満、好ましくは0.15以上1.0未満、又は0.17以上1.0未満、より好ましくは0.20以上1.0未満、又は0.22以上1.0未満、さらに好ましくは0.30以上1.0未満、0.33以上1.0未満、又は0.40以上1.0未満であってよい。比Wc/Wは、0.05以上0.90以下、0.05以上0.80以下、0.05以上0.78以下、又は0.05以上0.45以下であってもよい。比Wc/Wは、切欠き部7Cの幅Wcと偏光板1A全体の幅Wとの比と言い換えてよい。比Wc/Wが上記の範囲にある場合、切欠き部7Cにおけるクラックが抑制され易い。その理由は、次の通りである。切欠き部7Cの幅Wcが偏光子7全体の幅Wよりも小さいほど、温度変化に伴う偏光子7全体の収縮に因り、切欠き部7Cの幅Wcを拡げる力が生じ易く、切欠き部7Cにクラックが生じ易い。つまりWc/Wが小さいほど、切欠き部7Cにクラックが生じ易い。一方、Wc/Wが大きいほど(偏光子7全体の幅Wが小さいほど)、温度変化に伴う偏光子7全体の収縮量が低減される。つまり、偏光子7全体の幅Wが小さいほど、偏光子7の全体の幅Wの変化量の絶対値が低減される。温度変化に伴う偏光子7全体の収縮量が低減されることに因り、切欠き部7Cの幅Wcを拡げる力が生じ難く、切欠き部7Cにおけるクラックが抑制され易い。
【0027】
基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDcは、例えば、1mm以上30mm以下であってよい。長さDcは、基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの深さと言い換えてよい。基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の長さDは、例えば、30mm以上600mm以下であってよい。偏光子7全体の長さDは、基準線Lに垂直な方向における偏光板1A全体の長さと言い換えてよい。偏光板1Aの厚みは、例えば、10μm以上1200μm以下、10μm以上500μm以下、10μm以上300μm以下、又は10μm以上200μm以下であってよい。
【0028】
偏光板1Aの製造方法は、少なくとも、貼合ステップと、加工ステップと、を備える。貼合ステップでは、長尺な帯状の偏光子フィルムと、長尺な帯状の複数の光学フィルムと、を貼合して、積層体(第一積層体)を作製する。長尺な帯状の偏光子フィルムとは、加工・成形前の偏光子7である。偏光子フィルムの吸収軸線は、加工・成形後の偏光子7の吸収軸線Aと同じであってよい。長尺な帯状の複数の光学フィルムとは、加工・成形前の光学フィルム(3,5,9,13)である。続く加工ステップでは、第一積層体を加工して、所望の寸法及び形状を有する複数の積層体(第二積層体)を作製する。この第二積層体は、上記の偏光板1Aと同様に、偏光子フィルム(偏光子7)の吸収軸線Aに直交しない第一端部7eと、第一端部7eの反対側に位置する第二端部17eと、を有する。加工ステップでは、例えば、偏光子フィルムの吸収軸線Aに直交しない方向において、第一積層体を切断して、吸収軸線Aに直交しない第一端部を形成してよい。加工ステップでは、例えば、第一積層体を刃物で切断することにより、第二積層体を作製してよい。加工ステップでは、例えば、第一積層体の打ち抜き加工により、第二積層体を作製してもよい。加工ステップでは、例えば、第一積層体をレーザーで切断することにより、第二積層体を作製してもよい。レーザーは、例えば、CO_(2)レーザー又はエキシマレーザーであってよい。
・・・略・・・
【0029】
加工ステップでは、例えば、打ち抜き加工、又は刃物若しくはレーザーを用いた切断により、凹状の切欠き部7Cを、第二積層体の第一端部7eに形成してよい。加工ステップにおいて切欠き部7Cを形成する場合、切欠き部7Cを第一端部7eから第二端部17eへ向けて延ばし、且つ切欠き部7Cが延びる方向Eを、吸収軸線Aと平行でない方向に調整する。
・・・略・・・
【0030】
加工ステップにおいて切欠き部7Cを形成せず、加工ステップに続く端部加工ステップにおいて、凹状の切欠き部7Cを第二積層体の第一端部7eに形成してもよい。端部加工ステップにおいて切欠き部7Cを形成する場合も、切欠き部7Cを第一端部7eから第二端部17eへ向けて延ばし、且つ切欠き部7Cが延びる方向Eを、吸収軸線Aと平行でない方向に調整する。端部加工ステップでは、例えば、上記のレーザーを第二積層体の端部に照射して端部の一部又は全部を切断することにより、切欠き部7Cを第二積層体に形成してよい。・・・略・・・また上記加工ステップ又は端部加工ステップのいずれかにおいて、Wc/Wを0.05以上1.0未満に調整する。
【0031】
第二積層体に含まれる偏光子7の吸収軸線Aの方向は、加工ステップ及び端部加工ステップの時点で既に把握されている。したがって、例えば、上記のように、第一積層体の打ち抜き又は切断の方向を調整して、第二積層体の第一端部7eが吸収軸線Aとなす角度を0°以上90°未満に調整することにより、基準線Lが吸収軸線Aとなす角度θを、0°以上90°未満の範囲で自在に制御することができる。また、上記の通り、切欠き部7Cを第二積層体の第一端部7eに形成する際に、切欠き部7Cの向きを調整することにより、方向Eが吸収軸線Aとなす角度αを、0°より大きく90°以下の範囲で自在に制御することもできる。上記の通り、基準線Lと吸収軸線Aとの相対的な位置関係は、第一積層体の打ち抜き又は切断の方向、及び第二積層体において切欠き部7Cを形成する位置によって制御される。方向Eと吸収軸線Aとの相対的な位置関係は、第二積層体において切欠き部7Cを形成する位置及び切欠き部7Cの向きによって制御される。偏光子フィルム(偏光子7)における吸収軸線Aの方向自体は、加工ステップ及び端部加工ステップよりも前に行うPVAフィルムの延伸の方向及び延伸倍率によって調整・制御される。
【0032】
偏光子7は、延伸、染色及び架橋等の工程によって作製されたフィルム状のポリビニルアルコール系樹脂(PVAフィルム)であってよい。偏光子7の詳細は以下の通りである。
・・・略・・・
【0034】
偏光子7の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下、1μm以上10μm以下、1μm以上8μm以下、1μm以上7μm以下、又は4μm以上30μm以下であってよい。偏光子7が薄いほど、温度変化に伴う偏光子7自体の収縮が抑制され、偏光子7自体の寸法の変化が抑制される。その結果、応力が偏光子7に作用し難く、偏光子7におけるクラックが抑制され易い。
【0035】
第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9は、透光性を有する熱可塑性樹脂であればよく、光学的に透明な熱可塑性樹脂であってもよい。第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9を構成する樹脂は、例えば、・・・略・・・環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂・・・略・・・であってよい。
・・・略・・・
【0038】
セルロースエステル系樹脂は、例えば、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース(TAC))・・・略・・・であってよい。
・・・略・・・
【0040】
ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート・・・略・・・であってよい。
・・・略・・・
【0043】
・・・略・・・偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち一方のフィルムが、トリアセチルセルロースを含み、偏光子7を挟む一対の光学フィルムのうち他方のフィルムが、環状オレフィンポリマーを含んでもよい。・・・略・・・偏光子7が一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)に挟まれている場合、光学フィルム(保護フィルム)が偏光子7に密着して、温度変化に伴う偏光子7の膨張又は収縮を抑制するので、偏光子7におけるクラックが生じ難い。例えば、偏光子7が、TACからなる第一保護フィルム5と、COP系樹脂からなる第二保護フィルム9とで挟まれている場合、偏光子7におけるクラックが生じ難い。
・・・略・・・
【0045】
第一保護フィルム5の厚みは、例えば、5μm以上90μm以下、5μm以上80μ m以下、又は5μm以上50μm以下であってよい。第二保護フィルム9の厚みも、例えば、5μm以上90μm以下、5μm以上80μm以下、又は5μm以上50μm以下であってよい。
・・・略・・・
【0047】
第一保護フィルム5は、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。第二保護フィルム9も、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。接着層は、ポリビニルアルコール等の水系接着剤を含んでよく、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでもよい。
・・・略・・・
【0052】
粘着層11は、例えば、アクリル系感圧型接着剤、ゴム系感圧型接着剤、シリコーン系感圧型接着剤、又はウレタン系感圧型接着剤などの感圧型接着剤を含んでよい。粘着層11の厚みは、例えば、2μm以上500μm以下、2μm以上200μm以下、又は2μm以上50μm以下であってよい。
【0053】
第三保護フィルム3を構成する樹脂は、第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9を構成する樹脂として列挙された上記の樹脂と同じであってよい。第三保護フィルム3の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。
【0054】
離型フィルム13を構成する樹脂は、第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9を構成する樹脂として列挙された上記の樹脂と同じであってよい。離型フィルム13の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。
【0055】
本発明に係る画像表示装置は、例えば、液晶表示装置又は有機EL表示装置等であってよい。例えば、図4に示されるように、第一実施形態に係る液晶表示装置30Aは、液晶セル10と、液晶セル10の一方の表面(第一表面)に重なる偏光板1Aa(第一偏光板)と、液晶セル10の他方の表面(第二表面)に重なる別の偏光板1Ab(第二偏光板)と、を備える。第二表面は、第一表面の裏面と言い換えてよい。図4に示された偏光板1Aa及び1Abは、離型フィルム13及び第三保護フィルム3を備えない点を除いて、図1に示す偏光板1Aと同じである。偏光板1Aa(第一偏光板)は、粘着層11を介して、液晶セル10の第一表面に貼着されている。偏光板1Aa(第一偏光板)は、液晶セル10の第一表面に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子7と、偏光子7に重なる第一保護フィルム5と、を有する。別の偏光板1Ab(第二偏光板)は、粘着層11を介して、液晶セル10の第二表面に貼着されている。別の偏光板1Ab(第二偏光板)は、液晶セル10の第二表面に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子7と、偏光子7に重なる第一保護フィルム5と、を有する。液晶セル10と、一対の偏光板1Aa及び1Abとが、液晶パネル20Aを構成する。
・・・略・・・
【0059】
(他の実施形態)
以上、本発明の第一実施形態及び第二実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
・・・略・・・
【0061】
偏光板及び切欠き部其々の形状は、用途に応じた様々な形であってよい。例えば、図7中の(a)に示すように、基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅は、基準線Lに垂直な方向における切欠き部の深さよりも大きくてよい。図7中の(b)に示すように、切欠き部7Cの形状は、半円であってもよい。図7中の(c)に示すように、切欠き部7Cの形状は、三角形であってもよい。切欠き部7Cの形状は、四角形及び三角形以外の他の多角形であってもよい。図7中の(a)、図7中の(b)及び図7中の(c)に示された偏光子7其々の形状は、其々の偏光子7を備える偏光板の形状とみなしてよい。換言すれば、図7中の(a)、図7中の(b)及び図7中の(c)に示された各偏光子7に形成された切欠き部7Cの形状は、各偏光子7を備える偏光板に形成された切欠き部の形状とみなしてよい。
・・・略・・・
【0066】
偏光板が備える光学フィルムの枚数は1枚であってよい。例えば、図1に示す偏光板1Aの変形例は、第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9の両方を備えないものであってもよい。例えば、図4に示す偏光板1Aa(第一偏光板)及び偏光板1b(第二偏光板)のうち、いずれか一方又は両方が、第一保護フィルム5及び/又は第二保護フィルム9を備えなくてもよい。
【0067】
偏光板1Aは、第三保護フィルム3及び離型フィルム13のうち一方又は両方を備えなくてもよい。例えば、第三保護フィルム3は、画像表示装置の製造過程において、偏光板1Aから剥離され、除去されてよい。つまり、第三保護フィルム3は、仮の保護フィルムであってよい。離型フィルム13も、画像表示装置の製造過程において、偏光板1Aから剥離され、除去されてよい。」

ウ 「【実施例】
【0073】
・・・略・・・
【0074】
(実施例1)
偏光子フィルム(切断前の偏光子7)と4枚の光学フィルム(3,5,9,13)と感圧型の粘着層11とから構成される長方形状の第一積層体を作製した。第一積層体は、離型フィルム13と、離型フィルム13に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子フィルム(7)と、偏光子フィルム(7)に重なる第一保護フィルム5と、第一保護フィルム5に重なる第三保護フィルム3と、を備えていた。偏光子フィルム(7)としては、延伸され、且つ染色されたフィルム状のポリビニルアルコールを用いた。第一保護フィルム5としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いた。第二保護フィルム9としては、環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)から構成されるフィルムを用いた。第三保護フィルム3としては、PETプロテクトフィルムを用いた。離型フィルム13としては、PETセパレーターを用いた。離型フィルム13の厚みは、38μmであった。粘着層11の厚みは、20μmであった。第二保護フィルム9の厚みは、13μmであった。偏光子7の厚みは、7μmであった。第一保護フィルム5の厚みは、25μmであった。第三保護フィルム3の厚みは、58μmであった。
【0075】
上記の第一積層体をカッターで切断して、横辺の長さが170mmであり、縦辺の長さが100mmである第二積層体を作製した。第一積層体を切断する際には、第一積層体の切断方向を調整することにより、第二積層体の横辺(第一端部)が偏光子7の吸収軸線Aとなす角度θを、下記表1に記載の角度に調整した。なお、偏光子7の吸収軸線Aは、偏光子フィルム(7)の延伸方向と平行であった。
【0076】
第二積層体をステージに吸着させて固定した。固定された第二積層体の外縁にCO_(2)レーザーを照射することにより、第二積層体の横辺(第一端部)に凹状の切欠き部を形成した。以上の工程を経て、実施例1の偏光板を得た。CO_(2)レーザーの出力は、20Wに設定した。CO_(2)レーザーの発振波長は、10.4μmであった。
【0077】
得られた偏光板の形状は、図8中の(c)に示された偏光子7の形状と同じであった。つまり、図8中の(c)に示された偏光子7は、上記の手順で作製された偏光板が備える偏光子である。偏光子7の第一端部7e(第二積層体の横辺)に形成された切欠き部7Cの形状は、ほぼ半円であった。基準線Lが、切欠き部7Cの両端に位置する角部7C1及び角部7C2を結ぶ直線と定義されるとき、基準線Lが吸収軸線Aとなす角度は、上記の角度θに等しかった。基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wcは、20mmであった。つまり、角部7C1と角部7C2との距離は、20mmであった。基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの深さは、10mmであった。切欠き部7Cが形成された偏光子7の第一端部7eの幅Wは、150mmであった。つまり、偏光板の横辺の長さ(偏光板の横幅W)は、150mmであった。偏光板の縦辺の長さ(偏光板の縦幅)は、80mmであった。Wc/Wは、20mm/150mm、つまり0.13であった。
【0078】
離型フィルム13を、偏光板の粘着層11から剥がし、粘着層11を介して、偏光板をガラス板に貼合した。さらに、第三保護フィルム3を偏光板から剥離した。このような手順により、ガラス板と、ガラス板に貼合された偏光板と、からなるサンプルを準備した。このサンプルを用いて、ヒートサイクル試験を行った。ヒートサイクル試験では、下記のステップ1と、ステップ1に続くステップ2と、からなるサイクルを繰り返した。
ステップ1: サンプルを85℃の雰囲気中で30分間加熱するステップ。
ステップ2: サンプルを-40℃の雰囲気中で30分間冷却するステップ。
【0079】
上記のサイクルを、下記表1に示す所定の回数繰り返した各時点で、サンプルが備える偏光子7に形成されている切欠き部7Cを光学顕微鏡で観察した。
【0080】
(実施例2?8、比較例1)
・・・略・・・
【0081】
実施例1?8及び比較例1それぞれのヒートサイクル試験の結果を、下記表1に示す。表中の「A」は、偏光子7の切欠き部7Cにおいてクラックが無かったことを意味する。「B」は、偏光子7の切欠き部7Cにおいて微小なクラックが形成されていたことを意味する。「C」は、偏光子7の切欠き部7Cにおいて、「B」の場合よりも大きなクラックが形成されていたことを意味する。比較例1の行に記載の「B」とは、長さが約1mmであるクラックが形成されたことを意味する。実施例1の行に記載の「B」とは、長さが約10mmであるクラックが形成されたことを意味する。
【0082】
【表1】

(当合議体注:便宜上、【表1】の向きを90°回転した。)
【0083】
・・・略・・・
【0102】
(実施例21?23、比較例3)
実施例21?23及び比較例3其々の偏光板の作製では、角度θを45°に調整した。
【0103】
実施例21?23及び比較例3其々の偏光子の形状は、偏光子7全体の横幅Wが偏光子7全体の縦幅Dよりも長いことを除いて、図3に示された偏光子7の形状と同じあった。
【0104】
偏光子7全体の横幅Wは、基準線Lに平行な方向における偏光子7全体の幅と言い換えられる。偏光子7全体の横幅Wは、第一端部7eに平行な方向における偏光子7全体の幅と言い換えてもよい。実施例21?23及び比較例3のいずれの場合も、基準線Lに平行な方向における偏光子7全体の幅Wは、170mmであった。偏光子7全体の縦幅Dは、基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の幅と言い換えられる。実施例21?23及び比較例3のいずれの場合も、基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の幅D(当合議体注:「偏光子7全体の幅D」は、「偏光子7全体の縦幅D」の誤記と認められる。)は、100mmであった。
【0105】
図3に示されるように、実施例21?23及び比較例3のいずれの場合も、偏光子7の第一端部7e(第二積層体の横辺)に形成された切欠き部7Cの形状は、長方形であった。実施例21?23及び比較例3の場合、基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wcは、下記表4に示される値であった。実施例21?23及び比較例3の場合、Wc/Wは下記表4に示される値であった。実施例21?23及び比較例3のいずれの場合も、基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDc(深さ)は、5mmであった。
【0106】
以上の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例21?23及び比較例3其々の偏光板を個別に作製した。
【0107】
実施例1の場合と同様に、実施例21?23及び比較例3其々の偏光板を用いたヒートサイクル試験を行った。実施例21?23及び比較例3其々のヒートサイクル試験では、偏光子7の一方の表面は、第二保護フィルム9(COP系樹脂から構成されるフィルム)で覆われており、偏光子7の他方の表面は、第一保護フィルム5(TACフィルム)で覆われていた。実施例21?23及び比較例3其々のヒートサイクル試験の結果を、下記表4に示す。
【0108】
【表4】

(当合議体注:便宜上、【表4】の向きを90°回転した。)
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る偏光板は、例えば、液晶セル又は有機ELデバイス等に貼着され、液晶テレビ、有機ELテレビ又はスマートフォン等の画像表示装置を構成する光学部品として適用される。」

エ 「【図1】


(当合議体注:便宜上、【図1】の向きを90°回転した。)

オ 「【図2】


(当合議体注:便宜上、【図2】の向きを90°回転した。)

カ 「【図3】



キ 「【図4】


(当合議体注:便宜上、【図4】の向きを90°回転した。)

ク 「【図7】



ケ 「【図11】


(当合議体注:便宜上、【図11】の向きを90°回転した。)

コ 「【図12】



(2) 引用発明2
ア 引用例2の【0074】?【0078】及び【0102】?【0108】【表4】には、引用例2でいう「本発明」の「実施例1」及び「実施例21?23」が、それぞれ記載されている。

イ 引用例2の【0106】の記載によれば、「実施例21?23」は、【0102】?【105】に記載の「以上の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例21?23」「其々の偏光板を個別に作製した」ものである。また、「実施例21?23」の「基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wc」及び「Wc/W」の各値は、【0108】【表4】に示されるとおりである。

ウ 上記(1)ア?コ、上記ア及び上記イより、引用例2には、「実施例21」の「偏光板」の発明(以下、「引用発明2」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。


「 偏光子フィルム(切断前の偏光子7)と4枚の光学フィルムと感圧型の粘着層11とから構成される長方形状の第一積層体を作製し、
第一積層体は、離型フィルム13と、離型フィルム13に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子フィルム(切断前の偏光子7)と、偏光子フィルム(切断前の偏光子7)に重なる第一保護フィルム5と、第一保護フィルム5に重なる第三保護フィルム3と、を備え、
偏光子フィルム(切断前の偏光子7)として、延伸され、且つ染色されたフィルム状のポリビニルアルコールを用い、
第一保護フィルム5として、TACフィルムを用い、
第二保護フィルム9として、COP系樹脂から構成されるフィルムを用い、
第三保護フィルム3として、PETプロテクトフィルムを用い、
離型フィルム13として、PETセパレーターを用い、
離型フィルム13の厚みは38μm、粘着層11の厚みは20μm、第二保護フィルム9の厚みは13μm、偏光子7の厚みは7μm、第一保護フィルム5の厚みは25μm、第三保護フィルム3の厚みは58μmであり、
第一積層体をカッターで切断し、第二積層体を作製し、第一積層体を切断する際、第二積層体の横辺(第一端部)が偏光子7の吸収軸線Aとなす角度θを45°に調整し、
第二積層体をステージに吸着させて固定し、固定された第二積層体の外縁にCO_(2)レーザーを照射することにより、第二積層体の横辺(第一端部)に凹状の切欠き部を形成して、得られた偏光板であって、
偏光子7の第一端部7e(第二積層体の横辺)に形成された切欠き部7Cの形状は長方形であり、
基準線Lが、切欠き部7Cの両端に位置する角部7C1及び角部7C2を結ぶ直線と定義されるとき、基準線Lが吸収軸線Aとなす角度は、上記の角度θに等しく、
基準線Lに平行な方向における偏光子7全体の幅Wは170mmであり、
基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の縦幅Dは100mmであり、
基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wcは17mm、
Wc/Wは0.100であり、
基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDc(深さ)は5mmである、
偏光板。」
(当合議体注:「偏光子フィルム(切断前の偏光子7)」及び「偏光子フィルム(7)」との記載を、「偏光子フィルム(切断前の偏光子7)」に統一した。)

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明2を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 偏光子、保護フィルム、偏光フィルム
(ア) 引用発明2の「偏光板」の構成は、その作製工程から理解されるとおりである。

(イ) 引用発明2の作製工程からみて、引用発明2の「偏光板」は、「離型フィルム13」(厚み38μm)、「粘着層11」(厚み20μm)、「第二保護フィルム9」(厚み13μm)、「偏光子7」(厚み7μm)、「第一保護フィルム5」(厚み25μm)及び「第三保護フィルム3」(厚み58μm)が、この順で積層されたものである。
そうすると、引用発明2の「偏光板」は、「偏光子7」の両面それぞれに「第二保護フィルム9」及び「第一保護フィルム5」が設けられているということができる。また、これら部材は、その文言が意味する機能のものである。

(ウ) したがって、引用発明2の「偏光子7」は、本願補正後発明の「偏光子」に相当する。また、上記(イ)より、引用発明2の「第一保護フィルム5」及び「第二保護フィルム9」は、それぞれが本件補正後発明の「保護フィルム」に相当する。

(エ) また、上記(イ)と(ウ)より、引用発明2の「偏光板」と、本件補正後発明の「偏光フィルム」とは、「偏光子の片面又は両面に」「保護フィルムが設けられている」「偏光部材」である点で共通する。

イ 長辺、短辺
(ア) 引用発明2の「偏光板」は、「第二積層体の横辺(第一端部)が偏光子7の吸収軸線Aとなす角度θを45°に調整し」、「固定された第二積層体の外縁にCO_(2)レーザーを照射することにより、第二積層体の横辺(第一端部)に凹状の切欠き部を形成して」「得られた」ものである。
また、引用発明2の「偏光子7の第一端部7e(第二積層体の横辺)に形成された切欠き部7Cの形状は長方形であり」、「基準線Lが、切欠き部7Cの両端に位置する角部7C1及び角部7C2を結ぶ直線と定義されるとき、基準線Lが吸収軸線Aとなす角度は、上記の角度θに等し」いものである。
そうすると、引用発明2において、「偏光板」の「横辺(第一端部)」と、「基準線L」とは平行かつ一致していると理解できる。

(イ) 引用発明2においては、「基準線Lに平行な方向における偏光子7全体の幅Wは170mmであり」、「基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の縦幅Dは100mmである」。
そうすると、上記(ア)より、引用発明2の「偏光板」(「第二積層体」)は、その「横辺(第一端部)」が、「170mm」の外縁の長辺をなし、その「横辺(第一端部)」に直交する(縦)辺が、「100mm」の外縁の短辺をなしているということができる。

(ウ) 以上(ア)及び(イ)並びに前記ア(エ)より、引用発明2の「偏光板」は、本件補正後発明の「偏光フィルム」における、「その外縁の長辺Lが60?400mm及び短辺Wが30?300mmであ」るという要件を満たす。

ウ 欠け部
(ア) 前記イ(ア)より、引用発明2の「偏光板」は、その「横辺(第一端部)に」「形成された」、「長方形」の「切欠き部」を有するということができる。また、「長方形」は、「直線」「の組合せにより構成されて」ている。

(イ) 上記(ア)と前記ア(エ)より、引用発明2の「偏光板」と、本件補正後発明の「偏光フィルム」とは、「欠け部を1つ以上有しており」、「前記欠け部は、前記」「偏光部材」「の外縁に設けられており」、「前記欠け部の形は、直線」「の組合せにより構成されて」ている点において共通する。

エ 曲線
本件補正後発明は、「前記欠け部の形」が「直線」「の組合せにより構成されて」いる発明と、「直線と曲線の組合せにより構成されて」いる発明を含む。ここで、当合議体は、前記ウ(イ)のとおり、「前記欠け部の形」が「直線」「の組合せにより構成されて」いる場合の本件補正後発明と、引用発明2とを対比することとした。また、引用発明2の「偏光板」は、その製造工程からみて、「長方形」以外の「切り欠き部」(「直線と曲線の組合せにより構成されて」いるもの)は、具備しない。
したがって、「前記欠け部の形」が「直線と曲線の組合せにより構成されて」いる場合の本件補正後発明の要件である、「前記欠け部が長辺L上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は」「式(1)を満足し」との要件、「前記欠け部が短辺W上にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は」「式(2)を満足し」との要件、及び「前記欠け部が前記外縁の隅にある場合、前記欠け部の形を構成する前記曲線の曲率半径R_(1)は0.2mm以上である」との要件については、引用発明2が満たすか否かの対比は不要である。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明2は、次の構成で一致する。
「 偏光子の片面又は両面に保護フィルムが設けられている偏光部材であって、
前記偏光部材は、その外縁の長辺Lが60?400mm及び短辺Wが30?300mmであり、
前記偏光部材は、欠け部を1つ以上有しており、
前記欠け部は、前記偏光部材の外縁に設けられており、
前記欠け部の形は、直線の組合わせにより構成されている、
偏光部材。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明2は、以下の点で相違する、又は一応相違する。
(相違点1)
「保護フィルム」が、本件補正後発明は、「接着剤層を介して」設けられているのに対して、引用発明2は、この点が一応明らかでない点。

(相違点2)
本件補正後発明が、「偏光フィルム」であるのに対して、引用発明2は、「偏光板」である点。

(相違点3)
「欠け部」は、本件補正後発明は、「前記欠け部の形を構成する2つの前記直線のなす角度θ_(1)は120°以上180°未満であり」、「前記角度θ_(1)である角を1つ以上有し」ているのに対して、引用発明2は、「切欠き部」が「長方形」であり、「前記欠け部の形を構成する2つの前記直線のなす角度θ_(1)」は90°(2箇所)である点。

(5) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用発明2の「偏光子フィルム(切断前の偏光子7)」、「第一保護フィルム5」及び「第二保護フィルム9」は、それぞれ「延伸され、且つ染色されたフィルム状のポリビニルアルコール」、「TACフィルム」及び「COP系樹脂から構成されるフィルム」である。そして、このような材料からなるものを積層体とする際に、水系接着剤層あるいは活性エネルギー線硬化型接着剤層などの接着剤を用いることは定法である。
してみると、上記相違点1は、相違点を構成しない。

(イ) あるいは、引用例2の【0047】には、「第一保護フィルム5は、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。第二保護フィルム9も、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。」との記載がある。
そうすると、上記相違点1は、引用例2が示唆する範囲内のことである。

イ 相違点2について
(ア) 引用発明2の「偏光板」の形状は、縦100mm×横170mm×厚さ161μmである(上記(3)ア(イ)参照)。
このような引用発明2の「偏光板」の形状からみて、引用発明2の「偏光板」は、「偏光」フィルムということができる。
してみると、上記相違点2は、実質的な相違点を構成しない。

(イ) 本件出願の明細書の【0065】?【0084】の記載を考慮すると、本件補正後発明でいう「偏光フィルム」とは、偏光子及び偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して設けられた保護フィルム以外の他の層やフィルムを有さないものを意味すると考えられなくもない。しかしながら、仮にこのように理解したとしても、以下のとおりである。
すなわち、引用発明2の「偏光板」のうち、「第二保護フィルム9」、「偏光子フィルム(切断前の偏光子7)」及び「第一保護フィルム5」の部分を引用発明と観念すれば、やはり、相違点2は実質的な相違点を構成しない。
あるいは、引用例2の【課題を解決するための手段】の【0012】及び【0013】には、引用例2でいう「本発明」の「偏光板」において、偏光子の両面又は片面に保護フィルムが密着していてもよいと記載され、【0043】には、「偏光子7が一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)に挟まれている場合、光学フィルム(保護フィルム)が偏光子7に密着して、温度変化に伴う偏光子7の膨張又は収縮を抑制するので、偏光子7におけるクラックが生じ難い。」、「例えば、偏光子7が、TACからなる第一保護フィルム5と、COP系樹脂からなる第二保護フィルム9とで挟まれている場合、偏光子7におけるクラックが生じ難い。」と記載されている。
そうすると、引用例2でいう「本発明」の「偏光板」は、偏光子の両面に保護フィルムが設けられていればよく、引用発明2の「偏光板」における「粘着層11」、「離型フィルム13」、「第三保護フィルム3」は必須のものではないと理解できる。
してみると、「第一保護フィルム5として、TACフィルムを用い」、「第二保護フィルム9として、COP系樹脂から構成されるフィルムを用い」る引用発明2において、「粘着層11」、「離型フィルム13」及び「第三保護フィルム3」を有さず、「偏光子7」の両面に接着剤層を介して「第二保護フィルム9」及び「第一保護フィルム5」のみが設けられた構成とすることは、当業者が容易になし得たことである(当合議体注:接着剤層については、上記アにおいて述べたとおりである。)。

ウ 相違点3について
(ア) 引用発明2の「偏光板」は、引用例2の【発明が解決しようとする課題】(【0004】、【0005】)や、【課題を解決するための手段】(【0006】?【0014】)等の記載からみて、比「Wc/W」を0.05以上1.0未満とするとともに、基準線Lが偏光子の吸収軸線Aとなす角度θを0°以上90°未満とすることより、温度変化に起因するクラックの発生を抑制するとの技術思想に基づくものである。
引用発明2の「Wc」及び「基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDc(深さ)」について、引用例2の【0026】及び【0027】には、それぞれ「基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅Wcは、例えば、2mm以上600mm未満、又は5mm以上30mm以下であってよい。」及び「基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDcは、例えば、1mm以上30mm以下であってよい。」と記載されている。

(イ) また、引用例2には、他の実施形態として、図7(a)?図7(c)とともに、【0061】には、「切欠き部其々の形状は、用途に応じた様々な形であってよい。」、「図7中の(a)に示すように、基準線Lに平行な方向における切欠き部7Cの幅は、基準線Lに垂直な方向における切欠き部の深さよりも大きくてよい。図7中の(b)に示すように、切欠き部7Cの形状は、半円であってもよい。図7中の(c)に示すように、切欠き部7Cの形状は、三角形であってもよい。」、「切欠き部7Cの形状は、四角形及び三角形以外の他の多角形であってもよい。」と記載されている。

(ウ) 引用発明2の具体化あるいは応用を考える当業者であれば、その用途・分野に応じて、切欠き部の形状・大きさについて設計変更を試みるところ、「四角形及び三角形以外の他の多角形」とは、五角形以上の多角形のことである。
そうすると、「横辺(第一端部)」が「170mm」、「横辺(第一端部)」に直交する(縦)辺が「100mm」の引用発明2において、上記(ア)で述べた比Wc/W、Wc及びDcの各範囲を満足する切欠き部として、例えば、図7(b)の半円を直線近似した五角形以上の多角形状にレーザー切断することは、当業者が容易になし得たことである。そして、このようにしてなる引用発明2は、切欠け部を構成する2つの直線のなす角度が120°を超えることとなるから、上記相違点3に係る本件補正後発明の構成を具備するものとなる。また、このようにしても、前記(4)アにおいて一致点とした事項が、相違点となるわけではない。

(エ) 相違点1?相違点3をまとめて検討したとしても同様である。

(6) 本件補正後発明の効果について
ア 本件出願明細書の【0020】には、【発明の効果】として、「偏光フィルムの異形部は、上記特定の形状を有しているため、熱衝撃の過酷な環境下において、膨張・収縮に基づく応力が当該異形部に集中しにくい。そのため、当該異形部においてクラックが生じにくい。」との記載がある(当合議体注:「異形部」とは「欠け部」のことである。)。

イ しかしながら、「熱衝撃の過酷な環境下において、膨張・収縮に基づく応力が当該異形部に集中しにくい」、「当該異形部においてクラックが生じにくい」との効果は、「偏光子の切欠き部において、温度変化に起因するクラックを抑制することができる偏光板」「を提供すること」を発明が解決しようとする課題とする引用発明2も奏する効果であるか、あるいは、上記ウで述べた相違点3に係る設計変更を施してなる引用発明2において、当業者が期待、予測する効果であって、格別のこととは認められない。さらに言うと、偏光板の切欠き部を構成する直線のなす角度(交差する角度)が大きいほど、熱衝撃・温度変化・形状変化に伴って発生する応力が集中しにくく、クラックが発生しにくいとのことは、技術常識に基づき当業者が予測できることである。

(7) 審判請求書について
ア 請求人は審判請求書において、引用例2について、「引用文献2には、切欠き部7Cの形状として長方形(図3)、半円形(図7(b))、三角形(図7(c))、深部(隅部)に面取り部が形成された長方形(図8(b))、楕円形(図10)、及び深部(最奥部)に面取り部が形成された三角形(図13)が開示されていますが、これら形状から、切欠き部7Cの形を構成する2つの直線のなす角度を120°以上180°未満とすることは当業者であっても容易に想到することはできません。」、「本願の明細書段落0056には、角度θ_(1)及び曲率半径R_(1)以外の形状は特に制限されず、偏光フィルムの用途、機能、及びデザイン等に応じて任意の形状をとり得ると記載されており、角度θ_(1)の形状は、『熱衝撃の過酷な環境下におけるクラックの発生を抑制する』という本発明の課題を解決するための重要な構成であり、偏光フィルムの用途、機能、及びデザイン等に応じて選択される設計的な事項ではありません。」と主張する。

イ しかしながら、前記(5)ウにおいて既に述べたとおりである。
してみると、審判請求書における請求人の主張を採用することはできない。

(8) 以上(2)?(7)においては、「実施例21」に基づき、引用発明2を認定し、対比・判断を行ったが、「実施例22」あるいは「実施例23」に基づき、引用発明を認定し、対比・判断を行っても同様である。

(9) 小括
本件補正後発明は、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、理由2(進歩性)本願発明は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1:特開2018-25630号公報
引用例2:特開2018-92119号公報
引用例3:国際公開第2017/047510号

3 引用例2及び引用発明
引用例2の記載及び引用発明2は、前記「第2」[理由]2(1)及び2(2)ウに記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、同1(3)で述べた限定事項を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べたとおり、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べた理由と同様の理由により、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-10 
結審通知日 2021-03-11 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2018-117078(P2018-117078)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 神尾 寧
河原 正
発明の名称 偏光フィルム、粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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