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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1374364
審判番号 不服2020-6670  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-15 
確定日 2021-05-20 
事件の表示 特願2018-199736「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月 7日出願公開、特開2019- 18049〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月17日に出願された特願2015-122439号の一部を、平成30年10月24日に新たに出願したものであって、令和元年8月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日に意見書が提出され、令和2年2月14日付けで拒絶査定されたところ、同年5月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において同年10月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされるとともに、意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本件補正によって補正された、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。

「 【請求項1】
照明光を発生する光源装置と接続する内視鏡のコネクタにおいて、
前記照明光を導光する導光部と、
前記光源装置と無線通信を行う無線通信部と、
前記光源装置から無線で電力の供給を受ける無線受電部と、
前記無線通信部及び前記無線受電部を収納し、前記光源装置に接続する接続姿勢において前記光源装置側に位置する前面から前記導光部が突出する収納部と、
前記接続姿勢において鉛直上方に位置する上面から見た場合に前記導光部の中心軸上に一つの親指を載せる凹状の指載部を有する把持部と、
を備え、
前記指載部は、前記把持部の中心軸に沿った第1方向の長さが、前記把持部の中心軸に垂直な第2方向の長さよりも長く、前記上面から見た場合に、前記収納部側の半円形状の前部と、前記第1方向に沿った長方形状の中部と、前記収納部側と反対側の半円形状の後部とを有し、前記上面に対して、前記前部の深さは、前記後部側から前記収納部側にかけて浅くなっており、前記中部は、前記第1方向において一定の深さであり、かつ、前記第2方向において湾曲したU字型の面形状であり、前記後部の深さは、前記第1方向において前記収納部側と反対側にかけて中心から遠いほど浅くなっている凹部であるコネクタ。」

第3 拒絶の理由
令和2年10月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2の概要は、次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2011/052408号(査定時の引用文献1)
引用文献2:国際公開第2005/077249号(査定時の引用文献2)
引用文献3:特開2005-139725号公報(新たな引用文献)

第4 引用文献及びその記載事項
1 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、以下の摘記において、イの引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

ア 引用文献1について
(1-ア)
「背景技術
[0002] 医療機器である内視鏡装置は、周辺機器であるビデオプロセッサ、光源装置などに接続される。そのため、内視鏡装置は、ビデオプロセッサ、光源装置などと着脱自在に接続できる内視鏡コネクタが信号ケーブルの延出端に配設されている。この内視鏡コネクタは、外部機器であるビデオプロセッサ、光源装置などに幾度となく接続される。
[0003] このような内視鏡コネクタは、例えば、JP特開平8-211307号公報に記載の電子内視鏡に開示されている。
・・・
[0011] 先ず、内視鏡装置1は、図1に示すように、観察対象部位、ここでは大腸などの管腔内へ挿入する細長の長尺部材としての挿入部2と、この挿入部2の基端部に連設された操作部3と、この操作部3の側面より延設された複合ケーブルであるユニバーサルケーブル4と、このユニバーサルケーブル4の端部に設けられて光源装置と一体のビデオプロセッサ(不図示)である外部機器に着脱自在に接続される医療機器用コネクタである内視鏡コネクタ(以下、単にコネクタと略記する)5と、を有している。」

(1-イ)
「[0015] 次に、本実施の形態の内視鏡装置1が備えるコネクタ5の構成について、図2以降の図面に基づいて、以下に説明する。なお、本実施の形態のコネクタ5は、ユニバーサルケーブル4の終端となる内視鏡装置1の基端に配設されているため、ユニバーサルケーブル4に接続される側を先端(前方)とし、外部機器に接続される側を基端(後方)として、以下に説明する。また、コネクタ5は、施術室に載置された外部機器に接続されるため、この外部機器に接続された状態で規定される上下左右方向を基準として以下に説明する。
[0016] 先ず、図2、および図3に示すように、基端側から順に、2段連設形成された外径が異なる略円柱状の一体形成された2つの電気コネクタ部21,22を有する電気プラグ部28と、前方側の電気コネクタ部22に連設された略円筒状の第1のケース体であるコネクタケース23と、折れ止め部材19に向けて前方へ径が細くなった管状の第2のケース体であって、ユーザが主に右手で把持する把持部となるコネクタカバー24と、によって主に外装が形成されている。」

(1-ウ)
「[0018] 第1の電気コネクタ部21は、第2の電気コネクタ部22の端面(基端面)から突起するように形成されており、複数の第1の電気接点31が外周部の周面一部に周方向に沿って並設されている。また、第1の電気コネクタ部21は、ここでは上部側外周部の縁辺に、外部機器が接続されたスコープを認識するための切り欠き部32が形成されている。さらに、第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からは、上部側に外部機器からの照明光が入射されるライトガイド口金26、および下部側に外部機器からの気体が送気される送気口金27が延設されている。
[0019] 第2の電気コネクタ部22にも、複数の第2の電気接点33が外周部の周面一部に周方向に沿って並設されている。また、第2の電気コネクタ部22は、外部機器との接続の時に回転位置決めする突起部34が、ここでは外周部の縁辺上下に2つ設けられている。」

(1-エ)
「[0022] コネクタカバー24は、外周部の側部中途部分に、漏水検知口金43が設けられている。この漏水検知口金43は、図4に示すように、後方(基端側)に向けた状態において、コネクタ5の上下方向に対して、右斜め方向へ所定の角度θ、ここでは略50°の角度を有した位置に配設されている。また、外周部の上下一部には、複数の滑り止め用凸部44が形成されている。
[0023] このように、コネクタ5は、コネクタカバー24から突起する漏水検知口金43の配設位置を上下方向に対して、右斜め方向へ略50°(角度θ=略50°)傾けた位置に設けたことにより、ユーザが上部方向からアクセスして右手でコネクタカバー24部分を把持したときに、人差し指と親指の間に漏水検知口金43が位置する。そのため、ユーザは、漏水検知口金43が右手に干渉することがないため、邪魔とならず自然にコネクタ5のコネクタカバー24部分を把持することができる。」

(1-オ)
「[0032] このように構成された、コネクタ5は、図5に示すように、外部機器100のコネクタ接続部110に接続される。この外部機器100との接続状態において、コネクタ5は、外部機器100の筐体101に形成された孔部105内に挿通して嵌合配置される。
[0033] 外部機器100のコネクタ接続部110は、筐体101の外表面側における孔部105の上下部分に金属製の装着部102が配設されている。これら装着部102には、コネクタ5のフランジ部25が嵌合固定される。なお、金属からなるフランジ部25、および装着部102は、互いが嵌合して接触することで、内視鏡装置1、および外部機器100とのグランドが接続される。
[0034] 孔部105内には、第1の電気コネクタ部21、および第2の電気コネクタ部22の各電気接点31,33の個々と接触して電気的に導通する複数の電気接点端子103,104が配設されている。これにより、内視鏡装置1と外部機器100とが各種信号の授受を行なうことができるようになる。」
と記載されている。

(1-カ)
図1


図4


図5


イ 引用発明について
上記(1-ア)?(1-カ)の記載を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明の認定に使用した引用文献1の摘記番号等を、付記してある。
「a)光源装置と一体のビデオプロセッサである外部機器に着脱自在に接続される医療機器用コネクタである内視鏡コネクタ5であって、(1-ア)
b)外部機器に接続される側を基端(後方)として、基端側から順に、2段連設形成された外径が異なる略円柱状の一体形成された2つの電気コネクタ部21,22を有する電気プラグ部28と、前方側の電気コネクタ部22に連設された略円筒状の第1のケース体であるコネクタケース23と、折れ止め部材19に向けて前方へ径が細くなった管状の第2のケース体であって、ユーザが主に右手で把持する把持部となるコネクタカバー24と、によって形成される外装と、(1-イ)
c)第1の電気コネクタ部21は、第2の電気コネクタ部22の端面(基端面)から突起するように形成されており、複数の第1の電気接点31が外周部の周面一部に周方向に沿って並設され、また、第1の電気コネクタ部21は、ここでは上部側外周部の縁辺に、外部機器が接続されたスコープを認識するための切り欠き部32が形成され、さらに、第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からは、上部側に外部機器からの照明光が入射されるライトガイド口金26が延設され、第2の電気コネクタ部22にも、複数の第2の電気接点33が外周部の周面一部に周方向に沿って並設され、(1-ウ)
d)コネクタカバー24は、外周部の側部中途部分に、漏水検知口金43が設けられ、外周部の上下一部には、複数の滑り止め用凸部44が形成され、コネクタカバー24から突起する漏水検知口金43の配設位置を上下方向に対して、右斜め方向へ略50°(角度θ=略50°)傾けた位置に設けたことにより、ユーザが上部方向からアクセスして右手でコネクタカバー24部分を把持したときに、人差し指と親指の間に漏水検知口金43が位置し、自然にコネクタ5のコネクタカバー24部分を把持することができ、(1-エ)
e)外部機器100との接続状態において、第1の電気コネクタ部21、および第2の電気コネクタ部22の各電気接点31,33の個々は外部機器100のコネクタ接続部110の複数の電気接点端子103,104と接触して電気的に導通する(1-オ)
f)内視鏡コネクタ5」

2 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-ア)
「技術分野
この発明は、体腔内に挿入部が挿入され、検査・処置終了後にその挿入部等の洗浄・消毒を行って再使用される内視鏡を有する内視鏡システムに関する。」(1頁4?6行)

(2-イ)
「 発明の開示
本発明の内視鏡システムは、少なくとも、電気的機能部、光学的機能部及び各種管路を一部に集約して構成される本体ユニット及びこの本体ユニットに対して着脱自在で、該本体ユニットの有する電気的機能部から延出する信号線及び光学的機能部から延出するライトガイドが挿通する端部にスコープコネクタを有するユニバーサルコ一ドユニットを備えた内視鏡と、少なくとも、前記ユニバーサルコードユニットのスコープコネクタが着脱自在に配設されるマルチコネクタ部、前記内視鏡の備える電気的機能部の制御を行う信号処理ユニット及び前記内視鏡の備える光学的機能部の制御を行う光源装置、光源制御ユニット及びランプ点灯用電源ユニットを有する内視鏡IJ御装置とを具備している。このことによって、本体ユニットに対してユニバーサルコードユニットを取り付けた状態においては、照明光を目的部位に照射して通常の観察を行える。そして、例えば内視鏡使用後においては、ユニバーサルコードユニットを本体ユニットから取り外すことによつて、ユニバーサルコードユニットについては管路内の洗浄が不要になる。
また、前記着脱可能なユニバーサルコードユニットの連結部及び本体部ユニットの連結部に、電源伝送部、信号伝送部、電気メス用の電線接続部、照明光伝送部のいずれか2つ以上を組み合わせて設けたものであり、前記電源伝送部及び前記信号伝送部を、非接触型の電磁誘導結合手段である非接触電力伝送部及び非接触信号伝送部で構成している。このことによって、ユニバーサルコードユニットの連結部及び本体部ユニットの連結部に設けられる電気接点が大幅に減少するので、内視鏡を洗浄・消毒するに当たっての問題であった錆の発生等、耐性品質が大幅に向上して防水キヤップの装着が不要になる。」(3頁13行?4頁5行)

(2-ウ)
「 本実施形態のスコープコネクタ143及びマルチコネクタ172の具体的な構成を説明する。
第9図及び第10図に示すようにスコープコネクタ143には、電源供給の伝送を行うためのトランスT1を構成する2次コイル101と、映像信号等の伝送を行うためのトランスT2を構成する2次コイル102と、前記E端子45aと、前記ライトガイドコネクタ44aとが設けられている。
・・・
前述のように構成されているスコープコネクタ143においても、マルチコネクタ172に押し込んでいくことによって、第12図に示すようにワンタッチでスコープコネクタ143がマルチコネクタ172に接続された状態になる。このとき、同時に内視鏡制御装置71側の電気系、光系及び管路系と、内視鏡20A側の電気系、光系及び管路系とが接続される。 」(17頁13行?18頁8行)

(2-エ)
図9


3 引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3-ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵材の把持部及び鍵材に関する。」

(3-イ)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1?図5に従って説明する。図1は鍵材1を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。図2は、鍵材1に備えられる鍵本体2の平面図である。
・・・
【0017】
また、表用チップ6の外面6dには、第1の凹部としての表側凹部8が鍵材1の長手方向に沿って形成されている。この表側凹部8は、図3(b)に示すように、傾斜面8aと平面8bとから構成され、平面8bは周囲よりも高さが低くなっている。また、図3(a)に示すように、表側凹部8の平面8bは略台形状に形成され、傾斜面8aは平面8bの3辺を取り囲むように設けられている。つまり、この表側凹部8は、鍵材1を鍵穴に差し込む際の、表用チップ6に当接する親指の方向に合わせて形成されている。また、表側凹部8は、表用チップ6に当接する親指の腹の形状及び大きさに合わせて形成されている。詳述すると、解錠又は施錠のために把持部3を把持する際には、親指と人差し指とを略直交するように交差させて、親指の腹と人差し指の側面とで把持部3を挟んで支持するのが通常である(図5参照)。このとき、親指の腹が、表用チップ6の外面6dに当接し、人差し指の側面が裏用チップ7の外面7cに当接する。従って、表用チップ6に表側凹部8を設けることにより、把持部3を把持した際に親指の腹が表側凹部8に沿って密着し、ぴったりと合うような感触を使用者に与える。」

(3-ウ)
「【0028】
次に、この鍵材1を使用して、錠を解錠又は施錠する場合の作用について図5に従って説明する。尚、図5は、鍵材1を差し込む際の手を上方からみた図である。まず、鍵材1を鍵穴に差し込む前に、把持部3の触感によって鍵材1の表裏、すなわち把持する向きを判別する。つまり、表用チップ6の外面6d及び裏用チップ7の外面7cを指で触って、その触感により親指の腹に密着する面又は人差し指の側面に密着する面(表又は裏)を判別する。そして、親指に密着する方の面、つまり表用チップ6の外面6dを親指の腹で、人差し指に密着する方の面、つまり裏用チップ7の外面7cを人差し指の側面で把持する。このとき、例えば、表用チップ6を人差し指で、裏用チップ7を親指で把持すると、表側凹部8及び裏側凹部18の各長手方向と、人差し指及び親指の各長手方向が異なることで、把持したときに違和感を感じる。従って、間違った面を把持した場合には、触感により明確に把持方向が間違っていることがわかる。」

(3-エ)
図1


図5



第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 内視鏡のコネクタについて
引用発明の「a)」「内視鏡コネクタ5」は、「光源装置と一体のビデオプロセッサである外部機器に着脱自在に接続される」から、本願発明の「照明光を発生する光源装置と接続する内視鏡のコネクタ」に相当する。

イ 照明光を導光する導光部について
引用発明の「c)」「ライトガイド口金26」は、「外部機器からの照明光が入射される」から、本願発明の「照明光を導光する導光部」に相当する。

ウ 光源装置と通信を行う通信部と受電部、収納部について
引用文献1に記載された内視鏡は、図1、5より、外部機器100とのみ接続されていることが見てとれるので、引用発明の内視鏡の電力は、外部機器100から供給されているといえる。
また、第4 1 ア (1-ア)に背景技術として特開平8-211307号公報の内視鏡コネクタが記載されており、同公報には【0019】に光源装置と接続される電気接点を備えている内視鏡コネクタが記載されているように、内視鏡と光源が電気的に接続され、内視鏡側で光源の点灯等を制御することは自明である。
そうすると、引用発明の「a)」「外部機器」は「光源装置と一体のビデオプロセッサである」から「e)外部機器100との接続状態において」、「外部機器100のコネクタ接続部110の複数の電気接点端子103,104と接触して電気的に導通する」「第1の電気コネクタ部21、および第2の電気コネクタ部22の各電気接点31,33」には、光源装置と通信する光源用電気接点と、電力の供給を受ける電力用電気接点があることは自明である。
したがって、引用発明の「c)」「第1の電気コネクタ部21」の「複数の第1の電気接点31が外周部の周面一部に周方向に沿って並設され」た部分、及び「第2の電気コネクタ部22」の「複数の第2の電気接点33が外周部の周面一部に周方向に沿って並設され」た部分は、本願発明の「光源装置と」「通信を行う」「通信部と」、「光源装置から」「電力の供給を受ける」「受電部」に相当する。

そして、引用発明の「a)」「電気プラグ部28」は、「2段連設形成された外径が異なる略円柱状の一体形成された2つの電気コネクタ部21,22を」、「電気プラグ部28」の外側に「有する」ものである。
さらに、引用発明の「a)」「電気プラグ部28」は、「c)」「第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からは、上部側に外部機器からの照明光が入射されるライトガイド口金26が延設され」ており、第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からライトガイド口金26が突出しているといえる。

そうすると、引用発明の「a)」「2段連設形成された外径が異なる略円柱状の一体形成された2つの電気コネクタ部21,22を有する電気プラグ部28」であって「「c)」「第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からは、上部側に外部機器からの照明光が入射されるライトガイド口金26が延設され」ている」「電気プラグ部28」と、
本願発明の「通信部及び」「受電部を収納し、前記光源装置に接続する接続姿勢において前記光源装置側に位置する前面から前記導光部が突出する収納部」とは、
「通信部及び受電部を備え、前記光源装置に接続する接続姿勢において前記光源装置側に位置する前面から前記導光部が突出するコネクタ部分」で共通する。

エ 指載部を有する把持部について
図5より、内視鏡コネクタ5を外部機器に接続した状態では、コネクタカバー24の上部の複数の滑り止め用凸部44の並ぶ方向が、ライトガイド口金26の中心軸と同じ方向で、複数の滑り止め用凸部44がライトガイド口金26の中心軸の鉛直上にあることが見てとれる。
さらに引用発明の「d)コネクタカバー24は、外周部の側部中途部分に、漏水検知口金43が設けられ、外周部の上下一部には、複数の滑り止め用凸部44が形成され、コネクタカバー24から突起する漏水検知口金43の配設位置を上下方向に対して、右斜め方向へ略50°(角度θ=略50°)傾けた位置に設けたことにより、ユーザが上部方向からアクセスして右手でコネクタカバー24部分を把持したときに、人差し指と親指の間に漏水検知口金43が位置自然にコネクタ5のコネクタカバー24部分を把持することができ」るのであるから、把持部であり、引用発明の「ユーザが上部方向からアクセスして右手でコネクタカバー24部分を把持したときに、」「親指」が位置する「複数の滑り止め用凸部44」は、「複数の滑り止め用凸部44」が形成されている部分のコネクタカバー24を含めて本願発明の「接続姿勢において鉛直上方に位置する上面から見た場合に前記導光部の中心軸上に一つの親指を載せる」「指載部」に相当し、そうすると、引用発明の「コネクタカバー24」は、本願発明の「指載部を有する把持部」に相当する。

(2)よって、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点1及び2で相違する。

(一致点)
「照明光を発生する光源装置と接続する内視鏡のコネクタにおいて、
前記照明光を導光する導光部と、
前記光源装置と通信を行う通信部と、
前記光源装置から電力の供給を受ける受電部と、
前記通信部及び前記受電部を備え、前記光源装置に接続する接続姿勢において前記光源装置側に位置する前面から前記導光部が突出するコネクタ部分と、
前記接続姿勢において鉛直上方に位置する上面から見た場合に前記導光部の中心軸上に一つの親指を載せる指載部を有する把持部と、
を備えるコネクタ。」

(相違点1)
通信部、受電部及びコネクタ部分について、本願発明では、それぞれ、「無線通信を行う無線通信部」、「無線で電力の供給を受ける無線受電部」及び「通信部及び前記受電部を収納」する「収納部」であるのに対して、引用発明では、それぞれ、「光源装置と通信する光源用電気接点」、「電力の供給を受ける電力用電気接点」及び「電気プラグ部28」である点。

(相違点2)
一つの親指を載せる指載部について、本願発明では、「把持部の中心軸に沿った第1方向の長さが、前記把持部の中心軸に垂直な第2方向の長さよりも長く、前記上面から見た場合に、前記収納部側の半円形状の前部と、前記第1方向に沿った長方形状の中部と、前記収納部側と反対側の半円形状の後部とを有し、前記上面に対して、前記前部の深さは、前記後部側から前記収納部側にかけて浅くなっており、前記中部は、前記第1方向において一定の深さであり、かつ、前記第2方向において湾曲したU字型の面形状であり、前記後部の深さは、前記第1方向において前記収納部側と反対側にかけて中心から遠いほど浅くなっている凹部である」のに対して、引用発明では、「複数の滑り止め用凸部44」が「形成され」ている「コネクタカバー24」の「外周部の上」「一部」である点。

2 判断
引用文献2の上記摘記(2-イ)に「電源伝送部及び前記信号伝送部を、非接触型の電磁誘導結合手段である非接触電力伝送部及び非接触信号伝送部で構成」することにより、「着脱可能なユニバーサルコードユニットの連結部及び本体部ユニットの連結部」「に設けられる電気接点が大幅に減少するので、内視鏡を洗浄・消毒するに当たっての問題であった錆の発生等、耐性品質が大幅に向上して防水キヤップの装着が不要になる。」と記載され、上記摘記(2-ウ)にそのための具体的構成が「第9図及び第10図に示すようにスコープコネクタ143には、電源供給の伝送を行うためのトランスT1を構成する2次コイル101と、映像信号等の伝送を行うためのトランスT2を構成する2次コイル102・・・が設けられている。」と記載されており、図9より、スコープコネクタ143が、2次コイル101、102を収納していることが見てとれる。
そして、引用文献1と引用文献2とは、内視鏡のコネクタという点で技術分野が共通しており、また、引用文献1のコネクタにおいても、引用文献2の従来技術のコネクタと同様に、内視鏡を洗浄・消毒するに当たって錆の発生等が問題であることは自明であるから、錆の発生等、耐性品質を大幅に向上するために、防水キャップの装着を不要とし、電気接点を減少させることが好ましいことは、当業者にとって明らかであるから、引用文献1に記載の光源用電気接点と電力用電気接点に対して引用文献2に記載の技術事項を採用することには、十分な動機付けが存在する。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の上記技術事項を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することである。

(2)相違点2について
引用文献3の上記摘記(3-イ)に「【0017】・・・第1の凹部としての表側凹部8が鍵材1の長手方向に沿って形成されている。・・・この表側凹部8は、鍵材1を鍵穴に差し込む際の、表用チップ6に当接する親指の方向に合わせて形成されている。また、表側凹部8は、表用チップ6に当接する親指の腹の形状及び大きさに合わせて形成されている。」と記載され、また図1(a)、図5に示されているように、差し込む方向と親指の方向が合うように、握る位置を決めるために親指が置かれる部分の形状を親指の腹の形状に合うよう凹部の構成とし、方向を定めて握りやすくすることは周知の技術事項であり、引用発明の一つの親指を載せる指載部を、親指の方向、腹の形状及び大きさに合う凹部とすることは容易に想到し得ることであり、凹部の形状として「把持部の中心軸に沿った第1方向の長さが、前記把持部の中心軸に垂直な第2方向の長さよりも長く、前記上面から見た場合に、前記収納部側の半円形状の前部と、前記第1方向に沿った長方形状の中部と、前記収納部側と反対側の半円形状の後部とを有し、前記上面に対して、前記前部の深さは、前記後部側から前記収納部側にかけて浅くなっており、前記中部は、前記第1方向において一定の深さであり、かつ、前記第2方向において湾曲したU字型の面形状であり、前記後部の深さは、前記第1方向において前記収納部側と反対側にかけて中心から遠いほど浅くなっている凹部である」とすることは、当業者が親指の形状を考慮して適宜採用する設計事項である。

(3)作用効果について
本願発明の作用効果は、引用文献1、2記載の技術事項及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

(4)請求人の令和2年12月11日付け意見書の主張について
ア 請求人は「引用文献1には、「電気プラグ部28である2つの電気コネクタ部21,22は、後方側の電気コネクタ部(以下、第1の電気コネクタ部という場合もある)21が前方側の電気コネクタ部(以下、第2の電気コネクタ部という場合もある)22よりも小さい外径を有している。」(引用文献1段落[0017])、「第1の電気コネクタ部21は、第2の電気コネクタ部22の端面(基端面)から突起するように形成されており、複数の第1の電気接点31が外周部の周面一部に周方向に沿って並設されている。また、第1の電気コネクタ部21は、ここでは上部側外周部の縁辺に、外部機器が接続されたスコープを認識するための切り欠き部32が形成されている。さらに、第1の電気コネクタ部21の端面(基端面)からは、上部側に外部機器からの照明光が入射されるライトガイド口金26、および下部側に外部機器からの気体が送気される送気口金27が延設されている。」(同段落[0018])と記載されています。上記のように、特に、第1の電気コネクタ部21には、電気接点が並設されるとともに、外部機器が接続されたスコープを認識するための切り欠き部32が形成されるというように、電気接点以外の特定の機能も付されます。
切り欠き部32が電気的にスコープを認識するものか、物理的にスコープを認識するものかは記載がありませんので、どちらの可能性もあると考えることができ、一方が優先的であるとの記載はありません。したがって、引用文献1は、電気プラグ部の電気コネクタに電気接点の他にも、電気的な特定の機能を積極的に付そうとするものであり、電気接点を減少させるとの課題について記載又は示唆があるとはいえないため、引用文献1に引用文献2を組み合わせる動機はありません。
仮に、光源用電気接点と電力用電気接点を減少させることが好ましいことが当業者にとって明らかであるとしても、上記のとおり、引用文献1記載のコネクタにおいては、電気プラグ部は光源用電気接点及び電力用電気接点以外の電気的な機能も発揮するように構成されているため、引用文献1の電気プラグ部の電気コネクタ部を、引用文献2記載の電気コネクタの場合と同様に電気接点を減少させるように変更することによって、引用文献1では、外部機器が接続されたスコープを認識するといった機能を害するおそれがあります。したがって、引用文献1の場合は、引用文献2を組み合わせることには阻害要因があると言えます。」と主張する。

しかし、引用発明の外部機器が接続されたスコープを認識するための切り欠き部32は、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用しても、残るものであるから、切り欠き部32の機能を損なうものとはいえないし、上記「(2)相違点2について」で検討した、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することにより電気接点を減少させることができるのである。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の上記技術事項を適用することに阻害要因があるとはいえないので、請求人の上記主張は採用できない。

イ さらに、請求人は、「引用文献1の「滑り止め用凸部44」は、以下に説明する通り、指載部ではないとするべきです。したがって、引用文献1の「滑り止め用凸部44」は、本願の「指載部」とは一致しません。
まず、引用文献1のコネクタ5のこのような形状のために、「滑り止め用凸部44」を親指の指載部として、コネクタ5の、引用文献1でいう後側を把持することは、ライトガイド口金26から遠い部分を把持することになり、ライトガイド口金26の挿入を難しくするため、不自然であり行い難いものと思料します。
また、「滑り止め用凸部44」が手のひらが接触して滑り止めとなる凸部であるとするのは、コネクタ5の全体の形状及び銘板36から自然であると考えます。すなわち、コネクタ5は全体が円筒状とされ、コネクタ5全体を手で把持しやすい形状とされています。そして、コネクタ5では、銘板36が「滑り止め用凸部44」より突出して形成されています。したがって、コネクタ5を上方から把持する場合、銘板36の突起に親指を当てて、手のひらを「滑り止め用凸部44」に接触させて把持することにより、コネクタ5を差し込み易いように構成されているといえます。
また、「滑り止め用凸部44」が指載部ではなく、手のひらが接触して滑り止めとなる凸部であるということは、「滑り止め用凸部44」がコネクタ5の上下2箇所に配置されていることからも明らかであると思料します。「滑り止め用凸部44」が指載部であるならば、コネクタ5の下に配置されることはありません。
以上のとおり、引用文献1の「滑り止め用凸部44」は指載部ではないため、本願の「指載部」とは一致せず、本願の「指載部」は、引用文献1の「滑り止め用凸部44」と相違します。」と主張する。

しかし、引用文献1の上記摘記(1-エ)にコネクタカバー24の握り方が記載されており、図4、5を参照すれば、上側の滑り止め用凸部44が、「複数の滑り止め用凸部44」が形成されている部分のコネクタカバー24を含めて親指の載置部であることが明確に理解できるので、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-10 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2018-199736(P2018-199736)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼ 芳徳  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 渡戸 正義
信田 昌男
発明の名称 コネクタ  
代理人 特許業務法人小林国際特許事務所  

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