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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
管理番号 1374461
審判番号 不服2020-6712  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-18 
確定日 2021-05-27 
事件の表示 特願2015-119155「ノイズフィルタ,多段接続LCフィルタ及び医療用機器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開,特開2017- 5572〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年6月12日に出願された特願2015-119155号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成31年 2月13日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 9月 6日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 元年11月12日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 2月18日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定
令和 2年 5月18日 :拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
令和 2年12月 4日付け:当審による拒絶理由通知
令和 3年 2月 4日 :意見書及び手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,令和3年2月4日にした手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
互いに直列に接続される複数のインダクタ素子を含み,
前記インダクタ素子は,円環状の磁性コアと,前記磁性コアを巻き回す巻線と,前記磁性コアと前記巻線との間に配置されて,グラウンドに接続される接地端子と,前記磁性コアと前記接地端子とを収納するケースと,を備え,
前記接地端子は,前記磁性コアの外周の少なくとも一部を囲む導電部を有し,
前記導電部は,前記ケースの内側の溝に挿入されることによって,前記導電部と前記磁性コアとは,電気的に絶縁し,
前記複数のインダクタ素子は,第1及び第2のインダクタ素子を含み,
前記第1のインダクタ素子が備える磁性コアは,前記第2のインダクタ素子が備える磁性コアと異なる透磁率を有し,
前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置される,
ノイズフィルタ。」


第3 拒絶の理由
当審が令和2年12月4日付けで通知した拒絶の理由は,概略,次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 :1
・引用文献:1-2
・備考:
(3)対比・判断
ア 引用発明1を主とした場合
引用発明1は,「磁気コア1a,1b,1c,1dは」,「Mn-Zn系やNi-Zn系のフェライト材でもよく,要求特性に応じて適宜選定するのが好まし」いこと,「高透磁率の材料を用いることで,ノイズ特性として低周波数帯域の減衰特性を改善することができる」ことが示唆されているところ,広帯域の周波数特性において安定した特性を得ることは一般的な課題であるから,引用発明1に「低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる」効果を有する引用発明2を適用して,「低域の減衰特性が優れているMn-Zn系」の磁気コアと,当該磁気コアとは透磁率が異なる「高域の減衰特性が優れているNi-Zn系」の磁気コアとをそれぞれ備えた2つのインダクタ素子を「直列に接続」した「ノイズフィルタ」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

イ 引用発明2を主とした場合
引用発明1は,Mn-Zn系やNi-Zn系を用いた「ノイズフィルタ」に「ノイズ制御特性と絶縁性能を共に低下させることなく,構造が簡易で,組立作業性と実装性を大幅に向上させ,かつ低価格化も可能なインダクタンス素子」を用いたものであるところ,簡易な構造,作業性や実装性の向上や低価格化は一般的な課題であるから,引用発明2においても同様の一般的な課題があるといえ,引用発明2のMn-Znを用いたインダクタ素子と,Ni-Znを用いたインダクタ素子として,各々引用発明1で特定される「インダクタ素子」を用いた「ノイズフィルタ」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

・請求項 :2-4
・引用文献:1-4
・備考:
(1)請求項2-3について
引用発明1の「インダクタ素子」は「台座9に載置」されるものであるが,それぞれが台座に載置された引用発明1の「インダクタ素子」を2つ用いるか,「1つ」の台座に「一方向に並んで」載置(必要ならば,引用文献3(特に,【0013】-【0014】,図1),引用文献4(特に,【0020】-【0027】,図1)も参照)するかは,当業者が適宜なし得る設計事項である。
その他の点については,請求項1に係る発明について検討したのと同様である。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2010-232245号公報
2.特開2012-89924号公報
3.特開平11-346472号公報
4.特開2010-165795号公報


第4 引用文献の記載,引用発明及び周知技術
1 引用文献1の記載及び引用発明1
(1)引用文献1の記載
引用文献1(特開2010-232245号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,主として交流電源ラインにおけるノイズフィルタ等に用いられるインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は,従来のインダクタンス素子を説明する図で,一部透視して示した正面図である。従来のインダクタンス素子71は,トロイダル形状の磁性体コア72の外周面を絶縁性ケース73で覆った上,その表面全体に円周方向に沿って巻線75,76を巻回した構造の他,絶縁性ケース73内の局部に対して巻線75,76を容量結合するための箔状導体として銅箔74を設け,この銅箔74に接続された接地接続用端子77が巻線75,76のリード部分と平行し,かつ隔てられて外方へ引き出された構造である。
【0003】
このように構成することで,巻線75,76の各々の線間に生じる線間容量を低減させ,インダクタンス素子71の高周波数領域での減衰特性を改善し,減衰特性の広帯域化を図ったものである。このようなインダクタンス素子は,例えば特許文献1に開示されている。

イ 「【0006】
本発明は,上記課題を解決するため,ノイズ制御特性と絶縁性能を共に低下させることなく,構造が簡易で,組立作業性と実装性を大幅に向上させ,かつ低価格化も可能なインダクタンス素子及びそれを用いたノイズフィルタの提供を目的とする。」

ウ 「【0020】
(第1の実施の形態)
図1は,本発明による横型のインダクタンス素子を説明する図で,図1(a)は一部透過した上面図,図1(b)は側面図,図1(c)は図1(a)のA-A断面図をそれぞれ示す。なお,図中,磁気コアと導電体は斜線で示している。
【0021】
図1に示したように,本発明によるインダクタンス素子20aは,環状の絶縁ケース2aの内部に,トロイダル形状の磁気コア1aと,銅等の薄板からなるフック状の導電体5aとを配した構造である。フック状の導電体5aは,磁気コア1aの外側を囲むように,絶縁ケース2aの内部に設けた突起部3aと絶縁ケース2aの内壁の間に挿配し,フック状の導電体5aの一端は,絶縁ケース2aの一部に設けた図示しないスリットを通じて絶縁ケース2aの外側に引き出されている。その状態で,絶縁ケース2aの外周に被覆導線7a,7bを巻回してコイル8a,8bを形成している。その後,貫通穴10a,10b,10cを有する台座9に載置し,コイル8a,8bの先端部を貫通穴10a,10bにそれぞれ挿入し実装端子とし,導電体5aの一端の先端部を貫通穴10cに挿入して接地用端子6aとした構造である。なお,接地用端子6aは,実装面に対して垂直に屈曲した形状としている。
【0022】
また,2つの上下部をそれぞれ嵌合して構成する絶縁ケース2aの内壁には,磁気コア1aと導電体5aが接触しないように突起部3aを点在させて形成している。この突起部3aは磁気コアの全外周を囲むように形成してもよい。この突起部3aにより導電体5aと磁気コア1aとが構造的に絶縁されている。
更に,2つの上下部をそれぞれ嵌合して構成する絶縁ケース2aの接合面には,段差4をそれぞれ形成し,絶縁ケースの内部と外部との絶縁距離(沿面距離)を確保している。
【0023】
磁気コア1aは,10000程度の透磁率を有しており,透磁率が約5000程度の一般的な磁性材料に比べ約2倍である。このように,高透磁率材料を用いることで,低周波数帯域の減衰特性を改善することができる,または減衰特性をそのままで製品の体積を小さくすることができる。
(途中省略)
【0028】
このように,接地用端子6aを接地する構造のインダクタンス素子20aを用いることで,高周波数帯域においても減衰特性が劣化することなく,比較的広い周波数範囲に亘って良好な減衰特性を得ることができる。」

エ 「【0029】 (第2の実施の形態)
図2は,本発明による横型のインダクタンス素子を説明する図で,図2(a)は一部透過した上面図,図2(b)は側面図,図2(c)は図2(a)のB-B断面図をそれぞれ示す。 【0030】
図2に示したように,横型のインダクタンス素子20bは,前述の第1の実施の形態に示した横型のインダクタンス素子20aにおいて,導電体5bの先端部である接地用端子6bのみを変形した例で,接地用端子6bは実装面に対して平行に導出されている。また,導電体5bの先端部である接地用端子6bの形状は,適宜形状を調整でき,例えばファストン端子のオス型形状としてもよい。」

オ 「【0035】
(第5の実施の形態)
図5は,本発明による横型のインダクタンス素子を説明する図で,図5(a)は一部透過した上面図,図5(b)は側面図,図5(c)は図5(a)のE-E断面図をそれぞれ示す。
【0036】
図5に示したように,横型のインダクタンス素子20eは,前述の第2の実施の形態による横型のインダクタンス素子20bにおいて,絶縁ケース2bの内壁の突起部3aに代えて,溝3bを形成し,その溝3bに導電体5bを挿配した変更例である。この溝3bにより導電体5bと磁気コア1bとが構造的に絶縁されている。」

カ 「【0044】 磁気コア1a,1b,1c,1dは,材質が高透磁率の磁性材料であればどんなものでもよく,Mn-Zn系やNi-Zn系のフェライト材,アモルファスやパーマロイなどの金属系材料,鉄系や鉄合金系,その他金属粉末などの導電性材料からなる圧粉材料等でもよく,要求特性に応じて適宜選定するのが好ましい。高透磁率の材料を用いることで,ノイズ特性として低周波数帯域の減衰特性を改善することができ,または減衰特性をそのままで製品の体積を小さくすることができるので,高透磁率の材料がより好適であり,望ましくは透磁率が10000以上の材料を用いると良い。 また,外観形状は環状であれば,円形,楕円形,方形などの何れでもよく,また断面形状は円形,楕円形,長円形,多角形等,どんな形状でもよい。」

キ 「【0061】
以上,本発明のノイズフィルタの形態として,第2の実施の形態によるインダクタンス素子20bを用いたノイズフィルタ30のみについて説明したが,同様に第1の実施の形態,第3の実施の形態,第4の実施の形態,第5の実施の形態によるインダクタンス素子20a,20c,20d,20eを用いたノイズフィルタを構成することもでき,その場合には,コイル8a及びコイル8b,接地用端子6a,6c,6d,筐体などの接続方法を適宜変更すればよい。また,第1?第5の実施の形態によるインダクタンス素子のようなトロイダル形状の磁気コアを有するものに代えて,絶縁性ボビンを用いた場合に使用,装着されるEI型,EE型などの磁気コアを有し,絶縁性ボビンへ被覆導線を巻回してなる構造のインダクタンス素子を用いることも可能である。
【0062】
以上,実施例を用いて,この発明の実施の形態を説明したが,この発明は,これらの実施例に限られるものではなく,この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち,当業者であれば,当然なしえるであろう各種変形,修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のインダクタンス素子により,各種電子機器に搭載するノイズフィルタの高性能化(広帯域化)のみならず,小型化,低コスト化,更に作業性や実装性の向上も可能なEMC,EMI市場の技術構築にも寄与できる。」

ク 図1は,次のとおりである。


ケ 図5は,次のとおりである。



(2)引用発明1
引用文献1における「第5の実施の形態」は,「第2の実施の形態」による横型のインダクタンス素子20bにおいて,絶縁ケース2bの内壁の突起部3aに代えて,溝3bを形成し,その溝3bに導電体5bを挿配した変更例であり,「第2の実施の形態」は,第1の実施の形態に示した横型のインダクタンス素子20aにおいて,導電体5bの先端部である接地用端子6bのみを変形した例であるから,「第5の実施の形態」は,第1の実施の形態に示した横型のインダクタンス素子20aにおいて,導電体5bの先端部である接地用端子6bのみを変形し,さらに,「絶縁ケース2bの内壁の突起部3aに代えて,溝3bを形成し,その溝3bに導電体5bを挿配し」,「この溝3bにより導電体5bと磁気コア1bとが構造的に絶縁されている」構成を採用した「インダクタンス素子」を用いた変更例であるといえる。この場合,「第5の実施の形態」の「導電体5b」及び「磁気コア1b」は,「導電体5a」及び「磁気コア1a」を意味し,「導電体5bの先端部である接地用端子6b」を「接地する構造」となる。
したがって,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ノイズ制御特性と絶縁性能を共に低下させることなく,構造が簡易で,組立作業性と実装性を大幅に向上させ,かつ低価格化も可能なインダクタンス素子を用いたノイズフィルタであって,
インダクタンス素子は,環状の絶縁ケース2aの内部に,トロイダル形状の磁気コア1aと,銅等の薄板からなるフック状の導電体5aとを配した構造のインダクタンス素子であって,フック状の導電体5aは,磁気コア1aの外側を囲むように,絶縁ケース2aの内部に形成した溝3bに挿配し,この溝3bにより導電体5bと磁気コア1bとが構造的に絶縁されており,フック状の導電体5aの一端は,絶縁ケース2aの一部に設けたスリットを通じて絶縁ケース2aの外側に引き出されており,その状態で,絶縁ケース2aの外周に被覆導線7a,7bを巻回してコイル8a,8bを形成し,その後,貫通穴10a,10b,10cを有する台座9に載置し,コイル8a,8bの先端部を貫通穴10a,10bにそれぞれ挿入し実装端子とし,
導電体5bの一端の先端部である接地用端子6bを接地する構造のインダクタンス素子を用いることで,高周波数帯域においても減衰特性が劣化することなく,比較的広い周波数範囲に亘って良好な減衰特性を得ることができ,
磁気コア1a,1b,1c,1dは,材質が高透磁率の磁性材料であればどんなものでもよく,Mn-Zn系やNi-Zn系のフェライト材でもよく,要求特性に応じて適宜選定するのが好ましく,高透磁率の材料を用いることで,ノイズ特性として低周波数帯域の減衰特性を改善することができる,
インダクタンス素子を用いたノイズフィルタ。」


2 引用文献2の記載及び引用発明
(1)引用文献2の記載
引用文献2(特開2012-89924号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。)。

ア 「【0011】
本発明は,Mn-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した少なくとも1つの第1のチョークコイルと,Ni-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した少なくとも1つの第2のチョークコイルとの直列接続回路が入力端子と出力端子との間に接続されており,前記入力端子と前記出力端子との対が少なくとも2対とされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,Mn-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した第1のチョークコイルと,Ni-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した第2のチョークコイルとを直列接続して雑音除去フィルタを構成したことから,低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる。」

イ 「【0014】
本発明にかかる雑音除去フィルタを発明するに至った経過を図1ないし図7に示す。図1はキャパシタンスを備えていない雑音除去フィルタの構成を示す回路図であり,図2は図1に示す雑音除去フィルタにおいてMn-Zn(マンガン・亜鉛)系の比透磁率μsが約5000のトロイダルコアを用いたときの減衰量の周波数特性を示す図であり,図3は図1に示す雑音除去フィルタにおいてMn-Zn系の比透磁率μsが約5000のトロイダルコアを用いたときの減衰量の他の周波数特性を示す図であり,図4は図1に示す雑音除去フィルタにおいてMn-Zn系の比透磁率μsが約2500のトロイダルコアを用いたときの減衰量の周波数特性を示す図であり,図5は図1に示す雑音除去フィルタにおいてMn-Zn系の比透磁率μsが約2500のトロイダルコアを用いたときの減衰量の他の周波数特性を示す図であり,図6は図1に示す雑音除去フィルタにおいてNi-Zn(ニッケル・亜鉛)系の比透磁率μsが約800のトロイダルコアを用いたときの減衰量の周波数特性を示す図であり,図7は図1に示す雑音除去フィルタにおいてNi-Zn系の比透磁率μsが約800のトロイダルコアを用いたときの減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【0015】
図1に示す構成の雑音除去フィルタ100は,平行電線や電力線等の2本の電線を用いる場合の雑音除去フィルタとされている。雑音除去フィルタ100は,第1の入力端子IN1と第1の出力端子OUT1との間に接続された第1のチョークコイルCH1と,第2の入力端子IN2と第2の出力端子OUT2との間に接続された第2のチョークコイルCH2とから構成されている。第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とはトロイダルコアに電線を巻回することにより構成されている。この電線は単線でも撚り線でも良い。この明細書で云うトロイダルコアとは,Mn-Zn系やNi-Zn系等の複合フェライトを高温でリング状に焼結したコアを意味している。
このトロイダルコアをMn-Zn系として内径が約40ミリ,比透磁率μsが約5000のトロイダルコアに,電線を24ターン巻回して第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2を構成する。この第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とからなる雑音除去フィルタ100の1MHzまでの減衰量の周波数特性が図2に示されており,スケールを変えて100MHzまでの減衰量の周波数特性が図3に示されている。図2を参照すると,0.3MHz周辺に約39dBの減衰量のピークがあり,1MHzまでは良好な減衰特性を示している。また,図3を参照すると,周波数が高くなるにつれて減衰量が低下していき,約40MHzにおける減衰量は約14dBまで低下するようになる。そして,40MHz以上の周波数においては次第に減衰量が増加して,約90MHzにおいてピークがあるものの約22dBの減衰量しか得られていない。このように,Mn-Zn系の比透磁率μsが約5000のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,低域の減衰特性に優れているものの,高域部は40MHz辺りで約14dBの減衰量しか得られず,高域において減衰特性が劣っていることが分かる。
【0016】
次に,トロイダルコアをMn-Zn系として内径が約31ミリ,比透磁率μsが約2500のトロイダルコアに,電線を22ターン巻回して第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とを構成する。この第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とからなる雑音除去フィルタ100の1MHzまでの減衰量の周波数特性が図4に示されており,スケールを変えて100MHzまでの減衰量の周波数特性が図5に示されている。図4を参照すると,0.8MHz周辺に約48dBの減衰量のピークがあり,1MHzまでは良好な減衰特性を示している。また,図5を参照すると,周波数が高くなるにつれて減衰量が低下していき,約35MHzにおける減衰量は約17dBまで低下し,約70MHzにおいても約16dBまで減衰量は低下してしまうようになる。そして,70MHz以上の周波数において次第に減衰量が増加して,約100MHzにおいてピークがあるものの約21dBの減衰量しか得られない。このように,Mn-Zn系の比透磁率μsが約2500のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,低域の減衰特性に優れているものの,高域部は70MHz辺りで約16dBの減衰量しか得られず,高域において減衰特性が劣っていることが分かる。
【0017】
次に,トロイダルコアをNi-Zn系として内径が約27ミリ,比透磁率μsが約800のトロイダルコアに,電線を18ターン巻回して第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とを構成する。この第1のチョークコイルCH1および第2のチョークコイルCH2とからなる雑音除去フィルタ100の1MHzまでの減衰量の周波数特性が図6に示されており,スケールを変えて100MHzまでの減衰量の周波数特性が図7に示されている。図6を参照すると,次第に減衰量が増加するが,1MHz周辺において約23dBの減衰量しか得られておらず,1MHzまで減衰特性は劣っている。また,図7を参照すると,周波数が高くなるにつれて減衰量が増加していき,約35MHz周辺における減衰量は約46dBまで増加する。この場合,約7MHzないし約55MHzの広帯域に渡り40dB以上の減衰量が得られるようになる。そして,60MHz以上の周波数において次第に減衰量は低下して,約95MHzにおいて約12dBの減衰量しか得られないようになる。このように,Ni-Zn系の比透磁率μsが約800のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,高域の減衰特性に優れているものの,低域部は約20dB前後の減衰量しか得られず,低域において減衰特性が劣っていることが分かる。」

ウ 「【0018】
以上のように,Mn-Zn系のトロイダルコアとNi-Zn系のトロイダルコアとでは,減衰量の周波数特性が異なることの知見を得たことからなし得た本発明の第1実施例の雑音除去フィルタ1の構成を示す回路図を図8に示す。
図8に示す第1実施例の雑音除去フィルタ1は,平行電線や電力線等の2本の電線を用いる場合の雑音除去フィルタとされている。第1実施例の雑音除去フィルタ1は,低域の減衰特性が優れているMn-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第1のチョークコイルCH1-1と,高域の減衰特性が優れているNi-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第2のチョークコイルCH1-2とが直列に接続されて第1の入力端子IN1と第1の出力端子OUT1との間に接続されている。また,低域の減衰特性が優れているMn-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第3のチョークコイルCH1-3と,高域の減衰特性が優れているNi-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第4のチョークコイルCH1-4とが直列に接続されて第2の入力端子IN2と第2の出力端子OUT2との間に接続されている。第1のチョークコイルCH1-1ないし第4のチョークコイルCH1-4に巻回されている電線は,単線でも撚り線でも良い。この第1のチョークコイルCH1-1ないし第4のチョークコイルCH1-4はシールドケース10内に収納されている。
【0019】
上記説明した第1実施例の雑音除去フィルタ1の使用方法の一例を説明すると,1台目の雑音除去フィルタ1の第1の入力端子IN1と第2の入力端子IN2とが,例えばインバータ装置の出力側に接続され,この雑音除去フィルタ1の第1の出力端子OUT1と第2の出力端子OUT2に平行電線や電力線等の2本の電線がそれぞれ接続される。また,2台目の雑音除去フィルタ1の第1の出力端子OUT1と第2の出力端子OUT2とが,例えばインバータ装置の入力側に接続され,この雑音除去フィルタ1の第1の入力端子IN1と第2の入力端子IN2に,ソーラーパネルに接続されている平行電線等の2本の電線がそれぞれ接続される。このように,雑音を発生するインバータ装置の入力側と出力側にそれぞれ雑音除去フィルタ1を接続することにより,インバータ装置において発生された高周波雑音が,ソーラーパネルに接続されている電線やインバータ装置に接続されている電力線から放射されることを極力防止することができる。
【0020】
ここで,第1実施例の雑音除去フィルタ1の具体的構成の一例を説明する。第1のチョークコイルCH1-1および第3のチョークコイルCH1-3に使用されているMn-Zn系のトロイダルコアは,内径が約31ミリ,比透磁率μsが約2500であり,電線を22ターン巻回して第1のチョークコイルCH1-1および第3のチョークコイルCH1-3を構成する。また,第2のチョークコイルCH1-2および第4のチョークコイルCH1-4に使用されているNi-Zn系のトロイダルコアは,内径が約27ミリ,比透磁率μsが約800であり,電線を18ターン巻回して第2のチョークコイルCH1-2および第4のチョークコイルCH1-4を構成する。
【0021】
このように構成した第1のチョークコイルCH1-1ないし第4のチョークコイルCH1-4からなる第1実施例の雑音除去フィルタ1の1MHzまでの減衰量の周波数特性が図10に示されており,スケールを変えて100MHzまでの減衰量の周波数特性が図11に示されている。図10を参照すると,約0.8MHzまでは次第に減衰量が増加していき,0.8MHz周辺に約44dBの減衰量のピークがあり,1MHzまでは良好な減衰特性を示している。また,図11を参照すると,2,3MHz近辺において減衰量は約35dBまで低下するものの,それ以上の周波数において減衰量は増加していき約35MHz周辺における減衰量は約58dBまで増加する。この場合,約4MHzないし約75MHzの広帯域に渡り40dB以上の減衰量が得られるようになる。そして,80MHz以上の周波数において次第に減衰量は低下して,約95MHzにおいて約25dBの減衰量まで低下するようになる。このように,本発明の第1実施例の雑音除去フィルタ1は,低域の減衰特性が優れていると共に,高域の減衰特性も優れていることから,約0.5MHz?約90MHzの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる。また,コモンモードやノーマルモードの雑音によらず,全てのモードの高周波雑音を除去することができる。」

エ 図1は,次のとおりである。



オ 図8は,次のとおりである。



(2)引用発明2
上記(1)ア?オの記載によれば,引用文献2には,「Mn-Zn系の比透磁率μsが約5000のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,低域の減衰特性に優れているものの」「高域において減衰特性が劣」り(【0015】),「Mn-Zn系の比透磁率μsが約2500のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,低域の減衰特性に優れているものの」「高域において減衰特性が劣」り(【0016】),「Ni-Zn系の比透磁率μsが約800のトロイダルコアを用いた雑音除去フィルタ100は,高域の減衰特性に優れているものの」「低域において減衰特性が劣」る(【0017】)との知見に基づいてなされた,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「平行電線や電力線等の2本の電線を用いる場合の雑音除去フィルタであって,
低域の減衰特性が優れているMn-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第1のチョークコイルCH1-1と,高域の減衰特性が優れているNi-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第2のチョークコイルCH1-2とが直列に接続されて第1の入力端子IN1と第1の出力端子OUT1との間に接続され,
低域の減衰特性が優れているMn-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第3のチョークコイルCH1-3と,高域の減衰特性が優れているNi-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成された第4のチョークコイルCH1-4とが直列に接続されて第2の入力端子IN2と第2の出力端子OUT2との間に接続され,
第1のチョークコイルCH1-1ないし第4のチョークコイルCH1-4はシールドケース10内に収納され,
第1のチョークコイルCH1-1および第3のチョークコイルCH1-3に使用されているMn-Zn系のトロイダルコアは,内径が約31ミリ,比透磁率μsが約2500であり,
第2のチョークコイルCH1-2および第4のチョークコイルCH1-4に使用されているNi-Zn系のトロイダルコアは,内径が約27ミリ,比透磁率μsが約800である,
低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる雑音除去フィルタ。」

また,上記(1)アには,引用発明2の効果として「Mn-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した第1のチョークコイルと,Ni-Zn系のトロイダルコアに導体線を巻回した第2のチョークコイルとを直列接続して雑音除去フィルタを構成したことから,低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる」ことが記載されている。


3 周知技術
(1)引用文献3の記載
引用文献3(特開平11-346472号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。)。

ア 「【0013】実施の形態1.図1は,この発明の実施の形態1によるノイズフィルタを模式的に示す斜視図である。また,図2は,この発明の実施の形態によるノイズフィルタの動作を説明するための等価回路図である。図において,プリント配線基板A上にはコモンモードチョークコイルL1,L2及び導電体Bが配置されている。プリント配線基板A及びコモンモードチョークコイルL1,L2は図7の従来のノイズフィルタの示すものと同じものであり,従来のノイズフィルタとの相違点は導電体Bが2個のコモンモードチョークコ イルL1,L2の間に挿入されていることである。前記導電体Bはプリント配線基板Aのアースパターン若しくはシャシー等のアース電位に接続される。また前記導電体Bは,導電性を持つ材料であれば任意のものを使用することが可能である。なお,前記導電体Bは二つのコモンモードチョークコイル間に存在する浮遊静電容量による結合は分断される程度に所定の面積を必要とする。」

イ 図1は,次のとおりである。


(2)引用文献4の記載
引用文献4(特開2010-165795号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。)。

ア 「【0020】
以下,図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は,本発明の一実施形態に係る空気調和機のコントローラ用のノイズフィルタ用基板の一例を示す。図1(A)は,ノイズフィルタ用基板1の平面図であり,図1(B)は,ノイズフィルタ用基板1の正面図である。
【0021】
ノイズフィルタ用基板1は,トロイダルコイル200が,本発明の一実施形態に係るチョークコイル台座100に載置されてプリント基板300に配設されている。なお,トロイダルコイル200の巻線の端部にはリード端子が接続され,該リード端子はプリント基板300に接続されているが,図1では,チョークコイル台座100の説明のために該リード端子の図示を省略している。」

イ 図1は,次のとおりである。


(3)周知技術
上記(1)及び(2)のように,2つのインダクタ素子を実装する際に,1つの支持体に配置すること(上記(1))及び2つの支持体にそれぞれ配置すること(上記(2))は,いずれも周知技術である。


第5 対比・判断
1 引用発明1を主とした場合について
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 本願発明の「ノイズフィルタ」と引用発明1の「インダクタンス素子を用いたノイズフィルタ」とは,いずれも「インダクタ素子を含」む「ノイズフィルタ」といえる点で共通する。

イ 引用発明1の「環状の絶縁ケース2aの内部」に配される「トロイダル形状の磁気コア1a」,「絶縁ケース2aの外周に被覆導線7a,7bを巻回」して形成される「コイル8a,8b」,「インダクタ素子」が「載置」される「台座9」は,それぞれ本願発明の「円環状の磁性コア」,「前記磁性コアを巻き回す巻線」,「インダクタ素子」が「配置される」「支持体」に対応する。

ウ 引用発明1の「銅等の薄板からなるフック状の導電体5a」は,「フック状の導電体5aの一端は,絶縁ケース2aの一部に設けたスリットを通じて絶縁ケース2aの外側に引き出されており」,「導電体5bの一端の先端部である接地用端子6bを接地する」ものであり,「磁気コア1aの外側を囲むように,絶縁ケース2aの内部に形成した溝3bに挿配し,この溝3bにより導電体5bと磁気コア1bとが構造的に絶縁されて」いるから,本願発明の「前記磁性コアの外周の少なくとも一部を囲む導電部を有し」,「前記磁性コアと前記巻線との間に配置されて,グラウンドに接続される接地端子」に対応し,本願発明と同様に,「前記導電部は,前記ケースの内側の溝に挿入されることによって,前記導電部と前記磁性コアとは,電気的に絶縁」しているといえる。

エ 引用発明1の「環状の絶縁ケース2a」は,本願発明の「前記磁性コアと前記接地端子とを収納するケース」に対応する。

上記ア?エより,本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「インダクタ素子を含み,
前記インダクタ素子は,円環状の磁性コアと,前記磁性コアを巻き回す巻線と,前記磁性コアと前記巻線との間に配置されて,グラウンドに接続される接地端子と,前記磁性コアと前記接地端子とを収納するケースと,を備え,
前記接地端子は,前記磁性コアの外周の少なくとも一部を囲む導電部を有し,
前記導電部は,前記ケースの内側の溝に挿入されることによって,前記導電部と前記磁性コアとは,電気的に絶縁し,
インダクタ素子は,支持体に配置される,
ノイズフィルタ。」

<相違点>
本願発明では,「互いに直列に接続される複数のインダクタ素子を含み」,「前記複数のインダクタ素子は,第1及び第2のインダクタ素子を含み」,「前記第1のインダクタ素子が備える磁性コアは,前記第2のインダクタ素子が備える磁性コアと異なる透磁率を有し」,「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置される」のに対し,引用発明1では,1つの「インダクタ素子」を含み,前記「インダクタ素子」は「台座9に載置」される点。


(2)判断
引用文献1の【技術分野】と【背景技術】にも記載されているように,ノイズフィルタに用いられるインダクタンス素子において,減衰特性の広帯域化は,一般的な課題であって引用発明1においても,当然考慮している課題である。

そして,上記「第4」2(2)のとおり,引用発明2は,「低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ることができる」という効果を奏するものである。

そうすると,引用発明1は,広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ようとするための発明であるから,さらに広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得ようとするため,「低域の減衰特性が優れているMn-Zn系」の磁気コアと,当該磁気コアとは透磁率が異なる「高域の減衰特性が優れているNi-Zn系」の磁気コアとをそれぞれ備えた引用発明1に係る「インダクタ素子」を「直列に接続」して,「低域から高域までの広帯域の周波数帯域において安定した大きな減衰量を得」ようとする動機があるといえる。

そして,上記「第4」3(3)のとおり,2つのインダクタ素子を実装する際に,1つの支持体に配置すること及び2つの支持体にそれぞれ配置することは,いずれも周知技術であって,当業者が適宜なし得る設計事項である。

よって,引用発明1に引用発明2を適用して,「低域の減衰特性が優れているMn-Zn系」の磁気コアと,当該磁気コアとは透磁率が異なる「高域の減衰特性が優れているNi-Zn系」の磁気コアとをそれぞれ備えた引用発明1に係る「インダクタ素子」を「直列に接続」するとともに,2つの台座にそれぞれ載置すること(請求項1の「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置される」ことに相当。)は,当業者が容易になし得ることである。


2 引用発明2を主とした場合について
(1) 本願発明と引用発明2との対比
引用発明2の「低域の減衰特性が優れているMn-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成」された「チョークコイルCH1-1」及び「CH1-3」と,「高域の減衰特性が優れているNi-Zn系のトロイダルコアに電線を巻回することにより構成」された「チョークコイルCH1-2」及び「CH-4」とは,本願発明にいう「前記第1のインダクタ素子が備える磁性コアは,前記第2のインダクタ素子が備える磁性コアと異なる透磁率を有」する「第1及び第2のインダクタ素子」に対応する。

そして,引用発明2はこれらを「直列に接続」して「雑音除去フィルタ」を構成したものであるから,本願発明と同様に,「互いに直列に接続される複数のインダクタ素子を含み」,「前記複数のインダクタ素子は,第1及び第2のインダクタ素子を含」む「ノイズフィルタ」であるといえる。

したがって,本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「互いに直列に接続される複数のインダクタ素子を含み,
前記複数のインダクタ素子は,第1及び第2のインダクタ素子を含み,
前記第1のインダクタ素子が備える磁性コアは,前記第2のインダクタ素子が備える磁性コアと異なる透磁率を有する,
ノイズフィルタ。」

<相違点1>
「インダクタ素子」が,本願発明では,「円環状の磁性コアと,前記磁性コアを巻き回す巻線と,前記磁性コアと前記巻線との間に配置されて,グラウンドに接続される接地端子と,前記磁性コアと前記接地端子とを収納するケースと,を備え」,「前記接地端子は,前記磁性コアの外周の少なくとも一部を囲む導電部を有し」,「前記導電部は,前記ケースの内側の溝に挿入されることによって,前記導電部と前記磁性コアとは,電気的に絶縁し」ているのに対し,引用発明2では,具体的な構成について特定がない点。

<相違点2>
本願発明では,「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置される」のに対し,引用発明2では,具体的な構成について特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用発明2は,Mn-Zn系もNi-Zn系も,リング状のトロイダルコアを用いたコイルを用いてフィルタを構成しているが,その具体的な構造については記載されていない。一方, 引用発明1は,Mn-Zn系やNi-Zn系を用いた「ノイズフィルタ」に用いるインダクタンス素子すなわちコイルの構造が記載されているから,引用発明2のMn-Znを用いたインダクタ素子と,Ni-Znを用いたインダクタ素子として,各々引用発明1で特定される「インダクタ素子」を用いた「ノイズフィルタ」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
引用発明1は,1つの「台座9」に1つの「インダクタ素子」を「載置」したものである。
そして,上記「第4」3(3)のとおり,2つのインダクタ素子を実装する際に,2つのインダクタ素子を2つの支持体にそれぞれ配置することは周知技術であるから,引用発明2に引用発明1を適用するに当たり,2つの「インダクタ素子」を2つの「台座」にそれぞれ載置すること(請求項1の「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置される」ことに相当。)は,当業者が容易になし得ることである。

ウ 効果について
上記相違点1及び相違点2を総合的にみても,その効果は当業者が予測し得る範囲のものである。


3 請求人の主張について
請求人は,令和3年2月4日に提出した意見書において,次のように主張している。
「引用文献1及び引用文献2に記載の発明の課題は全く異なります。
補正後の請求項1の特徴,例えば,補正前の特徴「複数のインダクタ素子」が「互いに直列に接続される」ことや,特徴「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置され」ること,及び上記した効果の一つは,引用文献1-6に記載されておりません。また,その示唆も全く有りません。
さらに,引用文献1は,インダクタンス素子を1つのみ含むノイズフィルタを開示するものであり,引用文献2は,1つのシールドケースに複数のチョークコイルを収納した雑音除去フィルタの一例のみを開示するものであり,複数のインダクタンス素子を個別に用いるという技術思想は開示も示唆もされていません。」

そこで検討するに,課題については,上記1(2)及び上記2(2)アでそれぞれ述べたとおりである。
そして,上記特徴「複数のインダクタ素子」が「互いに直列に接続される」こと及びその効果については,上記「第4」「2(2)引用発明2」のとおりであり,特徴「前記第1及び第2のインダクタ素子は,2つの支持体にそれぞれ配置され」ることは,上記「第4」「3」のとおり周知技術であり,その効果も当業者が予測し得る範囲のものである。

さらに,「引用文献2は,1つのシールドケースに複数のチョークコイルを収納した雑音除去フィルタの一例のみを開示するもの」であるとしても,例えば,本願明細書の【0054】及び図22では,「インダクタ素子10a,10b」がそれぞれ「金属筐体81,82」に収納され,【0055】及び図23では,1つの「金属筐体83」に収納されているように,「1つのシールドケース」に「収納」することと,「2つの支持体にそれぞれ配置」することとは独立して行い得ることである。
そして,「2つの支持体にそれぞれ配置」する点については,上記1(2)及び上記2(2)イでそれぞれ述べたとおりである。

以上のとおりであるから,請求人の主張は採用できない。


第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び引用文献2に記載された発明並びに周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-18 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-06 
出願番号 特願2015-119155(P2015-119155)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹内 亨  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 北岡 浩
衣鳩 文彦
発明の名称 ノイズフィルタ、多段接続LCフィルタ及び医療用機器  
代理人 家入 健  
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