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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1374463
審判番号 不服2020-8107  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-11 
確定日 2021-05-27 
事件の表示 特願2018-169706「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開、特開2018-189368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月31日(優先権主張 平成24年10月12日、平成25年3月12日)に出願した特願2013-115459号の一部を、平成29年3月24日に新たな特許出願とした特願2017-59022号の一部を、平成30年9月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は以下のとおりである。

令和 1年 9月 4日付け 拒絶理由の通知(特許法第50条の2の通知を伴う)
令和 1年11月 1日 手続補正書、意見書の提出
令和 2年 3月10日付け 補正の却下の決定、拒絶査定(3月17日送達)
令和 2年 6月11日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月17日付け 当審による拒絶理由の通知
令和 3年 2月 3日 手続補正書、意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年2月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉の前面に設けられ、情報端末を取り付ける端末取り付け部と、
前記端末取り付け部に前記情報端末を取り付けた状態で、前記情報端末に無線給電する端末給電部とを備え、
前記扉の断熱材の前面に前記端末取り付け部として凹部を設け、前記扉に前記断熱材として第1断熱材と前記第1断熱材よりも断熱性能が高い第2断熱材とを設け、前記第2断熱材の前方において前記第1断熱材を通過するようにして前記端末給電部へ給電を行う配線を設け、
前記凹部に前記情報端末が取り付けられるように構成されたことを特徴とする冷蔵庫。」

第3 令和2年12月17日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和2年12月17日付けで通知した拒絶の理由における理由2及び理由3は、以下の内容を含む。
<理由2(拡大先願)>
本願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた以下の特許出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
特許出願1.特願2012-111992号(特開2013-238357号公報)

<理由3(進歩性)>
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献2.特開2002-39670号公報
引用文献3.特開2004-347238号公報

第4 理由2に関する当審の判断
1.特許出願1の当初明細書等に記載された事項、先願発明
(1) 特許出願1の当初明細書等に記載された事項
当審の拒絶の理由において通知した、本願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願1の当初明細書等には、次の事項が記載されている(下線は、参考のため当審で付与したものである。以下、同様。)。
「【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、以下の説明において、可搬型表示装置は、可搬型テレビ、可搬型電話機、可搬型情報端末及び可搬型コンピュータに大別することができ、タブレット型コンピュータ、分離型テレビ、薄型テレビ、携行型PC、携帯電話及びスマートホンを含むが、これに限られるものではない。
・・・
【0014】
図1は、本発明の一実施例である冷蔵庫1の概略構成を示す斜視図である。この実施例1では、可搬型表示装置を載置する載置部材が、可搬型表示装置100を収納可能な収納部材である例を示しており、可搬型表示装置100が収納された状態を点線で示している
冷蔵庫1は、上面である天板2、冷蔵庫1の正面から向かって左の側面である左側面3、冷蔵庫1の正面から向かって右の側面である右側面4、上扉5、下扉6、載置部材としての収納部材7より構成される。この実施例においては、収納部材7が上扉に設けられた例を示すが、収納部材7は、これ以外に天板2、左側面3、右側面4または下扉6に設けられても構わない。収納部材7は、プラスチック、金属等からなる枠材で構成されており、上部が解放されている。この解放された上部から可搬型表示装置100を下方にスライドさせ、収納部材7に載置することができる。収納部材7を構成する右枠7a、左枠7b、下枠7cは、冷蔵庫1前方に張り出し部を有しているので、所定のサイズの可搬型表示装置100を収納した場合に、前方への落下及びずれを防止することができる。充電部8は、収納部材7角部近傍に設けられ、充電部8の内部には非接触で充電を行うことができる非接触充電手段(後述)が設けられている。この非接触充電手段を含む充電手段としては、従来周知のものを使用することができる。
・・・
【0016】
図3(a)は、冷蔵庫1の上部を示した図であり、収納部材7が前方に傾いた状態を示している。また、図3(b)は、図3(a)に対応した冷蔵庫1の上部扉断面図である。図3では、薄型テレビ等がなるべく突出しないように、上扉5に凹み5’を設けている。この凹み5’によって、収納部材7が前方に傾かない状態では、可搬型表示装置100を載置することができないため、収納部材7は上扉5に対して下部を中心として軸9の周りに枢動可能となっている。収納部材7を前方に枢動させ傾いた状態で、可搬型表示装置100をスライドさせ収納部材7に載置する。可搬型表示装置100の脱落防止のため、収納部材7が所定の角度以上に傾かないように、ストッパ(図示せず)が設けられている。
【0017】
図3(b)では、収納部材7が軸9を軸として前方に傾いた状態を破線7’で示している。上扉5の内部には、充電部8に対応する位置に充電器10が配置されている。充電器10は、電磁的に非接触に可搬型表示装置100を充電するものであり、周知のものが使用可能である。また、充電器10への電源の供給は、例えば、冷蔵庫1の本体から、上扉5の回転軸(図示せず)を経由して行われる。充電器10と冷蔵庫1の本体との接続についても、上扉5と冷蔵庫1の本体を電磁的に接続することにより、非接触での給電が可能である。
【0018】
あるいは、収納部材7に充電器10を設け、接触式の充電を行う構成としてもよい。収納部材7に充電の接続部を設けた場合、冷蔵庫の扉の断熱材の内部には接続用の配線の配設のみであり、設計自由度が高くなるとともに、扉の断熱効果の低下を最低限に抑えることが可能となる。
・・・
【0020】
上扉5の断熱材は、可搬型表示装置100の裏面に対向する上扉5内部に配置され、可搬型表示装置100及び充電器10が発熱し易いことから、高性能断熱材11および通常の断熱材12で構成されている。断熱材12はイソシアネートとポリオールの混合液に、発泡剤としてシクロペンタンを添加して、冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡されたものが一般的である。また高性能断熱材11は、一般的に樹脂製フィルムを複数枚積層したラミネートフィルムを複数枚重ねて周縁部を熱溶着し、袋状にしたガスバリア性外包材に、ガラス繊維や連通ウレタン等を単層又は複数層積層させ芯材とし挿入、封止して内部を真空にしたものである。ここで用いられる樹脂製フィルムは、一般に熱溶着層と、ガスバリア層と、傷つき防止層とで構成されている。また前記ガスバリア層はエチレンビニルアルコール共重合体樹脂で構成されるような樹脂フィルムの片側にアルミ蒸着し、さらにアルミナ蒸着又はシリカ蒸着を施したもので構成されている。高性能断熱材11および断熱材12は、要求される断熱性能に応じて、適宜材料及び組合せを選択することが可能である。」
「【図3】


(2) 上記(1)の記載された事項からわかる、当初明細書等に記載されているに等しい事項
【図3】(b)から、高性能断熱材11と通常の断熱材12の前面に凹み5‘が設けられていることが明らかである。
【0016】に記載された「上扉5に凹み5’を設けている。この凹み5’によって、収納部材7が前方に傾かない状態では、可搬型表示装置100を載置することができないため、収納部材7は上扉5に対して下部を中心として軸9の周りに枢動可能となっている。」から、凹み5‘に収納部材7が設けられていることが明らかである。
【0017】に記載された「充電器10への電源の供給は、例えば、冷蔵庫1の本体から、上扉5の回転軸(図示せず)を経由して行われる。」という事項が、配線により行われる電源の供給であることは、“扉の回転軸を経由して行われること”及び“扉の回転軸に配線を通すという冷蔵庫に関する慣用技術”から明らかである。
また、【図3】(b)に示される充電器10と高性能断熱材11との位置関係からみて、前記配線が高性能断熱材11の前方を通過することは明らかである。そして「断熱材12」が「冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡されたもの」である場合、「冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内」のほとんどは充填発泡された断熱材12に埋め尽くされるという技術常識から、配線の周囲も断熱材12に埋め尽くされており、前記配線は高性能断熱材11の前方において断熱材12を通過するようになっているといえる。
なお、充電器10に給電するための配線が、断熱材12を通過するようになっていることは、【0018】の「あるいは、収納部材7に充電器10を設け、接触式の充電を行う構成としてもよい。収納部材7に充電の接続部を設けた場合、冷蔵庫の扉の断熱材の内部には接続用の配線の配設のみであり、」という記載からも明らかである。

(3) 上記(1)及び(2)の事項を総合すると、特許出願1の当初明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「天板2、正面から向かって左の側面である左側面3、正面から向かって右の側面である右側面4、上扉5、下扉6、載置部材としての収納部材7より構成される冷蔵庫1であって、
上扉5の断熱材は、高性能断熱材11及び冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡された通常の断熱材12で構成されていて、
上扉5の高性能断熱材11及び通常の断熱材12の前面に凹み5’が設けられ、この凹み5’に収納部材7が設けられ、
可搬型表示装置100を収納部材7に載置することができ、
可搬型表示装置100は、可搬型テレビ、可搬型電話機、可搬型情報端末及び可搬型コンピュータに大別することができ、
上扉5の内部には、充電器10が配置されていて、充電器10は、電磁的に非接触に可搬型表示装置100を充電するものであり、
充電器10への電源の供給は、冷蔵庫1の本体から、上扉5の回転軸を経由して、高性能断熱材11の前方において断熱材12を通過する配線により行われる、
冷蔵庫1。」

2.対比
先願発明と本願発明とを対比する。
(1) 先願発明の「冷蔵庫1」は貯蔵室を有することは明らかであるから、先願発明の「上扉5」は、本願発明の「前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉」に相当し、先願発明の「天板2、正面から向かって左の側面である左側面3、正面から向かって右の側面である右側面4、上扉5、下扉6、載置部材としての収納部材7より構成される冷蔵庫1」は、本願発明の「貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫」に相当する。

(2) 先願発明は「可搬型表示装置100は、可搬型テレビ、可搬型電話機、可搬型情報端末及び可搬型コンピュータに大別することができ」、少なくとも可搬型情報端末及び可搬型コンピュータは情報端末であるといえるから、先願発明の「可搬型表示装置100」は、本願発明の「情報端末」に相当する。

(3) 先願発明は、「上扉5の高性能断熱材11及び通常の断熱材12の前面に凹み5’が設けられ、この凹み5’に収納部材7が設けられ、可搬型表示装置100を収納部材7に載置することができ」るから、先願発明の「凹み5’」及び「収納部材7」は、本願発明の「前記扉の前面に設けられ、情報端末を取り付ける端末取り付け部」に相当する。また、先願発明の「上扉5の高性能断熱材11及び通常の断熱材12の前面に凹み5’が設けられ、この凹み5’に収納部材7が設けられ、可搬型表示装置100を収納部材7に載置することができ」ることは、本願発明の「前記凹部に前記情報端末が取り付けられるように構成されたこと」に相当する。

(4) 先願発明の「充電器10は、電磁的に非接触に可搬型表示装置100を充電する」が、可搬型表示装置100を収納部材7に載置した状態で行われることは明らかである。そうすると、先願発明の「上扉5の内部に」「配置されてい」る「充電器10」は、本願発明の「前記端末取り付け部に前記情報端末を取り付けた状態で、前記情報端末に無線給電する端末給電部」に相当する。

(5) 先願発明の「冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡された通常の断熱材12」及び「高性能断熱材」は、本願発明の「第1断熱材」及び「前記第1断熱材よりも断熱性能が高い第2断熱材」にそれぞれ相当する。
そうすると、先願発明の「上扉5の断熱材は、高性能断熱材11及び冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡された通常の断熱材12で構成されていて」いることは、本願発明の「前記扉に前記断熱材として第1断熱材と前記第1断熱材よりも断熱性能が高い第2断熱材とを設け」られていることに相当する。先願発明の「上扉5の高性能断熱材11及び通常の断熱材12の前面に凹み5’が設けられ、この凹み5’に収納部材7が設けられ」ることは、本願発明の「前記扉の断熱材の前面に前記端末取り付け部として凹部を設け」ることに相当する。先願発明の「充電器10への電源の供給は、冷蔵庫1の本体から、上扉5の回転軸を経由して、高性能断熱材11の前方において断熱材12を通過する配線により行われる」は、本願発明の「前記第2断熱材の前方において前記第1断熱材を通過するようにして前記端末給電部へ給電を行う配線を設け」に相当する。

そうすると、両者の間に相違点はなく同一である。

3.請求人の主張
請求人は、令和3年2月3日に提出した意見書において、「この先願1は、その電源供給を行うための『配線』を全く図示しておらず、従いまして、この先願1の記載内容から、具体的な配線の配置態様を把握することはできません。まして、この先願1は、本願発明の特徴点、つまり、第2断熱材の前方において『第1断熱材を通過する』ようにして配線を設けることについて、何ら開示も示唆もしていません。」(「3-2.理由2,3(拡大先願,進歩性)について」の項参照。)と主張している。
しかしながら、上記のとおり、特許出願1の【0017】に記載された充電器10への電源の供給に関する事項、【図3】(b)に示された各部材の位置関係、“扉の回転軸に配線を通すという冷蔵庫に関する慣用技術”及び“断熱材が冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡されたものである場合、冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内のほとんどは充填発泡された断熱材に埋め尽くされるという技術常識”からみて、特許出願1の当初明細書等には、「高性能断熱材11の前方において断熱材12を通過する配線」が記載されているに等しいといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

4.小括
上記1ないし3の検討によれば、本願発明は先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が特許出願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第5 理由3に関する当審の判断
1.引用文献2
(1) 当審の拒絶の理由において通知した、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図2は、本実施例に係る冷蔵庫の正面外観を示しており、ここで、冷蔵庫本体1は、断熱箱体から構成され、その内部には、上段から、冷蔵室、野菜室、自動製氷装置を備える第1冷凍室、第2冷凍室が設けられている。そして、それら各室の前面部には、夫々、ヒンジ開閉式の扉2、引出し式の扉3,4,5が開閉可能に設けられている。また、この冷蔵庫本体1には、前記各扉2?5の開閉を検出する扉開閉検出手段としての扉開閉センサ6(図1にのみ図示)が設けられている。
・・・
【0020】そして、この冷蔵庫本体1の外壁面部この場合冷蔵室の扉2の前面部には、図4に示すように、後述するパネルコンピュータ13が着脱可能にセットされる保持部14が設けられている。この保持部14は、扉2の前面に矩形状に凹部を形成すると共に、例えばパネルコンピュータ13の左右の側面部を係止して確実に保持するための図示しないラッチ機構などを備えて構成される。このとき、この保持部14の奥面は、上側が後方に緩やかに傾斜する傾斜面とされている。また、この保持部14の下端部中央部から連続するように、手掛用凹部14aが形成されている。
【0021】さらに、この保持部14部分には、詳しく図示はしないが、前記パネルコンピュータ13の着脱状態を検出するための検出手段たる着脱検出センサ15(図1にのみ図示)が設けられている。また、後述するように、この保持部14部分には、右下部(奥面の裏側)に位置して、パネルコンピュータ13に対して動作電源を供給する電源供給手段としての給電部16が設けられていると共に、左上部側に位置して、パネルコンピュータ13との間で非接触通信を行なうための通信手段を構成する通信部17が設けられている。
・・・
【0027】このパネルコンピュータ13は、上述したように、冷蔵庫本体1の保持部14に着脱可能にセットされるのであるが、本体部13a内の裏面側部分(右下部分)には、その装着(保持)状態で、前記給電部16から駆動電源の供給を受ける受電部24(図3参照)が設けられている。この場合、前記給電部16は、電磁誘導による非接触給電を行なうようになっており、具体的には、図5に示すように、給電部16は、交流電流を給電用コイル16aに流すように構成され、受電部24は、受電用コイル24a及び整流回路24b等を備えて構成される。このとき、本体部13a内には、駆動用の二次電池(図示せず)が設けられており、受電部24を介してその充電も行なわれるようになっている。」
「【図4】


「【図5】



(2) 上記(1)の記載された事項からわかること
【0027】に記載された「前記給電部16は、電磁誘導による非接触給電を行なうようになっており、具体的には、図5に示すように、給電部16は、交流電流を給電用コイル16aに流すように構成され、受電部24は、受電用コイル24a及び整流回路24b等を備えて構成される。」及び【図5】とから、給電部16が配線により給電されることは明らかである。

(3) 引用文献2に記載された発明
上記(1)及び(2)の事項を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「冷蔵庫本体1は、断熱箱体から構成され、冷蔵室の前面部に扉2が設けられ、
冷蔵室の扉2の前面部には、パネルコンピュータ13が着脱可能にセットされる保持部14が設けられていて、
この保持部14は、扉2の前面に矩形状に凹部を形成して、
この保持部14部分には、右下部(奥面の裏側)に位置して、パネルコンピュータ13に対して動作電源を供給する電源供給手段としての給電部16が設けられていて、
このパネルコンピュータ13は、本体部13a内の裏面側部分(右下部分)には、その装着(保持)状態で、前記給電部16から駆動電源の供給を受ける受電部24が設けられていて、
前記給電部16は、電磁誘導による非接触給電を行うようになっていて、配線により給電される、
冷蔵庫。」

2.引用文献3
(1) 当審の拒絶の理由において通知した、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した冷蔵庫は、扉の断熱厚を一定以上薄肉にすることができないものであった。一般的に熱伝導率が高い補強板が配置されていると、3℃程度の庫内冷気が庫外に向けてリークし易くなっており、また、発熱している操作パネルは断熱材中で最も温度が高い部分となっていることから、断熱厚が薄い場合には、このリークした冷気が操作パネルの背面に結露する恐れがある。
このため、図6に示すように補強板114と操作パネル113との距離aを一定(例えば、25mm)以上保持する必要があり、扉前面に操作パネル113を備えた冷蔵庫100においては、これらの制約により一定以上扉104の肉厚bを薄くすることができなかった。
一方、図7の冷蔵庫の形態においては、肉厚部の部分に操作パネル213を配置しているため、補強板214の影響を受けず、扉204の肉厚bを薄くすることができるが、操作パネル213の配置位置は、このように扉204の肉厚部である周縁位置にのみ限定され、意匠的な制約を受けるものであった。
・・・
【0013】
図1は、図3のT-T線に沿う左扉12の横断面図を示し、図2は、図3S-S線に沿う左扉12を示す縦断面図である。左扉12は、扉表面を構成する断面コ字状の剛板製の外板21と、この扉外板の上下2辺に装着された合成樹脂製のキャップ23と、外板21に断熱空間を介して室内側面を形成する内板22と、これらの内部空間に現場発泡方式にてウレタンフォームなどの断熱材23を充填して一体化したものである。
・・・
【0020】
図4は、他の実施形態を示すものであるが、かかる構成は、内板22と操作パネル30間の断熱材中に、真空断熱材を用いたものである。真空断熱材は、一般のウレタンフォームより成る断熱材と比較して断熱効率がよいため、内板22と操作パネル30の距離Xをさらに短くしても操作パネル30の背面に結露することを防止することができる。よって、扉12’の肉厚を薄くすることができ、もって、貯蔵空間スペースをさらに拡大することができる。
・・・
【符号の説明】
・・・27…真空断熱材」
「【図4】



(2) 上記(1)の記載された事項からわかること
左扉12’のウレタンフォームの断熱材23の前面に操作パネル30の取り付け部として凹部が設けられていること。

(3) 引用文献3に記載された技術
上記(1)及び(2)の事項を総合すると、引用文献3には、以下の技術(以下「引用文献3技術」という。)が記載されていると認められる。
「左扉12’に断熱材として、現場発泡方式にて充填されるウレタンフォームの断熱材23と、前記ウレタンフォームの断熱材23と比較して断熱効率がよい真空断熱材27とを設け、前記真空断熱材27の前方に前記断熱材23が配置され、
前記左扉12’の前記ウレタンフォームの断熱材23の前面に操作パネル30の取り付け部として凹部が設けられた冷蔵庫。」

3.対比・判断
(1) 引用発明と本願発明とを対比する。
ア 引用発明の「冷蔵室」、「扉2」及び「冷蔵庫本体1」は、本願発明の「貯蔵室」、「扉」及び「冷蔵庫」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「扉2」は「冷蔵室の前面部に」「設けられ」るから、本願発明の「冷蔵室の前面開口部を開閉する扉」に相当する。

イ 引用発明の「パネルコンピュータ13」及び「パネルコンピュータ13が着脱可能にセットされる保持部14」は、本願発明の「情報端末」及び「情報端末を取り付ける端末取り付け部」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「保持部14」は、「冷蔵室の扉2の前面部に」「設けられてい」るから、本願発明の「端末取り付け部」が「前記扉の前面に設けられ」る点とも一致する。

ウ 引用発明は、「この保持部14部分には、右下部(奥面の裏側)に位置して、パネルコンピュータ13に対して動作電源を供給する電源供給手段としての給電部16」が設けられるもので、「パネルコンピュータ13」は、「本体部13a内の裏面側部分(右下部分)には、その装着(保持)状態で、前記給電部16から駆動電源の供給を受ける受電部24が設けられ」、「前記給電部16は、電磁誘導による非接触給電を行うようになってい」るから、引用発明の「給電部16」は、本願発明の「前記端末取り付け部に前記情報端末を取り付けた状態で、前記情報端末に無線給電する端末給電部」に相当する。

エ 引用発明の「この保持部14は、扉2の前面に矩形状に凹部を形成して」いる点は、本願発明の「前記扉の断熱材の前面に前記端末取り付け部として凹部を設け」という点と、「前記扉の」「前面に前記端末取り付け部として凹部を設け」ている点に限り、一致する。

オ 引用発明の「前記給電部16は、」「配線により給電される」点は、本願発明の「前記端末給電部へ給電を行う配線を設け」ている点に相当する。

カ 引用発明の「冷蔵室の扉2の前面部には、パネルコンピュータ13が着脱可能にセットされる保持部14が設けられていて、この保持部14は、扉2の前面に矩形状に凹部を形成して」いる点は、本願発明の「前記凹部に前記情報端末が取り付けられるように構成された」点に相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉の前面に設けられ、情報端末を取り付ける端末取り付け部と、
前記端末取り付け部に前記情報端末を取り付けた状態で、前記情報端末に無線給電する端末給電部とを備え、
前記扉の前面に前記端末取り付け部として凹部を設け、前記扉に前記端末給電部へ給電を行う配線を設け、
前記凹部に前記情報端末が取り付けられるように構成された、冷蔵庫。」

[相違点]
本願発明は、扉に「前記断熱材として第1断熱材と前記第1断熱材よりも断熱性能が高い第2断熱材とを設け」、凹部が扉の「断熱材の」前面に設けられており、配線が「前記第2断熱材の前方において前記第1断熱材を通過するように」なっているのに対して、引用発明は、扉に断熱材が設けられているか不明であり、凹部及び配線と、断熱材との位置関係が不明である点。

(2) 相違点に関する判断
引用文献3の【0008】には、「発熱している操作パネルは断熱材中で最も温度が高い部分となっていることから、断熱厚が薄い場合には、このリークした冷気が操作パネルの背面に結露する恐れがある。」という課題が記載され、【0020】には、「操作パネル30の背面に結露することを防止することができる。」という引用文献3技術を採用することによる効果が記載されている。
引用発明のパネルコンピュータ13が発熱することは明らかであり、引用文献3に記載された「断熱材中で最も温度が高い部分」に相当するから、引用文献3に記載された「断熱厚が薄い場合には、」「リークした冷気が」「背面に結露する恐れがある」という課題は、引用発明のパネルコンピュータ13にも同様に当てはまる。そうすると、引用発明に引用文献3技術を適用して、扉2を「断熱材として、現場発泡方式にて充填されるウレタンフォームの断熱材23と、前記ウレタンフォームの断熱材23と比較して断熱効率がよい真空断熱材27とを設け、前記真空断熱材27の前方に前記断熱材23が配置された」ものとして、前記扉2「の前記ウレタンフォームの断熱材23の前面に」パネルコンピュータ13の「取り付け部として凹部が設けられ」るようにすることは、当業者にとって容易である。
その際、“引用発明において、「扉2の前面に矩形状に凹部を形成」する「保持部14」の「右下部(奥面の裏側)に」「給電部16」が「位置して」いること”、“引用文献3技術において、真空断熱材27の前方に現場発泡方式にて充填されるウレタンフォームの断熱材23が配置されていること”及び“断熱材が冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内に充填発泡されたものである場合、冷蔵庫の内箱と外箱により形成された空間内のほとんどは充填発泡された断熱材に埋め尽くされるという技術常識”からみて、配線が「第2断熱材(真空断熱材27)の前方において前記第1断熱材(ウレタンフォームの断熱材23)を通過するように」なることは、明らかである。
仮に明らかでないとしても、配線が「第2断熱材(真空断熱材27)の前方において前記第1断熱材(ウレタンフォームの断熱材23)を通過するように」することは、凹部を形成する保持部14、ウレタンフォームの断熱材23、真空断熱材27及び給電部16の位置関係からみて、当業者が当然になし得ることである。

(3) 請求人の主張について
請求人が、令和3年2月3日に提出した意見書において主張する「配線を第1断熱材によって保護することができ、配線の断線や損傷などを抑制することができます。また、本願発明によれば、配線を周方向の全体において第1断熱材によって支持することができ、配線を安定した状態で備えることができます。」(「3-2.理由2,3(拡大先願,進歩性)について」参照。)という効果は、引用発明、引用文献3技術及び技術常識から、当業者が予測し得る程度のものである。
また、請求人は、同意見書において「引用文献2も、本願発明の特徴点について何ら開示も示唆もしていません。よって、この引用文献2から出発して、本願発明に容易に到達し得たとする論理付けを成立させることはできません。また、引用文献3も、本願発明の特徴点について何ら開示も示唆もしていません。よって、この引用文献3を適用したとしても、本願発明に容易に到達し得たとする論理付けを成立させることはできません。」(同上)と主張している。
しかしながら、上記(1)及び(2)に記載したとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献3技術から当業者が容易に想到し得たものであるから、請求人の主張は採用できない。

4.小括
上記1ないし3の検討によれば、本願発明は、引用発明及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が特許出願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-19 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-08 
出願番号 特願2018-169706(P2018-169706)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (F25D)
P 1 8・ 121- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 山田 裕介
松下 聡
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  
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