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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1374497
審判番号 不服2020-11903  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-06-15 
事件の表示 特願2019- 15091「生物試料の熱的に制御される処理のためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019-132844、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年1月31日(パリ条約による優先権主張2018年2月2日、欧州特許庁)の出願であって、令和元年12月25日付けで拒絶理由が通知され、令和2年3月25日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年7月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願請求項1?14に係る発明は、以下の引用文献1?5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

具体的には、本願請求項1に係る発明について、引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された技術、並びに、引用文献3及び4に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明できたものであると判断している。ここで、引用文献3及び4に記載された周知技術とは、複数の磁石をプレートで保持する技術のことである。

<引用文献等一覧>
1.米国特許第5443791号明細書
2.特開2016-136155号公報
3.韓国登録特許第10-1282841号公報(周知技術を示す文献)
4.米国特許第5779907号明細書(周知技術を示す文献)
5.特開2014-30373号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、令和2年3月25日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1及び10は以下のとおりである。
「【請求項1】
液体試料(220)中の生物学的標的物質を処理するためのシステムであって:
- 開いている頂部および閉じている底部を備える複数のウェル(210)を有するマルチウェルプレート(200)であって、前記複数のウェル(210)の少なくとも一部が結合表面を有する磁性粒子(230)の懸濁液を有する、マルチウェルプレート(200)と;
- 所定の幾何学的構成の複数の磁石(320)を有する磁気分離プレート(310)を備える磁気分離デバイス(300)であって、前記マルチウェルプレート(200)を基準として前記磁気分離プレート(310)を移動させるためのアクチュエータ(330)をさらに備える、磁気分離デバイス(300)と;
- 上側面(105)、下側面(115)、および前記上側面(105)の方に向かって開いている複数の受け部分(110)、を有し、前記受け部分(110)が前記マルチウェルプレート(200)の前記ウェル(210)を受けるように成形される、実質的に非磁性の加熱アダプタ(120)と、前記加熱アダプタ(120)の前記上側面(105)上で前記受け部分(110)の間にある加熱要素(130)とを備える加熱デバイス(100)と、
を備えており、
前記加熱アダプタ(120)が、前記磁気分離プレート(310)の前記複数の磁石(320)の前記所定の幾何学的構成に対応する位置に、前記下側面(115)の方に向かって開いている凹部(125)をさらに備え、前記受け部分(110)および前記凹部(125)が、挿入された前記磁石(320)により前記対応する挿入されたウェル(210)に対して磁場勾配を印加するのを可能にするために十分に近接する、
システム。」

「【請求項10】
液体試料(220)中の生物学的標的物質を処理するための方法であって:
a)開いている頂部および閉じている底部を備える複数のウェル(210)を有するマルチウェルプレート(200)を提供するステップと;
b)加熱デバイス(100)に含まれる実質的に非磁性の加熱アダプタ(120)の上側面(105)上の対応する受け部分(110)の中に前記マルチウェルプレート(200)の前記ウェル(210)を挿入するステップであって、前記受け部分(110)が前記マルチウェルプレート(200)の前記ウェル(210)を受けるように成形される、ステップと;
c)前記ステップa)またはb)のうちのいずれかのステップの後で、前記液体試料(220)、および結合表面を有する磁性粒子(230)の懸濁液を、前記複数のウェル(210)の少なくとも一部分に個別にまたはまとめて加えるステップと;
d)前記加熱アダプタ(120)の前記上側面(105)上で前記受け部分(110)の間にある加熱要素(130)を用いて前記ウェル(210)内の前記液体試料(220)を所定の温度まで加熱して、前記液体試料(220)および前記磁性粒子(230)をインキュベートするステップと;
e)前記加熱アダプタ(120)の下側面(115)内の対応する凹部(125)の中に磁気分離プレート(300)の複数の磁石(320)を導入するステップであって、各磁石(410)が、前記加熱アダプタ(120)を通る、対応するウェル(210)の内側空間に対して磁場勾配を印加することを目的として前記ウェル(210)の外側壁に十分に近接させられ、それにより磁性粒子(230)のペレット(240)を形成する、ステップと;
f)磁力により磁性粒子(230)の前記ペレット(240)を保持しながら、ピペッタ(500)の複数のピペット先端部(510)を用いて前記それぞれのウェル(210)から前記液体を抜き取るステップと
を含む
方法。」

本願発明2?9は、本願発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに減縮した発明であり、本願11?14は、本願発明10を直接的又は間接的に引用して、さらに減縮した発明である。

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)記載事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、下記の事項が記載されている(当審訳に付した下線は、以下の(2)で記載する引用発明の認定に関与する部分である。)。
(1-1)
「FIELD OF THE INVENTION
The present invention is in the field of apparatus and methods for performing chemical studies and analyses and has particular application to chemistry protocols involving genetic material from samples of DNA.」(1欄11?15行)
(当審訳:発明の分野
本発明は、化学研究及び分析を行うための装置及び方法の分野にあり、DNAサンプルからの遺伝子物質が関与する化学プロトコルに特定の用途を有する。)

(1-2)
「An automated laboratory of the present invention for performing chemistry protocols is based on the liquid-handling instrument and has heating and cooling systems to control temperature of samples and reagents during processing. The laboratory has a heated and cooled incubation station with coated container cavities and a latching, sealing lid for sealing container cavities while incubating. The laboratory also has a magnetic station for separating paramagnetic particles from liquids, and the magnetic station has a magnet bar moveable vertically between rows of containers of liquid.」(5欄1?11行)
(当審訳:化学プロトコルを実行するための本発明の自動化された実験室は、液体処理手法に基づくものであり、処理の間、試料や試薬の温度を制御するために、加熱・冷却システムを有している。実験室は、被覆された容器キャビティ、およびインキュベート中に密封容器の空洞を係止密閉する蓋、を備え、加熱・冷却されるインキュベーションステーションを有している。また、実験室は、液体から磁性粒子を分離するための磁性ステーションを有し、該磁性ステーションは、液体の容器の列間を垂直方向に移動可能な磁気バーを有している。)

(1-3)
「In a preferred embodiment of the invention for performing DNA sequencing the AL has a closeable, heated, clamped-lid thermal cycling station 21, an actively cooled enzyme storage station 23, a wash station 25, a reagent storage position 27 for storing and presenting frequently used reagents, a DNA sample stage 28, a wash buffer storage 30, and two magnetic particle wash stations 26 and 29 for manipulating paramagnetic particles in suspension in liquid mixtures.」(6欄52?60行)
(当審訳:DNA配列決定を行うための本発明の好ましい実施形態では、ALは、閉鎖可能で加熱され締付け蓋がある熱サイクル処理ステーション21と、能動的に冷却された酵素貯蔵ステーション23と、洗浄ステーション25と、頻繁に使用される試薬を格納し提示するための試薬収納位置27と、試料ステージ28と、洗浄緩衝液貯留部30と、液体混合物中の懸濁液中で常磁性粒子を操作するための2つの磁性粒子洗浄ステーション26,29を有している。)

(1-4)
「Thermal cycling station 21 has a 96 position array of reaction cavities in 8 columns and 12 rows. The representation in FIG.1 does not show 96 stations for reasons of detail, and the number 96 is convenient, as it is compatible with the 96 well Microliter plate known and used in the industry. There can be more or fewer reaction cavities. The reaction cavities are machined into an aluminum plate that is electrically resistance heated and also has internal water cooling passages and a thermal sensor for feedback control. 」(7欄18?27行)
(当審訳:熱サイクル処理ステーション21は、8列12行の96位置の反応キャビティのアレイを有している。図1の描写は、詳細には96位置を示していないが、96が便利であり、業界で知られ用いられている96ウェルのマイクロリットルのプレートが適合可能である。それより多い、あるいは、より少ない反応キャビティとすることができる。反応キャビティは、アルミニウムプレートに機械加工されたものであり、電気的に抵抗加熱され、また、内部水冷却通路及びフィードバック制御のための温度センサを有している。)

(1-5)
「Magnetic particle wash stations 26 and 29 each have a 2 by 12 array for 1.5 mL microtubes, and station 26 has active heating and cooling, similar to station 21. Each magnetic station has a three-position vertically moving magnet. The magnets are for manipulating paramagnetic particles used in various protocols to capture specific material from solution.」(8欄4?10行)
(当審訳:磁性粒子洗浄ステーション26及び29は、それぞれ、1.5mLマイクロチューブのための2×12のアレイを有しており、ステーション26は、ステーション21と同様に、アクティブな加熱・冷却機能を有している。各磁性ステーションは、磁石を垂直方向に移動する3つの位置を有している。磁石は、溶液中から特定の物質を捕捉するために、様々なプロトコルにおいて使用される常磁性粒子を操作するものである。)

(1-6)
「Magnetic Separation
In chemistry protocols of the sort for which the present invention is intended there is often a need to separate material of one sort from other materials in a liquid sample. An example is in the purification of DNA samples to be sequenced. One way to accomplish separation in many instances is by use of paramagnetic particles coated with a substance with an affinity for the product of interest of the chemistry protocol. For example, such separation can be particularly useful in the context of ligand receptor binding, such as with biotin-avidin complexes.
In the AL, to accomplish this kind of separation, solutions to be separated are transferred to vials at one of the magnetic wash stations 26 or 29 (FIG.1). The use of one or the other depends on whether heating or cooling during separation and washing is known to facilitate the process. Precoated particles suspended in a buffer solution are aspirated from a position at one of the reagent storage stations and dispensed into the solutions to be processed at the magnetic wash station.
FIG.4A is a plan view of wash station 26, with heating and cooling capability. There are two rows of twelve tube positions each at the station. In the space between the rows of tubes there is a magnetic bar 237. FIG.4B shows a section through the station of FIG.4A taken along section line 4B--4B. Magnetic bar 237 is attached by connector 239 through a screw mechanism (not shown) to a D.C. motor 241. The motor is driven by the control system to move the magnet vertically between the rows of tubes, in the direction of arrow 243.」
(14欄7?38行)
(当審訳:磁気分離
本発明が意図する種類の化学プロトコルにおいて、液体サンプル中の他の物質から1種類の物質を分離することがしばしば必要である。例えば、配列決定されるべきDNAサンプルの精製においてである。多くの例では、分離を達成する1つの方法は、化学プロトコルの目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子を使用することである。例えば、このような分離は、リガンド-受容体結合、ビオチン-アビジン複合体に特に有用であることができる。
ALでは、この種の分離を達成するために、分離されるべき溶液は、磁性洗浄ステーション26又は29の1つのバイアルに移す(図1)。26又は29の使用は、プロセスを容易にするために知られている分離および洗浄の間、加熱又は冷却するか否かに依存する。緩衝溶液中に懸濁されたプレコート粒子は、試薬保管ステーションの1つの位置から吸引し、磁性洗浄ステーションにおいて処理されるべき溶液中に分配される。
図4Aは、洗浄ステーション26の平面図であり、加熱及び冷却の能力を有している。ステーションでは各12チューブ位置の2列である。チューブの列の間の空間内に磁気バー237がある。図4Bは、図4Aの線4B-4Bに沿った断面を示している。磁気バー237は、コネクタ239に取り付けられ、ねじ機構(図示せず)を介して直流モータ241につながる。モータは、制御システムによって駆動され、矢印243の方向でチューブの列間へと垂直方向に磁石を移動させる。)

(1-7)Fig.4A及びFig.4Bとして、以下の図面が記載されている。

なお、以下、引用文献1の記載事項としては、当審訳を利用する。

(2)引用発明について
ア 記載事項の整理
(ア)上記記載事項(1-1)の「本発明は、化学研究及び分析を行うための装置及び方法の分野にあり、DNAサンプルからの遺伝物質が関与する化学プロトコルに特定の用途を有する」、(1-2)の「化学プロトコルを実行するための本発明の自動化された実験室は、液体処理手法に基づくものであり、処理の間、試料や試薬の温度を制御する・・・・・実験室は、液体から磁性粒子を分離するための磁性ステーションを有し、該磁性ステーションは、液体の容器の列間を垂直方向に移動可能な磁気バーを有している」及び(1-3)の「DNA配列決定を行うための本発明の好ましい実施形態では、・・・・・液体混合物中の懸濁液中で常磁性粒子を操作するための2つの磁性粒子洗浄ステーション26,29を有している。」からみて、引用文献1には「DNAサンプルからの遺伝物質を処理するための磁性粒子洗浄ステーション」が記載されているといえる。

(イ)上記記載事項(1-5)の「1.5mLマイクロチューブのための2×12のアレイを有しており」、(1-6)の「分離を達成する1つの方法は、化学プロトコルの目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子を使用することである。・・・・・緩衝溶液中に懸濁されたプレコート粒子は、試薬保管ステーションの1つの位置から吸引し、磁性洗浄ステーションにおいて処理されるべき溶液中に分配される。」、図4A及び図4Bからみて、引用文献1には「目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子(プレコート粒子)の懸濁液を有する、24個のマイクロチューブ」が記載されているといえる。
なお、記載事項(1-5)に「マイクロチューブ」、記載事項(1-6)に「チューブ」との記載があるが、両者は同じものであることから、以下両者を「マイクロチューブ」ということにする。

(ウ)上記記載事項(1-4)の「熱サイクル処理ステーション21は、8列12行の96位置の反応キャビティのアレイを有している。・・・・・反応キャビティは、アルミニウムプレートに機械加工されたものであり、電気的に抵抗加熱され、また、内部水冷却通路及びフィードバック制御のための温度センサを有している。」、(1-5)の「磁性粒子洗浄ステーション26及び29は、それぞれ、1.5mLマイクロチューブのための2×12のアレイを有しており、ステーション26は、ステーション21と同様に、アクティブな加熱・冷却機能を有している。」、(1-6)の「洗浄ステーション26の平面図であり、加熱および冷却の能力を有している。ステーションでは各12チューブ位置の2列である。」及び図4Bからみて、「マイクロチューブのための」「アレイ」とは「アルミニウムプレート」に形成された「キャビティ」(凹部)のことであるから、引用文献1には「各12チューブ位置の2列である2×12のキャビティ(凹部)がマイクロチューブを保持するように成形されるアルミニウムプレートであって、該プレートの内部に加熱・冷却手段を備えるアルミニウムプレート」が記載されているといえる。

(エ)上記記載事項(1-2)の「実験室は、液体から磁性粒子を分離するための磁性ステーションを有し、該磁性ステーションは、液体の容器の列間を垂直方向に移動可能な磁気バーを有している」、(1-6)の「磁気バー237は、コネクタ239に取り付けられ、ねじ機構(図示せず)を介して直流モータ241につながる。モータは、制御システムによって駆動され、矢印243の方向でチューブの列間へと垂直方向に磁石を移動させる。」及び図4Bからみて、「チューブの列間」ということは「アルミニウムプレート」に形成された「キャビティ」(凹部)の列間に他ならないことから、引用文献1には「磁気バーが取り付けられたコネクタを備える磁気分離手段であって、キャビティ(凹部)の列間へと垂直方向に該コネクタを移動させるためのねじ機構と直流モータをさらに備える、磁気分離手段」が記載されているといえる。

(オ)上記記載事項(1-5)の「各磁性ステーションは、磁石を垂直方向に移動する3つの位置を有している。磁石は、溶液中から特定の物質を捕捉するために、様々なプロトコルにおいて使用される常磁性粒子を操作するものである」、(1-6)の「ステーションでは各12チューブ位置の2列である。チューブ列の間の空間内に磁気バー237がある」、図4A、図4B、及び上記(エ)で述べた「チューブの列間」が「アルミニウムプレート」に形成された「キャビティ」(凹部)の列間であることから、引用文献1には「磁性ステーションが、磁石の対応する位置であるキャビティ(凹部)列の間に空間をさらに備え、垂直方向に移動され該空間に挿入された該磁石によりチューブ内の溶液中から特定の物質を捕捉する」ことが記載されているといえる。

イ 引用発明
上記アで整理した記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「DNAサンプルからの遺伝物質を処理するための磁性粒子洗浄ステーションであって、
目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子(プレコート粒子)の懸濁液を有する、24個のマイクロチューブと、
各12マイクロチューブ位置の2列である2×12のキャビティ(凹部)がマイクロチューブを保持するように成形されるアルミニウムプレートであって、該プレートの内部に加熱・冷却手段を備えるアルミニウムプレートと、
磁気バーが取り付けられたコネクタを備える磁気分離手段であって、キャビティ(凹部)の列間へと垂直方向に該コネクタを移動させるためのねじ機構と直流モータをさらに備える、磁気分離手段と、
を備えており、
前記磁性粒子洗浄ステーションが、前記磁気バーの対応する位置であるキャビティ(凹部)列の間に空間をさらに備え、垂直方向に移動され該空間に挿入された前記磁気バーによりマイクロチューブ内の溶液中から特定の物質を捕捉する、
磁性粒子洗浄ステーション。」(以下「引用発明」という。)

2 引用文献2について
(1)記載事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、下記の事項が記載されている(なお、下線は当審において付与した。)。
(2-1)
「【0044】
図1には、本発明に係る分析システムの好適実施形態が示される。分注デバイス802上にはカメラ801が取付けられる。該カメラは、マルチウェル・プレート101を捕捉806し得る。マルチウェル・プレート101の好適実施形態は、本明細書において以下に記述される。マルチウェル・プレート101は、LEDアレイ803を備えて成る分離ステーション230又は加熱ブロック128上に着座される。図2は、a)においては、磁石122及びLED804を備えた分離ステーション230を概略的に示している。b)においては、開口805を備えた加熱デバイス128が示される。各開口は、マルチウェル・プレート101の容器を夫々受容し得る。開口805の底部807には、LED804が配置される。」

(2-2)
「【0047】
本明細書中で用いられる“受容器”という語句は、単一の容器(又は管体)、又は、マルチ管体ユニット中に含まれる1つの管体、又は、マルチウェル・プレートの1つのウェル(又は容器)に関連している。」

(2-3)
「【0066】
上記マルチウェル・プレートは、自動分析器における分析対象物のインキュベート又は分離に対して最適化される。好適には、上記マルチウェル・プレートは、磁気的デバイス及び/又は加熱デバイスと接触すべく構成かつ配置される。
【0067】
上記マルチウェル・プレートは、
頂部において複数の列にて配置された開口を有する複数の容器を備えて成る頂面であって、
上記各容器は、上側部分、中央部分、及び、底部部分を備えて成り、
上記上側部分は、上記マルチウェル・プレートの上記頂面に対して結合されると共に、2つの長寸側辺及び2つの短寸側辺を備えて成り、
上記中央部分は、2つの長寸側辺及び2つの短寸側辺を有する実質的に矩形状の断面を有する、
頂面と、
対置された2つの短寸側壁、及び、対置された2つの長寸側壁と、
上記磁気的デバイス及び/又は加熱デバイスに対して当該マルチウェル・プレートを接触して載置すべく構成かつ配置された開口を備えて成る基部と、
を備えて成る。
【0068】
上記マルチウェル・プレートの好適実施形態において、1つの列内において隣り合う各容器は、上記実質的に矩形状の長寸側辺にて相互に結合される。」

(2-4)
「【0077】
容器103の各列123の間には、連続空間121が配置される(図11、図12)。空間121は、磁石122又は加熱デバイス128を収容し得る(図13)。これらの磁石122、127及び加熱デバイス128は好適には、固体デバイスである。故に、磁石122、127が容器103の近傍にもたらされたとき、容器103内に保持され得る液体215中に含まれる磁性粒子216は、容器103に対して磁界を及ぼすことにより液体215から分離され得る。又は、容器103の内容物は、処理プレート101が加熱デバイス128上に載置されたとき、上昇されて制御された温度にてインキュベートされ得る。磁石122、127又は加熱デバイス128は固体とされ得ることから、大きなエネルギ密度が達成され得る。容器103の中央部分120の殆ど矩形の形状によれば、容器103と磁石122又は加熱デバイス128の接触表面を最適化して容器103へのエネルギ伝達を最適化することにより、容器壁109と平坦形状磁石122又は加熱デバイス128との間における接触も最適化される。」

(2)記載技術
上記記載事項における下線部を整理すると、引用文献2には、
「開口を備えた加熱デバイス上にマルチウェル・プレート(処理プレート)を載置し、上昇されて制御された温度にて該プレートの容器の内容物をインキュベートするものにおいて、該容器の各列の間に連続空間が配置されており、前記容器の矩形中央部分の容器壁が前記加熱デバイスと接触し、熱エネルギ伝達を最適化する」技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているといえる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア DNAサンプルは液体試料であるのが通常であり、引用発明の「DNAサンプルからの遺伝物質」は、本願発明1の「液体試料中の生物学的標的物質」に相当するから、引用発明の「DNAサンプルからの遺伝物質を処理するための磁性粒子洗浄ステーション」は、本願発明1の「液体試料中の生物学的標的物質を処理するためのシステム」に相当するといえる。

イ 「マイクロチューブ」は液体を収容する試験管の一種であり、「開いている頂部及び閉じている底部を備える」ものであるといえるから、引用発明の「24個のマイクロチューブ」と、本願発明1の「開いている頂部および閉じている底部を備える複数のウエル」とは、「開いている頂部及び閉じている底部を備える複数の液体収容部」の点で共通するといえる。
また、引用発明の「目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子(プレコート粒子)」は、本願発明1の「結合表面を有する磁性粒子」に相当するといえる。
そして、本願発明1の「マルチウェルプレート(200)」が、上記「複数のウエル」すなわち、「複数の液体収容部」が「プレート」により一体化された上位概念の「液体容器」といえるから、引用発明の「目的の生成物に対する親和性を有する物質でコーティングされた常磁性粒子(プレコート粒子)の懸濁液を有する、24個のマイクロチューブ」と、本願発明1の「開いている頂部および閉じている底部を備える複数のウェル(210)を有するマルチウェルプレート(200)であって、前記複数のウェル(210)の少なくとも一部が結合表面を有する磁性粒子(230)の懸濁液を有する、マルチウェルプレート(200)」とは、「開いている頂部および閉じている底部を備える複数の液体収容部を有する液体容器であって、前記複数の液体収容部の少なくとも一部が結合表面を有する磁性粒子の懸濁液を有する、液体容器」の点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「コネクタ」、「ねじ機構と直流モータ」及び「磁気分離手段」は、その機能からみて、それぞれ、本願発明1の「磁気分離プレート」、「アクチュエータ」及び「磁気分離デバイス」に相当するといえる。そして、引用発明の「磁気バー」は、単一の「棒状体」であって「複数の磁石」でないものの、「所定の所定の幾何学的構成」であるといえるから、本願発明1の「所定の幾何学的構成の複数の磁石(320)」とは、共通の上位概念の「所定の幾何学的構成の磁石」で一致し、また、引用発明の「キャビティ(凹部)の列間へと垂直方向に該コネクタを移動させる」は、「キャビティ(凹部)」に保持されている「マイクロチューブ」(すなわち、上記イにおける「液体容器」)「を基準としてコネクタを移動する」ことと技術的に同義であるといえる。
そうすると、引用発明の「磁気バー付きコネクタを備える磁気分離手段であって、キャビティ(凹部)の列間へと垂直方向に該コネクタを移動させるためのねじ機構と直流モータをさらに備える、磁気分離手段」と、本願発明1の「所定の幾何学的構成の複数の磁石(320)を有する磁気分離プレート(310)を備える磁気分離デバイス(300)であって、前記マルチウェルプレート(200)を基準として前記磁気分離プレート(310)を移動させるためのアクチュエータ(330)をさらに備える、磁気分離デバイス(300)」とは、「所定の幾何学的構成の磁石を有する磁気分離プレートを備える磁気分離デバイスであって、液体容器を基準として前記磁気分離プレートを移動させるためのアクチュエータをさらに備える、磁気分離デバイス」の点にて共通するといえる。

エ 引用発明の「アルミニウムプレート」が「上面」および「下面」、すなわち、「上側面」および「下側面」を有することが明らかであり、引用発明の「2×12のキャビティ(凹部)」が「マイクロチューブ」を保持するのであるから、その機能からみて、本願発明1の「複数の受け部分」に相当するといえる。また、引用発明の「アルミニウムプレート」は、アルミニウムが非磁性金属であるから、本願発明1の「実質的に非磁性の加熱アダプタ」に相当するといえる。
そして、上記記載事項(1-4)の「電気的に抵抗加熱され、また、内部水冷却通路・・・・・を有している」及び本願明細書の段落【0043】の「加熱要素は、例えば、電気抵抗性の加熱要素を加熱アダプタの上側面に取り付けることにより実現され得る。」を考慮すると、引用発明の「加熱」「手段」が本願発明1の「加熱要素」に相当するといえるから、引用発明の「アルミニウムプレートの内部に加熱・冷却手段を備える」と、本願発明1の「前記加熱アダプタ(120)の前記上側面(105)上で前記受け部分(110)の間にある加熱要素(130)とを備える」とは、上位概念である「前記加熱アダプタに設けられた加熱要素とを備える」点で共通するといえる。

オ 引用発明の「キャビティ(凹部)列の間」の「空間」が、その機能からみて、本願発明1の「前記下側面(115)の方に向かって開いている凹部(125)」に相当することは明らかであるといえる。また、引用発明の「該空間に挿入された前記磁気バーによりマイクロチューブ内の溶液中から特定の物質を捕捉する」ということは、「マイクロチューブ」と該「空間」に挿入された磁気バーとが十分に近接する、すなわち、図4Bにて図示されているように、該「マイクロチューブ」を受け入れ保持する部分と前記空間とが十分に近接することを意味しているといえる。
そうすると、引用発明の「前記磁性粒子洗浄ステーションが、前記磁気バーの対応する位置であるキャビティ(凹部)列の間に空間をさらに備え、垂直方向に移動され該空間に挿入された前記磁気バーによりマイクロチューブ内の溶液中から特定の物質を捕捉する」ことと、本願発明1の「前記加熱アダプタ(120)が、前記磁気分離プレート(310)の前記複数の磁石(320)の前記所定の幾何学的構成に対応する位置に、前記下側面(115)の方に向かって開いている凹部(125)をさらに備え、前記受け部分(110)および前記凹部(125)が、挿入された前記磁石(320)により前記対応する挿入されたウェル(210)に対して磁場勾配を印加するのを可能にするために十分に近接する」こととは、「前記加熱アダプタが、前記磁気分離プレートの前記磁石の前記所定の幾何学的構成に対応する位置に、前記下側面の方に向かって開いている凹部をさらに備え、前記受け部分および前記凹部が、挿入された前記磁石により前記対応する挿入された収容部に対して磁場勾配を印加するのを可能にするために十分に近接する」点で共通するといえる。

カ 上記ア?オを総合すると、本願発明1と引用発明とは、
(一致点)
「液体試料中の生物学的標的物質を処理するためのシステムであって:
- 開いている頂部および閉じている底部を備える複数の液体収容部を有する液体容器であって、前記複数の液体収容部の少なくとも一部が結合表面を有する磁性粒子の懸濁液を有する、液体容器と;
- 所定の幾何学的構成の磁石を有する磁気分離プレートを備える磁気分離デバイスであって、前記液体容器を基準として前記磁気分離プレートを移動させるためのアクチュエータをさらに備える、磁気分離デバイスと;
- 上側面、下側面、および前記上側面の方に向かって開いている複数の受け部分、を有し、前記受け部分が前記液体容器の前記収容部を受けるように成形される、実質的に非磁性の加熱アダプタと、前記加熱アダプタに設けられた加熱要素とを備える加熱デバイスと、
を備えており、
前記加熱アダプタが、前記磁気分離プレートの前記磁石の前記所定の幾何学的構成に対応する位置に、前記下側面の方に向かって開いている凹部をさらに備え、前記受け部分および前記凹部が、挿入された前記磁石により前記対応する挿入された収容部に対して磁場勾配を印加するのを可能にするために十分に近接する、
システム。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

(相違点1)
液体容器が、本願発明1では、複数の「ウェル(210)」を有する「マルチウェルプレート(200)」であるのに対し、引用発明では、複数の「マイクロチューブ」であり、「ウェル」を有する「マルチウェルプレート」ではない点。

(相違点2)
磁気分離プレートが、本願発明1では、所定の幾何学的構成の「複数の磁石(320)」を有する磁気分離プレート(310)であるのに対し、引用発明では、「磁気バー」は複数でない単一の棒状体であり、その「磁気バー」が取り付けられたコネクタである点。

(相違点3)
加熱要素が、本願発明1では「前記加熱アダプタ(120)の前記上側面(105)上で前記受け部分(110)の間にある」のに対し、引用発明では、「アルミニウムプレートの内部に」ある点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
引用文献2には、上記第4の2(2)で述べたように、「開口を備えた加熱デバイス上にマルチウェル・プレート(処理プレート)を載置し、上昇されて制御された温度にて該プレートの容器の内容物をインキュベートするものにおいて、該容器の各列の間に連続空間が配置されており、前記容器の矩形中央部分の容器壁が前記加熱デバイスと接触し、熱エネルギ伝達を最適化する」という引用文献2技術が記載されており、引用文献2技術の「加熱デバイス」は、マルチウェル・プレートの容器壁の「中央部分」と主に接触し、熱エネルギ伝達を最適化する技術であることを考慮するに、引用文献2技術を引用発明に適用しても、引用発明において「アルミニウムプレートの内部に」ある「加熱」「手段」を、アルミニウムプレートの「上側面上」に設けることにはならない。
してみると、引用発明に引用文献2技術を適用しても、相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、引用文献3及び4は、上記第2の原査定で述べたように、「複数の磁石をプレートで保持する」ことが本願優先日前周知であることを例示するためのものであって、相違点3についての上記判断を左右するものではない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、相違点1および2について検討するまでもなく、引用発明、並びに、引用文献2技術、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明10について
本願発明10は、「システム」である本願発明1の各構成要素の動作・操作ステップとして特定し、発明のカテゴリーを「物」から「方法」へ変更したものであって、さらに「ピペッタ(500)の複数のピペット先端部(510)」という本願発明1に特定されていない構成要素が含まれているものである。
そして、本願発明10は、上記1(1)の(相違点3)に係る構成である「前記加熱アダプタ(120)の前記上側面(105)上で前記受け部分(110)の間にある加熱要素(130)」を発明特定事項としていることから、本願発明1と同様に、引用発明、並びに、引用文献2技術、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明2?9及び本願発明11?14について
上記第3で述べたとおり、本願発明2?9は、本願発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに減縮した発明であり、本願11?14は、本願発明10を直接的又は間接的に引用して、さらに減縮した発明であるから、本願発明1及び10と同じ理由により、引用発明、並びに、引用文献2技術、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?14は、引用発明、並びに、引用文献2技術、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-31 
出願番号 特願2019-15091(P2019-15091)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 島田 保  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 三崎 仁
樋口 宗彦
発明の名称 生物試料の熱的に制御される処理のためのシステム  
代理人 宮前 徹  
代理人 中西 基晴  
代理人 山本 修  
代理人 鐘ヶ江 幸男  
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