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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1374690
審判番号 不服2020-5943  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-01 
確定日 2021-06-10 
事件の表示 特願2015-254001「電子装置及び電磁干渉抑制体の配置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-118015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月25日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 1年 9月 3日付け:拒絶理由通知
令和 1年10月31日 :意見書、手続補正書
令和 2年 1月28日付け:拒絶査定
令和 2年 5月 1日 :審判請求書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和1年10月31日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりであると認められる。
「電磁波を発生する与干渉物、
電磁波の影響を受ける被干渉物、
前記与干渉物及び前記被干渉物を載置するための基板、
前記与干渉物及び前記被干渉物のいずれか一方の干渉物のみに沿って、前記基板と平行に配置された電磁干渉抑制体を備え、
前記与干渉物と前記被干渉物とは、前記基板に平行な離間方向に間隔を空けて前記基板に配置されており、
前記与干渉物の端部のうち前記被干渉物に対向する部分を第1の端部とし、前記被干渉物の端部のうち前記与干渉物に対向する部分を第2の端部とするとき、前記電磁干渉抑制体の一方の端部は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置されており、
前記電磁干渉抑制体は、前記基板に対して垂直な方向から見て前記一方の干渉物の全周を覆い、かつ、前記離間方向には前記与干渉物及び前記被干渉物のうちの他方の干渉物に届かないように配置される電子装置。」

第3 本願発明に係る原査定の拒絶の理由の概要
1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明または引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明または引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2001-268190号公報
引用文献3.特開2010-135701号公報

第4 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「通信モジュール」について、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
「【0011】そこで、本発明者らは、いわゆるメモリーモジュールの中に通信機能を搭載し、メモリーモジュールの有するホスト側のAV機器とのインターフェースに対して着脱可能とした超小型通信モジュールを、平成11年特許願第323453号において提案した。
【0012】ところで、このような通信モジュールでは、外乱となる外部からの電波や内部から漏洩する電波等を吸収してノイズや電波障害を防止し、機能の安定化を図る必要がある。例えば、この通信モジュール内部から漏洩する不要輻射や、アンテナ素子と各信号処理を行う素子とのカップリング、空洞共振と呼ばれる空間的電磁的共振等の対策を施す必要がある。」

「【0015】そこで、本発明はこのような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、狭小な内部空間に不要な電波を吸収するための電波吸収体を効率よく配設することを可能とした超小型化の通信端末装置を提供することを目的とする。」

「【0023】図1は、本発明を適用した通信モジュールの外観を示すものであり、長方形状の筐体1の一端側には、ホスト機器との接続を図るためのコネクタ部となる端子2が設けられている。
【0024】したがって、本発明を適用したモジュールは、ホスト機器との間のデータの授受を行うための入出力インターフェースを有していることが必要である。
【0025】この入出力インターフェースには、任意のものを採用することができるが、上述したように、本発明は、これまで提案されているメモリーモジュールに通信機能を集約するというのが基本的な考えであるので、この場合には市販メモリーモジュールの入出力インターフェースをそのまま流用する。したがって、本例では、メモリースティックの入出力インターフェースをそのまま流用して用いる。
【0026】上記筐体1内には、通信機能及びストレージ機能を有する各種素子が実装されており、この実装状態を示すのが図2及び図3である。実装される素子は、主に、ストレージ機能用メモリー素子3と、ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5、アンテナ素子6である。
【0027】これらの素子は、本例では、厚さ0.2mm以下のフレキシブル配線基板7に実装され、全体の厚さが2.8mm以下という筐体1内の限られた空間に収められている。
【0028】上記フレキシブル配線基板7の一端側には、上記筐体1に設けられた端子列2と対応して接続端子部7aが設けられており、この接続端子部7aを端子列2と電気的に接続することで、端子列2を介してホスト機器との間のデータの授受が可能である。
【0029】上記筐体1は長方形であるので、本例では、接続端子部7a側から順に、ストレージ機能用メモリー素子3、ベースバンドLSI4、RFモジュール5、アンテナ素子6が配列されている。
【0030】これは、損失を極力小さくするとの観点から決定されたものであり、配列を替えた場合には配線が複雑になり、その結果、損失が増大し、またRFモジュール5による干渉、アンテナ素子6の機能低下等が問題となる。
【0031】各素子は、いわゆるチップ部品とされており、図4に示すように、各種配線パターンや接続端子が形成されたフレキシブル配線基板7に他の一般部品8とともに実装されている。」

「【0069】ところで、この通信モジュールには、図3に示すように、筐体1に電波吸収体9が設けられている。詳述すると、この通信モジュールには、シート状の電波吸収体9が、ベースバンドLSI4及びRFモジュール5と対向する筐体1の内面に位置して設けられている。」

「【0077】なお、軟磁性金属材料を電磁波の吸収に利用するためには、有機結合材料を用いて複合化する必要がある。一般に、金属単体であると電波は完全反射してしまい、吸収体ではなくシールド材として機能する。電波吸収体では、軟磁性金属材料を適当な有機結合材料と複合化することにより、誘電率が50?200程度となり、電波の反射を抑制しつつ電波の吸収効果を発現することが可能となる。」

「【0079】また、この電波吸収体9を筐体1に形成する方法としては、シート状の電波吸収体9を筐体1に貼り付ける方法が挙げられる。具体的には、図12に示すように、例えば厚さ50μm?500μm程度のシート状の電波吸収体9を用意し、この電波吸収体9の一主面上に接着層10を薄膜形成する。そして、これをベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し、上述したベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対向する筐体1の内面に貼り付ける。
【0080】これにより、筐体1内の限られた空間に電波吸収体9を効率よく配設することができ、デジタル部(RFモジュール5)の不要輻射を防止したり、空洞共振と呼ばれる空間的電磁的共振を抑制することができる。」


2 引用文献1に記載された技術事項
・段落【0023】ないし【0025】によれば、「通信モジュール」は「メモリモジュールに通信機能を集約」したものである。
・段落【0023】によれば、「通信モジュール」は「筐体1」を有する。
・段落【0026】によれば、「筐体1内には、通信機能及びストレージ機能を有する各種素子が実装されており」、「実装される素子は、」「ストレージ機能用メモリー素子3と、ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5、アンテナ素子6である」ものである。ここで、上記のとおり、「通信モジュール」は「メモリモジュールに通信機能を集約」したものであるから、「メモリーモジュール」は「ストレージ機能を有する」素子により構成されるものと認められる。
したがって、「筐体1内には、通信機能を有する素子及びメモリモジュールを構成するストレージ機能を有する素子が実装されており、実装される素子は、ストレージ機能用メモリー素子3と、ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5、アンテナ素子6である」といえる。
・段落【0031】によれば、「各素子は」、「フレキシブル配線基板7に他の一般部品8とともに実装されている」ものである。そして、図3から、フレキシブル配線基板7は、筐体1の内面に位置して設けたことが見てとれるから、各素子は、筐体1の内面に位置して設けたフレキシブル配線基板7に他の一般部品8とともに実装されているといえる。
・図2及び図3及び段落【0026】、【0027】から、ベースバンドLSI4とストレージ機能用メモリー素子3とは、フレキシブル配線基板7上に間隔を空けて配置されていることが見てとれる。
・段落【0077】によれば、「電波吸収体」は「軟磁性金属材料を適当な有機結合材料と複合化」したものである。また、段落【0069】によれば、「シート状の電波吸収体9が、ベースバンドLSI4及びRFモジュール5と対向する筐体1の内面に位置して設けられている」ものである。
してみると、「軟磁性金属材料を適当な有機結合材料と複合化したシート状の電波吸収体9を、ベースバンドLSI4及びRFモジュール5と対向する筐体1の内面に位置して設ける」といえる。
・段落【0079】によれば、「電波吸収体9を筐体1に形成する」ために、「シート状の電波吸収体9」「の一主面上に接着剤10を薄膜形成」し、「これをベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し、」「ベースバンドLSI及びRFモジュール5に対向する筐体1の内面に貼り付ける」ものである。
・段落【0011】、【0012】及び【0015】によれば、「メモリーモジュールの中に通信機能を搭載」した「通信モジュール」において、「通信モジュール」の「内部から漏洩する電波等を吸収してノイズや電波障害を防止」するために「不要な電波を吸収するための電波吸収体を効率よく配置する」ものである。

3 引用発明
上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、「通信モジュール」として次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「メモリモジュールに通信機能を集約した通信モジュールにおいて、
筐体1を有し、
筐体1内には、通信機能を有する素子及びメモリモジュールを構成するストレージ機能を有する素子が実装されており、
実装される素子は、ストレージ機能用メモリー素子3と、ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5、アンテナ素子6であり、
各素子は、筐体1の内面に位置して設けたフレキシブル配線基板7に他の一般部品8とともに実装され、
ベースバンドLSI4とストレージ機能用メモリー素子3とは、フレキシブル配線基板7上に間隔を空けて配置され、
軟磁性金属材料を適当な有機結合材料と複合化したシート状の電波吸収体9を、ベースバンドLSI4及びRFモジュール5と対向する筐体1の内面に位置して設けるために、シート状の電波吸収体9の一主面上に接着剤10を薄膜形成し、これをベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し、ベースバンドLSI及びRFモジュール5に対向する筐体1の内面に貼り付け、
メモリーモジュールの中に通信機能を搭載した通信モジュールの内部から漏洩する電波等を吸収してノイズや電波障害を防止するために不要な電波を吸収するための電波吸収体を効率よく配置した、
通信モジュール。」

第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明は、「通信機能を有する素子及びメモリモジュールを構成するストレージ機能を有する素子が実装」された「メモリモジュールに通信機能を集約した通信モジュール」において「通信モジュールの内部から漏洩する電波等を吸収してノイズや電波障害を防止するために不要な電波を吸収する」ものである。
そして、ベースバンド信号は通信で送る情報の信号であるから、引用発明の「ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5」は「通信機能を有する素子」であり、「不要な電波」である「通信モジュールの内部から漏洩する電波」を発生させる発生源であることは明らかである。
してみると、引用発明の「ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5」は、本願発明の「電磁波を発生する与干渉物」に相当する。

(2)引用発明の「ストレージ機能用メモリー素子3」は「通信モジュールの内部から漏洩する電波」の影響を受ける素子であることは明らかである。
してみると、引用発明の「ストレージ機能用メモリー素子3」は、本願発明の「電磁波の影響を受ける被干渉物」に相当する。

(3)そうすると、引用発明の「フレキシブル配線基板7」は、「ストレージ機能用メモリー素子3と、ベースバンド信号処理を行うための素子(ベースバンドLSI)4、高周波信号処理を行う素子(RFモジュール)5」を実装するから、本願発明の「前記与干渉物及び前記被干渉物を搭載するための基板」に相当する。

(4)本願発明の「電磁干渉抑制体」とは、本願の明細書段落【0026】を参照すれば、「電磁干渉抑制体6としては、磁性体粉末を結合剤の中に分散させたシート状の部品」と認められる。
してみれば、引用発明の「軟磁性金属材料を適当な有機結合材料と複合化したシート状の電波吸収体9」は、本願発明の「電磁干渉抑制体」に相当する。
また、引用発明の「シート状の電波吸収体9」は、「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し、ベースバンドLSI及びRFモジュール5に対向する筐体1の内面に貼り付け」られたものであるから、「ベースバンドLSI及びRFモジュール5」のみに沿って配置されたものと認められ、本願発明の「前記与干渉物及び前記被干渉物のいずれか一方の干渉物のみに沿って」「配置された電磁干渉抑制体」に相当する。
さらに、引用発明の「シート状の電波吸収体9」は、「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5と対向する筐体1の内面に位置して設け」られるから、「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5」が実装された「フレキシブル配線基板7」に対向して設けられたものである。そして、引用発明の「シート状の電波吸収体9」は「フレキシブル配線基板7」と平行に配置されていると認められるから、本願発明の「前記基板と平行に配置された電磁干渉抑制体」に相当する。

(5)本願発明でいう「基板に平行な離間方向」とは、本願明細書の段落【0027】ないし【0029】及び図1ないし2の記載によれば、図2に示された「与干渉物2と被干渉物3の間の距離Dにあたる線分を延長した直線の方向」である「Y方向」であり、基板表面内の方向を指すから、「基板に平行な離間方向に間隔を空けて前記基板に配置」とは、「基板上で間隔を空けて前記基板に配置」することといえる。
してみると、本願発明の「前記与干渉物と前記被干渉物とは、前記基板に平行な離間方向に間隔を空けて前記基板に配置」とは「前記与干渉物と前記被干渉物とは、前記基板上で間隔を空けて前記基板に配置」することである。
そして、引用発明の「ベースバンドLSI4とストレージ機能用メモリー素子3とは、フレキシブル配線基板7上に間隔を空けて配置」されることは、本願発明の「前記与干渉物と前記被干渉物とは、前記基板に平行な離間方向に間隔を空けて前記基板に配置」されることに相当する。

(6)引用発明の「ベースバンドLSI4」の「ストレージ機能用メモリー素子3」と対向する端部は、本願発明の「前記与干渉物の端部のうち前記被干渉物に対向する部分」である「第1の端部」に相当する。また、引用発明の「ストレージ機能用メモリー素子3」の「ベースバンドLSI4」と対向する端部は、本願発明の「前記被干渉物の端部のうち前記与干渉物に対向する部分」である「第2の端部」に相当する。
そして、引用発明の「シート状の電波吸収体9」は「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し」ているから、「シート状の電波吸収体9」の端部は、「ベースバンドLSI4」の「ストレージ機能用メモリー素子3」に対向する端部(第1の端部)に配置されるものと認められる。
してみると、本願発明は「前記与干渉物の端部のうち前記被干渉物に対向する部分を第1の端部とし、前記被干渉物の端部のうち前記与干渉物に対向する部分を第2の端部とするとき、前記磁気干渉抑制体の一方の端部は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置」されるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(7)引用発明の「シート状の電波吸収体9」は、上記(5)、(6)で検討した事項を勘案すると、フレキシブル配線基板7に対して垂直な方向から見てベースバンドLSI4及びRFモジュール5を覆い、ストレージ機能用メモリー素子3等の他の素子は覆わないように配置されることは明らかであるから、本願発明の「前記電磁干渉抑制体は、前記基板に対して垂直な方向から見て前記一方の干渉物の全周を覆い、かつ、前記離間方向には前記与干渉物及び前記被干渉物のうちの他方の干渉物に届かないように配置」されることに相当する構成を有する。

(8)引用発明の「通信モジュール」は、「通信機能を有する素子及びメモリモジュールを構成するストレージ機能を有する素子が実装」されるものであるから、本願発明の「電子装置」に相当する。

2 一致点・相違点
以上(1)ないし(8)によれば、本願発明と引用発明は以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「電磁波を発生する与干渉物、
電磁波の影響を受ける被干渉物、
前記与干渉物及び前記被干渉物を載置するための基板、
前記与干渉物及び前記被干渉物のいずれか一方の干渉物のみに沿って、前記基板と平行に配置された電磁干渉抑制体を備え、
前記与干渉物と前記被干渉物とは、前記基板に平行な離間方向に間隔を空けて前記基板に配置されており、
前記電磁干渉抑制体は、前記基板に対して垂直な方向から見て前記一方の干渉物の全周を覆い、かつ、前記離間方向には前記与干渉物及び前記被干渉物のうちの他方の干渉物に届かないように配置される電子装置。」

〈相違点〉
本願発明は「前記与干渉物の端部のうち前記被干渉物に対向する部分を第1の端部とし、前記被干渉物の端部のうち前記与干渉物に対向する部分を第2の端部とするとき、前記磁気干渉抑制体の一方の端部は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置」されるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点

3 相違点の判断
引用発明は、「不要な電波を吸収する」ために「シート状の電波吸収体9」を「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5に対応した大きさに切り出し、ベースバンドLSI及びRFモジュール5に対向する筐体1の内面に貼り付け」るものであるから、「不要な電波を吸収する」ために「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5」を覆うように「シート状の電波吸収体9」を設けるものといえる。
そして、「シート状の電波吸収体9」の端部を、「ベースバンドLSI4」の端部に配置することと、「ベースバンドLSI4」と「ストレージ機能用メモリー素子3」との間に配置することとは、「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5」を覆うように「シート状の電波吸収体9」を設ける上で差異は無く、また、「シート状の電波吸収体9」は、「ベースバンドLSI4及びRFモジュール5」を覆いさえすればその機能を奏することができるものである。
してみると、「シート状の電波吸収体9」の大きさに余裕を持たせ、引用発明において、「シート状の電波吸収体9」の端部を「ベースバンドLSI4」の「ストレージ機能用メモリー素子3」と対向する端部と「ストレージ機能用メモリー素子3」の「ベースバンドLSI4」と対向する端部との間に配置し相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「しかしながら、引用文献1には、フレキシブル配線基板7に実装される他の一般部品8が記載されており、(例えば、段落[0031]、図2,図4参照)、『他の一般部品8』は、本願発明1の『与干渉物』にも『被干渉物』にもなり得るものです。そうしますと、引用文献1には、少なくとも、請求項1に記載の『一方の干渉物のみに沿って配置された電磁干渉抑制体』に相当する事項は、記載されておりませんし、その示唆もありません。」(第6頁第9から15行)と主張している。
しかしながら、引用文献1の段落【0026】に「上記筐体1内には、通信機能及びストレージ機能を有する各種素子が実装されており、この実装状態を示すのが図2及び図3である。」、段落【0031】に「各素子は、いわゆるチップ部品とされており、図4に示すように、各種配線パターンや接続端子が形成されたフレキシブル配線基板7に他の一般部品8とともに実装されている。」と記載されるように、「他の一般部品8」は「通信機能及びストレージ機能を有する各種素子」とは異なる素子である。
そして、「他の一般部品8」は「通信機能を有する素子」でない素子であるから、「通信機能を有する素子」が発生する「不要な電波」に対しては、その影響を受ける素子(被干渉物)といえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-24 
結審通知日 2021-03-31 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2015-254001(P2015-254001)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 章子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山田 正文
須原 宏光
発明の名称 電子装置及び電磁干渉抑制体の配置方法  
代理人 佐々木 敬  
代理人 平瀬 実  
代理人 池田 憲保  
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