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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1374708 |
審判番号 | 不服2020-10340 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-22 |
確定日 | 2021-06-10 |
事件の表示 | 特願2016- 13190「磁界形成装置及び受電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-135827〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年1月27日の出願であって、令和2年2月14日付けで拒絶理由が通知され、令和2年4月13日に手続補正がなされたが、令和2年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年7月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年7月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年7月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、 前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイルと、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で繰り返して変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、 少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されており、 前記複数の出力先には、複数の前記送電コイルからなる出力先が含まれることを特徴とする磁界形成装置。 【請求項2】 変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、 前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイルと、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で繰り返して変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、 少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して平行するコイル面方向を有するように配置されており、 前記複数の出力先には、複数の前記送電コイルからなる出力先が含まれることを特徴とする磁界形成装置。 【請求項3】 前記電流出力制御装置は、 前記変動電流を前記送電コイルの何れにも出力しない停止処理を所定のタイミング及び期間の組み合わせで実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界形成装置。 【請求項4】 請求項1?3の何れかに記載の磁界形成装置を有した給電装置と、 前記磁界形成装置により発生された所定領域の変動磁界により給電される受電装置とを有した受給電システムであって、 前記変動磁界により受電する受電機構と、 前記受電機構で受電した電流を充電し、前記電流出力制御装置における前記変動電流を出力する出力先の切り替えが行われている期間、後段の電気部品の最低作動電圧以上で放電する容量を有したコンデンサと を有していることを特徴とする受給電システム。 【請求項5】 前記コンデンサは、 前記電流出力制御装置が、前記変動電流を前記送電コイルの何れにも出力しない停止処理の期間、後段の電気部品の最低作動電圧以上で放電する容量を有していることを特徴とする請求項4に記載の受給電システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、 前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイルと、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、 少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されていることを特徴とする磁界形成装置。 【請求項2】 変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、 前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイルと、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、 少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して平行するコイル面方向を有するように配置されていることを特徴とする磁界形成装置。 【請求項3】 前記電流出力制御装置は、前記所定の順番で繰り返して前記変動電流を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界形成装置。 【請求項4】 前記電流出力制御装置は、 前記変動電流を前記送電コイルの何れにも出力しない停止処理を所定のタイミング及び期間の組み合わせで実行することを特徴とする請求項3に記載の磁界形成装置。 【請求項5】 請求項1?4の何れかに記載の磁界形成装置を有した給電装置と、 前記磁界形成装置により発生された所定領域の変動磁界により給電される受電装置とを有した受給電システムであって、 前記変動磁界により受電する受電機構と、 前記受電機構で受電した電流を充電し、前記電流出力制御装置における前記変動電流を出力する出力先の切り替えが行われている期間、後段の電気部品の最低作動電圧以上で放電する容量を有したコンデンサと を有していることを特徴とする受給電システム。 【請求項6】 前記コンデンサは、 前記電流出力制御装置が、前記変動電流を前記送電コイルの何れにも出力しない停止処理の期間、後段の電気部品の最低作動電圧以上で放電する容量を有していることを特徴とする請求項5に記載の受給電システム。」 2 補正の適否 本件補正は、 ・本件補正前の請求項1を引用する請求項3、及び本件補正前の請求項2を引用する請求項3を、それぞれ新たな請求項1、請求項2とするとともに、請求項1、請求項2に記載された「複数の出力先」について、それぞれ「前記複数の出力先には、複数の前記送電コイルからなる出力先が含まれる」との限定を付加する。 ・本件補正前の請求項3を削除し、本件補正前の請求項4ないし6を新たな請求項3ないし5に繰り上げるとともに、項番の整序を行う。 ものであり、補正前の請求項1ないし6に記載された発明と補正後の請求項1ないし5に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1(特表2012-517795号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。 「【0011】 図1は、本発明の様々な例示的な実施形態による無線伝送または充電システム100を示している。エネルギー伝達を実現する放射界106を生成する入力電力102が送信器104に供給される。受信器108が、放射界106に結合され、出力電力110に結合されたデバイス(不図示)によって蓄積または消費される出力電力110を生成する。送信器104と受信器108とは距離112だけ離れている。例示的な一実施形態では、送信器104と受信器108は、相互共振関係に従って構成され、受信器108の共振周波数と送信器104の共振周波数がまったく同一であると、送信器104と受信器108との間の伝送損失は、受信器108が放射界106の「近接場」に配置されているときには最小限である。」 「【0018】 本発明の例示的な実施形態は、互いに近接場に位置する2つのアンテナ間で電力を結合することを含む。前述のように、近接場は、電磁場が存在するが、アンテナから伝搬することもあるいは放射することもできないアンテナの周囲の領域である。電磁場は通常、アンテナの物理量に近い体積に制限される。本発明の例示的な実施形態では、一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナが送信アンテナシステム(Tx)と受信アンテナシステム(Rx)の両方に使用される。というのは、電気式アンテナ(たとえば、小型ダイポール)の電気近接場と比べて磁気式アンテナの方が磁気近接場振幅が高くなる傾向があるからである。このため、場合によっては送信器と受信器との間の結合力をより強くすることができる。さらに、「電気」アンテナ(たとえば、ダイポールおよびモノポール)または磁気アンテナと電気アンテナの組合せも考えられる。」 「【0035】 図10は、本発明の例示的な実施形態による送信器の簡略化されたブロック図である。送信器200は、送信回路202と送信アンテナ204とを含む。一般に、送信回路202は、発振信号を発し、それによって送信アンテナ204の周りに近接場エネルギーを生成することによって送信アンテナ204にRF電力を供給する。一例として、送信器200は、13.56MHz ISM帯域で動作することができる。」 「【0103】 複数送信アンテナ無線充電装置700内の送信アンテナ710の作動順序付けは、時間領域に基づくシーケンスに従って行うことができる。送信電力増幅器720の出力は、送信器プロセッサからの制御信号724に従って、送信電力増幅器720から各送信アンテナ710への出力信号を時間多重化するマルチプレクサ722に結合される。 「【0120】 図23A?23Cは、複数の方向に向けられた送信アンテナを保持する物品の例示的な実施形態を示している。この多次元配置は、送信アンテナの複数の次元に対して様々な向きに位置させた受信器に供給することのできる電力を増大させることができる。 【0121】 図23A?23Cでは、X軸、Y軸、およびZ軸に沿って概ね互いに直交する表面に送信アンテナが埋め込まれる三次元無線充電装置が示されている。これらの表面は、たとえば、矩形エンクロージャの3つの側面であってよい。3つのTxアンテナのうちのどれか1つまたは任意の一対のアンテナを使用するか、あるいは3つのTxアンテナを一度に使用して、エンクロージャ内に配置されたデバイス内のRxアンテナに無線によってRF電力を供給することができるように融通がきく。上記で図21および22に関して論じたような手段を使用して、様々な向きのアンテナのうちのどれかを選択して多重化することができる。 【0122】 図23A?23Cでは、例示的な工具930が箱910内に配置されている。第1の向きの送信アンテナ912が箱910の底面上に配置されている。第2の向きの送信アンテナ914が箱910の第1の側面上に配置され、第3の向きの送信アンテナ916が、箱910の第2の側面上に、第2の向きの送信アンテナ914にほぼ直交するように配置されている。図23Aは、中に配置された工具930を示すように蓋が開けられた箱910を示している。図23Bは、蓋が閉じられた箱910を示している。」 「【0127】 図23A?24Bを参照すると分かるように、デバイスが最も高い電力を受けるのを可能にするアンテナとして選択すべき最適なTxアンテナを定義する自己較正方法を提供することができる。複数のデバイスを同じエンクロージャ内で充電する場合、各デバイスに異なるタイムスロットを割り当てることによって異なるTxアンテナを選択して各デバイスに割り当てる手段が考えられる。」 「【0130】 例示的な実施形態では、各RxデバイスおよびTxアンテナは、上記で図13A?15Dに関して説明したRxデバイスとTxアンテナとの通信用の技術を利用することができる。また、2008年10月10日に出願され、引用によって内容が全体的に本明細書に組み込まれる、「SIGNALING CHARGING IN WIRELESS POWER ENVIRONMENT」という名称の米国特許出願第12/249,816号に記載された手段のようなより高度な通信手段を使用することができる。 【0131】 これらの通信方法は、Txアンテナの考えられるすべての組合せのそれぞれについて順次電力が伝送され、それに対してRxが信号を返し、それによって最高の電力が受信されるようになる「較正期間」中に使用することができる。この場合、Txシステムは、Txアンテナのこの最適な組合せを使用して充電期間を開始することができる。この通信方式では、同じエンクロージャ内の任意の方向に向けられた複数のデバイスを充電する場合、Txシステムは、Tの1/N倍の持続時間のタイムスロットをあるデバイスに割り当てる。ここで、Nは充電中のユニットの数であり、Tは充電期間である。Rxデバイスは、そのタイムスロットの間、他のRxデバイスに望ましい組合せとは無関係に、最良の電力伝達を可能にするTxアンテナの最適な組合せを判定することができる。・・・(以下、省略)・・・」 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 段落【0018】より「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナが使用され」との技術事項を読み取ることができる。 b 段落【0035】より「送信アンテナの周りに近接場エネルギーを生成する」との技術事項を読み取ることができる。 d 段落【0120】より「複数の方向に向けられた送信アンテナを保持し、この多次元配置は、送信アンテナの複数の次元に対して様々な向きに位置させた受信器に供給することのできる電力を増大させることができる」との技術事項を読み取ることができる。 e 段落【0121】における「これらの表面」が「概ね互いに直交する表面」を意味していることは明らかであるから、段落【0121】より「X軸、Y軸、およびZ軸に沿って概ね互いに直交する表面に送信アンテナが埋め込まれる三次元無線充電装置」であって、「概ね互いに直交する表面は、たとえば、矩形エンクロージャの3つの側面であってよく、3つのTxアンテナのうちのどれか1つまたは任意の一対のアンテナを使用するか、あるいは3つのTxアンテナを一度に使用して、エンクロージャ内に配置されたデバイス内のRxアンテナに無線によってRF電力を供給することができる」との技術事項を読み取ることができる。 f 段落【0121】の「上記で図21および22に関して論じたような手段を使用して、様々な向きのアンテナのうちのどれかを選択して多重化することができる。」との記載、及び図21に関して論じている段落【0103】の記載より、「様々な向きのアンテナのうちのどれかを選択して多重化することができ、そのために使用する複数送信アンテナの作動順序付けは、時間領域に基づくシーケンスに従って行うことができ、送信電力増幅器の出力は、送信器プロセッサからの制御信号に従って、送信電力増幅器から各送信アンテナへの出力信号を時間多重化するマルチプレクサに結合される」との技術事項を読み取ることができる。 g 段落【0127】には「複数のデバイスを同じエンクロージャ内で充電する場合、各デバイスに異なるタイムスロットを割り当てることによって異なるTxアンテナを選択して各デバイスに割り当てる手段が考えられる」ことが記載されている。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナが使用され、送信アンテナの周りに近接場エネルギーを生成し、X軸、Y軸、およびZ軸に沿って概ね互いに直交する表面に送信アンテナが埋め込まれる三次元無線充電装置であって、概ね互いに直交する表面は、たとえば、矩形エンクロージャの3つの側面であってよく、3つのTxアンテナのうちのどれか1つまたは任意の一対のアンテナを使用するか、あるいは3つのTxアンテナを一度に使用して、エンクロージャ内に配置されたデバイス内のRxアンテナに無線によってRF電力を供給することができ、 様々な向きのアンテナのうちのどれかを選択して多重化することができ、そのために使用する複数送信アンテナの作動順序付けは、時間領域に基づくシーケンスに従って行うことができ、送信電力増幅器の出力は、送信器プロセッサからの制御信号に従って、送信電力増幅器から各送信アンテナへの出力信号を時間多重化するマルチプレクサに結合され、複数のデバイスを同じエンクロージャ内で充電する場合、各デバイスに異なるタイムスロットを割り当てることによって異なるTxアンテナを選択して各デバイスに割り当てる手段が考えられる、 三次元無線充電装置。」 イ 参考文献1 (ア)特表2000-513813号公報(以下、「参考文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。 「上述の電流制御システムによっても、微小流体システムの電極には依然として高電圧が印加されねばならない。連続した正確な高電圧を生成し得る高コストの電源を使用する必要をなくすために、本発明は、時間多重化電源を提供する。時間多重化電源は1つより多い電極に電力供給することができるため、システム100に必要な電源数が低減する。 図3Aは、現在動電学的システムで使用されている高電力の電源の出力の例を示す。出力は時間に関係なく2つの電極間で250ボルトで一定である。これに対して、図3Bは、本発明により動作する電源の出力を示す。250ボルトの定電圧を維持するために、出力電圧は、1000ボルトで1/4のデューティサイクルで時間多重化される。時間で平均化すると、グラフを横切る点線によって示されるように、時間多重化電源の出力は250ボルトである。上述のように、電圧が、例えば電流制御に応じて変化する必要があるときは、時間多重化電源の出力電圧もまた、印加電圧の変化によって、またはデューティサイクルの変化によって、もしくはこれらの組み合わせによって変化し得る。」(第20頁第22行-第21頁第7行) よって、参考文献1には、「時間多重化」について次の技術事項(以下、「技術事項1」という。)が記載されているものと認められる。 「連続した高電圧を生成し得る電源を使用する必要をなくすために、時間多重化電源を提供し、時間多重化電源は1つより多い電極に電力供給することができるため、システムに必要な電源数が低減し、定電圧を維持するために、出力電圧は、1/4のデューティサイクルで時間多重化される、技術。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1における「三次元無線充電装置」は、「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナが使用され、送信アンテナの周りに近接場エネルギーを生成し」ているから、本件補正発明における「変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置」に相当する。 (イ)「変動磁界を発生させるための手段」について、本件補正発明ではが「変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイル」であるのに対し、引用発明1では「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナ」からなる「3つのTxアンテナ」である点で相違する。 (ウ)引用発明1における「3つのTxアンテナのうちの」「任意の一対のアンテナ」が、本件補正発明における「前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先」に相当する。 (エ)引用発明1において「3つのTxアンテナのうちの」「任意の一対のアンテナ」を「送信アンテナ」とする場合には、「任意の一対のアンテナ」のうちのいずれか「一対のアンテナ」に「送信電力増幅器から各送信アンテナ(この場合、各一対のアンテナ)への出力信号を時間多重化」し、「そのために使用する複数送信アンテナの作動順序付けは、時間領域に基づくシーケンスに従って行う」ことになる。すると、上記シーケンスに従って送信電力増幅器から各送信アンテナ(この場合、各一対のアンテナ)への出力信号を時間多重化する「マルチプレクサ」と、本件補正発明とは、「複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置」の点で共通する。 しかしながら、「切り替え可能な電流出力制御装置」について、本件補正発明では、所定の順番で「繰り返して」変動電流を出力しているのに対し、引用発明1にはその旨の記載がない点で相違する。 (オ)引用発明1における「X軸、Y軸、およびZ軸に沿って概ね互いに直交する表面に送信アンテナが埋め込まれ」「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナが使用され」ることと、本件補正発明における「全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されて」いることとは、上記「(イ)」を踏まえると、「全ての前記『変動磁界を発生させるための手段』は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、少なくとも一つの前記『変動磁界を発生させるための手段』は、他の前記『変動磁界を発生させるための手段』のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されて」いる点で共通する。 しかしながら、本件補正発明では、上記のように配置される「変動磁界を発生させるための手段」が、「変動磁界を発生させる複数の送電共振器」と「前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイル」であるのに対し、引用発明1では「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナ」からなる「3つのTxアンテナ」である点で相違する。 (カ)引用発明1における「3つのTxアンテナのうちの」「任意の一対のアンテナ」を「送信アンテナ」とすることが、本件補正発明における「前記複数の出力先には、複数の前記送電コイルからなる出力先が含まれる」に相当する。 (キ)引用発明1における「三次元無線充電装置」は、「磁気式アンテナ」を使用して「送信アンテナの周りに近接場エネルギーを生成し」ているから、本件補正発明における「磁界形成装置」に相当する。 イ 上記(ア)ないし(キ)より、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させるための手段と、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記「変動磁界を発生させるための手段」は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、少なくとも一つの前記「変動磁界を発生させるための手段」は、他の前記「変動磁界を発生させるための手段」のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されており、 前記複数の出力先には、複数の前記送電コイルからなる出力先が含まれることを特徴とする磁界形成装置。」 (相違点1) 「変動磁界を発生させるための手段」について、本件補正発明では「変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイル」であるのに対し、引用発明1では「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナ」からなる「3つのTxアンテナ」である点。 (相違点2) 「切り替え可能な電流出力制御装置」について、本件補正発明では、所定の順番で「繰り返して」変動電流を出力しているのに対し、引用発明1では、その旨の記載がされていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 非接触方式の給電システムにおいて、一次側コイルとして給電コイルと給電側共鳴コイルを設けることは周知技術である(必要であれば、特開2010-124522号公報の段落【0002】、段落【0004】の記載参照。)。 よって、引用発明1に上記周知技術を適用し、引用発明1における「3つのTxアンテナ」として、「一巻きループアンテナや多巻きループアンテナなどの磁気式アンテナ」を用いることに代え、「給電コイルと給電側共鳴コイルを設け」、該「給電側共鳴コイル」で「近接場エネルギーを生成」させるようにして、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について 参考文献1に記載された「技術事項1」に示されるとおり、「時間多重化」とは、所定の「デューティサイクル」で「時間多重化」することを意味する技術用語である。 したがって、引用発明1において「マルチプレクサ」が「シーケンスに従って」「各送信アンテナ(この場合、各一対のアンテナ)への出力信号を時間多重化」すると記載されている以上、当業者は、かかる「時間多重化」を実行するシーケンスが、所定の作動順序の「サイクル」、つまり「繰り返し」を含んでいると考えるのが自然である。 よって、引用発明1において「マルチプレクサ」が、所定の作動順序の「サイクル」、つまり「繰り返し」を含んだ「シーケンス」で「各送信アンテナ(この場合、各一対のアンテナ)」へ出力するようにし、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の中で、「一方で、引用文献1の段落0127には、「図23A?24Bを参照すると分かるように、デバイスが最も高い電力を受けるのを可能にするアンテナとして選択すべき最適なTxアンテナを定義する自己較正方法を提供することができる。・・・」と記載されております。これは、引用文献1のマルチプレクサ722が、電力送信対象の送信アンテナを時間多重方式により切り替えるのは、充電対象のデバイスにとって最適な送信アンテナを決定するための期間である「較正期間」の間であることを示唆しております。」と主張している。 しかしながら、引用文献1の段落【0131】の「この通信方式では、同じエンクロージャ内の任意の方向に向けられた複数のデバイスを充電する場合、Txシステムは、Tの1/N倍の持続時間のタイムスロットをあるデバイスに割り当てる。ここで、Nは充電中のユニットの数であり、Tは充電期間である。Rxデバイスは、そのタイムスロットの間、他のRxデバイスに望ましい組合せとは無関係に、最良の電力伝達を可能にするTxアンテナの最適な組合せを判定することができる。」との記載は、あるデバイスについての自己較正が、該デバイスに割り当てられた「充電期間」(タイムスロット)の間に行われることを示している。 よって、引用文献1のマルチプレクサは、エンクロージャ内のすべてのデバイスに対する充電期間全体の中で、送信アンテナを時間多重化して切り替えていることは明らかである。 よって、請求人の主張は採用できない。 第4 本願発明について 1 本願発明 令和2年7月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和2年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ(「第2 [理由]1(2)」を参照。)、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 変動磁界を所定領域に発生させる磁界形成装置であって、 前記変動磁界を発生させる複数の送電共振器と、 前記送電共振器に誘導電流を生じさせるように設けられた複数の送電コイルと、 前記送電コイルの全部を除く少なくとも一つの前記送電コイルからなる複数の出力先の何れかの出力先に、所定の順番で変動電流を出力するように、切り替え可能な電流出力制御装置と、 を有し、 全ての前記送電共振器は、コイル面が前記所定領域に対向するように配置されており、 少なくとも一つの前記送電共振器は、他の前記送電共振器のコイル面方向に対して交差するコイル面方向を有するように配置されていることを特徴とする磁界形成装置。」 2 引用文献 本願発明について、原査定の拒絶の理由(特許法第29条第2項)で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 前記第2の[理由]2(3)ア に記載した対比を踏まえると、本願発明と引用発明1とは、前記第2の[理由]2(3)イ に記載した相違点1で相違する。 そして上記相違点1が周知技術に基づいて当業者とって容易になし得たものであることは、前記第2の[理由]2(4)ア に記載したとおりである。 よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-26 |
結審通知日 | 2021-03-30 |
審決日 | 2021-04-16 |
出願番号 | 特願2016-13190(P2016-13190) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 秀一、赤穂 嘉紀 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
清水 稔 永井 啓司 |
発明の名称 | 磁界形成装置及び受電装置 |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |