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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1374801
審判番号 不服2020-15313  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-05 
確定日 2021-06-29 
事件の表示 特願2017-533811「可撓性無線周波数識別タグ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開,WO2016/105942,平成30年 3月 8日国内公表,特表2018-506774,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年12月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月23日(以下,「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする出願であって,令和1年12月6日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年3月9日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされたが,令和2年7月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-7に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2013-077268号公報
2.特開2010-122764号公報
3.特開2005-096423号公報
4.特開2010-176451号公報


第3 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,令和2年3月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
伸縮性無線周波数識別タグであって、
前記伸縮性無線周波数識別タグを物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する、可撓性の伸縮性の第1基材と、
前記第1基材から間隔を空けて配置され、第2の接着剤層を介して別個の間隔を空けた有限数の取り付け箇所で前記第1基材に取り付けられた第2基材であって、前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する、第2基材と、
前記第2基材上に配置された電子回路と、
を含み、
前記第2基材及び前記電子回路が、前記第1の接着剤層及び前記第1基材によって画定される開口に受け入れられる、伸縮性無線周波数識別タグ。
【請求項2】
前記可撓性の伸縮性第1基材が、前記基材の伸長前の元の寸法の1.5倍まで断裂せずに伸長することができる、請求項1に記載のタグ。
【請求項3】
前記第2基材が前記第1基材よりも実質的に伸縮性が低い、請求項1に記載のタグ。
【請求項4】
伸縮性物品であって、
前記伸縮性物品を物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する、より伸縮性の高い第1基材と、
第2の接着剤層を介して有限数の取り付けポイントで前記第1基材から吊り下げられた、より伸縮性の低い第2基材であって、前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する、第2基材と、
前記第2基材上に配置された電子回路と、
を備えた伸縮性物品であって、前記物品が伸長すると、前記第1基材が、前記第2基材及び前記電子回路より大きな歪みを受け、
前記第2基材及び前記電子回路が、前記第1の接着剤層及び前記第1基材によって画定される開口に受け入れられる、伸縮性物品。
【請求項5】
前記電子回路はアンテナを含み、前記物品が伸長したときの前記アンテナの共振周波数は、前記物品が伸長していない状態のときの前記アンテナの共振周波数と本質的に同じである、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の接着剤層が、前記電子回路から遠い側よりも、前記電子回路に近い側において、より厚い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のタグ。
【請求項7】
前記第1の接着剤層が、前記電子回路から遠い側よりも、前記電子回路に近い側において、より厚い、請求項4又は5に記載の物品。」


第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
ア 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2013-77268号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

a 「【0013】
以下、本発明に係る無線ICデバイス及びその製造方法の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(無線ICデバイス、図1?図5参照)
一実施例である無線ICデバイス1は、UHF帯の通信に用いられるものであり、図1及び図2に示すように、可撓性を有する基材シート10に設けられたアンテナ素子30と、アンテナ素子30に接続された無線IC素子50と、無線IC素子50を覆うようにアンテナ素子30に取り付けた可撓性を有するカバーシート40とを備えており、いわゆるRFIDタグとして構成されている。
【0015】
基材シート10は、例えば、耐熱性や耐薬品性を有することが好ましく、ポリイミドやPETなどの熱可塑性樹脂材を好適に使用することができる。アンテナ素子30は、基材シート10上に該シート10のほぼ全面に設けられた銀、銅、アルミニウムなどを主成分とする金属膜によって可撓性を有するように形成されている。アンテナ素子30は長辺方向の中央部分でスリット31によって分割されており、無線IC素子50はこのスリット31を跨ぐようにアンテナ素子30に接続固定されている。即ち、アンテナ素子30はダイポール型の放射素子として機能する。なお、図示はしていないが、アンテナ素子30の表面には、アンテナ素子30を覆うようにレジストやカバーレイのような保護膜が設けられている。
【0016】
無線IC素子50は、RF信号を処理するもので、その詳細は図6?図9を参照して後述する。無線IC素子50とアンテナ素子30の端部、即ちスリット31で分割された端部(給電部30a,30a)との結合は電磁界結合あるいは半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)である。詳しくは、無線IC素子50は、給電回路基板65上に無線ICチップ51を搭載し、かつ、無線ICチップ51を樹脂材55にて封止したものである。但し、給電回路基板65は必ずしも必要なものではなく、無線ICチップ51が単独でアンテナ素子30に接合されていてもよい。
【0017】
カバーシート40は、前記基材シート10と同様の性質を有する樹脂材(例えば、PETフィルム)が使用されており、無線IC素子50から所定の間隔G(図2参照)だけ離れた箇所でアンテナ素子30に接着剤にて固定され、かつ、図2に示すように、無線IC素子50の側部には空隙部Hが形成されている。カバーシート40は、無線IC素子50のアンテナ素子30への接合状態を視認できることから、透明又は半透明であることが好ましい。
【0018】
なお、本実施例において、基材シート10とアンテナ素子30とは平面視でほぼ同じ形状とされているが、基材シート10のほうがアンテナ素子30よりも平面視で大きな面積を有するものであってもよい。この場合、カバーシート40は基材シート10に接着されていてもよく、あるいは、基材シート10とアンテナ素子30とに跨って接着されていてもよい。
【0019】
図3(A),(B),(C)に、平面視で長方形状をなすカバーシート40の種々の貼着状態を示し、斜線を付した部分で接着剤41にて固定されている。図3(A)は長辺方向の両端部においてアンテナ素子30に貼着されている状態を示している。図3(B)は枠状に(つまり、4辺にて)アンテナ素子30に貼着されている状態を示している。図3(C)は長辺方向の両側部においてアンテナ素子30に貼着されている状態を示している。

・・・中略・・・
【0023】
つまり、無線IC素子50はカバーシート40にて覆われているが、空隙部Hが存在することにより、基材シート10やアンテナ素子30が撓んだりしても無理な応力が無線IC素子50に作用することがなく、無線IC素子50がダメージを受けることが防止されることになる。」

b 「【0038】
(物品への取付け形態、図11及び図12参照)
次に、前記無線ICデバイス1を物品へ取り付ける形態について説明する。ここで、物品とは具体的には手術用ガーゼ70である。即ち、図11及び図12に示すように、ガーゼ70の特定の箇所に不織布71,72で挟み込んだ無線ICデバイス1を縫製する。縫製箇所は図12(A)で点線Dで示している。なお、縫製箇所はこの位置に限るものではない。また、不織布71,72の周囲の適宜箇所を熱圧着して無線ICデバイス1をガーゼ70に取り付けるようにしてもよい。また、無線ICデバイス1は、ガーゼ70と不織布71との間に挟み込んであってもよい。即ち、無線ICデバイス1とガーゼ70との間に位置する不織布72を省略してもよい。」

c 「図1




d 「図2



e 「図3



f 「図11



g 「図12



h 上記aの段落【0014】には,“UHF帯の通信に用いられるものであり,可撓性を有する基材シート10に設けられたアンテナ素子30と,アンテナ素子30に接続された無線IC素子50と,無線IC素子50を覆うようにアンテナ素子30に取り付けた可撓性を有するカバーシート40とを備えた,いわゆるRFIDタグである無線ICデバイス1”が記載され,また,段落【0018】には,“基材シート10のほうがアンテナ素子30よりも平面視で大きな面積を有する場合,カバーシート40は基材シート10に接着され”ることが記載されている。
してみると,引用文献1には,“UHF帯の通信に用いられるものであり,可撓性を有する基材シート10に設けられたアンテナ素子30と,アンテナ素子30に接続された無線IC素子50と,無線IC素子50及びアンテナ素子を覆うように基材シート10に取り付けた可撓性を有するカバーシート40とを備えた,いわゆるRFIDタグである無線ICデバイス1”が記載されているといえる。

i 上記aの段落【0015】には,“基材シート10は,ポリイミドやPETなどの熱可塑性樹脂材を好適に使用するものであ”ること,さらに,段落【0018】には,「基材シート10のほうがアンテナ素子30よりも平面視で大きな面積を有するものであ」ることが記載されている。

j 上記aの段落【0015】には,「アンテナ素子30は,基材シート10上に該シート10のほぼ全面に設けられた銀,銅,アルミニウムなどを主成分とする金属膜によって可撓性を有するように形成されている」ことが記載されている。

k 上記aの段落【0016】には,「無線IC素子50は、RF信号を処理するもので」あることが記載されている。

m 上記aの段落【0017】には,“カバーシート40は,前記基材シート10と同様の性質を有する樹脂材(例えば,PETフィルム)が使用されており,無線IC素子50から所定の間隔Gだけ離れた箇所でアンテナ素子30に接着剤にて固定され,かつ,無線IC素子50の側部には空隙部Hが形成される”ものであることが,また,段落【0018】には,“基材シート10のほうがアンテナ素子30よりも平面視で大きな面積を有する場合,カバーシート40は基材シート10に接着され”ることが,さらに,段落【0019】には,“平面視で長方形状をなすカバーシート40は接着剤41にて長辺方向の両端部においてアンテナ素子30に貼着され”ることが記載されている。
してみると,引用文献1には,“カバーシート40は,平面視で長方形状であって,前記基材シート10と同様の性質を有する樹脂材(例えば,PETフィルム)が使用されており,無線IC素子50から所定の間隔Gだけ離れた箇所の長辺方向の両端部において基材シート10に接着剤41にて固定され,かつ,無線IC素子50の側部には空隙部Hが形成されるものであ”ることが記載されているといえる。

n 上記bには,“前記無線ICデバイス1をガーゼ70へ取り付ける際には,無線ICデバイス1は,ガーゼ70と不織布71との間に挟み込んで縫製されて取り付けられる”ことが記載され,また,取り付け状態を示した図11(上記f),図12(上記g)によれば,“無線ICデバイス1の基材シート10側がガーゼ71に載置されている”ことが看取できる。
してみると,引用文献1には,“前記無線ICデバイス1をガーゼ70へ取り付ける際には,無線ICデバイス1は,基材シート10側がガーゼ70に載置されるようにガーゼ70と不織布71との間に挟み込んで縫製されて取り付けられ”ることが記載されているといえる。

o 上記aの段落【0023】には,“無線IC素子50はカバーシート40にて覆われ,空隙部Hが存在することにより,基材シート10やアンテナ素子30が撓んだりしても無理な応力が無線IC素子50に作用することがなく,無線IC素子50がダメージを受けることが防止される”ことが記載されている。

イ 上記aないしoの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「UHF帯の通信に用いられるものであり,可撓性を有する基材シート10に設けられたアンテナ素子30と,アンテナ素子30に接続された無線IC素子50と,無線IC素子50及びアンテナ素子を覆うように基材シート10に取り付けた可撓性を有するカバーシート40とを備えた,いわゆるRFIDタグである無線ICデバイス1であって,
基材シート10は,ポリイミドやPETなどの熱可塑性樹脂材を好適に使用するものであって,また,基材シート10のほうがアンテナ素子30よりも平面視で大きな面積を有するものであって,
アンテナ素子30は,基材シート10上に該シート10のほぼ全面に設けられた銀,銅,アルミニウムなどを主成分とする金属膜によって可撓性を有するように形成されており,
無線IC素子50は,RF信号を処理するものであって,
カバーシート40は,平面視で長方形状であって,前記基材シート10と同様の性質を有する樹脂材(例えば,PETフィルム)が使用されており,無線IC素子50から所定の間隔Gだけ離れた箇所の長辺方向の両端部において基材シート10に接着剤41にて固定され,かつ,無線IC素子50の側部には空隙部Hが形成されるものであって,
前記無線ICデバイス1をガーゼ70へ取り付ける際には,無線ICデバイス1は,基材シート10側がガーゼ70に載置されるようにガーゼ70と不織布71との間に挟み込んで縫製されて取り付けられ,
無線IC素子50はカバーシート40にて覆われ,空隙部Hが存在することにより,基材シート10やアンテナ素子30が撓んだりしても無理な応力が無線IC素子50に作用することがなく,無線IC素子50がダメージを受けることが防止される,
無線ICデバイス1。」

2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2010?122764号公報(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

a 「【0009】
図1は本発明の第1実施形態に係るRFIDタグ11の外観を概略的に示す。このRFIDタグ11は例えば板状の封止材12を備える。封止材12は例えば平たい直方体形状を有する。こうした封止材12は例えばウレタンゴムといった弾性材料から形成される。こうして封止材12は所定の柔軟性を有する。封止材12の表面および裏面には1対の補強材13a、13bがそれぞれ配置される。補強材13a、13bは例えば板状に形成される。補強材13a、13bは例えば平たい直方体形状を有する。
【0010】
補強材13a、13bは封止材12の弾性材料より硬い材料から形成される。ここでは、補強材13a、13bは例えば繊維強化樹脂から形成される。繊維強化樹脂は、例えばエポキシ樹脂に含浸されるガラス繊維を備える。その他、補強材13a、13bは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂といった樹脂材料から形成されてもよい。
【0011】
図2に示されるように、封止材12内にはインレット14が密閉される。インレット14は、封止材12を構成する1対の薄板材12a、12bに挟み込まれる。薄板材12a、12b同士は相互に貼り合わせられる。インレット14は薄板状の基材16を備える。基材16は封止材12の長手方向に長尺に延びる。基材16は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)といった樹脂材料から形成される。基材16の表面には電子部品すなわち半導体チップ17が実装される。実装にあたって例えば接着剤が用いられる。半導体チップ17には例えば無線用の送受信回路や論理回路、メモリが組み込まれる。メモリには所定の情報が記憶される。半導体チップ17は例えばシリコンから形成される。」

b「図2



3 引用文献3について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2005?96423号公報(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

a 「【0084】
次に第2の実施形態であるタイヤ取付用ICタグ20bについて、図8の側面断面図による説明図と共に説明する。 この実施形態では、第1の実施形態の保護シート51の代わりに、高温度で溶融する熱可塑性のゴム部材で形成する保護層52を塗布、あるいは積層した構成のものを、加硫してある程度の弾力性と耐久性をもったゴムシート33,36等で挟み込んでタイヤ取付用ICタグ20bを構成する。
【0085】
タイヤ10には、IC44を実装した導体回路で形成する基板43の裏面側に塗布した接着剤32によって貼付する。
【0086】
<第1工程F>
まず、(J)に示すようにICタグ本体40のIC44が実装されて突出している側の面に、保護層52を塗布する。この層は、150℃程度の温度で軟化し始めるウレタン系の樹脂材を、ロールコータ、ブレードコータ等で塗布して形成する。なお、上記温度は望ましい温度であり、130℃から170℃程度としてもよい。
【0087】
次に、上記保護層52を塗布したICタグ本体40の両面に、加硫して弾性力をもった0.1mm厚程度のSBR製のゴムシート33,36を、接着剤34,35を介して、ラミネート等の工法により接合させる。なお、上記厚みは望ましい厚みであり、0.05mmから0.15mm厚程度としても良い。
【0088】
この時使用する接着剤34,35は、後に、該ICタグ本体40をタイヤに貼付するための接着剤32と同種であることが望ましく、例えばゴム系接着剤を用いると良い。
【0089】
なお、ICタグ本体40の両面に接合したゴムシート33,36は、ICタグ本体40よりも面サイズを大きく形成しておき、ICタグ本体40の周囲でゴムシート33と35を接合させる個所を形成する。これにより、ICタグ本体40をゴムシート33,35で密封する構成とする。」

b 「図8



4 引用文献4について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2010?176451号公報(以下,これを「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

a 「【0024】
図5、図6に示すように、表面外装部5aと裏面外装部5bのそれぞれの外周部9(基板4より大きく設定された破線5dより外側の領域)を互いに接着して密閉した収納空間5cを形成し、この収納空間5cに基板4を非接着で収納する。すなわち、基板4は破線5dの領域より小さいので収納空間5cに収めることができ、密閉により耐水性を高めている。これにより、タグICチップ2とタグアンテナ部3とを湿気などから守ることができる。」

b 「図5




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「無線ICデバイス1」は,「UHF帯の通信に用いられる」「いわゆるRFIDタグであ」り,無線周波数識別タグと認められ,また,「無線ICデバイス1」は,「PET」などの「樹脂材」からなる「可撓性を有する基材シート10」及び「可撓性を有するカバーシート40」からなっており,ある程度の伸縮性があるものと認められる。
してみると,引用発明の「無線ICデバイス1」は,本願発明1の「伸縮性無線周波数識別タグ」に相当する。

イ 引用発明の「ガーゼ70」は,本願発明1の「物体」に相当する。
また,上記アで検討したように,引用発明の「可撓性を有するカバーシート40」は,ある程度の伸縮性があるものと認められることから,引用発明の「カバーシート40」と,本願発明1の「前記伸縮性無線周波数識別タグを物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する、可撓性の伸縮性の第1基材」とは,後記の点で相違するものの,“可撓性の伸縮性の第1基材”の点では共通する。

ウ 引用発明の「基材シート10」は,「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」が設けられ,それらを覆うように「カバーシート40」が「無線IC素子50から所定の間隔Gだけ離れた箇所の長辺方向の両端部において」「接着材41にて固定」されるものであるから,「基材シート10」と「カバーシート40」は間隔を空けて配置され,また,「接着材41」で別個の間隔を空けた有限数の取り付け箇所で取り付けられているものと認められる。
してみると,引用発明の「接着材41」は,本願発明1の「第2の接着剤層」に相当し,そして,引用発明の「基材シート10」と,本願発明1の「前記第1基材から間隔を空けて配置され、第2の接着剤層を介して別個の間隔を空けた有限数の取り付け箇所で前記第1基材に取り付けられた第2基材であって、前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する、第2基材」とは,後記の点で相違するものの,“前記第1基材から間隔を空けて配置され,第2の接着剤層を介して別個の間隔を空けた有限数の取り付け箇所で前記第1基材に取り付けられた第2基材”の点では共通する。

エ 引用発明の「アンテナ素子30」は,「基材シート10に設けられ」,また,「無線IC素子50」が「接続され」るものであるから,引用発明の「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」は「基材シート10」上に配置されているといえる。
したがって,引用発明の「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」は,本願発明1の「前記第2基材上に配置された電子回路」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「伸縮性無線周波数識別タグであって,
可撓性の伸縮性の第1基材と,
前記第1基材から間隔を空けて配置され,第2の接着剤層を介して別個の間隔を空けた有限数の取り付け箇所で前記第1基材に取り付けられた第2基材と,
前記第2基材上に配置された電子回路と,
を含む,
伸縮性無線周波数識別タグ。」

〈相違点1〉
「第1基材」が,本願発明1では「前記伸縮性無線周波数識別タグを物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する」ものであって,「前記第2基材及び前記電子回路が、前記第1の接着剤層及び前記第1基材によって画定される開口に受け入れられる」ものであるのに対して,引用発明では「カバーシート40」にはそのような接着剤層を有しておらず,そのような開口も存在しない点。

〈相違点2〉
「第2基材」が,本願発明1では「前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する」ものであるのに対して,引用発明では「基材シート10」が「ガーゼ70に載置される」ものであって,そのようなエアギャップは存在しない点。


(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,相違点1について先に検討する。
引用文献2ないし引用文献4には,装置が備える第1の基材が,装置を物体に取り付けるための接着剤層を有し,この接着剤層と第1の基材とによって開口を形成し,この開口に電子回路が配置される第2の基材を受け入れるようにすることは記載されておらず,また,このようにすることが,本願優先日における周知の技術であったとも認められない。
また,引用発明は,「無線IC素子50はカバーシート40にて覆われ,空隙部Hが存在することにより,基材シート10やアンテナ素子30が撓んだりしても無理な応力が無線IC素子50に作用することがなく,無線IC素子50がダメージを受けることが防止される」ものであるから,さらに,「カバーシート40」に「無線ICデバイス1」を「ガーゼ70」に取り付けるための接着剤層を設け,この接着剤層と「カバーシート40」によって開口を形成し,この開口に「基材シート10」,「無線ICデバイス1」及び「アンテナ素子30」を受け入れるようにする理由が存在しない。
したがって,上記相違点1に係る構成が,引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。
以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1が引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2,3,6について
本願発明2,3,6は,本願発明1を更に限定したものであるので,上記1と同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明4について
(1)対比
本願発明4と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「無線ICデバイス1」は,物品といえ,また,「無線ICデバイス1」は,「PET」などの「樹脂材」からなる「可撓性を有する基材シート10」及び「可撓性を有するカバーシート40」からなっており,ある程度の伸縮性があるものと認められる。
してみると,引用発明の「無線ICデバイス1」は,本願発明4の「伸縮性物品」に相当する。

イ 引用発明の「ガーゼ70」は,本願発明4の「物体」に相当する。
また,上記アで検討したように,引用発明の「可撓性を有するカバーシート40」は,ある程度の伸縮性があるものと認められることから,引用発明の「カバーシート40」と,本願発明4の「前記伸縮性物品を物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する、より伸縮性の高い第1基材」とは,後記の点で相違するものの,“伸縮性の第1基材”の点では共通する。

ウ 引用発明の「基材シート10」は,「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」が設けられ,それらを覆うように「カバーシート40」が「無線IC素子50から所定の間隔Gだけ離れた箇所の長辺方向の両端部において」「接着材41にて固定」されるものであり,「基材シート10」は「接着材41」を介して有限数の取り付けポイントで「カバーシート40」に取り付けられているといえる。また,上記アで検討したように,引用発明の「可撓性を有する基材シート10」は,ある程度の伸縮性があるものと認められる。
してみると,引用発明の「接着材41」は,本願発明4の「第2の接着剤層」に相当し,そして,引用発明の「基材シート10」と,本願発明4の「第2の接着剤層を介して有限数の取り付けポイントで前記第1基材から吊り下げられた、より伸縮性の低い第2基材であって、前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する、第2基材」とは,後記の点で相違するものの,“第2の接着剤層を介して有限数の取り付けポイントで前記第1基材に取り付けられた,伸縮性の第2基材”の点では共通する。

エ 引用発明の「アンテナ素子30」は,「基材シート10に設けられ」,また,「無線IC素子50」が「接続され」るものであるから,引用発明の「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」は「基材シート10」上に配置されているといえる。
したがって,引用発明の「アンテナ素子30」及び「無線IC素子50」は,本願発明4の「前記第2基材上に配置された電子回路」に相当する。

したがって,本願発明4と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「伸縮性物品であって,
より伸縮性の高い第1基材と,
第2の接着剤層を介して有限数の取り付けポイントで前記第1基材に取り付けられた,伸縮性の第2基材と,
前記第2基材上に配置された電子回路と,
を備えた伸縮性物品。」

〈相違点3〉
「第1基材」が,本願発明4では「前記伸縮性物品を物体に取り付けるための第1の接着剤層を有する」ものであって,「前記第2基材及び前記電子回路が、前記第1の接着剤層及び前記第1基材によって画定される開口に受け入れられる」ものであるのに対して,引用発明では「カバーシート40」にはそのような接着剤層を有しておらず,そのような開口も存在しない点。

〈相違点4〉
「第2基材」が,本願発明4では「前記第1基材から吊り下げられた」ものであって,「前記第2基材と前記物体との間にエアギャップが存在する」ものであるのに対して,引用発明ではそのように吊り下げられておらず,「基材シート10」が「ガーゼ70に載置される」ものであって,そのようなエアギャップは存在しない点。

〈相違点5〉
「伸縮性物品」が,本願発明4では「より伸縮性の高い第1基材」と,「より伸縮性の低い第2基材」を備え,「前記物品が伸長すると、前記第1基材が、前記第2基材及び前記電子回路より大きな歪みを受け」るのに対して,引用発明ではその旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,相違点3について先に検討する。
引用文献2ないし引用文献4には,物品が備える第1の基材が,物品を物体に取り付けるための接着剤層を有し,この接着剤層と第1の基材とによって開口を形成し,この開口に電子回路が配置される第2の基材を受け入れるようにすることは記載されておらず,また,このようにすることが,本願優先日における周知の技術であったとも認められない。
また,引用発明は,「無線IC素子50はカバーシート40にて覆われ,空隙部Hが存在することにより,基材シート10やアンテナ素子30が撓んだりしても無理な応力が無線IC素子50に作用することがなく,無線IC素子50がダメージを受けることが防止される」ものであるから,さらに,「カバーシート40」に「無線ICデバイス1」を「ガーゼ70」に取り付けるための接着剤層を設け,この接着剤層と「カバーシート40」によって開口を形成し,この開口に「基材シート10」,「無線ICデバイス1」及び「アンテナ素子30」を受け入れるようにする理由が存在しない。
したがって,上記相違点3に係る構成が,引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。
以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明4が引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明5,7について
本願発明5,7は,本願発明4を更に限定したものであるので,上記3と同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1ないし7は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の引用文献1に記載された発明)及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-11 
出願番号 特願2017-533811(P2017-533811)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
須田 勝巳
発明の名称 可撓性無線周波数識別タグ  
代理人 浅村 敬一  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 佃 誠玄  
代理人 野村 和歌子  

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