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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1374822
審判番号 不服2020-7706  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-04 
確定日 2021-06-09 
事件の表示 特願2017-536255「リソグラフィオーバーレイ改善のための半導体アプリケーション用ゲートスタック材料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月14日国際公開、WO2016/111798、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-508980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)12月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年1月9日:米国/2015年10月8日:米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月23日付け :拒絶理由通知書
令和2年1月16日 :意見書,手続補正書の提出
令和2年1月27日付け :拒絶査定
令和2年6月4日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 令和2年6月4日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年6月4日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
ア 本件補正は,本件補正前の請求項1?14を本件補正後の請求項1?14とする補正を含むものであって,本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(ア)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
基板上に膜層を形成する方法であって,
処理チャンバ内の基板支持体上に配置された基板上に,ケイ素含有ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給することと,
前記処理チャンバ内での混合堆積ガスの存在下でプラズマを形成することと,
前記処理チャンバ内に混合堆積ガスを供給しながら,前記処理チャンバ内に配置されたプラズマプロファイルモジュレータに電流を印加することと,
前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成しながら,前記基板を回転させることと
を含む方法。」
(イ)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
基板上に膜層を形成する方法であって,
処理チャンバ内の基板支持体上に配置された基板上に,ケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給することであって,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される,供給することと,
前記処理チャンバ内での混合堆積ガスの存在下でプラズマを形成することと,
前記処理チャンバ内に混合堆積ガスを供給しながら,前記処理チャンバ内に配置されたプラズマプロファイルモジュレータに電流を印加することと,
前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成しながら,前記基板を回転させることと
を含む方法。」

イ そして,請求項1に対する本件補正は以下の補正事項をその内容とするものである。
(補正事項1)本件補正前の請求項1の「ケイ素含有ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給すること」を,本件補正後の請求項1の「ケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給することであって,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される,供給すること」に補正すること。

ウ また,本件補正のうち,補正前の請求項2?14を補正後の請求項2?14とする補正は,以下の補正事項を含むものである。
(補正事項2)本件補正前の請求項5の「前記窒素含有ガスが」を,本件補正後の請求項5の「前記反応ガスが窒素含有ガスであり,前記窒素含有ガスが」と補正すること。
(補正事項3)本件補正前の請求項6の「約0.5Aと約40A」を本件補正後の請求項5の「0.5Aと40A」に補正すること。
(補正事項4)本件補正前の請求項9の「約0度と約360度」を本件補正後の請求項9の「0度と360度」に補正すること。
(補正事項5)本件補正前の請求項11の「プラズマを制御すること」を,本件補正後の請求項11の「プラズマを制御することであって,前記混合ガスはケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含み,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される,制御すること」に補正すること。
(補正事項6)本件補正前の請求項14「前記混合ガスが,ケイ素含有ガス及び窒素含有ガスを含む」を,本件補正後の請求項14「前記反応ガスが窒素含有ガスであり, 前記ケイ素含有ガスと前記窒素含有ガスとが,比率が1:1から1:100の間で前記処理チャンバに供給される」に補正すること。

2.新規事項追加の有無及び補正目的の適否について
上記補正事項1?6について,新規事項追加の有無及び補正目的の適否を検討する。
ア 補正事項1は,補正前の請求項1「ケイ素含有ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給すること」との事項に対し,「混合堆積ガス」としてさらに「不活性ガス」を含むことを限定した上で,さらに「前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される」ことを限定するものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。そして,補正事項1は本願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の段落0033及び段落0034の記載に基づくものである。

イ 補正事項2は,補正前の請求項2「前記窒素含有ガスが」との事項に,「前記反応ガスが窒素含有ガスであり」との限定を付加するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,補正事項2は,当初明細書等の段落0032の記載に基づくものである。

ウ 補正事項3,4は,補正前の請求項6,9の「約0.5Aと約40A」及び「約0度と約360度」から「約」を削除して補正後の請求項6,9の「0.5Aと40A」及び「0度と360度」とするものであり,誤記の訂正に該当する。そして,補正事項3,4は,当初明細書等に記載された事項の範囲内でしたものである。

エ 補正事項5は,補正前の請求項11「プラズマを制御すること」との事項に,「前記混合ガスはケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含み,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される」との限定を付加するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,補正事項5は,当初明細書等の段落0033及び段落0034の記載に基づくものである。

オ 補正事項6は,補正前の請求項14「前記混合ガス」をさらに限定して「前記反応ガスが窒素含有ガスであり, 前記ケイ素含有ガスと前記窒素含有ガスとが,比率が1:1から1:100の間で前記処理チャンバに供給される」とするものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,補正事項6は,当初明細書等の段落0032及び段落0033の記載に基づくものである。

以上ア?オのとおり,上記補正事項1?6は,特許法17条の2第3項の規定に適合し,特許法17条の2第5項第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
上記2.のとおり,請求項1に対する本件補正は特許法17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいる。そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下で更に検討する。

3.1 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(上記1.アの(イ))に記載されたとおりのものである。

3.2 引用例の記載
(1)引用例1の記載
ア 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物である,米国特許出願公開第2014/0118751号明細書(以下「引用例1」という。)には,図1,3とともに,次の記載がある。(和訳及び下線は当審による。以下同じ。)

“[0002] Embodiments described herein relate to processes and apparatus for performing plasma deposition on a substrate. More specifically, embodiments described herein relate to plasma deposition processes and apparatus for forming layers having extreme uniformity of composition and thickness.”
(和訳)“[0002] 本明細書の中において説明される実施形態は,基板上でプラズマ堆積を実行するためのプロセス及び装置に関する。より具体的には,本明細書の中において説明される実施形態は,組成物及び厚さの極端な均一性を有する層を形成するためのプラズマ堆積のプロセス及び装置に関する。“

“[0004] Recently, manufacturers have developed processes that extend device structures into the third dimension to increase processing capability. Such devices generally feature large numbers of material layers deposited sequentially on a substrate. In some cases, over 100 layers may be formed. When so many layers are formed sequentially, non-uniformities in each layer can multiply, resulting in unusable structures. Current layer formation processes and apparatus typically produce non-uniformities that are not suitable for three-dimensional structures. Thus, new processes and apparatus are needed for forming extremely uniform layers on a substrate.”
(和訳)“[0004] 近年,製造者たちは,処理能力を増加させるために,デバイスの構造を3次元へと拡大するプロセスを展開してきた。そのような装置は,概して,多くの数の材料の層が基板上に連続的に堆積されることを特徴とする。いくつかの場合において,100を超える層が形成され得る。多くの層が連続的に形成される場合,各々の層の中の不均一性は増加し得,使えない構造をもたらす。近年の層を形成するプロセス及び装置は,典型的には,3次元の構造に対して不適切な不均一性を生み出す。それ故,極端に均一な層を基板上に形成するために,新しいプロセス及び装置が必要とされる。”

“[0027] Extremely uniform, high quality, device layers may be formed on a substrate in a plasma process by controlling uniformity of gas flow, uniformity of temperature among surfaces of the processing chamber, temperature profile of the substrate, and plasma density profile at various locations of the substrate surface. Plasma density profile and temperature profile can be adjusted together to achieve a desired deposition rate profile across a substrate surface. Temperature uniformity of chamber surfaces can be adjusted to provide uniform concentration of reactive species and to control and/or minimize deposition on chamber surfaces.”
(和訳)“[0027] 極端に均一で高品質のデバイス層は,ガス流の均一性,処理チャンバの表面における温度の均一性,基板の温度プロファイル,及び基板表面の様々な位置におけるプラズマ密度プロファイルを制御することによって,プラズマプロセスにおいて基板上に形成され得る。プラズマ密度プロファイル及び温度プロファイルは,基板表面にわたる望ましい堆積速度プロファイルを獲得するために,一緒に調整され得る。チャンバ表面の温度の均一性は,反応種の均一な濃度を提供するために,かつチャンバ表面上の堆積を制御及び/又は最小化するために調整され得る。”

“[0028] A method 100 of forming a layer of uniform thickness and composition on a substrate is summarized in the flow diagram of FIG. 1. At 102, a substrate is disposed on a substrate support in a CVD chamber.”
(和訳)“[0028] 基板上の均一な厚さ及び組成の層を形成する方法100は,図1の流れ図の中において要約されている。102において,基板は,CVDチャンバの中の基板支持体上に配置される。”

“[0031] At 108, a precursor gas mixture is provided to the chamber through the temperature controlled face plate. The gas mixture may be any suitable CVD precursor mixture, such as a silicon (polysilicon or amorphous silicon), silicon oxide, silicon nitride, or silicon oxynitride precursor mixture. Dopant precursors such as boron compounds, phosphorus compounds, and/or arsenic compounds may be included. The following flow rate ranges apply for a chamber sized for 300 mm substrates. Appropriate scaling may be used for chambers sized for other substrates. A silicon precursor such as silane may be provided at a flow rate between about 20 sccm and about 2,000 sccm. TEOS may be provided at a flow rate between about 20 mgm and about 5,000 mgm. An oxygen precursor such as N_(2)O, O_(2), O_(3), H_(2)O, CO, or CO_(2) may be provided at a flow rate between about 1,000 sccm and about 20,000 sccm. A nitrogen precursor such as N_(2), N_(2)O, NH_(3), or H_(2)N_(2), or a substituted variant thereof, or any mixture of the foregoing nitrogen species, may be provided at a flow rate between about 200 sccm and about 50,000 sccm. A carbon precursor such as a hydrocarbon, for example methane, may be included to add carbon to the layer. Dopants precursors such as trimethylborane (TMB), diborane (B_(2)H_(6)), phosphine (PH_(3)), arsine (AsH_(3)), and substituted phosphines and arsines, or mixtures thereof, may be provided at flow rates between about 20 sccm and about 3,000 sccm. The dopant precursors may be carried by a carrier gas, or diluted in a dilution gas, for example helium, argon, nitrogen, or hydrogen, or any mixture thereof, flowing at a rate of between about 500 sccm and about 30,000 sccm. Operating pressure between about 0.5 Torr and about 10 Torr is established in the chamber. Spacing between the face plate and the substrate is established between about 200 mils (thousandths of an inch) and 1,100 mils.”
(和訳)“[0031] 108において,前駆体ガス混合物は,温度が制御されているフェイスプレートを通ってチャンバに提供される。ガス混合は,シリコン(ポリシリコン又はアモルファスシリコン),酸化ケイ素,窒化ケイ素,又はシリコン酸素窒化物前駆体混合などの,任意の適切なCVD前駆体混合であり得る。ホウ素化合物,リン化合物,及び/又はヒ素化合物などのドーパント前駆体が含まれ得る。以下の流量の範囲は,300ミリメートルの基板に対してサイズが決められたチャンバに適用される。適切な拡大縮小が,他の基板に対してサイズが決められたチャンバに使用され得る。シランなどのシリコン前駆体が,約20sccm及び約2,000sccmの間の流量において提供され得る。TEOSは,約20mgm及び約5,000mgmの間の流量において提供され得る。N_(2)O,O_(2),O_(3),H_(2)O,CO,又はCO_(2)などの酸素前駆体は,約1,000sccm及び約20,000sccmの間の流量において提供され得る。N_(2),N_(2)O,NH_(3),又はH_(2)N_(2)などの窒素前駆体,若しくはそれらの代替的な異形,又は上述の窒素種の任意の混合は,約200sccm及び約50,000sccmの間の流量において提供され得る。例えば,メタンなどの炭化水素などの炭素前駆体が,炭素を層に加えるために含まれ得る。トリメチルボラン(TMB),ジボラン(B_(2)H_(6)),ホスフィン(PH_(3)),アルシン(AsH_(3)),並びに代替的なホスフィン及びアルシン,又はそれらの混合などの,ドーパント前駆体は,約20sccm及び約3,000sccmの間の流量において提供され得る。ドーパント前駆体は,キャリアガスによって運ばれ得,又は例えば,ヘリウム,アルゴン,窒素,若しくは水素,又はそれらの任意の混合などの,希釈ガスの中で希釈され,約500sccm及び約30,000sccmの間の流量において流れる。約0.5トール及び約10トールの間の作動圧力が,チャンバの中で確立される。フェイスプレート及び基板の間の間隔は,約200mils(インチの1,000分の1)及び1,100milsの間で確立される。”

“[0032] At 110, a plasma is formed in the chamber from the precursor gas mixture. The plasma may be formed by capacitive or inductive means, and may be energized by coupling RF power into the precursor gas mixture. The RF power may be a dual-frequency RF power that has a high frequency component and a low frequency component. The RF power is typically applied at a power level between about 50 W and about 1,500 W, which may be all high-frequency RF power, for example at a frequency of about 13.56 MHz, or may be a mixture of high-frequency power and low frequency power, for example at a frequency of about 300 kHz.”
(和訳)“[0032] 110において,プラズマは,前駆体ガス混合物からチャンバの中で形成される。プラズマは,容量性又は誘導性の手段によって形成され得,かつRF電源を前駆体ガス混合物の中へ結合させることによって電圧が加えられ得る。RF電力は,高い周波数成分及び低い周波数成分を有する2周波数RF電力であり得る。RF電力は,典型的には,約50ワット及び約1,500ワットの間の電力レベルにおいて適用され,例えば,約13.56メガヘルツにおける全て高い周波数のRF電力であり得,又は例えば,約300キロヘルツの周波数における高い周波数の電力と低い周波数の電力の混合であり得る。”

“[0033] At 112, the plasma density profile is adjusted by biasing an electrode coupled to a side wall of the chamber and/or an electrode coupled to the substrate support. Each electrode will typically be controlled to provide impedance for a selected current to flow through the electrode. A resonant tuning circuit is typically coupled to each electrode and to ground, and components for the resonant tuning circuit are selected, with at least one variable component, so the impedance can be adjusted dynamically to maintain the target current flow. The current flow through each electrode may be controlled to a value between about 0 A and about 30 A or between about 1 A and about 30 A.”
(和訳)“[0033] 112において,プラズマ密度プロファイルは,チャンバの側壁に結合された電極,及び/又は基板支持体に結合された電極に,バイアス電圧をかけることによって調整される。各々の電極は,典型的には,電極を通って流れる選択された電流に対するインピーダンスを提供するために制御される。共鳴同調回路は,典型的には,各々の電極及び地面に結合され,かつ共鳴同調回路のための構成要素が少なくとも1つの可変の構成要素を伴って選択され,したがって,インピーダンスは,ターゲット電流の流れを維持するために動的に調整され得る。各々の電極を通る電流の流れは,約0アンペア及び約30アンペアの間,又は約1アンペア及び約30アンペアの間の値に制御され得る。”

“[0034] At 114, a layer is formed on the substrate from the plasma. Depending on the composition of the precursor, the layer may be a silicon layer, for example a polysilicon, microcrystalline silicon, or amorphous silicon layer, which may be doped, a silicon oxide layer, which may be doped, a silicon oxynitride layer, which may be doped, a silicon carbide layer, which may be doped, a silicon oxycarbide layer, which may be doped, a silicon nitrocarbide layer, which may be doped, a silicon nitroxycarbide layer, which may be doped, or a silicon nitride layer, which may be doped. Other layers, for example layers not containing silicon, may also be deposited by selecting appropriate precursors and flow rates.”
(和訳)“[0034] 114において,層は,プラズマから基板上で形成される。前駆体の組成に応じて,層は,シリコン層であり得,それは例えば,ドープされたポリシリコン,微結晶シリコン,若しくはアモルファスシリコンなどの層であり得,ドープされた酸化ケイ素層であり得,ドープされた酸窒化ケイ素層であり得,ドープされた炭化ケイ素層であり得,ドープされた酸炭化ケイ素層であり得,ドープされた窒炭化ケイ素層であり得,ドープされた窒酸炭化ケイ素層であり得,又はドープされた窒化ケイ素層であり得る。例えば,シリコンを含んでいない層などの他の層がまた,適切な前駆体及び流量を選択することによって堆積され得る。”

“[0045] FIG. 3 is a schematic side view of an inventive apparatus 300 that may be used to practice processes described herein. The processing chamber 300 features a chamber body 302, a substrate support 304 disposed inside the chamber body 302, and a lid assembly 306 coupled to the chamber body 302 and enclosing the substrate support 304 in a processing volume 320. Substrates are provided to the processing volume 320 through an opening 326, which may be conventionally sealed for processing using a door.”
(和訳)“[0045] 図3は,本明細書の中において説明されるプロセスを実施するために使用され得る,発明に係る装置300の概略側面図である。処理チャンバ300は,チャンバ本体302,チャンバ本体302の内部に配置される基板支持体304,及びチャンバ本体302に結合され,かつ基板支持体304を処理容積320の中に封入するリッドアセンブリ306を備えることを特徴とする。基板は,開口部326を通して処理容積320へ提供され,開口部326は,ドアを使用して処理するために,従来の技術で密封され得る。”

“[0046] An electrode 308 may be disposed adjacent to the chamber body 302 and separating the chamber body 302 from other components of the lid assembly 306. The electrode 308 may be part of the lid assembly 306, or may be a separate side wall electrode. The electrode 308 may be an annular, or ring-like member, and may be a ring electrode. The electrode 308 may be a continuous loop around a circumference of the processing chamber 300 surrounding the processing volume 320, or may be discontinuous at selected locations if desired. The electrode 308 may also be a perforated electrode, such as a perforated ring or a mesh electrode. The electrode 308 may also be a plate electrode, for example a secondary gas distributor.”
(和訳)“[0046] 電極308は,チャンバ本体302に隣接して配置され得,かつチャンバ本体302をリッドアセンブリ306の他の構成要素から分離し得る。電極308は,リッドアセンブリ306の部分であり得,又は個別の側壁の電極であり得る。電極308は,管状であり得,又はリングのような部材であり得,かつリング電極であり得る。電極308は,処理容積320を取り囲む処理チャンバ300の周囲の連続的なループであり得,又は望ましければ選択された位置において不連続であり得る。電極308はまた,孔の開いたリング又はメッシュ電極などの,孔の開いた電極であり得る。電極308はまた,例えば2次ガス分配器などの,プレート電極であり得る。”

“[0049] The electrode 308 may be coupled to a tuning circuit 328 that controls a ground pathway of the processing chamber 300. The tuning circuit 328 comprises an electronic sensor 330 and an electronic controller 334, which may be a variable capacitor. The tuning circuit 328 may be an LLC circuit comprising one or more inductors 332. The tuning circuit 328 may be any circuit that features a variable or controllable impedance under the plasma conditions present in the processing volume 320 during processing. In the embodiment of FIG. 3, the tuning circuit 328 features a first inductor 332A in series with the electronic controller 334 and a second inductor 332B in parallel with the electronic controller 334. The electronic sensor 330 may be a voltage or current sensor, and may be coupled to the electronic controller 334 to afford a degree of closed-loop control of plasma conditions inside the processing volume 320.”
(和訳)“[0049] 電極308は,処理チャンバ300の接地経路を制御する,同調回路328に結合され得る。同調回路328は,電子センサ330及び電子コントローラ334を備え,それらは可変コンデンサであり得る。同調回路328は,1以上のインダクタ332を備えるLLC回路であり得る。同調回路328は,処理の間に処理容積320の中に存在するプラズマ状態下で,可変又は制御可能なインピーダンスを備えることを特徴とする任意の回路であり得る。図3の実施形態において,同調回路328は,電子コントローラ334と直列な第1のインダクタ332A,及び電子コントローラ334と並列な第2のインダクタ332Bを備えることを特徴とする。電子センサ330は,電圧又は電流センサであり得,かつ処理容積320の内部のプラズマ状態の閉ループ制御の程度を提供するために,電子コントローラ334に結合され得る。

“[0055] Each of the tuning circuits 328 and 336 has a variable impedance that may be adjusted using the respective electronic controllers 334 and 340. Where the electronic controllers 334 and 340 are variable capacitors, the capacitance range of each of the variable capacitors, and the inductances of the inductors 332A and 332B, are chosen to provide an impedance range, depending on the frequency and voltage characteristics of the plasma, that has a minimum in the capacitance range of each variable capacitor. Thus, when the capacitance of the electronic controller 334 is at a minimum or maximum, impedance of the circuit 328 is high, resulting in a plasma shape that has a minimum areal coverage over the substrate support. When the capacitance of the electronic controller 334 approaches a value that minimizes the impedance of the circuit 328, the areal coverage of the plasma grows to a maximum, effectively covering the entire working area of the substrate support 304. As the capacitance of the electronic controller 334 deviates from the minimum impedance setting, the plasma shape shrinks from the chamber walls and areal coverage of the substrate support declines. The electronic controller 340 has a similar effect, increasing and decreasing areal coverage of the plasma over the substrate support as the capacitance of the electronic controller 340 is changed.”
(和訳)“[0055] 同調回路328及び336のうちの各々は,それぞれの電子コントローラ334及び340を使用して調整され得る,可変インピーダンスを有する。電子コントローラ334及び340が可変コンデンサである場合,可変コンデンサのうちの各々のキャパシタンスレンジ,並びにインダクタ332A及び332Bのインダクタンスは,プラズマの周波数及び電圧特性に応じて,インピーダンスレンジを提供するように選択され,それは各々の可変コンデンサのキャパシタンスレンジの中で最小値を有する。それ故,電子コントローラ334のキャパシタンスが最小又は最大である場合,回路328のインピーダンスが高く,基板支持体を覆う最小の対象範囲を有するプラズマ形状をもたらす。電子コントローラ334のキャパシタンスが,回路328のインピーダンスを最小化する値に近づく場合,プラズマの対象範囲は,基板支持体304の全体の作業領域を効果的にカバーしながら最大値へと増大する。電子コントローラ334のキャパシタンスが,最小のインピーダンス設定から逸脱する場合,プラズマ形状はチャンバ壁から縮小し,基板支持体の対象範囲は減少する。電子コントローラ340は類似の効果を有し,電子コントローラ340のキャパシタンスが変化すると,基板支持体を覆うプラズマの対象範囲が増加したり,減少したりする。”

“[0147] A silicon oxide layer may be formed using silane as a precursor by another embodiment of the processes described herein using an apparatus described herein. Silane is flowed at 100 sccm, with helium at 3,000 sccm and N_(2)O at 6,000 sccm. Spacing is 300 mils, pressure is 3 Torr, high frequency power is at 400 W, low frequency power is at 100 W, face plate temperature is at 200 ℃, substrate temperature is 500 ℃, temperature zone offset is 5 ℃ (outer above inner), side wall tuning electrode current target is 1 A, substrate support tuning electrode current target is 3 A. A silicon oxide layer is formed with thickness uniformity that is no worse than about 1%.”
(和訳)“[0147] 酸化ケイ素の層は,本明細書の中において説明される装置を使用する本明細書の中において説明されるプロセスの別の実施形態による前駆体である,シランを使用して生成され得る。シランは,100sccmにおいて流され,ヘリウムは3,000sccmにおいて流され,かつN_(2)Oは6,000sccmにおいて流される。間隔は300ミルであり,圧力は3トールであり,高周波数電力は400ワットであり,低周波数電力は100ワットであり,フェイスプレートの温度は摂氏200度であり,基板温度は摂氏500度であり,温度ゾーンのオフセットは摂氏5度(外側は内側より高い)であり,側壁同調電極電流ターゲットは1アンペアであり,基板支持体同調電極電流ターゲットは3アンペアである。酸化ケイ素の層は,約1パーセントよりも悪くない均一性を有するように形成される。”

引用例1の図1として,以下の図面が示されている。


引用例1の図3として,以下の図面が示されている。


イ 以上の摘記を整理すると,引用例1には以下の事項が記載されているものと理解できる。
a 組成物及び厚さの極端な均一性を有する層を形成するためのプラズマ堆積のプロセスに関する発明であること。極端に均一で高品質のデバイス層を,基板表面の様々な位置におけるプラズマ密度プロファイルを制御することによって,プラズマプロセスにおいて基板上に形成すること。(段落0002及び段落0027)
b 102のステップにおいて,CVDチャンバ(CVD chamber)の中の基板支持体(substrate support)上に基板(substrate)を配置すること。(段落0028及び図1)
c 108のステップにおいて,前駆体ガス混合物(precursor gas mixture)が,チャンバに提供されること。(段落0031及び図1)
d 前駆体としてシランを100sccm,ヘリウムを3000sccm,N_(2)Oを6000sccm流して酸化ケイ素の層を成膜すること。その際,側壁同調電極電流ターゲットは1アンペアであること。(段落0147)
e 110のステップにおいて,プラズマは,前駆体ガス混合物からチャンバの中で形成されること。(段落0032及び図1)
f 112のステップにおいて,プラズマ密度プロファイルは,チャンバの側壁に結合された電極にバイアス電圧をかけることによって調整されること。(段落0033及び図1)
g 114のステップにおいて,層がプラズマから基板上で形成されること。(段落0034及び図1)
h 処理チャンバ(processing chamber)300が,チャンバ本体(chamber body)302,チャンバ本体の内部に配置される基板支持体(substrate support)304,及びチャンバ本体に結合され,かつ基板支持体304を処理容積(processing body)320の中に封入するリッドアセンブリ(lid assembly)306を備えてなること。(段落0045及び図3)
i 電極(electrode)308が,チャンバ本体302に隣接して配置され得,側壁の電極であり得ること。(段落0046及び図3)
j 電極308は同調回路(tuning circuit)328に結合されていること。同調回路328は,処理の間に処理容積320の中に存在するプラズマ状態下で,可変又は制御可能なインピーダンスを備えること。(段落0049)
k 同調回路328のインピーダンスが高いとき,基板支持体を覆う最小の対象範囲を有するプラズマ形状となり,同調回路328のインピーダンスを最小値に近づけると,プラズマの対象範囲は,基板支持体304全体の作業領域をカバーしながら最大値へと増大すること。(段落0055)

ウ 上記a?kによれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「基板上に極端に均一な層を形成するプラズマ堆積のプロセスであって,
処理チャンバ300内の基板支持体304上に基板を配置することと,
前記処理チャンバ300内に前駆体ガス混合物を提供することであって,前記混合物としてシランを100sccm,ヘリウムを3000sccm,N_(2)Oを6000sccm提供することと,
チャンバの中で前駆体ガス混合物からプラズマを生成することと,
チャンバ側壁の電極308と,前記電極308に結合された同調回路328に電流を流し,処理の間に処理容積320の中に存在するプラズマ状態下で,前記同調回路のインピーダンスを調整することにより基板支持体を覆うプラズマの形状を調整することと,
前記基板上にプラズマから層が形成されることと,
を含むプロセス。」

(2)引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2014-53309号公報(以下「引用例2」という。)には,次の記載がある。
「【0017】
図2Aは,プラズマ促進化学気相成長(PECVD)システム100の一実施形態の概略断面図である。PECVDシステム100は一般に,チャンバ蓋 104を支持するチャンバ本体102を備え,チャンバ蓋104は,ねじ,ボルト,ヒンジなどの1つまたは複数の留め具によってチャンバ本体102に取り付 けることができる。チャンバ本体102は,基板サポート128とシャワーヘッドアセンブリ142の間にプラズマ103を封じ込めるための処理容積120を 画定するチャンバ側壁112および底壁116を備える。他にも機能があるが,ガスの送出および排出,移送の機能などの処理制御を行うために,コントローラ 175がシステム100に結合される。」
「【0020】
基板サポート128は,処理中に基板121を支持して保持するように構成される。基板サポート128は,処理容積120内部で垂直に移動するように適合され,加えて,ステム122に結合された駆動システムによって回転するように構成することもできる。処理容積120へ基板を出し入れする移送を容易にする ために,リフトピン161を基板サポート128に含むことができる。一実施形態では,基板サポート128は少なくとも1つの電極123を含み,電極123には,その上に基板121を静電気的に固定するための電圧が印加される。電極123は,電極123に結合された直流(DC)電源176から電力供給される。基板サポート128は単極DCチャックとして描かれているが,本明細書に記載の諸実施形態は,プラズマチャンバ内で接地面として機能するように適合されたどんな基板サポートにも用いることができ,加えて,双極チャック,三極チャック,DCチャック,インターディジテイテッドチャック,ゾーンチャックなどであってもよい。」

(3)引用例3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である,特表平10-504604号公報(以下「引用例3」という。)には,次の記載がある。
「また,CVDプロセスを用いて成膜する場合,均一に成膜することが望ましい。このため,例えば,タングステン(W)の均一な膜を形成するには,基板表面全体に亘って反応ガスを均一に供給する必要があり,コーティングされた表面から,使用したガスや反応生成物を除去しなければならない。この点についても,従来のCVDプロセスには限界がある。具体的には,既知のCVDにおいては,反応ガスの流れの乱れにより,コーティング処理の効率や均一性が阻害され,反応チャンバ内での汚染物の堆積及び移動を悪化させてしまう。」(第13頁第23行?第14頁第1行)
「このため,ガスの流れの向上とガス流の乱れの低減が行われ,コーティングされた基板表面に反応ガスをより効率的に且つより均一に供給し,また反応生成物を除去することができるCVDプロセスが必要である。」(第14頁第5行?第7行)
「ラジカルの効率的な供給のため,本発明では,基板を支持及び回転させ,基板の方向に下向きのポンピング作用を働かせる回転サセプタが用いられる。回転サセプタは,基板表面に対してラジカルをポンピングする」(第15頁第22行?第24行)
「回転サセプタによる独特のポンピング作用とガスの層流により,基板表面での有用なラジカル密度が確実に得られる。」(第16頁第8行?第9行)
「回転サセプタにより生じる層流のパターンは,ガス粒子の再循環及び基板表面でのラジカル再結合を最小限に抑える。したがって,低温CVDプロセスのための活性化ラジカルがより多く基板表面で得られる。さらに,本発明に係る方法においては,サセプタの回転速度を上昇させることにより,基板表面での成膜速度が上昇する。」(第16頁第17行?第21行)

(4)引用例2及び引用例3の記載事項
上記(2)によれば,引用例2には,PECVD装置において基板サポートを回転可能とすることが記載されている。また,上記(3)によれば,引用例3には,CVDプロセスを用いて均一に成膜するために,回転サセプタを用いて基板を支持及び回転させることが記載されている。

3.3 補正発明1と引用発明1の対比
補正発明1と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1の「処理チャンバ300」及び「基板支持体304」が補正発明1の「処理チャンバ」及び「基板支持体」に相当する。

イ 本願明細書段落0031,0032,0034に記載された「ケイ素含有ガス」「反応ガス」及び「不活性ガス」の例示を参酌すると,引用発明1における「シラン」,「N_(2)O」及び「ヘリウム」が,補正発明1における「ケイ素含有ガス」,「反応ガス」及び「不活性ガス」にそれぞれ相当する。

ウ 上記ア,イから,引用発明1において「処理チャンバ300内の基板支持体304上に基板を配置すること」と「前記処理チャンバ300内に前駆体ガス混合物を提供すること」は,補正発明1において「処理チャンバ内の基板支持体上に配置された基板上に」「混合堆積ガスを供給すること」に相当する。

エ 上記イから,引用発明1において「前記ガス混合物としてシランを100sccm,ヘリウムを3000sccm,N_(2)Oを6000sccm提供すること」は,補正発明1における「ケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給することであって,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される」ことに相当する。

オ 引用発明1において「チャンバの中で前駆体ガス混合物からプラズマを生成すること」は,補正発明1において「 前記処理チャンバ内での混合堆積ガスの存在下でプラズマを形成すること」に相当する。

カ 引用発明1の「チャンバ側壁の電極308」及び「同調回路328」は,プラズマ状態下でインピーダンスを調整することにより基板支持体を覆うプラズマの形状を調整するものであるから,本願明細書段落0016,0019,0025の記載に照らし,補正発明1の「処理チャンバ内に配置されたプラズマプロファイルモジュレータ」に相当するものと理解できる。
そうすると,引用発明1における「チャンバ側壁の電極308と,前記電極308に結合された同調回路328に電流を流し,処理の間に処理容積320の中に存在するプラズマ状態下で,前記同調回路のインピーダンスを調整することにより基板支持体を覆うプラズマの形状を調整すること」は,補正発明1における「前記処理チャンバ内に混合堆積ガスを供給しながら,前記処理チャンバ内に配置されたプラズマプロファイルモジュレータに電流を印加すること」に相当する。

キ 引用発明1では,「処理容積320」中にプラズマが形成され,当該プラズマから層が形成される。ここで,引用例1の図3から,「処理容積320」が「基板の上方」に位置することは明らかである。
そうすると,「前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成しながら,前記基板を回転させること」について,補正発明1と引用発明1は,「前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成」する点で一致する。

以上のア?キによれば,補正発明1と引用発明1の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
<一致点>
「基板上に膜層を形成する方法であって,
処理チャンバ内の基板支持体上に配置された基板上に,ケイ素含有ガスと不活性ガスと反応ガスとを含む混合堆積ガスを供給することであって,前記ケイ素含有ガスと前記不活性ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給され,前記ケイ素含有ガスと前記反応ガスとは比率が1:1から1:150の間で供給される,供給することと,
前記処理チャンバ内での混合堆積ガスの存在下でプラズマを形成することと,
前記処理チャンバ内に混合堆積ガスを供給しながら,前記処理チャンバ内に配置されたプラズマプロファイルモジュレータに電流を印加することと,
前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成することと
を含む方法。」である点。
<相違点>
補正発明1は,「前記基板上に膜層を堆積させて前記プラズマを前記基板の上方に形成しながら,前記基板を回転させること」を含むのに対し,引用発明1は「基板を回転させること」が特定されていない点。

3.4 相違点についての判断
上述の3.2の(4)によれば,CVDプロセスにおいて基板を回転させることは,上記引用例2及び引用例3に記載された周知の技術であり,プラズマCVDにおいて基板を回転させながらプラズマ処理を行うことで均一な成膜が行えることは,下記周知例1?3の記載が示すように,当業者の周知技術であるといえる。

○周知例1:特表2002-540622号公報
上記周知例1には,次の記載がある。
「【0021】
サセプタ32はベース33上にあり,平面状の基板30を,シャワーヘッド14にほぼ平行な向きに支持する。CVDまたはPECVDプロセス(またはエッチング・プロセス)等の特定のプロセスでは,基板30および,従ってサセプタ32を,加熱する(または冷却する)ことが必要な場合があり,このため,ベース33を介して,適切な加熱または冷却システムおよび温度制御システム(図示せず)に結合する。また,基板30上への均一な堆積のため,サセプタ32を回転させることが望ましい場合がある。そのため,サセプタ32を外部回転制御システム37に結合することができる。当技術分野において周知の原理に従って,背面加熱システムおよび基板チャックまたはクランプ・システム等の他のサセプタ制御システムもサセプタ32と共に利用可能であることは,当業者には容易に理解されよう。処理の間,処理室16のプロセス空間20は低圧であり,従って,処理室16は,真空開口34等の処理室16の適切な開口を介して,真空システム39に結合される。真空システム39によって維持されるプロセス空間20内の圧力は,既知のプロセス・パラメータに従ったものとする。」

○周知例2:特開2010-147201号公報
上記周知例2には,次の記載がある。
「【0028】
また,上電極16は絶縁ブロック28で反応室壁14と絶縁され,同様に絶縁されたサセプタ軸52に回転導入端子54を経由して,発振器30が出力する高周波電力を整合器32を介して供給し,減圧下で反応ガス導入部20から導入した反応ガス22,24を用いて,プラズマ34を生成する構造となっている。
【0029】
サセプタ18はサセプタ加熱ヒータ36で加熱され,サセプタ18上の被処理基板38を加熱するとともに,このサセプタ18は回転可能となっている。サセプタ18が回転できることにより,被処理基板38への処理を均一に行うことができる。」

○周知例3:特開昭61-163280号公報
上記周知例3には,次の記載がある。
「また望ましくは,基材支持台17は,支持軸19まわりに回転可能な構成とされる。このようにしておくと,基材支持台17上に載置される基材18に,均一に発生プラズマ化気体を照射でき,例えば複数個の基材18を基材支持台17上に載置しても均一に照射することができる。」(第2頁左下欄第18行?右下欄第3行)

一方,引用例1の段落0002,段落0004及び段落0027の記載によれば,引用発明1もまた,均一な堆積を行うことを目的とする発明であると理解できる。そうすると,引用発明1において成膜時に基板を回転させるようにすることは,上記周知技術に照らし当業者が容易になし得たことであるといえる。
したがって,補正発明1は,引用例2?3及び周知例1?3に示される周知技術に照らし,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.5 独立特許要件についてのまとめ
上記3.4のとおり,補正発明1は引用発明1及び引用例2?3及び周知例1?3に示される周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのまとめ
したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しないものであるから,特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年6月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?14に係る発明は,令和2年1月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであり,その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2,1.アの(ア)に本件補正前の請求項1として摘記したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?14に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明及び引用例2?3に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用例1.米国特許出願公開第2014/0118751号明細書
引用例2.特開2014-053309号公報
引用例3.特表平10-504604号公報

3.引用例の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1?3の記載は,上記第2の3.2に記載したとおりである。

4.対比・判断
上記第2の2.で検討したように,補正発明1は,本件補正前の請求項1について,上記第2の1.イに示した補正事項1の点を限定したものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをさらに限定したものである補正発明1が,上記第2の3.で示した理由のとおり,引用例2?3及び周知例1?3の周知技術に照らし引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本願発明についての結論
上述のとおり,本願発明は,引用発明1並びに引用例2?3及び周知例1?3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結言
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-12-23 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-20 
出願番号 特願2017-536255(P2017-536255)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 聡一郎鈴木 智之  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 小川 将之
脇水 佳弘
発明の名称 リソグラフィオーバーレイ改善のための半導体アプリケーション用ゲートスタック材料  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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