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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1374873
異議申立番号 異議2020-700218  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-31 
確定日 2021-03-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6584706号発明「農業用フィルム及び農園芸用施設」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6584706号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6584706号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6584706号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成31年3月29日に出願され、令和1年9月13日にその特許権の設定登録がされ、同年10月2日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。

令和 2年 3月31日 特許異議申立人古郡裕介(以下「申立人」と
いう。)による請求項1ないし5に係る発明
の特許に対する特許異議の申立て
同年 6月15日付け 取消理由通知
同年 8月18日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月 5日 申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
令和2年8月18日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「(B)下記式(1)により算出される線膨張係数が1.7×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下、」
とあるのを、
「(B)下記式(1)により算出される線膨張係数が1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下、」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」
とあるのを、
「線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」
と訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0008】に、
「線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」
とあるのを、
「線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0014】に、
「線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さであり、L_(0℃)は0℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さである。」
とあるのを、
「線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さであり、L_(0℃)は0℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さである。Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件及び一群の請求項
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的の適否
上記訂正事項1に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、「線膨張係数」の数値範囲を訂正前の「1.7×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」から訂正後の「1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」へと縮小するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0151】には以下の記載がある(なお、【表1】及び【表2】は当審で横向きに回転した。)。
「【表1】


【表2】



(イ)上記【表2】の「線膨張係数」の行に「0℃から25℃まで」及び「×10^(-4)K^(-1)」と記載され、さらに「実施例」の「実4」の欄に「1.8」と記載されていることから、実施例4の場合の「0℃から25℃まで」における「線膨張係数」が「1.8×10^(-4)K^(-1)」であることが理解できる。

(ウ)そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。

(エ)また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(オ)訂正事項1は、請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(カ)したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項2に係る訂正は、「線膨張係数」を算出する式を訂正するものであるところ、訂正前の請求項1の「線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)」との式(以下「訂正前の式(1)」という。)及び「ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」との記載によれば、「線膨張係数」は、「長さ」を「℃」(温度)で除したものであるから、その単位は「長さ/℃」(長さ/温度)となる一方、訂正前の請求項1における「1.7×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」との記載においては「線膨張係数」の単位は「K^(-1)」(1/温度)とされているから、訂正前の請求項1においては「線膨張係数」の式と単位とが整合していなかった。
しかしながら、日本産業規格 JIS K 7197「プラスチックの熱機械分析による線膨脹率試験方法」において、「線膨張係数」に相当する「平均線膨張率α_(SP)」を求める式を



ここに, α_(SP):平均線膨張率(℃^(-1))
L_(0):室温での試験片の長さ(μm)
T_(1):平均線膨張率を求める低温側温度(℃)
T_(2):平均線膨張率を求める高温側温度(℃)
ΔL_(spm):試験片についてのT_(1)のときの長さとT_(2)のとき
の長さの差[(T_(2)のときの長さ)-(T_(1)のときの長さ)]
の測定値(μm)
ΔL_(Refm):長さ校正用の標準試験片についてのT_(1)のとき
の長さとT_(2)のときの長さの差[(T_(2)のときの長さ)-(T
_( 1)のときの長さ)]の測定値(μm)
α_(Ref):長さ校正用の標準試験片T_(1)-T_(2)間での平均線膨
張率の計算値(℃^(-1))

としていることなどからみて、訂正前の式(1)が「線膨張係数」を算出する式であればその右辺を「室温での長さ」で除すべきものであって、訂正前の式(1)は「線膨張係数」を算出する式としては明らかな誤りを含むものであると認められる。
そして、請求項1に「L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」と記載されていることからして、請求項1において「線膨張係数」を算出する際に用いられる「室温での長さ」が、「L_(25℃)」や「L_(0℃)」と同様に「フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さ」であることは明らかである。
そうすると、上記訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)上記「ア.」で検討したとおり、訂正事項2に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。

(イ)また、訂正事項2に係る訂正は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項2は、請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(エ)したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3及び4について
ア.上記訂正事項3及び4に係る訂正はいずれも、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.また、当該訂正は、上記訂正事項2に係る訂正と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件について
本件特許異議の申立は、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(5)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし5は、請求項2ないし5がそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1ないし4に係る訂正は、本件訂正前の請求項1ないし5に関係する訂正であるから、本件訂正請求は一群の請求項ごとにされたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第6項及び第7項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正特許発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明5」といい、全体を「本件訂正特許発明」と総称する。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有し、下記(A)及び(B)を満たす農業用フィルム;
(A)当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、前記層の断面の面積に対して1%以上30%以下、
(B)下記式(1)により算出される線膨張係数が1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下、
線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)(1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。
【請求項2】
前記連続相は熱可塑性樹脂を含む請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂である請求項2に記載の農業用フィルム。
【請求項4】
前記分散相に含まれる成分の屈折率は、1.50以上1.53以下である請求項1?3のいずれか一項に記載の農業用フィルム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の農業用フィルムが農園芸用施設フレームに展張された農園芸用施設。」

第4 特許異議申立理由の概要及び証拠

1.特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の「2.」に示す各甲号証(以下、各甲号証を「甲1」等、各甲号証に係る発明を「甲1発明」等ということがある。)を提出している。

(1)本件請求項1?3,5の各発明は、本件特許出願の出願日に、日本国内で公然実施をされた発明であるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)本件請求項1?3,5の各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)本件請求項2?5の各発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(4)本件請求項1?5の各発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(5)本件請求項1?5の各発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(6)本件請求項1?5の各発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

2.申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:三菱樹脂アグリドリーム株式会社、「美サンランダイヤスター(登録商標)」カタログ、2013年5月20日
甲第2号証:実験成績証明書
甲第3号証:特開2015-112746号公報
甲第4号証:特開2006-248043号公報
甲第5号証:特開2014-209903号公報
甲第6号証:片倉コープアグリ株式会社、「無機素材事業」、URL:http://www.katakuraco-op.com/sp/business/inorganic.html

第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要

令和2年6月15日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。

1.本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

2.本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされた発明と同一であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3.本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされた発明、及び、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

第6 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断

1.特許法第36条第6項第2号について
訂正前の請求項1における「1.7×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」との記載によれば「線膨張係数」の単位は「K^(-1)」(1/温度)であると認められる一方、訂正前の請求項1の「線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)」(訂正前の式(1))及び「ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。」との記載によれば、「線膨張係数」は、「長さ」を「℃」(温度)で除したものであるから、その単位は「長さ/℃」(長さ/温度)であると解されるため、訂正前の請求項1の記載は「線膨張係数」の単位が、「K^(-1)」(1/温度)であるのか、「長さ/℃」(長さ/温度)であるのかが不明であった。
また、仮に「線膨張係数」の単位が式(1)に基づく「長さ/℃」である場合、「長さ」の単位が不明であるから、「長さ/℃」で表される「線膨張係数」の値も不明であった。
しかしながら、本件訂正により、請求項1の全体を通じて「線膨張係数」の単位が温度の逆数である「K^(-1)」とされ、長さの単位に依存することなく定まることとなったため、本件訂正発明1及び請求項1の記載を引用して記載された本件訂正発明2ないし5は明確となった。
よって、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。

2.特許法第29条第1項第2号及び同条第2項について
(1)各甲号証について
ア.甲第1号証及び甲第2号証
(ア)甲第1号証
特許異議申立書に添付された甲第1号証には以下の記載等がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

a.「耐久無滴散乱光農POフィルム
美サンラン(R)(当審注:「(R)」は○の中にRを表す。以下同様。)ダイヤスター(R)
「美サンラン」の新しい光がハウス全体にゆきわたります。
ハウスの外から中の見え方比較
美サンランダイヤスター ダイヤスター」(第1ページ)

b.「ハウスの中に入る光線が適度な散乱光となり、ハウス全体に光がゆきわたります。」(第2ページ上部)

c.「三菱樹脂アグリドリーム株式会社
(中略)
13.05.20.L(K)」(第2ページ下部)

d.上記「a.」の記載を踏まえると、第1ページの写真からは、「耐久無滴散乱光農POフィルム美サンランダイヤスターがフレームに展帳されたハウス」を看取することができる。

(イ)甲第2号証
特許異議申立書に添付された甲第2号証には以下の記載等がある。

a.「三菱ケミカルアグリドリーム社(三菱樹脂アグリドリーム社の現在の社名)製の「美サンランダイヤスター(登録商標)」を入手し、円相当径1μm以上10μm以下の分散相の断面積比率と、線膨張係数を測定した。」(第2ページ第2?4行)

b.「(1)フィルム断面の観察
凍結させたサンプルを、フィルム表面に対して垂直方向、且つ前記位相差測定装置を用いて求めたフィルム面内の遅相軸と平行方向に、ロータリーミクロトームで切断した。切断した断面をマイクロスコープ VHX-5000(キーエンス社)、レンズ VH-ZST(キーエンス社)を使用して、500倍で観察、撮影した。」(第2ページ第6?10行)

c.「(2)分散相の断面積比率の測定方法
上記写真を用いて、粒子含有層中の粒子の面積を計測した。計測結果より分散相比率を計算した。結果を表1に示す。」(第2ページ下から4行?下から2行)

d.「2.線膨張係数の測定方法
(1)フィルム長さの測定
フィルムから5mm×5mmの試験片を切り出し、圧縮モードに設定した熱機械分析装置(製品名:TMA402 F1 Hyperion(NETZSCH社製))にセットし、荷重を0.05Nとし、試験片を-15℃以下まで冷却した。その後、5℃/minの速度で、60℃まで昇温しながら、0℃及び25℃における表面に垂直な方向の長さ、すなわち厚さを測定した。なお、測定はヘリウム雰囲気下(フロー70ml/min)で行った。
測定結果を添付する。添付のグラフに示すように、測定時初期温度26℃での長さ(L_(26℃))は151.000μmであり、L_(0℃)は150.298μmであり、L_(25℃)は150.975μmであり、(L_(25℃)-L_(0℃))は0.677μmであった。
(2)線膨張係数の算出
(中略)
式(1/L_(26℃))×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)を用いて、L_(25℃)とL_(0℃)の単位をμmとして算出すると、(1/151)×0.677/25となり線膨張係数は、1.79×10^(-4)K^(-1)であった。」(第3ページ表1の次の行?下から2行)

e.「3.結論
美サンランダイヤスターは、樹脂(連続相)に分散する粒子(分散相)からなる層(中間層)を有するフィルムである。
中間層において、円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率は、中間層の断面の面積に対して2%である。」(第3ページ最下行?第4ページ第4行)

f.上記「d.」の記載から、「フィルム」の「0℃及び25℃における表面に垂直な方向の長さ」をそれぞれ「L_(0℃)」及び「L_(25℃)」とし、「測定時初期温度26℃での長さ」を「L_(26℃)」としていることが理解できる。

(ウ)甲第1号証及び甲第2号証から把握される発明
a.当審が職権で調査したところによれば、三菱樹脂アグリドリーム株式会社は2017年に三菱ケミカルアグリドリーム株式会社に社名を変更しているから、「三菱樹脂アグリドリーム株式会社」との記載がある甲第1号証は少なくとも本件特許の出願前である2017年以前に作成されたものであると認められる。なお、このような認定は、上記「(ア)c.」の「13.05.20.L(K)」との記載が2013年5月20日作成を意味すると解した場合とも時期的に整合する。また、甲第1号証のようなカタログに掲載された製品は、広くユーザーに対して譲渡等の申出がされ、実際に譲渡等が行われたことが推認される。

b.甲第2号証において実験された製品の名称は「美サンランダイヤスター(登録商標)」であって、甲第1号証の「美サンラン(R)ダイヤスター(R)」と名称が一致しているから、甲第2号証において実験された製品は、甲第1号証のものと同一の製品であると一応推認できる。

c.そうすると、甲第1号証及び甲第2号証から、次の発明(以下「公然実施発明1」という。)が本件特許の出願前に公然実施されたものと認められる。

「樹脂(連続相)に分散する粒子(分散相)からなる層(中間層)を有するフィルムであり、
フィルム表面に対して垂直方向、且つ前記フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面の中間層において、円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率は、中間層の断面の面積に対して2%であり、
フィルムの0℃及び25℃における表面に垂直な方向の長さをそれぞれL_(0℃)及びL_(25℃)とし、測定時初期温度26℃での長さをL_(26℃)としたとき、式(1/L_(26℃))×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)を用いて、L_(25℃)とL_(0℃)の単位をμmとして算出すると、線膨張係数は、1.79×10^(-4)K^(-1)である
耐久無滴散乱光農POフィルム。」

イ.甲第3号証
本件特許の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特許異議申立書に添付された甲第3号証には以下の記載等がある。

(ア)「【請求項1】
少なくとも外層、中間層及び内層を有する農業用ポリオレフィン系多層フィルムであって、
外層が、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は酢酸ビニル含有量が1?10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種を含有してなり、
中間層が、酢酸ビニル含有量が1?20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(A)を含有してなり、
内層が、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は酢酸ビニル含有量が1?10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種を含有してなり、
少なくとも中間層に架橋アクリル粒子を含有する、
前記多層フィルム。」

(イ)「【実施例】
【0096】
(1)積層フィルムの調製
3層インフレーション成形装置として3層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機はチューブ外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、外内層押出し機温度180℃、中間層押し出し機温度170℃、ダイス温度180?190℃、ブロー比2.0?3.0、引取り速度3?7m/分、厚さ0.15mmにて表1?表3に示した成分からなる3層の積層フィルムを得た。(中略)
【0102】
架橋アクリル粒子A:PMMA架橋ビーズG-800(根上工業社製、平均粒子径;6μm、屈折率:1.51)
【0103】
架橋アクリル粒子B:PMMA-ポリスチレン共重合体架橋ビーズG-400(根上工業社製、平均粒子径:15μm、屈折率:1.51)」

(ウ)「【0110】
〔実施例1?7、比較例1?3〕
架橋アクリル粒子として、G-400、G-800、架橋ウレタン粒子としてC-400を用い、各種樹脂組成により、上記三層フィルムを作製した。前記方法により、各サンプル温度での555nm直進透過率の測定及び評価を行った。
その結果を表1、表2に示す。
【0111】
【表1】


【0112】
【表2】



(エ)上記「(ア)」で「中間層に架橋アクリル粒子を含有する」とされた「架橋アクリル粒子」は、上記「(ウ)」の記載によれば、実施例1においては「架橋アクリル粒子A」、実施例2においては「架橋アクリル粒子B」であり、上記「(イ)」の記載によれば、「架橋アクリル粒子A」又は「架橋アクリル粒子B」のいずれも屈折率が1.51であることが分かる。

(オ)以上を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「エチレン酢酸ビニル共重合体を含有してなる中間層に屈折率が1.51の架橋アクリル粒子を含有する、
農業用ポリオレフィン系多層フィルム。」

(2)請求項1
ア.対比
本件訂正特許発明1と公然実施発明1とを対比する。

(ア)公然実施発明1の「樹脂(連続相)に分散する粒子(分散相)からなる層(中間層)を有する」ことは、本件訂正特許発明1の「連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有」することに相当する。

(イ)公然実施発明1の「農POフィルム」が農業用ポリオレフィン系フィルムを指すことは当業者にとって明らかであるから、公然実施発明1の「耐久無滴散乱光農POフィルム」は、本件訂正特許発明1の「農業用フィルム」に相当する。

(ウ)公然実施発明1の「フィルム表面に対して垂直方向、且つ前記フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面の中間層において、円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率は、中間層の断面の面積に対して2%であ」ることは、本件訂正特許発明1の「(A)当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、前記層の断面の面積に対して1%以上30%以下」である「(A)」「を満たす」ことに相当する。

(エ)公然実施発明1の「L_(26℃)」は「測定時初期温度26℃での長さ」であるから室温におけるフィルムの長さであるといえる。また、「L_(0℃)及びL_(25℃)」が「表面に垂直な方向の長さ」であることからみて、同じ式中で用いられる「L_(26℃)」も同様に「表面に垂直な方向の長さ」であることは明らかである。
そうすると、公然実施発明1の「L_(26℃)」は、本件訂正特許発明1における「室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さ」である「L」に相当する。

(オ)してみると、本件訂正特許発明1と公然実施発明1とは、
「連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有し、下記(A)を満たす農業用フィルム;
(A)当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、前記層の断面の面積に対して1%以上30%以下。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
式(1)により算出される線膨張係数(以下、単に「線膨張係数」という場合がある。)が、本件訂正特許発明1においては「1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」であるのに対して、公然実施発明1においては「1.79×10^(-4)K^(-1)」である点。

イ.判断
上記相違点について検討する。

(ア)公然実施発明1における線膨張係数である「1.79×10^(-4)K^(-1)」は、本件訂正特許発明1における線膨張係数である「1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」の範囲に含まれるものではない。

(イ)本件特許明細書の段落【0151】の【表1】及び【表2】(上記「第2 2.(1)イ.(ア)」参照)からは、線膨張係数が「1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」の範囲に含まれる実施例1ないし4においては、「ヘイズ値(40℃)-ヘイズ値(0℃)」の値が39%ないし42%であって、線膨張係数が上記範囲外の1.7×10^(-4)K^(-1)である実施例5における37%を上回っていることが看て取れる。
そして、本件訂正特許発明は、「農業用フィルムには、日射の強い夏には光散乱性が高くなることで、過剰な直射光に起因する作物の葉焼け等の障害を防ぐのみならず、一年を通して日射量の低下を防止することが求められる。このため、冬季の低温下では低い光散乱性を示す一方で、夏季の高温下では高い光散乱性を示し、その光散乱性の温度に依存する変化が大きな農業用フィルムが求められている。」(段落【0004】)ことを前提に、「0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化が大きく、且つ剛性に優れたフィルムを提供すること」(段落【0007】)を課題とするものであると認められるところ、段落【0016】に「線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下であることにより、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる。具体的には、40℃付近に達する夏季にヘイズ値を高くし、0℃付近に達する冬季にヘイズ値を低くすることができる。」と記載されていることからすれば、「ヘイズ値(40℃)-ヘイズ値(0℃)」の値が大きければ、「40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる」ことが理解できる。
そうすると、本件訂正特許発明1は、線膨張係数を1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下とすることを発明特定事項として備えることにより、「40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる」という明細書記載の効果を奏するものと認められる。

(ウ)以上のとおりであって、本件訂正特許発明1と公然実施発明1とは上記相違点において相違しており、本件訂正特許発明1は当該相違点に係る発明特定事項を備えることにより明細書記載の上記の効果を奏するから、公然実施発明1によっては、本件訂正特許発明1が本件特許の出願前に公然実施をされた発明であるとはいえない。

(エ)また、甲第3号証にも、線膨張係数を1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下とすることは記載も示唆もされていないから、本件訂正特許発明1が、公然実施発明1及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ.申立人の主張について
(ア)申立人は令和2年10月5日提出の意見書において、「1.80×10^(-4)K^(-1)は、1.79×10^(-4)K^(-1)と異なるといえるが、有効数字を考慮すれば、1.8×10^(-4)K^(-1)は1.79×10^(-4)K^(-1)と同等である。」(第5ページ第3?6行)と主張する(下線は申立人が付したものである。)。
しかしながら、一般に有効数字は測定結果等に対して用いられる表記法であるところ、特許請求の範囲の請求項1における「1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下」との記載は測定結果を表すものではないし、本件特許明細書等を参照しても当該記載が有効数字による表記であると解すべき事情はない。
そうすると、申立人の上記主張を採用することはできない。

(イ)申立人はまた同意見書において、「さらに、甲第2号証では、実験をたまたま室温26℃で実施した。従って、(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃)を、測定時初期温度26℃におけるLで除した。実験をより低い室温で実施すれば、Lはより小さくなり、従って、Lで除した線膨張係数は大きくなり、特許権者が述べる本件特許発明の範囲に含まれる。本件特許発明は新規性がない。」(第5ページ第7?11行)とも主張する。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0027】に「なお、本段落に説明するフィルムの厚さは、室温(23℃)程度で測定され得るフィルムの厚さであり、線膨張係数を求める式(1)におけるL_(25℃)及びL_(0℃)とは必ずしも一致しない。」と記載されていることからして、式(1)におけるLの測定も「室温(23℃)」と大きく異ならない温度で行われるものであると解するのが相当であり、測定温度の変化に伴う垂直方向のフィルムの長さの変化は微小であることが技術常識であるところ、Lの測定がそのような温度で行われるのであれば、測定温度が変化しても式(1)によって求められる線膨張係数の値に有意な変化が生じないことは明らかである。
そして、申立人の上記主張は、測定温度によるLの値の変化や、当該Lの値の変化に伴う線膨張係数の変化についての具体的な実験結果に基づくものでもない。
そうすると、申立人の上記主張を採用することはできない。

(3)請求項2、3及び5
本件訂正特許発明2、3及び5は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記「(2)」と同様の理由により、本件特許の出願前に公然実施をされた発明であるとはいえず、公然実施発明1及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第7 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての判断

上記「第4」の特許異議申立理由のうち、取消理由で採用し上記「第6」で判断した以外の理由について判断する。

1.新規性及び進歩性(上記「第4 1.(2)及び(3)」)
(1)甲第1号証には、上記「第6 2.(1)ア.(ア)」で摘記した事項等が記載されているが、「耐久無滴散乱光農POフィルム」の線膨張係数については何ら記載がない。

(2)そうすると、本件訂正特許発明1と甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも「第6 2.(2)ア.(オ)」の相違点において相違する。

(3)当該相違点については「第6 2.(2)イ.」で検討したとおりであるから、本件訂正特許発明1が甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正特許発明1が、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件訂正特許発明2ないし5は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記「(1)ないし(3)」と同様の理由により、本件訂正特許発明2、3及び5が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、本件訂正特許発明2ないし5が、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.実施可能要件(上記「第4 1.(4)」)
(1)申立人の主張の概要
実施可能要件についての申立人の主張の概要は以下のとおりである。
ア.本件特許発明は、線膨張係数を求める式において長さの単位が定義されていないので線膨張係数を算出できず、さらに、単位がK^(-1)である線膨張係数は式(1)から得られず、当業者は、本件特許発明を実施できない(申立書第6ページ下から5行?最下行)。

イ.本件特許明細書の段落【0019】等で説明する線膨張係数の調整方法は不確かであり、実施例で使用する材料が僅かに変わるだけで所定の線膨張係数が得られないなら、当業者にとって、本件特許明細書の実施例で使用した樹脂と粒子以外で、どのような連続相と分散相を用いれば、目的とする農業用フィルム又は農園芸用施設が得られるか不明で、当業者に過度の試行錯誤を要する(申立書第7ページ第1行?第8ページ下から4行)。

(2)検討
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
以下、上記の観点から、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かについて検討する。

ア.申立人の「(1)ア.」の主張について
本件訂正により、線膨張係数の単位がK^(-1)であることが明確になった。そして、K^(-1)は温度の逆数であって長さの次元を含まないから、その算出のためにどのような単位の長さを用いても、算出される線膨張係数の値が変わることはない。
そうすると、式(1)において長さの単位が定義されていなくても線膨張係数を算出することができ、式(1)によって単位をK^(-1)とする線膨張係数が得られることは明らかである。

イ.申立人の「(1)イ.」の主張について
本件特許明細書には、段落【0019】に「(a)連続相と分散相とからなる層における各相の成分の種類及び割合」及び「(b)フィルムにおける連続相と分散相とからなる層の厚さの比率」を適宜調整することにより線膨張係数を調整することができることが記載されており、このうち(a)に関しては、段落【0034】ないし【0066】に連続相について、段落【0068】ないし【0082】に分散相について、それぞれ具体的な成分の種類及び割合が挙げられており、(b)に関しては、段落【0106】に「農業用フィルム全体の厚さに対する、連続相と分散相とからなる層の厚さの比率を高くすることにより、線膨張係数をより高くすることができる」と記載され、具体的な多層フィルムの厚さや各層の厚さの比率の範囲が挙げられているから、当業者はこれらの記載に基づいて、本件特許明細書に実施例として記載されていないものについても、各層の成分及び割合や、層の厚さの比率を選択することにより、過度の試行錯誤を要することなく、線膨張係数を調整することができるものと認められる。
また、申立人は、実施例で使用する材料が僅かに変わるだけで所定の線膨張係数が得られないとする主張に関して、本件特許明細書の【表2】の実施例1、比較例1及び比較例2を挙げて、「このMMA含有量の差は僅かであり、同じエチレン-メタクリル酸メチル共重合体であってもMMA含有量が少し変わるだけで本件特許発明の線膨張係数は得られなくなることが分かる」(申立書第8ページ第17?18行)とも主張するが、実施例1、比較例1及び比較例2で用いられたMMA(メタクリル酸メチル)含有量が異なる重合体は、【表2】によればWH206-F、WD201-F、WK3-7及びCM5022であって、段落【0132】を参照するといずれも市販されている製品であると認められるから、これらの製品を適宜選択等することによりMMA含有量が異なるフィルムを作成することが、当業者にとって過度の負担となるとも認められない。

(3)小括
上記「(2)」のとおりであって、本件訂正特許発明の農業用フィルムは、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者が生産することができ、かつ、使用できると認められるから、本件訂正特許発明が実施可能要件を満たさないということはできない。

3.サポート要件(上記「第4 1.(5)」)
(1)申立人の主張の概要
サポート要件についての申立人の主張の概要は以下のとおりである。
ア.本件特許発明の課題は、「0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化が大きく、且つ剛性に優れたフィルムを提供する」ことである。実施例のフィルムはこの課題を達成できているが、連続相の種類をわずかに変えるだけで課題を達成できなくなる。本件特許発明1?5において、連続相と分散相は全く特定されていない。即ち、実施例1?5から請求項1?5に記載の広い範囲まで発明を拡張ないし一般化できない(申立書第8ページ下から3行?第9ページ第5行)。

イ.本件特許の請求項1には、発明の課題を解決するための手段である実施例が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許が付与されている。本件特許の請求項1の記載は、当業者が課題を解決できると認識できる実施例の範囲をはるかに超えている(申立書第9ページ第6?10行)。

(2)検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、上記の観点から、本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。なお、本件訂正後の本件訂正特許発明は、実施例1ないし4を含み実施例5を含まないものとされたので、以下ではこの点を踏まえて検討する。

ア.申立人の「(1)ア.」の主張について
本件特許明細書の【表2】には、重合体及び粒子等の組成、内外装組成、層構成並びに厚さを様々に異ならせた実施例1ないし4について、線膨張係数が1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下の範囲内にあることが示されており、本件特許明細書には、上記「2.(2)イ.」のとおり、連続相と分散相とからなる層における各相の成分の種類及び割合、並びに、層の厚さの比率を適宜調整することにより線膨張係数を調整することができることが記載されており、連続相及び分散相の具体的な成分の種類及び割合並びに多層フィルムの厚さや各層の厚さの比率の範囲も挙げられている。
そうすると、当業者は、実施例1ないし4について重合体及び粒子等の組成、内外装組成、層構成並びに厚さを調整することにより、また、本件特許明細書における連続相と分散相とからなる層における各相の成分の種類及び割合、並びに、層の厚さの比率についての記載を参酌して、成分を選択し所要のパラメータを調整すること等により、実施例1ないし4以外のものについても、線膨張係数を1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下になるようにすることにより、課題を解決することができるものと認められる。
そうすると、申立人の上記主張は採用することができない。

イ.申立人の「(1)イ.」の主張について
上記「ア.」のとおり、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、実施例以外のものであっても、線膨張係数を1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下とすれば、0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化が大きくなり、本件訂正特許発明の課題を解決できると認識することができるものと認められる。
そうすると、申立人の上記主張は採用することができない。

(3)小括
上記「(2)」のとおりであって、本件訂正特許発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められるから、本件訂正特許発明がサポート要件に適合しないということはできない。

第8 むすび

以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件訂正特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正特許発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
農業用フィルム及び農園芸用施設
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルム及び農園芸用施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに屈折率の温度依存性が異なる複数の樹脂からなる組成物であって、使用温度範囲内の少なくとも1つの温度でそれらの樹脂の屈折率差が2×10^(-2)以下となる樹脂組成物から形成される透明樹脂成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-123076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農業用フィルムには、日射の強い夏には光散乱性が高くなることで、過剰な直射光に起因する作物の葉焼け等の障害を防ぐのみならず、一年を通して日射量の低下を防止することが求められる。このため、冬季の低温下では低い光散乱性を示す一方で、夏季の高温下では高い光散乱性を示し、その光散乱性の温度に依存する変化が大きな農業用フィルムが求められている。
【0005】
本発明の発明者は、連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有するフィルム表面に対する垂直方向における線膨張係数が所定の範囲であることにより、当該フィルムにおける光散乱性の変化が大きく、且つ剛性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
一方、引用文献1には、フィルム全体の線膨張係数とフィルムの光散乱性の変化との関係に関して記載されていない。また、引用文献1に記載の実施例の透明樹脂成形体は、ポリエチレンの添加量が5wt%と少ないため、フィルム全体の線膨張係数は小さいと考えられる。
【0007】
本発明の一態様は、0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化が大きく、且つ剛性に優れたフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る農業用フィルムは、連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有し、下記(A)及び(B)を満たす;
(A)当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、前記層の断面の面積に対して1%以上30%以下、
(B)下記式(1)により算出される線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下、
線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃) (1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。
【0009】
また、本発明の好ましい他の形態は、前記の農業用フィルムが農園芸用施設フレームに展張された農園芸用施設である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化が大きく、且つ剛性が高いフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の一形態について詳細に説明する。
【0012】
<農業用フィルム>
本発明の一形態に係る農業用フィルムは、連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有するフィルムであり、フィルム表面に対して垂直な方向(厚さ方向とも称す)において、線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下である。本発明の一形態に係る農業用フィルムは、植物栽培用の温室の外張り又は内張りフィルム、及びトンネルの被覆材等として好適に用いることができる。
【0013】
(線膨張係数)
本明細書中において、線膨張係数とは、温度の変化量ΔTに対する長さの変化量ΔLの割合であり、ΔL/ΔTで表される。本明細書中において、本発明の一態様に係る農業用フィルム表面に対する垂直方向における線膨張係数は、下記式(1)により算出される。
【0014】
線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃) (1)
ここで、L_(25℃)は25℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さであり、L_(0℃)は0℃におけるフィルム表面に対して垂直方向のフィルムの長さである。Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。すなわち、本発明の一態様に係る農業用フィルムは、線膨張係数を求めるための長さの基準としてフィルムの厚さを採用する。
【0015】
本発明の発明者は、(i)フィルムが単層である場合、後述する連続相と分散相とからなる層の厚さ方向における線膨張係数、(ii)フィルムが連続相と分散相とからなる層とその他の層とを有している場合、当該フィルム全体としての厚さ方向における線膨張係数が、当該フィルムにおける光散乱性の変化に大きく影響することを見出し、本願発明を完成している。
【0016】
本発明の一形態に係る農業用フィルムは、当該フィルム表面に対する垂直方向において、線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下であり、1.7×10^(-4)K^(-1)以上であり、2.6×10^(-4)K^(-1)以下であることがより好ましい。線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下であることにより、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる。具体的には、40℃付近に達する夏季にヘイズ値を高くし、0℃付近に達する冬季にヘイズ値を低くすることができる。また、線膨張係数が2.8×10^(-4)K^(-1)以下であることにより、フィルムの剛性を高くすることができる。具体的には、後述する1%SMの値を高くすることができる。フィルムの線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)よりも小さくなると、0℃?40℃の温度範囲における光散乱性の変化が小さくなる。具体的には、0℃?40℃の温度範囲におけるヘイズ値の変化が小さくなる。また、フィルムの線膨張係数が2.8×10^(-4)K^(-1)よりも大きくなると、当該フィルムの剛性が低くなる。
【0017】
線膨張係数は、フィルムを5mm×5mmのサイズに切り出した試験片を用いて測定する。熱機械分析装置を圧縮モードに設定し、荷重0.05Nの条件で、試験片を-15℃以下まで冷却し、その後、5℃/minの速度で60℃まで昇温しながら、0℃及び25℃における表面に垂直な方向の長さ、すなわち厚さを測定し、上述の式(1)から線膨張係数を求める。線膨張係数の測定はヘリウム雰囲気下で行う。なお、線膨張係数の測定において、フィルムの厚さは規定されない。ただし、後述するように、フィルムから切り出した試験片における線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように、フィルムにおける連続相と分散相とからなる層の厚さの比率及び当該フィルムを構成する材料を決定する。
【0018】
なお、本発明の一態様に係る農業用フィルムの線膨張係数は、当該農業用フィルムが連続相と分散相とからなる層のみからなる場合、当該層のみの線膨張係数として求めるとよく、連続相と分散相とからなる層以外の層(すなわち、後述するその他の層)を備えている場合、それらの層のすべてからなる農業用フィルムの線膨張係数として求めるとよい。すなわち、本発明の一態様に係る農業用フィルムは、連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有し、当該層を含むフィルム表面に対する垂直方向の線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように、フィルムが有する層の構成を決定することによって、0℃?40℃の温度範囲におけるヘイズ値の変化を大きくすることができる。本発明の一態様に係る農業用フィルムは、線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように、〔連続相〕、〔分散相〕、及び〔その他の層〕において後述する原料及び製造方法の条件を適宜調整して製造することができる。線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下であることにより、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる。つまり、0℃?40℃程度の範囲における光散乱性の変化を大きくすることができる。
【0019】
線膨張係数は、例えば、次の(a)、(b)を適宜調整することによって、1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように調整することができる。
(a)連続相と分散相とからなる層における各相の成分の種類及び割合
(b)フィルムにおける連続相と分散相とからなる層の厚さの比率
上記(a)、(b)と線膨張係数との関係の詳細については、以下に後述する。
【0020】
以下、本明細書中において、「線膨張係数」と記載する場合、特に説明がない限り、「線膨張係数」とは前記式(1)により算出されるフィルム表面に対する垂直方向における線膨張係数のことを示す。
【0021】
上述した線膨張係数を有する農業用フィルムは、原料及び製造方法の条件を適宜調整して製造することができる。農業用フィルムに含まれる連続相と分散相とからなる層(及び連続相と分散相とからなる層以外の層)は、農業用フィルムの一般的な原料となる樹脂組成物を用いることができる。連続相と分散相とからなる層の原料としては、特に、連続相となる熱可塑性樹脂と、分散相となる有機系粒子、無機系粒子、及び連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1つとを適宜組み合わせて用いるとよい。なお、分散相が連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂である場合、連続相と分散相とからなる層は、連続相となる熱可塑性樹脂と分散相となる熱可塑性樹脂とが相分離した海島構造となる。当該海島構造の海の部分が連続相となる熱可塑性樹脂となり、島の部分が分散相となる熱可塑性樹脂となる。より好ましい連続相と分散相とからなる層の原料については、〔連続相と分散相とからなる層〕において後述する。連続相と分散相とからなる層以外の層の原料は、一般的な熱可塑性樹脂を用いればよく、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい(以下、連続相と分散相とからなる層以外の層を、ポリオレフィン系樹脂層とも称する)。より好ましい製造方法の条件については、<農業用フィルムの製造方法>において後述する。
【0022】
(ヘイズ値)
なお、本明細書において、ヘイズ値は、温度以外の測定条件をJIS K 7136:2000に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製 温調ヘイズメーター(THM-150TL)を使用して測定される値である。本明細書において、フィルムの光散乱性はヘイズ値によって評価され得る。
【0023】
本発明の一形態に係る農業用フィルムは、40℃におけるヘイズ値が、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。40℃におけるヘイズ値が、45%以上であることによって、日射量が多い夏季において、フィルムに照射される光を好適に散乱させることできる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る農業用フィルムは、0℃におけるヘイズ値と、40℃におけるヘイズ値との差は、例えば、30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、40℃におけるヘイズ値の方が0℃におけるヘイズ値よりも高い値を示す。よって、日射量が少ない冬季において、フィルムに照射される光が散乱することを防止することができる。
【0025】
(1%正割弾性率)
1%正割弾性率は、フィルムを幅20mm、長さ125mmに切り出した試験片を用いて測定する。なお、本明細書において、1%正割弾性率 (1% Secant Modulus,以下1%SMと略記)は、引張試験機(例えば、島津製作所株式会社製、AGS-100B)にチャック間距離5cmで取り付け、5mm/分の速度で引っ張り、測定される1%伸長時の荷重値から、下記式(2)により算出される値である。
1%SM = F/S/0.01 (2)
ここで、Fは試験片の1%伸長時における荷重、Sは試験片の引張方向に垂直な断面の初期の面積を表す。なお、初期の面積とは、引張試験を行なう前の面積である。
【0026】
本発明の一態様に係る農業用フィルムは、1%SMが、18MPaよりも大きいことが好ましく、20MPa以上であることがより好ましく、22MPa以上であることがさらに好ましい。
【0027】
40℃付近に達する夏季における光散乱性を確保する観点から、フィルムの厚さは1μm以上であることが好ましく、より好ましくは30μm以上である。0℃付近に達する冬季において光散乱性を低くし、且つ、フィルムの重量を軽くして取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。なお、本段落に説明するフィルムの厚さは、室温(23℃)程度で測定され得るフィルムの厚さであり、線膨張係数を求める式(1)におけるL_(25℃)及びL_(0℃)とは必ずしも一致しない。
【0028】
〔連続相と分散相とからなる層〕
連続相と分散相とからなる層は、一態様に係る農業用フィルムを構成する主たる層であり、本明細書中、単に「層」と記載されており、特に説明がない場合、当該「層」とは、連続相と分散相とからなる層のことを示す。
【0029】
本発明の一形態に係る農業用フィルムは、当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した当該フィルムの断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、層の断面の面積に対して、1%以上30%以下であることが好ましく、2%以上25%以下であることがより好ましい。なお、前記フィルム面内の遅相軸は、平行ニコル回転法を測定原理とする位相差測定装置(王子計測機器株式会社製 KOBRA(登録商標)シリーズ等)を用いて求めることができる。円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が1%以上、30%以下の範囲内であることにより、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季に光散乱性を低くすることができる。
【0030】
本明細書中において、分散相とは連続相に分散された有機系粒子、無機系粒子、及び連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1つによって構成される相のことを意味し、分散相の円相当径は、観察された分散相1つ毎に求められる当該分散相の円相当径のことを意味する。なお、分散相の形状は特に限定されない。ここで、「円相当径」は、撮影された層の断面に写る1つの分散相の断面積と同じ面積を有する円の直径のことを意味し、農業用フィルムの断面を撮影した画像から画像解析システムにより求められ得る。
【0031】
連続相と分散相とからなる層を構成する樹脂組成物において、連続相を構成する成分と分散相を構成する成分との混合比は、線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように、適宜調整する。例えば、連続相と分散相とからなる層における分散相比率を低くする程、線膨張係数がより高くなるように調整でき、分散相比率を高くする程、線膨張係数がより低くなるように調整することができる。
【0032】
連続相を構成する成分と分散相を構成する成分との合計量を100質量部とした場合、連続相を構成する成分の含有量は、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上であり、さらに好ましくは65質量部以上であり、特に好ましくは70質量部以上である。また、連続相を構成する成分の含有量は、好ましくは98質量部以下であり、より好ましくは95質量部以下であり、さらに好ましくは90質量部以下であり、特に好ましくは85質量部以下である。
【0033】
また、連続相を構成する成分と分散相を構成する成分との合計量を100質量部とした場合、分散相を構成する成分の含有量は、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、特に好ましくは15質量部以上である。また、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは35質量部以下であり、特に好ましくは30質量部以下である。分散相を構成する成分の含有量が50質量部以下であることにより、十分な伸びの良さと破断強度とを確保することができる。分散相を構成する成分の含有量を少なくする程、線膨張係数をより高くするように調整でき、分散相を構成する成分の含有量を多くする程、線膨張係数をより低くできる。
【0034】
〔連続相〕
連続相は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は海島構造における海に相当する部分を形成することができる熱可塑性樹脂であればよく、限定されるものではないが、分散相を形成するために用いられる成分よりも、線膨張係数が大きいことが好ましい。連続相と分散相とからなる層の線膨張係数を上述の範囲に調整するためにより好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系重合体等を挙げることができる。
【0035】
(エチレン系共重合体)
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体(以下、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体とも称する)、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。エチレン系共重合体は単独で用いてもよく、2種類以上のエチレン系共重合体を併用してもよい。
【0036】
エチレン-ビニルエステル共重合体は、エチレンに由来する単量体単位とビニルエステルに由来する単量体単位とを主な単量体単位として有するエチレン-ビニルエステル共重合体のことをいう。エチレン-ビニルエステル共重合体は、エチレンに由来する単量体とビニルエステルに由来する単量体とのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0037】
エチレン-ビニルエステル共重合体の構成材料となるビニルエステルとしては、例えば、脂肪酸のビニルエステルであり、当該脂肪酸の炭素数が2?4であるものを挙げることができ、より具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。本発明の一態様において、上記エチレン-ビニルエステル共重合体は、2種類又はそれ以上のビニルエステルに由来する単量体単位を含むものであってもよい。中でも、ビニルエステルは、酢酸ビニルであることが好ましい。
【0038】
エチレンに由来する単量体単位とビニルエステルに由来する単量体単位とを有するエチレン-ビニルエステル共重合体の具体的な例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-プロピオン酸ビニル共重合体等を挙げることができ、特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に使用される。また、エチレン-ビニルエステル共重合体は単独で用いてもよく、2種類以上のエチレン-ビニルエステル共重合体を併用してもよい。
【0039】
また、エチレン-ビニルエステル共重合体は、エチレン、ビニルエステル以外のモノマーに由来する単量体単位を含んでいてもよい。
【0040】
エチレン-ビニルエステル共重合体として使用可能である市販品としては、例えば、エバテート(登録商標)(住友化学株式会社製)、及びスミテート(登録商標)(住友化学株式会社製)、ノバテック(登録商標)EVA(日本ポリエチレン株式会社製)、ウルトラセン(登録商標)(東ソー株式会社製)、サンテック(登録商標)EVA(旭化成株式会社製)、エバフレックス(登録商標)(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
エチレン-ビニルエステル共重合体において、ビニルエステルに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは7質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上28質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
【0042】
また、エチレン-ビニルエステル共重合体において、エチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは70質量%以上93質量%以下であり、より好ましくは72質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以上88質量%以下である。
【0043】
エチレン-ビニルエステル共重合体として2種類以上のエチレン-ビニルエステル共重合体を併用する場合、共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量Eは、下記式(3)により算出される。
E(質量%)=
(E_(1)・W_(1)+E_(2)・W_(2)+…+E_(m)・W_(m))/(W_(1)+W_(2)+…W_(m)) (3)
(ただし、エチレン-ビニルエステル共重合体1、エチレン-ビニルエステル共重合体2、…エチレン-ビニルエステル共重合体mのm種のエチレン-ビニルエステル共重合体を併用する(mは3以上の整数)とし、エチレン-ビニルエステル共重合体kにおけるエチレンに由来する単量体単位の含有量(質量%)をE_(k)、樹脂組成物中のエチレン-ビニルエステル共重合体kの含有量をW_(k)とする(kは1からmまでの整数)。)
同様にして、エチレン-ビニルエステル共重合体として2種類以上のエチレン-ビニルエステル共重合体を併用する場合、共重合体におけるビニルエステルに由来する単量体単位の含有量E’は、下記式(4)により算出される。
E’(質量%)=
(E’_(1)・W_(1)+E’_(2)・W_(2)+…+E’_(m)・W_(m))/(W_(1)+W_(2)+…W_(m)) (4)
(ただし、共重合体1、共重合体2、…共重合体mのm種の共重合体を併用する(mは3以上の整数)とし、共重合体kにおけるビニルエステルに由来する単量体単位の含有量(質量%)をE’_(k)、樹脂組成物中の共重合体kの含有量をW_(k)とする(kは1からmまでの整数)。)
なお、エチレン-ビニルエステル共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量、及び、ビニルエステルに由来する単量体単位の含有量は、けん化法により定量することができ、より具体的には、エチレン系共重合体がエチレン‐酢酸ビニル共重合体である場合、JIS K 7192:1999に従って定量することができる。
【0044】
前記エチレン-ビニルエステル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは0.05g/10分以上20g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上15g/10分以下である。当該MFRは、JIS K 7210:1999に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件でA法により測定される。
【0045】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体は、エチレンに由来する単量体単位と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位とを主な単量体として有するエチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体のことをいう。エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体は、エチレンに由来する単量体と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体とのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0046】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の構成材料となる不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3-ブテン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。中でも不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、本明細書では、アクリル酸とメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸と記す。
【0047】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の構成材料となる不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸エステル、酸無水物、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド等を挙げることができ、好ましくは不飽和カルボン酸の塩及び不飽和カルボン酸エステルである。不飽和カルボン酸の塩としては、不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩等を挙げることができる。不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸メチルエステル、不飽和カルボン酸エチルエステル、不飽和カルボン酸ブチルエステル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル;不飽和カルボン酸フェニルエステル等の不飽和カルボン酸アリールエステル;不飽和カルボン酸グリシジルエステル等を挙げることができる。
【0048】
本発明におけるエチレンに由来する単量体単位と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位とを有するエチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の具体的な例としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部をナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛等の金属イオンで中和したアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のエチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体を挙げることができ、特に、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体等が好適に使用される。また、本発明の一態様において、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体は、2種類又はそれ以上の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位を含むものであってもよい。
【0049】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0050】
(i)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体
ニュクレル(登録商標)(エチレン-メタクリル酸共重合体、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
(ii)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部を金属イオンで中和したアイオノマー
ハイミラン(登録商標)(エチレン-メタクリル酸共重合体のカルボキシル基の一部を亜鉛イオン又はナトリウムイオンで中和したアイオノマー、三井・デュポンポリケミカル株式会社製) (iii)エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体
アクリフト(登録商標)(エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、住友化学株式会社製)、レクスパール(登録商標)EMA(エチレン-アクリル酸メチル共重合体、日本ポリエチレン株式会社製)、レクスパール(登録商標)EEA(エチレン-アクリル酸エチル共重合体、日本ポリエチレン株式会社製)、ロトリル(登録商標)(エチレン-アクリル酸メチル共重合体またはエチレン-アクリル酸ブチル共重合体、アルケマ社製)、エルバロイ(登録商標)AC(エチレン-アクリル酸メチル共重合体・エチレン-アクリル酸エチル共重合体・エチレン-アクリル酸ブチル共重合体のいずれか、デュポン社製)
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体は単独で用いてもよく、2種類以上のエチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体を併用してもよい。
【0051】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位の含有量は、フィルムの剛性と温度変化(0℃?40℃)に伴う光散乱性(ヘイズ値)の変化との兼ね合いから、好ましくは10質量%よりも多く40質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上30質量%以下である(ただし、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の質量を100質量%とする)。
【0052】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位の含有量は、赤外線吸収スペクトル分析法により測定することができる。
【0053】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、フィルムの剛性と温度変化(0℃?40℃)に伴う光散乱性(ヘイズ値)の変化との兼ね合いから、好ましくは60質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは65質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上80質量%以下である(ただし、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体の質量を100質量%とする)。
【0054】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、赤外線吸収スペクトル分析法により測定した不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単量体単位の含有量を100質量%から引くことにより算出することができる。
【0055】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体として2種類以上のエチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体を併用する場合、共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量Eは、下記式(5)により算出される。
E’’(質量%)=
(E’’_(1)・W’_(1)+E’’_(2)・W’_(2)+・・・+E’’_(m)・W’_(m))/(W’_(1)+W’_(2)+・・・W’_(m)) (5)
(ただし、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体1、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体2、・・・エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体mのm種のエチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体を併用する(mは2以上の整数)とし、エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体kにおけるエチレンに由来する単量体単位の含有量をE’’_(k)、樹脂組成物中の共重合体kの含有量をW’_(k)とする(kは1からmまでの整数)。)
【0056】
エチレン-不飽和カルボン酸(誘導体)共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、フィルム状に加工する観点では好ましくは0.1g/10分以上10g/10分以下である。該MFRは、JIS K7120:1999に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件でA法又はB法により測定される。
【0057】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する単量体単位とα-オレフィンに由来する単量体単位とを主な単量体として有するエチレン-α-オレフィン共重合体のことをいう。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する単量体とα-オレフィンに由来する単量体とのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0058】
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である(ただし、エチレン-α-オレフィン共重合体の質量を100質量%とする)。
【0059】
前記α-オレフィンに由来する単量体は、炭素数が3?20であることが好ましく、前記エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等を挙げることができる。これらのうち、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体が特に好ましい。また、エチレンに由来する単量体単位の含有量が50質量%以上であれば、エチレン-プロピレン共重合体であってもよい。なお、エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレンと、2種以上のα-オレフィンとを共重合したものを用いてもよい。
【0060】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、強度に優れたフィルムの提供に寄与する。前記エチレン-α-オレフィン共重合体は、強度の高いフィルムを得る観点から、好ましくは、エチレンとα-オレフィンとが、メタロセン触媒を用いて重合されたものである。
【0061】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体として使用可能である市販品としては、以下のものを挙げることができる。エクセレン(登録商標)FX(住友化学株式会社製)、タフマー(登録商標)(三井化学株式会社製)、ENGAGE(登録商標)(Dow Chemical社製)、AFFINITY(登録商標)(Dow Chemical社製)、EXACT(登録商標)(ExxonMobil社製)、カーネル(登録商標)(日本ポリエチレン株式会社製)。
【0062】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体としては単独のエチレン-α-オレフィン共重合体を用いてもよく、2種類以上のエチレン-α-オレフィン共重合体を併用してもよい。
【0063】
(プロピレン系重合体)
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体等を挙げることができ、中でもプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0064】
前記のプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体におけるプロピレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは70質量%以上99質量%以下である(ただし、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体の質量を100質量%とする)。
【0065】
前記のプロピレン系重合体がプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体である場合、エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは1質量%以上30質量%以下である(ただし、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体の質量を100質量%とする)。
【0066】
前記プロピレン系重合体のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは0.05g/10分以上20g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上15g/10分以下である。該MFRは、JIS K 7120:1999に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件でA法により測定される。
【0067】
連続相は、熱可塑性樹脂の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、酸化防止剤、防霧剤、及び滑剤等から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0068】
〔分散相〕
分散相は、有機系粒子、無機系粒子及び連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1つの成分を含むことが好ましい。本発明の一態様に係る農業用フィルムは、連続相と分散相とからなる層における円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率を低くする程、線膨張係数がより高くなるように調整でき、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率を高くする程、線膨張係数がより低くなるように調整することができ、これによって線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下に調整できることはすでに説明した通りである。なお、連続相と分散相とからなる層における分散相の成分は、有機系粒子、無機系粒子及び連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。分散相に含まれる成分の屈折率は、特に限定されないが、1.50以上1.53以下であることが好ましく、1.50よりも高く1.53よりも低いことがより好ましく、1.51以上1.52以下であることがさらに好ましく、1.51以上1.52よりも低いことが最も好ましい。分散相に含まれる成分の屈折率が1.50以上1.53以下であり、線膨張係数が上述の範囲内であることにより、気温が40℃付近に達する夏季においてはフィルムの光散乱性を高め、0℃付近に達する冬季においては光散乱性を低くし、気温の高低差に依存する光散乱性の差を大きくすることができる。なお、当該屈折率は室温にて粒子液浸法を用いて測定した値であり、ここで、屈折率の値における小数点第3位以下は四捨五入される。
【0069】
(有機系粒子)
有機系粒子としては、例えば、架橋アクリル系粒子が挙げられる。架橋アクリル系粒子としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子(架橋MMA-St共重合体粒子)等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等を挙げることができ、好ましくはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸ブチルであり、より好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとに由来する単量体単位のみを含む架橋共重合体粒子であってもよく、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとに由来する単量体単位以外の単量体単位を含む架橋共重合体粒子であってもよい。なお、前記(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子において、全単量体単位に占める(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとに由来する単量体単位の含有割合は、80質量%以上であることが好ましい。
【0071】
前記(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子における(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは50?99質量%であり、より好ましくは60?90質量%である。また、前記(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子におけるスチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは1?50質量%であり、より好ましくは10?40質量%である。(ただし、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位とスチレンに由来する単量体単位との合計を100質量%とする。)
【0072】
前記(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの架橋共重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、スチレンと、必要に応じて他の単量体とを含む単量体成分を、懸濁重合等の公知の方法により重合することにより得ることができる。
【0073】
架橋アクリル系粒子を得る方法としては、単量体成分を、架橋剤とともに懸濁重合する方法を挙げることができる。架橋剤としては、2個以上の不飽和基を有する化合物を用いることが好ましく、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
【0074】
前記有機系粒子の体積中位径は、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高くする観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上である。また、当該体積中位径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下である。有機系粒子の体積中位径は、コールターカウンター法により測定される。また、円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積比率を上述した範囲内とするには、連続相と分散相とからなる層の分散相を構成する成分に対する、体積中位径が1μm以上10μm以下の有機系粒子の割合を調整すればよい。例えば、連続相と分散相とからなる層の分散相を構成する成分100質量部に対する体積中位径が1μm以上10μm以下の有機系粒子の含有量は、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがさらに好ましい。
【0075】
前記有機系粒子の市販品の例として、テクポリマー(登録商標)MSXシリーズ、テクポリマー(登録商標)SSXシリーズ(以上、積水化成品工業株式会社製)、アートパール(登録商標)Gシリーズ、アートパール(登録商標)GSシリーズ(以上、根上工業株式会社製)、ガンツパール(登録商標)GSMシリーズ(以上、アイカ工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0076】
(無機系粒子)
無機系粒子としては、例えば、ガラス粒子、カオリン、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)等が挙げられる。
【0077】
ガラス粒子とは、二酸化ケイ素(SiO_(2))を含む粒子であり、酸化ホウ素(B_(2)O_(3))、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、酸化ナトリウム(Na_(2)O)、酸化カルシウム(CaO)、及び酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選択される少なくとも1種の無機化合物を含んでいてもよい。ガラス粒子は、さらに必要に応じて、更なる無機化合物及び添加剤を含んでもよい。具体的には、前記の無機化合物に加えてさらに、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、炭酸マグネシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、鉄等の慣用の無機化合物を必要に応じて適宜混合し、農業用フィルムを上述した線膨張係数の範囲となるように調製することができる。
【0078】
無機系粒子個々の形状としては、特に限定されず、球状(例えば、ガラスビーズ)、繊維状(例えば、チョップドファイバー、ミルドファイバー)、フレーク状等の種々の形状の無機系粒子を用いることができる。
【0079】
無機系粒子が球状である場合、その体積中位径は、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高くする観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上である。また、当該体積中位径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下である。粒子の体積中位径は、レーザー回折法により測定される。また、円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積比率を上述した範囲内とするには、連続相と分散相とからなる層の分散相を構成する成分に対する、体積中位径が1μm以上10μm以下の無機系粒子の割合を調整すればよい。例えば、連続相と分散相とからなる層の分散相を構成する成分100質量部に対する体積中位径が1μm以上10μm以下の無機系粒子の含有量は、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがさらに好ましい。
【0080】
無機系粒子が繊維状である場合、アスペクト比は特に限定されないが、40℃付近に達する夏季に光散乱性を高くする観点から、アスペクト比が1?500のものが用いられ、アスペクト比が1?100のものがより好ましく用いられ、アスペクト比が1?50のものがさらに好ましく用いられる。
【0081】
その他、無機系粒子は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されているものであってもよい。
【0082】
(連続相の熱可塑性樹脂とは異なる、分散相の熱可塑性樹脂)
分散相に含まれ得る熱可塑性樹脂としては、連続相となる熱可塑性樹脂中において海島構造における島に相当する部分を形成することができる熱可塑性樹脂であればよく、連続相に用いられる熱可塑性樹脂よりも線膨張係数が小さい熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。連続相となる熱可塑性樹脂にオレフィン系樹脂を用いる場合、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸フェニル共重合体等の架橋されていないアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVOH)、環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。
【0083】
分散相は、有機系粒子、無機系粒子、及び連続相とは異なる熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1つの他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、赤外線吸収剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、酸化防止剤、防霧剤、及び滑剤等から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0084】
前記赤外線吸収剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物が挙げられる。ハイドロタルサイト類化合物の具体例としては、天然ハイドロタルサイトや商品名:DHT-4A(協和化学工業株式会社製)、マグクリア(戸田工業株式会社製)、マグセラー(登録商標)1(協和化学工業株式会社製)、スタビエース(登録商標)HT-P(堺化学工業株式会社製)等が挙げられる。リチウムアルミニウム複合水酸化物の具体例としては、OPTIMA-SS(戸田工業株式会社製)、ミズカラック(水澤化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0085】
本発明の一形態においては、ハイドロタルサイト類化合物を単独で用いてもよいし、リチウムアルミニウム複合水酸化物を単独で用いてもよい。あるいは、両者を併用しても良い。
【0086】
前記光安定剤としては、例えば、特開平8-73667号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン化合物を挙げられる。具体的には、商品名:チヌビン(登録商標)622、キマソーブ(登録商標)944、キマソーブ(登録商標)119(以上BASF製)、ホスタビン(登録商標)N30、ホスタビン(登録商標)PR-31(以上クラリアント社製)、サイヤソーブ(登録商標)UV3529、サイヤソーブ(登録商標)UV3346(以上サイテック社製)等が挙げられる。
【0087】
さらには、特開平11-315067号公報、特開2001-139821号公報、WO2005/082852、特表2009-530428号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン化合物が挙げられる。具体的には、商品名:NOR371(BASF製)、アデカスタブ(登録商標)LA-900(株式会社ADEKA製)、アデカスタブ(登録商標)LA-81(株式会社ADEKA製)、ホスタビン(登録商標)NOW(クラリアント株式会社製)が挙げられる。
【0088】
また、光安定剤として、エチレンに基づく単量体単位と環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位とを有するエチレン-環状アミノビニル化合物共重合体も挙げることができる。かかるエチレン-環状アミノビニル化合物共重合体としては、特開2002-265693号公報に記載の構造を有するものが挙げられる。
【0089】
連続相と分散相とからなる層を構成する樹脂組成物に含まれる光安定剤の含有量は、0.01?3質量%が好ましく、0.05?2質量%がより好ましく、特に0.1?1質量%が好ましい。ただし、樹脂組成物の質量を100質量%とする。
【0090】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシベンゾフェノン類、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、ベンゾエート類、置換オキザニリド類、シアノアクリレート類、トリアジン類等が挙げられる。
【0091】
2-ヒドロキシベンゾフェノン類としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0092】
2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’?ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-ベンゾトリアゾリル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0093】
ベンゾエート類としては、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3’,5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニルー3’、5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0094】
置換オキザニリド類としては、2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等が挙げられる。
【0095】
シアノアクリレート類としては、エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
トリアジン類としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕-フェノール、2-〔4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-5-(オクチロキシ)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0097】
好ましくは、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類であり、より好ましくは、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0098】
紫外線吸収剤は、単独で又は二種以上で用いられる。連続相と分散相とからなる層を構成する樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、0.001?3質量%が好ましく、0.005?1質量%がより好ましい。ただし、樹脂組成物の質量を100質量%とする。
【0099】
前記防曇剤としては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジモンタネート、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンセスキオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステル、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルアミンモノステアレート等のポリオキシエチレンアルキルアミン及びその脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジアルキルフェノール誘導体や2-アルキルフェノール誘導体等のいわゆるヒンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物やフォスフォナイト系化合物等の3価のリン原子を含むリン系エステル化合物が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に色相安定化の観点から、ヒンダードフェノール系化合物とリン系エステル化合物を併用して用いることが好ましい。
【0101】
前記防霧剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基、ω-ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物(特にフッ素系界面活性剤)、またアルキルシロキサン基を有するシリコーン系化合物(特にシリコーン系界面活性剤)等が挙げられる。フッ素系界面活剤の具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダイン(登録商標)DSN-403N、DS-403、DS-406、DS-401(商品名)、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)KC-40、AF-1000、AF-2000(商品名)等が挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニング株式会社製のSH-3746(商品名)が挙げられる。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。連続相と分散相とからなる層を構成する樹脂組成物に含まれる防霧剤の含有量は、0.01?3質量%が好ましく、0.02?2質量%がより好ましく、0.05?1質量%が特に好ましい。ただし、樹脂組成物の質量を100質量%とする。
【0102】
〔その他の層〕
本発明の一形態に係る農業用フィルムは、連続相と分散相とからなる層のみを有するフィルムであってもよく、連続相と分散相とからなる層以外の層を有するフィルムであってもよい。本発明のフィルムの好ましい形態の一つとして、連続相と分散相とからなる中間層が、2つのポリオレフィン系樹脂層の間に存在する多層フィルムを挙げることができる。この層構成により、フィルムの強度を向上させることができるという利点が得られる。
【0103】
前記の多層フィルムにおける2つのポリオレフィン系樹脂層は、同じであってもよく、異なっていてもよい。前記の多層フィルムの構成として、より具体的には、2種3層、3種3層、3種4層、4種4層、4種5層、5種5層等が例示できる。
【0104】
多層フィルムが4種以上の層からなる場合、連続相と分散相とからなる層及びポリオレフィン系樹脂層のどちらとも異なる層を有していてもよく、ポリオレフィン系樹脂層を3層以上有していてもよい。また、連続相と分散相とからなる層が2層以上あってもよい。
【0105】
例えば、ポリオレフィン系農業用フィルムが5層フィルムである場合、ポリオレフィン系樹脂層をA、連続相と分散相とからなる中間層をB、A、Bと異なる層をCとしたとき、C/A/B/A/C、A/B/A/C/C、A/A/B/A/A、A/A/B/B/A、A/B/A/B/A等のいずれであっても良い。
【0106】
また、本発明の一形態に係るフィルムが3層からなる多層フィルムである場合には、各層の厚みの比は、線膨張係数が1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下になるように、適宜調整する。例えば、農業用フィルム全体の厚さに対する、連続相と分散相とからなる層の厚さの比率を高くすることにより、線膨張係数をより高くすることができる。例えば、一態様に係る農業用フィルムが連続相と分散相とからなる層のみからなる場合、フィルムの厚さを1μm以上500μm以下の範囲内にすることが好ましいことはすでに説明した通りであるが、農業用フィルムが多層フィルムである場合、0℃?40℃付近の感温性とフィルムの強度との兼ね合いの観点から、当該多層フィルムの厚さは1μm以上500μm以下の範囲内であり、かつポリオレフィン系樹脂層/連続相と分散相とからなる層/ポリオレフィン系樹脂層との厚さの比率が、1/2/1?1/4/1であることが、好ましい。
【0107】
多層フィルムを構成する前記のポリオレフィン系樹脂層はポリオレフィン系樹脂を含有する。ポリオレフィン系樹脂としては、〔連続相〕において前述したポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0108】
前記のポリオレフィン系樹脂層は、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、酸化防止剤、防霧剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、顔料等を含んでいてもよいが、有機系粒子、無機系粒子及び連続相と分散相とからなる層の連続相の熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1つの成分を含んでいない点において、連続相と分散相とからなる層とは区別され得る。
【0109】
本発明の一形態に係るフィルムは、一方の表層として又は両面に、防曇性塗膜層を有していてもよい。かかる防曇性塗膜層としては、無機コロイドからなる防曇層、無機コロイドとバインダー樹脂とを含有する防曇性塗膜層が挙げられる。
【0110】
無機コロイドは、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与するものであり、通常、水等の液体分散媒中に、無機コロイドが分散されたゾルの形態で使用される。具体的には、シリカゾル、アルミナゾルが挙げられ、シリカゾルが好ましい。
【0111】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル変性ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0112】
前記バインダー樹脂は、通常、水や水とアルコール等の水性溶剤との混合溶剤に当該樹脂が分散されている水系エマルジョンとして用いられる。
【0113】
防曇性塗膜層は、シリカとバインダー樹脂とを含有する防曇層が好ましい。更に、バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル変性ポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0114】
好ましいシリカとして、平均粒子径が5?100nmの球状のものが挙げられる。
【0115】
防曇性塗膜層に含まれるシリカ及びバインダー樹脂の合計を100質量%とするとき、シリカの含有量が30?70質量%であり、バインダー樹脂の含有量が30?70質量%であることが好ましく、シリカの含有量が50?65質量%であり、バインダー樹脂の含有量が35?50質量%であることがより好ましい。シリカの含有量が少なすぎると十分な防曇効果が得られず、逆に多すぎると、被膜が白濁化して低温下での光線透過率を低下させ得る。
【0116】
シリカとバインダー樹脂とを含有する防曇性塗膜層は、例えば、以下に示すようにして形成することができる。バインダー樹脂を含有する水系エマルジョン、シリカを含有する水性シリカゾル、及び分散媒である水を混合し、攪拌して塗工液を得る。次に、この塗工液を、公知の手段を用いて塗布し、乾燥することにより、防曇層を形成することができる。塗布手段としては、具体的には、バーコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛コーティング、スプレーコーティング、キッスコーティング、ダイコーティング、ディッピング等が挙げられる。乾燥手段としては、例えば熱風乾燥が挙げられる。
【0117】
シリカとバインダー樹脂からなるコーティング膜の厚みは、0.3?1.5μmが好ましく、0.5?1.2μmがより好ましい。
【0118】
前記塗工液には、塗工性を向上させるために、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を含有させることができる。シリコーン系界面活性剤としては、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0119】
また、前記塗工液には、必要に応じて、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0120】
防曇性塗膜層は、前記フィルムの一方の表層として形成されていてもよいし、両方の表層として形成されていてもよい。また、防曇層は単層膜でも2層以上の多層膜でもよい。
【0121】
<農園芸用施設>
本発明の一形態に係る農業用フィルムで被覆された農園芸用施設においては、40℃付近に達する夏季にフィルムの光散乱性が高いため過剰な直射光に起因する作物の葉焼け等の障害を防ぐことができる。また、0℃付近に達する冬季にはフィルムの光散乱性が低いため作物に十分な直射光を届けることができる。一年を通じて使用でき、安定した光量を届けることができる。前記農園芸用施設は、ホウレンソウ、トマト、ネギ、キュウリ、イチゴ等の栽培に好適に用いられる。
【0122】
本発明の一形態に係る農業用フィルムを備えた農園芸用施設としては、例えば、植物栽培用の温室、トンネル等が挙げられる。農園芸用施設において、前記の農業用フィルムは、例えば、農園芸用施設フレームに展張されている。
【0123】
また、本発明の一形態に係る農業用フィルムは、農園芸用施設に展張するときにおいて、例えば、農園芸用施設に展張するための農園芸用施設フレームに、農業用フィルムが引っ掛かり破断することを好適に防止することができるため、その取扱いが極めて容易であることも利点の1つである。よって、本発明の一形態に係る農業用フィルムを用いて、農園芸用施設に展張する方法、及び農業用フィルムを用いて展張された農園芸用施設も、本発明の範疇である。
【実施例】
【0124】
以下、本発明の実施例を示す。なお実施例及び比較例中の試験方法は次の通りである。
【0125】
[試験方法]
<線膨張係数>
フィルムから5mm×5mmの試験片を切り出し、圧縮モードに設定した熱機械分析装置(製品名:TMA402 F1 Hyperion(NETZSCH社製))にセットし、荷重を0.05Nとし、試験片を-15℃以下まで冷却した。その後、5℃/minの速度で、60℃まで昇温しながら、0℃及び25℃における表面に垂直な方向の長さ、すなわち厚さを測定した。なお、測定はヘリウム雰囲気下で行った。
【0126】
上記により得た0℃及び25℃における試験片の表面に垂直な方向の長さ(厚み)L_(0℃)及びL_(25℃)から、下記式(1)により、線膨張係数を算出した。
線膨張係数=(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃) (1)
上記操作をフィルム内の2箇所について行い、その平均値を、当該フィルムの線膨張係数とした。
【0127】
<中間層の断面の面積に対する円相当径1μm以上10μm以下の分散相の断面の面積の比率>
フィルム表面に対して垂直方向、且つフィルム面内の遅相軸と平行方向にフィルムを切断した。光学顕微鏡(株式会社ニコン製、ECLIPSE(登録商標) LV100DA-U)を用いて、観察倍率は500倍とし、フィルムの断面の任意の2箇所の画像を取得した。後述する実施例に記載の、フィルムの断面画像の遅相軸に平行な方向の長さは実寸相当で238μmであった。なお、フィルムの遅相軸は、位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、KOBRA(登録商標)-WPR)を用い、波長586nmにて求めた。
【0128】
次に、画像解析システム(株式会社ニレコ製、LUZEX(登録商標)-AP)を用いて、フィルムの断面画像における、中間層の断面の面積に対する円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率(以下、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率と記すことがある)を求めた。2箇所の断面画像についてそれぞれ円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率を求め、その平均値を当該フィルムの円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率とした。
【0129】
<ヘイズ値>
株式会社村上色彩技術研究所製 温調ヘイズメーター(THM-150TL)を使用し、0℃及び40℃において測定を行った。温度以外の測定条件はJIS K 7136:2000に準拠した。
【0130】
<1%SM>(単位:MPa)
幅20mm、長さ125mmの試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所株式会社製、AGS-100B)にチャック間距離5cmで取り付け、5mm/分の速度で引っ張り、1%伸長時における荷重を求め、下記式(2)にて計算した。
1%SM = F/S/0.01 (2)
ここで、Fは試験片の1%伸長時における荷重、Sは試験片の引張方向に垂直な断面の初期の面積を表す。
なお、インフレーション成形機にて作製したフィルムについては、MD方向を引張方向とした場合、及びTD方向を引張方向とした場合のそれぞれについて測定を行った。
【0131】
[材料]
以下に、使用した材料を示す。
【0132】
なお、下記に記載のMFRは、JIS K 7210:1999に従い、所定の温度にて荷重21.18Nの条件でA法又はB法により測定された値に相当する。
エチレン系共重合体:
(1)エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(以下、EMMA-1とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 7g/10分
エチレンに由来する単量体単位の含有量 75質量%、メタクリル酸メチル(MMA)に由来する単量体単位の含有量 25質量%(EMMA-1の質量を100質量%とする)
(アクリフト(登録商標)WK307 住友化学株式会社製)
(2)エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(以下、EMMA-2とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 2g/10分
エチレンに由来する単量体単位の含有量 80質量%、メタクリル酸メチル(MMA)に由来する単量体単位の含有量 20質量%(EMMA-2の質量を100質量%とする)
(アクリフト(登録商標)WH206-F 住友化学株式会社製)
(3)エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(以下、EMMA-3とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 2g/10分
エチレンに由来する単量体単位の含有量 90質量%、メタクリル酸メチル(MMA)に由来する単量体単位の含有量 10質量%(EMMA-3の質量を100質量%とする)
(アクリフト(登録商標)WD201-F 住友化学株式会社製)
(4)エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(以下、EMMA-4とする)
MFR(190℃、21.18N、B法) 450g/10分
エチレンに由来する単量体単位の含有量 68質量%、メタクリル酸メチル(MMA)に由来する単量体単位の含有量 32質量%(EMMA-4の質量を100質量%とする)
(アクリフト(登録商標)CM5022 住友化学株式会社製)
(5)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(以下、EVA-1とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 7g/10分
エチレンに由来する単量体単位の含有量 72質量%、酢酸ビニル(VA)に由来する単量体単位の含有量 28質量%(EVA-1の質量を100質量%とする)
(スミテート(登録商標)KA-30 住友化学株式会社製)
(6)エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、ER-1とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 3.2g/10分
(エクセレンFX307 住友化学株式会社製)
プロピレン系重合体:
(1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(以下、rPP-1とする)
MFR(230℃、21.18N、A法) 1.5g/10分
(ノーブレン(登録商標)S131 住友化学株式会社製)
ポリオレフィン系樹脂:
(1)ポリエチレン樹脂(PE)(以下、PE-1とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 0.5g/10分
(エクセレン(登録商標)GMH GH030 住友化学株式会社製)
(2)ポリエチレン樹脂(PE)(以下、PE-2とする)
MFR(190℃、21.18N、A法) 0.4g/10分
(エクセレン(登録商標)GMH GH051 住友化学株式会社製)
粒子:
(1)OMicron(登録商標) NP5-P0(Sovitec社製ガラスビーズ)(以下、粒子-1とする)
体積中位径=5μm(レーザー回折法)
屈折率(23℃)=1.51
(2)OMicron(登録商標) NP3-P0(Sovitec社製ガラスビーズ)(以下、粒子-2とする)
体積中位径=3μm(レーザー回折法)
屈折率(23℃)=1.51
(3)架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子(以下、粒子-3とする)
体積中位径=5μm(コールターカウンター法)
屈折率(23℃)=1.51
(テクポリマーMSX-5Z 積水化成品工業株式会社製)
樹脂組成物の層を備えた実施例1?4及び比較例1のフィルムを作成し、評価を行なった。
【0133】
[実施例1]
EMMA-1 75質量%と、粒子-2 25質量%とを混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)に供し、温度150℃、回転数60rpmの条件で5分間混練し、樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物を150℃でプレス成形し、その後10℃でプレス冷却することにより厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0134】
[実施例2]
EMMA-1に代えてEMMA-2を用い、また、粒子-2に代えて粒子-1を用いたほかは、実施例1と同じように樹脂組成物及びフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0135】
[実施例3]
EVA-1 45質量%と、ER-1 20質量%と、rPP-1 20質量%と、粒子-3 15質量%とを混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)に供し、温度150℃、回転数60rpmの条件で5分間混練し、樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物を150℃でプレス成形し、その後30℃でプレス冷却することにより厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0136】
[実施例4]
<マスターバッチ>
EVA-1 50重量部と粒子-3 50重量部とからなるマスターバッチを使用した。このマスターバッチをMB-1とした。
【0137】
<フィルムの作製>
内層用押出機(40mm押出機)と、中間層用押出機(40mm押出機)と、外層用押出機(40mm押出機)と、100mmφダイス(リップ間隙1.2mm)とを備えた3層インフレーション成形機(株式会社プラコー製)を用い、三層のチューブ状フィルムを成形した。
【0138】
具体的には、外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料を外層用押出機に投入し、実施例4の中間層用樹脂組成物の材料を中間層用押出機に投入し、内層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料を内層用押出機に投入し、各押出機にて溶融混練した後、100mmφダイスから、内層が30μm、中間層が90μm、外層が30μm(全厚が150μm)となるように吐出量を調整して、溶融した各層の樹脂組成物を押出し、冷却して三層のチューブ状フィルムを得た。この時、内層及び外層の押出機は160℃、並びに中間層の押出機及びダイスは150℃の設定とした。
【0139】
なお、外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、PE-1及びPE-2であり、配合量は、PE-1が50質量%であり、PE-2が50質量%であった。また、実施例4の中間層用樹脂組成物の材料は、EVA-1、ER-1、rPP-1、及びMB-1であり、配合量は、EVA-1が30質量%であり、ER-1が20質量%であり、rPP-1が20質量%であり、MB-1が30質量%であった。内層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、外層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料と同様とした。
【0140】
得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0141】
[実施例5]
<フィルムの作製>
外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、PE-1及びPE-2であり、配合量は、PE-1が50質量%であり、PE-2が50質量%であった。また、実施例5の中間層用樹脂組成物の材料は、EVA-1、ER-1、rPP-1、及びMB-1であり、配合量は、EVA-1が10質量%であり、ER-1が40質量%であり、rPP-1が20質量%であり、MB-1が30質量%であった。内層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、外層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料と同様とした。それ以外は実施例4と同様にして三層の多層フィルムを得た。
【0142】
得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0143】
[比較例1]
EMMA-2に代えてEMMA-3を用いたほかは、実施例2と同じように樹脂組成物及びフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0144】
[比較例2]
EMMA-1 50質量%と、EMMA-4 25質量%と、粒子-1 25質量%とを混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)に供し、温度100℃、回転数60rpmの条件で5分間混練し、樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物を100℃でプレス成形し、その後10℃でプレス冷却することにより厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0145】
[比較例3]
<マスターバッチ>
EMMA-2 49.2質量部と、粒子-1 50質量部と、酸化防止剤としてIrganox(登録商標)1010(BASF社製)0.8質量部とをインテンシブミキサー(日本ロール製造株式会社製)に供給し、160℃で5分間混合し、得られた混合物を65mmφ単軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に供給して押出し、ペレット化することで、中間層用樹脂組成物のためのマスターバッチを得た。このマスターバッチをMB-2とした。
【0146】
<フィルムの作製>
内層用押出機(40mm押出機)と、中間層用押出機(40mm押出機)と、外層用押出機(40mm押出機)と、100mmφダイス(リップ間隙1.2mm)とを備えた3層インフレーション成形機(株式会社プラコー製)を用い、三層のチューブ状フィルムを成形した。
【0147】
具体的には、外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料を外層用押出機に投入し、比較例3の中間層用樹脂組成物の材料を中間層用押出機に投入し、内層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料を内層用押出機に投入し、各押出機にて溶融混練した後、100mmφダイスから、内層が50μm、中間層が50μm、外層が50μm(全厚が150μm)となるように吐出量を調整して、溶融した各層の樹脂組成物を押出し、冷却して三層のチューブ状フィルムを得た。この時、内層及び外層の押出機は160℃、並びに中間層の押出機及びダイスは150℃の設定とした。
【0148】
なお、外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、PE-1及びPE-2であり、配合量は、PE-1が50質量%であり、PE-2が50質量%であった。また、比較例3の中間層用樹脂組成物の材料は、EMMA-2及びMB-2であり、配合量は、EMMA-2が50質量%であり、MB-2が50質量%であった。内層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、外層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料と同様とした。
【0149】
得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【0150】
[比較例4]
<フィルムの作製>
外層用ポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、PE-1及びPE-2であり、配合量は、PE-1が50質量%であり、PE-2が50質量%であった。また、比較例4の中間層用樹脂組成物の材料は、EMMA-1及びMB-2であり、配合量は、EMMA-1が50質量%であり、MB-2が50質量%であった。内層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料は、外層用のポリオレフィン系樹脂組成物の材料と同様とした。それ以外は比較例3と同様にして三層の多層フィルムを得た。
【0151】
得られたフィルムの線膨張係数、円相当径1μm以上10μm以下の分散相比率、0℃及び40℃におけるヘイズ値、並びに23℃における1%SMの値を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0152】
なお、農業用フィルムは、線膨張係数が、1.5×10^(-4)K^(-1)以上2.8×10^(-4)K^(-1)以下であれば、0℃?40℃の温度範囲におけるヘイズ値の変化、すなわち、25℃よりも高い温度範囲にまで及ぶ、ヘイズ値の変化が大きいことが確認された。さらに、線膨張係数が、2.8×10-4K-1以下であれば、23℃における1%SMの値も高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明に係る農業用フィルムは、植物栽培用の温室やトンネル等の農園芸用施設において、被覆材等として好適に利用することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相と分散相とからなる層を少なくとも1層有し、下記(A)及び(B)を満たす農業用フィルム;
(A)当該フィルム表面に対して垂直方向、且つ当該フィルム面内の遅相軸と平行方向に切断した断面において、前記分散相のうち円相当径が1μm以上10μm以下である分散相の断面の面積の比率が、前記層の断面の面積に対して1%以上30%以下、
(B)下記式(1)により算出される線膨張係数が1.8×10^(-4)K^(-1)以上2.6×10^(-4)K^(-1)以下、
線膨張係数=1/L×(L_(25℃)-L_(0℃))/(25℃-0℃) (1)
ここで、L_(25℃)は25℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、L_(0℃)は0℃における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表し、Lは室温における当該フィルム表面に対して垂直方向の当該フィルムの長さを表す。
【請求項2】
前記連続相は熱可塑性樹脂を含む請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂である請求項2に記載の農業用フィルム。
【請求項4】
前記分散相に含まれる成分の屈折率は、1.50以上1.53以下である請求項1?3のいずれか一項に記載の農業用フィルム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の農業用フィルムが農園芸用施設フレームに展張された農園芸用施設。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-05 
出願番号 特願2019-67032(P2019-67032)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 創太郎  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 土屋 真理子
森次 顕
登録日 2019-09-13 
登録番号 特許第6584706号(P6584706)
権利者 住友化学株式会社 サンテーラ株式会社
発明の名称 農業用フィルム及び農園芸用施設  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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