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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
管理番号 1374880
異議申立番号 異議2020-700365  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-27 
確定日 2021-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6611374号発明「繊維製品用の液体洗浄剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6611374号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?13〕について訂正することを認める。 特許第6611374号の請求項1、5、7?13に係る特許を維持する。特許第6611374号の請求項2?4、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6611374号の請求項1?13の発明に係る特許についての出願は、2016年3月25日(優先権主張 平成27年3月30日 日本国)を国際出願日とするものであって、令和元年11月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月27日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についての異議申立ての経緯は、以下のとおりである。

令和2年5月27日 特許異議申立人である森田弘潤による特許異議の申立て
同年9月16日付け 取消理由通知
同年11月17日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年同月24日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月24日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容

令和2年11月17日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1?13を含むものである。

訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、を含有し、
(A)成分/(B)成分で表される質量比が1?25であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、繊維製品用の液体洗浄剤。」
と記載されているのを、
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり、
前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。X^(2)がCOOのとき、R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)
前記(D)成分:ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%であり、
(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、繊維製品用の液体洗浄剤。」
に訂正する。
また、請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項5、7?13も同様に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「界面活性剤の合計含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して1?80質量%である、請求項1?4のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。」
と記載されているのを、
「界面活性剤の合計含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して20?80質量%である、請求項1に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。」
に訂正する。
また、請求項5の記載を直接または間接的に引用する請求項7?13も同様に訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤である、請求項1?6のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。」
と記載されているのを、
「脂肪酸又はその塩として、ヤシ脂肪酸塩のみを含み、ヤシ脂肪酸塩の含有量が(A)成分の総質量に対し、0?30質量%である、請求項1または5に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。」
に訂正する。
また、請求項7の記載を直接または間接的に引用する請求項8?13も同様に訂正する。

訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「前記(B)成分が、下記一般式(25)で表されるカチオン界面活性剤である、請求項1?7のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「前記(B)成分が、下記一般式(25)で表されるカチオン界面活性剤である、請求項1、5、7のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
また、請求項8の記載を直接または間接的に引用する請求項9?13も同様に訂正する。

訂正事項9
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に
「前記(C)成分が、下記一般式(C1)又は下記一般式(C2)で表される高分子化合物を含む、請求項1?8のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「前記(C)成分が、下記一般式(C1)又は下記一般式(C2)で表される高分子化合物を含む、請求項1、5、7、8のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
また、請求項9の記載を直接または間接的に引用する請求項10?13も同様に訂正する。

訂正事項10
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に
「(A)成分/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1?9のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「(A)成分/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?9のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
また、請求項10の記載を直接または間接的に引用する請求項11?13も同様に訂正する。

訂正事項11
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11に
「((A)成分+(B)成分)/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1?10のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「((A)成分+(B)成分)/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?10のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
また、請求項11の記載を直接または間接的に引用する請求項12、13も同様に訂正する。

訂正事項12
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に
「25℃での粘度が、10?300mPa・sである、請求項1?11のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
25℃での粘度が、10?300mPa・sである、請求項1、5、7?11のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
また、請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。

訂正事項13
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項13に
「塗布洗浄用である、請求項1?12のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「塗布洗浄用である、請求項1、5、7?12のいずれか一項に記載の」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 一群の請求項について
訂正事項1?13は、本件訂正前の請求項1?13のいずれかの請求項の記載を訂正するものであるところ、請求項2?13はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1?13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における、
「(A)成分」について、請求項1を引用していた請求項7の記載に基づき、「前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり」と限定し、
「液体洗浄剤」が含有している成分について、請求項1を引用していた請求項2の記載に基づき、「(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し」と限定し、
「(D)成分」について、請求項2を引用していた請求項3、4及び6の記載、及び、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0068】の記載に基づき、「前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。X^(2)がCOOのとき、R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)」及び、
「前記ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%である」と限定し、
「(A)成分/(B)成分で表される質量比」について、その数値範囲を、本件明細書の発明の詳細な説明の【0058】の記載に基づき、「1?25」から「10?25」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2、3、4、6について
訂正事項2、3、4、6は、いずれも、請求項の削除を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2、3、4、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「界面活性剤の合計含有量」の数値範囲を、本件明細書の発明の詳細な説明の【0074】の記載に基づき、「1?80質量%」から「20?80質量%」に減縮するとともに、訂正事項2?4による請求項2?4の削除にともなって、引用する請求項を「1?4」から「1」に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

エ 訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の「液体洗浄剤」について、「ヤシ脂肪酸塩」以外の脂肪酸又はその塩を含有することが排除されていなかったものを、「脂肪酸又はその塩として、ヤシ脂肪酸塩のみを含み」と訂正することにより、「液体洗浄剤」が含有している脂肪酸又はその塩として含み得る物質を「ヤシ脂肪酸塩」に限定するとともに、「ヤシ脂肪酸塩」の含有量について、本件明細書の発明の詳細な説明の【0012】の記載に基づき、「ヤシ脂肪酸塩の含有量が(A)成分の総質量に対し、0?30質量%である」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

オ 訂正事項8?13について
訂正事項8は、請求項8が引用している請求項1?7について、訂正事項2?4、6で請求項2?4、6が削除されることにともない、請求項2?4、6を削除するものである。また、訂正事項9?13も、訂正事項8と同様に、それぞれが引用している請求項について、訂正事項2?4、6による請求項2?4、6の削除にともない、請求項2?4、6を削除するものである。
したがって、訂正事項8?13は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8?13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

(3) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?13について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明(以下、項番にしたがって「本件訂正発明1」などといい、まとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり、
前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。X^(2)がCOOのとき、R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)
前記(D)成分:ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%であり、
(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項2】
削除
【請求項3】
削除
【請求項4】
削除
【請求項5】
界面活性剤の合計含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して20?80質量%である、請求項1に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項6】
削除
【請求項7】
脂肪酸又はその塩として、ヤシ脂肪酸塩のみを含み、ヤシ脂肪酸塩の含有量が(A)成分の総質量に対し、0?30質量%である、請求項1または5に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項8】
前記(B)成分が、下記一般式(25)で表されるカチオン界面活性剤である、請求項1、5、7のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【化1】


式(25)中、R^(20)?R^(23)は、それぞれ独立に2つ又は3つが炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のヒドロキシアルキル基又は-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-H[mは、オキシエチレン基の平均繰り返し数であり、1?25の数]であり、それ以外が炭素数6?28の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であり、Z^(a-)は対イオンであり、aは対イオンの価数を表す。
【請求項9】
前記(C)成分が、下記一般式(C1)又は下記一般式(C2)で表される高分子化合物を含む、請求項1、5、7、8のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【化2】


式(C1)、(C2)中、R^(30)及びR^(40)は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R^(34)及びR^(37)は、それぞれメチル基又は水素原子であり、R^(35)、R^(36)、R^(38)及びR^(39)は、それぞれ独立して、炭素数2?4のアルキレン基であり、s1及びs2は、それぞれ0?10であり、t1、t2、u1及びu2は、それぞれ独立して1?100である。
【請求項10】
(A)成分/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?9のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項11】
((A)成分+(B)成分)/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?10のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項12】
25℃での粘度が、10?300mPa・sである、請求項1、5、7?11のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項13】
塗布洗浄用である、請求項1、5、7?12のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が令和2年9月16日付けで通知した取消理由は、以下のとおりであり、刊行物として以下の刊行物1?3を引用するものである。

<取消理由1>
特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<刊行物>
刊行物1:国際公開第2014/23427号(特許異議申立人森田弘潤が提出した甲第2号証。以下、「刊行物1」という。)
刊行物2:特開昭63-92696号公報(以下、「刊行物2)という。)
刊行物3:特開昭63-253053号公報(以下、「刊行物3)という。)

第5 当審の判断
1 刊行物1を主たる引用刊行物とする進歩性について
(1) 刊行物1に記載されている事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
なお、刊行物1はドイツ語で記載されているので、その翻訳文として、特表2015-531798号公報(特許異議申立人森田弘潤が提出した甲第2の2号証。)を採用し、特表2015-531798号公報の記載事項及び記載箇所(段落番号等)をもって、刊行物1の記載事項とする。

「【請求項1】
a)一種または二種以上のアニオン性界面活性剤、及びb)一種または二種以上のノニオン性界面活性剤、を含む液状組成物であって、成分a)及びb)の界面活性剤を、液状組成物の総質量を基準にして>25質量%の総濃度で含みかつアルカノールアミン及びその塩を含まない、前記液状組成物。
・・
【請求項6】
C_(10)?C_(20)アルコールと、アルコール1モルあたり2?18モルのエチレンオキシドとの縮合生成物から選択される成分b)の一種または二種以上のノニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1?5のいずれか一つに記載の液状組成物。
【請求項7】
成分a)及びb)の界面活性剤を、液状組成物の総質量を基準にして30?50質量%の総濃度で含むことを特徴とする、請求項1?6のいずれか一つに記載の液状組成物。
・・
【請求項9】
成分a)のアニオン性界面活性剤と成分b)のノニオン性界面活性剤が、液状組成物中に、10:1?1:10の成分a):成分b)の質量比で存在することを特徴とする、請求項1?8のいずれか一つに記載の液状組成物。
・・
【請求項11】
一種または二種以上のソイルリリースポリマーを含むことを特徴とする、請求項1?10のいずれか一つに記載の液状組成物。」
「【0001】
本発明は、アニオン性及びノニオン性界面活性剤を高総濃度で含むが、アルカノールアミン及びその塩を含まない液状組成物に関する。この液状組成物は、繊維材料の洗濯及び洗浄に使用でき、そして漂白系との組み合わせで有利な漂白性能を示す。」
「【0042】
上記のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の他に、他の構成分として、更に両性及びカチオン性界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、ビルダー、コビルダー、洗浄アルカリ(Waschalkalien)、酵素、金属イオン封鎖剤、ソイルリリースポリマー、黒ずみ防止剤、色移り防止剤、染料定着剤、錯体形成剤、蛍光増白剤、柔軟化成分、染料、フレグランス、乳化剤、ハイドロトロープ剤、有機溶剤、並びに水が、本発明による組成物中に含まれ得る。」
「【0048】
適当な界面活性剤は、R^(1)N(CH_(3))_(3)^(p)X^(o)、・・・
【0049】
他の適当なカチオン性界面活性剤は、次式(6)の第四アルキルヒドロキシアルキルアンモニウム塩である。
【0050】
【化6】


【0051】
Xは任意のアニオンであることができ、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、リン酸一水素または二水素イオン、ピロリン酸イオン、ポリリン酸イオン、メタリン酸イオン、硝酸イオン、メチル硫酸イオン、ホスホン酸イオン、メチルホスホン酸イオン・・または-メトスルフェートである。
【0053】
本発明による組成物が一種または二種以上のカチオン性界面活性剤を含む場合には、これらは、それぞれ本発明による組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.1?15質量%の量、特に好ましくは0.5?7質量%の量で該組成物中に含まれる。
【0054】
本発明による組成物が一種または二種以上のカチオン性界面活性剤を含む場合には、一種または二種以上のカチオン性界面活性剤と一種または二種以上のアニオン性界面活性剤との質量比は好ましくは1:10?1:5である。」
「【0085】
ソイルリリースポリマー(SRP)には、一種または二種以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸及び/またはそれの塩、一種または二種以上のスルホ基含有ジカルボン酸、式R^(1)O(CHR^(2)CHR^(3)O)_(n)H(式中、R^(1)は、H、炭素原子数1?22の線状または分枝状アルキルまたはアルケニル基、好ましくはC_(1)?C_(4)アルキル、特に好ましくはメチルを表し、R^(2)及びR^(3)は、互いに独立して、水素を表すかまたは炭素原子数1?4のアルキル基を表し、好ましくは水素及び/またはメチルを表し、そしてnは1?100の数である)の一種または二種以上の化合物、式H-(OCH_(2)CH_(2))_(m)-SO_(3)X(式中、mは1?100の数を表し、そしてXは水素またはアルカリ金属イオンを表す)の一種または二種以上の化合物、及び一種または二種以上の架橋性多官能性化合物から選択される成分を重合して得ることができるポリエステルが適している。
【0086】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、本発明による組成物は一種または二種以上のソイルリリースポリマーを含む。本発明による組成物が一種または二種以上のソイルリリースポリマーを含む場合には、これらは、それぞれ本発明による組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.1?10質量%の量で、特に好ましくは0.2?3質量%の量で該組成物に含まれる。」
「【実施例】
【0159】
洗濯試験を以下の調合物を用いて行った。
・・
【0161】
製造手順
I:加温してAをB中に溶解する。
II:I中に成分Cを順次添加、溶解する。
III:II中に成分Dを順次添加する。
IV:IIIを室温に冷却し、そしてEを添加する。
【0162】



(2) 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、請求項1、6、7、9、11の記載に基づき以下の発明(以下、「刊1発明」という。)が記載されていると認められる。

「a)一種または二種以上のアニオン性界面活性剤、及び
b)一種または二種以上のノニオン性界面活性剤を含む液状組成物であって、
成分a)及びb)の界面活性剤を、液状組成物の総質量を基準にして30?50質量%の総濃度で含み、かつアルカノールアミン及びその塩を含まず、
成分b)のノニオン性界面活性剤が、C_(10)?C_(20)アルコールと、アルコール1モルあたり2?18モルのエチレンオキシドとの縮合生成物から選択される一種または二種以上のノニオン性界面活性剤を含み、成分a)のアニオン性界面活性剤と成分b)のノニオン性界面活性剤が、液状組成物中に、10:1?1:10の成分a):成分b)の質量比で存在し、
一種または二種以上のソイルリリースポリマーを含む
前記液状組成物。」

(3) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と刊1発明の対比
本件訂正発明1と刊1発明を対比すると、刊1発明の「一種または二種以上のアニオン性界面活性剤」は、本件訂正発明1の「(A)成分:アニオン界面活性剤」に相当する。
刊1発明の「液状組成物」は、繊維材料の洗濯及び洗浄に使用する組成物である(刊行物1の【0001】)から、本件訂正発明1の「繊維製品用の液体洗浄剤」に相当する。
刊1発明の「ソイルリリースポリマー」は、刊行物1の【0085】に「ソイルリリースポリマー(SRP)には、一種または二種以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸及び/またはそれの塩、・・式R^(1)O(CHR^(2)CHR^(3)O)_(n)H(式中、・・nは1?100の数である)の一種または二種以上の化合物、・・から選択される成分を重合して得ることができるポリエステル」であると記載されているから、本件訂正発明1の「(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマー」を、その選択肢として包含している。
また、実施例(【0162】の【表2】の調合物B)で使用されている「Texcare(登録商標)SRN170」は、本件訂正発明1の実施例の(C)成分の具体例(【0101】を参照。「C-1」が「Texcare(登録商標)SRN170」であると記載されている。)と一致している。
したがって、刊1発明の「ソイルリリースポリマー」は、本件訂正発明1の「(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマー」に相当する。
刊1発明の「一種または二種以上のノニオン性界面活性剤」、及び、「ノニオン性界面活性剤が、C_(10)?C_(20)アルコールと、アルコール1モルあたり2?18モルのエチレンオキシドとの縮合生成物から選択される一種または二種以上のノニオン性界面活性剤」は、一般式(d1)において、R^(41)が炭素数10?20の炭化水素基であり、X^(2)がOであり、R^(42)がH(水素)であり、pが2?18の数であり、qが0である場合の化合物に対応する(R^(41)、X^(2)、R^(42)、p及びqが重複一致する)ので、本件訂正発明1の「(D)成分:ノニオン界面活性剤」、及び、「前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、 R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と刊1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)
を含有する、繊維製品用の液体洗浄剤。」

<相違点1>
本件訂正発明1は、「(B)成分:カチオン界面活性剤」を含むことが特定されているのに対し、刊1発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点2>
本件訂正発明1は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25」と特定されているのに対し、刊1発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点3>
本件訂正発明1は、「(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2」と特定されているのに対し、刊1発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点4>
本件訂正発明1は、「(A)成分」が、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり」と特定されているのに対し、刊1発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点5>
本件訂正発明1は、「(D)成分:ノニオン界面活性剤」の含有量が、「液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%であり」と特定されているのに対し、刊1発明は、「成分a)及びb)の界面活性剤を、液状組成物の総質量を基準にして30?50質量%の総濃度で含み、成分a)のアニオン性界面活性剤と成分b)のノニオン性界面活性剤が、液状組成物中に、10:1?1:10の成分a):成分b)の質量比で存在」すると特定されていることから、刊1発明の「一種または二種以上のノニオン性界面活性剤」の含有量は、刊1発明の「液状組成物」の総質量に対し、2.7?45.5質量%である点

イ 検討
(ア) 相違点1?3について
相違点2は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比」に関するものであり、相違点3は、「(B)成分/(C)成分で表される質量比」に関するものであり、いずれも「(B)成分」を含有することを前提とするものであるから、相違点1?3についてまとめて検討する。
刊行物1には、他の構成成分が含まれ得ることが記載(【0042】)されており、他の構成成分として、漂白剤などとともにカチオン性界面活性剤も例示されおり、カチオン性界面活性剤として使用しうる化合物も具体的に例示されており【0048】?【0052】)、更に、カチオン性界面活性剤の好ましい含有量について、「組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.1?15質量%の量」(【0053】)であると記載されている。
しかし、これらの記載に加えて、「一種または二種以上のカチオン性界面活性剤と一種または二種以上のアニオン性界面活性剤との質量比は好ましくは1:10?1:5」(【0054】)であると記載されているから、この記載に接した当業者は、当該質量比を、1:10?1:5、すなわち、本件訂正発明1の「(A)成分/(B)成分で表される質量比」に換算すると5?10の範囲にすることを強く動機づけられると認められる。また、あえて、好ましいとされている範囲を避けて「10?25」(本件訂正発明1)にすることを動機づけられることはないと認められる。
また、刊1発明の「ソイルリリースポリマー」の含有量について、刊行物1には、「組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.1?10質量%の量」(【0086】)と記載されているが、その含有量とカチオン性界面活性剤の含有量とを関連づけて説明している記載はないから、刊行物1に接した当業者が、そもそもこれらの含有量の比に好ましい範囲が存在する(最適化すべきものである)と理解して、その値を最適化することを動機づけられるとはいえないし、仮に最適化することを着想し得たとしても、どのような値(数値範囲)が好ましいのかは不明であるとしかいいようがない。
そうすると、仮に、刊1発明において多数例示されている他の構成成分の中から、特にカチオン性界面活性剤に着目してこれを含有するものとすることを着想し得たとしても、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との質量比を10?25に特定すると同時に、カチオン性界面活性剤とソイルリリースポリマーとの質量比を0.1?2に特定することを容易になし得たとはいえない。
したがって、当業者といえども、刊1発明において、相違点1?3を充足するものとすることを容易になし得たとは認められない。

(イ) 効果について
本件訂正発明1について発明の詳細な説明の記載(特に実施例の記載)によれば、本件訂正発明1は、相違点1?5に係る構成を全て備えることにより、特に「化粧品に由来する油性の汚れ」の洗浄において優れた効果を奏するものであることが理解できる。

(ウ) 小括
以上のとおりであるから、さらに相違点4、5について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件訂正発明2?13について
本件訂正発明2?13は、本件訂正発明1を引用しさらに限定したものに該当する。
したがって、本件訂正発明2?13も、本件訂正発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

2 刊行物2を主たる引用刊行物とする進歩性について
(1)刊行物2に記載されている事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
1.(a) エチレンオキシテレフタレート(EO-T)単位およびポリエチレンオキシテレフタレート(PEO-T)単位(EO-T/PEO-Tのモル比約0.5?約1.5)を含む汚れ剥離重合体〔PEO-T単位は分子量約300?約3000を有するポリエチレンオキシド(PEO)結合単位を含有し、重合体の分子量は約900?約9,000の範囲内であり〕約0.1?約25重量%、および
(b)水溶性第四級アンモニウム界面活性剤約0.1%?約20%を含むことを特徴とする洗濯洗剤または洗剤添加剤組成物。
・・
5. 水溶性第四級アンモニウム界面活性剤が、一般式〔R^(2)(OR^(3))_(y)〕〔R^(4)(OR^(3))_(y)〕_(2)R^(5)N^(+)X^(-)〔式中、R^(2)はアルキル鎖中に約8?約18個の炭素原子、好ましくは10?14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルキルベンジル基であり;各R^(3)は-CH_(2)CH_(2)-、
-CH_(2)CH(CH_(3))-、
-CH_(2)CH_(2)(CH_(2)OH)-、
-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-およびそれらの混合物から選ばれ;各R^(4)はC_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ヒドロキシアルキル、ベンジル、2個のR^(4)基を結合することによって形成された環構造、-CH_(2)CHOHCHOHCOR^(6)CHOHCH_(2)OH(式中、R^(6)はヘキソースまたは分子量約1000未満を有するヘキソース重合体)、および水素(yが0ではない時)から選ばれ;R^(5)はR^(4)と同じであるかアルキル鎖であり、そしてR^(2)+R^(5)の炭素原子の総数は約18以下であり;各yは0?約10であり、y値の和は0?約15であり;Xは相容性陰イオンである〕
を有する、特許請求の範囲第1項?第4項のいずれか一項に記載の組成物。
6. 追加的に陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤約1?約75重量%を含む、特許請求の範囲第1項?第5項のいずれか一項にに記載の組成物。」(1頁左下欄6行?2頁右上欄3行)

「本発明の組成物は、通常の主要洗浄洗濯洗剤組成物の形態または別個の主要洗浄洗剤組成物と併用する洗濯添加剤組成物の形態を取ることができる。しかしながら、いずれの場合にも、好ましい組成物は、通常、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤約1?約40重量%、より好ましくは約5?約25重量%を含有するであろう。また、組成物は、他の通常の洗濯洗剤成分、例えば洗浄力ビルダー、漂白剤などによって補完できる。
好適な合成陰イオン界面活性剤は、C_(8)?C_(22)アルキルベンゼンスルホン酸、C_(8)?C_(22)アルキル硫酸・・の水溶性塩である。」(4頁右下欄9行?5頁左上欄12行)

「本発明で好適な非イオン界面活性剤は、平均親水性親油性バランス(HLB)約8?17、好ましくは約9.5?13.5、より好ましくは約10?約12.5を有する界面活性剤を与えるエチレンオキシドと疎水部分との縮合物である。
好適な非イオン界面活性剤の例としては、直鎖または分枝鎖配置のいずれかに8?24個の炭素原子を有する第一級または第二級脂肪族アルコールとアルコール1モル当たり2?約40モル、好ましくは2?約9モルのエチレンオキシドとの縮合物が挙げられる。・・タローアルコールとアルコール1モルあたり平均7?12モルのエチレンオキシドとの縮合物(タロー部分は本質上16?22個の炭素原子を含む)が挙げられる。」(5頁右下欄15行?6頁右上欄17行)

「本組成物の他の任意成分としては、抑泡剤・・布帛コンディショニング剤などが挙げられる。・・好適な布帛コンディショニング剤としては、英国特許第1400898号明細書に開示のようなスメクタイト型粘土およびジC_(12)?C_(24)アルキルまたはアルケニルアミンおよびアンモニウム塩が挙げられる。」(7頁右下欄20行?8頁右上欄20行)

「本発明の洗濯洗剤および添加剤組成物は、通常の粒状、粉末状または液体の形態に処方し、詰め、小売することができる」(8頁左下欄19行?右上欄1行)

「例において、使用した略称は、以下の呼称を有する。
LAS:線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート
TAS:タローアルキルサルフェート
C_(14/15)AS:C_(14)?C_(15)アルキル硫酸ナトリウム
TAE_(n):アルコール1モル当たりnモルのエチレンオキシドでエトキシ化された硬化タローアルコール
C_(14)TMAB:C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムブロミド
・・・
重合体:テレフタレート汚れ剥離重合体:EO-T/PEO-T-0.6:分子量3,800」(10頁右上欄5行?左下欄13行)



」(12頁左上欄)

(2) 刊行物2に記載された発明
刊行物2には、例7の組成物の記載に基づき以下の発明(以下、「刊2発明」という。)が記載されていると認められる。

「LASを5重量部、C_(14/15)ASを5重量部、TAE_(25)を0.5重量部、C_(14)TMABを2重量部、重合体2重量部を含み、全体で100重量部である、洗濯製品の組成物。」

(3) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と刊2発明の対比
本件訂正発明1と刊2発明を対比すると、刊2発明の「LAS」は「線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート」であるから、刊2発明の「LAS」は、本件訂正発明1の「(A)成分:アニオン界面活性剤」、及び、「前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり」に相当する。
刊2発明の「C_(14)TMAB」は「C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムブロミド」であるから、本件訂正発明1の「(B)成分:カチオン界面活性剤」に相当する。
刊2発明の「重合体」は、「テレフタレート汚れ剥離重合体:EO-T/PEO-T-0.6:分子量3,800」であるから、本件訂正発明1の「(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマー」に相当する。
刊2発明の「TAE_(25)」は、アルコール1モル当たり25モルのエチレンオキシドでエトキシ化された硬化タローアルコールであり、化学構造の詳細は不明であるが、タローは牛脂(主に炭素数12?20の脂肪酸を含む。)であること、刊行物2の6頁右上欄16?17行に「タロー部分は本質上16?22個の炭素原子を含む」と記載されていることから、本件訂正発明1の「一般式(d1)」において、R^(41)が炭素数16?22の炭化水素基であり、X^(2)がOであり、R^(42)が水素であり、pが25であり、qが0である場合の化合物に対応する物質である。したがって、刊2発明の「TAE_(25)」は、本件訂正発明1の「一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤」には該当しないが、「(D)成分:ノニオン界面活性剤」に相当する。
刊2発明の「C_(14)TMAB」の重量は2重量部であり、「重合体」の重量は2重量部であるから、その比は1と計算できる。したがって、刊2発明は、本件訂正発明1の「(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2である」を充足する。

<一致点>
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、洗浄剤。」

<相違点6>
本件訂正発明1は、「繊維製品用の液体洗浄剤」であることが特定されているのに対し、刊2発明は、「洗濯製品の組成物」である点
<相違点7>
本件訂正発明1は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25であり」と特定されているのに対し、刊2発明は、「LAS」の重量が5重量部であり、「C_(14)TMAB」の重量が2重量部であることから、その比が2.5である点
<相違点8>
本件訂正発明1は、「前記(D)成分」について「前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、 R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)」と特定されているのに対し、刊2発明の「TAE_(25)」は、本件訂正発明1の一般式(d1)において、pが25である場合に該当する化合物である点
<相違点9>
本件訂正発明1は、「前記(D)成分」について「ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量12?70質量%であり」と特定されているのに対し、刊2発明は、「TAE_(25)」の含有量が0.5質量%(=0.5/100*100)である点

イ 検討
(ア) 相違点7について
事案に鑑みまず相違点7について検討する。
刊2発明の「C_(14)TMAB」(C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムブロミド)について、刊行物2の特許請求の範囲には「水溶性第四級アンモニウム界面活性剤が、一般式〔R^(2)(OR^(3))_(y)〕〔R^(4)(OR^(3))_(y)〕_(2)R^(5)N^(+)X^(-)〔式中、R^(2)は・・Xは相容性陰イオンである〕を有する」及び「(b)水溶性第四級アンモニウム界面活性剤約0.1%?約20%を含む」(当審注:直前に「重量%」との記載があることから、「%」は「重量%」の誤記であると認める。)と記載されている。
また、刊2発明の「LAS」(線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート)、及び、「C_(14/15)AS」(C_(14)?C_(15)アルキル硫酸ナトリウム)について、刊行物2の4?5頁には「好適な合成陰イオン界面活性剤は、C_(8)?C_(22)アルキルベンゼンスルホン酸、C_(8)?C_(22)アルキル硫酸・・の水溶性塩である。」と記載されており、また、刊2発明の「TAE_(25)」(アルコール1モル当たり25モルのエチレンオキシドでエトキシ化された硬化タローアルコール)について、刊行物2の5?6頁には「好適な非イオン界面活性剤の例としては、直鎖または分枝鎖配置のいずれかに8?24個の炭素原子を有する第一級または第二級脂肪族アルコールとアルコール1モル当たり2?約40モル、好ましくは2?約9モルのエチレンオキシドとの縮合物が挙げられる。・・タローアルコールとアルコール1モルあたり平均7?12モルのエチレンオキシドとの縮合物(タロー部分は本質上16?22個の炭素原子を含む)が挙げられる。」と記載されており、さらに、刊行物2の特許請求の範囲には「追加的に陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤約1?約75重量%を含む」と記載されている。
以上によれば、刊2発明の「C_(14)TMAB」の含有量が「約0.1%?約20%」という範囲内から選ばれたものであることや、刊2発明の「LAS」、「C_(14/15)AS」、及び、「TAE_(25)」の含有量について、これらが「陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤」に該当する成分であることから、これら3つの成分の合計の含有量が「約1?約75重量%」という範囲内から選ばれたものであることが理解できる。
一方、刊行物2には、刊2発明に含まれている「陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤」のうち特に「LAS」に注目してその含有量を特定の範囲に調整することや、刊2発明の「C_(14)TMAB」、及び、「LAS」の含有量の比を特定の範囲に調整することについては記載も示唆もない。

そうすると、当業者といえども、刊2発明の「C_(14)TMAB」、及び、又は、「LAS」の含有量に特に着目して、その比が10?25になるように変更することを容易になし得たとは認められない。

(イ) 効果について
本件訂正発明1について発明の詳細な説明の記載(特に実施例の記載)によれば、本件訂正発明1は、相違点6?9に係る構成を全て備えることにより、特に「化粧品に由来する油性の汚れ」の洗浄において優れた効果を奏するものであることが理解できる。

(ウ) 小括
以上のとおりであるから、さらに相違点6、8、9について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件訂正発明2?13について
本件訂正発明2?13は、本件訂正発明1引用しさらに限定したものに該当する。
したがって、本件訂正発明2?13も、本件訂正発明1と同様の理由により、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 刊行物3を主たる引用刊行物とする進歩性について
(1) 刊行物3に記載されている事項
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

「2.特許請求の範囲
1. 線状テレフタレートエステル骨核に基づき、一般式Iを有する共重合体。
Z-〔(T-PO)_(u)(T-PEG)_(v)〕-T-Z_(1)
ここでZとZ_(1)は次の実験式IIを持つ鎖末端部分であり
(PEG_(1)-X)_(a)(PO-H)_(b)
(PEG-H)_(c)
ここでPEGとPEG_(1)は同一かまたは異なったポリ(オキシエチレン)オキシ部分で、それぞれが約300乃至6000の範囲の分子量を持ち、Xはアルキル部分に1乃至4の炭素原子を含むC_(1)乃至C_(4)のアルキルあるいはアシルであり、Tはテレフタロイル部分であり、POはオキシプロピレンオキシであり、uは約0.5乃至約50であり、vは約0.05乃至約20であり、aは約0.2乃至約0.95であり、bは0乃至約0.8であり、cは0乃至約0.8であり、b+cは少なくとも約0.05で、u、v、a、bおよびcは相当する単位の平均数を表わし、T-POとT-PEG単位はテレフタレートエステル骨核に沿いランダムに分布している。
・・
6. 下記を含む洗剤組成物。
(a)約1乃至約75重量%のアニオン、非イオン、両性、双性またはカチオン界面活性剤またはそれらの混合物、および
(b)汚れ放出剤として特許請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載の少なくとも0.1重量%の共重合体。」(1頁左下欄5行?2頁19行)

「この共重合体は汚れ放出性を付与するのに特に洗剤組成物中で有用であり、0乃至2%、好ましくは0乃至1/2%のりんを含む低りん酸塩洗剤組成物中では特に有効である。本発明の洗剤組成物は通常の主洗濯洗剤組成物、あるいは別の主洗濯洗剤組成物と組合わせて用いるための洗濯付加組成物の型式で用いられる。しかしながら、いずれの例においても、好ましい組成物は普通約1乃至約75、更に好ましくは約5乃至25重量%のアニオン、非イオン、カチオン、両性及び双性イオン界面活性剤又はそれらの混合物を含む。組成物は、また、その他通常の洗濯洗剤成分、例えば洗剤ビルダー、漂白剤その他によって補足される。」(5頁右下欄1?13行)

「適当な合成アニオン、界面活性剤はC_(8)乃至C_(22)アルキルベンゼンスルホネート、C_(8)乃至C_(22)アルキルサルフェート・・特に貴重なものはアルキル基の平均が約11.8炭素原子で、C_(11.8)LASと略記される線状直鎖アルキルベンゼンスルホネート及びC_(12)-C_(15)メチル分枝アルキルサルフェートである。」(5頁右下欄14行?6頁右上欄17行)

「ここで好適な非イオン界面活性剤は、約8乃至17、好ましくは約9.5乃至13.5、更に好ましくは約10乃至約12.5の範囲の平均の親水性、親油性バランス(HLB)を持つ界面活性剤を与える疎水性部分とエチレンオキシドの縮合物である。
好適な非イオン界面活性剤の例には、アルコールのモル当り2乃至40、好ましくは2乃至9モルのエチレンオキシドと、直鎖状または分岐鎖状構造中に8乃至24の炭素原子を有する第一級または第二級脂肪族アルコールとの縮合物が含まれる。・・ならびにアルコールのモル当り平均7乃至12モルのエチレンオキシドとタローアルコールとの縮合生成物でタロ一部分が本質的に16乃至22の炭素原子を含むものが包含される。」(6頁右下欄14行?7頁右上欄13行)

「本発明の組成物は好ましくは約0.1%乃至約20%、更に好ましくは約0.5%乃至約15%、特別には約1%乃至約5%の水溶性第4アンモニウム界面活性剤をも含む。ここにおける好ましい使用は次の一般式を持つ第4アンモニウム界面活性剤である。
(R^(2)(OR)^(3)_(y))(R^(4)(OR)^(3)_(y))_(2)R^(5)N^(+)X^(-)
ここで・・Xは混ざり合えるアニオンならなんでもよい。上記の好ましいものはアルキル第4アンモニウム界面活性剤・・
他の有用なカチオン界面活性剤はUS-A-4,259,217号に開示されている。」(7頁左下欄16行?8頁右上欄1行)

「本発明の洗濯洗剤と付加組成物は通常の粒状、粉末状もしくは液状に処方され包装され小分けされるか、組成物が水不溶性基材か、単一か多区画の小袋(sachet)と水放出可能に組合わされた組成物を構成する共重合体の部分として処方される。」(10頁右上欄19行?左下欄4行)

「実施例において、使用される略号は、次の意味を持つ。
LAS:ナリトウム線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート
TAS:ナトリウムタローアルキルサルフエート
C_(14/15)AS:ナトリウムC_(14)乃至C_(15)アルキルサルフエート
TAE_(n):アルコールのモル当たりnモルのエチレンオキシドでエトキシル化された硬化タローアルコール・・
C_(14)TMAB:C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド・・
ポリマー:式Iのテレフタレート汚れ放出ポリマー、u=3.9、v=0.3、a=0.45、b=0.55、c=0、X=メチル、PEG=PEG_(1)=PEG_(43)ポリマー1:式1のテレフタレート汚れ放出ポリマー、u=2.8、v=0.4、a=0.75、b=0.25、c=0」(13頁左上欄19行?左下欄20行)



」(15頁右上欄)

(2) 刊行物3に記載された発明
刊行物3には、実施例7の記載に基づき以下の発明(以下、「刊3発明」という。)が記載されていると認められる。

「LASを5重量部、C_(14/15)ASを5重量部、TAE_(25)を0.5重量部、C_(14)TMABを2重量部、ポリマー2重量部を含み、全体で100重量部である、洗濯製品の組成物。」

(3) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と刊3発明の対比
本件訂正発明1と刊3発明を対比すると、刊3発明の「LAS」は「ナトリウム線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート」であるから、刊3発明の「LAS」は、本件訂正発明1の「(A)成分:アニオン界面活性剤」、及び、「前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり」に相当する。
刊3発明の「C_(14)TMAB」は「C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムプロマイド」であるから、本件訂正発明1の「(B)成分:カチオン界面活性剤」に相当する。
刊3発明の「ポリマー」は、「式Iのテレフタレート汚れ放出ポリマー、u=3.9、v=0.3、a=0.45、b=0.55、c=0、X=メチル、PEG=PEG_(1)=PEG_(43)」であるから、本件訂正発明1の「(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマー」に相当する。
刊3発明の「TAE_(25)」は、アルコールのモル当たりnモルのエチレンオキシドでエトキシル化された硬化タローアルコールであり、化学構造の詳細は不明であるが、タローは牛脂(主に炭素数12?20の脂肪酸を含む。)であること、刊行物3の7頁右上欄12?13行に「タロ一部分が本質的に16乃至22の炭素原子を含む」と記載されていることから、本件訂正発明1の「一般式(d1)」において、R^(41)が炭素数16?22の炭化水素基であり、X^(2)がOであり、R^(42)が水素であり、pが25であり、qが0である場合の化合物に対応する物質である。したがって、刊3発明の「TAE_(25)」は、本件訂正発明1の「(D)成分:ノニオン界面活性剤」に相当する。
刊3発明の「C_(14)TMAB」の重量は2重量部であり、「ポリマー」の重量は2重量部であるから、その比は1と計算できる。したがって、刊3発明は、本件訂正発明1の「(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2である」を充足する。

そうすると、本件訂正発明1と刊3発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、洗浄剤。」

<相違点10>
本件訂正発明1は、「繊維製品用の液体洗浄剤」であることが特定されているのに対し、刊3発明は、「洗濯製品の組成物」である点
<相違点11>
本件訂正発明1は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25であり」と特定されているのに対し、刊3発明は、「LAS」の重量が5重量部であり、「C_(14)TMAB」の重量が2重量部であることから、その比が2.5である点
<相違点12>
本件訂正発明1は、「前記(D)成分」について「前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、 R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)」と特定されているのに対し、刊3発明の「TAE_(25)」は、本件訂正発明1の一般式(d1)において、pが25である場合に該当する化合物である点
<相違点13>
本件訂正発明1は、「前記(D)成分」について「ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量12?70質量%であり」と特定されているのに対し、刊3発明は、「TAE_(25)」の含有量が0.5質量%(=0.5/100*100)である点

イ 検討
(ア) 相違点11について
事案に鑑みまず相違点11について検討する。
刊3発明の「C_(14)TMAB」(C_(14)アルキルトリメチルアンモニウムブロミド)について、刊行物3の7?8頁には「本発明の組成物は好ましくは約0.1%乃至約20%、更に好ましくは約0.5%乃至約15%、特別には約1%乃至約5%の水溶性第4アンモニウム界面活性剤をも含む。ここにおける好ましい使用は次の一般式を持つ第4アンモニウム界面活性剤である。(R^(2)(OR)^(3)_(y))(R^(4)(OR)^(3)_(y))_(2)R^(5)N^(+)X^(-)・・他の有用なカチオン界面活性剤はUS-A-4,259,217号に開示されている。」と記載されている。
また、刊3発明の「LAS」(ナリトウム線状C_(12)アルキルベンゼンスルホネート)、及び、「C_(14/15)AS」(ナトリウムC_(14)乃至C_(15)アルキルサルフエート)について、刊行物3の5?6頁には「適当な合成アニオン、界面活性剤はC_(8)乃至C_(22)アルキルベンゼンスルホネート、C_(8)乃至C_(22)アルキルサルフェート」と記載されており、また、刊3発明の「TAE_(25)」(アルコールのモル当たりnモルのエチレンオキシドでエトキシル化された硬化タローアルコール)について、刊行物3の6?7頁には「ここで好適な非イオン界面活性剤は、約8乃至17、好ましくは約9.5乃至13.5、更に好ましくは約10乃至約12.5の範囲の平均の親水性、親油性バランス(HLB)を持つ界面活性剤を与える疎水性部分とエチレンオキシドの縮合物である。好適な非イオン界面活性剤の例には、アルコールのモル当り2乃至40、好ましくは2乃至9モルのエチレンオキシドと、直鎖状または分岐鎖状構造中に8乃至24の炭素原子を有する第一級または第二級脂肪族アルコールとの縮合物が含まれる。・・ならびにアルコールのモル当り平均7乃至12モルのエチレンオキシドとタローアルコールとの縮合生成物でタロ一部分が本質的に16乃至22の炭素原子を含むものが包含される。」と記載されており、さらに、刊行物3の5頁には「本発明の洗剤組成物は通常の主洗濯洗剤組成物、あるいは別の主洗濯洗剤組成物と組合わせて用いるための洗濯付加組成物の型式で用いられる。しかしながら、いずれの例においても、好ましい組成物は普通約1乃至約75、更に好ましくは約5乃至25重量%のアニオン、非イオン、カチオン、両性及び双性イオン界面活性剤又はそれらの混合物を含む。」と記載されている。
以上によれば、刊3発明の「C_(14)TMAB」の含有量が「約0.1%?約20%」という範囲内から選ばれたものであることや、刊3発明の「C_(14)TMAB」、「LAS」、「C_(14/15)AS」、及び、「TAE_(25)」の含有量について、これらが「アニオン、非イオン、カチオン、両性及び双性イオン界面活性剤又はそれらの混合物」に該当する成分であることから、これら4つの成分の合計の含有量が「約1乃至約75」という範囲内から選ばれたものであることが理解できる。
一方、刊行物3には、刊3発明に含まれている「アニオン、非イオン、カチオン、両性及び双性イオン界面活性剤又はそれらの混合物」のうち特に「LAS」に注目してその含有量を特定の範囲に調整することや、刊3発明の「C_(14)TMAB」、及び、「LAS」の含有量の比を特定の範囲に調整することについては記載も示唆もない。

そうすると、当業者といえども、刊3発明の「C_(14)TMAB」、及び、又は、「LAS」の含有量に特に着目して、その比が10?25になるように変更することを容易になし得たとは認められない。

(イ) 効果について
本件訂正発明1について発明の詳細な説明の記載(特に実施例の記載)によれば、本件訂正発明1は、相違点10?13に係る構成を全て備えることにより、特に「化粧品に由来する油性の汚れ」の洗浄において優れた効果を奏するものであることが理解できる。

(ウ) 小括
以上のとおりであるから、さらに相違点10、12、13について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件訂正発明2?13について
本件訂正発明2?13は、本件訂正発明1引用しさらに限定したものに該当する。
したがって、本件訂正発明2?13も、本件訂正発明1と同様の理由により、刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が主張する申立理由2-2は、上記取消理由1において採用されているところ、当審が令和2年9月16日付けの取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、以下のとおりである。また、申立理由2-1は、刊行物として以下の刊行物4を引用するものである。

<申立理由2-1>
特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<申立理由1>
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

<刊行物>
刊行物4:国際公開第2014/109380号(特許異議申立人森田弘潤が提出した甲第1号証。以下、「刊行物4」という。)

1 申立理由2-1について
(1) 刊行物4に記載されている事項
「 (A)成分:ノニオン界面活性剤と、
(B)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:プロテアーゼと、
(D)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位と、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位とを有する水溶性ポリマーと、
(E)成分:α-ヒドロキシ-モノカルボン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有し、
全ての界面活性剤の含有量の合計が、液体洗浄剤の総質量に対して、45質量%以上であり、かつ、
前記(B)成分の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して、4質量%以上である、液体洗浄剤。」(請求の範囲 請求項1)
「[0063] (D)成分の具体例としては、商品名:TexCare SRN-100(クラリアントジャパン社製、質量平均分子量:2000?3000)、商品名:TexCare SRN-300(クラリアントジャパン社製、質量平均分子量:7000)、商品名:Repel-O-Tex Crystal(ローディア社製、質量平均分子量:未定)、商品名:Repel-O-Tex QCL(ローディア社製、質量平均分子量:未定)として市販されている成分が挙げられる。これらの中では、水への溶解性が高く、保存後の洗浄性能の低下が少ないTexCare SRN-100が好ましい。特に好ましくは、TexCare SRN-100の70質量%水溶液であり、商品名:TexCare SRN-170及びTexCare SRN-170C(クラリアントジャパン社製)として市販されている成分を用いることができる。」
「[0081]<水>
本発明の液体洗浄剤は、上記(A)?(E)成分と、必要に応じて(F)成分及び後述する任意成分とを、水に混合することにより調製される。
・・
[0082]<任意成分>
本発明の液体洗浄剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分以外の他の成分を含有してもよい。前記他の成分としては、液体洗浄剤に通常用いられる成分を配合することができ、例えば以下に示す成分が挙げられる。
・・
[0084](任意界面活性剤)
任意界面活性剤としては、(A)成分及び(B)成分を除く界面活性剤であればよく、例えばカチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。 任意界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して、10質量%以下が好ましい。
[0085] カチオン界面活性剤としては、例えば炭素数4?22のアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数4?22のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数10?22のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、炭素数6?22のアルキルピリジニウム塩の陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。
これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。また塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム等が挙げられる。」
「[0109] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0110]「使用原料」
(A)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・a-1:C_(11)H_(23)CO(OCH_(2)CH_(2))_(m)OCH_(3)とC_(13)H_(27)CO(OCH_(2)CH_(2))_(m)OCH_(3)との質量比で8/2の混合物、m=平均15、ナロー率33質量%、合成品。
・a-2:C_(11)H_(23)CO(OCH_(2)CH_(2))_(m)OCH_(3)、m=平均15、ナロー率33質量%、合成品。
・・
[0118] (B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・b-1:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ライオン社製、アルキル基の炭素数10?14、平均分子量322)。
・b-2:セカンダリーアルカンスルホン酸ナトリウム(クラリアントジャパン社製)。
・b-3:炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均2モル付加品の硫酸化物。
・b-4:α?スルホ脂肪酸メチルエステルのナトリウム塩(ライオン社製、C16/C18=8/2)
・・
[0122] (D)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・d-1:TexCare SRN-170C(商品名、クラリアントジャパン社製)(質量平均分子量:2000?3000、pH(20℃の5質量%水溶液):4、粘度(20℃):300mPa・s)。TexCare SRN-170Cは、商品名:TexCare SRN-100(クラリアントジャパン社製)(質量平均分子量:2000?3000)の70質量%水溶液である。TexCare SRN-100は、上記一般式(5)で示される化合物に相当する。
なお、d-1は、上記水溶性ポリマーの条件(10gのポリマーを40℃の条件で1000gの水に添加し、スターラー(太さ8mm、長さ50mm、1Lビーカー)で12時間攪拌(200rpm)したときに完全に溶解する)を満たす成分であった。」

(2) 刊行物4に記載された発明
刊行物4には、請求項1の記載に基づき以下の発明(以下、「刊4発明」という。)が記載されていると認められる。

「 (A)成分:ノニオン界面活性剤と、
(B)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:プロテアーゼと、
(D)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位と、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位とを有する水溶性ポリマーと、
(E)成分:α-ヒドロキシ-モノカルボン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有し、
全ての界面活性剤の含有量の合計が、液体洗浄剤の総質量に対して、45質量%以上であり、かつ、
前記(B)成分の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して、4質量%以上である、液体洗浄剤」

(3) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と刊4発明の対比
刊4発明の「(A)成分:ノニオン界面活性剤」について刊行物4には、刊4発明の実施例において「C_(11)H_(23)CO(OCH_(2)CH_(2))_(m)OCH_(3)とC_(13)H_(27)CO(OCH_(2)CH_(2))_(m)OCH_(3)との質量比で8/2の混合物、m=平均15、ナロー率33質量%」を使用したことが記載されており、この物質は、本件訂正発明1の一般式(d1)において、R^(41)は、炭素数11又は13の炭化水素基であり、X^(2)は、COOであり、pは、6?20の数であり、qは、0である場合の化合物に該当する。
したがって、刊4発明の「(A)成分:ノニオン界面活性剤」は、本件訂正発明1の「(D)成分:ノニオン界面活性剤」、及び、「前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)」に相当する。
刊4発明の「(B)成分:アニオン界面活性剤」について刊行物4には、刊4発明の実施例において「α?スルホ脂肪酸メチルエステルのナトリウム塩(ライオン社製、C16/C18=8/2)」を使用したことが記載されており、この物質は、本件訂正発明1の「α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩」に該当する。したがって、刊4発明の「(B)成分:アニオン界面活性剤」は、本件訂正発明1の「(A)成分:アニオン界面活性剤」、及び、「前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり」に相当する。
刊4発明の「(D)成分」について刊行物4には、刊4発明の実施例において「TexCare SRN-170C(商品名、クラリアントジャパン社製)(質量平均分子量:2000?3000」を使用したことが記載されており、この物質は、本件訂正発明1の実施例の(C)成分の具体例(【0101】を参照。「C-1」が「TexCare(登録商標)SRN170」であると記載されている。)と一致している。したがって、刊4発明の「(D)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位と、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位とを有する水溶性ポリマー」は、本件訂正発明1の「(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマー」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と刊4発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり、
前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であることを特徴とする、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)
繊維製品用の液体洗浄剤。」

<相違点14>
本件訂正発明1は、「(B)成分:カチオン界面活性剤」を含むことが特定されているのに対し、刊4発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点15>
本件訂正発明1は、「(D)成分:ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%」であることが特定されているのに対し、刊4発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点16>
本件訂正発明1は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25」と特定されているのに対し、刊4発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点17>
本件訂正発明1は、「(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2」と特定されているのに対し、刊4発明は、そのような特定を備えていない点

イ 検討
(ア) 相違点14、16について
刊行物4には、必要に応じて、液体洗浄剤に通常用いられる成分を配合することができることが記載されており、そのような成分の具体例の1つとして任意界面活性剤が記載されており、任意界面活性剤について、(A)成分及び(B)成分を除く界面活性剤、例えばカチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を、液体洗浄剤の総質量に対して、10質量%以下で用いることができることが記載されるとともに、カチオン界面活性剤の具体例として例えば炭素数4?22のアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数4?22のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数10?22のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、炭素数6?22のアルキルピリジニウム塩の陽イオン性界面活性剤等が例示されている。
しかしながら、「必要に応じて、液体洗浄剤に通常用いられる成分」として特にカチオン界面活性剤に注目することを動機づける記載ないし示唆はない。加えて、仮にカチオン界面活性剤を更に含有することを着想し得たとしても、その含有量をアニオン界面活性剤の含有量との質量比の観点で特定し、その値を10?25の範囲に限定することを動機づける記載ないし示唆はない。

したがって、当業者といえども、刊4発明において、相違点14及び16を備えるものとするような変更をすることを容易になし得たとは認められない。

(イ) 効果について
本件訂正発明1について発明の詳細な説明の記載(特に実施例の記載)によれば、本件訂正発明1は、相違点14?17に係る構成を全て備えることにより、特に「化粧品に由来する油性の汚れ」の洗浄において優れた効果を奏するものであることが理解できる。

(ウ) 小括
以上のとおりであるから、さらに相違点15、17について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件訂正発明2?13について
本件訂正発明2?13は、本件訂正発明1引用しさらに限定したものに該当する。
したがって、本件訂正発明2?13も、本件訂正発明1と同様の理由により、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

2 申立理由1について
(1) 申立理由1の整理
特許異議申立書(27?43頁)によれば、申立理由1は、要するに以下のア?ウのとおりのものであると整理できる。

本件発明は、「(A)成分/(B)成分で表される質量比が1?25」であること、及び、「(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2」であることを発明特定事項として備えるものであり、また、本件発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分は、いずれもその種類や含有割合が洗浄効果に影響を与えるものである。
しかしながら、比較例は、そのいずれについても、(A)成分、(B)成分、(C)成分の種類や含有割合などの条件を揃えた実施例がない。そうすると、どの実施例と比較例を対比しても、(A)成分、(B)成分、(C)成分の種類や含有割合などの条件が異なることによる影響を排除することができないため、上記発明特定事項を備えることによる効果を理解できない。(27?37、39?41頁)

本件発明は、「(A)成分」、「(B)成分」、「(C)成分」、「(D)成分」を含むことを発明特定事項として備えるものであるが、そのいずれの成分についても、ごく少数の種類や含有割合の実施例しか記載されていないので、各成分の種類や含有割合について、本件発明の全ての範囲において所定の効果を奏するとはいえない。(37?39、41?42頁)

本件発明は、pHに関する発明特定事項を備えていないが、実施例はいずれもpHが7又は8の条件下において行われており、かつ、pHが洗浄効果に影響を与えることは技術常識であるから、pHの値に拘わらず実施例と同等の効果が得られるとはいえない。

(2) 判断
ア 検討手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記観点に沿って検討する。

イ 本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0004】の記載からみて、「油性汚れに対する洗浄効果により優れた繊維製品用の洗浄剤を提供すること」であると認められる。

ウ 検討・判断
発明の詳細な説明には本件訂正発明の実施例が24例記載されており、かつ、いずれも、その課題を解決することができるものであることを確認することができる。また、これらの実施例は、「(A)成分」、「(B)成分」、「(C)成分」、「(D)成分」のいずれの成分についても種類及び含有割合の異なる例が含まれているし、「(A)成分/(B)成分で表される質量比」、「(B)成分/(C)成分で表される質量比」についても同様である。
また、発明の詳細な説明に、本件訂正発明を特定するための事項を全て備えているにもかかわらず比較例となっている具体例が記載されているわけではないし、そのような具体例の記載がなくても、技術常識に照らして、特定の化合物であって、本件訂正発明の(A)成分に該当する物質を用いる態様や、特定のpHの態様についてはその課題を解決することができないことが明らかであるといえるわけでもない。
なお、申立て人が主張するように、(A)成分として、実施例とは異なる物質を用いる態様や、実施例とは異なるpHの態様においては実施例よりも洗浄効果が劣る場合がありうるとしても、どの程度洗浄効果が劣ることになるのかは不明であるというほかなく、そのことから直ちに、本件訂正発明が、その課題を解決することができない程洗浄効果が劣る態様などを包含しているとまではいえない。

したがって、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が主張する申立理由のいずれによっても、本件請求項1、5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、5、7?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項2?4、6に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:カチオン界面活性剤と、
(C)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位(c1)並びにオキシアルキレン単位(c2)を有し、重量平均分子量が1000?10000であるポリマーと、
(D)成分:ノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(A)成分が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びヤシ脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤であり、
前記(D)成分が、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤であり、
R^(41)-X^(2)-[(EO)_(p)/(PO)_(q)]-R^(42) ・・・(d1)
(式(d1)中、R^(41)は、炭素数8?22の炭化水素基であり、X^(2)は、COO又はOである。EOは、オキシエチレン基を表し、POは、オキシプロピレン基を表す。[(EO)_(p)/(PO)_(q)]中、EOとPOはランダム重合でもよくブロック重合でもよい。X^(2)がCOOのとき、R^(42)は炭素数1?2のアルキル基であり、pは、6?20の数であり、qは、0?6の数である。X^(2)がOのとき、R^(42)は水素原子であり、pは、11?20の数であり、qは、0?6の数である。)
前記(D)成分:ノニオン界面活性剤の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対し、12?70質量%であり、
(A)成分/(B)成分で表される質量比が10?25であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1?2であることを特徴とする、繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項2】
(削 除)
【請求項3】
(削 除)
【請求項4】
(削 除)
【請求項5】
界面活性剤の合計含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して20?80質量%である、請求項1に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項6】
(削 除)
【請求項7】
脂肪酸又はその塩として、ヤシ脂肪酸塩のみを含み、ヤシ脂肪酸塩の含有量が(A)成分の総質量に対し、0?30質量%である、請求項1または5に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項8】
前記(B)成分が、下記一般式(25)で表されるカチオン界面活性剤である、請求項1、5、7のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【化1】

式(25)中、R^(20)?R^(23)は、それぞれ独立に2つ又は3つが炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のヒドロキシアルキル基又は-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-H[mは、オキシエチレン基の平均繰り返し数であり、1?25の数]であり、それ以外が炭素数6?28の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であり、Z^(a-)は対イオンであり、aは対イオンの価数を表す。
【請求項9】
前記(C)成分が、下記一般式(C1)又は下記一般式(C2)で表される高分子化合物を含む、請求項1、5、7、8のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【化2】

式(C1)、(C2)中、R^(30)及びR^(40)は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R^(34)及びR^(37)は、それぞれメチル基又は水素原子であり、R^(35)、R^(36)、R^(38)及びR^(39)は、それぞれ独立して、炭素数2?4のアルキレン基であり、s1及びs2は、それぞれ0?10であり、t1、t2、u1及びu2は、それぞれ独立して1?100である。
【請求項10】
(A)成分/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?9のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項11】
((A)成分+(B)成分)/(C)成分で表される質量比が1?30である、請求項1、5、7?10のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項12】
25℃での粘度が、10?300mPa・sである、請求項1、5、7?11のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
【請求項13】
塗布洗浄用である、請求項1、5、7?12のいずれか一項に記載の繊維製品用の液体洗浄剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-24 
出願番号 特願2017-509894(P2017-509894)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C11D)
P 1 651・ 537- YAA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 沙織  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 木村 敏康
蔵野 雅昭
登録日 2019-11-08 
登録番号 特許第6611374号(P6611374)
権利者 ライオン株式会社
発明の名称 繊維製品用の液体洗浄剤  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 加藤 広之  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 加藤 広之  
代理人 鈴木 三義  
代理人 川越 雄一郎  

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