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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B21J
審判 全部申し立て 特174条1項  B21J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B21J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B21J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B21J
管理番号 1374881
異議申立番号 異議2017-701145  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-05 
確定日 2021-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6141499号発明「表面コーティングを介しての金属合金の熱間加工性の改善」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6141499号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4-13〕、14、〔15-17、20〕、〔18-19〕、21-27、〔28-30〕、31-33、〔34-36、38-39〕、37について訂正することを認める。 特許第6141499号の請求項1ないし13、15ないし20、22ないし26、28ないし32及び34ないし39に係る特許を維持する。 特許第6141499号の請求項14、21、27及び33に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由
第1 手続の経緯
特許第6141499号の請求項1ないし39に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)1月3日を国際出願日とする特願2013-549437号(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年1月17日、アメリカ合衆国)の一部を、平成28年8月5日に新たに出願したものであって、平成29年5月12日にその特許権の設定登録がされ、同年6月7日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、その手続の概要は以下のとおりである。

平成29年12月 5日 :特許異議申立人 大坪隆司(以下「申立人」
という。)による請求項1ないし39に係る
特許に対する特許異議の申立て
平成30年 1月31日付け:取消理由通知書
同 年 5月 7日 :特許権者 エイティーアイ・プロパティーズ
・エルエルシー(以下「特許権者」という。
)による意見書の提出及び訂正請求
同 年 6月21日 :申立人による意見書の提出
同 年 9月18日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年12月19日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
平成31年 1月29日 :申立人による意見書の提出
令和 元年 6月 3日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年 9月 4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
同 年10月21日 :申立人による意見書の提出
令和 2年 1月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年 4月20日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
(以下「本件訂正請求」という。)
同 年 5月21日付け:手続補正指令書(方式)
同 年 6月24日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
同 年 7月31日 :申立人による意見書の提出
同 年10月 8日付け:審尋
同 年12月 9日 :特許権者による回答書の提出

なお、平成30年5月7日、平成30年12月19日及び令和元年9月4日の訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
請求項1を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、ガラス粒子のスラリーを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び前記ガラス繊維の織布及び前記ガラス粒子のスラリーを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成すること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項8、9及び13も同様に訂正する。なお、下線は特許権者が付したものである。以下同じ。)

(2)訂正事項2
請求項4を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物上に配置させることが、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに巻き付けることからなり、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項4を引用する請求項8、9及び13も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
請求項5を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物上に配置することが、前記ガラス繊維の織布を円筒状の前記合金加工物の円周囲面の周りに巻き付けること、及び前記ガラス繊維の織布を前記円筒状合金加工物の少なくとも1つの端表面上に配置することからなり、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項5を引用する請求項8、9及び13も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
請求項6を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項6を引用する請求項8、9及び13も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
請求項7を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を815.6℃?1371.1℃(1500°F?2500°F)の開始温度で熱間加工し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項7を引用する請求項8、9及び13も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
請求項10を
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項10を引用する請求項11ないし13も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
請求項14を削除する。

(8)訂正事項8
請求項15を
「ガラス粒子のスラリーを、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項15を引用する請求項16、17及び20も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9
請求項18を
「ガラス粒子のスラリーを、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
熱間加工後、前記合金加工物を室温に冷却し、そして前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することをさらに含む、上記の方法。」と訂正する。
(請求項18を引用する請求項19も同様に訂正する。)

(10)訂正事項10
請求項21を削除する。

(11)訂正事項11
請求項22を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。

(12)訂正事項12
請求項23を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、上記の方法。」と訂正する。

(13)訂正事項13
請求項24を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、上記の方法。」と訂正する。

(14)訂正事項14
請求項25を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、上記の方法。」と訂正する。

(15)訂正事項15
請求項26を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、上記の方法。」と訂正する。

(16)訂正事項16
請求項27を削除する。

(17)訂正事項17
請求項28を
「ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、
を含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。」と訂正する。
(請求項28を引用する請求項29及び30も同様に訂正する。)

(18)訂正事項18
請求項31を
「ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記熱間加工の後に、
前記合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
をさらに含む、上記の方法。」と訂正する。

(19)訂正事項19
請求項32を
「ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、上記の方法。」と訂正する。

(20)訂正事項20
請求項33を削除する。

(21)訂正事項21
請求項34を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含む、上記の方法。」と訂正する。
(請求項34を引用する請求項35、36、38及び39も同様に訂正する。)

(22)訂正事項22
請求項37を
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、
前記熱間加工の後に、
前記合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
をさらに含む、上記の方法。」と訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の段落【0049】に
「引抜鍛造操作中に」と記載されているのを、
「据込操作中に」と訂正する。

(24)一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
ア.訂正事項1ないし7(請求項1、4ないし14に係る訂正)
訂正前の請求項1、4ないし14は、請求項14が請求項1ないし13の記載を引用する関係にあるから、上記訂正事項1ないし7に係る訂正は、一群の請求項1、4ないし14について請求されている。
また、特許権者は、訂正後の請求項14の訂正が認められる場合には、請求項14は、請求項1ないし13とは別途訂正することを求めている。

イ.訂正事項8ないし10(請求項15ないし21に係る訂正)
訂正前の請求項15ないし21は、請求項16ないし21が請求項15の記載を引用する関係にあるから、訂正事項8ないし10に係る訂正は、一群の請求項15ないし21について請求されている。
また、特許権者は、訂正後の請求項18の訂正が認められる場合には、請求項18及び19は、請求項15ないし17並びに20及び21とは別途訂正することを求め、訂正後の請求項21の訂正が認められる場合には、請求項21は、請求項15ないし20とは別途訂正することを求めている。

ウ.訂正事項11ないし16(請求項22ないし27に係る訂正)
訂正前の請求項22ないし27は、請求項23ないし27が請求項22の記載を引用する関係にあるから、訂正事項11ないし16に係る訂正は、一群の請求項22ないし27について請求されている。
また、特許権者は、訂正後の請求項23、24、25,26及び27の訂正がそれぞれ認められる場合には、請求項23、24、25,26及び27は、それぞれ、請求項22、23、24、25、26及び27とは別途訂正することを求めている。

エ.訂正事項17ないし20(請求項28ないし33に係る訂正)
訂正前の請求項28ないし33は、請求項29ないし33が請求項28の記載を引用する関係にあるから、訂正事項17ないし20に係る訂正は、一群の請求項28ないし33について請求されている。
また、特許権者は、訂正後の請求項31の訂正が認められる場合には、請求項31は、請求項28ないし30並びに32及び33とは別途訂正することを求め、訂正後の請求項32の訂正が認められる場合には、請求項32は、請求項28ないし31及び33とは別途訂正することを求め、訂正後の請求項33の訂正が認められる場合には、請求項33は、請求項28ないし32とは別途訂正することを求めている。

オ.訂正事項21及び22(請求項34ないし39に係る訂正)
訂正前の請求項34ないし39は、請求項35ないし39が請求項34の記載を引用する関係にあるから、訂正事項21及び22に係る訂正は、一群の請求項34ないし39について請求されている。
また、特許権者は、訂正後の請求項37の訂正が認められる場合には、請求項37は、請求項34ないし36並びに38及び39とは別途訂正することを求めている。

カ.小括
上記ア.ないしオ.を別の訂正単位の求めを勘案してまとめると、本件訂正請求は、一群の請求項〔1、4-13〕、14、〔15-17、20〕、〔18-19〕、21-27、〔28-30〕、31-33、〔34-36、38-39〕、37のそれぞれに対して請求されたものである。

(25)明細書の訂正と請求項の関係
明細書に係る訂正(訂正事項23)は、別の訂正単位の求めを勘案すれば、一群の請求項〔1、4-13〕、14、〔15-17、20〕、〔18-19〕、21-27、〔28-30〕、31-33、〔34-36、38-39〕、37のそれぞれについて請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項1のうち、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項を付加した点は、表面コーティングの形成について特定したものである。
また、訂正事項1のうち、「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加した点は、請求項1の方法について限定したものである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
表面コーティングにより合金加工物の表面クラッキングを低減させることは、本件の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0029】に「・・・ガラス材料表面コーティングは、・・・鍛造、押出法、又は合金加工物を別様で加工することから生じる表面クラッキングの発生頻度を、・・・低減させ得る。」として記載されている。
また、合金加工物上に表面コーティングを形成後に、合金加工物を熱間加工をすることは、段落【0007】に「ガラス材料を加熱することに引き続いて、ダイ又はロールの少なくとも1つで力を加え、加工物を変形させること・・・加工物を熱間加工することは、鍛造・・・、から選択される1つ以上の工程を更に含む。」と記載されている。
また、熱間加工が、「引抜鍛造」又は「据込及び引抜鍛造」を含むことは、段落【0048】に「ある非限定的実施形態では、加工物を熱間加工することは、鍛造操作及び/又は押出法操作を含んでもよい。例えば、加工物の表面の少なくとも1つの領域上に付着された表面コーティングを有する加工物は、据込鍛造され得るか及び/又は引抜鍛造され得る。」と記載され、段落【0050】に「様々な非限定的実施形態では、加工物の表面の少なくとも1つの領域上に付着された表面コーティングを有する合金インゴット又は他の合金加工物は、1つ以上の据込及び引抜鍛造操作にかけられることができる。」と記載されている。
さらに、引抜鍛造中に鍛造用ダイが合金加工物の断面を圧縮し、かつ合金加工物の長さを増加させることは、段落【0049】に「据込及び引抜鍛造操作は、据込鍛造の1つ以上のシーケンスと引抜鍛造の1つ以上のシーケンスとを含むことができる。・・・引抜操作中には、側表面(例えば、円筒状加工物の円周囲面)が、加工物に力を加える鍛造用ダイと接触し得ることで、これが加工物の断面を圧縮し、かつ加工物の長さを増加させる。」と記載されている。
そして、訂正事項1により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2(請求項4に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項2のうち、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項を付加した点は、表面コーティングの形成について特定したものである。
また、訂正事項2のうち、「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加した点は、熱間加工について限定したものである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
表面コーティングにより合金加工物の表面クラッキングを低減させること、熱間加工が「引抜鍛造」又は「据込及び引抜鍛造」を含むこと及び引抜鍛造中に鍛造用ダイが合金加工物の断面を圧縮し、かつ合金加工物の長さを増加させることは、上記訂正事項1で説示(上記(1)イ.)したとおり、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項2により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項2による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3(請求項5に係る訂正)
訂正事項3に係る訂正は、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4(請求項6に係る訂正)
訂正事項4に係る訂正は、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5(請求項7に係る訂正)
訂正事項5に係る訂正は、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6(請求項10に係る訂正)
訂正事項6に係る訂正は、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7、10、16及び20(請求項14、21、27及び33に係る訂正)
訂正事項7、10、16及び20に係る訂正は、それぞれ、訂正前の請求項14、21、27及び33を削除するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8(請求項15に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項8のうち、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項を付加した点は、表面コーティングの形成について特定したものである。
また、訂正事項8のうち、「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加した点は、熱間加工について限定したものである。
そうすると、訂正事項8による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
表面コーティングにより合金加工物の表面クラッキングを低減させること、熱間加工が「引抜鍛造」又は「据込及び引抜鍛造」を含むこと及び引抜鍛造中に鍛造用ダイが合金加工物の断面を圧縮し、かつ合金加工物の長さを増加させることは、上記訂正事項1で説示(上記(1)イ.)したとおり、本件明細書に記載されている。
また、熱間加工が「据込鍛造」を含むことは、本件明細書の段落【0048】に「ある非限定的実施形態では、加工物を熱間加工することは、鍛造操作及び/又は押出法操作を含んでもよい。例えば、・・・加工物は、据込鍛造され得るか及び/又は引抜鍛造され得る。」と記載されている。
また、訂正事項8により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項8による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9(請求項18に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項18の記載が請求項15の記載を引用するものであったのを、当該請求項15の記載を引用しないものとし、さらに、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものである。
そうすると、訂正事項9による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9により付加された事項は、訂正前の請求項15に記載された事項及び上記訂正事項2と同様に付加された事項であるから、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項9により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項9による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項11(請求項22に係る訂正)
訂正事項11に係る訂正は、上記訂正事項2と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項12ないし15(請求項23ないし26に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項12ないし15に係る訂正は、訂正前の請求項23ないし26の記載が、それぞれ、請求項22の記載を引用するものであったのを、当該請求項22の記載を引用しないものとし、さらに、上記訂正事項8(請求項15に係る訂正)と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものである。
そうすると、訂正事項12ないし15による訂正は、いずれも、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項12ないし15により付加された事項は、訂正前の請求項22に記載された事項及び上記訂正事項8と同様に付加された事項であるから、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項12ないし15により、それぞれ、特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項12ないし15による訂正は、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項17(請求項28に係る訂正)
訂正事項17に係る訂正は、上記訂正事項8と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項18及び19(請求項31及び32に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項18及び19に係る訂正は、訂正前の請求項31及び32の記載が、それぞれ、請求項28の記載を引用するものであったのを、当該請求項28の記載を引用しないものとし、さらに、上記訂正事項8と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものである。
そうすると、訂正事項18及び19による訂正は、いずれも、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項18及び19により付加された事項は、訂正前の請求項28に記載された事項及び上記訂正事項8と同様に付加された事項であるから、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項18及び19により、それぞれ、特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項18及び19による訂正は、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項21(請求項34に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項21のうち、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項を付加した点は、表面コーティングの形成について特定したものである。
また、訂正事項21のうち、「前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加した点は、熱間加工について限定したものである。
そうすると、訂正事項21による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
表面コーティングにより合金加工物の表面クラッキングを低減させること、熱間加工が「据込鍛造」、「引抜鍛造」又は「据込及び引抜鍛造」を含むこと及び引抜鍛造中に鍛造用ダイが合金加工物の断面を圧縮し、かつ合金加工物の長さを増加させることは、上記訂正事項8で説示(上記(8)イ.)したとおり、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項21により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項21による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項22(請求項37に係る訂正)
ア.訂正の目的
訂正事項22に係る訂正は、訂正前の請求項37の記載が請求項34の記載を引用するものであったのを、当該請求項34の記載を引用しないものとし、さらに、上記訂正事項21と同様に、「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように」という事項及び「前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項を付加したものである。
そうすると、訂正事項22による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項22により付加された事項は、訂正前の請求項34に記載された事項及び上記訂正事項21と同様に付加された事項であるから、本件明細書に記載されている。
また、訂正事項22により特許請求の範囲は減縮されており、実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。
よって、訂正事項22による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(16)訂正事項23(明細書の段落【0049】に係る訂正)
ア.訂正の目的
(ア)訂正事項23は、訂正前の明細書の段落【0049】に「引抜鍛造操作中に」と記載されているのを、「据込操作中に」と訂正するものであるが、その目的は、以下の(イ)ないし(オ)に説示するとおり、誤記の訂正に該当する。

(イ)訂正前の段落【0049】は、以下のとおり記載されている。
「【0049】
据込及び引抜鍛造操作は、据込鍛造の1つ以上のシーケンスと引抜鍛造の1つ以上のシーケンスとを含むことができる。引抜鍛造操作中に、加工物の端表面が、加工物に力を加える鍛造用ダイと接触し得ることで、これが加工物の長さを圧縮し、かつ加工物の断面を増加させる。引抜操作中には、側表面(例えば、円筒状加工物の円周囲面)が、加工物に力を加える鍛造用ダイと接触し得ることで、これが加工物の断面を圧縮し、かつ加工物の長さを増加させる。」

(ウ)段落【0049】は、3つの文章からなり、第1文では、据込及び引抜鍛造操作は据込鍛造のシーケンスと引抜鍛造のシーケンスを含むことが示され、第2文では、加工物の端表面に力を加えることで加工物の長さを圧縮させて断面を増加させる加工が示され、第3文では、加工物の側表面に力を加えることで加工物の断面を圧縮させて長さを増加させる加工が示されている。

(エ)鍛造は、被加工物に圧縮力を作用させて塑性変形を行う加工であるが、大きくは、金型を使用する「型鍛造」と、金型を使用しない「自由鍛造」に分類できるところ、一般に、自由鍛造のうち、被加工物に上下から圧力を作用させて断面積を増やし、高さ(上下方向の長さ)を減少させることを「据え込み」といい、被加工物に上下から圧力を作用させて断面積を減らし、長さを伸ばすことを「鍛伸」ということは、鍛造の技術分野における当業者の技術常識といえる。

(オ)上記(エ)で説示する技術常識を考慮すると、上記(ウ)の第2文で示す「加工物の長さを圧縮させて断面を増加させる」加工に相当するのは「据え込み」であるから、第2文について「引抜鍛造操作中に」と記載したことは、「据込操作中に」とすべき記載の誤記であるということができ、訂正事項23による訂正の目的は、誤記の訂正に該当する。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア.(エ)で説示する技術常識をふまえれば、訂正前の明細書の段落【0049】に記載された第2文の「引抜鍛造操作中に」という記載について、当業者は、「据込操作中に」とすべき記載を誤記したものと認識するといえるから、訂正事項23による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.小括
上記のとおり、訂正事項1ないし23に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、2号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4-13〕、14、〔15-17、20〕、〔18-19〕、21-27、〔28-30〕、31-33、〔34-36、38-39〕、37について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし39に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1ないし39をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし39に記載されたとおりのものであるところ、本件発明1、4ないし7、10、14、15、18、21ないし28、31ないし34及び37の記載は、上記第2の1.(1)ないし(22)に記載したとおりである。

また、本件発明2、3、8、9、11ないし13、16、17、19、20、29、30、35、36、38及び39の記載は、以下のとおりである。
【請求項2】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、ガラステープを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び前記ガラス繊維の織布及び前記ガラステープを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること
を含む方法。

【請求項3】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、セラミック繊維の織布を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び
前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること
を含む方法。

【請求項8】
熱間加工後、前記合金加工物を室温に冷却し、そして前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項1?7のいずれかに記載の方法。

【請求項9】
前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することが、前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。

【請求項11】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項10に記載の方法。

【請求項12】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含み、そして前記ガラス繊維の織布がE-ガラス織布を含む、請求項10に記載の方法。

【請求項13】
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、請求項1?12のいずれかに記載の方法。

【請求項16】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。

【請求項17】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【請求項19】
前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することが、前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。

【請求項20】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項15に記載の方法。

【請求項29】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。

【請求項30】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項28に記載の方法。

【請求項35】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。

【請求項36】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項34に記載の方法。

【請求項38】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項34に記載の方法。

【請求項39】
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、請求項34に記載の方法。

第4 取消理由通知書(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1、4ないし13、15ないし20、22ないし26、28ないし32、34ないし39に係る特許に対して、当審が令和2年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

1.特許法29条2項に係る取消理由
請求項23ないし26、31、32、37に係る発明は、甲第4号証(特公昭60-47012号公報)に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(取消理由通知書の15ないし24ページ)から、請求項23ないし26、31、32、37に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.特許法36条6項2号に係る取消理由
請求項1、4ないし7、10、15、18、22、28、34に係る発明の「引抜鍛造」とは、どのような加工を行うのか不明であって、発明が明確ではない。また、請求項8、9、11ないし13、16、17、19、20、29、30、35、36、38、39に係る発明は、上記の請求項1、4ないし7、10、15、18、22、28、34の記載を直接又は間接的に引用しているから、発明が明確でない(取消理由通知書の24及び25ページ)。
したがって、請求項1、4ないし13、15ないし20、22、28ないし30、34ないし36、38、39に係る特許は、特許法36条6項2号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の判断
1.特許法36条6項2号に係る取消理由について
事案に鑑み、まず、特許法36条6項2号に係る取消理由について検討する。
(1)特許請求の範囲の記載
本件発明1、4ないし7、10、15、18、22ないし26、28、31、32、34及び37には、合金加工物の熱間加工として「引抜鍛造すること」を含むという記載や、「前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という記載がされている(上記第2の1.)。

(2)「引抜鍛造」の解釈
「引抜鍛造」という用語は学術用語として定義されておらず、熱間加工や鍛造に関する技術分野において一般的に使用される用語であるとも認められない。
しかし、上記(1)に示す発明の「前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という記載は、「引抜鍛造」が、被加工物(合金加工物)の側面に鍛造用ダイとの接触による圧力を作用させて断面積を減らし、長さを伸ばす加工であることを説明するものであるところ、上記第2の2.(16)ア.(エ)に示す技術常識をふまえると、当該加工は、一般的には「鍛伸」として知られる加工であるから、上記(1)に示す発明の「引抜鍛造」は、一般的には「鍛伸」として知られる加工を意味すると解釈するのが相当である。
なお付言すると、特許権者は、「引抜鍛造」について、張力が作用する旨の主張(平成30年12月19日の意見書の7ページ下から10ないし8行)や、「引っ張ること」を意味する旨の主張(令和2年4月20日の意見書の5ページ3ないし5行)をしており、それらの主張は上記の解釈と整合するものではなかったが、特許権者は、現時点では「引抜鍛造」において合金加工物を引っ張ることを含まない旨を主張(令和2年12月9日の回答書の2ページ6ないし9行)しており、この主張は、上記の解釈と整合するものである。

(3)申立人の反論について
ア.申立人の反論の概要
令和2年7月31日の意見書(以下「申立人意見書」という。)における「引抜鍛造」についての申立人の反論の概要は、以下のとおりである。
特許権者は、「引抜鍛造」は公知の「引抜」と異なる旨を主張し(令和元年9月4日の意見書の5及び6ページ)、「引抜鍛造」を「前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことと定義しているが、一般的な引抜と「引抜鍛造」との相違点は必ずしも明らかとなったとはいえず、「引抜鍛造」は依然として不明確である。(申立人意見書2ページ2行ないし最終行)

イ.申立人の反論の検討
上記(2)に示すとおり、特許権者は、現時点では「引抜鍛造」において合金加工物を引っ張ることを含まない旨を主張している。
一般的な引抜は、被加工物に引っ張り力を作用させ、引抜ダイの穴を引き抜くことで径を減少させる加工であることは明らかであるところ、「引抜鍛造」には引っ張り力が作用しないものであって、被加工物(合金加工物)の側面に鍛造用ダイとの接触による圧力を作用させて断面積を減らし、長さを伸ばすものであるから、一般的な引抜と「引抜鍛造」が異なるというほかなく、申立人の上記ア.の反論は採用できない。

(4)特許法36条6項2号に係る取消理由のむすび
したがって、本件発明の「引抜鍛造」という用語は、技術常識をふまえれば、一般的には「鍛伸」として知られる加工、すなわち、被加工物の側面に圧力を作用させて断面積を減らし、長さを伸ばす加工を意味する用語として明確であるから、特許法36条6項2号に係る取消理由により、本件発明1、4ないし7、10、15、18、22ないし26、28、31,32,34及び37に係る特許を取り消すことはできない。
同様に、それらの発明を引用する、本件発明8、9、11ないし13、16、17、19、20、29、30、35、36、38及び39に係る特許を取り消すことはできない。

2.特許法29条2項に係る取消理由について
(1)甲4の記載及び甲4発明
令和2年1月17日付けの取消理由通知書(決定の予告)で引用した甲第4号証(特公昭60-47012号公報、以下「甲4」という。)には、「合金鋼、鋼、耐熱合金の高温潤滑押出し方法」について、以下に示す事項及び発明が記載されている。

ア.特許請求の範囲第2項及び第3項
「2 ・・・粉末ガラス潤滑剤100重量部と、・・・反応抑制剤5?50重量部とを混合した高温ガラス潤滑剤に、・・・結合剤を混合したものを、予じめ加熱された被加工材表面に転写、吹き付けにより50?200μの厚さで被覆した後直ちに、又は加工に必要な温度に再加熱し、高温押出しすることを特徴とする合金鋼、鋼、耐熱合金の高温潤滑押出し方法。
3 ・・・粉末ガラス潤滑剤100重量部と、・・・反応抑制剤5?50重量部とを混合した高温ガラス潤滑剤に、・・・結合剤を混合した泥状懸濁液、又は、上記高温ガラス潤滑剤に、上記結合剤に・・・増粘剤もしくは水を加えて粘度を調整した結合剤を混合した泥状懸濁液を、被加工材表面に低温で塗布して50?200μの厚さで被覆した後、加工に必要な温度に加熱し、高温押出しすることを特徴とする合金鋼、鋼、耐熱合金の高温潤滑押出し方法。」

イ.2欄14ないし17行
「本発明はステンレス鋼ビレットからの小径管の製造をはじめとする各種の合金鋼、鋼、耐熱合金から成る被加工材の押出し加工に有効な新規高温潤滑押出し方法に関する。」

ウ.3欄3ないし15行
「しかして、このような押出し技術の確立を計るためには、被加工材および工具表面に被覆されるガラス潤滑剤の性状並びに被覆状態を良好ならしめることが必須条件となる。つまり、被覆されたガラス潤滑剤は、加工温度に加熱された状態において膜切れの無い一定厚の溶融ガラス層として被加工材および工具材表面を覆う必要があり、しかも被加工材と工具材とに均一に介在された溶融ガラス層は、高い潤滑性および断熱性を発揮するものであることが必要とされる。本発明は特にこのガラス潤滑剤の性状並びに被覆状態の観点より改良された高温潤滑押出し方法を提供しようとするものである。」

エ.3欄26ないし30行
「またその他のガラス被覆手段として、結合剤として水ガラスを使用し、ガラス粉末を水ガラスに懸濁状態水溶液としたものを被加工材表面にハケ塗り又はスプレーにより塗布又は吹き付ける方法が知られている。」

オ.7欄23ないし34行
「本発明で使用する高温ガラス潤滑剤は以上に述べた通りであるが、その特定発明に係る押出し方法によれば、これを加熱された被加工材表面に、転写、吹き付け、塗布により50?200μの厚さで被覆した後、高温押出しを行なうものであり、またその併合発明に係る押出し方法によれば、高温ガラス潤滑剤に後に述べるような特定の結合剤(更には増粘剤もしくは水)を混合した乾式混合物、又は泥状懸濁液を、低温もしくは高温に加熱された被加工材表面に、ドブ漬け、転写、吹き付け又は塗布により50?200μの厚さで被覆した後、高温押出しを行なうものである。」

カ.8欄4ないし7行
「換言すればこの被膜の薄膜化を計るために、本発明では加工温度域においても均一被膜を形成するような高温ガラス潤滑剤を開発したのである。」

キ.第3表(9ページ)
第3表のNo.Kには、実施例のガラス潤滑剤で被覆される被加工材として「インコネル」を使用したものが記載されている。

ク.甲4発明
以上の記載によれば、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という)が記載されていると認められる。
「粉末ガラス潤滑剤を含む高温ガラス潤滑剤に結合材を混合した泥状懸濁液を、ステンレス鋼やインコネルのビレット等の被加工材表面に、ハケ塗りによる塗布、スプレーによる吹き付け、ドブ漬け等により、低温で塗布して50?200μの厚さで被覆し加工に必要な温度に加熱した後、又は高温に加熱された被加工材表面に塗布して50?200μの厚さで被覆した後、加工温度域においても高い潤滑性及び断熱性を発揮する均一被膜を形成するようにして高温押出しする合金鋼、鋼、耐熱合金の高温潤滑押出し方法。」

(2)本件発明23との対比・判断
ア.本件発明23と甲4発明との対比
甲4発明の「粉末ガラス潤滑剤を含む高温ガラス潤滑剤に結合材を混合した泥状懸濁液」は本件発明23の「ガラス粒子のスラリー」に相当し、以下同様に、「ステンレス鋼やインコネルのビレット等の被加工材」は「合金加工物」に相当し、「低温で塗布して50?200μの厚さで被覆」することは「付着させること」に相当し、「インコネル」は「ニッケル基合金、ニッケル基超合金」に相当し、「ステンレス鋼」は「鉄基合金」に相当し、「ハケ塗りによる塗布、スプレーによる吹き付け、ドブ漬け」は「スラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、浸漬」であることに相当する。
また、甲4発明の「加工に必要な温度に加熱」することにより、泥状懸濁液も加熱されるとともに少なくとも部分的に溶融することも自明(上記(1)ウ.の「溶融ガラス層」を参照)であるから、甲4発明において「加工温度域においても」「均一被膜を形成する」ことは、本件発明23の「前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを」「形成させる」ことに相当する。
そして、甲4発明の「高温押出し」と、本件発明23の「前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことを対比すると、「熱間加工すること」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金から選択される合金を含み、前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗及び浸漬を含む、上記の方法。」

<相違点1>
表面コーティングを形成するのが、本件発明23では「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させる」ためであるのに対し、甲4発明では「高い潤滑性及び断熱性を発揮する」ためである点。

<相違点2>
熱間加工が、本件発明23では「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことであるのに対して、甲4発明では「高温押出し」である点。

<相違点3>
本件発明23は、「前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること」を含むのに対し、甲4発明では冷却については不明である点。

<相違点4>
本件発明23は、「ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること」を含むのに対し、甲4発明では除去については不明である点。

イ.相違点2の判断
事案に鑑み、上記ア.の相違点2について検討する。
本件発明23は熱間加工について、「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み」と特定されているから、「据込鍛造」か「引抜鍛造」の少なくともいずれかを含んでいるが、甲4には、据込鍛造と引抜鍛造のいずれについても、記載や示唆はない。
また、甲4発明は、「押出し技術の確立を計る」(上記(1)ウ.)ことを課題とし、「被加工材の押出し加工に有効な新規高温潤滑押出し方法に関する」(上記(1)イ.)ものであり、押出し技術を前提として、新規な方法を提供しようとするものであるから、甲4に接した当業者は、仮に甲4発明の「高温押出し」を据込鍛造や引抜鍛造に置き換えれば、甲4発明の課題を解決できないと認識し、そのような置き換えをすることはない。
したがって、上記ア.の相違点2は、甲4発明に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

ウ.申立人の反論について
(ア)申立人の反論の概要
申立人意見書における特許法29条2項についての反論の概要は、以下のとおりである。
特許法36条6項2号について「引抜鍛造」が明確であるとしても、「引抜鍛造」は公知の「引抜」と同等と評価するのが妥当であるから、取消理由通知書(決定の予告)の取消理由により特許は取り消されるべきである。(申立人意見書3ページ10ないし14行)
(イ)申立人の反論の検討
上記1.(3)イ.で説示するとおり、一般的な引抜と「引抜鍛造」は異なるから、申立人の反論は前提において誤りがあるし、甲4には、「引抜鍛造」の記載や示唆がないことに加えて、甲4に接した当業者が甲4発明の「高温押出し」を据込鍛造や引抜鍛造に置き換えることはないから、申立人の上記(ア)の反論は採用できない。

エ.小括
上記ア.の相違点2は、甲4発明に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記ア.の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明23は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、特許法29条2項に係る取消理由により、本件発明23に係る特許を取り消すことはできない。

(2)本件発明24ないし26、31、32及び37との対比・判断
本件発明24ないし26、31、32及び37は、いずれも本件発明23と同様に、「ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲4発明と対比すると、それぞれ、上記(1)ア.の相違点2と同様の相違点を有している。
そして、上記(1)ア.の相違点2は、上記(1)イ.に説示する理由と同様の理由により、甲4発明に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明24ないし26、31、32及び37は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、特許法29条2項に係る取消理由により、本件発明24ないし26、31、32及び37に係る特許を取り消すことはできない。

3.取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由のむすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由(以下「当審取消理由」という。)により、本件発明1、4ないし13、15ないし20、22ないし26、28ないし32、34ないし39に係る特許を取り消すことはできない。

第6 当審取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の判断
1.申立人が提出する証拠
(1)特許異議申立書に添付して提出する証拠
甲第 1号証:特公昭59-6724号公報
甲第 2号証:特公昭54-29418号公報
甲第 3号証:特開平6-106232号公報
甲第 4号証:特公昭60-47012号公報
甲第 5号証:特開昭64-28382号公報
甲第 6号証:特許第2918689号公報
甲第 7号証:特開昭60-215557号公報
甲第 8号証:特開昭64-48832号公報
甲第 9号証:特開平5-4994号公報
甲第10号証:新村出編、「広辞苑 第五版」、1998年11月11日
株式会社岩波書店、第五版第一刷発行、1821ページ
甲第11号証:社団法人日本鉄鋼協会編、「第3版 鉄鋼便覧 第III
巻(2) 条鋼・鋼管・圧延共通設備」、丸善株式会社、
昭和55年11月20日発行、942ないし947、
1012ないし1015並びに
1020及び1021ページ
甲第12号証:特開2010-125519号公報
甲第13号証:特開昭59-232278号公報
甲第14号証:特開平4-36445号公報
甲第15号証:特開平4-66607号公報
甲第16号証:特開平7-11403号公報
甲第17号証:特開平7-223018号公報
甲第18号証:特開昭57-112923号公報
甲第19号証:ATPサプライ社のホームページ、
[平成29年11月5日検索](URL:http://www.
advancedtechnicalcalprod.com/index.html)

(2)平成31年1月29日の意見書に添付して提出する証拠
甲第20号証:特開平7-88586号公報
甲第21号証:特開平7-171650号公報
甲第22号証:特開2005-66656号公報
甲第23号証:特開2007-54867号公報

(2)令和元年10月21日の意見書に添付して提出する証拠
甲第24号証:特開平6-328125号公報
甲第25号証:特開昭62-230450号公報
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)

2.特許異議申立理由の概要
本件訂正前の各請求項に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。(以下、各特許異議申立理由を「申立理由1」などという。)

(1)特許法29条1項3号又は2項に係る特許異議申立理由
・申立理由1
請求項1に係る発明は、甲1記載の発明及び甲4ないし6に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由2
請求項2に係る発明は、甲1記載の発明及び甲3、7ないし9に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由3
請求項3に係る発明は、甲1記載の発明及び甲3に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由4
請求項3に係る発明は、甲3に記載されたものである。
・申立理由5
請求項3に係る発明は、甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由6
請求項4に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由7
請求項5に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由8
請求項6に係る発明は、甲1に記載されたものである。
・申立理由9
請求項6に係る発明は、甲1記載の発明又は甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由10
請求項6に係る発明は、甲2に記載されたものである。
・申立理由11
請求項6に係る発明は、甲2記載の発明又は甲2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由12
請求項6に係る発明は、甲3に記載されたものである。
・申立理由13
請求項6に係る発明は、甲3記載の発明又は甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由14
請求項7に係る発明は、甲1に記載されたものである。
・申立理由15
請求項7に係る発明は、甲1記載の発明又は甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由16
請求項7に係る発明は、甲2に記載されたものである。
・申立理由17
請求項7に係る発明は、甲2記載の発明又は甲2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由18
請求項7に係る発明は、甲3に記載されたものである。
・申立理由19
請求項7に係る発明は、甲3記載の発明又は甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由20
請求項8に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由21
請求項9に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由22
請求項10に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由23
請求項11に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由24
請求項12に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由25
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲1に記載されたものである。
・申立理由26
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲1記載の発明又は甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由27
請求項13に係る発明(請求項6及び7以外に従属する発明)は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由28
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲2に記載されたものである。
・申立理由29
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲2記載の発明又は甲2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由30
請求項13に係る発明(請求項6及び7以外に従属する発明)は、甲2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由31
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲3に記載されたものである。
・申立理由32
請求項13に係る発明(請求項6及び7に従属する発明)は、甲3記載の発明又は甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由33
請求項13に係る発明(請求項3、6及び7以外に従属する発明)は、甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由34
請求項14に係る発明は、甲1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由35
請求項14に係る発明は、甲2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由36
請求項14に係る発明(請求項3、6及び7、並びに請求項3、6及び7に従属する請求項13に従属する発明)は、甲3に記載されたものである。
・申立理由37
請求項14に係る発明(請求項3、6及び7、並びに請求項3、6及び7に従属する請求項13に従属する発明)は、甲3記載の発明又は甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由38
請求項14に係る発明(請求項3、6及び7、並びに請求項3、6及び7に従属する請求項13以外に従属する発明)は、甲3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由39
請求項15に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由40
請求項15に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由41
請求項16に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由42
請求項16に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由43
請求項17に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由44
請求項17に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由45
請求項18に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由46
請求項19に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由47
請求項20に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由48
請求項20に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由49
請求項21に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由50
請求項21に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由51
請求項22に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由52
請求項23に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由53
請求項24に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由54
請求項25に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由55
請求項26に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由56
請求項27に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由57
請求項28に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由58
請求項28に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由59
請求項29に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由60
請求項29に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由61
請求項30に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由62
請求項30に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由63
請求項31に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由64
請求項32に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由65
請求項33に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由66
請求項33に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由67
請求項34に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由68
請求項34に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由69
請求項35に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由70
請求項35に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由71
請求項36に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由72
請求項36に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由73
請求項37に係る発明は、甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由74
請求項38に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由75
請求項38に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
・申立理由76
請求項39に係る発明は、甲4に記載されたものである。
・申立理由77
請求項39に係る発明は、甲4記載の発明又は甲4記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。

(2)特許法36条4項1号に係る特許異議申立理由
・申立理由78
請求項1、15、22、28及び34に係る発明の「ガラス粒子のスラリー」は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載がないから、当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。
また、それらの請求項を引用する請求項8、9、13、14、16ないし21、23ないし27、29ないし33及び35ないし39に係る発明も同様に、当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。

(3)特許法36条6項1号に係る特許異議申立理由
・申立理由79
申立理由78と同様に、請求項1、8、9、13ないし39に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。

(4)特許法36条6項2号に係る特許異議申立理由
・申立理由80
請求項10、15、22、28及び34に係る発明の「ニッケル基合金」と「ニッケル基超合金」を区別するためのニッケル含有率の定義が不明であるから、それらの発明は明確でない。
また、それらの請求項を引用する請求項11ないし14、16ないし21、23ないし27、29ないし33及び35ないし39に係る発明も同様に明確でない。

(5)特許法17条の2第3項に係る特許異議申立理由
・申立理由81
請求項1、15、22、28及び34に係る発明の「ガラス粒子のスラリー」は、願書に最初に添付した明細書に記載がなく、平成29年3月22日の補正で追加されたから、当該補正は新規事項を追加するものである。
また、それらの請求項を引用する請求項8、9、13、16ないし21、23ないし27、29ないし33及び35ないし39に係る発明についての補正も同様に新規事項を追加するものである。

(6)申立理由のうち当審取消理由に採用しなかったもの
特許異議申立理由は、上記申立理由1ないし81であるが、そのうちの上記申立理由52ないし55、63、64及び73は、当審取消理由の特許法29条2項に係る取消理由(上記第4の1.)と同趣旨のものであるから、特許異議申立理由のうち、それらの申立理由を除くものが当審取消理由に採用しなかったものである。

3.各甲号証の記載及び各甲号証記載の発明
(1)甲1の記載及び甲1発明
甲1には、「ホロビレットのエキスパンション工具」について、以下に示す事項及び発明が記載されている。

ア.2欄15行ないし3欄7行
「一般にマンドレルを有する金属押出プレスを用いて金属管を押出加工する場合、ホロビレットが使用されることは既知である。
この際、ガイドホールを有しその一端面に予め凹所が形成された金属ビレットの、前記凹所に嵌入され、次いで前記ガイドホールに沿って圧入されて該ガイドホールを拡孔するためにエキスパンション工具が用いられるのが普通である。
第1図1,2を参照して通常のエキスパンション法とこれに用いる工具に関して説明すると、1はコンテナ、3は金属ビレットで、機械加工等の手段でガイドホール3aを有し、このガイドホール3aの一端面に機械切削加工等にて円錐台形状の凹所2が予じめ形成してあり、斯る構成のビレット3がコンテナ1に収納されている。4はエキスパンション工具であって、先端の円柱状ガイド部6とこれに続く円錐台形状の拡孔主体部5とから成り、ガイド部6をガイドホール3aに臨ませ、かつ、凹所2に潤滑剤を装置した状態で、工具4をガイドホール3aに沿って圧入することにより、拡孔がなされる。
この拡孔は工具4の圧入に伴って潤滑剤を主体部5とビレット間に封入しようとするものであるが、拡孔に要する時間は短時間であることから、潤滑剤の全部が完全に溶融されず、この結果、固体と半溶融状態が混在して拡孔されたビレットの該拡孔部の内面性状の劣化を招き、斯様なホロビレットを用いて金属押出プレスで金属管を押出加工することは、品質の悪い金属管を得る要因となっている。」

イ.4欄18ないし31行
「金属ビレット20はその軸心に機械加工等によってガイドホール21が形成され、その一端面に予め凹所24が機械切削加工等で形成されている。
斯る金属ビレット20は加熱されてコンテナ22に収納され、凹所24を閉塞すべくガラスクロス25が載置され、しかも、該クロス25上にガラス粉末等の潤滑剤26が供給されて、ここに第3図1に図解するように孔拡準備体勢がとられる。
而して、前記凹所24に嵌入され次いでガイドホール21に沿って本発明の工具10が圧入されることにより、ガイドホール21が拡孔されるが、その圧入貫孔工程は第3図2乃至第3図4に順次図解されている。」

ウ.甲1発明
上記ア.の「潤滑剤の全部が完全に溶融されず、この結果、固体と半溶融状態が混在して」という記載からみて、上記イ.の「潤滑剤26」は少なくとも部分的に溶融しているといえるし、当該溶融したものを「コーティング」ということができる。
また、金属ビレット20は加熱されているから、その凹所24に載置されるガラスクロス25や、ガラスクロス25上に供給される潤滑剤26が加熱されることは明らかである。
そうすると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という)が記載されていると認められる。
「ガラスクロス25を、一端面に凹所24が形成され、かつ加熱された金属ビレット20の前記凹所24に載置すること、ガラス粉末等の潤滑剤26を前記ガラスクロス25上に供給すること、前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26を加熱して、前記金属ビレット20の前記凹所24上に、少なくとも部分的に溶融した、コーティングを、潤滑させるように形成すること、及び工具10を、前記潤滑剤26及び前記ガラスクロス25上から前記凹所24に嵌入し、次いでガイドホール21に沿って圧入することにより、前記ガイドホール21を拡孔する方法。」

(2)甲2の記載及び甲2記載の発明
甲2には、「ホロビレットのプレアプセット方法」について、以下に示す事項及び発明が記載されている。

ア.1欄22ないし25行
「ガイドホールを有しかつ加熱された金属ビレットの端面にガラスクロスを載置し、ここにプレアプセット工具を押圧して円錐形状凹所を形成することを特徴とするホロビレットのプレアプセット方法。」

イ.2欄1ないし8行
「上記の後者の所謂プレス穿孔方法の一つに、先ずビレットに目的径よりはかなり小径の所謂ガイドホールを機械切削によって穿孔しておき、次にビレットを加熱した後概ね円錐状の所謂エキスパンション工具を上記ガイドホールに沿って押し進め、このガイドホールを拡孔して所要径の中空孔にする所謂エキスパンション穿孔法が知られている。」

ウ.2欄27ないし34行
「しかしながら、従来のこのプレアプセット方法では、ガイドホール1がある為に、ビレット上端面にガラス粉末を散布する時に、その約1/4はガイドホール1に落込み、ガラス粉末の無駄であり、さらに、粉末ガラスをビレット上端面に均一に散布することは極めて困難であり、ビレットが冷えないうちにこの作業を完了させる必要性から、ガラス粉末の均一な散布は益々困難であった。」

エ.3欄8行ないし4欄14行
「この発明は、以上説明した従来のプレアプセット方法の問題点に対処する目的のもとになされたものであって、この発明ではプレアプセットを行なうに先立ってビレットの上端面にガラスクロスを載置しておくことによって前述の問題点を解決したものである。
以下、図示の実施例に基づいて詳説する。
第2図乃至第4図は、この発明の実施例を工程順に示すものであって、11はコンテナ、12はビレット、13はビレット12の中心部に予じめ設けられたガイドホールであり、ビレット12の上端面にガラスクロス14が載置してあり、ガイドホール13の上方にはプレアプセット工具15が待機している。
第2図はプレアプセット前の状態を示すものであり、この状態からプレアプセット工具15を降下させ(第3図)、ビレット12上端面にプレアプセット工具15を押圧し、ガイドホール13の上部に円錐形状凹所を形成する(第4図)。
この発明方法によれば、ガラスクロス14はビレット12上端面に載置されて、ビレット12と接する側は溶けはじめるが、繊維間の断熱効果により、それ以外の部分は溶けずに、第2図の状態では布状をそのまま保ち、プレアプセット工具15をガイドホール13内に進入させる際に、そこでの潤滑は溶けたガラスが介在する為に良好になされ、抵抗が少く入り易く、又、ガラスクロスを用いることで、潤滑剤の厚さも均一となり、しかも、ガイドホール13の角部において潤滑切れ(ガラス切れ)をおこすことも防止でき、この部分のメタルフローが乱れることも防止でき、製品管の内面性状、寸法精度も向上し、割れも防止でき、さらにガラス粉末の無駄もなくなる。」

オ.甲2発明
上記エ.の「ガラスクロス14はビレット12上端面に載置されて、ビレット12と接する側は溶けはじめるが、・・・プレアプセット工具15をガイドホール13内に進入させる際に、そこでの潤滑は溶けたガラスが介在する為に良好になされ」という記載からみて、ガラスクロス14は部分的に溶融して、ガイドホール13の表面上に、少なくとも部分的に存在するといえるし、当該溶融したものを「コーティング」ということができる。
また、ビレット12は加熱されている(上記ア.)から、その端面に載置されるガラスクロス14がビレット12によって加熱されることは明らかである。
そうすると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という)が記載されていると認められる。
「ガラスクロス14を、ガイドホール13を有しかつ加熱された金属ビレット12の端面に載置すること、及び前記ガラスクロス14を加熱して、前記金属ビレット12のガイドホール13の表面上に、少なくとも部分的に溶融した、接着したコーティングを形成すること、及び前記ガラスクロス14上から前記金属ビレットの端面にプレアプセット工具15を押圧して円錐形状凹所を形成することを含む方法。」

(3)甲3の記載及び甲3記載の発明
甲3には、「熱間押出し製管方法」について、以下に示す事項及び発明が記載されている。
ア.甲3の記載事項
「【請求項1】 熱間押出しにより管を製造するにあたり、中心部にマンドレル挿通孔を有しないガラス系の保温材を、加熱されたビレット後端面の心孔開口部を含む後端面全体に付着させ、しかる後にマンドレルにより断熱材の中心部を突き破ってビレット内にマンドレルを通し、該ビレットを押出すことを特徴とする熱間押出し製管方法。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間押出しにより管を製造する熱間押出し製管方法に関し、特に、エチレプラントの伝熱管等に使用される内面フィン付き管の製造に適した熱間押出し製管方法に関する。」
「【0007】本発明の目的は、ビレットの後端部を効果的に保温し、しかも、その保温材の保持が容易で、保温材による浸炭の懸念もない熱間押出し製管方法を提供することにある。」
「【0010】また、これと合わせて、ガラス系の保温材は、加熱されたビレットの後端面に押し付けられると、軟化してその後端面に強固に接着され、その結果、保温材を保持する必要がなくなること、及びビレットの中心孔にマンドレルを挿入する段階で、保温材が心孔内に押し込まれずに中心部が容易に破断すること、更には破断部あるいは破断片が心孔の開口部近傍の内面保温や内面潤滑に寄与することも知見できた。」
「【0014】ビレット1の後端面に押し付けられた保温材2は、後端面との接触面が直ちに加熱軟化して後端面に接着される。ビレット1に対する保温は、後端部の特にマンドレルと接する内面近傍が重要であるが、保温材2は中心部にマンドレル挿通孔を有しない盲形状であるため、接着直後より後端面からの放熱と合わせて、この後端部内面からの放熱も抑える。」
「【0016】マンドレル4の挿通の際、マンドレル4は、保温材2がダミーブロック5で押圧固定される前に保温材2に当たるが、ガラス系の保温材2は破れ易く、また、ビレット1の後端面に強力に接着されているので、マンドレル4と共にビレット1の心孔内に押し込まれることなく、その中心部が破れ、保温材2の後端面からの離脱が防止される。従って、ビレット1の後端面とダミーブロック5との間に保温材2が介在し、押出し中のダミーブロック5を介した抜熱が抑えられる。」
「【0019】保温材2としてはガラス系のものを用いるが、具体的にはガラスウールまたはガラス繊維の抄造物、織物または積重物等である。」
「【0023】表1のビレットを素材として表2の内面フィン付き管を熱間押出しにより製造するにあたり、1150℃に加熱されたビレットの後端面に、表3のA?Hに示す保温材を加熱炉出口で装着し、しかる後に内外面潤滑処理、コンテナへのビレット装入、アプセットを経て各50本製管を行った。製造された内面フィン付き管の山部欠損発生率、内面凹凸疵発生率および浸炭発生率、更に保温材のビレット搬送時の脱落率を整理して表4に示す。」

イ.甲3発明
上記ア.の「ビレット1の後端面に押し付けられた保温材2は、後端面との接触面が直ちに加熱軟化して後端面に接着される」(【0014】)という記載からみて、ガラス繊維の織物である保温材2は、ビレット1によって加熱され、ビレット1の後端面に、少なくとも部分的に溶融して、接着されるといえる。また、そのように接着したものを「コーティング」ということができる。
そうすると、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という)が記載されていると認められる。
「ガラス繊維の織物である保温材2を、加熱されたビレット1の端面に載置すること、及び
前記ガラス繊維の織物である保温材2を加熱して、前記ビレット1の後端面に、少なくとも部分的に溶融した、接着したコーティングを形成させること、
前記ガラス繊維の織物である保温材2の上から前記ビレット1内にマンドレル4を通して前記ビレット1を熱間押出しする方法であって、前記ビレット1を1150℃の温度に加熱する方法。」

(4)甲4の記載及び甲4発明
甲4の記載及び甲4発明は、上記第5の2.(1)に示すとおりである。

4.申立理由1(請求項1)について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「ガラスクロス25」が本件発明1の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「一端面に凹所24が形成され、かつ加熱された金属ビレット20の前記凹所24に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当する。
また、甲1発明の「ガラス粉末等の潤滑剤26」と本件発明1の「ガラス粒子のスラリー」は、「ガラス材料」という点で共通するから、甲1発明の「ガラス粉末等の潤滑剤26を前記ガラスクロス25上に供給すること」と本件発明1の「ガラス粒子のスラリーを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること」は、「ガラス材料を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること」という点で共通する。
同様に、甲1発明の「前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26を加熱して、前記金属ビレット20の前記凹所24上に、少なくとも部分的に溶融した、コーティングを、潤滑させるように形成すること」と本件発明1の「前記ガラス繊維の織布及び前記ガラス粒子のスラリーを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成すること」は、「前記ガラス繊維の織布及び前記ガラス材料を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること」という点で共通する。
そして、甲1発明の「工具10を、前記潤滑剤26及び前記ガラスクロス25上から前記凹所24に嵌入し、次いでガイドホール21に沿って圧入することにより、前記ガイドホール21を拡孔する」ことと、本件発明1の「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことは、「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、ガラス材料を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び前記ガラス繊維の織布及び前記ガラス材料を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法。」

<相違点1>
表面コーティングを形成するのが、本件発明1では「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させる」ためであるのに対し、甲1発明では「潤滑させる」ためである点。

<相違点2>
熱間加工が、本件発明1では「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことであるのに対して、甲1発明では「工具10を、前記潤滑剤26及び前記ガラスクロス25上から前記凹所24に嵌入し、次いでガイドホール21に沿って圧入することにより、前記ガイドホール21を拡孔する」ことである点。

<相違点3>
ガラス材料が、本件発明1は「ガラス粒子のスラリー」であるのに対して、甲1発明は「ガラス粉末等の潤滑剤26」である点。

(2)相違点2の判断
事案に鑑み、上記(1)の相違点2について検討する。
本件発明1は熱間加工について、「前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み」と特定されているから、「引抜鍛造」を含んでいるが、甲1には、引抜鍛造ついて記載や示唆はない。
また、甲1発明は、「ビレットの該拡孔部の内面性状の劣化を招き、斯様なホロビレットを用いて金属押出プレスで金属管を押出加工することは、品質の悪い金属管を得る要因となっている」(上記3.(1)ア.)ことを課題とするものであり、相違点2に係る甲1発明の構成により、最適なメタルフローで拡孔が行われるというものであるから、甲1に接した当業者は、仮に甲1発明の相違点2に係る構成を引抜鍛造に置き換えれば、ビレットの断面が圧縮されてガイドホール21の孔径が小さくなってしまい、拡孔とは正反対の結果となるから、そのような置き換えをすることはない。
したがって、上記(1)の相違点2は、申立人のいう周知技術を検討するまでもなく、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)の相違点2は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由1により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。

5.申立理由2(請求項2)について
(1)本件発明2と甲1発明との対比
甲1発明の「ガラスクロス25」が本件発明2の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「一端面に凹所24が形成され、かつ加熱された金属ビレット20の前記凹所24に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当する。
また、甲1発明の「前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26を加熱して、前記金属ビレット20の前記凹所24上に、少なくとも部分的に溶融した、コーティングを、潤滑させるように形成すること」と本件発明2の「前記ガラス繊維の織布及び前記ガラステープを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること」は、「少なくとも前記ガラス繊維を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、及び少なくとも前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること
を含む方法。」

<相違点1>
本件発明2は「ガラステープを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること」を含むのに対して、甲1発明は「ガラス粉末等の潤滑剤26を前記ガラスクロス25上に供給すること」を含む点。

<相違点2>
加熱の対象が、本件発明2は「前記ガラス繊維の織布及び前記ガラステープ」であるのに対して、甲1発明は「前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26」である点。

(2)相違点1の判断
甲1発明は、「ビレットの該拡孔部の内面性状の劣化を招き、斯様なホロビレットを用いて金属押出プレスで金属管を押出加工することは、品質の悪い金属管を得る要因となっている」(上記3.(1)ア.)ことを課題とするものであるが、その課題は、「潤滑剤の全部が完全に溶融されず、この結果、固体と半溶融状態が混在」(上記3.(1)ア.)することを原因として生じるものである。
そして、甲1発明は、ガラス粉末等の潤滑剤26を採用することで、ガラス粉末を溶融させて潤滑作用を実現しているところ、甲3、7ないし9に「ガラステープ」が示されているとしても、甲1発明のようにガイドホールを拡孔する際に、ガラスクロス上に供給することまで周知技術とはいえない。
また、ガラステープを甲1発明のガラスクロス25上に供給することで、甲1発明のガラス粉末と同等程度以上に溶融するかどうかは不明であるから、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明の「ガラス粉末等の潤滑剤26」に代えて「ガラステープ」を採用し、「ガラステープを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させる」ように構成するとはいえない。

(3)小括
上記(1)の相違点1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由2により、本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。

6.申立理由3(請求項3)について
(1)本件発明3と甲1発明との対比
甲1発明の「ガラスクロス25」が本件発明3の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「一端面に凹所24が形成され、かつ加熱された金属ビレット20の前記凹所24に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当する。
また、甲1発明の「前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26を加熱して、前記金属ビレット20の前記凹所24上に、少なくとも部分的に溶融した、コーティングを、潤滑させるように形成すること」と本件発明3の「前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること」は、「少なくとも前記ガラス繊維を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、及び少なくとも前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること
を含む方法。」

<相違点1>
本件発明3は「セラミック繊維の織布を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること」を含むのに対して、甲1発明は「ガラス粉末等の潤滑剤26を前記ガラスクロス25上に供給すること」を含む点。

<相違点2>
加熱の対象が、本件発明3は「前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布」であるのに対して、甲1発明は「前記ガラスクロス25及び前記潤滑剤26」である点。

(2)相違点1の判断
上記5.(2)で説示するとおり、甲1発明は、ガラス粉末等の潤滑剤26を採用することで、ガラス粉末を溶融させて潤滑作用を実現しているところ、一般に「セラミック」が「ガラス」を含む概念であるとしても、「織布」と「粉末」は概念が異なり、セラミック繊維の織布を甲1発明のガラスクロス25上に供給することで、甲1発明のガラス粉末と同等程度以上に溶融するかどうかは不明であるから、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明の「ガラス粉末等の潤滑剤26」に代えて「セラミック繊維の織布」を採用し、「セラミック繊維の織布を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させる」ように構成するとはいえない。

(3)小括
上記(1)の相違点1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由3により、本件発明3に係る特許を取り消すことはできない。

7.申立理由4及び5(請求項3)について
(1)本件発明3と甲3発明との対比
甲3発明の「ガラス繊維の織物である保温材2」が本件発明3の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「加熱されたビレット1の端面に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当する。
また、甲3発明の「前記ガラス繊維の織物である保温材2を加熱して、前記ビレット1の後端面に、少なくとも部分的に溶融した、接着したコーティングを形成させること」と本件発明3の「前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること」は、「少なくとも前記ガラス繊維を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、及び少なくとも前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること
を含む方法。」

<相違点1>
本件発明3は「セラミック繊維の織布を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること」を含むのに対して、甲3発明は「ガラス繊維の織物」の上に他の織布を付着させるかどうか不明な点。

<相違点2>
加熱の対象が、本件発明3は「前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布」であるのに対して、甲3発明は「前記ガラス繊維の織物である保温材2」である点。

(2)相違点1の判断
甲3には、「保温材2としてはガラス系のものを用いるが、具体的にはガラスウールまたはガラス繊維の抄造物、織物または積重物等である」(上記3.(3)ア.の【0019】)との記載はあるが、当該記載の「織物または積重物」は、「ガラスウールまたはガラス繊維の」「織物」又は、「ガラスウールまたはガラス繊維の」「積重物」を意味すると解されるから、「織物」すなわち織布を積み重ねることが示されているわけではない。
また、甲3には「マンドレル4の挿通の際、マンドレル4は、保温材2がダミーブロック5で押圧固定される前に保温材2に当たるが、ガラス系の保温材2は破れ易く、また、ビレット1の後端面に強力に接着されているので、マンドレル4と共にビレット1の心孔内に押し込まれることなく、その中心部が破れ、保温材2の後端面からの離脱が防止される」(上記3.(3)ア.の【0016】)との記載があり、保温材2には、マンドレル4が挿通する際の破れやすさという機能が求められることを理解できるところ、織布を少なくとも2層積み重ねれば、破れやすさという機能が阻害されることは明らかであるから、甲3の記載に接した当業者が、甲3発明の「ガラス繊維の織物」の上に他の織布を付着させることはない。
したがって、一般に、「セラミック」が「ガラス」を含む概念であるとしても、上記(1)の相違点1は、申立人のいう周知技術を検討するまでもなく、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示すとおり、本件発明3と甲3発明には、相違点1及び2が存在するから、本件発明3が甲3に記載された発明であるということはできない。
また、上記(1)の相違点1は、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由4及び5により、本件発明3に係る特許を取り消すことはできない。

8.申立理由6及び7(請求項4及び5)について
(1)本件発明4又は5と甲1発明との対比
本件発明4又は5には、本件発明1と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、本件発明4又は5と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記4.(1)の相違点2と同様の相違点が存在する。

(2)相違点の判断
本件発明4又は5の上記(1)に示す事項に係る相違点は、上記4.(2)で説示する理由と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示す事項に係る相違点は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4又は5は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由6及び7により、本件発明4及び5に係る特許を取り消すことはできない。

9.申立理由8及び9(請求項6)について
(1)本件発明6と甲1発明との対比
本件発明6には、本件発明1と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記4.(1)の相違点2と同様の相違点が存在する。

(2)相違点の判断
上記(1)に示す事項に係る相違点は、上記4.(2)で説示する理由と同様の理由により、甲1発明又は甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示すとおり、本件発明6と甲1発明には相違点が存在するから、本件発明6が甲1に記載された発明であるということはできない。
また、上記(1)に示す事項に係る相違点は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1発明又は甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由8及び9により、本件発明6に係る特許を取り消すことはできない。

10.申立理由10及び11(請求項6)について
(1)本件発明6と甲2発明との対比
甲2発明の「ガラスクロス14」が本件発明6の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「ガイドホール13を有しかつ加熱された金属ビレット12の端面に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当し、「前記ガラスクロス14を加熱して、前記金属ビレット12のガイドホール13の表面上に、少なくとも部分的に溶融した、接着したコーティングを形成すること」が「前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを」「形成させること」に相当する。
また、甲2発明の「前記ガラスクロス14上から前記金属ビレットの端面にプレアプセット工具15を押圧して円錐形状凹所を形成すること」と、本件発明6の「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことは、「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法。」

<相違点1>
表面コーティングを形成するのが、本件発明6では「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させる」ためであるのに対し、甲2発明では不明な点。

<相違点2>
熱間加工が、本件発明6では「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことであるのに対して、甲2発明では「前記ガラスクロス14上から前記金属ビレットの端面にプレアプセット工具15を押圧して円錐形状凹所を形成する」ことである点。

<相違点3>
本件発明6は「前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱」しているのに対して、甲2発明はどのような温度でガラスクロス14を加熱しているのか不明な点。

(2)相違点2の判断
事案に鑑み、上記(1)の相違点2について検討する。
本件発明6は熱間加工について、「前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み」と特定されているから、「引抜鍛造」を含んでいるが、甲2には、引抜鍛造ついて記載や示唆はない。
また、甲2発明は、「従来のプレアプセット方法の問題点に対処する目的のもとになされたものであって、この発明ではプレアプセットを行なうに先立ってビレットの上端面にガラスクロスを載置しておくことによって前述の問題点を解決したものである」(上記3.(2)エ.)と記載されているように、プレアプセット、すなわちビレット12のガイドホール13を拡径するように、円錐状凹所を形成することを前提とするから、当然にビレット12の端面に力を加えている。
そうすると、甲2に接した当業者は、仮に甲2発明の相違点2に係る構成を引抜鍛造に置き換えれば、ビレットの断面が圧縮されてガイドホール13の孔径が小さくなってしまい、拡径とは正反対の結果となるから、そのような置き換えをすることはない。
したがって、上記(1)の相違点2は、申立人のいう周知技術を検討するまでもなく、甲2発明又は甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示すとおり、本件発明6と甲2発明には、相違点1ないし3が存在するから、本件発明6が甲2に記載された発明であるということはできない。
また、上記(1)の相違点2は、甲2発明又は甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2発明又は甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由10及び11により、本件発明6に係る特許を取り消すことはできない。

11.申立理由12及び13(請求項6)について
(1)本件発明6と甲3発明との対比
甲3発明の「ガラス繊維の織物である保温材2」が本件発明6の「ガラス繊維の織布」に相当し、以下同様に、「加熱されたビレット1の端面に載置すること」が「合金加工物上に配置すること」に相当し、「前記ガラス繊維の織物である保温材2を加熱して、前記ビレット1の後端面に、少なくとも部分的に溶融した、接着したコーティングを形成させること」が「前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを」「形成させること」に相当する。
また、甲3発明の「前記ガラス繊維の織物である保温材2の上から前記ビレット1内にマンドレル4を通して前記ビレット1を熱間押出しする方法であって、前記ビレット1を1150℃の温度に加熱する」と、本件発明6の「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことは、「前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱する上記の方法」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱する上記の方法。」

<相違点1>
表面コーティングを形成するのが、本件発明6では「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させる」ためであるのに対し、甲3発明では不明な点。

<相違点2>
熱間加工が、本件発明6では「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことであるのに対して、甲3発明では「前記ガラス繊維の織物である保温材2の上から前記ビレット1内にマンドレル4を通して前記ビレット1を熱間押出しする」ことである点。

(2)相違点の判断
事案に鑑み、上記(1)の相違点2について検討する。
本件発明6は熱間加工について、「引抜鍛造」を含んでいるが、甲3には、引抜鍛造について記載や示唆はない。
また、甲3発明は、「熱間押出しにより管を製造する熱間押出し製管方法に関」(甲3の【0001】)すると記載されているように、押出し製管方法を前提とするから、甲3に接した当業者は、仮に甲3発明の相違点2に係る構成を引抜鍛造に置き換えれば、管の断面が圧縮されて管の内径が小さくなってしまうから、そのような置き換えをすることはない。
したがって、上記(1)の相違点2は、申立人のいう周知技術を検討するまでもなく、甲3発明又は甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示すとおり、本件発明6と甲3発明には、相違点1及び2が存在するから、本件発明6が甲3に記載された発明であるということはできない。
また、上記(1)の相違点2は、甲3発明又は甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲3発明又は甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由12及び13により、本件発明6に係る特許を取り消すことはできない。

12.申立理由14ないし19(請求項7)について
(1)本件発明7と甲1ないし3発明との対比
本件発明7は、本件発明1又は6と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲1ないし3発明と対比すると、少なくとも、上記4.(1)の相違点2、上記10.(1)の相違点2又は上記11.(1)の相違点2と同様の相違点が存在する。

(2)相違点の判断
上記(1)に示す事項に係る相違点は、上記4.(2)、上記10.(2)又は上記11.(2)で説示する理由と同様の理由により、甲1ないし3発明又はそれらと周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)に示すとおり、本件発明7と甲1ないし3発明には相違点が存在するから、本件発明7が甲1ないし3に記載された発明であるということはできない。
また、上記(1)に示す事項に係る相違点は、甲1ないし3発明又はそれらと周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1ないし3発明又は甲1ないし3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由14ないし19により、本件発明7に係る特許を取り消すことはできない。

13.申立理由20及び21(請求項8及び9)について
本件発明8は、本件発明1ないし7のいずれかを引用し、本件発明9は、本件発明8を引用するところ、上記1.ないし12.に示すように、本件発明1ないし7に係る特許を取り消すことはできないから、上記申立理由20及び21により、本件発明8及び9に係る特許を取り消すことはできない。

14.申立理由22ないし24(請求項10ないし12)について
本件発明10には、本件発明1と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記4.(1)の相違点2と同様の相違点が存在する。
また、当該相違点は、上記4.(2)で説示する理由と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由22により、本件発明10に係る特許を取り消すことはできない。
そして、本件発明11及び12は、本件発明10を引用するから、上記申立理由23及び24により、本件発明11及び12に係る特許を取り消すことはできない。

15.申立理由25ないし33(請求項13)について
本件発明13は、本件発明1ないし12のいずれかを引用するところ、上記1.ないし14.に示すように、本件発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできないから、上記申立理由25ないし33により、本件発明13に係る特許を取り消すことはできない。

16.申立理由34ないし38(請求項14)について
本件発明14に係る特許は、訂正により削除された。

17.申立理由39及び40(請求項15)について
本件発明15には、本件発明23と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲4発明と対比すると、少なくとも、上記第5の2.(2)ア.の相違点2と同様の相違点が存在し、本件発明15が甲4に記載された発明であるということはできない。
また、当該相違点は、上記第5の2.(2)イ.で説示する理由と同様の理由により、申立人のいう周知技術について検討するまでもなく、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、甲4発明又は甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由39及び40により、本件発明15に係る特許を取り消すことはできない。

18.申立理由41ないし44(請求項16及び17)について
本件発明16及び17は、本件発明15を引用するところ、上記17.に示すように、本件発明15に係る特許を取り消すことはできないから、上記申立理由41ないし44により、本件発明16及び17に係る特許を取り消すことはできない。

19.申立理由45(請求項18)について
(1)本件発明18と甲4発明との対比
甲4発明の「粉末ガラス潤滑剤を含む高温ガラス潤滑剤に結合材を混合した泥状懸濁液」は本件発明18の「ガラス粒子のスラリー」に相当し、以下同様に、「低温で塗布して50?200μの厚さで被覆」することは「付着させること」に相当し、「インコネル」は「ニッケル基合金、ニッケル基超合金」に相当し、「ステンレス鋼」は「鉄基合金」に相当し、「高温押出し」は「前記合金加工物を熱間加工すること」に相当する。
また、甲4発明の「加工に必要な温度に加熱」することにより、泥状懸濁液も加熱されるとともに少なくとも部分的に溶融することも自明(上記第5の2.(1)ウ.の「溶融ガラス層」を参照)であるから、甲4発明において「加工温度域においても」「均一被膜を形成する」ことは、本件発明18の「前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを」「形成させる」ことに相当する。
また、甲4発明の「ステンレス鋼やインコネルのビレット等の被加工材」と、本件発明18の「インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している合金加工物」は、「合金加工物」という点で共通する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金から選択される合金を含む、上記の方法。」

<相違点1>
表面コーティングを形成するのが、本件発明18では「熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させる」ためであるのに対し、甲4発明では「高い潤滑性及び断熱性を発揮する」ためである点。

<相違点2>
熱間加工が、本件発明18では「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」ことであるのに対して、甲4発明では「高温押出し」である点。

<相違点3>
合金加工物が、本件発明18は「インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している」のに対し、甲4発明は「ステンレス鋼やインコネルのビレット等」である点。

<相違点4>
本件発明18では、「熱間加工後、前記合金加工物を室温に冷却し、そして前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること」を含むのに対し、甲4発明では、冷却や除去については不明である点。

(2)相違点2の判断
事案に鑑み、上記(1)の相違点2について検討する。
本件発明18には熱間加工について、「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み」と特定されているから、「引抜鍛造」を含んでいるが、甲4には、引抜鍛造について、記載や示唆はない。
また、甲4発明は、「押出し技術の確立を計る」(上記第5の2.(1)ウ.)ことを課題とし、「被加工材の押出し加工に有効な新規高温潤滑押出し方法に関する」(上記第5の2.(1)イ.)ものであり、押出し技術を前提として、新規な方法を提供しようとするものであるから、甲4に接した当業者は、仮に甲4発明の「高温押出し」を引抜鍛造に置き換えれば、甲4発明の課題を解決できないと認識し、そのような置き換えをすることはない。
したがって、上記(1)の相違点2は、申立人のいう周知技術を検討するまでもなく、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

(3)小括
上記(1)の相違点2は、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、上記(1)の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由45により、本件発明18に係る特許を取り消すことはできない。

20.申立理由46(請求項19)について
本件発明19は、本件発明18を引用するところ、上記19.に示すように、本件発明18に係る特許を取り消すことはできないから、上記申立理由46により、本件発明19に係る特許を取り消すことはできない。

21.申立理由47及び48(請求項20)について
本件発明20は、本件発明15を引用するところ、上記17.に示すように、本件発明15に係る特許を取り消すことはできないから、上記申立理由47及び48により、本件発明20に係る特許を取り消すことはできない。

22.申立理由49及び50(請求項21)について
本件発明21に係る特許は、訂正により削除された。

23.申立理由51(請求項22)について
本件発明22には、本件発明18と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲4発明と対比すると、少なくとも、上記19.(1)の相違点2と同様の相違点が存在し、当該相違点は、上記19.(2)で説示する理由と同様の理由により、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明22は、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由51により、本件発明22に係る特許を取り消すことはできない。

24.申立理由56(請求項27)について
本件発明27に係る特許は、訂正により削除された。

25.申立理由57ないし62(請求項28ないし30)について
本件発明28には、本件発明23と同様に「前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲4発明と対比すると、少なくとも、上記第5の2.(2)ア.の相違点2と同様の相違点が存在し、本件発明28が甲4に記載された発明であるということはできない。
また、当該相違点は、上記第5の2.(2)イ.で説示する理由と同様の理由により、甲4発明又は甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明28は、甲4発明又は甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由57及び58により、本件発明28に係る特許を取り消すことはできない。
そして、本件発明29及び30は、本件発明28を引用するから、上記申立理由59ないし62により、本件発明29及び30に係る特許を取り消すことはできない。

26.申立理由65及び66(請求項33)について
本件発明33に係る特許は、訂正により削除された。

27.申立理由67ないし72及び74ないし77(請求項34、35、36、38及39)について
本件発明34には、本件発明23と同様に、熱間加工について「前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる」という事項が特定されているから、甲4発明と対比すると、少なくとも、上記第5の2.(2)ア.の相違点2と同様の相違点が存在し、本件発明34が甲4に記載された発明であるということはできない。
また、当該相違点は、上記第5の2.(2)イ.で説示する理由と同様の理由により、甲4発明又は甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明34は、甲4発明又は甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、上記申立理由67及び68により、本件発明34に係る特許を取り消すことはできない。
そして、本件発明35、36、38及び39は、本件発明34を引用するから、上記申立理由69ないし72及び74ないし77により、本件発明35、36、38及び39に係る特許を取り消すことはできない。

28.申立理由78について
(1)特許法36条4項1号(実施可能要件)の判断枠組み
物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法2条3項1号)から、物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かによるというべきである。
これを踏まえて以下、検討する。

(2)本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載
「【0029】
図1を参照すると、本開示による熱クラッキングを低減させる合金加工物を処理加工する方法の非限定的実施形態は、一般的には、無機ガラス材料を合金インゴット又は他の合金加工物の一部上に付着させることと、・・・を含む。このガラス材料は、ガラス繊維、ガラス粒子、及びガラステープの1つ以上を含む断熱材料を含むことができる。・・・」
「【0036】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう加工物を処理加工する方法は、一般的には、加工物の表面の少なくとも一部分上にガラス粒子を付着させることを含む。・・・加工物の表面上に粒子を付着させることは、例えば、ローリング、浸漬、噴霧、刷毛塗、及び散布の1つ以上を含むことができる。・・・」

(3)「ガラス粒子のスラリー」の実施可能要件の判断
本件発明1、15、18、22ないし26、28、31、32、34及び37には、「ガラス粒子のスラリー」という事項が特定されているが、発明の詳細な説明には、「ガラス粒子のスラリー」が具体的には記載されていない。
しかし、発明の詳細な説明には、ガラス粒子を合金加工物の一部上に付着させること(【0029】)が記載され、合金加工物の表面上にガラス粒子を付着させる具体的手段として、浸漬、噴霧や刷毛塗(【0036】)が記載されている。
一般に、「浸漬」は、液体に浸すこと、「噴霧」は、液体を霧状に噴射すること、「刷毛塗」は、液体を刷毛で塗ることを意味するといえ、いずれも液体を対象とする塗布手段であるが、ガラス粒子自体は液体でないから、当業者であれば、浸漬、噴霧や刷毛塗は、ガラス粒子と液体が混在するものを対象としていると解するほかなく、このガラス粒子と液体が混在するものが「ガラス粒子のスラリー」に相当することは明らかである。
そして、当該スラリーの液体としては、浸漬、噴霧や刷毛塗によってガラス粒子を合金加工物の上に付着できるものを適宜に選択すればよいことは当業者であれば明らかであるところ、この程度の選択が、過度の試行錯誤を要するものとはいえない。
したがって、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件特許に係る出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、「ガラス粒子のスラリー」を製造し、使用することができる程度の記載があるということができ、上記申立理由78によって、本件発明1、15、18、22ないし26、28、31、32、34及び37、並びにそれらの発明を引用する本件発明8、9、13、16、17、19、20、29、30、35、36、38及び39に係る特許を取り消すことはできない。
なお、本件発明14、21、27及び33は、訂正により削除された。

29.申立理由79について
(1)特許法36条6項1号(サポート要件)の判断枠組み
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
これを踏まえて以下、検討する。

(2)「ガラス粒子のスラリー」のサポート要件の判断
上記28.(3)で説示するように、発明の詳細な説明には、「ガラス粒子のスラリー」が具体的には記載されていないから、本件発明1、8、9、13、15ないし20、22ないし26、28ないし32、34ないし39は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないが、当業者は、出願時の技術常識に照らし、スラリーの液体として、浸漬、噴霧や刷毛塗でガラス粒子を合金加工物の上に付着できるものを適宜に選択することによって、本件発明の課題を解決できると認識できるから、上記申立理由79によって、本件発明1、8、9、13、15ないし20、22ないし26、28ないし32、34ないし39に係る特許を取り消すことはできない。
なお、本件発明14、21、27及び33は、訂正により削除された。

30.申立理由80について
(1)特許法36条6項2号(明確性)の判断枠組み
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
これを踏まえて以下、検討する。

(2)「ニッケル基超合金」の明確性の判断
「超合金」という表記は、一般に使用された用語であって、金属学上に厳密な定義があるものではないが、合金のうち希土類元素等の配合やチッ素などの浸透や焼結処理の結果、一般金属では得られない特性を有した合金に対して与える呼称であると解される。
これをふまえれば、当業者は、「ニッケル基超合金」について、ニッケルの含有率が定義されていないとしても、単なる合金と異なる特性を有しているか否かによって区別が可能であると理解できるため、含有率が定義されていないからといって、直ちに「ニッケル基超合金」という記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、上記申立理由80によって、本件発明10、15、18、22ないし26、28、31、32、34及び37、並びにそれらの発明を引用する本件発明11ないし13、16、17、19、20、29、30、35、36、38及び39に係る特許を取り消すことはできない。
なお、本件発明14、21、27及び33は、訂正により削除された。

31.申立理由81について
「ガラス粒子のスラリー」は、本件特許に係る出願(特願2016-154138号)の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項2等に記載されているから、平成29年3月22日の手続補正書により、本件発明1、15、22、28及び34に「ガラス粒子のスラリー」という事項を特定するように補正しても、当該補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、上記申立理由81によって、本件発明1、8、9、13、15ないし20、22ないし26、28ないし32、34ないし39に係る特許を取り消すことはできない。
なお、本件発明14、21、27及び33は、訂正により削除された。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし13、15ないし20、22ないし26、28ないし32及び34ないし39に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし13、15ないし20、22ないし26、28ないし32及び34ないし39に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項14、21、27及び33に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項14、21、27及び33に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表面コーティングを介しての金属合金の熱間加工性の改善
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金インゴット及び他の合金加工物、これらを加工するための方法に関し、特に合金インゴット及び他の合金加工物の熱間加工性をそれらに表面コーティングを施すことによって改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な合金は、「ひび割れセンシティブ」であると特徴付けられ得る。ひび割れセンシティブ合金からなるインゴット及び他の加工物は、熱間加工操作中に、それらの表面及び/又はエッヂに沿ってひび割れを形成する場合がある。ひび割れセンシティブ合金から物品を形成することは、例えば、鍛造又は他の熱間加工操作中に形成されたひび割れが、研磨除去又は別様に除去される必要があり、これが生産時間と費用を増加させ、並びに収率を減少させるために、問題になる。
【0003】
鍛造及び押出法などのある熱間加工操作中に、ダイが合金加工物に力を加え、加工物を変形させる。ダイの表面と合金加工物の表面との間の相互作用は、熱移動、摩擦、及び摩耗に関与し得る。熱間加工中の表面及びエッヂのクラッキングを減少させる1つの従来の技術は、熱間加工前に合金加工物を金属合金製缶内に封入することである。例えば、円筒状加工物では、合金製缶の内径は、加工物の外径よりもわずかに大きくてもよい。合金加工物が、合金製缶内に挿入され得ることで、合金製容器は、加工物を緩やかに取り囲み、ダイが合金製缶の外側表面に接触する。合金製缶が、封入された加工物を断熱しかつ機械的に保護することによって、加工物のひび割れ形成の発生頻度を排除又は低減する。合金製缶は、加工物と合金製缶の内表面との間の空気間隙の作用によって、並びに合金加工物が環境へ熱を放出することを直接的に阻害することによっても合金加工物を断熱することが出来る。
【0004】
合金加工物を缶に詰める操作は、様々な不都合をもたらす場合がある。例えば、ダイと合金製缶の外表面との間の機械的接触は、合金製缶を破砕してしまう可能性がある。1つの特定なケースでは、缶に詰められた加工物の据込引抜鍛造過程中に、合金製缶が引抜き操作中に破砕する場合もある。このような場合には、合金加工物は、複数の据込引抜鍛造操作のそれぞれの据込引抜サイクル間に再度缶に詰められる必要があり得、このことが、加工複雑性と費用を増加させる。更に、合金製缶は、作業者がひび割れ又は他の加工に誘起された欠陥に関して、缶に詰めされた合金加工物の表面を目で監視することを妨害する可能性もある。
【0005】
前述の欠点を考慮すると、ひび割れセンシティブ合金を熱間加工する、より有効及び/又はよりコスト効果が高い方法を提供することは有益であろう。より一般的には、合金インゴット及び他の合金加工物の熱間加工性を改善するための方法を提供することは、有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
ある非限定的実施形態によると、合金インゴット及び他の合金加工物を処理加工するための方法が記載される。
【0007】
本明細書に開示される様々な非限定的実施形態は、合金加工物に表面コーティングを施すことによる合金加工物の熱間加工性を改善するための方法を目的とする。本開示による1つの非限定的実施形態では、合金加工物を処理加工する方法は、ガラス材料を合金加工物の少なくとも一部分に付着させることと、このガラス材料を加熱して、合金加工物からの熱損失を低減する表面コーティングを合金加工物上に形成させることと、を含む。この方法の様々な非限定的実施形態では、このガラス材料は、ガラス繊維、ガラス粒子、及びガラステープから選択され得る。様々な非限定的実施形態では、ガラス材料を合金加工物の少なくとも一部分に付着させることは、配置、噴霧、塗装、散布、ローリング、浸漬、巻き付け、及びテーピングの少なくとも1つを含む。様々な非限定的実施形態では、ガラス材料を加熱することは、ガラス材料を1000°F?2200°Fの温度に加熱することを含む。様々な非限定的実施形態では、加工物は、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される材料を含む。この方法の様な非限定的実施形態では、加工物は、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、焼成予備成形品等を含んでも又はこれらから選択されてもよい。この方法の様々な非限定的実施形態では、方法は、ガラス材料を加熱することに引き続いて、ダイ又はロールの少なくとも1つで力を加え、加工物を変形させること、熱間加工が鍛造及び押出法の少なくとも1つを含むことにおいてxx、加工物を熱間加工することは、鋳造および押し出し、加工物を冷却することと、ショットブラスティング、研削、剥離、及び旋削によって、表面コーティングを加工物から除去すること、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つによって、から選択される1つ以上の工程を更に含む。
【0008】
本開示による追加の非限定的実施形態では、加工物を熱間加工する方法は、ガラス繊維のブランケットを合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることと、ガラス繊維のブランケットを加熱して、加工物上に表面コーティングを形成させることと、ダイおよびロールの少なくとも1つが加工物の表面上の表面コーティングに接触する中で、ダイ又はロールの少なくとも1つで加工物に力を加え、加工物を変形させることと、表面コーティングの少なくとも一部分を加工物から除去すること、とを含む。様々な非限定的実施形態では、ダイ及びロールの少なくとも1つが、加工物の表面上の表面コーティングの少なくとも1つの残余物に接触する。この方法の様々な非限定的実施形態では、加工物は、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、焼成予備成形品等を含んでもよいか又はこれらから選択されてもよい。
【0009】
本開示による他の非限定的実施形態は、本開示のいずれかの方法により作製され又は加工処理された合金加工物を目的とする。
【0010】
本開示による更に他の非限定的実施形態は、本開示のいずれかの方法により作製され又は加工処理された合金加工物から作られた製品を目的とする。この様な製品としては、例えば、ジェットエンジン構成部品、地上接地タービン構成部品、バルブ、エンジン構成部品、シャフト、及び締結具が挙げられる。
【0011】
本明細書に記載される様々な非限定的実施形態は、添付の図面と兼ね合わせて以下の説明を考察することによって、より深く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に開示されるある非限定的実施形態による流れ図である。
【図2】本明細書に開示される非限定的実施形態による合金加工物の写真である。
【図3】本明細書に開示される非限定的実施形態による、そこに配置されたガラス繊維ブランケットを備える図2の加工物の写真である。
【図4】本明細書に開示される非限定的実施形態による加工物からの熱損失を低減する表面コーティングを備える図3の合金加工物の写真であり、ここでは、加工物は熱間加工されている。
【図5】図6及び7に示す表面コーティングを欠如する合金加工物の鍛造中並びに図6及び7に示す表面コーティングを含有する加工物の鍛造中の表面温度を経時的にプロットする図表である。
【図6】表面コーティングを欠如する鍛造した合金加工物の写真(各写真の右にある加工物)及び表面コーティングを含有する図4の鍛造した加工物の写真である(各写真の左側の加工物)。
【図7】表面コーティングを欠如する鍛造した合金加工物の写真(各写真の右にある加工物)及び表面コーティングを含有する図4の鍛造した加工物の写真である(各写真の左側の加工物)。
【図8】表面コーティングを欠如する合金加工物(「AIR COOL」)及び本明細書に開示される非限定的実施形態により、そこに表面コーティングを有する合金加工物の冷却中に温度を経時的にプロットする図表である。
【図9】本明細書に開示される非限定的実施形態による、表面コーティングをそこに含有する合金加工物の写真である。
【図10】本明細書に開示される非限定的実施形態による、表面コーティングを欠如する一部分と表面コーティングをそこに含有する一部分とを備える熱鍛造した合金加工物の写真である。
【図11】加工物から表面コーティングの少なくとも一部分を除去した後の図10の加工物の領域の写真である。
【図12】本明細書に開示される非限定的実施形態による、そこに表面コーティングを有する合金加工物の写真である。
【図13】本明細書に開示される非限定的実施形態による、そこに配置されたガラステープを備える合金加工物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある非限定的実施形態の説明
【0014】
本明細書で一般的に使用するとき、用語「本質的になる」及び「なる」は、用語「含む comprising」に盛り込まれる。
【0015】
本明細書で一般的に使用するとき、冠詞「one」、「a」、「an」、及び「the」は、別に指示されない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を指す。
【0016】
本明細書で一般的に使用するとき、用語「含む including」及び「有する having」は、「含む comprising」を意味する。
【0017】
本明細書で一般的に使用するとき、用語「軟化点」とは、特定のガラス材料がそれ以上剛性固体として挙動せず、それ自体の重量下で沈下し始める最低温度を指す。
【0018】
本明細書で一般的に使用するとき、用語「約」とは、所定の測定値の性質及び精度で測定された量に関する誤差の許容可能な程度を指す。典型的な例示的誤差の程度は、所定の値又は値の範囲の20%以内、10%以内、又は5%であり得る。
【0019】
本明細書に規定される全ての数値量は、別に指示されない限り、用語「約」によって全ての現実値において修正されていると理解されるべきである。本明細書で開示される数値量は、近似であり、各々の数値は、記載された値及びその値の周辺の機能的に等価な範囲の双方を意味するよう意図される。最低でも、並びに等価物の原理の特許請求の範囲への適用を制限しようとするものとしてではなく、各数値は、報告された有効数字の数を考慮し、かつ通常の切り上げ技術を適用することによって解釈されるべきである。本明細書に記載される数値量の近似とは別に、実際に測定された値のある実施例で記載される数値量が、可能な限り正確に報告されている。
【0020】
本明細書に記載される全ての数値範囲は、その中に組み込まれる全ての部分範囲を包含する。例えば、「1?10」の範囲及び1と10との間は、1の記載された最小値と10の記載された最大値との間及びそれらを含む全ての部分範囲を包含するよう意図される。本明細書に記載の任意の最大数値限界は、全てのより低い数値限界を包含するよう意図される。本明細書に記載の任意の最小数値限界は、全てのより高い数値限界を包含するよう意図される。
【0021】
以下の説明において、ある詳細が、本明細書に記載される物品及び方法の様々な非限定的実施形態の完全な理解をもたらすよう述べられている。当業者であれば、本明細書に記載される非限定的実施形態は、これら詳細なしに実行され得ることを理解されるであろう。他の例では、この物品及び方法に関連する周知の構造及び方法は、本明細書に記載される非限定的実施形態の説明を不要に混乱させることを回避するために、示されなくとも又は記載されなくともよい。
【0022】
本開示は、物品及び方法の多様な非限定的実施形態の様々な特徴、態様、及び利点を説明する。しかしながら、本開示は、本明細書に記載される多様な非限定的実施形態の様々な特徴、態様、及び利点のいずれかと組み合わせることによって達成され得る多数の代替的実施形態を包含することが理解される。
【0023】
例えば鍛造操作及び押出法操作などの熱間加工操作中に、加工物を可塑的に変形させるために、加工物の再結晶化温度以上などの周囲温度を超える温度で、合金インゴット又は他の合金加工物に力が加えられ得る。加工操作を実行する合金インゴット又は他の合金加工物の温度は、加工物の表面に力を機械的に加えるよう使用されるダイ又は他の構造の温度を超えることができる。この加工物は、周囲空気への熱損失及びその表面と接触するダイ又は他の構造との間の熱勾配オフセットによるその表面の冷却のために、温度勾配を形成し得る。この温度勾配は、熱間加工中の加工物の表面クラッキングに寄与し得る。表面クラッキングは、合金インゴット又は他の合金加工物がひび割れセンシティブな合金から形成されている状況では特に問題である。
【0024】
ある非限定的実施形態によると、合金加工物は、ひび割れセンシティブな合金を含み得る。例えば、様々なニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、コバルト基合金、及びニッケル基超合金などの超合金は、特に熱間加工操作中に、ひび割れセンシティブであり得る。合金インゴット又は他の加工物は、このようなひび割れセンシティブな合金及び超合金から形成され得る。例えば、ひび割れセンシティブな合金加工物は、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金から選択される合金又は超合金から形成され得るが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法は、ひび割れセンシティブな合金に関連しての使用のために有利であるが、この方法はまた、例えば、熱間加工温度での比較的低い延性によって特性化される合金、1000°F?2200°Fの温度で熱間加工される合金、及び一般的にはクラッキングを生じる傾向がない合金が挙げられる任意の合金に全般的に適用可能である。本明細書で使用するとき、用語「合金」とは、通常の合金及び超合金を包含する。当業者であれば理解さ
れるように、超合金は比較的良好な表面安定性、腐食及び酸化耐性、高強度、並びに高温での耐クリープ性を呈する。様々な非限定的実施形態では、合金加工物は、インゴット、ビレット、バー、プレート、焼成予備形成品等を含んでもよく又はこれらから選択されてもよい。
【0025】
合金インゴット又は他の合金加工物は、例えば、通常の冶金法又は粉末冶金法を用いて成形され得る。例えば、様々な非限定的実施形態では、合金インゴット又は他の合金加工物は、VIM-VAR操作として既知の、真空誘導融解(VIM)と真空アーク再融解(VAR)の組み合わせによって成形され得る。様々な非限定的実施形態では、合金加工物は、三重融解法によって成形されてもよく、この場合、VIM操作とVAR操作の中間でエレクトロ再融解(ESR)操作が実施され、VIM-ESR-VAR(すなわち、三重融解)シーケンスを提供する。他の非限定的実施形態では、合金加工物は、溶融合金の噴霧化並びに得られた冶金粉末の回収及びその合金加工物中への圧密化を含む粉末冶金操作を使用して成形され得る。
【0026】
ある非限定的実施形態では、合金インゴット又は他の合金加工物は、溶射成形操作を使用して成形され得る。例えば、VIMが使用され、供給材料からベース合金を調製し得る。ESR操作は、VIM後に必要に応じて使用されてもよい。溶融合金が、VIM又はESR融解プールから抽出され、融解液滴を形成することができる。この溶融合金が、例えば、低温壁誘導ガイド(CIG)を使用して、溶融プールから抽出され得る。溶融合金液滴が、溶射成形操作を使用して堆積され、凝固合金加工物を成形することができる。
【0027】
ある非限定的実施形態では、合金インゴット又は他の合金加工物は、高温静水圧プレス法(HIP)を使用して成形され得る。HIPとは、一般的には、粉末材料を一体化した予備成形品に圧縮かつ硬化するために、例えばアルゴンなどの高圧及び高温ガスの静水圧の適用を指す。この粉末は、ガスと圧縮されかつ硬化される粉末との間の圧力バリアーとして機能する気密封入容器によって、高圧及び高温ガスから分離され得る。この気密封入容器は、粉末を圧縮するよう可塑的に変形することができ、高温が個々の粉末粒子を一緒に効果的に焼成し、一体化した予備成形品を成形する。均一な圧縮圧が粉末全体に加えられ得、均質な密度分布が予備成形物において達成され得る。例えば、近等原子のニッケル-チタン合金粉末が、例えばスチール缶などの金属製容器内に装填され、吸着された水分及び閉じ込められたガスを除去するようガス放出され得る。近等原子ニッケル-チタン合金粉末を含有する容器は、例えば、溶接によるなどで、真空下で気密密閉され得る。次いで、密閉された容器が、ニッケル-チタン合金粉末の完全な高密度化を容器内で達成するために十分な温度及び圧力下でHIPされ得、これによって、完全に高密度化された近等原子のニッケル-チタン合金予備成形品を成形する。
【0028】
ある非限定的実施形態によると、合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的には、無機材料を合金加工物の少なくとも一部分上に付着させることと、この無機材料を加熱して、加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成することとを含む。この無機材料は、例えば、繊維、粒子、及びテープから選択される材料を含む1つ以上の断熱材料を含んでもよい。この無機材料は、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化ホウ素等の1つ以上を含んでもよい。この無機材料は、例えば、500°F?2500°F及び1000°F?2200°Fなどの500°F以上の融点又は軟化点を有してもよい。この方法は、例えば、無機材料を合金加工物の表面の少なくとも一部分上に付着させることと、無機材料を加熱して、加工物上に表面コーティングを形成し、加工物からの熱損失を低減させることと、を含むことができる。様々な非限定的実施形態では、無機材料を加熱することは、1000°F?2200°Fなどの鍛造温度で無機材料を加熱することを含む。無機材料の組成及び形態は、鍛造温度で粘性表面コーティングを形成するよう選択され得る。この表面コーティングは、合金加工物の表面に接着することができる。表面コーティングは、接着表面コーティングとして特性化され得る。表面クラッキングを排除又は低減することに加えて、本開示による表面コーティングはまた、熱間加工操作中の合金インゴット又は他の合金加工物の表面を滑らかにすることも可能である。
【0029】
図1を参照すると、本開示による熱クラッキングを低減させる合金加工物を処理加工する方法の非限定的実施形態は、一般的には、無機ガラス材料を合金インゴット又は他の合金加工物の一部上に付着させることと、このガラス材料を加熱して、加工物上に表面コーティングを形成させて、加工物からの熱損失を低減させることと、を含む。このガラス材料は、ガラス繊維、ガラス粒子、及びガラステープの1つ以上を含む断熱材料を含むことができる。加工物上に提供されるガラス材料は、ガラス材料が好適な温度で加熱される場合、加工物上に粘性表面コーティングを形成し得る。このガラス材料の組成及び形態は、鍛造温度で粘性の表面コーティングを形成するよう選択され得る。ガラス材料表面コーティングは、加工物の表面に接着し、熱間加工まで並びに熱間加工中に表面上に保持され得る。ガラス材料表面コーティングは、接着表面コーティングとして特性化されることができる。ガラス材料を加熱することによってもたらされるガラス材料表面コーティングは、加工物からの熱損失を低減させ得、並びに鍛造、押出法、又は合金加工物を別様で加工することから生じる表面クラッキングの発生頻度を、このような表面コーティングを欠如する別の同様な合金加工物に比較して排除又は低減させ得る。表面クラッキングを排除又は低減させることに加えて、本開示によるガラス材料表面コーティングはまた、熱間加工操作中に合金加工物の表面を滑らかにすることも可能である。
【0030】
ある非限定的実施形態では、無機繊維は、ガラス繊維を含むことができる。このガラス繊維は、連続繊維及び/又は不連続繊維を含むことができる。不連続繊維は、例えば、連続繊維を切断するか又は細断することにより作製されてもよい。このガラス繊維は、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、及びMgOの1つ以上を含んでもよい。このガラス繊維は、例えば、ケイ酸アルミン酸マグネシウム繊維を含んでもよい。このガラス繊維は、例えば、E-ガラス繊維、S-ガラス繊維、S2ガラス繊維、及びR-ガラス繊維からなる群から選択されるケイ酸アルミン酸マグネシウム繊維を含んでもよい。E-ガラス繊維は、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、CaO、MgO、及び他の酸化物の1つ以上を含むことができる。S-ガラス繊維及びS2-ガラス繊維は、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、MgOの1つ以上を含むことができる。R-ガラス繊維は、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、CaO、及びMgOの1つ以上を含むことができる。ある非限定的実施形態では、この無機繊維は、耐火セラミック繊維を含んでもよい。この耐火セラミック繊維はアモルファスであり得、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、及びZrO_(2)の1つ以上を含むことができる。
【0031】
ある非限定的実施形態によると、複数のガラス繊維は、ブンドル、ストリップ又はトウ、織布、及びボードの1つ以上を含んでもよい。本明細書で一般的に使用されるとき、「織布」とは、織られた、編まれた、フェルト化された、融合された材料、又は不織布材料、若しくは繊維から構成された別のものを指す。この織布は、複数の繊維を一緒に保持するための結合剤を含んでもよい。ある非限定的実施形態では、この織布は、糸、ブランケット、マット、紙、フェルト等を含んでもよい。ある非限定的実施形態では、ガラス繊維は、ガラスブランケットを含んでもよい。このガラスブランケットは、例えば、E-ガラス繊維を含むことができる。本開示による実施形態において有用であるE-ガラス繊維を含む例示的ガラスブランケットとしては、0.062インチの厚さを有する「Style 412」及び「Style 412B」の商品名でAnchor Industrial Sales,Inc.(Kernersville,NC)から市販される繊維、24oz./yd^(2)の重量及び1000°Fの温度定格を有するE-ガラス繊維が挙げられるが、これに限定されない。例えば、このガラス織布は、例えば、E-ガラスブランケットなどの繊維ガラスブランケットを含んでもよい。この織布は、加工物の少なくとも一部分を覆うために任意の好適な幅及び長さを有することができる。織布の幅及び長さは、加工物の寸法及び/又は形状にしたがって異なることができる。織布の厚さは、織布の熱伝導性に従って異なることも可能である。ある非限定的実施形態では、織布は、5?20mm又は8?16mmなどの1?25mmの厚さを有し得る。
【0032】
ある非限定的実施形態によると、無機粒子は、ガラス粒子を含むことができる。このガラス粒子は、「フリット」又は「フィラー」と呼ばれる場合がある。このガラス粒子は、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ナトリウム及び酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化ホウ素等の1つ以上を含むことができる。ある非限定的実施形態では、例えば、ガラス粒子は、鉛を含まないか、又は痕跡レベルの鉛を含むことが可能である。ある実施形態では、ガラス粒子は、1400?1850°F、1850?2050°F、1850?2100°F、又は1900?2300°Fなどの1400?2300°Fの金属熱間加工範囲を有し得る。本開示による実施形態で有用な例示的ガラス粒子としては、商品名「Oxylub-327」、「Oxylub-811」、「Oxylub-709」、及び「Oxylub-921」でAdvanced Technical Products(Cincinnati,OH)から市販される材料が挙げられる。
【0033】
ある非限定的実施形態によると、無機テープは、ガラステープを含むことができる。ある実施形態では、このガラステープはガラス裏材と接着剤とを含むことができる。このガラス裏材は、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ナトリウム及び酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化ホウ素等の1つ以上を含んでもよい。このガラス裏材は、ガラス糸、ガラス織布、及びガラス布などのガラス繊維を含んでもよい。このガラス裏材は、ガラスフィラメントを含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、ガラステープは、ガラス繊維フィラメント補強包装テープを含み得る。様々な非限定的実施形態では、このガラステープは、ガラス布裏材又はガラス糸又はフィラメントで充満させたテープを有する接着テープを含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、このガラステープは、連続するガラス糸で補強されたポリプロピレン裏材を含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、このガラステープは、ASTM試験法D-3330による、幅(60N/100mmの幅)での約55oz./inの鋼への接着;ASTM試験法D-3759による幅(5250N/100mmの幅)での約300lbs/inの引張強度;ASTM試験法D-3759による約4.5%の破断での延び;及び/又はASTM試験法D-3652による約6.0ミル(0.15mm)の全体の厚さが挙げられる特性を有することができる。本開示による実施形態において有用な例示的ガラステープは、商品名SCOTCH(登録商標)Filament Tape 893で3M Company(St.Paul,MN)から市販されている。
【0034】
ある非限定的実施形態によると、合金インゴット又は他の合金加工物を、熱間加工中に熱クラッキングを低減させる方法で処理加工する方法は、一般的には、ガラス織布を加工物の少なくとも一部分上に配置させることを含む。ある非限定的実施形態では、この織布は、加工物の表面の実質的部分上に配置され得る。合金加工物の表面は、例えば、円周囲面及びこの円周囲面の各端部で配置された2つの外側面を含むことができる。ある非限定的実施形態では、織布は、円筒状合金加工物の円周囲表面の実質的部分上に配置され得る。ある非限定的実施形態では、織布は、円筒状加工物の円周囲面と、円筒状加工物の少なくとも1つの外側面に配置され得る。少なくとも1つの非限定的実施形態では、ガラスブランケットが、円筒状加工物の円周囲面の少なくとも一部分と、円筒状加工物の少なくとも1つの外側面に配置され得る。ある非限定的実施形態では、2枚、3枚、又はそれ以上など1枚以上のガラス織布が、それぞれ円筒状加工物の円周囲面の少なくとも一部分及び/又は円筒状加工物の少なくとも1つの外側面に配置され得る。例えば、織布は、加工物の円周囲面の周りに織布を横方向に巻き付けることによって配置され得る。当業者であれば、ある非限定的実施形態において、ガラス織布が、接着剤及び/又は、例えばガラステープ及びベールワイヤなどの機械的締結具を使用して加工物に固定され得ることが理解されるであろう。
【0035】
ある非限定的実施形態では、熱間加工中の熱クラッキングを低減させるように合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、加工物の表面の少なくとも一部分上にガラス織布を配置させる工程を繰り返すことを含むことができる。例えば、織布は、少なくとも1回、2回、3回、4回、又は4回以上にわたって加工物の周りに巻き付けられてもよい。ある非限定的実施形態では、織布は、所定の厚さが達成されるまで、加工物の周りに巻き付けられてもよい。あるいは、所定の厚さが達成されるまで、1つ以上のガラス織布が、円筒状加工物の円周囲面の少なくとも一部分並びに円筒状加工物の各外側面の少なくとも1つに配置されてもよい。例えば、この所定の厚さは、10mm?40mmなどの1mm?50mmであってもよい。少なくとも1つの非限定的実施形態では、この方法は、加工物の表面の少なくとも一部分に第1のガラス織布を配置することと、第1のガラス織布の少なくとも1つ及び加工物の表面の少なくとも一部分に第2のガラス織布を配置されることとを含んでもよい。第1のガラス織布及び第2のガラス織布は、同一の又は異なる無機材料を含んでもよい。例えば、第1のガラス織布がE-ガラスブランケットを含み、第2のガラス織布が第2のE-ガラス織布を含むことが可能である。1つの非限定的実施形態では、第1のガラス織布がE-ガラスブランケットを含み、第2のガラス織布が、アルミナ-シリカ耐火粘度から作成された材料であるKAOWOOLブランケットなどのセラミックブランケットを含むことが可能である。
【0036】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう加工物を処理加工する方法は、一般的には、加工物の表面の少なくとも一部分上にガラス粒子を付着させることを含む。ある非限定的実施形態では、この粒子は、加工物の表面の実質的部分上に付着され得る。ある非限定的実施形態では、この粒子は、円筒状加工物の円周囲面上及び/又は円筒状加工物の少なくとも1つの外側面に付着され得る。加工物の表面上に粒子を付着させることは、例えば、ローリング、浸漬、噴霧、刷毛塗、及び散布の1つ以上を含むことができる。この方法は、粒子を付着させることに先立って、加工物を所定の温度まで加熱することを含んでもよい。例えば、加工物は、1000°F?2000°F、及び1500°Fなどの鍛造温度まで加熱され得、ガラス粒子床で回転され、ガラス粒子を加工物の表面上に付着させる。
【0037】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的には、ガラステープを加工物の表面の少なくとも一部上に配置させることを含むことができる。ある非限定的実施形態では、このテープは、加工物の表面の実質的部分上に配置され得る。ある非限定的実施形態では、このテープは、円筒状加工物の円周囲面及び/又は加工物の少なくとも1つの外側面上に配置され得る。加工物の表面上にテープを配置させることは、例えば、巻き付け及びテーピングの1つ以上を含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、例えば、テープを加工物の円周囲面の周りに横方向に巻き付けることによって、テープが配置され得る。ある非限定的実施形態では、テープを加工物の表面上に接着させることによって、テープが表面上に配置され得る。ある非限定的実施形態では、テープは、円筒状合金加工物の表面の少なくとも一部分及び/又はガラスブランケットの少なくとも一部分上に配置されてもよい。例えば、図13は、合金インゴットの形態の合金加工物の写真であり、これは、加工物の円周囲面上と加工物の対向する端部または面上に配置されたガラステープを有する。
【0038】
ある非限定的実施形態では、熱クラッキングを低減させるように合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、加工物の表面の少なくとも一部分上にガラステープを配置させる工程を1回以上にわたり繰り返すことを含むことができる。例えば、テープは、少なくとも1回、2回、3回、4回、又は4回以上にわたって加工物の周りに巻き付けられてもよい。少なくとも1つの非限定的実施形態では、この方法は、加工物の表面の少なくとも一部分に第1のガラステープを巻き付けることと、第1のガラステープの少なくとも1つ及び加工物のテープが巻かれていない表面の少なくとも一部分に第2のガラステープを巻き付けることとを含んでもよい。1つの非限定的実施形態では、この方法は、第1のガラステープを加工物の表面の少なくとも一部にテーピングすることと、第1のガラステープの少なくとも1つに及び加工物のテープが巻かれていない表面に第2のガラステープをテーピングすることとを含んでもよい。第1のガラステープ及び第2のガラステープは、同一の又は異なる無機材料を含んでもよい。ある非限定的実施形態では、所定の厚さが達成されるまで、テープが合金加工物上に配置され得る。あるいは、所定の厚さが達成されるまで、1つ以上のガラステープが円筒状合金インゴット又は他の合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上と、円筒状加工物の各外側面の少なくとも1つに配置され得る。所定の厚さは、例えば、10mm?40mmなどの1mm未満から50mmであることができる。
【0039】
ある非限定的実施形態によると、合金加工物上に提供されたガラス材料は、ガラス材料が加熱される場合、加工物上に粘性表面コーティングを形成し得る。ガラス材料をその上に含む加工物は、炉内で加熱され得る。ガラス材料の組成は、鍛造温度で粘性表面コーティングを形成するよう選択され得る。例えば、ガラス材料を含む酸化物が、鍛造温度などの所定の温度にて融点又は軟化点を有するガラス材料をもたらすよう選択されてもよい。別の例では、ガラス材料の形態、すなわち、繊維、粒子、テープ、及びこれらの任意の組み合わせが、鍛造温度などの所定の温度にて粘性表面コーティングを形成するよう選択されてもよい。加工物の表面上に提供されたガラス織布は、ガラス材料が、例えば1900°F?2100°Fの温度にて、炉内で加熱される場合、粘性表面コーティングを形成することができる。加工物の表面上に提供されたガラス粒子は、ガラス材料が、例えば1450°F?1550°Fの温度にて、炉内で加熱される場合、粘性表面コーティングを形成することができる。加工物の表面上に提供されたガラステープは、ガラス材料が、例えば1900°F?2100°Fの温度にて、炉内で加熱される場合、粘性表面コーティングを形成することができる。
【0040】
ある非限定的実施形態によると、合金インゴット又は他の合金加工物の表面上に提供された表面コーティングは、接着表面コーティングとして特性化され得る。この粘性表面コーティングは、表面コーティングが冷却される場合、接着表面コーティングを形成することができる。例えば、表面コーティングを備える加工物が炉から取り出される際に、粘性表面コーティングは、接着表面コーティングを形成することができる。表面コーティングは、表面コーティングが加工物表面から即時に流れ出ない場合、「接着性」であると特性化され得る。例えば、様々な非限定的実施形態では、合金インゴット又は他の合金加工物が炉から取り出される際に、コーティングが表面から即時に流れ出ない場合に、表面コーティングは「接着性」であると考えられ得る。別の例では、様々な非限定的実施形態において、長手方向軸が、例えば水平表面に対して45°?135°などの垂直に配向されるように加工物が配置されるように加工物が配置された時コーティングが円周囲面から即時流れ出さない場合、長手方向軸を有する合金加工物の円周囲面上の表面コーティング及び円周囲面は、「接着性」であると考えられる。加工物が炉から取り出される際に表面コーティングが加工物の表面から即時流出する場合、表面コーティングは「非接着性」であると特性評価され得る。
【0041】
合金が熱間加工され得る全体の温度範囲は、合金においてひび割れ形成が開始するときの温度と、無機材料の組成及び形態を考慮に入れることができる。熱間加工操作のための所与の開始温度で、合金においてひび割れ形成が開始する温度に差があるために、一部の合金は他の合金よりもより大きな温度範囲にわたって効果的に熱間加工され得る。比較的小さい熱間加工温度範囲(すなわち、合金が熱間加工され得る最低温度とひび割れ形成が開始する温度との間の差)を有する合金については、無機材料の厚さは、下側にある加工物が、ひび割れ形成が開始する脆性温度範囲にまで冷却することを阻害又は抑制するために、比較的厚くてもよい。同様に、より大きな熱間加工温度範囲を有する合金については、無機材料の厚さは、下側にある合金インゴット又は他の合金加工物が、ひび割れ形成が開始する脆性温度範囲にまで冷却することを阻害又は抑制するために比較的薄くてもよい。
【0042】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的に、無機材料を加熱して、加工物上に表面コーティングを形成させることを含む。無機材料を加熱することは、例えば、表面コーティングを形成させるために、無機材料を500?1500°F、1000?2000°F、1500°F?2000°F、又は2000?2500°Fなどの500?2500°Fの温度に加熱することを含む。ある非限定的実施形態では、ガラスブランケット及びガラステープなどの無機繊維は、2000?2500°Fの温度に加熱され得る。ある非限定的実施形態では、ガラス粒子などの無機材料は、1500?2000°Fの温度に加熱され得る。ある非限定的実施形態では、この温度は、無機材料の融点を超えるものであってもよい。ある非限定的実施形態では、この温度は、無機材料の温度定格を超えるものであってもよい。様々な非限定的実施形態では、この温度は、ガラス織布、ガラス粒子、及び/又はガラステープの融点を超えるものであってもよい。1つの非限定的実施形態では、この温度は、ガラスブランケットの融点を超えるものであってもよい。当業者であれば理解されるように、無機材料は特定の融点を有さずともよく、「軟化点」によって特性評価されてもよい。例えば、ASTM試験法C338-93(2008)は、ガラスの軟化点を決定するための標準試験法を提供する。したがって、ある非限定的実施形態では、無機材料は、少なくとも無機材料の軟化点である温度に加熱され得る。
【0043】
ある非限定的実施形態では、表面コーティングは、合金加工物の表面の少なくとも一部部分上に形成され得る。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、加工物の表面の実質的部分上に形成され得る。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、加工物の表面を保護完全に覆ってもよい。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、合金加工物の円周囲面上に形成されてもよい。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、加工物の円周囲面上と、加工物の少なくとも1つの外側面上に形成されてもよい。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、無機材料を含まない加工物の表面の少なくとも一部分上に形成されてもよい。例えば、無機材料は加工物の表面の少なくとも一部分上に付着され得る。この無機材料は、加熱される場合融解することができる。融解した無機材料は、無機材料が付着されていない加工物の表面の一部まで流れることができる。
【0044】
無機材料は、加熱される場合、表面コーティングをその上に形成するのに十分な厚さで付着され得、この表面コーティングは接触するダイの表面から下側にある加工物表面を隔離することによって、熱間加工中に下側にある加工物表面が非常に容易にひび割れを形成する温度まで、下側にある加工物表面が冷えてしまうことを阻害又は抑制する。このように、より高い熱間加工温度は、一般的に、より大きな表面コーティング厚さの優先性と相関することができる。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、加工物からの熱損失を低減するために好適な厚さを有し得る。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、例えば、0.5mm?1.5mm、及び約1mmなどの0.1mm?2mmの厚さを有することができる。いかなるある理論に束縛されるものではないが、表面コーティングは、合金加工物からの熱損失を低減し、及び/又は熱間加工中のダイ又は他の接触表面に対する加工物の滑り性を増加させることが可能である。この表面コーティングは、対流、伝導、及び/又は放射を通しての加工物からの熱損失に対する熱バリアーとして作用し得る。ある非限定的実施形態では、この表面コーティングは、熱間加工操作中の合金加工物の表面摩擦を低減しかつ滑沢剤として作用することによって、熱間加工操作、例えば鍛造及び押出法中の加工物の滑り性を増加させることができる。ある非限定的実施形態では、無機材料は、熱間加工操作中に加工物を滑らかにするのに十分な厚さまで堆積され得る。
【0045】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的に、表面コーティングを有する加工物を冷却することを含むことができる。加工物を冷却することは、表面コーティングを冷却することを含み得る。ある非限定的実施形態では、加工物を冷却することは、加工物を空気冷却することを含み得る。ある非限定的実施形態では、加工物を冷却することは、例えば、KAOWOOLブランケットなどのセラミックブランケットを表面コーティングの少なくとも1つ及び加工物の表面の少なくとも一部分に配置することを含むことができる。ある非限定的実施形態では、加工物の表面は、室温まで冷却されてもよい。
【0046】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的に、表面コーティングの少なくとも一部分及び/又は表面コーティングの残余物を加工物から除去することを含むことができる。ある非限定的実施形態では、この方法は、熱間加工後に、表面コーティングの少なくとも一部分及び/又は表面コーティングの残余物を、加工物を熱間加工することによって作成された生成物から除去することを含み得る。表面コーティング又は残余物を除去することは、例えば、ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の1つ以上を含んでもよい。ある非限定的実施形態では、熱加工された加工物を剥離することは、旋盤加工を含んでもよい。
【0047】
初期加工物成形の後であるが、無機材料を付着させる前及び/又は合金加工物の熱間加工に引き続いて、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する非限定的方法は、一般的に、加工物を加熱すること及び/又は加工物の表面を調整することを含んでもよい。ある非限定的実施形態では、合金加工物は、高温に曝され、合金組成及び加工物の微細構造を均質化することができる。この高温は、合金の再結晶温度以上ではあるが、合金の融点温度以下であり得る。例えば、加工物は鍛造温度まで加熱され得、無機材料がそれに付着され得、そして加工物が再加熱され、そこに表面コーティングを形成することができる。加工物をその温度に持っていくために必要な炉時間を短縮させるために、無機材料を付着させる前に、加工物が加熱され得る。合金加工物は、例えば、加工物の表面を研削及び/又は剥離することによって、表面調整され得る。加工物は砂で磨くかおよび又はバフ仕上げをまたしてもよい。表面調整操作は、例えば、高温での均質化処理などの任意選択の熱処理工程の前及び/又は後で実施されてもよい。
【0048】
ある非限定的実施形態によると、熱クラッキングを低減させるよう合金インゴット又は他の合金加工物を処理加工する方法は、一般的に、加工物を熱間加工することを含むことができる。加工物を熱間加工することは、加工物に力を加え、加工物を変形させることを含むことができる。この力は、例えば、ダイ及び/又はロールで加えられ得る。ある非限定的実施形態では、加工物を熱間加工することは、1500°F?2500°Fの温度で加工物を熱間加工することを含んでもよい。ある非限定的実施形態では、加工物を熱間加工することは、鍛造操作及び/又は押出法操作を含んでもよい。例えば、加工物の表面の少なくとも1つの領域上に付着された表面コーティングを有する加工物は、据込鍛造され得るか及び/又は引抜鍛造され得る。様々な非限定的実施形態では、この方法は、加工物上への表面コーティングの形成後に、鍛造によって加工物を熱間加工することを含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、この方法は、加工物上への表面コーティングの形成後に、1500°F?2500°Fの温度での鍛造によって加工物を熱間加工することを含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、この方法は、加工物上への表面コーティングの形成後に、押出法によって加工物を熱間加工することを含んでもよい。様々な非限定的実施形態では、この方法は、加工物上への表面コーティングの形成後に、1500°F?2500°Fの温度での押出法によって加工物を熱間加工することを含んでもよい。
【0049】
据込及び引抜鍛造操作は、据込鍛造の1つ以上のシーケンスと引抜鍛造の1つ以上のシーケンスとを含むことができる。据込操作中に、加工物の端表面が、加工物に力を加える鍛造用ダイと接触し得ることで、これが加工物の長さを圧縮し、かつ加工物の断面を増加させる。引抜操作中には、側表面(例えば、円筒状加工物の円周囲面)が、加工物に力を加える鍛造用ダイと接触し得ることで、これが加工物の断面を圧縮し、かつ加工物の長さを増加させる。
【0050】
様々な非限定的実施形態では、加工物の表面の少なくとも1つの領域上に付着された表面コーティングを有する合金インゴット又は他の合金加工物は、1つ以上の据込及び引抜鍛造操作にかけられることができる。例えば、三重据込及び引抜鍛造操作においては、加工物が先ず据込鍛造され、次いで引抜鍛造され得る。合計で3回の順次据込及び引抜鍛造操作のために、この据込及び引抜シーケンスが2回以上繰り返されることができる。様々な非限定的実施形態では、加工物の表面の少なくとも1つの領域上に堆積された表面コーティングを有する加工物は、1回以上の押出法にかけられてもよい。例えば、押出法操作において、円筒状加工物が、円筒状のダイを通るよう押し込まれ、これによって加工物の直径を減少させかつ長さを増加させることができる。他の熱間技術は当業者には明らかであろうし、本開示による方法は、過度の実験を必要とすることなく、このような他の技術の1つ以上での使用に適合され得る。
【0051】
様々な非限定的実施形態では、本明細書に開示される方法は、鋳造物、固結物、又はスプレー成形インゴットの形態の合金インゴットからの鍛練したビレットを生成するよう使用され得る。インゴットのビレット又は他の加工物品への鍛造変換及び押出変換は、前の加工物と比較した場合、物品において微細な粒状構造を生成することができる。本明細書に記載される方法及びプロセスは、表面コーティングが鍛造及び/又は押出法操作中の加工物の表面クラッキングの発生率を低減し得るために、加工物からの鍛造製品又は押出製品(例えば、ビレットなど)の収率を改善し得る。例えば、加工物の表面の少なくとも1つの領域にもたらされた本開示による表面コーティングは、加工用ダイによって誘発される歪みに対して非常に容易に耐容性を示すことができることが観測された。加工物の表面の少なくとも一部分にもたらされた本開示による表面コーティングはまた、熱間加工中の加工用ダイと加工物との間の温度差異に対して非常に容易に耐容性を示すことができることも観測された。このように、本開示による表面コーティングは、加工中の下側にある加工物におけるひび割れ形成開始を抑制又は低減すると同時に、ゼロ又は最小の表面クラッキングを呈することが観測された。
【0052】
様々な非限定的実施形態では、本開示による表面コーティングを有する多様な合金のインゴット又は他の加工物は、様々な物品を組み立てるよう使用され得る製品を形成するよう熱間加工され得る。例えば、本明細書に記載されたプロセスは、ニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、コバルト基合金、ニッケル基超合金、及び他の超合金からビレットを形成するよう使用され得る。熱間加工されたインゴット若しくは他の合金加工物から形成されるビレット又は他の製品は、例えば、タービンエンジン及び様々な地上接地タービンのディスク及びリングなどのタービン構成部品などが挙げられるが、これらに限定されない物品を組み立てるよう使用され得る。本明細書に記載された様々な非限定的実施形態により処理加工された合金インゴット又は他の合金加工物から組み立てられる他の物品としては、バルブ、エンジン構成部品、シャフト、及び締結具を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書の様々な実施形態により処理加工され得る合金加工物は、任意の好適な形態であってもよい。例えば、ある非限定的実施形態では、合金加工物は、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、焼成予備成形品等を含んでもよく又はこれらの形態でもよい。
【0054】
本明細書に記載の様々な非限定的実施形態では、以下の代表的実施例と兼ね併せて読む場合、より深く理解され得る。以下の実施例は限定の目的ではなく、例示の目的で含まれる。
実施例1
【0055】
図2?8を参照すると、本開示によるある非限定的実施形態において、合金加工物は、円筒状合金インゴットを含むことができる。図2に全般的に示すような、10+3/8インチの長さ及び6インチの幅を有するインゴットの形態での2つの通常円筒状の加工物を、2100°Fで3時間加熱した。各加工物がKAOWOOLセラミックブランケットで巻かれ、冷却させた。KAOWOOLセラミックブランケットを取り外した。図3に示されるように、1つの加工物は、E-ガラスブランケットの二重層で巻かれた。E-ガラスブランケットは、ベールワイヤを使用して加工物に固定した。ATP-610材料(Advanced Technical Products,Cincinnati,OHから入手可能)を含む無機スラリーをブランケットの外側表面に刷毛で塗った。第2番目の加工物は、いずれの材料でも覆わなかった。2つの加工物のそれぞれを2040°Fの炉内に17時間配置した。次いで、2つの加工物を、5インチ×4.5インチの断面を有する加工物を形成する温度で鍛造した。図4は、鍛造中に表面コーティングを有する加工物の写真である。
【0056】
図5は、コーティングされた又は非コーティングの加工物の鍛造中の経時的加工物表面温度をプロットしたものである。図5に示すように、鍛造中にコーティングされた加工物(「巻かれた」)の表面温度は、非コーティングの加工物(「巻かれない」)のものよりも一般的に約50℃高かった。表面温度は、赤外高温計を使用して測定した。図6及び7は、鍛造したコーティングされた加工物(両写真の左側)と鍛造された非コーティングの加工物(両写真の右側)の写真である。図6において、表面コーティングの凝固された残余物が、コーティングされた加工物の表面上に見ることができる。一方図7は、ショットブラスティングによってコーティングの残余物が取り除かれた後のコーティングされた加工物を示す。図6及び7の考察は、鍛造されコーティングされた加工物は若干のクラッキングを示すが、深刻なクラッキングの発生頻度は、鍛造された非コーティングの加工物に関するものよりも著しく少なかった。鍛造されコーティングされた加工物上のクラッキングは、E-ガラスブランケットがベールワイヤによって加工物に固定された場所で発生し、これは、鍛造力が加えられる際にベールワイヤが加工物にストレスを加え得、これがひび割れの形成に導いた可能性があると考えられる。表面コーティングを欠如する鍛造した加工物のより高いひび割れ感受性を、表面上で見ることができる。
実施例2
【0057】
図8は、鍛造操作中の3つの6インチの直径の合金718インゴット加工物の冷却過程中の経時的温度をプロットする図表である。各加工物は、周囲温度まで冷却させた。各加工物の温度を、埋め込まれた熱電対を使用して測定した。この温度を、各加工物上の以下の位置で評価した:加工物の中心の表面上;加工物の左側領域上の表面の0.5インチ下;及び加工物の右側領域上の表面の0.5インチ下。3つの加工物の第1番目を、ベールワイヤを使用して加工物に固定されたE-ガラスブランケットで巻き付けた。ATP-790材料(Advanced Technical Products,Cincinnati,OHから入手可能)を含む無機スラリーを、E-ガラスブランケットの外側表面上に刷毛で塗った。第2番目の加工物の表面の一部を、E-ガラスブランケットと1インチの厚さのKAOWOOLセラミックブランケットで巻き付けた。第3番目の加工物は、覆わないでそのまま残した。これらの加工物を鍛造温度に加熱し、第1及び第2の加工物上のE-ガラスブランケット/無機スラリー及びE-ガラスブランケット/KAOWOOLブランケットのそれぞれは加工物の表面に接着した表面コーティングを加工物上に形成した。
【0058】
図8に示すように、表面コーティングの存在は、コーティングされた加工物の冷却速度を著しく減少させた。冷却速度の減少は、鍛造、押出法、又は他の熱間加工操作中の加工物における表面クラッキングの発生頻度を低減させ得ると考えられる。表面コーティングがない加工物は、表面コーティングを備える加工物よりも極めて速く冷却した。非コーティングの加工物は、鍛造温度(約1950°F)から3時間未満の時間にわたって300°F?600°Fまで降下して冷却した(温度測定場所に依存して)。図9は、E-ガラスブランケット/KAOWOOLの表面コーティングを備える加工物の写真である。E-ガラスブランケット/ATP-790無機スラリーの表面コーティングを備える加工物は、E-ガラスブランケット/KAOWOOLの表面コーティングを備える加工物よりも速く冷却した。E-ガラスブランケット/ATP-790無機スラリーの表面コーティングを備える加工物は、鍛造温度から約5?6時間の時間にわたって400°F?600°Fまで降下して冷却した(温度測定場所に依存して)。E-ガラスブランケット/セラミックブランケットの表面コーティングを備える加工物は、鍛造温度から12時間を超える時間にわたって400°F?600°Fまで降下して冷却した。
実施例3
【0059】
718Plus(登録商標)合金(UNS No.N07818)の通常円筒状の非コーティングインゴットの形態である合金加工物を、20インチの直径から14インチの直径に減少させるよう熱鍛造した。この加工物は、鍛造操作中に広範囲の表面クラッキングを展開させた。鍛造した加工物を、表面ひび割れが取り除かれるように12インチの直径まで旋削した。次いで旋削した加工物を12インチから10インチに熱鍛造した後に、加工物の一端が鍛造中に広範囲にひび割れ形成した。次いで、加工物をショットブラスティングによって表面調整し、加工物の第1の端部を10インチから6インチに熱鍛造した。E-ガラスブランケットを鍛造加工物の第2の端部の周りに巻き付けかつ固定し、加工物を1950°Fの炉内に配置して、加熱した。E-ガラスブランケットは、加熱された際に第2の端部上に表面コーティングを形成した。図10は、加工物が炉から取り出された後の、部分的に鍛造されかつ部分的にコーティングされた加工物の写真である。表面コーティングを備えた端部を12インチから6インチまで減少させるよう鍛造し、冷却させて、次いでショットブラスティングして、表面コーティングを除去した。鍛造操作中に、表面コーティングは加工物の第2の端部の表面に接着し、第2の端部からの熱損失を低減させた。図11は、ショットブラスティング後の加工物の鍛造された非コーティングの第2の端部(左の写真)と、鍛造されコーティングされた加工物の端部(右の写真)を示す写真である。ショットブラスティング後の、鍛造されコーティングされた加工物の表面上の黒点は、表面コーティングの残余物である。鍛造から生じる表面クラッキングの著しい発生頻度は、図11中の鍛造された非コーティングの加工物の写真で明らかである。これとは対照的に、コーティングされた加工物端部のクラッキングの発生頻度における顕著な減少(すなわち、顕著に低減されたひび割れ感受性)が、図11中の、鍛造されコーティングされた加工物の写真から明らかである。したがって、無機コーティングは、鍛造中の表面クラッキングの発生頻度を著しく低減させた。
実施例4
【0060】
1.5インチの直径の通常円筒状のチタンTi-6AI-4V合金(UNS No.R56400)インゴットの形態の合金加工物を、炉内で1500°Fの温度で1.5時間加熱した。加熱した加工物を、1400?1850°Fの金属熱間加工範囲を有する、Oxylub-327材料(Advanced Technical Products,Cincinnati,OHから入手可能)を含むガラス粒子内で回転させた。次いで、加工物を炉内に更に30分間配置し、加熱操作中に、ガラス粒子が加工物上に表面コーティングを形成した。次いで、コーティングされた加工物を、3つの別個の方向で3回鍛造した。図12は、鍛造後の加工物の写真であり、接着表面コーティングが写真中で明らかである。表面コーティングは、鍛造操作中に加工物の表面に接着し、加工物からの熱損失を低減した。
【0061】
本明細書で引用される全ての文献は、別に支持されない限り、参照により本明細書に組み込まれるものとする。いずれの文献の引用も、それが本明細書に対して先行技術であるという承認として解釈されるべきではない。本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する限りにおいて、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるべきである。
【0062】
本発明のある非限定的実施形態が例示されかつ説明されてきたが、様々な他の変更及び修正が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者には明白であろう。したがって、添付された特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるこのような変更及び修正の全てをカバーするよう意図される。
[発明の態様]
[1]
熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、
ガラス材料を合金加工物の少なくとも一部分上に付着させることと、
前記ガラス材料を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させことと、を含む方法。
[2]
前記ガラス材料が、ガラス繊維、ガラス粒子、及びガラステープの少なくとも1つである、1に記載の方法。
[3]
前記ガラス材料が、537.8?1148.9℃(1000°F?2100°F)の温度範囲を有するE-ガラス織布であることと、
前記ガラス材料を付着させることが、前記E-ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることとを含む、1に記載の方法。
[4]
前記E-ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることとが、前記E-ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上に配置させることを含む、3に記載の方法。
[5]
前記E-ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることとが、前記E-ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上と、前記合金加工物の少なくとも1つの横側面上に配置させることを含む、3に記載の方法。
[6]
前記ガラス材料がガラス粒子であり、前記ガラス材料を付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む、1に記載の方法。
[7]
前記ガラス材料がガラステープであり、前記ガラス材料を付着させることが、前記ガラステープを前記加工物の表面の少なくとも一部分に配置させることを含む、1に記載の方法。
[8]
前記ガラステープを配置させることが、前記ガラステープを前記合金加工物の表面の少なくとも一部分に配置、巻き付け、及びテーピングすることの少なくとも1つを含む、7に記載の方法。
[9]
前記ガラス材料を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱することを含む、1に記載の方法。
[10]
前記ガラス材料を付着させることに先立って、前記合金加工物を鍛造温度に加熱することを更に含む、1に記載の方法。
[11]
前記ガラス材料を付着させることに先立って、前記合金加工物を鍛造温度に加熱することと、前記合金加工物の表面を調整することと、を更に含む、1に記載の方法。
[12]
前記合金加工物を冷却することを更に含む、1に記載の方法。
[13]
前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つによって、前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、1に記載の方法。
[14]
前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む、1に記載の方法。
[15]
前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む、1に記載の方法。
[16]
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品から選択される、1に記載の方法。
[17]
前記合金加工物がニッケル基超合金を含み、前記ガラス材料がE-ガラス織布を含む、1に記載の方法。
[18]
前記ガラス材料を加熱して前記合金加工物上に表面コーティングを形成させる後に、ダイ及びロールの少なくとも1つで前記合金加工物に力を加え、前記合金加工物を変形させることを更に含む、1に記載の方法。
[19]
前記合金加工物上に表面コーティングを形成する後に、前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、1に記載の方法。
[20]
前記合金加工物が、815.6℃?1371.1℃(1500°F?2500°F)の温度で熱間加工される、19に記載の方法。
[21]
前記合金加工物上に表面コーティングを形成する後に、鍛造によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、1に記載の方法。
[22]
前記合金加工物が、815.6℃?1371.1℃(1500°F?2500°F)の温度で熱間加工される、21に記載の方法。
[23]
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、21に記載の方法。
[24]
前記合金加工物上に表面コーティングを形成する後に、押出法によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、1に記載の方法。
[25]
前記熱間加工された加工物から物品を組み立てることを更に含み、前記物品が、ジェットエンジン構成部品、地上接地タービン構成部品、バルブ、エンジン構成部品、シャフト、及び締結具からなる群から選択される、20に記載の方法。
[26]
合金加工物を処理加工する方法であって、
ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む合金加工物の少なくとも一部分上にガラス材料を付着させることと、
前記ガラス材料を加熱して、前記合金加工物上に表面コーティングを形成させて、これによって前記合金加工物からの熱損失を低減させることと、
前記合金加工物を熱間加工することと、を含む方法。
[27]
前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む、26に記載の方法。
[28]
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、26に記載の方法。
[29]
前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を鍛造することを含む、26に記載の方法。
[30]
前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を押出すことを含む、26に記載の方法。
[31]
前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、26に記載の方法。
[32]
合金加工物を熱間加工する方法であって、
ガラス繊維ブランケットを合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることと、
前記ガラス繊維ブランケットを加熱して、前記合金加工物上に表面コーティングを形成させることと、
ダイ及びロールの少なくとも1つで、力を前記合金加工物に加え、前記合金加工物を変形させることと、を含む方法であり、
前記ダイ及びロールの少なくとも1つが、前記合金加工物の表面上の前記表面コーティングと接触する、方法。
[33]
前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む加工物からなる群から選択される材料を含む、32に記載の方法。
[34]
前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む加工物からなる群から選択される材料を含む、32に記載の方法。
[35]
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、32に記載の方法。
[36]
ダイ及びロールの少なくとも1つで力を前記合金加工物に加え、前記合金加工物を変形させることとが、前記合金加工物を鍛造することを含む、32に記載の方法。
[37]
ダイ及びロールの少なくとも1つで力を前記合金加工物に加え、前記合金加工物を変形させることとが、前記合金加工物を押し出すことを含む、32に記載の方法。
[38]
前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、32に記載の方法。
[39]
1に記載の前記方法によって処理加工される合金加工物。
[40]
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品から選択される、39に記載の合金加工物。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、ガラス粒子のスラリーを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び前記ガラス繊維の織布及び前記ガラス粒子のスラリーを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成すること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項2】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、ガラステープを、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び前記ガラス繊維の織布及び前記ガラステープを加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成すること
を含む方法。
【請求項3】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、セラミック繊維の織布を、前記合金加工物上の前記ガラス繊維の織布上に付着させること、及び
前記ガラス繊維の織布及び前記セラミック繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを形成させること
を含む方法。
【請求項4】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物上に配置させることが、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに巻き付けることからなり、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項5】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を前記合金加工物上に配置することが、前記ガラス繊維の織布を円筒状の前記合金加工物の円周囲面の周りに巻き付けること、及び前記ガラス繊維の織布を前記円筒状合金加工物の少なくとも1つの端表面上に配置することからなり、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項6】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記ガラス繊維の織布を537.8?1204.4℃(1000°F?2200°F)の温度に加熱し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項7】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物を815.6℃?1371.1℃(1500°F?2500°F)の開始温度で熱間加工し、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項8】
熱間加工後、前記合金加工物を室温に冷却し、そして前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項1?7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することが、前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ガラス繊維の織布を合金加工物上に配置すること、前記ガラス繊維の織布を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び前記合金加工物を熱間加工することを含む方法であって、前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項11】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含み、そして前記ガラス繊維の織布がE-ガラス織布を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、請求項1?12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】(削除)
【請求項15】
ガラス粒子のスラリーを、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項16】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ガラス粒子のスラリーを、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブまたは焼成予備成形品を構成している合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
熱間加工後、前記合金加工物を室温に冷却し、そして前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することをさらに含む、上記の方法。
【請求項19】
前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去することが、前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】(削除)
【請求項22】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項23】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、上記の方法。
【請求項24】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、上記の方法。
【請求項25】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び施削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、上記の方法。
【請求項26】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
前記熱間加工した合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、上記の方法。
【請求項27】(削除)
【請求項28】
ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、
を含む方法であって、前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、上記の方法。
【請求項29】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記熱間加工の後に、
前記合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
をさらに含む、上記の方法。
【請求項32】
ガラス粒子のスラリーを、ニッケル基超合金を含む合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、上記の方法。
【請求項33】(削除)
【請求項34】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含む、上記の方法。
【請求項35】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング及び浸漬の少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ガラス粒子のスラリーを付着させる前に、前記合金加工物を予熱することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ガラス粒子のスラリーを、合金加工物上に付着させること、
前記の付着させたガラス粒子を加熱して、前記合金加工物の少なくとも一部分上に、少なくとも部分的に溶融した、接着した表面コーティングを、熱間加工中に前記合金加工物の表面クラッキングを低減させるように形成させること、及び
前記合金加工物を熱間加工すること、ここで前記熱間加工が前記合金加工物を据込鍛造すること、引抜鍛造すること、又は据込及び引抜鍛造することを含み、前記引抜鍛造中には、前記合金加工物の側表面が前記合金加工物に力を加える鍛造用ダイと接触することで、前記鍛造用ダイが前記合金加工物の断面を圧縮し、かつ前記合金加工物の長さを増加させる、
を含む方法であって、
前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金から選択される合金を含み、
前記熱間加工の後に、
前記合金加工物を室温に冷却すること、及び
ショットブラスティング、研削、剥離及び旋削の少なくとも1つを使用して、前記合金加工物から前記表面コーティングを少なくとも部分的に除去すること
をさらに含む、上記の方法。
【請求項38】
前記合金加工物がニッケル基超合金を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、請求項34に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-18 
出願番号 特願2016-154138(P2016-154138)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (B21J)
P 1 651・ 536- YAA (B21J)
P 1 651・ 537- YAA (B21J)
P 1 651・ 121- YAA (B21J)
P 1 651・ 113- YAA (B21J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩治 雅也細川 翔多本庄 亮太郎  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 刈間 宏信
大山 健
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6141499号(P6141499)
権利者 エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
発明の名称 表面コーティングを介しての金属合金の熱間加工性の改善  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  

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