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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01C
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  G01C
審判 全部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  G01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01C
管理番号 1374886
異議申立番号 異議2020-700253  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-10 
確定日 2021-04-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6609540号発明「道路特定装置及び車両制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6609540号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3ないし5に訂正することを認める。 特許第6609540号の請求項3ないし5に係る特許を維持する。 特許第6609540号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続きの経緯
特許第6609540号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年12月9日に特許出願され、令和元年11月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、令和2年4月10日に特許異議申立人田中貞嗣及び小山卓志(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年9月1日付で取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年10月28日に特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)が提出され、同年11月12日付けで申立人に対し期間を指定して、訂正の請求があった旨の通知(特許法120条の5第5項)がされたが、申立人は、意見書を提出しなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6609540号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5のとおり、訂正することを求めるものであり、その内容は、訂正に下線を付して示すと、次のとおりである。

(1)訂正事項1について
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2について
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「外部測位システムにより測位された自車の位置情報を取得する自車位置情報取得部と、
該自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、
該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、
該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、
前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の道路特定装置。」とあるのを、
「道路のデータを有する第1の地図データと、
道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データと、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報とに基づいて、前記自車の走行している道路を特定し、
前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定するものにおいて、
前記第1の地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第1の指標を算出し、
前記第2の地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第2の指標を算出し、
前記第1の指標と前記第2の指標を比較して、前記第1の地図データがデータを有する道路と前記第2の地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定する道路特定装置であって、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報を取得する自車位置情報取得部と、
該自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、
該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、
該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、
前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部と、
を有することを特徴とする道路特定装置。」に、訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項3に記載の」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項3又は4に記載の」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載をさらに引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項3とするものであるから、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5による訂正は、訂正事項1及び2による訂正によって、削除される請求項1及び2を引用しないものとすることにより引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5について、訂正前の請求項3は請求項1及び2の記載を引用しているものであり、訂正前の請求項4及び5はそれぞれ請求項1又は2の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1及び2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する、一群の請求項ごとになされた請求である。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求が認められることにより本件特許の請求項1ないし5に係る発明(請求項1及び2は削除されたため、以下、「請求項3」ないし「請求項5」を「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
道路のデータを有する第1の地図データと、
道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データと、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報とに基づいて、前記自車の走行している道路を特定し、
前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定するものにおいて、
前記第1の地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第1の指標を算出し、
前記第2の地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第2の指標を算出し、
前記第1の指標と前記第2の指標を比較して、前記第1の地図データがデータを有する道路と前記第2の地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定する道路特定装置であって、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報を取得する自車位置情報取得部と、
該自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、
該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、
該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、
前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部と、
を有することを特徴とする道路特定装置。
【請求項4】
前記第1の地図データは、自動運転用地図データであり、
前記第2の地図データは、ナビゲーション用地図データであることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の道路特定装置。」
【請求項5】
請求項3又は4に記載の道路特定装置と、
該道路特定装置によって特定された自車が走行している道路のデータに基づいて自車の走行制御を行う走行制御装置と、
を有することを特徴とする車両制御システム。」

2.取消理由の概要
本件特許の請求項1、2及び5に係る特許に対して、当審が令和2年9月1日付けで通知した取消理由通知の概要は、次のとおりである。

1.(新規性)本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び5に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


(1)甲第1号証:特開2016-48210号公報
(2)甲第2号証:特開2004-354395号公報
なお、甲第1号証及び甲第2号証は、特許異議申立書に添付された甲第1号証及び甲第2号証である。

3.当審の判断
(1)取消理由1及び2について
ア.甲第1号証を主引用例とする場合
(ア)甲第1号証記載事項、甲1発明
甲第1号証には、以下の記載がある。
a.「【0014】
A.第1実施形態:
A-1.装置構成:
図1は、本発明の一実施形態としての車両位置特定装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示す車両位置特定装置100は、図示しない車両に搭載されて車両の位置を特定する。車両位置特定装置100により特定された位置に基づき、例えば、操舵やブレーキや出力の自動制御(以下、「車両制御」とも呼ぶ)を行なったり、運転者に現在位置を示す地図を表示したり、警報を報知したり、経路探索や経路案内を行なったりすること
(以下、「運転支援」とも呼ぶ)ができる。なお、上述の車両とは、自動車、トラック、タクシー、バス、バイク、自転車など、道路上を走行可能な任意の車両を意味する。」

b.「【0018】
測位結果取得部114は、GPS(Global Positioning System)測位部250による測位結果である現在位置に関する情報(緯度、経度および高度)を取得する。GPS測位部250は、全地球測位システム(GPS)衛星から出力される信号に基づき、現在位置を算出する。GPS測位部250として公知の装置を採用することができるため、その詳細な説明を省略する。
【0019】
ハードディスク130は、第1地図データ格納部131、第2地図データ格納部132、および地物情報格納部133を備えている。第1地図データ格納部131は、道路をリンクおよびノードで表した概略的な地図(以下、「第1地図」と呼ぶ)を表すデータ(以下、「第1地図データ」と呼ぶ)を格納する。」

c.「【0021】
図2に示すように、第1地図は、複数のリンクおよびノードにより表される。ノードは、現実の道路における交差点や分岐点に相当する。図2では、合計9個のノードが表されている。これらのうち、2つのノードN1a,N2aは、後述する特定ノードに該当する。残りの7つのノードN1b,N2b,N3b,N4b,N5b,N6b,N7bは、特定ノードではない。リンクは、ノードとノードとの間の道路部分に相当する。例えば、リンクL1は、2つのノードN1a,N1bの間の道路部分に相当する。同様に、リンクL2は2つのノードN1b,N2aの間の道路部分に、リンクL3は2つのノードN2a,N4bの間の道路部分に、リンクL4は2つのノードN4b,N1aの間の道路部分に、リンクL5は2つのノードN2a,N5bの間の道路部分に、リンクL6は2つのノードN1a,N3bの間の道路部分に、それぞれ相当する。なお、図2では、ノードN1bを端部とする2つのリンクL10,L11における他端に相当するノードは、それぞれ省略されている。なお、図2では、双方向の車線を単一のリンクで表しているが、それぞれ異なるリンクで表してもよい。」

d.「【0023】
図3(B)に示すように、ノードデータは、各ノードの識別子、接続フラグ、位置情報、接続リンク、特定リンク、切替ポイント、および目印地物データの各フィールドの情報から成る。「接続フラグ」フィールドには、特定ノードであるか否かを示すフラグが設定される。特定ノードについて、図2を用いて説明する。
【0024】
図2において破線で示す領域Ar1は、後述する第2地図により表されている領域(以下、「特定領域」と呼ぶ)である。リンクL1は、特定領域Ar1の内と外とに亘って延びるリンクである。本実施形態では、特定領域Ar1の内と外とに亘って延びるリンクを、「特定リンク」と呼ぶ。図2に示すように、リンクL2も、リンクL1と同様に特定リンクに該当する。
【0025】
特定ノードとは、特定リンク上において、特定領域の外側に配置されているノードである。また、特定ノードは、後述する車両位置特定処理において、GPS測位部250による測位結果を用いずに、第1地図データを用いて現在位置を特定する処理に関連するノードであり、後述する切替ポイントまでの距離の起点となるノードである。図2に示すように、本実施形態では、特定ノードは、特定領域から特定リンクに沿って移動して最初に到達するノード、換言すると、特定領域の外側のノードのうちの特定リンクL1,L2に沿って特定領域に最も近いノードN1a,N2aに設定されている。そして、図3に示す接続フラグ「1」は特定ノードであることを示し、接続フラグ「0」は特定ノードでないことを示す。」

e.「【0027】
「切替ポイント」フィールドには、当該ノードから切替ポイントまでの特定リンクに沿った長さが設定される。例えば、図2に示すように、リンクL1には切替ポイントCp1が設定されており、ノードN1aから切替ポイントCp1までのリンクL1に沿った長さD1が、ノードN1aに対して設定される。なお、図3の例では、長さD1は300メートルに相当する。図2に示すように、切替ポイントCp1は、特定領域Ar1とリンクL1との交点に設定されている。また、図2に示すように、リンクL2には切替ポイントCp2が設定されており、ノードN2aから切替ポイントCp2までのリンクL2に沿った長さD2が、ノードN2aに対して設定される。なお、図3の例では、長さD2は150mに設定されている。本実施形態では、図2に示すように、切替ポイントCp2は、特定領域Ar1とリンクL2との交点よりも、リンクL2に沿ってノードN2a寄りの位置に相当する。上述の切替ポイントとは、車両の位置を特定する際に用いる地図を第1地図から第2地図に切り替えるべき地点として、予め管理者により設定されている地点を意味する。なお、切替ポイントの詳細については、後述の車両位置特定処理の中で説明する。」

f.「【0030】
図1に示す第2地図データ格納部132は、道路や標識や路面標示等の地物を第1地図に比べて高精度に表現する地図である第2地図の地図データ(以下、「第2地図データ」と呼ぶ)を格納する。本実施形態において、第2地図は、第1地図で表される領域のうちの一部の領域に対応している。具体的には、図2に示す上述した特定領域Ar1に対応する。
【0031】
図4は、第1実施形態における第2地図を模式的に示す説明図である。図5は、第2地図データの一例を示す説明図である。図5では、図4に示す第1地図の一部に相当するデータを表す。図4に示すように、第2地図には、道路の各レーンに加えて、各レーンの中心線や、停止線および横断歩道等の路面標示や、信号機および標識等の道路近傍に存在する地物も表現されている。なお、図4では、第1地図において対応するリンクまたはノードの識別子(符号)を、説明の便宜上表示している。
【0032】
図5に示すように、第2地図データは、「道路面」、「道路端」、「路面標示」、「信号」、「標識」、「レーン」、および「その他の立体物」に関するデータを含む。なお、図5では、第2地図データに含まれるコンテンツを列挙し、具体的なデータについては、図示を省略している。」

g.「【0039】
図5に示すように、第2地図データには、多くの地物について位置、種類、大きさ、形状等についての高精度な情報が含まれる。したがって、第2地図データのデータ量は非常に多い。しかしながら、上述したように、第2地図データは、第1地図の一部の領域のみ対応しており、すべての領域に対応していない。このため、第2地図が第1地図のすべての領域に対応する構成に比べてデータ量が低減され、ハードディスク130として比較的記憶容量の小さなハードディスクを用いることができる。」

h.「【0045】
測位結果取得部114は、GPS測位部250による測位結果を取得し、かかる測位結果の示す位置を、車両の現在位置として推定される位置(以下、「推定現在位置」と呼ぶ)として特定する(ステップS105)。車両位置特定部111は、ノードデータを参照して、ステップS105で特定された推定現在位置が特定ノードの近傍であるか否かを判定する(ステップS110)。特定ノードの近傍とは、本実施形態では、特定ノードまでの距離が0メートル以上且つ50メートル以下であることを意味する。なお、特定ノードまでの距離が任意の距離である範囲を、特定ノードの近傍としてもよい。
【0046】
上述のステップS110において、推定現在位置が特定ノードの近傍でないと判定されると(ステップS110:NO)、上述のステップS105が実行される。これに対して、推定現在位置が特定ノードの近傍であると判定されると(ステップS110:YES)、画像データ取得部113は、撮像カメラ230の撮像により得られた画像データを取得する(ステップS115)。車両位置特定部111は、ステップS115で取得された画像データの表す画像において目印候補地物を抽出する(ステップS120)。目印候補地物とは、上述した目印地物の候補となる地物を意味する。具体的には、ノードN1aの近傍であれば、撮像画像において、ノードN1aに対応付けられている目印地物である「交差点名称が記載された標識」と類似する外形の地物が抽出される。車両位置特定部111は、ステップS120で抽出された目印候補地物が特定ノードの目印地物であるか否かを判定する(ステップS125)。例えば、ノードN1aの近傍で撮像された画像において、交差点名称が記載された標識が抽出されると、かかる標識の文字列に関する情報と、図3(B)に示すようにノードN1aに対して目印地物データとして記憶されている文字列に関する情報とを比較して、これらが一致する場合に目印候補地物が特定ノードの目印地物であると判定し、一致しない場合に目印候補地物が特定ノードの目印地物でないと判定できる。
【0047】
上述のステップS125において、目印候補地物が目印地物でないと判定されると(ステップS125:NO)、ステップS105に戻る。これに対して、ステップS125において、目印候補地物が目印地物であると判定されると(ステップS125:YES)、車両位置特定部111は、撮像画像に基づき、目印地物であると特定した地物と車両との位置関係から、第1地図上の現在位置を特定する(ステップS130)。したがって、GPS測位結果に基づく推定される現在位置に比べて、より精度の高い現在位置が特定される。
【0048】
車両位置特定部111は、車両が特定リンクを走行中であるか否かを判定する(ステップS135)。特定リンクを走行中であるか否かは、例えば、リンクデータがリンクの点列の座標を含む構成においては、改めてGPS測位部250による測位結果を取得し、その測位結果の位置が特定リンク上の点列のいずれかの点から所定距離以内であるか否かにより判定できる。」

i.「【0050】
これに対して、上述のステップS135において、車両が特定リンクを走行していると判定されると(ステップS135:YES)、距離特定部112は、特定ノードからの走行距離を特定する(ステップS140)。例えば、ステップS125が実行されてからの経過時間と、車速センサ240から受信する走行速度の履歴とから、ステップS130で特定された現在位置からの距離を求め、ステップS130で特定された現在位置と特定ノードとの位置関係から、特定ノードからの距離を特定することができる。図2の経路RT1に沿って車両が走行して、ノードN1aにおいて左折してリンクL1内に存在する場合、ノードN1aからその位置までの距離が測定される。
【0051】
車両位置特定部111は、図3(B)に示すノードデータの切替ポイントフィールドの値を参照して、ステップS140において測定された特定ノードからの距離に基づき、現在位置が切替ポイントに達したか否かを判定する(ステップS145)。現在位置が切替ポイントに達していないと判定されると(ステップS145:NO)、前述のステップS140が実行される。これに対して、現在位置が切替ポイントに達したと判定されると(ステップS145:YES)、画像データ取得部113は、撮像カメラ230の撮像により得られた画像データを取得する(ステップS150)。例えば、図2に示す経路RT1に沿って車両がリンクL1をノードN1bに向かって進んでゆき、ノードN1aからの距離がD1(300メートル)の地点である切替ポイントCp1に達すると、画像データが取得される。切替ポイントCp1は、特定領域Ar1の内と外との境界に位置しているので、ステップS150で取得される画像には、特定領域Ar1内の地物が写ることになる。また、例えば、車両がリンクL2をノードN1bに向かって進んでゆき、ノードN2aからの距離がD2(150メートル)の地点である切替ポイントCp2に達すると、画像データが取得される。切替ポイントCp2は、特定領域Ar1よりも外側に位置しているので、最初にステップS150が実行されて得られた画像には、特定領域Ar1の外側に位置する地物が写り、特定領域Ar1内の地物が写らない可能性がある。但し、後述するように、ステップS150は繰り返し実行されるため、車両が特定領域Ar1に入った後に実行されるステップS150で得られた撮像画像内には、特定領域Ar1内の地物が写ることになる。」

j.「【0053】
車両位置特定部111は、ステップS155において抽出したランドマークを、第2地図データに基づき特定し、特定されたランドマークと車両との位置関係から、第2地図上の現在位置を特定する(ステップS160)。図4に示すように、第2地図には、多数のランドマークが設定されている。したがって、ステップS160では、撮像画像内において多数のランドマークと車両との位置関係から、車両の現在位置が特定されるため、高精度の位置が特定されることになる。」

k.「【0059】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の車両位置特定装置100aの概略構成を示すブロック図である。第2実施形態の車両位置特定装置100aの構成は、車両制御用入出力インターフェイス(I/F)部143を備えている点、およびCPU110が挙動特定部115として機能する点において、図1に示す第1実施形態の車両位置特定装置100の構成と異なる。第2実施形態の車両位置特定装置100aの他の構成は、第1実施形態の車両位置特定装置100と同じであるので、同一の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略
する。」

l.「【0073】
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態の車両位置特定装置を適用した運転支援装置の概略構成を示す説明図である。運転支援装置300は、車両位置特定装置100bと、表示装置260とを備えている。運転支援装置300は、表示装置260に第1地図または第2地図を表示すると共に、表示された地図上に車両の現在位置を表示する。第4実施形態の運転支援装置300は、表示装置260に地図および車両の現在位置を表示することにより運転者の運転を支援する。なお、表示装置260は、ナビゲーションシステムやオーディオシステム等の表示装置として用いられ、例えば、タッチパネルにより構成される。」

m.「【0075】
画像出力インターフェイス(I/F)部144は、表示装置260と内部バス190とに接続されており、内部バス190を介してCPU110(地図表示部116)から受信する画像信号を表示装置260に中継する。地図表示部116は、車両位置特定処理により特定される現在位置に対応した第1地図や第2地図を表示するための表示データを生成する。また、第1地図または第2地図上における車両の位置を示すデータを生成する。
【0076】
なお、車両位置特定装置100bでは、第1実施形態の車両位置特定装置100と同様に、図6に示す車両位置特定処理が実行される。」

n.「【0085】
E.変形例:
E-1.変形例1:
第3実施形態の運転支援装置300は、表示装置260に第1地図または第2地図と、現在位置を表示させることにより、運転支援を行なっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。特定された現在位置に基づき、各種警報の報知や、車両制御を行なうこともできる。」

o.「【0090】
車両制御部118は、車両位置特定処理により特定された現在位置と、第1地図データおよび第2地図データとに基づき、車両の挙動を制御するための制御信号を、車両制御用入出力インターフェイス部143を介して車両用ECU210に送信することにより、車両制御を行なう。具体的には、例えば、上述したように、特定領域内を走行中に、走行レーンにおいて一時停止の路面標示や標識が配置されているにも関わらず、かかる路面標示等の近傍において車速が所定の速度以上である場合に、ブレーキECUに対して、ブレーキを作動させるための制御信号を出力する。
【0091】
以上説明した変形例の運転支援装置300aは、第4実施形態の運転支援装置300と同様な効果を有する。加えて、特定領域においては、高い精度で特定されている現在位置に基づき、警報の報知および車両制御を行なうため、適切なタイミングで警報の報知および車両制御を実行できる。なお、上述した運転支援装置300aにおいて、警報の報知および車両制御のうち、いずれか一方を省略してもよい。」

以上を整理すると、甲第1号証には、以下の甲1発明が記載されているといえる。
<<甲1発明>>
道路を複数のリンクとノードにより表した概略的な地図である第1地図に比べて高精度に表現する地図である第2地図を表す第2地図データと、
道路を複数のリンクとノードにより表した概略的な地図である第1地図を表す第1地図を表す第1地図データであって、前記第2地図が第1地図の一部の領域のみ対応しており、すべての領域に対応していない地図となっている、第1地図データと、
GPS測位部250による測位結果の示す位置を車両の現在位置として推定した推定現在位置とに基づいて、車両位置特定部111が車両の第1地図上の現在位置を特定するとともに、車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中で有るか否かを判定し、
前記車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中に、前記第1地図で表される領域と前記第2地図で表される領域との交点である切替ポイントに達したか否かを判定する、
車両位置特定装置。

(イ)本件発明1について
a.対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
上記(ア)のa.ないしo.に摘記した事項を参照すると、甲1発明の「道路を複数にリンクとノードにより表した概略的な地図である第1地図に比べて高精度に表現する地図である第2地図を表す第2地図データ」は、本件発明1における「道路のデータを有する第1の地図データ」に相当し、以下同様に、「道路を複数のリンクとノードにより表した概略的な地図である第1地図を表す第1地図データ」は「道路のデータを有する第2の地図データ」に、「GPS測位部250
」は「外部測位システム」に、「車両」は「自車」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明における「前記第2地図は第1地図の一部の領域のみ対応しており、すべての領域に対応していない地図となっている」ことは、「前記第1地図の道路のデータと前記第2地図の道路のデータの内容が一部重複する」ことと同義であるから、甲1発明における「道路を複数のリンクとノードにより表した概略的な地図である第1地図を表す第1地図データであって、前記第2地図は第1地図の一部の領域のみ対応しており、すべての領域に対応していない地図となっている、第1地図データ」は、本件発明1における「道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データ」に相当する。
また、甲1発明における「GPS測位部250による測位結果の示す位置を車両の現在位置として推定した推定現在位置」は本件発明1における「外部測位システムにより測位された自車の位置情報」に相当する。甲第1号証の段落【0021】及び【0024】の記載から、甲1発明における「リンク」は「ノードとノードの間の道路部分」を意味し、「特定リンク」は「特定領域の道路部分」を意味するものであるから、甲1発明における「車両位置特定部111が車両の第1地図上の現在位置を特定するとともに、車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中であるか否かを判定し」は、本件発明1における「前記車両の走行している道路を特定し」に相当する。
さらに、甲1発明においては、「前記第2地図は第1地図の一部の領域のみ対応しており、すべての領域に対応していない地図となっている」ことから、甲1発明において車両が走行する「道路」には、概略的な第1地図の「第1地図データ」のみがデータを有する道路と、高精度の第2地図の「第2地図データ」がデータを有する道路とが存在することが明らかである。
そして、甲1発明において、「第1地図データに含まれる特定リンクを走行中」に「切替ポイント」に達するまでの「特定リンク」は、「第1地図データ」(本件発明1の「第2の地図データ」に相当)のみに含まれるデータであるから、甲1発明における「前記車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中に」は、本件発明1の「自車の近傍に第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」に相当する。
また、甲1発明における「切替ポイント」は、甲第1号証の段落【0027】に記載されるように「車両の位置を特定する際に用いる地図を第1地図から第2地図に切り替えるべき地点」である。甲第1号証の段落【0050】ないし【0051】、【0053】に記載されるように、甲1発明の「車両位置特定装置」は、車両が「切替ポイント」に達するまでは「第1地図データ」により第1地図上の現在位置を特定し、車両が「切替ポイント」に達した後は、第2地図上の現在位置を特定するよう動作するものである。そうすると、甲1発明における「切替ポイントに達したか否かを判定する」ことは、「第1地図データ」のみがデータを有する道路と、「第2地図データ」がデータを有する道路のいずれを車両が走行しているのかを判定することと同義である。
したがって、甲1発明の「前記車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中に、前記第1地図で表される領域と前記第2地図で表される領域との交点である切替ポイントに達したか否かを判定する」は、本件発明1の「自車の近傍に第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定する」ことに相当する。
そして、甲1発明における「車両位置特定装置」は、「車両」の「位置」を特定する装置であるところ、上述のとおり、甲1発明における「車両位置特定部111が車両の第1地図上の現在位置を特定するとともに、車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中であるか否かを判定し」は、本件発明1における「前記車両の走行している道路を特定し」に相当するものであるから、「道路特定装置」といえるものである。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。

<<一致点>>
「道路のデータを有する第1の地図データと、
道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データと、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報とに基づいて、前記自車の走行している道路を特定し、
前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定する道路特定装置。」

<<相違点1>>
本件発明1は、「前記第1の地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第1の指標を算出し、
前記第2の地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第2の指標を算出し、
前記第1の指標と前記第2の指標を比較して、前記第1の地図データがデータを有する道路と前記第2の地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定する」ものであって、
「自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部と、を有する」ものであるのに対し、甲1発明は、そもそも、第2地図データ(本件発明1の「第1の地図データ」に相当。)がデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す指標と、第1地図データ(本件発明1の「第2の地図データ」に相当。)のみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す指標と、を比較して、前記第2地図データがデータを有する道路と前記第1地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定するものではない点。

b.取消理由1について
本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1で相違するから、本件発明1は甲1発明ではない。

c.取消理由2について
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、車両が第1地図データに含まれる特定リンクを走行中に、第1地図で表される領域と第2地図で表される領域との交点である切替ポイントに達したか否かを判定するものであるところ、このような甲1発明において、第2地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す指標と、第1地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す指標と、を比較して、前記第2地図データがデータを有する道路と前記第1地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定するように、その構成を変更することは、甲第1号証には記載されておらず、そのような変更を示唆する記載もない。
なお、後記イ.(ア)及び(イ)に示すように、甲第2号証には、「リンクの形状を表す形状代表値」(本件発明1の「第1の指標」に相当。)と「並走類似形状道路の形状を表す形状代表値」(本件発明1の「第2の指標」に相当。)とを比較して、車両が走行する「対象道路」が「上位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1の「第1の地図データ」に相当。)の道路と「下位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1の「第2の地図データ」に相当。)のみがデータを有する道路のうち、「形状差異が小さい場合」の道路を「確からしさが高い方の道路」と判定するものといえる甲2発明が記載されている。
しかし、甲2発明は、第1地図で表される領域と第2地図で表される領域との交点である切替ポイントに達したか否かを判定する甲1発明とは判定の対象が異なるものであり、甲1発明において、第2地図データがデータを有する道路と前記第1地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定するように、その構成を変更することを動機付けるものではないし、上記「上位層の道路ネットワークデータ」から自車の近傍に存在するものとして抽出された道路の全てに対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を上記「リンクの形状を表す形状代表値」とするものではなく、上記「下位層の道路ネットワークデータ」から自車の近傍に存在するものとして抽出された道路の全ての中から上記「下位層の道路ネットワークデータ」のみがデータを有しており上記「上位層の道路ネットワークデータ」にはデータがない道路を選出して、該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を上記「並走類似形状道路の形状を表す形状代表値」とするものでもない。

したがって、第1地図で表される領域と第2地図で表される領域との交点である切替ポイントに達したか否かを判定する甲1発明において、その構成を変更し、《相違点1》に係る本件発明1の発明特定事項を備えることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)本件発明2及び本件発明3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに技術的な限定を加える事項を発明特定事項とする発明であるから、上記(イ)で検討した理由と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1ないし3は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明1ないし3に係る特許は、甲第1号証を主引用例とした場合の取消理由1及び2によっては、取り消すことができない。

イ.甲第2号証を主引用例とする場合
(ア)甲第2号証記載事項、甲2発明
甲第2号証には、以下の記載がある。
a.「【請求項3】
複数の階層に階層化され、上位の階層の道路網がそれより下位の階層の道路網から抽出された道路網で成り立つ道路網データを用いて、始めに比較的上位の階層の道路網と、対象道路の形状を表す形状ベクトルとのマッチングを取り、前記比較的上位の階層の道路網では前記形状ベクトルとマッチングする候補道路が得られないときに、より下位の階層の道路網と前記形状ベクトルとのマッチングを取ることにより、前記対象道路を特定することを特徴とするマップマッチング方法。」

b.「【0001】
本発明は、マップマッチングの方法と、それを実施する装置及びコンピュータプログラムに関し、特に、高速でのマップマッチングを可能にするものである。」

c.「【0010】
本発明は、こうした課題を解決するものであり、高速での処理が可能なマップマッチング方法を提供し、また、それを実現する装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。」

d.「【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、本発明のマップマッチング方法の基本概念について説明する。マップマッチングを実施する受信側装置は、図1に示すようなデジタル地図データを保持している。この地図データには、ヘッダで規定された区画内のノード及びリンクの情報が記述され、ノード情報には、ノード数、各ノードのノード番号、各ノードのノード属性情報、各ノードの緯度経度、及び各ノードに接続する接続ノードと接続リンクとの情報が含まれ、また、リンク情報には、リンク数、リンク番号、リンクの道路種別等を表す属性情報、リンクの形状を規定する補間点の数、及び各補間点の緯度経度の情報が含まれている。なお、ノード番号、リンク番号及び補間点は、この地図データの制作者が独自に設定したものであり、他の制作者によって制作された地図データとの間では共通性が無い。
【0019】
受信側装置は、この地図データから、マップマッチング用の階層構造の道路ネットワークデータを作成する。図2は、この階層構造の道路ネットワークデータの概念を示している。ここでは、3層の階層構造の例を示している。また、図3は、各階層の道路ネットワークデータの例を示している。図2(c)は、階層構造の最下位層の道路ネットワークデータであり、これには全道路網のデータが含まれる。この最下位層の道路ネットワークデータの例を図3(c)に示している。これは図1と同様の地図データである。図2(b)は、道幅が5.5m以上の道路のみを含む中位層の道路ネットワークデータであり、この道路ネットワークデータを図3(b)に示している。図2(a)は、主要地方道以上の幹線道路のみを含む最上位層の道路ネットワークデータであり、この道路ネットワークデータを図3(a)に示している。」

e.「【0021】
図6は、この階層構造の道路ネットワークデータを保持する受信側装置10と、受信側装置10に交通情報と道路形状の形状ベクトルデータとを提供する送信側装置30との構成を示している。送信側装置30は、交通情報等の事象情報を蓄積するデータベース36と、デジタル地図Aのデータベース35と、データベース35、36のデータを用いて対象道路を形状ベクトルデータで表した事象情報を生成する形状ベクトルデータ表現情報生成部34と、誤マッチングの防止や相対距離を補正するために特徴的なノード位置で交差道路の形状の一部を形状ベクトルデータに付加する特徴ノード抽出・形状ベクトル変形部33と、生成された形状ベクトルデータ及び事象情報データを蓄積する形状ベクトル表現事象情報データベース32と、これらのデータを送信するデータ送信部31とを備えている。データ送信部31からは図36または図37に示すデータが送信される。
【0022】
一方、受信側装置10は、データを受信するデータ受信部11と、受信データを蓄積する形状ベクトル表現事象情報データベース12と、階層構造の道路ネットワークデータ13を用いてマップマッチングで対象道路を特定するマップマッチング部14と、デジタル地図Bのデータベース16と、事象情報を表示したり活用する表示部/事象情報活用部15とを備えている。なお、マップマッチング部14は、この受信側装置10のコンピュータに、コンピュータプログラムで規定した処理を行わせることにより実現できる。」

f.「【0024】
図5のフローチャートは、この階層構造の道路ネットワークデータ13を保持する受信側装置10が、送信側装置30から対象道路の形状ベクトルデータを受信したときのマップマッチングの処理手順を示している。受信側装置10は、対象道路の形状ベクトルデータを受信すると、可能な限り上位の層の道路ネットワークデータを用い、形状ベクトルデータに含まれるノードをWPとしてマップマッチングを行う(ステップ1)。その具体的手順については後述する。マップマッチングの処理自体は、マクロマップマッチングなど、従来から知られている方法を使用する。上位の層程、道路ネットワークが疎であるため、WP周辺の候補点が少なく、マップマッチングの処理を高速化できる。
【0025】
一方、交通情報の対象路線は、通常、高速道路、国道、主要地方道であり(但し、都市部では重要な一般都道府県道や市道の一部の交通情報も提供される)、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで対象道路が特定できる確率は極めて高い。もしも、上位層の道路ネットワークデータで道路の特定ができない場合(例えば候補点が設定できなない場合)には、下位の道路ネットワークを用いてマップマッチングをやり直す。また、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで対象道路が特定できた場合でも、並走する道路が存在する場合には、誤マッチングの可能性がある。
【0026】
例えば、図4において、太実線及び太鎖線が主要地方道であり、点線が都道府県道であり、前記線間に存在する道路が5.5m未満の生活道路であるとすると、最上位層の道路ネットワークデータには太実線及び太鎖線のみが含まれ、点線は、中位層及び最下位層の道路ネットワークデータに含まれ、生活道路は最下位層の道路ネットワークデータにのみ含まれる。この最上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで太鎖線が特定できた場合、中位層及び最下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを行ったとしても、太鎖線に代わる道路は特定されない。
【0027】
しかし、最上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで太実線が特定できた場合では、中位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを行うと点線が特定され、また、最下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを行うと、太実線や点線と並走する生活道路が特定される可能性がある。つまり、最上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで特定された太実線を対象道路と決めつけることは誤マッチングの可能性がある。
【0028】
そこで、特定した道路の周辺に誤マッチングしそうな道路が下位の道路ネットワークデータに存在するか否かを判定する(ステップ2)。この判定の具体的手順については後述する。誤マッチングしそうな道路が存在しない場合には、上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した道路を対象道路と決定する(ステップ6)。また、特定した道路の周
辺に誤マッチングしそうな道路が存在する場合には、特定した道路が対象道路として正しいか否かを調べるために形状ベクトルデータとの形状比較を行う(ステップ4)。この形状比較の具体的方法については後述する。
【0029】
この形状比較の結果に基づいて、上位層の道路ネットワークデータで特定した道路が対象道路として正しいか否かを判定し(ステップ5)、正しければ、特定した道路を対象道路として決定する(ステップ6)。また、対象道路として正しいと判定できないときは、下位の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直す(ステップ7)。

g.「【0040】
次に、図5のステップ4での形状比較の一例について説明する。この形状比較を容易にするため、道路ネットワークデータに加えたリンクの並走類似形状属性に、当該リンクの形状及び並走類似形状道路の形状を現す代表的な値"形状代表値"を含める。
この形状代表値としては、次のような値を用いる。
・「偏角累積値」:図8に示すように、上位層のリンク上に等距離に配置したWP(Pj)(j=1?N)に対応する並走類似形状道路上の位置をPj'(j=1?N)とするとき、リンクの偏角累積値はWP(Pj)(j=1?N)での偏角を加算して求め、並走類似形状道路の偏角累積値は位置Pj'(j=1?N)での偏角を加算して求める。
・「偏角絶対値累積値」:リンクの偏角絶対値累積値はWP(Pj)(j=1?N)での偏角絶対値を加算して求め、並走類似形状道路の偏角絶対値累積値は位置Pj'(j=1?N)での偏角絶対値を加算して求める。
・「上位層の該当道路(並走道路)とのばらつき」:WP(Pj)と位置Pj'との距離Lj(j=1?N)の標準偏差によって表す。
この他、周波数スペクトル等を用いることも可能である。
【0041】
図12には、並走類似形状属性に、リンクの偏角累積値、リンクの偏角絶対値累積値、並走類似形状の本数の情報を加え、さらに、各並走類似形状道路について、類似形状評価値((2)の評価値φ)、階層、道路属性、その並走類似形状がリンクの一部または全体のいずれに存在しているかを示す全体/一部識別、偏角累積値、偏角絶対値累積値、リンクとのばらつき(標準偏差)、上流側交差点での接続の有無、接続部の偏角絶対値累積値(最小値)を加えた道路ネットワークデータを示している。
【0042】
図13には、この道路ネットワークデータを用いて、図5のステップ4及びステップ7の処理を行う場合の詳細手順を示している。ステップ1で対象道路を特定するために用いた道路ネットワークデータから、特定した道路区間を構成する各リンクの並走類似形状属性を参照し、並走類似形状道路が、特定した道路区間の一部または全区間で存在する場合には、形状ベクトルの形状代表値を算出する(ステップ41)。次いで、道路ネットワークデータから、マップマッチングで特定した道路区間の形状代表値と、リンク道路属性情報に含まれる道路種別とを読み出し、また、道路ネットワークデータから並走類似形状道路の形状代表値と道路種別とを読み出し、これらと形状ベクトルの形状代表値及び道路種別とを比較する(ステップ42)。
【0043】
この比較で、形状ベクトルの道路種別が、マップマッチングで特定した道路区間の道路種別と一致し、並走類似形状道路の道路種別と異なるときは、誤マッチングの可能性は無いと評価する(ステップ5)。また、道路種別だけで評価できなければ、形状代表値を比較し、マップマッチングで特定した道路区間の方が、並走類似形状道路に比べて、形状ベクトルとの形状差異が少ない場合には、誤マッチングの可能性は無いと評価する(ステップ5)。
【0044】
また、形状ベクトルの道路種別が、マップマッチングで特定した道路区間の道路種別と一致しない場合、あるいは、道路種別は共に形状ベクトルの道路種別と一致するが、並走類似形状道路の方が形状ベクトルとの形状差異が少ない場合には、誤マッチングの可能性ありと判断し、その道路種別及び形状代表値から、該当する並走類似形状道路が存在する最も上位の層を判定し、それを選択する。その並走類似形状道路の存在する層が不明であるときは、最下位層を選択する(ステップ71)。選択した層の道路ネットワークデータを用いて、形状ベクトルのマップマッチングをやり直し(ステップ72)、対象道路を特定する(ステップ73)。」

以上を整理すると、甲第2号証には、以下の甲2発明が記載されているといえる。
<<甲2発明>>
複数の階層に階層化された道路ネットワークデータのうち下位層の道路ネットワークデータから抽出されたデータである上位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データと、
複数の階層に階層化された道路ネットワークデータのうち下位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データと、
GPS受信機で求めた走行する車両の車両位置とに基づいて、前記上位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施することにより前記車両が走行している対象道路を特定できる場合は前記対象道路を特定し、前記上位層の道路ネットワークデータで前記対象道路の特定ができない場合には、下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直し、
前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路の周辺に誤マッチングしそうな道路が前記下位層の道路ネットワークデータに存在する場合、前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路が車両の走行している対象道路として正しいか否かを判定し、正しいと判定できたときは、前記特定した前記対象道路を前記車両が走行している対象道路として決定し、正しいと判定できないときは、前記下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直して、
前記車両が走行している対象道路を特定する、受信側装置であって、
前記上位層の道路ネットワークデータに含まれるリンク上に等距離に配置したウエイポイントWP(pj)(j=1?N)での偏角又は偏角絶対値を加算して、前記リンクの形状を表す形状代表値を求め、
前記ウエイポイントWP(pj)(j=1?N)に対応する、並走類似形状道路上の位置pj’(j=1?N)での偏角又は偏角絶対値を加算して、前記リンクに併走する道路であって下位層の道路ネットワークデータに含まれる並走類似形状道路の形状を表す形状代表値を求め、
前記リンクの形状代表値と前記並走類似形状道路の形状代表値とを用いて、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで車両が走行する対象道路として特定した対象道路の形状ベクトルが、並走類似形状道路に比べて、前記リンクの形状代表値との形状差異が少ない場合には、上位層の道路ネットワークを用いたマップマッチングにおける誤マッチングの可能性は無いと評価し、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングにより特定した道路区間が対象道路であると特定し、
並走類似形状道路の方が対象道路の形状ベクトルとの形状差異が少ない場合には、誤マッチングの可能性ありと判断し、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングにより特定した道路区間が対象道路であると特定せずに該当する下位層の道路ネットワークデータにおける並走類似形状道路が存在する中で最も上位の層を選択し、選択した下位層の道路ネットワークデータを用いて、形状ベクトルのマップマッチングをやり直して、
前記車両が走行する対象道路を特定する受信側装置。」

(イ)本件発明1について
a.対比
上記(1)のa.ないしg.に摘記した事項を参照すると、甲2発明の「複数の階層に階層化された道路ネットワークデータのうち下位層の道路ネットワークデータから抽出されたデータである上位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データ」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「道路のデータを有する第1の地図データ」に相当し、以下同様に、「GPS受信機」は「外部測位システム」に、「走行する車両」は「自車」に、「車両位置」は「位置情報」に、それぞれ相当する。

甲2発明における「上位層の道路ネットワークデータ」は、「下位層の道路ネットワークデータから抽出されたデータ」であるから、言い換えると、甲2発明における「下位層の道路ネットワークデータ」は、「上位層の道路ネットワークデータ」を包含するものであり、両者の内容は重複するものといえる。すなわち、甲2発明における「下位層の道路ネットワークデータ」は、「上位層の道路ネットワークデータ」と内容が一部重複するデータを有する道路ネットワークデータである。
したがって、甲2発明における「複数の階層に階層化された道路ネットワークデータのうち下位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データ」は、本件発明1における「道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データ」に相当する。
そして、甲2発明は、「上位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データ」と「下位層の道路ネットワークデータを有するデジタル地図データ」と「GPS受信機で求めた走行する車両の車両位置」とに基づいて、「前記上位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施することにより前記車両が走行している対象道路を特定できる場合は前記対象道路を特定し、前記上位層の道路ネットワークデータで前記対象道路の特定ができない場合には、下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直」すものであるところ、甲2発明の「前記上位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施することにより前記車両が走行している対象道路を特定できる場合は前記対象道路を特定し、前記上位層の道路ネットワークデータで前記対象道路の特定ができない場合には、下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直」すことは、要するに「複数の階層に階層化された道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施することにより前記車両が走行している対象道路を特定」するものといえる。
したがって、甲2発明における「前記上位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施することにより前記車両が走行している対象道路を特定できる場合は前記対象道路を特定し、前記上位層の道路ネットワークデータで前記対象道路の特定ができない場合には、下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直して、前記車両が走行する対象道路を特定する」ことは、本件発明1における「前記自車の走行している道路を特定する」ことに相当する。
また、甲2発明における「前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路」は、「GPS受信機で求めた走行する車両の車両位置」に基づきマップマッチングを実施することにより「特定」したものであるから、「前記対象道路」の「周辺」は、本件発明1の「前記自車の近傍」に相当する。
さらに、甲2発明における「誤マッチングしそうな道路」とは、甲第2号証の段落【0025】ないし【0028】の記載からみて、「下位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1の「第2の地図データ」の「データ」に相当。)のみに「存在する」道路であることが明らかであるから、甲2発明における「前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路の周辺に誤マッチングしそうな道路が前記下位層の道路ネットワークデータに存在する場合」は、本件発明1における「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」に相当する。
そして、甲2発明は、上記の場合において、「前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路が車両の走行している対象道路として正しいか否かを判定し、正しいと判定できたときは、前記特定した前記対象道路を前記車両が走行している対象道路として決定し、正しいと判定できないときは、前記下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直す」ものであるところ、「対象道路」が「上位層の道路ネットワークデータを用いて」特定した道路であれば、当該道路は上位層の道路ネットワークデータのデジタル地図データ(本件発明1の「第1の地図データ」に相当)がデータを有する道路であるし、「対象道路」が「下位層の道路ネットワークデータを用いて」特定した道路であれば、当該道路は下位層の道路ネットワークデータのデジタル地図データ(本件発明1の「第2の地図データ」に相当)のみがデータを有する道路であることが明らかである。
したがって、甲2発明における「前記上位層の道路ネットワークデータを用いて特定した前記対象道路が車両の走行している対象道路として正しいか否かを判定し、正しいと判定できたときは、前記特定した前記対象道路を前記車両が走行している対象道路として決定し、正しいと判定できないときは、前記下位層の道路ネットワークデータを用いてマップマッチングをやり直して、前記車両が走行する対象道路を特定する」ことは、本件発明1における「前記第1の地図データがデータを有する道路」と「該第2の地図データのみがデータを有する道路」の「いずれを自車が走行しているのかを判定する」ことに相当する。
さらに、甲2発明における「受信側装置」は、「前記車両が走行している対象道路を特定する」ものであるから、車両が走行している「道路」を「特定」する「装置」であるといえる。
したがって、甲2発明における「受信側装置」は、本件発明1における「道路特定装置」に相当する。
また、甲2発明における「リンクの形状を表す形状代表値」は、「上位層の道路ネットワークデータに含まれるリンク上に等距離に配置したウエイポイントWP(Pj)(j=1?N)での偏角又は偏角絶対値を加算」した指標といえるから、「上位層の道路ネットワークデータ」(本件発明3の「第1の地図データ」が有する「データ」に相当。)に関する指標である。
甲2発明における「並走類似形状道路の形状を表す形状代表値」は、「前記リンクに並走する道路であって下位層の道路ネットワークデータに含まれる並走類似形状道路の形状を表す」ものであって、「前記ウエイポイントWP(Pj)(j=1?N)に対応する並走類似形状道路上の位置Pj’(j=1?N)での偏角又は偏角絶対値を加算」した指標といえるから、「下位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1の「第2の地図データ」が有する「データ」に相当。)に関する指標である。
そして、甲2発明において「上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングで車両が走行する対象道路として特定した対象道路の形状ベクトルが、並走類似形状道路に比べて、前記リンクの形状代表値との形状差異が少ない場合には、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングにおける誤マッチングの可能性は無いと評価し、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングにより特定した道路区間が対象道路であると特定」することは、「車両」の走行する「対象道路」が、「上位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1における「第1地図データ」の「データ」に相当。)がデータを有する道路である、と特定することといえる。同様に、甲2発明において「並走類似形状道路の方が対象道路の形状ベクトルとの形状差異が少ない場合には、誤マッチングの可能性ありと判断し、上位層の道路ネットワークデータを用いたマップマッチングにより特定した道路区間が対象道路であると特性せず、該当する下位層の道路ネットワークデータにおける並走類似形状道路が存在する中で最も上位の層を選択し、選択した下位層の道路ネットワークデータを用いて、形状ベクトルのマップマッチングをやり直して、対象道路を特定する」ことは、「車両」の走行する「対象道路」が、「下位層の道路ネットワークデータ」(本件発明1における「第2地図データ」の「データ」に相当。)のみがデータを有する道路であると特定することといえる。
そうすると、甲2発明は、「リンクの形状を表す形状代表値」と「並走類似形状道路の形状を表す形状代表値」とを比較して、車両が走行する「対象道路」が「上位層の道路ネットワークデータ」の道路と「下位層の道路ネットワークデータ」のみがデータを有する道路のうち、「形状差異が小さい場合」の道路を「確からしさが高い方の道路」と判定するものといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点で一致し、相違点2で相違する。

<<一致点>>
「道路のデータを有する第1の地図データと、
道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データと、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報とに基づいて、前記自車の走行している道路を特定し、
前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定するものにおいて、
前記第1の地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第1の指標を算出し、
前記第2の地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第2の指標を算出し、
前記第1の指標と前記第2の指標を比較して、前記第1の地図データがデータを有する道路と前記第2の地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定する道路特定装置。」

<<相違点2>>
本件発明1は、「外部測位システムにより測位された自車の位置情報を取得する自動車位置情報取得部と、
該自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、
該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、
該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、
前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部」とを有しているのに対し、甲2発明は、「抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段」、「算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段」、及び、前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して判定する「判定部」を備えていない点。

b.取消理由1について
本件発明1と甲2発明とは、上記相違点2で相違するから、本件発明1は甲2発明ではない。

c.取消理由2について
上記相違点2について検討する。
甲2発明は、対象道路を特定するためのマップマッチングを高速化する目的において、階層化させた地図において、道路の形状を表す形状代表値を比較することでマッチングを取るものであり、ネットワークデータを用いてマップマッチングを実施し、上位層の道路ネットワークデータで対象道路の特定ができない場合、下位層の道路ネットワークを用いてマップマッチングをやり直すというものである(例えば、【0016】、【0017】、【0040】ないし【0045】参照。)ところ、このような甲2発明において、上記「上位層の道路ネットワークデータ」から自車の近傍に存在するものとして抽出された道路の全てに対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を上記「リンクの形状を表す形状代表値」とするように、その構成を変更した上で、更に、上記「下位層の道路ネットワークデータ」から自車の近傍に存在するものとして抽出された道路の全ての中から上記「下位層の道路ネットワークデータ」のみがデータを有しており上記「上位層の道路ネットワークデータ」にはデータがない道路を選出して、該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を上記「並走類似形状道路の形状を表す形状代表値」とするように、その構成を変更することは、甲第2号証には記載されておらず、そのような変更を示唆する記載もないし、上記ア.(ア)及び(イ)で示したように、甲第1号証にも記載されておらず、そのような変更を示唆する記載もない。
したがって、上位層の道路ネットワークデータで対象道路の特定ができない場合、下位層の道路ネットワークを用いてマップマッチングをやり直すというものである甲2発明において、その構成を変更し、《相違点2》に係る本件発明1の発明特定事項を備えることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)本件発明2及び本件発明3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに技術的な限定を加える事項を発明特定事項とする発明であるから、上記(イ)で検討した理由と同様の理由により、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)小括
以上のとおり、本件発明1ないし3は、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明1ないし3に係る特許は、甲第2号証を主引用例とした場合の取消理由1及び2によっても、取り消すことができない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.採用しなかった特許異議申立理由の概要
(ア)申立理由1(明確性要件違反)
申立人は、本件訂正前の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4項に該当し取り消されるべきものである旨、主張する。
そして、申立人が主張する記載不備の理由の概要は、以下のとおりである。

a.「特定」と「判定」との関係について、「『特定』した上で「判定」する旨の記載はなく、本件明細書を参酌すると請求項1に記載された「特定」と「判定」との関係は明確でない。」(特許異議申立書10頁2行?11頁8行)。
b.請求項1に記載された「自車の近傍」の意味内容をどのように解釈すべきか明確でない(特許異議申立書11頁10行?12頁22行)。
c.請求項1に記載された「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」の意味内容は明確でない(特許異議申立書12頁24行?13頁13行)。

(イ)申立理由2(サポート要件違反)
申立人は、本件訂正前の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4項に該当し取り消されるべきものである旨主張する。
そして、申立人が主張する記載不備の理由の概要は、以下のとおりである。
a.「本件の請求項1には、『前記自車の走行している道路を特定し、・・・(略)・・・該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定する』と記載されている」、しかし、「上記記載を普通に読むと、「特定」した上で「判定」すると解釈できるところ、本件明細書には、「特定」した上で「判定」する旨の記載はない(特許異議申立書13頁17行?最終行)。
b.「「自車の近傍」とは、請求項1の記載を普通に通して読めば、「『外部測位システムにより測位された自車の位置』の近傍」であると解釈できる」が、むしろ「『位置Pa』の近傍」と解釈することが妥当であるといえ」、「請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない」(特許異議申立書14頁2行?15行)。
c.本件の請求項1において「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」と記載されているが、請求項1の記載からは、道路特定装置がその機能として「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する」か否かを判断する機能を有するものと解釈できるものばかりではなく、そのような機能を有するものではなく、道路特定装置が何らかの処理を行う結果、単に自車と道路の関係が上記記載の状態であれば、いずれを自車が走行しているかの判定が行われるということを示すに過ぎないとも解釈できる」ところ、本件明細書にはこのような発明の実施形態等の記載はない(特許異議申立書14頁17行?15頁4行)。

(ウ)申立理由3(新規性違反)
申立人は、本件訂正前の請求項4に係る特許は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨主張する(特許異議申立書34頁15行?35頁9行)。

(エ)申立理由4(進歩性違反)
申立人は、本件特許の請求項4に係る特許及び請求項5に係る特許は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨主張する(特許異議申立書35頁10行?36頁12行、37頁9行?38頁4行)。

イ.判断
本件発明1ないし3に関して、上記採用しなかった異議申立理由の当否を検討する。
(ア)申立理由1(明確性要件違反)について
以下、a.ないしc.で示すように、本件発明1ないし3は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものである。

a.本件発明1ないし3について「特定」と「判定」との関係が明確であるか否かについて検討する。発明の詳細な説明を参照すると、第1の指標算出手段において「第1の指標を有する第1の道路と、第1の道路の道路上の自車位置及び自車方位と、を選出」(段落【0030】)し、第2の指標算出手段によって「第2の指標を有する第2の道路と、第2の道路の道路上の自車位置及び自車方向と、を選出」(段落【0034】)し、その後、選出した指標を比較して、「道路Nを自車が走行していると判定する」(段落【0035】)ことが記載されている。つまり、道路を特定し、その後、指標を比較することにより判定することが示されているといえることから、本件発明1ないし3における「特定」と「判定」との関係は明確である。

b.申立人が特許異議申立書において「「自車の近傍」とは、請求項1の記載を普通に通して読めば、「『外部測位システムにより測位された自車の位置』の近傍」であると解釈できる」(11ページ13ないし15行目)と述べているとおり、自車の近傍とは、「外部測位システムにより測位された自車の位置」(本件明細書の段落【0025】)の近傍と明確に理解することができる。
そして、「自車の近傍」が「位置Paの近傍」でないことは、本件明細書の段落【0032】に「S304で選出された位置Paの情報を用いてナビゲーション用地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、抽出した道路のデータを取得する(第2の道路データ取得手段)。そして、抽出した全ての道路の中からナビゲーション用地図データのみがデータを有している道路、すなわち、自動運転用地図データにはデータがない道路を選出する(道路選出手段)。」(下線は当審によるもの。)と記載されていることから自明である。
したがって、本件発明1ないし3における「自車の近傍」の意味は明確である。

c.本件明細書の段落【0031】の「ナビゲーション用地図データにあって、自動運転用地図データにない道路を選出する(S306)」との記載、及び段落【0032】の「抽出した全ての道路の中からナビゲーション用地図データのみがデータを有している道路、すなわち、自動運転用地図データにはデータがない道路を選出する」との記載からも明らかなように、「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」は、第1の地図データにはなく、第2の地図データのみがデータを有する道路を意味することは明らかである。
したがって、本件発明1ないし3における「前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合」の意味内容は明確である。

(イ)申立理由2(サポート要件違反)について
以下、a.ないしc.で示すように、本件発明1ないし3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものである。

a.本件発明1ないし3が解決すべき課題は、本件明細書の段落【0007】ないし【0010】に記載されるように、「ナビゲーション用地図」と「自動運転用地図」を併用して利用する自動運転システムにおいて、適性な自車位置推定を行い、正しく自動運転の走行制御を行うことである。そして、そのために、上記(ア)a.に示したように、道路を特定し、その後、指標を比較することにより判定することが示されている(段落【0030】ないし【0035】)。
そうすると、本件明細書には「特定」した上で「判定」する旨の記載がされているということができ、また、本件発明1ないし3は、上記課題を解決し得ないものをも含むということはできない。
してみれば、本件発明1ないし3は、上記課題を解決し得ないものをも含むことを理由として、本件明細書に記載された発明ではないということはできない。

b.上記(ア)b.で示したとおり、本件明細書には、「S304で選出された位置Paの情報を用いてナビゲーション用地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、抽出した道路のデータを取得する(第2の道路データ取得手段)。」(段落【0032】)と記載されており、「自車の近傍」は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
そして、申立人の主張する「自車の近傍」は「『位置Pa』の近傍」と解釈することが妥当とする理由もない。
してみれば、本件発明1ないし3は、上記解釈を前提として、本件明細書に記載された発明ではないということはできない。

c.本件発明1は、「自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する」か否かを判断する機能を有しないものも含み得るか否かについて検討する。
本件発明の解決すべき課題は上記a.に示すように、「ナビゲーション用地図」と「自動運転用地図」を併用して利用する自動運転システムにおいて、適性な自車位置推定を行い、正しく自動運転の走行制御を行うことであることから、「第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する」か否かを判断する機能を備えているものであり、前記機能を有しないものをも含み得るものではないといえる。
してみれば、本件発明1ないし3は、前記機能を有しないものをも含み得ることを前提として、本件明細書に記載された発明ではないということはできない。

(ウ)申立理由3(新規性違反)及び申立理由4(進歩性違反)について
本件訂正前の請求項4及び5に係る発明に対応する、本件発明2及び3は、上記(1)ア.(ウ)及び同(1)イ.(ウ)で示したように、甲1発明ではなく、甲2発明でもなく、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ.小括
以上のとおり、本件発明1ないし3に係る特許は、上記申立理由1ないし4によっては、取り消すことができない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項1及び2に係る発明は削除されたため、本件特許の請求項1及び2に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許発明の請求項1及び2に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をするものができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
道路のデータを有する第1の地図データと、
道路のデータであって前記第1の地図データと内容が一部重複するデータを有する第2の地図データと、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報とに基づいて、前記自車の走行している道路を特定し、
前記自車の近傍に前記第2の地図データのみがデータを有する道路が存在する場合、該第2の地図データのみがデータを有する道路と、前記第1の地図データがデータを有する道路のいずれを自車が走行しているのかを判定するものにおいて、
前記第1の地図データがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第1の指標を算出し、
前記第2の地図データのみがデータを有する道路を自車が走行していることの確からしさを示す第2の指標を算出し、
前記第1の指標と前記第2の指標を比較して、前記第1の地図データがデータを有する道路と前記第2の地図データのみがデータを有する道路のうち、確からしさが高い方の道路を自車が走行していると判定する道路特定装置であって、
外部測位システムにより測位された自車の位置情報を取得する自車位置情報取得部と、
該自車の位置情報を用いて前記第1の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第1の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第1の指標とし、該第1の指標を有する第1の道路と、該第1の道路の道路上の自車位置と、を選出する第1の指標算出手段と、
該選出された道路上の自車位置の情報を用いて前記第2の地図データから自車の近傍に存在する道路を抽出し、該抽出した道路のデータを取得する第2の道路データ取得手段と、
該抽出した全ての道路の中から前記第2の地図データのみがデータを有しており前記第1の地図データにはデータがない道路を選出する道路選出手段と、
該選出した全ての道路に対してそれぞれ自車が走行していることの確からしさを示す指標を算出し、該算出した指標の中から最も確からしい指標を第2の指標とし、該第2の指標を有する第2の道路と、該第2の道路の道路上の自車位置と、を選出する第2の指標算出手段と、
前記第1の指標と前記第2の指標とを比較して、前記第2の指標の方が前記第1の指標よりも確からしい場合には、前記第2の道路を自車が走行していると判定する判定部と、
を有することを特徴とする道路特定装置。
【請求項4】
前記第1の地図データは、自動運転用地図データであり、
前記第2の地図データは、ナビゲーション用地図データであることを特徴とする請求項3に記載の道路特定装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の道路特定装置と、
該道路特定装置によって特定された自車が走行している道路のデータに基づいて自車の走行制御を行う走行制御装置と、
を有することを特徴とする車両制御システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-25 
出願番号 特願2016-239191(P2016-239191)
審決分類 P 1 651・ 856- YAA (G01C)
P 1 651・ 537- YAA (G01C)
P 1 651・ 113- YAA (G01C)
P 1 651・ 121- YAA (G01C)
P 1 651・ 854- YAA (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保田 創  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 高島 壮基
北村 英隆
登録日 2019-11-01 
登録番号 特許第6609540号(P6609540)
権利者 クラリオン株式会社 日立オートモティブシステムズ株式会社
発明の名称 道路特定装置及び車両制御システム  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
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