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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C01G 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 C01G 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C01G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C01G |
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管理番号 | 1374895 |
異議申立番号 | 異議2020-700442 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-06-24 |
確定日 | 2021-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6626434号発明「リチウム金属複合酸化物粉体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6626434号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6626434号の請求項1、2、4?9に係る特許を維持する。 特許第6626434号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6626434号の請求項1?9に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)9月3日(優先権主張2014年9月3日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和元年12月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、上記請求項1?9(全請求項)を対象として、令和2年6月24日に特許異議申立人である秋山重夫により特許異議の申立てがなされた。 本件特許異議申立事件におけるその後の手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 2年 9月28日付け:(当審)取消理由通知 同年12月 3日 :(特許権者)意見書及び訂正請求書の提出 同年12月28日 :(特許異議申立人)意見書の提出 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容(訂正事項) 令和2年12月3日にされた訂正の請求(以下、当該訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?9を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「層状結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物からなる粒子の表面に、Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在する表面部を備えた粒子を含むリチウム金属複合酸化物粉体であって」 と記載されているのを、 「層状結晶構造を有し、一般式Li_(1+x)M_(1-x)O_(2)(式中、Mは、Mn、Co、Ni、周期律表の第3族元素から第11族元素の間に存在する遷移元素、及び、周期律表の第3周期までの典型元素からなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せであり、且つ、少なくともMn、Co及びNiのうちの何れか1種を含む)(ただし、Mが周期律表の第3周期までの典型元素のみからなる場合を除く)(これを「構成元素M」と称する))で表されるリチウム金属複合酸化物するリチウム金属複合酸化物からなる粒子の表面に、Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在する表面部を備えた粒子を含む、リチウム二次電池の正極活物質に用いるリチウム金属複合酸化物粉体であって」 に訂正する(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4?9も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に記載された「請求項3に記載の」を「請求項1又は2に記載の」に、同請求項5に記載された「請求項3又は4に記載の」を「請求項1、2又は4に記載の」に、同請求項6に記載された「請求項3?5の何れかに記載の」を「請求項1、2、4又は5に記載の」に、同請求項7に記載された「請求項1?6の何れかに記載の」を「請求項1、2、4、5又は6に記載の」に、同請求項8に記載された「請求項1?7の何れかに記載の」を「請求項1、2、4、5、6又は7に記載の」に、同請求項9に記載された「請求項1?8の何れかに記載の」を「請求項1、2、4、5、6、7又は8に記載の」に、それぞれ訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「リチウム金属複合酸化物」の化学組成を、【請求項3】の記載に基づいて、特定の一般式のものに限定するとともに、その構成元素Mを、【0026】の「「M」は、例えばMn、Co及びNiの3元素のみから構成されていてもよいし、当該3元素に前記その他の元素の1種以上を含んでいてもよい」などの記載に基づいて、少なくともMn、Co及びNiのうちの何れか1種を含むものに限定し、さらに、訂正前の請求項1に記載された「リチウム金属複合酸化物粉体」の用途を、【0001】の「本発明は、リチウム二次電池の正極活物質として用いることができるリチウム金属複合酸化物粉体に関する」などの記載に基づいて、リチウム二次電池の正極活物質に用いるものに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであると認められる。 (2) 訂正事項2、3について 訂正事項2は、単に訂正前の請求項3を削除するものであり、訂正事項3は、当該請求項3の削除に伴い、請求項4?9における引用請求項の記載に不整合が生じた部分を、単に明瞭化ないし引用請求項の一部の削除により整合を図ったものである。 したがって、訂正事項2、3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであると認められる。 3 小括 上記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?9を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その訂正事項はいずれも、同法同条第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許の特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、請求項1、2、4?9に係る各発明を項番号に合わせて「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という。)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 層状結晶構造を有し、一般式Li_(1+x)M_(1-x)O_(2)(式中、Mは、Mn、Co、Ni、周期律表の第3族元素から第11族元素の間に存在する遷移元素、及び、周期律表の第3周期までの典型元素からなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せであり、且つ、少なくともMn、Co及びNiのうちの何れか1種を含む)(ただし、Mが周期律表の第3周期までの典型元素のみからなる場合を除く)(これを「構成元素M」と称する))で表されるリチウム金属複合酸化物するリチウム金属複合酸化物からなる粒子の表面に、Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在する表面部を備えた粒子を含む、リチウム二次電池の正極活物質に用いるリチウム金属複合酸化物粉体であって、 下記測定方法で測定される表面LiOH量が0.10wt%未満であり、且つ、下記測定方法で測定される表面Li_(2)CO_(3)量が0.25wt%未満であり、且つ、 CuKα線を使用したX線回折によって得られるX線回折パターンにおいて、前記リチウム金属複合酸化物の(104)面の積分強度に対する、(003)面の積分強度の比率が1.15より大きく、且つ、 誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で測定して得られるS量が、前記リチウム金属複合酸化物粉体(100wt%)の0.10wt%未満であることを特徴とするリチウム金属複合酸化物粉体。 (表面LiOH量及び表面Li_(2)CO_(3)量の測定方法) Winkler法を参考にして次の手順のとおり滴定を行う。試料10.0gをイオン交換水50mlに分散させ、15min浸漬させた後、ろ過し、ろ液を塩酸で滴定する。その際、指示薬としてフェノールフタレインとブロモフェノールブルーを用いて、ろ液の変色とその時の滴定量をもとにして表面LiOH量と表面Li_(2)CO_(3)量を算出する。 【請求項2】 タップ密度(TD)が2.0g/cm^(3)より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素Mの濃度(at%)(「C_(M)」と称する。構成元素Mが2種類以上の場合は濃度の合計)に対する、表面元素Aの濃度(at%)(「C_(A)」と称する。表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)の比率(C_(A)/C_(M))が0より大きく0.8より小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項5】 構成元素Mが少なくともNiを含み、 X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素MであるNiの濃度(at%)(「C_(Ni)」と称する。)に対する、表面元素Aの濃度(at%)(「C_(A)」と称する。表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)の比率(C_(A)/C_(Ni))が0より大きく1.0より小さいことを特徴とする、請求項1、2又は4に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項6】 X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素Mの濃度(at%)(構成元素Mが2種類以上の場合は濃度の合計)が0at%より大きく50at%より小さく、表面元素Aの濃度(at%)(表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)が0at%より大きく10at%より小さく、構成元素Mが少なくともNiを含む場合の当該Niの濃度(at%)が0at%より大きく25at%より小さいことを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項7】 CuKα1線を用いたX線回折によって得られるX線回折パターンを使ってシェラーの式から計算される、前記リチウム金属複合酸化物の(110)面の結晶子サイズに対する、(003)面の結晶子サイズの比率が1.0より大きくかつ2.5より小さいことを特徴とする、請求項1、2、4、5又は6に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項8】 レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50(「D50」と称する)に相当する大きさの二次粒子から下記測定方法によって求められる二次粒子面積に対する、下記測定方法によって求められる一次粒子面積の比率(「一次粒子面積/二次粒子面積」と称する)が0.004?0.035であることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6又は7に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 (二次粒子面積の測定方法) リチウム金属複合酸化物粉体を電子顕微鏡で観察し、D50に相当する大きさの二次粒子をランダムに5個選択し、該二次粒子が球状の場合はその粒子の長さを直径(μm)として面積を計算し、該二次粒子が不定形の場合には球形に近似をして面積を計算し、該5個の面積の平均値を二次粒子面積(μm^(2))として求める。 (一次粒子面積の測定方法) リチウム金属複合酸化物粉体を電子顕微鏡で観察し、D50に相当する大きさの二次粒子5個をランダムに選択し、選ばれた二次粒子5個から一次粒子を100個ランダムに選択し、画像解析ソフトを使用して一次粒子の平均粒子径を求め、その値を直径(μm)とし、球形近似して面積を計算し、一次粒子面積(μm^(2))として求める。 【請求項9】 表面リチウム量が0.35wt%未満であることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6、7又は8に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。」 第4 取消理由の概要 令和2年9月28日付けの取消理由通知において指摘した取消理由の概要は、以下のとおりである。 1 (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記第5の1に示した点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号)。 2 (明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記第6の1に示した点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号)。 第5 取消理由1(サポート要件)についての当審の判断 1 具体的な指摘事項 当該取消理由1は、要するに、本件訂正前の請求項1?9に係る発明は、「リチウム二次電池の正極活物質として使用」されることが想定されない粒度や比表面積等の物性を有する「リチウム金属複合酸化物粉体」の場合や、【0024】に記載された「一般式」で表されない「リチウム金属複合酸化物」の場合には、その課題が解決できないことは明らかであるから、当該発明まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない、というものである。 2 取消理由1についての検討 本件訂正を踏まえ、改めてサポート要件について検討すると、本件訂正により、本件特許発明に係るリチウム金属複合酸化物粉体は、リチウム二次電池の正極活物質に用いるものである点、及び、上記一般式のものである点が特定されたので、本件特許発明は、発明の詳細の説明の記載及び技術常識に基づいて当業者においてその課題が解決できると認識できる範囲内のものとなったということができるから、上記取消理由1には理由がないと判断する。 以下、上記のように判断した理由について詳述する。 (1) サポート要件の判断手法について 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。 (2) 本件特許発明の課題について 本件特許発明の課題は、「層状結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物を含有する正極活物質に関し、リチウム二次電池の正極活物質として使用した場合に、電解液との反応を抑えて電池の寿命特性を高めることができると共に、粒子表面に存在する不純物やアルカリ成分を低減し、それでいて、粒子表面における局所的な岩塩層の形成を抑えることで、充放電効率を維持しながら、低温出力特性を維持乃至向上させることができる、新たなリチウム金属複合酸化物粉体を提供せんとする」(【0016】)ことであると認められる。 (3) 発明の詳細な説明の記載について ア 上記(2)の課題は、端的にいうと、(i)電解液との反応抑制、(ii)不純物及びアルカリ成分の低減、(iii)岩塩層の形成抑制にあるということができるから、これら3点に着目しながら発明の詳細な説明の記載をみてみると、関連箇所として次の記載を認めることができる(下線は当審が付したもの)。 (ア) 電解液との反応抑制に関する記載 ・「【0029】 (表面部) 表面部は、本リチウム金属複合酸化物粒子の表面に、Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在するのが好ましい。 ここで述べる“表面部”は、粒子内部よりも表面元素Aの濃度の濃い部分が粒子表面に存在する部分を備えていることを特徴とする。 ・・・ 【0031】 本リチウム金属複合酸化物粒子の表面に上記表面部が存在していれば、リチウム二次電池の正極活物質として使用した場合に、電解液との反応を抑えて寿命特性を向上させることができる・・・」 ・「【0043】 <表面リチウム不純物量> 本リチウム金属複合酸化物粉体は、表面リチウム不純物量が0.35wt%未満であるのが好ましい。 表面リチウム量が0.35wt%未満であれば、未反応分の表面リチウム不純物が電解液と反応して、寿命特性の劣化を招く反応を抑制することができるので好ましい。」 なお、表面リチウム不純物量については、【0134】に「水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量を足したものを表面リチウム不純物量とした」と記載されている。 (イ) 不純物及びアルカリ成分の低減に関する記載 ・「【0041】 <S量> 本リチウム金属複合酸化物粉体のS量、すなわち誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で測定して得られるS量は、前記リチウム金属複合酸化物粉体(100wt%)の0.10wt%未満であるのが好ましく、中でも0.07wt%以下、その中でも0.04wt%以下、その中でもさらに0.02wt%以下であるのが好ましい。 本リチウム金属複合酸化物粉体のS量が多いと、水分吸着速度が大きくなり、サイクル特性が悪化することになるため、本リチウム金属複合酸化物粉体のS量が0.10wt%未満であることにより、サイクル特性を良好にすることができる。」 ・上記【0043】の記載 (ウ) 岩塩層の形成抑制に関する記載 ・「【0038】 <結晶構造> 本リチウム金属複合酸化物粒子の結晶構造に関しては、CuKα1線を用いたXRDにより測定されるX線回折パターンにおいて、(104)面由来のピークの積分強度に対する(003)面由来のピークの積分強度の比率(003)/(104)が1.15より大きいことが好ましい。 当該比率(003)/(104)が1.00に近い程、岩塩構造が占める割合が大きいことを意味している。当該比率(003)/(104)が1.15より大きければ、岩塩構造が占める割合が小さくなり、低温出力特性を良好にすることができることが分かった。」 イ また、摘記は省略するが、発明の詳細な説明には、上記表面部、表面リチウム不純物量(水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量)、S量及び(003)/(104)比を得るための具体的な手法についても十分に記載されるとともに、【0148】【表1】には、実際に得られたリチウム金属複合酸化物粉体の実施例(具体例)が種々記載されている。 (4) 発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者において上記課題が解決できると認識できる範囲について 上記(3)の発明の詳細な説明の記載によれば、当業者は、上記(2)の課題、すなわち、(i)電解液との反応抑制、(ii)不純物及びアルカリ成分の低減、(iii)岩塩層の形成抑制の3点を解決するためには、上記表面部、表面リチウム不純物量(水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量)、S量及び(003)/(104)比を、所定の範疇に調整することが重要であって、当該所定の範疇とは、とりもなおさず本件特許発明1が規定するような範囲であることを理解することができる。 加えて、当業者は、当該課題の解決にあたり、リチウム金属複合酸化物粉体自体(母体)の構成はさほど重要ではないことを理解するから、当該母体については、上記課題に係る用途、すなわち、リチウム二次電池の正極活物質としての用途に供するに足りる最低限の構成を備えていれば事足りると解するのが相当である。そして、本件特許発明1が規定する母材は、リチウム二次電池の正極活物質に用いるものであることが特定され、構成元素Mについても技術常識(通常の正極活物質の構成)からみて相応に特定されていると解されることから、当該最低限の構成を備えるものということができる。 なお、発明の詳細な説明に記載された実施例の諸データは、本件特許発明1が規定する上記所定の範疇の一部であるかもしれないが、発明の詳細な説明には、上記(3)イのとおり、上記表面部、表面リチウム不純物量(水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量)、S量及び(003)/(104)比を当該所定の範疇とするための具体的な手法について十分に記載されており、当該所定の範疇全般にわたり実現可能であることは明らかであるし、当該所定の範疇のうちの実施例にない範囲のものが、上記した、(i)電解液との反応抑制、(ii)不純物及びアルカリ成分の低減、(iii)岩塩層の形成抑制を実現することができず、もって上記の課題を解決することができないというに足りる証拠もない。 (5) サポート要件適合性について 上記(4)のとおり、本件特許発明1は、上記表面部、表面リチウム不純物量(水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量)、S量及び(003)/(104)比を、上記課題が解決できると当業者が認識できる所定の範疇のものに特定するものであり、なおかつ、その母材についても当該課題を解決するに足りるものに特定するものであるから、本件特許発明1、さらには、これを限定した本件特許発明2?9は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者において上記課題が解決できると認識できる範囲のものであるということができる。 したがって、取消理由1には理由がない。 第6 取消理由2(明確性要件)についての当審の判断 1 具体的な指摘事項 当該取消理由2は、要するに、本件訂正前の請求項1に係る発明における「リチウム金属複合酸化物」(粉体内部)にも、「表面部」と同様に、「Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ」が存在する場合、当該発明における「Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在する表面部」は一意に定まらないから、当該発明は不明確である、というものである。 2 取消理由2についての検討 本件訂正を踏まえ、改めて当該取消理由2について検討をする。 本件訂正により、本件特許発明に係るリチウム金属複合酸化物粉体は、リチウム二次電池の正極活物質に用いるものに特定されたため、当該粉体内部に表面元素Aが存在するとしても、その濃度は、技術常識(通常の正極活物質の構成)に照らすと微量であると解するのが合理的である。 他方、当該粉体の「表面部」は、本件明細書の【0029】において、「粒子内部よりも表面元素Aの濃度の濃い部分が粒子表面に存在する部分を備えている」旨定義され、また、その形成方法(表面処理方法)は、同【0086】?【0093】のとおり、カップリング剤等による表面処理が想定されていることから、当該表面部における表面元素Aの濃度は、粉体内部における当該濃度に比べて、かなり高いものであると解するのが合理的である。さらにいうと、仮に、当該表面部における表面元素Aの濃度が、粉体内部における当該濃度と同程度となるような場合が生じたとしても(実際には考えにくいが)、そのような場合は、上記の定義に照らすと、本件特許発明における「表面部」の範疇からは外れた形態であると解することができる。 したがって、上記粉体内部に表面元素Aが存在する場合であっても、上記「表面部」の有無を確認することは可能であるから、本件特許発明が明確でないということはできない。 なお、本件明細書の【0098】に記載されたように、本件特許発明においては、熱処理により、表面処理剤中の表面元素Aを、表面からより深層方向に拡散させることをも予定されており、その場合、当該表面元素Aの濃度に濃度勾配が生じるものと解される。しかしながら、その場合にあっても、表面部の厚さをどのように理解するのかといった問題は生じるかもしれないが、単に表面部が存在するか否かについては、その判断ができないほどに支障が生じるとは考えにくい。 第7 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 1 標記特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、種々の特許異議申立理由を主張しているが、上記取消理由と同旨のものを除くと、残りの特許異議申立理由は、要するに、(i)サポート要件違反、(ii)明確性要件違反(特許異議申立書の10、11,17、18頁に記載された実施可能要件違反も含む)、及び、(iii)進歩性欠如を理由とするものである。 そして、(i)についての具体的な指摘事項は、本件訂正前の請求項1において規定されるS量の数値範囲(0.10wt%未満)、同請求項2において規定されるタップ密度の数値範囲(2.0g/cm^(3)より大きい)、同請求項3において規定される構成元素M、同請求項4において規定される比率(C_(A)/C_(M))の数値範囲(0より大きく0.8より小さい)、同請求項5において規定される比率(C_(A)/C_(Ni))の数値範囲(0より大きく1.0より小さい)、及び、同請求項6において規定される構成元素Mの濃度範囲(0at%より大きく50at%より小さく)、表面元素Aの濃度範囲(0at%より大きく10at%より小さく)、Niの濃度(0at%より大きく25at%より小さい)は、いずれも発明の詳細な説明の記載に対して広範にすぎる、というものであり、(ii)についての具体的な指摘事項は、本件訂正前の請求項1において規定する構成元素A(Al、Ti、Zr)は、その分析について記載した本件明細書の【0129】においてAlについてのみ記載されていることと整合したおらず、また、同請求項9に記載された表面リチウム量についても、本件明細書の【0043】に記載された表面リチウム不純物量と整合していないため、いずれも不明確である、というものである。さらに、(iii)は、後記甲1を主たる証拠とするものである。 2 サポート要件違反について サポート要件適合性については、上記第5の2(1)に示した判断手法に従って判断すべきところ、上記第5の2(5)のとおり、本件訂正後の本件特許発明1及びこれを限定した本件特許発明2?9は、表面部、表面リチウム不純物量(水酸化リチウムの量と炭酸リチウムの量)、S量及び(003)/(104)比を、上記課題が解決できると当業者が認識できる所定の範疇のものに特定するものであり、なおかつ、その母材についても当該課題を解決するに足りるものに特定するものであるから、本件特許発明1?9は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者において上記課題が解決できると認識できる範囲のものである。 そうである以上、上記(i)についての具体的な指摘事項のとおり、発明の詳細な説明に記載された実施例の諸データが、本件特許発明1?9において規定される数値範囲の一部であるとしても、このことは上記のサポート要件の判断に影響を与えるものではないから、これを理由に、本件特許発明1?9に係る請求項1?9の記載がサポート要件に適合しないということはできない。 3 明確性要件違反について 上記(ii)についての具体的な指摘事項のとおり、表面部の分析について記載した本件明細書の【0129】には、本件特許発明1における構成元素Aのうち、Alについてのみ説明されている。しかしながら、実施例を整理して掲載した【0148】【表1】などには、当該構成元素AをTi及びZrとした具体例(実施例8、9)が見て取れ、それらにおいては、当然のことながら、Ti及びZrが分析対象とされていることは明らかであるから、本件特許発明1に係る請求項1の記載に、特許異議申立人が指摘するような不備は認められない。 また、確かに、請求項9に記載された表面リチウム量という用語は、本件明細書の【0043】に記載された表面リチウム不純物量という用語とは整合していないが、本件明細書の【0133】、【0134】及び【0148】【表1】の記載に接した当業者は、請求項9に記載された表面リチウム量とは、表面リチウム不純物量のことであり、これは、表面LiOH量と表面Li_(2)CO_(3)量の合算量であることを理解することができるから、当該請求項9の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは言い難い。 したがって、請求項1及び9の記載に、特許異議申立人が指摘するような不備は認められない。 4 進歩性欠如について (1) 特許異議申立人が提出した証拠一覧 特許異議申立人が進歩性欠如の根拠として提出した証拠は、次のとおりである(以下では、甲第1号証を「甲1」などと略称した。)。 甲1:特開2008-226495号公報 甲2:特開2012-113823号公報 甲3:特開2013-232318号公報 (2) 甲1に記載された発明(甲1発明) 甲1には、「非水電解質二次電池用リチウム含有複合酸化物粒子及びその製造方法」(発明の名称)について記載され、その【請求項1】、【請求項5】及び【0001】には、次の記載がある。 ・「【請求項1】 一般式Li_(p)Ni_(x)Co_(y)Mn_(z)Me_(w)O_(2)(但し、Meは、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素、Al、Sn並びにアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。0.8≦p≦1.3、0≦x≦0.85、0.1≦y≦1.0、0≦z≦0.6、0≦w≦0.2)で表されるリチウム含有複合酸化物の粒子であって、該粒子の表面層にランタン原子及びA原子(但し、Aは、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素、Al、Sn並びにアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す)が含有されることを特徴とする非水電解質二次電池用リチウム含有複合酸化物粒子。」 ・「【請求項5】 A元素が、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Zn、Al、Sn及びMgから選ばれる少なくとも1種である請求項1?4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用リチウム含有複合酸化物粒子。」 ・「【0001】 本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池用の正極活物質であるリチウム含有複合酸化物粒子、及びその製造方法に関する。」 そうすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「一般式Li_(p)Ni_(x)Co_(y)Mn_(z)Me_(w)O_(2)(但し、Meは、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素、Al、Sn並びにアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。0.8≦p≦1.3、0≦x≦0.85、0.1≦y≦1.0、0≦z≦0.6、0≦w≦0.2)で表されるリチウム含有複合酸化物の粒子であって、該粒子の表面層にランタン原子及びA原子(但し、Aは、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素、Al、Sn並びにアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す)が含有されることを特徴とするリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池用の正極活物質であるリチウム含有複合酸化物粒子であって、 A元素が、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Zn、Al、Sn及びMgから選ばれる少なくとも1種であるもの」 (3) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、リチウム二次電池の正極活物質に用いるリチウム金属複合酸化物粉体であり、その粒子表面にTiなどを有する点で共通するものの、少なくとも次の相違点を有するものと認められる。 ・相違点(積分強度比に関する相違点) 本件特許発明1は、CuKα線を使用したX線回折によって得られるX線回折パターンにおいて、リチウム金属複合酸化物の(104)面の積分強度に対する、(003)面の積分強度の比率が1.15より大きいという発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、そのような事項を有していない点 イ 相違点の検討 上記積分強度比に関する相違点について、特許異議申立人は、次のように主張する。 すなわち、本件特許発明1における当該積分強度比は、本件明細書の【0038】の「なお、当該比率(003)/(104)を1.15より大きくするには、焼成条件を調整したり、表面処理における溶媒または水の量を調整したりすると共に、粒子表面に、表面元素Aが存在する表面部を備えた状態で、水洗するのが好ましい。但し、かかる方法に限定するものではない。」という記載からみて、焼成条件や表面処理における溶媒量が同じであれば、当該積分強度比も同じになるというべきであり、これを前提とすれば、甲1発明における焼成条件(甲1【0050】記載の例1の焼成条件)あるいは溶媒量(【0059】記載の例4の溶媒量)は、本件特許発明1の焼成条件(本件明細書【0081】)あるいは溶媒量(本件明細書【0091】)と同程度であるから、当該相違点に係る本件特許発明1の構成は、甲1発明に既に内在する事項であり、実質的な相違点ではない、と主張する。 そこで、検討するに、上記本件明細書の【0038】の記載は、上記積分強度比を実現するための種々の調整手法を例示したものであり、単に、焼成条件ないし溶媒量が同じであれば、得られる粉体の積分強度比も同じになることを教示したものではない。したがって、上記主張はその前提において誤りであるというべきである。 加えて、甲1の【0050】に記載された「酸素含有雰囲気中1000℃で16時間」という例1の焼成条件は、本件明細書の【0081】に記載された「仮焼成せずに本焼成する場合には、700?1000℃、中でも750℃以上或いは950℃以下、その中でも800℃以上或いは950℃以下、その中でもさらに830℃以上或いは910℃以下で0.5時間?30時間保持するように本焼成するのが好ましい。」という焼成条件と重複するものであるが、当該【0081】に記載された好適な焼成条件とは異なるものである上、そもそも、焼成条件が重複するからといって、このことのみを理由に、上記積分強度比が一致するとは言い難い。また、甲1の【0059】に記載された例4の溶媒量は、本件明細書の【0091】に記載されたディスパージョン量とは異なるものである(特許異議申立書25頁の計算を参酌した。)。 したがって、上記特許異議申立人の主張を採用して、上記相違点を実質的なものではないとすることはできない。 したがって、その他の相違点及び証拠について検討するまでもなく、本件特許発明1について、進歩性を欠如するということはできない。 (4) 本件特許発明2?9について 本件特許発明2?9は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、進歩性を欠如するということはできない。 5 小活 以上のとおりであるから、上記取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、いずれも理由がない。 第8 結び 以上の検討のとおり、本件特許の請求項1、2、4?9に係る特許は、上記取消理由及び特許異議申立理由によって取り消すことはできない。またほかに、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項3は削除され、当該請求項3に係る特許についての特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 層状結晶構造を有し、一般式Li_(1+x)M_(1-x)O_(2)(式中、Mは、Mn、Co、Ni、周期律表の第3族元素から第11族元素の間に存在する遷移元素、及び、周期律表の第3周期までの典型元素からなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せであり、且つ、少なくともMn、Co及びNiのうちの何れか1種を含む)(ただし、Mが周期律表の第3周期までの典型元素のみからなる場合を除く。)(これを「構成元素M」と称する))で表されるリチウム金属複合酸化物からなる粒子の表面に、Al、Ti及びZrからなる群のうちの何れか1種或いは2種以上の組合せ(これを「表面元素A」と称する)が存在する表面部を備えた粒子を含む、リチウム二次電池の正極活物質に用いるリチウム金属複合酸化物粉体であって、 下記測定方法で測定される表面LiOH量が0.10wt%未満であり、且つ、下記測定方法で測定される表面Li_(2)CO_(3)量が0.25wt%未満であり、且つ、 CuKα線を使用したX線回折によって得られるX線回折パターンにおいて、前記リチウム金属複合酸化物の(104)面の積分強度に対する、(003)面の積分強度の比率が1.15より大きく、且つ、 誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で測定して得られるS量が、前記リチウム金属複合酸化物粉体(100wt%)の0.10wt%未満であることを特徴とするリチウム金属複合酸化物粉体。 (表面LiOH量及び表面Li_(2)CO_(3)量の測定方法) Winkler法を参考にして次の手順のとおり滴定を行う。試料10.0gをイオン交換水50mlに分散させ、15min浸漬させた後、ろ過し、ろ液を塩酸で滴定する。その際、指示薬としてフェノールフタレインとブロモフェノールブルーを用いて、ろ液の変色とその時の滴定量をもとにして表面LiOH量と表面Li_(2)CO_(3)量を算出する。 【請求項2】 タップ密度(TD)が2.0g/cm^(3)より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素Mの濃度(at%)(「C_(M)」と称する。構成元素Mが2種類以上の場合は濃度の合計)に対する、表面元素Aの濃度(at%)(「C_(A)」と称する。表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)の比率(C_(A)/C_(M))が0より大きく0.8より小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項5】 構成元素Mが少なくともNiを含み、X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素MであるNiの濃度(at%)(「C_(Ni)」と称する。)に対する、表面元素Aの濃度(at%)(「C_(A)」と称する。表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)の比率(C_(A)/C_(Ni))が0より大きく1.0より小さいことを特徴とする、請求項1、2又は4に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項6】 X線光電子分光分析法(XPS)により測定される、構成元素Mの濃度(at%)(構成元素Mが2種類以上の場合は濃度の合計)が0at%より大きく50at%より小さく、表面元素Aの濃度(at%)(表面元素Aが2種類以上の場合は濃度の合計)が0at%より大きく10at%より小さく、構成元素Mが少なくともNiを含む場合の当該Niの濃度(at%)が0at%より大きく25at%より小さいことを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項7】 CuKα1線を用いたX線回折によって得られるX線回折パターンを使ってシェラーの式から計算される、前記リチウム金属複合酸化物の(110)面の結晶子サイズに対する、(003)面の結晶子サイズの比率が1.0より大きくかつ2.5より小さいことを特徴とする、請求項1、2、4、5又は6に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 【請求項8】 レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50(「D50」と称する)に相当する大きさの二次粒子から下記測定方法によって求められる二次粒子面積に対する、下記測定方法によって求められる一次粒子面積の比率(「一次粒子面積/二次粒子面積」と称する)が0.004?0.035であることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6又は7に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 (二次粒子面積の測定方法) リチウム金属複合酸化物粉体を電子顕微鏡で観察し、D50に相当する大きさの二次粒子をランダムに5個選択し、該二次粒子が球状の場合はその粒子の長さを直径(μm)として面積を計算し、該二次粒子が不定形の場合には球形に近似をして面積を計算し、該5個の面積の平均値を二次粒子面積(μm^(2))として求める。 (一次粒子面積の測定方法) リチウム金属複合酸化物粉体を電子顕微鏡で観察し、D50に相当する大きさの二次粒子5個をランダムに選択し、選ばれた二次粒子5個から一次粒子を100個ランダムに選択し、画像解析ソフトを使用して一次粒子の平均粒子径を求め、その値を直径(μm)とし、球形近似して面積を計算し、一次粒子面積(μm^(2))として求める。 【請求項9】 表面リチウム量が0.35wt%未満であることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6、7又は8に記載のリチウム金属複合酸化物粉体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-30 |
出願番号 | 特願2016-505630(P2016-505630) |
審決分類 |
P
1
651・
853-
YAA
(C01G)
P 1 651・ 851- YAA (C01G) P 1 651・ 537- YAA (C01G) P 1 651・ 121- YAA (C01G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
宮澤 尚之 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 金 公彦 |
登録日 | 2019-12-06 |
登録番号 | 特許第6626434号(P6626434) |
権利者 | 三井金属鉱業株式会社 |
発明の名称 | リチウム金属複合酸化物粉体 |
代理人 | 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 |