ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01B 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01B |
---|---|
管理番号 | 1374903 |
異議申立番号 | 異議2019-700977 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-02 |
確定日 | 2021-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6531541号発明「導電性ペースト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6531541号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし8]について訂正することを認める。 特許第6531541号の請求項1ないし6及び8に係る特許を維持する。 特許第6531541号の請求項7に対する特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6531541号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成27年7月24日(優先権主張 平成26年7月31日)を出願日とする出願であって、令和1年5月31日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、特許掲載公報が同年6月19日に発行され、その後、その特許に対し、同年12月2日に特許異議申立人 藤井正剛(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、令和2年2月21日付けで取消理由が通知され、同年4月27日に特許権者 住友金属鉱山株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年5月12日付けで訂正の請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年6月22日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年9月14日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、同年12月16日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたものである。 なお、令和2年4月27日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、特許異議申立人には、すでに意見書の提出の機会が与えられており、令和2年12月16日にされた訂正の請求によって、特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、下記第2ないし7のとおり、特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許異議申立人に対して上記訂正の請求に対する意見書を提出する機会を与えない。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和2年12月16日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、前記酸系分散剤以外のカチオン系分散剤を含有する」と記載されているのを、「前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6、8も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、前記酸系分散剤以外のカチオン系分散剤を含有する」と記載されているのを、「前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6、8も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 2 一群の請求項について 訂正事項1ないし3による訂正は、訂正前の請求項[1?8]という一群の請求項についてなされたものである。 3 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 請求項1に係る訂正事項1は、「前記酸系分散剤以外のカチオン系分散剤」について、本件明細書の段落【0042】及び【表1】等に基づいて、「アミン塩基系分散剤」と減縮し、「バインダー樹脂」について、本件明細書の段落【0031】及び【0052】等に基づいて、「前記バインダー樹脂が、エチルセルロースであり」と減縮し、かつ、「酸系分散剤」について、請求項7及び本件明細書の段落【0037】等に基づいて「アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」と減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項1の訂正に伴って訂正される請求項3ないし6及び8も同様である。 (2)訂正事項2について 請求項2に係る訂正事項2は、「前記酸系分散剤以外のカチオン系分散剤」について、本件明細書の段落【0042】及び【表1】等に基づいて、「アミン塩基系分散剤」と減縮し、「バインダー樹脂」について、本件明細書の段落【0031】及び【0052】等に基づいて、「前記バインダー樹脂が、エチルセルロースであり」と減縮し、かつ、「酸系分散剤」について、請求項7及び本件明細書の段落【0037】等に基づいて「アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」と減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項2の訂正に伴って訂正される請求項3ないし6及び8も同様である。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項7を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?8]について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書の添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種からなり、 前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、 前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、 前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる、 ことを特徴とする導電性ペースト。 【請求項2】 導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、(A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種と、(B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種と、を混合した混合溶剤からなり、 前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、 前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、 前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる、 ことを特徴とする導電性ペースト。 【請求項3】 前記導電性金属粉末が、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種の金属粉末からなることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項4】 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物であるチタン酸バリウム(BaTiO_(3))である請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項5】 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物強誘電体である請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項6】 前記積層セラミックデバイスは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び前記導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有し、前記誘電体グリーンシートに含まれる誘電体セラミック粉末と前記導電性ペーストに含まれる前記セラミック粉末とが同一組成の粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記積層セラミックデバイスは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び前記導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有し、前記誘電体グリーンシートの厚さが、3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。」 第4 特許異議申立書に記載した理由の概要 令和1年12月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(特許法第29条第2項:甲1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第7号証に記載の技術事項並びに周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件違反) 本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 なお、申立理由2の具体的理由は次のとおりである。 本件特許の請求項1及び2に記載の「酸系分散剤」及び「酸系分散剤以外のカチオン系分散剤」が、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、どのようなものが含まれるかわからず、「酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下」とする調整ができないから、本件発明1ないし8を実施できない。 3 証拠方法 甲第1号証 : 特開2011-159393号公報 甲第2号証 : 特開2012-174797号公報 甲第3号証 : 特開2007-27081号公報 甲第4号証 : 資源処理技術、1989年36巻4号、p.161-166、http://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj1986/36/4/36_4_161/_pdf/-char/jahttps://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj1986/36/4/36_4_161/_article/-char/ja/ 甲第5号証 : 特開2013-251208号公報 甲第6号証 : DISPERBYK-102 データシート 甲第7号証 : 特開2013-67552号公報 表記については、特許異議申立書の記載にしたがった。 甲第1号証から甲第7号証については、それぞれ「甲1」から「甲7」という。 第5 当審の取消理由<決定の予告>の概要 令和2年9月14日付けで通知した取消理由<決定の予告>(以下、「取消理由<決定の予告>」という。)の概要は、次のとおりである。なお、当該取消理由は、取り下げられたとみなされる令和2年4月27日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の請求項1?9に対するものである。 取消理由1(甲1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、甲1発明並びに甲1、甲3及び甲5の記載に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし9についての特許は、申立理由2の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、「酸系分散剤」がどのようなものかわからないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第6 取消理由<決定の予告>についての当審の判断 当審は、以下に述べるように、上記取消理由1ないし3には、理由がないと判断する。 1 取消理由1(甲1に基づく進歩性) (1) 甲1の記載事項 甲1には以下の記載がある。下線については、当審において付与した。以下同じ。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、 (1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、 (2)有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種以上からなることを特徴とする導電性ペースト。 【請求項2】 導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、 (1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、 (2)有機溶剤が、 (A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種の主溶剤と、 (B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種以上の副溶剤を、 混合した混合溶剤からなることを特徴とする導電性ペースト。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、積層セラミック電子部品において、シートアタックを生じず、経時による粘度変化が少ない導電性ペーストに関するものである。 【背景技術】 【0002】 携帯電話やデジタル機器などの電子機器の軽薄短小化に伴い、チップ部品である積層セラミックコンデンサ(Multilayered Ceramic Capacitor、以下MLCCと称す)についても小型化、高容量化及び高性能化が望まれている。これらを実現するための最も効果的な手段は、内部電極層と誘電体層を薄くして多層化を図ることである。 【0003】 MLCCは、一般に次のように製造される。まず誘電体層を形成するために、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO_(3))およびポリビニルブチラール等の有機バインダーからなる誘電体グリーンシートを形成し、その表面上に、導電性粉末を樹脂バインダーおよび溶剤を含むビヒクルに分散させた導電性ペーストを所定のパターンで印刷し、溶剤を除去するための乾燥を施し、内部電極となる乾燥膜を形成する。次に、乾燥膜が形成された誘電体グリーンシートを多層に積み重ねた状態で加熱圧着して一体化した後に、切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて500℃以下で脱バインダー処理を行う。その後、内部電極が酸化しないように還元雰囲気中にて1300℃程度で加熱焼成を行い、次いで、焼成チップを塗布、焼成後、外部電極上にニッケルメッキなどを施してMLCCが完成する。 【0004】 しかし、上記焼成工程における誘電体セラミック粉末が、焼結し始める温度は1200℃程度であり、ニッケル等の導電性金属粉末との焼結・収縮が開始する温度とは、かなりのミスマッチが生じるために、デラミネーション(層間剥離)やクラック等の構造欠陥が発生しやすかった。特に小型・高容量化に伴って、積層数が多くなるほど、またはセラミック誘電体層の厚みが薄くなるほど、構造欠陥の発生が顕著となっていた。 【0005】 その対策として、通常内部電極用ニッケルペーストには、少なくとも誘電体層の焼結・収縮を開始する温度付近まで焼結・収縮を制御するために、誘電体層の組成に類似したチタン酸バリウム系あるいはジルコン酸ストロンチウム系などのペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末が添加されているが、これは誘電体層の主成分の構成元素と電極ペーストに含まれる誘電体粉末の構成元素とが大きく異なる場合に生じる構造欠陥による誘電損失の増大などの電気特性の低下を抑制するものであり、すなわちニッケル粉末の焼結挙動を制御し、内部電極層と誘電体層の焼結収縮挙動のミスマッチをコントロールする。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 このような状況に鑑み、本発明は積層セラミック電子部品に用いられる、シートアタックを生じず、かつ経時による粘度変化が少ない導電性ペーストを提供するものである。」 エ 「【課題を解決するための手段】 【0016】 上記課題を解決するため、本発明の導電性ペーストの一つは、導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、 (1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、 (2)有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種以上からなり、さらに疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体におけるエトキシル基含有率が56%?63%の範囲であることを特徴とするものである。 【0017】 本発明の導電性ペーストのもう一つは、導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、 (1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、 (2)有機溶剤が、 (A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種の主溶剤と、 (B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種以上の副溶剤を、 混合した混合溶剤からなり、さらに疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体におけるエトキシル基含有率が56%?63%の範囲であることを特徴とするものである。」 オ 「【0018】 さらには、本発明の導電性ペーストでは、導電性金属粉末がNi、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種の金属粉末であることが好ましい。」 カ 「【0019】 また、本発明の導電性ペーストでは、セラミック粉末がペロブスカイト型酸化物である強誘電体のチタン酸バリウム(BaTiO_(3))、チタン酸バリウムにあるいはチタン酸バリウムのBaまたはTiを他原子で置換したようなペロブスカイト型酸化物強誘電体、もしくは積層セラミックデバイスのグリーンシートを形成する酸化物からなるセラミック粉末である。」 キ 「【0025】 2.セラミック粉末 導電性ペーストのセラミック粉末としては、使用する積層セラミック部品により適宜選択できるが、強誘電体のペロブスカイト型酸化物を用いると良く、その中でも特にチタン酸バリウム(BaTiO_(3)、以下BTと称す場合がある)が望ましい。また、このチタン酸バリウムを主成分に酸化物(例えばMn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分として含むセラミック粉末、チタン酸バリウム(BaTiO_(3))のBa原子やTi原子を他原子、Sn、Pb、Zrなどで置換したようなペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末でも良い。さらには積層セラミックデバイスのグリーンシートを形成するセラミック粉末であるZnO、フェライト、PZT、BaO、Al_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、R(希土類元素)_(2)O_(3)、TiO_(2)、Nd_(2)O_(3)などの酸化物も選択できる。 そのセラミック粉末の粒径は、0.01?0.5μmの範囲が望ましい。」 ク 「【0029】 バインダー樹脂として使用するエチルヒドロキシエチルセルロース誘導体(a-EHEC)の構造式は、下記化1により示される。化1において、R=水素(H)、エチル基(-CH_(2)CH_(3))、ヒドロキシエチル基(-(CH_(2)CH_(2)O-)_(m)-R’)、m=1以上の整数、R’=水素(H)またはエチル基(-CH_(2)CH_(3))である。 【0030】 【化1】 【0031】 a-EHECは、化1の構造式においてOR結合しているRが、水素(H)、エチル基(-CH_(2)CH_(3))、ヒドロキシエチル基((-CH_(2)CH_(2)O-)_(m)-R’)のいずれかに置換したものである。さらに、ヒドロキシエチル基(-CH_(2)CH_(2)O-)_(m)-R’の‘R’は、水素(H)またはエチル基(-CH_(2)CH_(3))に置換するものである。 このエチル基(-CH_(2)CH_(3))の置換割合は、ヒドロキシエチル基((-CH_(2)CH_(2)O-)_(m)-R’)の水素(H)が、エチル基(-CH_(2)CH_(3))に置換されたり、(-CH_(2)CH_(2)O-)_(m)の長さmを調整することで変化する。 本発明で用いられるバインダー樹脂のa-EHECは、ヒドロキシエチル基よりエチル基の置換割合が多く存在するもので、エチル基が多いために疎水性となる。 ・・・ 【0035】 ところで、エトキシル基含有率は、ASTM D4794-94で規定されるようなガスクロマトグラフ法によって測定するが、この分析法ではヒドロキシエチル基に由来するもの(-CH_(2)CH_(2)O-C_(2)H_(5))とエトキシル基に由来するもの(-OC_(2)H_(5))が区別無く測定されることから、本発明では、単位構造あたりにおける、これら「ヒドロキシエチル基に由来するもの」および「エトキシル基に由来するもの」の両者の分子量の総量の、総分子量に対する割合を「エトキシル基含有率」として定義している。 【0036】 そこで、エトキシル基含有率の異なるa-EHECについて、そのエトキシル基含有率を調べてみると、表1に示すようにエトキシル基含有率が57.2mass%(以下、特に指示がない場合は「%」は「mass%」を意味する)、60.35%、および62.4%のa-EHECでは有機溶媒に良く溶解するが、エトキシル基含有率が34.9%のa-EHECでは有機溶媒に溶解しなかった。また、エトキシル基含有率が増えると、有機溶剤に対するa-EHECの溶解性も向上した。 なお、a-EHECのエトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%未満である場合、(-CH_(2)CH_(2)O-)_(m)の長さとエトキシル基のバランスが低下し、有機溶剤との相溶性が悪くなるため、高粘度化したり、あるいは溶解しなくなる。 したがって、溶剤系に溶解する疎水性a-EHECとしては、エトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%以上、63%以下のa-EHECを選択する必要がある。 【0037】 【表1】 」 ケ 「【0039】 3-2.ビヒクル用有機溶剤 ビヒクルを調製するためのバインダー樹脂を溶解させる有機溶剤には、ビヒクルの馴染みをよくするために、導電性ペーストを構成する有機溶剤と同じものを用いるのが好ましい。そこで本発明では、ジヒドロターピニルアセテートやイソボニルプロピネート等を用いている。 これらの有機溶剤は、セラミックグリーンシートに対してシートアタックを生じないので、例えばセラミックグリーンシートの厚みが5μm以下と薄い場合でも、セラミックグリーンシート中のブチラールが溶解して、セラミックグリーンシートを膨潤・溶解させることを抑制することができる。 ・・・ 【0043】 ところで、本発明において用いる有機溶剤は、導電性ペースト用の有機溶剤としては公知のものを使用するが、本発明の特徴とするところは、シートアタックの問題と経時粘度変化の問題を同時に解決する、有機溶剤と有機ビヒクルのバインダー樹脂との適切な組み合わせにあり、本発明ではバインダー樹脂に疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体を選択し、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種以上、あるいはこれらを主溶剤としシートアタックのない有機溶剤を副溶剤として選択し、このバインダー樹脂と有機溶剤との組み合わせによりシートアタックの問題を完全に解決し、しかも粘度の経時変化の少ない使い易い導電性ペーストを得ることにある。」 コ 「【0048】 (4)有機ビヒクルの作製 (4-1)本発明の有機ビヒクルの作製 本発明の有機ビヒクルは、バインダー樹脂成分としてエトキシル基含有率が57.2%、60.35%、62.40%と異なる3種類のa-EHECを18mass%、有機溶剤としてイソボニルプロピネートまたはジヒドロターピニルアセテートのいずれかを82mass%配合し、60℃に加熱して実施例に用いた有機ビヒクルを作製した。 ・・・ 【0051】 【表2】 ・・・ 【実施例1】 【0055】 導電性金属粉末として粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を47.0mass%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を4.7mass%、有機ビヒクルとして表2のビヒクルNo.3を13.06mass%、および0.3mass%の分散剤を、34.94mass%の有機溶剤ジヒドロターピニルアセテートに溶解して導電性ペーストを作製した。 ・・・ 【表3】 ・・・ 【0062】 【表4】 」 (2) 甲1に記載された発明 甲1の上記(1)アないしコの記載からみて、甲1には、実施例1として記載されている導電性ペーストである、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「導電性金属粉末として粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を47.0mass%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を4.7mass%、バインダー樹脂成分としてa-EHEC3を18mass%、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテートを82mass%配合し、60℃に加熱したビヒクルNo.3を13.06mass%、および0.3mass%の分散剤を、34.94mass%の有機溶剤ジヒドロターピニルアセテートに溶解した導電性ペースト。」 (3) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の有機溶剤は「ジヒドロターピニルアセテート」であるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種」である点で一致する。 甲1発明の「導電性ペースト」は、甲1の段落【0001】、【0002】、【0015】の記載から、積層セラミック電子部品用、すなわち、積層セラミックデバイス用といえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種からなる、 導電性ペースト。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 分散剤に関し、本件発明1は、「酸系分散剤を」「含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有」するものであって、酸系分散剤が「導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有する」ものであるとともに、「前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」と特定するのに対し、甲1発明は、これらの点を特定しない点。 <相違点2> バインダー樹脂に関し、本件発明1は、「エチルセルロースを含み」と特定するのに対し、甲1発明は、「a-EHEC3」である点。 イ 判断 以下、相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲1発明は、甲1の請求項1に記載のように、有機ビヒクルを構成する樹脂、すなわち、バインダー樹脂として「疎水性エチルヒドロキシセルロース誘導体」である「a-EHEC3」を必須とするものであって、このことは、甲1の表2の「本発明」におけるバインダー樹脂として「a-EHEC3」が利用されているのに対して、「比較」を構成するバインダー樹脂として「EC」(エチルセルロース)が利用されていることからも明らかである。 してみれば、甲1発明において必須の成分である「a-EHEC3」に代えて「エチルセルロース」を採用すること、あるいは、「a-EHEC3」に加えて「エチルセルロース」を追加することに阻害要因がある。 よって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者において容易に想到し得たものとはいえない。 そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 ウ 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、令和2年6月22日提出の意見書において、取り下げられたとみなされる令和2年4月27日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の請求項7に対する甲1に基づく進歩性に関し、以下のような主張をしている。 「進歩性に基づく上記取消理由1は、甲1発明と甲第1号証に記載された技術的事項のみに基づいて構築されたものではない。上記取消理由1は、甲1発明および甲第1号証に記載された技術的事項と甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて構築されている。 そして、積層セラミックデバイス用の導電性ペーストを製造するにあたり、エチルセルロースは、あえて周知技術例を示すまでもなく、極ありふれた有機バインダー樹脂である。それ故、甲第1号証において実施例と比較する比較例の導電性ペーストでもエチルセルロースがバインダー樹脂として採用されている。甲第3号証においても、導電性ペースト組成物に使用するのに適した有機バインダーとしてエチルセルロースが使われている。 (ケ)従って、甲1発明および甲1に記載された技術的事項と甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得た本件発明1及び本件発明2において、有機バインダーとして「疎水性エチルヒドロキシセルロース誘導体」の他に、バインダー樹脂として周知の物資である「エチルセルロース」を採用(試用)することを動機付けるのに困難な事情はなく、阻害事由もない。少なくとも、甲1発明および甲第1号証に記載された技術的事項と甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得た本件発明1及び本件発明2において、「疎水性エチルヒドロキシセルロース誘導体」を、バインダー樹脂として周知物質である「エチルセルロース」に代えた場合の効果を検証することは、当業者が通常の創作過程において当然に行い得ることであるといえる。」 上記主張について検討する。 確かに、導電性ペーストのバインダー樹脂として「エチルセルロース」は周知の化合物といえるが、甲1発明、あるいは、甲1の請求項1に係る発明は、「有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体」と特定されるものであり、この発明特定事項は、甲1の発明が解決しようとする課題を解決するための主要な構成といえるものである(段落【0016】)。 してみれば、そのような主要な構成を変更することに阻害要因があるといえ、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (4) 本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(3)での対比と同様であって、 「導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種からなり、 前記分散剤が、導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有する、 導電性ペースト。」 の点で一致し、上記相違点1及び2に加えて、以下の点で相違している。 <相違点3> 有機溶剤に関して、本件発明2は、「(A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種と、(B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種と、を混合した混合溶剤」と特定するのに対し、甲1発明は、単独の溶剤である点。 以下、相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点2から検討する。 相違点2は、上記(3)における相違点2と同じであるから、上記(3)において検討したとおりである。 よって、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (5) 本件発明3ないし6及び8について 本件発明3ないし6及び8は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用しさらなる限定を加えるものであり、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1又は本件発明2と同様に、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6) まとめ 以上のことから、取消理由1には理由がない。 2 取消理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項1及び2における「前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し」に関して、本件訂正によって、本件発明1又は2は「前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」と特定され、本件発明1又は2における分散剤として配合されている「アミン塩基系分散剤」と明確に区別できるものとなった。 そして、本件特許明細書の段落【0046】?【0065】においては、「アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」「酸系分散剤」と「アミン塩基系分散剤」の具体的な化合物を用いた実施例が記載されている。 してみれば、物の発明である本件発明1又は2について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 本件発明1又は2を直接又は間接的に引用する本件発明3ないし6及び8についても同様である。 よって、取消理由2には、理由がない。 3 取消理由3(明確性要件)について 本件訂正により、請求項1及び2に記載の「酸系分散剤」は、「アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる」と特定され、本件発明1又は2における分散剤として配合されている「アミン塩基系分散剤」と明確に区別できるものとなった。 よって、請求項1及び2に記載の「酸系分散剤」は明確であって、取消理由3には、理由がない。 第7 取消理由<決定の予告>に採用しなかった申立理由について 1 取消理由<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由は、本件訂正前の請求項7に対する申立理由1(甲1に基づく進歩性)であるが、当該請求項7は削除されたので、その対象がなくなった。 第8 むすび 以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由<決定の予告>及び特許異議申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし6及び8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項7に係る特許は、本件訂正の請求により削除された。これにより、請求項7に係る特許に対する特許異議申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種からなり、 前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、 前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、 前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる、 ことを特徴とする導電性ペースト。 【請求項2】 導電性金属粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂、分散剤及び有機溶剤を含む積層セラミックデバイス用の導電性ペーストであって、 前記有機溶剤が、(A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種と、(B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種と、を混合した混合溶剤からなり、 前記分散剤が、酸系分散剤を導電性ペースト全体量に対し0mass%を超え0.4mass%以下含有し、かつ、アミン塩基系分散剤を含有し、 前記バインダー樹脂が、エチルセルロースを含み、 前記酸系分散剤が、アミド結合を有するアミノ酸、炭素数11以上の高級脂肪酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上からなる、 ことを特徴とする導電性ペースト。 【請求項3】 前記導電性金属粉末が、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種の金属粉末からなることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項4】 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物であるチタン酸バリウム(BaTiO_(3))である請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項5】 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物強誘電体である請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項6】 前記積層セラミックデバイスは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び前記導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有し、前記誘電体グリーンシートに含まれる誘電体セラミック粉末と前記導電性ペーストに含まれる前記セラミック粉末とが同一組成の粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記積層セラミックデバイスは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び前記導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有し、前記誘電体グリーンシートの厚さが、3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-25 |
出願番号 | 特願2015-146533(P2015-146533) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01B)
P 1 651・ 536- YAA (H01B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田澤 俊樹 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
植前 充司 大島 祥吾 |
登録日 | 2019-05-31 |
登録番号 | 特許第6531541号(P6531541) |
権利者 | 住友金属鉱山株式会社 |
発明の名称 | 導電性ペースト |
代理人 | 宇佐美 亜矢 |
代理人 | 大田 英司 |
代理人 | 永田 元昭 |
代理人 | 西 和哉 |
代理人 | 北村 吉章 |
代理人 | 西 和哉 |
代理人 | 宇佐美 亜矢 |
代理人 | 西村 弘 |
代理人 | 永田 良昭 |