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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 産業上利用性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1374943
異議申立番号 異議2021-700205  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-25 
確定日 2021-06-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6748416号発明「乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6748416号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6748416号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(特願2015-214851号)は、平成27年10月30日に出願人、株式会社コーセーによりなされた特許出願であり、令和2年8月12日に特許権の設定登録がされ、令和2年9月2日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して、令和3年2月25日に特許異議申立人、山崎 浩一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議申立がされた。

第2 本件発明及び本件明細書の記載
1 本件発明
本件特許請求の範囲請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」といい、まとめて「本件各発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
トリメチルシロキシケイ酸及びポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる1種又2種であるシリコーン樹脂と、
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)から選ばれる1種又は2種であるN-アシルアミノ酸エステルと、を含み、
前記シリコーン樹脂と前記N-アシルアミノ酸エステルとの比率は、質量比で1:5?1:1である、乾燥抑制剤。
【請求項2】
トリメチルシロキシケイ酸及びポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる1種又2種であるシリコーン樹脂と、
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)から選ばれる1種又は2種であるN-アシルアミノ酸エステルと、を含み、
前記シリコーン樹脂と前記N-アシルアミノ酸エステルとの比率は、質量比で1:5?1:1である、乾燥抑制剤を対象物に適用する、乾燥抑制方法。

2 本件明細書の記載
(1)技術分野
【0001】
本発明は乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法に関する。

(2)背景技術
【0002】
従来から、ファンデーション、化粧下地等のメークアップ化粧料や、化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧料において、肌の保湿効果や乾燥抑制効果等が求められている。
このような効果を発揮する化粧料成分として、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド、スクワラン、N-アシルアミノ酸エステル(特許文献1)等が挙げられ、これらを用いた化粧料も販売されているが、更なる保湿効果の持続や、乾燥抑制効果の持続が求められている。
【0003】
一方、化粧もちや耐汗性等をよくする目的で、シリコーン樹脂を被膜形成剤として用いるファンデーションや化粧下地が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03-275697号公報
【特許文献2】特開昭61-161211号公報

(3)発明が解決しようとする課題
【0005】
本発明は、乾燥抑制効果を更に向上させた化粧料等に適用できる乾燥抑制剤を提供することを主な目的とする。

(4)課題を解決するための手段
【0006】
本発明者は、前記課題を達成すべく、鋭意検討を行った結果、シリコーン樹脂は、従来、被膜形成剤として主に用いられていたが、驚くべきことに、特定の種類のシリコーン樹脂であれば、N-アシルアミノ酸エステルと組み合わせることにより、顕著に乾燥抑制効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
以下の(A)及び(B)から選ばれる1種又は2種のシリコーン樹脂と、N-アシルアミノ酸エステルとを含む、乾燥抑制剤:
(A)R_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。);
(B)RSiO_(3/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。)
を提供する。
【0008】
また、本発明は、
以下の(A)及び(B)から選ばれる1種又2種であるシリコーン樹脂と、N-アシルアミノ酸エステルとを含む乾燥抑制剤を対象物に適用する、乾燥抑制方法:
(A)R_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。);
(B)RSiO_(3/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。)
を提供する。

(5)発明の効果
【0009】
本発明の乾燥抑制剤を化粧料等に用いると、その化粧料を適用した肌において優れた乾燥抑制効果を発揮する。また、肌の保湿に働きかけ、しわの防止効果も期待される。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。

(6)発明を実施するための形態
ア 乾燥抑制剤の成分
(ア)シリコーン樹脂
【0011】
本発明に用いられるシリコーン樹脂は、以下の(A)と(B)である。
(A)R_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。)
(B)RSiO_(3/2)単位とSiO_(2)単位とからなるシリコーン樹脂(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1?4の1価の炭化水素基を表す。)
【0012】
シリコーン樹脂(A)で化粧料によく用いられるものとして、トリメチルシロキシケイ酸が挙げられるが、これに限定されない。
シリコーン樹脂(B)で化粧料によく用いられるものとして、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサンが挙げられるが、これに限定されない。
これらは市販されており、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパンのSR100、SilForm Flexible(登録商標)resin、信越化学工業株式会社のKF-7312J(50%シクロペンタシロキサン溶液)、KF-9021(50%シクロペンタシロキサン溶液)等が入手可能である。
シリコーン樹脂の前記(A)、(B)は、それぞれ単独で乾燥抑制剤に含有させてもよいし、両方を含有させてもよい。両方を含有させる場合、その配合割合は特に限定されない。
乾燥抑制剤中のシリコーン樹脂の配合量は特に限定されないが、好ましくは5?50質量%、好ましくは10?40質量%、より好ましくは15?30質量%である。

(イ)N-アシルアミノ酸エステル
【0013】
本発明に用いるN-アシルアミノ酸エステルは、特に限定されないが、N-アシルアミノ酸部分はN-アシルアスパラギン酸、N-アシルグルタミン酸等が、アシル基としては炭素数8?22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基が好ましく用いられる。例えば、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル/ベヘニル)、ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)が挙げられる。この中でも、N-アシルアミノ酸部分がラウロイルグルタミン酸であり、エステル中にステロール骨格を有するラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル/ベヘニル)が好適に使用できる。これらは市販されており、例えば、味の素株式会社のエルデュウ(登録商標)CL-301、CL-202、PS-203、PS-304、PS-306、日本精化株式会社のPLANDOOL(登録商標)LG1、LG2等が入手可能である。
乾燥抑制剤中のN-アシルアミノ酸エステルの配合量は特に限定されないが、好ましくは10?70質量%、好ましくは20?70質量%、より好ましくは30?70質量%である。

イ 配合比率
【0014】
前記シリコーン樹脂(A)及び(B)から選ばれる1種又は2種とN-アシルアミノ酸エステルとの配合比率は、特に限定されないが、好ましくは、質量比で1:5?1:1.3、より好ましくは1:3?1:2である。この範囲内の比であれば、乾燥抑制効果を十分に発揮できる。

ウ 乾燥抑制剤の製造方法
【0015】
本発明の乾燥抑制剤は、前記シリコーン樹脂の(A)及び(B)から選ばれる1種又は2種と、N-アシルアミノ酸エステルとを混合するだけでよい。あるいは、前記シリコーン樹脂と溶媒を混合、溶解、必要があれば加熱溶解したものとN-アシルアミノ酸エステルとを混合すればよい。

エ 化粧料等への適用
【0016】
本発明の乾燥抑制剤は、日焼け止め、ファンデーション、化粧下地、アイカラー、口紅、マスカラ、乳液、クリーム、ヘアカラー、整髪料等の製品に添加することができる。これらの剤形も、液体、固体、油性、水性、乳化型等、特に限定されない。

オ 乾燥抑制方法
【0017】
本発明において、乾燥抑制する対象は特に限定されない。例えば、動物や植物等を含む生物でもよいし、無生物でもよい。
本発明の乾燥抑制剤の対象物への適用方法は特に限定されない。例えば、適量の塗布、散布や、対象物を乾燥抑制剤に含浸等すればよい。前記ファンデーションや整髪料等の製品に本発明の乾燥抑制剤を添加した場合、それらの製品の使用方法で用いればよい。

(7)実施例、比較例、処方例
ア 実施例
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0019】
<乾燥抑制剤の調製>
以下の表1に示すように、シリコーン樹脂の(A)トリメチルシロキシケイ酸又は(B)ポリメチルシルセスキオキサンと、N-アシルアミノ酸エステルとを、質量比で1:1の割合で混合し、乾燥抑制剤を調製した。
【0020】
【表1】

【0021】
(実施例1?3)
(A)トリメチルシロキシケイ酸と、表1の3種類の保湿油剤のN-アシルアミノ酸エステルとをそれぞれ混合して、シソの葉に塗布し、25℃、湿度50%の環境下に13時間静置した後の葉の変化を図1に示す。また、その結果を前記表1に示す。
【0022】
(実施例4)
(B)ポリメチルシルセスキオキサンとラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)との混合物とした他は、実施例1?3と同様にした。結果を図1と前記表1に示す。
【0023】
(結果)
図1の上段は、混合物を塗布した直後の様子を示し、下段は13時間経過後の様子を示す。
いずれの葉においても、混合物塗布後13時間経過しても乾燥による変化はなく、乾燥抑制効果が見られた。なお、図1の下段では、葉が多少黒ずんでいるが、これは乾燥に由来するよりも、シソの葉に元来含まれる成分に由来すると考えられる。

イ 比較例
【0024】
(比較例1?3)
比較例1では、シソの葉に何も塗布せず、25℃、湿度50%の環境下に13時間静置した後の葉の変化を観察した。
比較例2では、シソの葉に、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)のみを塗布し、シリコーン樹脂(A)又は(B)は塗布せず、同様に静置した後の葉の変化を観察した。
比較例3では、シソの葉に、(A)トリメチルシロキシケイ酸のみを塗布し、N-アシルアミノ酸エステルは塗布せず、同様に静置した後の葉の変化を観察した。
結果を図2及び前記表1に示す。
【0025】
(結果)
図2の上段は、左から、比較例1の未塗布、比較例2の塗布直後、比較例3の塗布直後を示し、下段は13時間経過後を示す。
比較例1の未塗布では、13時間経過すると、シソの葉の周辺が内側に丸まり始め、乾燥が激しく進んだことが明らかであった。
比較例2では、13時間静置後、シソの葉の周辺に縮みが見られた。また、葉の表面にラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)がまばらに溜まっていることが観察された。従って、十分な乾燥抑制効果は見られなかった。以上のことから、十分な乾燥抑制効果を得るには、N-アシルアミノ酸エステルだけでなく、特定のシリコーン樹脂も必要なことが示唆された。
比較例3では、13時間静置後、シソの葉に乾燥が観察された。従って、乾燥抑制効果を得るには、シリコーン樹脂の(A)トリメチルシロキシケイ酸だけでなく、保湿油剤(N-アシルアミノ酸エステル)と組み合わせる必要があることが示唆された。
【0026】
(比較例4、5)
比較例4では、高重合シリコーン(10万mm^(2)/s)とラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を用い、これらの混合物をシソの葉に塗布し、25℃、湿度50%の環境下に13時間静置した後の葉の変化を観察した。
比較例5では、アクリレートシリコーン樹脂((アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー)とラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を用い、これらの混合物をシソの葉に塗布し、同様に静置した後の葉の変化を観察した。
結果を図3と前記表1に示す。
【0027】
(結果)
比較例4では、N-アシルアミノ酸エステルが混合物に含まれていたにもかかわらず、塗布後13時間経過すると、シソの葉の周辺が丸まり縮み始め、乾燥が進んだことが明らかであった。このことから、シリコーン樹脂ならどのような種類であっても、保湿油剤のN-アシルアミノ酸エステルと組み合わせれば乾燥抑制効果が出る、ということではなく、特定のシリコーン樹脂と組み合わせることにより、乾燥抑制効果が発揮されることが明らかとなった。
【0028】
比較例5では、比較例4と同様、N-アシルアミノ酸エステルが混合物に含まれていたにもかかわらず、塗布後13時間経過すると、シソの葉の周辺が丸まり始め、縮みが見られた。よって、特定のシリコーン樹脂と保湿油剤のN-アシルアミノ酸エステルとを組み合わせることにより、乾燥抑制効果が発揮されることが明らかとなった。
【0029】
なお、比較例1(何も塗布せず)、比較例2(ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)のみ塗布)、比較例3(トリメチルシロキシケイ酸のみ塗布)のシソの葉を、4日間静置したところ、比較例1は乾燥によって縮み、比較例2は比較例1と同程度に縮み、比較例3も激しく乾燥していることが観察された。一方、本発明の乾燥抑制剤を塗布したシソの葉を4日間静置したところ、葉の周辺が丸まることもなく、きれいな状態が保たれていた。

ウ 処方例
【0030】
[処方例1]ファンデーション(油中水乳化型)
成分 質量%
1.酸化チタン 10.0
2.酸化亜鉛 3.0
3.赤酸化鉄 0.4
4.黄酸化鉄 1.0
5.黒酸化鉄 0.1
6.タルク 1.0
7.エチルヘキサン酸セチル 5.0
8.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
9.トリメチルシロキシケイ酸 3.0
10.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
9.0
11.シクロメチコン 20.0
12.メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ
(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体 ※1 3.0
13.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10.0
14.ポリメチルシルセスキオキサン 1.0
15.メタクリル酸メチルクロスポリマー ※2 1.0
16.精製水 残量
17.ブチレングリコール 5.0
18.エタノール 3.0
19.フェノキシエタノール 0.2
(注)
※1:ABIL EM-90(EVONIC GOLDSCHMIDT GMBH製)
※2:カンツパールGMI-0804(アイカ工業社製)
【0031】
(製造方法)
A:成分1?8を添加し3本ローラーにて均一に分散する。
B:成分9?11を50℃で混合させた後、Aと12?15を添加し、均一に混合する。C:成分16?19を均一に混合させた後、Bへ添加し乳化する。
D:Cに成分22を添加し均一に混合し、油中水乳化型ファンデーションを得た。
【0032】
(結果)
処方例1のファンデーションは、乾燥抑制効果に優れていた。
【0033】
[処方例2]整髪料(油性固型)
成分 質量%
1.流動パラフィン 20.0
2.ワセリン 20.0
3.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト ※3 5.0
4.ブチレングリコール 5.0
5.パラオキシ安息香酸エステル 0.1
6.ポリエチレンワックス 3.0
7.マイクロクリスタリンワックス 3.0
8.トリメチルシロキシケイ酸 5.0
9.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル/ベヘニル) 10.0
10.シクロメチコン 残量
11.タルク 20.0
12.ナイロン 1.0
13.ポリメタクリル酸メチル ※4 1.0
(注)
※3:BENTONE 38V BC(エレメンティス社製)
※4:ケミスノーMR-5C(綜研化学社製)
【0034】
(製造方法)
A:成分1?3を均一に混合する。
B:4?5を加温溶解させてから、Aを添加し膨潤させる。
C:成分6?10を90℃で加温混合させた後、Bを添加し混合する。
D:Cに11?13を添加し均一に混合し、油性固型の整髪料を得た。
【0035】
(結果)
処方例2の整髪料は、乾燥抑制効果に優れていた。

(8)産業上の利用可能性
【0036】
本発明によれば、ヒト等を含めた哺乳動物の皮膚の乾燥を抑制することができ、更には毛髪や植物等の表面の乾燥にも応用できる。

(9)図面の簡単な説明、図面
【0010】
【図1】本発明の実施例1?4を示す図面代用写真である。
【図2】本発明の比較例1?3を示す図面代用写真である。
【図3】本発明の比較例4?5を示す図面代用写真である。

【図1】

【図2】

【図3】

(10)上記(1)?(9)の記載からみて、本件各発明の特徴は以下のとおりである。
ア 本発明は乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法に関する。(【0001】)
イ 従来から、ファンデーション、化粧下地等のメークアップ化粧料や、化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧料において、肌の保湿効果や乾燥抑制効果等が求められている。(【0002】)
ウ 本発明は、乾燥抑制効果を更に向上させた化粧料等に適用できる乾燥抑制剤を提供することを主な目的とする。(【0005】)
エ 本発明の乾燥抑制剤を化粧料等に用いると、その化粧料を適用した肌において優れた乾燥抑制効果を発揮する。また、肌の保湿に働きかけ、しわの防止効果も期待される。(【0009】)

第3 申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概略、以下の申立理由を主張している。
[申立理由1](産業上の利用可能性)本件発明2は、特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないから、本件発明2に係る特許は、特許法29条1項柱書の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[申立理由2](サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
[申立理由3](実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:BB Moisture Cream, (ID#) : 2053087, Mintel GNPD, 2013年1月
甲第2号証:Eye Cream, (ID#) :2786051, Mintel GNPD, 2014年11月
甲第3号証:Radical New Age Emulsion, (ID#): 3500629, Mintel GNPD, 2015年9月
甲第4号証:Eye Cream, (ID#): 2959059, Mintel GNPD, 2015年1月
甲第5号証:Genius Cream BB, (ID#): 1240668, Mint el GNPD, 2009年12月
甲第6号証:Eye Zone All Rounder, (ID#): 1477126, Mintel GNPD, 2010年12月

第4 当審の判断
1 申立理由1について
(1)申立理由1は以下のとおりである。(申立書5、6頁3(4)イ)
ア 本件明細書には、以下の記載がある。
「本発明の乾燥抑制剤を化粧料等に用いると、その化粧料を適用した肌において優れた乾燥抑制効果を発揮する。また、肌の保湿に働きかけ、しわの防止効果も期待される。」(段落0009)
「<乾燥抑制方法>
本発明において、乾燥抑制する対象は特に限定されない。例えば、動物や植物等を含む生物でもよいし、無生物でもよい。
本発明の乾燥抑制剤の対象物への適用方法は特に限定されない。例えば、適量の塗布、散布や、対象物を乾燥抑制剤に含浸等すればよい。前記ファンデーションや整髪料等の製品に本発明の乾燥抑制剤を添加した場合、それらの製品の使用方法で用いればよい。」(段落0017)

イ 本件発明2における対象物は、段落0017の記載より特に限定されておらず、任意の生物が含まれるため、本件発明2において乾燥抑制剤を適用させる対象物にはヒトが含まれる。そして、本件発明2の方法は、適用した肌において乾燥を抑制したり、肌を保湿したり、しわを防止したりするもの、即ち肌を治療するものである。そうすると、本件発明2はヒトを治療する方法を包含する。よって、本件発明2は、医療行為を包含する発明であることから、産業上利用可能な発明ではない。

ウ したがって、本件発明2は特許法29条1項柱書の取消理由を有する。

(2)申立理由1について検討する。
ア 本件明細書には、本件発明2の乾燥抑制剤を適用する「対象物」、「乾燥抑制方法」について、以下のとおり記載されている。(上記第2の2)
(ア)本件各発明は乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法に関し、従来から、ファンデーション、化粧下地等のメークアップ化粧料や、化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧料において、肌の保湿効果や乾燥抑制効果等が求められているが、更なる保湿効果の持続や、乾燥抑制効果の持続が求められている。
このような背景のものと、本件各発明が解決しようとする課題は、「乾燥抑制効果を更に向上させた化粧料等に適用できる乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法を提供すること」である。(段落【0001】、【0002】、【0005】)
(イ)本件各発明の効果は、本件各発明の乾燥抑制剤を化粧料等に用いると、その化粧料を適用した肌において優れた乾燥抑制効果を発揮する。また、肌の保湿に働きかけ、しわの防止効果も期待されることである。(段落【0009】)
(ウ)本件各発明の乾燥抑制剤は、日焼け止め、ファンデーション、化粧下地、アイカラー、口紅、マスカラ、乳液、クリーム、ヘアカラー、整髪料等の製品に添加し、化粧料等へ適用することができる。(段落【0016】)
(エ)本件各発明において、乾燥抑制する対象は特に限定されず、例えば、動物や植物等を含む生物でもよいし、無生物でもよい。乾燥抑制剤の対象物への適用方法は特に限定されず、例えば、適量の塗布、散布や、対象物を乾燥抑制剤に含浸等すればよく、前記ファンデーションや整髪料等の製品に本件各発明の乾燥抑制剤を添加した場合、それらの製品の使用方法で用いればよい。(段落【0017】)
(オ)実施例1?3において、(A)トリメチルシロキシケイ酸と、表1の3種類の保湿油剤のN-アシルアミノ酸エステルとをそれぞれ混合して、シソの葉に塗布し、乾燥抑制効果が見られたことが図1と表1に示されている。(段落【0020】、【0021】、【0023】、【図1】)
実施例4において、(B)ポリメチルシルセスキオキサンとラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)との混合物とした他は、実施例1?3と同様にし、乾燥抑制効果が見られたことが図1と表1に示されている。(段落【0020】、【0022】、【0023】、【図1】)
(カ)本件各発明の処方例として、[処方例1]ファンデーション(油中水乳化型)、[処方例2]整髪料(油性固型)が示され、それぞれ、乾燥抑制効果に優れたことが記載されている。(段落【0030】?【0035】)
(キ)本件各発明の産業上の利用可能性として、ヒト等を含めた哺乳動物の皮膚の乾燥を抑制することができ、更には毛髪や植物等の表面の乾燥にも応用できる。(段落【0036】)

イ そうすると、上記アから、本件発明2の乾燥抑制剤を適用する「対象物」は、特に限定されず、動物や植物等を含む生物でもよいし、無生物でもよく、動物として、ヒト等を含めた哺乳動物が含まれているが、その「乾燥抑制方法」は、ヒトに対しては、専ら、化粧料として使用する方法であって、毛髪や肌において優れた乾燥抑制効果を発揮し、肌の保湿に働きかけ、しわの防止効果も期待される効果を奏するもので、毛髪や肌の美容効果を目的とするものであって、毛髪や肌を治療することを意図していないことは明らかであるといえる。また、乾燥抑制剤を、ファンデーション、整髪料等の製品に添加し、化粧料等へ適用することからみても、本件発明2の乾燥抑制方法が、毛髪や肌を治療することを意図していないことは明らかである。

ウ 申立人の主張について検討する。
申立人は、本件発明2における対象物は、ヒトが含まれ、本件発明2の方法は、適用した肌において乾燥を抑制したり、肌を保湿したり、しわを防止したりするもの、即ち肌を治療するものであるから、本件発明2はヒトを治療する方法を包含する旨主張するが、上記イのとおり、本件発明2の乾燥抑制方法は、ヒトに対しては、専ら、化粧料として使用する方法であって、毛髪や肌を治療することを意図していないことは明らかであるといえるから、申立人の主張を採用することができない。

(3)したがって、本件発明2に係る特許は、特許法29条1項柱書の規定に違反しているとすることはできない。

2 申立理由2について
(1)申立理由2は以下のとおりである。(申立書6?13頁3(4)ウ、ウ-1、ウ-2(キ)?(サ))
ア 本件明細書の記載によれば、乾燥抑制剤に含有される所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比のうち、シソの葉における具体的な乾燥抑制効果が確認されているのは、前記質量比が1:1の場合のみである。

イ 本件特許出願の審査経過を確認すると、拒絶理由通知において引用文献7乃至12(甲第1号証乃至甲第6号証)が引用されており、これらの文献から、本件特許出願時には本件各発明に係る特定のシリコーン樹脂と、N-アシルアミノ酸エステルと、を含む乾燥抑制剤は、既に公知の技術であったことが理解できる。
一方で、本件特許出願時において、乾燥抑制剤に含有される所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が、いかなる範囲において乾燥抑制剤を適用する対象において顕著に乾燥を抑制するかは知られていない。このことは、本件各発明が、乾燥抑制剤に含有される所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が特定の前記質量比であるからこそ予測外の乾燥抑制効果を示すことに基づいて、進歩性が認められて特許された審査経過にも合致する。

ウ そうすると、実施例で示された所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が1:1の場合の乾燥抑制効果を本件発明1及び2で特定する範囲まで、一般化ないし拡張することはできない。すなわち、所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が1:5?1:1の全範囲にわたって、乾燥抑制効果が得られるだろうと合理的に推測することはできないため、本件発明1及び2の全範囲に亘って本件発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者は理解できない。よって本件発明1及び2は、本件発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が理解できない発明を含んでいると言わざるをえない。

エ また、本件明細書の記載によれば、所定のシリコーン樹脂を50質量%及び所定のN-アシルアミノ酸エステルを50質量%含有する乾燥抑制剤については、シソの葉における具体的な乾燥抑制効果が確認されている。一方、化粧料に、所定のシリコーン樹脂を4質量%及び所定のN-アシルアミノ酸エステルを9質量%含有させた場合、並びに所定のシリコーン樹脂を5質量%及び所定のN-アシルアミノ酸エステルを10質量%含有させた場合は、シソの葉を用いた乾燥抑制効果は具体的に確認されていない。
そうすると、当業者は本件各発明に係る乾燥抑制剤が化粧料に添加された態様においていかなる添加量においても乾燥抑制効果が得られるだろうと合理的に推測することはできないため、本件発明1及び2において、本件各発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者は理解できない。

オ そのため、本件発明1及び2は、本件明細書によりサポートされていない。

(2)申立理由2について検討する。
ア 本件各発明の課題について
本件各発明が解決しようとする課題は、「乾燥抑制効果を更に向上させた化粧料等に適用できる乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法を提供すること」である。(上記1(2)ア(ア))

イ 乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「比率」について
(ア)本件明細書には、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「比率」について、以下のとおり記載されている。(上記第2の2)
a シリコーン樹脂(A)及び(B)から選ばれる1種又は2種とN-アシルアミノ酸エステルとの配合比率は、特に限定されないが、好ましくは、質量比で1:5?1:1.3、より好ましくは1:3?1:2である。この範囲内の比であれば、乾燥抑制効果を十分に発揮できる。(段落【0014】)
b 実施例1?4において、表1に示すように、シリコーン樹脂の(A)トリメチルシロキシケイ酸又は(B)ポリメチルシルセスキオキサンと、N-アシルアミノ酸エステルとを、質量比で1:1の割合で混合し、乾燥抑制剤を調製した。
実施例1?4のいずれのシソの葉においても、混合物塗布後13時間経過しても乾燥による変化はなく、乾燥抑制効果が見られた。(段落【0020】?【0023】、【図1】)
c 比較例1では、シソの葉に何も塗布せず、比較例2では、シソの葉に、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(N-アシルアミノ酸エステル)のみを塗布し、シリコーン樹脂(A)又は(B)は塗布せず、比較例3では、シソの葉に、(A)トリメチルシロキシケイ酸のみを塗布し、N-アシルアミノ酸エステルは塗布せず、同様に静置した後の葉の変化を観察した。
比較例1では、13時間経過すると、シソの葉の周辺が内側に丸まり始め、乾燥が激しく進み、比較例2では、13時間静置後、シソの葉の周辺に縮みが見られ、比較例3では、13時間静置後、シソの葉に乾燥が観察されたことから、乾燥抑制効果を得るには、シリコーン樹脂と保湿油剤(N-アシルアミノ酸エステル)と組み合わせる必要があることが示唆された。(段落【0020】、【0024】、【0025】、【図2】)
d 成分として、
9.トリメチルシロキシケイ酸3.0質量%、
10.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)9.0質量%、
14.ポリメチルシルセスキオキサン1.0質量%を含む、
処方例1のファンデーション(油中水乳化型)は、乾燥抑制効果に優れていた。(段落【0030】?【0032】)
成分として、
8.トリメチルシロキシケイ酸5.0質量%、
9.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル/ベヘニル)10.0質量%を含む、
処方例2の整髪料(油性固型)は、乾燥抑制効果に優れていた。(段落【0033】?【0035】)
e そうすると、本件明細書には、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「比率」について、好ましい範囲が質量比で1:5?1:1.3であること、実施例1?4において質量比で1:1の割合で混合したものは乾燥抑制効果が見られたこと、処方例1において質量比で(3.0+1.0):9.0=1:2.25含むもの、及び、処方例2において質量比で5.0:10.0=1:2含むものは乾燥抑制効果に優れていたこと、比較例1において質量比で0:0含むもの、比較例2において質量比で0:1含むもの、及び、比較例3において質量比で1:0含むものは乾燥抑制効果がないことを理解することができる。
したがって、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「比率」について、質量比で1:1、1:2.25や1:2含むものが、乾燥抑制効果を有することから、その「比率」を包含する1:5?1:1の範囲内においても、乾燥抑制効果を有すること、すなわち、本件各発明の課題を解決できると認識することができるといえる。

ウ 乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「配合量」について
(ア)本件明細書には、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「配合量」について、以下のとおり記載されている。(上記第2の2)
a 乾燥抑制剤中のシリコーン樹脂の配合量は特に限定されないが、好ましくは5?50質量%、好ましくは10?40質量%、より好ましくは15?30質量%である。(段落【0012】)
乾燥抑制剤中のN-アシルアミノ酸エステルの配合量は特に限定されないが、好ましくは10?70質量%、好ましくは20?70質量%、より好ましくは30?70質量%である。(段落【0013】)
b 実施例1?4(上記2(2)イ(ア)b)の記載からみて、実施例1?4において、乾燥抑制剤には、シリコーン樹脂の(A)トリメチルシロキシケイ酸又は(B)ポリメチルシルセスキオキサンと、N-アシルアミノ酸エステルのみが含まれ、質量比で1:1の割合で混合していることから、実施例1?4の乾燥抑制剤は、シリコーン樹脂50質量%、N-アシルアミノ酸エステル50質量%が配合されており、乾燥抑制効果が見られたといえる。
c 比較例1?3(上記2(2)イ(ア)c)の記載からみて、比較例1?3の乾燥抑制剤は、それぞれ、シリコーン樹脂0質量%、N-アシルアミノ酸エステル0質量%、シリコーン樹脂0質量%、N-アシルアミノ酸エステル100質量%、シリコーン樹脂100質量%、N-アシルアミノ酸エステル0質量%が配合されており、乾燥抑制効果が見られないといえる。
d 処方例1、2(上記2(2)イ(ア)d)の記載からみて、処方例1のファンデーション(油中水乳化型)、処方例2の整髪料(油性固型)は、それぞれ、シリコーン樹脂4.0(=3.0+1.0)質量%、N-アシルアミノ酸エステル9.0質量%、シリコーン樹脂5.0質量%、N-アシルアミノ酸エステル10.0質量%が配合されており、乾燥抑制効果に優れていたといえる。
e 上記a?dの記載をまとめると、本件明細書には、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「配合量」について、シリコーン樹脂の配合量は特に限定されないが、好ましい範囲は5?50質量%、N-アシルアミノ酸エステルの配合量は特に限定されないが、好ましい範囲は10?70質量%であることが記載されている。
また、実施例1?4の乾燥抑制剤は、シリコーン樹脂50質量%及びN-アシルアミノ酸エステル50質量%が配合され、乾燥抑制効果が見られたこと、比較例1?3の乾燥抑制剤は、それぞれ、シリコーン樹脂0質量%及びN-アシルアミノ酸エステル0質量%、シリコーン樹脂0質量%及びN-アシルアミノ酸エステル100質量%、シリコーン樹脂100質量%及びN-アシルアミノ酸エステル0質量%が配合されているが、乾燥抑制効果が見られないこと、処方例1のファンデーション(油中水乳化型)、処方例2の整髪料(油性固型)は、それぞれ、シリコーン樹脂4.0質量%及びN-アシルアミノ酸エステル9.0質量%、シリコーン樹脂5.0質量%及びN-アシルアミノ酸エステル10.0質量%が配合され、乾燥抑制効果に優れていたことが記載されている。
したがって、当業者であれば、乾燥抑制剤において、シリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握される「配合量」で含まれていれば、乾燥抑制効果を有すること、すなわち、本件各発明の課題を解決できると認識することができるといえる。

エ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、上記イのとおり、本件各発明は、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが本件各発明で規定されている特定範囲の「比率」において、本件各発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえるし、また、上記ウのとおり、本件各発明は、シリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握される「配合量」で含まれており、本件各発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえるから、本件各発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。

オ 申立人の主張について検討する。
申立人は、所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が本件発明1及び2の1:5?1:1の全範囲にわたって、乾燥抑制効果が得られるだろうと合理的に推測することはできないため、また、本件各発明に係る乾燥抑制剤が化粧料に添加された態様においていかなる添加量においても乾燥抑制効果が得られるだろうと合理的に推測することはできないため、本件発明1及び2において、本件各発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者は理解できない旨主張する。また、本件発明1及び2において、本件各発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者は理解できないことは、本件各発明が、乾燥抑制剤に含有される所定のシリコーン樹脂と所定のN-アシルアミノ酸エステルとの質量比が特定の前記質量比であるからこそ予測外の乾燥抑制効果を示すことに基づいて、進歩性が認められて特許された審査経過にも合致する旨主張する。
この点について検討すると、上記イ?エのとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件各発明は、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが本件各発明で規定されている特定範囲の「比率」において、本件各発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえるし、また、本件各発明は、シリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握される「配合量」で含まれており、本件各発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえるから、申立人の主張を採用することができない。また、本件特許において、進歩性が認められて特許された審査経過によっても、本件各発明の課題を解決できると認識できることに変わりはないから、前記結論は左右されない。

(3)したがって、本件各発明は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

3 申立理由3について
(1)申立理由3は以下のとおりである。(申立書6?13頁3(4)ウ、ウ-1、ウ-2(キ)?(シ))
本件明細書の記載および本件特許出願時の技術常識を考慮しても、本件各発明に係る乾燥抑制剤を化粧料に添加する際にいかなる添加量にすれば乾燥を抑制できるのか、すなわち本件発明の課題を解決できるのか、を当業者は理解できない。
そのため、本件発明1及び2を実施できるように発明の詳細な説明が記載されていない。

(2)申立理由3について検討すると、そもそも、本件各発明は、乾燥抑制剤を化粧料に添加することが特定されていないから、申立人の「乾燥抑制剤を化粧料に添加する際にいかなる添加量にすれば乾燥を抑制できるのか、すなわち本件発明の課題を解決できるのか」という主張は、本件各発明の発明を特定する事項に基づかないものであるし、上記2のとおり、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、乾燥抑制剤におけるシリコーン樹脂とN-アシルアミノ酸エステルとの「比率」について、本件各発明で規定される1:5?1:1の範囲内において、乾燥抑制効果を有すること、シリコーン樹脂及びN-アシルアミノ酸エステルが、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握される「配合量」で含まれていれば、乾燥抑制効果を有することを理解することができるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件各発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(3)したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人の主張する申立理由によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-05-17 
出願番号 特願2015-214851(P2015-214851)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 14- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 駒木 亮一  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 原田 隆興
冨永 みどり
登録日 2020-08-12 
登録番号 特許第6748416号(P6748416)
権利者 株式会社コーセー
発明の名称 乾燥抑制剤及び乾燥抑制方法  
代理人 井上 美和子  
代理人 渡邊 薫  
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