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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1375302
審判番号 不服2020-6493  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-13 
確定日 2021-06-15 
事件の表示 特願2017-139049「長寿命および低消費電力のRGBW OLEDディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-191788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017-139049号(以下、「本件出願」という。)は、平成24年7月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年(平成23年)7月18日(以下、「本件優先日」という。) 米国)に出願された特願2012-158425号の一部を平成29年7月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成29年 7月26日付け:手続補正書
平成29年 8月16日付け:手続補正書
平成30年 8月31日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月 5日付け:意見書
平成30年12月 5日付け:手続補正書
平成31年 4月23日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 8月 6日付け:意見書
令和 元年 8月 6日付け:手続補正書
令和 元年12月27日付け:補正の却下の決定
(令和元年8月6日付け手続補正書でした補正が却下された。)
令和 元年12月27日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 5月13日付け:審判請求書
令和 2年 5月13日付け:手続補正書
令和 2年11月27日付け:上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年5月13日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の(平成30年12月5日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 少なくとも1つの有機発光デバイスを含む第1の光源であって、6504K未満の相関色温度(CCT)を有した近白色光を放出する第1の光源と、
複数の画素とを備える第1のデバイスであって、それぞれの画素が、
前記第1の光源と光学的に連絡する第1のカラーフィルタを含む第1のサブ画素であって、前記第1のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第1のカラーフィルタを通った光が400から500nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第1のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第2のカラーフィルタを含む第2のサブ画素であって、前記第2のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第2のカラーフィルタを通った光が500から580nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第2のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第3のカラーフィルタを含む第3のサブ画素であって、前記第3のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第3のカラーフィルタを通った光が580から700nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第3のサブ画素と、
相関色温度(CCT)が6504K未満である近白色光を放出する第4のサブ画素とを含み、
前記第1の光源が、放出層と、電子注入層及び電子輸送層と、ホール注入層及びホール輸送層とを含み、
前記放出層が、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置される、第1のデバイス。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 少なくとも1つの有機発光デバイスを含む第1の光源であって、6504K未満の相関色温度(CCT)を有した近白色光を放出する第1の光源と、
複数の画素とを備える第1のデバイスであって、それぞれの画素が、
前記第1の光源と光学的に連絡する第1のカラーフィルタを含む第1のサブ画素であって、前記第1のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第1のカラーフィルタを通った光が400から500nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第1のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第2のカラーフィルタを含む第2のサブ画素であって、前記第2のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第2のカラーフィルタを通った光が500から580nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第2のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第3のカラーフィルタを含む第3のサブ画素であって、前記第3のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され、前記第3のカラーフィルタを通った光が580から700nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する、第3のサブ画素と、
相関色温度(CCT)が6504K未満である近白色光を放出する第4のサブ画素とを含み、
前記第1の光源が、放出層と、電子注入層及び電子輸送層と、ホール注入層及びホール輸送層とを含み、
前記放出層が、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置され、
前記放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である、第1のデバイス。」

(3) 本件補正について
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「放出層」について、「蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である」ものに限定する補正である。
また、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0016】(第1?2行)。)。
そうしてみると、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての当合議体の判断
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された特開2005-317507号公報(以下、「引用文献1」という。)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術の興隆に伴い、薄型でフルカラー表示が可能な薄型表示装置への要望が高まっている。このような薄型表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)を用いた表示装置の研究開発が活発に行われている。有機EL素子を用いた表示装置は、中または高効率を有し、薄型かつ軽量であり、視野角依存性がない等の特徴を有する。
【0003】
有機EL素子は、電子注入電極およびホール注入電極からそれぞれ電子およびホールを発光部内へ注入し、これらの電子およびホールを発光中心で再結合させて有機分子を励起状態にし、この有機分子が励起状態から基底状態に戻るときに蛍光を発生するものである。
【0004】
このような有機EL素子は、5V?20V程度の低い電圧で駆動できるという利点を有する。例えば、この有機EL素子を用いた表示装置のフルカラー化技術としては、白色の有機EL素子を光源(バックライト)として3原色(赤色、緑色および青色(RGB))のカラーフィルタを介して発色するフィルタ方式、青色の有機EL素子を光源として色変換層を介して発色する色変換層(CMM)を用いる方式および3原色の有機EL素子を基板上に並列に配置する三色独立発光方式が提案されている(非特許文献1参照)。上記のフィルタ方式では、1つの色の有機EL素子により実現することができるので、表示装置の製造プロセスにおける複雑化を回避することができるという利点を備えている。
・・・略・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記フィルタ方式において有機EL素子から発生された光は、3原色のカラーフィルタを透過した際に減衰してしまう。また、3原色のカラーフィルタを用いて白色を表示する場合には、各3原色の光の強さを調整する必要がある。この場合、一部の色の光の強度を低くすることにより色の調整が行われるため、得られる白色光の強度が低下する。そのため、有機EL素子に与える電圧を高くしなければならない。その結果、表示装置における消費電力が増加する。
【0006】
本発明の目的は、白色光を低い消費電力で得ることができる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス装置は、第1の色温度領域を有する白色の光を発生する有機エレクトロルミネッセンス素子と、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち赤色の波長領域の光を透過する第1のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち緑色の波長領域の光を透過する第2のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち青色の波長領域の光を透過する第3のフィルタと、第1の色温度領域と異なる第2の色温度領域の光を透過する第4のフィルタとを備えたものである。
【0008】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス装置においては、有機エレクトロルミネッセンス素子が第1の色温度領域を有する白色の光を発生する。発生された光のうち赤色の波長領域の光が第1のフィルタを透過し、緑色の波長領域の光が第2のフィルタを透過し、青色の波長領域の光が第3のフィルタを透過し、第1の色温度領域と異なる第2の色温度領域の光が第4のフィルタを透過する。それにより、赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光および第2の色温度領域の光が得られる。
【0009】
また、赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光を混合および調整することにより第2の色温度領域の光を得る場合と比較して、第2の色温度領域の光の減衰が小さい。その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子に高い電圧を印加する必要がなく、有機エレクトロルミネッセンス装置において白色光を低い消費電力で得ることができる。
【0010】
第1のフィルタは600nm以上の波長において透過率70%以上を有することが好ましく、第2のフィルタは495nm以上555nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましく、第3のフィルタは495nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましい。
【0011】
また、第1のフィルタは575nm以下の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、第2のフィルタは470nm以下の波長において透過率10%以下を有し、かつ605nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、第3のフィルタは550nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましい。この場合、第1のフィルタを純度の高い赤色光が透過し、第2のフィルタを純度の高い緑色光が透過し、第3のフィルタを純度の高い青色光が透過することができる。
【0012】
第4のフィルタは、435nm以上520nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0013】
第4のフィルタは、520nmより長く560nm以下の波長において透過率45%以上75%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0014】
第4のフィルタは、560nmより長く610nm以下の波長において透過率25%以上60%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0015】
第4のフィルタは、610nmより長く640nm以下の波長において透過率5%以上35%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0016】
第4のフィルタは、640nmより長い波長において透過率10%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0017】
第4のフィルタは、410nm以上435nmより短い波長において透過率45%以上75%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0018】
第4のフィルタは、400nm以上410nmより短い波長において透過率30%以上60%以下を有することが好ましい。この場合、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができる。
【0019】
第1の色温度領域は、色温度が3000K以上4500K以下であることが好ましい。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子は、白色光を発生することができる。それにより、有機エレクトロルミネッセンス素子から発生される白色光を有機エレクトロルミネッセンス装置の光源(バックライト)として用いることができる。
【0020】
第2の色温度領域は、色温度が4500K以上8500K以下であることが好ましい。この場合、第4のフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス素子から発生される白色光を純度の高い白色光に変換することができる。
【0021】
第2の色温度領域は、色温度が5500K以上7500K以下であることがより好ましい。この場合、第4のフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス素子から発生される白色光をより純度の高い白色光に変換することができる。
【0022】
第2の色温度領域は、色温度が6000K以上7000K以下であることがさらに好ましい。この場合、第4のフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス素子から発生される白色光をさらに純度の高い白色光に変換することができる。
【0023】
第3および第4のフィルタは、400nmより短い波長において透過率30%以下であることが好ましい。それにより、紫外線による有機層の機能劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1のフィルタ、第2のフィルタ、第3のフィルタおよび第4のフィルタを用いることにより白色光を低い消費電力で得ることができる。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称する)装置について説明する。
【0026】
図1は本実施の形態に係る有機EL装置の断面を示す概略図であり、図2は図1の有機EL装置の構造を詳細に示した断面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る有機EL装置は、主に有機EL素子50、カラーフィルタ層CFおよび基板1から構成される。カラーフィルタ層CFは、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWの4種からなる。
【0028】
図1に示すように、カラーフィルタ層CFは、有機EL素子50および基板1の間に形成される。また、カラーフィルタ層CFにおいては、隣接する4種の赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWにより有機EL装置の1画素が形成されるように配置される。カラーフィルタ層CFの詳細については後述する。
【0029】
次に、図2を用いて図1の有機EL装置の構造の詳細を説明する。図2に示すように、・・・略・・・透明の基板1上に、例えば酸化シリコン(SiO_(2))からなる層と窒化シリコン(SiNx)からなる層との積層膜11が形成される。
【0030】
積層膜11上の一部にTFT(薄膜トランジスタ)20が形成される。TFT20は、多結晶シリコン12、ソース電極13s、ドレイン電極13d、ゲート酸化膜14およびゲート電極15からなる。
【0031】
多結晶シリコン12上にドレイン電極13dおよびソース電極13sが形成される。TFT20のドレイン電極13dは後述のホール注入電極2に接続され、TFT20のソース電極13sは電源線(図示せず)に接続される。
【0032】
ゲート電極15を覆うようにゲート酸化膜14上に第1の層間絶縁膜16が形成される。ドレイン電極13dおよびソース電極13sを覆うように第1の層間絶縁膜16上に第2の層間絶縁膜17が形成される。
【0033】
第2の層間絶縁膜17上に、カラーフィルタ層CFが形成される。上述したように、カラーフィルタ層CFは、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWからなる。図2においては、カラーフィルタ層CFの1つである青緑色カラーフィルタ層CFBWを例示する。
【0034】
赤色カラーフィルタ層CFRは、赤色の波長領域の光を透過させ、緑色カラーフィルタ層CFGは、緑色の波長領域の光を透過させ、青色カラーフィルタ層CFBは、青色の波長領域の光を透過させ、青緑色カラーフィルタ層CFBWは、白色の波長領域の光を透過させる。
【0035】
赤色カラーフィルタ層CFRは600nm以上の波長において透過率70%以上を有することが好ましく、緑色カラーフィルタ層CFGは495nm以上555nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましく、青色カラーフィルタ層CFBは495nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましい。
【0036】
また、青色カラーフィルタ層CFBは紫外線の透過を抑制するために400nmより短い波長において透過率30%以下とすることが好ましい。
【0037】
また、赤色カラーフィルタ層CFRは575nm以下の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、緑色カラーフィルタ層CFGは470nm以下の波長において透過率10%以下を有し、かつ605nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、青色カラーフィルタ層CFBは550nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましい。それにより、赤色カラーフィルタ層CFRを純度の高い赤色光が透過し、緑色カラーフィルタ層CFGを純度の高い緑色光が透過し、青色カラーフィルタ層CFBを純度の高い青色光が透過することができる。
【0038】
また、青緑色カラーフィルタ層CFBWは紫外線の透過を抑制するために400nmより短い波長において透過率30%以下とすることが好ましい。
【0039】
青緑色カラーフィルタ層CFBWは435nm以上520nm以下の波長において透過率70%以上を有することが好ましく、520nmより長く560nm以下の波長において透過率45%以上75%以下を有することが好ましく、560nmより長く610nm以下の波長において透過率25%以上60%以下を有することが好ましく、610nmより長く640nm以下の波長において透過率5%以上35%以下を有することが好ましく、640nmより長い波長において透過率10%以下を有することが好ましく、410nm以上435nmより短い波長において透過率45%以上75%以下を有することが好ましく、400nm以上410nmより短い波長において透過率30%以上60%以下を有することが好ましい。この場合、青緑色カラーフィルタ層CFBWを純度の高い白色光が透過することができる。
・・・略・・・
【0041】
さらに、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWにおいて、400nmより短い波長において透過率30%以下として紫外線を吸収させるために、これらの顔料または染料の他に、紫外線吸収剤を添加することが可能である。
・・・略・・・
【0042】
このカラーフィルタ層CFを覆うように第2の層間絶縁膜17上に、例えばアクリル樹脂等からなる第1の平坦化層18が形成される。第1の平坦化層18上に透明なホール注入電極2が各画素ごとに形成され、画素間の領域においてホール注入電極2を覆うように絶縁性の第2の平坦化層19が形成される。
・・・略・・・
【0043】
ホール注入電極2および第2の平坦化層19を覆うようにホール注入層3が形成される。
・・・略・・・
【0044】
このホール注入層3上に、ホール輸送層4、オレンジ色に発光するオレンジ色発光層5a、青色に発光する青色発光層5bおよび電子輸送層6が順に形成される。さらに、この電子輸送層6上に、例えばフッ化リチウム(LiF)およびアルミニウム(Al)からなる電子注入電極7が形成される。
・・・略・・・
【0047】
・・・略・・・発光層5から発光される白色の光の色温度は、3000K以上4500K以下である。
【0048】
・・・略・・
【0055】
オレンジ色発光層5aおよび青色発光層5b(以下、単に発光層5と呼ぶ)により、460nm以上510nm以下の波長領域および550nm以上640nm以下の波長領域にそれぞれピーク強度を有する白色光が発生される。
【0056】
電子輸送層6は、例えば下記式(6)に示すトリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum)(以下、Alqと略記する)からなる。
・・・略・・・
【0058】
次に、図3は本実施の形態に係るカラーフィルタ層CFを説明するための図であり、図4はCIE色度図である。
【0059】
図3に示すように、発光層5に対向して、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWが配置される。
【0060】
まず、発光層5は、色温度が3000K以上4500K以下の白色の光を発生する。図4に示すように、色温度が3000Kの光は、純度の高い白色光ではなく、赤色光に近い白色光である。純度の高い白色光は、色温度が4500K以上8500K以下であることが好ましく、色温度が5500K以上7500K以下であることがより好ましく、色温度が6000K以上7000K以下であることがさらに好ましく、色温度が6500Kであることが最も好ましい。
【0061】
まず、発光層5から発生された光は、赤色カラーフィルタ層CFRを透過することにより赤色光に変換される。同様に、発光層5から発生された光は、緑色カラーフィルタ層CFGを透過することにより緑色光に変換され、発光層5から発生された光は、青色カラーフィルタ層CFBを透過することにより青色光に変換され、発光層5から発生された光は、青緑色カラーフィルタ層CFBWを透過することにより白色光に変換される。
【0062】
図4に示すように、赤色光はCIE色度の座標(0.64,0.36)で表わされ、緑色光はCIE色度の座標(0.35,0.53)で表わされ、青色光はCIE色度の座標(0.14,0.15)で表わされ、白色光はCIE色度の座標(0.31,0.33)で表わされる。CIE色度の座標(0.31,0.33)で表わされる白色光の色温度は6500Kである。
【0063】
ここで、青緑色カラーフィルタ層CFBWについて説明する。青緑色カラーフィルタ層CFBWは、発光層5の色温度3000K以上4500K以下の白色光を色温度6500Kの純度の高い白色光に変換する。一般に青色光は色温度が高いことが知られている。それにより、青緑色カラーフィルタ層CFBWは、青色光を最も透過させる特性を有する。したがって、発光層5の色温度3000K以上4500K以下の白色光が青緑色カラーフィルタ層CFBWを透過することにより、色温度6500Kの純度の高い白色光に変換される。
【0064】
以上のことから、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置においては、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWを用いることによりフルカラー表示を実現するとともに、純度の高い白色光を青緑色カラーフィルタ層CFBWより得ることができる。したがって、赤色光、緑色光および青色光を混合および調整することにより純度の高い白色光を得る場合と比較して、白色光を低い消費電力で得ることができる。その結果、有機エレクトロルミネッセンス装置において白色光を低い消費電力で得ることができる。
【0065】
本実施の形態においては、赤色カラーフィルタ層CFRが第1のフィルタに相当し、緑色カラーフィルタ層CFGが第2のフィルタに相当し、青色カラーフィルタ層CFBが第3のフィルタに相当し、発光層5(オレンジ色発光層5aおよび青色発光層5b)が発光層に相当する。
【実施例】
【0066】
以下の実施例においては、上記実施の形態に係る有機EL装置の評価を行った。
【0067】
(実施例)
実施例では、以下に示す特性を有する赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWを用いた。
【0068】
図5は、赤色カラーフィルタ層CFRの波長-透過率の関係を示す図であり、図6は、緑色カラーフィルタ層CFGの波長-透過率の関係を示す図であり、図7は、青色カラーフィルタ層CFBの波長-透過率の関係を示す図であり、図8は、青緑色カラーフィルタ層CFBWの波長-透過率の関係を示す図である。図5?図8の縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示す。
【0069】
図5に示すように、赤色カラーフィルタ層CFRは、波長600nm以上において透過率70%以上を有する。図6に示すように、緑色カラーフィルタ層CFGは、波長495nm以上555nm以下において透過率70%以上を有する。
【0070】
図7に示すように、青色カラーフィルタ層CFBは、波長495nm以下において透過率70%以上を有する。図8に示すように、青緑色カラーフィルタ層CFBWは、波長435nm以上520nm以下において透過率70%を有する。
【0071】
(比較例)
比較例では、上記実施の形態における青緑色カラーフィルタ層CFBWを用いずに、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFGおよび青色カラーフィルタ層CFBを用いた。
【0072】
(評価)
実施例の有機EL装置において、赤色光の色度および発光効率、緑色光の色度および発光効率、青色光の色度および発光効率、純度の高い白色光の色度、発光効率および消費電力を測定した。また、比較例の有機EL装置において赤色光、緑色光および青色光を混合および調整することにより色温度6500Kの純度の高い白色光を得るとともに消費電力を測定した。
【0073】
実施例の有機EL装置を用いて赤色光を得た場合、赤色カラーフィルタ層CFRを透過した赤色光の色度はCIE色度の座標(0.64,0.36)となり、発光効率は3.0cd/Aとなった。
【0074】
実施例の有機EL装置を用いて緑色光を得た場合、緑色カラーフィルタ層CFGを透過した緑色光の色度はCIE色度の座標(0.35,0.53)となり、発光効率は6.5cd/Aとなった。
【0075】
また、実施例の有機EL装置を用いて青色光を得た場合、青色カラーフィルタ層CFBを透過した青色光の色度はCIE色度の座標(0.14,0.15)となり、発光効率は1.5cd/Aとなった。
【0076】
さらに、実施例の有機EL装置を用いて純度の高い白色光を得た場合、青緑色カラーフィルタ層CFBWを透過した白色光の色度はCIE色度の座標(0.31,0.33)となり、発光効率は10cd/Aとなった。
【0077】
また、実施例の有機EL装置を用いて色温度6500Kの純度の高い白色光を得た場合の消費電力は、比較例の有機EL装置を用いて色温度6500Kの純度の高い白色光を得た場合の消費電力の0.6倍になった。この結果、青緑色カラーフィルタ層CFBWを用いることにより、白色光を低い消費電力で得ることができることがわかった。
・・・略・・・
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、種々の表示装置、光源等に利用することができる。
・・・略・・・
【符号の説明】
【0081】
CF カラーフィルタ層
CFR 赤色カラーフィルタ層
CFG 緑色カラーフィルタ層
CFB 青色カラーフィルタ層
CFBW 青緑色カラーフィルタ層
1 基板
2 ホール注入電極
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
5 発光層
5a オレンジ色発光層
5b 青色発光層
6 電子輸送層
7 電子注入電極
20 TFT」

ウ 「【図1】



エ 「【図2】



オ 「【図3】



カ 「【図4】



キ 「【図5】



ク 「【図6】



ケ 「【図7】



コ 「【図8】



(2) 引用発明
ア 引用文献1の「背景技術」(【0002】?【0004】)、「発明が解決しようとする課題」(【0005】?【0006】)等の記載からみて、引用文献1でいう発明の「有機エレクトロルミネッセンス装置」は、「表示装置」に「用い」られるものである。

イ 上記アと、引用文献1の「課題を解決するための手段」の記載(【0007】?【0023】)とから、引用文献1には、次の「有機エレクトロルミネッセンス装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると理解される。
「第1の色温度領域を有する白色の光を発生する有機エレクトロルミネッセンス素子と、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち赤色の波長領域の光を透過する第1のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち緑色の波長領域の光を透過する第2のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち青色の波長領域の光を透過する第3のフィルタと、第1の色温度領域と異なる第2の色温度領域の光を透過する第4のフィルタとを備え、表示装置に用いられる、有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光及び第2の色温度領域の光が得られ、赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光を混合及び調整することにより第2の色温度領域の光を得る場合と比較して、第2の色温度領域の光の減衰が小さく、その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子に高い電圧を印加する必要がなく、有機エレクトロルミネッセンス装置において白色光を低い消費電力で得ることができ、
第1のフィルタは600nm以上の波長において透過率70%以上を有し、第2のフィルタは495nm以上555nm以下の波長において透過率70%以上を有し、第3のフィルタは495nm以下の波長において透過率70%以上を有し、
第4のフィルタは、435nm以上520nm以下の波長において透過率70%以上を有し、第4のフィルタを純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができ、
第1の色温度領域は、色温度が3000K以上4500K以下であり、
第2の色温度領域は、色温度が4500K以上8500K以下であり、第4のフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス素子から発生される白色光を純度の高い白色光に変換する、有機エレクトロルミネッセンス装置。」

(3) 対比
ア 第1の光源
引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、「第1の色温度領域を有する白色の光を発生する」ものであり、また、「第1の色温度領域は、色温度が3000K以上4500K以下であ」る。
上記構成からみて、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、有機発光デバイスといえる光源であり、また、4500K以下、すなわち6504K未満の相関色温度(CCT)を有した近白色光を放出するものといえる(当合議体注:本件補正後発明でいう「白色光」は「D65」の光である(本件出願の明細書の【0045】)から、引用発明でいう「白色光」は、本件補正後発明でいう「近白色光」である。)。そして、これに「第1」という序数詞を付すことは、当業者の随意である。
そうしてみると、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、本件補正後発明の「第1の光源」に相当する。また、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、本件補正後発明の「第1の光源」における、「少なくとも1つの有機発光デバイスを含む」及び「6504K未満の相関色温度(CCT)を有した近白色光を放出する」という要件を満たす。

イ 第1のサブ画素
引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス装置」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち赤色の波長領域の光を透過する第1のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち緑色の波長領域の光を透過する第2のフィルタと、有機エレクトロルミネッセンス素子により発生された光のうち青色の波長領域の光を透過する第3のフィルタと、第1の色温度領域と異なる第2の色温度領域の光を透過する第4のフィルタとを備え、表示装置に用いられる」。
上記構成及び表示装置の画素に関する技術常識を考慮すると、引用発明の「第3のフィルタ」は、青色のサブ画素である。また、引用発明の「第3のフィルタ」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子」からの青色の光を通すことに適したカラーフィルタという意味において、「有機エレクトロルミネッセンス素子」と光学的に互いに関連している。
そうしてみると、引用発明の「第3のフィルタ」と本願発明の「第1のサブ画素」とは、「前記第1の光源と光学的に連絡する第1のカラーフィルタを含む第1のサブ画素であって、前記第1のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され」たものである点で共通する。

ウ 第2のサブ画素?第4のサブ画素及び画素
前記イと同様に、引用発明の「第2のフィルタ」、「第1のフィルタ」及び「第4のフィルタ」と本願発明の「第2のサブ画素」、「第3のサブ画素」及び「第4のサブ画素」は、それぞれ「前記第1の光源と光学的に連絡する第2のカラーフィルタを含む第2のサブ画素であって、前記第2のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され」たものである点、「前記第1の光源と光学的に連絡する第3のカラーフィルタを含む第3のサブ画素であって、前記第3のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合され」たものである点、及び「第4のサブ画素」である点で、共通する。
加えて、引用発明の「第1のフィルタ」?「第4のフィルタ」を併せたもの(1組)は、本件補正後発明の、「第1のサブ画素と」、「第2のサブ画素と」、「第3のサブ画素と」、「第4のサブ画素とを含み」とされる「画素」(「それぞれの画素」)に相当する(当合議体注:この点は、引用文献1の【0028】の「カラーフィルタ層CFにおいては、隣接する4種の赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、青色カラーフィルタ層CFBおよび青緑色カラーフィルタ層CFBWにより有機EL装置の1画素が形成される」との記載からも理解できる。)。

エ 第1のデバイス
前記ア?ウの対比結果並びに引用発明及び本件補正後発明の全体構成からみて、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス装置」は、本件補正後発明の「第1の光源と」、「複数の画素とを備える」とされる、「第1のデバイス」に相当する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 少なくとも1つの有機発光デバイスを含む第1の光源であって、6504K未満の相関色温度(CCT)を有した近白色光を放出する第1の光源と、
複数の画素とを備える第1のデバイスであって、それぞれの画素が、
前記第1の光源と光学的に連絡する第1のカラーフィルタを含む第1のサブ画素であって、前記第1のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合される、第1のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第2のカラーフィルタを含む第2のサブ画素であって、前記第2のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合される、第2のサブ画素と、
前記第1の光源と光学的に連絡する第3のカラーフィルタを含む第3のサブ画素であって、前記第3のカラーフィルタが前記第1の光源からの光を通すように適合される、第3のサブ画素と、
第4のサブ画素とを含む、第1のデバイス。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違する、又は一応相違する。
(相違点1)
「第1のサブ画素」、「第2のサブ画素」及び「第3のサブ画素」が、本件補正後発明は、それぞれ「前記第1のカラーフィルタを通った光が400から500nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する」、「前記第2のカラーフィルタを通った光が500から580nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する」及び「前記第3のカラーフィルタを通った光が580から700nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する」のに対して、引用発明は、一応、このような特定がなされていない点。

(相違点2)
「第1の光源」が、本件補正後発明は、「放出層と、電子注入層及び電子輸送層と、ホール注入層及びホール輸送層とを含」み、「前記放出層が、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置され」、「前記放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である」のに対して、引用発明は、このような特定がなされていない点。

(相違点3)
「第4のサブ画素」が、本件補正後発明は、「相関色温度(CCT)が6504K未満である近白色色を放出する」ものであるのに対して、引用発明は、「色温度が4500K以上8500K以下であ」る点。

(5) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用文献1の【0011】には、「第1のフィルタ」?「第3のフィルタ」について、「第1のフィルタは575nm以下の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、第2のフィルタは470nm以下の波長において透過率10%以下を有し、かつ605nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましく、第3のフィルタは550nm以上の波長において透過率10%以下を有することが好ましい。この場合、第1のフィルタを純度の高い赤色光が透過し、第2のフィルタを純度の高い緑色光が透過し、第3のフィルタを純度の高い青色光が透過することができる。」との記載がある。
そうすると、引用文献1には、第1のフィルタ?第3のフィルタの波長透過率特性を調整することにより、各色光の純度を高めることが記載・示唆されているといえるところ、このような純度の高い赤色光、緑色光及び青色光により、表示装置の色再現性を向上できることは、技術常識である。

(イ) そうしてみると、青色光、緑色光、赤色光の波長範囲に基づき、引用発明の「第3のフィルタ」、「第2のフィルタ」及び「第1のフィルタ」の透過特性を、透過する青色光、緑色光及び赤色光それぞれが純度の高いものとなるようにすること、すなわち、[A]第3のフィルタ(本件補正後発明の「第1のカラーフィルタ」に相当)を通った光が400から500nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する光が透過される、透過特性を有するものとすること、[B]第2のフィルタ(「第2のカラーフィルタ」)を通った光が500から580nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する光が透過される、透過特性を有するものとすること、及び、[C]第1のフィルタ(「第3のカラーフィルタ」)を通った光が580から700nmの間の可視スペクトル内にピーク波長を有する光が透過される、透過特性を有するものとすることは、表示装置の色再現性向上を考える当業者の設計上の事項である(合議体注:以上述べたような、青色光、緑色光及び赤色光のピーク波長の設定については、引用文献1でいう発明の実施例(【0067】?【0070】)として、図7に示された青色カラーフィルタ層の波長-透過率の関係、図6に示された緑色カラーフィルタ層の波長-透過率の関係、図5に示された赤色カラーフィルタ層の波長-透過率の関係からも理解できる。)。

イ 相違点2について
(ア) 引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス装置」は「有機エレクトロルミネッセンス素子」を具備するところ、「ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層をこの順で含む有機エレクトロルミネッセンス素子」は、本件優先日前に周知・慣用のものである(当合議体注:例えば、特開2005-285470号公報の【0031】、特開2005-317506号公報の【0005】等を参照。なお、引用文献1の発明を実施するための最良の形態(【0026】?【0027】、【0042】?【0044】、【0047】、【0055】、【0056】、【0065】及び図1、図2等、ここで、「フッ化リチウム(LiF)」が絶縁体で「アルミニウム(Al)」が導体であること、また、本件補正後発明が複合カソード(本件出願の明細書の【0030】)の構成を具備するとまでは特定されていないことを考慮すると、引用文献1の【0044】でいう「電子注入電極7」は、「電子注入層」と「電極」を併せたものと理解することもできる。)においても、実質的にこれと同じ構成が記載・示唆されている。)。
また、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は「白色の光を発生する」ものであるところ、その発光層を、蛍光性の青色光を発光し、燐光性の赤色光及び緑色光を発光する単層とすることも、本件優先日前に周知である(当合議体注:例えば、特開2004-14155号公報の【請求項1】?【請求項3】、【0031】、実施例1(【0068】、【0071】)、実施例2(【0086】、【0087】)等、特開2007-173827号公報の【請求項1】、【請求項4】、【0023】、【0024】、【0028】等、国際公開第2009/008349号の[0014]、[0015]、[0250]、[0367]、実施例7,実施例8([0409])、実施例16?実施例18([0417]?[0420])、実施例22?24([0424]?[0426])等を参照。)。

(イ) そうしてみると、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」を、相違点2に係る本件補正後発明の構成を具備したものとすることは、引用文献1の記載・示唆に接した当業者が容易になし得たことである(当合議体注:当業者であれば、単層の有機EL発光層中の青色蛍光材料、緑色燐光材料、赤色燐光材料の各含有量を調整し、色温度3000K?4500Kの白色光を発生させることができる。)。

ウ 相違点3について
(ア) 引用発明の「第4のフィルタ」は、「435nm以上520nm以下の波長において透過率70%以上を有し」、「純度の高い第2の色温度領域の光が透過することができ」るものである。また、引用発明の「第2の色温度領域は、色温度が4500K以上8500K以下であ」る。
また、引用発明は、「表示装置に用いられ」、「赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光及び第2の色温度領域の光が得られ、赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光を混合及び調整することにより第2の色温度領域の光を得る場合と比較して、第2の色温度領域の光の減衰が小さく、その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子に高い電圧を印加する必要がなく、有機エレクトロルミネッセンス装置において白色光を低い消費電力で得ることができ」るものである。
ここで、引用発明において、上記の「第2の色温度領域の光」として「低消費電力で得ることができ」る白色光の色温度(の設定)を、4500K以上8500Kの範囲内のどの色温度値とするかは、当業者の任意である。

(イ) そうすると、引用発明において、「第4のフィルタ」の透過特性が、例えば、色温度が(下限の)4500Kの光が、「純度の高い第2の温度領域の光」として透過することができる特性のものとすることは、引用文献1が示唆する範囲内のことである。そして、4500Kの白色光は、6504K未満の近白色光ということができるから、上記設計変更を施した引用発明は、上記相違点3に係る本件補正後発明の、「第4のサブ画素」が「相関色温度(CCT)が6504K未満である近白色色を放出する」との要件を具備することとなる。

(ウ) あるいは、引用発明の「純度の高い第2の温度領域の光」について、引用文献1には、発明を実施するための形態として、【0060】に、「純度の高い白色光は、色温度が4500K以上8500K以下であることが好ましく、色温度が5500K以上7500K以下であることがより好ましく、色温度が6000K以上7000K以下であることがさらに好ましく、色温度が6500Kであることが最も好ましい。」との記載がある(当合議体注:同様な記載は、引用文献1の【0021】、【0022】にも一般記載として存在する。)。
そうしてみると、上記の引用文献1の記載・示唆に基づき、引用発明において、「第4のフィルタ」の透過特性が、色温度が例えば、(より好ましい色温度範囲の下限値の)5500K、(さらに好ましい色温度範囲の下限値の)6000K、あるいは(最も好ましい)6500Kの光が、「純度の高い第2の温度領域の光」として透過することができる特性のものとすることは、引用発明の具体化を試みる当業者が容易になし得たことである。そして、5500K、6000Kあるいは6500Kの白色光は、相関色温度(CCT)が6504K未満の近白色光ということができるから、上記設計変更を施した引用発明は、上記相違点3に係る本件補正後発明の構成を具備することとなる。

(6) 発明の効果について
ア 本件特許明細書には、発明(本件補正後発明)の効果として明記された記載はないが、【0016】の「長寿命および/または消費電力低減を実現できる赤色、緑色、青色、および白色(RGBW)OLEDを提示する」との記載が、(本件補正後)発明の効果として理解可能である。

イ しかしながら、長寿命及び/又は消費電力低減を実現できるとの効果は、引用発明も奏するものである。具体的には、引用発明は、「赤色の波長領域の光、緑色の波長領域の光、青色の波長領域の光を混合及び調整することにより第2の色温度領域の光を得る場合と比較して、第2の色温度領域の光の減衰が小さく、その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子に高い電圧を印加する必要がなく、有機エレクトロルミネッセンス装置において白色光を低い消費電力で得ることができ」るものである。また、低電圧で駆動できることから、有機EL素子(有機EL発光層)の駆動電流・温度上昇も低減できるため、劣化を抑制し長寿命とできることも明らかである(当合議体注:有機EL表示装置において、フィルタレスのW画素(白画素)により白色を表示するRGBW方式が、RGB方式と比較して、低消費電力、長寿命が期待できることは技術常識である(後記(8)ウで例示した文献を参照。)。)。
あるいは、消費電力低減や長寿命については、上記相違点1?3に係る設計変更を施した引用発明において、当業者が予測・期待する効果であって、格別のものではない(当合議体注:4500K、5500K、6000Kあるいは6500Kの(近)白色光は、例えば、6504K、あるいは、10000Kなどの白色光に比較して相対的に青色成分が低い。そうすると、発光層の負荷・温度上昇を低減することができ、長寿命も期待できる。)。

(7) 審判請求書について
ア 請求人は、審判請求書において、「〔4〕本願発明が特許されるべき理由」「(2)進歩性」において、
「本願請求項1に記載の発明は、『放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である』との特徴を有します。当該特徴は、引用文献1から4のいずれにも記載されていないものと思料いたします。」、「引用文献1には、・・・略・・・発光層が、燐光性又は蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出することは記載されていません。」、「引用文献2の段落[0165]には、『なお、蛍光発光層と燐光発光層を有して混色の発光素子であればよく、色の混合のパターンは種々変更可能である。例えば、蛍光発光層が青色蛍光発光ドーパントを含有し燐光発光層が緑色燐光ドーパントと赤色燐光発光ドーパントを含有してもよく、』と記載されており、ただ1つの層が蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出することは記載されていません。」、「引用文献3の段落[0206]には、『このような構成によれば、青色の蛍光発光層と赤色の第一の燐光発光層との構成に、さらに緑色の第二の燐光発光層が追加された積層構成となるので、三波長白色を形成することができる。』と記載されており、ただ1つの層が蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出することは記載されていません。」、「引用文献4の段落[0058]には、『第2の層122は複数種の燐光性化合物を有していてもよい。』と記載されています。しかし、段落[0050]には、『第1の層121に含まれる第1の蛍光性化合物』及び『第2の層122に含まれる燐光性化合物』と記載されています。すなわち、引用文献4も、ただ1つの層が蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出することは記載されていません。」、「したがって、蛍光発光性の層及び燐光発光性の層を開示する引用文献2から4に記載の周知技術を引用文献1に記載の発明に適用したとしても、『放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である』という本願発明の特徴に相当することはできないものと思料いたします。」旨主張している。

イ しかしながら、白色を発生する有機EL発光層を、蛍光性の青色光を発光し、燐光性の赤色光及び緑色光を発光する単層とすることは、周知技術であって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正後発明の構成とすることが、当業者が容易になし得たものであることは、上記(5)イで既に述べたとおりである。
してみると、請求人の審判請求書の主張を採用することはできない。

(8) 上申書について
ア 請求人は、令和2年11月27日付けの上申書の「1.補正について」において、補正案(本件補正後の発明に、「前記第4のサブ画素が、前記第1の光源から放出される近白色光と同じ相関色温度の光を放出する」との事項を付加したもの。)を提示するとともに、「3.進歩性欠如の拒絶理由について」において、「前置審査官殿は、補正前の本願請求項1に記載の「放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である」との特徴は、引用文献4及び5に記載されていると認定されました。」、「すなわち、引用文献4には、本願請求項1に記載の「放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である」との特徴は記載されていないものと思料いたします。」、「しかしながら、出願人は、上記の通り、請求項1に『第4のサブ画素が、第1の光源から放出される近白色光と同じ相関色温度の光を放出する』との特徴を追加したいと考えております。このような特徴は、引用文献1から5のいずれにも記載されていないものと思料いたします。」、「引用文献1に記載の発明は、前置審査官殿も認定されるように、有機エレクトロルミネセンス素子から発生した色温度3000-4000Kの白色光を、色温度4500K以上8500K以下の光を透過する第4フィルタを備える画素を有します。すなわち、第4のサブ画素に相当する引用文献1に記載の画素は、白色光の色温度を変換するフィルタを備えており、『光源から放出される近白色光と同じ相関色温度の光を放出する』ものではないと思料いたします。」、「そして、引用文献2から5にも、このような特徴は示唆されていないため、引用文献2から5に記載の発明を引用文献1に記載の発明に組み込んだとしても、本願発明に想到することはできないものと思料いたします。」、「以上の通り、補正後の本願請求項1に記載の発明は、引用文献1から5に記載の発明に対して構成上の相違点を有し、当該相違点に基づいて有利な効果を奏するものですので、引用文献1から5に記載の発明及びこれらを組み合わせた発明に対して進歩性を有するものと思料いたします。」、「つきましては、本件の審理にあたり、この補正について御検討頂き、補正をする機会を与えていただけますようお願いいたします。」旨主張している。

イ しかしながら、「放出層が、蛍光性の青色光を放出し、燐光性の赤色光及び緑色光を放出するただ1つの層である」ことについては、上記(5)イで既に述べたとおりである。

ウ 次に、補正案(以下、「補正案」に係る発明を、「補正案発明」という。)について検討する。
RGBW方式の有機EL表示装置において、W画素(第4のサブ画素)から、カラーフィルタを介さずに、有機EL発光層と同じ白色光を放出することは、本件優先日に周知の技術である(当合議体注:例えば、Baek-woon Lee et al., 「L-2: Late-News Paper: The RGBW Advantage for AMOLED」, SID 2007 DIGEST, Vol.38, No.1, May 2007, p.1386-1389(1386頁左欄下から13行?9行、右欄1?4行等)、Jeffrey P. Spindler et al, 「4.3: Lifetime- and Power-Enhanced RGBW Displays Based on White OLEDs」, SID 2005 DIGEST, Vol.36, No.1, May 2005, p.36-39(38頁図5,図6等)、特開2006-338910号公報(図1,【0025】等)等参照。重ねて、引用文献1に、第2の温度領域の光の色温度を4500?8500Kとする、あるいは、特開2006-338910号公報の【0025】に、有機EL発光層の白色光は、4000?20000K程度とすることが好ましい、と記載されているように、表示装置のホワイトポイントの設定は、当業者の設計上の事項である。)。
そうしてみると、補正案発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができるから、令和2年11月27日付けの上申書の補正案及び請求人の主張を採用することはできない。

(9) 小括
本件補正後発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、理由2(進歩性)本願発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特開2005-317507号公報

3 引用文献1及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、同1(3)で述べた限定事項(上記相違点2に係る本件補正後発明の構成の一部に相当する)を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べたとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]2(3)?(9)で述べた理由と同様な理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-01-06 
結審通知日 2021-01-12 
審決日 2021-01-28 
出願番号 特願2017-139049(P2017-139049)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横川 美穂  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 福村 拓
河原 正
発明の名称 長寿命および低消費電力のRGBW OLEDディスプレイ  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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