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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1375395
審判番号 不服2019-17769  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-27 
確定日 2021-07-06 
事件の表示 特願2017-132941「画面外の目に見えるオブジェクトの表面化」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-199420、請求項の数(30)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年11月18日 米国)を国際出願日とする出願である特願2013-540091号の一部を、平成29年7月6日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。

平成29年 8月 7日 :手続補正書の提出
平成30年 9月28日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月 8日 :意見書の提出
令和 元年 8月28日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月15日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和 3年 5月19日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1ないし30に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明30」という。)は、令和3年5月19日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1及び14は以下のとおりの発明である。(下線は、本件補正により補正された箇所を示す。)

1 本願発明1
「 コンピューティングデバイスのためのコンピュータによって実行される方法であって、
タッチパッドから離れて配置されたグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップと、
前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最初の位置を識別するとともに、前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別することによって、前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているものであって、前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別するステップと、
前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているものであって、前記ポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別するステップに応答して、前記グラフィックディスプレイの上で、前記グラフィックディスプレイの端から前記グラフィックディスプレイの主部に入るように移動するようにアニメ化される第1のスライドするグラフィック要素を、前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素の上に表示するステップとを備え、前記タッチパッド表面は、前記グラフィックディスプレイの表面とは分離しており、前記第1のスライドするグラフィック要素の動きは前記ユーザ入力の動きと連動する、方法。」

2 本願発明14
「 コンピューティングデバイスのためのコンピュータによって実行される方法であって、
コンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップと、
前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最後の位置を識別するとともに、前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部を通過したときに正の速度を保つものであり且つ前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド上で始まり前記タッチパッドの端を外れたところで終わるものであると識別し、前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッドから離れて配置された前記コンピューティングデバイスのグラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものであると識別することによって、前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッド上で始まり前記タッチパッドの端を外れたところで終わっているものとして識別するステップと、
前記グラフィックディスプレイ上の動かない要素の上にスライドするグラフィック要素が表示された状態で、前記ユーザ入力の動きは前記タッチパッド上で始まり前記タッチパッドの端を外れたところで終わっているものとして識別するステップに応答して、前記コンピューティングデバイスのグラフィックディスプレイの上で、前記表示された状態の前記スライドするグラフィック要素を、前記動かない要素の上で前記グラフィックディスプレイの主部から前記グラフィックディスプレイの端に移動するように表示するステップとを備え、前記タッチパッド表面は、前記グラフィックディスプレイの表面とは分離している、方法。」

なお、本願発明2ないし13、28及び29は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明15ないし20は、本願発明14を減縮した発明であり、本願発明21は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明22ないし27は、本願発明21を減縮した発明であり、本願発明30は、請求項1ないし20、28および29に係る発明を「プログラム」の発明として特定したものである。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-195998号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蓄積された画像や文字等の各種情報を表示可能な情報処理装置及びその情報処理装置を制御するための制御方法及びその情報処理装置を制御するための制御プログラム及びその制御プログラムを格納した記憶媒体に関する。」

「【0025】また、外装カバー101の背面側には、図3に示すように長方形状のディスプレイ(表示手段)105が設けられている。このディスプレイ105の上面には、図3及び図4に示すようにタッチパネルセンサ106が設けられている。そして、ユーザが使用する際、図4に示すように主にタッチペン式の入力デバイス(ペン型ポインティングデバイス)107によりディスプレイ105上のタッチパネルセンサ106で座標を指示し、各種機能の実行を命令する。」

「【0027】外装カバー101とディスプレイ105との境界部のフレームには、図3及び図4に示すように段差部109が設けられている。この段差部109は、後述する「引き出しメニュー表示トリガーエリア」等の指定を行う際に、補助的な機能を有する。即ち、図4に示すようにディスプレイ105を取り囲む辺に接する外装カバー101のフレームの段差部109に入力デバイス107の先端部を突き当てると、ちょうど「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内の領域を座標指示することができ、大雑把な入力デバイス107による入力でもユーザーの意図が反映されるように考慮されている。」

「【0030】図5?図7に示すように長方形状のディスプレイ105の各辺に、予め大きくA,B,C,Dの4つのカテゴリーに分類した機能を仮想的な引き出しのようなレイアウトで割り当てる。以降、この機能を「引き出しメニュー」と記述する。」

「【0035】また、それぞれの表示トリガーエリアの定義は、入力デバイス107のペン先形状等から決められ、入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当てた時に検出される範囲プラスアルファの幅で定義される。また、それぞれの起動エリアの座標情報は、後述するROM(リードオンリーメモリ)内に予め登録されており、入力デバイス107による座標情報を検出した際に、それらの座標を照合させ、図示のようなエリアが照合された場合に、それぞれの起動の待機状態となり、更に、入力デバイス107を表示画面の中央へ向けてスライドさせてスクロールすることによって、メニュー内容が引き出せるように表示することができる。」

「【0067】即ち、まず、画像表示ディスプレイ803の表示画面全体を使って写真画像等が表示されている状態(フルスクリーン画像再生状態:図10の画面表示例における1000)において、任意の座標を検出すると、図6に示したB分類ツールの「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内座標が検出される。この検出としては、直接トリガーエリア内の座標が検出される場合と、それ以外のエリアが検出された後に、オフされずに座標情報が連続的に更新された後に「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内座標が検出される場合との2通りがある。後者の「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内座標が検出された場合、その前に連続された座標情報が検出されていたならば、それは無効になる(図10の画面表示例における1001?1002)。
…(中略)…
【0069】次に、この状態のまま、入力デバイス107をタッチパネルセンサ106に接触させたまま離さないで、画像表示ディスプレイ803の表示画面の中央部へ向けてスライドさせると、入力デバイス107の動きに伴ってツールボックスが引き出しのようにせり出してくる(図10の画面表示例における1003?1006)。この場合、B分類メニューのトリガーエリアが検出されているので、X軸情報は無視され、Y軸情報のみが処理に反映される。」

「【0078】図13は、本実施の形態に係る情報処理装置における引き出しメニューを閉じる際の画面表示例を示す図、図14及び図15は、本実施の形態に係る情報処理装置における引き出しメニューを閉じる際の操作プロセスの流れを示すフローチャートである。
…(中略)…
【0086】即ち、「引き出しメニュー」が最大表示量で表示されている状態において、検出された座標情報が引き出されたメニューの「表示トリガーエリア」内の場合(図13の画面表示例における1303)、選択エリアのバーがハイライト表示され、ブザー音とも併せて、選択されてアクティブになったことをユーザにフィードバックし、引き出しの移動受付待機状態になる。または、最初に検出された座標情報が引き出しメニュー表示トリガーエリア内でない場合も、受付待機状態が持続し、座標情報のみ変化し、引き出しメニュー表示トリガーエリア内に入った場合は、それまでの情報は無視され、そこから待機状態になる(図13の画面表示例における1301?1303)。これは、大雑把な操作でも確実にユーザの意図を受け付けるための方法である。
…(中略)…
【0088】更に検出座標に変化があった場合、X座標情報は変更があっても無視され、Y座標情報のB分類ツール収納位置方向の指示しか受け付けない。図13の画面表示例における1304に示すような方向の指示が検出された場合は無視される。また、図13の画面表示例における1305?1309のように座標が更新される都度、表示量も更新される。引き出し量yが定義量以上の場合にオフされた場合は、その状態で保持される(図13の画面表示例における1306)。ある定義量以内(図13の画面表示例における1307)に入ると、ユーザが表示を消す意図を持っていると見做し、途中でオフになっても引き出しメニュー表示はオフされる。」

「【0267】尚、本発明の目的は、上記実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成されることは言うまでもない。」

「【図4】



「【図5】



「【図6】



「【図7】



「【図10】



「【図13】



(2)引用発明
前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 情報処理装置を制御するための制御方法であって、
情報処理装置の外装カバー101の背面側には、長方形状のディスプレイ(表示手段)105が設けられ、ディスプレイ105の上面には、タッチパネルセンサ106が設けられており、
外装カバー101とディスプレイ105との境界部のフレームには、段差部109が設けられ、段差部109に入力デバイス107の先端部を突き当てると、ちょうど「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内の領域を座標指示することができ、
長方形状のディスプレイ105の各辺に、予め大きくA,B,C,Dの4つのカテゴリーに分類した機能を仮想的な引き出しのようなレイアウトで割り当て、以降、この機能を「引き出しメニュー」と記述し、
それぞれの表示トリガーエリアの定義は、入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当てた時に検出される範囲プラスアルファの幅で定義され、起動エリアの座標情報は、ROM内に予め登録されており、入力デバイス107による座標情報を検出した際に、それらの座標を照合させ、エリアが照合された場合に、それぞれの起動の待機状態となり、更に、入力デバイス107を表示画面の中央へ向けてスライドさせてスクロールすることによって、メニュー内容が引き出せるように表示することができ、
まず、画像表示ディスプレイ803の表示画面全体を使って写真画像等が表示されている状態において、「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内座標が検出され、
次に、この状態のまま、入力デバイス107をタッチパネルセンサ106に接触させたまま離さないで、画像表示ディスプレイ803の表示画面の中央部へ向けてスライドさせると、入力デバイス107の動きに伴ってツールボックスが引き出しのようにせり出してくるように表示され、
引き出しメニューを閉じる際、
「引き出しメニュー」が最大表示量で表示されている状態において、検出された座標情報が引き出されたメニューの「表示トリガーエリア」内の場合、引き出しの移動受付待機状態になり、ある定義量以内に入ると、ユーザが表示を消す意図を持っていると見做し、途中でオフになっても引き出しメニュー表示はオフされ、
本発明の目的は、システム或いは装置のコンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される、
制御方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-280019号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、静電容量式の入力パッドを使用して、表示画面においてアクティブとなっている表示画像(ウインドウ)内に指示されているメニューの選択操作を容易にした入力装置およびこの入力装置を使用したコンピュータシステムに関する。」

「【0025】
図4に示すコンピュータシステムは、PC本体1とキーボード装置11および静電容量式の入力パッド21を有している。」

「【0040】
入力パッド用ドライバ25が通常の座標入力モードで動作しているときに、表示画像30の上部のメニューバー32に表示されている個々のメニュー指示33,34,35,36,37を選択するためには、入力面21aで指50を摺動させ、ポインタ31を移動させて、このポインタ31を選択すべきメニュー指示と重なる位置に一致させる。そして、指50を動かさず、ポインタ31が選択されたメニュー指示に一致している状態を継続させたままで、指50で入力面21aをタッピングする(指を入力面21aに素早く接触させその直後に離す)。あるいは、Lキー入力部23を操作する。この操作により、選択されたメニュー指示に対応するメニュー画面を表示させることができる。」

「【図1】



「【図2】



したがって、上記引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「 静電容量式の入力パッドを使用して、表示画面においてアクティブとなっている表示画像(ウインドウ)内に指示されているメニューの選択操作を容易にした入力装置を使用したコンピュータシステムにおいて、
コンピュータシステムは、PC本体1とキーボード装置11および静電容量式の入力パッド21を有し、
表示画像30の上部のメニューバー32に表示されている個々のメニュー指示33,34,35,36,37を選択するためには、入力面21aで指50を摺動させ、ポインタ31を移動させて、このポインタ31を選択すべきメニュー指示と重なる位置に一致させ、指50を動かさず、ポインタ31が選択されたメニュー指示に一致している状態を継続させたままで、指50で入力面21aをタッピングする操作により、選択されたメニュー指示に対応するメニュー画面を表示させることができること。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2004-341886号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファイル管理装置及びファイル管理方法に関し、たとえば、電子機器に保存されている電子オブジェクトの削除、移動またはコピーなどを行う際のユーザインターフェースの改善を意図したファイル管理装置及びファイル管理方法に関する。」

「【0009】
図1は、実施の形態の携帯情報端末10(ファイル管理装置)の外観図である。この図において、携帯情報端末10は、手持ちに適した小さな筐体11の正面にタッチパネル付の液晶ディスプレイパネル12(表示画面)を備えると共に、液晶ディスプレイパネル12に隣接して配置されたいくつかの機能キー13?15やジョグキー16などからなるキー群17と、筐体11の側面に形成されたタッチペン18の保持溝19と、筐体11の下面に配置された外部機器接続用のインターフェース端子20とを備える。」

「【0025】
一方、図5(b)に示すように、アイコン34をタッチペン18でドラッグして、たとえば、右辺12bの右側(表示枠外)にはみ出させた場合、正確には、ドラッグ後のアイコン34bの座標(icn_x,icn_y)のX軸の値を右辺12bのX軸の値(”n”)に一致させた場合(n=icn_x)、ステップS13の判定結果が”YES”となり、この場合、ステップS14を実行してアイコン34が削除される。」

「【0029】
図6は、その改良例を示すフローチャートであり、図4(a)のフローチャートとの相違は、アイコンのドラッグ操作を判定(ステップS11)した後、ドラッグ速度を取得する処理(ステップS15/ドラッグ速度検出工程)、及び、そのドラッグ速度が所定値を超えているか否かを判定する処理(ステップS16/ドラッグ速度検出工程)を追加した点にある。アイコンの削除を意図して”払い落とし”を行うとき、そのときのアイコンのドラッグ速度(便宜的にFaとする。)は、単にアイコンの表示位置を整理しようとしているときのドラッグ速度(便宜的にFbとする。)よりも相当早いはずである。したがって、上記の所定値を、Faよりも小さく且つFbよりも大きい適切な値に設定しておけば、両者を区別することができる。これによれば、ドラッグ速度が所定値を超えていない場合は、単にアイコンの表示位置を整理しようとしているものと判断して削除処理に移行せず、ユーザの意に反してアイコンが削除されてしまうという不都合を回避できる。
【0030】
また、前記の実施の形態では、ドラッグ後のアイコンの座標が表示枠の4辺のいずれを超えた(はみ出した)場合にも、同一の処理(アイコンの削除)を行うようにしているが、これに限定されない。各辺毎に異なる処理を行うようにしてもよい。」

「【図5】



したがって、上記引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「 電子機器に保存されている電子オブジェクトの削除、移動またはコピーなどを行う際のユーザインターフェースの改善を意図したファイル管理装置において、
携帯情報端末10(ファイル管理装置)は、タッチパネル付の液晶ディスプレイパネル12(表示画面)を備え、
アイコン34をタッチペン18でドラッグして、たとえば、右辺12bの右側(表示枠外)にはみ出させた場合アイコン34が削除され、
改良例では、そのドラッグ速度が所定値を超えているか否かを判定する処理を追加し、ドラッグ速度が所定値を超えていない場合は、単にアイコンの表示位置を整理しようとしているものと判断して削除処理に移行せず、ユーザの意に反してアイコンが削除されてしまうという不都合を回避でき、
各辺毎に異なる処理を行うようにしてもよいこと。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(Paul Zirkle,iPhone/iPadゲーム開発ガイド,日本,株式会社オライリー・ジャパン,2010年9月1日,第1版,pp.45-47)には、次の事項が記載されている。

(第47ページ第20-22行)
「スワイプなどのアクションを検出するのはもっと複雑になりますが、処理自体は難しくはありません。コードはタッチの最初と最後のポイントを保存し、ユーザーが描いたラインが上、下、左、右のいずれかで、指が十分速くスワイプしたかどうかを判定すればよいのです。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「情報処理装置」は、本願発明1の「コンピューティングデバイス」に相当する。
また、引用発明は、「本発明の目的は、システム或いは装置のコンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される」との構成を備えるから、引用発明の「情報処理装置を制御するための制御方法」は、本願発明1の「コンピューティングデバイスのためのコンピュータによって実行される方法」に相当する。

イ 引用発明の「タッチパネルセンサ106」及び「ディスプレイ(表示手段)105」はそれぞれ、本願発明1の「タッチパッド」及び「グラフィックディスプレイ」に相当する。
そうすると、引用発明の「情報処理装置」と、本願発明1の「タッチパッドから離れて配置されたグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイス」とは、「タッチパッドとグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイス」である点において共通する。

ウ 引用発明は、「ディスプレイ105の上面には、タッチパネルセンサ106が設けられており」との構成を備えるから、ディスプレイに表示される表示画面上の操作は、「タッチパネルセンサ106」の表面上でなされるものといえる。
また、引用発明において、「入力デバイス107」の動きは、「ユーザ入力の動き」といい得るものである。
また、引用発明は、「入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当て」ることにより「「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内座標が検出され」てから、「この状態のまま、入力デバイス107をタッチパネルセンサ106に接触させたまま離さないで、画像表示ディスプレイ803の表示画面の中央部へ向けてスライドさせる」動きを「座標」により検知するものであり、当該動きは、本願発明1の「コンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動き」に相当し、当該「動き」を「座標」により検知することは、当該「動き」を受け取るステップを行うことに等しい。

エ 前記イ及びウより、引用発明と、本願発明1の「タッチパッドから離れて配置されたグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップ」とは、「タッチパッドとグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップ」との共通の構成を備える。

オ 引用発明において、「外装カバー101とディスプレイ105との境界部のフレーム」に設けられる「段差部109」は、本願発明1の「前記タッチパッド表面の周辺端部」に相当する。
また、引用発明において、「段差部109に入力デバイス107の先端部を突き当てると、ちょうど「引き出しメニュー表示トリガーエリア」内の領域を座標指示する」ことは、本願発明1の「前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最初の位置を識別する」ことに相当する。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最初の位置を識別するとともに、前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別することによって、前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているものであって、前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別するステップ」とは、「前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最初の位置を識別するステップ」である点において共通する。

カ 引用発明の「引き出しメニュー」は、「入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当て」た状態から「入力デバイス107をタッチパネルセンサ106に接触させたまま離さないで、画像表示ディスプレイ803の表示画面の中央部へ向けてスライドさせる」動きに応じて、「引き出しのようにせり出してくる」ように表示されるものである。
ここで、引用発明の「段差部109」及び「表示画面の中央部」はそれぞれ、本願発明1の「前記グラフィックディスプレイの端」及び「前記グラフィックディスプレイの主部」に対応する。
また、引用発明において、「引き出しメニュー」が「引き出しのようにせり出してくる」ように表示する動きは、「段差部109」から「表示画面の中央部」に「スライド」して入るように移動する、「アニメ化」された動きといい得るものであり、また、そのように表示される「引き出しメニュー」は、「(第1の)スライドするグラフィック要素」といい得るものである。
よって、引用発明の「引き出しメニュー」は、本願発明1の「前記グラフィックディスプレイの上で、前記グラフィックディスプレイの端から前記グラフィックディスプレイの主部に入るように移動するようにアニメ化される第1のスライドするグラフィック要素」に相当する。

キ 引用発明の「画像表示ディスプレイ803の表示画面全体を使って写真画像等が表示されている状態」における「写真画像等」は、本願発明1の「前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素」に相当し、引用発明の「ツールボックス」は、当該「写真画像等」の上に表示されるものである。

ク 前記カより、引用発明において、「引き出しメニュー」が「引き出しのようにせり出してくる」ように表示する動きは、「入力デバイス107」によるユーザ入力の動きと連動しているといえる。

ケ 前記オ及びカを参酌すると、引用発明において、「引き出しメニュー」を表示する処理と、本願発明1の「前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているものであって、前記ポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別するステップに応答して、前記グラフィックディスプレイの上で、前記グラフィックディスプレイの端から前記グラフィックディスプレイの主部に入るように移動するようにアニメ化される第1のスライドするグラフィック要素を、前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素の上に表示するステップとを備え、前記タッチパッド表面は、前記グラフィックディスプレイの表面とは分離しており、前記第1のスライドするグラフィック要素の動きは前記ユーザ入力の動きと連動する」とは、「前記ユーザ入力の動きを、識別するステップに応答して、前記グラフィックディスプレイの上で、前記グラフィックディスプレイの端から前記グラフィックディスプレイの主部に入るように移動するようにアニメ化される第1のスライドするグラフィック要素を、前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素の上に表示するステップとを備え、前記第1のスライドするグラフィック要素の動きは前記ユーザ入力の動きと連動する」点において共通する。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「コンピューティングデバイスのためのコンピュータによって実行される方法であって、
タッチパッドとグラフィックディスプレイを有するコンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップと、
前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最初の位置を識別するステップと、
前記ユーザ入力の動きを、識別するステップに応答して、前記グラフィックディスプレイの上で、前記グラフィックディスプレイの端から前記グラフィックディスプレイの主部に入るように移動するようにアニメ化される第1のスライドするグラフィック要素を、前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素の上に表示するステップとを備え、前記第1のスライドするグラフィック要素の動きは前記ユーザ入力の動きと連動する、方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は「タッチパッドから離れて配置されたグラフィックディスプレイ」及び「前記タッチパッド表面は、前記グラフィックディスプレイの表面とは分離しており」との構成を備え、すなわち「タッチパッド」と「グラフィックディスプレイ」とは分離して配置されるのに対し、引用発明は、「ディスプレイ105の上面には、タッチパネルセンサ106が設けられており」との構成を備え、すなわち「タッチパネルセンサ106」と「ディスプレイ105」とは一体となったものであり、分離して配置されているとはいえない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別することによって、前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているものであって、前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別するステップ」との構成を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について具体的に特定するものではない点。

<相違点3>
前記相違点2に関連して、「第1のスライドするグラフィック要素を、前記グラフィックディスプレイ上の第1の動かない要素の上に表示するステップ」が、本願発明1は、前記相違点2に係る本願発明1の前記「識別するステップ」との前提となる構成に応じてなされるのに対し、引用発明は、当該前提となる構成に応じてなされることを具体的に特定するものではない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に上記相違点2について検討する。

ア 「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別する」ことによって、「前記ユーザ入力の動き」を「前記タッチパッドの端を外れたところから始まっているもの」として「識別する」ことについて

引用発明は、「入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当て」た状態から「入力デバイス107をタッチパネルセンサ106に接触させたまま離さないで、画像表示ディスプレイ803の表示画面の中央部へ向けてスライドさせる」動きに応じて、「引き出しメニュー」が「引き出しのようにせり出してくる」ように表示するものであることからすれば、「引き出し」を出し入れする動きを模したものと想定される。
よって、そのような作用効果が想定される引用発明において、ユーザ入力を、「入力デバイス107の先端を外装カバー101のフレームの段差部109に突き当て」た状態から開始することに替えて、「前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有」するように「前記タッチパッドの端を外れたところから始」めるように変更することには、動機付けが存在しない。
加えて、引用文献3及び4には、ユーザ入力の速度に基づいて意図する操作がなされたか否かを判断することが記載されているといえるが、「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別する」ことまでは記載されていない。
よって、仮に引用発明に引用文献3又は4に記載された技術事項を適用することができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。

イ 「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部に入ったときに正の速度を有していたことを識別する」ことによって、「前記ユーザ入力の動き」を「前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別する」ことについて

引用発明のように、タッチパネルとディスプレイとが一体となった構成(いわゆるタッチスクリーン)においては、ユーザ入力の動きに応じて「ポインタ」が連動することが一般的であるから、「タッチパネルセンサ106」と「ディスプレイ105」とは一体となった構成を備える引用発明において、「前記ユーザ入力の動き」を「前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別する」ように構成を変更することは直ちには容易とはいえない。
また、引用文献2には、入力パッド(タッチパッド)とPC本体(ディスプレイ)とが分離した構成を前提とするものの、「入力面21aで指50を摺動させ、ポインタ31を移動させて、このポインタ31を選択すべきメニュー指示と重なる位置に一致させ」る必要があるため、本願発明1の「前記ユーザ入力の動き」を「前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別する」構成を備えない。
よって、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用することができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。

よって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献1ないし4には記載されておらず、また、当業者が引用文献1ないし4に記載された発明から容易に想到し得たものでもない。

したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし13、28及び29について
本願発明2ないし13、28及び29は、本願発明1のすべての構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明14について
(1)対比
本願発明14と引用発明(特に、「引き出しメニューを閉じる際、 「引き出しメニュー」が最大表示量で表示されている状態において、検出された座標情報が引き出されたメニューの「表示トリガーエリア」内の場合、引き出しの移動受付待機状態になり、ある定義量以内に入ると、ユーザが表示を消す意図を持っていると見做し、途中でオフになっても引き出しメニュー表示はオフされ、」との構成)とを対比すると、両者は、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 コンピューティングデバイスのためのコンピュータによって実行される方法であって、
コンピューティングデバイスのタッチパッド表面上で、前記タッチパッド表面にわたってドラッグするユーザ入力の動きを受け取るステップと、
前記タッチパッド表面の周辺端部における、前記ユーザ入力の動きについて感知された最後の位置を識別するとともに、前記ユーザ入力の動きを識別するステップと、
前記グラフィックディスプレイ上の動かない要素の上にスライドするグラフィック要素が表示された状態で、前記ユーザ入力の動きを識別するステップに応答して、前記コンピューティングデバイスのグラフィックディスプレイの上で、前記表示された状態の前記スライドするグラフィック要素を、前記動かない要素の上で前記グラフィックディスプレイの主部から前記グラフィックディスプレイの端に移動するように表示するステップとを備える、方法。」

[相違点]
<相違点4>
本願発明14は、「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部を通過したときに正の速度を保つものであり且つ前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド上で始まり前記タッチパッドの端を外れたところで終わるものであると識別し、前記ユーザ入力の動きが」「前記コンピューティングデバイスのグラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものであると識別することによって、前記ユーザ入力の動きを、前記タッチパッド上で始まり前記タッチパッドの端を外れたところで終わっているものとして識別する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について具体的に特定するものではない点。

<相違点5>
前記相違点4に関連して、「前記スライドするグラフィック要素を、前記動かない要素の上で前記グラフィックディスプレイの主部から前記グラフィックディスプレイの端に移動するように表示するステップ」が、本願発明14は、前記相違点4に係る本願発明14の「識別するステップ」との前提となる構成に応じてなされるのに対し、引用発明は、当該前提となる構成に応じてなされることを具体的に特定するものではない点。

<相違点6>
本願発明14は、「前記タッチパッドから離れて配置された前記コンピューティングデバイス」及び「前記タッチパッド表面は、前記グラフィックディスプレイの表面とは分離している」との構成を備え、すなわち「タッチパッド」と「グラフィックディスプレイ」とは分離して配置されるのに対し、引用発明は、「ディスプレイ105の上面には、タッチパネルセンサ106が設けられており」との構成を備え、すなわち「タッチパネルセンサ106」と「ディスプレイ105」とは一体となったものであり、分離して配置されているとはいえない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に上記相違点4について検討する。
「引き出し」を出し入れする動きを模した引用発明において、「前記ユーザ入力の動きが前記タッチパッド表面の周辺端部を通過したときに正の速度を保つ」ことを条件とする動機付けは存在しないし、また、「タッチパネルセンサ106」と「ディスプレイ105」とは一体となった構成を備える引用発明において、「前記ユーザ入力の動き」を「前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動きから区別されるものとして識別する」ように構成を変更することは直ちには容易とはいえない。
また、相違点4に係る本願発明14の構成は、引用文献2ないし4のいずれにも記載されていないから、仮に、引用発明に引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用することができたとしても、相違点4に係る本願発明14の構成には至らない。

したがって、上記相違点5及び6について判断するまでもなく、本願発明14は、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明15ないし20について
本願発明15ないし20は、本願発明14のすべての構成を備えるものであるから、本願発明14と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明21ないし27について
本願発明21は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであり、また、本願発明22ないし27は、本願発明21のすべての構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明30について
本願発明30は、請求項1ないし20、28および29に係る発明を「プログラム」の発明として特定したものであって、本願発明1ないし20、28又は29に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1ないし20、28及び29と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし30に係る発明は、当業者が上記引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。しかしながら、本件補正により補正された請求項1ないし30は、上記相違点2に係る本願発明1の構成又は上記相違点4に係る本願発明14の構成もしくはこれらの構成に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし30は、当業者が上記引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
[理由1]明確性要件違反
本願は、請求項1ないし20及び30の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1及び14に記載の「前記ディスプレイの前記端」は、これより前に記載されていないから、何を指し示すものであるのか明確ではない。
(2)請求項2、20及び22に記載の「前記グラフィックディスプレイ上の対応するポイント」と、被引用請求項である請求項1、14又は21に記載の「ポインタ」との関係が明確でない。
(3)請求項14には、「グラフィカルディスプレイ」と「グラフィックディスプレイ」とが記載されているが、両者は同じものであるのか異なるものであるのか明確でない。

[理由2]サポート要件違反
本願は、請求項2ないし20、22ないし24及び28ないし30の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項14の記載において、「前記ディスプレイの主部から前記ディスプレイの前記端に移動するようにアニメ化されるスライドするグラフィック要素を、前記ディスプレイ上の動かない要素の上に表示する」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項2、20及び22に記載の「前記タッチパッド上で受け取られる前記ユーザの動きを、前記グラフィックディスプレイ上の対応するポイントにマップする」ことは、発明の詳細な説明に記載したものではない。

[理由3]実施可能要件違反
本願は、請求項14ないし30に係る発明に関して、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

発明の詳細な説明には、請求項14及び21の記載において、入力の動きが所定の動きであることを条件としてスライドするグラフィック要素を表示することと、そのように表示されるスライドするグラフィック要素の動きが(すでにタッチパッドの周辺端部に到達した)入力の動きと連動すること、という技術的に矛盾した態様を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載していない。

2 当審拒絶理由についての判断
[理由1](明確性要件違反)について
(1)本件補正前の請求項1及び14に記載されていた「前記ディスプレイの前記端」は、本件補正により「前記ディスプレイの端」に補正された。
(2)令和3年5月19日に提出された意見書第4-5ページにおいて、「補正後の請求項1と14では”前記グラフィックディスプレイ上のポインタの移動を生じさせる前記タッチパッド表面にわたるポインタ移動のユーザ入力の動き”と記載しましたので、これら請求項を引用する請求項2および20における「前記グラフィックディスプレイ上の対応するポイント」は、タッチパッド表面にけるユーザ入力の動きによって移動する“グラフィックディスプレイ上のポインタ”が指し示す点(ポイント)に当たることが明確になった」との釈明がなされた。
(3)本件補正前の請求項14に記載されていた「グラフィカルディスプレイ」は、「グラフィックディスプレイ」に補正された。

[理由2](サポート要件違反)について
(1)本件補正前の請求項14に記載されていた「前記ディスプレイの主部から前記ディスプレイの前記端に移動するようにアニメ化されるスライドするグラフィック要素を、前記ディスプレイ上の動かない要素の上に表示する」は、本件補正により「前記表示された状態の前記スライドするグラフィック要素を、前記動かない要素の上で前記グラフィックディスプレイの主部から前記グラフィックディスプレイの端に移動するように表示す」に補正された。
(2)上記「[理由1](明確性要件違反)について」の(2)を参照のこと。

[理由3](実施可能要件違反)について
本件補正前の請求項14及び21に記載されていた「前記スライドするグラフィック要素の動きは前記ドラッグする入力の動きと連動する」は、本件補正により削除された。

以上のとおりであるから、いずれの拒絶理由も、解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし30は、当業者が引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-15 
出願番号 特願2017-132941(P2017-132941)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 北川 純次
林 毅
発明の名称 画面外の目に見えるオブジェクトの表面化  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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