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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G07D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G07D
管理番号 1375453
審判番号 不服2020-11456  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-18 
確定日 2021-07-16 
事件の表示 特願2015-225508号「貨幣処理装置および貨幣処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開,特開2017- 97406号,請求項の数(10)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成27年11月18日の出願であって,平成31年4月26日付けで拒絶理由が通知され,令和1年7月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年12月19日付けで最後の拒絶理由が通知され,令和2年2月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正されたが,同年5月29日付けの補正の却下の決定により同年2月18日付けの手続補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,同年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされ,同年8月25日付けで手続補正指令(方式)がされ,同年8月28日に手続補正(方式)がされ,令和3年3月4日付けで拒絶理由が通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)され,同年4月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明10」という。)は,令和3年4月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
少なくとも貨幣の出金処理を行う貨幣処理装置であって,
記録媒体に記録されている,前記貨幣処理装置とは別に設けられた貨幣釣銭機に関する情報である釣銭機情報を読み取る読取部と,
貨幣を払い出すための払出手段と,
前記読取部により読み取られた釣銭機情報に基づいて前記貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出すよう前記払出手段を制御する制御部と,
を備え,
前記貨幣処理装置は,少なくとも紙幣の出金処理を行う紙幣処理ユニットおよび少なくとも硬貨の出金処理を行う硬貨処理ユニットを含み,
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが着脱自在に装着されるようになっており,
前記記録媒体は前記収納カセットに設けられており,
釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数および硬貨の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む書込部を更に備え,
前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第1の釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,装着されている前記収納カセットに釣銭補充金に係る紙幣が収納される際に前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報と,釣銭補充金に係る紙幣が収納されている前記収納カセットが取り外された後,再び前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第2の釣銭機情報とに基づいて,釣銭補充金に係る紙幣が収納された後に取り外された前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される,貨幣処理装置。
【請求項2】
前記収納カセットは前記紙幣処理ユニットに装着されるようになっており,前記収納カセットには貨幣のうち紙幣のみが収納されるようになっている,請求項1記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記貨幣処理装置は,包装硬貨を収納する包装硬貨収納ユニットを含み,
釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての包装硬貨の金種毎の本数に係る情報も前記書込部により前記記録媒体に書き込まれる,請求項1記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記第1の釣銭機情報および前記第2の釣銭機情報は,包装硬貨の在高を含む前記貨幣釣銭機の在高である,請求項1乃至3のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記貨幣釣銭機における貨幣の金種毎の残置設定枚数を記憶する記憶部を更に備え,
前記第1の釣銭機情報および前記第2の釣銭機情報は,包装硬貨の在高を含む前記貨幣釣銭機の在高であり,
前記記憶部に記憶されている貨幣の金種毎の残置設定枚数から前記読取部により読み取られた前記貨幣釣銭機の在高に係る貨幣の金種毎の枚数を差し引くことにより,前記払出手段により払い出されるべき貨幣の金種毎の枚数が算出される,請求項1記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
包装硬貨を収納する包装硬貨収納部と,
前記包装硬貨収納部を筐体の内部にロックするロック機構と,
を更に備えており,
前記制御部は,前記払出手段により払い出されるべき貨幣に包装硬貨が含まれる場合には前記包装硬貨収納部のロックを解除するよう前記ロック機構を制御する,請求項1乃至5のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記払出手段は,前記貨幣処理装置に装着されている前記収納カセットに貨幣を払い出すようになっている,請求項6記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
筐体の内部から外部に貨幣を投出するための出金口が設けられており,
前記払出手段は,前記出金口を介して前記筐体の外部に貨幣を払い出すようになっている,請求項1乃至5のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記貨幣釣銭機に装着されてから取り外された前記収納カセットの前記記録媒体から読み取られた前記貨幣釣銭機の在高における貨幣の金種毎の枚数から,前記書込部より前記記録媒体に書き込まれた前記釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数,および前記釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する前に前記記録媒体から読み取られた前記貨幣釣銭機の在高における貨幣の金種毎の枚数をそれぞれ差し引くことにより,前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される,請求項1乃至8のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項10】
少なくとも紙幣の出金処理を行う紙幣処理ユニットおよび少なくとも硬貨の出金処理を行う硬貨処理ユニットを含む貨幣処理装置による貨幣処理方法であって,
記録媒体に記録されている,前記貨幣処理装置とは別に設けられた貨幣釣銭機に関する情報である釣銭機情報を読取部により読み取る工程と,
前記読取部により読み取られた釣銭機情報に基づいて前記貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出す工程と,
を備え,
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが着脱自在に装着されるようになっており,
前記記録媒体は前記収納カセットに設けられており,
釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数および硬貨の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む工程を更に備え,
前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第1の釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,装着されている前記収納カセットに釣銭補充金に係る紙幣が収納される際に前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報と,釣銭補充金に係る紙幣が収納されている前記収納カセットが取り外された後,再び前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第2の釣銭機情報に含まれる貨幣釣銭機の在高に係る情報とに基づいて,釣銭補充金に係る紙幣が収納された後に取り外された前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される,貨幣処理方法。」

第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-174062号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,紙幣処理装置に係わり,例えば,店舗のチェックアウトカウンター側に設置された現金精算装置に紙幣を補充し,あるいは現金精算装置から紙幣を回収するための紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から店舗のチェックアウトカウンター側において店員が客との現金(紙幣,硬貨)の受け渡し業務を行うために現金精算装置が使用されている。現金精算装置は,投入された現金を計数して収納し,収納されている現金を釣銭として払い出す機能を有している。一般に,チェックアウトカウンターは,紙幣精算装置(紙幣釣銭機)と,硬貨精算装置(硬貨釣銭機)と,POS(Point Of Sales)レジスタ等の金銭登録機とを通信可能に接続したものとして構成される。
【0003】
一方,店舗のバックオフィス側においては,その店舗内に設置された現金精算装置に釣銭準備金等の現金を装填(補充)し,あるいは,現金精算装置の売上金等を回収するために現金出納装置が使用されている。現金出納装置は,現金精算装置から回収された現金を収納(入金)し,現金精算装置へ装填する現金を投出(出金)する機能を有している。現金出納装置には,紙幣出納装置と硬貨出納装置とがある。
【0004】
近年,現金精算装置と現金出納装置との間で現金を搬送する際のセキュリティを確保するため,現金を搬送するためのカセット(以下,「現金搬送カセット」という。)を使用することが提案されている。」
・「【0020】
本実施形態に係る紙幣出納装置が使用されるシステムの一例として,図1に示す現金管理システム1を説明する。
【0021】
図1は,現金管理システム1の構成例を示すブロック図である。現金管理システム1は,店員が顧客から受け取った現金,および,店員が顧客へ支払う現金を処理および管理するシステムである。
【0022】
現金管理システム1は,店舗内のチェックアウトエリアに設けられており,店員が顧客との間でやりとりした現金を入出金するチェックアウトカウンター10と,チェックアウトカウンター10の現金および商品を管理するバックオフィス20と,チェックアウトカウンター10とバックオフィス20との間において現金を搬送する現金搬送カセット30とから構成されている。
【0023】
チェックアウトカウンター10は,現金を入金および出金することにより顧客との精算処理を行う現金精算装置11と,レジスタ14とを含む。レジスタ14は,例えば,店員によって操作されるPOSレジスタ,または顧客によって操作されるセルフチェックアウト用レジスタである。図1では,チェックアウトエリアは,3つのチェックアウトカウンター10を含む。
【0024】
現金精算装置11は,レジスタ14を介して店員によって操作され,店員と顧客との間の精算処理に用いられる。例えば,現金精算装置11は,顧客が支払った代金を入金し,あるいは,顧客へ支払う釣銭を出金する。現金精算装置11は,レジスタ14と通信可能に接続されており,対応付けられたレジスタ14と連携して精算処理を行う。なお,現金精算装置11は,レジスタ14と一体に構成されていてもよい。
【0025】
バックオフィス20は,現金出納装置21と,現金管理装置25と,POS管理装置26とを含む。現金出納装置21は,現金精算装置11と通信可能に接続されており,例えば,現金精算装置11へ装填するための釣銭準備金を出金し,あるいは,現金精算装置11から回収した売上金を入金する。現金管理装置25は,LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して現金精算装置11および現金出納装置21と通信可能に接続されている。現金管理装置25は,現金精算装置11および現金出納装置21に収納されている現金を管理する。例えば,現金管理装置25は,現金精算装置11のそれぞれにおいて精算処理された現金,並びに,現金精算装置11と現金出納装置21との間で授受された現金を管理する。また,現金管理装置25は,現金精算装置11または現金出納装置21に現金搬送カセット30が装着されているか否かを監視してもよい。POS管理装置26は商品の流れを管理する。尚,商品の流れについては本発明と直接関連しないので,ここではPOS管理装置26に関する詳細な説明を省略する。
【0026】
現金搬送カセット30は,現金精算装置11および現金出納装置21に着脱可能に構成されている。この現金搬送カセット30は,現金精算装置11または現金出納装置21に装着されているときには現金精算装置11または現金出納装置21との間で現金を授受することができる。一方,現金搬送カセット30は,現金精算装置11および現金出納装置21から離脱しているときには内部の現金を取出せないように収納している。
【0027】
店員は,現金搬送カセット30を用いて現金精算装置11と現金出納装置21との間における現金の搬送を行う。例えば,釣銭準備金の装填時,店員は,現金出納装置21から出金して現金精算装置11に装填する現金を,現金搬送カセット30を用いて現金出納装置21から現金精算装置11に搬送する。また,売上金の回収時,店員は,現金精算装置11から回収して現金出納装置21に入金する現金を,現金搬送カセット30を用いて現金精算装置11から現金出納装置21に搬送する。店員は,現金の搬送時に現金搬送カセット30内の現金に触れることができないので,セキュリティ上安全な状態で現金を搬送することができる。
【0028】
なお,現金搬送カセット30は,紙幣および硬貨のいずれか一方を収納および繰り出しできるように構成されていてもよく,両方を収納および繰り出しできるように構成されていてもよい。
【0029】
紙幣用の現金搬送カセット30(紙幣カセット30a)は,紙幣を積み重ねて収納するスタック式カセットであってもよく,あるいは,紙幣を一枚ずつ1本あるいは複数本のテープ間に挟み込んだ状態で該テープを紙幣とともに巻き取るテープリール式カセットであってもよい。硬貨用の現金搬送カセット30は,金種混合の状態で硬貨を収納するカセットでよい。
【0030】
現金搬送カセット30は,該現金搬送カセット30を特定するための識別情報(カセットID)や,収納する現金に関する情報(金種別の数など)を記憶する記憶部を備える。現金搬送カセット30がテープリール式の場合,記憶部は,現金搬送カセット30が収納する現金の収納順と,各現金の金種・正損等に関する情報とを記憶する。
【0031】
図2は,現金出納装置21の一例の外観を示す図である。現金出納装置21は,紙幣出納装置22および硬貨出納装置23を含む。紙幣出納装置22は,紙幣精算装置12へ装填する紙幣を出金し,紙幣精算装置12から回収した紙幣を入金する。硬貨出納装置23は,硬貨精算装置13へ装填する硬貨を出金し,硬貨精算装置13から回収した硬貨を入金する。
【0032】
次に,紙幣処理装置としての紙幣出納装置22の構成について説明する。紙幣出納装置22は,筐体200aと,入金部210aと,出金部220aと,操作表示部295aとを備え,あとで詳しく説明するように紙幣操出ユニットから紙幣を受け入れ可能なように構成されている。ここで,紙幣操出ユニットとは,紙幣を繰出可能なユニットをいい,紙幣出納装置22の外部から紙幣を受け入れて1枚ずつ繰出す紙幣受入ユニット201aと,紙幣を内部に収容し,収納した紙幣を繰出す紙幣カセット30aとを含む。
【0033】
図4(A)および(B)に示すように,入金部210aは,搬送部230aの端部231aに設けられており,紙幣操出ユニットが装着(接続)可能なように構成されている。紙幣操出ユニットが入金部210aに装着された状態において,紙幣操出ユニットから繰出された紙幣は搬送部230aの端部231aを介して紙幣出納装置22内に搬送されることができる。このように,入金部210aは,紙幣操出ユニットから繰出された紙幣が搬送部230aの端部231aから機内に搬送されるように,紙幣操出ユニットと搬送部230aとを接続する。このため,入金部210aを紙幣操出ユニット接続部と呼ぶこともできる。例えば,店員が紙幣出納装置22へ紙幣を手動で入金する場合には,紙幣受入ユニット201aが入金部210aに装着される。一方,店員が紙幣出納装置22へ紙幣カセット30aを用いて紙幣を入金(以下,「カセット入金」ともいう。)する場合には,紙幣受入ユニット201aに代えて,紙幣カセット30aが入金部210aに装着される(図4(B)参照)。このように,紙幣出納装置22は,紙幣受入ユニット201aに代えて,入金部210aに紙幣カセット30aを着脱することができるように構成されている。」
・「【0037】
図3は,紙幣出納装置22の構成例を示すブロック図である。紙幣出納装置22は,前述の入金部210a,出金部220aおよび操作表示部295aのほか,搬送部230aと,識別部240aと,収納部250aと,回収部255aと,リード・ライト部257aと,ユニット決定部260aと,機外リジェクト部222aと,機内リジェクト部224aと,メモリ270aと,通信部280aと,制御部290aとをさらに備えている。
【0038】
搬送部230aは,紙幣操出ユニットが接続され,機内に受け入れた紙幣を搬送する。より詳しくは,搬送部230aは,入金部210aに装着された紙幣受入ユニット201aに投入された紙幣を収納部250aへ搬送し,あるいは,出金部220aから投出する紙幣を収納部250aから搬送する。また,搬送部230aは,収納部250aから紙幣カセット30aへ紙幣を搬送し,あるいは,紙幣カセット30aから収納部250aへ紙幣を搬送できるように構成されている。図4に示すように,搬送部230aおよび所定の部分にはフォトセンサ等のセンサ242aが設けられており,センサ242aは紙幣の有無や紙幣の通過を検知する。
【0039】
識別部240aは,例えば,磁気センサ,蛍光センサ,金属スレッドセンサ,厚みセンサ,イメージセンサ等のセンサを備え,記憶している各紙幣の特徴とセンサの出力とを比較して,搬送部230aによって搬送される紙幣が受付可能な紙幣か受付できないリジェクト紙幣であるかを識別する。ここで,リジェクト紙幣は,例えば,紙幣以外の紙葉類,受付対象外の外国紙幣,破れや汚れのために識別できない紙幣である。また,搬送の際に,重なって搬送される紙幣や,紙幣同士の間隔が所定の間隔よりも狭い紙幣もリジェクト紙幣として扱われる。
【0040】
さらに,識別部240aは,リジェクト紙幣ではない紙幣について,その金種,真偽,正損(正券/損券),新旧等を識別するように構成されている。ここで,正券および損券はいずれも金種の識別が可能な紙幣であるが,正券は流通に適した状態の紙幣をいい,損券は破れや汚れにより流通に適さない紙幣をいう。
【0041】
収納部250aは,識別部240aにおいて識別された紙幣を金種ごとに収納するとともに,収納した紙幣を1枚ずつ繰出す。この収納部250aは,スタック式収納部でもよく,あるいは,テープリール式収納部であってもよい。回収部255aは,紙幣出納装置22の収納部250aに収納された紙幣を回収する際に用いられる。回収部255aはボックス,袋などで構成される。
【0042】
リード・ライト部257aは,紙幣カセット30aに設けられた記憶部と有線または無線で通信可能に接続され,この記憶部に格納された情報を読み取り,あるいは,記憶部へ情報を書き込むことができるように構成されている。なお,この紙幣カセット30aの有する記憶部は,該紙幣カセット30aを特定するためのカセットID情報を少なくとも記憶し,必要に応じて,紙幣カセット30aに収容されている紙幣の金種や数量等の収納紙幣に関する情報を格納してもよい。また,リード・ライト部257aに代って通信部280aが,LAN等の通信回線を介して,紙幣カセット30aに紙幣を収納した紙幣精算装置12等から,カセットID以外の情報(収容紙幣の金種や数量等)を受信してもよい。」
・「【0062】
(入金処理) 入金処理は,紙幣を紙幣出納装置22に入金する処理であり,例えば,紙幣精算装置12から回収された紙幣を紙幣出納装置22に入金する際に行われる。紙幣の入金は,紙幣受入ユニット201a及び紙幣カセット30aのいずれを用いても可能である。」
・「【0069】
上記のように,紙幣出納装置22は,紙幣受入ユニット201aから繰出された紙幣か紙幣カセット30aから繰出された紙幣かによって,機内に受け入れられたリジェクト紙幣の搬送先を変える。より具体的には,紙幣受入ユニット201aから繰出された紙幣の場合には,制御部290aは,リジェクト紙幣を機外リジェクト部222aに搬送するように搬送部230aを制御する。一方,紙幣カセット30aから繰出された紙幣の場合には,制御部290aはリジェクト紙幣を機内リジェクト部224aに搬送するように搬送部230aを制御する。なお,入金処理の内容はメモリ270aに記憶される。」
・「【0071】
(出金処理) 出金処理は,紙幣出納装置22から紙幣を出金する処理であり,例えば,紙幣精算装置12に紙幣を補充する際に行われる。紙幣の出金は,紙幣受入ユニット201a及び紙幣カセット30aのいずれを用いても可能である。図6(A)および図6(B)はそれぞれ,入金部210aに紙幣受入ユニット201aおよび紙幣カセット30aが装着されている場合における,出金される紙幣の搬送経路を示している(経路aおよび経路b)。」
・「【0073】
紙幣カセット30aに搬送された紙幣は紙幣カセット30aに収納され,紙幣カセット30aの記憶部は収納する紙幣の金種別枚数を記憶する。紙幣カセット30aがテープリール式の場合には,記憶部は紙幣の収納順と,各紙幣の金種・正損等の情報を記憶する。」
・「【0114】
図11(A)及び(B)に示すように,紙幣受入ユニット201aに代えて紙幣カセット30aを装着するときは,紙幣受入ユニット201aを紙幣出納装置22から取り外して退避させる。このように,第3の実施形態では,紙幣受入ユニット201aを紙幣出納装置22から取り外すことにより,紙幣カセット30aを装着するスペースを設ける。
【0115】
紙幣受入ユニット201aを退避した後,図11(B)からわかるように,紙幣カセット30aを入金部210aに装着する。これにより,紙幣カセット30aは搬送部230aと接続され,紙幣カセット30aから繰出された紙幣を搬送部230aにより機内に搬送することができる。」
・図1?図3,図4(B)には,以下の内容が示されている。
【図1】



【図3】

【図4】


これらの記載事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「顧客が支払った代金を入金し,あるいは,顧客へ支払う釣銭を出金する,現金精算装置11と,
現金精算装置11へ装填するための釣銭準備金を出金し,あるいは,現金精算装置11から回収した売上金を入金する,現金出納装置21であって,
現金搬送カセット30は,現金精算装置11および現金出納装置21に着脱可能に構成され,現金搬送カセット30は,現金精算装置11または現金出納装置21に装着されているときには現金精算装置11または現金出納装置21との間で現金を授受することができ,
店員は,現金搬送カセット30を用いて現金精算装置11と現金出納装置21との間における現金の搬送を行い,釣銭準備金の装填時,店員は,現金出納装置21から出金して現金精算装置11に装填する現金を,現金搬送カセット30を用いて現金出納装置21から現金精算装置11に搬送し,売上金の回収時,店員は,現金精算装置11から回収して現金出納装置21に入金する現金を,現金搬送カセット30を用いて現金精算装置11から現金出納装置21に搬送し,
現金搬送カセット30は,紙幣および硬貨のいずれか一方を収納および繰り出しできるように構成され,
現金搬送カセット30は,収納する現金に関する情報(金種別の数など)を記憶する記憶部を備え,紙幣用の現金搬送カセット30は紙幣カセット30aであり,
現金出納装置21は,紙幣出納装置22および硬貨出納装置23を含み,紙幣出納装置22は,紙幣精算装置12へ装填する紙幣を出金し,紙幣精算装置12から回収した紙幣を入金し,硬貨出納装置23は,硬貨精算装置13へ装填する硬貨を出金し,硬貨精算装置13から回収した硬貨を入金し,
紙幣出納装置22は,紙幣操出ユニットから紙幣を受け入れ可能なように構成され,紙幣操出ユニットとは,紙幣を繰出可能なユニットをいい,紙幣出納装置22の外部から紙幣を受け入れて1枚ずつ繰出す紙幣受入ユニット201aと,紙幣を内部に収容し,収納した紙幣を繰出す紙幣カセット30aとを含み,
入金部210aは,紙幣操出ユニットから繰出された紙幣が搬送部230aの端部231aから機内に搬送されるように,紙幣操出ユニットと搬送部230aとを接続し,
店員が紙幣出納装置22へ紙幣カセット30aを用いて紙幣を入金する場合には,紙幣受入ユニット201aに代えて,紙幣カセット30aが入金部210aに装着され,紙幣出納装置22は,入金部210aに紙幣カセット30aを着脱することができ,
紙幣出納装置22は,入金部210a,搬送部230a,収納部250aと,リード・ライト部257aと,メモリ270aと,制御部290aとを備え,リード・ライト部257aは,紙幣カセット30aに設けられた記憶部と通信可能に接続され,この記憶部に格納された情報を読み取り,あるいは,記憶部へ情報を書き込むことができるように構成され,
搬送部230aは,収納部250aから紙幣カセット30aへ紙幣を搬送し,あるいは,紙幣カセット30aから収納部250aへ紙幣を搬送でき,
入金処理は,紙幣精算装置12から回収された紙幣を紙幣出納装置22に入金する際に行われ,紙幣の入金は,紙幣カセット30aを用いても可能であり,入金処理の内容はメモリ270aに記憶され,
出金処理は,紙幣精算装置12に紙幣を補充する際に行われ,紙幣の出金は,紙幣カセット30aを用いても可能であり,
紙幣カセット30aに搬送された紙幣は紙幣カセット30aに収納され,紙幣カセット30aの記憶部は収納する紙幣の金種別枚数を記憶する,
現金出納装置21。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015-92326号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,紙幣や硬貨等の貨幣の処理を行う貨幣処理装置,貨幣処理方法および貨幣処理システムに関する。」
・「【0026】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図11は,本実施の形態による売上入金機(貨幣処理装置)およびこの売上入金機を備えた貨幣処理システムを示す図である。このうち,図1は,本実施の形態による売上入金機が設置された店舗の構成の概略を示す概略構成図であり,図2は,図1に示す店舗のフロント領域の精算所に設置されたレジユニットにおける硬貨釣銭機,紙幣釣銭機およびPOSレジスタの構成を示す斜視図である。また,図3は,図2に示すレジユニットの内部構成の概略を示す概略構成図であり,図4は,図2に示すレジユニットの機能ブロック図である。また,図5は,図1に示す店舗のバックヤード領域に設置された売上入金機の構成を示す斜視図であり,図6は,図5に示す売上入金機の内部構成を示す構成図である。また,図7は,図5に示す売上入金機に設けられたカセット解錠機構の構成を示す斜視図であり,図8は,図2に示すレジユニットの紙幣釣銭機の筐体の内部から取り出された紙幣回収カセットの構成を示す斜視図であり,図9(a)?(d)は,図7に示すカセット解錠機構により紙幣回収カセットの解錠を行う動作を順に示す斜視図である。また,図10は,図5に示す売上入金機の機能ブロック図である。また,図11は,図2に示すレジユニットおよび図5に示す売上入金機からなる貨幣処理システムの動作を示すフローチャートである。」
・「【0044】
紙幣回収カセット207は筐体210の前面から引き出すことにより当該筐体210の外部に取り出すことができるようになっている。このような紙幣回収カセット207の構成の詳細を図8に示す。図8に示すように,紙幣回収カセット207の底面にはICタグ207cが設けられており,このICタグ207cに様々な情報(例えば,レジの識別番号であるレジ番号,レジが設置された売り場名,店舗名,レジの担当者の識別番号,レジにおける売上金額,硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高,売上日付,売上回収データ(具体的には,紙幣回収カセット207に収納されている紙幣の金額や金種毎の枚数),売上回収日時(具体的には,操作者によりPOSレジスタ300に対して回収処理の指令が与えられた日時)等)を記憶させることができるようになっている。また,紙幣回収カセット207にはロック部(図示せず)が設けられており,紙幣回収カセット207が筐体210の外部に取り出されたときに,ロック部が当該紙幣回収カセット207のロックを行うことにより,操作者はこの紙幣回収カセット207の内部から紙幣を取り出すことができないようになっている。このようなロック部によりロックされた紙幣回収カセット207は,レジ担当者によって当該紙幣回収カセット207がバックヤード領域20に運搬された後,このバックヤード領域20に設置された売上入金機22のカセット解錠機構600(後述)によりロック部のロックが解錠されるようになっている。カセット解錠機構600による紙幣回収カセット207のロック部のロックの解錠方法の詳細については後述する。」
・「【0092】
また,本実施の形態の売上入金機22においては,前述したように,ICタグ207cにより保持される情報は,レジ担当者の識別番号,レジにおける売上金額およびレジに設置された硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高のうち少なくとも一つのものを更に含んでいてもよい。この場合には,レジユニット18のPOSレジスタ300と売上入金機22とを通信可能に接続しなくても,レジユニット18における上述の様々な情報を売上入金機22は自動的に取得することができるようになる。また,このような貨幣の処理方法では,レジ担当者の識別番号,レジにおける売上金額およびレジに設置された硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高等の情報をレジ担当者が手入力で売上入金機22に入力する必要がなくなり,入力間違いの発生を防止して現金管理の厳正化を図ることができるようになる。」
・「【0101】
また,バックヤード領域20に売上入金機22を設置する代わりに,貨幣の入金処理および出金処理を行う入出金機を設置し,レジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200で用いられる釣銭準備金としての貨幣がこの入出金機から出金されるようになっていてもよい。この場合には,紙幣回収カセット207に設けられたICタグ207cに硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高を書き込み,バックヤード領域20に設置された入出金機のICリーダ(図示せず)によりこのICタグ207cの情報を読み取ることにより,入出金機において硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額を取得することができるようになるため,当該入出金機においてこの不足金額分の貨幣を釣銭準備金として自動的に出金させることができるようになる。」
・図1,図2,図5には,以下の内容が示されている。




これらの記載事項からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
「店舗のフロント領域の精算所に設置されたレジユニット18における硬貨釣銭機100,紙幣釣銭機200およびPOSレジスタと,店舗のバックヤード領域に設置された,貨幣の入金処理および出金処理を行う入出金機と,レジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200で用いられる釣銭準備金としての貨幣がこの入出金機から出金されるようになっており,紙幣回収カセット207の底面にはICタグ207cが設けられており,このICタグ207cに様々な情報(硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高,紙幣回収カセット207に収納されている紙幣の金額や金種毎の枚数等)を記憶させることができ,紙幣回収カセット207に設けられたICタグ207cに硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高を書き込み,入出金機のICリーダによりこのICタグ207cの情報を読み取ることにより,入出金機において硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額を取得することができるようになるため,当該入出金機においてこの不足金額分の貨幣を釣銭準備金として自動的に出金させることができる,レジユニット18と入出金機からなる貨幣処理システム。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2014-170421号公報)には,次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
この発明は,商取引に基づいて貨幣の入出金を行なう釣銭機等の貨幣処理機を有する貨幣管理システム及び貨幣管理方法に関する。」
・「【0035】
次に,売上回収を行う場合について説明する。売上回収を行う場合には,まず,店員は,図1(b)に示すように,POS端末20に対して売上回収操作を行う(1)。POS端末20は,売上回収操作を受け付けると,釣銭機10に対して売上回収操作の受付を通知する。
【0036】
釣銭機10は,売上回収操作の受付を通知されたならば,内部に所在する貨幣を回収カセットに移動させ,回収カセットを取外す(2)。なお,内部に所在する貨幣のうち,紙幣のみを回収カセット70に移動させ,硬貨は硬貨払出口等へ払い出すこととしてもよい。また,貨幣の一部を翌日の釣銭準備金として機内に残置することとしてもよい。
【0037】
釣銭機10は,回収カセット70に移動させた貨幣の金種と,その枚数とを示す回収金データを生成する。この回収金データには,回収する金種及び数の他,釣銭機10が設置されたレジを特定するためのレジIDと,売上回収を行うことを示す処理区分とが含まれる。なお,紙幣のみを回収カセット70に移動させ,硬貨は払い出すこととした場合であっても,回収金データには,紙幣と硬貨の双方について金種及び数を持たせることが好適である。
【0038】
釣銭機10は,生成した回収金データを電子マネー端末30に送信する(3)。電子マネー端末30は,店員により回収カセット70がかざされたならば,回収カセット70に付されたICチップ80に回収金データを書き込む(4)。なお,釣銭補充の場合と同様に,ICカード40を用いてもよい。
【0039】
店員は,回収カセット70を携行し,入出金機50まで移動する。店員が回収カセット70のICチップ80をリーダライタ60にかざすと,リーダライタ60はICチップ80から回収金データを読み取る(5)。また,入出金機50は,回収カセット70から取り出された回収金の入金を受け付ける(6)。ここで,回収カセット70に移動されず,払い出された硬貨がある場合には,硬貨の入金も受け付ける。入出金機50は,回収金データに示された金種及び数と,実際に入金された貨幣の金種及び数とを比較することにより,回収が適正に行われたかを判定することができる。
【0040】
このように,実施例1に係る貨幣管理システムでは,釣銭の補充や売上の回収を行う際に,釣銭機10が入出金される貨幣の金種及び数を示すデータを生成し,ICカード40やICチップ80に書き込む。そして,入出金機50がICカード40やICチップ80から入出金される貨幣の金種及び数を読み取る。このため,店員は,入出金する貨幣の金種や数を確認し,記入し,入力するといった作業を行う必要がなくなり,作業負担が軽減されるとともに,ミスや不正の発生を防止することができる。」
・「【0043】
次に,図1に示した釣銭機10の内部構成について説明する。図3は,図1に示した釣銭機10の内部構成を示すブロック図である。図3に示すように,釣銭機10は,表示操作部11,硬貨処理ユニット12,棒金ドロア13,紙幣処理ユニット14,回収カセット部15,通信部16,記憶部17及び制御部18を有する。
【0044】
表示操作部11は,タッチパネルディスプレイ,インジケータ,ボタン等の入出力装置である。表示操作部11は,金種別の在高等のデータ情報や各種メッセージを表示可能である。
【0045】
硬貨処理ユニット12は,硬貨投入口12aに投入された硬貨を受入れて識別し,金種別に収納するとともに,制御部18から指定された金種及び枚数の硬貨を硬貨払出口12bから払い出す。棒金ドロア13は,硬貨を所定枚数重ねて包装した棒金を金種別に収納するとともに,取出し(出金)可能となっている。紙幣処理ユニット14は,紙幣投入口14aに投入された紙幣を受入れて識別し,金種別に収納するとともに,制御部18から指定された金種及び枚数の紙幣を繰出して紙幣払出口14bから払い出したり,回収カセットへ移動させる。
【0046】
硬貨処理ユニット12,棒金ドロア13及び紙幣処理ユニット14には,開店前に予め釣銭準備金として所定数の貨幣が金種別に収納されている。商品の会計時に顧客が硬貨を支払いに用いたならば,該硬貨は硬貨処理ユニット12に入金処理される。また,商品の会計時に釣銭として硬貨を払い出す場合には,該硬貨は硬貨処理ユニット12から出金処理される。釣銭として払い出すことで硬貨が少なくなり,同一金種の棒金が棒金ドロア13に収納されているならば,棒金ドロア13から棒金を取り出して,包装を解いて硬貨処理ユニット12に入金処理する。
【0047】
硬貨を回収する場合には,回収分の硬貨は硬貨処理ユニット12から出金処理され,容器等に回収される。また,硬貨を補充する場合には,補充分の硬貨が棒金であるならば棒金ドロア13に装填され,補充分の硬貨が棒金でなければ硬貨処理ユニット12に入金処理され,金種別に収納される。」
これらの記載事項からみて,引用文献3には,以下の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
「釣銭機10は,内部に所在する貨幣を回収カセットに移動させ,回収カセットを取外し,貨幣の一部を翌日の釣銭準備金として機内に残置することとしてもよく,釣銭機10は,回収カセット70に移動させた貨幣の金種と,その枚数とを示す回収金データを生成し,この回収金データには,回収する金種及び数が含まれ,回収金データには,紙幣と硬貨の双方について金種及び数を持たせることが好適であり,釣銭の補充や売上の回収を行う際に,釣銭機10が入出金される貨幣の金種及び数を示すデータを生成し,ICカード40やICチップ80に書き込み,入出金機50がICカード40やICチップ80から入出金される貨幣の金種及び数を読み取る,
貨幣管理システム。」

第4.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.本願発明1と引用発明とを対比すると,後者の「現金出納装置21」は前者の「貨幣処理装置」に相当し,以下同様に,「釣銭準備金を出金」することは「出金処理」に,「現金精算装置11」は「貨幣処理装置とは別に設けられた貨幣釣銭機」又は「貨幣釣銭機」に,「紙幣出納装置22」は「紙幣処理ユニット」に,「硬貨出納装置23」は「硬貨処理ユニット」に,「現金搬送カセット30」又は「紙幣カセット30a」は「収納カセット」に,「記憶部」は「記録媒体」に,「リード・ライト部257a」は「読取部」及び「書込部」に,「搬送部230a」は収納部250aから紙幣カセット30aへ紙幣を搬送するものであるから「払出手段」に,「制御部290a」は「制御部」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「現金精算装置11へ装填するための釣銭準備金を出金し,あるいは,現金精算装置11から回収した売上金を入金する,現金出納装置21」は,前者の「少なくとも貨幣の出金処理を行う貨幣処理装置」に相当する。
ウ.後者の「紙幣出納装置22は」,「リード・ライト部257a」「とを備え」,「リード・ライト部257aは,紙幣カセット30aに設けられた記憶部と通信可能に接続され,この記憶部に格納された情報を読み取り,あるいは,記憶部へ情報を書き込むことができるように構成され」ていることは,後者の「釣銭準備金の装填時,店員は,現金出納装置21から出金して現金精算装置11に装填する現金を,現金搬送カセット30を用いて現金出納装置21から現金精算装置11に搬送」すること,及び,「出金処理は,紙幣精算装置12に紙幣を補充する際に行われ,紙幣の出金は,紙幣カセット30aを用いても可能であり,紙幣カセット30aに搬送された紙幣は紙幣カセット30aに収納され,紙幣カセット30aの記憶部は収納する紙幣の金種別枚数を記憶する」ことを踏まえると,前者の「記録媒体に記録されている,前記貨幣処理装置とは別に設けられた貨幣釣銭機に関する情報である釣銭機情報を読み取る読取部と」「を備え」,「釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数および硬貨の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む書込部を更に備え」ることとは,「貨幣処理装置」が「記録媒体に記録されている,情報を読み取る読取部と」「を備え」,「釣銭補充金に係る貨幣を貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数に係る情報を記録媒体に書き込む書込部を更に備え」ることにおいて共通する。
エ.後者の「紙幣出納装置22は,入金部210a,搬送部230a,収納部250aと,リード・ライト部257aと,メモリ270aと,制御部290aとを備え,」「搬送部230aは,収納部250aから紙幣カセット30aへ紙幣を搬送し,あるいは,紙幣カセット30aから収納部250aへ紙幣を搬送でき」ることを制御部290aが行っていること及び上記ウ.を踏まえると,これらの事項と,前者の「貨幣処理装置」が「貨幣を払い出すための払出手段と,前記読取部により読み取られた釣銭機情報に基づいて前記貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出すよう前記払出手段を制御する制御部と,を備え」ることとは,「貨幣処理装置」が「貨幣を払い出すための払出手段と,読取部により読み取られた情報に基づいて貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出すよう払出手段を制御する制御部と,を備え」ることにおいて共通する。
オ.後者の「現金出納装置21は,紙幣出納装置22および硬貨出納装置23を含み,紙幣出納装置22は,紙幣精算装置12へ装填する紙幣を出金し,紙幣精算装置12から回収した紙幣を入金し,硬貨出納装置23は,硬貨精算装置13へ装填する硬貨を出金し,硬貨精算装置13から回収した硬貨を入金」することは,前者の「貨幣処理装置は,少なくとも紙幣の出金処理を行う紙幣処理ユニットおよび少なくとも硬貨の出金処理を行う硬貨処理ユニットを含」むことに相当する。
カ.後者は「現金搬送カセット30は,現金精算装置11および現金出納装置21に着脱可能に構成され,」「現金搬送カセット30は,紙幣および硬貨のいずれか一方を収納および繰り出しできるように構成され,」「現金搬送カセット30は,収納する現金に関する情報(金種別の数など)を記憶する記憶部を備え,紙幣用の現金搬送カセット30は紙幣カセット30aであ」ることを踏まえると,後者の「現金搬送カセット30」又は「紙幣カセット30a」と,「記憶部」は,前者の「貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが着脱自在に装着されるようになっており,記録媒体は前記収納カセットに設けられて」いることに相当する。
キ.そうすると,両者は,
「少なくとも貨幣の出金処理を行う貨幣処理装置であって,
記録媒体に記録されている,情報を読み取る読取部と,
貨幣を払い出すための払出手段と,
前記読取部により読み取られた情報に基づいて貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出すよう前記払出手段を制御する制御部と,
を備え,
前記貨幣処理装置は,少なくとも紙幣の出金処理を行う紙幣処理ユニットおよび少なくとも硬貨の出金処理を行う硬貨処理ユニットを含み,
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが着脱自在に装着されるようになっており,
前記記録媒体は前記収納カセットに設けられており,
釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む書込部を更に備えた,
貨幣処理装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
読取部が読みとる情報に関して,本願発明1では,「前記貨幣処理装置とは別に設けられた貨幣釣銭機に関する情報である釣銭機情報」であるのに対して,引用発明では,「紙幣カセット30a」に「収納する紙幣の金種別枚数」である点。
<相違点2>
釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む書込部に関して,紙幣の金種毎の枚数に係る情報に加えて,本願発明1では,「硬貨の金種毎の枚数」に係る情報も書き込むのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
本願発明1では,「前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第1の釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,装着されている前記収納カセットに釣銭補充金に係る紙幣が収納される際に前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報と,釣銭補充金に係る紙幣が収納されている前記収納カセットが取り外された後,再び前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第2の釣銭機情報とに基づいて,釣銭補充金に係る紙幣が収納された後に取り外された前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
(2)相違点の判断
事案に鑑み,まず,相違点3について検討する。
引用文献2には,硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200(貨幣釣銭機)の在高にかかる情報や紙幣回収カセット207に収納されている紙幣の金額や金種毎の枚数(釣銭補充金)に係る情報を紙幣回収カセット207(収納カセット)のICタグ207c(記憶媒体)に記憶させることについての記載がされ,引用文献3には,釣銭の補充や売上の回収を行う際に,釣銭機10(貨幣釣銭機)が入出金される貨幣の金種及び数を示すデータを生成し,入出金機50(貨幣処理装置)が入出金される貨幣の金種及び数を読み取ることが記載されているといえる。
しかしながら,上記相違点3に係る本願発明1の構成である「前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第1の釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,装着されている前記収納カセットに釣銭補充金に係る紙幣が収納される際に前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報と,釣銭補充金に係る紙幣が収納されている前記収納カセットが取り外された後,再び前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第2の釣銭機情報とに基づいて,釣銭補充金に係る紙幣が収納された後に取り外された前記収納カセットが貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」という構成(以下「構成α」という。)は,各引用文献(引用文献2,引用文献3)のいずれにも記載されておらず,この構成αにより,「店員等が手管理によって上記の期間における売上金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出する必要がなくなり,売上金に違算が発生してしまうことを防ぐことができる」という格別の作用効果を奏するものである。
そうすると,上記相違点1,2については検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明,引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,原査定において,請求項6-8について引用した引用文献4(特開2013-105198号公報)にも,上記構成αは記載されていない。

2.本願発明2?9について
本願発明2?9は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定して発明を特定するものであるから,本願発明2?5については,本願発明1と同じ理由により,引用発明,引用文献2に記載された事項,及び,引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではなく,本願発明6?9については,引用発明,引用文献2に記載された事項,引用文献3に記載された事項,及び,引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。

3.本願発明10について
本願発明10は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「構成α」に対応する「構成α’」(「前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第1の釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,装着されている前記収納カセットに釣銭補充金に係る紙幣が収納される際に前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報と,釣銭補充金に係る紙幣が収納されている前記収納カセットが取り外された後,再び前記収納カセットが装着された際に前記読取部により読み取られた第2の釣銭機情報に含まれる貨幣釣銭機の在高に係る情報とに基づいて,釣銭補充金に係る紙幣が収納された後に取り外された前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」)を備えるものであり,「構成α’」は「構成α」の下位概念に相当する構成であるから,本願発明10は,本願発明1と同様の理由により,引用発明,引用文献2に記載された事項引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1.原査定の概要
1)(新規事項)令和 1年 7月 4日付け手続補正書でした補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2)(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1について
1.請求項3を独立形式項として加入する補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内においてしたものではない。
請求項3に係る発明は独立形式項として記載されているので,その貨幣処理装置には包装硬貨収納ユニットのみを含み,記憶媒体に記憶された釣銭機情報を読み出さないものを包含する。
一方,本願の願書に最初に添付した明細書及び図面により開示された実施例における貨幣入出金機は,紙幣処理ユニット,硬貨処理ユニット及び包装硬貨収納ユニットが収容されたもの([0020],[0025],図1-2)として記載されており,硬貨処理ユニットで扱うバラの硬貨や紙幣はカセットにより運搬されるのに対し,包装硬貨は別の収納ケースに収納して運搬される([0076])ものとして記載されている。カセットに設けられた記憶媒体から釣銭機情報を読み取ることで在高を管理する([0075]-[0076])ことで[0006]に記載された課題を解決するものであることを勘案すると,本願の願書に最初に添付した明細書及び図面においては包装硬貨収納ユニットのみを含み,記憶媒体に記憶された釣銭機情報を読み出さない貨幣処理装置は記載されていないものと認められる。本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲には,請求項1及び9に記載されている様に記録媒体に記録されている釣銭機情報を読み出すことが必須の要件として記載されており,これを含まないものは記載されていない。
2.請求項1に対して「釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての紙幣の金種毎の枚数および硬貨の金種毎の枚数に係る情報を前記記録媒体に書き込む書込部を更に備えた」ことを加入する補正をしたため,請求項9に係る発明における貨幣処理装置は,補正前の請求項8で規定された「前記記録媒体に情報を書き込む書込部」と上述した請求項1に加入された書込部とをともに有するものとなった。このことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されていない。
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲には,書込部は払出手段により貨幣を払い出している間に異常が発生した場合に,払出手段により払い出すことができなかった貨幣の金種毎の枚数に係る情報を記録媒体に書き込むためのもの(請求項8)のみが記載されており,複数の書込部を有することは記載されていない。
本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された貨幣入出金機100にはカセット装着部126に書込部128を設ける([0028],図6)ことが記載されているが,複数の書込部を設けることは記載されていない。なお,書込部228は貨幣釣銭機200のカセット装着部226に設けられたもの([0050],図7-8)であって,貨幣入出金機100に設けられたものではないことに留意されたい。

●理由2について
・請求項 1-2,4,5
・引用文献等 1-3

・請求項 6-8
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2012-174062号公報
2.特開2015-92326号公報
3.特開2014-170421号公報
4.特開2013-105198号公報

2.原査定についての判断
(1)理由1(新規事項の追加)について
ア.令和1年7月4日付け手続補正において独立請求項として記載されていた請求項3を,本願発明3では補正後の本願発明1に従属するものとなるよう補正した。この補正により,包装硬貨収納ユニットのみを含むものではなくなったため,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,新規事項を追加するものではなくなった。
イ.さらに,令和1年7月4日付け手続補正における請求項9の記載内容を変更する補正を行い,「前記記録媒体に情報を書き込む書込部をさらに備え,」という構成を削除し,貨幣処理装置により,貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出するための構成をより明確に記載にするため,具体的には,補正後の本願発明9として,「前記貨幣釣銭機に装着されてから取り外された前記収納カセットの前記記録媒体から読み取られた前記貨幣釣銭機の在高における貨幣の金種毎の枚数から,前記書込部より前記記録媒体に書き込まれた前記釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数,および前記釣銭補充金に係る貨幣を貨幣処理装置から出金する前に前記記録媒体から読み取られた前記貨幣釣銭機の在高における貨幣の金種毎の枚数をそれぞれ差し引くことにより,前記貨幣釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」ようになっていることを限定した。
当該補正事項は,願書に最初に添付した明細書の段落【0087】の「・・・貨幣入出金機100において,カセット装着部126に設けられた読取部129によって,収納カセット300に設けられた記録媒体304に記録されている情報が読み取られる(STEP21)。そして,売上金管理手段109は,STEP7およびSTEP21に示す工程においてそれぞれ読取部129により記録媒体304から読み取られた貨幣釣銭機200の在高に係る情報と,STEP10に示す工程において書込部128により記録媒体304に書き込んだ釣銭補充金に係る情報とに基づいて,STEP13に示す工程において収納カセット300が貨幣釣銭機200に装着されてからSTEP18に示す工程において当該収納カセット300が貨幣釣銭機200から取り外されるまでの間に貨幣釣銭機200に入金された売上金に係る貨幣の情報を管理するようになっている(STEP22)。具体的には,図15に示すように,STEP21に示す工程において2回目に記録媒体304から読み取られた貨幣釣銭機200の在高における貨幣の金種毎の枚数から,STEP10に示す工程において書込部128により記録媒体304に書き込んだ釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数,およびSTEP7に示す工程において1回目に記録媒体304から読み取られた貨幣釣銭機200の在高における貨幣の金種毎の枚数をそれぞれ差し引くことにより,貨幣釣銭機200に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出されるようになる。」(下線部は当審が付与した。)の下線部の記載の事項や図13?15に記載の事項から導き出される技術的事項であるから,当該補正は,当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,新規事項を追加するものではないといえる。
(2)理由2(進歩性)について
本願発明1,10は,それぞれ構成αを有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1?5,10については,引用発明,引用文献2に記載された事項,及び,引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではなく,本願発明6?9については,引用発明,引用文献2に記載された事項,引用文献3に記載された事項,及び,引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
「本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1の「前記読取部により読み取られた釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報に基づいて,前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」という記載の「前記読取部により読み取られた釣銭機情報」と,同じく請求項1の「前記読取部により読み取られた釣銭機情報に基づいて前記貨幣釣銭機に補充されるべき貨幣を払い出すよう前記払出手段を制御する制御部」の「前記読取部により読み取られた釣銭機情報」との異同が判然とせず,両者が同じ「釣銭機情報」であるとすると,上記「前記読取部により読み取られた釣銭機情報に含まれる前記貨幣釣銭機の在高に係る情報と,前記書込部で書き込まれた前記釣銭補充金に係る情報に基づいて,前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」の「前記収納カセットが前記貨幣釣銭機に装着されて当該貨幣釣銭機に前記釣銭補充金に係る貨幣が入金されてから取り外されるまでの間において前記釣銭機に入金された売上金に係る貨幣の金種毎の枚数が算出される」こと(以下「構成A」という。)が達成できないものと認められるから,請求項1の上記記載は明確でない。
補足すると,構成Aを達成するためには,明細書の段落【0087】の少なくとも「売上金管理手段109は,STEP7およびSTEP21に示す工程においてそれぞれ読取部129により記録媒体304から読み取られた貨幣釣銭機200の残高に係る情報」に基づく必要があるが,請求項1の上記記載では,STEP7およびSTEP21の両工程を含むものとは解せないため,上記構成Aが達成できるものとは認められない。
よって,請求項1の上記記載は明確でない。
また,請求項10の記載も同様の理由により明確でない。
2.請求項3は,請求項1または2を引用しており,請求項2では,「前記収納カセットは」「紙幣のみが収容される」ものである。
そうすると,請求項2を引用する請求項3において,「釣銭補充金に係る貨幣を前記貨幣処理装置から出金する際に,釣銭補充金としての包装硬貨の金種毎の本数に係る情報も前記書込部により前記記録媒体に書き込まれる」ことの技術的意義が不明である。
よって,請求項2を引用する請求項3の記載は明確でない。
3.請求項4は,請求項1乃至3を引用しており,請求項5は,請求項4を引用するものであるところ,請求項2では,「前記収納カセットは」「紙幣のみが収容される」ことを特定し,請求項4では,「前記釣銭機情報は,包装硬貨の在高を含む前記貨幣釣銭機の在高である」ことを特定し,請求項5では,「前記記憶部に記憶されている貨幣の金種毎の残置設定枚数から前記読取部により読み取られた前記貨幣釣銭機の在高に係る貨幣の金種毎の枚数を差し引くことにより,前
記払出手段により払い出されるべき貨幣の金種毎の枚数が算出される」ことを特定している。
そうすると,請求項2を引用する請求項4をさらに引用する請求項5において,「前記収納カセットは」「紙幣のみが収容される」ものであるとすると,「前記釣銭機情報は,包装硬貨の在高を含む前記貨幣釣銭機の在高であ」って,「前記記憶部に記憶されている貨幣の金種毎の残置設定枚数から前記読取部により読み取られた前記貨幣釣銭機の在高に係る貨幣の金種毎の枚数を差し引くことにより,前記払出手段により払い出されるべき貨幣の金種毎の枚数が算出される」ことの技術的な意義が不明である。
よって,請求項2を引用する請求項4をさらに引用する請求項5の記載は,明確でない。」

2.判断
(1)上記1.について
令和3年4月28日付けの補正において,上記構成αと補正された結果,「釣銭機情報」に関する構成は明確になったから,この拒絶理由は解消した。
(2)上記2.について
令和3年4月28日付けの補正において,請求項3は請求項1のみを引用し,請求項2を引用しないものとなったため,この拒絶理由は解消した。
(3)上記3.について
令和3年4月28日付けの補正において,請求項5は請求項1のみを引用し,請求項2を引用しないものとなったため,この拒絶理由は解消した。

第7.むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-29 
出願番号 特願2015-225508(P2015-225508)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G07D)
P 1 8・ 121- WY (G07D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 藤井 昇
出口 昌哉
発明の名称 貨幣処理装置および貨幣処理方法  
代理人 加島 広基  
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