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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M
管理番号 1375476
審判番号 不服2020-12304  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-02 
確定日 2021-06-25 
事件の表示 特願2016-78468「エンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-187009〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月8日の出願であって、令和元年12月2日付け(発送日:同年12月11日)で拒絶理由が通知され、令和2年2月7日に意見書が提出されたが令和2年5月21日付け(発送日:同年6月3日)で拒絶査定がされ、これに対して令和2年9月2日に拒絶査定不服審判が請求され、令和3年1月5日付け(発送日:同年1月6日)に当審において拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和3年3月4日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和3年3月4日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
クランク軸を回転自在に軸支するシリンダブロックのクランク軸心に沿った一側部に取り付けられるとともにエンジンに燃料を供給するコモンレールを備えたエンジン装置において、
前記一側部と交差する前記シリンダブロックの両側部のうち一方の側部に前記クランク軸と一体回転するフライホイールを収容するフライホイールハウジングが配置されるとともに、前記コモンレールの一端部が前記フライホイールハウジングの上方に配置されるエンジン装置。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち新規性及び進歩性に係る理由の概要は、次のとおりである。

1.(新規性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について

引用文献:特開2011-17257号公報

第4 引用文献、引用発明
当審拒絶理由において引用された特開2011-17257号公報(以下「引用文献」という。)には、「燃料噴射システム及びこれを備えたエンジン」に関し図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。以下同様。

1 「【0014】
(1).ディーゼルエンジンの全体構造
まず、主として図1?図5を参照しながら、コモンレール式のディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線aと平行な両側部(クランク軸線aを挟んで両側の側部)を左右、フライホイールハウジング78設置側を前側、冷却ファン76設置側を後側と称して、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン70における四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0015】
図1?図3に示すように、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えている。実施形態では、シリンダヘッド72の左側面に吸気マニホールド73が配置されており、シリンダヘッド72の右側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸74とピストン(図示省略)が内蔵されたエンジンブロック75上に搭載されている。エンジンブロック75の前後両側面から、クランク軸74の前後先端側を突出させている。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する一側部には、冷却ファン76が設けられている。実施形態では、エンジンブロック75の後側面側に冷却ファン76が位置している。クランク軸74の後端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。
【0016】
図1?図3に示す如く、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する他側部(実施形態ではエンジンブロック75の前側面側)に、フライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はクランク軸74の前端側に軸支されていて、クランク軸74と一体的に回転するように構成されている。作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。」

2 「【0072】
(6).気筒数の異なるエンジン間でのコモンレールシステムの配置態様
次に、図16、図20?図22を参照しながら、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間でのコモンレールシステム117の配置態様について説明する。図16に示すディーゼルエンジン70は4気筒型のものであるのに対して、図20に示すディーゼルエンジン70′は3気筒型のものである。これらのディーゼルエンジン70,70′において目立つ相違点は、エンジンブロック75,75′及びシリンダヘッド72,72′のクランク軸線a方向の前後長さに関して、3気筒型のディーゼルエンジン70′のほうが1気筒少ない分だけ短くなっている点である。これに伴い、3気筒型のディーゼルエンジン70′の吸気マニホールド73′も、クランク軸線a方向の前後長さが4気筒型の場合より短くなっている。なお、以下の説明において、コモンレールシステム117の構成は、4気筒型の場合と3気筒型の場合とで基本的に共通するものなので、先に説明した4気筒型のときの符号をそのまま用いることとする。」

3 「【0076】
図22は、3気筒型のディーゼルエンジン70′において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合のように設定した例を示している。すなわち、図22は、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした例を示している。この例では、コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)がエンジンブロック75のフライホイール側の前面より外にはみ出すことになるが、4気筒型で用いられた第2、第3及び第4燃料噴射管126b,126c,126dと、高圧管123とが、共通部品として3気筒型でも使用されている。
【0077】
すなわち、第2燃料噴射管126bは、3気筒型におけるフライホイールハウジング78側のインジェクタ115と、コモンレール120における前から2番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第3燃料噴射管126cは、3気筒型における真ん中のインジェクタ115と、コモンレール120における前から4番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第4燃料噴射管126dは、3気筒型における冷却ファン76側のインジェクタ115と、コモンレール120における最後端の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。コモンレール120における真ん中の高圧管コネクタ124と、燃料ポンプ116とが前述の高圧管123を介してつながっている。
【0078】
上記の記載並びに図16?図22から明らかなように、エンジンブロック75,75′の一側方に、吸気マニホールド73,73′に近接して配置されるコモンレール120を有する燃料噴射システム117であって、前記コモンレール120には、その長手方向に同じピッチ間隔Pで並ぶコネクタ124,127が設けられており、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で、吸気マニホールド73,73′の下方にある燃料ポンプ116に対する前記コモンレール120の位置関係を同じにするか、又は、前記コネクタ124,127群のピッチP分だけずらすかすることによって、前記コネクタ124,127群に接続される少なくとも複数の燃料噴射管126を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記コモンレール120だけでなく、湾曲形状の異なる様々な燃料噴射管126を前記エンジン70,70′の型式毎に準備する必要がなく、部品点数を削減できる。従って、前記燃料噴射システム117を採用するに当たってコストダウンを図れるという効果を奏する。
【0079】
上記の記載並びに図16?図22から明らかなように、前記コモンレール120のコネクタ124,127群は、エンジン70,70′の各気筒に対応するインジェクタ115に燃料噴射管126を介して接続される複数の燃料噴射管コネクタ127と、前記燃料ポンプ116に高圧管123を介して接続される高圧管コネクタ124とにより構成されており、前記高圧管123を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記燃料噴射管126と同様に、前記高圧管123についても、前記エンジン70,70′の型式毎の専用部品にしなくて済み、部品点数の更なる削減、ひいてはより一層のコストダウンに寄与できるという効果を奏する。」

上記記載事項及び図面(特に、図1ないし3、21及び22を参照。)の図示内容からみて、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「クランク軸74を回転自在に軸支するエンジンブロック75’の一側方に取り付けられるとともにエンジンに燃料を供給するコモンレール120を備えたディーゼルエンジン70’において、
前記エンジンブロック75’の前側面側に前記クランク軸74と一体回転するフライホイール79を収容するフライホイールハウジング78が配置されるとともに、前記コモンレール120の一端部が前記フライホイール79側の前面より外にはみ出しているディーゼルエンジン70’。」

第5 対比及び判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「クランク軸74」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「クランク軸」に相当し、以下同様に、「エンジンブロック75’」は「シリンダブロック」に、「一側方」は「クランク軸心に沿った一側部」に、「コモンレール120」は「コモンレール」に、「ディーゼルエンジン70’」は「エンジン装置」に、「エンジンブロック75’の前側面側」は「前記一側部と交差する前記シリンダブロックの両側部のうち一方の側部」に、「フライホイール79」は「フライホイール」に、「フライホイールハウジング78」は「フライホイールハウジング」に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は、次の一致点、相違点を有する。

〔一致点〕
「クランク軸を回転自在に軸支するシリンダブロックのクランク軸心に沿った一側部に取り付けられるとともにエンジンに燃料を供給するコモンレールを備えたエンジン装置において、
前記一側部と交差する前記シリンダブロックの両側部のうち一方の側部に前記クランク軸と一体回転するフライホイールを収容するフライホイールハウジングが配置されるエンジン装置。」

〔相違点〕
本願発明1においては「前記コモンレールの一端部が前記フライホイールハウジングの上方に配置される」ものであるのに対して、引用発明においては「前記コモンレール120の一端部が前記フライホイール79側の前面より外にはみ出している」ものである点。

上記相違点について検討する。
引用文献の段落【0072】の記載事項から、図22に示される3気筒型のディーゼルエンジン70’と図1ないし6に示される4気筒型のディーゼルエンジン70とは、基本的な構成が同じであることが理解でき、段落【0016】の記載事項及び図1ないし3の図示内容から、フライホイールハウジング78は、エンジンブロック75の前側面に近接して配置されているといえる。
そうすると、図22に示される3気筒型のディーゼルエンジン70’においても、フライホイールハウジング78は、エンジンブロック75’の前面に近接して配置されていると解するのが相当であり、そうであるならば、「コモンレール120の一端部が前記フライホイール79側の前面より外にはみ出している」引用発明においても、コモンレール120の一端部がフライホイールハウジングの上方に配置されているといえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではないから、本願発明は引用発明である。

仮にそのようにいえないとしても、引用文献の段落【0016】、【0072】及び【0076】の記載事項並びに図1ないし3及び22図示内容に基いて、コモンレール120の一端部がフライホイールハウジング78の上方に配置された構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、その効果は、引用文献の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張について
請求人は令和3年3月4日の意見書において、次のように主張している。
「引用文献1の図22では、シリンダブロック75の下部やフライホイールハウジングに破断線が引かれており、フライホイールハウジングの全体形状が不明瞭になっています。この点、図1ないし6に示される4気筒型のディーゼルエンジン70を参照したとしても、フライホイールハウジング78の上部はブラケット脚61に隠れていて、フライホイールハウジング78の上部構造が不明瞭であり、他の図面にもフライホイールハウジング78の上部構造は開示されていません。
従いまして、引用文献1の記載では、コモンレールとフライホイールハウジングとの位置関係が不明瞭なままであり、『コモンレールの一端部がフライホイールハウジングの上方に配置される』という本願発明1の特徴が開示も示唆も一切されておらず、本願発明1は、引用文献1の発明とは全く異なるものです。そして、当業者が引用文献1に接しても、本願発明1が特徴とする構成について着想を得ることはなく、本願発明1は、引用文献1から容易に想到できるものではないと思料いたします。」
しかしながら、フライホイールハウジング78の上部構造が不明瞭であるとしても、図22に、図2におけるフライホイールハウジング78と同様の形状の部材の上方にコモンレール120の一端部が配置されていることが看取できることからすれば、フライホイールハウジング78とコモンレール120の上下関係は把握でき、引用発明においても、コモンレール120の一端部がフライホイールハウジングの上方に配置されているといえる。
仮にそこまではいえないとしても、引用文献の段落【0016】、【0072】及び【0076】並びに図1ないし3及び22の記載に接した当業者であれば、引用発明において、コモンレール120の一端部がフライホイールハウジングの上方に配置されたものとすることは、容易に想到できたものである。
したがって、請求人の主張は当を得ない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-04-26 
結審通知日 2021-04-28 
審決日 2021-05-11 
出願番号 特願2016-78468(P2016-78468)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (F02M)
P 1 8・ 537- WZ (F02M)
P 1 8・ 121- WZ (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 鈴木 充
高島 壮基
発明の名称 エンジン装置  
代理人 渡辺 隆一  
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