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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1375499
審判番号 不服2020-10346  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-24 
確定日 2021-06-24 
事件の表示 特願2016-119828「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-224753〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 2月 5日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 4月 7日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月20日付け 拒絶査定
令和 2年 7月24日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)

「【請求項1】
第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)と、
前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)と、
前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程(d)と、
前記第2のパッド上に第3の金属層からなる第3のパッドを形成する工程(e)と、
平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を、形成する工程(f)と、
を備える半導体装置の製造方法。
(なお、上記請求項1の「前記絶縁膜」及び「接する絶縁膜の膜厚」の記載は、「前記絶縁層」及び「接する絶縁層の膜厚」の誤記であると判断した。)
【請求項2】
工程(c)が、前記絶縁層に前記開口部の開口径よりも小さい開口径を有するスルーホールを設けることを含み、
工程(d)が、前記第2の金属層を前記絶縁層の上層に形成するとともに前記スルーホールに充填することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(d)が、前記絶縁層の上層に形成された前記第2の金属層を除去することをさらに含む、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記第3のパッドに銅(Cu)のワイヤの一端をボンディングする工程(g)をさらに備える、請求項1?3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
第1の金属層からなる第1のパッドと、
前記第1のパッド上に配置され、開口部を有する絶縁層と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の前記開口部に配置され、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を備え、第2の金属層からなる第2のパッドと、
前記第2のパッド上に配置され、第3の金属層からなる前記第3のパッドと、
平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜と、を備える半導体装置。
(なお、上記請求項5の「前記絶縁膜」及び「接する絶縁膜の膜厚」の記載は、「前記絶縁層」及び「接する絶縁層の膜厚」の誤記であると判断した。)
【請求項6】
前記底部と前記側壁とは、箱型の形状を有する、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁層が、前記開口部の開口径よりも小さい開口径を有するスルーホールをさらに有し、
前記絶縁層の前記スルーホールに配置されて前記第1及び第3のパッドに電気的に接続されたプラグをさらに備える、請求項5又は6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のパッドが、1.5μm以下の膜厚を有する、請求項5?7のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2のパッドが、前記第1及び第3のパッドの各々のヤング率よりも大きいヤング率を有する、請求項5?8のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1及び第3のパッドの各々が、アルミニウム(Al)を含み、前記第2のパッドが、タングステン(W)を含む、請求項5?9のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1のパッドが、FSG(フッ素をドープした珪酸塩ガラス)又はLow-k材料を含む層間絶縁膜上に配置されている、請求項5?10のいずれか1項記載の半導体装置。」

(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年4月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)と、
前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)と、
前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚を有するように、前記絶縁層の前記開口部に第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程(d)と、
前記第2のパッド上に第3の金属層からなる前記第3のパッドを形成する工程(e)と、
平面視で前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を形成する工程(f)と、
を備える半導体装置の製造方法。
(なお、上記請求項1の「前記絶縁膜」の記載は、「前記絶縁層」の誤記であると判断した。)
【請求項2】
工程(c)が、前記絶縁層に前記開口部の開口径よりも小さい開口径を有するスルーホールを設けることを含み、
工程(d)が、前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の膜厚よりも大きい膜厚を有するように、前記絶縁層の前記スルーホールに前記第2の金属層を形成することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(d)が、前記絶縁層の上層に形成された前記第2の金属層を除去することをさらに含む、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記第3のパッドに銅(Cu)のワイヤーの一端をボンディングする工程(f)をさらに備える、請求項1?3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
第1の金属層からなる第1のパッドと、
前記第1のパッド上に配置され、開口部を有する絶縁層と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚を有して前記絶縁層の前記開口部に配置され、第2の金属層からなる第2のパッドと、
前記第2のパッド上に配置され、第3の金属層からなる前記第3のパッドと、
平面視で前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜と、を備え、
前記保護膜で覆われていない前記第3のパッドの領域の下層において前記第2のパッドが一様な膜厚を有する、半導体装置。
【請求項6】
前記第2のパッドが、前記第1のパッドに沿って配置された底部と、前記絶縁層の前記
開口部の4つの側面に沿って配置された4つの側壁とで構成される箱型の形状を有する、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁層が、前記開口部の開口径よりも小さい開口径を有するスルーホールをさらに有し、
前記絶縁層の前記スルーホールに配置されて前記第1及び第3のパッドに電気的に接続されたプラグをさらに備える、請求項5又は6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のパッドが、1.5μm以下の膜厚を有する、請求項5?7のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2のパッドが、前記第1及び第3のパッドの各々のヤング率よりも大きいヤング率を有する、請求項5?8のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1及び第3のパッドの各々が、アルミニウム(Al)を含み、前記第2のパッドが、タングステン(W)を含む、請求項5?9のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1のパッドが、FSG(フッ素をドープした珪酸塩ガラス)又はLow-k材料を含む層間絶縁膜上に配置されている、請求項5?10のいずれか1項記載の半導体装置。」

2 補正の適否
(1)目的要件
本件補正は、本件補正前の請求項5に係る発明の「前記保護膜で覆われていない前記第3のパッドの領域の下層において前記第2のパッドが一様な膜厚を有する、」という技術的事項を、補正後の請求項5に係る発明において、取り除く補正事項を含む補正である。
そうすると、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
そして、令和2年4月20日付けの拒絶査定の理由では、特許請求の範囲の記載が明りょうでない理由として、請求項5の記載における「絶縁層の膜厚」が「絶縁層」のどの部分の膜厚を意味するのか不明確である点を指摘しており、「第2のパッド」について指摘していないのであるから、「第2のパッド」の膜厚に関するこの補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるともいえない。
加えて、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正のいずれにも該当しないことも明らかである。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)独立特許要件
本件補正は,上記(1)において検討したとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、適法になされたものであり、かつ、請求項1に係る発明についての補正事項が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるとして、本件補正が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か、即ち、補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、以下に検討する。

ア 本件補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、これを「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載した、次のとおりのものである。(再掲)

「【請求項1】
第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)と、
前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)と、
前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程(d)と、
前記第2のパッド上に第3の金属層からなる第3のパッドを形成する工程(e)と、
平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を、形成する工程(f)と、
を備える半導体装置の製造方法。」

イ 引用文献の記載
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-68740号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で当審で付した。以下同じ。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体集積回路装置およびその製造方法に関し、特に、ボンディングパッドとその下部の層間絶縁膜との接着性の向上に適用して有効な技術に関するものである。」

「【0029】次に、上記のように構成された本実施の形態1の半導体集積回路装置の製造方法を図3?図12を用いて説明する。
・・・中 略・・・
【0041】次に、図4に示すように、上記配線11、14を形成した工程と同様の工程により、積層配線が形成される領域およびボンディングパッドが形成される領域に、それぞれTi膜、Al合金膜およびTiN膜の3層の薄膜からなる配線18Aと配線18Bとを形成した後、図5に示すように、プラズマCVD法にて基板1上に高密度プラズマを用いた酸化シリコン膜19を堆積する。続いて、その酸化シリコン膜19上に、高密度プラズマを用いたプラズマCVD法にて酸化シリコン膜20を堆積する。次いで、図6に示すように、たとえばCMP法にて酸化シリコン膜20の表面を研磨し、その表面を平坦化する。
【0042】次に、図7に示すように、フォトリソグラフィ技術によってパターニングされたフォトレジスト膜(図示は省略)をマスクとして酸化シリコン膜20、19をエッチングすることにより、積層配線が形成される領域の配線18Aに達するコンタクトホール21Aを形成し、ボンディングパッドが形成される領域の配線18Bに達する開口部21Bを形成する。この時、開口部21Bの開口径はコンタクトホール21Aの開孔径より相対的に大くする。
【0043】次に、図8に示すように、コンタクトホール21Aの内部および開口部21Bの内部を含む酸化シリコン膜20の上部に、膜厚約10nmのTi膜と膜厚約50nmのTiN膜とからなるバリアメタル膜22Cを堆積する。続いて、バリアメタル膜22Cの上部に、膜厚約500nmのW膜22Dを堆積する。この時、開口部21B内において、バリアメタル膜22CおよびW膜22Dからなる積層膜(第1導電性膜)の膜厚は、開口部21Bの深さより薄くなるようにする。
【0044】次に、図9に示すように、コンタクトホール22Aの外部および開口部22Bの外部のW膜22Dおよびバリアメタル膜22CをCMP法で除去することにより、コンタクトホール21Aの内部にプラグ22Aを形成し、開口部21Bの内部に積層膜22Bを形成する。
【0045】次に、図10に示すように、酸化シリコン膜20の上部にTi膜23A、Al合金膜23BおよびTiN膜23Cを順次堆積し、これらの薄膜からなる積層膜(第2導電性膜)23Dを形成する。この時、Al合金膜23Bの膜厚は、たとえば1.2μm程度とすることを例示できる。続いて、図11に示すように、積層膜23Dをエッチングしパターニングすることによって、積層配線が形成される領域に配線23を形成し、ボンディングパッドが形成される領域にボンディングパッドBPを形成する。
【0046】次に、図12に示すように、基板1の表面に膜厚200nm程度の酸化シリコン膜24Aおよび膜厚800nm程度の窒化シリコン膜24Bを順次堆積することにより表面保護膜24を形成した後、ボンディングパッドBP上の窒化シリコン膜24Bおよび酸化シリコン膜24Aをエッチングで除去することにより、開口部25を形成する。この時、開口部25の開口径は開口部21Bの開口径より相対的に大くする。その後、開口部25にて、たとえばAuからなるワイヤ26(図2参照)をボンディングパッドBPにボンディングすることにより、図2に示した本実施の形態1の半導体集積回路装置を製造する。」

【図2】

上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ボンディングパッドが形成される領域に、Ti膜、Al合金膜およびTiN膜の3層の薄膜からなる配線18Bを形成し、
プラズマCVD法にて基板1上に高密度プラズマを用いた酸化シリコン膜19を堆積し、その酸化シリコン膜19上に、高密度プラズマを用いたプラズマCVD法にて酸化シリコン膜20を堆積し、CMP法にて酸化シリコン膜20の表面を研磨し、その表面を平坦化し、
フォトリソグラフィ技術によってパターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして酸化シリコン膜20、19をエッチングすることにより、ボンディングパッドが形成される領域の配線18Bに達する開口部21Bを形成し、
開口部21Bの内部を含む酸化シリコン膜20の上部に、開口部21B内において、バリアメタル膜22CおよびW膜22Dからなる積層膜(第1導電性膜)の膜厚が、開口部21Bの深さより薄くなるように、Ti膜とTiN膜とからなるバリアメタル膜22Cを堆積し、バリアメタル膜22Cの上部に、W膜22Dを堆積し、開口部22Bの外部のW膜22Dおよびバリアメタル膜22CをCMP法で除去することにより、開口部21Bの内部に積層膜22Bを形成し、
酸化シリコン膜20の上部にTi膜23A、Al合金膜23BおよびTiN膜23Cを順次堆積し、これらの薄膜からなる積層膜(第2導電性膜)23Dを形成し、積層膜23Dをエッチングしパターニングすることによって、ボンディングパッドが形成される領域にボンディングパッドBPを形成し、
基板1の表面に酸化シリコン膜24Aおよび窒化シリコン膜24Bを順次堆積することにより表面保護膜24を形成し、ボンディングパッドBP上の窒化シリコン膜24Bおよび酸化シリコン膜24Aをエッチングで除去することにより、開口径が開口部21Bの開口径より相対的に大きい開口部25を形成する、
半導体集積回路装置の製造方法。」

(イ)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された特開平8-78413号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内部回路を静電サージから保護する半導体保護装置に関するものである。」

「【0016】
【実施例】以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1はこの発明の第1の実施例における半導体保護装置の平面図、図2は図1のB-B’における断面図である。図1、図2において、1はP型領域、2はP型領域1内に円盤状に形成されたN型領域(導電領域)である。N型領域2に対し、中央部に円形の第1のコンタクトホール3と、その外側に環状の離間領域を介して第2のコンタクトホール4を設けている。ここでは第2のコンタクトホール4を環状に形成している。中央部の第1のコンタクトホール3上には、円盤状のボンディングパッド21を形成している。ボンディングパッド21上は、表面保護膜101を開口し、この開口部22は第1のコンタクトホール3の開口より内側に設けている。また、第2のコンタクトホール4は、その上にアルミ配線5の電極部11が形成され、アルミ配線5により内部回路6と接続されている。N型領域2に対する第1,第2のコンタクトホール3,4の間の環状の領域を保護抵抗9として使用し、N型領域2とP型領域1の間の接合を保護ダイオード10として使用している。」

「【0019】また、N型領域2に対する第1のコンタクトホール3の開口部の内側に表面保護膜101の開口部22を設けたことにより、ボンディングエリア全面が段差のない平坦な領域となるため、ワイヤボンディング時に、均一に荷重、超音波がかかり、ワイヤの引っ張り強度、シェア強度を高め、組立上の信頼性を向上させることができる。」

【図2】

上記記載から、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「第1のコンタクトホール3上に円盤状のボンディングパッド21を形成し、ボンディングパッド21上に表面保護膜101を開口する際に、ワイヤボンディング時に、均一に荷重、超音波がかかり、ワイヤの引っ張り強度、シェア強度を高め、組立上の信頼性を向上させるために、ボンディングエリア全面が段差のない平坦な領域となるように、表面保護膜101を開口し、表面保護膜101の開口部22を第1のコンタクトホール3の開口より内側に設けること。」

(ウ)周知技術
a 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された特開平1-130545号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「[産業上の利用分野]
この発明は、樹脂封止型半導体装置に関するものである。」(第1頁左下欄20行ないし右下欄2行)

「[作用]
この発明の樹脂封止型半導体装置では、ボンディングパッド部のアルミニウム配線と電気的に接続し、かつボンディングパッド部と内部回路導電層までのアルミニウム配線の部分とも電気的に接続したバイパス導電層が設けられているため、ボンディングパッド部のアルミニウム配線が樹脂を通過してきた水分により腐食し断線しても、バイパス導電層により導電性が確保される。
[実施例]
第1図は、この発明の一実施例である半導体装置を示す断面図である。第2図は、第1図に示す半導体装置の概略平面図である。第1図において、シリコン基板1上の所定の部分には素子分離用酸化膜2が設けられており、素子分離用酸化膜2の間の部分には、不純物拡散層3が形成されている。素子分離用酸化膜2上の所定部分には、バイパス導電層10が形成され、素子分離用酸化膜2およびバイパス導電層10上の所定部分には、平坦化用酸化膜4が形成されている。これらの上および不純物拡散層3の上に及ぶように、バリア金属6が設けられており、さらにこのバリア金属6上にアルミニウム配線7が形成されている。これらの上には、ボンディングパッド部に相当する部分を除き、保護膜8が形成されている。ボンディングパッド部には、ボンディングワイヤが接続され、ボンディングワイヤボール部9が形成されている。ボンディングワイヤボール部9のまわりは、ボンディングワイヤと共晶反応を起こさず、かつ保護膜8によっても覆われていないアルミニウム配線露出部7aをなしている。
第2図には、不純物拡散層3、アルミニウム配線7、バイパス導電層10およびボンディングワイヤボール部9が示されている。
この実施例の半導体装置の製造プロセスについて説明すると、まずシリコン基板1上に素子分離用酸化膜2を選択的に形成する。次に、この素子分離用酸化膜2の上に、多結晶シリコンまたは高融点金属もしくは該金属のシリサイド等からなる層を形成し、パターニングしてバイパス導電層10とする。イオン注入等により拡散層3を形成する。
次に、平坦化用のリンガラス等の絶縁膜である平坦化用酸化膜4を形成し、この平坦化用酸化膜4に第2図に示すようなコンタクト孔5および5aならびにボンディングパッド用孔5bを写真製版により開孔する。
さらにこの上にバリア金属6をデポジットする。このバリア金属6により、コンタクト部分におけるアルミニウムの突き抜けおよびシリコンの析出を防止することができる。次に、このバリア金属6と電気的に接続した形で、アルミニウム配線7を形成し、パターニングを行なう。
次に、これらの上に保護膜8を形成し、ボンディングパッド部に相当する部分を開孔して、アルミニウム配線7を露出させる。このアルミニウム配線露出部7aに、金ワイヤ等をボンディングし、ボンディングワイヤボール部9を形成する。そして、この後チップ全体を樹脂封止する。
以上のようなこの実施例の半導体装置では、樹脂を通過してきた水分がアルミニウム配線露出部7aを腐食し断線させても、アルミニウム配線7の下地であるバイパス導電層10が十分な導電性を発揮するため、コンタクト孔5aを介して、内部回路への導電性が確保され、したがってこの半導体装置は正常な動作を保つことができる。」(第2頁左下欄19行ないし第3頁左下欄4行)

b 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-219451号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多層配線構造を有する半導体装置に関し、特に層間絶縁膜が平坦化処理された半導体装置及びその製造方法に関する。」

「【0083】図11及び図12はこの発明の第4の実施の形態を示し、図11は平面図、図12は図11のB-B’線断面図である。第(n-1)層よりシリコン基板1側のメタル配線層は、ボンディングパッド用配線パターン部を設けない構成になっており、図9及び図10示す第3の実施の形態に記載したボンディングパッド用配線パターン部6が、多層メタル配線層の最上部にのみ形成される半導体装置の構造と同じ構成になっている。
【0084】この第4の実施の形態を3層配線の例で説明する。まず、トランジスタが形成され、絶縁膜で覆われてるシリコン基板1上に第1層目の配線メタルを堆積し、パターニングすることにより第1層目のメタル配線層2が形成される。ここで絶縁膜16は、平坦化されていてもされていなくてもよい。第1層目の配線パターンには、ボンディングパッド用配線パターン部は形成されていない。この上に層間絶縁膜3を堆積し、層間絶縁膜3をCMPにより平坦化する。
【0085】この後、層間絶縁膜3にヴィアホール7aを形成し、第2メタル配線層4を堆積して、パターニングする。この第2メタル配線層4には、ボンディングパッド用配線パターン部6aを形成する。従って、第1メタル配線層2において、ボンディングパッド用配線パターン部へ接続が必要な配線は、ヴィアホール7aに埋め込まれたメタル9を介して第2メタル配線層4のボンディングパッド用配線パターン部6aと接続される。この後、第2の層間絶縁膜5を堆積して平坦化し、第2のヴィアホール7bを開口する。このときボンディングパッド用配線パターン部は、通常の方法通り、ボンディングパッド用配線パターン部は大きく開口してある。この際、ヴィアホール7bの深さとパッド部の開口部は、同じ深さaであるため、前述したようなホールエッチングに関する問題は考慮しなくともよい。この上に第3層目のメタル配線層8を堆積し、パターニングする。ここでのボンディングパッド用配線パターン部6bは第3層目のメタル配線層8のみに使用される。
【0086】図9及び図10に示す第3の実施の形態の構成では、ホールエッチングに関する問題を回避し、ボンディングパッドの信頼性も向上できるが、例えば3層構成の場合で説明すると、チップ内どの場所においてもヴィアホールにより下層のメタル配線層から3層目の配線まで接続する必要があり、3層目の配線を過密化させてしまうおそれがある。これに対して、第4の実施の形態の構成では、設計時の自由度が増すことになった。さらに3層目の配線に余裕ができるため、チップサイズを図9及び図10に示す構成より縮小することもできる。」

【図12】

c 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-252230号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の外部接続用電極に関するものであり、特にパッド部の構造と配置に関するものである。」

「【0024】
ボンディングパッド21は、最上層のパッドメタル61(以下第1のメタル61という)と、そのひとつ下の配線層に形成された第2層のパッドメタル62(以下第2のメタル62という)と、第1のメタル61と第2のメタル62との間の層間絶縁膜71を貫通してこれらメタル61,62間を接続するビア63とからなる積層ビア構造を有している。積層ビア構造は、ワイヤボンドなどのボンディング工程で生じる衝撃エネルギーを吸収し、パッドの直下の配線部や拡散素子にかかる応力を緩和し、ダメージの発生を抑えるのに効果がある。
【0025】
ボンディングパッド21の第2のメタル62の下には、例えば電源供給のための電源層である第3のメタル91、さらに下層には、入出力回路内への信号供給のための最下層メタル10が形成されており、第1および第2のメタル61,62と、最下層メタル10とは、引出し部メタル81のスタック構造により電気的に接続されている。第2のメタル62と第3のメタル91との間、および第3のメタル91と最下層メタル10との間にはそれぞれ層間絶縁膜72,73が形成されている。」

【図1】

d 周知技術
上記aないしcの記載から、以下の技術は周知技術(以下、「周知技術」という。)であると認められる。

「ボンディングパッドを形成する際に、内部回路に対して導電性を確保するため、及び設計の自由度を増すために、ボンディングパッドを構成する2層の金属層の間の層間絶縁膜にヴィアホールを設け、ボンディングパッドを構成する2層の金属層をビアホールに埋め込まれたメタルにより接続すること。」

ウ 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ボンディングパッドが形成される領域に、Ti膜、Al合金膜およびTiN膜の3層の薄膜からなる配線18Bを形成」する工程は、本件補正発明の「第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)」に相当する。

(イ)引用発明の「酸化シリコン膜19」及び「酸化シリコン膜20」は、ともに絶縁膜であるから、この2つの膜から構成され、平坦化された膜は、本件補正発明の「絶縁層」に相当する。
そうすると、引用発明の「プラズマCVD法にて基板1上に高密度プラズマを用いた酸化シリコン膜19を堆積し、その酸化シリコン膜19上に、高密度プラズマを用いたプラズマCVD法にて酸化シリコン膜20を堆積し、CMP法にて酸化シリコン膜20の表面を研磨し、その表面を平坦化」する工程は、本件補正発明の「前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)」に相当する。

(ウ)引用発明の「フォトリソグラフィ技術によってパターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして酸化シリコン膜20、19をエッチングすることにより、ボンディングパッドが形成される領域の配線18Bに達する開口部21Bを形成」する工程は、本件補正発明の「前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)」に相当する。

(エ)引用発明は、「開口部21Bの内部を含む酸化シリコン膜20の上部に」、「Ti膜とTiN膜とからなるバリアメタル膜22Cを堆積し、バリアメタル膜22Cの上部に、W膜22Dを堆積し」たものであるところ、「開口部21B」は「ボンディングパッドが形成される領域の配線18Bに達する」ものであるから、「バリアメタル膜22CおよびW膜22Dからなる積層膜(第1導電性膜)」は、開口部21Bの側面に沿って配置された側壁と、開口部21Bのボンディングパッドが形成される領域の配線18Bに沿って形成された部分と、を有していると認められる。
そして、引用発明は、「バリアメタル膜22CおよびW膜22Dからなる積層膜(第1導電性膜)の膜厚が、開口部21Bの深さより薄くなる」との関係を有しており、この関係により、引用発明は、本件補正発明の「前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部」の関係に対応する関係を有していると認められる。
そうすると、引用発明の「開口部21Bの内部を含む酸化シリコン膜20の上部に、開口部21B内において、バリアメタル膜22CおよびW膜22Dからなる積層膜(第1導電性膜)の膜厚が、開口部21Bの深さより薄くなるように、Ti膜とTiN膜とからなるバリアメタル膜22Cを堆積し、バリアメタル膜22Cの上部に、W膜22Dを堆積し、開口部22Bの外部のW膜22Dおよびバリアメタル膜22CをCMP法で除去することにより、開口部21Bの内部に積層膜22Bを形成」する工程と、本件補正発明の「前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程(d)」とは、「前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程」である点で共通する。

(オ)引用発明の「酸化シリコン膜20の上部にTi膜23A、Al合金膜23BおよびTiN膜23Cを順次堆積し、これらの薄膜からなる積層膜(第2導電性膜)23Dを形成し、積層膜23Dをエッチングしパターニングすることによって、ボンディングパッドが形成される領域にボンディングパッドBPを形成」する工程は、本件補正発明の「前記第2のパッド上に第3の金属層からなる第3のパッドを形成する工程(e)」に相当する。

(カ)引用発明の「基板1の表面に酸化シリコン膜24Aおよび窒化シリコン膜24Bを順次堆積することにより表面保護膜24を形成し、ボンディングパッドBP上の窒化シリコン膜24Bおよび酸化シリコン膜24Aをエッチングで除去することにより、開口径が開口部21Bの開口径より相対的に大きい開口部25を形成する」工程と、本件補正発明の「平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を、形成する工程(f)」は、「平面視で前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を、形成する工程」である点で共通する。

(キ)そして、引用発明の「半導体集積回路装置の製造方法」は、本件補正発明の「半導体装置の製造方法」に対応する。

(ク)そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)と、
前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)と、
前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)と、
前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程と、
前記第2のパッド上に第3の金属層からなる第3のパッドを形成する工程(e)と、
平面視で前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を、形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。」

[相違点1]
「絶縁層」について、本件補正発明は「前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層」であるのに対して、引用発明の「酸化シリコン膜19」及び「酸化シリコン膜20」はそのようになっていない点。

[相違点2]
「保護膜」について、本件補正発明は「平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜」であるのに対して、引用発明の「表面保護膜24」はそのようになっていない点。

エ 相違点についての当審判断
以下、各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
ボンディングパッドを形成する際に、内部回路に対して導電性を確保するため、及び設計の自由度を増すために、ボンディングパッドを構成する2層の金属層の間の層間絶縁層にヴィアホールを設け、ボンディングパッドを構成する2層の金属層をヴィアホール内に設けられたメタルにより接続することは、上記イの(ウ)で検討したように周知技術である。
そして、引用発明においても、ボンディングパッドを設ける際に、内部回路に対して導電性を確保することや、設計の自由度を増すようにすることは、当然考慮することであるから、引用発明の「酸化シリコン膜20、19」にヴィアホールを設け、「配線18B」(第1のパッド)と「ボンディングパッドBP」(第3のパッド)をヴィアホール内に設けられたメタルにより接続することとし、上記相違点1と同様の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到することである。

(イ)相違点2について
引用文献2記載事項にあるように、第1のコンタクトホール3上に円盤状のボンディングパッド21を形成し、ボンディングパッド21上に表面保護膜101を開口する際に、ワイヤボンディング時に、均一に荷重、超音波がかかり、ワイヤの引っ張り強度、シェア強度を高め、組立上の信頼性を向上させるために、ボンディングエリア全面が段差のない平坦な領域となるように、表面保護膜101を開口し、表面保護膜101の開口部22を第1のコンタクトホール3の開口より内側に設けることは、公知の技術である。
引用発明においても、ワイヤボンディング時に、均一に荷重、超音波がかかり、ワイヤの引っ張り強度、シェア強度を高め、組立上の信頼性を向上することは、当然考慮することであり、引用発明に引用文献2記載事項の公知技術を適用することは、当業者が容易に想到することである。
そして、その際に、引用発明の「開口部25」の開口径は「開口部21B」の開口径より小さくなるから、引用発明の「表面保護膜24」は、相違点2に係る「平面視で前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜」と同様の構成を備えることとなる。
そうすると、引用発明に引用文献2記載事項の公知技術を適用し、相違点2に係る構成を採用するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

(ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(エ)したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上、上記2(1)において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、また、上記2(2)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年4月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載した、次のとおりのものである。(再掲)

「【請求項1】
第1の金属層からなる第1のパッドを形成する工程(a)と、
前記第1のパッド上に絶縁層を形成する工程(b)と、
前記第1のパッドの少なくとも一部の領域上の前記絶縁層を除去することにより、前記絶縁層に開口部を設ける工程(c)と、
前記第1のパッドと第3のパッドを電気的に接続するプラグが形成される前記絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚を有するように、前記絶縁層の前記開口部に第2の金属層からなる第2のパッドを形成する工程(d)と、
前記第2のパッド上に第3の金属層からなる前記第3のパッドを形成する工程(e)と、
平面視で前記第3のパッドの周辺部を覆う保護膜を形成する工程(f)と、
を備える半導体装置の製造方法。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献AないしFに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A 特開2003-068740号公報(上記引用文献1である。)
B 特開2012-146720号公報
C 特開平08-078413号公報(上記引用文献2である。)
D 特開平01-130545号公報(上記引用文献3である。)
E 特開平09-219451号公報(上記引用文献4である。)
F 特開2005-252230号公報(上記引用文献5である。)

というものを含むものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献A及びCないしF並びにその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、「工程(d)」に係る「前記絶縁層の前記開口部に、前記絶縁層の開口部の側面に沿って配置された側壁と、前記側壁に接する絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚で前記第1のパッドに沿って形成された底部と、を有し、」との限定事項を削除し、「プラグが形成される前記絶縁層」を「プラグが形成される前記絶縁層の膜厚よりも小さい膜厚を有するように、前記絶縁層」とし、「工程(f)」に係る「前記第3のパッドの下層において前記第2のパッドの側壁の領域を含む」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明及び引用文献CないしFに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用文献A及び引用文献CないしFに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-04-14 
結審通知日 2021-04-20 
審決日 2021-05-10 
出願番号 特願2016-119828(P2016-119828)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 朋一  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 小川 将之
小田 浩
発明の名称 半導体装置及びその製造方法  
代理人 仲井 智至  
代理人 松岡 宏紀  
代理人 渡辺 和昭  

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