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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A62C |
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管理番号 | 1375581 |
審判番号 | 不服2020-148 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-07 |
確定日 | 2021-07-01 |
事件の表示 | 特願2018-197592「ガス系消火設備およびその施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月28日出願公開、特開2019- 30708〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、平成26年12月4日に出願された特願2014-245874号の一部を平成30年10月19日に新たな特許出願としたものであって、令和元年11月14日付けで拒絶査定(発送日:令和元年11月19日)がされ、これに対し、令和2年1月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、令和2年4月7日に上申書が提出され、当審において令和2年9月24日付けで拒絶理由(発送日:同年9月29日)が通知され、その指定期間内である令和2年11月25日に意見書の提出及び手続補正がされ、当審において令和3年1月4日付けで拒絶理由(発送日:同年1月5日)が通知され、その指定期間内である令和3年2月8日に意見書の提出及び手続補正がされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年2月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明は、以下のとおりである。 「ダクトの断面積を小さくしても十分な前記ダクト内の消火剤ガスの流量を確保することができるガス系消火設備であって、 防護区画外に配置されているガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを加熱せずに送るための配管と、 消火剤ガスが導入される前記防護区画から前記防護区画が設けられる建物の外まで延び、かつ、前記建物内で縦および横方向に延びて前記建物外へ消火剤ガスを排出するための前記ダクトと、 開閉することで前記ダクトと前記防護区画とが連通および遮断されるダンパと、 前記ダクトに設けられて前記ダクト内の消火剤ガスの流量を増加させる手段とを備え、 前記消火剤ガスの流量を増加させる手段は、前記配管内の消火剤ガスのエネルギーを利用することなく前記消火剤ガスの流量を増加させる、ガス系消火設備。」 第3.当審において通知した拒絶の理由について 当審において令和3年1月4日付けで通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 理由.(進歩性要件違反) 本願の請求項1及び2に係る発明は、その原出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 《引用文献等一覧》 1.特開2002-165896号公報 2.実願平2-40583号(実開平4-1342号)のマイクロフィルム 第4.当審の判断 1.引用文献の記載事項、引用発明 (1)引用文献1の記載事項、引用発明 当審の拒絶の理由に引用した引用文献1である特開2002-165896号公報には、「排気・感圧兼用ダンパ及びそれを用いた空調・消火設備」の発明に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。) ア.「【請求項1】 回転軸を中心に回転しダクトを全開と全閉の間で回動することができ且つカウンタウェイトとの重量バランスによって設定した力でダクトの全閉を行うようにした羽根と、前記回転軸に固定した回動アームと、回動アームの回動方向に対して接線方向に移動可能なガイドロッドと、ガイドロッドに取り付けられて前記羽根を開く方向に回動アームに当接する駆動ブラケットと、ガイドロッドのスライドを駆動でき且つ駆動ブラケットを回動アームに当接させて前記羽根を開方向に付勢する弾性バネを内蔵したエアシリンダと、を備えたことを特徴とする排気・感圧兼用ダンパ。 【請求項2】 消火ガス噴出口と、給気ダクトと、排気兼消火ガス排出ダクトとを有する空調・消火区画室における前記排気兼消火ガス排出ダクトに、請求項1記載の排気・感圧兼用ダンパを備えたことを特徴とする空調・消火設備。」 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、排気・感圧兼用ダンパ及びそれを用いた空調・消火設備に関するものである。」 ウ.「【0015】本発明は、かかる従来装置のもつ問題点を解決すべくなしたもので、排気と感圧ダンパの機能を兼ね備えた排気・感圧兼用ダンパを提供し、これにより、空調・消火区画室に排気兼消火ガス排出ダクトの設置を可能にして空調・消火区画室の構成を簡略化し、更に消火ガスの排出のための時間を短縮できるようにした空調・消火設備を提供することを目的としている。」 エ.「【0018】請求項1記載の排気・感圧兼用ダンパによれば、通常の空調を行っている際の排気と、火災発生時における空調・消火区画室内の圧力調整の両方を行うことができ、しかも、空調・消火区画室内の消火ガスの排出を短時間に行えるようになる。 【0019】請求項1記載の排気・感圧兼用ダンパを適用した請求項2記載の空調・消火設備によれば、空調時における排気と、火災発生時における空調・消火区画室内の圧力調整、及び消火ガスの排出を一つの排気兼消火ガス排出ダクトにて行えるようになり、よって、空調・消火設備の構成を大幅に簡略化できるようになる。」 オ.「【0028】図8は、前記排気・感圧兼用ダンパ20を、空調・消火設備に適用した場合の構成の一例を示すものである。図8の空調・消火設備は、空調・消火区画室1に、消火ガス噴出口4と、給気ダクト2と、排気兼消火ガス排出ダクト37とを備えるようにしており、この排気兼消火ガス排出ダクト37に、前記した排気・感圧兼用ダンパ20を備えている。 【0029】又、空調・消火区画室1に備えた火災検知器15が火災を検出すると、その信号が制御器16に送られて、該制御器16により開閉弁17を開作動することにより、消火ガス噴出口4から空調・消火区画室1内に消火ガスを噴出するようになっている。更に、上記消火ガスの噴出と同時に、制御器16からの信号により前記給気ダクト2に備えた自動閉止ダンパ6を作動して給気ダクト2を強制的に閉塞するようになっていると共に、制御器16からの信号により開閉弁38を開けて前記排気・感圧兼用ダンパ20のエアシリンダ32(図1)に圧縮空気を供給して、エアシリンダ32を直ちに伸長させるようになっている。」 カ.「【0030】以下に、上記形態例の作用を説明する。 【0031】図8の給気ダクト2の自動閉止ダンパ6が全開されて、空調・消火区画室1が空調されている通常時には、排気・感圧兼用ダンパ20のエアシリンダ32には圧縮空気が供給されておらず、よって、エアシリンダ32は内蔵された弾性バネ36(図3)によって縮小した状態となっており、このため、図4に示すように、駆動ブラケット31によって回動アーム27が上方に回動され、羽根23は図5のように全開状態となっている。これにより空調時の排気は、排気兼消火ガス排出ダクト37を通して確実に行われる。 【0032】一方、火災が発生して図8の火災検知器15が火災を検出すると、その信号が制御器16に送られ、該制御器16により開閉弁17を開作動することにより、消火ガス噴出口4から空調・消火区画室1内に消火ガスを噴出する。更に、上記消火ガスの噴出と同時に、制御器16からの信号により前記給気ダクト2に備えた自動閉止ダンパ6を作動して給気ダクト2を強制的に閉塞すると共に、制御器16からの信号により開閉弁38を開けて前記排気・感圧兼用ダンパ20のエアシリンダ32に圧縮空気を供給する。 【0033】エアシリンダ32は圧縮空気の供給によって直ちに伸長され、このエアシリンダ32の伸長によって駆動ブラケット31は図1のように下方に移動し、これにより羽根23とカウンタウェイト25との重量バランスによって羽根23は下方に回動し、図6のようにシール部24に当接して排気兼消火ガス排出ダクト37を全閉にする。 【0034】前記自動閉止ダンパ6と羽根23が閉塞された状態で前記消火ガス噴出口4からの消火ガスの噴出が行われることにより空調・消火区画室1内の圧力は上昇する。 【0035】空調・消火区画室1内の圧力が所定の圧力以上になると、その圧力によって羽根23が押されて図7のように開き、これによって空調・消火区画室1内の消火ガスは排気兼消火ガス排出ダクト37から外部に排出され、空調・消火区画室1内の圧力は略一定に保持される。 【0036】消火が終了すると、火災検知器15がそれを検出し、制御器16は開閉弁17を閉じるように制御して消火ガス噴出口4による消火ガスの噴出を停止する。又、上記消火ガスの噴出停止と同時に、制御器16からの信号により開閉弁38を閉塞してエアシリンダ32への圧縮空気の供給を停止する。すると、エアシリンダ32は弾性バネ36の力によって縮小し、図5に示すように羽根23を全開状態にする。このように羽根23が全開状態に保持されることにより、空調・消火区画室1内の消火ガスは短時間に排出されるようになる。 【0037】上記したように、排気・感圧兼用ダンパ20によれば、通常の空調を行っている際の排気と、火災発生時における空調・消火区画室1内の圧力調整の両方を行うことができ、しかも、空調・消火区画室1内の消火ガスの排出を短時間に行うことができる。 【0038】尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、羽根を開方向に付勢する弾性バネの配置構成は種々変更し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。」 キ.「 」 ク.上記オ.に摘記した段落【0028】及び【0029】の記載を参照すると、上記キ.に摘記した【図8】の図示内容から、「空調・消火区画室1内に消火ガスを加熱せずに送るための配管」が看取され、上記カ.に摘記した段落【0032】ないし【0036】の記載事項から「排気・感圧兼用ダンパ20」は、「開閉することで排気兼消火ガス排出ダクト37と空調・消火区画室1とが連通および遮断される」ものであることが把握される。 以上を踏まえると、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 《引用発明》 「空調・消火区画室1と、前記空調・消火区画室1内に消火ガスを加熱せずに送るための配管と、 消火ガスが噴出される前記空調・消火区画室1から消火ガスを排出するための排気兼消火ガス排出ダクト37と、 開閉することで前記排気兼消火ガス排出ダクト37と前記空調・消火区画室1とが連通および遮断される排気・感圧兼用ダンパ20と、を備える、空調・消火設備。」 (2)引用文献2の記載事項 当審の拒絶の理由に引用した引用文献2である実願平2-40583号(実開平4-1342号)のマイクロフィルムには、「換気扇」の考案に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。) ア.「(1) 高速回転の特性を有する小型回転機を、細長いダクトに備えて換気扇を形成し、前記小型回転機の軸に装着する羽根はウォームギャー型、多段羽根型、ターボ型、ラジアル型、アキシャル型とし、これを取着することによって、小型回転機を支持する軸受、並びにコイルの銅損によって発生する熱を前記ダクトにより放散し、室内の空気を室外へ吸引するよう構成したことを特徴とする換気扇。」(明細書1頁5ないし13行) イ.「第1図は本考案の一実施例を示す全体構成図であり、高速回転、例えば1万回転以上の小型回転機4は細長いダクト5の中に据付けられて換気扇1を形成している。細長いダクト5の端部にはフィルターとしての金網6が取着され、この金網6が屋内側となるように壁7に穴をあけて据付けられている。」(明細書4頁3ないし9行) ウ.「つまり、細長いダクト5を使用し、従来のものと変わらない特性を得るためには、ダクト内の排風量を増す必要があり、その排風量の要素としての断面積を増すことが出来ない関係から、風速を増す必要が生じる。 ここに、この点を補うファクターとして高速回転用の小型回転機4を使用することにある。」(明細書6頁2ないし8行) エ.「以上説明したごとく本考案によれば、従来の送風量に見合う風量を、高速の小型回転機の回転数によってカバーし、そのとき発生する熱量は、パイプにその熱量を伝達せしめ、パイプの長さによってその放散を算定するというもので、このことによって、据付工事の簡素化、据付の美観,清掃の手間など種々な利点を備えた、極めて実用性の高いものである。」(明細書7頁18行ないし8頁5行) オ.「 」 以上を踏まえると、上記引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2事項」という。)が記載されていると認める。 《引用文献2事項》 「細長いダクトを使用し、従来のものと変わらない特性を得るためには、ダクト内の排風量を増す必要があるとの知見のもと、高速回転の特性を有する小型回転機の軸に羽を装着したものを、細長いダクトに備えて換気扇を形成し、室内の空気を室外へ吸引するように構成すること。」 2.本願発明との対比、一致点、相違点 引用発明と本願発明とを対比する。 引用発明の「空調・消火区画室1」は、その構成、機能、技術的意義からみて、本願発明1の「防護区画」に相当し、同様に、「消火ガス」は「消火剤ガス」に、「排気・感圧兼用ダンパ20」は「ダンパ」に、「空調・消火設備」は「ガス系消火設備」に、相当する。 また、消火ガスは、当該消火ガスによって消火されるべき区画外に設置される消火ガス貯蔵用の容器から、消火されるべき区画へ、配管を介して供給されるものであることが、技術常識であることを踏まえると、引用発明の「前記空調・消火区画室1内に消火ガスを加熱せずに送るための配管」は、その構成、機能、技術的意義からみて、本願発明の「防護区画外に配置されているガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを加熱せずに送るための配管」に相当する。 そして、引用発明の「消火ガスが噴出される前記空調・消火区画室1から消火ガスを排出するための排気兼消火ガス排出ダクト37」と、本願発明の「消火剤ガスが導入される前記防護区画から前記防護区画が設けられる建物の外まで延び、かつ、前記建物内で縦および横方向に延びて前記建物外へ消火剤ガスを排出するための」「ダクト」とは、「消火剤ガスが導入される前記防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクト」という限りにおいて、一致する。 してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 《一致点》 防護区画外に配置されているガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを加熱せずに送るための配管と、 消火剤ガスが導入される前記防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクトと、 開閉することで前記ダクトと前記防護区画とが連通および遮断されるダンパとを備える、ガス系消火設備。 《相違点》 本願発明は、「防護区画から前記防護区画が設けられる建物の外まで延び、かつ、前記建物内で縦および横方向に延びて前記建物外へ消火剤ガスを排出するためのダクト」を備え、「ダクトの断面積を小さくしても十分な前記ダクト内の消火剤ガスの流量を確保することができる」ものであり、「前記ダクトに設けられて前記ダクト内の消火剤ガスの流量を増加させる手段を備え、前記消火剤ガスの流量を増加させる手段は、前記配管内の消火剤ガスのエネルギーを利用することなく前記消火剤ガスの流量を増加させる」ものであるのに対し、引用発明は、「排気兼消火ガス排出ダクト37」が、「空調・消火区画室1」が設けられる建物の外まで延び、かつ、前記建物内で縦および横方向に延びて前記建物外へ消火剤ガスを排出すること、「ダクト内の消火剤ガスの流量を増加させる手段」を備えていること及び「ダクトの断面積を小さくしても十分な前記ダクト内の消火剤ガスの流量を確保することができる」ことを規定していない点。 3.相違点の判断 まず、引用発明において、「排気兼消火ガス排出ダクト37」は、「空調・消火区画室1から消火ガスを排出するため」のものであるところ、通常、「空調・消火区画室1」は、建物の内部に設けられるものであり、また、「消火ガス」は、その建物の外へ排出されると解するのが自然である。 そして、消火ガスが導入される、消火すべき区画から建物の外へガス等を排出するダクトは、前記区画が設けられる建物の規模や構造によっては、建物内で縦および横方向に延びるものであり得ることは、当業者にとって、本願の原出願日前に周知の事項であり(例示が必要であれば、本願の原出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2012?115477号公報の段落【0017】の「排気ダクト7は、金属板などの耐火材料から成り、防護区画対象空間3から屋外空間6へのガスの流れ方向Aに垂直な断面形状が長方形または円形である複数の直管および曲管などを接続して構成される。」との記載及び【図1】に図示された排気ダクト7の様子、特開平6-269511号公報の【図1】及び【図2】に図示されたものにおける排煙ダクト6及びダクト8の様子等を参照されたい。)、こうした周知の「建物内で縦および横方向に延びる」「ダクト」では、ダクトの曲がり方、ダクトの断面積、長さ等に応じて排気の流れやすさ等の特性が変わることは、当業者であれば、普通に予測し得ることである。 してみると、上記したように、「消火ガス」を、建物の外へ排出するものと解するのが自然である引用発明において、上記引用文献2事項、すなわち、「細長いダクトを使用し、従来のものと変わらない特性を得るためには、ダクト内の排風量を増す必要があるとの知見のもと、高速回転の特性を有する小型回転機の軸に羽を装着したものを、細長いダクトに備えて換気扇を形成し、室内の空気を室外へ吸引するように構成すること。」を踏まえ、「排気兼消火ガス排出ダクト37」を、上記周知の「建物内で縦および横方向に延びるもの」とするとともに、引用発明の「排気兼消火ガス排出ダクト37」に、前記「高速回転の特性を有する小型回転機の軸に羽を装着したもの」を設けることにより、配管内の消火ガスのエネルギーを利用することなく、ダクト内のガスの流量を増加させ、ダクトの断面積を小さくしても十分な前記ダクト内のガスの流量を確保し得るようにすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。 そして、本願明細書の段落【0014】、【0015】、【0024】、【0025】等に記載された、本願発明が奏する作用・効果は、引用発明、引用文献2事項及び上記周知の事項から、当業者が十分予測し得たものであり、格別なものではない。 4.審判請求人の主張について 審判請求人は、令和3年2月8日に提出された意見書で、(4-1)引用文献1および2は、本願発明の「消火剤ガスが導入される前記防護区画から前記防護区画が設けられる建物の外まで延び、かつ、前記建物内で縦および横方向に延びて前記建物外へ消火剤ガスを排出するための前記ダクト」を何ら開示も示唆もしていない旨、(4-2)引用文献1および2は、本願明細書の段落【0004】に記載された「施工コストを低下させることが可能で、かつ、設計の自由度が高いガス系消火設備を提供する」という課題を何ら開示も示唆もしていない旨、(4-3)引用文献2は「換気扇」に関する発明であり、元々換気扇が存在しないものである引用文献1とは技術分野が異なる旨、(4-4)、本願明細書の段落【0014】に記載された「ダクトが従来よりも細くなれば、ダクトに関連する施工コストを低下させることができる。」および段落【0015】に記載された「ダクトが従来よりも細くなれば従来はダクトを配管することができなかった狭い場所にもダクトを配管することができ、設計の自由度が高まる。」という顕著な効果は、引用文献1および2において何ら奏することができない効果である旨を主張している。 しかし、上記(4-1)の主張については、上記3.で示したように、引用発明の「排気兼消火ガス排出ダクト37」は、建物の外へ排出するものと解するのが自然であり、上記周知の「建物内で縦および横方向に延びるもの」であり得るものであるから、当を得た主張ではない。 また、上記(4-3)の主張については、消火ガスが導入される、消火すべき区画から建物の外へガス等を排出するダクトは、その内部に排気を促すためのファン等を設置し得るものであることは、本願の原出願日前の技術常識である(例示が必要であれば、上記特開平6-269511号公報における「排気排煙ファン34」に関する記載の他、本願の原出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2001?149497号公報における「排気ファン44」に関する記載、特開2003-260148号公報における「排煙機21」に関する記載等を参照されたい。)し、ある区画や室内のガスをその外へ排出するという点で機能を同じくする引用発明と引用文献2事項とは、相互に参照することがあり得ないという程度の技術分野の相違があるとは認められない。 そして、上記(4-2)及び(4-4)の主張についても、上記引用文献2事項に接した当業者であれば、引用発明の「排気兼消火ガス排出ダクト37」を従来よりも細くできること、そして、ダクトが細くなれば、ダクトの材料費が少なくてすみ、設置のための加工も容易になることから、施工コストが低くなり、設計の自由度が上がることは、充分予測し得る程度のことにすぎない。 ゆえに、上記(4-1)ないし(4-4)の主張については、いずれも採用できない。 5.小括 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2事項及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-04-15 |
結審通知日 | 2021-04-21 |
審決日 | 2021-05-11 |
出願番号 | 特願2018-197592(P2018-197592) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A62C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 二之湯 正俊 |
特許庁審判長 |
佐々木 正章 |
特許庁審判官 |
鈴木 充 渡邊 豊英 |
発明の名称 | ガス系消火設備およびその施工方法 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |