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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1375615
審判番号 不服2019-8313  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-24 
確定日 2021-07-14 
事件の表示 特願2017- 92933「ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-148599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月24日(以下「分割原出願日」という。)に出願した特願2013-109695号の一部を平成27年1月14日に新たな特許出願とした特願2015-5412号の一部を平成27年11月19日に新たな特許出願とした特願2015-226355号の一部を平成28年7月28日に新たな出願とした特願2016-148932号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成30年3月23日付けで拒絶理由が通知され、同年6月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月29日付けで,平成30年8月22日付けで通知された拒絶理由により拒絶査定がなされ、これに対し、令和1年6月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後,令和2年2月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年8月28日に提出の手続補正書の概要
上記当審拒絶理由通知に対し、令和2年8月28日に請求人が提出した手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、その請求項1乃至9の記載は以下のとおりである。(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明9」という。)
「【請求項1】
コンピュータに、
アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と、
前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に、
前記アイテムのアイテム情報、および、前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と、
前記比較機能によって比較された結果、前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを、当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と、
前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて、前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と、
前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。
【請求項2】
前記アイテム記憶機能は、前記特定のアイテムを、前記フィルタリング条件を満たしていないアイテムとともに前記アイテムボックスに対応付けて記憶する請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記特定のアイテムは、他のアイテムを強化するためのアイテムであり、かつ、前記特定のアイテムの個数に応じて、前記他のアイテムのパラメータを変化させるアイテムであることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記特定のアイテムは、前記アイテムの数値に基づいて、当該特定のアイテムの個数が変動するように設定されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記価値情報は、前記アイテムのレアリティ情報であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記アイテムボックスは、対応付けが可能なアイテムの種類の数に上限が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記アイテム記憶機能は、さらに、前記比較機能によって比較された結果前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしていないアイテムをアイテムボックスに対応付けて記憶することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定ステップと、
前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に、
前記アイテムのアイテム情報、および、前記条件設定ステップにおいて設定されたフィルタリング条件を比較する比較ステップと、
前記比較ステップにて比較された結果、前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを、当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換ステップと、
前記変換ステップによって数値化された前記アイテムの数値に基づいて、前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換ステップと、
前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶ステップとを実行させるゲーム処理方法。
【請求項9】
アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定部と、
前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に、
前記アイテムのアイテム情報、および、前記条件設定部によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較部と、
前記比較部によって比較された結果、前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを、当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換部と、
前記変換部によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて、前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換部と、
前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶部とを備える情報処理装置。」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
理由1(新規事項の追加)
令和2年4月1日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由2(進歩性)
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1(新規事項の追加)
本願発明は、令和2年4月1日付け手続補正書により、請求項1に、新たに「前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との発明特定事項(以下「新たな発明特定事項」という)が追加された。
そして、上記新たな発明特定事項の「アイテムボックスに対応付けて」とは、アイテムボックスに収納すると解されるから、上記手続補正書による補正により、補正後の請求項1には、‘特定のアイテムを、ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能’を包含するものとなった。
そうすると、当初明細書等には、‘特定のアイテムを、ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能’は記載されているものとは認められず、そのような事項を包含する上記手続補正書による補正は、当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の要件を満たさない。

理由2(進歩性)
・請求項:1?8
・引用文献:1、2
引 用 文 献 等 一 覧
1.特許5086491号公報(【0020】、【0021】、【0046】、【0047】、【0048】、【0052】、【0080】、【0081】、【0089】?【0120】参照。)
2.特開2000-116937号公報(【特許請求の範囲】、【0021】?【0082】参照。)


第4 当審の判断
1 特許法第17条の2第3項について
(1)本願発明1には、令和2年4月1日付け手続補正書により、新たに「前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との発明特定事項(以下「新たな発明特定事項」という)が追加され(請求項7及び8についても、同様の発明特定事項が追加された)、令和2年8月28日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)においても、依然として、前記新たな発明特定事項が記載されている。
そして、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の【0051】を参酌すると、付与されたアイテムを所持し過ぎるとアイテムボックスが満杯になるのであるから、上記新たな発明特定事項の「アイテムボックスに対応付けて」とは、アイテムボックスに収納することと解されるから、本件補正により、補正後の請求項1には、‘特定のアイテムを、ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能’を包含するものとなった。
(2)一方、当初明細書等には、「ユーザに付与されたアイテムを特定アイテムに変換する」目的に関しては、以下の記載がある。
「【0051】
このような構成とすることにより、新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることができる。具体的には、ユーザは、付与される様々な種類の不要なアイテムを、1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため、不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる。
【0052】
また、上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とすることで、特定アイテムを貯蓄する事が可能となり、ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができるようになる。結果、一度に複数の特定のアイテムを使用して他アイテムを強化させる操作を行うことで、当該強化対象となる他アイテムの経験値を一度で大きく変化させる等、ユーザの選択肢を広げる事ができる。」
(3)上記の当初明細書等の記載によれば、当初明細書等には、「特定のアイテム」をユーザが所持し、不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換して所持することにより、不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になることが防がれることは記載されているものの、ユーザが所持する「特定のアイテム」が、アイテムボックスに収納されることは記載されておらず、アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられていることまでが記載されているということはできない。
一方,当初明細書等に「特定のアイテム」について,「上限なく所持可能」とする旨が記載されていることからすれば,「特定のアイテム」は,アイテムボックスに収納されるものではなく,「特定のアイテム」についての各ユーザの所持数は,アイテムボックスとは,別に管理されているものであると解される。
また,請求人の主張するように,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されるものであるとすれば,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換したとしても,アイテムボックスに収納する以上、「特定のアイテム」によってもアイテムボックスが占有されることになってしまうのであるから,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を損なうものとなってしまうから,これらの記載に接した当業者であれば,「特定のアイテム」は,アイテムボックスに収納されるものであることが,当初明細書に記載されたものと認識することはないものと解するのが相当である。
そうすると、当初明細書等には、‘特定のアイテムを、ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能’は記載されているものとは認められず、また、当初明細書等から、‘特定のアイテムを、ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能’が想定されていたとする理由も見当たらないことから、本件補正は、当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の要件を満たさない。

請求項8及び9並びに請求項1を引用する請求項2乃至7ついての令和2年8月28日付けの手続補正書でなされた補正は、同じ理由により、特許法第17条の2第3項の要件を満たさない。

審判請求人は、令和2年8月28日付けの意見書で「本願の「付与される様々な種類の不要なアイテムを、1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため、不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる。」という記載から読み取れることは、「不要なアイテムをアイテムボックスに収納しない」ということであって、「特定のアイテムをアイテムボックスに収納しない」ということではありません。また、アイテムボックスはアイテムを収納するものであるから、「収納しない」と明言された「不要なアイテム」以外は当然収納されると解するのが適切です。」と主張する。
また、令和2年4月1日付けの意見書で「本願の「特定のアイテム」は、「遊戯ポイント」のような単なる「数値」ではなく、対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられたアイテムボックスに保管される(対応付けて記憶される)「物」という概念を有するものです。」と主張する。
審判請求人が主張するように、「特定のアイテム」が「物」という概念を有するものであって、アイテムボックスは、「収納しない」と明言された「不要なアイテム」以外は当然収納されると解するのであれば、不要なアイテムを特定のアイテムに変換しても、「物」という概念でアイテムボックスに収容することとなる。そうすると、アイテムボックスが満杯になることを防ぐことができなくなってしまうとともに、保有することができるカードの数には上限があることから、新アイテムを入手することさえできなくなってしまい、本願発明の課題である「新アイテム入手時のユーザの利便性を向上」させることを解決できると当業者が認識し得ないこととなる。
そもそも、審判請求人の「対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられたアイテムボックス」との主張は、当初明細書等の「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能」との記載と整合しないものであるから、「『特定のアイテムをアイテムボックスに収容しない』ということではない」との主張は、理由がないといわざるを得ない。
よって、上記審判請求人の主張は採用できない。

したがって、本願の請求項1乃至9に係る発明は、いずれも、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


2 特許法第29条第2項について
(1)引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1
当審拒絶理由において引用した本願の分割原出願日(平成25年5月24日)前に発行された特許掲載公報である特許第5086491号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラム、ゲームシステム、及び、情報処理装置に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このゲームプログラムでは、ゲームで使用されるゲーム媒体がユーザーに付与される。ユーザーは、付与されたゲーム媒体の要否を判断し、手間をかけてその要否に応じた操作入力を行っていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作入力に要する手間を軽減させることにある。」
(ウ)「【0031】
データ記憶部12は、サーバー装置10におけるシステムプログラムが記憶された読み取り専用の記憶領域であるROM(Read Only Memory)と、制御部11で生成される各種データ(システムプログラムで使用するフラグや演算した値)が記憶されるとともに、制御部11の演算処理のワーク領域として使用される書き換え可能な記憶領域であるRAM(Random Access Memory)とを有しており、たとえば、フラッシュメモリやハードディスク等の不揮発性記憶装置によって実現される。本実施形態のデータ記憶部12は、ユーザーがゲームで利用するゲームカードに関する情報であるカード情報、及び、ユーザーに関する情報であるユーザー情報を記憶する。なお、これら各情報については、追って詳述する。」
(エ)「【0046】
<ゲームカードの売却>
前述したように、ユーザーは、対戦型カードゲームの結果に基づき付与されたゲームカード(以下、「付与カード」という)を、自らが所有するゲームカード(以下、「所有カード」という)とすることができる。しかし、付与カードが、ユーザーが既に所有している所有カードと同一のゲームカードである場合や、能力値が低いキャラクターのゲームカードである場合には、ユーザーによって不要なゲームカードと判断される傾向がある。
【0047】
そのため、このゲームシステム1では、不要なゲームカードを所有カードとしないようにすることができる。本実施形態では、ユーザーは、不要なゲームカードを売却することにより、不要なゲームカードを所有せずに必要なゲームカードのみを所有できる。不要なゲームカードを売却すると、当該不要なゲームカードの価値に相当する遊戯ポイントに変換される。遊戯ポイントは、ゲーム上で与えられる特典と交換できるポイントである。」
(オ)「【0064】
たとえば、図6に示すように、ゲームカードに対応付けられたキャラクターの名前、キャラクター画像、レアリティ、売却ポイント、初期攻撃力、初期防御力などの各種初期パラメーター等が、カード情報に含まれている。

【0068】
売却ポイントは、ユーザーがゲームカードを売却した際に、ユーザーに付与される遊戯ポイントのことである。本実施形態では、ゲームカードの価値(キャラクターの価値)に応じたポイントがゲームカード毎に設定されている。すなわち、レアリティのレベルが高いゲームカード(キャラクター)ほど、売却ポイントが高く設定されている。」
(カ)「【0080】
<<<ゲームシステム1の動作について>>>
<全体的な動作について>
ここでは、ゲームシステム1の全体的な動作について説明する。本実施形態に係るゲームシステム1では、ゲームプログラムに基づきサーバー装置10及びユーザー端末20を共働させることにより、制御対象が制御され、各処理を実行される。
具体的には、このゲームシステム1において、カード付与処理、カード記録処理、カード売却処理、カード合成処理、カード履歴記録処理が実行される。以下、各処理について説明する。」
(キ)「【0089】
(カード記録処理)
カード記録処理は、カード付与処理によりユーザーに付与された付与カードを、当該ユーザーが所有する所有カードとして記録する処理である。サーバー装置10における記録部113は、カード付与処理によりユーザーに付与された付与カードを、図8に示す所有カード情報に追加して記録する。具体的には、CPUが付与カードに関する情報をメモリの記憶領域に書き込むことにより付与カードを所有カードとして記録する。なお、CPUが付与カードに対応するカードIDにフラグ情報を設定することにより(所有を示すフラグを設定することにより)付与カードを所有カードとして記録するようにしてもよい。
【0090】
(カード売却処理)
カード売却処理は、ユーザーにとって不要となるゲームカードを売却する処理である。本実施形態のカード売却処理では、カード手動売却処理、及び、カード自動売却処理が実行される。」
(ク)「【0103】
<カード自動売却処理について>
カード自動売却処理について、図10乃至図14を用いて具体的に説明する。図10は、本実施形態に係るゲームシステム1の動作例を説明するためのフローチャートである。図11は、ゲームカードの売却予約を行う際のプレイ画像の一例を示す図である。図12は、本実施形態に係るカード自動売却の動作例を説明するためのフローチャートである。図13は、ゲームカードが付与されたときのプレイ画像の一例を示す図である。図14は、ゲームカードが自動売却されたときのプレイ画像の一例を示す図である。
【0104】
まず、ユーザーは、ユーザー端末20の端末入力部23を操作することにより、カード自動売却の設定を行うためのプレイ画像を端末表示部24に表示させる。本実施形態では、図11に示すようなプレイ画像60(操作画面)が端末表示部24に表示される。そして、ユーザーは、端末入力部23を操作することにより、自動売却の対象となるゲームカード、すなわち、ユーザーにとって不要となるゲームカード(以下、指定カードという)を予め指定する(S101)。
【0105】
このゲームシステム1では、不要となるゲームカードをユーザーに指定させる際に、ゲームカードのカードID(例えば、0001)で一つずつ指定させることもできるし、キャラクターの種類(例えば、カードIDが0001?0004である「戦士A」)、レアリティ(例えば、カードIDの一桁目が「1」に設定されている「コモン」)、職種(例えば、カードIDの三桁目が「0」に設定されている「戦士A」や「戦士B」等の戦士系キャラクター)、初期攻撃力又は初期防御力が閾値以下(例えば、50以下)、売却ポイントが閾値以下(例えば、500pt以下)など、複数のゲームカードに共通する属性情報により不要となるゲームカードをユーザーに指定させることもできる。
【0106】
また、このゲームシステム1では、ユーザーがこれまでに所有したことのあるゲームカードの中から、不要となるゲームカードをユーザーに指定させる。すなわち、ユーザーは、図鑑情報(図9参照)に含まれる複数のゲームカードのうちからいずれかのゲームカードを指定することができる。そのため、ユーザーがこれまでに所有したことのあるゲームカードのみが指定カードとして予約登録されることになるため、これまで所有したことがないゲームカードは自動売却されないことになる。
【0107】
本実施形態では、端末表示部24に表示されるプレイ画像60(図11参照)に、「図鑑に載っているコモンカード全て」、「図鑑に載っているアンコモンカード全て」、「同一カードは自動売却しない」が表示されるため、ユーザーは、端末操作部23を操作することにより、これらのうちのいずれかのチェックボックスを選択する。本実施形態では、「図鑑に載っているコモンカード全て」がユーザーによって選択されたものとする。これにより、ユーザーは所定のレアリティを有するゲームカードを指定カードとして選択したことになる。そのため、ユーザーが指定したレアリティを有するゲームカードの要否が自動的に判定されるため、ユーザーが不要なゲームカードを選択して売却する操作を行わずに済み、操作入力に要する手間を軽減させることができる。
【0108】
次いで、ユーザー端末20は、ユーザーよって選択された指定カードの予約登録を要求する(S102)。すなわち、端末制御部21は、ユーザーの操作に基づき端末入力部23から予約登録の入力信号を受け取ると、ユーザーによって指定された指定カードに関する情報をサーバー装置10に送信するとともに、予約登録を要求するためのコマンド(予約登録要求)にユーザーIDを設定してサーバー装置10に送信する。
【0109】
次いで、サーバー装置10は、ユーザーによって指定された指定カードの予約登録を受け付ける(S103)。すなわち、サーバー装置10における受付部115は、ユーザー端末20から送信された予約登録要求を受信すると、ユーザーによって指定された指定カードに関する情報を予約登録する(S104)。本実施形態においては、「図鑑に載っているコモンカード全て」がユーザーによって選択されたため、ユーザーがこれまで所有したことのあるゲームカードのうち、「コモン」のレアリティを有するゲームカードが全て予約登録されたことになる。つまり、図鑑情報に含まれるカードID(「TURE」が設定されているもの)を有するゲームカードであること、及び、カード情報に含まれるレアリティに「コモン」が設定されているゲームカードであることが、不要なカードか否かを制御部11が判定するための判定条件としてメモリに予め登録されることになる。これにより、ユーザーがこれまでに所有したことのあるゲームカードのみが指定カードとして予約登録されるため、これまで所有したことがないゲームカードは自動売却されない。また、ユーザーが指定したレアリティを有するゲームカード以外のゲームカードも自動売却されない。そのため、その自動売却されないゲームカードの要否については、ユーザー自身で確実に判断できる。
【0110】
ここで、カード付与処理が開始されると、ユーザーに対してゲームカードが付与される(S105)。本実施形態では、サーバー装置10の付与部111が、対戦型カードゲーム又は抽選ゲームのゲーム処理を実行し、ユーザーに付与するゲームカードを決定する。
【0111】
次いで、上述したカード付与処理の結果として、ユーザーに対して付与されるゲームカード(付与カード)が決定されると、サーバー装置10は、ユーザーの設定により既に予約登録がなされているため(S104)、カード自動売却処理を実行する(S106)。
【0112】
具体的には、図12に示すように、先ず、サーバー装置10における判定部112は、カード付与処理によりユーザーに付与された付与カードと、予約登録されている指定カードとを比較することにより、付与カードをユーザーの所有する所有カードとするか否かを判定する。本実施形態では、判定部112は、付与カードが指定カードと一致するか否かを判定する(S201)。そして、判定部112は、不要となるゲームカードが指定カードとして予約登録されているため、一致する場合には、不要なゲームカードとして決定し、一致しない場合には、ユーザーに所有させるゲームカードとして決定する。具体的には、「図鑑に載っているコモンカード全て」が指定カードとして予約登録されているため、判定部112は、付与カードのカードIDが図鑑情報(図9参照)に含まれるカードID(「TURE」が設定されているもの)と一致するか否か、かつ、付与カードのレアリティが「コモン」であるか否かを判定する。そして、判定部112は、いずれの条件も肯定できた場合には、不要なゲームカードとして決定し、いずれかの条件が否定された場合には、ユーザーに所有させるゲームカードとして決定する。
【0113】
次いで、サーバー装置10における制御部11は、判定部112が付与カードを不要なゲームカードとして決定した場合には、付与カードの自動売却を行う(S202)。本実施形態では、制御部11は、付与カードをユーザーの所有カードとしない処理を行い、かつ、不要となった付与カードを遊戯ポイントに変換してユーザーに付与するポイント付与処理を実行する。これにより、不要なゲームカードが自動的に遊戯ポイントに変換されるため、カード手動売却処理の場合に比べて、操作入力に要する手間を軽減することができる。」
(ケ)上記(ウ)及び(エ)より、サーバー装置10及びユーザー端末20を共働させることにより、カード自動売却処理を実行させるゲームプログラムが記載されていると認める。
(コ)上記(エ)及び(オ)より、ゲームカードのカード情報に含まれるレアリティ毎に売却ポイントが設定されており、ゲームカードの価値に相当する売却ポイントが遊戯ポイントに変換されるものと認める。
(サ)上記(オ)及び(ク)より、属性情報の含まれる情報はカード情報に含まれる情報と実質的に同じものであるといえるから、属性情報はカード情報と認める。

上記(ア)乃至(サ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サーバー装置10及びユーザー端末20を共働させることにより、カード自動売却処理を実行させるゲームプログラムであって、
ゲームカードに関する情報であるカード情報には、ゲームカードに対応付けられたキャラクターの名前、キャラクター画像、レアリティ、売却ポイント、初期攻撃力、初期防御力などの各種初期パラメーター等が、含まれ、ゲームカードのカード情報に含まれるレアリティ毎に売却ポイントが設定されており、
自動売却処理は、
ユーザーが、ユーザー端末20の端末入力部23を操作することにより、自動売却の対象となるゲームカード、すなわち、ユーザーにとって不要となるゲームカードを予め指定し、
前記不要となるゲームカードの指定は、キャラクターの種類、レアリティ、職種、初期攻撃力又は初期防御力が閾値以下、売却ポイントが閾値以下など、複数のゲームカードに共通するカード情報により不要となるゲームカードを指定することであり、
サーバー装置10における判定部112は、カード付与処理によりユーザーに付与されたゲームカードと、指定されている不要となるゲームカードとを比較することにより、付与されたゲームカードをユーザーの所有する所有カードとするか否かを判定し、一致する場合には、不要となるゲームカードとして決定し、一致しない場合には、ユーザーに所有させるゲームカードとして決定し、
サーバー装置10における記録部113は、ユーザーに付与された付与カードを、所有カード情報に追加して記録し、
サーバー装置10における制御部11は、判定部112が付与されたゲームカードを不要となるゲームカードとして決定した場合には、付与されたゲームカードをユーザーの所有カードとしない処理を行い、かつ、不要となった付与されたゲームカードを不要となったゲームカードの価値に相当する売却ポイントを遊戯ポイントに変換してユーザーに付与するポイント付与処理を実行する、ゲームプログラム。」

イ 引用文献2
当審拒絶理由において引用した本願の分割原出願日(平成25年5月24日)前に出願公開された特開2000-116937号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(ア)「【請求項7】ゲームに登場するキャラクタが予め定められた出来事を経験することによって得られる値としての経験値をこれら経験した出来事の内容に応じて算出する経験値算出ステップと、経験値算出ステップによって算出された経験値を設定した経験値設定物を生成するか、前記予め定められた出来事を経験したキャラクタに経験値算出ステップによって算出された経験値を付与するかの選択を行う付与対象選択ステップと、付与対象選択ステップで経験値設定物を生成することを選択したとき経験値設定物の生成を行う経験値設定物生成ステップと、所定の経験値設定物をゲーム中の所望のキャラクタに適用することで設定した経験値を前記所望のキャラクタに付与する経験値付与ステップとを備えることを特徴とする経験値付与方法。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は特にロールプレイングゲームのように、ゲーム中で敵と戦ってこれを倒したときに敵側の経験値を有効に活用にするようにしたゲーム装置およびこのようなゲームを記憶する情報記憶媒体ならびにキャラクタに経験値を付与するための経験値付与方法に関する。」
(ウ)「【0032】図4はこのゲームにおける戦闘モードで主人公のキャラクタが戦闘を行って敵のキャラクタを倒す場合の処理の概要を示したものである。図2に示したCPU31は主人公と敵の双方のキャラクタが戦闘を行うモードとしての戦闘モードに切り替わったか否かを定期的に監視している(ステップS101)。たとえば主人公のキャラクタが敵のキャラクタにある程度近づくと、CPU31は両キャラクタを戦闘を行うモードとしての戦闘モードに設定し(ステップS101;Yes)、この後はこの戦闘モードの処理が行われる(ステップS102)。
【0033】CPU31は戦闘モードに移行した場合に主人公のキャラクタがその場に登場したすべての敵キャラクタを倒したかどうかを判断する(ステップS103)。なお、主人公のキャラクタ側が敵キャラクタによって倒される場合もあるが、この場合にはステップS102の戦闘モード処理でゲームオーバとされるので、ここではその説明を行なわない。主人公のキャラクタが無事すべての敵キャラクタを倒した場合には(ステップS103;Yes)、これら倒した敵のキャラクタの数およびこれらの経験値を基にして、戦闘によって得られた経験値を算出する(ステップS104)。そして、表示画面上の所定の位置に取得アイテムウィンドウが開かれ、ここに取得した経験値を保有したアイテム(以下、成長アイテムという。)が表示される(ステップS105)。
【0034】図5は、この成長アイテムが表示された表示画面を示したものである。ディスプレイ22(図2)の表示画面81上には、主人公のキャラクタ82が表示され、その手前に成長アイテム83が配置されている。主人公のキャラクタ82はこの成長アイテム83を拾うことができるし、これを拾わずに他の場所へと移動することも可能である。成長アイテム83が拾われた場合には(ステップS106;Yes)、次に説明する成長アイテムの選択処理が実行される(ステップS107)。これに対して、成長アイテム83の表示が開始されてから所定時間以内に成長アイテム83が拾われなかった場合には(ステップS108;Yes)、表示画面81上における成長アイテム83の表示を消去して(ステップS109)、これ以後はこの成長アイテム83を拾うことができないようにしている。もちろん、ゲームによってはこの成長アイテム83をその場所に消去せずに存置しておいて、後でその場所に戻ってきて拾うことができるようにしてもよい。
【0035】図6は、成長アイテムを主人公のキャラクタが拾った場合の処理の内容を示したもので、ステップS107の処理内容を具体化したものである。図5に示した主人公のキャラクタ82が成長アイテム83を拾うと、その時点で表示画面81上に選択ウィンドウが表示される(ステップS201)。この選択ウィンドウでは、プレイヤは成長アイテム83の用途を選択することができる。
【0036】図7は、選択ウィンドウの表示された状態を示したものである。表示画面81には、成長アイテム83の用途を選択するための選択ウィンドウ91が表示される。選択ウィンドウ91には、カーソル92が表示されており、成長アイテムを自分の経験値に加算するか、通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしている。カーソル92の移動は方向キー62(図3)で行い、○ボタン64(図3)で選択内容の決定を行うようになっている。
【0037】図5に示した成長アイテム83を主人公のキャラクタの経験値に加算することが選択された場合には(ステップS202;Yes)、成長アイテム83の経験値を主人公自身の経験値に単純に加算する処理が行なわれる(ステップS203)。これは、従来のゲームにおける経験値の処理と本質的に同じである。これに対して、通常のアイテムとして保持する決定が行われた場合には(ステップS204;Yes)、これを主人公のキャラクタが保持している通常のアイテムと同様に1つのアイテムとして保持することになる(ステップS205)。このように主人公のキャラクタが敵のキャラクタを倒すことによって取得した経験値をアイテム化して所持し得ることにした点が本実施例の大きな特徴である。」
(エ)上記(ウ)より、戦闘モードの処理は、複数のステップからなるものであることが把握できるから、上記(ウ)より、戦闘モードの処理方法が把握できる。

上記(ア)?(エ)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「主人公のキャラクタが無事すべての敵キャラクタを倒した場合には、これら倒した敵のキャラクタの数およびこれらの経験値を基にして、戦闘によって得られた経験値を算出するステップ、
表示画面上の所定の位置に取得アイテムウィンドウが開かれ、ここに取得した経験値を保有したアイテム(以下、成長アイテムという。)が表示されるステップ、
ディスプレイの表示画面上には、主人公のキャラクタが表示され、その手前に成長アイテムが配置され、主人公のキャラクタはこの成長アイテムを拾うことができるし、これを拾わずに他の場所へと移動することも可能であり、
主人公のキャラクタが成長アイテムを拾うと、その時点で表示画面上に選択ウィンドウが表示されるステップ、
選択ウィンドウには、カーソルが表示されており、成長アイテムを自分の経験値に加算するか、通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしており、
通常のアイテムとして保持する決定が行われた場合には、これを主人公のキャラクタが保持している通常のアイテムと同様に1つのアイテムとして保持するステップ、からなる戦闘モードの処理方法。」

(2)本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 後者の「ゲームプロラム」は、前者の「ゲームプログラム」に相当し、後者の「サーバー装置10及びユーザー端末20」は、ゲームプログラムにより、共働して、カード自動売却処理という機能を実現させているといえるものであるから、前者の「コンピュータ」と後者の「サーバー装置10及びユーザー端末20」とは、ゲームプログラムにより所定の機能を実現させているものとの概念で共通する。
イ 前者の「アイテム」とは、本願明細書の発明の詳細な説明に「アイテムとは、ゲーム内でユーザが使用するカードを意味するが、後述するアイテム情報を有するものであれば、これに限られるものではない。」(【0023】参照。)と記載されていることから、後者の「ゲームカード」は、前者の「アイテム」に相当し、後者の「複数のゲームカードに共通するカード情報」は、「キャラクターの種類、レアリティ、職種、初期攻撃力又は初期防御力が閾値以下、売却ポイントが閾値以下」などの情報であって、「ゲームカードの情報」といえるから、後者の「複数のゲームカードに共通するカード情報」は、前者の「アイテムのアイテム情報」に相当する。
ウ 後者の「ゲームプログラム」は、「複数のゲームカードに共通するカード情報」により不要となるゲームカードを指定するものであるから、後者の「不要となるゲームカードを指定する」ための「複数のゲームカードに共通するカード情報」は、前者の「アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件」に相当する。
エ 後者の「不要となるゲームカードの指定」とは、「複数のゲームカードに共通するカード情報」により「不要となるゲームカード」を指定することであるから、後者の「不要となるゲームカードの指定」は、前者の「フィルタリング条件を設定」することに相当し、前者の「ゲームプログラム」と後者の「ゲームプログラム」とは、「フィルタリング条件を設定する条件設定機能」を実現させるものとの概念で共通する。
オ 後者の「ゲームプログラム」は、カード付与処理によりユーザーに付与されたゲームカードと、指定されている不要となるゲームカードとを比較するものであるから、前者の「ゲームプログラム」と後者の「ゲームプログラム」とは、「アイテムのアイテム情報、および、条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能」を実現させるものとの概念で共通する。
カ 後者の「カード付与処理によりユーザーに付与されたゲームカード」であって、「指定されている不要となるゲームカード」と「一致」した「ゲームカード」は、不要となるゲームカードとして指定されているゲームカードのカード情報と一致しているゲームカードであるから、後者の「カード付与処理によりユーザーに付与されたゲームカード」であって、「指定されている不要となるゲームカード」と「一致」した「ゲームカード」は、前者の「比較機能によって比較された結果、アイテム情報がフィルタリング条件を満たしているアイテム」に相当する。
キ 後者の「レアリティ」は、前者の「アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報」に相当する。そして、後者の「ゲームカード」には、カード情報に含まれるレアリティ毎に売却ポイントが設定されているから、前者の「設定情報」と、後者の「売却ポイント」とは、「アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる」情報との概念で共通する。
ク 後者の「遊戯ポイント」は、「ゲームカードの価値に相当する売却ポイント」が変換されたものであるから、後者の「遊戯ポイント」は、前者の「アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化」されたもの、すなわち、「数値化されたアイテムの数値」に相当する。
ケ 後者の「ポイント付与処理」は、「ゲームカードの価値に相当する売却ポイントを遊戯ポイントに変換」する処理を含むものであるから、前者の「変換機能」と後者の「ポイント付与処理」とは、「アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能」との概念で共通する。
コ ゲームプログラムの処理として、ユーザにアイテムやポイントを「付与する」とは、アイテムやポイントをユーザに対応付けた情報として記憶することを意味することは技術常識といえることであるから、上記キの後者の「遊戯ポイント」が前者の「アイテムの数値」に相当することを踏まえると、前者の「アイテム記憶機能」と後者の「ポイント付与処理」とは、「変換機能によって数値化されたアイテムの数値」を「ユーザ」に「対応付けて記憶する」との概念で共通する。
サ そして、後者の「ゲームプログラム」は「カード自動売却処理を実行させる」ものであって、ユーザーに付与されたゲームカードを対象に実行されるものであるから、前者の「ゲームプログラム」と後者の「ゲームプログラム」とは、「アイテムがユーザに付与された際に自動的に」「コンピュータに」特定の機能を実行させるものとの概念で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「コンピュータに、
アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と、
前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に、
前記アイテムのアイテム情報、および、前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と、
前記比較機能によって比較された結果、前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを、当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と、
前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値を、前記ユーザに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。」

<相違点>
本願発明1が、アイテムを「所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」と、「前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックス」に対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを、実現させるゲームプログラムであるのに対し、引用発明1は、「ゲームカードの価値に相当する遊戯ポイント」を「ユーザー」に付与するポイント付与処理を実行する、ゲームプログラムである点。

(3)相違点についての判断
引用発明2の「経験値」及び「成長アイテム」は、本願発明1の「アイテムの数値」及び「『アイテムの数値』に基づいて、『アイテム』を変換した『一種類の特定のアイテム』」に相当する。
引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテム」に設定された「経験値」とは、ともに、キャラクタを強化するために所定量消費されるポイントである点で共通するものであるから、引用発明1において、不要なゲームカードを遊戯ポイントに変換することに代えて、引用発明2の技術を適用して、当該遊戯ポイントが設定されたアイテムである「成長アイテム」を生成し、当該「成長アイテム」をユーザーの所有物とすることは、当業者が容易になし得るものといえる。
その際、価値の等しい一種類の「成長アイテム」を複数個所有するのか、価値の異なる「成長アイテム」を一個所有するのかは、「成長アイテム」の所有個数の上限に合わせて、当業者が適宜設定し得る設計的事項といえるものである。
そして、引用発明1は、ユーザーに付与された付与カードを、サーバー装置10における記録部113に追加して記録しているところ、その形態をどのようなものにするかは、当業者が適宜採用し得る設計的事項といえる。
してみると、引用発明1に、引用発明2を適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

審判請求人は、「引用文献2における「経験値設定物」は、経験値に応じて生成される(引用文献2の段落[0033]、[0072]等に記載)ものであり、仮に引用文献1に適用したとしても本願発明1の「価値の等しい一種類のアイテム」には相当しません。」と主張する。
しかし、上記のとおり、引用発明2の「経験値設定物」は、遊戯ポイントが設定されることとなるのであるから、所定個数の価値の等しい一種類の「経験値設定物」とすることは、当業者が適宜選択し得る事項である。
よって、審判請求人の主張は使用できない。

以上のことから、本願発明1は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。


第5 むすび
以上のとおり,本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本願発明1は、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-04 
結審通知日 2020-11-05 
審決日 2020-11-17 
出願番号 特願2017-92933(P2017-92933)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 泰  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 尾崎 淳史
藤本 義仁
発明の名称 ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置  
代理人 高梨 玲子  

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