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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1375624
審判番号 不服2020-8869  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-25 
確定日 2021-07-20 
事件の表示 特願2016-167068「NDフィルタの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018- 36325、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-167068号(以下「本件出願」という。)は、平成28年8月29日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 1月16日付け:拒絶理由通知書
令和2年 3月 9日 :意見書
令和2年 3月 9日 :手続補正書
令和2年 3月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 6月25日 :審判請求書
令和3年 2月26日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月15日 :意見書
令和3年 4月15日 :手続補正書
(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。)

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(進歩性)本件出願の請求項1?3係る発明(令和2年3月9日にした手続補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1:特開2009-265579号公報
引用例2:特開2007-248495号公報
引用例3:特開平10-186130号公報
引用例4:特開2005-17986号公報
(当合議体注:引用例1は主引用例である。引用例2,3は、周知技術を示すために例示された文献である。引用例4は、副引用例である。)

3 当合議体が通知した拒絶の理由
令和3年2月26日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、概略、理由2(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、理由3(新規性)本件出願の請求項1、3に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、理由4(進歩性)本件出願の請求項1?3に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(引用例等一覧)
引用例5:特開2006-308810号公報
引用例6:特開2005-326687号公報
(当合議体注:引用例5は主引用例である。引用例6は、周知技術を示すために例示された文献である。)

4 本願発明
本件出願の請求項1?3に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
基板に対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成するNDフィルタの製造方法であって、
前記光吸収層を形成する前に、前記一定流量、前記所定流量、及び前記一定流量の前記所定流量に対する比の少なくとも何れかを制御することにより、400nm以上700nm以下の波長域において、透過率が単調増加するものとするか、単調減少するものとするか、あるいは平坦なものとするかを制御する
ことを特徴とするNDフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記Niと前記基板の間に、前記光吸収層に対して膜厚勾配を付与するマスクを配置したことを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記Niと屈折率の異なる誘電体と、前記Niとを、それぞれ1回以上、前記基板に蒸着したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のNDフィルタの製造方法。」

第2 当合議体の判断
1 引用例5の記載及び引用発明
(1) 引用例5の記載
当審拒絶理由で引用された引用例5(特開2006-308810号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域の透過光を減衰させる吸収型多層膜NDフィルターに係り、特に、耐摩耗性や付着力の改善が図れる吸収型多層膜NDフィルターとその製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NDフィルター(Neutral Density Filter)とは、光線の可視スペクトル域における各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透過率を有する光学フィルターで、透過光量を減衰させる目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられる。
・・・略・・・
【0003】
この種のNDフィルターには、・・・略・・・入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターがあり、反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合は一般に吸収型NDフィルターが用いられる。
【0004】
そして、この吸収型NDフィルターには、・・・略・・・基板自体に吸収はなくその表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとが存在する。また、後者の場合は、薄膜表面の反射を防ぐため上記薄膜を多層膜で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の効果を持たせている。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、厚みが非常に薄いガラス薄板や樹脂フィルム上に上記吸収型多層膜を形成した吸収型多層膜NDフィルターは、組込みスペースが狭い小型で薄型のデジタルカメラに用いるには最適である。
【0008】
そして、吸収型多層膜を構成する膜材料としては、上述したようにSiO_(2)膜と金属膜(例えば、ニオブ膜)、あるいは、SiO_(2)膜と酸素欠損のある光吸収性を有する金属酸化物膜(例えば、チタン酸化膜)との組合せがほとんどでありそれぞれ長所と欠点を有している。
【0009】
例えば、上記SiO_(2)膜と金属膜とを組み合わせた吸収型多層膜においては、金属膜における可視域の吸収が大きいため、上記金属膜については10nm程度の非常に薄い膜厚でよく生産性に優れている反面、SiO_(2)膜のような酸化物誘電体膜と金属膜とは付着力が弱いため、耐剥離性等の機械的強度に難がある。
【0010】
一方、SiO_(2)層と酸素欠損のある光吸収性を有する金属酸化物膜(以下、吸収金属酸化物膜と略称する場合がある)とを組み合わせた吸収型多層膜においては、酸化物同士の組み合わせのため付着力は強い反面、上記金属酸化物膜における可視域の吸収が金属膜のように大きくないため、10nmを超える膜厚の金属酸化物膜を成膜する必要があり生産性に劣るという欠点を有している。
【0011】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、吸収型多層膜が酸化物誘電体膜と金属膜とで構成されかつ酸化物誘電体膜と金属膜との付着力が改善された吸収型多層膜NDフィルターを提供し、合わせてこの吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、上記課題を解決するため、酸化物誘電体膜と金属膜とで構成される吸収型多層膜の上記金属膜について、その酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域を酸化させて酸化金属部を形成したところ、上記酸化物誘電体膜と金属膜との付着力が改善されることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、
基板と、基板の片面若しくは両面に交互に積層された金属膜と酸化物誘電体膜で構成される吸収型多層膜とを有する吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、 上記金属膜における酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域が酸化されて酸化金属部を構成し、酸化金属部の酸化程度が酸化物誘電体膜との界面から金属膜の非酸化部に向かって連続的に低下していることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1 に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
上記金属膜における基板との界面およびその近傍領域が酸化されて酸化金属部を構成し、酸化金属部の酸化程度が基板との界面から金属膜の非酸化部に向かって連続的に低下していることを特徴とするものである。
・・・略・・・
【0015】
次に、請求項6に係る発明は、
真空成膜プロセスにより基板の片面若しくは両面に金属膜と酸化物誘電体膜とを交互に成膜して吸収型多層膜NDフィルターを製造する吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
上記基板若しくは酸化物誘電体膜上に金属膜を成膜する際、成膜装置内に酸素プラズマ若しくは酸素イオンビームを発生させるか成膜装置内に酸素を導入しながら、基板若しくは酸化物誘電体膜上にその酸化程度が基板若しくは酸化物誘電体膜との界面から離れるに従い連続的に低下する金属膜の酸化金属部を形成する第一工程と、
上記成膜装置内における酸素プラズマ若しくは酸素イオンビームの発生を停止するか成膜装置内への酸素の導入を停止した状態で、上記酸化金属部上に金属膜の非酸化部を形成する第二工程と、
上記成膜装置内に酸素プラズマ若しくは酸素イオンビームを発生させるか成膜装置内に酸素を導入しながら、上記金属膜の非酸化部上にその酸化程度が非酸化部との界面から離れるに従い連続的に増大する酸化金属部を形成する第三工程、
を具備することを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項6に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
上記第一工程において基板若しくは酸化物誘電体膜上に形成される酸化金属部の上記基板若しくは酸化物誘電体膜との界面における組成が化学量論組成を有すると共に、第三工程において金属膜の非酸化部上に形成される酸化金属部の最表面における組成が化学量論組成を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1?5に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターによれば、
金属膜と酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域に形成された酸化金属部の作用により、および、金属膜と基板との界面およびその近傍領域に必要に応じて形成された上記酸化金属部の作用により、金属膜と酸化物誘電体膜との間および金属膜と基板との間における付着力を増大させることが可能となる。
【0017】
従って、SiO_(2)膜のような酸化物誘電体膜と金属膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所と、SiO_(2)層のような酸化物誘電体膜と酸素欠損のある光吸収性を有する金属酸化物膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所とを併せ持った吸収型多層膜NDフィルターとすることができる効果を有する。
【0018】
また、請求項6?7に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、
・・・略・・・
金属膜と酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域、および、金属膜と基板との界面およびその近傍領域に金属膜の上記酸化金属部を形成することができるため、上記酸化物誘電体膜と金属膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所と、酸化物誘電体膜と酸素欠損のある光吸収性を有する金属酸化物膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所とを併せ持った吸収型多層膜NDフィルターを製造することが可能となる。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
・・・略・・・
【0034】
以下、図9に示した上記吸収型多層膜NDフィルターを例に挙げ、酸化金属部NiOx(x≦1)と非酸化部(Ni)とで構成される金属膜の成膜方法について具体的に説明する。
【0035】
まず、成膜装置内において酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜4の成膜が終了し、この酸化物誘電体膜4上にNiの金属膜3を成膜する際、上記酸化物誘電体膜4との界面の酸化金属部NiOxの組成が化学量論組成(x=1)を有しかつ界面から離れるに従い酸化金属部NiOxの酸化程度が連続的に低下(x<1)するようにするため、初期段階では酸素プラズマアシスト、酸素イオンアシストのエネルギーを高くしてNiOの酸化金属部を形成し、次の段階ではNiに近づけていくため酸素プラズマアシスト、酸素イオンアシストのエネルギーを順次低くしてNiOx(x<1)の酸化金属部を形成し、最終的にNiの非酸化部を形成するため、酸素プラズマアシスト、酸素イオンアシストのエネルギーを停止しながら成膜を継続し、必要とする膜厚の非酸化部を形成する。次に、酸素プラズマアシスト、酸素イオンアシストを再開して上記非酸化部上に酸化程度が連続的に増加(x<1)する酸化金属部NiOxを形成し、酸素プラズマアシスト、酸素イオンアシストのエネルギーを順次高くしていき最終的にNiOの酸化金属部を形成する。このNiOの酸化金属部上に再び酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜2を成膜する。
・・・略・・・
【0040】
また、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいては、上記基板と吸収型多層膜との間に、両者の密着性を向上させかつ吸収型多層膜に生じる応力を緩和させる作用を有する密着層を設けてもよい。・・・また、密着層の厚みは1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。1nm未満では、十分な密着性が得られず、両者の界面に膜はがれやクラックを生じる恐れがあるからである。他方、厚みが10nmを越えると透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性が得られなくなる恐れがあるためである。
・・・略・・・
【0041】
以下、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造法の一例を具体的に説明する。
【0042】
基板に50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルムを用い、酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜を交互に積層した吸収型多層膜を得るには、例えば、成膜にアルバック製RFマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットにはSiとNi金属を用いる。酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜の成膜速度は0.2nm/秒程度、Niから成る金属膜の成膜速度は0.1nm/秒程度で行い、酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜の成膜時のみ酸素を導入する。
【0043】
また、Niから成る金属膜の上記酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域の酸化を行うため、上記金属膜のRFマグネトロンスパッタ成膜の際にDCイオンビーム法を併用する。例えば、イオン化ガスには酸素60%、アルゴン40%の混合ガスを用い、イオンビーム加速電圧200?1000eV、イオンビーム電流10?100mAの範囲の酸化条件で調整すれば、酸化金属部NiOx(x≦1)の酸化程度を制御できる。また、金属膜における非酸化部(Ni)の形成中はイオンビームの照射を停止しながら金属膜のRFマグネトロンスパッタ成膜を行う。
【0044】
そして、酸化ケイ素(SiO_(2))から成る酸化物誘電体膜との界面における化学量論組成を有するNiO酸化金属部と、このNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御パターンと、Niの非酸化部からNiO酸化金属部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御パターンについて、図10と図11に示す。すなわち、NiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御については左から右へ向かう制御パターンが対応し、Niの非酸化部からNiO酸化金属部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御については右から左へ向かう制御パターンが対応する。
【0045】
尚、図10と図11において実線の折れ線で示された制御パターンが「イオンビーム加速電圧」を示し、破線の折れ線で示された制御パターンが「イオンビーム電流」を示している。
【0046】
そして、図10の左から右へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で酸化金属部NiOx(x≦1)を成膜した場合、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化する膜厚は約1nmであり、また、図11の左から右へ向かうイオンビームの制御パターン従った条件で酸化金属部NiOx(x≦1)を成膜した場合、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化する膜厚は約5nmであった。
【0047】
また、Niの非酸化部から化学量論組成を有するNiO酸化金属部へその酸化の程度を次第に変化させるためには、上述したように図10と図11において右から左へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で成膜を行えばよい。」

ウ 「【0048】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0049】
吸収型多層膜NDフィルターにおける酸化物誘電体膜にはSiO_(2)、金属膜にはNiを用いた。
【0050】
そして、基板に50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルムを用い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜を交互に積層して吸収型多層膜NDフィルターを得た。
【0051】
尚、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜の成膜にはアルバック製RFマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットにはSi[住友金属鉱山(株)社製:直径100mm、厚さ5mmのSi]とNi金属[住友金属鉱山(株)社製:直径100mm、厚さ5mmのNi]を用いた。また、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜の成膜速度は0.2nm/秒、Niから成る金属膜(すなわち、酸化金属部と非酸化部)の成膜速度は0.1nm/秒で行い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜の成膜時のみ酸素を導入した。
【0052】
一方、Niから成る金属膜の上記SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域に形成する酸化金属部NiOx(x≦1)の成膜には、DCイオンビーム法を併用した。その条件として、イオン化ガスには酸素60%、アルゴン40%の混合ガスを用い、イオンビーム加速電圧200?1000eV、イオンビーム電流10?100mAの酸化条件で調整して酸化金属部NiOx(x≦1)の酸化程度を制御し、金属膜におけるNiの非酸化部の形成中は、イオンビームの照射を停止しながらRFマグネトロンスパッタ成膜した。
【0053】
そして、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜との界面における化学量論組成を有するNiO酸化金属部と、このNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御パターンについて図10(図面左から右へ向かう制御パターン)に示す。この図10の左から右へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で酸化金属部NiOx(x≦1)を成膜した場合、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化するNiOx(x≦1)の膜厚は約1nmであった。また、Niの非酸化部から化学量論組成を有するNiO酸化金属部へNiOx(x≦1)を次第に変化させるため、図10の右から左へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で成膜を行った。
【0054】
得られた実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターの膜構成を以下の表1に示し、また、この吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を図5に、分光反射特性を図6にそれぞれ示す。
【0055】
【表1】

・・・略・・・
【0063】
【表4】
・・・略・・・
[評 価]
(1)分光特性の評価について
実施例1と実施例2に吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性をそれぞれ図5、図7に示し、また、分光反射特性を図6、図8に示す。
【0064】
そして、表3に示された膜構成を有する比較例1に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性(図1のグラフ図参照)と分光反射特性(図2のグラフ図参照)との比較から確認されるように、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化するNiOx(x≦1)の膜厚が5nm程度までなら分光特性はほとんど変わらないことが理解される。
(2)付着力の評価について
柔らかいフィルムに成膜された吸収型多層膜NDフィルターの付着力を調べる方法として、従来から知られているテープテスト(MIL-M-13508-C)をモディファイしたテストを行った。
【0065】
具体的には、各吸収型多層膜NDフィルターについて、基板であるフィルムを幅10mm、長さ100mmの短冊状に切断し、かつ、ゆるやかにU字型に折り曲げたまま、折り曲げ部を介し対峙する一対の両端面を直進ステージに固定された平行平板で挟み、直進ステージを移動させて一対の両端面の間隔を次第に狭くしていき、U字部分にひび割れが発生する間隔(ひび割れ発生最大曲率半径×2)を求めた。
【0066】
そして、ひび割れが発生した部分にテープを貼り付け、このテープを引き剥がすテープテストを行った。ひび割れが発生して捲れ上がっている部分はすでにフィルムから浮き上がっているので付着力が強くとも膜は剥れてしまうが、付着力が強力であればひび割れとひび割れの浮き上がっていない間の膜はテープに張り付いて剥れることはない。
【0067】
この結果を表5に示す。
【0068】
【表5】

各実施例に係る吸収型多層膜NDフィルターのひび割れが発生し浮き上がってしまった部分はテープテストにより剥離してしまったが、ひび割れとひび割れの間の膜部分(すなわち、吸収型多層膜)はテープテストで剥れることは無かった。
【0069】
このことから、金属膜における基板並びに酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域に形成された酸化金属部NiOx(x≦1)の作用によりその付着力が強力であることを示している。
・・・略・・・
【0071】
このことから、従来例(比較例1)に係る吸収型多層膜NDフィルターと比較し、各実施例に係る吸収型多層膜NDフィルターは、基板と金属膜との間並びに金属膜と酸化物誘電体膜との付着力が著しく改善されていることが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、酸化物誘電体膜と金属膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所と、酸化物誘電体膜と酸素欠損のある光吸収性を有する金属酸化物膜とを組み合わせた吸収型多層膜の長所とを併せ持った吸収型多層膜NDフィルターとすることができるので、組込みスペースが狭い小型で薄型のデジタルカメラに用いる吸収型多層膜NDフィルターとして好適に利用される可能性を有している。」

エ 「【図5】



オ 「【図6】



カ 「【図9】




キ 「【図10】



(2) 引用発明
ア 引用例5の【0049】?【0054】、【0055】【表1】、【0071】、図5及び図10には、引用例5でいう「本発明」に係る「吸収型多層膜NDフィルターの製造法」(【0041】)の実施例1が記載されている。
また、引用例5の【0045】によれば、「図10」「において実線の折れ線で示された制御パターンが「イオンビーム加速電圧」を示し、破線の折れ線で示された制御パターンが「イオンビーム電流」を示している」。

イ 前記(1)ア?キ及び前記アより、引用例5には、「吸収型多層膜NDフィルターの製造方法」の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 基板に50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルムを用い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜を交互に積層した吸収型多層膜NDフィルターの製造方法であって、
SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜の成膜にはRFマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットには直径100mm、厚さ5mmのSiと直径100mm、厚さ5mmのNiを用い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜の成膜速度は0.2nm/秒、Niから成る金属膜(すなわち、酸化金属部と非酸化部)の成膜速度は0.1nm/秒で行い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜の成膜時のみ酸素を導入し、
Niから成る金属膜のSiO_(2)から成る酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域に形成する酸化金属部NiOx(x≦1)の成膜には、DCイオンビーム法を併用し、その条件として、イオン化ガスには酸素60%、アルゴン40%の混合ガスを用い、イオンビーム加速電圧200?1000eV、イオンビーム電流10?100mAの酸化条件で調整して酸化金属部NiOx(x≦1)の酸化程度を制御し、金属膜におけるNiの非酸化部の形成中は、イオンビームの照射を停止しながらRFマグネトロンスパッタ成膜し、
SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜との界面における化学量論組成を有するNiO酸化金属部と、このNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御パターンは、以下の図10(図面左から右へ向かう制御パターン)に示すとおりであり、図10において実線の折れ線で示された制御パターンがイオンビーム加速電圧を示し、破線の折れ線で示された制御パターンがイオンビーム電流を示し、この図10の左から右へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で酸化金属部NiOx(x≦1)を成膜した場合、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化するNiOx(x≦1)の膜厚は約1nmであり、Niの非酸化部から化学量論組成を有するNiO酸化金属部へNiOx(x≦1)を次第に変化させるため、図10の右から左へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で成膜を行い、
得られた吸収型多層膜NDフィルターの膜構成は以下の表1に示したとおりであり、この吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性は以下の図5に示したとおりであり、
基板と金属膜との間並びに金属膜と酸化物誘電体膜との付着力が著しく改善されている、
吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
図10

表1

図5



2 対比
(1) 対比
ア 基板
引用発明の「吸収型多層膜NDフィルター」は、「基板に50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルムを用い、SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜を交互に積層した」ものである。
そうすると、引用発明の「50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルム」は、「SiO_(2)から成る酸化物誘電体膜とNiから成る金属膜を交互に積層」するための「基板」として「用い」られるものである。
してみると、引用発明の「50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルム」は、本願発明1の「基板」に相当する。

イ Ni及び光吸収層
(ア) 引用発明(「吸収型多層膜NDフィルターの製造方法」)は、「Niから成る金属膜の成膜にはRFマグネトロンスパッタ装置を用い」、「ターゲットには」「Niを用い」、「Niから成る金属膜(すなわち、酸化金属部と非酸化部)の成膜速度は0.1nm/秒で行い」、「Niから成る金属膜のSiO_(2)から成る酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域に形成する酸化金属部NiOx(x≦1)の成膜には、DCイオンビーム法を併用し」、「イオン化ガスには酸素60%、アルゴン40%の混合ガスを用い、イオンビーム加速電圧200?1000eV」「の酸化条件で調整して酸化金属部NiOx(x≦1)の酸化程度を制御し、金属膜におけるNiの非酸化部の形成中は、イオンビームの照射を停止しながらRFマグネトロンスパッタ成膜し」、「酸化物誘電体膜との界面における化学量論組成を有するNiO酸化金属部と、このNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度を次第に変化させるためのイオンビームの制御パターンは」、「図10(図面左から右へ向かう制御パターン)に示すとおりであり、図10において実線の折れ線で示された制御パターンがイオンビーム加速電圧を示し」、「この図10の左から右へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で酸化金属部NiOx(x≦1)を成膜した場合、化学量論組成を有するNiO酸化金属部からNiの非酸化部へその酸化の程度が変化するNiOx(x≦1)の膜厚は約1nmであり、Niの非酸化部から化学量論組成を有するNiO酸化金属部へNiOx(x≦1)を次第に変化させるため、図10の右から左へ向かうイオンビームの制御パターンに従った条件で成膜を行」うものである(合議体注:図10は、前記1(2)イに示すとおりである。)。

(イ) 前記アに記載した引用発明の「吸収型多層膜NDフィルター」の構造及び前記(ア)に記載した引用発明の製造工程からみて、引用発明は、(A)「50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルム」に対し、「ターゲット」を「Ni」とする「RFマグネトロンスパッタ装置を用い」て、「酸化金属部と非酸化部」から構成される「Niからなる金属膜」を成膜し、(B)「Niからなる金属膜」における「酸化金属部」の成膜は、「DCイオンビーム法を併用し」て、「イオン化」した「酸素」「ガス」及び「アルゴン」「ガス」の「混合ガス」を「イオンビーム」として「50mm角に切断した厚さ100μmのPC(ポリカーボネート)フィルム」に「照射」しながら行い、「非酸化部」の成膜は、この「イオンビーム」の「照射」を「停止」して「RFマグネトロンスパッタ成膜」により行うものと理解できる。

(ウ) 前記アに記載した引用発明の「吸収型多層膜NDフィルター」の構造から、引用発明の「吸収型多層膜NDフィルター」において、「酸化金属部と非酸化部」から構成される「Niからなる金属膜」が、光吸収層として機能することは技術的に明らかなことである。
そうすると、前記(イ)より、引用発明の「Ni」及び「Niからなる金属膜」は、それぞれ本願発明1の「Ni」及び「光吸収層」に相当する。
また、引用発明の「アルゴン」「ガス」は、希ガスである。
そうすると、前記(イ)より、引用発明の「イオン化」した「酸素」「ガス」及び「アルゴン」「ガス」は、それぞれ本願発明1の、「イオン化した」とされる、「酸素ガス」及び「アルゴンガス」に相当し、引用発明の「イオン化」した「酸素」「ガス」及び「アルゴン」「ガス」の「混合ガス」は、本願発明1の「イオン化した」「酸素ガス及び」「希ガスの混合ガス」に相当する。
さらに、マグネトロンスパッタによる製膜は、物理蒸着に分類される。
そうしてみると、前記ア及び前記(イ)より、引用発明の「吸収型多層膜NDフィルターの製造方法」と、本願発明1の「NDフィルタの製造方法」は、「基板に対し、Niを」、「イオン化した」「酸素ガス及び」「希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成する」ものである点において共通する。

ウ NDフィルタ及びその製造方法
前記アと前記イより、引用発明の「吸収型多層膜NDフィルター」は、本願発明1の「NDフィルタ」に相当し、引用発明の「吸収型多層膜NDフィルターの製造方法」は、本願発明1の「NDフィルタの製造方法」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「基板に対し、Niを、イオン化した酸素ガス及び希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成するNDフィルタの製造方法。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「光吸収層を形成する」工程が、本願発明1は、基板に対し、Niを、「一定の電圧によって」イオン化した「一定流量の」酸素ガス及び「所定流量の」希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着する工程であるのに対して、引用発明は、イオン化のためのイオンビーム加速電圧が図10に示される(一定の電圧がステップ状に変化する)ものであり、また、酸素ガス及びアルゴンガスの流量が一定であるかは、一応、不明である点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記光吸収層を形成する前に、前記一定流量、前記所定流量、及び前記一定流量の前記所定流量に対する比の少なくとも何れかを制御することにより、400nm以上700nm以下の波長域において、透過率が単調増加するものとするか、単調減少するものとするか、あるいは平坦なものとするかを制御する」ものであるの対して、引用発明は、このような事項を備えていない点。

3 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(1) 引用例5でいう「発明が解決しようとする課題」は、「吸収型多層膜が酸化物誘電体膜と金属膜とで構成されかつ酸化物誘電体膜と金属膜との付着力が改善された吸収型多層膜NDフィルターを提供し、合わせてこの吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を提供する」(【0011】)ことである。
また、引用例5でいう「発明」の「課題を解決するための手段」について、引用例5には、「上記課題を解決するため、酸化物誘電体膜と金属膜とで構成される吸収型多層膜の上記金属膜について、その酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域を酸化させて酸化金属部を形成したところ、上記酸化物誘電体膜と金属膜との付着力が改善されることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。」(【0012】)と記載されている。
そうすると、引用発明は、「酸化物誘電体膜と金属膜とで構成される吸収型多層膜の上記金属膜について、その酸化物誘電体膜との界面およびその近傍領域を酸化させて酸化金属部を形成」することによって、「上記酸化物誘電体膜と金属膜との付着力」を「改善」するとの技術思想に基づくものと理解できる。

(2) ここで、「吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性」を示す図5から、引用発明の製造方法により得られた吸収型多層膜NDフィルター」の400?700nmの「分光透過率」は、35%?37%の範囲でほぼ一定となっていることが把握できる。
また、引用発明の「吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性」に関連し、引用例5の【0002】には、「NDフィルター(Neutral Density Filter)とは、光線の可視スペクトル域における各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透過率を有する光学フィルターで、透過光量を減衰させる目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられる。」との記載がある。さらに、引用例5の【0040】には、「本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいては、上記基板と吸収型多層膜との間に、両者の密着性を向上させかつ吸収型多層膜に生じる応力を緩和させる作用を有する密着層を設けてもよい。」、「密着層の厚みは1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。・・・略・・・厚みが10nmを越えると透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性が得られなくなる恐れがあるためである。」との記載がある。
引用例5の上記記載に接した当業者は、得られる吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率として、可視スペクトル域(400nm以上700nm以下)においてほぼ均等・平坦なものが前提となっていると理解する。

(3) 引用発明の技術思想は、上記(1)で述べたとおりのものであるから、引用発明は、「光吸収層を形成する前に、前記一定流量、前記所定流量、及び前記一定流量の前記所定流量に対する比の少なくとも何れかを制御することにより、400nm以上700nm以下の波長域において、透過率が単調増加するものとするか、単調減少するものとするか、あるいは平坦なものとするかを制御する」という、本願発明の技術思想とは異なる技術思想のものである。また、上記(2)で述べたとおり、引用発明は、可視スペクトル域における分光透過率がほぼ均等・平坦であるNDフィルターを前提としたものであるから、そこに、当業者を、本願発明1の技術思想に向かわせるような動機付けとなるものはない。そして、本願発明1の技術思想は、引用例5はもとより、当審拒絶理由で引用された引用例6(特開2005-326687号公報)にも記載も示唆もされていない。さらに、Niを蒸着することにより光吸収層を形成するNDフィルタにおいて、光吸収層を形成する前に、(光吸収層を形成する際に照射される)イオン化した酸素ガスの一定流量、アルゴンガスの所定流量及び酸素ガスの一定流量のアルゴンガスの所定流量に対する比の少なくともいずれかを制御することにより、400nm以上700nm以下の波長域において、透過率が単調増加するものとするか、単調減少するものとするか、あるいは平坦なものとするかを制御することは、当業者にとって自明のことではなく、また、本件出願前に当業者に周知の技術的事項ともいえない。
そうしてみると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。

(4) 以上のとおりであるから、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用例5に記載された発明及び引用例6に記載された周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

4 本願発明2?本願発明3について
本願発明2?本願発明3は、本願発明1の構成に対して、さらに他の発明特定事項を付加してなる「NDフィルタの製造方法」である。
そうしてみると、上記3で示した理由と同様な理由により、本願発明2?本願発明3についても、たとえ当業者といえども、引用例5に記載された発明及び引用例6に記載された周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

第3 原査定の拒絶の理由について
本願発明1?本願発明3と、原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(特開2009-265579号公報)の実施例1(【0010】?【0012】)の記載から理解される「多層膜NDフィルター」を製造する方法の発明とを対比すると、少なくとも、前記「第2」2(2)イの相違点1及び相違点2と同様な相違点が見いだされる。そして、原査定の拒絶の理由で引用された引用例2(特開2007-248495号公報)、引用例3(特開平10-186130号公報)及び引用例4(特開2005-17986号公報)を含めて検討したとしても、前記「第2」3で述べた理由と同様な理由により、相違点に係る本願発明1の構成に至らない。
してみると、本願発明1?本願発明3は、引用例1に記載された発明、引用例2?引用例3に記載された周知技術及び引用例4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第4 当合議体が通知した拒絶の理由について
1 理由2(明確性)について
本件補正により、当合議体が通知した拒絶の理由2(明確性)は解消した。

2 理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について
本願発明1?本願発明3と引用発明を対比すると、少なくとも前記「第2」2(2)イで述べた相違点が見いだされるから、本願発明1及び本願発明3と、引用発明は同一であるということができない。
また、前記「第2」で述べたとおりであるから、本願発明1?本願発明3は、引用例5に記載された発明及び引用例6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由及び当合議体が通知した拒絶の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-29 
出願番号 特願2016-167068(P2016-167068)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 大思  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 下村 一石
河原 正
発明の名称 NDフィルタの製造方法  
代理人 園田 清隆  
代理人 石田 喜樹  
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