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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1375655
審判番号 不服2020-4685  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-07 
確定日 2021-07-20 
事件の表示 特願2016-220613「情報処理装置、情報処理方法、および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日出願公開、特開2018- 77765、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月11日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 7月22日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月 4日付け:拒絶査定
令和 2年 4月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 3月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 5月 7日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定及び当審で通知した拒絶の理由の概要
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定(令和2年2月4日付け拒絶査定)の主な拒絶の理由は次のとおりである。
(1)理由1(発明該当性) この出願の請求項1?10に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

「前記取得部により取得された前記複数の素性情報に基づいて、前記ユーザの年代を推定する」という記載からは、素性情報をどのように用いてユーザの年代を推定するかが特定されていないから、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工を実現するための、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえない。

(2)理由3(進歩性) この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:林 佑磨、諏訪 晴士、山名 早人 、“非テキスト情報のみを用いたAROWによる効率的なCTR予測モデルの構築”、第7回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム (第13回日本データベース学会年次大会) DEIM2015、電子情報通信学会データ工学研究専門委員会 日本データベース学会 情報処理学会 データベースシステム研究会、2015年3月4日[検索日2019年7月22日]、第1-8頁
周知文献B:中村 健二、井上 健治、小柳 滋、「著者属性の推定結果を用いたプロフの出会い目的の書き込み検出のための教師データ自動構築手法」、情報処理学会論文誌 論文誌トランザクション 2011(平成23)度[CD-ROM]、一般社団法人情報処理学会、2012年5月1日[検索日2019年7月22日]、第4巻、第53-69頁(周知技術を示す文献)

2 当審で通知した拒絶の理由の概要
当審で通知した拒絶理由(令和3年3月4日付けの拒絶理由)の概要は次のとおりである。

(1)理由1(進歩性) 令和2年4月7日に提出された手続補正書の請求項1、2、9、10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1の記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特許第5318349号公報

(2)理由2(明確性) 令和2年4月7日に提出された手続補正書の請求項8の「前記複数の素性情報にユーザの年代を対応付けたデータベースから、前記複数の素性情報に対するユーザの年代の正解値と、当該データベースから取得した前記複数の素性情報に基づいて前記推定部が推定したユーザの年代と、当該推定した年代が正解値としての年代に合致した割合を含む評価用データを作成し」との記載における「前記複数の素性情報にユーザの年代を対応付けたデータベースから」なる事項が、それ以降の如何なる事項を修飾しているのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第3 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和3年5月7日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ユーザの操作に基づくキーワードを含む複数の素性情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記複数の素性情報に基づいて、前記ユーザの年代を推定する推定部と
を備え、
前記推定部は、
前記複数の素性情報のそれぞれに基づいて各要素の値が決定される特徴ベクトルを生成する特徴ベクトル生成部と、
前記複数の素性情報のそれぞれを同じ固定長の値に変換する変換部とを備え、
前記特徴ベクトル生成部は、前記固定長の値が取り得る範囲に対応する次元数を持つ前記特徴ベクトルを生成し、前記特徴ベクトルの各要素の値のうち前記変換部により変換された固定長の値に対応する要素の値を所定の値に設定し、
前記推定部は、
年代が既知の複数のユーザについて生成される前記特徴ベクトルを入力データ、前記複数のユーザの既知の年代を正解データとし、前記複数の入力データのそれぞれに重みマトリクスを乗算し、バイアスベクトルを加算することによって得られた出力データが前記正解データに近いほど小さくなる損失関数を小さくするように学習された重みマトリクスとバイアスベクトルを用いて、
前記特徴ベクトル生成部により生成された特徴ベクトルに前記学習された重みマトリクスを乗算し、前記学習されたバイアスベクトルを加算することによって得られた値を用いて、ユーザが各年代に該当する確率を算出する、
情報処理装置。」

なお、本願発明2?6は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7は本願発明1を方法の発明としたもの、本願発明8は本願発明1をプログラムの発明としたものである。


第4 当審で通知した拒絶の理由1(進歩性)について
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1
当審で通知した拒絶理由で引用した引用文献1(特許第5318349号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。以下同じ。)

「【0010】
前記から理解できるように、キーワード対象設定(keyword-targeted)広告又はコンテンツ対象設定(content-targeted)広告等の対象設定広告システムは、非常に有用な形式の広告を提供する。ただし、通常、関連性のある広告を供給できるオンライン広告システムも、多くの場合、特定のユーザに最も適した関連性のある広告を選択することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、オンライン広告の性能を改善する必要性がある。さらに具体的には、要求を提出したユーザに対する、例えば検索クエリー又は文書要求等の、何らかのユーザ要求のために供給される広告の関連性を高める必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、広告を採点するために使用される一致を決定するための方法及び装置を説明する。このような方法及び装置は、(a)(i)広告の広告待ち受けページのユーザプロファイル情報及び/又は広告の対象を設定するために使用されるユーザプロファイル情報、及び(ii)広告が表現される先のユーザのユーザプロファイル情報を使用して、第1の一致値を求めてよく、(b)(i)広告の待ち受けページのユーザプロファイル情報及び/又は広告の対象を設定するために使用されるユーザプロファイル情報、及び(ii)広告が供給される文書のユーザプロファイル情報を使用して、第2の一致値を求めてよく、(c)第1の一致値と第2の一致値を使用して広告を採点するために使用される一致を決定してよい。
【0013】
本発明は、前記のような方法及び装置において、あるいはユーザプロファイル情報を使用して広告の対象を設定するための他の方法及び装置において、広告の広告待ち受けページのユーザプロファイル情報の少なくとも一部、広告の対象設定に使用されるユーザプロファイル情報の少なくとも一部、ユーザのユーザプロファイル情報の少なくとも一部、及び/又は文書のユーザプロファイル情報の少なくとも一部が、推測されてよいことも教示する。
【0014】
本発明の一実施形態では、ユーザのためのユーザプロファイル情報は、(a)ユーザのために初期ユーザプロファイル情報を決定すること、(b)ユーザのためにユーザプロファイル情報を推測すること、及び(c)初期ユーザプロファイル情報と推測されたユーザプロファイル情報の両方を使用して、ユーザのためのユーザプロファイル情報を決定することによって、決定されてよい。ユーザのための初期ユーザプロファイル情報は、ユーザによって提出された過去の検索クエリー、及び/又はユーザによる過去の文書の選択を使用して決定されてよい。」

「【0044】
(「UPI」とも呼ばれる)「ユーザプロファイル情報」は、個人ユーザ又はユーザのグループについての任意の情報を含んでよい。このような情報は、ユーザによって提供されてよく、ユーザ情報を公開することを許可されているサードパーティによって提供されてよく、及び/又はユーザアクションから引き出されてよい。特定のユーザ情報は、同じユーザの他のユーザ情報及び/又は他のユーザのユーザ情報を使用して演繹又は推測できる。UPIは多様なエンティティと関連付けられてよい。「ユーザUPI」は特定のユーザ又はユーザのグループと関連付けられるユーザプロファイル情報である。「文書UPI」は、文書と関連付けられるユーザプロファイル情報である。例えば、文書UPIは、文書を要求した又は文書にアクセスしたユーザの多様なユーザUPIの複合表現であってよい。「広告待ち受けページUPI」は特定のタイプの文書UPIであり、おそらく彼らが広告を選択した(例えばクリックした)ことに応じて、ある特定のウェブページにアクセスした、あるいはある特定のウェブページで購入を完了した多様なユーザの複合表現であってよい。「対象設定UPI」は、ユーザプロファイル供給制約を含んでよい。例えば、前立腺がん検診のための広告は、属性「男性」及び「年齢45歳以上」を有するユーザプロファイルに限定される可能性がある。
【0045】
本発明の多様な例示的な実施形態は、ここで第4.2項に説明される。
【0046】
第4.2項 例示的な実施形態
第4.2.1項 例示的なユーザ情報
図4は、本発明にしたがった方法でユーザプロファイル情報(UPI)を記憶するために使用されてよい、例示的なデータ構造400である。図示されていないが、そのデータ構造400は識別子を含んでよい。このような識別子は、ある特定のユーザ、ユーザのグループ、文書、広告、広告待ち受けページ等と、UPIとを関連付けるために使用されてよい。UPIは、1つ以上のUPI属性420に関連する情報410の1つ以上の集合体を含んでよい。各属性420は、関連付けられた値430とスコア440を有してよい。
【0047】
UPI属性420は、例えば、地理情報、年齢又は年齢層、関心のある話題、読書レベル、収入、及び広告の対象を設定するために適した他の人口統計データ等の、ユーザの背景及び関心に関する情報を含んでよい。UPI属性420と関連付けられた値430は、量的(離散値又は連続値、例えば年齢=58歳、年収=55、000ドル、居住都市=サンフランシスコ、カリフォルニア州(San Francisco,CA)又は質的(集合の中、又は集合の中ではない、例えば、給料が$50,000-$100,000?=イエス;米国在住か?=イエス)であってよい。各UPI属性420及び値430は、属性の値が正しい確率に関連する関連スコア440を有してよい。UPI属性の例は以下の1つ以上を含んでよい。
(中略)
【0051】
第4.2.2.1項 UPIを使用する広告採点
広告の対象設定されたUPI(及び/又は広告の待ち受けページのUPI)が文書UPIに一致する(例えば、文書を要求したユーザの平均的なUPI)に一致するホストサイト又はページに広告を掲載すること、及び/又はUPIが広告(及び/又は広告の待ち受けページのUPI)のターゲットUPIに一致するユーザに広告を供給することが望ましい場合がある。
【0052】
UPIを使用する強化広告対象を用いると、複数の広告のそれぞれのスコアは、ユーザのUPI、文書のUPI、広告待ち受けページのUPI、及び/又は広告対象設定UPIの少なくともいくつかを使用して決定されてよい。少なくとも1つの広告は順位で順序付けられ、フィルタリングされ、及び/又は少なくとも決定されたスコアを使用して複数の広告から選択されてよい。
【0053】
例えば、広告スコアはUPI一致値の関数であってよい。図5を参照すると、このようなUPI一致値は、(i)ユーザ(又はユーザグループ)512と関連付けられたUPI情報514と、ユーザ512によって要求される(又はアクセスされる)文書(例えば、ウェブページ)と関連付けられたUPI情報514との一致値(一致値1)、(ii)ユーザ(又はユーザグループ)512と関連付けられたUPI情報514と、検討中の広告の待ち受けページ532と関連付けられたUPI情報534との一致値(一致値2)、(iii)ユーザによって要求される(又はアクセスされる)文書522と関連付けられたUPI情報524と、検討中の待ち受けページ532と関連付けられるUPI情報534との一致値(一致値3)、(iv)ユーザ(又はユーザグループ)512と関連付けられたUPI情報514と、検討中の広告542と関連付けられたUPI広告対象設定情報544との一致値(一致値4)、及び(v)ユーザによって要求される又はアクセスされている文書522と関連付けられたUPI情報524と、検討中の広告542と関連付けられたUPI広告対象設定情報544の一致値(一致値5)のうち、1つ以上の関数であってよい。
(中略)
【0057】
地形、話題、ユーザ年齢範囲、言語等の幅広い属性は、例えば機械学習分類子を使用して文書とユーザについて計算できる。また、このような幅広い属性は、マッチングにおいて単語と句のようなより狭い属性とも一緒に使用できる。
【0058】
当然、広告のスコアは、例えば、検索クエリーに、又は文書のコンテンツに対するその関連性、既定の結果(例えば、インプレッション、選択、コンバージョン等)について広告主が支払う、あるいは支払う用意がある金額、広告の性能の測度(例えば、クリックスルー率、コンバージョン率、ユーザ定格等)、広告主の品質の測度等の、UPI一致に加えて他の要因の関数である場合がある。さらに、異なる中間広告スコアは異なる目的で(例えば、関連性、位置、相対的なレンダリング属性等)使用されてよい。
(中略)
【0068】
図7は、本発明にしたがった方法で(個人又はグループとしての)ユーザUPIを決定するために使用されてよい、例示的な方法700のフロー図である。ユーザのための初期UPIが決定される。(ブロック710)これはユーザによって提出される過去の検索クエリー等のユーザに固有な情報を使用して行われてよい。この行為を実行するための例示的な方法は図9を参照して後述される。ユーザのための追加のUPI情報が推測される。(ブロック720)これは検索結果、選択された検索結果等から推測される情報を使用して実行されてよい。次に、新しい(例えば、拡大された、及び/又は強化された)ユーザUPIは、初期ユーザUPI及び推測されたユーザUPIを使用して決定される。(ブロック730)行為720と730は、方法700が終了される前に一回以上実行されてよい。(ノード740)。行為720と730が、仮想分岐戻り線によって示されるように、繰り返される場合、新しいユーザUPIは、以前のユーザUPIとさらに多くの推測されたユーザUPIを使用して決定されてよい。
【0069】
図6のブロック610から、初期文書UPIが決定されてよいことを想起されたい。図8は、本発明にしたがった方法で初期UPI又はベースライン文書UPIを決定するために使用されてよい、例示的な方法800のフロー図である。示されているように、文書UPI属性値は(例えば、文書のコンテンツ、文書のメタ情報等を使用して)投入されてよい。(ブロック810)
図7のブロック710から、初期ユーザUPIが決定されてよいことを想起されたい。図9は、本発明にしたがった方法で初期UPI又はベースラインユーザUPIを決定するために使用されてよい、例示的な方法900のフロー図である。図示されるように、ユーザUPI属性値は(例えば、ユーザの過去のクエリー情報、ユーザによって明示的に入力される情報等を使用して)投入されてよい(ブロック910)。
【0070】
第4.2.4項 ユーザ情報がどのようにして取得されるのかの例
ユーザ情報を取得する多くの代替方法がある。例えば、属性420と値430のスコア440は、以前に実施されたクエリーの単語を使用して、プロファイルの中のUPI属性420の値430を予測する機械学習分類子を用いて決定できる。例えば、以前の検索クエリーの中の「女性の健康」に関連するキーワードを考えると、分類子はユーザが0.8という確率で女性であると推測してよい。さらに、以前の検索クエリーで日本語の単語が使用されたことを考えると、分類子はユーザが0.9の確率で日本人であると推測してよい等である。2つのUPIのスコア440は、それらが一致するかどうかに影響を及ぼす可能性がある。属性420は、1つのUPIでは「サンフランシスコ」で、もう1つでは「サンホセ」である場合がある。これらの未処理の属性は一致しないが、機械学習分類子は両方のケースで地理的なカテゴリ=「カリフォルニア」を割り当ててよく、一般化されるプロファイル属性は一致するであろう。したがって、機械学習分類子は、ユーザと文書を、地理、話題、民族性、又は読書レベルに関する幅広いカテゴリに分類するために使用されてよい。」

上記で摘記した事項によれば、以下の事項がいえる。
ア 【0047】、【0068】、【0069】及び【0070】の記載によれば、ユーザにより実施された検索クエリー中のキーワードを取得する取得部、及び、取得部により取得したキーワードに基づいてユーザのユーザプロファイル情報(UPI)属性の値を推定する推定部を備えるといえる。
イ 【0047】、【0057】及び【0070】の記載によれば、ユーザのUPI属性としてユーザの年齢層を対象としてよいといえる。
ウ 【0057】及び【0070】)の記載によれば、ユーザのUPI属性の値の推定は機械学習分類子を用い、機械学習分類子はその分類(UPI属性の値)に属する確率を推測するものであるといえる。
エ 【0010】、【0012】、【0044】、【0047】及び【0053】の記載によれば、推定されたUPI属性の値は、広告の対象となるユーザを特定するために使われるといえる。

以上のア?エによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ユーザにより実施された検索クエリー中のキーワードを取得する取得部と、
取得部により取得したキーワードに基づいてユーザのユーザプロファイル情報(UPI)属性の値を推定する推定部と
を備え、
ユーザのUPI属性としてユーザの年齢層を対象としてよく、
ユーザのUPI属性の値の推定は機械学習分類子を用い、機械学習分類子はその分類(UPI属性の値)に属する確率を推測し、
推定されたUPI属性の値は、広告の対象となるユーザを特定するために使われる、
装置」

(2)周知文献1
当審で通知した拒絶理由で示した周知文献1(特表2009-531782号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0051】
1つの実施形態では、例えばニューラルネットワーク構造などの機械学習ユニット、或いは、代替形態では、サポートベクトル機械又は非線形回帰メカニズムは、ベクトル入力を受け取り、各トークンに関連付けられた出力値を決定するよう構成されており、該出力値は、対応するトークンが事象の優勢トークンである確率を示す。続いて、機械学習ユニットは、計算された出力値を配列し、最も高くランク付けされた出力値を選択して、選択された出力値をトークン分析モジュール604に送信する。」

(3)周知文献2
当審で通知した拒絶理由で示した周知文献2(特開2012-113542号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0041】
識別器を生成する手法として機械学習手法がある。例えば、機械学習の学習アルゴリズムとしては様々なものを採用することができ、教師あり学習の線形判別法、SVM及びニューラルネット等を用いることができる。」

(4)周知文献3
当審で通知した拒絶理由で示した周知文献3(特開2012-150586号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0058】
次に、学習処理部60は、ステップS4で出力した複数のラベル付き特徴ベクトルを含むラベル付き特徴ベクトル群を用いて、2値学習器65の機能により、共参照解析の傾向や共参照の頻出するパターンを学習して、学習の結果得られた重みベクトルを出力する(ステップS5)。この学習は、従来の機械学習の方法を用いて行うことができるため、ここでは、その概略について説明する。2値学習器65の機能は、一般的な機械学習の枠組みにおける教師あり識別タスクを目的とした学習処理に対応するものである。教師あり識別タスクにおいてよく用いられる機械学習の手法として、ニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ロジスティック回帰及びブースティング等の手法が挙げられる。いずれの手法においても、ラベル付き特徴ベクトル群を入力とし、重みベクトルを出力とする。重みベクトルの各要素は、特徴ベクトルの各要素と対応付いており、重みベクトルの要素値が大きいほど、それに対応する特徴の要素値が識別結果に強く影響を与えることを意味している。なお各機械学習における数学モデルや解の導出方法に関する説明は省略する。」

(5)周知文献4
当審で通知した拒絶理由で示した周知文献4(特開2016-153931号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0044】
ベクトル関係導出の際の条件の決定はより具体的には、機械学習における機械学習パラメータの決定手法を用いることができる。この際の機械学習の手段として特許文献3に記載されたのSSIの手法をはじめと任意の教師あり機械学習分類器が適用可能である。例えば、サポートベクタマシン、ニューラルネット、ベイズ分類器などを用いることができる。」

(6)周知文献5
当審で通知した拒絶理由で示した周知文献5(特表2009-531782号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0049】
事象の自動カテゴリー化を容易にする方法の他の実施形態では、1つ又はそれ以上のマッチングトークンの検索の後で、検索された各トークンに対応する複数の統計パラメータを含むベクトル値が集められ、公知のニューラルネットワーク構造(図示せず)に入力される。或いは、ベクトル値は、公知のサポートベクトルマシン(図示せず)、公知の非線形回帰メカニズム(図示せず)、或いはベクトル入力を受け付ける何らかの公知の機械学習ユニットに入力することができる。
【0050】
1つの実施形態では、ベクトル値は、検索された各トークンに関係付けられたデータを含む。各トークンに対する統計パラメータは、事象ログにおけるトークンの存在頻度、例えば検索クエリなどの特定の事象の内のトークンの存在頻度、トークンの曖昧値、トークンが事象全体を占める確率、トークンが別のトークンを占める確率、トークンに関連付けられたカテゴリーが事象全体を占める確率、カテゴリーが別のトークンに関連付けられたカテゴリーを占める確率、及び/又は事象内の優勢トークンの決定を可能にする他の公知の統計パラメータを含むことができる。
【0051】
1つの実施形態では、例えばニューラルネットワーク構造などの機械学習ユニット、或いは、代替形態では、サポートベクトル機械又は非線形回帰メカニズムは、ベクトル入力を受け取り、各トークンに関連付けられた出力値を決定するよう構成されており、該出力値は、対応するトークンが事象の優勢トークンである確率を示す。続いて、機械学習ユニットは、計算された出力値を配列し、最も高くランク付けされた出力値を選択して、選択された出力値をトークン分析モジュール604に送信する。
【0052】
1つの実施形態では、対応するトークンが事象の優勢トークンである確率として各出力値を決定することに加えて、機械学習ユニットは更に、優勢トークン決定の精度及び事象全体カテゴリー化の精度の評価を表す信頼性スコアを計算する。次に信頼性スコアは、トークン分析モジュール604に送信される。他の実施形態では、トークン分析モジュール604は、機械学習ユニットから受け取られた情報を用いて信頼性スコアを計算することができる。」

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明は、「ユーザにより実施された検索クエリー中のキーワードを取得する取得部」を備えているところ、「検索クエリー中のキーワード」は「キーワードを含む複数の素性情報」といえることから、引用発明において「ユーザにより実施された検索クエリー中のキーワードを取得する」ことは「ユーザの操作に基づくキーワードを含む複数の素性情報を取得する」ことに他ならない。
このため、「ユーザの操作に基づくキーワードを含む複数の素性情報を取得する取得部」を備えている点で、本願発明1と引用発明とは一致する。

(イ)引用発明は、「取得部により取得したキーワードに基づいてユーザのユーザプロファイル情報(UPI)属性の値を推定する推定部」を備えており、「ユーザのUPI属性としてユーザの年齢層を対象としてよい」ことから、「前記取得部により取得された前記複数の素性情報に基づいて、前記ユーザの年代を推定する推定部」を備えている点で、本願発明1と引用発明とは一致する。

(ウ)引用発明は、「ユーザのUPI属性の値の推定は機械学習分類子を用い、機械学習分類子はその分類(UPI属性の値)に属する確率を推測」し、「推定されたUPI属性の値は、広告の対象となるユーザを特定するために使われ」ている。
ここで、引用発明における推定は推定部で行われていることは明らかであるとともに、「ユーザのUPI属性の値の推定は機械学習分類子を用い、機械学習分類子はその分類(UPI属性の値)に属する確率を推測」することは、「学習された重みマトリクスとバイアスベクトルを用いて」確率を推定することに他ならない。
このため、学習が「年代が既知の複数のユーザについて生成される前記特徴ベクトルを入力データ、前記複数のユーザの既知の年代を正解データとし、前記複数の入力データのそれぞれに重みマトリクスを乗算し、バイアスベクトルを加算することによって得られた出力データが前記正解データに近いほど小さくなる損失関数を小さくするよう」な学習である点、及び、「前記特徴ベクトル生成部により生成された特徴ベクトルに前記学習された重みマトリクスを乗算し、前記学習されたバイアスベクトルを加算することによって得られた値を用い」る点を除き、本願発明1と引用発明は、「推定部」が「学習された重みマトリクスとバイアスベクトルを用いて」、「ユーザが各年代に該当する確率を算出」している点で共通する。

(エ)引用発明は「装置」であるところ、推定などの情報処理が行われているから、引用発明の「装置」は「情報処理装置」であるといえる。
このため、本願発明1及び引用発明は、「情報処理装置」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ユーザの操作に基づくキーワードを含む複数の素性情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記複数の素性情報に基づいて、前記ユーザの年代を推定する推定部と
を備え、
前記推定部は、
重みマトリクスとバイアスベクトルを用いて、ユーザが各年代に該当する確率を算出する、
情報処理装置。」

<相違点>
(相違点1)
素性情報に基づく推定部の入力が、本願発明1は複数の素性情報のそれぞれに基づいて各要素の値が決定される特徴ベクトルであるのに対し、引用発明は基づいている素性情報が特徴ベクトルであるか否かは明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1は、推定部が「前記複数の素性情報のそれぞれに基づいて各要素の値が決定される特徴ベクトルを生成する特徴ベクトル生成部と、前記複数の素性情報のそれぞれを同じ固定長の値に変換する変換部とを備え」るとともに、「前記特徴ベクトル生成部は、前記固定長の値が取り得る範囲に対応する次元数を持つ前記特徴ベクトルを生成し、前記特徴ベクトルの各要素の値のうち前記変換部により変換された固定長の値に対応する要素の値を所定の値に設定し」ているのに対して、引用発明は、このような構成となっていない点。

(相違点3)
本願発明1は、推定部がニューラルネットワークで構成されるため、ニューラルネットワークの重みマトリクスとバイアスベクトルの機械学習が「年代が既知の複数のユーザについて生成される前記特徴ベクトルを入力データ、前記複数のユーザの既知の年代を正解データとし、前記複数の入力データのそれぞれに重みマトリクスを乗算し、バイアスベクトルを加算することによって得られた出力データが前記正解データに近いほど小さくなる損失関数を小さくするように」するものであるのに対して、引用発明は、機械学習分類子の機械学習をどのように行うかについて特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1は、推定部がニューラルネットワークで構成され、そのため、「前記特徴ベクトル生成部により生成された特徴ベクトルに前記学習された重みマトリクスを乗算し、前記学習されたバイアスベクトルを加算することによって得られた値を用いて」算出するものであるのに対し、引用発明は、ユーザの操作に基づくキーワードを含む素性情報に基づいて行う機械学習分類子についての具体的な構成が特定されていない点。

相違点の判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
周知文献1は、上記1(2)に摘記した事項が記載されているところ、キーワード等の素性情報を特徴ベクトルとすること、及び、ニューラルネットワークの入力をベクトルとすることが周知事項であることを示す文献である。
周知文献2?4は、上記1(3)?同(5)に摘記した事項が記載されているところ、機械学習分類子としてニューラルネットワークを用いることが周知事項であることを示す文献である。
さらに、周知文献5は、上記1(6)に摘記した事項が記載されているところ、ユーザのオンラインアクティビティからユーザプロファイルスコアを生成する際に、ニューラルネットワークを採用したものとすることが周知事項であることを示す文献である。
しかしながら、周知文献1?5に、相違点2に係る技術事項、すなわち、推定部が「前記複数の素性情報のそれぞれに基づいて各要素の値が決定される特徴ベクトルを生成する特徴ベクトル生成部と、前記複数の素性情報のそれぞれを同じ固定長の値に変換する変換部とを備え」ること、及び、「前記特徴ベクトル生成部は、前記固定長の値が取り得る範囲に対応する次元数を持つ前記特徴ベクトルを生成し、前記特徴ベクトルの各要素の値のうち前記変換部により変換された固定長の値に対応する要素の値を所定の値に設定」することは記載されていない。
このため、周知文献1?5の記載を参酌しても、引用発明から相違点2に係る事項を当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、当該事項を記載する他の引用文献も発見されない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知文献1?5の記載に基づいて容易に発明できたものではない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、少なくとも、上記(1)で検討した相違点2に係る本願発明1の技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び周知文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

(3)本願発明7及び8について
本願発明7は本願発明1を方法の発明としたもの、本願発明8は本願発明1をプログラムの発明としたものであり、本願発明7及び8は、少なくとも、上記(1)で検討した相違点2に係る本願発明1の技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び周知文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

(4)本願発明3?6について
本願発明3?6については、当審では進歩性に係る拒絶理由を通知しておらず、進歩性に係る拒絶の理由を発見しない。


第5 当審で通知した拒絶の理由2(明確性)について
当審が令和3年3月4日付けで通知した明確要件違反の拒絶理由は、令和2年4月7日の手続補正により補正された請求項8の「前記複数の素性情報にユーザの年代を対応付けたデータベースから、前記複数の素性情報に対するユーザの年代の正解値と、当該データベースから取得した前記複数の素性情報に基づいて前記推定部が推定したユーザの年代と、当該推定した年代が正解値としての年代に合致した割合を含む評価用データを作成し」との記載に関するものであるところ、令和3年5月7日の手続補正により、当該請求項8は削除された。
このため、当該拒絶理由は解消された。


第6 原査定の拒絶の理由について
1 理由1について
原査定の拒絶の理由1は上記第2の1(1)に記載したとおりのものであるところ、本願発明1において、「推定部」は、「前記特徴ベクトル生成部により生成された特徴ベクトルに前記学習された重みマトリクスを乗算し、前記学習されたバイアスベクトルを加算することによって得られた値を用いて、ユーザが各年代に該当する確率を算出する」から、本願発明1は、素性情報から、ユーザの年代を推定するためのソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順が特定されたものとなっている。
本願発明2?8についても同様である。
よって、当該拒絶理由は解消された。

2 理由3について
原査定の拒絶の理由3は上記第2の1(2)に記載したとおりのものであるところ、引用文献Aには、オンライン型分類器(AROW)で広告クリック率の予測を行うことが記載され、周知文献Bには、性別の推定をサポートベクトルマシン(SVM)により行い、年代の推定をマルチクラスSVMによる行うことが記載されているが、本願発明1の「重みマトリクスとバイアスベクトルを用いた」推定とは、その前提となる手法が異なるものであるから、本願発明1は、引用文献Aに記載された発明、周知文献Bに記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
本願発明2?8についても同様である。
よって、原査定を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、2、7及び8は、当業者が引用発明及び周知文献1?5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
本願発明1?8は、引用文献Aに記載された発明及び周知文献Bの記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
本願発明1?8は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしている。
さらに、本願請求項1?8の記載は明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。
したがって、原査定の拒絶の理由及び当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-30 
出願番号 特願2016-220613(P2016-220613)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 1- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 悠太  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 佐藤 聡史
吉田 誠
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、および情報処理プログラム  
代理人 沖田 壮男  
代理人 松沼 泰史  
代理人 渡辺 伸一  
代理人 酒井 太一  
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