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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1375768
審判番号 不服2020-9009  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-29 
確定日 2021-07-02 
事件の表示 特願2016-566924「認証装置の登録のための強化されたセキュリティ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日国際公開,WO2015/168644,平成29年 7月13日国内公表,特表2017-519412〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2015年5月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年5月2日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成28年11月2日付けで特許法184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成30年5月1日付けで審査請求がなされ,平成30年5月10日付けで手続補正がなされ,平成31年2月22日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して令和1年9月9日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,令和2年2月20日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;令和2年2月27日),これに対して令和2年6月29日付けで審判請求がなされたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,令和1年9月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「依拠当事者側で,ユーザの認証部から該ユーザの認証部を登録するための要求を受信することと,
前記ユーザの認証部のセキュアディスプレイ内にコードを表示することと,前記セキュアディスプレイ上に表示された前記コードを前記依拠当事者側へアウトオブバンド通信チャネルを介して送信するよう前記ユーザに求めることと,を含む,セキュアトランザクション確認操作を遂行することと,
前記アウトオブバンド通信チャネルを介して前記依拠当事者側で前記コードを受信することと,
前記コードを使用して前記ユーザのアイデンティティを検証し,肯定的な検証に応答して前記認証部を前記依拠当事者側で応答性良く登録することと,を含む,方法。」(下線は,審判請求人が付加したものである。)

第3.原審における拒絶査定の理由
原審における令和2年2月20日付けの拒絶査定(以下,これを「原審拒絶査定」という)の理由は,概略,次のとおりである。

「3.(実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
5.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 1-16
令和1年9月9日付け手続補正書により補正された請求項1,9は「肯定的な検証に応答して前記認証部を応答性良く登録すること」を記載する。
しかしながら,上記拒絶理由通知書において補正前の請求項1,11に対して述べたと同様,本願明細書の発明の詳細な説明には,認証部を登録することは記載されているものの,認証部を「応答性良く」登録することは,記載も示唆もされていない。
そうすると,補正後の請求項1,9に記載の「前記認証部を応答性良く登録する」ことを,具体的にどのようにして実現するのか,当業者といえども不明である。また,補正後の請求項1,9に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。さらに,補正後の請求項1,9に記載された,認証部を登録することを「応答性良く」行うということが,如何なることを意味するのか,発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明である。請求項1,9を引用する請求項2-8,10-16についても同様のことがいえる。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1-16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。請求項1-16に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではなく,明確なものでもない。

8.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2005-316936号公報
2.特開平09-231172号公報
3.米国特許出願公開第2013/0124422号明細書
4.特開平06-195307号公報
5.特開2013-122736号公報
6.特表2012-503243号公報
7.齋藤孝道,マスタリングTCP/IP 情報セキュリティ編,株式会社オーム社,
2013年9月1日,p.77-80(周知技術を示す文献)」

第4.原審拒絶査定の理由についての当審の判断
1.36条6項1号について
(1)本願の請求項1,及び,本願の請求項9に記載の,
「肯定的な検証に応答して前記認証部を前記依拠当事者側で応答性良く登録する」
に関して,本願明細書の発明の詳細な説明には,
“認証部を依拠当事者側で応答性良く登録する”という記載と同等の記載は存在しない。
そこで,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容から,“認証部を依拠当事者側で応答性良く登録する”という記載内容に相当する内容が読み取れるかについて以下に検討するに,
本願明細書の発明の詳細な説明には,「認証部」の「登録」に関して,段落【0004】に,
「ユーザがクライアント装置上のバイオメトリック装置(例えば,指紋センサ)などの認証装置(又は認証部)に登録する認証技術を記載している。ユーザがバイオメトリック装置に登録すると,バイオメトリック基準データが認証装置のバイオメトリックセンサによって捕捉される(例えば,指をスワイプし,写真を撮影し,音声を録音することなどによって)。ユーザは,その後,認証装置をネットワークを介して1つ以上のサーバ(例えば,同時係属出願に記載されているようなセキュアトランザクションサービスを備えたウェブサイト又は他の依拠当事者)に登録し」,
と記載され,段落【0012】に,
「認証装置をセキュアなサーバに登録すること」,
と記載され,段落【0019】に,
「認証装置のセキュアな登録のための本発明の実施形態の詳細な説明がそれに続く」,
と記載され,段落【0020】に,
「図2は,認証装置を登録するための一連のトランザクションを図示している。登録時に,鍵は認証装置とセキュアトランザクションサーバ132?133のうちの1つとの間で共有される。鍵は,クライアント100のセキュア記憶装置120及びセキュアトランザクションサーバ132?133によって使用されるセキュアトランザクションデータベース120内に記憶される。一実施形態において,鍵は,セキュアトランザクションサーバ132?133のいずれかによって生成された対称鍵である。しかしながら,以下に説明する他の実施形態において,非対称鍵を使用することができる」,
と記載され,段落【0022】に,
「サーバ130は,装置登録の間にクライアントによって提出されなければならないランダム生成チャレンジ(例えば,暗号化ナンス)を生成する」,
と記載され,段落【0039】に,
「クライアントが既にサーバ130に認証装置を登録している場合」,
と記載され,段落【0042】に,
「図示された実施形態において,ユーザは,サーバ130に装置を以前に登録していない」,
と記載され,段落【0048】に,
「認証装置をネットワークを介して登録するための上記の登録技術は,一般にセキュアであるものの,顧客装置が侵害されているという想定の下に動作しておらず,したがって装置上のマルウェアに対して無防備であり得る」,
と記載され,段落【0049】に,
「装置登録時のセキュリティを強化するため,本発明の一実施形態は,アウトオブバンド通信チャネルを含み,使用して,秘密コードを依拠当事者からユーザへ,又はユーザから依拠当事者へ,送信する。このアウトオブバンド通信チャネルは,認証部を登録するために1回のみ使用される。次いで,認証部は,このチャネルの使用を義務付けることなく,後続の認証又はトランザクション確認のために使用され得る」,
と記載され,段落【0053】に,
「ユーザは,認証装置をオンラインサービス(本明細書に記載のようなセキュアトランザクションサービスを有する依拠当事者など)に登録することを試みる。例えば,ユーザは,新しい指紋認証部などの新しい認証装置/機能を有する新しい装置を購入した可能性がある。代替的に,ユーザは,既存のクライアント装置上に新しい認証部をインストールした可能性があり,かつ/又は既存の認証部を使用して初めてオンラインサービスにアクセスしている可能性がある」,
と記載され,段落【0063】に,
「ユーザは,依拠当事者への登録を開始する。例えば,認証部のための公開鍵/秘密鍵のペアを生成するために,図5に示されているような一連のトランザクションが遂行され得る。804において,依拠当事者は,アウトオブバンド方法(例えば,郵便,電子メール,SMSなど)を使用して秘密(例えば,登録された公開鍵のハッシュ)をユーザに送付する」,
と記載されているが,上記引用の「認証部」,或いは,「認証装置」に「登録」に関する記載内容,及び,本願明細書の発明の詳細な説明における,上記引用記載の前後の記載内容を検討しても,本願の請求項1に記載の“認証部を依拠当事者側で応答性良く登録する”こと,特に,「応答性良く登録する」という構成を読み取ることができず,本願明細書の発明の詳細な説明における,上記引用箇所以外の記載内容を加味して検討しても,“認証部を依拠当事者側で応答性良く登録する”という構成を読み取ることができない。

(2)以上,上記(1)において検討したとおりであるから,本願の請求項1,及び,本願の請求項9に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

2.36条6項2号について
上記1.においても指摘した,本願の請求項1,及び,本願の請求項9に記載の,
「肯定的な検証に応答して前記認証部を前記依拠当事者側で応答性良く登録する」,
について,“認証部を依拠当事者側で応答性良く登録する”における“応答性良く登録する”とは,どのような態様を表現するものであるか,本願の請求項1,及び,本願の請求項9に記載の内容,及び,本願の他の請求項に記載の内容を検討しても不明である。

3.36条4項1号について
上記1.,及び,上記2.においても指摘した,本願の請求項1に記載の,
「肯定的な検証に応答して前記認証部を前記依拠当事者側で応答性良く登録する」,
について,上記1.において検討したとおり,「認証部」,或いは,「認証装置」の「登録」に関して,本願明細書の発明の詳細な説明には,上記1.において引用した記載が存在するものの,「認証部」を,「依拠当事者側で応答性良く登録する」ことについては,何ら説明されておらず,「認証部」を,どのようにして「依拠当事者側で応答性良く登録する」のか,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容からは,不明である。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。

4.29条2項について
(1)引用刊行物に記載の事項
ア.平成31年2月22日付けの原審における拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2005-316936号公報(2005年11月10日公開,以下,これを「引用文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0024】
次に,図6に示すフローチャートにおいて,携帯電話端末22は,URLを含むユーザ仮登録完了のメールを受信する(S61)。図9(b)のメール受信画面(符号102)は携帯電話端末22がユーザ仮登録完了のメールを受信した時の画面である。メール受信画面(符号102)において,ユーザがメール本文のURL102aにアクセスすると,仮登録で入力されたパスワードの入力を促すための画面(符号103)に遷移する。ユーザによってテキストボックス103aにPC端末21で入力したパスワードと同じパスワードが入力され,登録ボタン103bがクリックされると,携帯電話端末22は,入力されたパスワードと携帯電話端末22のUIDを商品サーバ1に送信する(S62)。
なお,UIDとは,例えば,ユーザが携帯電話端末22を操作して携帯電話会社の特定のメールアドレスにメールを送信すれば,自動的に付与されるユニークな番号であり,携帯電話会社によって付与された際に,携帯電話端末22の内部に記憶されている。そして,携帯電話端末22がパスワードを送信する場合,例えば,内部に記憶しているUIDを読み出して商品サーバ1に送信する。」

B.「【0025】
UIDならびにパスワードを受信した商品サーバ1は,ユーザ登録部11が,ユーザ情報記憶部15の一時会員レコード検索して仮登録が済んでいるユーザか否かをハッシュ値に基づき確認する(S63)。一時会員レコードが存在する場合(S64,No)は,続いてUIDの不正をチェックする(S65)。ここで,不正であるか否かの判定は,商品サーバ1が携帯電話会社のUIDの管理サーバに問い合わせることにより行われる。
UIDが不正でないことが確認されると,更にパスワードの有効性がチェックされ(S66),問題がない場合に限り本登録される(S67)。このとき,携帯電話端末22に対してアカウント登録終了(OKページ)を示す図9(b)に示すブラウザ画面(符号104)が送信される(S68)。
なお,上記したチェック(S64?S66)に一つでも該当した場合は,その旨がユーザの携帯電話端末22に通知され,ユーザは認証が得られなかったことを知ることができる。」

イ.原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平09-231172号公報(1997年9月5日公開,以下,これを「引用文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

C.「【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は,実施の形態例を示す流れ図である。
【0010】先ず,使用者が新たにパスワードを登録する時,あるいは従来のパスワードを変更して登録更新する時に使用者はコンピュータに対してアクセス操作を行いパスワード登録,更新コマンドを実行する(S1)。これによりコンピュータは提案パスワード表示機能が動作する。
【0011】コンピュータはこのコマンド実行時,次のアクセス時刻情報を取得する。
【0012】a.コマンド実行時の時刻データ
b.コンピュータ使用者が前回コンピュータにアクセスした時刻データ(登録更新時のみ)以上のデータを加工して乱数計算の根を求め,このデータを基に乱数計算を行う(S2)。
【0013】乱数計算結果データ表示用のASCIIコードに(情報交換用米国標準コード)に変換する(S3)。
【0014】変換したデータをディスプレイに表示し,コンピュータの使用者は,この表示された提案パスワードをみてパスワードの入力を行うどうか決定する(S4)。入力を決定した時,コンピュータは計算に使用した情報をクリアする(S5)。
【0015】そしてこの新パスワードを仮登録入力する(S6)。
【0016】新パスワードをキー入力し,この新パスワードが一致したか否かを見る(S7)。これを数回繰り返して確認し,一致した場合は,このパスワードを本登録,あるいは登録されているパスワードを更新して終了する(S8)。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように,本発明による「パスワード登録方法」は,コンピュータに使用者のアクセス時刻のデータをベースに乱数計算させてパスワードを作成し,このパスワードを使用者が確認して後,直ちにコンピュータに登録しているので,パスーワード自身が他人に看取されにくく,またパスワードの作成および登録更新などの手間が著しく軽減できるという効果がある。」

(2)引用文献に記載の発明
ア.上記Aの「ユーザがメール本文のURL102aにアクセスする」という記載,同じく,上記Aの「携帯電話端末22は,入力されたパスワードと携帯電話端末22のUIDを商品サーバ1に送信する(S62)」という記載,及び,上記Bの「UIDならびにパスワードを受信した商品サーバ1は,・・・問題がない場合に限り本登録される(S67)」という記載から,引用文献1においては,
“商品サーバ1が,携帯電話端末22から,前記携帯電話端末22を本登録するためのアクセスを受け付ける”ものであることが読み取れる。

イ.上記Aの「仮登録で入力されたパスワードの入力を促すための画面(符号103)に遷移する。ユーザによってテキストボックス103aにPC端末21で入力したパスワードと同じパスワードが入力され,登録ボタン103bがクリックされると」という記載,上記ア.において引用された上記Aの記載内容,及び,上記1.において検討した事項から,引用文献1においては,
“携帯電話端末22に,前記携帯電話端末22から,商品サーバ1へ,パスワードを送信するための,パスワードの入力を促すための画面が表示されるよう操作が実行される”ものであることが読み取れる。

ウ.上記Aの「携帯電話端末22は,URLを含むユーザ仮登録完了のメールを受信する(S61)」という記載と,上記ア.において引用した上記A,及び,上記Bの記載内容から,引用文献1においては,
“商品サーバ1が,携帯電話端末22からのパスワードを,メールとは異なる通信路で受信する”ものであることが読み取れる。

エ.上記ア.においても引用した,上記Bの「UIDならびにパスワードを受信した商品サーバ1は,ユーザ登録部11が,ユーザ情報記憶部15の一時会員レコード検索して仮登録が済んでいるユーザか否かをハッシュ値に基づき確認する(S63)」という記載,及び,同じく,上記ア.においても引用した,上記Bの「パスワードの有効性がチェックされ(S66),問題がない場合に限り本登録される(S67)」という記載から,引用文献1においては,
“UIDを確認し,パスワードの有効性をチェックし,問題がない場合に限り本登録される”ものであることが読み取れる。

オ.以上,上記ア.?上記エ.において検討した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「商品サーバ1が,携帯電話端末22から,前記携帯電話端末22を本登録するためのアクセスを受け付けることと,
前記携帯電話端末22に,前記携帯電話端末22から,前記商品サーバ1へ,パスワードを送信するための,前記パスワードの入力を促すための画面が表示されるよう操作が実行されることと,
前記商品サーバ1が,前記携帯電話端末22からの前記パスワードを,メールとは異なる通信路で受信することと,
UIDを確認し,前記パスワードの有効性をチェックし,問題がない場合に限り本登録されることとを含む,方法。」

(3)本願発明と引用発明との対比
ア.引用発明において,「商品サーバ1」が,「携帯電話端末22」から,「本登録」のための「アクセス」を受け付けるということは,当該「商品サーバ1」が,「携帯電話端末22」から,「本登録」のための要求を受信することに他ならないので,
引用発明における「商品サーバ1」,「携帯電話端末22」,及び,「本登録するためのアクセスを受け付ける」が,それぞれ,
本願発明における「依拠当事者」,「ユーザの認証部」,及び,「登録するための要求を受信する」に相当する。よって,
引用発明における「商品サーバ1が,携帯電話端末22から,前記携帯電話端末22を本登録するためのアクセスを受け付けること」が,
本願発明における「依拠当事者側で,ユーザの認証部から該ユーザの認証部を登録するための要求を受信すること」に相当する。

イ.引用発明において,「携帯電話端末」には,「パスワードの入力操作を促す画面が表示される」ことから,
引用発明における「画面」が,
本願発明における「セキュアディスプレイ」に相当し,
引用発明における「パスワード」は,「パスワードの入力を促す画面」を介して入力される態様を含むものであり,その際,入力される「パスワード」が,表示される状態である態様を含むものであり,当該「パスワード」は,「商品サーバ1」に送信されるものであるから,
引用発明における「パスワード」と,
本願発明における「コード」とは,
“表示された送信データ”である点で共通し,
引用発明において,「パスワードを送信する」のは,「メールとは異なる通信路」を介して行われるものであるから,
引用発明における「メールとは異なる通信路」は,「メール」の通信路に対して,「アウトオブバンド通信チャネル」と言い得るものであって,
引用発明における「パスワード」についての一連の処理が,「商品サーバ1」が,「携帯電話端末22」の正当性を確認するためのセキュリティ処理に該当することは明らかであるから,
引用発明において,「携帯電話端末22」における「パスワード」についての一連の処理が,
本願発明における「セキュアトランザクション確認操作」に相当することは明らかである。よって,
引用発明における「前記携帯電話端末22に,前記携帯電話端末22から,前記商品サーバ1へ,パスワードを送信するための,前記パスワードの入力操作を促すための画面が表示されるよう操作が実行されること」と,
本願発明における「前記ユーザの認証部のセキュアディスプレイ内にコードを表示することと,前記セキュアディスプレイ上に表示された前記コードを前記依拠当事者側へアウトオブバンド通信チャネルを介して送信するよう前記ユーザに求めることと,を含む,セキュアトランザクション確認操作を遂行すること」とは,
“表示された送信データを依拠当事者側へアウトオブバンド通信チャネルを介して送信するようユーザに求めることと,を含む,セキュアトランザクション確認操作を遂行すること”である点で共通する。

ウ.上記イ.において検討したとおり,
引用発明における「メールとは異なる通信路」が,
本願発明における「アウトオブバンド通信チャネル」に相当するので,
上記イ.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における「前記商品サーバ1が,前記携帯電話端末22からの前記パスワードを,メールとは異なる通信路で受信すること」と,
本願発明における「アウトオブバンド通信チャネルを介して前記依拠当事者側で前記コードを受信すること」とは,
“アウトオブバンド通信チャネルを介して依拠当事者側で送信データを受信すること”である点で共通する。

エ.引用発明において,「UID」を「確認し」,「パスワード」の「有効性をチェック」することは,「携帯電話端末22」の「ユーザ」の「アイデンティティを検証」することに他ならないので,
引用発明における「UIDを確認し,前記パスワードの有効性をチェックし,問題がない場合に限り本登録されること」と,
本願発明における「コードを使用して前記ユーザのアイデンティティを検証し,肯定的な検証に応答して前記認証部を前記依拠当事者側で応答性良く登録すること」とは,
“送信データを用いてユーザのアイデンティティを検証し,肯定的な検証に応答して認証部を依拠当事者側で登録すること”である点で共通する。

オ.以上,上記ア.?エ.において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
依拠当事者側で,ユーザの認証部から該ユーザの認証部を登録するための要求を受信することと,
表示された送信データを依拠当事者側へアウトオブバンド通信チャネルを介して送信するようユーザに求めることと,を含む,セキュアトランザクション確認操作を遂行することと,
アウトオブバンド通信チャネルを介して依拠当事者側で送信データを受信することと,
送信データを用いてユーザのアイデンティティを検証し,肯定的な検証に応答して認証部を依拠当事者側で登録することと,を含む,方法。

[相違点1]
“送信データ”に関して,
本願発明においては,「ユーザの認証部のセキュアディスプレイ内に」「表示」される「コード」であるのに対して,
引用発明においては,「パスワード」である点。

[相違点2]
本願発明においては,「ユーザの認証部のセキュアディスプレイ内にコードを表示すること」を含むのに対して,
引用発明においては,「パスワード」が,「携帯電話端末22」上に表示されるかについては,明確に示されてはいない点。

[相違点3]
“依拠当事者側で登録すること”に関して,
本願発明においては,「依拠当事者側で応答性良く登録すること」であるのに対して,
引用発明においては,「応答性良く登録すること」については,特に言及されていない点。

(4)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1],及び,[相違点2]について
引用文献2の段落【0014】に,「変換したデータをディスプレイに表示し,コンピュータの使用者は,この表示された提案パスワードをみてパスワードの入力を行うどうか決定する」との記載があるように,本願発明における「コード」に相当する“データ”(引用文献2における「変換したデータ」)を表示した後,以降の処理を行うことは,本願の第1国出願前において,当業者には広く知られた技術事項である。
そして,引用発明と,引用文献2に記載の技術事項とは,「パスワード」を用いた処理に関する技術である点で共通するので,
引用発明において,携帯電話端末22の画面に「パスワード」を表示する態様を導入することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1],及び,[相違点2]は,格別のものではない。

イ.[相違点3]について
上記「1.36条6項1号について」において指摘したとおり,「応答性良く登録すること」は,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていないし,本願明細書の発明の詳細な説明から,その具体的な構成が読み取れるものでもない。
そこで,「応答性良く」を単なる字句どおりのものであると解釈すると,通信の技術分野における「データ」の処理等において,処理を「応答性良く」行うことは,当業者が常に考慮する事項である。
したがって,引用発明においても,「本登録」において,何らかの方法を用いて,処理が「応答性良く」行われるよう構成することは,当業者が適宜行い得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

ウ.上記ア.,及び,上記イ.において検討したとおりであるから,[相違点1]?[相違点3]は,格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず,格別なものとは認められない。

第5.むすび
したがって,上記第4の1.?3.において検討したとおり,本願は,特許法36条4項1号,6項1号,同2号に規定する要件を満たしていない。
加えて,上記第4の4.において検討したとおり,本願発明は,引用発明,及び,引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-05 
結審通知日 2021-02-08 
審決日 2021-02-19 
出願番号 特願2016-566924(P2016-566924)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 537- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 石井 茂和
塚田 肇
発明の名称 認証装置の登録のための強化されたセキュリティ  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 大塚 文昭  
代理人 那須 威夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 須田 洋之  

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