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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1375769 |
審判番号 | 不服2020-9770 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-13 |
確定日 | 2021-07-02 |
事件の表示 | 特願2017-517274「直列電池充電及び形成用のシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060955、平成29年10月26日国内公表、特表2017-531983〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は2015年(平成27年)10月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理平成26年10月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 1年 9月 2日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 2月28日 :意見書、補正書 令和 2年 3月10日付け:拒絶査定 令和 2年 7月13日 :審判請求書 令和 2年 8月26日 :手続補正書(方式) 第2 本願発明 本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和2年2月28日提出の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項12】 電池形成方法であって、 第1電池モジュールを充電するべく、エネルギーをエネルギーストレージシステムから第1電池モジュールに転送するステップと、 前記第1電池モジュールに動作自在に結合された第1コントローラにより、前記第1電池モジュールの充電状態を監視するステップと、 前記第1電池モジュールを放電させるべく、前記エネルギーを前記第1電池モジュールから前記エネルギーストレージシステムに転送するステップと、 第2電池モジュールを充電するべく、前記エネルギーを前記エネルギーストレージシステムから前記第2電池モジュールに転送するステップと、 前記第2電池モジュールに動作自在に結合された第2コントローラにより、前記第2電池モジュールの充電状態を監視するステップと、 を含む方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定(令和2年3月10日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 (1)(新規性)この出願の請求項12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)(進歩性)この出願の請求項12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2014-193111号公報 第4 引用文献、引用発明 原査定で引用された引用文献1には、図面ともに以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与した。 ア.「【0004】 電気自動車はこのような電池を数十個から数百個を連結して使用するが、電池集合体を製造する過程で単位モジュールの電池(1つあるいは少数個の電池を直列あるいは並列に接続した構成)を最大容量に充放電しなければならない。そのため、電圧が低い電池の電気エネルギーを相対的に電圧の高い国家交流電力網に変換してリサイクルするものの、変換効率が低いため技術的に様々な困難がある。」 イ.「【0017】 本発明の課題の解決手段は、複数の2次電池を直列に接続した電池列を充放電する装置において、常用電源を両方向DC-ACコンバータを介して電気エネルギーを格納供給するための電気格納装置を経て、電気格納装置に格納された電気エネルギーを用いて1つの両方向DC-DCコンバータを介して定電流源に、直列に接続された複数の2次電池を同時に充放電できるように構成された直流マイクログリッド充放電システムを提供する。 【0018】 本発明の他の課題の解決手段は、両方向DC-DCコンバータを用いた直流マイクログリッド方式を用いたシステム内で充電及び放電を同時に行う場合、放電時に放電する電気を直流充電回路にそのまま利用できるため電力変換による損失を防止でき、充電及び放電が同時に発生しなくても直流状態に直流電気格納装置に電力を格納した後、直流状態で両方向DC-DCコンバータで使用できるように構成された直流マイクログリッド充放電システムを提供する。」 ウ.「【0027】 本発明に係る直流マイクログリッド方式は、いずれかのシステム内で充電及び放電を同時に行うとき、放電器で放電する電気を直流状態でそのまま充電回路にて使用することで交流電源に変換する損失をなくし得る。通常の電池製造工程では同じ工場内で充電及び放電を同時に行うように構成されている。」 【0028】(省略) 【0029】 本発明に係る直流マイクログリッド充放電システムには、直流電気格納装置(Energy Storage Systemなど)を付加して充電及び放電が必ず同時に発生しなくても直流状態で電力を格納し直流状態で使用できる。以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。」 エ.「【0031】 本発明の具体的な実施形態を図面を参照して説明する。図1は、従来の一般的な充放電システムを示す図である。図2は、本発明に係る直流マイクログリッド充放電システムを示す図である。」 オ.「【0035】 本発明の明細書では「直流電気格納装置」と「電気格納装置」の用語を同じ意味として混用して記載する。」 カ.「【0037】 図2において、常用電源が配電盤を介して入力され、配電盤を介して供給される電源を双方向AC-DCコンバータを経て直流電気格納装置に格納される。 【0038】 直流電気格納装置は、電解コンデンサ及び/またはスーパーコンデンサ(1つの容量が数百ファラデー(Faraday)である)などを直列または並列に接続して必要な電圧及び容量で構成したものである。 【0039】 このような構成の場合、充電及び放電が必ず同時に発生しなくても放電時に直流状態で電力が直流状態の電気格納装置に格納され、格納された直流状態の電源は変換損失されることなく充電に直接使用することができる。 【0040】 図2に示すように、本発明は、1つの電気格納装置と制御装置に数十?数百個のトレーに接続された数多いリチウム2次電池を直列接続した電池熱を充電及び放電するよう構成されている。 【0041】 直流電気格納装置(図3の11)を経た電源は、各トレーに1個ずつ設置されている双方向DC-DCコンバータ(図3の12)を経てリニア電流電源(図3の13)に定電流源を作って各電池を充電及び放電するように構成されている。 【0042】 本発明に係る直流マイクログリッド充放電システムに採用された双方向DC-DCコンバータ(図3の12)は本発明によって設計製作されたものであり、直列に接続された複数の電池を同時に充放電させるものの、負荷の変動に対応しながら充電できるように構成されている。 【0043】 ただし、リニア定電流電源(図3の13)をさらに備えることで、充放電電流をより安定化させ、直列接続した複数の電池を充放電させるため供給される最終電源が、負荷の変化があっても安定的に電流を制御供給できる定電流源であるため、本発明に係るDC-DCコンバータ(図3の12)のみを使用する装置に比べて電池の充放電のための制御時に精密度及び安定度を高める有利な効果がある。 【0044】 直流電気格納装置(図3の11)は、電気を安定的に双方向DC-DCコンバータ(図3の12)に供給する役割を行うと同時に、停電時にも所定時間の間に安定的に双方向DC-DCコンバータ(図3の12)に電気供給を続けて充放電する役割を果たす。 【0045】 直流電気格納装置(図3の11)は、常用電源から入力される電力をリアルタイム格納しながらリアルタイムに次の端の双方向DC-DCコンバータ(図3の12)に必要な電力を供給すればよい。 【0046】 前記双方向DC-DCコンバータ(図3の12)とリニア電流電源(図3の13)は各トレーごとに1個ずつ設置され、直列に接続された複数の電池(図3の24)それぞれに対して充放電するように構成されている。」 キ.「【0051】 以下、図3を参照して本発明の技術的な構成を具体的に説明する。 【0052】 図3は、図2に示す1つのトレーを拡大して具体的な技術的な構成を示す図である。1つのトレーには直列接続された各電池(図3の24)の充電及び放電を制御するためのコントローラ(図3の17)と、コントローラ(図3の17)と通信手段(図3の16)に接続してコントローラ((図3の17)を制御するマイクロプロセッサー(図3の15、CPU)が1個ずつ設けられている。 【0053】 図3には各電池にコントローラ(図3の17)が設置されるものと表示したが、これは理解を助けるためのもので、同様に1が付与されたものから分かるように同じコントローラである。 【0054】 コントローラ(図3の17)は、各電池(図3の24)を安全かつ最大に充放電するため、直列接続された各電池を効率よく充放電するため必要な位置に温度計、電圧計、及び電流計から構成されたセンサを設け、各センサから測定された電池の温度及び電圧(open circuir voltage)、回路の電流及び電圧などが入力されるように構成されている。 【0055】 コントローラ(図3の17)は、各センサから入力された電流、温度及び電圧などに基づいて安全かつ迅速に充電及び放電できるように制御する。 【0056】 本発明に係る充放電を効率よく制御するために図3に示すVb、ib、ibb1-45、電池両端間の電圧、電池の温度などが測定対象である。 【0057】 各電池には、各電池状態を示す電圧、電流及び温度などを相互絶縁された状態でも精密測定できる絶縁型の電池計測部(Isolated Battery Management System:BMS)がそれぞれ設けられている。 【0058】 コントローラのメモリには、本発明によって設計製作されてリニア電流電源(図3の13)を用いて互いに異なる容量を有する複数の電池(図3の24)を効率よく同時に充電及び放電することのできる手段を備えた制御プログラムが搭載されている。」 ク.引用文献1の上記記載及び図面から、次のことがいえる。 ・上記イ、ウ、エには、直流マイクログリッド充放電システムが記載されている。 また、上記ア及びウによれば、該直流マイクログリッド充放電システムが、電池製造工程において電池を充電及び放電するために用いられることが読み取れる。 ・上記ウ及びカによれば、直流マイクログリッド充放電システムが、常用電源が配電盤を介して入力され、配電盤を介して供給される電源を双方向AC-DCコンバータを経て格納する直流電気格納装置を備えることが記載されている。 ・上記カによれば、直流マイクログリッド充放電システムが、数十?数百個のトレーと、各トレーに接続され直列に接続された複数の電池を備えることが記載されている。 また、上記カによれば、直流マイクログリッド充放電システムが、各トレーに1個ずつ設置され、直列に接続された複数の電池それぞれに対して充放電する双方向DC-DCコンバータを備えることも記載されている。 ・上記キによれば、各トレーに、直列に接続された複数の電池の充電及び放電を制御するためのコントローラが設けられることが記載されている。 また、上記キによれば、コントローラが、直列に接続された複数の電池を効率よく充放電するため必要な位置に温度計、電圧計、及び電流計から構成されたセンサを設け、各センサから測定された電池の温度及び電圧(open circuir voltage)、回路の電流及び電圧などが入力され、各センサから入力された電流、温度及び電圧などに基づいて安全かつ迅速に充電及び放電できるように制御することが記載されている。 ・上記イ、オ、カによれば、直流電気格納装置に格納された電気エネルギーを用いて双方向DC-DCコンバータを介して、直列に接続された複数の電池を充電することが記載されている。 ・上記イ、オ、カによれば、充電及び放電が同時に発生しない場合に、放電時に直流状態で電力が直流状態の直流電気格納装置に格納され、格納された直流状態の電源を充電に直接使用することが記載されている。 ケ.したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「常用電源が配電盤を介して入力され、配電盤を介して供給される電源を双方向AC-DCコンバータを経て格納する直流電気格納装置と、 数十?数百個のトレーと、 各トレーに接続され直列に接続された複数の電池と、 各トレーに1個ずつ設置され、直列に接続された複数の電池それぞれに対して充放電する双方向DC-DCコンバータと、 各トレーに設けられて、直列に接続された複数の電池の充電及び放電を制御するためのコントローラであって、直列に接続された複数の電池を効率よく充放電するため必要な位置に温度計、電圧計、及び電流計から構成されたセンサを設け、各センサから測定された電池の温度及び電圧(open circuir voltage)、回路の電流及び電圧などが入力され、各センサから入力された電流、温度及び電圧などに基づいて安全かつ迅速に充電及び放電できるように制御するコントローラと、を備え、電池製造工程における充電及び放電に用いられる直流マイクログリッド充放電システムにおいて、 直流電気格納装置に格納された電気エネルギーを用いて双方向DC-DCコンバータを介して直列に接続された複数の電池を充電し、 充電及び放電が同時に発生しない場合に、放電時に直流状態で電力が直流状態の直流電気格納装置に格納され、格納された直流状態の電源を充電に直接使用する、直流マイクログリッド充放電システム。」 第5 対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「直列に接続された複数の電池」は、引用文献1の「単位モジュールの電池(1つあるいは小数個の電池を直列或いは並列に接続した構成)」(【0004】)との記載によれば、複数の電池によりモジュールを構成するものといえるから、本願発明の「電池モジュール」に相当する。 また、引用発明の「直流電気格納装置」は、電気エネルギーを格納する装置であるから、本願発明の「エネルギーストレージシステム」に相当する。 (2)引用発明の「直流電気格納装置に格納された電気エネルギーを用いて双方向DC-DCコンバータを介して直列に接続された複数の電池を充電」する処理において、格納された電気エネルギーを直流電気格納装置から直列に接続された複数の電池に転送していることは明らかである。 また、引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」は、数十?数百個のトレーと、各トレーに接続される直列に接続された複数の電池を備えるものであるから、複数のトレーの各々に接続される直列に接続された複数の電池を充電するものである。そして、複数のトレーの各々に接続される直列に接続された複数の電池のうち、充電を行う対象となる直列に接続された複数の電池を「第1電池モジュール」と称することは任意である。 よって、引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」が行う「直流電気格納装置に格納された電気エネルギーを用いて双方向DC-DCコンバータを介して直列に接続された複数の電池を充電」する処理は、本願発明の「第1電池モジュールを充電するべく、エネルギーをエネルギーストレージシステムから第1電池モジュールに転送するステップ」を含むものである。 (3)引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」は、「放電時に直流状態で電力が直流状態の直流電気格納装置に格納」していることから、直列に接続された複数の電池から直流電気格納装置にエネルギーを転送しているといえる。 また、放電は充電された電池が行うものであり、上記(2)において「第1電池モジュール」と称した直列に接続された複数の電池についても放電を行うと認められる。 よって、引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」が行う「放電時に直流状態で電力が直流状態の直流電気格納装置に格納」する処理は、本願発明の「第1電池モジュールを放電させるべく、前記エネルギーを前記第1電池モジュールから前記エネルギーストレージシステムに転送するステップ」を含むものである。 (4)引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」は「放電時に直流状態で電力が直流状態の直流電気格納装置に格納され、格納された直流状態の電源を充電に直接使用する」から、放電時に直列に接続された複数の電池から直流電気格納装置に転送されたエネルギーを、再度、直流電気格納装置から直列に接続された複数の電池に転送することにより充電を行うものと認められる。 また、引用発明は、数十?数百個のトレーを備え、これらのトレーに接続されている直列に接続された複数の電池に対して充放電することから、放電を行った直列に接続された複数の電池とは異なる他の直列に接続された複数の電池に対しても、放電時に直列に接続された複数の電池から直流電気格納装置に転送されたエネルギーを転送して充電するものと認められる。 そして、当該充電を行う対象となる直列に接続された複数の電池を「第2電池モジュール」と称することも任意である。 よって、引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」が行う「格納された直流状態の電源を充電に直接使用する」処理は、本願発明の「第2電池モジュールを充電するべく、前記エネルギーを前記エネルギーストレージシステムから前記第2充電モジュールに転送するステップ」を含むものである。 (5)引用発明は、数十?数百個の各トレーに、直列に接続された複数の電池とコントローラを備えるものであるから、上記(2)及び(4)において「第1電池モジュール」及び「第2電池モジュール」と称した直列に接続された複数の電池と同一のトレーにも、それぞれコントローラが備えられるものである。そして、これらのコントローラを、それぞれ「第1コントローラ」、「第2コントローラ」と称することは任意である。 また、引用発明の「コントローラ」は、「直列接続された各電池の充電及び放電を制御」するものであり、直列に接続された複数の電池の充電や放電という動作を自在に制御するものであるから、直列に接続された複数の電池に動作自在に結合されているといえる。 よって、引用発明の「コントローラ」は、本願発明の「第1電池モジュールに動作自在に結合された第1コントローラ」と「第2電池モジュールに動作自在に結合された第2コントローラ」を含むものである。 次に、引用発明の「コントローラ」は、「直列に接続された複数の電池を効率よく充放電するため必要な位置に温度計、電圧計、及び電流計から構成されたセンサを設け、各センサから測定された電池の温度及び電圧(open circuir voltage)、回路の電流及び電圧などが入力され、各センサから入力された電流、温度及び電圧などに基づいて安全かつ迅速に充電及び放電できるように制御する」から、充電及び放電の制御のために、各センサから入力された電流、温度及び電圧などの情報を監視するものと認められる。 また、本願の発明の詳細な説明に「コントローラによって監視及び/又は制御されうる充電状態は、例えば、電圧、温度、充電状態、健康状態、冷媒の流れ、及び電流を含むことができる。(【0033】)」とあるから、引用発明の「各センサから入力された電流、温度及び電圧など」の情報は、本願発明の「充電状態」に含まれる。 そして、上記のとおり、引用発明の「コントローラ」は、本願発明の「第1コントローラ」と「第2コントローラ」を含むから、「第1コントローラ」と「第2コントローラ」が行う「直列に接続された複数の電池を効率よく充放電するため必要な位置に温度計、電圧計、及び電流計から構成されたセンサを設け、各センサから測定された電池の温度及び電圧(open circuir voltage)、回路の電流及び電圧などが入力され、各センサから入力された電流、温度及び電圧などに基づいて安全かつ迅速に充電及び放電できるように制御する」処理は、それぞれ本願発明の「第1コントローラにより、前記第1電池モジュールの充電状態を監視するステップ」及び「第2コントローラにより、前記第2電池モジュールの充電状態を監視するステップ」に相当する。 (6)引用発明の「直流マイクログリッド充放電システム」は、電池製造工程に用いられるシステムであるから「直流マイクログリッド充放電システム」が行う上記(2)ないし(5)において説示した各処理は電池を製造するための処理であり、本願発明の「電池形成方法」に相当する。 (7)ここで、請求人は、令和2年2月28日提出の意見書において、「補正後の請求項12では、『前記第1電池モジュールを放電させるべく、前記エネルギーを前記第1電池モジュールから前記エネルギーストレージシステムに転送するステップと、第2電池モジュールを充電するべく、前記エネルギーを前記エネルギーストレージシステムから前記第2電池モジュールに転送するステップと、』が規定された。補正後の請求項12における『前記エネルギー』という記載は、システム内の各電池モジュールの個々の制御を明確に示すものである。すなわち、このシステムは、エネルギーストレージシステムから第1電池モジュールにエネルギーを転送し、その転送されたエネルギーを第1電池モジュールの充電状態に基づいて第1電池モジュールからエネルギーストレージシステムに転送し戻して、さらにそのエネルギーをエネルギーストレージシステムから第2電池モジュールへ転送することができる。本発明に係る方法は、各電池モジュールの充電状態を個別に制御するものであり、これは、引用文献1-3のいずれにも開示も示唆もされていない。」と主張している。 しかしながら、上記(4)で説示したとおり、引用発明においても、放電時に直列に接続された複数の電池から直流電気格納装置に転送されたエネルギーを、放電を行った直列に接続された複数の電池とは異なる直列に接続された複数の電池に転送して充電を行うものと認められる。 また、上記(5)で説示したとおり、引用発明においても、「コントローラ」は充電状態を監視し、充電及び放電を制御するものである。 よって、上記主張は採用できない。 なお、審判請求書では請求項12についての主張はなされていない。 (8)よって、上記(1)ないし(7)によれば、本願発明と引用発明とは相違するところがないから、本願発明は引用文献1に記載された発明である。 第6 審判請求書における補正案について 請求人は、審判請求書において請求項1の補正案を提示すると共に、「請求項1の上記補正案の進歩性が首肯された場合には、新たな拒絶理由通知を通知して頂ければ、請求項12を補正して、補正後の請求項12に係る発明が、請求項1の補正案に対応する構成を備えるように補正をするつもりです。」と主張している。 しかしながら、請求項12については具体的な補正案が提示されておらず、さらに、上記「第2」ないし「第5」のとおり原査定の理由で特許にすることができないから、拒絶の理由を通知して補正の機会を与えることはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項12に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり結審する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-01-27 |
結審通知日 | 2021-01-28 |
審決日 | 2021-02-17 |
出願番号 | 特願2017-517274(P2017-517274) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H02J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大濱 伸也 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
畑中 博幸 永井 啓司 |
発明の名称 | 直列電池充電及び形成用のシステム及び方法 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 江口 昭彦 |