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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1375791
審判番号 不服2019-17721  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-27 
確定日 2021-07-27 
事件の表示 特願2014-257045「車両の中で触覚フィードバックを用いるジェスチャー・ベースの入力システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-133109、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

平成30年 9月12日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 8月29日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月 8日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和 3年 6月10日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし23に係る発明は、以下の引用文献AないしDに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
A 特開2002-149304号公報
B 特表2013-500516号公報(周知技術を示す文献)
C 特開2003-131785号公報
D 特開2011-192277号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1]明確性要件違反
本願請求項1ないし12に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1の記載において、「触覚効果フィードバック・システム」の具体的な構造及び機能が特定されておらず、明細書及び図面の記載を参酌してもその技術的意義が明確ではない。
(2)請求項1の記載において、「ジェスチャーを表すデータ」と「前記ジェスチャーを表す信号」との関係(異同)が明確ではない。

[理由2]進歩性欠如
本願請求項13ないし23に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2002-149304号公報(拒絶査定の引用文献A)
2 特表2013-500516号公報
(拒絶査定の引用文献B、周知技術を示す文献)
3 特開2003-131785号公報
(拒絶査定の引用文献C、周知技術を示す文献)
4 特開2011-192277号公報
(拒絶査定の引用文献D、周知技術を示す文献)
5 特表2011-501902号公報
(当審で新たに提示した文献、周知技術を示す文献)
6 特開2009-183751号公報
(当審で新たに提示した文献、周知技術を示す文献)

第4 本願発明
本願請求項1ないし23に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明23」という。)は、平成3年6月10日に提出された手続補正書の手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1及び13は、以下のとおりの発明である。(なお、下線は、補正された箇所を示す。)

[本願発明1]
「 複数の車両システムのうちの1つまたは複数を制御するためのシステムであって、
車両の運転者または乗客に触覚効果を与えるように構成された触覚アクチュエータと、
前記車両の内部に配設されたジェスチャー検出デバイスであって、前記車両の運転者または乗客の運動を捕捉して、前記車両の運転者または乗客が行ったジェスチャーを示す信号を出力するように構成されているジェスチャー検出デバイスと、
前記ジェスチャー検出デバイスに結合され、前記ジェスチャー検出デバイスから前記ジェスチャーを示す前記信号を受け取るように構成されているコントローラであって、前記触覚アクチュエータおよび前記複数の車両システムに結合されているコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、効果表に列挙されている前記触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号を送り、前記触覚アクチュエータに対して、前記選択された触覚効果を与えるための信号を送るように構成されており、前記触覚アクチュエータのための前記複数の触覚効果はそれぞれ複数の触覚パラメータと関連しており、該複数の触覚パラメータの各々は、前記触覚アクチュエータによる振動効果の度合い、大きさ、周波数、および持続時間の少なくとも一つを含み、
前記コントローラは、前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、前記複数の車両システムのうちの少なくとも1つに対して、特定の動作を遂行させるための信号を送るようにさらに構成されており、前記複数の車両システムの少なくとも一つの車両システムの前記特定の動作は、前記選択された触覚効果と整合するものである、システム。」

[本願発明13]
「 複数の車両システムのうちの1つまたは複数を制御する方法であって、
車両の運転者または乗客の動きをジェスチャー検出デバイスにより追跡して、ジェスチャーの表から、前記運転者または乗客のジェスチャーを検出するステップと、
前記ジェスチャーを示す信号を出力するステップと、
前記ジェスチャーを示す前記信号をコントローラにより受信するステップと、
前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、効果表に列挙されている触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号を前記コントローラにより送信するステップであって、前記触覚アクチュエータのための前記複数の触覚効果はそれぞれ複数の触覚パラメータと関連しており、該複数の触覚パラメータの各々は、前記触覚アクチュエータによる振動効果の度合い、大きさ、周波数、および持続時間の少なくとも一つを含んでいる、触覚効果を選択する信号を送信するステップと、
前記触覚アクチュエータによって前記運転者または乗客に前記選択された触覚効果を与えるための前記触覚アクチュエータへの信号を前記コントローラにより送信するステップと、
前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、前記複数の車両システムのうちの少なくとも1つを制御して、特定の動作を遂行するステップと、を含み、前記複数の車両システムのうちの前記少なくとも1つの車両システムの前記特定の動作は、前記選択された触覚効果と整合するものである、方法。」

なお、本願発明2ないし12は、本願発明1を減縮する発明であり、本願発明14ないし23は、本願発明13を減縮する発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(引用文献A)について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(拒絶査定の引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入力装置にかかり、特に、コンピュータのユーザ・インターフェース用システム及びユーザ・インターフェース提供方法に関し、より詳細には、自動車等の移動体環境内に用いて好適なコンピュータのユーザ・インターフェース用システム及びユーザ・インターフェース提供方法に適用が可能な入力装置に関する。」

「【0051】図1は、車両10用の本発明の実施の形態にかかるコンピュータのユーザ・インターフェース・システムの好ましい実施の形態の一部を概略的に示している。車両10に搭載されたコンピュータ46は、ユーザの動作又は入力に応じて、ラジオ、ウィンドウワイパ、CDプレーヤ、及びGPSに基づくナビゲーション装置等の車両内の様々なシステム(電子装置)を作動する機能を有している。
【0052】インターフェース・システムは、コンピュータ46へのユーザ入力用の仮想キーボード又は制御パネルとして定義される、車両のステアリングホイール12に近接する開放空間(体積)又は空間領域を含むものである。この領域は、ユーザが指をこの領域に挿入することが可能なように開放されている。この領域は、複数のセクションから構成可能であり、これにより仮想制御パネル領域として機能する。各々のセクションには、キー、ボタン、英数字入力域、コンピュータへのユーザの動作又は入力のための他の制御要素が定義される。ユーザは、この仮想制御パネル領域の適切なセクションで動作することにより入力を指示する。」

「【0054】このインターフェース・システムは、ユーザに対してマップを表示するコンピュータ制御ディスプレイ20を含む。マップは、仮想制御パネル領域内のセクションの位置、及び特定のセクション内でのユーザの動作により入力されることが可能な情報、例えば電子装置の操作コマンドを示す。」

「【0055】このコンピュータ制御ディスプレイ20は、軍事用車両で用いられるヘッドアップディスプレイ(「HUD」)を用いることが可能である。HUDでは、ドライバーがディスプレイを見るために車両の前方走行路から目を逸らすことを必要としない位置に、ディスプレイが提供され、特別に改造された眼鏡又はヘルメットを用いている。
【0056】本実施の形態では、図1に示すように、コンピュータ制御ディスプレイ20がウインドシールドガラス21上に現われるように構成している。ウインドシールドガラス21の一部の上に現われる液晶型等の透過型ディスプレイは、HUDの一種である。」

「【0058】図2に示すように、インターフェース・システムは、仮想制御パネル領域との又はこの領域でのユーザの動作を検知又は記録するためにこの領域を監視(モニタ)するセンサ22を含む。本実施の形態では、センサ22は、デジタル写真装置で用いられる種類等のイメージ検知タイプのイメージセンサを用いている。特に、イメージセンサ22は、電荷結合素子(「CCD」)タイプのカメラ及び、CMOSタイプのカメラ等が好ましい。」

「【0079】図5は、コンピュータのインターフェース・システムの概略ブロック図を示している。ブロック38は、仮想制御パネル領域内でのある形式の動作であるユーザの入力を示す。ブロック40は、イメージの収集を示す。より詳細には、センサ22が、仮想制御パネル領域内でのユーザの動作を示すデータを生成する。ブロック42及び44は共に、コンピュータ46による分析を示す。」

「【0080】図7には、このコンピュータ46の処理を含み、コンピュータのインターフェース・システムの処理の流れの概略を示した。この図7に示した処理ルーチンは、繰り返し実行される。まずステップ100において、センサ22からの信号をコンピュータが読みとることによって、仮想制御パネル領域内の画像を読み取る。次のステップ102では、ユーザの指先等が仮想制御パネル領域に進入したときに現れる小塊(ブロブ)を検出する。この検出はセンサ22からの信号すなわち画像を探索することによって実行される。
【0081】次のステップ104では、ブロブが検出されたか否かを判断し、否定された場合には、ステップ100へ戻り、肯定された場合には、次のステップ104において上記で検出されたブロブの中心位置を求める。次のステップ108では、仮想制御パネル領域でユーザの動作や入力によって作用する機能が、ボタンモードに設定されているか否かを判断する。本実施の形態では、ボタンモードとトラッキングモードの2種類の設定が可能になっている。なお、2種類のモードに限定されるものではなく、1種類または3種類以上であってもよい。
【0082】ステップ108で肯定された場合には、ボタンモードであり、ステップ110へ進み、予め記憶されているセクション配列(マップ)を読み取り、次のステップ112において該当するセクションを決定すると共に、そのセクションに対応する出力信号を対応する電子装置へ供給する。次のステップ114では、出力信号を対応する電子装置へ供給したことを振動装置などでユーザに報知することによってユーザにフィードバックする。
【0083】一方、ステップ108で否定された場合には、トラッキングモードであり、ステップ116において、各ブロブの中心の相対位置を得るためにイメージを比較する。ブロブの位置が複数あり時系列的に推移するとき、次のステップ118において動作が発生したと判断しステップ120へ進む。一方、ステップ118で否定されたときは、ステップ100へ戻る。
【0084】ステップ120では、予め記憶された動作テーブルを読み取り、次のステップ122において。対応する動作を判定する。次のステップ124及び126では、上記と同様にして画像を読み取ってブロブを検出し、ブロブが検出されなくなると、ステップ128で否定されてステップ112へ進む。一方、ブロブが検出されなくなると、ステップ128で肯定されステップ100へ戻り、上記処理を繰り返す。
【0085】なお、トラッキングモードのときは連続動作も考えられるので、動作判定の後に対応出力信号を供給してもよい。この場合、動作判定の履歴を消去して使いの判定を行うことが好ましい。」

「【0106】上記のようにソフトウェアのロジックが、車両の機能を実行するためのユーザ動作または入力が発生したと判断すると、このソフトウェアは、図5のボックス48に示されるように、コンピュータ46が適切な出力信号を生成する。ボタンモードの最中にユーザ動作が発生した場合は、ボタンモードではトラッキング分析は必要ないので、システムのロジックは、分析ブロック42から出力ブロック48(もしこのような出力がユーザ動作に適している場合)へ進む。トラッキングモードの場合は、ロジックは、分析ブロック42の後、適切な出力を生成する前にトラッキング計算のためにブロック44へ進む。すなわち、ブロック42がボタンモード、ブロック44がトラッキングモードの主要な機能を担当することになる。」

「【0109】また、上述のように、コンピュータディスプレイは、HUD(ヘッドアップディスプレイ)を模して、ドライバーのシートの前に配置された。コンピュータ出力またはフィードバックには、ユーザ入力への応答に適するようにディスプレイ20を変化させるステップが含まれる。例えば、ウィンドシールドワイパ及びカーステレオの制御を実行することができる。」

「【0112】インターフェース・システムは、ドライバーの視覚的な負担を更に軽減するために、触覚的なフィードバック、即ち、感触に関わる又は基づくフィードバックを更に含むことが好ましい。触覚的な振動によるフィードバックは、ステアリングホイール12及びドライバー側のシート58等の、運転中に車両のドライバーと常に接触している部分で実施されることが好ましい。
【0113】触覚的な振動によるフィードバックのための振動装置は、運転中に感じられる程度に十分強くなければならず、一般的な車の振動よりも大きな振動周波数を生成しなければならない。本発明者は、従来のページャ(ポケベル)及びマッサージ機用モータが適切であることが確認した。
【0114】ページャ用モータは、コンパクトであり、コスト有効性であり、かつ一般的な路上での振動よりも大きな周波数での局所的な振動(このモータでは9000RPM(回転/分))を有する。マッサージ機用モータは、ページャ用モータよりも大きな振幅を有するので、この振動はページャ用モータによる振動ほど局所的ではない。従って、これは2つの区別可能なタイプの振動によるフィードバックを可能にする。
【0115】図1に示すように、ページャ用モータ60は、ステアリングホイールのリム16の右側及び左側のそれぞれに埋設されることが好ましい。インターフェース・システムは、ページャ用モータ60を振動させて、仮想制御パネル作動領域との接触が成されていることをユーザに示す。インターフェース・システムにおいて、仮想制御パネル上の作動領域との接触が成されていることをユーザに示すために、両方のページャ用モータ60が同時に振動することが好ましい。
…(中略)…
【0117】更なるページャ用モータ60が、ドライバーのシートの両側に挿入されることが好ましい。更に、より大きなマッサージ機用モータ62が、シート58の左側と右側との中間位置に挿入される。シート58内のモータ60及び62は、ロータをシート58の詰め物から隔離するために、プラスチックの外皮により覆われることが好ましい。シート58におけるモータの位置としては、ユーザが運転中に常にそこに近接しているはずの位置が選択される。従って、シートのページャ用モータ60は、右と左とを区別するように選択的に作動されることが可能である。
【0118】ユーザがトラッキングモードでのコンピュータ入力のために、右から左へ指を移動する場合、又は巻き戻し、左方向へのチューニングシーク、及び前の曲へのスキップ等の他の指向性のある出力機能が用いられる場合、インターフェース・システムは左側のページャ用モータ60を作動させることが好ましい。同様に、インターフェース・システムは、右への指向性動作を意味するために右側のページャ用モータ60を作動させる。シート中央に位置する、より強い振動を伴うマッサージ機用モータ62は、エラーインジケータ等の更に別のモードのフィードバックのために残しておくことが好ましい。」

「【図5】



(2)引用発明
前記(1)より、上記引用文献1(引用文献A)には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「自動車等の移動体環境に好適なユーザ・インターフェース・システムによるユーザ・インターフェース提供方法であって、
車両10に搭載されたコンピュータ46は、ユーザの動作又は入力に応じて、ラジオ、ウィンドウワイパ、CDプレーヤ、及びGPSに基づくナビゲーション装置等の車両内の様々なシステム(電子装置)を作動する機能を有し、
インターフェース・システムは、コンピュータ46へのユーザ入力用の仮想キーボード又は制御パネルとして定義される、車両のステアリングホイール12に近接する開放空間(体積)又は空間領域を含み、この領域は、ユーザが指をこの領域に挿入することが可能なように開放されており、複数のセクションから構成可能であり、これにより仮想制御パネル領域として機能し、
インターフェース・システムは、ユーザに対してマップを表示するコンピュータ制御ディスプレイ20を含み、
コンピュータ制御ディスプレイ20は、ヘッドアップディスプレイ(「HUD」)を用いることが可能であり、コンピュータ制御ディスプレイ20がウインドシールドガラス21上に現われるように構成し、ウインドシールドガラス21の一部の上に現われる液晶型等の透過型ディスプレイは、HUDの一種であり、
インターフェース・システムは、仮想制御パネル領域との又はこの領域でのユーザの動作を検知又は記録するためにこの領域を監視(モニタ)するセンサ22を含み、センサ22は、デジタル写真装置で用いられる種類等のイメージ検知タイプのイメージセンサを用いており、特に、電荷結合素子(「CCD」)タイプのカメラ及び、CMOSタイプのカメラ等が好ましく、
インターフェース・システムの概略ブロックにおいて、ブロック38は、仮想制御パネル領域内でのある形式の動作であるユーザの入力を示し、ブロック40は、イメージの収集を示し、より詳細には、センサ22が、仮想制御パネル領域内でのユーザの動作を示すデータを生成し、ブロック42及び44は共に、コンピュータ46による分析を示し、
インターフェース・システムの処理の流れは、
まずステップ100において、センサ22からの信号をコンピュータが読みとることによって、仮想制御パネル領域内の画像を読みとり、
次のステップ102では、ユーザの指先等が仮想制御パネル領域に進入したときに現れる小塊(ブロブ)を検出し、
次のステップ104では、ブロブが検出された場合には、ブロブの中心位置を求め、
次のステップ108では、仮想制御パネル領域でユーザの動作や入力によって作用する機能が、ボタンモードに設定されているか否かを判断し、
否定された場合には、トラッキングモードであり、ステップ116において、各ブロブの中心の相対位置を得るためにイメージを比較し、ブロブの位置が複数あり時系列的に推移するとき、次のステップ118において動作が発生したと判断しステップ120へ進み、
ステップ120では、予め記憶された動作テーブルを読み取り、次のステップ122において、対応する動作を判定し、ブロブが検出されなくなると、ステップ100へ戻り、上記処理を繰り返すものであり、
ソフトウェアのロジックが、車両の機能を実行するためのユーザ動作または入力が発生したと判断すると、このソフトウェアは、ボックス48に示されるように、コンピュータ46が適切な出力信号を生成し、トラッキングモードの場合は、ロジックは、分析ブロック42の後、適切な出力を生成する前にトラッキング計算のためにブロック44へ進み、
コンピュータ出力またはフィードバックには、ユーザ入力への応答に適するようにディスプレイ20を変化させるステップが含まれ、
インターフェース・システムは、触覚的なフィードバックを更に含むことが好ましく、
触覚的な振動によるフィードバックは、ステアリングホイール12及びドライバー側のシート58等の、運転中に車両のドライバーと常に接触している部分で実施され、
触覚的な振動によるフィードバックのための振動装置は、ページャ(ポケベル)及びマッサージ機用モータが適切であり、マッサージ機用モータは、ページャ用モータよりも大きな振幅を有するので、2つの区別可能なタイプの振動によるフィードバックを可能にし、
ページャ用モータ60は、ステアリングホイールのリム16の右側及び左側のそれぞれに埋設され、更なるページャ用モータ60が、ドライバーのシートの両側に挿入され、
シートのページャ用モータ60は、右と左とを区別するように選択的に作動されることが可能であり、ユーザがトラッキングモードでのコンピュータ入力のために、右から左へ指を移動する場合、又は巻き戻し、左方向へのチューニングシーク、及び前の曲へのスキップ等の他の指向性のある出力機能が用いられる場合、インターフェース・システムは左側のページャ用モータ60を作動させ、同様に、インターフェース・システムは、右への指向性動作を意味するために右側のページャ用モータ60を作動させる、
ユーザ・インターフェース提供方法。」

2 引用文献2(引用文献B)について
当審拒絶理由に引用された引用文献2(拒絶査定の引用文献B)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、複雑な操作ジェスチャの実行中に、及び/又は、仮想装置の操作中に、ユーザに対して触覚刺激を提供するシステム及び方法に関する。」

「【0031】
アクチュエータ16は、ユーザ12のために触覚刺激を生成するように構成される。このように、アクチュエータ16の少なくとも一部は、ユーザインタフェース14を介してユーザに知覚コンテンツを伝達する際に、ユーザと又はユーザに接触する物体と接触する。非限定的な例として、一又は複数のアクチュエータ16は、ユーザを支持する床面内又は床面上に配置されてもよく(例えば、床に設置されたり、床に敷かれたマットに支持されるなど)、一又は複数のアクチュエータ16は、装具などのユーザに着用されるウェアラブルアイテムであってもよく、一又は複数のアクチュエータ16は、ユーザによって持ち運ばれる物体に収容されてもよい(例えば、コントローラに収容される)、一又は複数のアクチュエータ16は、ユーザが座ったり横たわったりする家具に支持されてもよく、一又は複数のアクチュエータ16は、ユーザインタフェース14によって支持されてもよく、及び/又は、一又は複数のアクチュエータ16は、ユーザに接触する前記以外の物体によって支持され、その物体内又は物体上に配置されてもよい。」

したがって、上記引用文献2(引用文献B)には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 操作ジェスチャの実行中に、及び/又は、仮想装置の操作中に、ユーザに対して触覚刺激を提供するシステムにおいて、
触覚刺激を生成するように構成される一又は複数のアクチュエータ16は、装具などのユーザに着用されるウェアラブルアイテムであってもよいこと。」

3 引用文献3(引用文献C)について
当審拒絶理由に引用された引用文献3(拒絶査定の引用文献C)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来は、例えば自動車を運転する運転者が、前方を注視したままで(視線を動かすことなく)、効率よく車載機器などの操作を行うことが困難であった。」

「【0026】図1において、指示入力部1は、ユーザによりなされた各種指示(選択指示、操作指示など)が入力するようになっている。この指示入力部1は、例えば、予め設けられた複数個(3個ぐらいのできるだけ少ない数の)ボタンから構成されていてもよいし、ユーザの行うジェスチャを認識して、各種指示入力を行うものであってもよいし、さらに、ユーザにより発声した言葉を音声認識して各種指示入力を行うものであってもよいし、これらを組み合わせて、各種指示入力を行うものであってもよい。」

【0205】(第3の実施形態)指示入力部1として、ジェスチャ取得部6とジャスチャ認識部7を用いる以外にも、運転者(ユーザ)が運転中に安全に操作ができるものとして、例えば、音声認識を用いた指示入力方式が考えられる。これは、ユーザが発した音声を、マイクで検出し、その音声データを解析し、ユーザの意図を判定し、操作に結びつけるものである。」

したがって、上記引用文献3(引用文献C)には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 車載機器などの操作のための指示入力は、
ユーザの行うジェスチャであっても、ユーザにより発生しマイクで検出した言葉であっても、これらを組み合わせたものでもよいこと。」

4 引用文献4(引用文献D)について
当審拒絶理由に引用された引用文献4(拒絶査定の引用文献D)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、一般に、触覚フィードバックに関し、より詳細には、プレタッチ及びトゥルータッチのためのシステム及び方法に関する。」

「【0041】
プロセッサ110がプレタッチに関連付けられる第1のインターフェース信号を受信すると、プロセッサ110は、触覚効果を決定する。…(以下省略)」

「【0047】
次に、プロセッサ110は、第1のインターフェース信号に少なくとも部分的に基づいて触覚効果を決定する(406)。例えば、一実施形態では、プロセッサ110は、適切な触覚効果を決定するために一連のアルゴリズムを実行してもよい。別の実施形態では、プロセッサ110は、触覚効果を決定するためにルックアップテーブルを使用してもよい。触覚効果は、当技術分野で周知の複数の触覚効果、例えば、振動、トルク、ノッキング、クリッキング、又はテクスチャ若しくは摩擦を生成するように構成される触覚効果のうちの任意の1つを含んでもよい。」

したがって、上記引用文献4(引用文献D)には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 触覚フィードバックに関し、
プロセッサ110がプレタッチに関連付けられる第1のインターフェース信号を受信すると、プロセッサ110は、触覚効果を決定し、
プロセッサ110は、触覚効果を決定するためにルックアップテーブルを使用してもよく、触覚効果は、例えば、振動、トルク、ノッキング、クリッキング、又はテクスチャ若しくは摩擦を生成するように構成される触覚効果のうちの任意の1つを含んでもよいこと。」

5 引用文献5について
当審拒絶理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
一実施形態は、携帯装置に関する。より詳細には、一実施形態は、指向性触覚効果を有する携帯装置に関する。」

「【0010】
…(中略)…一般に、特定の触覚効果を定義する高レベルパラメータは、強度、周波数、及び持続時間を含む。また、ストリーミングモータコマンド等の低レベルパラメータも、特定の触覚効果を決定するために使用され得る。」

したがって、上記引用文献5には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 指向性触覚効果を有する携帯装置に関し、
触覚効果を定義する高レベルパラメータは、強度、周波数、及び持続時間を含むこと。」

6 引用文献6について
当審拒絶理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
方向触覚フィードバックをユーザに提供するインターフェースデバイスであって、明細書に記載のインターフェースデバイス。」

「【0031】
このやり方で方向を命令する1つの方法は、「バランス」パラメータを特定することである。例えば、ホストコンピュータは、デバイス12上のローカルプロセッサに高レベルの命令を提供し得る。この高レベルの命令は、周波数、振幅、包絡線アタック(envelope attack)およびフェードパラメータ、ならびに、バランスパラメータなどのパラメータを含み得る。…(後略)」

したがって、上記引用文献6には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 方向触覚フィードバックをユーザに提供するインターフェースデバイスにおいて、
高レベルの命令は、周波数、振幅、包絡線アタックおよびフェードパラメータ、ならびに、バランスパラメータなどのパラメータを含み得ること。」

第6 当審拒絶理由についての判断
1 理由1(明確性要件違反)について
本件補正により、
(1)本件補正前の請求項1に記載されていた「触覚効果フィードバック・システム」は、本件補正後の請求項1の記載においては、「触覚アクチュエータ」と補正され、
(2)本件補正前の請求項1に記載されていた「ジェスチャーを表すデータ」は、本件補正後の請求項1の記載においては、「ジェスチャーを示す信号」と補正され、
本件補正後の請求項1ないし12に係る発明は明確となった。
よって、理由1(明確性要件違反)は、解消した。

2 理由2(進歩性欠如)について
(1)本願発明13について
ア 対比
本願発明13と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「ラジオ、ウィンドウワイパ、CDプレーヤ、及びGPSに基づくナビゲーション装置等の車両内の様々なシステム(電子装置)」は、本願発明13の「複数の車両システム」に相当する。
また、引用発明の「ユーザ・インターフェース提供方法」は「ラジオ、ウィンドウワイパ、CDプレーヤ、及びGPSに基づくナビゲーション装置等の車両内の様々なシステム(電子装置)」を「作動する機能」を備え、具体的には、「インターフェース・システムの処理の流れ」として、「ステップ100」ないし「ステップ122」等を実行するものであるから、引用発明の「ユーザ・インターフェース提供方法」は、本願発明13の「複数の車両システムのうちの1つまたは複数を制御する方法」に相当する。

(イ)引用発明は、
「インターフェース・システムは、コンピュータ46へのユーザ入力用の仮想キーボード又は制御パネルとして定義される、車両のステアリングホイール12に近接する開放空間(体積)又は空間領域を含み、この領域は、ユーザが指をこの領域に挿入することが可能なように開放されており、複数のセクションから構成可能であり、これにより仮想制御パネル領域として機能し」、
「インターフェース・システムは、仮想制御パネル領域との又はこの領域でのユーザの動作を検知又は記録するためにこの領域を監視(モニタ)するセンサ22を含み」、
「トラッキングモードであり、ステップ116において、各ブロブの中心の相対位置を得るためにイメージを比較し、ブロブの位置が複数あり時系列的に推移するとき、次のステップ118において動作が発生したと判断しステップ120へ進み、ステップ120では、予め記憶された動作テーブルを読み取り、次のステップ122において、対応する動作を判定し」
「ソフトウェアのロジックが、車両の機能を実行するためのユーザ動作または入力が発生したと判断すると、このソフトウェアは、ボックス48に示されるように、コンピュータ46が適切な出力信号を生成し、トラッキングモードの場合は、ロジックは、分析ブロック42の後、適切な出力を生成する前にトラッキング計算のためにブロック44へ進み」及び
「ソフトウェアのロジックが、車両の機能を実行するためのユーザ動作または入力が発生したと判断すると、このソフトウェアは、ボックス48に示されるように、コンピュータ46が適切な出力信号を生成し、トラッキングモードの場合は、ロジックは、分析ブロック42の後、適切な出力を生成する前にトラッキング計算のためにブロック44へ進み」
との構成を備え、これらの構成によると、「インターフェース・システム」は、「トラッキングモード」において、「コンピュータ46」が、「センサ22」により取得した「イメージ」を追跡(トラッキング)及び分析することにより、「車両のステアリングホイール12」に近接する「仮想制御パネル領域」として機能する空間又は領域に挿入される「ユーザ」の「指」(ブロブ)の動きを「ユーザの動作」として「検知」するとともに、「ブロブの位置が複数あり時系列的に推移するとき、次のステップ118において動作が発生したと判断」して、「予め記憶された動作テーブル」を読み取って「対応する動作」を判定し、「車両の機能」を実行するために「適切な出力信号」を出力するものである。
ここで、「ユーザ」は、「車両のステアリングホイール12」を操作する者であることは明らかであるから、本願発明13の「車両の運転者」に相当し、その「動作」を「検知」すること、特に、「トラッキングモード」の場合に「ブロブの位置が複数あり時系列的に推移する」ことを検出することは、本願発明13の「車両の運転者」の「動きを追跡」することに相当し、また、そのような機能を備える引用発明の「コンピュータ46」は、本願発明13の「ジェスチャー検出デバイス」に相当する。
また、「ユーザ」による「指」(ブロブ)の動き(「ユーザの動作」)は、本願発明13の「ジェスチャー」に相当し、引用発明の「予め記憶された動作テーブル」は、本願発明13の「ジェスチャーの表」に相当する。そうすると、引用発明において「予め記憶された動作テーブル」を読み取って「対応する動作」を判定することは、本願発明13の「ジェスチャーの表から、前記運転者または乗客のジェスチャーを検出するステップ」に相当する。
以上から、引用発明は、本願発明13の「車両の運転者または乗客の動きをジェスチャー検出デバイスにより追跡して、ジェスチャーの表から、前記運転者または乗客のジェスチャーを検出するステップ」との構成を備える。

(ウ)前記(イ)を参酌すれば、引用発明において、「適切な出力信号」を出力することは、本願発明13の「前記ジェスチャーを示す信号を出力するステップ」に相当する。

(エ)引用発明は、本願発明13の「コントローラ」に相当する事項を具体的に特定していないため、本願発明1の「前記ジェスチャーを示す前記信号をコントローラにより受信するステップ」を備えない。

(オ)引用発明の「触覚的な(振動による)フィードバック」は、本願発明13の「触覚効果」に相当し、引用発明の「振動装置」としての「ページャ用モータ」及び「マッサージ機用モータ」は、本願発明13の「触覚アクチュエータ」に相当する。
また、引用発明は、
「 インターフェース・システムは、触覚的なフィードバックを更に含むことが好ましく、
触覚的な振動によるフィードバックは、ステアリングホイール12及びドライバー側のシート58等の、運転中に車両のドライバーと常に接触している部分で実施され、
触覚的な振動によるフィードバックのための振動装置は、ページャ(ポケベル)及びマッサージ機用モータが適切であり、マッサージ機用モータは、ページャ用モータよりも大きな振幅を有するので、2つの区別可能なタイプの振動によるフィードバックを可能にし、
ページャ用モータ60は、ステアリングホイールのリム16の右側及び左側のそれぞれに埋設され、更なるページャ用モータ60が、ドライバーのシートの両側に挿入され、
シートのページャ用モータ60は、右と左とを区別するように選択的に作動されることが可能であり、ユーザがトラッキングモードでのコンピュータ入力のために、右から左へ指を移動する場合、又は巻き戻し、左方向へのチューニングシーク、及び前の曲へのスキップ等の他の指向性のある出力機能が用いられる場合、インターフェース・システムは左側のページャ用モータ60を作動させ、同様に、インターフェース・システムは、右への指向性動作を意味するために右側のページャ用モータ60を作動させる」
との構成を備えることから、引用発明は、「触覚的な(振動による)フィードバック」として、「右から左へ指を移動する」とのユーザの動作(ジェスチャー)に基づいて、「左側のページャ用モータ60を作動させ」、「右への指向性動作」とのユーザの動作(ジェスチャー)に基づいて、「右側のページャ用モータ60を作動させる」ものである。
ここで、「左側のページャ用モータ60を作動させ」ることによる「触覚的な(振動による)フィードバック」と、「右側のページャ用モータ60を作動させる」ことによる「触覚的な(振動による)フィードバック」とは異なるものであるから、これらは本願発明13の「複数の触覚効果」といい得るものである。
そうすると、引用発明は、検出された「ユーザの動作」(ジェスチャー)に基づいて、「触覚アクチュエータ」のための「複数の触覚効果」から「一つの触覚効果」を「選択」するステップを実行するものであり、また、その「選択」のために何らかの「信号」を出力することは明らかである。
よって、引用発明と、本願発明13の「前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、効果表に列挙されている触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号を前記コントローラにより送信するステップ」とは、「前記ジェスチャーに基づいて、触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するステップするための信号を送信するステップ」との共通の構成を備える。

(カ)引用発明において、「マッサージ機用モータは、ページャ用モータよりも大きな振幅を有する」との構成から、「マッサージ機用モータ」による「触覚的な(振動による)フィードバック」は、「大きな振幅」に関連付けられており、逆に、「ページャ用モータ」による「触覚的な(振動による)フィードバック」は小さな「振幅」に関連付けられているといえる。
そして、この「振幅」は、「マッサージ機用モータ」又は「ページャ用モータ」の「振動効果」の「大きさ」を含む「触覚パラメータ」といい得るものである。
したがって、前記(オ)を参酌すれば、引用発明と、本願発明13の「前記触覚アクチュエータのための前記複数の触覚効果はそれぞれ複数の触覚パラメータと関連しており、該複数の触覚パラメータの各々は、前記触覚アクチュエータによる振動効果の度合い、大きさ、周波数、および持続時間の少なくとも一つを含んでいる、触覚効果を選択する信号を送信するステップ」とは、「前記触覚アクチュエータのための前記複数の触覚効果はそれぞれ触覚パラメータと関連しており、該触覚パラメータは、前記触覚アクチュエータによる振動効果の度合い、大きさ、周波数、および持続時間の少なくとも一つを含んでいる、触覚効果を選択する信号を送信するステップ」との共通の構成を備える。

(キ)前記(オ)及び(カ)より、引用発明と、本願発明13の「前記触覚アクチュエータによって前記運転者または乗客に前記選択された触覚効果を与えるための前記触覚アクチュエータへの信号を前記コントローラにより送信するステップ」とは、「前記触覚アクチュエータによって前記運転者または乗客に前記選択された触覚効果を与えるための前記触覚アクチュエータへの信号を送信するステップ」との共通の構成を備える。

(ク)前記(イ)及び(ウ)を参酌すれば、引用発明は、「適切な出力信号」(ジェスチャーを示す信号)に基づいて、「複数の車両システムの少なくとも1つ」に「巻き戻し、左方向へのチューニングシーク、及び前の曲へのスキップ等の他の指向性のある出力機能」を実行させるように制御するものといえ、当該「出力機能」は、本願発明13の「特定の動作」に相当する。
また、引用発明は、「触覚的な(振動による)フィードバック」として、「右から左へ指を移動する」とのユーザの動作(ジェスチャー)に基づいて、「左側のページャ用モータ60を作動させ」、「右への指向性動作」とのユーザの動作(ジェスチャー)に基づいて、「右側のページャ用モータ60を作動させる」ものであることから、ユーザの動作(ジェスチャー)による「出力機能」(特定の動作)は、間接的には、選択された触覚効果に対応(整合)したものといえる。
よって、引用発明と、本願発明13の「前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、前記複数の車両システムのうちの少なくとも1つを制御して、特定の動作を遂行するステップと、を含み、前記複数の車両システムのうちの前記少なくとも1つの車両システムの前記特定の動作は、前記選択された触覚効果と整合するものである」とは、「前記ジェスチャーに基づいて、前記複数の車両システムのうちの少なくとも1つを制御して、特定の動作を遂行するステップと、を含み、前記複数の車両システムのうちの前記少なくとも1つの車両システムの前記特定の動作は、前記選択された触覚効果と整合するものである」との共通の構成を備える。

イ 一致点、相違点
よって、本願発明13と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「 複数の車両システムのうちの1つまたは複数を制御する方法であって、
車両の運転者または乗客の動きをジェスチャー検出デバイスにより追跡して、前記運転者または乗客のジェスチャーを検出するステップと、
前記ジェスチャーを示す信号を出力するステップと、
前記ジェスチャーに基づいて、触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するステップするための信号を送信するステップであって、前記触覚アクチュエータのための前記複数の触覚効果はそれぞれ触覚パラメータと関連しており、該触覚パラメータは、前記触覚アクチュエータによる振動効果の度合い、大きさ、周波数、および持続時間の少なくとも一つを含んでいる、触覚効果を選択する信号を送信するステップと、
前記触覚アクチュエータによって前記運転者または乗客に前記選択された触覚効果を与えるための前記触覚アクチュエータへの信号を送信するステップと、
前記ジェスチャーに基づいて、前記複数の車両システムのうちの少なくとも1つを制御して、特定の動作を遂行するステップと、を含み、前記複数の車両システムのうちの前記少なくとも1つの車両システムの前記特定の動作は、前記選択された触覚効果と整合するものである、方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明13は、機能手段として「ジェスチャー」を検出する「ジェスチャー検出デバイス」とは別に「コントローラ」が存在することを前提とし、「ジェスチャー検出デバイス」によって検出された「前記ジェスチャーを示す前記信号」を「コントローラ」により「受信するステップ」、「効果表に列挙されている触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号」を「コントローラ」により「送信するステップ」及び「前記選択された触覚効果を与えるための前記触覚アクチュエータへの信号」を「コントローラ」により「送信するステップ」を備えるのに対し、引用発明は、「ユーザ動作」を検出し、「車両内の様々なシステム(電子装置)」を制御する「コンピュータ46」とは別の手段(コントローラ)により、「マッサージ機用モータ」、「ページャ用モータ」等の「触覚アクチュエータ」を制御することについて具体的に特定していない点。

<相違点2>
本願発明13は、「ジェスチャーを示す信号」に基づいて「効果表」に列挙されている「触覚アクチュエータのための複数の触覚効果」から「一つの触覚効果」を選択するのに対し、引用発明は、「一つの触覚効果」を選択するにあたり、「ジェスチャーを示す信号」に基づいて、かつ、前記「効果表」を使用することについて具体的に特定していない点。

ウ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明13の構成、すなわち、「ジェスチャー検出デバイス」とは別の「コントローラ」により、触覚効果の選択等の制御を行うことは、上記引用文献1ないし6のいずれにも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
なお、引用文献4記載事項にあるように、プロセッサ110がプレタッチに関連付けられる第1のインターフェース信号を受信し、ルックアップテーブルを用いて触覚効果を決定することは、本願優先日前の周知技術であると認められるが、仮に、引用発明に当該周知技術を適用したとしても、上記相違点1に係る本願発明13の構成には至らない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明13は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明14ないし23について
本願発明14ないし23も、上記相違点1に係る本願発明13の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明13と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、理由2(進歩性欠如)は、解消した。

なお、請求項1ないし12に係る発明は、理由2(進歩性欠如)の対象ではないが、念のため、明確となった本件補正後の請求項1ないし12(本願発明1ないし12)について、引用文献1ないし6に基づく進歩性欠如について検討する。
本願発明1ないし12は、「前記ジェスチャー検出デバイスから前記ジェスチャーを示す前記信号を受け取るように構成されているコントローラ」及び「前記コントローラは、前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、効果表に列挙されている前記触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号を送り、前記触覚アクチュエータに対して、前記選択された触覚効果を与えるための信号を送るように構成されており」という、上記相違点1に係る本願発明13の構成に対応する技術的事項を有するものである。
よって、本願発明1ないし12は、本願発明13と同様に、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものである(進歩性欠如)とはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項13ないし23は、上記相違点1に係る本願発明13の構成を有し、また、補正後の請求項1ないし12は、「前記ジェスチャー検出デバイスから前記ジェスチャーを示す前記信号を受け取るように構成されているコントローラ」及び「前記コントローラは、前記ジェスチャーを示す前記信号に基づいて、効果表に列挙されている前記触覚アクチュエータのための複数の触覚効果から一つの触覚効果を選択するための信号を送り、前記触覚アクチュエータに対して、前記選択された触覚効果を与えるための信号を送るように構成されており」という、上記相違点1に係る本願発明13の構成に対応する技術的事項を有するものである。当該構成及び技術的事項は、原査定における引用文献AないしD(当審拒絶理由の引用文献1ないし4)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし23は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしDに基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-06 
出願番号 特願2014-257045(P2014-257045)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木内 康裕  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 林 毅
富澤 哲生
発明の名称 車両の中で触覚フィードバックを用いるジェスチャー・ベースの入力システム  
代理人 松井 孝夫  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 越智 隆夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 川内 英主  

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