• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1375882
異議申立番号 異議2020-700912  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-27 
確定日 2021-07-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6700342号発明「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する装置および方法、ならびにビデオに関連するデータを記憶するための非一時コンピュータ可読媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6700342号の請求項1?13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6700342号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)4月11日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2010年4月13日、欧州特許庁 2010年4月13日、欧州特許庁)を国際出願日とする特願2013-504229号の一部を平成26年1月15日に出願した特願2014-005353号の一部を平成27年4月28日に出願した特願2015-092239号の一部を平成29年2月17日に出願した特願2017-027407号の一部を平成30年7月11日に特願2018-131151号として出願したものであって、令和2年5月7日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和2年5月27日)がされ、令和2年11月27日に特許異議申立人ユニファイド パテンツ エルエルシーにより請求項1?13に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?13に係る発明(以下「本件発明1?13」等という。また、本件発明1?13を総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(符号A?D-3、A6?D6-3、A11?D11-3は合議体が付した。以下、構成A?D11-3等という。)

(本件発明1)
【請求項1】
A データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置であって、
B コンテキスト適応エントロピー復号によって最後の有意シンタックス要素を前記データストリームから抽出するように構成されたデコーダであって、
B-1 前記最後の有意シンタックス要素の各々が、前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ前記それぞれの位置での変換係数が前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す、
B 前記デコーダと、
C 走査順で各々の前記最後の有意シンタックス要素を前記変換係数ブロックのそれぞれの位置に関連付けるように構成されたアソシエータと
を備え、
B 前記デコーダが、
D-1 前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、
D-2 および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って
D-3 選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するように構成される、
A 装置。

(本件発明2)
【請求項2】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項1に記載の装置。

(本件発明3)
【請求項3】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の位置の前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項1に記載の装置。

(本件発明4)
【請求項4】
前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項3に記載の装置。

(本件発明5)
【請求項5】
前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項3に記載の装置。

(本件発明6)
【請求項6】
A6 変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であって、
A6 前記装置が、
B6 コンテキスト適応エントロピー符号化を介して最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
B6-1 前記最後の有意シンタックス要素の各々が前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ、前記それぞれの位置での変換係数が前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示し、
A6 前記装置が、
C6 走査順で前記最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
A6 前記装置が、
D6-1 前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、
D6-2 および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って
D6-3 選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成された、
A6 装置。

(本件発明7)
【請求項7】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項6に記載の装置。

(本件発明8)
【請求項8】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の位置の前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項6に記載の装置。

(本件発明9)
【請求項9】
前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項8に記載の装置。

(本件発明10)
【請求項10】
前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項8に記載の装置。

(本件発明11)
【請求項11】
A11 データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための方法であって、
B11 コンテキスト適応エントロピー復号によって最後の有意シンタックス要素を前記データストリームから抽出するステップであって、
B11-1 前記最後の有意シンタックス要素の各々が、前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ、前記それぞれの位置での変換係数が前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す、
B11 前記抽出するステップと、
C11 走査順で各々の前記最後の有意シンタックス要素を前記変換係数ブロックのそれぞれの位置に関連付けるステップと、
D11-1 前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、
D11-2 および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って
D11-3 選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するステップと
A11 を含む、方法。

(本件発明12)
【請求項12】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項11に記載の方法。

(本件発明13)
【請求項13】
前記現在の最後の有意シンタックス要素の位置の前記近隣が、前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項11に記載の方法。

第3 特許異議申立書に記載された取消理由
特許異議申立に記載された取消理由の概要は、以下のとおりである。

1.取消理由
(1)取消理由1
(ア)本件発明1、6、11について
本件発明6には、「前記装置が、前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成された、装置。」という構成要件が、
本件発明1には、「前記デコーダが、前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するように構成される、装置。」という構成要件が、
本件発明11には、「前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するステップとを含む、方法。」という構成要件が含まれており、
当該構成要件中には、「前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って、コンテキストが選択される」ということが記載されているが、本件特許明細書全体を通して見てもこのような記載はない。
また、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1、6、11に記載の当該記載の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、当該記載が何を指しているのが不明でありその技術的意味が明確でないため、本件発明1、6、11は明確でない。
従って、本件発明1、6、11は、サポート要件を満たしておらず、また明確でないから、本件特許1、6、11には、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反する取消理由(同法第113条第4号)がある。

(イ)本件発明2?5、7?10、12、13について
本件発明2?5は、いずれも前述の通りサポート要件違反及び明確性違反の取消理由のある本件特許1に従属する発明である。
本件発明7?10は、いずれも前述の通りサポート要件違反及び明確性違反の取消理由のある本件特許6に従属する発明である。
本件発明12、13は、いずれも前述の通りサポート要件違反及び明確性違反の取消理由のある本件特許11に従属する発明である。
従って、本件発明2?5、7?10、12、13もサポート要件を満たしておらず、また明確でないから、本件特許2?5、7?10、12、13には、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反する取消理由(同法第113条第4号)がある。

(2)取消理由2
本件発明1?13は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1?13は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。

(3)取消理由3
仮に本件発明1?13と、甲第1号証記載の発明との間に相違点があったとしても、本件発明1?13は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証に記載された発明と周知技術に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1?13は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。

2.証拠方法
(1) 甲第1号証:米国特許公開第2008/0219578号公報
(2) 甲第2号証:インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC教科書、第1版、p.86-94、p.148-162
(3) 甲第3号証:米国特許公開第2008/0310745号公報(特表2010-530183号公報に対応する)
(4) 甲第4号証:国際公開第2008/157268号公報(特表2010-530183号公報に対応する)
(5) 甲第5号証:国際公開第2008/157431号公報(特表2010-530190号公報に対応する)
(6) 甲第6号証:特表2009-522968号公報

第4 当審の判断
1.取消理由1について
(1)本件発明1について
(1-1)本件明細書の記載について
本件明細書には、以下の記載がある。

「【0037】
図4のコーダは、予測変換ベースのブロック符号器である。すなわち、入力112に入る標本アレイ20のブロックが、同じ標本アレイ20の以前に符号化および再構成された部分から、あるいは、以前に符号化および再構成された他の標本アレイであって、現在の標本アレイ20に時間内に先行または後続する標本アレイから、予測される。予測は、予測器106によって実行される。減算器108は、そのような元のブロックから予測値を減算し、変換段100は、予測残余に対して二次元変換を実行する。変換段100内での二次元変換そのものまたは後続の処理が、変換係数ブロック内の変換係数の量子化を導く。量子化された変換係数ブロックは、たとえば、結果であるデータストリームが出力114で出力されるようにして、エントロピーエンコーダ102内でエントロピー符号化によって無損失で符号化される。」

「【0040】
図5は、図4のエンコーダによって生成されたデータストリームを復号することができるデコーダを示す。図5のデコーダは、エントロピーデコーダ150、逆変換段152、加算器154および予測器156を備える。エントロピーデコーダ150、逆変換段152および加算器154は、この順で図5のデコーダの入力158と出力160の間に直列に接続される。エントロピーデコーダ150の他の出力が予測器156に接続され、次に予測器156は、加算器154の出力と他の入力との間に接続される。エントロピーデコーダ150は、入力158で図5のデコーダに入るデータストリームから変換係数ブロックを抽出し、ここで、残余信号を取得するために、段152において変換係数ブロックに逆変換が適用される。残余信号は、出力160において標本アレイの再構成バージョンの再構成ブロックを取得するように、予測器156からの予測と加算器154において合成される。再構成バージョンに基づいて予測器156が予測を生成し、それにより、エンコーダ側の予測器106によって実行された予測を再構築する。
・・・
【0044】
したがって、本出願の実施の形態によると、データストリームからのそのような有意マップを復号するための、またはデータストリームからの対応する有意変換係数値に沿う有意マップを復号するための装置は、図7に示すように実施され、上述のエントロピーデコーダ、すなわちデコーダ50およびエントロピーデコーダ150の各々は、図7に示す装置を構成する。
【0045】
図7の装置は、マップ/係数エントロピーデコーダ250およびアソシエータ252を備える。マップ/係数エントロピーデコーダ250は入力254に接続され、この入力254に、有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素が入力される。以下により詳しく記載するように、有意マップおよび有意変換係数値を記述するシンタックス要素がマップ/係数エントロピーデコーダ250に入力される順序に関して、異なる確率が存在する。有意マップシンタックス要素は対応するレベルに先行してよく、双方がインターリーブされてもよい。ただし、有意マップを表すシンタックス要素が有意変換係数の値(レベル)に先行し、マップ/係数エントロピーデコーダ250がまず有意マップを、そして有意変換係数の変換係数レベルを復号するものとする。
【0046】
マップ/係数エントロピーデコーダ250が有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素をシーケンシャルに復号するのに伴い、アソシエータ252は、これらのシーケンシャルに復号されたシンタックス要素/値を、変換ブロック256内の位置に関連付けるように構成される。有意マップおよび有意変換係数のレベルを表すシーケンシャルに復号化されたシンタックス要素をアソシエータ252が変換ブロック256の各位置に関連付ける走査順は、変換ブロック256の各位置の間で、これらの要素をデータストリームに導入するために符号化側で使用される順序と同一の一次元の走査順に従う。また、以下により詳しく概説されるように、有意マップのシンタックス要素についての走査順は、有意変換値について用いられる順序と等しくてもよいし、そうでなくてもよい。
・・・
【0048】
以降の説明は、変換係数ブロックまたは有意マップを符号化するための具体的な実施の形態に集中するが、それらの実施の形態は、上述の実施の形態に容易に移行できる。これらの実施の形態において、バイナリシンタックス要素coded_block_flagが各変換ブロックに送信され、その変換ブロックが有意変換係数レベル(すなわち、非ゼロである変換係数)を含むか否かを示す。このシンタックス要素が、有意変換係数レベルが存在することを示す場合には、有意マップが符号化される。すなわち、有意変換係数レベルが存在する場合だけ、符号化が行われる。有意マップは、上記のように、どの変換係数レベルが非ゼロ値を有するかを特定する。有意マップ符号化は、バイナリシンタックス要素significant_coeff_flagの符号化を含み、各バイナリシンタックス要素significant_coeff_flagは、それぞれ関連付けられた係数位置について、対応する変換系係数レベルがゼロに等しくないかどうかを特定する。符号化は、ある走査順で実行され、この走査順は、有意マップ符号化中に、それまで有意と識別された有意係数の位置に依存して変化することができる。これについては以下でさらに詳しく説明する。さらに、有意マップ符号化は、バイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flagの符号化を含む。このバイナリシンタッンクス要素は、significant_coeff_flagのシーケンスとともにその位置に分散されており、significant_coeff_flagは、有意係数をシグナリングする。significant_coeff_flagビンが1に等しい場合、すなわち、非ゼロ変換係数レベルがこの走査位置に存在する場合には、さらなるバイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flagが符号化される。このビンは、現在の有意変換係数レベルが、ブロック内の最後の有意変換係数レベルであるか、またはさらなる有意変換係数レベルが走査順に従うかを示す。last_significant_coeff_flagが、さらなる有意変換係数が続かないことを示す場合、そのブロックについての有意マップを特定するためには、さらなるシンタックス要素は符号化されない。代替的に、significant_coeff_flagのシーケンスの符号化の前に、有意係数位置の数がデータストリーム内にシグナリングされてもよい。」

「【0057】
さらなる望ましい実施の形態では、大きい変換ブロック(たとえば、8×8よりも大きいもの)が、多数の長方形および/または非長方形のサブ領域に区分けされ、これらサブ領域の各々が、significant_coeff_flagおよび/またはlast_significant_coeff_flagを符号化するために、個別のコンテキストモデルに関連付けられる。サブ領域への区分けは、significant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに対して異なっていてもよい。特定のサブ領域に位置する全ての走査位置に対して、同じコンテキストモデルが使用される。
【0058】
さらなる望ましい実施の形態では、significant_coeff_flagおよび/またはlast_significant_coeff_flagを符号化するためのコンテキストモデルが、現在の走査位置の所定の空間的近隣の、既に符号化されたシンボルに基づいて選択される。所定の近隣は、異なる走査位置に対しては異なっていてもよい。望ましい実施の形態では、コンテキストモデルは、現在の走査位置の所定の空間的近隣における有意変換係数レベルの数に基づいて選択され、ここでは、既に符号化された有意表示のみが計数される。」

「【0067】
次に、どのようにしてエントロピーデコーダ250がコンテキストをモデリングするのかについての実施の形態を説明する。
【0068】
ひとつの望ましい実施の形態では、significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリングが、以下のように行われる。4×4のブロックに対して、コンテキストモデリングは、H.264に規定されているように行われる。8×8のブロックに対しては、変換ブロックは16個の2×2の標本のサブブロックに分離され、これらサブブロックの各々が、個別のコンテキストに関連付けられる。なお、この概念は、上述のように、より大きなブロックサイズ、異なるサブブロック数、および非長方形のサブ領域にも拡張できる。
【0069】
さらに望ましい実施の形態では、大きい変換ブロックについての(たとえば、8×8よりも大きいブロックについての)コンテキストモデル選択は、(変換ブロック内の)所定の近隣における既に符号化された有意変換係数の数に基づく。本発明の望ましい実施の形態に対応する近隣の定義の一例が図9に示される。×を○で囲ったものは、評価のために常に考慮に入れられる利用可能な近隣であり、×と△のものは、現在の走査位置および現在の走査方向に応じて評価される近隣であり):
・現在の走査位置が2×2の左角304内にある場合、個別のコンテキストモデルが各走査位置に使用され(図9、左図)、
・現在の走査位置が2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合には、図9の右側に示す近隣が、その周りに何もない現在の走査位置「x」の近隣において有意変換係数の数を評価するために使用され、
・その周りに何もない現在の走査位置「x」が変換ブロックの第1行にあたる場合には、図10の右図で特定される近隣が使用され、
・現在の走査位置「x」がブロックの第1列にあたる場合には、図10の左図で特定される近隣が使用される。
【0070】
言い換えると、デコーダ250は、以前に抽出および関連付けられた有意マップシンタックス要素に従って有意変換係数が配置される多数の位置、およびそれぞれの現在の有意マップシンタックス要素が関連付けられる位置(図9の右側および図10の両側の「x」、および図9の左側の印をつけられた位置のいずれか)の近隣にあるものに制限される位置に応じて、有意マップシンタックス要素の各々について、個々に選択されるコンテキストの使用によってコンテキスト適応的にエントロピー復号化を行うことによって、有意マップシンタックス要素をシーケンシャルに抽出するように構成される。
・・・
【0073】
last_significant_coeff_flagの符号化について、significant_coeff_flagに対するものと同様のコンテキストモデリングが使用できる。
・・・
【0083】
したがって、上述の実施の形態は、デジタル信号処理の分野、特に、画像および映像デコーダおよびエンコーダに適用できる。特に、上述の実施の形態によって、確率モデリングを採用するエントロピーコーダで符号化される係数を変換することに関係するシンタックス要素に対する改善したコンテキストモデリングを用いて、ブロックベースの画像および映像コーデックにおける変換係数に関係するシンタックス要素の符号化を可能とする。最新技術との比較において、特に大きい変換ブロックに対して、向上した符号化効率が達成される。
【0084】
いくつかの側面を装置の文脈において説明したが、これらの側面は、対応する方法の説明も表していることは明らかであり、ここで、ブロックまたは装置は方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップの文脈で記載された側面は、対応するブロックもしくは項目の説明または対応する装置の特徴も表している。」

(1-2)サポート要件について
(a) 構成Aの「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置」の裏付けについて検討する。

【0037】の「図4のコーダは、予測変換ベースのブロック符号器である。」、「変換係数ブロックは、・・・データストリームが・・・出力されるように・・・符号化される。」という記載、【0040】の「図5は、図4のエンコーダによって生成されたデータストリームを復号する・・・デコーダ」、「図5のデコーダは、エントロピーデコーダ150、逆変換段152・・・を備え」、「エントロピーデコーダ150は、入力158で図5のデコーダに入るデータストリームから変換係数ブロックを抽出し」「段152において変換係数ブロックに逆変換が適用され」という記載から、「図4のエンコーダ」すなわち「図4のコーダ」である「ブロック符号化器」において、「変換係数ブロック」が「データストリームが」「出力されるように」「符号化される」ことにより「データストリーム」が生成され、「生成されたデータストリームを復号する」「図5のデコーダ」は、「エントロピーデコーダ150、逆変換段152」を「備え」ており、当該「エントロピーデコーダ150」は、「デコーダに入るデータストリームから変換係数ブロックを抽出し」、「段152において変換係数ブロックに逆変換が適用される」ものであるといえる。
そうすると、上記記載は、構成Aを裏付けるといえる。

(b) 構成Bの「コンテキスト適応エントロピー復号によって最後の有意シンタックス要素を前記データストリームから抽出するように構成されたデコーダ」、構成B-1の「前記最後の有意シンタックス要素の各々が、前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ前記それぞれの位置での変換係数が前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す」ことについて検討する。

(b-1) 【0044】の「データストリームから・・・有意マップを復号するための装置」、「エントロピーデコーダ150の各々は図7に示す装置を構成する。」という記載、【0045】の「図7の装置は、マップ/係数エントロピーデコーダ250およびアソシエータ252を備え」、「マップ/係数エントロピーデコーダ250がまず有意マップを、そして有意変換係数の変換係数レベルを復号する」という記載から、「エントロピーデコーダ150」は「マップ/係数エントロピーデコーダ250およびアソシエータ252を備え」ており、「マップ/係数エントロピーデコーダ250」が「データストリームから」「有意マップ」と「変換係数レベル」を「復号する」ものといえる。

(b-2) また、【0048】の「さらに、有意マップ符号化は、バイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flagの符号化を含む。」、「さらなるバイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flagが符号化される。このビンは、現在の有意変換係数レベルが、ブロック内の最後の有意変換係数レベルであるか、またはさらなる有意変換係数レベルが走査順に従うかを示す。」という記載から、
・「有意マップ」は「バイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flag」を「含む」こと、
・「last_significant_coeff_flag」は、走査順で「現在の有意変換係数レベルが、ブロック内の最後の有意変換係数レベルであるか」を「示す」こと、
がいえる。
ここで、last_significant_coeff_flagに対応する現在の有意変換係数は、ブロック内に存在する以上、last_significant_coeff_flagは、ブロック内の位置に関連するものであるということができ、有意マップに含まれるバイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flagは、変換係数ブロック内の位置に関連し、その位置での有意変換係数が、走査順でブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示すものといえる。
そして、last_significant_coeff_flagは、走査順でブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示すものである以上、走査順でブロック内の最後の有意な情報に関するシンタックス要素であるから、「最後の有意シンタックス要素」であるといえる。

以上から、上記記載は、構成B-1の「前記最後の有意シンタックス要素の各々が、前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ前記それぞれの位置での変換係数が」走査順で「前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す」という事項を裏付けるといえる。

(b-3) さらに、【0070】の「デコーダ250は、・・・有意マップシンタックス要素の各々について、個々に選択されるコンテキストの使用によってコンテキスト適応的にエントロピー復号化を行う」という記載から、「デコーダ250」は「コンテキスト適応的にエントロピー復号化を行う」ことで、「有意マップシンタックス要素」を復号するものであるといえる。
ここで、上記(b-1)から、「マップ/係数エントロピーデコーダ250」が「データストリームから」「有意マップ」を「復号する」こと、上記(b-2)から「有意マップ」は「変換係数ブロック内の位置に関連し、その位置での有意変換係数が」走査順で「ブロック内の最後の有意変換係数であるか」否かを「示す」「バイナリシンタックス要素last_significant_coeff_flag」を「含む」こと、がそれぞれいえることから、「マップ/係数エントロピーデコーダ250」は、「コンテキスト適応的エントロピー復号化」によって「有意マップ」に含まれるシンタックス要素である「前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ前記それぞれの位置での変換係数が」走査順で「前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す」シンタックス要素である、「最後の有意シンタックス要素」を抽出するものであるといえる。

したがって、上記記載は、構成Bの「コンテキスト適応エントロピー復号によって最後の有意シンタックス要素を前記データストリームから抽出するように構成されたデコーダ」を裏付けるといえる。

(c) 構成Cの「走査順で各々の前記最後の有意シンタックス要素を前記変換係数ブロックのそれぞれの位置に関連付けるように構成されたアソシエータ」の裏付けについて検討する。

【0046】の「マップ/係数エントロピーデコーダ250が有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素をシーケンシャルに復号するのに伴い、アソシエータ252は、これらのシーケンシャルに復号されたシンタックス要素/値を、変換ブロック256内の位置に関連付けるように構成される。」という記載、及び上記(b-3)から、「アソシエータ252」は、「変換ブロック256内の位置に関連付けるように構成される」有意マップのシンタックス要素の1つとして、走査順で各々の最後の有意シンタックス要素を含むものといえ、上記記載は、構成Cを裏付けるといえる。

(d) 構成D-3の「前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用する」、「選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキスト」について、構成D-3の上記「現在の最後の有意のシンタックス要素のコンテキスト」が、構成D-1の「前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って」、構成D-2の「および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って」選択されることの裏付けについて検討する。

(d-1) 【0068】には「significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリングが、以下のように行われる。・・・8×8のブロックに対しては、変換ブロックは16個の2×2の標本のサブブロックに分離され、これらサブブロックの各々が、個別のコンテキストに関連付けられる。・・・この概念は、・・・より大きなブロックサイズ・・・にも拡張できる。」という記載がある。

また、【0069】には「・・・大きい変換ブロックについての(たとえば、8×8よりも大きいブロックについての)コンテキストモデル選択は、(変換ブロック内の)所定の近隣における既に符号化された有意変換係数の数に基づく。・・・近隣の定義の一例が図9に示される。×を○で囲ったものは、評価のために常に考慮に入れられる利用可能な近隣であり、×と△のものは、現在の走査位置および現在の走査方向に応じて評価される近隣であり
・現在の走査位置が2×2の左角304内にある場合、個別のコンテキストモデルが各走査位置に使用され(図9、左図)、
・現在の走査位置が2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合には、図9の右側に示す近隣が、その周りに何もない現在の走査位置「x」の近隣において有意変換係数の数を評価するために使用され、
・その周りに何もない現在の走査位置「x」が変換ブロックの第1行にあたる場合には、図10の右図で特定される近隣が使用され、
・現在の走査位置「x」がブロックの第1列にあたる場合には、図10の左図で特定される近隣が使用される。」という記載が、
【0070】には「言い換えると、デコーダ250は、現在の有意マップシンタックス要素が関連付けられる位置(図9の右側および図10の両側の「x」、および図9の左側の印をつけられた位置のいずれか)の近隣にあるものに制限される位置に応じて、有意マップシンタックス要素の各々について、個々に選択されるコンテキストの使用によってコンテキスト適応的にエントロピー復号化を行う」という記載がある。

ここで、図9及び図10には以下の記載がある。




ところで、図9及び図10には、記号「x」の走査位置の近隣には、記号xを記号〇で囲ったものは存在しない上、記号xと記号△のものも存在せず、記号+を記号〇で囲ったものと、記号+を記号△で囲ったものが存在することから、図9と【0069】の両方の記載から、【0069】における「xを〇で囲ったもの」とは「+を〇で囲ったもの」、「×と△のもの」とは「+を△で囲ったもの」の誤記であることは、当業者ならば理解できるものといえる。

これらを総合すると、現在の走査位置に関する現在の有意マップシンタックス要素に関して、significant_coeff_flagについては、サブブロックの各々について個別のコンテキストに関連付けられており、さらに、関連付けられる位置が、
・図9左図の2×2のサブブロックである左角304内にある場合は、個別のコンテキストモデルが、
・図9右図のxの位置にある場合(すなわち、変換ブロック内の現在の走査位置が2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合)は、図9右図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内の現在の走査位置の所定の空間的近隣)における、既に符号化された有意変換係数の数に基づくコンテキストモデルが、
・図10右図のxの位置にある場合(すなわち、その周りに何もない現在の走査位置「x」が変換ブロックの第1行にあたる場合)は、図10右図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内の現在の走査位置の所定の空間的近隣)における、既に符号化された有意変換係数の数に基づくコンテキストモデルが、
・図10左図のxの位置にある場合(すなわち、現在の走査位置「x」がブロックの第1列にあたる場合)は、図10左図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内の現在の走査位置の所定の空間的近隣)における、既に符号化された有意変換係数の数に基づくコンテキストモデルが、
それぞれ選択されてコンテキスト適応エントロピー復号化に使用されるといえる。

したがって、上記記載から、現在の走査位置である、現在の有意マップシンタックス要素に関して、significant_coeff_flagについては、変換ブロックが分割されているサブブロックのうちのどのサブブロックに位置しているかに従って、及び現在の有意マップシンタックス要素の変換ブロック内の所定の空間的近隣における、既に符号化された有意変換係数の数に基づいて、コンテキストモデルが選択されてコンテキスト適応エントロピー復号化に使用されるといえる。

(d-2) さらに、上記【0068】の記載、とりわけ「significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリングが、以下のように行われる。」という記載と、【0073】の「last_significant_coeff_flagの符号化について、significant_coeff_flagに対するものと同様のコンテキストモデリングが使用できる。」という記載がある。
これらの記載から、「significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリング」と同様に、現在の有意マップシンタックス要素である「last_significant_coeff_flag」についても、変換ブロックが分割されているサブブロックのうちのどのサブブロックに位置しているかに従って、及び現在の有意マップシンタックス要素の所定の空間的近隣の、既に符号化された有意変換係数の数に従って、コンテキストモデルが選択されて適応エントロピー復号化に使用されるといえる。

(d-3) さらに、「last_significant_coeff_flag」は、上記(b-2)より、「最後の有意シンタックス要素」であるといえる。

(d-4) また、【0058】には「last_significant_coeff_flagを符号化するためのコンテキストモデルが、現在の走査位置の所定の空間的近隣の、既に符号化されたシンボルに基づいて選択される。・・・望ましい実施の形態では、コンテキストモデルは、現在の走査位置の所定の空間的近隣における有意変換係数レベルの数に基づいて選択され」という記載があり、(d-3)と合わせると、現在の走査位置の所定の空間的近隣における「有意変換係数レベルの数に基づいて」「最後のシンタックス要素」を符号化するためのコンテキストモデルが選択されることは、現在の走査位置の所定の空間的近隣における、「既に符号化されたシンボルに基づいて」コンテキストモデルが選択されることの一実施形態に当たるものといえる。

(d-5) そうすると、上記(d-1)における、
「現在の走査位置である、現在の有意マップシンタックス要素に関して、significant_coeff_flagについては、変換ブロックが分割されているサブブロックのうちのどのサブブロックに位置しているかに基づいて、及び現在の有意マップシンタックス要素の変換ブロック内の所定の空間的近隣における、既に符号化された有意変換係数の数に基づいて、コンテキストモデルが選択されて適応エントロピー復号化に使用される」
という事項は、(d-2)?(d-4)を踏まえると、
「現在の走査位置である、現在の有意マップシンタックス要素に関して、最後の有意シンタックス要素については、変換ブロックが分割されているサブブロックのうちのどのサブブロックに位置しているかに基づいて、及び現在の有意マップシンタックス要素の変換ブロック内の所定の空間的近隣における、既に符号化されたシンボルに基づいて、コンテキストモデルが選択されてコンテキスト適応エントロピー復号化に使用される」(以下、記載事項Dという)ことが本件明細書中に記載されていることを裏付けるものである。

(d-6) そして、上記記載事項Dは、構成D-3の「選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキスト」について、構成D-3のコンテキストが、構成D-1の「前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って」、構成D-2の「および前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルに従って」選択されて使用されることが明細書中に記載されていることを裏付けるといえる。

以上より、本件発明1の構成A?D-3は、明細書中にサポートされているといえる。

(1-3)明確性について
また、上記(1-2)のとおり、本件発明1の構成A?D-3が示す事項は明確であり、かつその技術的意味に不明確な点はない。

(1-4)本件発明1についてのまとめ
以上から、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件発明1の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件発明1は明確である。

(2)本件発明6、11、2?5、7?10、12、13について
本件発明6は、本件発明1の「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置」について、復号するための装置とサブコンビネーションをなすところの「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」として特定したところ、【0037】の「図4のコーダは、予測変換ベースのブロック符号器である。」、「変換係数ブロックは、・・・データストリームが・・・出力されるように・・・符号化される。」という記載、【0083】の「上述の実施の形態は、・・・画像および映像デコーダ及びエンコーダに適用できる」という記載を踏まえると、「復号するための装置」である本件発明1とサブコンビネーションをなすところの「符号化するための装置」である本件発明6についても同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件発明6の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件発明6は明確である。

また、本件発明11は、本件発明1の「復号するための装置」という物のカテゴリの発明を、「復号するための方法」という方法のカテゴリの発明として特定したものであるところ、【0084】の「いくつかの側面を装置の文脈において説明したが、これらの側面は、対応する方法の説明も表していることは明らかであり、ここで、ブロックまたは装置は方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。」という記載を踏まえると、本件発明11についても同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件発明11の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件発明11は明確である。

さらに、本件発明1、6、11を引用する本件発明2?5、7?10、12、13についても、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件発明2?5、7?10、12、13の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件発明2?5、7?10、12、13は明確である。

(3)取消理由1についてのまとめ
以上の(1)?(2)から、本件発明1?13に係る特許について、特許法第36条第6号第1項及び第2項を満たさない発明に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由1(同法第113条第1項第4号)は存在しない。

2.取消理由2、3について
(1)甲第1号証及び甲1発明
甲第1号証には、コンテキストベースのバイナリ算術符号化及び復号化のための方法及び装置に関して以下の記載がある。

「[0006] H.264 uses context adaptive binary arithmetic coding (CABAC) which is an arithmetic coding technique with enhanced compression efficiency. The CABAC is an entropy encoding method of compressing data by using probabilities of symbols.
[0007] FIG. 1 is a block diagram illustrating an apparatus for CABAC according to conventional technology. In an encoding process according to H.264, a discrete cosine transform is performed in units of residual blocks, each of which has a size of 4x4, and then, a syntax element is generated in relation to each 4x4 residual block.
[0008] Referring to FIG. 1, the CABAC encoding apparatus according to the conventional technology broadly includes a binarizer 10, a context modeler 20, and a binary arithmetic coder 30. Also, the arithmetic coder 30 includes a regular coding engine 32 and a bypass coding engine 34.
[0009] If a non-binary valued syntax element is input, the binarizer 10 maps the syntax element into a sequence of binary values, thereby outputting a bin string.
[0010] In order to increase the processing speed of the encoding process, the bin string obtained by mapping into binary values by the binarizer 10 or predetermined bin values selected from a syntax element having binary values therein is encoded by the bypass coder 34 without being input to the context modeler 20, and is output as a bitstream. Other bins are input to the context modeler 20.Here, a bin indicates each bit of a bin string.
[0011] Based on the input bin values or a previously encoded syntax element, the context modeler 20 determines a probability model required for encoding a currently input bin.
[0012] The regular coding engine 32 arithmetic-encodes the input bin value, based on the probability model determined in the context modeler 20, and generates a bitstream.」
(仮訳:
[0006]H.264は、圧縮効率が向上した算術符号化手法であるコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用する。CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式である。
[0007]図1は、従来技術によるCABAC用の装置を示すブロック図である。H.264に準拠したエンコード処理では、4×4のサイズの残差ブロックの単位で離散コサイン変換が実行され、それぞれの4×4の残差ブロックに関連してシンタックス要素が生成される。
[0008]図1を参照すると、従来技術によるCABAC符号化装置は、大まかには、バイナリ化器10、コンテキストモデラ20、及びバイナリ算術符号化器30を含む。また、算術符号化器30は、正規符号化エンジン32とバイパス符号化エンジン34とを含む。
[0009]非バイナリ値のシンタックス要素が入力されると,バイナリ化器10はシンタックス要素をバイナリ値の列にマッピングし,それによってビン文字列を出力する。
[0010]符号化処理の処理速度を向上させるために、バイナリ化器10によってバイナリ値にマッピングされて得られたビン文字列、または、その中にバイナリ値を有するシンタックス要素から選択された所定のビン値は、コンテキストモデラ20に入力されることなく、バイパス符号化器34によって符号化され、ビットストリームとして出力される。それ以外のビンは、コンテキストモデラ20に入力される。ここで、ビンとは、ビン文字列の各ビットを示す。
[0011]入力ビン値または以前に符号化されたシンタックス要素に基づいて、コンテキストモデラ20は、現在入力されているビンを符号化するために必要な確率モデルを決定する。
[0012]正規符号化エンジン32は、コンテキストモデラ20で決定された確率モデルに基づいて、入力ビン値を算術符号化し、ビットストリームを生成する。)

「[0017] In operation 220, if a non-zero coefficient value (hereinafter referred to as a significant coefficient) exists in the current 4x4 residual block, a significance map indicating the position of the significant coefficient is encoded. The significance map is formed with significant bits and an end-of-block (EOB). A significant bit indicates whether a coefficient according to each scan index is a significant coefficient or 0, and is expressed by significant_coeff_flag[i]. Here, significant_coeff_flag[i] indicates whether or not the coefficient value of an i-th scan index among 16 coefficients of a 4x4 residual block is 0.
[0018] FIGS. 3A and 3B are diagrams illustrating a significance map of a 4x4 residual block according to conventional technology.
[0019] Referring to FIG. 3A, it is assumed that coefficients at the positions marked by X among coefficients in the 4x4 residual block 31 have predetermined non-zero values. In this case, as illustrated in FIG. 3B, a significance map 32 is obtained by expressing each significant coefficient among the coefficients in the 4x4 residual block as 1, and each insignificant coefficient having zero value as 0. The significance map is scanned in a predetermined scan order, and thus context-based arithmetic encoding is performed. For example, in the case of raster scanning in which contents are scanned from the left-hand side to the right-hand side, and from the top to the bottom, when the significance map as illustrated in FIG. 3A is encoded, a bin string of ‘1111111110101000’ is context-based encoded. In order to encode a significance map, 15 different probability models are used for significant_coeff_flag and last_significant_coeff_flag. A context used for encoding a significance map is determined according to a scanning position of a predetermined scan order. That is, according to the conventional technology, when the significance map as illustrated in FIG. 3B is encoded, a context to be used for encoding is determined according to the position of each coefficient.」
(仮訳:
[0017]動作220において、非ゼロの係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の4×4の残差ブロックに存在する場合、有意係数の位置を示す有意マップが符号化される。有意マップは、有意ビットとend-of-block(EOB)で形成される。有意ビットは、各スキャンインデックスに従った係数が有意係数であるか0であるかを示し、significant_coeff_flag[i]で表される。ここで、significant_coeff_flag[i]は、4×4の残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデックスの係数値が0であるかどうかを示す。
[0018]図3A及び3Bは、従来技術による4×4の残差ブロックの有意マップを示す図である。
[0019]図3Aにおいて、4×4の残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示す有意マップ32は、4×4の残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られる。有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そして上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される有意マップが符号化され、「1111111110101000」というビン文字列がコンテキストベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によれば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。)

「[0027] The present invention provides a method of and apparatus for context-based binary arithmetic coding and decoding, in which when a significance map indicating the positions of significant coefficients of a residual block is encoded, context modeling using a correlation with a previous residual block is further divided and the difference between an MPS and an LPS is made to be larger such that the performance of binary arithmetic coding can be improved.」
(仮訳:
[0027]本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化及び復号化のための方法及び装置を提供するものであり、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキストモデリングがさらに分割され、MPSとLPSの間の差が大きくなるようにすることで、バイナリ算術符号化の性能が向上するようになる。)

「[0052] … Also, a scan index is an index indicating the position of each coefficient in a residual block, and indicates the positions of coefficients in a residual block or binary values of a significant map according to a predetermined scan order. For example, when it is assumed that a 4x4 residual block is scanned in a zigzag scan order, each coefficient in the 4x4 residual block can be defined as a value existing at a position expressed by any one of scan indexes 1 through 16 according to the scan order.」
(仮訳:
[0052]・・・また、スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標であり、所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有意マップのバイナリ値を示す。例えば、4×4の残差ブロックがジグザグスキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1?16のいずれかで示される位置に存在する値として定義される。)

「[0054] For example, as illustrated in FIG. 8, assuming that there are significance maps 81, 82, 83, and 84, generated by expressing significant coefficients that are not 0 in a residual block, as 1, and expressing insignificant coefficients as 0, encoding of the significance maps 81 through 84 will now be explained. Being scanned in the zigzag scan order as illustrated in the residual block 1 of FIG. 7, the significance maps 81 through 84 of the residual blocks are context-based binary arithmetic coded. According to the present invention, when binary values of a significance map of a current residual block, i.e., significant_coeff_flag[i], are encoded, a context to be used for encoding binary values 0 and 1 of the significance map being currently encoded is determined according to whether corresponding binary values in significance maps of at least one or more previous residual blocks are 0 or 1. For example, when 0, which is the binary value of the first scan index 89 of significance map 4, is encoded, a different context is selected according to whether the corresponding binary value of the first scan index 88 of the significance map 3 of a previous residual block. Here, a context is formed with the probability values of an MPS and an LPS, and a binary value identical to the binary value of the corresponding scan index in the previous significance map becomes the MPS. That is, if the binary value of a corresponding scan index in the previous significance map is 0, 0 becomes the MPS and if the binary value of the corresponding scan index is 1, 1 becomes the MPS.」
(仮訳:
[0054]例えば図8に示すように、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有意係数を0として表現することによって生成された有意マップ81、82、83、及び84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、ここに説明する。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順序でスキャンされることで、有意マップ81?84はコンテキストベースのバイナリ算術符号化がされている。本発明によれば、現在の残差ブロックの有意マップのバイナリ値、すなわち、significant_coeff_flag[i]が符号化されるとき、少なくとも1つ以上の以前の残差ブロックの有意マップの対応するバイナリ値が0か1かに応じて、現在符号化されている有意マップのバイナリ値0及び1を符号化するために使用されるコンテキストが決定される。例えば、有意マップ4の第1のスキャンインデックス89のバイナリ値である0が符号化される場合に、以前の残差ブロックの有意マップ3の第1のスキャンインデックス88のバイナリ値に対応するかどうかに従って、異なるコンテキストが選択される。ここで、MPSとLPSの確率値に基づいてコンテキストが形成され、以前の有意マップの対応するスキャンインデックスのバイナリ値と同一のバイナリ値がMPSになる。つまり、以前の有意マップの対応するスキャンインデックスのバイナリ値が0の場合、0がMPSになり、また、もし対応するスキャンインデックスのバイナリ値が1の場合、1がMPSになる。)





「[0080] FIG. 13 is a block diagram illustrating a structure of an apparatus for encoding an image to which a context-based binary arithmetic coding apparatus according to an embodiment of the present invention is applied. The context-based binary arithmetic coding apparatus according to the present invention is applied to an entropy encoding unit 1340 of FIG.13.
・・・
[0084] The entropy encoding unit 1340 performs context-based binary arithmetic coding in units of residual blocks of a predetermined size, thereby generating a bitstream.」
(仮訳:
[0080]図13は、本発明の一実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置が適用される画像を符号化するための装置の構成を示すブロック図である。本発明によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置は、図13のエントロピー符号化ユニット1340に適用される。
・・・
[0084]エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによってビットストリームを生成する。)

「[0085] FIG. 14 is a block diagram illustrating a structure of a context-based binary arithmetic coding apparatus according to an embodiment of the present invention.
[0086] Referring to FIG. 14, the context-based binary arithmetic coding apparatus 1400 according to the current embodiment includes a context selection unit 1410, an arithmetic coding unit 1420 and a storage unit 1430.
[0087] The storage unit 1430 stores information on syntax elements of residual blocks processed before a current residual block and significance maps of the previous residual blocks.
[0088] The context selection unit 1410 selects a context to be used for encoding the significance map of the current residual block according to whether or not a corresponding coefficient of a previous residual block is a significant coefficient, by using the information on the significance maps of the previous residual blocks stored in the storage unit 1430.
[0089] The arithmetic coding unit 1420 performs binary arithmetic coding of each binary value forming the significance map of the current residual block, by using the selected context.」
(仮訳:
[0085]図14は、本発明の一実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置の構造を示すブロック図である。
[0086]図14を参照すると、本実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置1400は、コンテキスト選択部1410、算術符号化部1420、及び記憶部1430を含む。
[0087]記憶部1430は、現在の残差ブロックの前に処理された残差ブロックのシンタックス要素の情報と、以前の残差ブロックの有意マップを記憶する。
[0088]コンテキスト選択部1410は、記憶部1430に記憶されている以前の残差ブロックの有意マップの情報を用いて、以前の残差ブロックの対応する係数が有意係数であるか否かに応じて、現在の残差ブロックの有意マップの符号化に使用するコンテキストを選択する。
[0089]算術符号化部1420は、選択されたコンテキストを用いて、現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化を行う。)






上記記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、甲1発明という)が記載されているものと認められる。(記号は本件発明6の記号に対応させた。)

(甲1発明)
a6 コンテキストベースのバイナリ算術符号化のための装置であって([0027]、[0080])、エントロピー符号化ユニット1340を有し、([0080])、エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによってビットストリームを生成するものであり([0084])、

b6、b6-1、c6 コンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用するものであり、CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式であり([0006])、シンタックス要素が入力されて、出力されたビン文字列は、コンテキストモデラに入力されることなく、ビットストリームとして出力され、またはコンテキストモデラに入力され、コンテキストモデラで決定された確率モデルに基づいて、ビットストリームを生成し、([0009]、[0010]、[0012])、
有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符号化が実行されるものであり、有意マップのlast_significant_coeff_flagを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される、すなわち、有意マップは、それぞれの係数の位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定されるものであり([0019])、有意マップは、4×4の残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られるものであり([0019])、
4×4の残差ブロックがジグザグスキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1?16のいずれかで示される位置に存在する値として定義されるものであり[0052]、ジグザグスキャン順序でスキャンされることで、有意マップ81?84はコンテキストベースのバイナリ算術符号化がされ([0054]、FIG.8)、
現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化の出力はビットストリームとして出力され([0089]、FIG.14)、

d6-2、d6-3 現在の残差ブロックの有意マップのバイナリ値が符号化されるとき、少なくとも1つ以上の以前のブロックの有意マップの対応するバイナリ値に応じて、現在符号化されている有意マップのバイナリ値を符号化するために使用されるコンテキストが決定される([0054])ものであり、
有意マップ4の第1のスキャンインデックス89のバイナリ値である0が符号化される場合に、以前の残差ブロックの有意マップ3の第1のスキャンインデックス88のバイナリ値に対応するかどうかに従って、異なるコンテキストが選択される([0054]、FIG.8)、

a6 符号化装置。

(2)本件発明6と甲1発明との対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。

(a) 甲1発明の構成a6の「バイナリ算術符号化のための装置」は、「所定のサイズの残差ブロックの単位で」「ビットストリームを生成するものであ」り、本件発明6の構成A6の「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」に相当する。

(b) 甲1発明の構成b6、b6-1、c6の「有意マップのlast_significant_coeff_flag」は、上記1(2)(d-4)と同様の理由により、本件発明6の構成B6の「最後の有意シンタックス要素」に相当するものであって、構成B6-1の「それぞれの位置での変換係数が」「変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す」ものといえる。
また、甲1発明は「コンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用するものであ」るところ、「CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式であ」るから、上記(a)と合わせると、甲1発明は、コンテキスト適応エントロピー符号化を介してデータストリームに符号化するよう構成されているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明6の構成B6と同様に「コンテキスト適応エントロピー符号化を介して最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され」ているといえる。

(b1) 次に、甲1発明は構成b6、b6-1、c6にあるように「有意マップは、それぞれの係数の位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される」ものであり、「有意マップは、4x4残差ブロック内の係数」に関して表現することによって得られるものである以上、有意マップのlast_significant_coeff_flagは、4x4残差ブロック内の係数の位置と関連するものといえる。
また、甲1発明において、少なくとも有意マップ81?84があることから、有意マップは複数あることは明らかである。
そうすると、甲1発明は、本件発明6の構成B6-1と同様に、「最後の有意シンタックス要素の各々が」「変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し」、「前記それぞれの位置での変換係数が」「変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示す」ように構成されているといえる。

(c) また、甲1発明は構成b6、b6-1、c6にあるように「有意マップのlast_significant_coeff_flagを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される」ものであり、「現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化の出力はビットストリームとして出力され」ることから、甲1発明の有意マップのlast_significant_coeff_flagは「所定のスキャン順序」で「最後の有意シンタックス要素」であり、バイナリ算術符号化されてビットストリームとして出力されるものといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明6の構成のC6と同様に、「走査順で前記最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され」ているといえる。

(d) 甲1発明において、構成d6-2、d6-3にあるように「有意マップ4の第1のスキャンインデックス89のバイナリ値である0が符号化される場合に、以前の残差ブロックの有意マップ3の第1のスキャンインデックス88のバイナリ値に対応するかどうかに従って、異なるコンテキストが選択される」ことから、「有意マップ4」に対して「有意マップ3」は「以前の残差ブロック」に存在する。
ここで、「有意マップ4」と「以前の残差ブロックの有意マップ3」は隣接していることから、「有意マップ4」のシンタックス要素に対して、「以前の残差ブロックの有意マップ3」のシンタックス要素は、隣接するブロック内にあるといえる。
また、甲1発明において、「現在の残差ブロックの有意マップのバイナリ値が符号化されるとき、少なくとも1つ以上の以前のブロックの有意マップの対応するバイナリ値に応じて、現在符号化されている有意マップのバイナリ値を符号化するために使用されるコンテキストが決定される」ことについて、上記「有意マップのバイナリ値」を、有意マップのシンタックス要素である「last_significant_coeff_flag」、すなわち、最後の有意シンタックス要素と読み替えても、同様のことがいえる。
ここで、「少なくとも1つ以上の以前のブロック」は「以前の残差ブロック」にあることから、現在の残差ブロックの有意マップの最後の有意のシンタックス要素が符号化されるとき、当該最後の有意のシンタックス要素を符号化するために使用されるコンテキストは、隣接したブロック内において符号化されたシンボルに従って決定されるといえる。

一方、本件発明の構成D6-2における「前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボル」における「位置の近隣における近隣位置」、すなわち構成D6-1における「前記現在の最後のシンタックス要素が位置している」位置の近隣における近隣位置、とは、構成B6-1の「変換係数ブロック内の(それぞれの)位置」の近隣における近隣位置であり、上記「1 取消理由1」の(d-5)、(d-6)から、「現在の有意マップシンタックス要素の変換ブロック内の所定の空間的近隣における、既に符号化されたシンボル」における「変換ブロック内の所定の空間的近隣」の位置に裏付けられたものである。

そうすると、最後の有意シンタックス要素を符号化する際に使用するコンテキストを選択することについて、甲1発明の構成d6-2、d6-3は、本件発明6の構成D6-1、D6-2、D6-3と、
D6-2’ 前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置と所定の位置関係にある位置のために符号化されたシンボルに従って
D6-3 選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成されている、
という点で共通する。

ただし、本件発明6は構成D6-1を有する、すなわち、「前記変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って」コンテキストが選択される、のに対して、甲1発明は、残差ブロックをさらにサブ領域に分割するものではなく、最後の有意シンタックス要素がどのサブ領域に位置しているかを取得するものではなく、そのような構成を有するものではない点において相違する。
加えて、「前記現在の最後の有意シンタックスの要素の前記位置と所定の位置関係にある位置のために符号化されたシンボル」における「所定の位置関係にある位置」に関し、本件発明6は、構成D6-2のように、当該「所定の位置関係にある位置」が変換ブロック内の「近隣における近隣位置」であるのに対して、甲1発明は「隣接するブロック内の位置」である点で相違する。

以上のことから、本件発明6と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

(一致点)
A6 変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であって、
A6 前記装置が、
B6 コンテキスト適応エントロピー符号化を介して最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
B6-1 前記最後の有意シンタックス要素の各々が前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連し、且つ、前記それぞれの位置での変換係数が前記変換ブロック内の最後の有意変換係数であるか否かを示し、
A6 前記装置が、
C6 走査順で前記最後の有意シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
A6 前記装置が、
D6-2’ 前記現在の最後の有意シンタックス要素の前記位置の所定の位置関係にある位置のために符号化されたシンボルに従って
D6-3 選択される前記現在の最後の有意シンタックス要素のコンテキストを、前記最後の有意シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成された、
A6 装置。

(相違点1)
最後の有意シンタックス要素を符号化する際に使用するコンテキストを選択することについて、
本件発明6は、構成D6-1を有する、すなわち、
「変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかに従って」コンテキストが選択される、のに対して、
甲1発明は、残差ブロックをさらにサブ領域に分割するものではなく、最後の有意シンタックス要素がどのサブ領域に位置しているかを取得するものではなく、そのような構成を有するものではない点。

(相違点2)
最後の有意シンタックス要素を符号化する際に使用するコンテキストを選択することについて、
「前記現在の最後の有意シンタックス要素の位置の所定の位置関係にある位置のために符号化されたシンボル」における「所定の位置関係にある位置」に関し、本件発明6は、構成D6-2のように、当該「所定の位置関係にある位置」が変換係数ブロック内の「近隣における近隣位置」であるのに対して、甲1発明は「隣接するブロック内の位置」である点。

(3)判断
上記相違点1について検討するに、変換係数ブロックが分割されているサブ領域のうちのどのサブ領域に現在の最後の有意シンタックス要素が位置しているかという情報を取得することも、当該情報に従ってコンテキストを選択することも、甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や、自明の事項ということもできない。
また、上記相違点2について検討するに、最後の有意シンタックス要素の位置が変換係数ブロック内の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルによって、当該シンタックス要素のコンテキストを選択することもまた甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や、自明の事項ということもできない。
したがって、本件発明6と甲1発明は実質的に同一の発明ということはできない。

また、特許異議申立書の「4 申立ての理由」の「(4)具体的理由」のうち、「オ 取消理由3」には、
「仮に、本件発明1?13と甲1発明が相違するとしても、その相違点は、単なる設計変更もしくは周知技術の単なる寄せ集めであって新たな効果を奏するものではない。また、同じ符号化の技術分野におけるものであれば組み合わせることに阻害要因も無い。
例えば周知技術を示す資料として以下がある。これらの周知技術には、いずれも本件発明と同じH.264/AVCに関連するエントロピー符号化/復号化のコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding))又はコンテキスト適応型可変長符号化(CAVLC(Context-Adaptive Variable-Length Coding))に関する技術が開示されている。」
という記載とともに、甲第2号証から甲第6号証が示されている。

しかしながら、特許異議申立書中には、甲第2号証から甲第6号証の引用箇所を具体的に指摘する記載は無く、さらに、これら各甲号証には、残差ブロックをさらにサブ領域に分割すること、現在の最後の有意シンタックス要素の位置の近隣における近隣位置のために符号化されたシンボルによって、当該有意シンタックス要素のコンテキストを選択すること、についてのいずれの記載も見当たらない。

したがって、甲第2号証から甲第6号証には、上記相違点1、2について記載されているということはできず、甲1発明に甲第2号証から甲第6号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点1、2に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(4)小括
したがって、本件発明6は甲1発明と同一の発明ではなく、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(5)本件発明1、11、2?5、7?10、12、13について
本件発明1は、本件発明6の「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」について、構成C6の「前記装置が、走査順で前記最後のシンタックス要素を前記データストリームに符号化されるように構成され」たものを、構成Cの「走査順で各々の前記最後の有意シンタックス要素と前記変換係数ブロックのそれぞれの位置に関連付けられるように構成されたアソシエータ」として、符号化するための装置とサブコンビネーションをなすところの「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置」として、特定したものである。

そして、本件発明6とサブコンビネーションをなすところの「復号するための装置」である本件発明1について検討すると、甲1発明とサブコンビネーションをなすところの「復号するための装置」は、上記相違点1、2で相違するといえる。

上記(3)によれば、当該相違点1、2は甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や、自明の事項ということもできないから、本件発明1と甲1発明は実質的に同一の発明ということはできない。

また、甲第2号証から甲第6号証によっては、上記相違点1、2を充足することはできず、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載された事項を適用したとしても、当該相違点1、2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

したがって、本件発明1は甲1発明と同一の発明ではなく、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

また、本件発明11は、本件発明1の「復号するための装置」という物のカテゴリの発明を、「復号するための方法」という方法のカテゴリの発明として特定したものであり、本件発明11についても本件発明1と同様の理由により、甲1発明と実質的に同一の発明ということはできず、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

さらに、本件発明1、6、11を引用する本件発明2?5、7?10、12、13についても、本件発明1、6、11と同様の理由により、甲1発明と実質的に同一の発明ということはできず、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(6)取消理由2、3についてのまとめ
以上(1)?(5)のとおり、本件発明1?13に係る特許について、特許法第29条第1号第3項または特許法第29条第2項の規定に反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由2、3(同法第113条第2号)は存在しない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立の取消理由1?3及び証拠によっては、本件発明1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-06-21 
出願番号 特願2018-131151(P2018-131151)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H04N)
P 1 651・ 121- Y (H04N)
P 1 651・ 537- Y (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
千葉 輝久
登録日 2020-05-07 
登録番号 特許第6700342号(P6700342)
権利者 ジーイー ビデオ コンプレッション エルエルシー
発明の名称 データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する装置および方法、ならびにビデオに関連するデータを記憶するための非一時コンピュータ可読媒体  
代理人 竹本 如洋  
代理人 田中 拓人  
代理人 鈴木 康弘  
代理人 近田 暢朗  
代理人 岡部 英隆  
代理人 田村 啓  
代理人 小倉 博  
代理人 中谷 剣一  
代理人 荒川 聡志  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ