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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
管理番号 1375895
異議申立番号 異議2021-700262  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-10 
確定日 2021-07-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6759892号発明「蓄電デバイス特性測定装置、蓄電デバイス特性測定方法、及び蓄電デバイス特性測定用プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6759892号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6759892号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年9月7日に出願され、令和2年9月7日にその特許権の設定の登録がされ、同月23日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は7である。
これに対して、令和3年3月10日に特許異議申立人佐藤桂子(以下「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証?甲第6号証を提出し、本件特許の請求項1?7について特許異議の申立てをした。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」から「本件特許発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
車載用の蓄電デバイスの特性を測定する装置であって、
前記蓄電デバイスに電流を入力する電流源と、
前記電流源から出力される電流量を制御する制御部と、
前記蓄電デバイスの端子間電圧を測定する電圧センサと、
前記蓄電デバイスに入力される電流の大きさを測定する電流センサと、
を備え、
前記制御部が、定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間を所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む電流波形を電流源から出力させることを特徴とする、蓄電デバイス特性測定装置。
【請求項2】
前記電流波形が、前記定電流放電状態後のクランキング状態を模擬する期間を少なくとも1回、更に含むことを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス特性測定装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記定電流放電状態を模擬する期間及び前記定電圧充電状態を模擬する期間のうち少なくとも一方における電流量を充電率に応じて変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電デバイス特性測定装置。
【請求項4】
前記電流波形が、前記定電流放電状態を模擬する期間を複数回含み、該複数回の期間のうち少なくとも2回の期間の電流量が互いに異なることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス特性測定装置。
【請求項5】
前記電流波形が、前記定電圧充電後の休止状態を模擬する期間を複数回含み、該複数回の期間のうち少なくとも2回の期間の長さが互いに異なることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス特性測定装置。
【請求項6】
車載用の蓄電デバイスの特性を測定する方法であって、
電流源からの電流を前記蓄電デバイスへ入力しながら、前記蓄電デバイスの端子間電圧、及び前記蓄電デバイスに入力される電流の大きさを測定するステップを含み、
前記ステップにおいて、定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間を所定の測定時間内に少蓄電デバイス特性測定用プログラムなくとも1回ずつ含む電流波形を前記電流源から出力することを特徴とする、蓄電デバイス特性測定方法。
【請求項7】
車載用の蓄電デバイスの特性を測定する装置において、前記蓄電デバイスに電流を入力する電流源から出力される電流量を制御する制御部を動作させるプログラムであって、
定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間を所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む電流波形を前記電流源から出力させるように前記制御部を動作させることを特徴とする、蓄電デバイス特性測定用プログラム。」

第3 申立理由の概要
申立人は、本件特許の出願日前に公開された下記の文書を証拠方法として、以下の1?7に示す理由により、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。

1 本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

2 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術並びに甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

3 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術並びに甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

4 本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術並びに甲第6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

5 本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

6 本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

7 本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。


甲第1号証:特開平6-213981号公報
甲第2号証:特開2001-102097号公報
甲第3号証:特開2002-305038号公報
甲第4号証:特開2005-127202号公報
甲第5号証:特開2011-189768号公報
甲第6号証:特開2009-288039号公報

以下、これらの文献をそれぞれ「甲1文献」?「甲6文献」という。

第4 各文献の記載
1 甲1文献
(1)甲1文献には、以下の記載がある。
(下線は当審が付した。甲2文献?甲6文献についても同様。)

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、充放電可能な二次電池の性能を試験する充放電システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の充放電システムは図4に示すように構成されていた。図4において、定電圧定電流電源1は被試験物である二次電池2の端子間電圧が設定された電圧以下のときには定電流源として動作し、二次電池2の端子間電圧が設定電圧のときには定電圧源として動作する。定電流負荷装置3は、二次電池2から供給される電流があらかじめ設定された値となるように二次電池2の端子間電圧に応じてその負荷の値を変化させる。
【0003】制御器4は、使用者によってあらかじめ設定された条件に従って定電圧定電流源1,定電流負荷装置3およびスイッチS1,S2を制御する。そしてこの制御器4は、充放電システム5が現在どのような動作状態であるのかを、発光ダイオードD1,D2,D3,D4のいずれかに電圧を印加して点灯させ使用者に表示する。ここでR1?R4は発光ダイオードD1?D4に流れる電流を制限するための抵抗である。
【0004】このような充放電システム5を二次電池2と接続し、図4に示すように二次電池2の端子間電圧vの経時的変化を記録する例えばペンレコーダのようなXYレコーダ6を、さらに放電電流iの経時的変化を記録するXYレコーダを二次電池2に接続した状態で、使用者は二次電池2の性能を試験する。
【0005】以上のように構成された従来システムを用いて行う二次電池の性能試験の一例を図5を用いて説明する。
【0006】図5は、二次電池2の端子間電圧vおよび充放電電流iの経時的変化を示した図であり、端子間電圧vの変化はXYレコーダ6によって時々刻々記録されてゆく。ここで、使用者は、試験開始前に制御器4を用いて以下の条件を設定する。すなわち定電圧定電流電源1が定電流モードから定電圧モードに移る電圧v_(1)、通常運転時の放電終了電圧v_(2)、容量試験運転時の放電終了電圧v_(3)、定電圧定電流電源1の定電流モードにおける充電電流i_(1)、定電流負荷装置3による放電流-i_(2)、通常運転時における充電時間T_(1)および休止時間T_(2),T_(3)、容量試験運転時における充電時間T_(4)および休止時間T_(5),T_(6)、通電運転の回数Nを使用者は試験開始前に制御器4を用いて設定する。さらに使用者はN回の通常運転を事前に行う容量試験運転を何サイクル行うかを試験開始前に制御器4を用いて設定する。
【0007】以上のように設定された状態で使用者は二次電池2の性能試験を行う。
【0008】性能試験が開始されると、制御器4は定電圧定電流電源1を始動させスイッチS1,S2を端子aに接続するとともに、発光ダイオードD1に抵抗R1を介して電圧を印加してこれを点灯させて充放電システム5が充電状態であることを表示する。この状態では、定電圧定電流電源1は定電流モードであり、二次電池2に充電電流i_(1)が流れて二次電池2の端子間電圧vが上昇する。端子間電圧vが設定電圧v_(1)になると、定電圧定電流電源1は定電圧モードに移行する。そして、充電時間T_(1)が経過すると、制御器4は定電圧定電流電源1を
停止させ、発光ダイオードD1への電圧の印加を停止するとともに、発光ダイオードD3を点灯させて充放電システム5が休止状態であることを表示する。この休止時間はあらかじめ設定された時間T_(2)である。
【0009】この休止時間T_(2)が経過すると、制御器4は、スイッチS1,S2を端子bに接続して、二次電池2を定電流負荷装置3に接続して放電させるとともに、発光ダイオードD2を点灯させて充放電システム5が放電状態であることを表示する。このとき、放電電流の値が設定電流i_(2)となるように制御器4は定電流負荷装置を制御する。この放電の結果、二次電池2の端子間電圧vは低下してゆき、その値が通常運転時の放電終了電圧v_(2)になると、制御器4はスイッチS1,S2を端子aに切り替えて放電を停止させるとともに発光ダイオード3を点灯させて充放電システム5が休止状態であることを表示する。この休止時間はあらかじめ設定された時間T_(3)である。
【0010】時間T_(3)が経過すると、制御器4は定電圧定電流電源1を始動させて次の通常運転を開始する。
【0011】そして、以上説明した通常運転がN回繰り返される。
【0012】通常運転がN回繰り返されると、制御器4は容量試験運転を行う。ここで、この容量試験運転は、充電時間T_(4)、充電終了電圧V_(3)および休止時間T_(5),T_(6)だけが上述した通常運転と異なっており、他の動作は通常運転と同様なのでその説明は省略する。
【0013】以上のようなN回の通常運転の後1回の容量試験運転を行うことを1サイクルとすると、制御器4はあらかじめ定められたサイクル数の運転が終了した時点で発光ダイオードD4に電圧を印加して点灯させて全ての運転が終了したことを表示する。
【0014】この後、使用者は、XYレコーダ6によって記録された二次電池2の端子間電圧vの経時的変化から、容量試験運転における放電時間Tを読み取って各サイクル毎のi_(2)×T=C〔A・H〕を計算して図6に示す寿命特性曲線を作成する。
【0015】以上のようにして得られた各サイクル毎の容量試験運転時の放電特性と寿命特性とを用いて使用者は二次電池2の性能を判定する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ここで、以上説明したような充放電システムによって試験される二次電池2の容量は、小型ポータブル用二次電池に限定しても100mA/h?5000mA/hと比較的広範囲に亘っている。そして、このような二次電池の試験を行う充放電システムに要求される安定度としては、定電圧モードに対しては設定電圧の±0.1%程度であり、定電流モードに対しては設定電流の±0.5%程度である。従って、1つの充放電システムで、容量が100mA/h?5000mA/hの範囲、すなわち最大容量が最小容量の50倍という範囲の二次電池の試験を行えるようにするためには、その充放電システムはシステムの最大の定電流モード時に設定電流の±0.5%の1/50である±0.01%の安定度が要求されることになる。」

「図4



「図5




(2)図4から読み取れる事項
【0003】、【0008】?【0009】を参酌すると、制御器4は、使用者によってあらかじめ設定された条件に従ってスイッチS1,S2の各々を対応する端子aと接続させることで定電圧電流電源1が二次電池2と接続されるように制御し、対応する端子bと接続させることで定電流負荷装置3が二次電池2と接続されるように制御するものであることが、図4から読み取れる。

(3)図5から読み取れる事項
【0006】を参酌すると、「v_(3)」は容量試験運転の放電が終了したときの端子間電圧vを表していることが、図4から読み取れる。
そうすると、前記【0012】に記載された「充電終了電圧V_(3)」は、「放電終了電圧v_(3)」の誤記と認め、以下そのように扱う。

(4)甲1文献に記載された発明
前記(1)?(3)から、甲1文献には次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「放電特性と寿命特性とを用いて充放電可能な二次電池の性能を判定するための充放電システム5であって(【0001】、【0015】)、
被試験物である二次電池2の端子間電圧が設定された電圧以下のときには定電流源として動作し、二次電池2の端子間電圧が設定電圧のときには定電圧源として動作する定電圧定電流電源1と(【0002】)、
二次電池2から供給される電流があらかじめ設定された値となるように二次電池2の端子間電圧に応じてその負荷の値を変化させる定電流負荷装置3と(【0002】)、
使用者によってあらかじめ設定された条件に従ってスイッチS1,S2の各々を対応する端子aと接続させることで定電圧電流電源1が二次電池2と接続され、対応する端子bと接続させることで定電流負荷装置3が二次電池2と接続されるようにスイッチS1、S2を制御する制御器4を備え(【0003】、【0008】、【0009】、図4)、
二次電池2の端子間電圧vの経時的変化を記録するXYレコーダ6と放電電流iの経時的変化を記録するXYレコーダを二次電池2に接続した状態で二次電池2の性能を試験し(【0004】)、
制御器4は定電圧定電流電源1を始動させスイッチS1,S2を端子aに接続するとともに充放電システム5が充電状態であることを表示し、この状態では、定電圧定電流電源1は定電流モードであり、端子間電圧vが設定電圧v_(1)に上昇すると、定電圧定電流電源1は定電圧モードに移行し、充電時間T_(4)が経過すると、制御器4は定電圧定電流電源1を停止させるとともに充放電システム5が休止状態であることを表示し、この休止時間はあらかじめ設定された時間T_(5)であり(【0006】、【0008】、【0012】、図5)、
休止時間T_(5)が経過すると、制御器4は、スイッチS1,S2を端子bに接続して、二次電池2を定電流負荷装置3に接続して放電させ、放電電流の値が設定電流i_(2)となるように制御器4は定電流負荷装置を制御し、この放電の結果、二次電池2の端子間電圧vは低下してゆき、その値が放電終了電圧v_(3)になると、放電を停止させるとともに充放電システム5が休止状態であることを表示し、この休止時間はあらかじめ設定された時間T_(6)(【0006】、【0009】、【0012】、図5)である容量試験運転を行う充放電システム5。(【0001】、【0015】)」

2 甲2文献
(1)甲2文献には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の二次電池の特性評価を行う二次電池自動試験装置及び試験方法に係り、特にパルス充電、間欠充電、間欠パルス充電等の各種の複雑な充電法を実施する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、各種電子機器の小型化、高性能化、携帯型化によって電池の需要が高まっている。それに応じて電池の改良、開発はますます活発化している。また、電池の新しい適用領域も拡大してきている。
【0003】以前は、電池の使用形態も単純な連続充電を行う充電器による充電と単純な負荷による放電の繰り返しであったものが、近時では電気自動車(ガソリンエンジンとのハイブリッドを含む)の登場や、風力発電、太陽光発電などの新たな発電システムの登場によって、その使用形態も複雑化してきている。
【0004】例えば、携帯電話やノートパソコンなどに使用されるリチウムイオン電池では、電流パルスによる複雑な充電を実施する充電器、あるいは充電システムが現れてきている。
【0005】電池の開発や新しい領域への適用には、特性試験による電池の事前評価が不可欠である。なぜなら、電池の性能はその使用条件に大きく依存するからである。しかも、それらの条件は、単に性能のみならず、電池の安全性にも影響を及ぼすすことがある。
【0006】よって、電池の開発や新しい用途への適用に際しては、実際に使用される様々な条件をできるだけ忠実に反映した電池試験を行うことが重要である。それは、電池の特性、寿命、安全性等が使用条件に大きく依存するからである。できるだけ実際の使用条件に即した事前評価を行うことにより電池の交換時期が想定可能となり、資金面、雇用面における計画が立てられ、また、使用条件に即した効果的な電池改良や必要安全策を経済的でしかも短期間に講じることも可能となり、経済的な側面からも大きなメリットがある。
【0007】しかしながら、それらを満たす試験は、多くの人手と装置を要するためなかなか容易なことではなかった。
【0008】ところが近年、ようやく電池試験のための試験装置が開発されていくつかの問題は解決できるようになった。この試験装置は、単に機械的に試験条件を設定するだけでなく、コンピュータの発展とともに、試験条件の設定、変更、データ収集などまで自動化できるようになってきた。
【0009】従来のこの種の充放電装置の構成の一例を図12に示した。この充放電装置10Dは試験電池(二次電池又は二次電池パック)30の充放電のみを制御する装置であって、データ記録はレコーダ40によっている。図12において、充放電装置10Dは、主として定電流定電圧電源11、定電流負荷装置12、表示ダイオード13aを有する制御器13、及びスイッチ14を具備している。
【0010】定電流定電圧電源11は、試験電池30の電圧に応じて、充放電条件が一定の電圧範囲内で規定されている場合には定電流源として動作し、また充放電条件が一定の時間で規定されている場合には設定電圧までは定電流源として動作し、設定電圧に到達した後は定電圧電源として規定時間まで動作を継続する。
【0011】定電流負荷装置12は、試験電池30から供給される放電電流が一定の設定電流値を維持するように内部の負荷の値を変化させる。制御器13は、設定充放電条件によって定電流定電圧電源11、定電流負荷装置12、及びスイッチ14の接点S1,S2の切替等を制御する。レコーダ40は試験電池30の電圧の経時変化を記録する。
【0012】図13はコンピュータ制御による従来の別の充放電装置10Eの構成の一例を示したものであり、図12の充放電装置10Dに比べ、より詳しいデータの記領が可能となり、必要な場合に必要な情報が引き出せるようになった点が異なっている。この充放電装置10Eでは、図12の制御器13が、CPU15に置き換わり、必要な試験条件やデータを記録媒体に収納させるようにしている。
【0013】図13の構成において、ROM16には充放電制御やデータ記録のためのプログラムが予め収納されており、このプログラムによってCPU15が充放電装置10Eのシステム全体を制御する。17は作業用RAM、18はデータ出力を主な目的とするプリンタである。CPU15にはキーボード19によって個々の充放電条件(時間、電流値、電圧範囲などの設定値)を入力することができる。20は充放電の試験状態を表示する表示器である。」

「図12



「図13




(2)甲2文献の記載事項
前記(1)から、甲2文献には次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2記載事項]
「電池の開発や電気自動車を含む新しい用途への電池の適用に際しては、実際に使用される様々な条件をできるだけ忠実に反映した電池試験を行うことが重要であり、できるだけ実際の使用条件に即した事前評価を行うことにより電池の交換時期が想定可能となり、資金面、雇用面における計画が立てられ、また、使用条件に即した効果的な電池改良や必要安全策を経済的でしかも短期間に講じることも可能となり、経済的な側面からも大きなメリットがあること。」

3 甲3文献
(1)甲3文献には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、充電時等に鉛蓄電池の良否を判定する不良判定方法、及び、この鉛蓄電池に充電を行う充電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】特開2000-156250号公報に記載された発明は、鉛蓄電池にまず高電圧による定電流定電圧充電を行い、次に通常の電圧による定電流定電圧充電を行うと共に、充電完了後に高率放電による定電流放電を行うことにより、サルフェーションの判定や容量不足の判定、内部短絡の判定等の良否判定を行っていた。即ち、高電圧による定電流定電圧充電の際の最高電池電圧が高すぎると、サルフェーションの疑いがあり、この最高電池電圧が低すぎると、内部短絡の疑いがある。また、通常の電圧による定電流定電圧充電の際の電池電圧が低く、この充電の際の充電電流を時間積分した充電容量が大きすぎる場合や、充電終期の充電電流が大きすぎる場合にも、内部短絡の疑いがある。さらに、高率放電による定電流放電の際の最低電池電圧が低すぎると、容量低下やサルフェーション又は内部短絡の疑いがある。そして、この定電流放電の際の最低電池電圧が十分に高い場合には、良品であると判定し、この最低電池電圧がある程度高い場合には、疑いのある不良原因について要注意の判定を行い、この最低電池電圧が低すぎる場合には、疑いのある不良原因により交換の必要があるとの判定を行うことにより、精度の高い鉛蓄電池の良否判定を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような従来の不良判定方法では、充電が完了して最後に高率放電による定電流放電を行うまでは、疑いのある不良原因についての判定を確定することができないという問題があった。
【0004】自動車や二輪車に用いられる鉛蓄電池は、エンジンの始動能力が最も重要であり、例えばバッテリが上がった鉛蓄電池を修理工場の充電器で充電する際の良否判定では、この始動能力の有無を確実に判定することが要求される。そこで、この充電の際にも、エンジンの始動時と同様に大きな放電電流を流す高率放電を行って、この時の電池電圧の低下を検査することにより正確な判定を行うことができるようにしている。ところが、従来の判定方法では、この高率放電を充電完了後に行っていたために、判定結果を得るまでに長時間を要し、時間の無駄が多くなっていた。特に、自動車や二輪車の修理工場等では、ようやく充電が終わってみたら不良であることが判明し、長時間待たせた顧客に鉛蓄電池の交換が必要であることを告げなければならないという不都合が生じていた。」

「【0030】図4?図5は本発明の第2実施形態を示すものであって、図4は充電装置の診断/充電モードにおける動作を説明するためのフローチャート、図5は充電装置の診断/充電モードにおける電池電圧と充電電流の変化を示すタイムチャートである。
【0031】本実施形態も、第1実施形態と同様に、二輪車用の鉛蓄電池に充電を行う場合について説明する。また、充電装置1の操作パネルの構成は、図2に示したものと同じである。
【0032】この充電装置1の動作を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。まず操作者が鉛蓄電池を接続し(S21)、電源を投入して鉛蓄電池の定格容量を設定し(S22)、スタートスイッチ6を押す(S23)までは、図1に示した第1実施形態のS1?S3と全く同じ処理である。そして、このスタートスイッチ6が押されると、充電装置1は、まずこの鉛蓄電池の開放電圧と環境温度を測定して、設定された鉛蓄電池の定格容量やこれら開放電圧、環境温度に基づいて、以降に示す各充放電電流や充電電圧、充放電時間、及び、予測充
電時間等を算出し内部のメモリに設定する。また、ここでも、モード切換スイッチ3は診断/充電モードに設定されている場合について説明する。
【0033】上記工程により鉛蓄電池の診断や充電の準備が整うと、鉛蓄電池に第3の定電流定電圧充電が行われる(S24)。第3の定電流定電圧充電は、例えば0.1?0.2CA、又は、電池充電過程において電池を損傷させないような最大電流A_(c3)と、例えば2.45?2.5V/セルの電圧V_(c3)で、電流A_(c3)により被充電電池の定格容量に対して一定容量(例えば10%)が充電される時間、又は、例えば30分や1時間等の任意の一定時間からなる充電時間H_(c3)にわたって行う定電流定電圧充電である。このような第3の定電流定電圧充電が行われると、図5に示すように、鉛蓄電池の電池電圧が時間の経過に伴って上昇する。
【0034】上記第3の定電流定電圧充電工程が終了すると、この第3の定電流定電圧充電の際の最高電池電圧V_(5)が所定電圧以上、例えばここでは2.3V/セル以上かどうかを判断し(S25)、所定電圧未満の場合には、第2の定電流放電を行う(S26)。第2の定電流放電は、電池形式ごとにJISで規定されている高率放電電流、又は、それに相当するような任意の電流A_(d2)で、例えば5?30秒程度の比較的短い放電時間H_(d2)にわたって行う定電流放電である。そして、この最初(第1サイクル目)の第2の定電流放電の際の最低電池電圧V3をメモリに記憶する(S27)。
【0035】上記最初の第2の定電流放電工程が終了すると、第4の定電流定電圧充電を行う(S28)。第4の定電流定電圧充電は、例えば0.1?0.2CA、又は、電池充電過程において電池を損傷させないような最大電流A_(c4)と、例えば2.45?2.5V/セルの電圧V_(c4)で、電流A_(c4)により被充電電池の定格容量に対して一定容量(例えば10%)が充電される時間、又は、例えば30分や1時間等の任意の一定時間からなる充電時間H_(c4)にわたって行う定電流定電圧充電である。この第4の定電流定電圧充電工程が終了すると、この第4の定電流定電圧充電の際の最高電池電圧V_(5)が所定電圧以上、例えばここでは2.3V/セル以上かどうかを判断する(S29)。そして、この最高電池電圧V_(5)が所定電圧未満の場合には、再び第2の定電流放電を行い(S30)、その際の最低電池電圧V_(4)がS27でメモリに記憶した最低電池電圧V_(3)よりも低くなっていないかどうかを判断し(S31)、この最低電池電圧V_(3)以上であれば、S28の処理に戻る。なお、本実施形態では、まずS26の第1サイクル目の第2の定電流放電工程の後に、S28の第4の定電流定電圧充電工程とS30の第2サイクル目以降の第2の定電流放電工程とが繰り返されるので、この第4の定電流定電圧充電工程の実行回数が第2の定電流放電工程よりも1回少なくなる。しかしながら、各サイクルの前後には第3の定電流定電圧充電工程と後に説明する第5の定電流定電圧充電工程が実行されるので、ここで重ねて第4の定電流定電圧充電工程を実行しても意味がないために、第1サイクル目か最終サイクル目の第4の定電流定電圧充電は省略されていると考えることができる。
【0036】上記S26?S31の処理では、図5に示すように、第2の定電流放電が行われる度に、鉛蓄電池の電池電圧が時間の経過に伴って一旦下降し、第4の定電流定電圧充電が行われる度に、この電池電圧が時間の経過に伴って再び上昇する。ただし、鉛蓄電池が容量不足による不良である場合には、第4の定電流定電圧充電工程を実行しても容量は増加しないので、図5の1点鎖線に示すように、第2の定電流放電工程を繰り返すことにより容量が減少するだけとなり、最低電池電圧V_(4)が徐々に低下する。また、他の不良原因により第4の定電流定電圧充電工程で容量が増加しない場合にも、この最低電池電圧V_(4)が徐々に低下する。従って、S31の処理では、各サイクルでの第2の定電流放電の際の最低電池電圧V_(4)が第1サイクル目の第2の定電流放電工程の際の最低電池電圧V_(3)よりも低くなった場合に、鉛蓄電池が不良であると判定して処理を終了する。そして、充電装置1の操作パネル上では、判定結果表示部8で「要交換」の表示を行うと共に、例えば電池容量表示部5に容量不足等による不良であることを示すコードを点滅表示する等して、この診断結果を操作者に知らせる。
【0037】上記S25やS29で最高電池電圧V_(5)が所定電圧以上になったと判断された場合には、第5の定電流定電圧充電が行われる(S32)。第5の定電流定電圧充電は、例えば0.1?0.2CA、又は、電池充電過程において電池を損傷させないような最大電流A_(c5)と、例えば2.45?2.5V/セルの電圧V_(c5)で行う定電流定電圧充電であり、鉛蓄電池が満充電になるまで充電を行う。この第5の定電流定電圧充電工程では、図5に示すように、当初は定電流の充電電流A_(c5)が供給されて電池電圧が徐々に上昇し、これが電池電圧V_(c5)に達すると、定電圧の充電となり充電電流が減少する。そして、この充電電流が十分に小さい値にまで減少すると、満充電に達し充電が完了したと判断することができる。
【0038】なお、モード切換スイッチ3が診断モードに設定されていた場合には、S25やS29で最高電池電圧V_(5)が所定電圧以上になったと判断されたときに、鉛蓄電池は正常であるとして処理を終了する。そして、充電装置1の操作パネル上では、判定結果表示部8で「正常」の表示を行うことにより、この診断結果を操作者に知らせる。
【0039】また、このS25やS29での判断に代えて、第4の定電流定電圧充電と第2の定電流放電工程を所定サイクル数だけ繰り返し、その間常に最低電池電圧V_(4)が最低電池電圧V_(3)以上であれば、正常な電池であると判断することもできる。ただし、この場合に、過放電の鉛蓄電池を充電すると、判定のための十分な充電が行われる前に正常な電池であると誤判定するおそれが生じる。しかしながら、本実施形態のように、充電の際の最高電池電圧V_(5)が所定電圧以上になるまで、最低電池電圧V_(4)が最低電池電圧V_(3)以上を維持している場合にのみ正常であると判定するようにすれば、このような誤判定を防止することができる。
【0040】この結果、本実施形態では、充電の初期又は途中の段階で鉛蓄電池の不良の判定を行い、正常な鉛蓄電池についてのみ、第5の定電流定電圧充電工程による充電を実行するので、不良の鉛蓄電池に意味なく充電を行う無駄をなくすことができるようになる。また、充電装置1を診断モードで使用した場合には、短時間で鉛蓄電池の良否を判定できるようになる。」

「図5




(2)甲3文献の記載事項
前記(1)から、甲3文献には次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲3記載事項]
「自動車や二輪車に用いられる鉛蓄電池は、エンジンの始動能力が最も重要であり、バッテリが上がった鉛蓄電池を修理工場の充電器で充電する際の良否判定では、この充電の際にも、エンジンの始動時と同様に大きな放電電流を流す高率放電を行って、この時の電池電圧の低下を検査することにより正確な判定を行うこと。」

4 甲4文献
(1)甲4文献には、以下の記載がある。
「【0002】
従来、車両には、クランキングを行うためのスタータ及びその他の電気部品の電源装置として、バッテリが搭載されている。このバッテリは、充電及び放電が可能であり、その充電状態は、バッテリの実際の充電状態や、エンジンの運転状態に応じてオルタネータの発電電力を制御することで、所定のレベルに制御するのが一般的である。また、駆動源として、エンジン以外に電気モータを備えるハイブリッド車両では、この電気モータをスタータとして兼用し、クランキングを行うことができる。
【0003】
このような車載バッテリの劣化を診断する装置として、次のものが知られている。バッテリとその電気負荷との間の接続を遮断し、この状態でのバッテリの端子電圧を起電力E0として検出するとともに、クランキングに伴う大電流放電時に、バッテリの端子電圧V及び放電電流Iを検出する。検出したE0,V,Iをもとに、下式(1)によりバッテリの内部抵抗Rを算出し、算出したRの大きさをバッテリの劣化度合いとみなすものである(特許文献1)。」

「【0005】
しかしながら、上記の劣化診断装置には、次のような問題がある。上記の劣化診断装置では、バッテリの劣化度合い(すなわち、内部抵抗)の算出に際し、バッテリの起電力E0を予め検出しておく必要があるが、一般的な車両では、バッテリの端子を開放した状態にし得るような構成は採られておらず、起電力E0を検出することはできない。かりに起電力E0を検出しようとすれば、そのために特別な構成を採用する必要が生じ、構成を複雑にするとともに、コストを増大させてしまう。また、上記の劣化診断装置では、クランキング時におけるバッテリの電気特性、特に放電電流を高い精度で検出する必要があり、高価な電流センサが必要となるが、このこともコストを増大させる一因となる。」

「【0019】
S202では、バッテリ電圧Vbを読み込む。
S203では、電圧判定値Vjを検出する。この電圧判定値Vjについて、図7により説明する。
図7は、エンジン1の始動時におけるバッテリ電圧Vb及び充放電電流Icの変化を示している。
【0020】
バッテリ電圧Vbは、まず、イグニッションスイッチがオンされることにより低下する(時刻t1)。バッテリ104の放電電力が、C/U201を含む各種のコントロールユニット等の電力として消費されるためである。スタートスイッチがオンされ、スタータ102によるクランキングが開始されると(時刻t2)、バッテリ104からの大電流放電が生じ、バッテリ電圧Vbは、大きく低下する。エンジン1の完爆に伴い、オルタネータ103は、この大電流放電によるバッテリの充電状態SOCの減少を受けて発電を開始する。オルタネータ103の発電電力は、バッテリ104の充電に充てられる。充放電電流Icは、その後、ピークを迎え、充電状態SOCの回復により減少する。」
「図7



(2)甲4文献の記載事項
前記(1)から、甲4文献には次の技術事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲4記載事項]
「車載バッテリの劣化を診断する装置において、クランキングに伴う大電流放電時に、バッテリの端子電圧V及び放電電流Iを検出すること。」

5 甲5文献
(1)甲5文献には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を搭載したハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化など環境問題への対応策として、蓄電池を用いたハイブリッド車両の普及が進んでいる。蓄電池には鉛蓄電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池などが用いられるが、特に出力密度やエネルギー密度に優れるリチウムイオン電池の採用が近年増えてきている。
【0003】
一般に蓄電池は充放電サイクルを繰り返すことで劣化が進む。特に鉄道ハイブリッド車両のように、回生ブレーキによる大電流を長時間にわたって充電するようなシステムにおいては、劣化を考慮した適切な電流制限を設けないと、電池寿命が予想より短くなり、十分に性能が発揮できなくなったり、予想よりも早く電池を交換する必要性が出てきたりする。
【0004】
充放電電流を制限する方法としては、例えば特許文献1に記載の方法があった。電池の充電状態に応じて出力に制限を設けるというものである。また、電池の劣化を抑制する制御方法として、例えば特許文献2に記載の方法があった。電池の劣化速度が基準よりも大きいと判断した場合に、劣化抑制制御を行うというものである。」
「【0032】
電池は充放電を繰り返すことより劣化が進行する。一般には充放電電流が大きいほど劣化は速く進む。そこで、劣化を抑制するためには、電池の最大・最小電圧で決まる電流値よりも小さい値に電流を制限する必要がある。あらかじめサイクル寿命試験を行って、目標寿命を達成するには電流をいくらに制限すべきかを求めておけば、寿命を考えた電流制限をかけることができる。そのようにして定めた充放電電流制限値は、上述した電池の性能上許容される最大・最小電圧で決まる許容充放電電流値よりもずっと小さな値になる。
【0033】
また、一般に蓄電池は、充電状態が低いほど充電を受け入れやすく、充電状態が高いと充電電流は流しにくいという性質を持っている。劣化に関しても、充電状態が高いところでは電流を絞った方が、劣化が抑制できる。放電側も同様に、充電状態が高いほど放電電流は大電流が流せ、充電状態が低くなると放電電流の出力が低下する。充電状態が低いところでは電流を絞った方が劣化もしにくくなる。
【0034】
そこで、たとえば図3,図4に示すように充電状態SOCに応じて電流制限値を変えるようにする。充電電流の制限値は充電状態SOCが高いほど小さい値とし、逆に放電電流の制限値は充電状態SOCが低いほど小さい値とする。このような特性で電流制限を設けることにより、効果的に劣化の進行を抑制することができる。」

「図3



「図4



(2)甲5文献の記載事項
前記(1)から、甲5文献には次の技術事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲5記載事項]
「蓄電池を搭載したハイブリッド車両の制御装置に関し、充電電流の制限値は充電状態SOCが高いほど小さい値とし、逆に放電電流の制限値は充電状態SOCが低いほど小さい値とするような特性で電流制限を設けることにより、効果的に劣化の進行を抑制することができること。」

6 甲6文献
(1)甲6文献には、次の記載がある。
「【0002】
近年、最先端蓄電デバイスであるリチウムイオン電池、キャパシタのハイブリッド電気自動車に代表される大電流負荷用途蓄電システムに向けた開発が加速している。この開発において蓄電デバイスの入出力特性評価は重要であり、その評価方法は予め定めた充放電深度に充電あるいは放電されたデバイスに対して複数の充電電流・電力(入力)あるいは放電電流・電力(出力)を印加して、得られる充電カーブ(充電容量・時間に対するデバイス電圧)あるいは放電カーブ(放電容量・時間に対するデバイス電圧)を解析するものである。例えば、容量5Ahのリチウムイオン電池の放電深度0%(充電深度100%)における出力特性を評価する場合、評価電池を所定深度まで充電後1C電流(5A)での放電、それに続く所定深度までの充電、5C電流(25A)での放電、それに続く所定深度までの充電、10C電流(50A)での放電を順次繰り返す操作を例えば、1C、5C、10C、20C、50C電流における出力特性を得るためには5回繰り返す必要があった。更に、放電深度0%、放電深度25%、放電深度50%における出力特性を得る場合にはその3倍の充放電回数が必要とされる。また、この場合において100C(500A)での出力特性が要求された場合、再度測定することが通常であり、評価データの汎用性についても問題が残されていた。」

(2)甲6文献の記載事項
前記(1)から、甲6文献には次の技術事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲6記載事項]
「予め定めた充放電深度に充電あるいは放電されたデバイスに対して複数の充電電流・電力(入力)あるいは放電電流・電力(出力)を印加して、得られる充電カーブ(充電容量・時間に対するデバイス電圧)あるいは放電カーブ(放電容量・時間に対するデバイス電圧)を解析する蓄電デバイスの入出力特性評価。」

第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明の対比・判断
ア 対比
(ア)甲1発明の「二次電池2」と本件特許発明1の「車載用の蓄電デバイス」は、「蓄電デバイス」である点で共通する。

(イ)本件特許発明1の「蓄電デバイスに電流を入力する」に関し、特許明細書【0018】には「なお、以下の説明において、蓄電デバイスへの入力電流とは、蓄電デバイスに入力される充電電流および蓄電デバイスから出力される放電電流の双方を指し、入力電流の符号が正である場合は充電を表し、入力電流の符号が負である場合は放電を表す。」とあるから、この記載に即して甲1発明を検討すると、甲1発明の「定電圧電流電源1」に接続された「二次電池2」が充電されるときは、「二次電池2」に正の電流が入力され、「定電流負荷装置3」に接続された「二次電池2」が放電するときは、「二次電池2」に負の電流が入力されるといえる。
よって、甲1発明の「二次電池2」に接続される「定電圧定電流電源1」と「定電流負荷装置3」の組み合わせは、本件特許発明1の「蓄電デバイスに電流を入力する電流源」に相当する。

(ウ)甲1発明の「制御器4」は、「定電圧定電流源1」を「定電流源」や「定電圧源」として動作させ、「定電流負荷装置3」を接続することにより放電電流を発生させることにより電流量を制御するものであるといえる。
そうすると、甲1発明の「制御器4」は、本件特許発明1の「電流源から出力される電流量を制御する制御部」に相当する。

(エ)甲1発明の「二次電池2の端子間電圧vの経時的変化を記録するXYレコーダ6」と「放電電流iの経時的変化を記録するXYレコーダ」は、「二次電池2に接続した状態で二次電池2の性能を試験」する際に用いるものであり、各々「二次電池2の端子間電圧v」と「放電電流i」の経時的変化を記録していることからみて、「充放電システム5」は、記録に必要な二次電池2の端子間電圧vを測定する電圧センサと二次電池2の放電電流iを測定する電流センサを当然有するものである。
そうすると、甲1発明の「二次電池2の端子間電圧vの経時的変化を記録するXYレコーダ6」と「放電電流iの経時的変化を記録するXYレコーダ」を有する「充放電システム5」と、本件特許発明1の「蓄電デバイス特性測定装置」は、
「蓄電デバイスの端子間電圧を測定する電圧センサ」及び「蓄電デバイスに入力される電流の大きさを測定する電流センサ」を備える点で共通する。

(オ) 甲1発明の「容量試験運転」が行われる期間は、本件特許発明1の「所定の測定時間」に相当する。
甲1発明の「充電時間T_(4)」における「定電圧モード」の期間は、本件特許発明1の「定電圧充電状態」を「模擬する期間」と、定電圧充電期間である点で共通する。
甲1発明の「休止時間T_(5)」は、上記「充電時間T_(4)」における「定電圧モード」の後の期間であるから、本件特許発明1の「前記定電圧充電状態後の休止状態」を「模擬する期間」と、前記定電圧充電期間後の休止期間である点で共通する。
甲1発明の「休止時間T_(5)が経過」した後の「放電電流の値が設定電流i_(2)となる」期間(図5の放電期間T)は、本件特許発明1の「定電流放電状態」を「模擬する期間」と、定電流放電期間である点で共通する。
甲1発明の「休止時間T_(6)」は、上記放電期間Tの後の期間であるから、本件特許発明1の「前記定電流放電状態後の休止状態」を「模擬する期間」と、前記定電流放電期間後の休止期間である点で共通する。
そして、甲1発明の「充電時間T_(4)」、「休止時間T_(5)」、放電期間T、「休止時間T_(6)」は、「容量試験運転」が行われる期間に含まれるから、このことは、本件特許発明1の「所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む」ことに相当する。
そうすると、甲1発明の「制御器4」が行う「容量試験運転」の内容と本件特許発明1の「制御部が、定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間を所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む電流波形を電流源から出力させること」は、
「制御部が、定電流放電期間、前記定電流放電期間後の休止期間、定電圧充電期間、及び前記定電圧充電期間後の休止期間を所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む電流波形を電流源から出力させること」で共通する。

(カ)甲1発明の「充放電システム5」は、「放電特性と寿命特性とを用いて充放電可能な二次電池の性能を判定するための」ものであるから、甲1発明の「充放電システム5」と本件特許発明1の「蓄電デバイス特性測定装置」は、「蓄電デバイスの特性を測定する手段」である点で共通する。

以上(ア)?(カ)の対比内容をまとめると、本件特許発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1?3で相違する。

[一致点]
「蓄電デバイスの特性を測定する手段であって、
前記蓄電デバイスに電流を入力する電流源と、
前記電流源から出力される電流量を制御する制御部と、
前記蓄電デバイスの端子間電圧を測定する電圧センサと、
前記蓄電デバイスに入力される電流の大きさを測定する電流センサと、
を備え、
前記制御部が、定電流放電期間、前記定電流放電期間後の休止期間、定電圧充電期間、及び前記定電圧充電期間後の休止期間を所定の測定時間内に少なくとも1回ずつ含む電流波形を電流源から出力させる蓄電デバイス特性測定手段。」

[相違点1]
「蓄電デバイス」が、本件特許発明1では、「車載用の蓄電デバイス」であるのに対して、甲1発明では、「二次電池」であるものの「車載用」のものを含むか否かは不明である点。

[相違点2]
「制御部が」「電流波形を電流源から出力させる」ものであって、「所定の測定時間内」に含まれるものが、本件特許発明1では、「定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間」「が少なくとも1回ずつ含」まれるのに対して、甲1発明の「容量試験運転」は、
(a)「定電圧モード」で「充電時間T_(4)」の間充電を行い、充電時間T_(4)経過後に定電圧定電流電源1を休止時間T_(5)の間停止させ、
(b)「二次電池2を定電流負荷装置3に接続して放電」を行い「二次電池2の端子間電圧v」の値が放電終了電圧v_(3)になると、放電を停止させ、「休止時間T_(6)」の間放電を停止する制御が「制御器4」により行われているものの、「放電状態」、「充電状態」、及び、「休止状態」を「模擬する期間」として上記「所定の測定時間内」に含まれているとはいえない点。

[相違点3]
本件特許発明1が「蓄電デバイス特性測定装置」に係る発明であるのに対し、甲1発明は「充放電システム5」の発明であり、「装置」であるか明らかではない点。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
(ア)本件特許発明1における「・・・模擬する期間」の技術内容について
相違点2の検討に際し、本件特許発明1の「定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間」が表す技術的内容について検討する。

a 「定電流放電状態を模擬する期間」について、特許明細書【0026】に「第1期間D1は、定電流放電状態を模擬する期間である。この第1期間D1は、アイドリングストップによりエンジンが停止してオルタネータの発電が不足し、居室内外の電気設備のための電力を蓄電デバイス10から放電する状態を模擬する。このときの放電電流量は時間に対して一定とされる。この第1期間D1において制御部30により制御される要素は、期間の長さ及び電流量である。」と記載され、
b 「定電流放電状態後の休止状態を模擬する期間」について、特許明細書【0032】に「第5期間D5は、定電流放電状態後の休止状態を模擬する期間である。この第5期間D5は、アイドリングストップによりエンジンが停止して電気設備のための電力を蓄電デバイス10から供給した後、電気設備が全て停止され、蓄電デバイス10が充電も放電も行わない状態を模擬する。この第4期間D4において電流量はゼロであり、制御部30により制御される要素は期間の長さのみである。」と記載され、
c 「定電圧充電状態を模擬する期間」について、特許明細書【0029】に「第3期間D3は、定電圧充電状態を模擬する期間である。この第3期間D3は、エンジンが再始動した後、エンジンの回転を動力源としてオルタネータが発電し、蓄電デバイス10を充電する状態を模擬する。このとき、オルタネータからの出力電流が急激に上昇し、それに伴って電圧も上昇するが、蓄電デバイス10及び他の電気装備の保護のため電圧の上限が一定値に制限される。従って、この第3期間D3は定電圧充電となり、蓄電デバイス10に入力される電流量は時間の経過とともに次第に低下する。」と記載され、
d 「定電圧充電状態後の休止状態を模擬する期間」について、特許明細書【0030】に「第4期間D4は、定電圧充電状態後の休止状態を模擬する期間である。この第4期間D4は、蓄電デバイス10が充電されたのち、オルタネータの電力が電気設備によって全て消費され、蓄電デバイス10が充電も放電も行わない状態を模擬する。この第4期間D4において電流量はゼロであり、制御部30により制御される要素は期間の長さのみである。」と記載されている。

e そして、本件特許発明1の「蓄電デバイス特性測定装置」は、「車載用の蓄電デバイスの特性を測定する装置」であるから、前記a?dを参酌すると、本件特許発明1の「定電流放電状態、前記定電流放電状態後の休止状態、定電圧充電状態、及び前記定電圧充電状態後の休止状態をそれぞれ模擬する期間」とは、単に「定電流放電の期間」、「定電流放電期間後の休止の期間」、「定電圧充電の期間」、「定電圧充電期間後の休止の期間」という、蓄電デバイスの放電時間、充電時間あるいは充放電しない時間を表すのではなく、オルタネータや居室内外の電気設備とともに用いる「車載用の蓄電デバイス」特有の使用状態を模擬した期間と解すべきものである。

(イ)判断
上記(ア)の検討内容を踏まえて、上記相違点2を検討すると、甲1発明の「充放電システム5」の「二次電池2」はそもそも用途が限定されておらず、また、甲1号証の発明の詳細な説明の【0016】には「ここで、以上説明したような充放電システムによって試験される二次電池2の容量は、小型ポータブル用二次電池に限定しても100mA/h?5000mA/hと比較的広範囲に亘っている。」と記載されており、二次電池の容量についての記載はあるものの、当該容量の大きさから二次電池の用途を特定することはできないから、二次電池の用途に関する記載はなく示唆もない。すなわち、甲1発明の「容量試験運転」において、用途に特有の使用状態を模擬することについて記載も示唆もない。
そして、甲2記載事項から電気自動車を含む新しい用途で電池が使用される様々な条件をできるだけ忠実に反映した電池試験の重要性が開示され、また、甲3記載事項から自動車や二輪車に用いられる鉛蓄電池は、エンジンの始動能力が最も重要であり、バッテリが上がった鉛蓄電池を修理工場の充電器で充電する際の良否判定では、この充電の際にも、エンジンの始動時と同様に大きな放電電流を流す高率放電を行って、この時の電池電圧の低下を検査することが開示されているところ、これらの開示内容から、車載用の蓄電デバイスを試験する際に自動車等での使用状況に応じた試験を行う技術思想までは読み取れるものの、甲2文献、甲3文献には自動車等での電池の試験を行う際に、自動車等での使用状況に即した充放電に係る条件設定を行う旨の技術までは記載されていない。
そうすると、甲2文献、甲3文献には、オルタネータや居室内外の電気設備とともに用いる「車載用の蓄電デバイス」特有の使用状態を模擬する期間を設定するという技術思想が開示されておらず、示唆されているともいえない。
そして、甲4記載事項?甲6号記載事項のいずれにも前記技術思想は開示がなく、示唆もされていない。
よって、オルタネータや居室内外の電気設備とともに用いる「車載用の蓄電デバイス」特有の使用状態を模擬する期間を設定したとはいえない「容量試験運転」を行う甲1発明に、上記甲2?6記載事項をどのように適用しても、当業者が上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは容易であるとはいえない。

(2)申立人の主張
申立人は、本件特許発明1に進歩性がない旨主張する。
しかしながら、上記1(1)において検討したとおり、本件特許発明1は、甲1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないから、申立人の上記主張には理由がない。

(3)小括
相違点1及び相違点3を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1?6文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本件特許発明2?7について
(1)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1の構成をすべて含むものであるから、上記1に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2?5は、甲1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件特許発明6?7について
本件特許発明6は「蓄電デバイス特性測定方法」の発明であり、本件特許発明7は「蓄電デバイス特性測定用プログラム」の発明であり、甲1発明と対比した場合、各々は前記1(1)アの相違点2と同様の相違点を有している。
よって、上記1に示した理由と同様の理由により、本件特許発明6?7は、甲1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-07-01 
出願番号 特願2016-174713(P2016-174713)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 島田 保  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 居島 一仁
濱野 隆
登録日 2020-09-07 
登録番号 特許第6759892号(P6759892)
権利者 昭和電工マテリアルズ株式会社
発明の名称 蓄電デバイス特性測定装置、蓄電デバイス特性測定方法、及び蓄電デバイス特性測定用プログラム  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 寺澤 正太郎  
代理人 長谷川 芳樹  
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